[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
| |
('A`)副音声つきホラースポットのようです
1
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:09:57 ID:ixEOH8I.0
.,、
(i,)
|_|
(;,゚Д゚)人「頼むって!! この通り!!!」
(;'A`)「嫌だよ……」
(;,゚Д゚)人「頼む!!!! この通り!!!!! この通りだ!!!!!!」
(;'A`)「どの通りだよ……だから嫌だってば……」
(;,゚Д゚)人「今度テストのヤマとか教えるから!!!! お願いだ!!!!!!」
(;'A`)「埴谷のテスト順位、下から数えた方が早いじゃん……」
(;,゚Д゚)人「じゃあ何か奢るから!!!!!! ……うまい棒とか」
(;'A`)「その条件で頷く奴いると思うの?」
(;,゚Д゚)人「金なくて……。じゃあ、じゃあ、えーっと……あ〜〜〜〜とにかく!!」
(;,゚Д゚)人「お願いだから一緒に心霊スポットに行ってくれ!!!!!!」
(;'A`)「行かないってば!!!!!!!」
.
4
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:15:18 ID:ixEOH8I.0
(;,゚Д゚)「でも、鬱田って霊感あるって聞いたことあるぞ!?」
(;'A`)「たしかに幽霊は見えるけど、祓うことはできないよ」
(;,゚Д゚)「そうだったのか……」
(;'A`)「だから俺が一緒に行ったところで何もできることはないよ」
(;,゚Д゚)「で、でも居てくれるだけでも心強いから……」
(;'A`)「俺は行かない。肝試しがしたいなら遊園地のお化け屋敷にでも行けばいいよ」
(;,゚Д゚)「でもしぃは心霊スポットに興味があるって……。
俺はしぃの願いは叶えてやりたくて……」
(;'A`)「じゃあ二人で行ってくればいいでしょ。俺は知らないよ」
(,,;Д;)人「小学生の時から10年間片想いしてようやく付き合えて初デートなんだよ〜〜〜!!
でも俺おばけ怖いんだよ〜〜〜〜〜!!!
お願いだから着いてきてくれ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
おばけ嫌だよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」
(;'A`)(な、なんて哀れな奴……)
5
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:16:03 ID:ixEOH8I.0
(*゚ー゚)っ|扉「ギコくーん、そろそろ行こうよー」ガラッ
(;,゚Д゚)「あ、お、おう!」
(*゚ー゚)「あれ、鬱田くんとお話し中? 終わるまで待つよ?」
(;,゚Д゚)「え、えーと……」
(;'A`)「あー……椎名さん。これから埴谷と心霊スポットに行くんだよね?
俺も一緒に行くよ」
(,,*゚Д゚)「!!」
(*゚ー゚)「鬱田くんも?」
(;'A`)「一応、霊感はあるから本当に危ない時に警告するくらいならできるかと……」
(*゚ー゚)「そっか、鬱田くんってお家がお寺なんだっけ。『破ぁ!!』とかやるの?」
(;'A`)「やらないよ……寺生まれをなんだと思ってるんだ……」
(*゚ー゚)「じゃあ鬱田くんも一緒に行こっか! 私、場所知ってるから案内するね!」
(;'A`)「うん」
(,,*゚Д゚)(鬱田、ありがとな!!)ヒソヒソ
(;'A`)(いいよ別に……。埴谷があまりにも哀れだったから……)ヒソヒソ
(;,゚Д゚)(あ、あまりにも哀れ……)
6
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:17:06 ID:ixEOH8I.0
〜なんかおどろおどろしい廃屋の前〜
(;,゚Д゚)(いかにも出そうな雰囲気……)
(*゚ー゚)「わあ、なんか雰囲気すごいね! さっそく入ってみようよ!」
(;,゚Д゚)「お、おう! 俺に任せとけ!!
幽霊が出ても俺が倒してやるからな!!」
(*゚ー゚)「えっ、ギコくんって幽霊を倒せるの? すごーい! 見てみたーい!」
(;,゚Д゚)「お、俺の手に掛かれば余裕だからな……」
(*゚ー゚)「期待してるよ! じゃ、さっそく入ろっか! 私が開けるね〜」
(;Д;,,)
(;'A`)(泣きながらこっちを見られても……。
できもしないことを言った埴谷が悪いとしか……)
7
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:18:11 ID:ixEOH8I.0
ギィ、と耳障りな音と共に廃屋の扉は開いた。
鍵はかかっていないのか、それとも壊れているのか。
まるで歓迎するかのように、あっさりと開放された扉に気味の悪さを覚える。
まだ日が落ちていないにもかかわらず、屋内は暗い。
単に日当たりが悪いだけだと納得するにはこの暗さは異常である。
(;,゚Д゚)「く、暗すぎないか……?」
(*゚ー゚)「懐中電灯でも持ってくればよかったかなー?
まあいっか、とりあえず入ってみよー」
(;'A`)「待って、俺が先に行くよ。本当に危ない幽霊がいたらすぐ伝えるから」
(*゚ー゚)「そう? じゃあお願いするね」
廃屋の中へと一歩を踏み出す。
途端に感じる埃っぽい空気。そして澱んだ嫌な気配。
ああ、いるな。
確信すると同時に、クスクスと女性の笑い声が聞こえてきた。
.
8
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:19:40 ID:ixEOH8I.0
(;,゚Д゚)「今、笑い声が……」
(*゚ー゚)「聞こえた、ね……」
(;,゚Д゚)(怖い……もう帰りたい……)
(;'A`)「……幽霊いるけどどうする? 帰る?」
(,,*゚Д゚)「! そうだな、危ない目に遭ってもいけないし帰……」
(*゚ー゚)「えー、まだ来たばっかりだし帰らないよ!
ギコくんが幽霊倒すところも見てないし!」
(,,;Д;)
(*゚ー゚)「よーし、私も入ろーっと」
(;,゚Д゚)「あっ、ま、待って! 置いて行かないで!」
慌てて埴谷が屋内へ足を踏み入れる。その瞬間、大げさな音と共に扉が勢いよく閉まった。
(;,゚Д゚)"「うわっ!!?」ビクッ
(;*゚ー゚)「びっくりしたー! ギコくん、そんなに勢いよく閉めないで!」
(;,゚Д゚)「ちがっ、勝手に! 暗すぎるからドアは開けておこうと思ったのに、勝手に!」
(;*゚ー゚)「えー? じゃあ風かな?」
(;'A`)(……風なんかじゃない)
見てしまった。外から勢いよく扉を閉める人影を。
見たのは一瞬であるが、背丈から男であると推測できる。
(;'A`)(ここにいる幽霊は一人じゃない……ってことか)
9
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:20:32 ID:ixEOH8I.0
(*゚ー゚)「じゃあ進んでみよっか?」
(;,゚Д゚)「えっ、ほ、本当に行くのか!?」
(*゚ー゚)「だって肝試しに来たんだし……」
(;,゚Д゚)「う……そ、そうだよな……」
(;'A`)「……とりあえず暗すぎるから灯りが欲しいな。危ないし」
(;,゚Д゚)σロ「あ、じゃあスマホのライトつけるわ!」ポチー
埴谷がライトをつけると、古びた階段が現れた。古い家特有の急な角度の階段だ。
('A`)(玄関からすぐに階段があると風水的によくないんだっけ……)
ふと思考した瞬間、再び暗闇が訪れる。埴谷の驚く声が存外大きく響いた。
(;*゚ー゚)「ギコくん、なんで消すの? ふざけてるー?」
(;,゚Д゚)ロ「ち、ちがう! 勝手に消えて……!」
スマホの画面が埴谷の顔をぼんやりと照らしている。どうやらスマホの充電が切れたわけではないらしい。
真下から光を浴びた埴谷の顔は、この場で一番不気味だ。
10
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:21:56 ID:ixEOH8I.0
(;,゚Д゚)ロ「ぜ、絶対幽霊の仕業だって! 俺、画面に触ってないもん!」
(;*゚ー゚)「分かったからもう一回ライトつけてよー」
(;,゚Д゚)σロ「そ、それもそうだな……。暗いもんな……」ポチー
埴谷がスマホをタップするとすぐに周囲が照らされる。
これで先に進めると思ったのも束の間、即座にライトは消されて辺りは真っ暗になった。
(;*゚ー゚)「ギコくん……」
(,,;Д;)σ"ロ「お、俺じゃない!! 本当に勝手に……おかしい!!」ポチポチポチ
ライトが点いては消えて、を繰り返す。
パニックになった埴谷が消えたライトを何度もつけ直すが、直後に消されてしまうようだ。
(,,;Д;)σ"ロ ゚)「なんで!? 俺、消してないのに!!」ポチポチポチポチ
(;'A`)(あれ……埴谷の近くに……顔……?)
埴谷の傍らに注視した瞬間、廊下が大きくギシリ、と軋んだ。
一瞬にして意識がそちらに引っ張られる。
自分も、埴谷も椎名も玄関に立ち尽くしており、誰も廊下に足を踏み入れてはいない。
つまり、音を立てた何者かがいるわけだ。
11
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:23:03 ID:ixEOH8I.0
(;*゚-゚)「今の……家鳴りかな?」
椎名の呟きには希望的観測も含まれていたのかもしれない。
ギシリ。
希望を嘲笑うかのように、廊下は再び軋んだ。先程よりも音が近い。
(;*゚-゚)「また……」
ギシリ。
(;*゚-゚)「ち、近づいて──」
埴谷は相変わらずスマホと格闘しており、音には気がついていない様子だ。
明滅する視界で廊下の先を捉える。
灯りが点いて、消えて、そしてまた点いた時、足が見えた。
どうか見間違いであってほしい。そんな儚い願いは、視界が閉ざされ開けるたびに砕かれる。
足は骨ばって痩せており、肌は青白い。爪は壊死して黒く染まっている。
足の情報が少しずつ増えていく。それは足の持ち主が近づいてきていることを意味していた。
何度目かの暗闇が訪れる。
暗転の直前、足の甲に小さく膿んだかさぶたが見えた。
目の前まで迫ってきている。今この瞬間も、すぐそこに。
.
12
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:24:22 ID:ixEOH8I.0
(;*゚-゚)ロ「あ、あ、灯り!!」ライトピカーッ
川д川"『うわ眩しっ』ピタッ
(;*゚-゚)ロ「あ……足音みたいなの止まった……?」
川д川『眩し……ちょ、ライトこっち向けないで……目が痛いわぁ……』
('A`)
(,,;Д;)σ"ロ「なんで、なんで勝手に消えちゃうんだよ!!!」ポチポチポチポチ
(;*゚-゚)ロ「ねえギコくん、そのスマホ壊れてるみたいだし、ライトはもういいよー?
私のスマホでライトつけとくからさー」
(,,;Д;)σ"ロ"∂=∂(゚д゚*川o『うおおおおお見よキューちゃんのタップ捌きを!!!!』ポチポチポチポチ
('A`)
(;*゚-゚)ロ「ギコくーん? 聞こえてないかな……」
"∂=∂川;゚д゚)o『あっ、ちょっとそっちの女の子がライトつけてるじゃん!
貞子、女の子のライトも消して消して!』
川д川『えー……私、爪が壊死してるから……指に余計な刺激を与えたくないわぁ……』
扉| 『ねー、僕もう入っていい?』
川д川『アンタは外で何してんのよ、アサピー』
扉| 『驚かそうと思ってドア閉めたんだよ。
ただ、中から閉めればよかったのにわざわざ外に出て閉めちゃって……』
扉| 『なんか、今ドア開けてもスマホのライトに夢中っぽいし驚いてもらえないかなって……』
川д川『すり抜けて入ってきなさいよ』
扉| 『えー……僕、眼鏡だけ実体だからすり抜けても眼鏡だけ外に取り残されるし……』
('A`)
('A`)(なんだこれ)
13
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:25:13 ID:ixEOH8I.0
('A`)(なんか……なんだ……幽霊が……わちゃわちゃやってる……)
o川;´д`)o=3『もー、タップしすぎてキューちゃん疲れちゃったー。やーめた!』
(,,;Д;)ロ「あ、あれ……ライトつくようになった!」
(*゚ー゚)ロ「直ったみたいだね! よかった〜」
o川*゚ー゚)o『てかてかー、この子ら、キューちゃんたちのこと見えてないのー?』
川д川σ『いや、多分この糸目の男の子は見えてるわよ』
('A`)(うわバレてる)
o川*゚ヮ゚)ノシ『えっほんとー? いえーい、見てるー?』
('A`)(わあ……目の前で手振ってきた……無視しよ……)
o川*゚ぺ)ノシ『ねー貞子ー、ほんとにこの子には見えてるのー?
全然反応してくんないよー?』
v川д川v『無視してるんでしょ。
反応せざるを得ないくらいちょっかい出してやりましょ。ほらピースピース』
('A`)(なんだこれ…………)
14
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:25:59 ID:ixEOH8I.0
(;,゚Д゚)「なあ鬱田、ここにいる幽霊ヤバいよな!? もう帰った方がいいよな!!?」
('A`)「いやー……うーん……」
(;,゚Д゚)「なんだその反応!? 俺のスマホおかしくなったんだぞ!?
ヤバいって! 帰った方がいいって!」
('A`)「大丈夫じゃなーい……?」
(;,゚Д゚)「な、なんで!? その反応なに!?」
扉|@∀@)" ギィ…
(;,゚Д゚)「うわっ!? またドアが勝手に!!」
(;*゚-゚)「わ、ほんとだ……風……?」
扉|⊂(@∀@-)パタン…
(*゚ー゚)「あ……意外と控えめに閉まった……」
('A`)(そーっと入ってきた……)
15
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:26:55 ID:ixEOH8I.0
川д川『ちょっとアサピー、何よ今の。驚かせたいならもっと音を立てて閉めなさいよ』
(-@∀@)『いやなんか……会話中だったし……邪魔かなって……』
川д川『なんで幽霊が気を遣うのよ』
(-@∀@)『気を遣える男はモテるから……』
o川*゚ー゚)o『その気遣い、生きてる子たちには伝わらないと思うよ』
川д川『私らにも伝わらないし』
(;-@∀@)『せめて君らには伝わってほしいなあ……』
(*゚ー゚)「ね、そろそろ中を探索してみようよ」
(;,゚Д゚)「ほ、本当に行くのか!? さっきもまたドアが……」
⊂(*゚ー゚)「それは風じゃない? ね、ほら行こうよー」グイッ
(;,*゚Д゚)っ「わ、手を……」
('A`)(手っていうか手首を掴まれてるな……)
⊂(*゚ー゚)σ「この階段上がってみようよ!」
(;,゚Д゚)っ「あ、上がるのか!? 鬱田、危ない気配とか感じるか?」
('A`)「大丈夫じゃね……。わちゃわちゃしてるし今のうちかも……」
(;,゚Д゚)っ「わちゃわちゃしてるって何!? 何が!!?」
16
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:28:05 ID:ixEOH8I.0
ギシ、ギシ、と一歩ごとに階段が鳴く。
急勾配の階段は、少しでも気を抜くと踏み外してしまいそうだ。
(;,゚Д゚)「急すぎないか……?」
(*゚ー゚)「古い家ってこういうものだよ」
(;,゚Д゚)(今おばけ出たら転びそう……)
恐る恐る階段を上る埴谷に合わせ、ゆっくりと進んでいく。
階段に積もった埃が舞い、椎名が小さく咳き込んだ。
それをきっかけとしたのか背後から突如、足音が迫ってきた。
ドタドタと廊下を踏み鳴らすその音が、走っていることは明白だ。
(;,゚Д゚)「お、おい、足音が……!」
(;*゚-゚)「誰もいないのに、こんなに音がはっきり聞こえるなんて……」
(;,゚Д゚)「言ってる場合か!? 早く逃げるぞ! ……うわっ!?」
階段を駆け上がろうとした埴谷が足を踏み外した。
手すりを掴んでいたことが幸いし、転がり落ちることはなかった。
(;*゚-゚)「ギコくん、走ったら危ないよ!」
(;,゚Д゚)「で、でも、追いかけてきてるんだぞ!?」
足音は廊下を鳴らし、ついには階段を軋ませる。
(;,゚Д゚)「や、ヤバい! もう来てる! 早く逃げなきゃ!」
(;*゚-゚)「焦っちゃダメだよ、転んじゃうよ!」
(;,゚Д゚)「そんなこと言ってる場合じゃ……」
真後ろで一際大きく軋んだ。
埴谷がヒュッと息を呑む。耳をつんざく不快な音との距離は、もう無いに等しい。
追いつかれた。
.
17
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:29:11 ID:ixEOH8I.0
三┏(;-@∀@)┛『早く早く! 急いで先回りしなきゃ!』ドタドタギシギシ
('A`)
川д川『アサピーが気遣いだとか意味わかんないこと言ってるから……。
いつの間にかあの子たちが先に行っちゃったじゃない……』
三┏(@∀@-;)┛『僕のせいなの!? 二人とも早く早く!
二階で待ち伏せするんでしょ!?』バタバタギシギシ
o川*゚ー゚)o『アサピー、その急な階段上るのめっちゃ速いね』
〜(;-@∀@)『慣れてるからね! はあ、はあ、疲れてきた……』ドタ…ドタ…
o川*゚ー゚)o『慣れてるわりには体力無っ』
〜川д川『浮けばよくない?』フヨフヨ
(;-@∀@)そ『はっ、その手があったか……!』
o川*゚ー゚)o『幽霊であることに慣れてないね』
〜┏(;-@∀@)┛『……いや、僕は、自分の……プライドを……貫、く……!!』ゼーハーギシギシ
o川*゚ー゚)o『わぁ死にそう。幽霊なのに』
川д川『捨てろそんなプライド』
18
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:30:15 ID:ixEOH8I.0
('A`)「……」
(,,;Д;)「い、行った……?」
(;*゚-゚)「足音、通り過ぎていったみたい……」
(,,;Д;)「すごいハッキリ聞こえた! ドタドタって!」
(;*゚ー゚)「ていうか、ギコくん泣いてる?」
(;,うД゚)「え、あ、違う! えっと、その、埃が目に染みて……」
(;*゚-゚)o"「たしかに、さっきの足音で埃が舞い上げられたもんね……けほっ」
川#д川『こら、アサピー! アンタがバタバタ走ったせいで埃が舞ったじゃない!』
(;-@∀@)『そ、それも心霊現象のひとつってことで……』
川#д川『私たちは驚かせたいだけで、健康を害したいわけじゃないでしょ! 謝って!』
('A`)
('A`)(……なんか)
('A`)(全部見えてるから、俺だけすげー茶番……)
19
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:31:03 ID:ixEOH8I.0
(;-∀-)"『ご、ごめんなさい……』ペコリ
(;・∀・)っ『あっ、眼鏡が落ちちゃった!』カシャン
(;,゚Д゚)そ「な、何の音!?」ビクッ
(;*゚-゚)「何か落ちた?」
(;,゚Д゚)σ「あ……あそこ、眼鏡だ!」
三(;*゚-゚)「眼鏡? なんでこんなところに……。とにかく行ってみよう!」タタタ
(;,゚Д゚)「あっ、待って待って! 俺この階段そんなに早く駆け上がれない!」
20
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:32:00 ID:ixEOH8I.0
(((;・∀・)っ メガネメガネ
(;*゚-゚)「なんで廊下の真ん中に眼鏡が……。どこから落ちたの?」
⊂(・∀・;))) メガネメガネ
(;*゚-゚)「近くにものが置ける場所はないのに……一体どこから?」
('A`)(そこで眼鏡眼鏡言いながら這いつくばってる奴からだよ……)
(((;・∀・)っ メガネメガネ
o川*゚ー゚)o『ねーアサピー、狭い廊下で這いつくばらないでよー。ジャマだよー』
(;・∀・)『じゃあ僕の眼鏡拾ってよ……』
o川*゚ー゚)σ『えー……あ、女の子が拾おうとしてるよ』
(;・∀・)『えっ?』
21
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:33:00 ID:ixEOH8I.0
(;,゚Д゚)「ま、待てしぃ! 触らない方がいいぞ!」
(;*゚ー゚)っ「えっ、どうして?」
(;,゚Д゚)「だ、だって、危ないだろ!? 触ったら取り憑かれるとか……」
(;・∀・)『人の眼鏡をなんだと思ってるんだ! 眼鏡に指紋がつくだけだよ!』
(;*゚ー゚)っ「眼鏡に取り憑かれるって……そんなことあるかなあ……」
(;,゚Д゚)「それに、もしかしたら罠かもしれないし!」
(;・∀・)『罠って何!? 罠に眼鏡を使うことある!?』
(;*゚ー゚)っ「この眼鏡が罠?」
(;,゚Д゚)「そうだ、これは呪いの眼鏡だ!!」
(;・∀・)『人の眼鏡を勝手に呪具にするな!! 失礼だぞ!!!』
('A`)(全部真っ当な意見だ……)
22
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:34:26 ID:ixEOH8I.0
(;*゚ー゚)っ「考えすぎじゃないかな……」
(;,゚Д゚)「何かあってからじゃ遅いんだぞ!? なんか嫌な予感がするんだよ……!」
(;・∀・)『勝手な予感やめてくれない!?』
('A`)(心霊スポットでの嫌な予感が本当に気のせいなことってあるんだ……)
(;,゚Д゚)(クソ、このままじゃしぃが呪われてしまう……!
どうにかしなきゃ……)
(;,゚Д゚)(俺が……俺がしぃを守るんだ!!)
(;*゚ー゚)っ「とにかく、ちょっと拾ってみるね」
(;,゚Д゚)「下がれ、しぃ!!」
(;*゚-゚)「え? な、なに?」
「しぃは俺が守る!!」(#,,゚Д゚)┌┛’,;’;≡三三 -@-@ ガシャーン
(;・∀・)『人の眼鏡なに蹴ってんの!!?!?!?』
.
23
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:35:13 ID:ixEOH8I.0
(;,゚Д゚)=3「あぶねー……間一髪だった……」
(;・∀・)『え……なに!? なんで!? なんでこんなことするの!!?』
(;*゚-゚)「びっくりした! 何やってるのギコくん!?」
(;・∀・)『えぇ……こわ!! 人間こわ!!! 怖!!!!』
(;'A`)(幽霊の方が怖がってる……)
(;,゚Д゚)「しぃを守らなきゃと思ったら体が勝手に……」
(;・∀・)『だからって蹴ることなくない!? 器物損壊!! 器物損壊!!』
(;*゚-゚)「私を守る……? もしかして近くに幽霊が迫っていたの!?」
(;,゚Д゚)「え……いや、それは知らないけど……。
でも、あの眼鏡は絶対呪われてるって思ったから! しぃを守ろうと思って!」
(;*゚-゚)「そ、そう……」
川д川『彼女ドン引きでウケる』
o川*゚ー゚)o『ウケる〜』
(;・∀・)『僕はウケないんだけど!!』
(;'A`)(かわいそうに……)
24
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:36:11 ID:ixEOH8I.0
(;*゚-゚)「……もし本当に呪いの眼鏡だったら、ギコくんが危ないんじゃない?」
(;,゚Д゚)「えっ? なんで」
(;*゚-゚)「だって、眼鏡蹴ったし……粉々になっちゃってるし……」
・;'.、←アサピーの眼鏡だったもの
(;*゚-゚)「ギコくんが呪われちゃうんじゃない?」
(;,゚Д゚)「そ、そんな……」
(;・∀・)『その手があったか……! よし、呪ってやる!』
(;'A`)(椎名さんがヒントを与えてしまった……)
(;・∀・)ノシ『えい、えい、呪ってやる!』ペシペシ
(;'A`)(呪い方それでいいのか……)
(;・∀・)ノシ('A`) ペシペシ
('A`)
('A`)(どうして……)
25
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:36:56 ID:ixEOH8I.0
ペシペシ(;・∀・)ノシ('A`)(なんで……どうして俺がこんな目に……)
o川*゚ー゚)o『アサピー、その子違うよー?』
(・∀・;)ノシ『えっ!? でも僕、眼鏡ないと何にも見えないから分かんないよ』ベシベシ
('A`)「あ、痛い……ちょっとだけ痛い……」
(;,゚Д゚)「痛い!? どうしたんだ鬱田!?」
('A`)「いや……ちょっと……頭が……」
(;,゚Д゚)「頭が痛いのか!? 霊障!? 霊障だな!!?」
('A`)(霊障だけれども……)
(;,゚Д゚)「まさか……眼鏡の呪い!?」
('A`)(そうだけども……)
(;,゚Д゚)「クソッ……幽霊め! 鬱田を狙うなんて卑劣な……! せめて俺を狙えよ……!」
('A`)(本当にそう……)
26
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:37:49 ID:ixEOH8I.0
川#д川『こらアサピー! その子は蹴った子じゃないでしょ!
蹴った子だとしても暴力はダメよ!』
(;'A`)(暴力と言うには貧弱すぎるけど……)
(;・∀・)"『う……ごめんなさい……』ペコリ
o川*゚ー゚)o『キューちゃんに頭下げられても……』
(;・∀・)『眼鏡ないと本当に何も見えなくて……』
o川*゚ー゚)b『えー、じゃあこの指何本に見える?』
(;・∀・)『うーん、12本くらい……?』
川д川『手の構造をご存知でない?』
(;'A`)「……もう頭痛くないし、先行こうか……。
またわちゃわちゃしてるから今のうちかも……」
(;,゚Д゚)「だからそのわちゃわちゃしてるって何!? 何が!?」
27
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:39:00 ID:ixEOH8I.0
砕け散った眼鏡を尻目に、手近な部屋へと入る。
どうやら子供部屋のようで、埃っぽい人形が散乱していた。
ベッドの上にはくしゃくしゃの布団と、頭の形にへこんだ枕が佇んでいる。
埃っぽさとは裏腹に、つい最近まで人が住んでいたかのように見えた。
(;*゚-゚)「……なんか、妙に生活感があるね?」
(;,゚Д゚)「あ……! なあ、写真があるぞ! なんか気味悪いけど……」
埴谷が写真立てを掴み、こちらへ向けた。
写っていたのは、髪の長い女性と眼鏡を掛けた男性、そして中学生くらいの女の子だ。
写真の中の女性と男性は楽しそうに笑っている。
ただ、奇妙なのは女の子の顔だけが真っ黒に塗りつぶされていることだ。
(;'A`)「この人たち……」
見覚えがあった。
写真の中の人物は、間違いなくここの幽霊たちだ。
生前の姿なのだろうか。明るい室内に表情といい、生気が感じられる。
(;'A`)(なんで、あの女の子だけ塗り潰してあるんだ……?)
(;*゚-゚)「ねえ、本棚にアルバムがあったんだけど……」
椎名が差し出すアルバムを見て、思わず絶句した。
写っているのはあの幽霊たち三人。やはり女の子の顔だけは全て執拗に塗りつぶされていた。
28
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:40:24 ID:ixEOH8I.0
(;,゚Д゚)「なんで、この子だけ……」
(;*゚-゚)「自分で塗った……とは思えないよね。誰かにやられたのかな……」
三人でアルバムを囲んでいると、突如周囲が青白く照らされた。
スマホのライトではない。その光源は宙に浮いている。
まるで、その写真を見るなと警告するように。怒気を振り撒く二つの火の玉が漂っていた。
(;,゚Д゚)「ひ、ひ、人魂!!」
埴谷が飛び退き後ずさる。弾みでアルバムが投げられ、壁にぶつかった。
どさりと音を立て、アルバムはページを開いたまま力なく床に横たわる。
人魂はアルバムにゆっくりと近づき、守るようにふわふわと浮いていた。
(;*゚-゚)「人魂……初めて見た……。こんなにはっきり見えるなんて……」
(;,゚Д゚)「ア、アルバム、見ちゃダメだったんだよ! 呪いのアルバムだ!」
(;*゚ー゚)「なんでもかんでも呪いのアイテムにするじゃん……」
(;,゚Д゚)σ「だって、人魂が守ってる! 絶対見ちゃダメなやつだったんだよ!
祟られる! 祟られるよ!!」
(;*゚ー゚)っ「……とりあえず、本棚に戻しておいた方が……」
椎名が手を伸ばした瞬間、アルバムはばたりとひとりでに閉じた。
触るな、と。明確な怒りが込められた動作だった。
(;,゚Д゚)「今、勝手に……!? しぃ、ヤバいって! やめた方がいい!」
(;*゚-゚)「で、でも……」
('A`)「……」
29
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:42:18 ID:ixEOH8I.0
o川#゚Д゚)o『もー! 見ちゃダメだってば!!』
(;・∀・)『キュート、怒りすぎだって……』
o川#゚-゚)o『だってだって、キューちゃんの盛れてない写真をまじまじと見るんだもん!
キューちゃんはかわいく盛れてる写真しか見られたくないの!』
川д川『別に顔見えないしいいでしょ……。
自分で自分の顔ぜーんぶ塗りつぶしたんだから……』
o川#゚д゚)o『それでも嫌なの!
大体、誰!? 写真立てに盛れてないキューちゃんの写真を飾ったの!』
(;・∀・)『僕だけど……』
o川#゚д゚)o『なんでそんなことするの!?
そもそもここキューちゃんが使ってる部屋だし!
盛れてないキューちゃんの写真をこの部屋に飾るだなんて嫌がらせのつもり!?』
(;・∀・)『そんなつもりはないよ! その写真、僕の写りが良かったから飾ったんだ!
僕の盛れてる写真を見たら癒されるかなって……』
川д川『別種の嫌がらせじゃない』
o川*゚-゚)o『え……そんなに盛れてなくない……?』
(;・∀・)『急に真顔になるのやめて……』
(;*゚ー゚)っ「本棚に……」
(;,゚Д゚)「しぃ、やめとけ! アルバムに触るな!」
川#゚д゚) ≡o ≡o『あっ、見ないでってば! 人魂アタック!』シュバッ
(;*゚-゚)「わ、人魂がこっちに……!」
(;・∀・)『キュートのそれって人魂だったの? さっきは手じゃなかった?』
o川#゚-゚)o『キューちゃんのこれは万能なの!』
30
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:43:12 ID:ixEOH8I.0
('A`)「……」
(;,゚Д゚)「う、鬱田! このアルバム、絶対触らない方がいいよな!?
呪いのアルバムだよな!?」
('A`)「……まあ、うん。やめといた方がいいんじゃない?
人魂アタックが飛んでくるし……」
(;,゚Д゚)「人魂アタック……? なんだそのネーミング? センス無さすぎるだろ……」
川#゚д゚) ≡o ≡o『ちょっと、キューちゃんにケチつける気!? 許さないんだから!』シュバッ
o(;,゚Д゚)o「う、うわーー!! 人魂が!! 助けて!!!」
川д川『それにしても、全部の写真を塗りつぶすことはなかったんじゃない?
撮ってる時はあんなに楽しそうだったのに……』
( ・∀・)『心霊写真イエーイ!!って言って大はしゃぎだったのにね』
川д川『ノリノリで背景を明るく加工したり、生きてる人間みたいな顔色にしてたのに』
o川*゚ぺ)o『だって、よく見たらキューちゃんがかわいくなかったんだもん』
川д川『可愛いわよぉ?』
o川*゚ぺ)o『キューちゃんは右斜め上24度から撮った写真がいちばんかわいーの!』
( ・∀・)『分度器ないと撮れないじゃん……』
31
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:44:06 ID:ixEOH8I.0
(;,゚Д゚)「なあ、この家絶対ヤバイよ!
ずっと怪奇現象ばっかり起こってるじゃんか!」
('A`)「まあ……うん。怪奇現象だね」
(;*゚ー゚)「たしかに、不可解なことがたくさん起こってるもんね」
(;,゚Д゚)「もう帰ろうぜ! ずっとこんなところにいたら呪い殺されるって!」
(*゚ー゚)「えー、でもまだギコくんが幽霊を倒すところ見てないよー」
(;,゚Д゚)「そ、それは……眼鏡を倒したから!」
(;*゚-゚)「それカウントするの?
正直、ギコくんが眼鏡を蹴り砕いたのが今日一番の怪奇現象なんだけど……」
(;,゚Д゚)「え……」
(;'A`)(埴谷が幽霊に勝った……)
(*゚ー゚)「まあ、これ以上ここにいてもギコくん以上の怪奇現象は起きなさそうだし……。
もう帰ってもいいかなぁ。時間も遅くなってきたし」
(;,゚Д゚)「え、そんなに? そんなに怖かったの俺……」
32
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:45:14 ID:ixEOH8I.0
('A`)「……帰るんなら今がチャンスかもね。
まだわちゃわちゃやってるみたいだし」
(;,゚Д゚)「だからそのわちゃわちゃやってるって誰の話なんだよ……」
川#д川『ちょっと待って、私たちよりも眼鏡を蹴った子の方が怖かったって言わなかった!?』
( ・∀・)『生きている人間がいちばん怖いんだよ……』
o川*゚ー゚)o『キューちゃん達とは別ジャンルの怖さだからよくない?』
川#д川『幽霊としてのプライドが許せないのよ……!
絶対に今日一番の恐怖を与えてからじゃないと帰せないわ!』
('A`)「……やっぱりチャンスじゃなかったかも」
(;,゚Д゚)「ピンチってことか!? 早く逃げなきゃ恐ろしい目に遭うってことだな!!?」
('A`)「まあ……………………うん。そうかもね……」
(;,゚Д゚)っ「しぃ! 逃げるぞ!」
(;*゚ー゚)「うん……。あ、手は繋がなくて大丈夫だよ。一人で歩けるし……」
(;,゚Д゚)っ(やんわり断られた……)
33
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:46:13 ID:ixEOH8I.0
傾斜の大きい階段を降りてゆき、最後の一段から足を離す。重さを失った階段が小さく鳴った。
ひと足先に階段を降り切った椎名と合流する。
(;,゚Д゚)「ま、待ってくれ! 置いていかないで!」
(*゚ー゚)「置いていかないから大丈夫だよー。転ばないよう気をつけてね」
埴谷はこの階段がどうにも慣れないらしく、恐る恐る歩いている。
しきりに後ろを確認し、幽霊が仕掛けてこないか気にしているようだ。
('A`)(あいつら、来ないな……)
恐怖を与えると息巻いていた幽霊たちは未だに来る気配がない。
今のうちだと捉えるべきか、それとも機を窺っているのか。
埴谷が最後の一段を降りた。
安心したように埴谷の顔が緩む。その油断を待っていたかのように。
埴谷の足首を、青白い手が掴んだ。
.
34
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:47:27 ID:ixEOH8I.0
(;,゚Д゚)「う、うわ! 足が!」
(*゚ー゚)「足? 足がどうしたの?」
(;,゚Д゚)「掴まれてる! 足、掴まれてる!」
(;*゚ー゚)「え? 何も見えないけど……」
困惑する椎名をよそに、埴谷は手から逃れようと必死で足を振り回す。
しかし、手は一切離れる様子がない。真っ黒な爪が埴谷のスラックスに皺を作っていた。
(;,゚Д゚)「は、離れない!」
埴谷はしゃがみ込み、足首に手を伸ばす。
手を引き剥がそうと試みるが、青白い手は足をぎゅっと握り締め、離す気はないようだ。
(;,゚Д゚)「離し……え、うわ! 何だこれ!?」
(;*゚-゚)「ギコくん!?」
(;,゚Д゚)「手……俺の手が……!」
埴谷の手、その指先にくっついた爪。10個あるその全てが、黒く染まっている。
足を掴む手に侵食されたかのように、急速に埴谷の手を蝕んだ。
(;*゚-゚)「爪が内出血してる……!? どうしてこんな急に……」
(;,゚Д゚)「とにかく逃げ……うわっ、と!」
突如、埴谷が大きくバランスを崩した。
足首の手が離れたらしく、よろめいたがどうにか立ち直る。
(;,゚Д゚)「に、逃げるぞ!」
すかさず叫び、駆け出した。タックルのような勢いで玄関へと飛びつく。
ドアに縋りついた埴谷は安堵の表情に満ちていた。これで帰れる、と。
しかし、扉は開かなかった。
鍵はかかっていない。ドアノブだって動く。にもかかわらず扉は無常にも沈黙を保っていた。
(;,゚Д゚)「閉じ込められた……!?」
埴谷が悲痛な声を上げる。その声色には絶望が滲んでいた。
35
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:49:18 ID:ixEOH8I.0
(;*゚-゚)「あ、開かないの!?」
(;,゚Д゚)「しぃ、手伝ってくれ! 無理やり開ける!」
(;*゚-゚)「わかった!」
埴谷と椎名が二人並んで扉を押す。
ギシギシ、ギリギリと扉は嫌な悲鳴を上げていた。
(;,゚Д゚)「なんとか……っ、開けられそう……!」
埴谷の目に希望が宿った。
ぴたりと閉じていた扉は、わずかに隙間ができている。
(;,゚Д゚)「早く、外に……」
背後から、声が聞こえた。
低く唸る声。怒っているとも悲しんでいるともとれる呻き声。
帰るな、と。言っているような気がした。
(;,゚Д゚)「……は、早く!!」
埴谷の声が焦燥で震える。
ドアノブを握り締め、滅茶苦茶に上下する。
(;*゚-゚)「ヒッ……!」
扉を押していた椎名が短く悲鳴を上げた。
恐怖に塗れた瞳は、自身の手に釘付けになっている。
(;,゚Д゚)「しぃ、それ……!」
椎名の爪が真っ黒に染まっている。
埴谷の手、そしてあの髪の長い霊と揃いのものだ。
.
36
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:50:17 ID:ixEOH8I.0
掠れた唸り声が近づいてきた。
ずるずる、体を引きずる音と共にじわじわと距離を詰めている。
(;,゚Д゚)「クソッ……! 開け! 開いてくれ!!」
焦る埴谷とは裏腹に、扉はわずか数センチほどしか開かない。
まるで期待を持たせ、嗤っているかのようだった。
(,,;Д;)「なんで、なんで開かないんだ!!」
埴谷が力任せに扉を叩く。当然、そんなことをしても扉が開くわけがない。
床を擦る音は、すぐ後ろに迫っていた。
.
37
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:51:44 ID:ixEOH8I.0
('A`)
(( 川っ; д川っ『うう……待って……もうちょい待って……!
まだ今日一番の恐怖を与えられていない……!!』ゼーハーズルズル
o川*゚ー゚)Ф"『貞子、なんでそんなに疲れてるのー?』
川っ; д川っ『足首を掴むのに全ての握力を注ぎ込んだから……』
o川*゚ー゚)Ф"『だからって倒れることはなくない?』
川っ; д川っ『筋力の全てを握力に集約したから……全身に力が入らない……』
扉|ヽ(・∀・ヽ;):『ねえー!! こっち手伝ってー!! もうドア抑えきれないからーー!!!』グググ
o川*゚ー゚)Ф"『え、キューちゃん今ネイルしてるから無理』ヌリヌリ
扉|ヽ(・∀・ヽ;):『今ネイルすることある!? 逃げられちゃうよ!?』ググググ
o川*゚д゚)Ф"『今、女の子に黒いマニキュア塗ってるとこなの!!
アサピーは一人でなんとかして!!』ヌリヌリ
(,,;Д;)o"「開いてくれ! 開いてくれー!!」ドコドコ
扉|ヽ(・∀・ヽ;):『あー叩かないで!!!!!』グググググ
o川*゚ー゚)Ф"『そういや貞子の爪もマニキュアなの?』
川っд川っ『いや、私は普通に爪下血腫』
扉|ヽ(・∀・ヽ;):『会話してないで手伝ってってば!!!!!!』ググググググ
.
38
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:52:46 ID:ixEOH8I.0
('A`)「……」
(,,;Д;)「鬱田はなんでずっと見てるだけなんだよ! 一緒に押してくれ!!」
('A`)「あー……うん」
扉|ヽ(・∀・ヽ;):『あっ、待って流石に三人は無理……』グググググググ
扉| 『う、うわーーーーーー!!!!!?』ゴロゴロゴロゴロ
('A`)(めっちゃ転がっていった……)
三(,,;Д;)「あ……開いた! 開いたぞ!! 逃げよう!!」ダッ
三(;*゚-゚)「う、うん!」ダッ
o川;゚д゚)Ф『あ、待って待って! まだ塗り終わってない!』
川っ; д川っ『まだ今日一番の恐怖を……! あーあ、行っちゃった……』
('A`)「……」
('A`)(俺だけぜーんぶ茶番だったなぁ……)
39
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:53:54 ID:ixEOH8I.0
川っд川っ『……あなたは帰らないの?』
('A`)「いや、帰るけど……」
o川*゚ヮ゚)Ф『あ、キューちゃんのネイル待ち? キューちゃん上手いから任せといて!』
('A`)「いや……うちに除光液ないからマニキュア落とせないし……やめてほしいかな……」
o川*゚ぺ)Ф『えー、つれなーい』
扉|;・∀・)『あー、ひどい目に遭った……。30メートルくらい転がったよ……』ヒョコッ
('A`)"「あ、どうも……」ペコッ
(;・∀・)"『え? あ、どうも……。まだ帰ってなかったんだ……』ペコッ
('A`)「いやまあ、すぐ帰るけど……」
(;・∀・)『あ、そうだ! あの子に眼鏡を弁償するよう言っといて!』
('A`)「ああ、うん……。伝えとく……」
40
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:54:55 ID:ixEOH8I.0
(;,゚Д゚)「おい、鬱田大丈夫か!? 生きてるか!?」
川っд川っ『あ、お友だち呼んでるわよ』
('A`)「ああ……そろそろ行きます。おじゃましました」
o川*゚ー゚)ノシ『また来てねー!』
('A`)「いや、もう来ないかな……」
(;・∀・)『えー、もう来ないのー?』
川っд川ノシ『もう遅いから気をつけて帰りなさいね』
( ・∀・)ノシ『車に気をつけてー!』
('A`)ノシ(あたたかく見送られた……)
41
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:55:34 ID:ixEOH8I.0
(;,゚Д゚)「鬱田! よかった、心配したんだぞ!」
(;*゚-゚)「なかなか出てこないから、何かあったのかと……」
('A`)「心配かけてごめん、なんともないよ」
(;*゚ー゚)「それならよかった……」
('A`)「あ、そうだ。埴谷、眼鏡を弁償してほしいってさ」
(;,゚Д゚)「え!? 俺金ないからうまい棒でもいいかな……」
('A`)「あー……まあ、いいんじゃない?」
(;*゚ー゚)「よくないんじゃない!?」
42
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 21:59:19 ID:ixEOH8I.0
(;*゚ー゚)「それにしても、色々と不思議なことが起きたね……」
(;,゚Д゚)「そうだな……でも、終わってみると案外楽しかったかも」
(*゚ー゚)「怖いこともいっぱいあったけど、いい思い出になったね!」
(,,*゚Д゚)「おう! いい初デートだったな!」
(;*゚ー゚)「……初デート?」
(,,゚Д゚)「え?」
(;*゚ー゚)「デート……? ギコくんはデートのつもりだったの……?」
(;,゚Д゚)「えっ、だって付き合ってから一緒に出かけるのはこれが初めてだろ?」
(;*゚ー゚)「付き合っ……?」
(;,゚Д゚)「え? しぃに付き合ってって言われて、俺が付き合うって返したじゃん……」
(;*゚ー゚)「そんなやりとりをした覚えは……。
あ、もしかして私が『心霊スポットに付き合って』って頼んだ時のこと言ってる?」
(;,゚Д゚)「それは『恋人になって心霊スポットデートしよう』ってことじゃ……」
(;*゚ー゚)「え、何その解釈……。
悪いけど、ギコくんのことは友達としか思えないかな……」
(;,゚Д゚)「えっ……」
(;*゚ー゚)「……」
(;,゚Д゚)「……」
('A`)「これが今日一番の恐怖だな……」
川д川『完敗ね……』
('A`)「あ、いたんだ……」
.
43
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:01:12 ID:ixEOH8I.0
('A`)副音声つきホラースポットのようです
おしまい
(
)
i フッ
|_|
.
44
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:07:19 ID:xRduOox60
乙乙!
可愛いし面白い
45
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 22:18:55 ID:dZZNhDgM0
ホラーかと思ったら可愛い作品
まあ確かに見えない人からしたらホラーだわ
乙
46
:
名無しさん
:2022/08/14(日) 23:32:28 ID:QmtRETwo0
乙です
47
:
名無しさん
:2022/08/15(月) 02:55:28 ID:XIPvo5W.0
おつおつ
こういうの大好きだ
48
:
名無しさん
:2022/08/15(月) 06:31:57 ID:/cC.tMS60
みんな可愛い、ギコだけが怖い話だった
乙
49
:
名無しさん
:2022/08/15(月) 12:35:00 ID:xB0njvGc0
乙
こういうほのぼのホラーコメディが好物なんだ
50
:
名無しさん
:2022/08/18(木) 13:38:57 ID:0AGU6CwI0
始終わちゃわちゃしてて最高にかわいくて面白かった
ほんと大好き
51
:
名無しさん
:2022/08/18(木) 22:26:16 ID:hNWhPio.0
乙乙
キューちゃんにネイルしてもらいたい
52
:
名無しさん
:2022/08/21(日) 17:58:55 ID:Lwaev1wc0
眼鏡だけ実体でもう死んだ
乙
53
:
名無しさん
:2022/08/27(土) 16:36:45 ID:rbMY661Y0
乙
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板