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異界大戦記のようです
1
:
名無しさん
:2023/04/01(土) 23:39:57 ID:mfVt/ZZU0
世界の縮図が変わろうとしていた。
魔法を操り、自らを神の僕と信じるエルフ達が支配するこの星。
その中の3大大陸に存在する5つの列強と呼ばれる国が衝突する寸前にまでなっていた。
きっかけは列強最強の国家と名高いルナイファ帝国と、同じく列強のニータ王国との国境で起こった小さな事件であった。
それぞれがその犯行の責任は相手側にあると主張しあっていた。
互いに堂々と国として主張をしていたがその内情は全く異なるものであった。
ルナイファに関しては元から周辺国家を攻め落とし、支配する典型的な侵略国家であった。
列強クラスの国との戦いはなかったものの、同大陸に存在し隣接する小国はほぼすべて支配していると行っても過言ではない。
そして大陸統一のためにも同じ大陸で国境を接しているニータはいつかは落としたいと考えていたことから、この機会に攻め込むのが良いと言う意見で国が固まりつつあった。
613
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:36:52 ID:TsDhJ0GQ0
(# ・∀・)「見つけたぞ!異端者だっ!!」
そうして始まったのは、異端審問。
少しでも疑わしいものがいれば、どれだけ親しい仲であっても、戦争で苦楽を共にした相手でも迷わず捕らえる。
国民皆がお互いに疑い合い、捕まえ合い、そして―
(# ・∀・)「吊るせっ!吊るせっ!こいつらのせいで、国が、神が冒涜されたんだっ!!」
命を、奪い合っていた。
もはや国は暴走状態に、いや国として呼べるか分からないほどの無法地帯となり、荒れていた。
だがそんな状態でも皆の心は不思議とひとつであった。
それは、神への忠誠心。
誰もが神のため、正しい事をしていると信じて疑わない。
だからこそ誰も止まるはずもなく、いるかも分からない悪魔を探すため、異端審問は続いていく。
614
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:38:13 ID:TsDhJ0GQ0
戦勝国であるヴィップも、ここまで荒れ狂った国の面倒を見きれるはずもない。
またアリベシが大国であったために物理的にも支配しきることが不可能であり、さらに得られるリターンが少なすぎるため、勝手に自滅し再び攻め込んでこなくなるならとそのまま放置する方針で固まりつつあった。
とはいえ、今後完全に国として崩壊したときに大陸の情勢を考えればなにかしらの対策はしなくてはと頭を抱えることになっているのだが、簡単に解決できることでなく、そして現時点でなにもできないことに変わりはない。
ゆえにもう彼らを止められるものはなにもなく、狂気はさらに増していく。
そして怒りは未だ収まる様子はなく、それどころか加速度的に増幅されているようにも感じられる。
狂った者達は、もう止まれないところまで来てしまっていた。
615
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:39:40 ID:TsDhJ0GQ0
『......なぁ、あの噂、知ってるか?』
( ・∀・)「......うん?」
『法書についての噂なんだがな』
( ・∀・)「なんだそれ?」
そんなところに、見知らぬ者たちからのとある噂が飛び込んでくる。
情報源すら怪しい情報。
しかしそれすら、もう誰も疑うことなく、理性ではなく感情で突き進んでいく。
狂気は、さらに加速する。
616
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:40:14 ID:TsDhJ0GQ0
ルナイファ帝国 デミタス宅
この日、デミタスは自宅で仕事をしていた。
陛下から任された任を果たすべく、もう何日も部屋に引きこもり、仕事を続けている。
誰にも邪魔はされたくないと、わざわざ一人になれる自宅に籠って作業を進めていた。
そんな彼が今やっているのは多大な被害を受けた海軍の情報を改めて整理し、今後どのように動くべきかを再検討するため、見たことないほどに積み上がった書類に目を通し、熟考することであった。
それらを読めば読むほどいかに無謀な戦いをしてきたかを再認識させられる。
一体どれだけの金と時間をつぎ込めば元の状態に戻せるのか分からなくなるほどの酷い有り様であった。
617
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:41:24 ID:TsDhJ0GQ0
(;´・_ゝ・`)「......うーむ」
そうして問題になるのは、今後海軍を復興である。
広大すぎる自国を守るには、大量の艦が必要不可欠。
だがそんなものを急に用意できるはずもない。
さらにはそんな資金も無から沸いてくるはずもない。
むしろ降伏のために多額の賠償として資源やらを渡すことになるであろうことから再建への道は厳しいと言わざるを得ない。
また相手側がこちらを危険と考え、軍事力に規制を掛けてくることも十分に考えられる。
流石に国として崩壊することになればルナイファが存在するこの大陸どころか世界全てが混乱することとなり、賠償どころではなくなる。
そのため、混乱を防ぐためにも自国を最低限統治できるだけの力は持たせてはくれるだろう。
しかしその程度の戦力だけでも準備するのには時間はかかるし、なによりこれまでの政策上、周囲に敵国が多すぎるため最低限の戦力では不安は潰えない。
618
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:43:12 ID:TsDhJ0GQ0
(´・_ゝ・`)「やはり......土地を渡して奴らの軍を、我が国に入れるしかないか」
他国の軍を、自国に入れる。
それはもはや土地を明け渡し、居座るのを容認することに等しい。
下手をすれば永久にその土地を他国に明け渡すことになり、かつこの大陸への足掛かりとなるため、常に首元に武器を突き付けられるようなものである。
基地を作ることになれば恐らく治外法権や軍事費の負担などを認めることになることも予測され、自国にとって相当苦しいものとなることは間違いない。
だがその代わりに、あれほどの力を持つ戦力がこの国にあると示すことができるため、むやみやたらに攻め込まれることもないであろう。
苦渋の選択とはいえ、ただでさえ混乱が予測される戦後、自国の外のことなど考える余裕がないであろうことから他に選択肢等ないのだ。
619
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:44:29 ID:TsDhJ0GQ0
(´・_ゝ・`)「......」
もう何度目か分からないため息をつきつつ、再度資料に視線を戻す。
考えても考えても、明るい未来など見えることがない。
だが、目を閉じてもその未来が変わることない。
ならば目を反らすわけにはいかないのだと、資料を黙々と読み進めていく。
(´・_ゝ・`)「......うん?」
そうしてかなりの時間が経った頃、ある資料でピタリと手が止まる。
それは最近の艦隊の動きに関する報告であった。
(´・_ゝ・`)「召喚艦が、なぜ東方に集められている?」
そんな指示を出した覚えはない。
勿論、現場の兵が勝手に動かすにしても規模が大きすぎるため、その可能性もないだろう。
620
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:45:29 ID:TsDhJ0GQ0
そうなれば可能性は一つ。
艦隊を動かせるほどの力を持つものが、自分の知らないところで動いている。
(´・_ゝ・`)(......プギャーか?)
そしてその条件に合うもので心当たりと言えばプギャー、ただ一人である。
軍のトップでかつ多くのコネを持つプギャーであれば、不可能ではない。
だがそうなると、問題が一つ浮かんでくる。
―なぜ、隠してまでこんな行動をしている?
明らかに何かを狙った行動。
目的がないということは、まずあり得ない。
では一体なぜ、召喚艦などを使うのか。
プギャーとて、ワイバーンをいくら召喚したところで人間達に勝てないことくらいは分かっているはずである。
これまでの戦いで一切、役に立っていないのだ。
今更、どんな価値を見出だしたというのか。
621
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:46:14 ID:TsDhJ0GQ0
(´・_ゝ・`)(......む?)
そうしてしばらく考えていると、ふとなにかが引っ掛かる。
召喚。
その言葉に、記憶の中でなにかが警告をならしていた。
それは、一体何故なのか。
(´・_ゝ・`)(......)
考える。
深く、深く。
記憶の奥底を探る。
そうして何度も、何度も繰り返し召喚に関わる物事の全てを思い出そうとしていた。
(;´・_ゝ・`)「......あっ!?」
そうして、ひとつだけ。
可能性が頭によぎる。
召喚を用いた、ある魔法。
ロマネスクから教えられた、新魔法ー
622
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:48:29 ID:TsDhJ0GQ0
その考えが頭に浮かんだ瞬間、デミタスの額に一瞬で汗が吹き出す。
あり得ない、あり得てはいけないとその考えを否定しようとしても、あのプギャーならばやりかねないのではという考えに、否定しきることができない。
(;´・_ゝ・`)「すぐにでも、止めなければ―」
ガタッ―
(;´・_ゝ・`)「......え?」
椅子から立ち上がった、その瞬間であった。
部屋に物が動く音が、二つ響く。
一つは勿論、椅子の音。
勢いよく立ち上がったのだから、当然であろう。
623
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:49:51 ID:TsDhJ0GQ0
では、もう一つは何か。
その音は、デミタスの背後からであった。
だがそれは椅子の動く音ではない。
しかし他に動くものなど、あるはずがない。
今、この家にはデミタス一人だけであり、他にものが動くことなど、あり得るはずがないのだ。
では一体、何が―
そんな疑問を頭に浮かべ、振り返る。
(;´・_ゝ・`)「なー」
刹那、黒いローブを着た何者かが眼前まで迫ってきていた。
何者なのか、そして一体何事なのか。
そんな疑問を口にする暇もなく。
首元に冷たい何かが触れた、そう感じたのを最後に。
部屋は、朱に染まっていた。
624
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 12:51:16 ID:TsDhJ0GQ0
続く
625
:
名無しさん
:2023/09/09(土) 20:26:45 ID:buw2gsg20
プギャー!なんてことを!
626
:
名無しさん
:2023/09/10(日) 08:16:58 ID:ySnZZUEI0
おつ
プギャーさん思ったよりもとんでもないこと仕出かしそうだな…
協議すらせず仲間暗殺する(推定)とかイカれてんな
627
:
名無しさん
:2023/09/11(月) 16:21:16 ID:2UYCnCiw0
乙です
628
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:19:57 ID:FLHtAlFk0
アリベシ法書国 国立図書館
1463年3月29日
狂気にのまれた者たちがこの国の中心ともいえる場所に足を踏み入れようとしていた。
この国の未来を指し示す法書が眠るとされるここ、国立図書館には多くの者で溢れていた。
ここに集まった理由はただひとつ。
とある可能性が皆の頭によぎったからである。
法書の内容は読み手と呼ばれる者がおり、その読み手が法書の御告げを読み解き、それを皆に伝えられる。
そう、読み手以外誰も法書の正しい内容を直接知るものはいないのだ。
だからこそ、皆は考えたのだ。
今回のこの惨事の原因は、この読み手が神の御告げをねじ曲げたか、読み解き間違えたからなのではないかと。
629
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:20:50 ID:FLHtAlFk0
誰が最初に言い始めたかは定かではない。
根拠なんてまるでない、ただのふとした思い付きであったかもしれない。
だがいつしかそれは真実として広まり、このような事態を引き起こしたのだ。
それでも最初は、図書館の周囲に集まり言葉とは思えないような雑音を叫び、喚き散らすのみであった。
誰もがこの法書のある場所は神聖なものであり、無闇に荒らすことが憚られたからである。
しかし、それも時間の問題であった。
どうにか暴徒とかした者たちを帰らせようとしていた図書館の者が軽く押し返したのだ。
ほんの、軽くである。
だが不意をつかれたのか押されたものはそのまま後ろに倒れ込み、周囲の者に支えられる。
そしてそれを見ていた誰かがこういった。
―遂に手を出してきやがった!
630
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:22:11 ID:FLHtAlFk0
それをどう解釈したのか、聞いたもの達はやり返そうとばかりに前に出て暴力を振るい出す。
そしてそれを見たものも暴力を振るい出し、止めようとするために暴力を振るわれ、やり返すためにさらに暴力を振るう。
一度始まったら、もう止まらない。
暴力は伝播し、神聖であったその土地は血で汚されていく。
いつしか魔法すら使うものも出始め、その光景は戦場のようであった。
死人まで出るほどの騒ぎになり、最早終息は不可能になったと思われたその瞬間であった。
辺りに絶叫が響きわたる。
その声の主はいつの間にか図書館の中にまでなだれ込んでいた一人のエルフ。
これまでも数えきれないほどの悲鳴はあったため、特別有名でもないその存在の声を多くの者は気にしていなかった。
だが、それに続く言葉を耳にし愕然とすることとなる。
―法書が、書き換えられている!!
631
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:22:44 ID:FLHtAlFk0
ルナイファ帝国 テタレス南方平野
1463年3月30日
ルナイファ帝国第二の都市であるテタレスの南方には平坦な平野が広がっている。
遮るものがなにもなく、一面に広がる緑の光景はこの国の中でも有数の絶景と言えるスポットである。
だがそんな平野には今、多くの兵や兵器で埋め尽くされていた。
簡易的な拠点として立てられたテントの中ではこれから始まるであろう戦いに備え、話し合いが進められている。
だがその顔はまだ戦いの前だというのに皆一様に暗いものであった。
( ^ν^)「それで、どうすんだこれ」
(; ,,^Д^)「どうするもこうするも......全軍で突撃するしか手はないのでは?」
(# ^ν^)「そんなことしたって俺達が死ぬだけじゃねぇか!!」
632
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:23:51 ID:FLHtAlFk0
ダンッという、鈍い音がテントの中に響く。
机に叩きつけられた拳は赤く染まり、血が滲んでいた。
だがそんなことを気にする様子もなく、話を続けていく。
(# ^ν^)「くそっ......ここを死守しろってどうすればいいんだ!勝てねぇ相手に!!」
(; ,,^Д^)「お、落ち着いてください!周りに聞かれれば下手すれば反逆者になりますよ!?」
( ^ν^)「はっ、むしろ聞かせた方がいいんじゃないか?」
(; ,,^Д^)「は?」
( ^ν^)「今ここにいるやつがどんな状況か分かってるのか?元々テタレスにいたやつらは敵の強さに怯え、使い物にならない。使えるのと言ったら現状を全く理解できてない北方から援軍としてきたバカ共と、ろくに訓練もしてない無駄にやる気だけある一般のバカだ」
(; ,,^Д^)「......現実を理解していないものが多いことは承知しています。ですが、そんな言い方は」
( ^ν^)「おいおい、てめぇ本当に分かってるのか?自分の命が、そんな奴らにかかってるんだぞ?俺は御免だね」
(; ,,^Д^)「それは......」
633
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:24:25 ID:FLHtAlFk0
(`・ω・´)「そこまでにしておけ。今は、目の前の問題をどうするか、だ」
これまで黙っていた一人の男が口を開き、二人の会話を遮る。
その男の声に二人共、どこか険悪な雰囲気は残しつつも口を閉じる。
そんな二人の様子にため息をつきつつもその男、シャキンは話を続けた。
(`・ω・´)「敵は空からの攻撃が可能であり、その威力は基地を壊滅させるほど。さらに空から兵を送り込むことも可能だという」
( ,,^Д^)「......凄まじい攻撃能力と機動力を持つ、というわけですか」
(`・ω・´)「そうだ。そして我々は根本的にそれを封じる策は持っていない」
( ^ν^)「とは言っても結局地上を侵略するなら陸上戦力は欠かせない。ってなると空は捨て、それらを狙うしかないでしょ」
(# ,,^Д^)「おいニュッ!お前上官にそんな口調でっ!」
(`・ω・´)「いい。時間もない、いちいちこんなことで仲間を失うわけにもいかん......それにこんなやつだと言うことは元から分かっていたことだろう」
( ^ν^)「......」
(# ,,^Д^)「......っち!」
634
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:25:23 ID:FLHtAlFk0
(;`・ω・´)「ふぅ......続けるぞ?作戦についてはニュッの言う通り、陸上戦力を狙い、敵の侵攻を防ぐ、いや敵の足を止めさせることだ」
そう言いつつ、シャキンは机の上に地図を広げる。
そのうちの一ヶ所を指差し、なぞりつつ言葉を続ける。
(`・ω・´)「皆もわかっていると思うが、ここの平野はテタレスに通じ、またそのまま北上すればいずれ帝都に辿り着く」
( ,,^Д^)「簡単に敵に渡すわけにはいかない、と言うわけですね」
(`・ω・´)「そうだ。少なくとも現在進められている北方戦力から帝都南方の要塞周辺への戦力移動が済むまでは時間を稼ぐ必要がある」
( ^ν^)「......時間稼ぎ、ねぇ」
(`・ω・´)「なんだ?」
( ^ν^)「いや、確かに時間さえあれば数は集まるかもしれないけどさ、それで勝てんの?って話よね」
(`・ω・´)「......」
(# ,,^Д^)「おいっ、だからいい加減にっ!」
(`・ω・´)「......勝てんだろうな」
(; ,,^Д^)「っ!?」
635
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:26:04 ID:FLHtAlFk0
怒りの言葉を放とうとしたところに、信じられない言葉が聞こえ、思わず言葉に詰まる。
思わず、といった雰囲気でその言葉の主を見つめ、固まってしまう。
タカラには一体どう言うことなのか、瞬時に理解できなかったのだ。
( ^ν^)「......なら本音で話そうぜ。ここには俺らしかいねぇんだ。時間稼ぎしたいのは分かった。だが勝てないのにやる意味はねぇ。だとすれば何のためだ?」
(`・ω・´)「......ふむ、そうだな。分かった。話そう。勿論、ここだけの話にしてくれ」
(; ,,^Д^)「シャキン様?」
(`・ω・´)「現在、陛下やロマネスク様が降伏に向けて動いている」
(; ,,^Д^)「なっ!!?ど、どう......むぐぅ!?」
( ^ν^)「声がでけぇ。ここだけの話って聞こえなかったのか?」
(; ,,^Д^)「む、ぐぅ......」
636
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:27:47 ID:FLHtAlFk0
タカラの口を押さえ、ジロリと睨み付ける。
そしてタカラがその言葉に大人しくなった事を確認するとニュッは手を放し、シャキンに向き直る。
( ^ν^)「なるほどね。相手さんと話が出来るまでの時間稼ぎ、ってわけか。帝都が落ちたら話し合いも糞もないもんな」
(`・ω・´)「そういうことだ」
( ^ν^)「なるほど、納得した。それならまぁ、仕方ねぇか」
(; ,,^Д^)「......」
( ^ν^)「なんだ?お前は納得してないのか?」
(; ,,^Д^)「納得は......分かりません。ですが、やるしかないのでしょう?」
(`・ω・´)「そうだ。ここを死守せよ、という命令もあるわけだしな」
( ,,^Д^)「命令......了解、いたしました」
637
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:29:46 ID:ePN3KLfM0
(`・ω・´)「うむ。では二人には奇襲部隊として動いて貰うことになる」
( ,,^Д^)「奇襲、ですか?ここには隠れる場所もなければ、隠蔽魔法を使うための陣の用意も出来ていませんが......」
(`・ω・´)「そうではない。攻撃は地中からだ。君達はこの地点で.....」
そうして作戦に向けた準備が進められていく。
気づけばもう夜遅く、辺りが闇で支配されていた。
そろそろ休もうかと、三人が考え出したその時、静寂を切り裂くように声が響きわたった。
『っ!ほ、報告!!』
(`・ω・´)「む?」
『斥候部隊より魔信あり!敵が、遂に行動を開始しました!!』
(`・ω・´)「......来たか」
それは、戦いがすぐそこまで迫ってきていることを意味していた。
638
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:30:28 ID:ePN3KLfM0
ルナイファ帝国 軍務省
( ^Д^)「そうか!上手くいったか!」
その日、プギャーは部下からの報告を受け上機嫌であった。
かねてより考えていた計画。
憎き召喚された人間達を滅ぼすためのものであったが、これを実行するためにはどうしても障害があったのだ。
それは軍を動かす都合上、降伏派であるデミタスがそれを察知し、妨害することであった。
そのためこの障害を取り除くことが何よりも最優先されていたのである。
そんなときに都合よく、デミタスは自宅へ引きこもり仕事をしているという。
これならば存在を消してもすぐには気付かれず、計画を実行するまでに問題は起こらないだろうと、暗殺を命じていたのだ。
639
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:31:23 ID:ePN3KLfM0
( ^Д^)「これでもう、邪魔者はいなくなった。後は、実行するのみか」
そう呟くと、プギャーは魔信を握りしめ、会話を始める。
その相手は、この国の東方にある軍港であった。
( ^Д^)「マタンキか。そちらの準備はどうだ?」
『プギャー様!はっ、こちらの整備は完了しいつでも行動できます!』
( ^Д^)「そうかっ!ふふふ......ではすぐにでも出港せよ。いいな?」
『はっ!畏まりました!......それで、あの、約束の件は......』
( ^Д^)「分かっているとも。戦う必要はないが危険な任務だ。君には特別な報奨を与えることを約束しよう」
『あっ、ありがたき幸せ!!』
( ^Д^)「よし。では確実に成功させよ。その艦の魔法を発動させるだけで良いからな」
『それは......分かりましたが、この魔法は一体?見たことのない魔法陣で......新魔法というのは、派遣されてきた魔術師から聞いているのですが』
( ^Д^)「......それを知る必要はない。いいな?貴様の任務はただ一つ、確実にその魔法を発動させよ。以上だ」
その言葉を最後に、一方的に通信を終了する。
魔信の向こうから何かを言いたげな雰囲気はあったもののそれを無視し、プギャーは一人、ほくそ笑む。
640
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:31:51 ID:ePN3KLfM0
( ^Д^)(よし、よし!全てが順調だ。これで、あの調子に乗った人間共を滅ぼせる!我々、エルフの勝利だ!!ルナイファは未来永劫、奴らを滅ぼした偉大な国として讃えられることになるだろう!!)
全て、自分の思い通りに進んでいることにこれまでの鬱憤全てが晴れたかのような清々しい気分であった。
敗北に敗北を重ね、信じた国からは裏切られたのだ。
だがそれも遂に報われるときが来た。
それも、自分の手で引き寄せたと思えばなんと誇らしいことか。
この国難、否世界の危機を、自らの手で救い出したという達成感。
まだ成し遂げたとは言えないものの、それでも確かな手応えに彼はもう全てを成功させたかのように笑っていた。
そうして祝杯でも挙げようかと、秘蔵の酒を棚から取り出そうと棚を漁ろうとしていると、何やら慌てたような足音が聞こえ出す。
その音に思わずプギャーは顔をしかめた。
641
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:32:20 ID:ePN3KLfM0
この戦争が始まってからこの足音が聞こえてから報告されることに、良いことなど一つもなかったからである。
どうかこちらに来るなと念ずるものの、その願いは儚く散り、すぐさま部屋の扉が大きな音と共に開け放たれた。
(;*゚ー゚)「プギャー様!一大事です!!」
(# ^Д^)「......なんだ!?全くっ」
先ほどまでの気分が嘘のように、苛立った声でプギャーは返事をする。
だが部屋に飛び込んできたシィはそれに気付いていないのか、もしくはもうとっくに慣れてしまったのか、気にする様子はない。
(;*゚ー゚)「南方の前線から、報告がはいりました!」
(# ^Д^)「前線から?......なるほど」
その言葉で、プギャーも理解する。
遂に敵が動き出したのだと。
642
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:32:57 ID:ePN3KLfM0
これまで人間側は侵攻の準備と合わせて再度の降伏勧告を行っていたからか少しの間、大規模な侵攻はなく、あっても偵察や小規模の衝突程度の動きであった。
そのためこのまま回答を引き延ばし、こちらの作戦が終わるまで静かにしていることが最も望ましい状況であったが、どうやらそこまで上手く事は運ばないようだと小さく舌打ちする。
(# ^Д^)「遂にやつらが動き出した、というわけだな?」
(;*゚ー゚)「は、はい。最前線は既に敵の攻勢を前に壊滅状態とのことで......部隊は後退し、どうにか立て直しを図っているとのこと」
(# ^Д^)「なっ!?ぐ、むぅ......」
だが事が上手く運ばないどころではないということが伝えられ、流石にプギャーも動揺する。
いくら計画があろうとも、国が持ちこたえられなければその時点で全てが無に帰すのだ。
どうにか、少しでも時間を稼がなければ本当にこの国は終わってしまう。
643
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:34:20 ID:ePN3KLfM0
(# ^Д^)「まだ部隊はあるのだろう?わざわざ北方から戦力を引き抜いて集めたのだ!まさか戦えないとは言わないだろう!?」
(;*゚ー゚)「は、はい!それは勿論です!まだ被害も最前線のみであり、部隊としては十分控えています......しかし、それだけではないのです!」
( ^Д^)「......なんだ?」
まるでこれからが本番と言わんばかりに声を張り上げるシィに、プギャーも思わず冷静になる。
だがただでさえひどい報告だというのに、これ以上あるわけないというのが本音なのだが、シィの口から出た報告は、簡単にこれまでの報告を上回る衝撃をプギャーに与える。
(;*゚ー゚)「ニータ及びニータ周辺国家が我が国に対し、宣戦布告......北方への侵攻を、開始しました!」
( ^Д^)「は?」
(;*゚ー゚)「戦力を南部へ移した影響で戦況は既に絶望的とのこと!」
(; ^Д^)「......なんだとぉお!!?」
プギャーに、ルナイファに、そして世界に。
衝撃が走る。
644
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 08:34:54 ID:ePN3KLfM0
続く
お祭り頑張る
645
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 09:55:58 ID:g11EFGPQ0
乙乙
ルイナファ苦境が続くな
祭りに参加するのか!楽しみ!!
646
:
名無しさん
:2023/09/16(土) 12:47:06 ID:9RCIgxkc0
乙です
647
:
名無しさん
:2023/09/18(月) 15:29:08 ID:86WHYXWg0
おつ!
これもうプギャーの首一つじゃ足りんだろ…
こうなったら人間ももうルナイファとは講和しないのかな
648
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:13:47 ID:5kmg6OdI0
ニータ王国 王城
1463年4月1日
ニータ王国、及びその周辺国による宣戦布告。
世界は未だに動揺を隠しきれていない。
それもそのはずである。
この世界の列強と言われる国が、人間達と手を組んだのだ。
これまで人間の独立国家など、この世界になかった。
人間の国と言えばムーのように全てが属国であり、エルフの奴隷であった。
世界の常識ともいえるこの当たり前を、覆したのだ。
それもこの世界で影響力の大きい列強と呼ばれる国が、である。
ニータも各国に独立国家と認めるように働きかけも開始しており、列強が独立国家と認めた以上、その動きに戸惑いつつもつき従うものは多い。
649
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:14:25 ID:5kmg6OdI0
そして極めつけは世界最強の国家への宣戦布告。
確かに多くの国がルナイファがダメージを受けていることは知っていた。
しかしそれでも世界最強の看板の効力は強く、逆らう事を考える国などありはしなかった。
だが、それをニータはしたのだ。
その動きから、人間達との繋がりがかなり強固であると言うのは誰の目から見ても明らかであった。
列強であるニータが、これほどまでに手を組みたがる相手とは一体どんな国なのか。
これまで怪情報として切り捨てられてきた人間達に関する情報がまさか本当のことなのではないか。
たった一日の出来事であるにも関わらず、混乱は世界中に広まっていく。
650
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:14:59 ID:5kmg6OdI0
そして今日、さらに世界に衝撃を与える情報がニータにて生まれようとしていた。
( ´W`)「ほぅ!我が軍の勝利か!!」
シラヒーゲが歓喜の声を挙げ、その情報を聞いていた。
局地戦とはいえ、ニータ軍がルナイファとの戦闘を制し、国境近くの小さな街をひとつ、攻め落とすことに成功したのである。
ルナイファとニータには同じ列強といえども戦力の差は大きく、まともにやりあえば勝ち目などないというのが世界の認識である。
だが、それがどうか。
ただの一日のうちに、ルナイファの街を攻め落としたというのだ。
異常としか言い様がない。
651
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:15:33 ID:5kmg6OdI0
こんなことになったのには理由がある。
その理由は勿論、ルナイファの南方に強大すぎる敵がいるからである。
その敵に対抗するために戦力が引き抜かれたために、北方の守りが甘くなっていたのである。
ルナイファとてその可能性を考えなかったわけではなかったが、自国の持つ最強という看板と周囲がこちらを畏怖しており牙などすっかり抜け落ちていると考えていた。
完全な、誤算であった。
対してニータは全てが上手くいきつつある。
これまでルナイファに一方的に苦しめられてきたことにより、今回の侵攻は大義名分があり、国際的にも心証は悪くない状態で堂々と領土の拡大を行える。
さらにいくら弱っているからと言っても敵は世界最強には変わりない。
その国に勝ったというのはとてつもなく大きな力を持つことになる。
そしてなによりこの戦いにより、人間達に恩を売ることができるのだ。
これが何よりも大きい。
いくら戦力差があるとはいえ、ルナイファは巨大過ぎるがゆえに一国のみで対処しきるのには無理がある。
そこにニータが介入することにより、彼の国を救う。
それも国難ともいえる状況で、手を貸すのだ。
652
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:15:59 ID:5kmg6OdI0
見返りについては勿論、事前に話がついてはいるが助けたという事実は今後一生残り続ける。
彼の国の国民たちへの心証は確実によくなるであろう。
それは確実に将来、必ず役に立つ。
民同士の交流が生まれた時、この事実がこの国の発展へとつながっていく。
そう、シラヒーゲは確信する。
少し前まで全く見えなかった未来が、今ではこんなに明るく、色鮮やかに思い浮かべることが出来るようになるなど、奇跡としか言いようがない。
( ´W`)「ルナイファにとっては悪魔の化身なのだろうが......我らにとっては救いの神だな」
そしてそれをルナイファが呼び出したというのだから、世の中何が起こるかわからないものだと、シラヒーゲは小さく笑っていた。
653
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:18:15 ID:5kmg6OdI0
ルナイファ帝国 テタレス南方平野
1463年4月2日
敵が進軍を始めてから三日。
そう、たったの三日である。
そうだというのに既に複数の街が落ちたという報告が飛び込んできたかと思えば、既に敵はもう目前まで迫っているという情報まで入ってきていた。
あまりの侵攻速度に皆が驚愕する。
街を攻め落とす速度もそうだが、単純に軍の移動する速度が自分達が知るそれを遥かに上回っている。
( ,,^Д^)「一週間はかかると思いましたが......まさかここまでとは」
( ^ν^)「それもこちらに集中してでもなく、周囲をやりつつとか......本当にこれ、時間稼ぎも出来るか、怪しいところだな」
(; ,,^Д^)「......命令された以上、やるしかないでしょう」
( ^ν^)「思考停止すんな馬鹿」
(; ,,^Д^)「なっ!」
654
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:19:14 ID:5kmg6OdI0
( ^ν^)「命令されたからなんだ?ただ突撃するのか?命令は、時間稼ぎだろ。なにも考えず戦ってもその命令は果たせないぞ」
( ,,^Д^)「......なにか良い作戦があると?」
( ^ν^)「とりあえず、動くな、だ。少しでも奇襲の成功率を上げるためにも、こちらが気付かれる要因を減らしたい。外に出るのも禁止だ」
( ,,^Д^)「なる、ほど......ですがそれでうまく、行くでしょうか?敵はこちらを全て上回っていると聞きますが。探知能力も高ければ我々は......」
( ^ν^)「だからこそ、作戦を考えるんだろうが。可能性をわずかでも上げるために」
( ,,^Д^)「む」
( ^ν^)「まぁ、本音を言えば間違いなく撤退が一番現実的なんだがな......」
お通夜のような空気の中、ニュッの言葉にタカラは何かを言おうとするが言葉にならなかった。
タカラとて本音では同じ気持ちなのだ。
このままいけば自分達は死ぬことになるのだと、嫌でも理解出来てしまっているのだ。
655
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:19:51 ID:5kmg6OdI0
( ,,^Д^)「......シャキン様は?」
( ^ν^)「後方の部隊に後退の許可を進言してるとよ。帝都前には要塞もあるし、そこまで部隊を下げてくれってな」
( ,,^Д^)「なるほど......それで、成果は?」
( ^ν^)「あったら俺達はここにいねぇ。そもそも時間稼ぎの部隊が後ろに下げられるわけないだろ」
( ,,^Д^)「そう、ですよね」
敵の進軍速度、またその強力さからこのままでは無為に戦力を潰すだけだと後退を進言したものの、答えは変わらず敵の部隊を引き留めろという無理難題であった。
後方の守りの準備が完璧ではないことも理由にあるのだろうが、それでもこの命令は明らかに現実を見ていないとしか前線の者たちには思えなかった。
最早士気は最悪であり、脱走兵も少なくない。
そこには自国を守るための誇り高き戦士などおらず、死刑宣告を待つ死刑囚のようである。
どうにかこの場に留まれているのも、これが運命なのだという、半ば諦めに近い感情によるものであった。
656
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:21:06 ID:5kmg6OdI0
( ,,^Д^)「もうこうなれば、やれるだけやるしか......」
そう言いかけたその時、魔信から悲鳴のような声が届く。
『こ、こちら第三ゴーレム部隊!部隊は壊滅状態!!支援を、支援をぉ!!』
(; ,,^Д^)「なっ!?も、もうそんなところまで進軍を!?」
その報告の主はもうすぐそこと言える距離の部隊からであった。
敵の進軍スピードが異常であることは伝わっており、それをもとに何度も予測は修正してきたはずである。
にもかかわらず予想を遥かに超えるスピードで、敵はここに至ろうとしていることにタカラは愕然とする。
(; ^ν^)「......あー、覚悟をする暇もなさそうだな」
(; ,,^Д^)「部隊の位置と敵の速度からしてからして......時間はなさそうですね。どんなに遅くとも明日には、ここが死地になってしまう」
657
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:21:35 ID:5kmg6OdI0
お通夜であった空気はさらに冷え込み、皆が身体を震わせる。
その報告を皮切りに近くの部隊から、多くの被害報告と救援要請が飛び込んでくる。
―死神。
誰かがそう呟くが、その表現は的を得ているように皆が感じられた。
奴らが訪れたところは、皆が死ぬ。
これを死神と呼ばず、何と呼ぶのか。
そして、そんな神にも等しい存在と敵対する自分達は何と愚かなんだとニュッは乾いた笑みを浮かべる。
勿論、それらに対して自分達に出来ることは何もない。
助けを求める声を聞いたところで助けられるはずもなく、ただ死にゆく仲間の最後の声が響く。
そんな地獄のような状況の中でただ、震えるしか出来ないのだ。
( ^ν^)「......戦闘準備だ。急げ」
そのニュッの言葉に皆がようやく動き出す。
死神の足音は、すぐそこまで迫っていた。
658
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:21:57 ID:5kmg6OdI0
ソーサク連邦 ドクオ自宅
(;'A`)「はぁ......」
自宅で一人、ドクオは大きなため息をつく。
最早日課になりつつあるその行動は最近の心労によるものであった。
心労の凄さは彼の見た目に如実に現れており、目の周りには隈ができ、頬は痩せこけていた。
まるで死人のような姿になってしまっている彼だが、その理由は今後のことについてである。
彼自身はただの一般職員であり、情報局という重要な職についてはいるものの、国家をどうこうするような話とは無縁であったはずである。
だが気が付けば彼は、その中心にまで引きずり出され、選択を迫られていた。
659
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:22:20 ID:5kmg6OdI0
国家の命運すら決めかねないその選択肢、簡単に決められるはずもなく、今に至るまで選ぶことができていない。
現在、彼の選べる選択肢は3つである。
一つ目はモナーに協力し、人間の情報や技術を秘密裏に集めて国家を強化し、人間達と敵対する道。
二つ目は人間達とは敵対せず、適切な距離感で接することで彼らの技術を国家に取り入れ、発展を目指す道。
三つ目は国を捨て、亡命を目指す道。
はっきり言って、どの選択肢も問題がある。
まず一つ目は言わずもがな、人間と敵対するという点である。
確かに人間の力を認め、すぐには直接的に敵対しないように行動するわけだが、それでもいずれ敵対することに変わらず、現時点での力の差を考える限りその結果は悲惨なものになりかねない。
660
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:22:48 ID:5kmg6OdI0
そもそも、人間達も自分達の技術の重要性はわかっているはずである。
そんな技術に探りを入れようとすることなど彼らも警戒するであろうしこちらが勝手に技術を盗み、取り入れていることを知ればその時点で完全に敵対することになってもおかしくない。
相手がこちらが成長しきるまで待つなど、理想論でしかないのだ。
全てが奇跡的に噛み合い、上手くいけば彼の国を抑え込み、確かにソーサクがこの世界の新たな覇者となるだろうが現実はそう上手く行くことはないであろう。
では二つ目はどうかと言えばこれも問題だらけである。
ある程度の交流がある状態であれば、表立って大きな行動をしなければクーから伝え聞く限り、彼の国もこちらを一方的に攻め落とすようなことはないだろう。
ゆえに適切な交流を行えれば下手な争いを避けつつ、彼の国の技術を堂々と手に入れることができるのだ。
そうして技術を磨いていけばいつしか、人間達と並び立てる日がくるはずである。
661
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:23:16 ID:5kmg6OdI0
だがその日が来るまでにはかなりの年月が必要であるし、彼の国も最新技術をこちらに渡すことはないだろう。
そしてそれを解決するためには外交でどうにかするしかないわけだが、残念ながらソーサクは鎖国国家であり、外交官の経験は少なく、育っていないため期待が出来ない。
またそもそも人間の技術をそのまま取り入れようとすれば国内からの反発も凄まじい。
モナーが提案するように魔法に代替すれば受け入れも進むであろうが、全てそれでは意味がないのだ。
何故なら、人間の技術は魔法と異なり才能が要らない点が何よりも重要であるからである。
言い換えれば誰でも使うことのできる技術ということ。
使うものが少ないものであれば魔法で問題ないが、国民が皆必要とするような部分では魔法では解決しにくい。
それを解決できるということは国全体の国力を底上げ出来るのだ。
だからこそドクオは可能な限りそのまま技術を取り入れたいわけなのだが、そこでやはり国内の反発の問題が出てきてしまう。
さらにこのプランを進めようにも国を動かそうとする以上、味方がある程度揃っていないといけないわけだが、近い考えの者たちは人間をよく思わない権力者により潰されているのだ。
既に出鼻を挫かれているといっていい状態であった。
662
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:23:54 ID:5kmg6OdI0
そして最後の選択肢である、亡命。
これはクーから突然の連絡により涌いて出た選択肢であった。
当初、国同士を繋げるべきだもいうクーのあまりに無茶な主張に、それとなく現実が分かるように伝え、考えを自分のものに近づけようとしていた。
全てを受け入れることは難しいということは分かって貰えていたようであったため、いつかは彼女の考えも少しずつでも変わってくれることを願っていたが、まさかこんな明後日の方向に転換するなど考えてもいなかった。
そもそも国を捨てる選択肢を取るなど、可能性すら考えていなかった。
これまで情報室という国の発展のために情報を集める仕事をこなしてきたのだ。
国のために働くという、少なからずの愛国心はあったはずなのである。
それにも関わらず、彼女は国を簡単に捨てるというのだ。
ドクオからすれば、信じられないし信じたくないものである。
663
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:24:19 ID:5kmg6OdI0
彼はこれまで情報室で働き、国のために生き、国をより良いものにしたいという一心でこれまで働いてきたのだ。
これまで育ってきた愛着とまた自国への誇りという、誰もが持つであろう愛国心によるものである。
だからこそ様々な無茶にも国のためにと耐えてこられたのだ。
身体も精神的もボロボロになろうとも、それでもどうにかしたいという強い思いは決して消えることがない。
それほど、この国を愛しているのだ。
だからこそ、こんなにも苦しく悩むのだ。
もしクーのように全てを捨てることが出来ればどんなに楽になれるだろうか。
ドクオもその事実は分かっているし、その選択肢を心のどこかで望んでいた。
だがそれでも選べないのだ。
664
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:25:48 ID:5kmg6OdI0
もしここで亡命を選べば、もう引き留めるものがいなくなり国は敵対へと進んでいくかもしれない。
その先の未来は確定ではないが、明るいものではないはずである。
勿論、彼だけの力で未来が変わるとも限らないしドクオ以外の誰かが国を救うかもしれない。
それこそモナーが理想通りに物事を進め、人間たちを完全に封じ込める未来だってあり得ないわけではない。
だが、それは自分がなにもしなくていい理由には出来ないのだ。
('A`)「......俺は国のために、何が出来るんだろう」
そう呟きながら、モナーから渡された魔石を握りしめる。
自分に出来ること、それは間違いなく情報の収集である。
これまでもそうしてきたし、これからもそうすることしか出来ないだろう。
ではどのような情報が必要なのかを考えると、答えはやはり人間達の持つ技術に関するものであるだろう。
665
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:26:20 ID:5kmg6OdI0
この魔石に、人間の技術に関する情報を集めれば国は間違いなく発展するであろう。
さらに情報を集めていけば、その強大さからモナーを初めとして多くの者が考えを改める可能性もある。
また人間達に対抗しうる力を得ることだってあり得ない話ではない。
そう考えれば、自身への負担に目をつぶればただ逃げるよりかは幾分かはマシではないだろうか。
('A`)「それに......」
人間達が、本当に暴走しない保証などどこにもないのだ。
それこそ第二のルナイファとなってもおかしくはない。
むしろ彼らの持つ力とこの世界の力関係を考えれば、世界征服も夢ではないはずであり、そう考えれば侵略する方が当然と言えるかもしれない。
さらに彼らはこの世界に無理矢理連れて来られたのだ。
その怒りも加味すれば可能性は非常に高いように感じられる。
それを考えればやはり、対抗できる国力、すなわち抑止力は必要不可欠なのだ。
そのためにも人間の持つ兵器、もしくはそれを再現できるだけの情報を手に入れる必要がある。
666
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:26:52 ID:5kmg6OdI0
(;'A`)「......ぐっ」
キリキリと胃が痛み、頭痛がする。
言うのは簡単であるが、それを成し遂げることは非常に困難であり、そもそも実現可能かどうかも怪しいのだ。
(;'A`)「それでも、この道しか、ないんだ......」
そう呟き、彼は魔信を握りしめる。
そもそもモナーからの脅しもあり、人間達と融和的な解決法を目指すことは難しい。
そして国外に逃亡することは、この国を見捨てることであり、あり得ないとするならばもう選択肢は一つしか残っていないのだ。
その道がどんなに棘に道であったとしても。
その道が自身の破滅に繋がろうとも。
この国の未来がそこにあると信じ、進むしかないー
その道の行く末はまだ、誰も知らない。
667
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 11:27:20 ID:5kmg6OdI0
続く
668
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 23:09:32 ID:X/DGhQXo0
乙です
669
:
名無しさん
:2023/09/23(土) 23:11:20 ID:Wo.XIDaU0
おつおつ
どんな結末になるか全く予想できん
ドクオは幸せになって…
670
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:36:21 ID:1NZKDZBI0
ルナイファ帝国 東方沖
1463年4月2日
プギャーからの指令を受け、ルナイファの東にある東方基地より艦隊が海を進んでいた。
多くの艦が沈められたルナイファであったが、未だ艦隊を出撃させる体力があるという点だけを見れば、かなりの無茶をしているとはいえ世界最強の名は伊達ではない。
(・∀ ・)「うむぅ......」
そんな艦隊の司令を任されたマタンキは一人、首をかしげていた。
今回の任務がプギャーからの指令であり、人間達の国へ何らかの打撃を与える作戦だとは聞いている。
だがその詳しい内容については聞かされていなかったのだ。
知っているのは、召喚艦にて召喚の魔法を使えということだけ。
671
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:36:52 ID:1NZKDZBI0
人間との戦闘はもう二度と御免ではあったが、ただ召喚するだけならばと作戦を実行しているわけだがその真意が分からないのだ。
ただワイバーンを遠くから召喚したくらいでどうにかなる相手ではないことは、もう誰しもが知っていることであろう。
そうであるにも関わらず、この局面で召喚艦を動かすことに何の意味があるのか。
(・∀ ・)「分からないことといえば......」
ちらり、と目の前に描かれた魔方陣を眺める。
そこに描かれ構築された魔方陣は、少なくともマタンキは初めてみるものであった。
これでも長く軍におり、艦に乗ってきたと自負している彼でも知らないものだったのである。
少なくともワイバーンをただ召喚するためのものではないことは確かだろう。
伝え聞く話では何でも新魔法とのことであるが、それにも彼は思わず首を捻ってしまう。
新魔法といえば、南方の戦線で使われた遠距離攻撃用の魔法という話であったはずである。
その他に作成された魔法など、聞いたことがない。
672
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:37:38 ID:1NZKDZBI0
またそんな魔法を急に使用する事に不安が無いわけではない。
魔法というものは扱いを誤り、下手すれば暴走し、それこそこの船ごと爆発してしまうことだって可能性として0ではないのだ。
流石にプギャーもその事くらいは分かっており、ちゃんとした魔方陣とそれを扱える魔法使いを準備しているとは思うが、とはいえ危険がないかと言えばそうではない。
それにも関わらず強引に進められるこの任務は一体何なのか。
正体不明、理解不能。
それが、彼が今行っている任務である。
(・∀ ・)「ま、いいさ。これだけで昇進できるんだ。プギャー様々だな......敗戦の将の汚名を返上できるだろう」
だがそんなものは魅力的な報奨の前には無価値であり、無意味であった。
ただこなせばいい。
ただそれだけでいいのだ。
そう、何も問題などないのだから。
艦隊は、静かに海を進んでいた。
673
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:38:32 ID:1NZKDZBI0
ルナイファ帝国 南方要塞
テタレスと帝都の間に建造されたその要塞は、南方からの最後の守りとして難攻不落と呼ばれる、世界最大規模の要塞が存在していた。
地上部だけでなく、地下にも及ぶ巨大な要塞であるにも関わらず至るところに魔方陣が敷き詰められ、あらゆる攻撃を耐えつつ、圧倒的な火力にて敵を葬れるように設計されていた。
そして現在、ここには巨大な空間を埋め尽くすように多くの兵が集められていた。
理由は勿論、南方から襲いくる脅威に対して、必ずここで食い止め、そして押し返すためである。
これまでの戦いで多くの兵を失うだけでなく、上陸してきた敵に対し南方へ多くの兵を送っているルナイファであるが、そんな様子を微塵も感じさせないほどの兵数であり、その姿は一見、世界最強に偽りなしと言えるだろう。
674
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:39:03 ID:1NZKDZBI0
(=゚ω゚)「......ハリボテだよう」
だが、その様子を遠視の魔法にて覗き見ていたイヨウはそう呟いた。
確かに数だけを見れば立派なものである。
しかしそれらをよくよく見てみれば兵として鍛えられたものは少なく、その多くを占めているのは急遽集められた志願兵ばかりである。
動きからしてド素人と分かるような有り様な者が視界に多く写り込むのだ。
これをハリボテと呼ばずして何と呼ぶのか。
そもそも、魔法というのは才能が不可欠なのだ。
このように多くのものを集めたところでそんな才能溢れるものが集まるはずもなく、その多くが平均以下であろう。
そんなものたちがろくな訓練も受けていないのだから出来ることなどたかが知れている。
一人で遠くまで飛ばせるような火球など作れないし、強力な魔壁も作れない。
だからといって複数人共同でそれらを行えるような訓練などしてないため、本当に何も出来ないのだ。
675
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:39:35 ID:1NZKDZBI0
では何をするかといえば雑務か、敵に突撃し時間を稼ぐための捨て駒である。
現に、彼らが持つ武器は木で出来た長槍なのだ。
まともな魔法を使えないものたちに与えられる武器など急に用意出来るはずもなく、またまともな武器も魔法の才が必要とされるものが多いことから、誰でも使えそこらの素材を加工するだけで作れる木の槍が選ばれたのだろう。
だがそれにしても追い詰められた国はこんなものに頼るしかないのかとイヨウは愕然としてしまう。
勿論、それらの槍は簡易的な魔方陣が書き込まれており、鉄槍をも上回る力を持つし、それこそ一度振るえば小さな残撃のようなものが飛び出し、近くのものを切り裂くことが出来る。
だがそれらを必死に振り回し訓練をしているが、そんなことをしても敵は遥か遠くから彼らを鉄の礫で襲えるし、天高くから破滅へ導く爆発をプレゼント出来るのだ。
一体その手の武器で何と戦うつもりなのか―
676
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:40:04 ID:1NZKDZBI0
(=゚ω゚)「馬鹿らしいよぅ」
それなのに彼等は本当に国を守るつもりで今もなおその木の棒を振るい続け、訓練をした気になっているのだ。
呆れを通り越して哀れにすら思えてしまう。
これが、本当にあの最強であった国の姿なのか。
それも、恐らくこれが最期と呼べるかもしれない時なのだ。
あのルナイファの最期の姿がこんなにも、惨めでみっともない姿になるなど、誰が予測できようか―
(=゚ω゚)「......まぁ」
哀れなるこの国を、せめて最期まで見届けてやろう。
イヨウは近く訪れるであろう終結を静かに待っていた。
677
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:41:00 ID:1NZKDZBI0
ルナイファ帝国 テタレス陣地
部隊の指示のため、シャキンは陣地にいた。
その表情は決して良いものではない。
その原因は勿論、戦況にある。
部隊の詳細を知るため、ワイバーンの視界を共有し送られてくる映像を見ていたが、そこには地獄が広がっていた。
そこには先ほどまで数万という、エルフがいたはずであった。
だが気がつけばそこにあるのはただの肉塊である。
一体いつ、どんな攻撃をされたのかこの陣地の誰にも分からなかった。
映像に映る彼らはただ訓練の通りに戦列を組み、魔壁を貼り敵へと前進していたはずであった。
戦法として間違ったことなどしておらず、むしろ定石とも言える行動である。
何も、彼らは間違った行動はしていなかったのだ。
678
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:41:25 ID:1NZKDZBI0
さらにルナイファの最大の武器とも言える、数の暴力もそこには確かにあった。
数万からなる魔壁は強固であり、この世界でそれを貫くには大規模な魔方陣による魔法が必要なほどであり、言い換えれば陸上を進軍してくるような者たちがそのような魔方陣を運べるはずもないため、無敵とまでは言えないものの圧倒的な力を持つはずであった。
しかしそれはあくまでも、この世界の常識である。
敵が異界の者であり、こちらの常識を超える存在と言うことはシャキンも理解していたし、ゆえにこの規模の軍勢であっても足止めが出来るかどうかであろうと見ていた。
679
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:42:21 ID:1NZKDZBI0
だが。
『あ、ああぁああぁあああっ!!!』
ガガガアァァン!!
凄まじい悲鳴と、そしてそれをかき消す程の爆音が魔信と共に届けられる。
轟音と爆炎が味方達を包み込み、殺戮されていく。
あまりに呆気なく散っていく命。
足止めが出来るかどうかどころではない、その異常な光景。
これまでいくつもの戦場を見てきたが、これほどまでに背筋を凍らせる状況をシャキンは見たことがなかった。
(;`・ω・´)「こんなもの......戦争なんかじゃあない......虐殺、いやただの殺処分ではないかっ!」
殺処分という言葉は、何ともこの状況を適切に表現していた。
効率的にこちらを処理していくその攻撃。
まるでこちらの存在価値などないかのように土に還していくそれは、処分という表現以外に表すものがなかった。
その光景を見るものは皆、震え、嘔吐し、そして泣いた。
なぜ彼らがこんな目に合わなければならないのだと。
そして、次はなぜ自分たちの番なのかと。
680
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:42:58 ID:1NZKDZBI0
(;`・ω・´)「......っ!」
そんな絶望の中、爆炎を突き進む数体のゴーレムと生き残りの歩兵が映る。
強力であるはずのゴーレムを盾に進むその兵達。
これもまた、普通であれば強力であるはずである。
誰もが心強いと考えるであろう。
だがこの場では皆が同じ気持ちであった。
無茶だ、もう逃げてくれと。
だがその言葉は届くことなく、彼らはさらに敵に近づいていく。
気付けば敵の兵器らしきものが見える距離まで接近していた。
(;`・ω・´)「......なんだあれは」
それは、動く箱であった。
そういえば何とも弱そうな響きだが、実際は違う。
あれは化け物だと、本能でシャキンは察する。
生物としての第六感が、警告を鳴らし続けるほどである。
681
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:43:32 ID:1NZKDZBI0
(;`・ω・´)「もういいっ、逃げろっ!逃げてくれっ!!」
必死に魔信に向かって叫ぶものの、その声は届かない。
彼らはもう、死地に向かってしまったのだ。
(;`・ω・´)「っ!」
そしてその時は訪れる。
箱についた筒が光る。
何かが爆発したー
そう感じた瞬間、味方のゴーレムが弾け散る。
(;`・ω・´)「......」
もう、言葉すら出なかった。
陸上にて最硬であるゴーレムが、呆気なく砕けたのだ。
それも圧倒的な射程をもってである。
数がどうとか作戦がどうだとかそんな次元の話ではない。
こちらにできるのはもう、どう死ぬかだけではないかー
682
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:44:05 ID:1NZKDZBI0
(;`・ω・´)「......あ」
その時、数に任せてどうにか接近したのであろう兵が、反撃とばかりに箱に向かって魔法を放つ。
ーこれで、一矢報いれる。
言葉はないが、彼らからそんな思いが伝わってくる。
誇り高き戦士として、彼らは死ぬことを選んだのだ。
輝きを放ち向かっていくその魔法は、血と爆風に埋め尽くされたこの戦場には何とも似つかわしくないものであると同時に、ようやく自分の知る戦場の光景であった。
魔法に包まれる箱を見つつ、どこか少し心が軽くなり、シャキンは少しだけ表情が和らいでいた。
683
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:44:33 ID:1NZKDZBI0
が、その顔はすぐに曇ることとなる。
(;`・ω・´)「......馬鹿な」
確かに攻撃は命中したはずであった。
だがそこには、何事もなかったかのような化物がいたのだ。
その化物はお返しと言わんばかりに、何倍返しか分からない大火力にて勇敢なる戦士達を肉塊、いやもはやそれすら残さないほどの細切れに変えていく。
そこに名誉などなく、ただ無惨なまでに虐殺されたのだ。
そしていつしか味方で動くものはなにもなく。
化物達が、こちらへと向かってくる姿のみが写されていた。
(;`・ω・´)「......」
敵の位置を考えれば、次に戦うのはニュッ達であろうか。
嫌なところもあるが、自分の愛する部下である。
どうにか逃がしてやりたい気持ちでいっぱいであった。
684
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:44:56 ID:1NZKDZBI0
だがそんなことを本国が許してくれるはずもなく、またもう時間もないため敵も許してはくれないだろう。
(;`・ω・´)「すまない......」
気付けば口からは謝罪の言葉がもれていた。
それは死地へ部下を向かわせなくてはならないことに。
そしてなにもしてやれない自分の無力さに。
だがそんな言葉で何も変わるはずもなく。
敵はまた、こちらに近づいてきていた。
685
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:45:22 ID:1NZKDZBI0
ルナイファ帝国 南方戦線 野戦病院
('、`*;川「......ひどい」
そう思わず口から漏れ出すほど、ペニサスの視界に写るものは凄惨なものであった。
辺り一面に赤黒いものや吐瀉物が散乱しているのは当たり前。
治療を受けているものたちは身体のどこか一部の部位が欠損しているのが普通であり、大きな傷を負っていたとしても五体満足であれば幸運であるといえるほどに皆が満身創痍であった。
聞けばそもそも身体が残っているだけでもいい方だという話まであるのだ。
敵の猛烈なる爆発攻撃を前に、身体が蒸発していくという噂がまことしやかに囁かれている
('、`*;川「ぅ、おぇ......」
鉄錆びた嫌な匂いと、悪夢のような現実を前に強烈な吐き気が襲ってくる。
なぜ、自分がこんな場所にと思わずにはいられなかった。
686
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:46:46 ID:1NZKDZBI0
勿論、こんな場所に望んで来ているわけではない。
ただ国の雰囲気として、戦わないものは非国民であるかのような異様な空気を前にして自分は戦いとは無関係であると言い続けることが難しかった。
さらに自らが教える子供たちが戦場へ向かったのに、教師であり大人であるお前は戦場には向かわないのかという圧力の前に、屈してしまったのだ。
そうして気がつけば周りに流される形でここにたどり着いてしまった。
('、`*;川「ぅう......」
後悔を胃の中のものと一緒に何度も吐き出すことで、少しだけ落ち着いてきたのか、改めて辺りを見渡す余裕が出来てきていた。
そうして見た光景は先ほどと変わらず、そこには多くの負傷者で溢れ返り、ろくな治療も、そしてろくな清掃も出来ていないという酷い有り様である。
687
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:47:24 ID:1NZKDZBI0
('、`*;川「......私も、仕事しないと」
そんな光景を眺め、ようやく頭の整理が追い付き始め、ただでさえ人手が足りていないこの状況でなにもしないわけにはいかないと我に返る。
一体どれくらいの時間立ち尽くしていたのか彼女には分からないが、この間にも多くのものが苦しみ治療を待っているのだと、慌てて負傷者のもとへ駆け寄っていく。
途中、ぐちゃりと嫌な音がするものを踏んだ気がしたが、足元の暗い洞窟であり、それが何なのか確認はできなかった。
―そもそも、確認する勇気も持ち合わせてなどいないのだが。
('、`*;川「......うっ」
そうして改めて負傷者の前に立つと、ぼんやりとしか見えていなかったその傷の具合がはっきりと見えてくる。
赤黒く変色した部分をよく見れば、まるで何かが突き刺さったかのような穴が空いているのだ。
その傷が一体どのようにして出来たのか、ペニサスにはわからなかったがとにかく治療をしなければならないということだけは彼女にもはっきりと分かった。
688
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:47:58 ID:1NZKDZBI0
('、`*;川「えっと、まずは傷を塞いで」
「ダメッ、待って!!」
('、`*川「え!?」
そうしていざ治療をしようと、魔法の準備を始めようとしたところで、それを遮るように声がかかる。
その声にペニサスは驚愕し、思わず動きが止まってしまう。
いきなり声を掛けられたから、というのもそうであるが、その声があまりに幼い子供の声であったからである。
まさかこんな地獄のような場所に子供がいるなんてと信じられない気持ちで、その声の主へと振り返る。
そこには、更なる驚愕が待ち構えていた。
ξ;゚⊿゚)ξ「え?ぺ、ペニサス先生?」
('、`*;川「ツンさん!?」
敵から身を隠しているということを忘れ、思わず大きな声が出てしまう。
それほどの衝撃であった。
まさか自分の生徒とこのような場所で会うことなど、考えもしなかった。
689
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:48:24 ID:1NZKDZBI0
('、`*;川「どうしてツンさんがこんなところに......」
ξ゚⊿゚)ξ「......先生、色々とお話はあると思いますが、今は仕事をしましょう」
('、`*;川「っ......え、えぇ、そう、ね」
だがそんなペニサスに対し、彼女の生徒であるツンは至って冷静なものであった。
その姿にペニサスは更なる衝撃を受けてしまう。
ついこの間まで、目の前にいる生徒はまだまだ目が話せないような、確かに子供であったはずなのだ。
だがそれが、どうか。
今ペニサスの目の前にいる女性は、この地獄の中、努めて冷静であろうとし、仕事に取り組もうと言うのだ。
泣き言一つ言わず、それどころか大人であるはずの彼女を落ち着かせようと言葉を発する。
その精神はもう、子供のそれとは間違っても言えない。
690
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:49:04 ID:1NZKDZBI0
しかし、目に映るその姿は確かに子供のそれなのだ。
その不自然なアンバランスさ。
子供は確かに成長するものではあり、喜ばしいものであるが、これはなにかが違う。
これには空恐ろしいなにかを感じてしまうのだ。
('、`*;川「......」
ξ゚⊿゚)ξ「先生、いいですか?このような傷なのですが身体の反対まで傷が達していない場合、体内に金属の塊が残っています」
そして、そんなペニサスの様子に気付かないのかツンは淡々と話を進めていく。
その姿にさらに嫌なものを感じながらも、それを飲み込む。
('、`*川「金属?」
ξ゚⊿゚)ξ「はい。どうやら話では金属を飛ばす事で攻撃してくるとかで......そのままにすると腐り落ちる可能性があるらしいです。だから......」
('、`*;川「ひっ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「こんな風に、一度傷口を広げて取り出してからじゃないと、ダメなんです」
('、`*;川「そう、なのね」
あまりのことに、そう言葉を紡ぎ、ただ頷くことしかできなかった。
まるでただの作業のように肉を切り裂き、血で手を汚し、金属を取り出す。
そんなことを子供が、それも自分の教え子がやっているという現実に、思わず目眩がしてしまう。
691
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:49:34 ID:1NZKDZBI0
そしてそんな自分を目の前にいる、自分と比べてしまい、なんとも情けない気持ちになるのだ。
彼女が出来ていることを、ただこんな風に喚き、狼狽えることしか出来ないことも勿論理由の一つではある。
だがそれ以上に大人であり先生でもある立場のものとして、子供にこんな重荷を背負わせ、かつ心を蝕んでいるという現実に耐えきれないのだ。
('、`*;川「......」
どうしてこんなことになってしまったのか。
ルナイファはまちがいなく豊かで、優れた国であったはずであった。
それが、一体何時から狂ってしまったのか。
どこで、間違えてしまったというのか。
そしてそれは、自分達の責任であり、こんな目に合わなければならないことを、自分達はしてしまったというのか―
692
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:50:22 ID:1NZKDZBI0
('、`*;川「......ありがとう、ツンさん。理解できたわ。後は、自分で出来るわ。疲れているでしょう?私がやっておくから少し休んでなさい」
ξ゚⊿゚)ξ「そう、ですか。分かりました」
脳内がぐちゃぐちゃになりながらも、そう何とか言葉を絞り出す。
少しでも大人として、先生として目の前の子供を救いたかったのだ。
大人であるはずのペニサスですら、ここまで追い詰められてしまうほどの環境なのだ。
たったのこれだけでどうにかなるほど、簡単なことではないとペニサスも分かっているが、それでも何かをしてあげなくては、壊れてしまうのではないかという恐怖。
おかしな話ではあるが、恐ろしい現実を前に立ちすくんでいた彼女であったが、そのツンが壊れてしまうかもしれないという恐怖が彼女の支えとなり、現実に立ち向かう勇気を与えていたのだ。
('、`*;川「ぅ......ふっ、ふっ」
そうしてどうにか、教えてもらったように作業を進めていくが、進めるごとにまるで精神をすりつぶされているかのような錯覚に陥る。
693
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:50:50 ID:1NZKDZBI0
それほどまでに今目の前で起きていることは非現実的であり、まともな精神で受け止められるものではなかった。
手から伝わる嫌な感触、鉄錆びた匂い、様々な叫び声と悲鳴、そして遠くから聞こえる爆発音―
('、`*;川(こんなことを子供に......なんて、なんてことを......)
その全てが精神を、そして命を削りとっていく。
ほんの少ししか働いていないはずだというのに身体中が水で濡れたかのように嫌な汗をかいている。
それほどまでに、耐え難いものであったのだ。
('、`*川「......あら?」
ξ -⊿)ξ「......すー、すー」
('、`*川「......よほど、疲れていたのね」
そうして仕事を進めていき、ふと目線を上げてみると、気づけばツンは静かに寝息を立てていた。
それも仕方ないであろう。
今、ペニサス自身も倒れてもおかしくないほどに疲労を感じているのだ。
むしろ、今の今まで倒れずに仕事が出来ていたことがおかしいのだから。
('、`*川「ゆっくり、休みなさい」
そう、優しく頭を撫でて小さく微笑む。
―せめて、夢の中だけでもこの地獄を忘れられますように、と。
694
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 12:51:14 ID:1NZKDZBI0
続く
695
:
名無しさん
:2023/09/30(土) 13:01:47 ID:R6sWjzIE0
乙
おおツン生きてたのか。
シャキン達の部隊はどうなってしまうのか…
696
:
名無しさん
:2023/10/01(日) 20:52:58 ID:wEy0QnmY0
乙です
697
:
名無しさん
:2023/10/03(火) 19:39:34 ID:H4wn7v7E0
おつ
高火力高耐久で訓練すれば誰でも使えるとかほんとチート以外の何者でもないな
ニュッたちは何か変化を与えられるのだろうか
698
:
名無しさん
:2023/10/05(木) 23:05:20 ID:kwOF5UXw0
乙
ひたすらに悲壮感が漂ってるな…
699
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:30:31 ID:O2mR.r2o0
ムー国 捕虜収容所
1463年4月2日
アニジャがこの収容所に連れてこられてしばらく経ったが、不思議なほど何事もなく生活していた。
本当に自身が捕虜なのか疑いたくなるような扱いである。
勿論食事などは最低限なものであり、決して良いものとはいえない。
だがそれでも彼の知る捕虜の扱いより数段良いものであり、あのときの決断は間違いでなかったのだと過去の自分に感謝していた。
そんな捕虜の生活を続けていく中、アニジャが何をしていたかと言えば。
( ´_ゝ`)「やはり、この『センシャ』という兵器は凄まじいな......なぜこんな質量のあるものを動かせるのか」
何故か置かれていた人間の持つ兵器についての本から情報収集をしていた。
恐らく自分達の持つ力を理解させようという狙いなのだろう。
700
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:31:55 ID:O2mR.r2o0
しかしこんなことをしなくても、少なくともあの地獄を生き残り、今この場にいるものは皆わかっており、不要であった。
とはいえ、この世界で知るものが少ない貴重な情報を与えられているのだ。
いくら学んでも足りないくらいであろうと、何度も何度も繰り返し読み、情報を頭に叩き込んでいく。
( ´_ゝ`)「魔法ではなく音の速さすら超えるとはどういう原理なんだ?そもそも音に速さという概念が良く分からんのだが」
だが時々どうしても根本的な部分の違い故に、理解しきれない部分が出てくる。
そのときも繰り返し読むが、結局理解は出来なかった。
とはいえ、それもう仕方のないことなのだと割りきりつつ、アニジャは思考に耽る。
( ´_ゝ`)(改めて敵の戦力を知ったわけだが......まあやはりと言うべきか、とんでもない相手だな。もう二度と戦いたくないものだが、もし仮に現時点で戦うとするならば......)
手に入れた情報を元に、何度も脳内でシミュレーションを繰り返す。
負けた今もまだ、戦いの事を考えているなど、つくづく自分は軍人なのだなと苦笑していた。
701
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:33:06 ID:O2mR.r2o0
( ´_ゝ`)(しかし......無謀としか言い様がないな)
そうして繰り返したシミュレーションでは、当然敗戦を繰り返した。
良くて与えられるのは軽微な損害と金銭的なダメージ程度であろう。
コストに見合う戦果を挙げることなど、妄想の中ですら厳しいと言わざるを得ない。
( ´_ゝ`)(......いや、待てよ?)
だがその中でふと、ある可能性に気がつき、本を捲る手が止まる。
確かに敵は海も、空も、陸上も無敵と思える強さを持つ。
つまり海も、空も、陸上でも勝つことは不可能とも言えるだろう。
ーならば、それ以外ならどうなのだろうか?
702
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:34:12 ID:O2mR.r2o0
( ´_ゝ`)(アリベシに送られていたあれなら......いや)
頭に浮かんだ可能性に、ほんの少しだけ妄想はしやすくなった。
だがあくまでもほんの少しだけであるし、それが妄想であることには変わらない。
大局で見ればどんな奇跡を積み重ねても現時点では勝てないという結論に辿り着くのには変わらないのだ。
( ´_ゝ`)「......まぁ、まだ可能性があるだけましだな」
アニジャはそう呟き、疲れたように一度息をはく。
その無意識な行動に、ようやく自分が考え過ぎて疲れていることに気がつき、今日はもうここまでだと本を閉じる。
そうして改めて本の表紙を眺めていると、ふとした疑問が沸いてきた。
( ´_ゝ`)(そういえば......この本、わざわざ翻訳されていたがどうやったんだ?魔法が使えない以上、翻訳魔法ではないはずだがムーで出た捕虜の誰かが協力したのか?)
今更ながらの疑問だが、考えてみればこれもまたおかしなことだと、アニジャは首をひねる。
そうして考えるのをやめようとしていたのにも関わらず、再び思考の海に沈みそうになったその時、背後に近づく複数の足音に意識が呼び戻された。
703
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:34:42 ID:O2mR.r2o0
一体なんだと振り返って見てみると、そこにいたのは自分の着る粗末な服ではなく、全員統一されたしっかりとした服装の者達。
―この施設の人間か。
そう頭に浮かび、何事かと人影をよく見て驚愕する。
川 ゚ -゚)「......貴様がアニジャだな、立て」
その影の正体が、自分と同じエルフだったからである。
周りのエルフと同じ格好をしているということは彼らの仲間であることは間違いないのであろう。
( ´_ゝ`)「その訛り......ソーサクの者か?」
川 ゚ -゚)「......もう一度言おう、立て」
( ´_ゝ`)「っと、分かった分かった。従うよ」
704
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:35:24 ID:O2mR.r2o0
何とか探りを入れようとするが、ここでは無理かと命令に従う。
とはいえ、思考を止めることはない。
( ´_ゝ`)(今の反応は、当たりか?だがそうなると、国として繋がっているか、個人的なものかで大分話が変わってくるな)
もし個人的な繋がりならば、問題ない。
現時点で脅威となるのは、人間のみとなるためである。
だがもし、国同士の繋がりがあった場合。
( ´_ゝ`)(世界が敵と言っても過言じゃなくなる......自分達は生き延びれても、国はなくなるかもしれんな)
最悪の想定が頭によぎりつつも、それを顔には出さずにアニジャはクーの後をついていく。
そうしてある部屋に入るように促され、それに素直に従う。
( ´_ゝ`)「ここは、取調室か何かか?」
川 ゚ -゚)「そうだ。君に少し、話があるものでな」
705
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:35:52 ID:O2mR.r2o0
( ´_ゝ`)「話?軍に関わる情報か?もしそうであるならば、俺も軍人としての誇りがある。今なお国のために戦う仲間のためにも話すことは出来ない。拷問されようとも、だ」
川 ゚ -゚)「あぁ、いや、そういうことではないし......話というよりも、これは頼み事と言える」
( ´_ゝ`)「......頼み事?」
その言葉をうまく理解しきれないのか、アニジャは頭に疑問符を浮かべる。
捕虜の身になったものに、命令ではなく頼み事をするということは勿論のことだが、それ以上に一体自分に何を頼もうかが分からないのだ。
軍のことを聞きたいというのならば理解できるがそうではないと既に言われている。
では他にこのように呼び出してまでする頼みとは何なのか、全く思い当たらない。
706
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:37:25 ID:O2mR.r2o0
( ´_ゝ`)「頼み......頼み、か。すまないがどういうことだろうか?一体何を頼もうと言うんだ?」
川 ゚ -゚)「ふむ、まぁ頼み事は簡単に言えば一つだ」
そう言いつつ、クーは一つの魔信をアニジャに差し出す。
いよいよもってそんなもので何をしろと言うのか分からないアニジャは黙ったまま話の続きを促した。
川 ゚ -゚)「君の国、まぁルナイファにだな、降伏するよう促してほしい」
(; ´_ゝ`)「なに?」
そうして飛び出た言葉に、アニジャは言葉を漏らす。
それもそうであろう。
ルナイファで考えられていることとして、敵への降伏は難しいと思われていたのだ。
敵の侵攻は全く防ぐことができず、一方的である以上、敵がここでルナイファの降伏を受け入れるメリットは少ない。
そもそもこちらは敵に対して恨みを買いすぎており、話をすることすら難しいのではないかと言われていたのだ。
707
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:38:01 ID:O2mR.r2o0
(; ´_ゝ`)「降伏を、認めると?」
川 ゚ -゚)「認めるも何も、こちら側が望んでいることだ」
(; ´_ゝ`)「あぁ、うむ......そうなのだが」
そのような背景から、いきなり降伏を受け入れると言われても戸惑いしかない。
確かに部隊レベルの降伏であれば、敵将次第ではあるが、ある程度の温情はあるのだろうとは考えていた。
だが国レベルでそれは不可能ではないかと思い込んでいた。
川 ゚ -゚)「......いや、何を驚いている?」
(; ´_ゝ`)「驚きもするさ。何せ、こちらは色々やらかしていると言うのに、降伏を受け入れると言われたんだからな」
川 ゚ -゚)「?何を言っている。降伏勧告など、ずっと前から何度もしているではないか。それこそ貴様等が戦う前にも降伏勧告は行っている」
( ´_ゝ`)「......は?」
708
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:38:41 ID:O2mR.r2o0
その言葉に再度驚愕する。
まとまらない頭の中を、どうにか整理し、話を続ける。
( ´_ゝ`)「その、すまない。俺達が戦う前とは?」
川 ゚ -゚)「言葉のままだが」
( ´_ゝ`)「あぁ、いやその、つまり、なんだ?戦いと言うのは......ルナイファ本土への攻撃のことを言っているのか?その前に降伏勧告を?」
川 ゚ -゚)「あぁ、そうだ。何度もな。詳しい回数は覚えていないがな」
(; ´_ゝ`)「っ!!」
その言葉に思わず、アニジャは拳を机に叩きつける。
ダンッ、という大きな音と共に、手には血が滲むが、そんなことを気にする様子もなく、アニジャは怒りに震えていた。
ー一体何のために自分達は戦ったというのか!!
そんな思いで心中は埋め尽くされる。
もし上が、この勧告をまともに受け取り交渉していれば本土に攻め込まれることもなく、またあんなにも多くの死者を出すこともなかったのだ。
709
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:40:32 ID:O2mR.r2o0
明らかに上の者達の傲慢さと無能により、あのような惨劇は引き起こされたと言える。
そしてなにより、自分にこのような話が来たということは未だにそいつ等は自国の土地を失ってもその事を認めずにいるということ。
あまりの事実に砕けんばかりに歯を食いしばる。
川 ゚ -゚)「......平気か?」
(# ´_ゝ`)「平気なものか、くそったれめ」
川 ゚ -゚)「その様子を見るに、まさか知らなかったのか?」
(# ´_ゝ`)「......あぁ。その通りだ。それで魔信の相手の糞野郎は......まあ、答えんでも分かる。プギャーだろ?」
川; ゚ -゚)「あ、あぁそうだが......仮にも軍務省のトップだろう?他の連中ではないのか?国の将来に関わることを握り潰すなど」
(# ´_ゝ`)「糞野郎の考えることは知らんが、奴ならやりかねん」
川; ゚ -゚)「冗談、ではないんだよな。そこまでなのか......」
互いに頭を抱えてしまう出来事である。
これがもし、少しでも違えばもっとマシな未来があったかもしれないのだ。
それをたった一人によって潰された。
どうしてこんなことにと、考えずにはいられない。
710
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:41:01 ID:O2mR.r2o0
川; ゚ -゚)「まぁ、なんだ?君と話せて良かった。これでようやく、少しはまともに交渉できる未来が見えるかもしれん」
( ´_ゝ`)「......その件なんだが」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
( ´_ゝ`)「連絡する宛はあるのか?」
川 ゚ -゚)「......君頼りだな」
( ´_ゝ`)「そうか、ならちょうどいい。こちらからも提案したいと考えていたところだ」
川 ゚ -゚)「ほう?して、相手は?信頼できる相手なのか?」
( ´_ゝ`)「安心してくれ、そいつ経由ならば、おそらく陛下まで伝えることも出来るだろう」
川 ゚ -゚)「そうか、それで?そいつは誰だ?」
そう言いつつ、机に置かれていた魔信を拾い上げ、アニジャに手渡す。
アニジャはそれを受け取りつつ、笑って答えた。
( ´_ゝ`)「俺が世界一、信頼できる男だよ」
711
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:41:42 ID:O2mR.r2o0
ルナイファ帝国 東方基地
南方にて地獄が繰り広げられる一方で、この東方基地では比較的に平和であった。
敵からの標的にされていないのは勿論のことだが、その理由はここにいる兵達の士気が著しく低いことが影響していた。
比較的血気盛んなものたちは慌ただしく整備が進められていたマタンキ等の艦隊と共に出撃済みであり、ここに残されているのはあの南方沖での戦いに生き残りばかりである。
それゆえにここにいるものは皆、敵の強さは身に染みて理解している。
さらにあんな相手に未だに真正面から戦おうとする無策な国に対して強い不信感が生まれていた。
それゆえにもう二度と戦うことはごめんだと言う空気が基地中に蔓延しており、それは行動にも現れ始めていた。
もはや半ストライキ状態とも言える状態になりつつある。
そして敵から見ればあまりに驚異度が低いため、南方への戦線への影響はないであろうと無視されていたのだ。
守るべき者達の士気が低いことにより、守らなくてよくなると言うなんとも不思議な状況であった。
712
:
名無しさん
:2023/10/07(土) 15:42:12 ID:O2mR.r2o0
(´<_` )「......ふぅ」
そんな基地にてオトジャは一人、ため息をついていた。
国が窮地に立たされてはいるものの、現状ここで出来ることは何もなく、手持ちぶさたなのだ。
それゆえ考えるのは自分の兄が無事であるかと言うこと。
未だに安否が不明なままであり、どうにも気持ちが落ち着かないのだ。
(´<_` )「......うん?」
そんなときであった。
不意に自身が持つ魔信が反応し、誰かが連絡を取ろうとしてきたことに気がつく。
まさか出兵かと頭によぎり、今ここにいるもの達にどう説明したものかと頭を抱えそうになるがそれも一瞬だけであった。
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