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#2「とが鍋」のようです
1
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:19:21 ID:JoEoPgpM0
百物語参加作品です。
.,、
(i,)
|_|
5
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:23:54 ID:JoEoPgpM0
(´・ω・`)「あー、いいね。ブーンじゃないけどお腹減ってきた」
('A`)「だなぁ。今ならブーンにも負けないくらい食えそうだ」
(# ^ω^)「キサマら二度もデブ呼ばわりしたな!」
(;'A`)「一度もしてませんが!?」
(´・ω・`)「んで、どうする?ご飯の前に温泉入っちゃう?」
('A`)「だなぁ、ここに来るまで結構歩いて汗かいちまったよ」
( ^ω^)「だおね、いいダイエットになりそうだったお」
(;'A`)「......それ、自分からはセーフなのね」
( ^ω^)「お?何の話だお?」
(;'A`)「......いや、うん。なんでもないわ」
(;´・ω・`)「ハハハ、まあそれなら温泉行っちゃおうか」
( ^ω^)「さんせー」
('A`)「同じく」
6
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:24:36 ID:JoEoPgpM0
.........
......
...
(*'A`)「あぁー、極楽ぅ」
(*´・ω・`)「露天風呂、なかなか景色がいいねぇ」
(* ^ω^)「夕焼けを眺めながらのお風呂、最高すぎるおー」
(´・ω・`)「しっかし、ドクオ。細いなぁ」
('A`)「んぁ?そうか?」
( ^ω^)「あー、分かるお。ドクオ、もう少し肉食べた方がいいお」
(;'A`)「いや、普通に食っちゃいるんだがな」
(´・ω・`)「それにしては心配になるくらい細いんだよなぁ」
( ^ω^)「骨と皮しかないおね」
('A`)「いやいや、筋肉あるから。ほら見ろこの筋肉!ふんっ!」
(;´・ω・`)「......」
(; ^ω^)「......」
('A`)「待って、やめて。本気で心配する目で俺を見ないで。自分でもコブできてないの分かってるから」
7
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:25:26 ID:JoEoPgpM0
( ^ω^)「まあでも、僕たちも言うほど筋肉ないおね」
(´・ω・`)「だねぇ......ふんっ」
('A`)「お、ちょっとコブった」
( ^ω^)「おおー、ナイスバルク!」
('A`)「ひゅーひゅー」
(*´・ω・`)テレッ
( ^ω^)「......では僕も失礼して」
(# ^ω^)「ふんぬぅ!」
(;´・ω・`)(脂肪でわかんねぇ......)
(;'A`)(脂肪でわかんねぇ......)
( ^ω^)「......」
( ´ω`)「......脂肪でわかんねぇお」
(;'A`)「やっぱり自分からはセーフなのね......」
(;´・ω・`)「謎だね......」
( ´ω`)「おーん......」
「......ふふっ......」
8
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:26:20 ID:JoEoPgpM0
('A`)「ん?」
(;,,゚Д゚)「え、あ、す、すみません。つい、笑っちゃって......」
(´・ω・`)「あ、いえ......こちらこそ騒がしくしてすみません」
(,,゚Д゚)「いやいや、楽しそうでいいじゃないですか。いやーいいなぁ、皆さんお友達ですか?」
( ^ω^)「まぁ、そうのかおドクオ?」
(;'A`)「疑問形やめて!友達でしょ!?」
(,,゚Д゚)「あはは、やっぱりかー!いいなぁ、友達と旅行なんて!それにこの宿もいいところですし、もう最高じゃないですか?」
('A`)「え、あ、あー。そうですね、初めて来ましたけど景色もキレイだし温泉も気持ちいいしでいいところですよね」
(;,,゚Д゚)「ですよね!......ってすみません、急になんか話ちゃって」
(´・ω・`)「あ、いえ......」
9
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:26:55 ID:JoEoPgpM0
(,,゚Д゚)「自分、一人旅でいろんなところ回ってるんですけどそこでいろんな人と話すのが好きでして」
(´・ω・`)「へぇ、いいですね。そういうの」
(,,^Д^)「ですかね?まあ色んな人と話すのも一人旅好きのくせに人恋しくなっちゃうからなんですけどね!アハハハ」
('A`)「はは。なるほど」
(,,゚Д゚)「あ、それでお兄さんたちはここへは何をしに?この辺りだと山登りとか川釣りとかですかね?」
('A`)「あ、そのなにというわけじゃないんですが......」
(,,゚Д゚)「あっ!それとも俺と同じで天狗目当てとか?」
('A`)「......え?」
( ^ω^)「は?」
(´・ω・`)「あ?」
10
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:27:40 ID:JoEoPgpM0
(;'A`)「て、天狗......ですか?」
(,,゚Д゚)「そうそう。あれ?知りません?ここら辺、天狗の伝説が有名......ってほどではないんですがあるんですよね」
('A`)「へ、へぇー......」
( 'A)「......」チラッ
( ^ω^)
(´・ω・`)
('A`)「......」
『(´・ω・`)「その、この宿......そういう話とかはないんだよね?」
(;'A`)「いや、いくらガセだったとはいえそういう話の詫びで来てるわけだし、流石にそんなことせんわ」』
('A`)「......」
(,,゚Д゚)「......?あの、どうかしま......」
((つA))「......ドウシヨウ......ボクトモダチイナクナッチャウ」プルプル
(;,,゚Д゚)「って、えっ、ちょ、大丈夫っすか?」
((つA))「モウダメカモ......マヂモウムリ......」プルプル
(;,,゚Д゚)「えぇ......」
11
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:28:31 ID:JoEoPgpM0
(,,゚Д゚)「あの、落ち着きました?」
(うA)「ヴぁい......皆が友達でいでぐれるっで......よかっだ......本当によがっだよぉ」グスッ
(;,,゚Д゚)(......なにがあったんだろ)
(´・ω・`)「あの、それで......天狗って?」
(,,゚Д゚)「いやま、なにがってわけじゃないんですが......ここらの山、昔天狗が住んでた、って話があるくらいなんですが」
('A`)「ズズッ......こういっちゃなんですが、その、ありきたりですね」
(,,゚Д゚)「ははっ、まさにおっしゃる通りで」
(´・ω・`)「そんなありきたりの話目当てでここに?」
(,,゚Д゚)「いやいやまさか!そのですね、ありきたりの話のなかにひとつだけ、妙な噂を聞きまして」
( ^ω^)「妙?」
(,,゚Д゚)「......人が天狗を食べたお話ですよ」
(´・ω・`)「......食べた?」
12
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:29:59 ID:JoEoPgpM0
('A`)「それは......珍しいですね」
(,,゚Д゚)「ほう?」
('A`)「妖怪ですと人魚でしたら不死になる、なんて話があるのでよく聞きますが......天狗は」
(,,゚Д゚)「お、お兄さん。結構こういう話詳しい感じだね。そう、まさにその通りなんすよ」
(,,゚Д゚)「人に近い妖怪が人に食われる話は有名どころはやはり、人魚。でもここでは天狗を食べたと」
('A`)「......ふむ」
(,,゚Д゚)「噂はこうです。昔、この辺りの村が飢饉で苦しんでいる頃、天狗が空から落ちてきた」
(´・ω・`)「空から?」
(,,゚Д゚)「翼が折れた、なんて話もあって、まあそんなこんなで村の人々に捕まったそうです」
(;'A`)「......それで」
(; ^ω^)「うぇ......」
13
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:31:06 ID:JoEoPgpM0
(,,゚Д゚)「そう、食われたわけなんですが......で、問題はここから」
(; ^ω^)「問題?」
(,,゚Д゚)「人魚は不死の力を人に与える......では天狗は?」
('A`)「......」
(,,゚Д゚)「答えは......尽きない食料」
(´・ω・`)「え?」
('A`)「えっと、それってどういう意味ですか?」
(,,゚Д゚)「そのですね、天狗は死なないらしいんですよ」
('A`)「いやまあ天狗は不老不死、なんて言われてるが......あ?」
(;'A`)「いや、まさか......」
(,,゚Д゚)「そう、そのまさか。死なないどころか再生する。食っても食っても減らない肉。それが天狗、というわけらしいんです」
(;'A`)「......」
14
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:31:53 ID:JoEoPgpM0
(,,゚Д゚)「そうしてこの辺りを飢えから救ったということで天狗に纏わる信仰があるとかないとか」
(´・ω・`)「......勝手に食っておいて、か。えげつないね」
(; ^ω^)「酷すぎるお......」
(,,゚Д゚)「俺もそう思う。で、なんですが」
('A`)「ん?」
(,,゚Д゚)「大切なのはこれからなんですよ......いるらしいんです」
('A`)「は?いるって?」
(,,゚Д゚)「この宿に、天狗を食べたやつが」
('A`)「......」
(*'A`)「......えっ!?マジで!?」
(,,゚Д゚)「それが本当かどうか聞きたくて来たんですよ、俺」
( ^ω^)「......今の話、本当なのかお?」
(,,゚Д゚)「もちろん。あ、天狗の噂の方はあくまで噂だけど」
(;´・ω・`)「いやそれはわかるけど......うーん、マジかぁ」
15
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:32:29 ID:JoEoPgpM0
(,,゚Д゚)「で、どうですかね?一緒に聞きにくる?」
(*'A`)「いいんですか!?」
(,,゚Д゚)「もちろんっすよ。お兄さん、なんか興味すごいありそうだし」
(*'A`)「えへへ......」
(*'A`)
(;'A`)そ「......ハッ!」
( ^ω^)
(´・ω・`)
(;'A`)「......」
(,,゚Д゚)「あれ?どうかしました?」
(;'A`)「えっと......その......」
(´・ω・`)「......まぁ、いいんじゃない?」
(;'A`)「えっ!?」
(; ^ω^)「えっ!?」
16
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:33:14 ID:JoEoPgpM0
(´・ω・`)「話を聞くだけでしょ?なら、問題ないでしょ」
(; ^ω^)「ちょ、ちょっと!」
(´・ω・`)「ん?」
(; ^ω^)「ほ、本気かお?」ヒソヒソ
(´・ω・`)「今言った通りだよ。話を聞くだけなら問題ないでしょ。噂的にも害はなさそうだし。それに」ヒソヒソ
( ^ω^)「......それに?」
(;´・ω・`)「もう、そんな噂があるところにいる時点である意味手遅れだし、何も知らないよりはマシだと思う。多分ね」
(; ^ω^)「うっ、確かに」
(´・ω・`)「......まあ、あんなことはそうそう、というか二度と無いだろうしさ。ドクオもあんな目で見てるしね」
( ^ω^)「あんな目?」
('A`)「くぅーん」ウルウル
( ^ω^)「なるほど」
(´・ω・`)「ま、そういうわけ。やることは決まったね」
( ^ω^)「だおね。とりあえず殴るかお」
(;'A`)「なんで!?いや、心当たりはあるけど!!」
17
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:33:52 ID:JoEoPgpM0
(;,,゚Д゚)「えっと、それで結局どうなった感じ?」
(´・ω・`)「まあ、時間もありますし付き合わせてください」
(*,,゚Д゚)「おっ、本当っすか。じゃあ一緒に行きましょうか!さっきも言ったけどやっぱり一人だと妙に寂しいんすよね!」
( ^ω^)「はぁ......まぁ、気になるし仕方ないおね」
(*,,゚Д゚)「おーし、なら行きますか!ささ、温泉上がりましょー」
(*'A`)「おー!!」グッ
(´・ω・`)「やれやれ......」
18
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:35:05 ID:JoEoPgpM0
.........
......
...
('A`)「それで、聞いてなかったけど、その食べた人ってのは?」
(,,゚Д゚)「ああ、なんでもこの宿の大旦那さんとか」
('A`)「へぇ......となると、どんなに古くても数十年以内の話ってことになるのか」
(,,゚Д゚)「あー、言われてみればそうっすね」
( ^ω^)「そう考えるとこういうお話にしては最近なのかお?」
('A`)「だな」
(´・ω・`)「......ふむ、天狗......で、数十年前......か」ブツブツ
( ^ω^)「あれ?おーい?しょぼーん?おーい?」
(;´・ω・`)「......それで噂では飢餓......食料不足......え?いやいや......まさか......」ブツブツ
('A`)「おーい、おーい!ダメだこりゃ」
( ^ω^)「とりあえず帰ってくるまで待つかお」
19
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:36:26 ID:JoEoPgpM0
('A`)「だな......しかし落ち着いてみてみるとよ」
( ^ω^)「お?」
('A`)「ほら、この絵。天狗の絵だ」
( ^ω^)「あ、ほんとだお」
(,,゚Д゚)「天狗関連のものでしたら少ないですけどこっちにもありますよ。ほら、人形とか」
('A`)「......隅っこの方だから気づかなかったけどこうしてみると結構あったんだな、天狗関連のもの」
/ ,' 3「......おや?天狗に興味がおありですかな?」
(,,゚Д゚)「え?」
/ ,' 3「ああ、いきなり失礼。儂はこの宿の経営をしておる荒巻と申します」
('A`)「え、あ!あなたが大旦那さんですか!?」
/ ,' 3「え?ええ、そうですが......どうかしましたかな?」
20
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:38:31 ID:JoEoPgpM0
('A`)「いえあの......何と言えばいいか、探していたと言いますか」
/ ,' 3「ふむ?儂を、ですか?まあ、なんでも聞いてくだされ。特に天狗のことでしたらこの宿で最もよく知っておりますゆえ」
(,,゚Д゚)「それはありがたい。まさに探していた理由がその天狗のことなんです」
/ ,' 3「ふぁっふぁっふぁ、そうでしたか。ちょうど料理の準備も終わり、時間に余裕がありますから何でも聞いてくだされ。それでどのようなお話ですかな?」
(,,゚Д゚)「そのですね......少し聞きづらいことなのですが、あなたの噂を聞いたんです」
/ ,' 3「ほう、噂、ですか」
(,,゚Д゚)「はい、その、天狗に関連したものでして」
/ ,' 3「ふむ、それはどのような?」
(,,゚Д゚)「......その、失礼かもしれませんが......天狗を食べた、というのは本当ですか?」
/ ,' 3「......」ピクッ
21
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:39:10 ID:JoEoPgpM0
('A`)「......」ドキドキ
(; ^ω^)「......」
/ ,' 3「......なるほど、そのお話ですか」
(,,゚Д゚)「どう、なんでしょう?」
/ ,' 3「ふむ、そうですな......天狗......」
('A`)ワクワク
/ ,' 3「......」
(; ^ω^)「......」
/ ,' 3「......えぇ」
(*'A`)「っ!」
/ ,' 3「食った。確かに儂は、過去に天狗を食べたことがある」
(;,,゚Д゚)「......おおっ」
(*'A`)「......マジっすか」
22
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:39:48 ID:JoEoPgpM0
/ ,' 3「ええ、本当のことです......初めて口にしたのはもう何十年も前のことですがね」
(; ^ω^)「初めてって......何度もあるのかお?」
/ ,' 3「えぇ、えぇ。何度も口にしましたとも」
/ ,' 3「最初に食べた......あのときは、そう、戦時中でした」
('A`)「戦争......数十年前、ってことですか」
/ ,' 3「そう。もう詳しい時期は覚えておらんが......あの頃は空には爆撃機が飛び交い、畑も建物も燃え、食うもんがなにもなかった」
(; ^ω^)「......改めて聞くと酷い状況だおね」
(,,゚Д゚)「まぁ......戦争だしな」
/ ,' 3「だから、食った」
('A`)「へ?」
23
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:40:38 ID:JoEoPgpM0
/ ,' 3「あやつをだ」
/ ,' 3「何度も」
/ ,' 3「何度も」
/ ,' 3「皆で、食い散らかした」
/ ,' 3「実に、旨かった」
/ ,' 3「実に質の良い、肉だった」
(; ^ω^)「......」
/ ,' 3「そして、実にいい、奴だった」
('A`)「......いい、やつ?」
/ ,' 3「ああ。あやつの言葉は分からんかった。だが、あやつは儂らを助けてくれた」
/ ,' 3「空から落ちてきたあの日から、何度も、何度も」
/ ,' 3「崩れた家から、燃える家から皆を助け出してくれた」
/ ,' 3「流石は天狗、儂らとはかけ離れた身体能力だった」
/ ,' 3「それこそ、恐ろしいほどに」
( ^ω^)「......」
24
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:41:28 ID:JoEoPgpM0
/ ,' 3「だが奴はあるときに大きな怪我をした」
/ ,' 3「動けなくなったあやつを見て、儂は決めた」
/ ,' 3「こいつを、食おうと」
(; ^ω^)「......え?な、なんで」
(;'A`)「助けられたんじゃ......」
/ ,' 3「酷いと思うか?儂もそう思う。だが、そうするしかなかった」
/ ,' 3「生きるにはそうするしか、なかったのだ」
(;'A`)「......」
/ ,' 3「しかし......一人では食えんかった」
/ ,' 3「そんな罪を一人では背負いきれん」
/ ,' 3「だから、皆で食った。村人、全員でな」
(;'A`)「は?」
25
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:42:53 ID:JoEoPgpM0
/ ,' 3「皆で食えば罪は軽くなる。食う人が多くなれば、罪を背負うものが多くなればなるほど、罪は許される」
(; ^ω^)「な、何を言ってるんだお?」
/ ,' 3「牛や、豚と同じことよ。一人では食えんくても皆で食えばそれは罪ではない。つまり、許される」
(;,,゚Д゚)「......」
/ ,' 3「ふぁっふぁっふぁ、そう、許されるのだよ」
/ ,' 3「より多く、皆が食えば儂の罪は無くなっていく」
/ ,' 3「だから、分けた。分けて分けて、何度も、何度も切り裂いた」
/ ,' 3「皆が飢えていた。だから、皆の腹が満たされるようにと切り分けた」
/ ,' 3「何度も」
/ ,' 3「何度も」
/ ,' 3「あやつの悲鳴に慣れるほどに」
/ ,' 3「おかげで儂らは腹が満たされ、生き残ることができた」
/ ,' 3「皆が生き残れたのだよ」
(; ^ω^)「......狂ってるお」
26
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:44:01 ID:JoEoPgpM0
/ ,' 3「だが......」
('A`)「え?」
/ ,' 3「まだ、足りんのだ」
/ ,' 3「まだ」
/ ,' 3「まだ」
/ ,' 3「まだ」
/ ,' 3「儂は許されていない」
/ ,' 3「やつはまだ、儂を、皆を恨んでいる」
/ ,' 3「だからまだ全然、足りていない。食い足りないのだ」
(;'A`)「何を言って......」
/ ,' 3「もっと多く、儂は皆に食わせなければならないのだ」
/ ,' 3「そうすればいつか儂は許されるはずなのだ」
/ ,' 3「許されなければいけないのだ」
/ ,' 3「あのときは、そうするしかなかったのだ」
/ ,' 3「儂が、そして皆が助かるにはそれしかなかったのだ」
27
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:46:10 ID:JoEoPgpM0
/ ,' 3「だから、許されなくては」
/ ,' 3「許されるべきなのだ」
/ ,' 3「だが、まだ、許されていない」
/ ,' 3「なら、まだ食わせなくては」
/ ,' 3「足りない、まだ、まだ、まだ、足りない」
/ ,' 3「もっと、食わなければならん」
/ ,゚ 3「あやつから、あやつから許されるために。だから、許してくれ、儂は、食べた、食べたんだっ!!」
/ ,゚ 3「解放されるために。解放されるために......解放されるためにぃっ!!」
(;'A`)「......」
/ ,' 3「......ですからお若いの。天狗に興味がおありですかな?」
/ ,' 3「それでは是非」
28
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:46:45 ID:JoEoPgpM0
「皆様もお食べになりませんか?」
https://i.imgur.com/SIyOcEy.jpg
.
29
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:47:20 ID:JoEoPgpM0
(;'A`)「......」
(; ^ω^)「......」
(;,,゚Д゚)「......」
/ ,' 3「......ふむ、そうですか。残念ですな。それならしょうがない」
(´・ω・`)「......あの」
/ ,' 3「おや、なんですかな?」
(´・ω・`)「その、天狗のことなんですが」
/ ,' 3「ふむ?」
(´・ω・`)「......そいつの特徴を、教えてもらいたいんです」
/ ,' 3「......ああ、それなら簡単です。肌の色、そして、特徴的な鼻ですな」
(;´-ω-`)「......やっぱりそういうことか......最悪だ」
30
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:47:56 ID:JoEoPgpM0
/ ,' 3「ほう?どういうことですかな?」
(´・ω・`)「......深い意味は。ほら、もう行こうよ皆」
(;'A`)「え?あ、あぁ......その、お話、ありがとうございました」
/ ,' 3「いえいえ......むしろお礼を言わなくてはならないのは儂の方かもしれませんからな」
(; ^ω^)「......?」
31
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:48:29 ID:JoEoPgpM0
.........
......
...
(; ^ω^)「なんていうか......その、すげぇ嫌な気分だお」
('A`)「......だな」
( ^ω^)「というかドクオ、てっきり食べたいとか言い出すかと思ってたお」
(;'A`)「あの話を聞く前なら言ってただろうな......でも、あんなんにはなりたくねーよ」
(;,,゚Д゚)「......ですね」
(´・ω・`)「......まあ、あのお爺さんも自分を守るために正当化しないとダメなんだろうね。それがどんなに歪んだ理由でも」
( ^ω^)「ほんと......嫌な気分だお」
32
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:49:05 ID:JoEoPgpM0
('A`)「そういやさ」
(´・ω・`)「ん?」
('A`)「なんで最後に天狗の特徴なんて聞いたんだ?」
(´・ω・`)「あぁ、あれね」
(,,゚Д゚)「あ、それ自分も気になってたんですよ。しかもなんか最悪って言ってましたよね?」
(´・ω・`)「うんまぁ......自分なりに噂話を解釈してその答え合わせをしたんだけど......その答えがね」
( ^ω^)「答え合わせ?」
('A`)「どういうことだ?」
(´-ω・`)「まぁ、あのお爺さんが食べたものがなんだったのか、だね」
('A`)「なにって......天狗じゃないのか?」
(´・ω・`)「......その、天狗の定義によるかな」
(,,゚Д゚)「定義?」
33
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:49:46 ID:JoEoPgpM0
( ^ω^)「どういうことだお?」
(´・ω・`)「あのお爺さん、言ってただろ?肌の色と特徴的な鼻って」
('A`)「......?まさに天狗の要素じゃねーか」
(´・ω・`)「まぁ......確かに天狗は赤い肌に長い鼻が特徴的なことで知られてるけど」
(´・ω・`)「誰も食べられた天狗の見た目が『赤い肌に長い鼻』だったなんて言ってないよね?」
(,,゚Д゚)「......え?」
(´・ω・`)「食べたのはあくまでも肌の色と特徴的な鼻を持つ存在」
(´-ω・`)「さてそれは何か。天狗以外に、本当になにも心当たりはないかい?」
(; ^ω^)「......あっ!?」
('A`)「ブーン?」
34
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:50:36 ID:JoEoPgpM0
(; ^ω^)「い、いや......ま、まさかと思うんだけど」
(; ^ω^)「というか、その、勘違いであってほしいんだけど......」
(,,゚Д゚)「なにか心当たりが?」
(; ^ω^)「その、昔、なんかで読んだことがあるんだお」
(; ^ω^)「天狗の正体は、外国人だった、て」
(´・ω・`)「......」
(;,,゚Д゚)「え?」
(;'A`)「......お、おいおい、そんなわけ......」
(; ^ω^)「でも、高い鼻に違う肌の色......体格だっておっきいお」
(;'A`)「う」
(; ^ω^)「それに話にあった言葉が通じないって......それって外国語、のことなんじゃないかお?」
(;,,゚Д゚)「確かに......」
35
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:51:30 ID:JoEoPgpM0
(;'A`)「でも、あの話は戦時中だろ?なんでこんなところに外国人が?」
(; ^ω^)「うーん、それは......」
(´・ω・`)「天狗は空から落ちてきた......でしたよね?」
(,,゚Д゚)「え?あ、あぁ。そんな話も......」
(;,,゚Д゚)「......空?まさか、爆撃機?」
(;'A`)「......あー」
(; ^ω^)「天狗が怪我をしたのは墜落したからってことかお?」
(´・ω・`)「多分だけどね」
(;'A`)「......じゃあつまりなんだ?」
(;'A`)「あのお爺さんが食べたのは、人、なのか?」
36
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:52:11 ID:JoEoPgpM0
(;,,゚Д゚)「......いや、それも正確じゃねーな」
(;'A`)「え?」
(;,,゚Д゚)「全員だ」
( ^ω^)「全員?」
(;,,゚Д゚)「皆の飢えを、って言ってたろ?つまりここの村の全員が、人を食ったんだよ」
(;'A`)「マジかよ......」
( ^ω^)「......え」
(´-ω-`)「......というわけさ。最悪だろ?」
(;'A`)「じゃあ天狗どうこうってのはこれを隠すための?」
(´・ω・`)「多分ね......それか」
(,,゚Д゚)「それか?」
(´・ω・`)「人を食べたと思ったら、罪の意識に耐えられないから、とかかな」
(,,゚Д゚)「......あぁ」
('A`)「......なるほどな」
( ^ω^)「......」
37
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:52:46 ID:JoEoPgpM0
(;´・ω・`)「しかしなんとも......嫌な気分になる」
(;,,゚Д゚)「その......なんていうか折角の旅行なのに変なことに付き合わせちゃってごめんな?」
(;'A`)「い、いやいや、付いてきたいって言ったのは俺たちの方ですし」
(´・ω・`)「......とにかく忘れましょうか。もう、僕たちには関係のないことですし」
(,,゚Д゚)「そう、ですね」
('A`)「......だな」
(,,゚Д゚)「それじゃあ、自分は部屋に戻ります。旅行、楽しんでくださいね」
(´・ω・`)「はい、ありがとうございます」
('A`)「ありがとうございます」
(; ^ω^)「......」
(´・ω・`)「......ブーン?」
(; ^ω^)「えっ?あ、ごめん、考え事をしてたお」
(,,゚Д゚)「何かありました?」
(; ^ω^)「......いえ、大したことではないので」
(,,゚Д゚)「そうですか?それじゃあ、またどこかで」
( ^ω^)「あ、はい......また」
38
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:53:14 ID:JoEoPgpM0
.........
......
...
('A`)「さて、風呂から戻ってきて飯なわけだが」
(;´・ω・`)「......あの話の後にかぁ」
(;'A`)「すまん、俺の変な興味のせいで」
(´・ω・`)「いやまぁ、付いていくって決めたのは僕だしね......気にしなくていいよ、そこは」
('A`)「......悪いな」
(´・ω・`)「だからいいって、ね?ブーン」
( ^ω^)「......うん」
(´・ω・`)「......さっきからなんか変じゃないか?」
( ^ω^)「え?」
39
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:53:43 ID:JoEoPgpM0
(´・ω・`)「どこか上の空というか......」
( ^ω^)「いや、その......さっきのこと、考えちゃって......」
(´・ω・`)「......まあ、あんな話を聞いちゃうとね」
('A`)「......気持ちは分かるよ。胸くそ悪いしな」
( ^ω^)「えっと......そうじゃなくて」
(´・ω・`)「え?」
( ^ω^)「いやその......なにか、違和感というか......そういうのが」
(´・ω・`)「違和感?」
('A`)「どこかおかしなところでもあったのか?」
(´・ω・`)「まあ、ある意味おかしなところだらけだけどね」
('A`)「あー、まぁ確かに」
( ^ω^)「......」
( ^ω^)「......いや、多分、僕の気のせいだお」
40
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:54:30 ID:JoEoPgpM0
('A`)「あんまり深く考えすぎない方がいいと思うぜ。あんな話、考えれば考えるだけ病むだけだろ」
(´・ω・`)「だね......さっきも言ったけど、とりあえず忘れた方がいいと思うよ」
( ^ω^)「うん......」
('A`)「まぁ、簡単に出来ないとは思うけどな」
(;´・ω・`)「まぁ、ね......」
(;'A`)「......あー、やめやめ!気分が完全に飯の気分じゃなくなっちまう!」
( ^ω^)「......」
( ^ω^)(......本当に、二人とも気づいてないのかお?)
( ^ω^)(さっきの話......結局天狗ではなかった証明になってないことに)
41
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:55:00 ID:JoEoPgpM0
('A`)「とりあえず飯にしようぜ。こんなに旨そうだし食ってれば食欲わいてくるだろ」
(´・ω・`)「だね。で、なんだっけ?鍋が名物なんだっけ?」
('A`)「あ、そういやそうだったな。確かに旨そうだなこれ」
( ^ω^)(それに村の皆を救ったって話......)
( ^ω^)(絶対に、おかしいお)
('A`)「じゃあこれから食ってみるか......」
(´・ω・`)「なんか赤い鍋だけど、辛いのかなこれ?」
( ^ω^)(それって、皆が肉を食べたってことだお?)
( ^ω^)(村が何人いたか分からないけど......)
(; ^ω^)(ただの人一人の肉で、そんなに賄えるわけ、ないお)
42
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:55:40 ID:JoEoPgpM0
('A`)「どれどれ?......むっ!?」
(´・ω・`)「ん?」
(*'A`)「こ、これ、くっそうめぇぞ!?なんだこれ?めっちゃ肉がホロホロしてる!?」
(´・ω・`)「え?そんなに?」
(*´・ω・`)「......うっわ、ホントだ。なんだこれ、肉汁うまっ!噛むほど味が染み出てくる!」
(; ^ω^)(でもじゃあどういうことかお?)
(; ^ω^)(何人もの人を食べた?......いや)
(; ^ω^)(それだと、何人もの外国人がいたことになるからおかしいお)
(; ^ω^)(それに話としては人は一人......そうなるとやっぱり......あれ?)
(; ^ω^)(でもそうなると......もしかしてまだ今も......)
43
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:56:23 ID:JoEoPgpM0
(*´・ω・`)「ブーンも早く食べなよ!」
(*'A`)「そうそう、こんなにうまいもん、冷めちまったら勿体ないぞ」
( ^ω^)「......ん、そうだおね」
( ^ω^)(......いや、もうやめるお)
( ^ω^)(さっき、ショボンが言った通り、もう僕たちには関係のない話、だお)
( ^ω^)「えっと、それでどれがうまいんだお?」
('A`)「おいおい、聞いてなかったのか?これだよ、これ」
(´・ω・`)「名物のお鍋、ほらブーンが言ってた」
( ^ω^)「あぁー!そう言えばそうだったおね。ほえー、そんなに美味しいのかお?」
(*'A`)「マジで絶品。一口食ってみな、飛ぶぞ」
( ^ω^)「そんなにかお?まあとりあえず、いただきますだお」アーン
44
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:56:46 ID:JoEoPgpM0
(´・ω・`)「しかしこの......あれ?これ、なに鍋?」
('A`)「んー?あー......どうだろ?えっとパンフとかに載ってたりは......あ、あった」
(´・ω・`)「どれどれ?」
('A`)「ほら、これ」
( ^ω^)「?」モグモグ
(´・ω・`)「......えーと?ここら地域の昔ながらのお鍋で......名前は......」
45
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:57:50 ID:JoEoPgpM0
「とが鍋、か」
.
46
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:58:23 ID:JoEoPgpM0
#2「とが鍋」のようです
お仕舞い
(
)
i フッ
|_|
.
47
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:59:00 ID:JoEoPgpM0
archive
観測レポートNo.2
対象:とが鍋
観測年月日:2021年5月13日
観測地点:四辺利阿市土所甲村
天候:晴れ
記入者:垂眉ショボン
○概要
地元の郷土料理の一つ。赤いスープに鶏肉を煮込んだ鍋料理。一見辛そうな見た目だが、トマトなどの野菜を煮込んだ物であるためであり、若干の唐辛子は入っているもののそこまでの辛味はない。長い時間煮込まれているのか野菜の旨みがしっかりと凝縮されている。また入っている鶏肉の味わいはこのスープの旨みに負けないほどである一方で、お互いが主張過ぎることなく調和されており、まさに絶品の一言。この料理目当てで観光客が来るとの話があったが納得の味わいである。
○危険性
なし。ただの料理である。
○特記事項
本料理を提供してくれた宿の大旦那に異常性が見られた。本人曰く、天狗を食べたとのことだがこれは人を食べたことを隠すための嘘である。なお本件については遠い過去の話であり、無関係であることから影響は皆無である。
48
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 23:00:41 ID:JoEoPgpM0
○追記1
あのお鍋はまた食べたいからまた皆で行きたいお。(記入者:同行者1)
○追記2
上記について同意見。でも本レポートに記載すべき内容ではないため注意するように。
○追加概要
正式名称「咎鍋」。元々「天狗」を食べる際に皆で食べやすいよう、大鍋で煮込み、提供していた。現在のとが鍋はこれを再現したものである。しかし当時のことを考えるとこれほど贅沢に野菜を煮込める余裕はないと思われるため、全く同一のものではないと思われる。なお何を再現してこのような赤い見た目になったのかはあまり考えたくない。
また名前の由来は咎、つまり罪深いものを食べ、罪を被るということから来ていると思われる。この由来に関しては宿の大旦那の話とも一致している。このような料理を名物とし、様々な人に振る舞うのは偽物でもよいから多くの人にこの料理を食べさせ、罪の意識を分散させるという考えからかもしれない。
○追記3
上記内容については同行者に話をした際に、一時パニック状態になり、嘔吐。理由は不明。確かに嫌な気分になる内容だがそこまでだろうか?最近はおかしなことばかりで心配だ。
49
:
名無しさん
:2022/08/15(月) 09:34:49 ID:g1ZD33do0
乙、、、、、
50
:
名無しさん
:2022/08/15(月) 17:31:48 ID:8vA9KZdc0
乙
ショボンが間違う……というか、捉えられない場合もあるのか
51
:
名無しさん
:2022/08/15(月) 21:01:22 ID:8cXtXR6I0
おつおつ
胸糞悪いな……
52
:
名無しさん
:2022/08/17(水) 11:47:04 ID:7P7V69N20
乙乙
こっちも面白かった。
ちょっとゲームのSIRENっぽさを感じた
53
:
名無しさん
:2022/08/18(木) 22:49:26 ID:qCczAano0
乙乙
このシリーズもっと読みたい
54
:
名無しさん
:2022/08/27(土) 16:38:01 ID:6mm39zYE0
乙
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