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異界大戦記のようです
951
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:20:10 ID:n/YrJHUw0
『ひこうき』や『せんしゃ』といった兵器の数々もこの世界の戦争を変えうる力を持っていた。
だがこれはそれ以上の物であると間違いなく断言できる。
そして初めから使えば簡単にルナイファを滅ぼしうるものを持っていたのにも関わらず、ここまで使わなかった理由。
それはつまりー
('A`)(人間達の、奥の手......なのか?)
探し求めていたものかとしれないという考えが、脳裏によぎる。
本音を言えば、これ以上の物などあって欲しくないという彼の願望もあったもののその威力と使用された状況から考えても可能性は高いだろう。
自身の望む力による均衡、すなわち抑止力としては申し分ないどころかこれ以上ないものである。
ゆえにその力を欲すると共に、一抹の不安も沸き上がる。
あまりに、その力が強すぎるのだ。
確かに抑止力にはなるだろうが、万が一にその力を使うことになってしまったとすれば。
さらにそれが、互いに持ち合っているような状況だとすれば。
952
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:20:53 ID:n/YrJHUw0
(;'A`)「......」
考えたくもない。
だが考えるまでもなく、その先に待つものは破滅以外にない。
とはいえ現状、話を少し聞いた程度。
より詳しく知らなくてはと、ようやく脳内の混乱が落ち着いたところで違和感を覚える。
('A`)「......イヨウさん?」
先ほど、咳のような音がした後からイヨウの声が聞こえなくなっているのだ。
魔信の故障かと思えば、あちらで降っているのだろう雨の音が聞こえ、道具に異常が無いことを知らせていた。
(;'A`)「イヨウさん?イヨウさんっ!?」
そしてその音はつまり、道具ではなくイヨウの異常を知らせているのに等しいものである。
そのことに気が付き、必死に魔信の向こうに呼び掛ける。
だがその声に答えるものはなく、ただの沈黙のみが返ってくる。
953
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:21:23 ID:n/YrJHUw0
(;'A`)「......なにが」
一体、何があったというのか。
イヨウに、そしてルナイファの要塞に。
何も分からない。
ただ何かがあったことだけは、確かであろう。
ーつまりまだ、自分が理解していない恐ろしい何かが、秘められているということである。
(;'A`)「......」
底知れない人間達の力に、身を震わせながらも彼は決意する。
自身に出来ることはなんなのか。
それは一つしかないだろう。
(;'A`)「知らなくては......」
彼はここ、ソーサク連邦の情報戦略室の職員なのだ。
情報が武器であり、知ることが彼の使命である。
ならば、知らなくてはならない。
そうして彼は動き出す。
世界を変える、力を知るために。
954
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:22:05 ID:n/YrJHUw0
ルナイファ帝国 南方都市テタレス
/ ,' 3「作戦は、上手くいったようだな」
(;`・ω・´)「はい、全て人間達から事前に告知があった通りです。時間通りに、要塞が消滅しました」
/ ,' 3「......改めて、とんでもない者達を相手にしていたのだな。我々は」
アラマキはその報告を受け、大きくため息をつく。
知らなかったこととはいえ、この一年近くの自身の失態を改めて痛感する。
そしてその失態のツケは自国の多数の民の命により支払うこととなったという事実は、悔やんでも悔やみきれない。
/ ,' 3「それで、これからどうなると考える?」
(`・ω・´)「はっ。少なくとも北方の......北ルナイファと仮称しますが、奴らの戦力の大半が失われました。最早防衛すらままならない戦力しか残されていません。これ以上の継戦は不可能なため、実質的な終戦となるかと」
/ ,' 3「そうか......ではこれからは戦後の事を考えなくてはならないわけか」
955
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:23:24 ID:n/YrJHUw0
(`・ω・´)「そうなります。ですが......」
/ ,' 3「現在の我々では、独力での復興は難しいか」
(`・ω・´)「......はい。我々は多くを失いすぎました」
アラマキの言葉に、シャキンは力なく頷く。
これまでのルナイファの国の基盤は戦力とそれによる属国、植民地からの搾取で成り立っていた。
それが今回の戦争で全て失ったのだ。
今後の物資の不足は目に見えている。
また戦闘による港や街道への被害も激しいため、もし物資が手に入ったとしても国全体に行き渡らせることも難しいだろう。
/ ,' 3「そうなると......賠償の他に、やはり地下資源とやらの採掘権を渡して、復興の支援を頼むしかないか。人間達にとって重要なものと聞いた以上、出来れば価値を理解してから手札として使いたいところであったが......」
(´<_` ;)「仕方ないでしょう。現状を考えると余裕がありませんから。相手から提示された条件で頷くしかありません」
(`・ω・´)「そもそも手持ちの手札がない現状、我々にとって価値のないもので交渉が出来る、と前向きに捉えるべきでしょう」
956
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:24:59 ID:n/YrJHUw0
/ ,' 3「......なるほど、それもそうだな。しかし話し合いで国としての体裁は保たれることとなっているが......最早国と呼べるか怪しいところだな」
それゆえに、国を保つためには他国の力が必要であった。
だが他国との関係がお世辞にも良いとは言えないこの国を支援しようというものなど、ほとんどいない。
そんな中、戦勝国である人間達の国が支援に名乗りを挙げたのだ。
(`・ω・´)「表向きは確かに国として保てますが......本質的には傀儡、ですな。まあ我々が下手に滅びでもすればこの大陸は混乱を極めますから下手な扱いはないと、思いたいですが」
/ ,' 3「うむ。しかしアリベシという見本があって助かった......あの国の暴走ぶりと大陸の混乱がなければこの考えには至らなかったからな。交渉にならなかったかもしれん」
(;`・ω・´)「もしそうなっていたらとは......考えたくもありませんな」
/ ,' 3「あぁ。まあとにかく、北方の奴らに占領でもされれば人間達にとってまた厄介なことになる。我々にある程度の力を持たせて奴らを抑えたいだろう。それに期待するしかあるまい」
(´<_` )「えぇ。他に選択肢がない以上、そうするしかありませんな」
(`・ω・´)「ただ問題は......人間達にこちらを援助する余裕があるか、ということですね」
/ ,' 3「......はぁ」
957
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:25:41 ID:n/YrJHUw0
そう、通常であればここで話は終わっていたのだ。
だが現実はプギャーの放った魔法により世界中に混乱が訪れようとしているのだ。
もし人間達も多大な被害が出てしまえばいくらこちらが望んだところで復興の手助けなどする余裕はないだろう。
/ ,' 3「神頼み......いや、人間頼み、か。本当に我々は国として終わってしまったのだな」
(´<_` )「......ですがまだ、再起のチャンスは残されております」
(`・ω・´)「えぇ、我々も全力を尽くしますゆえ。必ずや我が国を建て直し、次こそは最高の国家としましょう」
/ ,' 3「......あぁ。そうだな。では今出来ることをやるとしようか」
(´<_` )「はっ!」
そうしてアラマキ達は改めて、世界中に向けて放送を行った。
その内容は人間達の行った攻撃の詳細について。
その凄まじいまでの被害を聞いたもの達は世界に訪れた危機で青くしていた顔をさらに青くし、大きく混乱することとなる。
だがそれと同時にルナイファの終焉を皆が悟るのだった。
958
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:26:37 ID:n/YrJHUw0
ルナイファ帝国 北方都市
(; ^Д^)「......馬鹿な」
部下からの報告、そして今も流れる忌々しいアラマキの演説を聞き、プギャーは思わずそう漏らした。
全ては上手く行くはずであった。
それがエルフの宿命であり、運命であるはずだったのだ。
だが複数挙がってくるその報告を前に、自身の描いた未来は完全に否定されてしまった。
全ては崩壊した、と言ってもよい状態であった。
(; ^Д^)「何故だ、どこで間違えたと言うのだ?何故、こんな......」
(;*゚ー゚)「......」
(; ^Д^)「くそっ、くそっ、クソがぁっ!!」
959
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:28:09 ID:n/YrJHUw0
正気を失ったかのように暴れまわり、辺りのものを壊し回る。
そうしてやり場のない怒りと今更ながら痛感した強大な敵への恐怖をぶつけていたのだ。
そんな様子をシィは静かに眺め、本当に全て終わったのだと悟っていた。
(;*゚ー゚)「プギャー様......最早軍は壊滅、自国の領土すらまともに守れる状態ではありません。それも、周囲の国家が相手であってもです。やはり、もうここは停戦を申し入れてー」
(# ^Д^)「......んぞ」
(;*゚ー゚)「え?」
(# ^Д^)「負けることなど、断じて認めんぞっ!!例え、どんな犠牲を払おうとも奴らを滅ぼさなければ!!」
(;*゚ー゚)「......」
(# ^Д^)「確かに今、軍は壊滅状態だ。ならば、軍を再建すればよい!まだ、民は残っているだろう!?他国からの傭兵も引き入れろ。自分で歩ける奴ならばどんなやつでもだっ!!そうすればまだ、戦えるのだっ!」
(;*゚ー゚)「そんな......」
(# ^Д^)「どれだけ時間が掛かろうとも、いつの日か、必ず、必ずや奴らを地獄へ送ってやる......いいなッ!?」
960
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:28:42 ID:n/YrJHUw0
この男はまだ、終わったことに気づけないのかー
そんな思いにシィはただ呆然と立ち尽くす。
確かに引き返せないところまで来ていると言える状況ではある。
もしこれで敵へ降伏することになれば、少なくともプギャーの首は差し出さなくてはならない。
だが、この男が国のために自身を差し出すことはないだろう。
相手が人間であるならば尚更である。
分かりきったことではあったのだがこの国は、別の意味でも終わってしまっていた。
(*゚ー゚)(......いっそのこと)
報告に聞く、人間達の攻撃がここに降り注げば良かったのにと、シィは心の底から思ってしまう。
例え自分が死ぬことになるとしても。
それで、この世界の敵は滅ぼされるのだから。
そんな自己犠牲も厭わない願いは叶うことはなく。
悪魔はまだ、この世界で生きていた。
961
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:29:39 ID:n/YrJHUw0
ルナイファ帝国 南方戦線 野戦病院
遠くに、大きな雲が見えた。
その雲は見たことないものであったが、その前に感じた遠く離れたこの場所まで伝わってきた衝撃に何が起こったのかを察していた。
('、`*川「......あぁ」
そしてそれを裏付けするかのように流れた陛下の演説に、ペニサスは祖国が敗北したのだと理解した。
だが、不思議と悲しさはなかった。
それどころかようやくこの悪夢のような時間を終えることが出来るのかと言う安堵の方が大きかった。
ξ゚⊿゚)ξ「......先生?泣いているの?」
('、`*川「え?」
そう隣にいるツンにそう声をかけられ、ようやく自分の頬が濡れていることに気が付く。
これまで抑えていたものが、戦いが終わったと言う安堵から溢れそうになっていたのだ。
962
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:30:09 ID:n/YrJHUw0
('、`*川「......えぇ、そうね。泣いて、いるわ。もう、我慢しなくて良くなったのよ」
そしてそれはもう、抑える必要がなくなったものであった。
これまでは戦う国の一員として、どれだけ苦しくても弱音を言うことなど、許されることはなかった。
だがそれはもう、終ったのだ。
だからこそ、ペニサスは涙を流し、ツンにそう語りかける。
優しく、ツンを抱き締めながら。
ξ゚⊿゚)ξ「せん、せい?」
('、`*川「終わったの。全部、もう終わったのよ......だから、もういいのよ。頑張らなくて」
ξ゚⊿゚)ξ「っ!」
そう、もう終わったのだ。
あの辛く苦しい、悪夢のような時間は。
だからもう、ただの子供に戻っても良いのだと。
963
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:31:14 ID:n/YrJHUw0
ξ゚⊿゚)ξ「せん、せい......」
('、`*川「いいの、いいのよ」
ξ ⊿)ξ「せ、んせ......ぅ、あ」
これまでどれほど辛い思いをこの子にさせてしまったのだろうか。
感情豊かであるはずの、普通の子供が感情を殺し、命に関わる責務を負わされるなど正気の沙汰ではない。
だが彼女はそれを、こなしていた。
こなせてしまっていたのだ。
それがどれだけ凄いことであり、そしてどれだけ彼女を苦しめたのだろうか。
その痛みと苦しみを全て理解し、癒すことはペニサスには出来ない。
ただの一教師にそんなことが出来るはずがない。
だがその痛みと苦しみを吐き出させ、ただの子供にしてあげることは出来るだろう。
それがペニサスの使命であり、教師であり、大人である自分だからこそ出来ることなのだと。
ξ ⊿)ξ「あああぁぁああああっ!!!」
そうしてその優しさに触れ、ツンは堰を切ったように涙を流した。
止めどなく溢れるその涙の量が、彼女のこれまでの辛さを物語っているかのようである。
その涙にペニサスはより一層、彼女を抱きしめ、決意する。
('、`*川「大丈夫、もう、大丈夫だから。我慢しなくていいからね。なにがあっても先生が、必ず、必ず守るからっ!!」
もう二度と、子供が苦しまないように必ず守ると。
この目で見て、感じてきたこと、戦争の凄惨さを皆に教え、如何に恐ろしいことかを広め、そして。
もう二度と戦いが無い、子供の苦しまない世界を、目指すのだ。
964
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:31:54 ID:n/YrJHUw0
(、*川「ぅ、うぅ......」
あぁ、なんて自分は愚かであったのだろうか。
ペニサスはそんな思いで胸中が一杯であった。
何故こんな簡単ことが戦争の前から分からなかったのか。
その結果が、このような結末を作ってしまったのだ。
とんでもない、過ちを自分達はおこしてしまったのだ。
そうでなければ、こんな目に合うはずがない。
ならば、どうするか。
次は、間違えない。
絶対に、間違えてはいけない。
だからこそ、伝えよう。
この今、見ていもの、聞いているもの、そして感じているもの全てを。
二人の泣き声が響く、この今を決して忘れない。
ー戦いが終わったこの日を、決して忘れてはいけないのだ。
965
:
名無しさん
:2023/12/16(土) 13:32:17 ID:n/YrJHUw0
続く
次回かその次でひとまず完結予定です
966
:
名無しさん
:2023/12/17(日) 18:38:15 ID:MXEU8bDw0
つらいな…乙
967
:
名無しさん
:2023/12/18(月) 23:09:53 ID:t8qYvbak0
乙乙
968
:
名無しさん
:2023/12/19(火) 09:15:44 ID:S8x3EBik0
otsu
969
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:38:49 ID:RitR9poI0
ムー国 大使館
1463年10月3日
実質的な終戦を迎えてから、数ヶ月。
あの日が歴史の転換点であったと言えるほど、世界は変化を見せていた。
まず語るべきは、旧ルナイファ帝国だろう。
この世界において最強であったはずのその国は今では見る影もない。
属国や併合されていた国々は全て独立を宣言し、大きく領土を失うことになっていた。
その独立した国々も長い間の占領により、国境が曖昧になっていたことや王族の断絶などの様々な問題が浮き彫りになっており、安定には程遠い。
加えて敗戦国となればその国民が奴隷になると見てそれを手に入れようとする商人や孤児などを狙った誘拐犯、そして盗人も集まってきており治安も最悪の一言である。
さらには旧ルナイファは北ルナイファ帝国と南ルナイファ共和国の二つに分かれた。
そのうちの北ルナイファ帝国はあれだけの被害を負ったため流石に軍事行動こそないものの、未だに戦意を失ってはいない。
それゆえ周囲の緊張感を高めており大陸は混迷を極めていた。
970
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:39:54 ID:RitR9poI0
川 ゚ -゚)「人道的支援、か。確かに大陸の安定は国のためになるとはいえ......奴隷制がないことといい、学ぶことが多いな」
だがそこで待ったをかけたのが他でもない戦勝国である召喚された人間達であった。
敵対していた国を、それも敗戦国に対して支援を行う旨を発表した際は世界が驚き、偽の情報ではないかと皆が疑った。
だが実際に南ルナイファ共和国にて人間達の支援部隊や治安維持目的の軍が派遣されてくる姿を見て、それが本当なのだと分かったものの、その行動を理解できるものは少なかった。
なぜこれだけの力を持ちながら滅ぼすこともせず、さらには奴隷にするどころか支援をするのか。
そんな疑問符を頭に浮かべてはやはりまともに物を考えることも出来ない劣等種なのだと結論を出すものが多かった。
だがそんな彼らも人間達の持つ力の前に恐怖し、ここで暴れるのは無理だろうと人間の手が届く範囲に限られるが治安は日を追う毎に回復してきていた。
また中には人間達の行動を理解し、偏見を改めようとするものたちも数は少ないが現れ、国交樹立に向けた動きも見られていた。
971
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:40:35 ID:RitR9poI0
川 ゚ -゚)「世界は......本当に変わったな」
そう、世界は変化をしている。
ほんの一年前まで、人間達の独立国がこの世界に生まれ、そしてその国と国交を結ぶものたちが現れるなど欠片も考えたことはなかった。
川 ゚ -゚)「それが、最近では慌てたように国交を結ぼうとしているんだからな」
その言葉の通り、国交を結ぼうとしている国もまた少なくない。
理由は勿論色々とあるが一番大きいものはやはり、旧ルナイファ帝国が放った疫病を撒き散らす魔法だろう。
その恐ろしい病は噂通りの力を発揮していた。
凄まじい速度で感染し、かつ治療が困難なその病は、国力がなくまともな魔法使いのいない国にとってはまさに最悪の一言であった。
伝え聞くだけでも小国のいくつもが破綻しかけているという。
だからこそそんな病を、一番に差し向けられた人間達もまた、滅びゆく運命であろうと多くの者が予測していた。
それゆえ旧ルナイファ領へ介入しようとしていた者たちが多かった。
いくら力があろうが、自国のことで手一杯となり、ルナイファの内部にまで手出しは大きくは出来ないだろうと高を括っていたのだ。
川 ゚ -゚)「......国交を結びたい理由は、やはり薬だろうな」
だが現実はといえば、人間達はルナイファまで手を回す余裕があるように見える。
これは一体どういうことだと調べてみれば、皆が恐れる病を薬で簡単に治せるというのだ。
972
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:43:07 ID:RitR9poI0
多大な混乱を与えたものの、クー達エルフからすれば被害ともいえないような数百か数千程度の少数の死者のみであるという。
未だ押さえ込める未来の見えない他国からすればそれは神の所業である。
それゆえ皆がその力に救いを求めた。
そこにプライドなど挟める余裕などなく、病に脅かされている国々が一斉に国交を、そして救いを求め出したのだ。
川 ゚ -゚)「うーむ、とはいえ......」
しかしそれら全てを救えるかというと流石の人間達の国でも厳しいらしい。
救いの力、すなわち彼らの作る薬は確かに大量生産できると言う話だがそれでも限度があり、自国やここムー、トウキュといった戦争で実質的な支配下となっている近隣の国々に回す分を考える必要があるためである。
また物理的に距離が遠ければそれだけ輸送のコストがかかるため、優先度はそれに比例して下がってしまうのだ。
とはいえ多数の国と国交を結べるチャンスであり、かつ薬を大量に売ることが出来ることを考えれば経済の回復に多大な貢献をするだろう。
だが他にも彼らはやることが山積みなのだ。
973
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:44:04 ID:RitR9poI0
川 ゚ -゚)「中々に、難しいところだな......」
圧倒的な力で忘れかけていたが、人間達の国はこの世界に無理やり召喚され、経済面で考えればとてつもない被害を受けている。
そんな状態で約一年も戦争を続けて無事なはずがない。
今すぐにも経済の復興が必要となっているという。
特に軍需も戦争が終わった時点で無くなるため、これまで戦争のための働いていたもの達の新たな就職先を見つけなければ召喚の影響で多数生まれた失業者がさらに増えてしまい、国としての基盤が崩壊する可能性すらあると言う。
一応ルナイファとの交渉で得られた地下資源の採掘に向けて、多くの者達が送られる予定となっているため、失業率は若干の緩和が見込まれており、またそこから得られる資源を扱う仕事により、新たな雇用を生み出すとのことだが未だに予断が許されない状況である。
何とか戦争を乗り越えたものの、まだまだ彼らの国を賄うには必要なものが足りないのだ。
川 ゚ -゚)「......そう考えると、案外ルナイファは惜しかったのかもしれんな」
強大という言葉が相応しい人間達の国を、ここまで追い込んだのだ。
召喚による影響などもあるとはいえ、圧倒的な軍事力の差を埋めたルナイファの馬鹿げた国力は確かに世界最強と呼ぶに相応しい国であった。
ただし、元と付くわけだが。
974
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:45:58 ID:RitR9poI0
現在の世界最強はどこかと聞かれれば、その答えは間違いなく一つしかないだろう。
川* ゚ -゚)「ふふっ。私もその国の一員というのは何とも誇らしいな」
かつての母国を捨て、新たに属することを決めたその国。
その圧倒的な力に魅了され、この国に亡命したことは間違いではなかった。
自身がエルフということもあり、人間達からすればかなり印象は良くないが、それでもこちらの仕事を認め、そして一員と扱ってくれている。
そんなところからもこの世界の国家にはない、国としての余裕が感じられるのだ。
これから先、世界がいかに混乱したとしてもこの国を脅かすことなどあり得ないだろう。
それだけの力を、この国は持っているのだから。
つまり、未来の安泰は保証されているに等しいのだと彼女は確信している。
それゆえ、頭に思い描くものは輝かしい未来ばかり。
もう何も心配事などないのだ。
ただ考えるのは今後の幸せのことのみで、何も問題などないのだ、と。
川 ゚ -゚)「さて、と。そろそろちゃんと仕事をしないとな。えっと、まずは......あぁ、行方不明になった支援団体職員についてか」
そうして彼女は最近ようやく使いなれてきた『ぱそこん』に向き合う。
仕事には四苦八苦するものの、彼女の顔は明るい。
なぜなら彼女の眼前に広がるのは、明るく輝く未来の世界。
不安など、あるはずがない。
愛する新たな自国のために、よりよい国を目指すために、彼女は目の前の仕事と戦い始めたのだった。
975
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:46:54 ID:RitR9poI0
南ルナイファ共和国 南方港(旧軍港跡)
1463年10月4日
激しい攻撃を受け、壊滅していたここ、南方港。
復興に向けた資材等の受け入れに必須ということもあり、この世界では類を見ないほどのスピードで復興が進められていた。
今では軍港としての機能こそ戻ってはいないが、それ以外の通常の港としての能力はかつてのそれを上回るのではないかと言うほどである。
事実、『くれーん』なるものが作られ、これまで魔法で持ち運んでいた荷物の運搬性が格段に上昇していた。
こうして大量に物資を持ち込めるようになったことで、どうにか餓死者を減らせるようになりつつあるがそれでもまだ、国として再起できるラインとは言いがたい。
問題は物資のみだけではないからである。
今回の戦争により、ルナイファは多くの者を、それも魔法の才があり働き盛りな若者を多く戦場に送り、そして亡くした。
さらには国が二分した際、戦争に徴兵された一般市民も多くが北ルナイファ帝国の民になるか、あのキノコ雲の下で蒸発したかのどちらかである。
これによりまともに働ける人材が少なくなり、この国の人口ピラミッドは見るも無惨な姿となっている。
この事は将来に非常に暗い陰を残すと共に、今現在においても多大な枷となり、南ルナイファを苦しめていた。
976
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:47:29 ID:RitR9poI0
そんな一人でも多くの人材を欲する南ルナイファであるが今日、大きな朗報があった。
それはたった今、港に入港してきた大きな人間達の軍艦も関わっている。
(´<_` ;)「......改めて、こんな艦相手に戦っていたのだな」
爪;'ー`)「......」
(´・ω・`)「......凄い」
そんな艦を眺める者が数多くいるが、その反応は様々であった。
オトジャのようにかつて戦ったものはその恐ろしい記憶に身を震わせ。
フォックスのように戦いこそしなくてもその力を噂で聞いていた者はこんな化け物が本当に実在したのかと口を大きく開き唖然としていた。
その艦は自分達の友人や家族を殺した者達の兵器であり、恨みの籠った視線を送るものが多くいたが、それと同時に皆にあの戦争の悪夢を思い出させる、人間達の力を示す恐怖の象徴となりつつあったのだ。
ーだが中にはショボンのように、戦争と切り離してその艦を眺め、その雄大な姿に子供らしく目を輝かせるようなものも、少数ではあるものの存在していた。
そんな様々な感情を向けられる中、その艦が接岸する。
そして艦からルナイファの地へと降り立つ複数の影が、そこにはあった。
977
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:48:02 ID:RitR9poI0
( ´_ゝ`)「......まさか本当に生きてこの地に立てるとはな。それも、こんなに早くとは」
その影の正体は戦争の生き残り。
捕虜となっていたルナイファの兵達であった。
彼らの表情は皆、明るいものであった。
それも当然であろう。
これまで何度も自分達がいつ殺されてもおかしくない立場に居続けたのだ。
いくら口頭で殺すことはないと聞かされても、それを全て信じきることは難しい。
また捕虜の返還に関しても、国との交渉次第ではどんな扱いになるか分かったものではない。
もし仮に母国に見捨てられでもすれば、敵がわざわざ捕虜を確保しておく必要などないのだ。
ゆえに解放される今日この日まで、どんなに低い確率であったとしても処刑されるかもしれないという恐怖を消すことが出来なかった。
だがそれが今日、解放されたのだ。
それを喜ばないものなど、いない。
皆が歓喜し、そして涙を流し、自身が母国の地に再び自身の足で立つことが出来ていることを感謝していた。
978
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:49:58 ID:RitR9poI0
(゚、゚トソン「ほ、本当に、生きて、帰って......」
爪'ー`)「トソンっ!!」
(゚、゚トソン「っ!ふぉ、くす?」
そんなあまりの歓喜に頭が追い付かず、混乱していたトソンに懐かしい声が届く。
ハッと声がする方に向けば、そこには見知った顔があった。
笑いながら近づいてくるその彼を、彼女は知っている。
その笑顔を、知っているのだ。
懐かしい、その笑顔を。
見慣れたはずの、笑顔である。
特別な表情などではない。
だが、いや、だからこそか。
その笑顔は彼女を日常に連れ戻す。
どこかまだ落ち着かなかった心が、平穏を取り戻していくのを感じていた。
そして、その安堵からなのか。
(、 トソン「フォックスっ!!」
爪;'ー`)「うおっ、ちょ、と、トソン!?どうし......」
(、 トソン「う、うぅ......」
爪'ー`)「......おかえり、トソン」
気付けばフォックスに駆け寄り、泣きついていた。
これまで抑えていたものがすべて溢れだし、止めることが出来なかった。
そして、ようやく心の底から理解した。
ーようやく、終わったのだと。
979
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:50:38 ID:RitR9poI0
( ´_ゝ`)「......ふむ」
(´<_` ;)「アニジャっ!良かった......よく、無事に......って、なんだ?なぜ両手を広げている?」
( ´_ゝ`)「なんだ、折角の感動の再会なんだ。俺も抱き締めて帰りを祝福してくれてもいいじゃないか」
(´<_` ;)「......」
( ´_ゝ`)「冗談だからそんな顔をするな。流石に傷付くぞ......っと?」
(´<_` )「......これでいいか?」
( ´_ゝ`)「......悪くないな」
(´<_` )「おかえり、アニジャ」
( ´_ゝ`)「あぁ。色々と、すまなかったな」
(´<_` )「気にするな」
互いに笑い合い、再会を喜び合う。
それは敗戦し、窮地に追い込まれ、どこもかしこも暗い雰囲気が漂っていたこの国に久しぶりに現れた明るい一幕であった。
980
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:51:27 ID:RitR9poI0
( ´_ゝ`)「それで?国は、どんな状況なんだ?」
(´<_` )「帰ってきてまずそれか。相変わらずだな」
( ´_ゝ`)「むしろ見知った兄が帰ってきたと感じられていいだろう?」
(´<_` )「......はぁ。そういうことにしておこう。それで、そうだな。国か......何から説明すべきか」
そうポツリとこぼし、顎に手を当て少しオトジャは考える。
軽く説明するにしても今回の出来事は何から何まで大きすぎるのだ。
自分自身もまだ、混乱している部分もあるためどう言葉にすべきか分からないという部分もあった。
そんな理由でほんの少しだけ思考に耽っていたのだが、さていざ話そうかと顔を挙げると多くの者がこちらに視線を向けていることに気がつく。
そう、周りの者達も今この国に帰還したものやただの一般市民であり詳しく現状を知れていないものなどがこの場に集まっていたのだ。
それゆえ皆が気になることをこれから話すというのだからその興味が集まるのも仕方のないことだろう。
(´<_` ;)「......マジか」
爪;'ー`)「す、すみません。自分らも気になるもんで.....いい、ですか?.」
( ´_ゝ`)「ふむ......まぁ、いいじゃないか」
(´<_` ;)「そりゃ聞く方は気楽だからいいだろうが......はぁ、まあいいか。言っておくが俺も、全て把握している訳ではないし、伝聞がほとんどだから正確かは知らんぞ」
( ´_ゝ`)「構わんよ。何も知らんよりは、マシだろう」
981
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:52:49 ID:RitR9poI0
(´<_` )「分かった。では、まずそうだな。国の現状についてだが......北と南に分かれたことは?」
( ´_ゝ`)「流石に聞いているよ。まぁ、耳を疑ったがな」
(´<_` )「だろうな」
アニジャの言葉にオトジャも、そして周りで聞いていた者達も同意を示す。
アニジャを初めとして、捕虜となっていた者達は敗戦することはまず間違いないだろうと理解していた。
それゆえに国が他国から支配され、ルナイファという存在が消えてしまうことも覚悟をしていた。
それがどうなればルナイファが消えるどころか二つに分裂するというのか。
(´<_` )「未だに俺も、どうしてこうなったかが理解できてないよ」
( ´_ゝ`)「まぁ、理解できるとすればあの阿呆と同じ考えということになる。理解できん方がいいだろう」
(´<_` )「そうだな......それでだが国が分かれる際に多くの属国や併合していた国家が独立したことは?」
( ´_ゝ`)「聞いてはいなかったが、まぁ予想通りだ。今のこの国に、そして北の奴らにも支配を続ける力など残っとらんだろ」
(´<_` )「あぁ。面倒も見きれんということでこちらから独立を促していた部分もあるそうだ」
( ´_ゝ`)「あるそう、とは?」
(´<_` )「陛下......いや、元陛下よりそう聞いている」
( ´_ゝ`)「成る程な」
(゚、゚トソン「元、陛下......ですか」
982
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:54:08 ID:RitR9poI0
ポツリとトソンが漏らすその呟きに皆が一瞬、顔を曇らせる。
この国の力の象徴とも言える王であり、世界を征する力を持っていたといっても過言ではなかったはずの存在。
それが今では元という肩書きとなり、その力は全て失っている。
爪;'ー`)「あの、陛下はその、元首ではある、んですよね?自分は、よく分からないのですが......」
(´<_` )「ん?あぁ。そのようだ......一応な」
( ´_ゝ`)「......そうか」
その言葉に多くの者がホッと胸を撫で下ろす。
国として多くのものを失ってしまったが、形だけは何とか保つことが出来ているのだ。
力が無くなったとはいえ、自分達が信じ、崇めていた王はまだ、国のトップに立ち、導いてくれる。
その事実にどこか救われたような、ほんのわずかではあるものの心に希望が宿っていた。
皆がそうして小さな希望に顔を明るくする中、アニジャの顔は険しいものであった。
オトジャの『一応』という言葉に込められた意味に考えが至ったのだ。
それは元首という肩書きは本当に形だけのものであり、権力などはなく実質的な支配は他にあるだろうということ。
すなわち傀儡であり、陛下であるアラマキはこの国の民にその支配者達からの言葉を伝えるための道具となったのであろうと、考えたのだ。
983
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:54:44 ID:RitR9poI0
( ´_ゝ`)「まぁ、聞いた話から粗方予想はしていたが......混乱はないか?」
(´<_` )「あぁ。少なくとも民については反乱を起こそうという気運もない。むしろ皆、あれほどの敗戦とあって戦いに消極的だ。上手く、国はまとまってるよ」
( ´_ゝ`)「そうか。随分上手いこと、やるもんだな」
そうアニジャは呟き、周りを見る。
今の短い兄弟の会話を理解しているものは他にはいないようであり、皆国が独立を保てたこと、そして再び陛下の元で国を建て直すことを夢見ている。
誰も国が実質的に支配されていることに気付いておらず、アニジャの言葉の通り、恐ろしく上手く国が支配されたことをこの場にいる者達が示していた。
そんな様子にアニジャはルナイファの終焉を感じ、若干の寂しさを覚えていた。
だがもうどうすることも出来ないであろうことも分かっていた。
そうして改めて国が負けるとはこう言うことなのかとため息をつく。
( ´_ゝ`)「......本当に上手く、やられたな」
(´<_` )「何でも人間達のいた世界に、似たようなモデルケースがあったらしい」
( ´_ゝ`)「はぁ、成る程な。まあ下手なことをされて、滅ぼされるよりはマシと考えるべきか」
(´<_` )「あぁ、そう思うよ」
( ´_ゝ`)「それで?後は何か変わったことは?」
(´<_` )「そうだな......戦争の発端となった人間の外交官を処刑したこと等の責任については、捕らえられていたムー現地の統治局職員が戦争犯罪者として裁かれることになったようだ」
( ´_ゝ`)「戦争初期に捕らえられていた者達に罪を被せた、というわけか。それで陛下の罪を軽くして、元首としての立場を保たせる、か。本当にうまいことやるな」
(´<_` )「あぁ。後は何があったか......」
984
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:55:12 ID:RitR9poI0
(゚、゚トソン「あの、それでしたら......聞きたいことがあるのですが」
(´<_` )「む?なんだろうか?」
(゚、゚トソン「その、人間達の最後に放ったという攻撃について、です」
(´<_` )「......あぁ」
皆が気になることなのだろう。
一層オトジャに視線が集まる。
アニジャもまた、真剣さを増して聞く姿勢を取っていた。
(´<_` )「断っておくが俺も直接見たわけじゃない......そもそも詳しく調べようにも現地の調査は出来んからな」
( ´_ゝ`)「む?直接見るのは無理なのは分かるが......調査が出来ないとはどういうことだ?」
(´<_` )「その言葉の通りだ。今、攻撃の跡地に近づくことは出来ない。近づけば......死ぬことになる」
(; ´_ゝ`)「......何?」
(゚、゚;トソン「一体、どういう......」
オトジャのその言葉に皆がざわついた。
とてつもない攻撃があったことは知っていた。
だが攻撃が終わったはずの今ですら近づくことが出来ず、近づけば死ぬというのは一体どういうことなのか。
言葉は理解できるが意味が全く分からない。
985
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:55:44 ID:RitR9poI0
(´<_` )「これは、人間達から聞いた話だ。あの攻撃......『かく』による攻撃は辺り一帯を汚染するそうだ」
( ´_ゝ`)「......汚染?」
(´<_` )「あぁ。すぐに効果は出なくても長くその場にいると臓器がやられるそうだ」
爪;'ー`)「......それって、もしかして最近流行ってるっていう、流行り病、ですか?」
(´<_` )「恐らくはそうだろう」
(; ´_ゝ`)「なんと......」
副次的な効果ではあるだろうが、その恐ろしさにアニジャは身を震わせる。
攻撃が終わったあとも影響が残り続け、多くの者の命を脅かす。
そこに命の優劣などはなく、ただひたすら存在するものを無差別に殺していくという事実はなんと恐ろしいことか。
戦いが終わったはずのこの国は、まだ戦争の悪夢から抜け出せず、それどころかこれからも殺されていく者がいるというのだから。
(´<_` )「まぁこれでもまだ、良くなった方らしい。攻撃直後に近づいたものは......即死したらしいからな」
(; ´_ゝ`)「......」
(゚、゚;トソン「......」
986
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:56:20 ID:RitR9poI0
(´<_` )「とはいえ、今も汚染されていることには代わりないし、無法地帯になりつつある。誘拐やら強盗やらもあるから近づかん方がいいだろうってことだ。さて、ここまでが今現在の影響の話なわけで、本題はこれからだ」
(; ´_ゝ`)「......攻撃自体の威力、か。その影響は?」
(´<_` )「要塞が消滅した。一撃でな」
(; ´_ゝ`)「......」
(´<_` )「周囲もその余波で焼き尽くされ、そこにいた者達は勿論即死......近くで生き残ったものも、汚染により死んだ」
(゚、゚;トソン「......」
(´<_` )「現時点で分かってるだけでも......10万は軽く超える数が死亡している。まだ増えるだろうし......倍以上になるかもしれん」
言葉が出なかった。
あまりに、被害が桁違いすぎた。
そこにいた全てが焼き尽くされたといってもおかしくない被害。
そんな被害をもたらすものは、神が作り出す災害ですらないのではないかー
自分達が相対してきた者達の底知れない恐ろしさ、ようやく理解できてきたと思っていた敵の力が、まだ全く理解しきれていなかったのだと嫌でも痛感させられる。
(; ´_ゝ`)「とんでもない......被害だな」
(´<_` )「あぁ。特に無理な徴兵のせいで働き盛りな者達が文字通り消し飛んでしまったからな......これからどうなることやら」
( ´_ゝ`)「そうだな......」
ただでさえ国がボロボロだというのにその国を支える者も少ないという事実。
これから先の将来に暗いものを残すことは確実であった。
987
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:57:08 ID:RitR9poI0
(´<_` )「それに......まあこれは『かく』による問題だけではないが、孤児が大量に発生してしまったというのも問題になっている。それを狙った誘拐者も多くてな」
( ´_ゝ`)「孤児......」
その言葉に思わず、近くにいた子供、ショボンに視線が向いてしまう。
急に集まる視線に驚いたのか、ショボンはフォックスの背後に隠れる。
爪;'ー`)「っと、大丈夫か?」
(;´・ω・`)「え、あ、はい......」
( ´_ゝ`)「あぁ、すまない。急で驚かせてしまったな......君が保護を?」
爪'ー`)「あぁ、はい。そうですね。戦時中も自分が子供の避難誘導をしてまして......親が見つからない子達はそのまま、という感じです」
(゚、゚トソン「へぇ」
爪;'ー`)「な、なんだよ」
(゚、゚トソン「いや、立派だと思ってね。やるじゃない」
爪'ー`)「え、あ、お、おう」
(゚、゚トソン「でも、あんた一人でちゃんと子供の世話なんて出来るの?まぁ、あれね。もしあれなら私がてつ」
爪'ー`)「あぁ、それなら......あ、丁度戻ってきた。おーい」
(゚、゚トソン「え?」
トソンがなにかを言おうとしていたが、それを遮るようにフォックスは遠くに向かって手を振る。
その様子に気がついたのか、手を振られた相手らしき者が何人かの子供を引き連れて近づいてきていた。
爪'ー`)「紹介します。えっと、彼女は自分と一緒に子供達の世話をしているペニサスさんです。教師とのことで凄くお世話になっていまして」
('、`*川「ど、どうも、初めまして。ペニサスと申します。教師といっても大したものではありませんが......」
988
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:58:56 ID:RitR9poI0
(゚、゚トソン「......」
爪'ー`)「彼女も子供と共に戦地にいたらしく、その流れで互いに協力して子供達の面倒を見ている感じで」
(゚、゚トソン「ふんっ!」
爪;'ー`)「おぐぅ!?な、何で殴る!?」
(゚、゚トソン「ちょっとムカついたので」
爪;'ー`)「......なんで?」
殴られた脇腹を押さえつつ、何がなんだか分からないという顔を浮かべるフォックスに対して、皆が呆れたような顔を浮かべる。
とはいえそこに何か口を挟むような野暮な事をするものはいなかった。
コホン、とアニジャが咳払いをしどうにか話を戻す。
( ´_ゝ`)「えっと、それでフォックス殿とペニサス殿が子供を世話しているとのことだが......先ほどまでペニサス殿は何かされてたのか?」
('、`*川「あ、は、はい。実は、その、えっと......軍人さん達には、言いづらいことなのですが」
( ´_ゝ`)「......なんだろうか?」
('、`*川「その......もう二度と、戦争をしないようにって、子供達と平和運動に取り組んでいるんです」
ξ゚⊿゚)ξ「......」
( ´_ゝ`)「っ」
その言葉に、そして向けられる子供の真剣な眼差しにアニジャは思わず息を呑む。
軍人であるアニジャ達にとってその言葉は何とも耳が痛いものであった。
確かに多くの者が傷つき、多くの物を失った原因は戦争であり、それゆえ平和を望むことは無理もないだろう。
989
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 20:59:45 ID:RitR9poI0
だがほんの少し前まで、この国を支えてきたものは何かと聞かれれば確実に軍であり、軍人達が国を支えてきたのだ。
それが今はどうか。
平和を望む彼女達にとって自分達は邪魔とまでは言わないものの、いい印象もないはずである。
さらに今回の戦争の大きな原因は軍上層部の暴走であるとアラマキが放送していたことも大きい。
プギャーに罪を被せるためであったとはいえ、その言葉に民は軍に対して強い怒りを抱くことになったのだ。
そうなればこの戦争で平和の有り難さを噛み締めた民がどうなるか。
そもそもやり場のないこの怒りの矛先を何処に向ければいいと言うのか。
その答がアニジャ達の目の前に広がる光景であった。
( ´_ゝ`)(......とはいえ現状、軍を全て無くすことなど出来ない。周りに敵が多すぎる。そんな国の支えが憎悪の対象となる、か)
(´<_` ;)「アニジャ......」
( ´_ゝ`)「仕方のないことだろう。これまで我々がしてきたことの罪滅ぼしだとして、受け入れるしかあるまい」
(´<_` ;)「......」
( ´_ゝ`)「......そして、謝罪すべきだろうな。君達に辛い思いをさせてすまなかった」
そうしてアニジャは子供達に向かって頭を下げる。
謝罪されると思っていなかったのであろう、子供は勿論、大人達もまた困惑したような反応が返ってきていた。
('、`*;川「そ、そんなっ!頭を上げてください。あなたが悪いわけでは......」
ξ゚⊿゚)ξ「なら、約束して」
( ´_ゝ`)「うん?」
だがそんな慌てた反応の中、子供であるはずのツンのみ、冷静にアニジャに声をかける。
睨み付けているわけではないが、力強い、揺るぎない視線がアニジャに向いていた。
その視線に気がつき、アニジャも子供を相手にするような態度から一変する。
990
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 21:00:21 ID:RitR9poI0
( ´_ゝ`)「......なんだろうか」
ξ゚⊿゚)ξ「平和を......戦争のない国を、世界を作るって。もう二度と、あんな......皆が苦しむような世界を作らないって。私の、大切な友達が死なない世界を作るって、約束してっ!!」
( ´_ゝ`)「......っ」
なんと純真で無垢な願いだろうか。
その願いは皆が望むものであるのは、間違いないだろう。
それでもこの世界から戦いが無くならないのだ。
様々な信念や宗教、国の在り方、そしてこれからはエルフと人間という種族という壁がある。
そもそも生きるもの一人一人の知能が異なるため、考え方も世界の見え方も異なるのだ。
全てを受け入れあい、理解しあい、そして手を取り合えることがどれだけ難しいかはこれまでの歴史が物語っている。
991
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 21:01:29 ID:RitR9poI0
ー不可能。
そう、言い換えても言いかもしれない。
だがそうして平和を諦めることは、果たして正しいと言えるのだろうか。
この真剣な眼差しを否定することが、どうして正しいと言えるのだろうか。
( ´_ゝ`)「......約束しよう」
ξ゚⊿゚)ξ「っ」
( ´_ゝ`)「共に、皆で作ろう。平和な国を、争いの......戦争のない国を」
(´<_` )「アニジャ......」
( ´_ゝ`)「俺達の時代は、この戦いで終わったんだ。次の国を作るのは我々ではなく、彼女達......子供達だ。その彼女達が望むならば、俺達も尽力するのが勤めだろう?」
(´<_` )「......あぁ、そうだな」
その道は決して楽なものではない。
むしろ険しく、そして終わりの果てが見えない道である。
だがそれでも彼らはその道を選ぶ。
言葉の通り、子供の理想の国家を作るために。
こうして、かつて武力により力を得たルナイファはその力を捨てた。
そして彼等は平和を求めて、歩き出したのだった。
992
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 21:02:28 ID:RitR9poI0
続く
区切りがいいので次の最終話は次スレ建ててそこに投下します
993
:
名無しさん
:2023/12/23(土) 23:53:48 ID:8zdsyTbs0
乙!
プギャーさんは当然として、
戦争の前後で何も変わっていないクーに対しても、考え直してみて欲しいと思ってしまうな
994
:
名無しさん
:2023/12/24(日) 14:52:54 ID:dJsSyoeI0
乙乙
最終回寂しいけど楽しみ
995
:
名無しさん
:2023/12/25(月) 00:24:01 ID:wfM92j4M0
素晴らしい
過去の国ごと転移作品はここまでが序章であり、そしてゴールを決めていないせいで数多の名作がエターナの闇に散った
円満完結となるとジャンル中見渡しても片手の指で足りてしまうのでは?
996
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 03:50:56 ID:Y9E2DG9o0
ワクテカ
997
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:04:58 ID:APqrRrVI0
次スレ
異界大戦記のようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1703901879/
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