したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

月夜の蟹のようです

5訂正:2023/10/05(木) 01:00:15 ID:Le8acQQY0

蟹を食べるとき、どこから食べるか。
俺は必ず足から食べるし、だいたいの人がそうするだろうと思っている。
蟹を店で食べるときは綺麗に剥かれているし、まるごとの蟹を人前で食べる機会は今までなかったから実際のところはわからない。
キッチンバサミやカニフォークもこの家のどこかの戸棚にはあるはずだけど、あれを使うのは邪道だと幼少の頃から言われてきたから取り出しはしない。
己の手と歯で全て食べられる。

ショートケーキを食べるとき、苺は最後に取っておく派だから、蟹の脚も下からもいでいく。
足の付け根からもいで、関節を外して、殻の薄い部分に歯を立ててヒビを入れる。ヒビさえいれてしまえばゆで玉子の殻むきのようにツルリと綺麗な蟹の身が現れる。

現れる、はずだった。

( ^ν^) 「なんだよ」

思わず溢れ出た言葉に、ちょうど皿洗いを終えて手を拭いていた母が振り向いた。

ξ゚⊿゚)ξ 「どうしたの?」

( ^ν^) 「中身がない」

殻の内側を広げて見せると、母は眉ひとつ動かさずに「ハズレね」と言って台所の外へと消えていった。
諦められずに他の脚ももぐ。もいで、殻の外側に噛みつく。
やはり期待している弾力はなく、あっさりと割れた殻の内側に中身はほとんどない。

( ФωФ) 「月夜の蟹だな」

未練がましく甲羅を剥がして胴体の身のすかすか具合を覗いている俺に向かって、祖父がぽつりと呟いた。
.


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板