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翠は川で、光るようです

1名無しさん:2022/08/07(日) 22:48:05 ID:KPv9ACtM0
百物語のようです2022参加作品

  .,、
 (i,)
  |_|

2名無しさん:2022/08/07(日) 22:53:57 ID:KPv9ACtM0
百物語のようです2022参加作品

  .,、
 (i,)
  |_|

3名無しさん:2022/08/07(日) 22:54:53 ID:KPv9ACtM0
ζ(゚ー゚*ζ「待ってよー!ツンちゃん!」


ササのような葉っぱと、もも色の花の木の道を走る。


ξ゚⊿゚)ξ「早く!やっと荷ほどきが終わったんだから!今日こそはこの辺りを探検するわよ!」

ζ(>ー<*;ζ「ひぃ〜!待ってよぉ〜!」









翠は川で、光るようです







.

4名無しさん:2022/08/07(日) 22:56:04 ID:KPv9ACtM0
J( 'ー`)し「あらぁ、田上に引っ越してきた子けぇ?」

ξ゚⊿゚)ξ「あっそうです。こんにちはー!」

ζ(゚ー゚*ζ「こんにちはー!」

農作業をしているおばあちゃん。
こんなに熱い中でもニコニコしていて、こっちまで元気になっちゃう。

お年寄りってすごいなあ。


J( 'ー`)し「お水取りんさいねぇ〜。」

ξ゚⊿゚)ξノシ「「はぁーい!」」ζ(゚ー゚*ζノシ



テクテク

テクテク

ξ゚⊿゚)ξ「なーんだ、田んぼばかりねえ。」

聞こえるのは、わたし達の足音だけ。

ζ(゚ー゚*ζ「お店って、家の先にしかなかったんだねえ。」

ξ゚⊿゚)ξσ「つまんなーい…って、あら?あれ何かしら?」


ツンちゃんの指の先には、緑色の鳥居。


ζ(゚、゚*ζ「へんなのー。緑色だね。」

ξ゚⊿゚)ξ「他に行くとこもないし、行ってみましょ!」

ζ(゚ー゚*ζq「だね!ゴーゴー!」

5名無しさん:2022/08/07(日) 22:58:12 ID:KPv9ACtM0
ちょっぴりうす暗い林をズンズン進むと、一部だけぽっかりと陽の当たる場所に出た。

ξ*゚ワ゚)ξ「わっ!なにここ!」

ζ(゚ー゚*ζ「キレ〜。」

さっきの湿っぽい土と木の根の道とはちがって、そこだけ大きな砂場みたい。
陽の光は春みたいにふんわりとしていて、すごく気持ちが良い。

ζ(゚ー゚*ζ「あ、人がいる!」

ξ゚⊿゚)ξ「わたし達と、年が近そうな子達っぽいわね。」

ζ(゚ー゚*ζ「ねーねー、行ってみようよ!」

ξ*゚⊿゚)ξ「そうしましょ!」

近付くと、棒と虫取りセットを持った男の子と、わたし達より少しだけ年上そうなお兄ちゃんがいた。

('A`)「んっ?ダレだぁ?」

ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは〜。」

ξ゚⊿゚)ξ「わたし達ね、最近この村に引っ越してきたの。今は探検してるのよ。」

('A`)「へー。」

ξ*゚⊿゚)ξ「良かったら、仲間に入れてくれない?」

('∀`)「いーぞ!人数は多い方が良いからな!」

ζ(>ワ<*ζ「やったー!」

6名無しさん:2022/08/07(日) 22:59:54 ID:KPv9ACtM0
ξ゚⊿゚)ξ「わたしはツン。こっちはデレ。よろしくね。」

ζ(゚ー゚*ζ「ふたごの5年生だよー!そっちはー?」

('A`)「オレはドクオ。同じく5年生。こっちは」

( ^ω^)「ぶぅぅぅぅ…ン」

おやつを口につめこんだまま、返事をした時みたいな声。

('A`)「そそ!ブーンにーちゃん。」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、ドクオのお兄ちゃんなの?」

(*'A`)「いや。オレにーちゃんいないから、そう呼んでるだけ。」

ζ(゚ー゚*ζ「わたし達も、お兄ちゃんって呼んで良い?」

(*^ω^))コクン

ξ*゚⊿゚)ξ「やった!」

7名無しさん:2022/08/07(日) 23:01:58 ID:KPv9ACtM0
それからわたし達は、ドクオ君の持っていた虫カゴの中を見せてもらった。

ξ゚⊿゚)ξ「わっ、カブトムシ!こっちはクワガタ?」

ζ(゚ー゚*ζ「大量だね!」

(*'A`)「へへ、にーちゃんが取っておいてくれたんだ!」

ξ゚⊿゚)ξ「どこにいたの?」

ツンちゃんがそう聞くと、お兄ちゃんは自分がせもたれにしている木を指差した。
平がなの『く』みたいに、すごく曲がった変な木。
その辺りだけ、草がワサワサしてる。

お兄ちゃんは切りかぶに座っている。
もとは二股で、その切りかぶとつながっていたみたい。

ξ゚⊿゚)ξ「へぇ、たった1本なのに、こんなにたくさんいるものなのね。」

ζ(゚ー゚*ζ「お兄ちゃん、名人だね!」

(*^ω^)ゞ テレテレ

(;'A`)「あ、そっか!今日はもう虫取りしたから帰らなきゃ。ケースに入れてやるんだ。」

ξ゚⊿゚)ξ「えー。じゃあ、わたし達も帰る?」

ζ(゚、゚*ζ「そうしよ。明日もここ来るー?」

('∀`)「もっちろん!」

8名無しさん:2022/08/07(日) 23:03:06 ID:KPv9ACtM0
ドクオ君がそう言うと、お兄ちゃんがドクオ君に何かを投げた。

ξ;゚⊿゚)ξ「きゃっ!?」

ζ(゚ー゚*;ζ「なっ、なに?!」

そして、わたし達にも。
手でキャッチして見てみると、それは緑色の石。

ζ(゚ー゚*ζ「きれい!これ、なあに?」

('∀`)「ヒスイだよ。ここら辺はサンシュツ地なんだ。にーちゃんはヒスイ取りも名人だよ。」

ξ*゚⊿゚)ξノシ「ありがとうお兄ちゃん。何でも出来るのね!」

(*^ω^)ゞ テレテレ

ζ(゚ー゚*ζノシ「ありがとー!バイバーイ!」

9名無しさん:2022/08/07(日) 23:04:25 ID:KPv9ACtM0
ドクオ君とは鳥居ですぐバイバイして、二人でまた来た道へ。

ξ゚⊿゚)ξ「本当キレイねぇ、この石。」

ζ(゚ー゚*ζ「ねね、ブーン君って『6階のキミ』の風太君に似てない?」

『6階のキミ』は、わたし達が読んでいる少女マンガ。主人公が入院中に風太君に恋をして、先に退院してからは風太君のおみまいに通う。
でも実は、二人は子どものころに一度会っていて…というストーリー。

ブーンお兄ちゃんも真っ白な着物を着ていて、ずっと座ってる。やさしくニコニコしてるとこも、同じ。

ξ*゚⊿゚)ξ「そうね。顔は丸いけど、明るいかみの色なんか似てるかも!」

ζ(^ー^*ζ「明日も楽しみだね!」

ξ゚⊿゚)ξ「そうだけど、遊ぶために勉強もちゃんとしなきゃね!」

ζ(>ー<*;ζ「ひぃ〜!」

10名無しさん:2022/08/07(日) 23:05:29 ID:KPv9ACtM0
ξ゚⊿゚)ξ「「ただいまー!」」ζ(゚ー゚*ζ

ミセ*゚ー゚)リ「お帰りなさい。ってあら?二人共何持ってるの?」

ξ゚⊿゚)ξ「「ヒスイー。村のお兄ちゃんにもらったの!」」ζ(゚ー゚*ζ

ミセ*゚ー゚)リ「きゃー、凄いわね!見せて!」

ミセ;*゚Д゚)リ「えっ…ちょ、これ本翡翠じゃないの!?デカ…ここら辺で翡翠が取れるとは聞いてたけど……」

ミセ;*゚ー゚)リ

ミセ;*゚∀゚)リ「ね…ねぇ、二人共。1つ1万で売ってくれない…?」

ξ;゚⊿゚)ξ「「え、やだよー!!」」ζ(>ー<*;ζ

ξ;゚⊿゚)ξ「デレ、部屋に逃げよ!」

ζ(゚ー゚*;ζ「うん!」

パタパタパタ


ξ;゚⊿゚)ξ「がめついママのことだから、きっと3倍はするわよ。」

ζ(゚ー゚*;ζ「2つでマンガ100冊は買えるくらい…?すごーい…。」

ξ゚⊿゚)ξ「押入れにかくしときましょ!」

ζ(゚ー゚*ζ「うん!」

11名無しさん:2022/08/07(日) 23:07:31 ID:KPv9ACtM0
________________________

ξ゚⊿゚)ξ「「おはよー!」」ζ(゚ー゚*ζ

('A`)「おはよ!」

(*^ω^)

ξ゚⊿゚)ξ「ねーねー、お兄ちゃん。昨日のヒスイってどこで拾ったの?」

( ^ω^)σ チョイチョイ

お兄ちゃんは自分の後ろに続く、林のおくの方を指差した。
少し下ったところに、川が見える。

('A`)「拾いに行くか?」

ζ(゚ー゚*ζ「いくー!」

ξ゚⊿゚)ξ「お兄ちゃんも、はやくー!」

( ^ω^)ノシ


お兄ちゃんは、ついてこないみたい。

12名無しさん:2022/08/07(日) 23:09:06 ID:KPv9ACtM0
ξ*゚ワ゚)ξ「「わあっ!」」ζ(゚ワ゚*ζ

急な坂が怖かったけど、目の前にはとってもきれいな川。
川の底まで見えるし、周りの石がカラフルなの。

('A`)「だれが一番多くヒスイが取れるか勝負だな!」

ξ゚⊿゚)ξ「よーし、負けないわよっ!」

……………
………


ζ(゚、゚*ζ「う〜ん、こんなもんかなぁ…」

わたしは、小さめの石を3つ。
外側は白いけど、うすい緑も混じってる。
でもどれも、お兄ちゃんからもらった石ほどきれいじゃない。

お兄ちゃんの石は、ラムネに入ったビー玉みたいにきれいだもん。

ξ゚⊿゚)ξ「落ちてる石は、みーんなほう石みたいに見えるけど、中々見つからないものねぇ。」

ツンちゃんはわたしより大きめの石を一つ。
ドクオ君は大きいのと小さいのを一つずつだった。

('A`)「やっぱりにーちゃんにはかなわないなぁ〜。」


なんだかみんなガッカリして、勝負はなかったことになった。

13名無しさん:2022/08/07(日) 23:09:54 ID:KPv9ACtM0
ζ(゚ー゚*;ζ「てかさ、あめんぼ多くない〜?」

わたしは後ろを向いた。
川の流れが一番ゆっくりしたところに、あめんぼがたくさんいる。

('A`)「ほんとだ。んー、『温暖化』ってやつ?」

ξ゚⊿゚)ξ「蚊じゃなけりゃ、何でも良いわw」

確かに!と、みんなで笑った。

あめんぼは、スイスイと動いて波紋を作ってる。
波紋ってむずかしい漢字だけど、最近アニメで見たから覚えちゃった。

でも、水に浮いているのって、ちょっとかわいそう。
川の底の石はスベスベしているし、水はこんなに冷たくて、気持ち良いのに。

14名無しさん:2022/08/07(日) 23:10:50 ID:KPv9ACtM0
('∀`)「じゃあさ、次はにーちゃんとこに戻ってあめんぼしよーぜ!」

ξ゚⊿゚)ξ「「あめんぼ?」」ζ(゚ー゚*ζ

('A`)「あ、知らない?こう、棒を持って回るやつ。」

そう言ってドクオ君は、コンパスみたいに自分を真ん中にして棒で円を描いた。

ξ゚⊿゚)ξ「「知らな〜い。」」ζ(゚ー゚*ζ

('A`)「じゃここで、棒を探してから戻ろう。」

ξ゚⊿゚)ξ「「うん!」」ζ(゚ー゚*ζ

('A`)「しっかりしてて長めなやつがいいぞ!」

ξ゚⊿゚)ξ「「は〜い!」」ζ(゚ー゚*ζ

……………
………


15名無しさん:2022/08/07(日) 23:11:55 ID:KPv9ACtM0
('A`)「ルールはカンタン。棒で円を描いて、円のはしが重なるように描き連ねる。10個20個重なったくし団子みたいって言えば分かるか?」

('A`)「それが、先にあっちの林に届いた方が勝ち!」


鳥居に向かう林。ここから見ると、帰り道。


ξ゚⊿゚)ξ「分かったわ!」

ζ(゚ー゚*ζ「負けないよー!」

('A`)「んじゃ、よーいっドン!」


○○○○○○○○○○○○('A`)  林
○○○○○○○ξ゚⊿゚)ξ
○○○○○ζ(゚ー゚*ζ

ξ;゚⊿゚)ξ「ダメ。全然勝てない!」

ζ(゚ー゚*;ζ「ドクオ君、強いねー。」

(*'∀`)「へへ、小さい頃から村の子はみんなこれで遊ぶからなー!」

(*^ω^)ニコニコ

……………
………


16名無しさん:2022/08/07(日) 23:13:00 ID:KPv9ACtM0
ζ(゚ー゚*ζ「えへへ、またお兄ちゃんにヒスイもらっちゃった。」

やっぱり、わたし達が見付けたヒスイよりも、うんときれい。
メロンのキャンディと一緒にしたら、まちがえて食べちゃいそう。

('∀`)「にーちゃんはいつも帰りにくれるんだ。オレはばーちゃんがくれた梅干しのビンに入れてるよ。」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃぁ、わたしも入れ物探そ〜。」

17名無しさん:2022/08/07(日) 23:14:48 ID:KPv9ACtM0
ξ*゚⊿゚)ξ「ねね、ドクオ!」

ξ*゚⊿゚)ξ「あめんぼ、明日もやりたいわ!」

帰り道、ドクオ君と別れる前にツンちゃんが言った。

('∀`)「おう!やろうやろう!」

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオ君は、これで遊ぶために昨日も棒を持ってたんだね〜。」

('∀`)「村の子は毎日持ってるよ!運動会でもやるし、もしお化けが出てきてもこうやってにげれば良いんだってさ!」

ξ;゚⊿゚)ξ「えっ…おばけ…?」

ζ(゚ー゚*;ζ「どういうこと??」

('A`)「?レーキュー車とかソー式の時に親指かくすだろ?それと同じだよ。」

ξ;゚⊿゚)ξ「あー、バリアね!」

ζ(゚ー゚*;ζ「口さけ女にポマード!みたいな?」

('∀`)「そそ!おれのじーちゃんは、運動会で1等賞とったこともあるんだってさ!」

ξ*゚⊿゚)ξ「へー!」

ζ(゚、゚*;ζ「ツンちゃんやばっ!そろそろマジカルペニサスが始まるよ!!」

ξ;゚⊿゚)ξノシ「いけない!またね、ドクオ!!」

('∀`)ノシ「おー!また明日!」

ζ(゚ー゚*ζノシ「またねー!」


みんなで棒を振りながら、バイバイした。


………


ξ゚⊿゚)ξq「「マジカルペニサス、間に合ったぁ〜!」」pζ(゚ー゚*ζ

ツンちゃんとガッツポーズ!

18名無しさん:2022/08/07(日) 23:16:17 ID:KPv9ACtM0
次の日も、わたし達はあめんぼをした。

(;'A`)「うぉっ!すげ〜!!」

ξ*゚⊿゚)ξ「ふふーん♪」

ζ(゚ー゚*ζ「へへー♪」

実は昨日ねる前に、ツンちゃんと『作戦会議』をしたんだ。
左足で力いっぱいけって、右足だけでグルっと回る。
手を伸ばして大きな円を描けば、なんだかバレリーナみたいでしょ?

ほら、ドクオ君と同じくらい早く円が描けるようになったよ!

(*^ω^) タンタン♪

お兄ちゃんは、短い棒を指き者のように振りながら、わたし達の円を描く音に合わせて足音を鳴らしてた。

ζ(゚ー゚*ζ「お兄ちゃんもやろうよ〜。」

( ^ω^))フルフル

お兄ちゃんはずっと座ってる。

でも、面子やコマなんかは、そこからぴょいっと投げて勝っちゃうの。
かなわないなあ。

19名無しさん:2022/08/07(日) 23:17:31 ID:KPv9ACtM0
……………
………


ζ(゚、゚*ζ「ねえ、お兄ちゃんはお話出来ないのかなあ…?」

帰り道でわたしは、お兄ちゃんからもらったヒスイをにぎりしめながら言った。

('A`)「オレが初めて会った時からそうだったよ。名前しか言えないみたいなんだ。」

ζ(゚、゚*ζ シュン…

ちょっとだけ、つまんないな。

ξ゚⊿゚)ξ「お兄ちゃんの前で落ちこんじゃだめよ?お兄ちゃんだって話したいのかもしれないわ。」

ζ(゚、゚*ζ「うん…。」

そうだよね。
一番辛いのは、お兄ちゃんかもしれないのに。

……………
………


20名無しさん:2022/08/07(日) 23:18:54 ID:KPv9ACtM0
________________________

次の日、ドクオ君は紺色の着物を着てきた。

ξ*゚⊿゚)ξ「どうしたの!?ドクオ!」

ζ(゚ー゚*ζ「かっこい〜!!」

(*'∀`)「へへ…母ちゃんに着せてもらったんだ!」

なんだかいつもより、男の子っぽくてかっこいい。
わたしはツンちゃんと一緒に、ドクオ君の周りをクルクル。

(*'∀`)「そんなにほめられると、てれるな…。」

ξ*゚⊿゚)ξ「だってパリッとしてて、いつもの何倍もステキなんだもの!」

ζ(゚ー゚*ζ「ねーっ、お兄ちゃんはどう…」

21名無しさん:2022/08/07(日) 23:19:58 ID:KPv9ACtM0
私がそう振り向くと、




( ^ω^)/




(#^ω^)タシーンッ!!





お兄ちゃんは持っていた短い棒を、いきなり地面に叩きつけた。



ξ;゚⊿゚)ξ「え…?」

(;゚A゚)「ヒィィィッ!!!!!!」

おどろいたドクオ君が、地面にしりもちをついた。

ζ(゚、゚*;ζ「大丈夫!?ドクオ君…っ」

(((;゚A゚)))「ば…ばけものぉぉ…っ……!!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「ねえ、どうしたの…?お兄ちゃん…?」


ツンちゃんのふるえる声。
わたしもどうしても気になって、お兄ちゃんの方を向く。

22名無しさん:2022/08/07(日) 23:21:03 ID:KPv9ACtM0
σ(#^ω^)=3 プンスコ

ξ;゚⊿゚)ξ「え…?」

ξ;゚⊿゚)ξ「あ…。着物がかぶってるのに怒ってるの…?」


そういえばわたし達、お兄ちゃんの着物は全然ほめてなかったな。
ドクオ君だけこんなにチヤホヤしたら、イヤな気分になっちゃうかも。


ζ(゚ー゚*;ζ「ご…ごめんねお兄ちゃん。お兄ちゃんの着物もすてきだよ。言ってなくてごめんね…。」

ζ(゚、゚*;ζ「あれ…?ドクオ君…?」



ドクオ君は、いつの間にか帰っちゃったみたい。

23名無しさん:2022/08/07(日) 23:21:56 ID:KPv9ACtM0
なんだか気まずくなって、今日はもう帰ることにした。

こんな日でも、お兄ちゃんは帰りにヒスイをくれた。

ξ゚⊿゚)ξ「お兄ちゃんは、どうしたのかしらね…。ドクオも怖がって帰っちゃったみたいだし…。」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだね…。」

やっぱり、上級生が怒ると怖い。

ζ(゚、゚*ζ(だけど、さすがにばけものほどではないよ…。)

ドクオ君、明日はお兄ちゃんと仲直り出来るといいな。

24名無しさん:2022/08/07(日) 23:23:01 ID:KPv9ACtM0
________________________

次の日。
ドクオ君はいつもの場所には来なかった。

ζ(゚、゚*;ζ(男の子同士ってむずかしいんだなあ…。)

この日から、わたし達はドクオ君抜きで遊ぶことになった。

せっかくあめんぼの棒も、もっと良いのを見つけたのに…。

やっぱりちょっと、つまらないなぁ。

ζ(゚、゚*;ζ(またいっしょに遊びたいけど、お家が分からないしなぁ…。)

そう思いながら、わたしは円を描いた。



最近はママも、仕事で忙しい。

だから何だかんだで、わたしとツンちゃんは毎日、お兄ちゃんとだけ遊んでるなぁ。

25名無しさん:2022/08/07(日) 23:24:44 ID:KPv9ACtM0
________________________

気付けば、もうすぐ学校が始まる時期。
少しだけ秋っぽくなってきた日の夕方。

ζ(゚ー゚*;ζ「やばっ!ポシェット忘れちゃった!!」

ツンちゃんとおそろいの、マジカルペニサスのポシェットなのに。

ξ;゚⊿゚)ξ「二人で取りに戻りましょ。」

ζ(>Д<*;ζ「ううん!ツンちゃんは先に帰ってて!ペニサスどんな話だったか教えてっ!!」

ξ゚⊿゚)ξq「分かったわ!まかせて!!」

走っていくツンちゃんを見送って、わたしも大急ぎで林に入る。

ζ(>ー<*;ζ「うぅ…暗いよぉっ…。」

息が切れる前に、なんとかいつもの場所につくと、お兄ちゃんはまだそこにいた。

ζ(゚ー゚*;ζ「あ…お兄ちゃん!ここでポシェット見なかった?」


わたしがそう言うと、お兄ちゃんが立ち上がった。
手にはわたしのポシェットを持ってる。


( ^ω^)ニコニコ


ζ(゚ー゚*;ζ「よかった……て……ぇっ……?」







お兄ちゃんには、片足がなかった。

26名無しさん:2022/08/07(日) 23:27:36 ID:KPv9ACtM0
ζ(゚、゚*;ζ「お兄ちゃ…?どうしたの……そ……そのか、からだ……?」


変なのは___足だけじゃない。



体がくの字の反対みたいに、曲がってる。



まるで



お兄ちゃんがいつもせもたれにしてる木みたいに。



ζ(゚、゚*;ζ「ヒッ………!」

27名無しさん:2022/08/07(日) 23:28:28 ID:KPv9ACtM0
わたしはおもわずドクオ君みたいに、しりもちをついた。


だけど、それだけじゃなかった。



( ^ω^)

いつもニコニコと目をとじていた、お兄ちゃんの目が…ゆっくりと開いていく_____



ζ(゚、゚*;ζ「ぁ…ぁ………っ」



__見ちゃいけないと思った。



____だけど、まばたきが出来ない。



ζ(;、;*ζ「ぃ、ぃゃ…っ…」






( ●▼●)「ア""メ""ン"ボ""、、、 ミ""イ"ツ""ケ""タ""ア""ア""ア"ア""ア"ァ"ァ""!!!」




.

28名無しさん:2022/08/07(日) 23:29:19 ID:KPv9ACtM0
大きすぎる











ヒスイが、ギュウギュウにつまっている






緑の目







( ●▼●)


.

29名無しさん:2022/08/07(日) 23:30:44 ID:KPv9ACtM0
ζ(;Д;*ζ「イヤアアアァァッッ!!!」




じゃら、と、音がした。


音の方を見ると、足もとの砂まで、角の取れたヒスイに変わってる。


外はもう暗いのに、ヒスイだけが緑色にピカピカと光ってる。





( ●▼●)


タンタンという音を出しながらジャンプして、お兄ちゃんがこっちに向かってきた。

動く度に、目から、口からヒスイがボロボロとこぼれる。

こぼれたヒスイが地面のヒスイに当たるたび、耳をふさぎたくなるような高いイヤな音がする。



ζ(;Д;*ζ「こ"ないでぇぇっっっ!!!」



体が動かない。

手と足でふんばってみても、前には進むのに、後ろに後ずされない。



ζ(;Д;*ζ(どうすれば…っ!)

30名無しさん:2022/08/07(日) 23:33:03 ID:KPv9ACtM0
________________________


('∀`)「もしお化けが出てきてもこうやってにげれば良いんだってさ!」

________________________


ドクオ君と遊んだ時に、聞いた言葉。

それと一緒に、自分の右手に持っていた物を思い出した。


ζ(;、;*ζ「…っ!」


わたしは、ふるえる右手を左手でおさえながら、棒で円を描いた。

ζ(;、;*ζ(はやくはやくはやく……っっ!!!)

バレリーナみたいに、なんて出来ない。
持ち上げた足を、引っぱられちゃうかもしれないから。

ちぢこまって、膝ごと抱えながら円を描く。


ζ(;、;*ζ(まだ…小さな円が3つだけ…)


足は、次の円を描くための1歩まですすめられた。
円を描ききった場所は、石の感しょくがなくなって安心するけれど、立ち止まっているとお兄ちゃんに追いつかれちゃう。

目を細くして、なるべく目の前を見ないようにした。
林の中には、ヒスイはしかれていない。


ζ(;、;*ζ(あそこまで…行けばっ!)

31名無しさん:2022/08/07(日) 23:35:09 ID:KPv9ACtM0
わたしは勇気を出して、立ち上がることにした。

今度は、勢いよく円が描けた。


ζ(;ー;*ζ(…やった……!)


続けて二つ目の円を描き終えようとしたその時、






(●▲● )ζ(;д;*ζ





ζ(;д;*ζ「………ぁ……」






体を思いきり曲げて、こちらをのぞく逆さのお兄ちゃんと目があった。





.

32名無しさん:2022/08/07(日) 23:35:38 ID:KPv9ACtM0
.













.

33名無しさん:2022/08/07(日) 23:37:03 ID:KPv9ACtM0
_ねぇ、なんで昨日の飲み会来なかったの?


__レポートが間に合わないからって言ったじゃない!聞いてなかったの?


_あ、そっかー。…なんかさ、スッゴク変な話聞けたから、あんたも来ればよかったのに。


__変な話?


_ドクオって知ってる?あの、影の薄い。


__あー、まあ。話したことはないけど…。


_そいつがさ、酒飲むと以外にも饒舌に話すのよ。


_何でも、『俺の地元では宝石をくれる神様がいるんだ』ってさ。それで、その神様と遊んだこともあるんだって。


__え、何それ…?w


_その神様はいつも同じ場所にいて、毎日翡翠をくれるんだって。でも1ヶ月通いきったら、神様に食べられちゃうんだって。


_それで、行こうと思わない日があっても、気付けばその場所に来ちゃってるらしいの。


__え?じゃあそいつ、食べられちゃうじゃん。


_それがね、1ヶ月以内ならその地域の藍色の死装束を着て、神様に見せに行けば良いんだって。


_それで死んだと思わせられれば、食べられないで済むんだって。

34名無しさん:2022/08/07(日) 23:38:49 ID:KPv9ACtM0
_だからその地域の大人は、子供を期間ギリギリまで粘らせて、翡翠を貰ってくるよう仕向けるらしいよww


__うわ、エグ…。神様相手にチキンレースして稼いでるってこと?


_そういうこと。私も行こっかなww


__いや、滞在費で消えるでしょwてか彼氏持ちの18歳が子供と判断してもらえるかっつーの。


_確かに成人したの今年だったわw


__そもそも私達、田舎が嫌で県で一番都会の大学に来たんじゃん。


_だよねw今年は帰らず遊び倒そーね!ww


__だねーww

35名無しさん:2022/08/07(日) 23:40:00 ID:KPv9ACtM0
.






( ^ω^)














( ●▼●)





.

36名無しさん:2022/08/07(日) 23:40:36 ID:KPv9ACtM0
  (
   )
  i  フッ
  |_|



使用お題『波紋』

37名無しさん:2022/08/07(日) 23:43:26 ID:8veXEr5M0
前半可愛らしかったのに急に怖いじゃん……
地元の大人たちの強かさも怖い
面白かった乙

38名無しさん:2022/08/08(月) 02:59:20 ID:T.Wdmw8o0
同窓会フェーズに入ってから、は〜〜なるほどねって感嘆しちゃった
面白かった 乙

39名無しさん:2022/08/08(月) 08:38:40 ID:sGP.QqVc0
おつ

40名無しさん:2022/08/08(月) 18:08:14 ID:4INjt88Q0
乙!
怖かった

41名無しさん:2022/08/10(水) 04:13:57 ID:tfL9sLik0
乙。面白かった
これツンはどうなったんだろ?

42名無しさん:2022/08/11(木) 18:55:44 ID:Krd6WzIY0
神様を利用してる人間って設定いい。面白かった
ドクオが着物で現れてブーンが怒ったのって、折角の獲物が死んじゃったから?
本当に着物が被って怒ってるなら、人間に利用されてる純粋な神様だよな…

43名無しさん:2022/08/14(日) 17:53:53 ID:EBA078mY0
ありがとうございます。

>>41
地元の人が気付いて手助けしてくれるまで、毎日棒で逃げ切れさえすれば…

>>42
前者ですね。

44名無しさん:2022/08/14(日) 17:56:57 ID:EBA078mY0
セルフしえん
https://imgur.com/a/14lzIXh

45名無しさん:2022/08/18(木) 23:19:02 ID:L2SEb/sM0
>>44
怖いなと思って読んでたのに言われてみればその通りで草

46名無しさん:2022/08/27(土) 16:34:49 ID:DW9Va7Cg0



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