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(´・_ゝ・`)麻殻に目鼻を付けたようです
1
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 00:01:07 ID:KE1dk0R20
食と旅の秋祭り 食・旅部門 参加作品
やや暴力的な描写を含みます
329
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:19:18 ID:LMjVEIVk0
そうして、思いついたことがあった。
一度何かをひらめいたら、思慮をすっ飛ばして実行してしまう癖がある。
.
330
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:20:25 ID:LMjVEIVk0
(;´・_ゝ・`)「おい!」
渾身の力で、今の自分に出せる最大の声をあげた。
ボスが振り返る。
右手で足からナイフを引っこ抜いて、まとわりつく血をジャージで拭う。
左手で自身の鼻先をつまんで、固定する。
右手に持ったナイフの刃を、口の上、鼻柱の付け根に当てる。
こちらに向けられた二人分の細い目が、かっと見開かれた。
それを確認すると、デミタスはにやりと笑って。
刃を、思いきり上へ滑らせた。
.
331
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:21:39 ID:LMjVEIVk0
一瞬ひやりとした。遅れて熱。さらに遅れて、激痛。
左手で顔を押さえる。吹き出した血が指の間から垂れていく。
ボスはリュックを放り投げるとこちらに突っ込んできて、
四つん這いになりながらデミタスの鼻尖を拾い上げた。
(;゚ω゚)「あ──ああああっ、何を! 何てことを!」
(;゚ω゚)「戻せ! 戻せお!! これがなきゃ駄目だお!! デミタス!!
低かったら駄目だお! ドクオ先生になるな! 僕を裏切るな!!
ふざけるなっ、何でっ! 何で!!」
掴みかからん勢いで喚く男。
その首の位置を確認し、デミタスは右手のナイフを握り直して──
332
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:22:34 ID:LMjVEIVk0
──彼の背後に一瞬、気を取られた。
騒いでいた声が止み、暴れていた体が動きを止めた。
£°ゞ°)
目を血走らせたロミスが、ボスの首を突き刺していた。
先ほどまで自身の腹にあったナイフで。
333
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:23:51 ID:LMjVEIVk0
ロミスが手を捻る。ナイフが肉を抉る。
ボスの喉から空気の固まりが零れ落ちるような音がした。
何かを言ったのかもしれなかったが、それを理解する前に大きな体がフローリングに倒れ込んで、
とうとうぴくりとも動かなくなった。
しばらく誰も声を発せなかった。
また怪我など忘れて起き上がってきやしないかと、
怪物の死体を眺めるような心持ちでそれを見つめていた。
瞬きもしなければ胸も上下しない。
それをたっぷり確認して、ようやくデミタスは息を吐き出した。
334
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:26:04 ID:LMjVEIVk0
直後、ロミスもその場に倒れる。
──ロミス。
呼びかけて、デミタスは彼へ駆け寄った。
駆けるといっても、膝をにじることしか出来なかったが。
腰が抜けたらしいペニサスも、同じように。
(;、;*川「ロミス君っ」
ロミスの目は既に焦点が合っていない。
ややあって、胃袋を満たしたのであろう血が口の端から垂れた。
£°ゞ°)「……海老フライ、俺も食べたかったな」
呑気な一言だったが、声は弱々しい。
(;、;*川「ま、また作るから、やだ、死なないで」
救急車、と言って立ち上がろうとしたペニサスの服をロミスの手が掴む。
もう一方の手をぱたぱた揺らしている。デミタスを探しているのだろう。
その手に触れてやると、ほうと彼の口から小さな息が落ちた。
335
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:27:34 ID:LMjVEIVk0
£°ゞ°)「もし姉者ちゃんに会うことがあったらさ、20円もらっといて。
デミタス君にあげる」
そして。
彼は眠たそうに瞼を下ろして。
吐息と一緒に、囁くような声を零していく。
£-ゞ-)「天気予報でさ……明日、雨だって……」
£-ゞ-)「出かけるなら、傘忘れないでね……」
うん。
上手く発声できなくて、聞こえなかったかもしれない。
しかしロミスが満足そうに微笑んだので、何とか届いたのだろう。
その顔をよく見たいのに、自分の血と涙を垂らしてしまうのが嫌で、出来なかった。
友達の顔を汚したくなかった。
336
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:28:29 ID:LMjVEIVk0
ごめん。ありがとう。
いつか言えなかった──
ずっと言えていなかった言葉を絞り出す。
これも、届いていればいいのに。
.
337
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:29:25 ID:LMjVEIVk0
◆時の用には鼻を削げ
…緊急時には手段を選んでいられないということ
.
338
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:30:09 ID:LMjVEIVk0
■
.
339
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:32:57 ID:LMjVEIVk0
(´・_#・`)「……」
デミタスは眉根を寄せながら、顔の中心に貼られたガーゼに触れた。
ペニサスがその手を下ろさせる。
('、`*川「触っちゃ駄目よ」
でも痛くないし、と言うと、今はね、と返された。
──病院の一室。
ベッドの上、顔と太ももにひとまずの処置を受けたデミタスが横たわっている。
その横、右手の小指に包帯を巻かれたペニサスが椅子に座っている。
室内にはこの二人だけだ。
窓の外の空は雲が増えてきてはいるが、明るく、穏やかだ。
数時間前の騒ぎが嘘のように。
340
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:34:21 ID:LMjVEIVk0
「騒ぎ」、もとい惨劇の直後。
異常を感じた運転手が家に飛び込んできて、
ダイニングの様子を一目見ると、頭を押さえながらどこかへ連絡をとり始めた。
すぐにでも懐から拳銃を取り出してこちらに向けてくるのではと警戒していたが、
そういった気配はなかった。
むしろ、邪魔だから失せろという空気すら感じる。
思ったよりもデミタスたちは彼らにとって木っ端でしかなく、
思ったよりもボスはかけがえのない存在でなかったらしい。
341
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:35:46 ID:LMjVEIVk0
ペニサスに支えられながら家の外に出て、少し離れた場所で救急車を呼んでもらって。
で、今に至る。
ペニサスの家に帰れば、たぶん、あれが夢だったのではと思えるほど
綺麗さっぱり、全ての痕跡が消え去っているのだろう。
下手をすると、アパートの203号室も空っぽになっているかもしれない。
何せボスがいない以上、こちらに住処を提供し続ける義理など奴らにはない。
姉者と兄者はどうなるだろうか。
デミタスがこれだから、彼らも消されることはないとは思うが。
まあ、何がどうなったって、あの二人は受け入れるだろう。
でなければボスを裏切ってデミタスたちを助けるような真似はしない。
どこかで会えたらいい。20円の件もある。
342
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:37:16 ID:LMjVEIVk0
(´・_#・`)「今後は平らな顔になるな」
('、`*川「あなた、ほとんど意識なくしてて聞いてなかったのかもしれないけど
手術である程度は復元できるって話よ。
まったく元通りかは置いておいて」
(´・_#・`)「匂いは感じられるんだろうか。今は何が何だか分からない」
('、`*川「嗅覚を感じるのは鼻のずっと奥の方だから、大丈夫だと思うけど」
(´・_#・`)「良かった。
あんたの作る飯が味気なく感じるようになったらどうしようかと思った」
であればおおよそ、今後の大きな──あくまで大きな──不安要素はないに等しい。
ペニサスが拗ねたような、変な顔をして唇を尖らせているので
「どうした」と訊いてみれば、「何でもない」とすげない返事。
頬が少し赤い。
343
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:38:47 ID:LMjVEIVk0
('、`*川「……はあ、引っ越さなきゃな。さすがにもうあそこに住んでらんない。
ああでも、その前にしたらば製薬に研究の話をしに行かないと。
やることいっぱいあるわ」
(´・_#・`)「頑張れ」
('、`*川「他人事。まあデミタス君は療養に専念しておいてちょうだい。
……ねえ、住みたい場所とかある?
私、海が近いところがいいわ」
今度は不安そうな、期待するような、窺うような顔。
(´・_#・`)「あんたがいるならどこでもいい」
答えてから、一緒に住むことが前提なんだなと気付いたが、
別にそれでいい──それが良かったから、つっこまないでおいた。
ほっと息をついたペニサスが、椅子を引きずるようにしてベッドに近付く。
344
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:40:10 ID:LMjVEIVk0
('ー`*川「私も、デミタス君がいればどこだって怖くないわ」
そう言って、顔をくっつけてきた。
鼻がぶつかりにくい今の内に──なんて笑うので、
ならしばらく手術しなくてもいいかな、と少し思ってしまった。
そのまま言葉にしたら怒られそうだけど。
345
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:41:06 ID:LMjVEIVk0
目も鼻も口も、どんな形をしていたってどうでもいい。
自分も彼女も。
ただ一緒に話して、一緒に何かを食べて、一緒に生きてくれたら、それでいい。
.
346
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:42:16 ID:LMjVEIVk0
(´・_#・`)麻殻に目を付けたようです(今のところは)
■完
347
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 00:42:54 ID:LMjVEIVk0
終わりです
ありがとうございました!
348
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 01:02:04 ID:EQIwY4Zk0
乙
本当に面白すぎた
349
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 09:37:39 ID:SWZn3y0U0
乙
AAの使い方が上手すぎた、ブーン系でこその作品
読み応えも素晴らしい
350
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 12:17:26 ID:X.1KcHu20
乙だよおおおおおおおおお
351
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 20:19:09 ID:N70BuiTc0
乙!1本の良作映画を見てる気分だった
最高!
352
:
名無しさん
:2023/10/10(火) 22:11:51 ID:j5H3RnjM0
すっごい話だった乙!!
面白かった
353
:
名無しさん
:2023/10/11(水) 05:45:03 ID:QfVmXMZY0
大変お恥ずかしい限りですが
>>345
と
>>346
の間に入る文章をすっ飛ばしてしまってました
無いなら無いでいいかとも思ったんですが、やっぱり落ち着かないので貼っておきます
354
:
名無しさん
:2023/10/11(水) 05:47:03 ID:QfVmXMZY0
デミタスの腹が、ぐうと鳴る。
ペニサスが目を瞬かせてくすくす笑う。
あれこれ教えてくれたお節介な友達はもう隣にいない。
だから腹を満たして頭に栄養を回したら、
彼女を前にすると胃袋ではないどこかが無性に物欲しがるようなこの気持ちを
どう言葉にして伝えたものか、自力で考えるとしよう。
.
355
:
名無しさん
:2023/10/11(水) 05:48:08 ID:QfVmXMZY0
今度こそ終わりです
ありがとうございました!
356
:
名無しさん
:2023/10/11(水) 10:57:54 ID:MtXKIpjo0
めちゃくちゃ大事な1レスでわろた
改めて乙乙乙
357
:
名無しさん
:2023/10/12(木) 00:33:46 ID:xypyCcK.0
乙!!
めちゃくちゃ面白かった!!!
358
:
名無しさん
:2023/10/12(木) 19:10:22 ID:m/71D8UA0
>>351
本当にこれ。
このまま映画に出来そうなくならい最高に面白かった!
乙です!
359
:
名無しさん
:2023/10/18(水) 13:26:22 ID:3ZSYNaqQ0
乙乙
スリル満点でドキドキしながら読みました。
360
:
名無しさん
:2023/10/19(木) 21:32:18 ID:f10kq96I0
■おまけ
(´・_#・`)「そういえば」
('、`*川「なあに?」
病室。
ベッドの上で窓を見つめていたデミタスがぽつりと呟くと、
椅子の上でコーヒーゼリーの蓋をめくっていたペニサスが首を傾げた。病院の売店で買ってきたものだ。
361
:
名無しさん
:2023/10/19(木) 21:34:54 ID:f10kq96I0
(´・_#・`)「兄者が寄越したリストの三度目……何であのラインナップだったんだ」
たしか海老の他はイクラ、鮭、鯛──
伊藤クールが「鍵」、もとい海老に辿り着いたのはジョルジュたちからの連想だったのではないか。
だというなら、イクラだの鯛だのは関係なかったはずである。
('、`*川「そっか、デミタス君は研究資料のノートは見てなかったものね」
デミタスが読んだのは、ハローや伊藤クール個人についての記述が多かった雑記帳だけ。
どうやら彼の疑問への回答は研究記録の方にあったらしい。
コーヒーゼリーを自分の口に運びながらペニサスは語る。
('、`*川「まずね、去年の夏の時点ではおばあちゃんも行き詰まってたみたいで。
食品由来の成分で役立つものはないかって、ほとんど自棄気味に
市場で購入したものを各所に送って調べさせたらしいの」
(´・_#・`)「それがリストにあった『一度目』と『二度目』だな」
('、`*川「ええ。一度目にもハローさんに海老を調べてもらってたんだけど、
特に目立った結果は得られなかったんですって。
そのときは他所の地域で獲れた普通の海老だったから……」
362
:
名無しさん
:2023/10/19(木) 21:35:33 ID:f10kq96I0
('、`*川「そして『二度目』では前回と違う食品を対象にしたから、海老は含まれてなかった。
で、こっちも特に結果は出ず……。
だから、食品からのアプローチは一旦やめようとしたらしいんだけど」
──夫のことを考える内にペニサスの恋人たちにも思考が及び、
あれこれ思い出していたら、連想ゲームのようにアスタキサンチンに辿り着いたのだそうだ。
ファイナルの言葉遊びで月、月に照応する食べ物、その中でも海産物──
甲殻類。それに含まれるアスタキサンチン。これには心血管疾患への効果を期待する声がある。
と、こんな具合に。
('、`*川「そこに繋がったのも何かの縁かもってことで、
今度は『アスタキサンチンを多く含む食べ物』に絞って調べ直そうとしたらしいわ」
(´・_#・`)「それが海老とイクラと鮭と鯛?」
('、`*川「そういうこと。イクラとかの赤色もアスタキサンチン由来なのよ」
真っ赤な粒々が脳裏を過ぎり、デミタスは顔をしかめた。
363
:
名無しさん
:2023/10/19(木) 21:37:22 ID:f10kq96I0
──5日目の夜。
何とか泣きやんだペニサスの手を引きながらダイニングへ戻り、
まだ鼻をぐすぐすいわせる彼女の向かいで、漬け丼の残りをかき込んだのを思い出してしまう。
自分が去った後のキッチンにて、泣き腫らした目もそのままに
乾いた丼の中身を処理する彼女の姿を想像してしまうと、そうせずにはいられなかった。
無理しないでとは言われたが、様々なことで頭がいっぱいで味わう余裕もなく、さほど苦ではなかった。
それはそれで良とも言えないだろうけど。
閑話休題。
('、`*川「どうしてその4つだったかっていうと、その日、市場で一般人でも購入できた商品の中で
条件に合うのがそれだけだったからみたい」
(´・_#・`)「なるほど」
('、`*川「そして、このとき買った海老が、たまたまファイナル市近辺で獲れたものだった」
それが、高岡海洋研究所の所長いわく「二回目の依頼」。
そこでハローが殻に含まれる特殊な成分を見付け出し、
伊藤クールに目をつけられてしまった──というわけだ。
364
:
名無しさん
:2023/10/19(木) 21:38:29 ID:f10kq96I0
(´・_#・`)「じゃあ祖母さんは、最初からストレートに辿り着いてたわけじゃなかったんだな」
('、`*川「そうね。むしろ海老……というか甲殻類は連想ゲームの通過点だった。
それでも最終的にはそこに帰結したんだから、
まあ長岡君たちのおかげとは言えるのかもしれないわね」
その後、ファイナル市で獲れた海老のみに含まれる成分が有用であることまで判明して。
ひどく高揚した彼女は、ジョルジュとペニサスに口を滑らせたのだ。
「君たちが『鍵』に繋がった」「『鍵』はこの街にあった」──と。
納得し、デミタスは無言で何度か頷いた。
365
:
名無しさん
:2023/10/19(木) 21:40:01 ID:f10kq96I0
話し終えたペニサスがゼリーの容器を親指でさする。
実は話している合間にも食べ進めていたので、もうすっかり空っぽだ。
('、`*川「コーヒーゼリー、デミタス君も食べたかった?」
(´・_#・`)「何で」
('、`*川「じっと見てたから」
(´・_#・`)「パッケージを見てただけだ」
季節に合わせてか、蓋や容器にハロウィンらしいイラストが施されている。
オレンジ色と紫色。
(´・_#・`)「……まあコーヒーは好きだけど。
人が食べてるのを欲しがって凝視するほどさもしくはない」
('、`*川「あ、やっぱりコーヒー好きなんだ。カフェやうちでよく飲んでたものね」
デミタス君にも「好物」って概念があるのね、と失礼なことを言う。
反論しようとしたが別に言い返す中身も思いつかなかった。
ただ他のことが浮かんだので、そっちのために口を開く。
(´・_#・`)「僕が住んでる……住んでたアパートに、デルタっていう奴がいたんだが」
要は思い出話だった。
366
:
名無しさん
:2023/10/19(木) 21:43:05 ID:f10kq96I0
(´・_#・`)「住み始めてすぐの頃の僕は、人から渡されたものを何でも食べてたもんだから
面白がったそいつに、変なの……というかあまり良くないのばかり食わされてたことがあって」
('、`*川「まあ……」
それでも食えなくはないものが出される分、叔父と暮らしていた頃よりはマシだったので、素直に食べてしまっていた。
ペットショップのロゴが入った袋を持ってくるときは比較的「当たり」の方。
(´・_#・`)「見かねたロミスが、行きつけの喫茶店に連れてって
コーヒーを奢ってくれたんだ。それが美味かった」
見かねた──のだろう。たしかに。
自分で口にしておいて、今さら得心する。
当時はただ暇を持て余した隣人に付き合わされただけだと思っていた。
ともかく、それまでのデミタスは支給された金で何を買えばいいのか、
というか何時頃に何をどれだけ食えばいいのかもよく分からないような有様で、
近所のスーパーで買った菓子パンひとつで一日の食事を終わらせることも間々あった。
以降、とりあえずロミスが勧めてくるものを適当にとっていたら、
いつの間にだか食事の時間も内容も自分で考えて選べるようになり、
嫌だと感じるものの区別もついて断れるようになっていったのである。
腹を空かせているからデルタに遊びの余地を与えてしまうのだと
ロミスは分かっていたのだろう。
そもそもアパートの住人で気付いていなかったのは、デミタスくらいだったかもしれないが。
ともあれ、それ以来コーヒーは「好んで選ぶもの」になった。
367
:
名無しさん
:2023/10/19(木) 21:43:59 ID:f10kq96I0
('、`*川「ロミス君って、デミタス君のお兄ちゃんみたいね」
(´・_#・`)「あいつの方が年下だぞ」
('、`*川「そういうことではなくてね」
間をあけて、たしかにそうかもなと思い直す。
彼に言ってやりたいことがどんどん増えていく。どうしてこんなに遅い。
そのまましばらく、二人とも黙っていた。
別に、しめやかな空気ではない。
それでも何か動きが欲しかったのか、
ペニサスがサイドテーブルの上、売店のビニール袋を見た。
('、`*川「ごめんなさい。
今のデミタス君に何を食べさせていいのかよく分からなくて、あなたの分を買ってなかったの……」
(´・_#・`)「いいって」
('、`*川「あの。……でも」
もじもじとプラスチックのカップを両手で揉み込んでいる。
かと思えば右手を離し、見た目どおりに柔らかかった唇を指差した。
368
:
名無しさん
:2023/10/19(木) 21:45:11 ID:f10kq96I0
('、`*川「まだコーヒーの味はするかも」
──それが、とびきり馬鹿らしくてしょうもない誘い文句であることは
デミタスにも分かってしまったし、何言ってんだこいつはと呆れもしたが。
乗ってやっても良かったので、顔を近付けようとした。
369
:
名無しさん
:2023/10/19(木) 21:45:46 ID:f10kq96I0
ら、茹でた海老みたいに真っ赤になったペニサスに
「冗談」「買ってあるから」とビニール袋でガードされたのであった。
■おまけ 終わり
370
:
名無しさん
:2023/10/19(木) 21:47:31 ID:f10kq96I0
話のテンポ等の都合で説明を省いてしまった部分の補足と、ついでのコーヒー話でした
本当にありがとうございました
371
:
名無しさん
:2023/10/19(木) 21:54:42 ID:8IsX5Vu20
おつおつお
372
:
名無しさん
:2023/10/19(木) 22:12:29 ID:tXERiAJs0
乙!おまけ嬉しい!!
373
:
名無しさん
:2023/10/22(日) 18:14:42 ID:0hhBl7UA0
ブーン系でしかできないものを見た
おまけもうれしい、乙
374
:
名無しさん
:2023/10/27(金) 07:50:14 ID:ZWWCCoZs0
ひと展開ごとにドキドキさせられた、発想の良さとまとまり具合がすごい
今更ながら乙!!!!
375
:
名無しさん
:2023/10/31(火) 00:05:34 ID:Lf947LcQ0
とってもよかったー!!ありがとう!
376
:
名無しさん
:2023/11/01(水) 00:48:20 ID:cWxtbI2Q0
教養皆無だから、なんかスパイスみたいなのに目鼻を付けて憤死する話だと思ったのに全く違った
面白かった乙です
377
:
名無しさん
:2023/12/12(火) 13:05:51 ID:Bqw6bTq60
この作品を知れて読めてこれからも読み返せるの贅沢すぎる。
378
:
名無しさん
:2024/01/24(水) 08:36:37 ID:sPgYbg6k0
乙です!めっちゃ面白かった!
個人的にドクオ先生の経緯が気になる
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