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( ^ω^)運命と戦う仮面ライダーのようです part3

100 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:43:38 ID:sZfoTPZ60


 咄嗟の行動に出た。
 カリスは投げられた滑り台が通過するであろう弾道へとすかさず移動を開始。
 そして、すぐに迫ったそれに対して、敢えて肩から体当たりをして迎撃。


( ;<::V::>)『ぐっ…!』


 非現実的な力を持つ時点で、本来はたかが滑り台レベルにしか感じない。
 しかし、そこにアンデッドの馬鹿力が加わることで車と衝突したような衝撃がカリスを襲った。

 バウンドして滑り台は防ぎ切ったものの、衝突した勢いで吹き飛ばされる。
 丁度、公園内の人を全て逃げ出せたブレイドの足元に転がり落ちた。


( OwO)「クー!?」

( <::V::>)『くっ……構うな!終わったのか?』

( OwO)「何とか、クーが時間稼ぎしてくれたおかげで逃がせたお!」


 倒れたカリスを支えようと手を伸ばしたブレイド。その手を振り払い、自力で立ち上がる。
 役目を終えたブレイドはアンデッドを見るや、ホルスターからブレイラウザーを抜刀。


( <::V::>)『人間がいなくなったのなら手を抜く必要はない…!』

( OwO)「こっからは僕も協力するお!」

( <::V::>)『必要ない、コイツは私一人で倒す』

( OwO)「何言ってるんだお?クーを一人で戦わせるなんてできっこないお!」

101 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:44:07 ID:sZfoTPZ60


「あらあらあら、随分人間と仲が良いのねぇ」


 喧騒の中、女の声が近くで聞こえた。
 頭上の方から聞こえた声、二人は声のする方へ視線を向けた。


( OwO)「何だお前は?アンデッドか!?」

('、`*川「そんな捲し立てないでよ、初めて会ったっていうのに」


 声の主は、露出の多い服を着た黒髪の女性・ペニサス。
 町中に聳え立つ電柱の足場に足を掛け、片手でぶら下がっていた。
 ブレイドの露骨な警戒心を前にニヤリと笑みを浮かべ、支えを全て外し地上に向かって跳躍。

 ストン!と軽い身のこなしで器用に着地し、カリスに近付く。


('、`*川「ねぇ、この人間はアタシとも仲良くしてくれるのかしら?」

( OwO)「お前と仲良くしようだなんて思ってないお!」


 姿は普通の妖艶な女性であっても正体はアンデッド。
 もはやその姿に迷いも躊躇いも無いブレイドは、敵意を剥き出しにしブレイラウザーを振りかざす。


('、`*川「――ふっ!」

( ; OwO)「のわっ!?」


 突如、ペニサスの生身の姿から触手のようなものが伸び、迫ったブレイラウザーを弾き返す。
 弾いた触手はそのまま突き飛ばすようにブレイドの胸部に激突。
 バランスを崩したブレイドは突き飛ばされるように吹き飛び、背中から地に倒れた。

102 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:44:53 ID:sZfoTPZ60



( OwO)「ってぇお……!」

('、`*川「良い誘導だったわねぇ召使いさん、そのままその人間の相手をして頂戴」

『オオオォォッ!!』

( OwO)「な……アンデッドが指示に従ってるのかお!?」


 倒れたブレイドに対して攻撃を再開する亀のアンデッド。
 来襲を察知したブレイドは早急に体勢を立て直し、迫り来るアンデッドに向かって応戦。

 アンデッドは明らかにペニサスの合図で動き始めた。
 カリスはブレイドの戦闘からペニサスに視線を戻す。こちらを見ながらずっと笑っていた。


( <::V::>)『このアンデッドは陽動に過ぎなかったというわけか』

('、`*川「そうよ、誰にも邪魔されずあなたと会う為にね」

( <::V::>)『フン、どいつもこいつも私に用件ばかりで困ったものだな。
      生憎もう話は聞き飽きた、悪いが…』

( <::V::>)『早々にご退場願おう』


 カリスアローの刃先を、ペニサスの眉間に突きつける。
 威嚇にも一切動じることのないペニサスは、腕を組み未だ笑みを浮かべたまま。

 探し求めていた人物に会えて、嬉しさを堪え切れない様にも見える。

103 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:45:19 ID:sZfoTPZ60


('、`*川「連れないこと言うわねぇ、早々にご退場願おうだなんて…あの時のようにアタシを倒すつもりかしら?」

( <::V::>)『何を言っている?』

( 、 *川「……アハハハハ!覚えてないのかしら…?良いわねぇ、それでこそあなたよ…!!」


 ペニサスの表情が、一瞬にして曇った。
 口元は引き攣り、さっきまでとは打って変わって無理矢理笑みを作っている。


( 、 *川「憎たらしいあなたをこんなにも求めて探してたのに、あなたは覚えてないなんて…!
     ただバトルファイトを荒らすだけの"53番目"の存在…流石は残忍な殺し屋…!」

( <::V::>)『……!!』


 カリスに異変が起きる。
 真っ直ぐに突きつけたカリスアローは僅かにだがブレ始める。


( 、 *川「良いじゃない、それでこそアタシの復讐もやり甲斐があるってものだわ…!!」












('、`*川「――ねぇ?"ジョーカー"…!!」


.

104 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:49:42 ID:sZfoTPZ60


( <::V::>)『貴様……』

('、`*川「まさかカリスになりすまして身を隠して…しかも人間と一緒だなんて驚いたわ!
     皆、あんたがジョーカーだと分からないまま封印されていったのかしら?」

(#<::V::>)『黙れ!その名を呼ぶな!!』

('、`*川「どうして?あんたはジョーカーでしょ?忌み嫌われるだけの邪魔な存在。
     アタシの戦いを邪魔した復讐に値する存在――あんたは紛れもないジョーカーよ!!」

( OwO)「ジョーカー…?……ぐっ!!」


 亀のアンデッドと戦う最中、ペニサスの声が聞こえた。
 カリスを"ジョーカー"と呼ぶ。その度に、カリスが動揺しているのが目に見えた。


(#<::V::>)『貴様ァッ!!』


 先刻までとは打って変わって、人が変わったように怒り狂う。
 突きつけたカリスアローは威嚇道具としてではなく、相手を確実に"殺戮する"目的で振るわれ始めた。
 再びペニサスの背中から触手が出現、今度は三本。
 それらは繰り出してくるカリスの攻撃を防ぐ為に、素早い動きに合わせ柔軟に対応している。

 
('、`*川「アハハハハハハ!どうしたの、カリスなどではなくジョーカーとして戦ったらどう!?」

('、`*川「でなければ……はっ!」


 ペニサスの黒髪が異様に伸び始め、一直線にカリスへ伸長。
 毛先がカリスの首を捉え、際限なく伸びる黒髪はやがて首にしっかりと巻き付き、首を絞め上げる。

105 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:50:37 ID:sZfoTPZ60


( <::V::>)『うぐっ…!?』


 首が絞まると同時に、カリスの素早い連続攻撃は止まった。
 片手で首を捉える毛髪を掴み解そうと試みるが、解ける気配は一切ない。

 カリスアローで強引にぶち斬ろうとした瞬間、ペニサスの触手が左手に直撃。
 強引にアローを叩き落され、断つ為の手段を失ってしまった。


('、`*川「このまま、あんたを倒すだけ…!!」

(;<::V::>)『ぐ……かはっ……!』

( OwO)「はっ…!クー!今助けに行くお!」

('、`*川「そいつを止めろ!」

『ゴオオオオォッ!』

( ; OwO)「ぐふっ!」


 亀のアンデッドによる、全体重を乗せた突進。
 アメフトのタックルのように腹部を目掛けたそれは、内臓が吐き出そうな程の痛みと圧迫をブレイドに与えた。


('、`*川「フフ……さぁてどうしようかしら。
     このまま嬲って苦しめるのも良いけど、それとも――」


 ペニサスの姿が変化する。
 人間のシルエットではなくなり、アンデッドとしての本当の姿が現れる。
 

リ(゚,-,゜川『ここで終わりにしようかしら?』

106 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:51:54 ID:sZfoTPZ60


(;<::V::>)『貴様……ッカテゴリーQか……!』

リ(゚,-,゜川『そうよ、御名答。思い出してくれた?』


 背中から上半身に大量に伸びる触手のような物。
 よく見ると、それは触手ではなく蛇のような形をした骨。
 頭には長髪に見立てたかのように蛇骨がぶら下がり、口元には蛇のように鋭利な牙が二本。
 両手の爪はとても鋭く、右腕には蛇の尾の先端に繋がっているようにぶら下がるハンマー状の刃。
 それぞれ蛇の骨は銀色に見える光沢感があり、まるで"ウミヘビ"を連想させる。

 カリスの首を絞めていた毛髪は蛇の骨へと変化し、一本になったことでより深く絞め上げられる。


リ(゚,-,゚#川『アタシは、己が種の存続の為にバトルファイトを勝ち抜こうとした。
      でも……アタシが他のアンデッドとの戦いの最中に、あんたが背後から現れアタシを襲った…!』

リ(゚,-,゚#川『他の連中にやられるならまだしも、よりにもよってあんたに……!
      居てはならない存在のあんたにね!!』


 憎しみの言葉を吐く度に、それに呼応して首を絞める力が強くなる。
 カリスは巻き付く骨を掴むのがやっとの抵抗で、それ以上抗えない。


(;<::V::>)『ぐ……が……!!』

( ; OwO)「クー……!」

リ(゚,-,゚ 川『…ちょっと召使いさん、何手ェ抜いてるの?早くソイツを片付けて』


 ペニサスの言葉に再び反応し、亀のアンデッドは地に伏せるブレイドの首を掴む。
 怪力で強引に起き上がらせ、右の拳を防御の薄い服に叩き込む。


( ; OwO)「がはぁっ!」

107 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:53:29 ID:sZfoTPZ60


『グガアアァァ……』


 口をゆっくりと大きく開く。口内に見えるのは綺麗に並んだ細かい鋭利な歯。
 一本一本は繊細そうだが、その頑丈な顎で噛み付かれたらひとたまりもない。

 今にも地に崩れ落ちそうな、ぐったりとしたブレイドは片手で支え続けたまま。
 空いた手で顔面を掴む。


( ; OwO)「クソッ…!離せお!」

『ア"ー……』


 そして、大きく開けた口でブレイドの頭部に噛み付こうとした。


( ; OwO)「ッ……!!」


 ――しかし、ブレイドの頭部にその顎が迫ることはなかった。
 アンデッドが顔面を寄せた瞬間――、頭部に何かが被弾し火花が飛散。
 
 自慢の防御が一番薄い顔面にヒットしたことで、亀のアンデッドはそれまでが嘘かのように悶え始める。


『グゴオオォォォッ!?』




( OMO)「剣藤!」

( ; OwO)「モララーさん…!助かりましたお…!」


 被弾したのはギャレンの銃撃だった。
 レッドランバスから降りたギャレンは、急いでブレイドのもとに駆け付ける。

108 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:54:01 ID:sZfoTPZ60


( ; OwO)「それよりも、クーを…!」

( OMO)「……」


 ブレイドの言葉通り、首を絞められ宙に浮かされるカリスを発見。
 しかし、ギャレンの体はすぐには動かなかった。

 先に動いたブレイドは体を起こし、落としたブレイラウザーを拾い上げる。
 すぐに救助せんと立ち向かうブレイドだったが、ラウザーがペニサスを斬り付ける前に、ギャレンの銃弾がペニサスのこめかみに命中した。


リ(゚,-,゜川『うっ…!』


 苦痛の声を上げる。同時に首を絞める力は弱まり、するり…と解けかかった。
 すかさずカリスはペニサスの胴体を蹴り上げ、ようやく拘束から解放。


(;<::V::>)『けほっ!ぐ……』

( OwO)「クー!大丈夫かお!?」

( <::V::>)『ッ……私ではなく連中に注意しろ…!』

( OMO)「コイツがカテゴリーQか…♦スートの、最後のクイーン…!」


 戦況は一気に変わった。二対二の構図が、三対二に。
 アンデッド側の特性次第だが、ブレイドには強化フォームがあり、カリスにも亀のアンデッドを倒せる自信がある。
 そこに遠距離で牽制できるギャレンが加われば、形勢はライダー側の優勢に転ぶ。

109 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:54:32 ID:sZfoTPZ60



リ(゚,-,゜川『チッ、また新しい邪魔が入ったわね…!』

リ(゚,-,゜川『今回は見逃してやるわ。だけど…アタシはいつでもあんたを狙ってる事を忘れないで!』

リ(゚,-,゜川『またね、ジョーカー…!』
 

 亀のアンデッドのもとへと飛び、口から衝撃波のように黒い煙幕を放つ。
 辺り一面が煙に包まれ視界が塞がり、ブレイド達は目暗ましを払うように腕を払い続ける。

 僅かに煙幕の密度が浅くなり視界が開けた頃には、もうペニサス達の姿はない。
 カリスも、アンデッド達の気配は既に無いと感じていた。


( OwO)「クソッ、逃がしたお…!」


 地を蹴り悔しさを滲ませる。蹴った足元からは砂埃がフワッと舞った。




 三人とも変身を解除し、人の姿へと戻る。


( ・∀・)「大丈夫?ケガは?」

( ^ω^)「あのでかい図体にもろタックル食らって死ぬかと……でもそれくらいですお」

( ^ω^)「クーは大丈夫かお?どこかケガしてるんじゃ…」

川 ゚ -゚)「余計な心配だ」


 二人に対して背を向けたまま、返す言葉もどこか素気ない。
 そんな様子にいち早く食って掛かったのは、モララーだ。

110 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:55:05 ID:sZfoTPZ60


( ・∀・)「"ジョーカー"……あのアンデッドは君をそう呼んでいたな」

川 ゚ -゚)「……」

( ・∀・)「それが君の正体か?ジョーカーとは何だ?」

川 ゚ -゚)「……」

( ・∀・)「……君が答えたくなくても、いずれは明るみになる。その時、君は味方なのか、果たして敵なのか…」

( ・∀・)「よく考えるんだな、隠し通せるのは今だけだぞ?」

( ^ω^)「モララーさん、今はよしましょうよ!」


 背けるクーの顔はどこか気まずそうで、口を噤んだまま。
 答えようとしない態度はモララーの疑念をより深めてしまい、二人の溝は更に深くなった。

 ブーンの制止を受けたモララーは、渋々レッドランバスへと戻る。


( ^ω^)「……クー、気にするなお」

川 ゚ -゚)「………」


 ブーンの声にも返事をせず、背を向けたまま一人で歩き始める。
 自身のバイクへ跨ってメットを被ると、ブーンを一人残したまま走り去ってしまった。




( ^ω^)「……忌み嫌われるだけの邪魔な存在、ジョーカー……」


 ―――――。

111 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:56:03 ID:sZfoTPZ60


 ―――――。


 クーと別れ、モララーと一緒に家に戻った。
 彼女疑ったままのモララーは、どこか納得のいかない表情。
 バイクから降りた二人は肩を並べ、玄関へと向かう。


( ^ω^)「モララーさん、心配しすぎですお」

( ・∀・)「そうは思えないな……何か引っかかるんだよ」

( ^ω^)「さっきクーは僕が逃げ遅れた人を逃がしてる間、アンデッドを引き付けてくれてたんですよ?
       そんなこと出来るアンデッドはヒッキーかクーくらいしか知らないですお」


 ガチャ


( ・∀・)「だから引っかかるんだよ。今は味方かもしれないけど…これから先は分からないだろう?」

( ^ω^)「だったらこれから先も味方でいてくれるように何とかしますお!」

( ・∀・)「それに、結局ドクオの件についても曖昧なまま終わってしまったし…あれは俺が悪いのかもしれないけど」

( ^ω^)「そこも、引き続き僕が説得しますお!」

( ・∀・)「……剣藤のポジティブさには適わないよ」

112 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:56:40 ID:sZfoTPZ60


( ^ω^)「ただいまだお」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、二人とも!良いタイミングで帰ってきたわね!」


 リビングに入ると、ツンがいつになく帰りを歓迎してくれる。
 奥のソファに座るジョルジュもどこかそわそわした様子。
 テーブルの上には一つの小包があり、既に開封されているのが伺える。

 _
( ゚∀゚)「二人に、特にモララーさんに良い報告だぜ!」

( ・∀・)「俺に?」

ξ゚⊿゚)ξ「ほら、これ!」


 ツンがテーブルに戻り、両手に"ある物"を携えてきた。


( ^ω^)「これ…!」

( ・∀・)「ラウズアブゾーバー?」

ξ゚⊿゚)ξ「そう!さっき所長が来て、ギャレンの分も完成したからって持ってきてくれたの!」

( ・∀・)「……そうか……」
 _
( ゚∀゚)「今日出た上級アンデッド、確かカテゴリーQだったよな?」

( ^ω^)「てことは…あのカテゴリーQを封印すればギャレンもパワーアップできるお!」
    モララーさん、カテゴリーQを封印して最強のコンビになりましょう!」

( ・∀・)「………ああ、そうだな」

113 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:57:23 ID:sZfoTPZ60


( ^ω^)「モララーさん?」
 _
( ゚∀゚)「どうしたんだよ、嬉しくないのか?」

( ・∀・)「いや、そういうわけじゃないんだけど……ドクオが心配で」

( ・∀・)「力を得ることに固執していたから、どうしても気になってしまったよ」
 _
( ゚∀゚)「ああ、確かに……」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオさん、今どこにいるのかしら……」

( ^ω^)「………」






 ―――――。

114 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:57:54 ID:sZfoTPZ60

 その日の夜。
 クーを追い込んだペニサスは再び、昨日身を寄せた歓楽街のまた別の屋上にて休息を取っていた


('、`*川「チッ……あ〜腹立つ、あんな連中一人で相手してやってもいいのに」

('、`*川「……横にジョーカーがいることを強く意識してしまって、怯んでしまったわ……」


 その辺の施設から適当に拝借した黒いソファに腰掛け、右手には盗んできたパイナップルが。
 外の皮についたトゲの感触など気にも留めず、軽く投げては掴んでを繰り返していた。

 ソファの後ろには、亀のアンデッドが荒い息を吐きながら佇んでいる。


('、`*川「あんたも使えない訳じゃないけど、ちょっと動きが遅いのよね……。
     もっとも、あんたみたいな下級の力を借りるのも癪なんだけど」

「――どうやら失敗したみたいだね?」

('、`*川「……次はしくじらないわ」


 すぐ隣に、異様な存在感を感じる。正体は分かっているからこそ敢えて見ようともしない。
 ……だが、似たような存在感を"もう一人"感じていた。


「フッ、物好きなお前らしい遊び方だな」

('、`*川「あんたは……!」

115 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/05(日) 23:59:58 ID:sZfoTPZ60


( ´∀`)「楽しいよ?早速面白い展開が広がってくれたみたいだしねぇ」

( ´_ゝ`)「そんなに暇なら、お前がジョーカーにちょっかい出した方が大荒れするんじゃないか?」

( ´∀`)「アハハ、かもね」


 そこにいたのは、モナーと同じカテゴリーK・♦スートの王である兄者だった。
 兄者は以前、単独でモララーの元を訪れ、変身すら許さない程の圧倒的な差を見せつけて以来。
 亀のアンデッドの横で腕を組み、遠くを見ている。


('、`*川「まだ一緒に行動してただなんて意外ね」

( ´_ゝ`)「コイツと一緒にいると俺も狙われにくくて助かるんでね」

('、`*川「それはそれは……」


 右手に持つ皮付きのパイナップルにかぶり付いた。
 中の果肉を噛んだ瞬間に溢れる果汁を、ペニサスは器用に吸い上げる。
 肉を食いちぎるかのように皮ごと勢いよく噛みちぎり、モグモグと口の中で味を楽しむ。


( ´_ゝ`)「そういや、知っているか?カテゴリーQ」

('〜`*川「ン……何?」

( ´_ゝ`)「♥のカテゴリーKが動き出したぞ、本格的にな」

('〜`*川 ゴクン

('、`*川「へぇ……」

( ´_ゝ`)「お前、ジョーカーを狙ってるんだろう?なら気を付けることだな。
      相変わらずあいつは何を考えているか知らんが……ジョーカーに手を出そうとする奴を付け狙うぞ」

116 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:00:44 ID:KaYLk5bc0


( ´∀`)「ああ〜、あいつね。あいつも面白いよなぁ」

('、`*川「………」

( ´_ゝ`)「頑張ってくれよ?仮にも♦スートの女王なら、その気概を見せてほしいものだ」


 兄者の煽りとも取れる言葉。それを聞いたペニサスは、右手に持ったパイナップルを芯ごと握り潰した。
 グチャッ!と果肉が皮を突き破って果汁と共に飛び散り、腕を伝って肘まで汁が伝う。
 そして、後ろにいる兄者を強く睨んだ。


('、`*川「あんた…アタシをナメてるの?」

( ´_ゝ`)「おいおい、怒るなよ。気に掛けているだけじゃないか」

('、`*川「余計なお世話よ。アタシはジョーカーしか見えてない、他のアンデッドなんて眼中にないわ…!」

( ´_ゝ`)「そうか、それは悪かったな。ただ――」

( ´_ゝ`)「――イかれてるぞ、あのカテゴリーKは」

('、`*川「……ご忠告どうも」


 ソファから立ち上がり、片手に付着した果汁を長い舌で舐め取る。


('、`*川「見てなさい、今度こそ必ずジョーカーを仕留めるから…!」


 そのまま屋上の縁まで歩き、昨晩のようにビルを飛んで渡り歩いていった。


( ´∀`)「あーあ、行っちゃった。ほら、お前も行きな」

『………』

( ´_ゝ`)「フン……まぁ、お前が倒されようが封印されようが、俺の知ったことではないがな」


 ―――――。
 


.

117 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:01:31 ID:KaYLk5bc0


 ――一方、クーがいるバーボンハウスは今夜も人々へ楽しいひとときを提供していた。
 ペニサス達との戦いを経た後でも、店に立っていつものように働いている。

 クーは泡立つビールの注がれたジョッキを両手で一個ずつ持ち、常連客の男性二人が座るテーブル席へと運ぶ。
 

川 ゚ -゚)「お待たせしました」

「おーありがと」

「……今日何か一段と暗いね?何かあった?」

川 ゚ -゚)「いえ、別に…」

「何かあったらおじさんに相談しなよ、何でも聞いちゃうから!」

(´・ω・`)「ちょっとちょっと、やめてくださいよ。奥さんに言いふらしますよ?」

「ちょ、ただの親切心だって!マスター怒らせると怖いよなぁまったく」

川 ゚ -゚)「……失礼します」


 聞き慣れた冗談だが、いつになく耳障りに感じる。
 お前達に話す事なんて何もない。私を知ろうとしてくるな…。
 心の中で、そう呟いた。

 カウンターに戻ると、グラスを洗うショボンがクーに声を掛ける。


(´・ω・`)「大丈夫かい?あの人の言うように今日は何だか辛そうだよ」

川 ゚ -゚)「はい、大丈夫です」

(´・ω・`)「そうは見えないけどね…。もしアンデッドの件で何か疲れてたりしたら、今日は休みなよ」

川 ゚ -゚)「いえ、そんな。迷惑かけてしまうので…」

(´・ω・`)「大丈夫さ、今日はそんなに人来なさそうだし。クーの事の方が心配だよ。
      言葉に甘えて今日は休んで。いい?」

川 ゚ -゚)「……すみません、ありがとうございます」

118 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:02:02 ID:KaYLk5bc0


 ショボンの言葉に甘え、カーテンを潜り厨房に戻る。
 厨房では、今のところ調理作業のない渡辺がキッチンで何かをしていた。
 渡辺の傍ではでぃがその様子を見ながら、今か今かとワクワクした様子。


川 ゚ -゚)「何してるの?」

从*'ー'从「あ……えへへ。ちょっとお腹空いちゃったからパイナップル切ってるの」


 手元を見ると、まな板の上に芯を残して綺麗にカットされたパイナップルが皿の上に盛り付けられている。
 皮に身がくっついたまま、メロンのように食べやすいように一口大に包丁が入った状態。


(#゚ -゚)「今日ショボンさんが買ってきてくれたんだよ、いただきまーす」


 でぃが一つ手に取り、弓なりに逸らすことで身を食べやすくさせる。
 一口頬張ると、その美味しさに幸せそうな笑みを浮かべた。


川 ゚ -゚)「そうなんだね」

从'ー'从「クーさんも食べて、ほら。切る?」

川 ゚ -゚)「ん……大丈夫、自分でやるよ」


 包丁を置き、両手で一切れをクーに差し出す。
 食欲など湧いてはいなかったが、渡辺の好意を無駄にできずパイナップルを受け取る。

 受け取ったパイナップルをまな板の上に置き、包丁で一口分を皮から切り取った。

119 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:02:26 ID:KaYLk5bc0


川 ゚ -゚)「いただきます」


 一口のパイナップルを、口の中に押し込む。
 噛むと繊維のように果肉が解け、口の中にジューシーな果汁が溢れ出し、酸味を感じながらも甘味の強い風味が広がる。


川 ゚ -゚)「うん…美味しいね」

从'ー'从「よかった。クーさん、昔はパイナップルを皮ごと食べようとしたよね〜」

(#゚ -゚)「ええ?そうなの??」

从'ー'从「うん、だから私とショボンさんが止めたの」

川 ゚ -゚)「はは……そうだったかな。ごちそうさま」

从'ー'从「もういいの?」

川 ゚ -゚)「うん、二人で食べていいよ」

(#゚ -゚)「やったー!」

从'ー'从「ショボンさんの分も残しといてあげようね〜」

120 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:03:17 ID:KaYLk5bc0


 水道で軽く手を洗い、二階へと上がる。
 リビングに寄って、食器棚から透明のグラスを一個取り出し、浄水器の水を注ぐ。
 シンクに置いた片手で体を支えながら、冷えた水をゴクゴクと一気に飲み干し、体の中をじんわりと冷えた感覚が駆け巡る。

 そっとグラスを置き、クーは洗面室へ。
 鏡の上のライトを点け、浮かび上がる自身の顔を見つめる。


川 ゚ -゚)「………」


 自身の存在。忌まわしい過去。目を背けたい現実。
 全てが、今日という日で一度に思い出された上に、明るみになった。
 その事に対して、恐れを抱いている。




 今の自分は矛盾している。


 いつからだ?
 いつから、こんなに怖くなってしまったんだ。

 アンデッドである宿命を理解し、全うしようとしていた。

 なのに、今は怖い。

 大切なものを失う事が、凄く怖い。


.

121 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:03:54 ID:KaYLk5bc0


川 ゚ -゚)「……私は、これからどうすればいい?」


 鏡の中の自分に問い掛ける。
 答えは返って来ない。鏡の中の自分も、その答えが分からない。

 蛇口を捻り、洗面台の水を流す。
 両手で水を掬い、顔を洗い流す。

 濡れた顔と前髪。水滴を垂らしながら、もう一度鏡越しに自分の顔を見る。



川 ゚ -゚)「これから、アンデッドとして何をすれば……?」


 以前のように、顔つきが変わることはない。
 しかしどこか迷いに曇ったようにも見える。


 己の存在意義を見失い、分からなくなってしまった。
 
 

 ―――――。


.

122 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:04:19 ID:KaYLk5bc0





 ―――――。




.

123 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:04:40 ID:KaYLk5bc0


 ――とある部屋の中、白衣を着た一人の女性がいた。

 部屋の中はブルーライトで照らされ、とても薄暗い。
 中央に置かれたデスクの上には、顕微鏡やビーカー、フラスコといった道具が隅に並んでいる。
 何かの研究だろうか……様々な設備や道具が揃っている。

 デスクの上に置かれたPCの画面は暗くなり、女性は椅子から席を立つ。 


「……やっぱり、あの子は可能性を大きく秘めている」


 壁には数多の写真が貼られている。暗くて誰が写っているのかが確認できない。
 そのうちの一枚を剥がし、部屋の奥にある扉の前に移動する。

 扉はとても重厚に作られていて、小さなドアが顔の位置に。
 そのドアを開けると、内側を覗けることのできる小窓が。

 女性は、小窓に向かって写真を見せつける様に翳す。


「この人ね、すごく優秀みたいなの」

124 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:07:26 ID:KaYLk5bc0


 扉の中にいる"何か"に話し掛けている。
 ブルーライトで薄暗く照らされた部屋とは違い、赤く眩しいライトできつく照らされている。
 
 その奥には、人型をした"何か"が……。


「だからこそ彼は許されない…許されてはいけないの。何でか分かる?」

「それはね――」




 デスクへと戻り、PCの画面を開く。
 そこに映ったのは――、



      [  ( ^ω^)  ]





 ブーンの、街中を歩く姿の画像。


 画面が映った光で、女性の顔がはっきりと照らされる。


 羽織る白衣の胸元には名札がひとつ。

 
 名札には……"BOARD"の文字。
 そして、"廣瀬 デレ"の名――。

125 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:07:47 ID:KaYLk5bc0







ζ(゚ー゚*ζ「――彼はもう、普通の人間として生きてはいけないから」








.

126 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:08:13 ID:KaYLk5bc0





     【 第28話 〜異端者の宿命〜 】 終




.

127 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:08:14 ID:KaYLk5bc0





     【 第28話 〜異端者の宿命〜 】 終




.

128 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:09:55 ID:KaYLk5bc0

==========

 【 次回予告 】


 ブレイドの前に突如現れるモナー。

  ∧
( OwO)「カテゴリーK…!!」

( ´∀`)「少しご無沙汰だね?ブレイド」

( ´∀`)「あ、そうそう。本題忘れてた…ブレイド、君に会いに来たのには理由があるんだ。
       これから面白くなる事をするから、君にも共有してあげようと思って!」
  ∧
( OwO)「何…?」

( ´∀`)「君が大事に大事にしてるアンデッドがいるだろ…?愛川クー、だっけ?」
  ∧
( OwO)「クーが何だお!?」

( ゚∀゚ )「フフフフ……君達に見せてあげるよ。あいつの真の姿を。
       あいつの真の恐ろしさを!絶望を……!!」


 不敵な笑みを浮かべる。
 クーの真の姿、恐ろしさとは一体…。

129 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:10:23 ID:KaYLk5bc0


( <::V::>)『お前は……!?』

リ(゚,-,゜;川『あんたは……カテゴリーK…!?』


 カリスと戦うカテゴリーQ。
 二人の前に、♥のカテゴリーKが出現。


、\ ノ
(  ,皿, )『………ナイ』

リ(゚,-,゜;川『……?』
、\ ノ
(  ,皿, )『わたシの、愛シいひとをいじメタ……』
、\ ノ
( #゚,皿,゚)『―――許サない!!!』

リ(゚,-,゜;川『ッ……!?』


 カテゴリーQに襲い掛かるカテゴリーK。

130 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:10:50 ID:KaYLk5bc0


( ^ω^)「どこだお!?」

( ・∀・)「カテゴリー7だ、場所は……」

( ; ・∀・)「……!!」

( ^ω^)ロ「ツン、アンデッドの場所どこだお!?」

[場所は……ヒートさんの診療所よ!カテゴリー7の反応有り!]

( ; ^ω^)「ヒートさんの!?」

( ; ・∀・)「……ヒート、ヒート!!」


 モララーの亡き恋人・ヒートの診療所に魔の手が迫る――。

131 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:12:08 ID:KaYLk5bc0

 ヒートの診療所で暴れるアンデッド。


『ゴオッッ!!』

( ; ゚ω゚)「うあああああああッッ!!」

( ; OMO)「剣藤ーッ!!」


 アンデッドの攻撃を受け、ブーンが追い詰められてしまった。


(  M )「……許さない」

(  M )「俺の大事な景色、場所、思い出…そして、仲間を傷つけた!」

( #OMO)「俺は…貴様を許さない!」


 ギャレンの怒りが爆発する。
 そして遂に――ジャックフォームを手にしたギャレンが!

/H\
( #OMO)「仲間と大事な思い出は…俺の手で守る!!」


 ギャレンは、ヒートとの思い出の地を守る事が出来るのか?
 また、クーは一体どうなってしまうのか!?


 次回、【 第29話 〜王の暗躍〜 】


 ――運命の切り札を、掴み取れ!


==========

132 ◆7MnOV.oq7w:2023/11/06(月) 00:19:24 ID:KaYLk5bc0
しおり

>>8 第27話
>>72 第28話


( ^ω^)< またそのうち

( ^ω^)< みんなも 公式YTの剣観てくれお

133名無しさん:2023/11/06(月) 09:19:12 ID:flNhJu5s0
乙わーーーーーー!!!

13429話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:40:53 ID:04shMioE0






     【 第29話 〜王の暗躍〜 】




.

13529話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:41:26 ID:04shMioE0


 空は雲ひとつない文字通りの青空。
 快晴の中、モララーは一人である場所へとやって来ていた。

 街中の離れにある小さ目な霊園。周囲は木々に覆われ、静かな時間が流れている。
 墓石が立ち並ぶ中、モララーはひとつの墓石の前で腰を下ろしている。

 墓石の前にお線香を差し、手を合わせる。

 向かい合う墓石には、"深沢家之墓"の彫刻――ヒートが眠るお墓だ。
 


( ・∀・)「…ヒート、最近来られなくてごめんな」


 眠っているヒートに向かって、手を合わせながら声をかける。

13629話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:41:53 ID:04shMioE0


( ・∀・)「俺は元気にしてるよ、君が心配する必要ないくらい。
      ライダーとして戦う日々は続いてるけど、剣藤達と力を合わせて戦うことができてるよ」

( ・∀・)「……でも今日は、少しだけ君に本音を話したくて来たんだ」


 合わせていた手を崩し、両膝に肘をつけながら両手の指同士を組んだ。
 視線を墓石から組んだ手元に向け、少し元気のない表情を浮かべる。
 モララーは胸の奥に秘めている本音とやらを吐き出し始めた。


( ・∀・)「実は今、どうしたらいいか分からない事があるんだ。
      クーという人がジョーカーという名のアンデッドだと分かって、俺は彼女を凄く疑ってる。
      でも、剣藤は彼女を信用していて一緒に戦うつもりでいるんだ」

( ・∀・)「俺は仲間の事は信じたい、でも彼女の事は……どうしても信用できない」

( ・∀・)「いや………もしかしたら彼女を信用する事が怖いのかもしれないな。
      彼女は未知の存在で、いつ何が起こるか分からない。その時に剣藤達の身に何かあったら…そう考えてしまうんだよ」


 俯いたまま、下唇をキュッと噛む。


(  ∀ )「……怖いんだよ、俺。何かの間違いで彼等を失うのが」

(  ∀ )「剣藤やツン、ジョルジュ…俺に残された大切な仲間。君が命を以て教えてくれた大切な仲間だ」

13729話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:42:16 ID:04shMioE0


(  ∀ )「俺はこれ以上、もう何も失いたくはない…」

(  ∀ )「例えすれ違うような事が起きようとも、彼等の命を護ることになるなら俺は――」





( ・∀・)「――俺は、汚れ役でも何でも背負うつもりだよ」


 顔を上げ、墓石を見上げる。
 言葉は決意を強く表しているが、墓石を見る目はどこか悲し気で…。

 この気持ちを支えて欲しい、こんな時に君がいてくれたら…。

 そんな風に思ってしまう心の中では、まだヒートの支えを強く必要としているのかもしれない。
 

( ・∀・)「……はは。これじゃあまた君に心配掛けてしまうね」


 自分の不甲斐無さに思わず失笑してしまった。
 深呼吸をし、気持ちを入れ替える。自分に言い聞かせるように、首を軽く縦に振る。

 胸中の想いを吐き出した事で少しは楽になったのか、体がスッと軽くなった気がした。


( ・∀・)「また来るよ、ヒート」


 モララーは腰を上げ、ヒートに別れの言葉を告げその場から去ろうとした。


 ――が、モララーの足はピタリと止まった。

13829話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:42:47 ID:04shMioE0


( ・∀・)「……?」



 視線を感じる。

 何かに、じっと見られているような感覚。


 モララーは周囲を見渡した。
 視界に入る、立ち並ぶ墓石。青々しい木々。

 それ以外に何もない。

 
 ....( ・∀・)


 少しばかり歩を進めてみる。
 何度辺りを見渡しても、何もいない。



 ……ふと、何も感じなくなった。


( ・∀・)「……気のせいか」



 
 ―――――。



.

13929話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:43:14 ID:04shMioE0

 ―――――。


[もうすぐよ!カテゴリー7の反応が近いわ!]

( OwO)「了解!」


 モララーがお墓参りを終えた頃、ブレイドは単身出現したアンデッド討伐に出動。
 既に現場へ向かっており、無線を通してツンが状況を報せる。

 カテゴリー7――ペニサスが引き連れていた、亀のアンデッドだ。
 

[モララーさんにも報せてあるわ。ブーン、ギャレンが来るまで何とか持ちこたえて!]

( OwO)「分かってるお!今度こそあのアンデッドを封印してみせる!」


 以前はペニサスの介入もあって取り逃がしてしまった。
 同じヘマはしない。
 ブレイドの闘志は高く、ブルースペイダーの疾走に応じて向かい風を受ける度に、寧ろアンデッド打倒の火は燃え盛った。



.

14029話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:43:37 ID:04shMioE0


 やがてブレイドはアンデッドの出没した場所に到着。
 したらば駅前の広場――この街の幹たる大きい駅。白を基調としたアスファルトに、芝生や木が鮮やかに彩っている広い広場。
 駅前は日中ということもあって、駅を利用する人らが行き交っていた。

 しかし、アンデッドが現れ暴力の限りを尽くしたことで人影は一切なくなっていた。
 公園で暴れていた時の様に、人を襲うというよりは周囲の建造物や木々を破壊。
 アスファルトは割れ、木々はへし折られてる。


( OwO)「また無駄に暴れ回ってるのかお!これ以上はさせないッ!」


 暴れるアンデッドを確認したブレイドはブルースペイダーから降り、すかさず亀のアンデッドに向かい駆けた。


『グゴオオオオォッ!!』


 ブレイドの存在に気付いたアンデッドも、耳に不愉快な雄叫びをあげ戦闘態勢に移る。


( OwO)(このまま正面からぶつかっても前みたいに力負けするお…)


 ホルスターから逆手に持ったブレイラウザーを抜刀。
 前回の教訓を踏まえ、駆けながらどうするべきかを頭の中で考える。

14129話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:44:03 ID:04shMioE0


( OwO)(コイツは動き一つ一つが遅い、当たりさえしなければこっちのペースを維持できる…!)


 アンデッドとの距離が一気に縮まった。
 相手の攻撃が始まる。
 以前のように、懐に入ってくるのを阻止せんと右腕を大きく振りかぶるアンデッド。

 ブレイドは咄嗟に前方へ受け身を取り、攻撃を回避すると同時に背後に回り込んだ。
 すかさず起き上がり体勢を整え、ブレイラウザーを持ち直しがら空きの背後を捉える。
 甲羅に守られた背中ではなく、足を狙って一太刀。


( OwO)「ふっ!」

『グッ……オオオオォォォッ!!』

( OwO)「何!?うおっ!!」


 足を狙った攻撃は、動きを更に鈍化させより有利に働かせようとした結果だ。
 確かに、"一瞬"は効いたように見えたが…それでもまだピンピンしている。
 裏拳の要領で腕を振るったアンデッドの攻撃を、頭を下げ寸前で躱し、一度距離を取る。


( OwO)「ダメかお…これじゃあ消耗戦になる。なら…!」

( OwO)「モララーさんが来る前にケリをつけるお!」

14229話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:44:27 ID:04shMioE0


 解決策は無いように思えたが、ブレイドには奥の手である"ジャックフォームの力"がある。
 上級アンデッドであるクックルを圧倒した、あの圧倒的な力が。
 以前は力を使う事が出来なかったが、人もいない、場所も広い此処でなら存分に戦える。

 ブレイラウザーを左手に持ち替え、左腕に装着しているラウズアブゾーバーに手を伸ばした。
 アブゾーバーから展開される三枚のトレイ、其処にセットされている二枚のカードを引き抜く。
 二枚のうち一枚の"♠Q ABSORB"のカードを、アブゾーバーの中央部に差し込む。


    〘 -♠Q ABSORB QUEEN- 〙

 
 カードを読み上げる電子音声と、後に鳴り響く待機音。
 女王が、騎士との共鳴を待ち望んでいる。
 その命に従うように、もう一枚のカードである"♠J FUSION"のカードを側部にあるリーダーにラウズした。


    〖 -♠J FUSION JACK- 〗


 その瞬間、♠Qのカードがアブゾーバーの中で眩い光を放ち始める。
 放たれる黄金の光は形を成し気高き鷲となって、羽を羽ばたかせ勇壮に空を舞う。
 黄金の羽根がブレイドの辺りを包むように舞い落ち、鷲はやがてブレイドに吸い込まれるように飛翔。
 
 ♠Qの導きで♠Jの力をその身に纏ったブレイドは装甲を黄金色に輝かせ、胸部のスペードには鷲を宿した。
 背中には銀と紅の翼状のマントが備わり、ブレイラウザーの剣先は新たに刃が形成される。
 ラウズアブゾーバーの中央部には、黄金色のスペードに宿った鷲が彫刻された紅いプレートが嵌め込まれた。

14329話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:44:48 ID:04shMioE0

  ∧
( OwO)「行くぞ!」


 ブレイラウザーを腰で構えた後、対面するアンデッドに今度は迷いなく接近。
 まずは斜め下に向け一太刀。
 剣も通さなかったアンデッドの丈夫な肉体を、切れ味の増した刃がいとも容易く肉を斬り付ける。
 

『グウウゥッ!?』


 肉体を斬ったと同時に、刃が擦れる鋭い音が奏でられた。
 それまでとは違って、一太刀で明らかに攻撃が通じているのが苦痛の声で分かった。

 軽やかな身のこなしで、マントを靡かせながら剣舞を披露するかのように剣撃を浴びせ続ける。
 縦に振り、上へと振り直し、横に薙いだ勢いで回転し更に斬り付ける。
 刃がアンデッドの体に傷を生み出し続け、辺りには緑血を撒き散らす。
 
  ∧
( OwO)「はぁっ!!」

 
 そして、アンデッドの肉体を穿つように剣先を勢いよく突きつける。
 

『グオオオアァッ……!!』


 鋼の肉体を誇った重量級のアンデッドの体をブレイラウザーが見事に貫通。
 片足をアンデッドの体にかけ、強く押し込んでは蹴り飛ばし突き破った肉体から剣を引き抜いた。

14429話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:45:22 ID:04shMioE0

  ∧
( OwO)「やっぱりこの力、凄いお…!これなら勝てる!」


 ブレイラウザーを振り、刀身に付着した緑血を払い落す。
 桁違いの力に、自分でも驚かざるを得ない。だからこそ確信が持てた。

 今度こそ決着を。
 逆手にブレイラウザーを持ち直し、オープントレイを展開した。
 "♠2 SLASH"と"♠6 THUNDER"のカードを選択し、こいつで早々に決着を着ける。

 蓄積ダメージで体を揺らつかせるアンデッド。
 目の前でその姿を捉えながら、刀身のリーダーにカードをラウズしようとした。



 




 ――その時だった。

14529話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:45:43 ID:04shMioE0

  ∧
( OwO)「―――ッ!?」


 突然、謎の悪寒がブレイドを襲った。
 背後に強い存在感と、嫌な予感を感じる。
 ラウズしようとした手を止め、ブレイドは恐る恐る…自分の背後へと視線を向けた。

  ∧
( OwO)「!!お前は……!?」
















( ´∀`)「――やぁ」

14629話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:46:03 ID:04shMioE0

  ∧
( OwO)「カテゴリーK…!!」

( ´∀`)「少しご無沙汰だね?ブレイド」

( ´∀`)「その姿は…君の新しい力かな?凄く立派な姿だねぇ。
       流石、誇り高き戦士だったカテゴリーJの力を引き出してるだけあるなぁ」
  ∧
( OwO)「ッ……!」


 スペードのカテゴリーKであり、裏で糸を引いている張本人でもあるモナーの姿。
 人間に擬態しながらも、ひとたび己の気配を意図的に放つ事で、これまでとは全く違う異様な存在感を発揮させた。

 アンデッドに板挟みとなった状態から一歩下がり、ブレイドは両者交互に警戒しつつ武器を構える。
 ライダーの中で唯一、カテゴリーKとの対峙がこれが初めてであるブレイド。
 以前の邂逅から力量をある程度予想しながらも、未知なる相手に警戒心を強める。


( ´∀`)「おお、僕と戦う気なの?」
  ∧
( OwO)「お前が今日は戦うつもりならな!」

( ´∀`)「へえー……君、強くなったんじゃない?
       数々のアンデッドを倒して、上級アンデッドもかなり倒してきたよね。
       新しい力も得て、向かうところ敵なしって感じ?」

( ´∀`)「やだなぁ、てことは…もしかしたらこの僕が負けちゃうかもしれない??」


 姿勢を崩し手のジェスチャーをしつこい程織り交ぜながら一人で喋り続ける。
 吐かれる言葉とは矛盾してブレイドを前に一切構えようとはしない。
 その矛盾から読み取れる余裕さが、ブレイドの心をより乱れさせた。

14729話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:46:23 ID:04shMioE0

  ∧
( OwO)「お前のおふざけに付き合うつもりは……ないお!!」


 翼のように羽ばたかせたマント。
 地を蹴りあげ、高速でスライドするかのように低空飛行でモナーとの距離を一気に詰める。
 右手のブレイラウザーを掲げ、ブレイドに視線すら向けないモナー目掛け目いっぱいに振り下ろした。

  ∧
( OwO)「おらぁッ!!」


 だが……、

  ∧
( OwO)「!?」

( ´∀`)「無駄だよ、分かってた事だろ?」


 刃がモナーに当たることはなく、彼を守護するように発生した盾が剣撃弾いた。
 以前と全く同じだ。
 分かっていても攻撃の手を緩める訳にはいかない――ブレイドは、ひたすらに剣を振り続けた。

  ∧
( OwO)「クッ……このォッ!!」


 自在に発生し続ける盾。先読みしているかのように、的確に盾がモナーを守り続ける。
 モナーは腕を組みながらブレイドの猛攻をあざ笑うかのように見ていた。

14829話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:46:44 ID:04shMioE0


( ´∀`)「頑固な奴だなぁ、だから無駄だって――」
  ∧
( OwO)「ッ…!!」


 盾ではなく、振りかかる刀身を片手で掴み防ぐ。


( ´∀`)「――言ってるだろ!?」


 もう片方の手を掌底のように突き出す。
 その瞬間、ブレイドに強烈な衝撃波が襲い掛かった。

  ∧
( ; OwO)「うわああぁッ!?」


 それは、亀のアンデッドに食らったタックルよりも重たく、激しい痛みが体の芯まで届いた。
 衝撃波によって少なくとも3m以上は吹き飛ばされる。

 地面に転がり落ち、体全体を襲う痛みに悶える。

  ∧
( ; OwO)「うぐぅ……ッ、何だ今の……!?」

( ´∀`)「しつこいから分からせてやっただけさ、力の差を」
  ∧
( ; OwO)「これが……カテゴリーKの力……!」


 モナーの目は先程までとは違い、酷く冷たさを帯びている。
 まるで、足元に鬱陶しく転がるゴミを見るような目で。
 人間態でこれ程の力を発揮出来る事に、恐れを抱いた。

14929話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:47:07 ID:04shMioE0


 モナーだけではなく、未だ亀のアンデッドは健在。
 彼の予想外の出現によって戦況は大きく狂わされた。

  ∧
( ; OwO)「ぐ……クソ……!」


 拳を突き立て、膝を着き痛む体に鞭を入れ無理矢理起き上がるブレイド。

 
「剣藤!!」
  ∧
( ; OwO)「モララーさん…!」


 二対一の不利な状況の中、応援のギャレンが漸く到着。
 近付いていたバイクの音に意識が向かず、気付いた時にはギャレンがすぐ傍にいた。

 ギャレンはふらつかせるブレイドの体を支え、目の前のアンデッドとモナーを確認。
 人の姿をしているが、おおよそアンデッドである事は今までの経験から伺えた。


( OMO)「大丈夫か?……コイツは何だ?」
  ∧
( ; OwO)「注意してください!コイツが、♠スートのカテゴリーKです…!」

( OMO)「カテゴリーK!?」

( ´∀`)「ああ、君がギャレンかぁ。君にもいつか会ってみたいなぁって思ってたんだよ!」

( ´∀`)「――これで、ライダー3人全員に会えた」

( OMO)「3人……だと?」

15029話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:47:32 ID:04shMioE0



( ´∀`)「あ、そうそう。本題忘れてた…ブレイド、君に会いに来たのには理由があるんだ。
       これから面白くなる事をするから、君にも共有してあげようと思って!」
  ∧
( OwO)「何…?」

( ´∀`)「君が大事に大事にしてるアンデッドがいるだろ…?愛川クー、だっけ?」
  ∧
( OwO)「クーが何だお!?」

( ´∀`)「いやぁ、君達は何か勘違いしているようだから…真実を教えてあげる為に人肌脱ごうと思ってさ」

( ゚∀゚ )「フフフフ……君達に見せてあげるよ。あいつの真の姿を。
       あいつの真の恐ろしさを!絶望を……!!」


 両手を広げ、目を見開き、白い歯を見せながら狂気の笑みを浮かべる。
 まだ垢抜けない顔が、冷酷さを帯びた表情へと一変。
 その顔を見た瞬間……背筋がゾッとした。まるで辺りを凍て付かせるような、そんな冷たさを感じた。

  ∧
( OwO)「どういう事だ…?お前何をする気だ!?」

( ´∀`)「さぁ?皆まで言ったら面白くないじゃないか」
  ∧
( #OwO)「お前…!!ふざけんなお!!!」

( OMO)「落ち着け剣藤!挑発に乗せられるな!」

15129話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:47:56 ID:04shMioE0


( ´∀`)「さ、伝えたかったことは伝えたし…僕はそろそろ帰るよ」
  ∧
( OwO)「まだ話は終わってないお!」

( ´∀`)「これ以上話すことなんてないよ。君じゃ僕とまともに戦うこともできないだろうしね」

( ´∀`)「これから起こる事全て、君達は体感できるんだ……その目で確かめるといいさ」

( OMO)「待て!ライダー3人に会ったとはどういうことだ?レンゲルに会ったのか!?」

( ´∀`)「さぁ、どうだろうね?教えてやらんでもないけど…一つ言えることは――」










( ´∀`)「――もう、君達の知ってるレンゲルはいない……」

( ´∀`)「……かもね?」

15229話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:48:31 ID:04shMioE0


( OMO)「何?どういうことだ!?」
  ∧
( OwO)「ドクオがどこにいるのか知ってるのかお!?」

( ´∀`)「フフフ、真実を知りたかったら自分達で彼を探しなよ。僕は次に行かなくちゃ――っと!」


 片足で地を蹴り、人間の姿では有り得ない高さを跳躍。
 亀のアンデッドの上に飛び移り、両肩に足を乗せ器用に立つ。


( ´∀`)「じゃあね、ブレイド」
  ∧
( OwO)「待てッ!」


 このままでは逃げられる――察したブレイドは、再びモナーへの接近を試みる。
 "敵わない"と心の何処かで分かりながら、ドクオの事が語られた以上黙って見送るわけにはいかなかった。

 しかし、心の声はやはり正しかったと次の瞬間で証明される。
 モナーの大きく開けた口から放たれる衝撃波は高速でブレイドに直撃し、その後ろにいたギャレン諸共吹き飛ばした。
 
  ∧
( ; OwO)「ぐはっ!?」

( ; OMO)「くっ…!」


 衝撃波によって地に転がる二人。
 ダメージは大したことはなく、すぐに起き上がり周囲を見渡すが、既にモナー達の姿はなかった。

15329話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:48:51 ID:04shMioE0

  ∧
( OwO)「クソッ!良いようにやられたお!!」


 何も出来なかった苛立ちを隠せず、地面を右足で踏みつける。
 苛立つブレイドとは逆に、ギャレンは冷静にモナーの言葉を思い返す。


( OMO)「あのカテゴリーK、ドクオについて何か知っている口ぶりだったな」
  ∧
( OwO)「まさかドクオに何かあったんじゃ…!」

( OMO)「………」


 ギャレンの脳内で、モナーの言葉がある言葉に重なっていた。
 それは昨日、バーボンハウスのクーの部屋にて交わされた、レンゲルに封印されたヒッキーついての言葉。

154名無しさん:2023/12/10(日) 09:49:12 ID:04shMioE0



 ――――――――――



 川 ゚ -゚)「自分を犠牲にしてまであの男を救おうとした奴は今…もう、いない」

 ( ^ω^)「え……?」

 ( ・∀・)「どういうことだ?」

 川 ゚ -゚)「そのままの意味だ、奴はカテゴリーAに食われた。
      カテゴリーKでありながら力を発揮出来ぬ程、カテゴリーAはあの男の心に巣食っていたということだろう」

 川 ゚ -゚)「もしくは、あの男自身が解放を望まなかったか…」

 ( ;^ω^)「そんな……ヒッキー……!」

 川 ゚ -゚)「いずれにせよ、カテゴリーAの力を増強させただけに過ぎなかったな」



 ――――――――――

15529話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:49:45 ID:04shMioE0


 厳密には、クーの話はヒッキーに対しての言及。モナーはレンゲルへの言及であった。
 しかし、ドクオとヒッキーが一体と考えれば両者ともドクオについて語っているも同然。
 ドクオの不可視な状況に、不安が募るばかり。


( ; OMO)「いや、まだ分からない。例え愛川クーやカテゴリーKの話が一致していたとしても……」
  ∧
( OwO)「そうですよ、ドクオに直接会わない限りは信じれません!
     ヒッキーが負けた事は事実だとしても…ドクオの現状までは分かりませんお!」

( OMO)「そうだな……何にせよまずはドクオを――」




 [――二人とも、大丈夫!?」




 ギャレンの言葉を遮り、ツンから無線が入る。
 二人は耳元に片手を添え、ツンの言葉に耳を立てた。

15629話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:50:26 ID:04shMioE0


 厳密には、クーの話はヒッキーに対しての言及。モナーはレンゲルへの言及であった。
 しかし、ドクオとヒッキーが一体と考えれば両者ともドクオについて語っているも同然。
 ドクオの不可視な状況に、不安が募るばかり。


( ; OMO)「いや、まだ分からない。例え愛川クーやカテゴリーKの話が一致していたとしても……」
  ∧
( OwO)「そうですよ、ドクオに直接会わない限りは信じれません!
     ヒッキーが負けた事は事実だとしても…ドクオの現状までは分かりませんお!」

( OMO)「そうだな……何にせよまずはドクオを――」




 [――二人とも、大丈夫!?」




 ギャレンの言葉を遮り、ツンから無線が入る。
 二人は耳元に片手を添え、ツンの言葉に耳を立てた。

15729話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:51:02 ID:04shMioE0


[ 別の場所でサーチャーの反応あり!♦のカテゴリーQとカリスが戦ってるわ! ]
  ∧
( OwO)「クーが!?分かった、すぐに向かうお!」

( OMO)「俺はあのアンデッドがいつ現れてもいいように備える、そっちは任せた」
  ∧
( OwO)「はい、そっちもお願いします!」

[ 位置情報を今から送るわ、そこからだと少し遠いかもだけど… ]
  ∧
( OwO)「大丈夫だお!ジャックフォームの力で飛んでいくお!」


 眼前に映し出される位置情報。
 ブレイドは翼状のマントを自分の意志で広げると、両脚で地を押し出すように蹴り飛翔。
 ブレイドの脳波操作によって無人で走行開始するブルースペイダーは、瞬く間に飛んで行ったブレイドの後を追跡する。

 その姿を地上から見送るギャレンは、一人変身を解除。


( ・∀・)「……少しばかり、状況が混雑してきたな」

( ・∀・)「ここからどうする……?一度、ツン達と一緒に考えよう」


 ドクオの行方、クーの正体、カテゴリーK……。
 ライダーとして戦ってきたが、戦いを重ねるごとに、戦い以外の事で頭を悩ませる事が多くなった。
 自分がどのような立ち振る舞うべきか、考えていた。




( ・∀・)「――デレさんがいたら、冷静に状況を判断してくれただろうな…」



 ―――――。

15829話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:51:26 ID:04shMioE0


 ―――――。


 場所は変わって、人気のない運河。
 ツンがキャッチしたカリスとカテゴリーQの反応のあった場所。
 既に戦いは熾烈を極めていて、人気の遠ざかったこの場所で二人は対峙している。
 静かにすれば聞こえてくるはずの心地の良い波音は、両者の肉体を斬り刻み合う攻撃でかき消される。


( <::V::>)『くっ…!』

リ(゚,-,゜川『ふっ!はあっ』


 海が面しているこの場所では、ペニサスに地の利があった。
 海蛇の祖である彼女は、地上戦のみ応じる事はなく、海を利用した戦法を駆使する。
 
 カリスの地上戦でのポテンシャルは、上級アンデッドに勝るとも劣らず。
 ペニサスはそれを考慮し、且つカリスを倒す悲願の為に己の土俵に立たせる事を狙った。

 地上での打ち合い、カリスの攻撃を躱すようにペニサスは海へとダイブ。
 暗い海の中に沈んだ事で視認が不可能になり、カリスは警戒する。


( <::V::>)『何処だ…?さっさと上がってこい!』


 海面に注意を払いながら、ペニサスの気配に感覚を研ぎ澄ます。

 ………。

 ………。


( <::V::>)『そこだッ!』

15929話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:51:56 ID:04shMioE0


 微かに揺れ動いた海面。一致する気配。
 カリスラウザーの照準を合わせ、そこに向かってフォースアローを数発射出。
 光の矢は海面を突き破り、吸い込まれるように海の中に。
 次の瞬間、水中での爆発と共に水飛沫が巻き起こる。
 それに打ち上げられるようにして、何かが打ち上げられた。

 しかしそれは、ペニサスではない。


( <::V::>)『海蛇…?まさか、囮か!?』


 打ち上ってきたのは数匹の海蛇。
 罠に嵌った――そう気付いた時には、もう遅い。


『――かかったわね!!』

( <::V::>)『――ぐっ!?』


 背後から首に巻きつく触手。
 ペニサスは密かにカリスの死角を取り、逃れられぬよう首を絞め付ける。
 反射的に触手を解こうとするが、ギチギチ…と、より強く首に食い込む。
 

(;<::V::>)『あ……が……ッ!』


 呼吸が苦しくなり、身動きが取れない。
 何とか脱する為、カリスはバックルのカリスラウザーに手を伸ばす。
 カードの力を用いて、何とか逃れようとした。


リ(゚,-,゜川『あんたの思い通りにはさせない!!』

(;<::V::>)『うあッ!?』


 しかし、ペニサスはその動きを察知。
 形勢逆転はさせまいと、もう一本の触手でカリスの右手首を捕えた。
 捕えた直後、強引にカリスを投げ飛ばし建物の壁へと激突。

16029話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:52:22 ID:04shMioE0


 崩壊する壁。
 すぐにカリスは地上に叩き付けられ、拘束解かれぬままペニサスがゆっくり接近。
 起き上がろうとするカリスの脇腹を、右足が蹴り上げた。


(;<::V::>)『ぐふっ…!』

リ(゚,-,゜川『良い声じゃない?もっと情けない声聞かせなさいよ……ジョーカー!!』


 左手でカリスの首を掴み、強引に起き上がらせる。
 右手に垂れ下がるハンマーの鋭利部で、胴体を何度も斬りつける。
 カリスの痛み苦しむ様子、声。
 それらがペニサスの強い復讐心を興奮させ、ゾクゾクさせた。
 カリスを攻撃する事に強い愉悦を覚え、目的と理性を失う程に痛めつける事に夢中になる。


(;<::V::>)『クッ……!』


 一方的に攻められる状況、どうにか打破したい。
 不幸中の幸いか、カリスアローを握る左手はまだ自由だ。
 カリスは一度ペニサスを蹴り、距離を取らせる。
 そして、右手を拘束する触手を切り離そうと何度も斬りつける。
 
 太い触手は幾度かの攻撃によって斬り落とされた。
 自由になった右手ですぐにカリスラウザーを取り外し、カリスアローに装着。
 一枚のカードをすぐに引き抜き、ラウザーにカードをスライドさせラウズ。
 

    《 -♥4 FLOAT- 》《 -♥7 BIO- 》


 "♥7 BIO"の効果で、カリスは植物の触手を伸ばし同じようにペニサスの身体に巻き付け捕獲。
 更には、"♥4 FLOAT"のカードの効果で、カリスは空中飛行の力を得る。
 首にはまだ触手が絡んだまま、重力を無くしたかのように宙を浮き、触手で繋いだまま引き上げるように空へ向かって飛ぶ。
 

リ(゚,-,゜川『何!?』

 
 水中戦からペニサスを引き離すのが目的のこの行為。
 建物の屋上に舞い降りると、逆にカリスはペニサスを屋上の地に叩き付けた。

16129話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:52:45 ID:04shMioE0


リ(゚,-,゜川『うっ…!』


 ペニサスに生じた隙を見て、首に絡む触手を斬り落とす。
 漸く解放されたカリスは、苦しそうにゲホゲホと咳き込み満足に酸素を取り入れる。
 締め付けられ痛む首元を片手で撫でながら、カリスは武器を構え突進。
 すぐに起き上がったペニサスは、その攻撃をハンマーで防いだ。


( <::V::>)『はああああああッッ!!』

リ(゚,-,゜川『フン、あんたをいたぶれると思ったら嬉しくなってしまったわ…ジョーカー』

( <::V::>)『その名を呼ぶなと言っている!』

リ(゚,-,゜川『自分の名を嫌がるなんて、どういう風の吹き回し?
      低俗な人間の世界に溶け込んで骨でも抜かれたのかしら!?』

リ(゚,-,゜川『そうねぇ……あんたの存在を、あんたが大事にしてる連中に言いふらすのも面白いかも!』

(#<::V::>)『黙れ!!』


 露骨な挑発に激昂する。
 ペニサスは口元に卑しい笑みを浮かべながら、鍔迫り合いのままカリスに心理戦を持ち込かける。


リ(゚,-,゜川『あんたが大事にしてる人間の子供、真実を知ったらどう思うかしらね?
      裏では無差別に殺戮を繰り返すだけの、ただのバケモノだと知ったら…!!』

(#<::V::>)『貴様……!!』

リ(゚,-,゜川『アハハハ!どうしたの?手が震えてるじゃない…ッ!?』

16229話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:53:15 ID:04shMioE0


(;<::V::>)『あぁっ…!?』


 一瞬の緩みだった。
 カリスの困惑を突き、ペニサスは鍔迫り合いを制しハンマーで一撃。
 更に二本の触手による突進攻撃で追い打ちをかける。
 突進を腹部に受けたカリスは吹き飛ばされ、落下寸前の位置に倒れ込む。

 すぐさま接近するペニサスは、カリスの左手を蹴り飛ばしカリスアローを叩き落とす。
 そして、カリスの胸を強く踏みつけた。


(;<::V::>)『がはっ!』

リ(゚,-,゜川『良い気味ね、ジョーカー……』

(;<::V::>)『クソ……!』

リ(゚,-,゜川『でも、過去のあんたとは違うみたい。今は人間と暮らして随分と腑抜けてしまったようね?
      あんたはあの人間共に自分の正体がバレるのを恐れて、動揺した』


 間違いない。
 カリスは、ペニサスの脅迫とも取れる言葉に呆気なく動揺してしまった。
 勝手にその先の未来を想像してしまい、それを強く恐れてしまい…力が鈍ってしまった。


リ(゚,-,゜川『復讐としてはちょっと肩透かしだけど……そんなもの関係ないわ。
      今ここで、ようやくあんたを消せる……!!』

リ(゚,-,゜川『あのヤギ女も蘭女も、虎女もみんなバカ。アタシが最強のカテゴリーQよ…!!』

(;<::V::>)『ッ……』


 高笑いしながら、カリスの首元にハンマーの刃先を突き付ける。
 

リ(゚,-,゜川『――アタシの勝ちよ、ジョーカー!!』


 肘を引き、勢いをつける。
 高らかに自分の勝利を謳い、カリスの首目掛けて一気にハンマーを突き付けた。

16329話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:53:38 ID:04shMioE0


(;<::V::>)『ッ―――!!』


 目を決して逸らさず、カリスは歯を食いしばる。
 身体を動かそうにも、ペニサスの体重がのしかかって動かない。
 腹を決めて、この致命的な攻撃を受け入れようとした。


 ……………。

 ………。

 …。




 しかし、刃先がカリスの首を貫くことはなかった。
 喉を今にも突き破りそうな、寸前の位置で停止している。



 ペニサスを見る。

 その背後に―――、






、\ ノ
(  ,皿, )

16429話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:54:01 ID:04shMioE0


( <::V::>)『お前は……!?』

リ(゚,-,゜川『!?』


 そこにいたのは、あの少女に扮するアンデッド――。
 ペニサスの腕を掴み、カリスへの攻撃を阻止している。


リ(゚,-,゜;川『あんたは……カテゴリーK…!?』
、\ ノ
(  ,皿, )『………ナイ』

リ(゚,-,゜;川『……?』
、\ ノ
(  ,皿, )『わたシの、愛シいひとをいじメタ……』















、\ ノ
( #゚,皿,゚)『―――許サない!!!』

16529話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:54:25 ID:04shMioE0


リ(゚,-,゜;川『ッ……!?』


 声を荒げるカテゴリーK。
 これまでに耳にしたことのないような、怒号のような声。
 大きな怒りを含ませた声から、ペニサスは恐怖を感じ、無意識にゾッとする。

 警戒しようとしたのも束の間、カテゴリーKは片腕に備わった鎌で――ペニサスの顔面を抉るように斬り付けた。


リ(゚,-,゜;川『アアァッ!?』
、\ ノ
( #゚,皿,゚)『フーッ、フーッ……!!!』


 顔面に、無理矢理抉られた一筋の線が入る。
 顔を片手で覆いながら怯んだペニサスを逃さぬよう、カテゴリーKは攻撃の手を止めない。

 蹲るペニサスの腹部に何度も拳を叩き入れ、両腕の鎌で何度も胸部を斬り刻む。
 その度、肉が裂けペニサスの胸から迸る緑血が周囲に飛び散る。


リ(゚,-,゜;川『うああっ!?ひっ……!!』
、\ ノ
( #゚,皿,゚)『待テ!!』

 
 恐怖を覚えるペニサス。倒れたまま、這いずって逃げようとする。
 腹部を蹴り上げ無理矢理仰向けに反転させると、馬乗りになり両腕の鎌で交互に胸を切り裂く。


 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。


 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。


 ペニサスの周囲に、緑血が溜まって池を作る。
 返り血を浴びながら、その手を止めようとはしない。

16629話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:54:55 ID:04shMioE0


( <::V::>)『………』


 惨たらしい。
 アンデッドとしてはかなり冷酷であった彼女でさえも、その荒々しく凄まじい攻撃に目を奪われ、惨さを感じる。
 身体を起こし、カテゴリーKの執拗な攻撃を遠目で眺めている。

、\ ノ
( #゚,皿,゚)『オオオオオオオォォォォッ!!!!』


 ペニサスの胸部は、斬り刻まれ尽くされた。
 見るのも痛々しく、酷くグチャグチャになっている。
 馬乗りになったまま雄叫びをあげ、最後に鎌をペニサスの喉に目掛けて突き刺した。


リ(゚,-,゜;川『ぐふっ―――』


 口からも緑血を吐き出し、無惨な攻めの果てに意識を失いかけるペニサス。
 喉を刺されようものなら人間では生死に関わるが、アンデッドは致命傷を負うだけで死にはしない。
 

リ(゚,-,゜;川『おま、え……何が、目的……』
、\ ノ
( #゚,皿,゚)『わたシの愛シイモの、お前ハ傷つけタ…!!』
、\ ノ
( #゚,皿,゚)『許さサい……許サナい……!!消えテ無くナレ!!』


 ペニサスの問いにも冷静に答えは返ってこない。
 カテゴリーKはただひたすら、怒りをぶつけている。
 右手を大きく振りかぶって、今度は脳天目掛けて腕を振り下ろそうとした。

16729話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:55:19 ID:04shMioE0


 ――その瞬間、カテゴリーKの身体がペニサスの上から消えた。


( <::V::>)『!?』


 一瞬の事で、ペニサスもカテゴリーK自身もそれを捉える事が出来なかった。
 消えた、というより、弾き飛ばされた。
 だが、傍観者であるカリスは、衝撃波のようなものがカテゴリーKに衝突したのを見逃さなかった。
 
 そして、その衝撃波もまた曲者によるものである事もすぐに理解した。


( ´∀`)「はいはーい、そこまで」


 先刻までブーンと対面していたモナー。彼によるものだった。
 彼の後ろには、亀のアンデッドとコガネムシのアンデッドの姿が。

 手をパンパンと叩き、こちらに向かって歩いてくる。
 彼もまた、♠のカテゴリーKだ。


、\ ノ
( ゚,皿,゚)『グウゥッ……!』

( <::V::>)『カテゴリーK……!』

( ´∀`)「やぁジョーカー、久しぶりだね。それよりカテゴリーQ…随分やられちゃったねぇ」

リ(゚,-,゜;川『うぐッ……アンタ、何を……?』

( ´∀`)「何をって、君を助けに来たんだろ?」

( ´∀`)「見なよコイツら、ジョーカーに♥のカテゴリーK……嫌われ者の似た者同士が並んでるじゃないか。
       こんな連中を一人で相手にしたら、流石の君もボロボロになっちゃうよね」

リ(゚,-,゜;川『………くっ………!』

16829話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:55:41 ID:04shMioE0


、\ ノ
( #゚,皿,゚)『邪魔ヲ……スるなァッ!!!』


 モナーによって阻害されたカテゴリーKは、怒り心頭の様子。
 片膝を立てて、モナーに強い視線を向けている。
 衝撃波を受けて弾き飛ばされたものの、カテゴリーKはピンピンしている。
 
 すかさず走り出し、跳躍。モナーのもとまで瞬時に接近。
 腕を振りかざし、落下の勢いでモナーの脳天目掛けて鎌を振り下ろした。
 
 すると、モナーの頭上には一枚の盾が発生。
 先程ブレイドの攻撃を受けた時と同じように、カテゴリーKの攻撃を防いだ。


( ´∀`)「おっと、危ない危ない」


 茶化すような反応、ニヤける口。モナーには余裕が見える。
 カテゴリーキングは盾に防がれると、すぐに盾を足場として利用し蹴り上げ、後方にバク転。

、\ ノ
( ゚,皿,゚)『ウウウア"ア"ァ"ァッ!!』


 回転しながら、両腕の鎌が光を帯び始める。
 地上に着地するなり、カテゴリーKは両腕を勢いよく振り上げ光の鎌をブーメランのように発射。
 モナーに向かった光の鎌を防がんと、同じように盾が出現する。

 だが――、

16929話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:56:04 ID:04shMioE0


 バリイィンッ!!


( ´∀`)「!?」


 光の鎌は、モナーの盾を木端微塵に打ち砕いた。
 カテゴリーKは地面をスライドするように高速で接近。

、\ ノ
( ゚,皿,゚)『喰らエェェ!!』


 盾を砕かれ護られるものがなくなったモナーの顔面に向かって、片腕の鎌を突き出す。
 モナーはそれを瞬時に躱したが、刃先がモナーの頬を軽く裂いた。

 頬につけられた一筋の傷跡から、緑血が滲み始める。
 その頬を片手で触り、血を確認。


( ´∀`)「………フフフ」

( ´∀`)「アハハハハ!!流石だよ、♥のカテゴリーK…僕のシールドを破壊するだなんて…!
       やっぱり君は面白いなァ……!!」


 高らかに笑い声をあげる。
 傍から見ればただ笑っているだけのように見えるが……その目は、血走っている。
 闘争本能に火がつき、興奮気味になっていた。


( ´∀`)「はぁ……、もっと遊びたいところだけど今日は大人しく退散するよ」


 呼吸を整え、モナーは冷静さを取り戻す。
 すると、まだ倒れているペニサスに近寄り、彼女の介抱を開始。
 亀のアンデッドが彼女を容易に担ぎ上げ、屋上から地上に向かって飛び降りた。

17029話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:56:27 ID:04shMioE0

、\ ノ
( ゚,皿,゚)『逃ガサなイ……!!』


 この場を去ろう背中を見せるモナーに、もう一度襲い掛かる。
 同じく飛び降りようとしたモナーだったが、足を止めた。


( ´∀`)「……勘違いするなよ」


 振り向くことをせず自身の眉間に手を翳す。
 すると……眉間から剣のグリップと思わしきものが出現。
 それを手に取ると、まだ全身露呈しきってない剣を雑に引き抜いた。
 
 そして、接近するカテゴリーKに向かって振り向きざま剣先を突き付ける。
 次の瞬間――二又になっている剣先から、強い衝撃波が炸裂。
 カテゴリーキングは正面から受けてしまい、再び吹き飛ばされた。

、\ ノ
( ;゚,皿,゚)『グアアァッ!!?』

( ´∀`)「僕が君に劣るなんてこと、あるわけないだろ?
       いつか相手にしてあげるから、それまで精々そこのお友達と仲良くしてなよ」

( <::V::>)


 カリスを一瞥し、モナーはほくそ笑む。
 吹き飛ばしたカテゴリーKなど気にも留めず、そのままモナーは屋上より飛び降りた。

17129話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:56:51 ID:04shMioE0


 モナーが去った直後、カテゴリーKはすぐに立ち上がった。
 すぐに飛び降りた方へ駆け寄り、身を乗り出して下を探すがもう彼等の姿はない。
 逃した事を悟ると、悔しさをぶつけるように地面を叩き付ける。 


( <::V::>)『………!』


 カテゴリーKはカリスへ歩み寄る。
 警戒するカリスだったが、カテゴリーKは歩きながら少女の姿へと変えていった。
 敵意はない、ことの証明だろうか。
 少女へ変化した彼女の姿は、先程までの気性の荒い姿とは全く別物。
 戦いで疲弊している様子も、痛みで苦しそうにしている様子も一切ない。


o川*゚ー゚)o「大丈夫?」

( <::V::>)『お前……何が目的だ?』

o川*゚ー゚)o「言ったじゃない、"あなたを傷つけようとする奴はわたしが壊す"って」

( <::V::>)『その目的は何だと聞いている』

o川*゚ー゚)o「それは……あなたが、わたしの"愛しいもの"だから』

( <::V::>)『……話にならないな』


 カリスにとっても彼女の存在は不気味でしかない。
 懐かれた覚えもなく、都度現れては同じ言葉を繰り返す。
 意思疎通を諦め、再度臨戦態勢を取る。
 護られようが、アンデッドに変わりはない――。

 しかし、少女は途端にカリスと距離を取る。


o川*゚ー゚)o「あなたとは戦わない」

17229話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:57:14 ID:04shMioE0


( <::V::>)『なら、その気にさせてやる!』


 言葉も聞かず、距離を詰めたカリスがカリスアローを振る。
 少女は、その姿からは想像も出来ない程の高い跳躍で攻撃を回避。そのまま屋上から飛び去り、彼女もまた何処かへと去った。
 カリスが飛び降りた方へと駆け寄り下を見下ろすが、既に姿はない。


( <::V::>)『チッ……!』


 何とも消化不良な出来事だった。
 ペニサスを倒し切る事も出来ず、モナーや少女の乱入があり、意図の読めない行動に惑わされる。
 胸に募る苛々から舌打ちをし、心を落ち着かせるよう無意味に歩き回る。

 もう此処に居ても仕方がない。
 カリスは屋上から飛び降り地に着地、クーの姿へと変化しバイクに戻ろうとする。


『クー!!』


 すると、何処からか彼女を呼ぶ声が聞こえた。
 声のする空の方を見ると、ジャックフォームで飛翔するブレイドの姿が。
 クーの前に華麗に着地すると、ホルダーに備えたブレイラウザーを抜いた。

  ∧
( OwO)「大丈夫かお!?アンデッドは!?」

川 ゚ -゚)「もういない」
  ∧
( OwO)「えっ?」

[聞こえる?ついさっきアンデッドの反応が消えたわ]
  ∧
( OwO)「倒したのかお?」

川 ゚ -゚)「全員逃げた」
  ∧
( OwO)「そっか……」

17329話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:57:40 ID:04shMioE0


 アンデッドがいない事を知ると、ブレイドは大人しく変身を解除。
 ブーンは、この場所に来る途中にカテゴリーK――少女の反応を報告されていた。
 カテゴリーKにカテゴリーQ…かなりの混戦を予想していたからこそ、クーの健常振りに違和感を覚えた。


( ^ω^)「ケガはないかお?」

川 ゚ -゚)「ああ」

( ^ω^)「此処に来る途中にもう一体のカテゴリーKの反応を見たお。
       ♥のカテゴリーK……そいつとも戦ったのかお?」

川 ゚ -゚)「私は戦ってない」

( ^ω^)「私は…?」

川 ゚ -゚)「………」

( ^ω^)「前にジョルジュに聞いたお。クー、ジョルジュを助けてくれたみたいだおね。
       でもそのアンデッド、クーを護ろうとしてたって聞いたんだけど…」

( ^ω^)「言いにくかったらいいんだけど、もしかしてそのアンデッドの事かお…?」

川 ゚ -゚)「………」


 クーは答えない。メットを手にし、ブーンに背を向けたまま動きが止まっている。
 やや焦りを感じたブーンは、やっちゃったか…?と不安げに後頭部をポリポリと掻いた。


( ^ω^)「あ〜…ごめんお、言いにくかったら本当大丈夫だから――」

川 ゚ -゚)「――私にも分からない」

17429話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:58:05 ID:04shMioE0


( ^ω^)「ん…?」

川 ゚ -゚)「分からない、奴の目的が。何故私を護ろうとするのか…。
     さっきもカテゴリーQと戦っていたところに奴は現れ、カテゴリーQを攻撃し始めた」

川 ゚ -゚)「何が起きようとしているか分からないが……あまり私に関わらない方がお前の身の為かもな」
       
( ^ω^)「いやいや、僕はクーに何かあれば駆け付けるし、一緒に戦いたいお!」

川 ゚ -゚)「………」


 それ以上言葉を返さず、無言でメットを装着。
 バイクに跨りブーンを置き去りにして颯爽と行ってしまう。

 残されたブーンはひとり、クーの言葉を頭の中で巡らせていた。
 彼女の言葉とモナーが言っていた言葉が、妙に重なっているように感じる。


( ^ω^)「クーを護ろうとするアンデッド……前のカテゴリーJとは理由が違いそうだお」

( ^ω^)「キングモナーはクーに何かをするつもりだお、それは間違いない。
       カテゴリーKはそれと何か関係してるのかお…?」


 一人佇む運河に、波打つ音が響き渡る。
 静かで、かつ力強い。

 まるで、これから起こりうる嵐の前触れのような――。


( ^ω^)「……ああ、ダメだお!僕だけじゃ整理し切れないお!
       帰ってモララーさんや皆に共有しないと…………って」






( ; ^ω^)「…………そういえば、どうやって帰るお?」

17529話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:58:30 ID:04shMioE0





 ―――――。




.

17629話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:58:54 ID:04shMioE0


 その日の夜――。
 カテゴリーKに惨敗を喫したペニサスは、モナーによって助け出された後にいつもの歓楽街の屋上へと連れて来られていた。
 身体はボロボロで、ペニサスは黒いソファの上で目を閉じてぐったりと横たわっている。


('、`*川「ん………」


 目を覚ました。あの一戦の後、意識を失っていたようだ。
 上体を起こそうとするが、カテゴリーKによって受けたダメージが重く全身がひどく痛んだ。


('、`*;川「ッ……!いった……」


 起きる事が出来ず、ソファに吸い込まれるように再び寝る。
 胸元についた傷からやや滲む緑血。
 片手を添え、付着した血を見て悔しさを滲ませる。


('、`*川「クソ……!もう少しだったのに……!!」

「―――お目覚めかい?」


 男の声が聞こえる。
 声のする方へ視線を向けるペニサス――そこにいたのはモナー。
 彼女を介抱した後、モナーはずっと見守っていたようだ。


( ´∀`)「いやぁ、残念だったね!良いところまで追い込んでたけどなぁ」

('、`#川「アンタ……!どういうつもり!?」

( ´∀`)「何が?」

('、`#川「何でアタシを助けたの!?」

( ´∀`)「何でって……気分?」

('、`;川「ふざけるな――ッ……!!」

17729話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:59:20 ID:04shMioE0


 起き上がろうとするが、痛みで思うように動けない。


( ´∀`)「何をそんなに怒ってるの?助けたっていうのにさ」

('、`#川「そんな事頼んだ覚えないわ…!」

( ´∀`)「でも、助けなかったら君はあのままカテゴリーKにやられてたんだよ?
       君はジョーカーを倒したいんだろ?その手伝いをしようと思ってるだけさ」

('、`#川「大きなお世話よ!」

( ´∀`)「………ちぇっ、何だよつまんない」


 ペニサスは激しい怒りを露わにする。
 アンデッドとして戦士のプライドを傷つけられた事が、許せないようだった。
 モナーはそんな彼女に、拗ねたような態度を見せた。


( ´∀`)「じゃああのままやられちゃえばよかったね。僕の助けがなかったら君は――」

( ´∀`)「――あの時のようにジョーカーに負けてたくせに」

('、`#川「―――!!!」


 モナーの挑発的な言葉に、ペニサスの怒りが爆発した。
 身体の痛みを堪え起き上がると、ペニサスはカテゴリーQの姿に変身。
 右腕に垂れ下がるハンマーを構え、モナーに襲い掛かった。


リ(゚,-,゜#川『キサマアァァァッ!!!』

( ´∀`)「―――止めろ」

17829話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 09:59:44 ID:04shMioE0


 モナーがそう言い放った瞬間、ペニサスの動きが止まった。
 まるで時間が止まったかのように、走り出す格好のままピタリと止まって動かない。

 しかし、モナーは動いていた。
 動きの止まったペニサスのもとへと、ゆっくりと歩み寄る。
 モナーと、もう一体のアンデッド――コガネムシのアンデッドが。


( ´∀`)「なぁ、こいつ馬鹿だと思わないか?こいつがジョーカーに勝てる見込みなんてないのに」

( ´∀`)「ジョーカーどころか、カテゴリーKにすら勝てるわけないよ」

リ(゚,-,゜川

( ´∀`)「あーあ、折角こいつ使って面白くしてやろうと思ったけど……メンドくさくなっちゃったな」

( ´∀`)「どうせなら……ククク、最後に利用して愉快な終わりを迎えさせてやろうかな……!!」


 そう言うと、モナーは眉間から剣を発生。
 動きの止まったペニサスの腹部に剣先を向け……、


( ´∀`)「動かせ」


 モナーの合図と同時に、止まっていた時間が動き出す。
 街も、人も、音も光も、全て動き出した。

 ペニサスも動き出す。
 それと同時に、モナーは彼女の腹部を、鋭い二又の剣で穿った。


リ(゚,-,゜;川『ッ――!?!?』

( ´∀`)「用済みだよ、お前」

リ(゚,-,゜;川『しまっ、た……カテゴリー10……お前の、力……か……っ!』

17929話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:00:09 ID:04shMioE0


 腹部を貫通する剣。剣に付着する緑血。
 自身に刺さる剣身を握り、目の前のモナーを睨む。


( ゚∀゚)

リ(゚,-,゜;川『ッ………』


 その顔に、背筋がゾッとした。
 次の瞬間、モナーは突き刺した剣を勢いよく引き抜いた。
 血が噴き出て、返り血を浴びる。
 抜けた傷口からは緑血がとめどなく溢れ、ペニサスは力なく倒れた。

 剣先からポタ…ポタ…と、緑血が垂れる。


( ´∀`)「さ、こいつ何処かに捨ててきてよ」


 後ろに控える二体のアンデッドに飄々とした態度で指示をする。
 アンデッドがペニサスを担ぎ上げると、二体のアンデッドは屋上から消えていった。


( ´∀`)「………さて」


 ソファに座り、脚を組む。
 両手を背もたれに掛け、目を閉じた。


( ´∀`)「聞こえるかい?さっきは邪魔して悪かったね。今から君に餌をあげるよ」


 ―――――。

18029話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:00:40 ID:04shMioE0


 翌日の早朝。
 夜が明け、陽が昇り眩い光が街中を明るく照らす。

 早朝の静けさ、鳥のさえずり。心地の良い風が流れる。
 まだ人通りの少ない遊歩道を、ブーンとモララー、ジョルジュが肩を並べて走っている。 
 体力をつける為の走り込みを行ってるようだ。
 そんな三人を、ツンはゴール地点で待機している。

 丁度走り終えたのだろう、三者とも息を荒げながら立ち止まった。
 モララーとブーンは立っているが、ジョルジュは一人地面に転げる。
 ツンが近付き、一人一人水の入ったペットボトルを手渡した。


ξ゚⊿゚)ξ「はい、お疲れさま」

( ; ^ω^)「ハァ、ハァ……ありがとうだお…」


 首にかけたタオルで、滝のように流れる汗を拭き取る。
 ペットボトルを受け取り、キャップを空けると豪快に水を飲む。
 火照った体に、水の冷たさがじんわりと広がっていく感覚。

 _
( ;゚∀゚)「ハァ…ハァ…、やべえ……」

( ; ・∀・)「どうしたジョルジュ、体が鈍ったか?」
 _
( ;゚∀゚)「前ほど…動かなくなっちまったからな…」

( ; ^ω^)「モララーさん流石だお…ピンピンしてるお」

( ; ・∀・)「そういう剣藤こそ、そんなに疲れてないんじゃないか?」

( ; ^ω^)「いやいや、何とか立ってられるくらいですお…」

18129話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:01:05 ID:04shMioE0


 遊歩道の脇に備えられた、横長の木製のベンチ。
 走り込みで疲れた体を休める為、並んで腰を掛ける。
 
 
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、これからどうするの?色々と心配しなきゃならない事、増えたわよね…」


 ツンが話を振る。
 主語のない振り方だが、全員趣旨は理解出来た。
 昨晩、ブーンとモララーが個別に起きた出来事を報告した件だ。
 
 ドクオの行方、クーの正体、ジョーカーの謎、二体のカテゴリーKの暗躍。
 これら全てが繋がってなさそうで、繋がっている。

 これまで紆余曲折ありながらも目の前のアンデッドを倒す事を一番に優先出来ていた。
 それは、これからも変わらない。
 だが……今になって、問題を進めるに当たって、慎重にならなければならない状況になった。
 理性・目的を持った上級アンデッドが介入する事で、物事か複雑化したからだ。


( ^ω^)「うん…僕はドクオが心配だけど、カテゴリーKも心配だお。あいつクーに何をするか分からない」

( ^ω^)「面白くなる事をする、って言ってたし。クーの事も気掛かりだお」

( ・∀・)「愛川クーに何をするかは知らないが…それによって何が起きるのかは気になるな。
      俺もドクオが気になるけど、ジョーカーとは一体何なのかも知りたい」
 _
( ゚∀゚)「なぁ、ジョーカーってトランプで言ったら、要はどのスートにも属さないってことだろ?相当特殊って事じゃないか?」

( ・∀・)「俺はそう踏んでるよ、だからこそ気になるんだ」

( ^ω^)「あのカテゴリーQが言ってた、"己が種族の存続の為に"って言葉…カテゴリーJも同じ事言ってたお。
       これまでのアンデッドも、万能の力の為に同じ様に戦いを勝ち残ろうとしてた」
 _
( ゚∀゚)「万能の力、種族の存続・繁栄ねぇ…」

ξ゚⊿゚)ξ「てことは、クーさんもその為に…?」
 _
( ゚∀゚)「これまでのアンデッドは何らかの種族な訳だろ?でも、ジョーカーって何の先祖なんだ?」

18229話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:01:31 ID:04shMioE0


 ………。

 妙に、重たい空気が流れる。

 それは、彼女が正体不明である事を誰もが認識してしまった瞬間。
 そしてそれは、言葉では形容し難い恐怖と不気味さを感じさせる。
 顔が、強張ってしまった。
 ただ一人を除いては。

 _
( ;゚∀゚)「あ…いや、その…」


 両肩に重たくのしかかるような空気を切り裂こうと、ジョルジュが焦って声を出す。


( ^ω^)「何者だとしても、クーがクーである事実は揺らがないお。それに前ほど攻撃的ではなくなった様にも見えるし」

( ^ω^)「アンデッドの闘争本能…ってやつ?は、前よりコントロール出来てる気がするお」

( ・∀・)「…もし彼女がアンデッドとしての本能を抑えられず、凶暴化したら?」

( ^ω^)「………」


 言葉に詰まる。
 本来なら、"封印する"と答えるのが正解なんだろう。
 何故なら、仮面ライダーだから。

 でも――それをしたくない。
 けど、これが不正解で、矛盾しているのも分かっている。
 何故なら……仮面ライダーだから。

18329話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:01:58 ID:04shMioE0


( ・∀・)「剣藤、君が愛川クーを信用している事を責めるつもりはないんだ。
      ただ……もしも、の可能性は念頭に置いておいた方がいい」

( ・∀・)「例え今は敵意がなくても、いつどうなるかまでは分からない。
      その時に止める事が出来るのは、俺達仮面ライダーしかいないんだ」

( ^ω^)「……はい」

ξ゚⊿゚)ξ「…でも、何もないのが一番よね!クーさんはあまねちゃん達を本当に大事にしてるし」
 _
( ゚∀゚)「ま、まぁそうだな…クーさんがあの人達に危害を及ぼす姿、想像できないしな。
     でも、どうなるか分からないってのも万が一の話だよ。そうだよな?モララーさん」

( ・∀・)「うん、もちろん」


 ブーンの表情が、露骨に曇ったのが分かった。
 気付いたツンは、咄嗟に彼をフォロー。
 ジョルジュもすかさずモララーの伝えたい事を噛み砕き、柔らかくした。


( ^ω^)「大丈夫です、分かってます……」


 顔を伏せながら、歯切れの悪い返事。
 言葉とは裏腹に認めたくない意思が伝わる。
 
 _
( ゚∀゚)「……あー、腹減ったわ。疲れたし帰って飯食おうぜ」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、帰ってご飯にしましょ!ね?」

( ・∀・)「そうだな」


 機転を利かせたジョルジュに乗っかって、何とかこの空気を払拭しようとする。

18429話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:02:26 ID:04shMioE0


 三人はベンチから腰を上げ、のそのそと歩き出す。
 しかし、ブーンはベンチを離れず、足元の地面を見つめたまま。
 気付いたツンは足を止め振り返り、声をかけた。


ξ゚⊿゚)ξ「……ブーン、行こう?」

( ^ω^)「あ……うん、行くお」


 ツンの声で我に返ったかのように顔を上げる。
 すっ、と立ち上がり、ツンのもとへと駆け寄った。

 
 きっと大丈夫。
 クーは、何もしない。
 だって、あれだけあの家族を愛してるじゃないか。
 
 何も起きない。起こさせない。

 もし起きたらその時は―――………


 ………それ以上、考えたくなかった。


 ―――――。

18529話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:03:13 ID:04shMioE0


 ――町の中のとある水深の浅い川。
 川の中で、一人の女性が歩いている。


('、`*;川「っぐ…!」


 キングによって深い傷を負わされたペニサス。
 壁を這いながら、やっとの思いで歩く。


('、`*;川「うわっ!?」


 足が躓き、転げ落ちた。
 バシャンッ!という音と共に水飛沫が散る。
 川に落とされ、冷たい水が深く抉られた傷口に沁みて痛い。


('、`*;川「あいつら……許さない……!!」


 体はびしょ濡れ。
 緩やかに流れる川の水を受け、地を這いながら何もない目の前を睨む。


('、`*;川「クソ……クソ、クソ、クソォ!!」


 蓄積されたダメージで、体が言うことを聞かない。
 怒りと悔しさで、拳で何度も地面を叩く。
 

('、`*;川「見てろ……このバトルファイト…絶対に…!」


 這いつくばって、前に進む。
 こんなに緩やかな筈の川の勢いが、やたらと重く感じる。


('、`*;川「アタシが、アタシが……!!」


 戦いに勝ち残ろうとする強い意志。
 傷だらけになり、ボロボロになっても、心は折れない。
 必ず、奴らに復讐を――。

18629話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:03:39 ID:04shMioE0


 しかし、その意志は途端に折れかける。
 目の前に現れる、仇敵によって。


('、`*;川「………!!」


( <::V::>)


('、`*;川「ジョーカー…!」

( <::V::>)『カテゴリーKはどこだ?』

('、`*;川「は…さぁね…」

( <::V::>)『とぼけるな、どうせその辺に隠れているんじゃないのか?
      貴様を利用して、くだらない事でも企んでいるんだろう』

('、`*;川「利用…だと…?」

( <::V::>)『カテゴリーKからの報せだ、貴様が此処にいるとな。
      貴様を好きにしろなどと言っていたが…魂胆などお見通しだ』

( 、 *川「………」

( <::V::>)『聞いているんだろ?こんな奴を差し出されなくても、私はお前と戦うつもりだぞ!
      こいつを封印した後、お前も私の手で倒してやる!』


 まるで見下されている気分だった。
 一万年前の戦い、こいつによって敗退を余儀なくされた。
 
 この時代で、あの時の復讐を誓った。
 こいつを倒して、今度こそこの戦いを勝ち残る。
 そう決めたのに。


( 、 *川「どいつもこいつも……アタシの邪魔をしやがって……」

( 、 #川「どいつもこいつも、見下しやがってェ……!!」

18729話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:04:07 ID:04shMioE0


リ(゚,-,゜#川『許さないィィィッ!!』


 本来の姿を現す。
 瀕死だったとは思えない程、すぐに起き上がった。
 痛みなど関係ない。ペニサスを突き動かすのは、激しい怒り。
 勢いのまま、カリス向かって突進する。


( <::V::>)『ふっ!』


 まるで闘牛のように、真っ直ぐ向かってくる。
 さながらカリスは赤いカーテンのよう。
 闇雲に突っ込んできている事を察し、カーテンのようにひらりと躱す。
 すれ違いざまにペニサスを払い、再び転倒させた。


リ(゚,-,゜;川『ぐあっ!?』


 焦る様子なく、カリスラウザーをカリスアローに装着。
 もはや、ペニサスが碌に戦えない事は分かっている。だからこそ冷静。
 ただ、一撃を与えればすぐ終わる。


    《-♥4 FLOAT-》 《-♥5 DRILL-》 《-♥6 TORNADO-》

           《-♥SPINING DANCE-》


( <::V::>)『己の運命を呪え』


 それがペニサスへの最後の言葉。
 両手を広げ、竜巻を纏う。風圧で、川の水がカリスを避けるように波打つ。
 そのままゆっくりと浮遊、空へと高く浮かんでいく。

18829話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:04:37 ID:04shMioE0


リ(゚,-,゜;川『……フフ……アハハハハハハ!!』

リ(゚,-,゜川『そう…これが…これが、アタシの運命なのね…!』


 カリスの言葉に笑いながら、再びゆっくりと起き上がる。
 己の運命を悟ったかのように、立って動こうとしない。

 空中で、カリスが高速で錐揉みに回転。竜巻の勢いはより強くなる。
 揃えた両足。そして、ペニサス目掛けて一気に突進。


リ(゚,-,゜川『なら、今度こそ…今度こそ、その運命に抗ってみせるわ!
      そしてその時、必ずあんたを――』

( <::V::>)『ハアアアアァッ!!』


 ペニサスが言葉を紡ぎ切る前に、カリスの必殺技がペニサスを射抜いた。
 衝突した瞬間、川の上で爆発。
 断末魔もなく、吹き飛んだペニサスが爆風から現れる。

 ペニサスのバックルは開いていた。もはや起き上がる事はない。
 川の上に着地したカリスは、背後でぐったりと倒れるペニサスに向かってカードを投擲。
 カードはペニサスを徐々に吸収し、封印した。

 帰還するカードを雑に掴み取る。
 ♦スートのカテゴリーQだったペニサス。
 カードには海蛇が対を成すように描かれたが、その背景は真っ黒なまま。


( <::V::>)『……哀れな奴だったな』


 そのカードを見つめ、ポツリと呟いた。




「―――君もね」

18929話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:05:01 ID:04shMioE0



 次の瞬間――巨大な衝撃波がカリスを襲い、吹き飛ばした。


( <::V::>)『ぐあっ!?』


 壁に衝突するカリス。
 持っていたカードを手放し、川の水面から突出した岩の上にひらりと舞い落ちた。

 カリスの衝突と共に、川の中に誰かが飛び降りる。


( ´∀`)「流石だよジョーカー、あんな奴じゃ君に勝てるわけないよね」


 モナーだ。
 カリスの読み通り、この展開を陰で見ていた。


( <::V::>)『貴様…!やはりコソコソと隠れていたか!』

( ´∀`)「コソコソだなんて、分かってたんだろ?僕がいたこと。
       だったら別に驚かなくてもいいじゃないか」

( <::V::>)『ふん、仮にもカテゴリーKでありながらこんな卑怯な真似をするとはな。
      王様を自称する割には、その実大した事のない奴だったな』

( ´∀`)「フフフ……言ってくれるじゃん」

( <::V::>)『違うのか?ならそれを証明してみせろ!』


 カリスアローを構え、水の上を駆ける。
 ジャバジャバ、と走る度に音が鳴る。
 距離を詰めると、両足で水面を蹴りモナーに向かって飛び掛かった。

 その時だった。


( ´∀`)「止めろ」

19029話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:05:25 ID:04shMioE0


 モナーの言葉と同時に、カリスの動きが空中でピタッと止まる。
 今まさにモナーに襲い掛かろうとする瞬間で。
 
 ペニサスを止めた時と同じだ。
 
 すると、橋の上からコガネムシのアンデッド――スカラベアンデッドが飛び降り、モナーの隣に現れた。
 ペニサスが言っていたカテゴリー10の力……時間停止能力こそ、このスカラベアンデッドの力。
 あらゆる対象の動きを一時的に停止させる事が出来る、モナーはこの力を利用していた。


( ´∀`)「こいつの相手、お前に任せるよ」

『……』

( ´∀`)「動かせ」


 その合図と共に、再び時は動き出した。
 川の流れも動き始め、モナーに飛び掛かったカリスもまた動き始めた。

 しかし、そこにいたのはモナーではなく、スカラベアンデッド。
 

( <::V::>)『!?』

『グアアアァッ!!』


 鈍器のように長く発達した、左手の爪。
 カリスアローが完全に振り下ろされる前に、ソレでカリスを殴り飛ばす。


(;<::V::>)『うっ…!こいつ、カテゴリー10…時間停止か!?』

19129話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:05:48 ID:04shMioE0


 カリスからは瞬時に入れ替わったように見えている。
 何が起きたのかは、すぐに理解した。
 上級アンデッドではないが、癖の強いこの能力はアンデッドの中でもかなり厄介な存在。
 
 すぐに態勢を整える。
 が、いつものようにすぐに攻撃に移る事は出来なかった。


( <::V::>)(思うままに時を止めるコイツに、正攻法で戦っても同じ事の繰り返しだ…)

( <::V::>)『……試してみるか』


 カリスは二枚のカードを用意。
 そして、一枚のカードをカリスラウザーにラウズする。


    《 -♥8 REFLECT- 》


 "♥8 REFLECT"。モスのカードだ。
 カードの力で鱗粉を纏うと同時に、自身の周囲にバリアを張った。
 カリスの狙いは、時間停止で隙が生まれても攻撃を受け付けない事だった。

 モスの力を纏ったカリスは、再びスカラベアンデッドに向かって正面から接近。
 しかし、カリスアローで攻撃する素振りは見えない。
 狙い通り、時間停止を行いスカラベアンデッドはカリスの背後に回った。
 まるで瞬間移動。
 カリスから見れば、次の瞬間には背後に回られている。


『グウウッ!!』


 そして狙い通り、背後から攻撃を仕掛けてきた。
 だが、モスの力でそれは弾き返される。
 カリスはこの隙に、もう一枚のカードをラウズ。


    《 -♥7 BIO- 》

19229話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:06:10 ID:04shMioE0


 ラウズした直後、すぐに振り返り右手を突き出す。
 "♥7 BIO"の力で、カリスの突き出した右手から植物の触手が勢いよく伸長。
 スカラベアンデッドの体を締め上げ、捕獲した。


『!?』

( <::V::>)『時を止めたければ止めてみろ。貴様はこの触手を切り裂く事も、離れる事も、攻撃すらも出来はしない!』


 カリスの狙いは的中した。
 スカラベアンデッドに、動揺の色が見える。
 時間停止能力には唯一の欠点がある。
 それは、"停止した対象に一切触れる事が出来ない"事だ。
 
 モスの力で攻撃を防ぐだけでは時間稼ぎに利用されかねない。
 ならば、バイオプラントの力で捕獲し、時間を止められても逃げる事も出来ないようにする。

 挑発を受け時間停止するスカラベアンデッド。
 触手を切り離そうとするが、自身と接触してしまっている為に触れる事が出来ず、攻撃は強く弾かれる。
 
 やむを得ず時間を動かし攻撃を仕掛けるも、モスの力で攻撃は防がれる。


( <::V::>)『もらった!』

『グギャアァッ!?』


 カリスの反撃が始まる。
 カリスアローで幾度となく斬りつけ、スカラベアンデッドを肉体的に追い詰める。
 一度懐に入ってさえしまえば、もうカリスの独壇場だ。

 ……だが、それを許さない役者が、もう一人。

19329話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:06:33 ID:04shMioE0


( ´∀`)「あーあ、何やってんだか…自分の能力なのに上手く使いこなせないなんて」


 腕を組みながら見守っていたモナーが、呆れ返る。


( ´∀`)「仕方ないなぁ…」


 怒涛の攻めを見せるカリス。
 しかし、それも束の間だった。

 眉間から剣を抜き出すモナー。
 歩きながら戦いの中へと向かっていく。


( ´∀`)「そらっ!!」

( <::V::>)『!?』


 二人の間に向かって、垂直に剣を思い切り振り下ろす。
 両者とも瞬時にこれを躱したが…、バイオの触手は強引に切り離されてしまった。


( ´∀`)「止めろ!」


 呆れてしまっているからか、指示を出す語気がやや強い。
 合図と共に、再びカリスの時が止まった。
 モナーとスカラベアンデッド、二人でカリスを挟むように立つ。
 そして、お互いに武器を構えた。


( ´∀`)「動かせ!」


 カリスの時が動き出した瞬間、モナーの剣とスカラベアンデッドの挟撃を受ける。
 前からはモナーの重たい剣撃、背後からはスカラベアンデッドの切り裂くような爪での攻撃。
 

(;<::V::>)『うあぁっ!?』

19429話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:06:56 ID:04shMioE0


 挟撃を受けたカリスは力無く崩れ落ち、その場に跪いた。
 そして、眼前にモナーの剣先が突き付けられる。


(;<::V::>)『クッ…カテゴリーKともあろう者が、無様な戦い方だ…!』

( ´∀`)「何とでも言いなよ、僕は最強さ。でも、こんなろくでもない戦いに全力を尽くす気はないよ」

(;<::V::>)『何…?』

( ´∀`)「話は後にしよう。どうせもうすぐ仮面ライダーが来る頃だろ?
       今は面白くなる為の僕の計画を、邪魔されたくないんでね」

(;<::V::>)『計画、だと…?』

( ´∀`)「はい、止めて」

『――…!』


 カリスの時間が停止する。
 再び振りかざした剣。剣身には、青みがかったオーラが纏い始める。


( ´∀`)「続きはこの後、たっぷり話してやるよ…二人っきりでね…!」 

( ´∀`)「動かせ」


 時間が動き出した瞬間、無防備なカリスの目掛けてオーラを纏った剣を目いっぱい振り上げる。


(;<::V::>)『うああァァアッ!!』


 力を纏ったモナーの斬撃は強烈で、まるで打ち上げられたように跪いていたはずのカリスを吹き飛ばした。
 カリスのアーマーには大きな傷が出来、緑血が迸る。

19529話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:07:19 ID:04shMioE0


 上空に打ち上げられた後、やがて川に落ち、ぐったりと倒れる。
 スカラベアンデッドが倒れたカリスに近付き、強引にカリスを抱え上げた。


( ´∀`)「さ、退散するよ」


 モナーの指示を受け、スカラベアンデッドは先に川を後にする。
 その場に残ったモナーはカテゴリーQのカードを拾い上げ、それを見つめる。
 見つめて、鼻で笑った。


( ´∀`)「フッ……まぁいいか、その辺置いとけば連中が拾うだろうし。
       その方が面白いことになりそうだ」


 カテゴリーQのカードを投げ捨てる。
 ひらひらと落ちるカードは、偶然にもまた岩の上に落下。
 カードに振り返ることもなく、モナーは歩き始めた。


( ´∀`)「さて、そろそろ連中が来るな」

( ´∀`)「…聞こえる?時間稼ぎをしてもらおうか。"最期"に大仕事、頼んだよ」


 誰かに向けた言葉だろうか、独り言のようにも聞こえる。
 そう言って、川の中からモナーの姿はふっ…と消えた。

19629話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:07:42 ID:04shMioE0


 その直後だった。
 橋の上に、バイクに乗った二人の人間が現れる。
 まさに今、いなくなったモナーが予測した通りに、ブーンとモララーが入れ違いで現れた。

 バイクから降車し、ヘルメットを取り川を見渡す。
 サーチャーの反応をキャッチし駆け付けた二人だったが、思いの外、事が終わるのが早かった様子。
 しかし、壁がへこんでいたり罅割れていたり、戦った痕跡は見受けられた。


( ^ω^)ロ「誰もいないお!?」

[カリスの反応が消えた…、アンデッドの反応も]

( ・∀・)「チッ、遅かったか…!」

( ^ω^)ロ「さっきまでいたはずだお、クーはどうなったんだお!?」

[分からない、でもアンデッドと同時に消えたから…何かあったのかも…]

( ^ω^)ロ「そんな…!」

( ・∀・)「ただ、愛川クーが封印した可能性もあるな。カテゴリーQの反応も先に途絶えていたし」

( ^ω^)「カテゴリーKが関わってるかもしれないお…もしかしたら川の中で倒れているかも!」

( ・∀・)「おい、剣藤!」


 慌てて橋から階段を駆け下り、川へと下りたブーン。
 後を追うようにモララーもひとまず着いていった。
 ブーンの心配振りは、モララーや電話越しのツンとは熱量が違った。
 もしかしたら、モナーが絡んでいるかもしれないからだ。

19729話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/10(日) 10:08:09 ID:04shMioE0


( ^ω^)「クー!クーいるかお!?」


 川の中を探索する。
 水深浅いこの川で、水に埋もれている事はありえない。
 隠れるようなポイントもないこの場所に居る可能性など無いに等しかったが、焦りが冷静さを曇らせた。


( ・∀・)「落ち着け!此処にはもういない」

( ^ω^)「クー!……ん?」


 モララーの言葉も届かず、ひたすら周囲を見渡しクーの名を呼ぶ。
 すると、ブーンの目に何かが留まった。
 それに駆け寄ると、一枚のカードがあった。
 拾い上げ、カードを見る。


( ^ω^)「これ…!モララーさん!」

( ・∀・)「どうした?」

( ^ω^)「これ、カテゴリーQですお!」


 モララーにカードを手渡し、見せる。


( ・∀・)「やはり愛川クーはカテゴリーQを封印したんだ。その後、何かが起きた」

( ^ω^)「すぐにクーを探さないと…!」

( ・∀・)「剣藤!」

19829話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/11(月) 09:56:05 ID:WvaK1Ehg0


 モララーの言葉を待たず、川を後にしようとするブーン。
 焦っている。その事がひしひしと伝わる。
 渋々その後を追うモララーだが、彼の持つアンデッドサーチャーが再び反応をキャッチ。


( ・∀・)「アンデッドだ!」

( ^ω^)「どこだお!?」

( ・∀・)「カテゴリー7だ、場所は……」

( ; ・∀・)「……!!」

( ^ω^)「モララーさん?場所は?」


 位置を把握した瞬間、モララーの顔が青ざめる。
 同時に、ブーンのスマホに着信が入る。ツンからだ。


( ^ω^)ロ「ツン、アンデッドの場所どこだお!?」

[場所は……ヒートさんの診療所よ!カテゴリー7の反応有り!]


 カテゴリー7の反応あり。
 その場所とは、モララーが愛した亡き女性・ヒートの診療所。
 モララーの青ざめた理由はこれだった。
 全身の血の気が引くと同時に、呼吸が荒くなり、モララーにも焦りが見え始める。


( ; ^ω^)「ヒートさんの!?」

( ; ・∀・)「……ヒート、ヒート!!」


 彼女の名を呼ぶ。
 サーチャーをポケットにしまい、モララーは我を忘れたかのように川を駆け階段を駆け上った。


( ^ω^)ロ「今すぐ向かうお!」


 ツンに一言伝え、すぐに電話を切る。
 急ぐモララーの後を追い、急いでヒートの診療所を目指した。

19929話 ◆7MnOV.oq7w:2023/12/11(月) 09:56:50 ID:WvaK1Ehg0




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