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自画像のようです。

1名無しさん:2022/08/14(日) 22:30:21 ID:oBoRvv/Q0
百物語参加作品です。


  .,、
(i,)
  |_|

2名無しさん:2022/08/14(日) 22:31:03 ID:oBoRvv/Q0

昨日は、額に汗が光るほどに暑かった。
今日は、身震いするほど寒い。
寒暖差が容赦なく身体を蝕んでいる。


川 ゚ -゚)「つまり、ちょっと風邪気味なんだ。」

('A`)「感染すなよ?ってか、帰れ」


憎まれ口をたたきつつ、『彼』は暖かいコーヒーを淹れてくれた。
そんな心遣いが素直に嬉しいが、私がここに来たのはコーヒーをいただくためではなく…

3名無しさん:2022/08/14(日) 22:31:31 ID:oBoRvv/Q0

川 ゚ -゚)「それじゃあ、今日もよろしく頼むよ。」

('A`)「お前も暇だね。」

川 ゚ -゚)「暇だから、ここに来るのさ。」


やれやれ、といった感じで、『彼』が軽く溜め息を吐いた。
そして、


('A`)「じゃあ、今日は…」

('A`)「…『自画像』だ。」


今日も私は、彼の語る『怪談』の世界に、惹き込まれてゆく。

4名無しさん:2022/08/14(日) 22:32:13 ID:oBoRvv/Q0
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とある、一人暮らしの女子大生の話だ。
ごく普通の大学生だった彼女は、普段通りの日常を過ごしていた。
ある日までは…


('、`*川「ふわぁ…もう朝かぁ」


朝目覚めて、ベッドから足を降ろす。
ふと、違和感を覚えた。

部屋を見渡す。初めは気づかなかった。
だが、机の上をみると…


('、`*川「あれ、ノート」


昨晩は、勉強を終えたあと、机は間違いなく片付けた…はずだった。

だが、机の上にはノートが開かれていた。ノートの上には、赤いインクのボールペン。そして…


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5名無しさん:2022/08/14(日) 22:32:36 ID:oBoRvv/Q0
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ノートに、赤いインクで、『人』が描かれていた。



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6名無しさん:2022/08/14(日) 22:33:08 ID:oBoRvv/Q0
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デッサン用の人形をそのまま描いたような、簡素な絵だった。

しかし、なぜか、確信できることがあった。




('、`*川(…これ、私?)




体系?
輪郭?
理由はわからない。
だが、はっきりと「この絵は、自分だ。『自画像』だ。」と思えた。



では、いつ描かれた?自分が描いたのか?
寝ぼけた頭で考えていると…


('、`*川「あ、やば、もうこんな時間!」


講義の時間が迫っていることもあって、考えるのは後回しとして、身支度を整え家を出た。

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7名無しさん:2022/08/14(日) 22:33:50 ID:oBoRvv/Q0

川 ゚ -゚)「…」


気味の悪い話だ、と思った。知らないうちに『自画像』が描かれているなんて…


川 ゚ -゚)「その…彼女は、その絵を消そうとかは思わなかったのか?」


('A`)「思わなかった、らしい。」

('A`)「もしかしたら、本能で感じ取っていたのかもな。」


川 ゚ -゚)「本能?」


('A`)「そう…消してはいけない、ということを。」

8名無しさん:2022/08/14(日) 22:34:27 ID:oBoRvv/Q0
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それからだ。

毎朝毎朝、必ずノートが机の上に開かれていた。
そして、そこには赤いインクで『自画像』が描かれていた。

本来なら怖がるべきなのかもしれないが、なぜか彼女は、その事態をすんなりと受け入れてしまっていた。
『自画像』が『自画像』であると確信できたことと、無関係ではないだろう。
自らの体の一部を怖がるような奴がいないから…かもな。


…だが、ある朝。異変は起きた。


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9名無しさん:2022/08/14(日) 22:35:14 ID:oBoRvv/Q0
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『自画像』とは、全く別の異変。



('、`*川(なにこれ…右腕が動かない…!?)


痛みも痺れもない、全く感覚がない。

その日の講義は休まざるを得なかった。


動かない右腕に悪戦苦闘しながら、着替えを済ませて病院へ向かう。
しかし、診断の結果は「異常なし」、「原因不明」、「おそらく心因性のもの」。
動かない右腕と不安を抱えて帰宅した。


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10名無しさん:2022/08/14(日) 22:35:38 ID:oBoRvv/Q0
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病院から帰宅して、ふと気づく。


('、`*川「あ、ノート…」


いつもの朝と同じく、机の上にノートが開かれていた。


だが、描かれていたものは少し違っていた。


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11名無しさん:2022/08/14(日) 22:36:05 ID:oBoRvv/Q0
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('、`*川「右腕が無い…?」


『自画像』が描かれていた。
ただし…右腕だけが、描かれていなかった。


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12名無しさん:2022/08/14(日) 22:36:56 ID:oBoRvv/Q0
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『自画像』のことは気にはなったが、今はそれどころではない。
処方されたビタミン剤と睡眠薬を飲み、その晩は早めに床に就いた。



そして、翌朝。


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13名無しさん:2022/08/14(日) 22:37:57 ID:oBoRvv/Q0
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翌朝。

右腕は、動くようになっていた。
机の上には、前日は片付けずにいたノートがあった。

ただ、右腕は描かれていた。
描き足されたというよりは、全身から描きなおしたように見えた。


そのときになって、彼女はようやく気付いた。
いや、薄々はわかっていたのかもしれない。


『自画像』の状態と自分が、リンクしていることに。


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14名無しさん:2022/08/14(日) 22:38:41 ID:oBoRvv/Q0
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それからというものの、同じような異変が度々起きた。


腕が欠けていれば、腕が。

足が欠けていれば、足が。

四肢のいずれかが欠けていれば、同じ箇所が動かなくなった。


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15名無しさん:2022/08/14(日) 22:39:08 ID:oBoRvv/Q0
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彼女は、ふと、あることを疑問に思った。


('、`*川(もし、もし仮に…)

('、`*川(頭や胴体がまるごと描かれなかったら、どうなるのだろう…)


胴体が描かれたなかったら、心臓が止まってしまうのではないか?
頭が描かれなかったら、呼吸ができなくなるのではないか?



そして…全身が描かれなかったら?


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16名無しさん:2022/08/14(日) 22:39:30 ID:oBoRvv/Q0
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自分は、消えてなくなるのではないか?




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17名無しさん:2022/08/14(日) 22:40:20 ID:oBoRvv/Q0
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それからというもの、彼女は、朝に目が覚めると真っ先にノートを確認するようになった。


('、`*川(よかった…今日は全部ある…)


ノートを確認し、『自画像』が描かれていることを確認する。
五体が揃っていることを確認し、安堵する。


いや、確認するのは朝だけではない。
暇さえあればノートをめくり、『自画像』を確認する。


朝に見た通りに、描かれているか?
消えてはいないか?
変化はないか?


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18名無しさん:2022/08/14(日) 22:41:41 ID:oBoRvv/Q0
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次第に、彼女は追い詰められていった。



もし、ページが破れたりしたらどうなる?
水をこぼして濡れたら?
ノートそのものを紛失してしまったら?


彼女は、家に引きこもるようになった。
一日中ノートの自画像を眺め、安堵し、また不安に襲われる。
ノートを眺めたまま、意識を失うように眠りにつく。
朝、目覚めて『自画像』を確認する。

毎日、毎日、繰り返し、繰り返し。


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19名無しさん:2022/08/14(日) 22:42:18 ID:oBoRvv/Q0
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そして、ついに。


見つからない朝


がやってきた。


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20名無しさん:2022/08/14(日) 22:42:57 ID:oBoRvv/Q0
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朝、いつも開いているはずのノートが、閉じていた。

ページをめくる。



いない。『自画像』が無い。『自分』がいない。



ひたすらページをめくる。
探す。
無い。いない。


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21名無しさん:2022/08/14(日) 22:43:55 ID:oBoRvv/Q0
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('、`*川「どこ…?どこ…!?」

ページをめくる。

('、`*川「早く、見つけないと」

ページをめくる。

('、`*川「早く、早く描いてよ!」

ページをめくる。

('、`*川「早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く」

ページをめくる。

('、`*川「早く、『私』を早く早く早く描いて『私』を早く『私』を」


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22名無しさん:2022/08/14(日) 22:44:35 ID:oBoRvv/Q0

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早く早く早く早く早く早く早く早く描いて『私』を早く早く早く早く早く早く早く早く
早く早く早く『私』を早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く
早く早く早く早く早く早く描いて早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く
早く早く早く早く早く見つけないと早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く
早く早く早く早く描いて早く早く早く描いて早く『私』『私』早く早く早く早く早く早く
早く早く早く見つけないと早く早く早く早く描いて描いて早く早く早く早く早く早く早く
早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く


見つけないと


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23名無しさん:2022/08/14(日) 22:45:10 ID:oBoRvv/Q0
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『私』が、消える。




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24名無しさん:2022/08/14(日) 22:45:48 ID:oBoRvv/Q0

('A`)「そこで、意識が途切れた。」


川 ゚ -゚)「…」


『彼』の話の続きを待ったが、中々口を開かない。
この話は終わりだということだ。
『彼』の話はいつもそうだ、唐突に終わる。

そして、いつもの疑問を口にした。

川 ゚ -゚)「…毎度のことだがね、君はその話をどこで」



('A`)「本人から聞いた。」

25名無しさん:2022/08/14(日) 22:46:20 ID:oBoRvv/Q0
川 ゚ -゚)「…は?」

なんだそれは、どういうことだ?
聞く前に、『彼』は自分から話を続けた。


('A`)「本人から聞いたんだ。飲み会でな。」

('A`)「実は、『彼女』は大学の同期でな。俺が怖い話好きだっていったら聞かせてくれたんだ。」

('A`)「翌朝、というかその日以降、ノートには何も描かれなくなったそうだ。」

('A`)「本人は笑ってたよ。何をあんなに怖がってたんだか、ってな。」


まさに肩透かしだ。

26名無しさん:2022/08/14(日) 22:47:46 ID:oBoRvv/Q0

('A`)「肩透かしだって思った?」


川 ;゚ -゚)「!」

見抜かれた。
だが、事実、そうなのだからしょうがない―――――



('A`)「どう思う?」



思考を遮るように、一言、発せられた。

川 ゚ -゚)「…何が?」



('A`)「本当に、『自画像』は描かれなくなって、何事もなく終わった…そう思うか?」

27名無しさん:2022/08/14(日) 22:48:24 ID:oBoRvv/Q0

『彼』は続けた。

もし、本当に『自画像』が『彼女』とリンクしていたのなら。
描かれなくなった、つまり全身が消え失せたのなら。




俺と話した『彼女』は…本当に『彼女』なのか?

28名無しさん:2022/08/14(日) 22:49:41 ID:oBoRvv/Q0


('A`)「…大学の飲み会でな。『彼女』も参加していたんだが」



川 ゚ -゚)「?」



('A`)「『彼女』が靴を脱いで座敷に上がると、足跡がついてたんだ。」

('A`)「赤い色の。」

('A`)「『自画像』と同じ、赤いインクのような。」

29名無しさん:2022/08/14(日) 22:50:28 ID:oBoRvv/Q0





赤いインクのような、足跡が。

30名無しさん:2022/08/14(日) 22:50:51 ID:oBoRvv/Q0
  (
   )
  i  フッ
  |_|

31名無しさん:2022/08/15(月) 04:20:57 ID:NAw2O63U0
この追い詰められる感じいいね
乙!

32名無しさん:2022/08/15(月) 06:48:00 ID:ENtmJDH60
乙乙

33名無しさん:2022/08/15(月) 14:13:54 ID:Ckrvck1.0

語り手がいるタイプのホラー好きだわ

34名無しさん:2022/08/15(月) 21:10:02 ID:nhYeCwkU0
おつ
ゾクゾクした。こういうの好き!

35名無しさん:2022/08/18(木) 22:56:51 ID:R8noHKd.0
乙乙
淡々としてるけどリアルで自分の身に起こったらめっちゃ嫌なやつ…

36名無しさん:2022/08/27(土) 16:37:07 ID:80AEX/320



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