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【女神転生】ノーライフノットキングのようです(・血・)

102 ◆MxHvQqijkA:2021/11/11(木) 00:13:50 ID:QUsKNLBE0
( ■∀■)「ハリボテでも砦を作っておかなかったら、もっと被害は増えてたはずだぜ。
ジャック、死傷者何人だ」

(・j・)「死者9人です。傷だけ負った者はいません」

( ■∀■)「この先、もっと助けを求めるガキの声が増えるはずだ。
全員拾って守るつもりなら、もっと防護策やできる事を考えな。
お前が自棄でどうすんだ。おっぱいの嬢ちゃんなんかもう動き出してるぜ」

アヤメはディーと一緒に、シガツの死体を運び出していた。

(;・ハ・)「何を…」

(・殺・)「お師匠。ストーンカを貸してください」

力なくCOMPをいじり、アヤメに付き従わせる。
マンティコアもついてきた。

(・<_,・。)「美味そうな肉じゃのう。…冗談じゃ」

リヤカーを獣達に引かせ、南のシブヤに向かう。

(#・e・)「うでに覚えのあるヤツァでてきやがれー!」

森から離れた場所で、イーがボロボロになりながら悪魔との戦いをしていた。


「い…遺体ご供養の依頼で?」

顔を引きつらせるメシア教徒を無視し、邪教の館に向かった。

(■┏┓■) 「シンジュクのから話は聞いておるぞ。死体合体マニアがおるとな」

話は早い。アヤメはシガツに手を合わせ、合体素材用のシリンダーに入れた。




( ■∀■)「ククク、俺に向かって『邪魔をするな』が第一声だった生意気野郎が今やガキを率いる大将ねぇ」

ソファのカウチに腰かけて葉巻を吸う。

(・ハ・)「…歳は俺のほうが上じゃないですか」

( ■∀■)「お前と同じ名前だったから、あそこまで気にかけてんのか?
命なんて毎日毎秒生まれては死んでいく。この世の中では特にな。
わざわざガキなんて一から育てて熱心なこった。
俺にはまるで、何かの贖罪でもしてるかのように思えるぜ。

なぁ、『ディー』さんよ」

103 ◆MxHvQqijkA:2021/11/11(木) 00:15:00 ID:QUsKNLBE0
ある日、ジャックに留守を任せてシンジュクに買い出しに行った時だった。
親父はあの日から「全て俺の責任だ」が口癖になり、眠る間もなく機械整備をしていた。
兄貴の知り合いだという科学者を派遣してもらい、大規模な改造をしたりもしている。

(□月□)「この私、D.rバクタにできない事があるという科学的根拠はないのだぁ!」


(-□〇□-)「ヘイ!メシア教徒狩りのボランティアでーす」

悪名高いガイア教徒の狂犬、しょけいライダーの一団だ。
バイクで脅しをかけ、金品、更には命まで強奪するチンピラ。

(・d・)「俺達がメシア教徒でないことは、恰好でわかるはずだが」

(-□〇□-)「どうかな?ガキにしてはいいもんぶらさげてんじゃねーか。
あのおっさんも最近見ないし。ここらで灸をすえておこうと思ってよ」

(・d・)「お灸だと?俺達が何をした」

(-□〇□-)「へへへ。弱いくせにハンドベルトコンピュータなんて持ってよう。
ちょっと見せてくれよ。ついでにシマ荒らしの迷惑料として…」

(・d・)(なんてくだらない!悪魔には手も足も出ないくせに)

(・殺・)「テンタラフー」

アヤメが詠唱すると、うねった不可視の波がライダー達を襲った。

(-□〇□-)「あひゃひゃはひゃ!」

(;-□〇□-)「お前ら、どうしたんだ!?」

(・殺・)「次はマハザンマで精神ではなく身体を壊しますよ。本気です」

(-□〇□-)「目がイッてるメスガキだぜ!逃げるぞ!」

リーダーらしき男は仲間を引っ張ってバイクで逃げて行った。

(・e・)「やりい!置いてったバイクは換金しようぜ」

(・殺・)「移動手段として使うのもいいかもね。一旦持って帰ってお師匠に相談しましょう」


拠点に戻ってきた。

(・d・)「親父。なぜなんでしょうね」

(・ハ・)「何故、とは?」

(・d・)「悪霊ですら同族を思いやりました。でも人間同士は殺しあって足を引っ張ってばかり」

104 ◆MxHvQqijkA:2021/11/11(木) 00:15:32 ID:QUsKNLBE0
今日は真Ⅴ発売日だヒャッハー!
イズンちゃんイズンちゃん!

105 ◆MxHvQqijkA:2021/11/11(木) 22:02:22 ID:QUsKNLBE0
4年目。

ある一団がイチガヤ方面を、トラックを飛ばし悪魔から逃げていた。

(・五・)「もっとスピード上げて!ボクがやる!」

男勝りな女の子が、運転手の男を押しのけてハンドルを握る。

「馬鹿言ってんじゃねえ!しょけいライダーどもに奪われてガソリンもろくにねえんだぞ!」

(-□〇□-)「ヒャッハー!ついでに命もいただこうかぁ!」

悪魔に便乗し、しょけいライダー達もジャッカルのように狐を追う。

(・五・)つ「追い込まれた狐は、ジャッカルより狂暴だよ!
何の動物か知らないけどね!」

少女が助手席から貧相なマシンガンを撃つ。
まともに頭に喰らい、ロクデナシが一人転倒する。

(-□〇□-)「てめぇー!」

怒り心頭のライダーリーダーが、ドラゴンATMを投げつける。
爆発で窓が割れ、後部座席に乗っていた狙撃手が燃える。

(・五・)「テメェはこっちが言いたいよ!ガソリンに引火したらどうすんだ!」

黒いタンクトップ一丁の少女は応戦し、次に投げられてくる投擲物を撃ち狙う。
手ごと爆発し、ライダーのうち一人が喚きながら転倒する。
途端、獰猛な魔獣のうち一体の標的がそれに変わる。
断末魔をあげながら食われていく。

(・五・)「追いつかれたら次の獲物はボクらだよ!どこか街に逃げ込んで…」

「シンジュクは既に支配者がいるって話だぜ!受け入れてくれるわけがねえ!」

(;・鼠・)「追いつかれちゃうっすー!」

後部座席の前方に転がっていた、出っ歯の男が悲鳴を上げる。

(-□〇□-)つ「オラァ!」

鉄パイプ銃が撃たれ!後部のタイヤがパンクする。

「やったらぁー!」

元運転手が拳銃を持ち特攻するが、あえなく悪魔の群れに踏みつぶされる。

(;五;)「ボクは最期まで戦う!こんな奴ら相手に…」
「悪党、成敗ッ」

106 ◆MxHvQqijkA:2021/11/11(木) 22:02:46 ID:QUsKNLBE0
(・五・)「え?」

トラックを取り囲んでいたライダーと悪魔達が、ニヤけながら三体の戦車に轢き潰される。
三体が一斉掃射で上空の妖鳥、凶鳥を片づける。

銀のT95CPが二体と、T95Dが一体だ。
確か奴らは警視庁がかつて作り、大破壊によるショックで手に負えなくなり暴走し
地上で悪魔人間問わず攻撃を仕掛けてくる虐殺マシンのはずだ。

(・d・)「地上型の数が多いな」

(・e・)「合体だ!」

(・j・)「単調すぎますよ!」

(・d・)「いや、一気にカタをつけた方がいい。人が狙われてる」

人型のマシンT93Gが戦車の一体の中から躍り出る。
三体の戦車が可変し、銀のマシンが腕のような変形をする。
緑のマシンは脚のようになり、T93Gを中心に結合していく。

(・d・)「チェンジ!オオツキィー!ワンッ!」

人型ロボを頭部とし、全長3メートルはありそうな巨大ロボットが砂煙と共に立ち上がる。
一蹴りでアツユを一体飛ばし潰す。

両腕の前腕にあたる部分から出てきた機銃が、邪龍ワームどもを蜂の巣にする。

(;・五・)「す、すごい…」

出っ歯の少年と共に、トラックの中に戻り震えあがる。
ミキサーの歯のような掌が、タムズを握り潰し投げ捨てる。

(・d・)「プラズマァッシャー!」

掌の奥から、破魔矢を原動力とした光線を放つ。
いやしきグールどもを蒸発させる。

ブッカブーの群れがブフーラの連発で脚を凍らせる。

(#・e・)「うざってぇ!」

片腕から出てきたイーが、マハラギストーンをありったけ投げつけて黙らせる。

(・d・)「来るぞ!」

邪龍ワームが互いを喰らい始め、やがて無数の触手を持つ怪物になった。
さながら龍王ヤマタノオロチの出来損ないのようだ。

(・五・)「うげぇ!なんだあれ…」

107 ◆MxHvQqijkA:2021/11/11(木) 22:11:16 ID:QUsKNLBE0
鉄の拳でしょけいライダーどもの残党を握り潰していたロボに触手が迫る。
絡め取られ、押し倒され衝撃が来る。

(;・j・)(;・e・)「うわあっ!」

(-□〇□-)『マたてめぇらか!邪魔ばっかりしヤがって!
ハラ決めたゼ、決着つけてヤる!ナメられたままじゃなア!』

以前見逃したしょけいライダーチームのリーダーだろう。
ワーム群に自ら喰われ、意識を融合させている。

(・d・)「オォープンゲットォ!」

ディーがボタンを押し、緊急回避を作動させる。
マシン達は分離し、触手を無理矢理千切り飛ばす。

『いでえいでえいでえいでいでいでおおおおお』

(・d・)「手数はあっちの方が上だ!
パワーで一気に押しつぶせ!」

(・e・)「了解!
オオツキ、チェンジ、スリー!」

マシンが再び集結する。
今度は銀のマシンがキャタピラの両足になり、緑の太い腕が現れる。

「ムド!」

フリアイの一羽がねばつく梵字を当てる。

(・e・)「マシンに呪いなんざ効く科学的根拠はないのだぁ!」

フリアイをリーチ差で殴り潰す。
キャタピラの推進力で一気に突進し、ワーム融合体の顔にナックルを入れる。

(;・e・)「でぉやあああああああああああああ!」

『いでえいでえお前らオマエハにクダ…喰ってやる喰ってやる喰ってやるるるるる』

しょけいリーダーは哀れにも自我を侵食され、自己崩壊し始めているようだ。
手あたり次第に機体の隙間から触手を侵入しようとしてくる。
ジャックの悲鳴が上がる。

(#・e・)「ハンマーァ!パンチ!」

両腕を固め、渾身の降り下ろしを喰らわせる。
触手の顫動が徐々に止まり、うめき声と共に巨大な炎が上がり灰ができあがり始める。

(;・五・)「た…助かった…?」

108 ◆MxHvQqijkA:2021/11/11(木) 23:17:05 ID:QUsKNLBE0
しばらく更新が遅れるかもしれません。
真Ⅴ、フィールドの荒れっぷりがすごくて魅了のバステ入りました。
真Ⅰの大破壊後を3Dにしたら、こんな感じだろうなと。

https://www.youtube.com/watch?v=v08Qfrj07jA
今回の戦闘はこれを1.25倍にでもして聞いてください。
耐性に優れたマシンが電撃以外でやられる科学的根拠はないのだ!

109 ◆MxHvQqijkA:2021/11/13(土) 20:32:46 ID:H6GnHuAs0
三年目も終わり、四年目の始め、旧ニホンでいう正月を迎えた頃だった。
仲間達を喪った哀しみも徐々に癒え、エンブリオンは冬前に更に大所帯になり50人を越していた。

親父の提案で、希少度の高いもち米を買いそれを蒸して餅というものを作っていた。
これを固め、鍋に入れて色々なものと混ぜたものを「雑煮」といい、年始めにはこれを食べるのが昔の習慣だったらしい。
何故わざわざ柔らかく仕上がった餅を硬くしてしまうのか、ディーにはいまいち意味がわからなかったが。

年の終わりは、ディーとアヤメは自室で抱き合い、吸い付いた。

( ■∀■)「ヒョウッ!あけましておめでとさん!」

兄貴が、紙の小さな袋にマッカ札を入れたものをエンブリオンメンバー全員分作って持ってきた。

(・ハ・)「俺の分もですか…年上なんだけどなぁ」

( ■∀■)「お前も三が日くらい休めよぉ。爆田のジジイもヤサ帰ってゆっくりしてるぜ」

(・<_,・。)「ワシらも休んでいいのかのぉ。いつもいつも防衛と運搬で疲れるわい」

(・く・)「マシンも休ませてやらないとな!」

(・ハ・)「キョウさんには本当に感謝しています。ドクターを紹介してくれたおかげで…」

( ■∀■)「堅苦しいのはいい。ヤれよ」

兄貴は大袋の中からどっさりと、剣になりそうにない木の板とカイトを取り出した。
ハゴイタという板で玉を打ち合い勝負し、凧と言われるカイトを糸で引っ張っり、うまく風に浮かせて遊ぶのだそうだ。

兄貴の周りに子供達が群がり、遊び方を教わると夢中になってやり始めた。

(・ハ・)「…俺も久々に、やるか」

兄貴に誘われ、親父もやり始めた。
ディー達も。

( ■∀■)「そういや嬢ちゃん、悪霊を降ろししまったんだって?
それで正気を保ってるってなかなかだな!ヒョウッ
おっと、俺はこれでも土をついた事はねぇ!」

(;・ハ・)「テニスじゃないんですよ!」

隕石の如き勢いの玉を撃ち出して勝負を終わらせる。

(・殺・)「ええ。悪霊ファントムです」

管から、美しい緑色の歪んだ顔の霊が顔を出す。
だが苦痛に歪んだ顔ではない。

「アヤメ イッショニ イル タノシイ。 チカラ カス」

110 ◆MxHvQqijkA:2021/11/13(土) 20:33:07 ID:H6GnHuAs0
( ■∀■)「ほう。ここまで忠誠度…いやその言葉は嫌いだ、懐かせるとはねぇ。
歴代ライドウのお付きのクソ猫の座右の銘は『仲魔と仲間をはき違えるな』で、
仲魔を道具として割り切るのを推奨してたようだが。
それじゃあオザワの腐った糞や、悪魔を使い捨ての爆弾扱いしたっていう初代葛葉狂死と変わりねぇ。
召喚にマッカやマグを払うし合体にも使う契約上の関係とはいえ、
仲魔は粗末にしたくねぇもんだな。
もっとも、初代狂死の我武者羅すぎる狂った生きざまはソンケーしてるんだがな」

(;・e・)「そうだ、アヤメ姉。改めてごめん。
姉ぇの気持ちも知らず、『頭のおかしい女』なんて…」

(・殺・)「もういいのよ。一月に一度土下座に来られてもこっちが困っちゃうわ」

アヤメは苦笑する。

(・殺・)「それにやっぱり、死体とはいえ仲間を悪魔合体素材に使うなんて…」

(・j・)「それはある意味において、とても有効的な手段だ」

子供達が新鮮な遊びに興じているなか、幹部たちは次々と集まってきた。

(・d・)「どういう意味だ、それは」

(・j・)「死体を火葬して灰にして肥料にするというのも、『燃やす』というリソースが発生する。
土葬というのも悪霊の類が憑依しないように聖水をかける手間と費用、
新鮮な血と死体の臭いに敏感な種の悪魔に拠点を嗅ぎつけられる可能性がある。
死体という『痕跡』を丸々残さず、戦力も強化できるなら一石二鳥…」

(#・e・)つ「ジャックてめえ、アヤメ姉の気持ちを…」

イーが詰め寄って胸倉を掴む前に、ジャックナイフを素早く出して牽制した。

(・j・)つ「こんな事は言いたくない。だがエンブリオンの存続の為だ。わかってくれ」

最初のウェンディゴ襲撃以降、たびたび住処を追われた悪魔の襲撃があった。
少数の死者を出しつつ、それらを切り抜けてきたジャックの目つきは冷徹なものに変わりつつあった。
更に兄貴に精力的に勉強や効率のいい組織運営方を学び、もはやエンブリオンの参謀(ビショップ)になりつつある。



( ■∀■)「瓦割り〜」

兄貴が二人の頭をチョップで軽くはたいた。

( ■∀■)「三が日くらいは暗い話はなしにしようや。
頭切り替えて考えねぇと、ぶっ壊れちまうぞ」

(・ハ・)「あの手法はアヤメが自分で決めた事だ。それを俺は止めはしなかった。
つまりリーダー公認ということだ。
ガキどもの死に意味を持たせるためにも、そういう弔いもアリだとは思う」

111 ◆MxHvQqijkA:2021/11/13(土) 20:33:28 ID:H6GnHuAs0
(・ハ・)「そういえばドクターは?こんな時だからこそ礼はしたいのですが…」

( ■∀■)「一斉に餅を食うって聞いて、『餅が詰まらない科学的根拠はないのだ!』って元警視庁のラボにこもりっぱよ。
ちゃんと研究費は余分に渡してあるから気を遣うなよっ」



三が日が過ぎた後。
子供達は自室や寝室で休ませておいた。

(・ハ・)「さて、これで無事に四年目を迎えた事になる」

(・d・)「はい!新年もよろしくお願いします」

(・ハ・)「さて、お前らへのお年玉がある」

(・月・)つ「そんな科学的根拠はないがな」

バクタ博士が、豪快に大きな布を取り払う。

(・j・)「これは…」

(・e・)「防衛用のマシンじゃねえか。これがなんなんだよ爺さん?」

(・ハ・)「爺さんはやめろ。偉大なる恩人だ。
お前らにはこの三機に乗って戦ってもらう」

(;・j・)「ば…馬鹿な!
確かに生身で戦うよりは安全ですが、もし故障や最悪爆発があったら…」

(・月・)「そんなアクシデントがないという科学的根拠は」

(・d・)「ないって言うんでしょ。ドクター」

(・月・)「話の腰を折るなぁぁ!
いいか、これはただのマシンではない。
男のロマン、合体ができるのだ!」

(・d・)「合体?邪教の館にでも行くのですか?」

(・ハ・)「ドクター、彼らに言ってもわかりませんよ。
何せこの時代には、モデルとなった漫画やアニメがないんですから。
メシア教徒の説法放送や広告なら腐るほどありますがね」

(・月・)「よろしい。ではオートパイロットで見せよう」

博士がリモコンを押すと、倉庫から鉄塊が三つ出て行った。
そして外に出ると、形状を徐々に変形させ人型になる。
足元には元マシンのタイヤがローラーブレードのように付いている。

112 ◆MxHvQqijkA:2021/11/13(土) 20:33:48 ID:H6GnHuAs0
「すげー!なんだあれ!」

「ピカピカのでかい悪魔ー!」

主に男の子達が防空壕から頭を出し、顔を輝かせている。

ラン ゚ -゚)「今は外に出ちゃだめよー!」

二階の医療室から、ランが子供達に呼びかける。

(・ハ・)「こんな時代でも、男は変形物や変身物への憧れがあるのか。
何か遺伝子に刻み込まれてるのかもな…フッ」

巨大な人型ロボが、半膝立ちで立っている。

(・月・)「これは私が大破壊前に思い浮かべていた、マシンの限界を越えた究極形態だ。
生半可な悪魔なら踏みつぶせるし殴り殺せる」

https://img.atwikiimg.com/www65.atwiki.jp/shinmegamitenseiif/attach/263/885/0274.gif

(・d・)「しかし人型にしては、頭部がないようですが…」

(・月・)「ああ、これは合体機構なしで当時想定していたものだ。
私の肉体を頭部、中核とし直接制御する。
だが流石にそれでは人間部分を狙い撃ちされて終わるわな」

(;・j・)「欠陥品じゃないですか!そんなもので悪魔と戦えと!?
ブレインとしてはこんなものは承認できませんね」

(・月・)「お前の意見など聞いておらん。
チェーンジ、オオツキィー、ワンッ!」

ドクターが大声を出すと、巨大な人型が分離し三つの戦車に戻る。
そこに等身大のマシンT93Gが躍り出る。
それを中心に再合体が始まる。

(・d・)「おお…」

ちゃんと頭部のついたロボットが姿を現す。
鉤爪状の腕を振りかざし、第二の監視塔予定地の地面を大きくえぐる。

(;・e・)「すげえ!この力ならみんなを守れる!
これが俺達のものになるんですか?」

(・ハ・)「最初の大襲撃で思った。このままではいけないと。
しかし焦って力を手に入れるのもいけない。
故に、悪魔合体に頼らない『護る』力をキョウさんに相談したのだ」

(・月・)「御立派だがまだフレームだけで完成形ではない。
これから操縦を覚え、必要に応じて装備を追加して整えていく」

113 ◆MxHvQqijkA:2021/11/13(土) 20:34:26 ID:H6GnHuAs0
(・ハ・)「キョウさんによると、アヤメには超能力者の兆しがあるようだ。
頭部となるコアにはアヤメの念を少し補充しておく」

(;・d・)「アヤメを…コアに?」

(・月・)「安心せい。命を注ぎ込むということではない。
超能力者が日常で漏らす過剰な念力を注いでおくということじゃ。
ハンバーグでいうつなぎというところか。
科学的根拠はないがな!だって私の専門外だもん!」

次の日から、三人の訓練と装備の調整が始まった。
どのような技術か、操縦レバーやスイッチなどはなく音声認識で変形、分離するようになっていた。
厳しめの訓練のせいで、衝突する事もしばしばあった

(・月・)「お前の頭が悪い科学的根拠はある!」

(#つ・e・)つ「うるせーくそじじー!」

殴りかかったイーを、プラズマを帯びた博士の右腕が殴り飛ばす。
ずっと巨大な包帯で隠されていたものは、ハサミ状のメカアームだった。

(・月・)「言っただろう。このマシンは私の考えうる究極の完成形だと。
私は大破壊前に研究していたのよ…自分の体でな!」

遊びに来ていた兄貴以外、皆引いていた。

(・月・)「その馬鹿力を活かさんか!お前の短刀はオオツキスリーじゃ!
他の形態と違い、走行とパワーを特に重視したものだ!
ジャックのオオツキツーは飛行スピード型だが火力が足りん!
オープンゲット、つまり分離を活かして悪魔の弱点を突け!」

(・e・)「チェンジオオツキ!スリー!
いいじゃねえか!気に入ったゼ!」

無骨な人が付いた巨大戦車のような体躯に惚れこむ。

( ■∀■)「何とかとハサミは使い様ってな。
イーは直情だけど正義感あっていいと思うぜ」

(・ハ・)「そうですね。暴走気味になるのがタマにキズですが」

( ■∀■)「問題なのはジャックだな。
少し物事について冷ややかになりすぎじゃねー?
そのうちエンブリオンの為なら、仲間殺しでも平気でしそうなテンプルナイトみたいな目だぜ。
お前もここずっと作業しすぎだ。目にクマできてんぜ、そろそろあいつらに任せて少し休めよ。
何のための幹部指名よ?」

ラン ゚ -゚)「そうです。お師匠、ここ数か月休みを取っていません。医療室で休養と栄養を取ってください」

(#・月・)「よし!仕上げにプラズマ・パワーの投入だ!」

114名無しさん:2021/11/14(日) 03:50:03 ID:qMGcUu260
乙!

115 ◆MxHvQqijkA:2021/11/15(月) 21:56:03 ID:ddb0iw8o0
ご愛読ありがとうございます。
学園の悪魔使い、ぼった…新装版買いました。
結局デビチルも全巻紙も電子も買っちゃうもんなァ…
やっぱり人間が悪魔にザクザク殺されていく無常さは

https://sm.ign.com/ign_jp/screenshot/default/02-25_re2e.jpg
https://www.4gamer.net/games/368/G036838/20210830016/SS/027.jpg
https://sm.ign.com/ign_jp/screenshot/default/01-3-p3-01_ffpx.jpg

('A`)「しかしショウヘイとかいう奴、まだ会ってはいないがかなり小物臭いな。
悪魔は不幸しか呼ばんから狩るといいつつ、女悪魔はべらせてイキってやがる。
刀使いなら、モノも腕もナマクラじゃないかどうか一度お手合わせしてみてェもんだぜ」

http://blog-imgs-62.fc2.com/c/h/e/chemrea/2014021223483170a.jpg


レインはショウヘイさんをパクったわけではありませんッ!
そもそも思いっきり楽しむ為に前情報ほぼ仕入れずプレイしているので。
元ネタは超マイナーなメガテン小説のキャラをベースに、某ライダーのカイザを悪魔合体した感じです。
カオスヒーローと戦えるDLCが欲しい…

116名無しさん:2021/11/16(火) 22:04:58 ID:VRDjVrV.0
乙!

117 ◆MxHvQqijkA:2021/11/18(木) 22:35:47 ID:eBWhILH60
ご愛読ありがとうございます。
投下できず続きで申し訳ないですが、一日一レスは書くように心がけています。





( <●><●>)「そういう場でないのはワカッテマスが、少し愚痴を書かせてください」

二次創作とはいえ書き手が人を批判するのもどうかと思うのですが…
D2の新シナリオもやっぱり正直アレでした…
やはり味方人間のメイン人数が多すぎると、各々に見せ場を作らなければと思って冗長のグダグダになってしまうのでしょうか。
3人で旅する真Ⅰが一番バランスがいいと思います。

イキリ大司教のモナークも、これのどこがifだ!とつまらなすぎてクリア後にカード割りました。
メガテン始祖の西谷先生と伊藤龍太郎先生は尊敬していましたが、泥船に乗せられてしまってかわいそうだと思いました。
学園の悪魔使い復刊は、真Ⅴ記念と同時にモナーク如きにこれが本物だと現実を見せつけるというのもあったのかな、と今は思います。


真Ⅴは少しづつしか進められてないですが、今のところ面白いです。
真Ⅳの尻すぼみ感がなく、ハードでやっていると少しのミスでぶっころなので悪魔との命の殺りあい感があっていいです。
悪魔もデザインがいい!
真Ⅲまでのメガテンをドキドキしながら初見プレイしていたのを思い出します。
反省がちゃんと活かされているな、待った甲斐があったなと感じています。

明日には5年目突入くらいまで怒涛で書き溜めてICBMの如く投下できればと思います。
今後ともよろしく…

118名無しさん:2021/11/18(木) 23:46:06 ID:aZPOpK.s0
正直長く楽しみたいからゆっくりしていってね

119 ◆MxHvQqijkA:2021/11/19(金) 21:06:09 ID:ZdS1ai6I0
ありがとうございます。ゆっくりしてるぜ!
今日は部分月食は、メガテン的には悪魔の反応どうなんでしょうね。

120 ◆MxHvQqijkA:2021/11/20(土) 22:51:41 ID:REAIZM..0
(・ハ・)「実戦はもう問題ないな。
トラックは牽引し、ガソリンはマシンに」

(・j・)「生きのこったのは二人だけか。オオツキ1号、3号にの乗せていってくれ」

(・e・)「大層な口聞くじゃねえか。てめぇはどうすんだ」

(・j・)「私には私でやる事がある。突っかかるな。
チェンジ!オオツキツー!」

霊鳥のような姿に合体変し、中波したトラックを釣り上げる。
シンジュクに戻る途中で、カメラがズームされる。

離れの小さな森に、赤きマントを外した邪鬼ウェンディゴ数十体の群れがある。

(・j・)「先日に偵察悪魔を出したところ、奴らは何者かの飼い悪魔ということが判明した。
ここで繁殖、増殖を繰り返して尖兵を増やしていると思われる」

(・d・)「何をする気だ?
あの数相手では親父を含めてもきついぞ。
それに動きを封じる氷結魔法の使い手ということを忘れるな」

(・j・)「あの周辺に爆薬をいくつか包囲するように埋め込めさせておいた。
これも私の小遣いの自費から出したものだ。エンブリオンには影響はない」

オオツキ2の腹部が開き、いくつもの地獄玉が降り注ぐ。

(#・j・)つ「鬼(イレギュラー)がぁぁぁ!」

連鎖爆裂で一瞬のうちに草、木が燃え盛り更地になる。
すぐさま溶けていくもの、溶けかけたり大やけどを負いながらも灰をこぼし逃げようとするもの。

(#・j・)「逃がすかァ!」

ありったけの破魔矢ビームを投下。完全にトドメを刺す。

(;・鼠・)「う、うわああああ!降ろしてくれえええええええええ!」

出っ歯の少年は機内で暴れる。

(・d・)「落ちつけ。これから君達を我々の拠点に連れて行く」


拠点。

(・d・)「ようこそ、エンブリオンへ」

(;・五・)「よ、よろしく…」

二人の子供はおぼつかなげに会議室のソファに座る。

121 ◆MxHvQqijkA:2021/11/20(土) 22:52:03 ID:REAIZM..0
(・五・)「ぼ、ボクはサ…」

(#・e・)つ「どういうつもりだ勝手な事すンじゃねぇ!」

二人の自己紹介が始まる前に、頬を殴る鈍い音が鳴った。

(・j・)「よりにもよって君にそんな事を言われるとはね」

吹き飛ばされたジャックが静かに立ち上がり、

(#・e・)「もし逃がした奴がいたらどうすんだ!
ステルス機能?ってのもないし拠点に帰るのも丸見えなんだぞ!」

(・j・)「私が自力でマッカを貯めて実行した作戦だ。
奴らが集まってエサを一斉に食い始める時間は把握している。
何も考えずに君みたいに直情でやったと思うかね」

(・e・)「てめ…」

(・d・)「二人ともやめろ。二人ともビビってる。
イーも今後悪魔掃討をする時は親父や俺、兄貴やドクターがいれば誰かに相談してくれ」

(・j・)「すまない。喰われた中には私の教え子もいたのでな。
今後また育てた者が犠牲になったら時間の無駄だと判断した」

冷徹に言いつつ、握る手が震えているのを一人だけ見逃さなかった。

(・d・)「いきなりすまない二人とも。あれが日常茶飯事だし、二人は実は仲はいいんだ。
落ち着いてからでいいから、自己紹介と出身地、何故逃げる事になったらいきさつを教えて欲しい」

ソファに座ったまま、両手を組んでディーが諭す。

(・鼠・)「オ、オイラはネズミと言いやす!
き、金の女がいきなり現れてみんなおおおおおおおお鬼に…」

タンクトップの女がネズミと名乗る少年をゲンコツで上から殴る。

(#・五・)「アンタは挙動不審りすぎなんだよ!
ボクが説明する…スーハー…」

(・五・)「改めて、僕はサツキ。
まずは助けてくれてありがとう。
五月に生まれたからこんな名前らしいんだ」

金髪の少女は深呼吸をしてタンクトップをめくり顔の汗を拭く。
対してないが、下乳が見えそうだ。

(・j・)「で?」

(・d・)「急かすな」

122 ◆MxHvQqijkA:2021/11/20(土) 22:52:24 ID:REAIZM..0
(・五・)「ボク達はアカサカに、小さいけど地下コロニーを作って暮らしていたんだ。
ある時、メシア教のシスターが来たんだ。訪問っていうのかな?
食糧とか色々くれたよ」

(・ハ・)「シブヤ支部からの支援か?唐突だな」

(;・五・)「でも今日の朝にいきなりでかい音が響いたと思ったら…思ったら…」

サツキは声を詰まらせる。

(;・五・)「コロニーの半分くらいが、鬼になってて、噛まれた奴も顔が変わって鬼に…」



「救済よ!愚かな者たちに救済を!」

(・・・)「ククク!」

(;・五・)「シスター!助けてください!」

「助けてあげるわ…見苦しく生きている貧しい浮浪児は…
死ねばいいのよ!」

サツキの隣の少年の頭が爆ぜる。

(;・五・)「そんな…」

(・黒・)「下がれ!」

コロニーリーダー、クロエが銃を乱射する。

(・・・)「テトラカーン」

黒き悪魔が障壁を張ると、ありったけの銃弾がクロエを襲う。
戦闘慣れはしているらしく、顔面だけは手で覆う。
だが血が全身をしたたる。

(;・黒・)「武器庫に走れ!トラックに乗れ!」

銃をサツキに放り投げ、ナイフで黒い悪魔に斬りかかる。
黒悪魔はすんでで避け、住人だった鬼を差し向ける。
数体はナイフ捌きで首を切って無力化したが、背後の鬼に肩を噛み付かれ血が滲む。

(;・五・)「クロエ姐ぇー!」

(;・鼠・)こっちでやんす!

ありったけの武器を持ち越した仲間を連れたネズミに先導され、緊急避難ダクトを通る。

(φ黒・)「ああああああああああ…ガアアアアアアア…逃げロ…」

123 ◆MxHvQqijkA:2021/11/20(土) 22:52:47 ID:REAIZM..0
(;五;)「クロエ姐を置いていくなんて!」

先頭のネズミの背をポカポカと叩く。

(;鼠;)「いつもみたいに力が入ってないでやんすよ。
せめて逃がしてもらったオイラ達が生き延びないと…」

「ぎゃーあ!」

殿の子供が鬼の腕に引き込まれ、ずり落とされる。

(;・鼠・)「早く逃げるでやんす!
ハンスが先に行ってトラックの発進準備をしているはずでやんす」

地下エレベーターに、トラックのエンジンをかけた大人の男が待機していた。

「遅いぞ。早く乗れ!」

エレベーターが昇降し、地上に出る。
カモフラージュ用の土が吹き飛ぶ。

(;・五・)「これからどうすりゃいいのさ」

「シブヤに向かって、保護してもらうついでにあの狂人シスターのやった事について問い詰める。
本当はシナガワ本部に行きたいんだが、瓦礫の山が越えられん」

(;・鼠・)「誰かいるでやんす!」

しばらく走らせると、バイクに跨った複数の人影が現れる。

(;・五・)「避難者かな?一緒に逃げよう!」

「馬鹿野郎!ガイアのクソ野郎どものしょけいライダーだ」

(-□〇□-)「よう。ここを張ってりゃいい獲物があるってリークがあったよ。
今日はあの糞生意気な女リーダーもいないようだな?え?」

「ごちゃごちゃうるせえ!」

ハンスがトラックを急発進させ、ライダーの一人を跳ね飛ばす。

(-□〇□-)「やってくれたな!お代はてめぇら全員の首だ!
男はオザワに売ってガキは臓器用に卸し、女は俺らの慰みモンだァ!」

リーダーが銃でむき出しのエンジンタンクに穴をあける。
そのまま走り去る。悪魔もわらわらと追ってくる。

「希望は…ないのか…
いや、行けるとこまで行くぜぇぇぇ!」

124 ◆MxHvQqijkA:2021/11/20(土) 22:53:09 ID:REAIZM..0


(;五;)「そこで、そこで、助けられて…
ハンスも皆も…うううううう…あああああ!!!」

(;鼠;)「クロエ姐ェ…!ラット、マウス…!」

二人ともおいおいと号泣しはじめた。

(#・五・)「助けてもらってありがとうだけど、今からコロニーに戻る!」

(・d・)「何をするつもりだ?」

(#・五・)「みんなの仇を取る!まだ生きのこってるヤツもいるかもしれないんだ!」

(・e・)「面白れぇ!俺も乗るぜ!」

(・d・)「ラン、鎮痛剤と鎮静剤を。医療室に運んでくれ」

ディーが少女を押え、部屋の隅に控えていたランが首筋に慎重に薬を打つ。

(・五-)「君達もあいつらの手先!?うっ…」

(・d・)「まず落ち着いて疲れを癒せ。ネズミ君と言ったな。
君も疲れているところすまないが、コロニーの見取り図はあるか」

(;・鼠・)「武器以外は置いてきちゃったから今、書くでやんす」

サツキはあっという間に眠りについた。

ラン ゚ -゚)「あら、キョウ兄貴に連絡取れるかしら」

搬送中に、少女のタンクトップから突起が浮き出ているのを見た。




(・e・)「どういうつもりだディー兄ぃ。生存者を助けたくねぇのか」

(・d・)「親父、俺の判断は間違っていると思いますか」

(・ハ・)「策もなくいきなり突っ込むのは無謀だ。鬼…悪魔だろうが、がどれだけ強いかわからん。
感染能力があるようだから、無策で突撃してエンブリオンメインメンバー全滅は避けたい」

(・j・)「同感です。私も数か月かけてウェンディゴどもを一掃する機会を待った」

(・ハ・)「それに恐らく…人間としての生存者はいない。
深夜の次に無防備な朝方の突然の奇襲、そしてリーダーが閉じ込められたままとなれば猶更だ」

会議室を重い沈黙が覆う。

125 ◆MxHvQqijkA:2021/11/20(土) 22:53:31 ID:REAIZM..0
翌日。

(^五^)「ふースッキリした!」

朝食の古米チャーハンを貪りながら、サツキは笑顔ではしゃぐ。

(・j・)「熱くなってすぐ冷える。まるで鉄だな。
イッポンダタラという悪魔がいれば、さぞいい材料にされていただろう」

食事のあと、神出鬼没な兄貴が女悪魔に採寸を測らせていた。

( ■∀■)「ヒョウッ!新顔さんのお出ましかい」

(・ハ・)「キョウさん、ご無沙汰しております」

( ■∀■)「嬢ちゃん、上級悪霊とうまく共生してるみてぇだな。
ファントムは強い魔法を持つが魔力がからっきしですぐ弾切れだ。
そこを嬢ちゃんの強い魔力で補って、それを俺から教わらずにやるとは、ヒョウッ!」

(・殺・)「そ、そんな、私はそんな…」

アヤメが赤面する。ディーの心にまた黒いものが走った。



(・五・)「…わかった」

昼前に会議室。

(・d・)「今すぐ突撃しても返り討ちにあうのがオチだ。
慎重にメンバーを選定し、二日後に行ってみる。
君には悪いが、不利と思えば一時撤退も考える」

(・鼠・)「力を貸してくれるだけでも、ありがたいでやんす」

ネズミが一礼した。

(・d・)「かしこまらなくていい、よかったら我々エンブリオンに─」

(・j・)「早計だ。これ以上無駄な食い扶持を増やすのは」

(#・e・)「てめぇ」

ラン ゚ -゚)「兄さん。エンブリオン、いや師匠が私達を見返りなしで受け入れてくれた事を忘れないで」

(・j・)つ「私は無駄に怪我人が出て、お前の負担が増えるのも危惧しているんだよ」

ジャックはかわいい妹の頭を撫でる。

(・e・)「まるでお前マシンにでもなっちまったみたいだな」

126名無しさん:2021/11/21(日) 02:44:06 ID:p8k9qAuA0
乙!

127 ◆MxHvQqijkA:2021/11/22(月) 01:43:09 ID:vTVKzP0.0
(・j・)「悪魔相手に人間の感情丸出しで接する君よりマシだよ。さて」

ジャックは目を細めて二人を睨みつける。

(・j・)つ「選定は師匠、私を含めた三幹部、お前達二人とする。
そしてサツキとやら、我々幹部やリーダーがアカサカに赴くとして、どれだけ罠でない保障があるのかな。
お前達二人が悪魔の擬態でないとも限らない」

ナイフを向ける。

ラン ;゚ -゚)「兄さん!」



(・五・)「これでいいのかな」

おもむろにジャックに近づき、ナイフの切っ先を二の腕に当てる。
細く、赤い血が流れる。

(・鼠・)「サツキ!?」

(・五・)「ボク達は悪魔なんかじゃない。赤い人間の血が流れてる。
なんならこの血を調べてくれても構わないよ」

(・j・)「結構だ。ラン、血液の採取と成分分析を」

ラン #゚ -゚)「止血が先でしょ!」

ランは急いで腕に包帯を巻く。
滴り落ちる血を薬剤入り試験管に入れるのも忘れない。
管を揺らし掻き混ぜる。

懐からありったけのマッカをテーブルに出す。

(・五・)「これがボクらの有り金全部だ。
コロニーに行けば、まだ少しはマッカも物資もあるはずだよ」

(・j・)「持ち込んできた銃も、使い慣れた一丁以外は置いていけ」

(・五・)「ボク達が裏切ったり逃げ出したりしたら、即撃ち殺してくれてかまわない」

(・j・)「当然だ」

(・d・)「すまないが、今回アヤメは防衛も兼ね、マシンに魔力を込めておいてくれ。
アカサカにいる相手が膂力のある鬼族だとすると、体力的に不利なのもある」

(・殺・)「…了解」

ラン ゚ -゚)「解析できたわ。悪魔の血は混じってない」

128 ◆MxHvQqijkA:2021/11/22(月) 01:43:36 ID:vTVKzP0.0
夜、ディーの自室。

(・殺・)「ねぇ、私も行かせてよ」

今夜はアヤメがディーの胸板に縋りついていた。

(・d・)「駄目だ。誰かが残って防衛していないといけない」

(・殺・)「…わたし、最近また夢を見るの。
たくさんの子供達が死んだ夢」

(・d・)「俺の事もかい?」

(・殺・)「…」

身体を離し、目を背けてうつむく。

(・d・)「俺は命に代えても君を死なせるわけにはいかない。
頼む、わかってくれ」

今度はディーがアヤメに抱きついて胸に顔をうずめる。
最近は女性としてのラインがくっきりしてきて、何かこみあげてくるものがある。

(・殺・)「私だって同じよ。あなたや皆を死なせたくないから悪霊の力、子供達の力を身に着けたの」






朝。

(・ハ・)「おい」

(;・d・)「…」

一団の群れの後ろを、合体用ではないマシンがゴツゴツを音を立ててついてくる。

(・殺・)「マシンに念を込めるのは、朝方早く終わらせてきました。
ホブゴブリンさんの他に、エンジェル等の私の仲魔を置いてきたから防衛は大丈夫」

(;・d・)(朝ベッドにいなかったのはそういうことかよ)

(・ハ・)「…まぁついてきてしまったものは仕方ない。
今日は新月、幸いにも悪魔は沈静化する…と思いたい。
ネズミ君、あのマシンくらいなら昇降機に入るか」

(・鼠・)「小型トラックが入るくらいだから大丈夫でやんす」

(・五・)「見えてきたよ!」

129 ◆MxHvQqijkA:2021/11/22(月) 01:43:57 ID:vTVKzP0.0
明らかに不自然に溝がついた地面が見える。
サツキが手慣れた手つきでスイッチを押すと、隠し扉が開き昇降機が上がってくる。

(;・e・)「ひっ!」

(・d・)「どうした」

(;・e・)「い、いやいきなり鬼がお出迎えかと思ってたから拍子抜けしただけでい…」

(・j・)「君にも怖いものがあるんですね」

(・e・)「う、うるせぇっ!」

イーを皮切りに、各自武器を構え突入する。
鬼の感染を防ぐため、サツキも流石に肌の露出を抑えた重装備になっていた。



電気のついていない薄暗いコロニー内は予想以上に不気味だった。

(・ハ・)「妙だな。COMPのエネミーソナーにも気配がない。セーフティの青のままだ
コロニーの人員はどれくらいだったんだ?」

(・鼠・)「100人前後だったと思うでやんす」

(・d・)「うちのエンブリオンと同程度かそれ以上の規模がお隣のお隣にあったなんて!」

灰の塊はそこら中に散らばっている。

(・ハ・)つ「そこだッ!」

幽鬼ガキに筋肉をつけたような『鬼』が飛び掛かってくるのを、親父は銃撃で腕を吹き飛ばした。
しかしすぐさま立ち上がってくる。腕が瞬時に生えてくる。

(・五・)「それっ!」

サツキが頭を撃ち抜いて追い打ちをかける。

(・五・)「ごめんね…」

(・ハ・)「どういうことだ?」

(・五・)「クロエ姐が戦ってたのを少し見たのを思い出した。
胴体にいくら撃ち込んでも、弾を吐き出して傷が治ってしまうんだ」

(・j・)「頭を破壊しないと不死ということか。まったくウェンディゴの方がまだマシだな。
余計な事を持ち込んでくれたものだ」

(・e・)「へっ、お前もやる気満々だから来たんだろ!」

130 ◆MxHvQqijkA:2021/11/22(月) 01:44:17 ID:vTVKzP0.0
(・j・)「戦況が不利になっても撤退しなさそうな馬鹿がいるから仕方ないだろう」

(・殺・)「本当に仲がいいわね」

アヤメが殿のマシンの中から笑う。

「ウガアアアアア!」

(#・e・)つ「オラっ!」

飛び出してきた鬼の頭をロッドを陥没させる。

「ア゛あああああああああ…ヤメテ…」

(・d・)「待て。攻撃の気配がない。何か変だぞ」

「タスケテ…タスケ…」

(;・五・)「イザク!何があったの!」

(;・ハ・)「おい!」

どうやら仲が良かったメンバーだったのだろう。
噛まれて感染するのを恐れず、瀕死の鬼の肩を揺さぶる。

「クロエネエと…シンプが…コワい…」

「リカーム」








「ヒギャアアアあ!?」

サツキと話していた鬼が紙のように身体をくしゃりと曲げ、消滅する。

「あーあ、失敗でしたか。申し訳ないですお」

(・d・)「誰だ!」

剣を構え、ディーが肉薄する。
その前に腹に一撃を喰らい、少し吹き飛ばされる。

(黒^Ω^)「落ち着いてくださいお。神の祝福を」

肌の黒い神父がニコニコしながら立っていた。

131 ◆MxHvQqijkA:2021/11/22(月) 01:44:39 ID:vTVKzP0.0
鬼のいないエリアに結界を貼り、話をする。

(黒^Ω^)「いやあ、この地で異様な気配を感じて駆けつけたのはいいですが閉じ込められてしまってましてお」

神父は頭をかき、バツが悪そうに笑う。

(・五・)「妙に入口が見えるようになっていたのはあんたの仕業か。
灰になっている鬼もあんたの仕業?」

(黒^Ω^)「いやあ、私はガクガクと震えているのが精々でしたお。
悪魔達は殺しあってああなったみたいですお」

(;・鼠・)「鬼達が同士討ちを!?」

(・ハ・)「未感染者がいなくなって見境なくなったか、飢えて喰らいあったか。
この数日間、あなたは生き延びていたというのか?」

(黒^Ω^)「ご覧の通り、気配を消したり結界魔法だけは得意なんですお。
さっきの人、救えなくてごめんなさいお」

蘇生魔法リカームは、真の奇跡とされているサマリカームより数段劣る。
死者を蘇らせるのに失敗すればロストする。
体力のないものに使った場合の末路は、金丹と同じだ。

(;五;)「いや、イザクも楽になれたと思う。
ありがとう、神父様」

サツキが感謝を述べる一方、ディーは銃口を握っていた。

(・d・)「得体が知れねぇな。黒人とやらならともかく、
漆黒の人間なんてこの近辺じゃ見た事もねぇ。
あんた何者だ」

(黒^Ω^)「ほう。さっきのアレを根に持っているのですかお?
聖職者に銃を向けるとは。気に入りましたお。
私はナイトウ神父。ナイ神父と気軽に呼んでくれても構いませんがお」

(黒^Ω^)「そうそう、ひときわ巨大な鬼が他の鬼を屠りながら奥へ向かっていきましたお。
襲ってくる前に逃げた方がいいですお」

(・e・)「冗談だろ坊さん!逃げるのはきれえなんだよ!」

(・j・)「鬼の特性が他の悪魔と著しく違う為、その巨大な鬼がどれだけの力があるのかだ。
鬼は軒並み殺害されていてサンプルも取れない。分が悪いようなら撤退を」

(・d・)「ああ、わかっている。死ぬか感染して鬼になれば元も子もないからな」

アヤメを、守る。生きて、帰る。

(・鼠・)「奥と言えば…物資庫でやんすね」

132 ◆MxHvQqijkA:2021/11/22(月) 01:45:03 ID:vTVKzP0.0
ひときわ広い物資庫。

(φ黒φ)「ア嗚呼アああああああ!」

(・五・)「アヤメ姉…やっぱりか…一番強かったもんな…」

(φ黒φ)「怖い怖いコワいクルナ来るな食いtuくなア嗚呼あああああ!ァ」

右腕は骨と化していたが、異様に巨大化していた。
腹部と胸部には蠢くものがある。

崩れかけた脚で駆け、腕を振りかぶる。

(・ハ・)「サモン!マンティコア!」

素早く指をCOMPに伸ばし、妖獣を召喚する!

(・<_,・。)「悪魔遣いがあらいんじゃぁ!」

蠍の尻尾で骨巨椀を押し返す。

(φ黒φ)「ア嗚あゝあああああ!!!!!!!」

マンティコアが押されている。

(・<_,・。)「なんてぇ馬鹿力ぢゃ!援護せんかぁ!」

(・e・)「おうよ!」

マシンガンを矢鱈めったら撃ちまくる。
頭に当たり裂けるが、すぐさまチンケな通常弾は弾き飛ばされて排出される。
ストーンカが召喚され、マンティコアと正反対に突進して押しつぶすが、腹部の触手に叩かれる。

(;・鼠・)「あ…あ」

(・ハ・)「蟲毒のごとき戦いの中で独自進化したのか!?
あの人が『生前に』どれだけ立派だったかは分からんが、今は『鬼』だ!その事実は受け入れろ!」

仲魔達に魔石を使いつつ、腕の一振りの囮になって避け続ける親父。

(・d・)(どこまでも果てしなく、続く人間同士の争い。
また明日も俺は殺しながら彷徨うのか)

急に虚しくなり、鋭い骨の先に胸を差し出してしまいたい気持ちになった。
ストーンカが貫かれて炎を上げはじめる。急いでCOMPにRETURNのコマンドを打つ親父。

(・殺・)「みんな離れて!」

アヤメがマシンの機銃をブチ放つ。

133 ◆MxHvQqijkA:2021/11/22(月) 01:45:23 ID:vTVKzP0.0
様々な物資と共に、クロエが蜂の巣にされていく。

(φ黒φ)「守るマモルまもらなきゃア嗚呼あああああああ!!!!!!!!!!!」

崩れた右足を潰し、とてつもない再生能力でマシンに迫り猛攻の骨攻撃をかます。
マシンが金属音を立ててたわみ、アヤメが悲鳴をあげる。

(・d・)「クソが触るああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

ヤケクソにアタックナイフを腹部に突きさす。

(φ黒φ)「ぐえア嗚ああああああまもるまもまも」

振り向きざまの一撃を、きりもみ回転で咄嗟に避ける。
この状況で生きのこっている自分に、自分に驚愕する。
手ごたえのあるシナリオなら、いつか自分を死に場所に導くだろう。
死んでいないなら、今は死ぬ時じゃない!アヤメを置いて!

(・<_,・。)「無茶しおって!悪魔なら感染しないからええものの!」

足を捻って倒れる身体をゴツゴツした獣の体が支え背に乗せる。

(つ・j・)つ「くらえ!」

両手から次々とマハブフストーンを投げつけるジャック。
イーに降り下ろされた骨の腕が凍り付く。

(;・e・)「なんだ参謀様よォ!不利な時は撤退じゃなかったのかよ!」

(・j・)「勝機は見えた。胸部、腹部だけ再生が極端に遅い。
頭部は無敵だがあそこが実質中枢だと判断する。」

(・e・)「そうかよッ!」

スパイクロッドで凍った骨を砕く。
怯んだ隙にマンティコアが尻尾で胸部を貫く。絶叫が上がる。

(;鼠;)「うああああああああああ!!」

投げナイフをひたすら投げ、注意を逸らす。

(・殺・)「テンタラフー!」

いつの間にかマシンから降りたアヤメが、うねった波をクロエの頭部にブチ当てる。

(・黒φ)「ぎイあああああ!?…ネズ…ミ?」

(#・d・)「うおああああああああああ!!!!!!!!!」

無銘の刀を腹部に突き立て、力任せに引き裂く。

134 ◆MxHvQqijkA:2021/11/22(月) 01:45:52 ID:vTVKzP0.0
2メートルはある巨鬼はついに斃れた。
コアを散々に弄ばれ、再生可能エネルギーも残っていないようだった。

(φ黒・)「サツキ…か…?そうか…悪魔に…あのシスターに…」

異形の眼で愛しき弟子を見上げる。
目が人間のものと鬼のものに交互に変わる。

(・黒φ)「混乱魔法で、逆に意識を戻してくれたのか…ありがたい。
自分が強い、このまま皆をまもって行けると慢心してこのザマか…グっ!」

とっさに左腕でナイフを降り下ろす。

(;・五・)「しまっ…」

クロエは蠢きつつある自分の腹部をナイフで掻きまわした。
顔色が大きく変わり牙が生えつつある。
人間としての生が終わり、完全に鬼になりつつあるのだ。

(φ黒●)「サツキ…自分がなくなっていくのがコワい。
気がクルいそうだ…
私の意識が…残ってる討ちにィィィ”!!!!!!!!!!!」

(黒^Ω^)「アーメン。哀れな子羊に神の導きを。リカー」

(・d・)つ「手を出すな」

いつの間にか現れていたすまし顔の神父の頭に、ディーが銃を当てていた。

(黒^Ω^)「ふふふ。二回目ですかお。面白い。ではおやりなさいな、救済を!」

(φ鬼φ)「是異状はもタンぞ…!
私の屍を越えてイケー!強クなれー!」

(五)「先に地獄で…」

かつてもらった、秘蔵のドラゴンATMを取り出す。
何歩か下がる。

投げる。

(;五;)「待ってやがれええええええええええええええええ!」

怒りに任せて投げつける。

私はお前達だけでも守れただろうか…?
そんなつぶやきが聞こえた気がした。
物資庫が燃える。

一行は無慈悲に内部炎上していく基地、いや墓地を去る。

135名無しさん:2021/11/23(火) 20:16:36 ID:a0fHS5co0
乙!

136 ◆MxHvQqijkA:2021/11/26(金) 07:11:02 ID:Fe/YYh7Y0
イズンちゃん!イズンちゃん!

137 ◆MxHvQqijkA:2021/11/27(土) 00:53:56 ID:LkHkT0rs0
マリンカリンとテンタラフー喰らって取り乱しました。
失礼致しました。
やっとガーターベル…イズンちゃんとクー・フーリン仲魔にできたので執筆の方進めていきたいと思います。
序盤までやった感想ですが、真Ⅰと真Ⅲの最高の悪魔合体って感じで楽しいです。
真Ⅲでテンポ重視の為に削られ気味だった悪魔会話が豊富で楽しき。

今後ともご愛読ヨロシク…

138 ◆MxHvQqijkA:2021/11/28(日) 11:39:51 ID:QCdsk55U0

(・j・)「で、どうするね」

テーブルに肘をかけるジャック。

(・五・)「何がさ」

拠点に戻り、会議室に主力メンバーが集まる。

(・j・)「君達の処遇だ。ここに吸収されるか、出ていくか。
シンジュクに行くか、ロッポンギに行くか。
シンジュクならひもじさと引き換えに生きてはいける。
ロッポンギは大破壊後しばらくは歓楽街だったそうだ。
今はどうなっているか知らんが、女の方は売春婦として生きていくのも」

大地震でも起きたかと思うほど、テーブルが揺れる。
イーが両拳を叩きつけていた。

(#・e・)「テメェいい加減にしろ!人の心ってもんがねぇのか冷血ロボット野郎が!」

ジャックが崩した肘をかけなおす。

(・j・)「イー、君がその二人の食い扶持を背負うというなら置いていてもかまわないよ。
年端のいかん子達はともかく、私達と同程度の年齢の者をタダ飯喰らいさせるほど自費も慈悲もない。
動けるマシンを一機オシャカにしかけてしまった事もある。コロニーに残っていたマッカでは到底足りないぞ。
まぁこれはアヤメの独断だから免責とするが、今回は何のメリットもない戦いだった」

(・五・)「…つまり何が言いたいの?」

(・j・)「能なしなら出て行ってもらいたい、と言えばわかるかな」

(・五・)「行くよ、ネズミ。ここまで言われてしがみつくなんてあり得ない!」

(;・鼠・)「え、ああ…」

サツキがネズミの手を取って立ち上がる。

(・d・)「待て。サツキ、君、ライフルは使えるか。遠距離対応用のものは」

(;・五・)「動いてない獣族くらいなら遠くから狙える。スコープありなら」

(・d・)「それなら結構。女狙撃手が欲しかったところだ。
失礼な話ではあるが、女と侮って隙を見せる敵も多い。
そしてネズミも自分のいた基地とはいえ、見取り図の書き方と隠し経路の把握は見事だった。
それらがなければ俺達は脱出時に蒸し焼きか酸欠になっていたかもしれない。
よかったらエンブリオンで暮らさないか」

ディーは両手を差し出す。無言で二つの手が強く握り返された。

(・d・)「ジャック、色々言いたい事はあるが、吸収って言い方はやめろ」

139 ◆MxHvQqijkA:2021/11/28(日) 11:40:12 ID:QCdsk55U0
く(^d^)「ジャックフロストにマハブフストーンを投げて無駄にした事を思い出してしまう」


深夜。
ディーは親父の執務室に来ていた。
よく整理された部屋だ。

(・d・)「親父。どうしました」

(・ハ・)「まぁ、かしこまるな。ここに座れ
夜遅くですまんな。明日はゆっくり寝る事についやせ」

ベッドを指さす。

(・d・)「失礼します」

こまめに干しているのか、布団はふわっけがあり多少心地いい。

(・ハ・)「ここから見えるか?」

親父は机の上のパソコンのディスプレイを少し傾ける。
金の王冠を被った顔のない悪魔が、鬼と化した人間を中途半端に切り裂いてまわっている。
再生能力と傷付けられた怒りにより、理性をなくした鬼同士で殺しあいが始まる。

(;・d・)「ひどい…これは?」

(・ハ・)「ネズミが防衛用のカメラの録画メモリを引き抜いてきた。
カメラ自体は壊されていたらしいが、見事な手際と判断だ。
彼は偵察役とするといい。逃げ足も速いしな」

(;・d・)「なるほど…あっ!」

顔のない邪悪な神がくぐもった笑いを上げ、カメラにヘラのような手を向けて映像が途切れる。。
握り潰されたのだ。

(・ハ・)「奴は何もかも分かっている。わかっていてあえて人間を弄ぶのだ」

(;・d・)「これを俺達や誰かが見る事を予想してあえて…?」

(・ハ・)「そうだ。そしてこれは俺の罪でもある」

(・d・)「どういうことです?」

(・ハ・)「以前キョウさんが話してくれたかな?
お前らに出会う前の俺達の仲間、というか連れ合いのうちに、クトゥルー信者がいてな。
邪神など災いしか投げつけてこないというのに、よりにもよって主神と従者を呼んでしまった…」

親父は一瞬言葉を途切れさせた。

(・ハ・)「キョウさんは召喚者もろとも主神を瞬殺したが、俺は従者を逃がしてしまった。あの黒いのがそれだ」

140 ◆MxHvQqijkA:2021/11/28(日) 11:40:40 ID:QCdsk55U0
(;・d・)「でも兄貴は、逃した悪魔はいたことはないって…」

(-ハ-)「黒き神は俺の討伐担当だった。キョウさんは担当以外は追わない。それ以外は気まぐれが発動だ」

フッ、と自嘲気味に嗤う。

(・ハ・)「そこで、だ」

電子チップを二枚、ディーに投げて寄越す。

(;・d・)「これは、COMPのメモリーチップ」

(・ハ・)「挿せ」

拡張用挿入口に挿す。

『なんじゃい、契約が変わったわい!今度はおっさんじゃなくて小童かい』

『アニキぃ…?』

(・d・)「マンティコアとホブゴブリンの声…?」

(・ハ・)「お前に預けておく。そいつらで皆を護れ」


アヤメの夢を思い出す。皆が死ぬという予知夢だ。

(;・d・)「どういうことです…?」

一息置いて、親父は重い声で話し始めた。

(・ハ・)「俺は、あの黒い悪魔を探し狩る」

(;・d・)「えっ…俺も行きますよ!親父の役に立つはずだ!」

(・ハ・)「これは大人の責任、俺の責任だ。
こればかりはお前らを巻き込むわけにはいかない」

(・ハ・)「俺は一人戦う、そんな生き方がいい。
俺は信じた。そう俺の力だけを…
あの頃、自分だけの力だけが全てだった」

(-ハ-)「でもお前達がいて…新しい『教える』喜び、『護る』戦いを知った」

(・d・)「親父」

(・ハ・)「これからはまた、一人きり戦場に行く。
元に戻っただけだ」

(;・d・)「無責任じゃないですか!」

141 ◆MxHvQqijkA:2021/11/28(日) 11:41:00 ID:QCdsk55U0
(・ハ・)「お前に最近の陣頭指揮を任せたのは、ある意味抜き打ちテストだ。
お前は見事に揉めるメンバーを諫め、先陣に立ち、戦った。新リーダーよ」

(;d;)「親父ィ…」

(^ハ^)「泣くな。男だろ。もう16か17だったか?」

腕で涙を拭う。

(・ハ・)「それにずっと離れるわけではない。まずは奴の情報を集める。
文献も探し求め、奴の弱点を徹底に突いて今度こそ狩る」

(;・d・)「…」

(・ハ・)「サツキ達のいたコロニーが壊滅したのはある意味、俺の責任だ。
彼女らには申し訳ないと思っている。いずれ様子を見て幹部にしてやってくれ」

(・d・)「しかし、なんで俺をリーダーに?」

(・ハ・)「アヤメはサイコメトラーだ。まだ少し自分のカンに頼りすぎるきらいがある。
イーは激情家だし、ジャックはあれ以来自分を冷徹にしすぎているフシがある。
ランには代えが利かないし、幹部の中でお前が適任だと思ったからだ…それに」

(・d・)「それに?」

(・ハ・)ニア「あれを見ろ」

部屋の隅の木箱を指す。

(・ハ・)「オオツキロボ開発と同時進行で、キョウさん秘蔵の武器を解析して
デチューン…つまり弱体化して複製したものだ。
俺がいない間、未曽有の危機がきたら迷わずあれを使え。
機械仕掛けとはいえ鍛冶なんてしたのは始めてだ。
俺の銘は入ってないが、二振りとない剣だ」

(・ハ・)「それに…俺はお前を贔屓していたと思う。
俺も名前が『ディー』だからな」

(・d・)「!」

(・ハ・)「もちろん皆には平等に接してきたつもりだったがな」

く(・d・)「光栄です、親父!」

部屋のドアの向こうで聞き耳を立てる者が一人。




(・j・)「…なんで僕じゃないんだ…一番冷静で頭がいいのは…」

142 ◆MxHvQqijkA:2021/11/28(日) 11:41:50 ID:QCdsk55U0
某ホテル跡。
綺麗に修復されている。
暗黒召喚師の重鎮二人が会食をしている。

( ■∀■)「クソゲルガー、何の用だ。てめえの顔なんて見たくねぇっての」

( ´)Д(`) 「ククク、そう言うなよ葛葉キョウイチさん。
ジャン・ユーの糞爺がくたばって随分経つから、そろそろ決めておこうと思ってよ。
俺とアンタの二大巨頭、どっちが最高幹部から総統になるかをな」

肥え太った男が、大量の護衛を背に大きな鶏肉のグリルをメインとしたフルコースを貪り食べている。
サングラスの男の食事は、小さなカップに鶏肉の欠片が入ったものだけだ。

( ´)Д(`) 「アンタ鳥が好きだったろう?遠慮なく食えよ」

デブは食べかけの肉入りの唾をスープに吐き飛ばす。

( ´)Д(`)「きったなくて食えねえか?じゃあいらねえよな?」

傍らの髑髏付き錫杖を使い、カップを薙ぎ倒す。
見えない動きで飛び散るスープを躱す。

( ■∀■)「考え事を邪魔すんじゃねえ!」

フォークを投げる。

( メ)Д(`) 「目がぁぁぁぁ!」

( ■∀■)「耳だ!」

テーブルを横にひっくり返し、両手の手刀で耳を削ぐ。

( メ)Д(`) 「ぎゃああああああ!殺れ、てめえらあああ!!」

デブの背後には、二人の男と血だまりと肉塊があった。

(⌒▽⌒)

(`Д´)

サングラスの男は足で杖を砕き潰す。
それを見せる為に片目だけ潰したのだ。

( ■∀■)「豚鼻!
読み違えたな。俺は鳥を食うのが好きなんじゃねえ…

鳥を愛でるのが好きなんだよッ!ヒョホホホホォッ!」

デブ男の鼻を潰し、狂気の笑いをあげて壁際に磔にし、素手で殴る、裂く、潰す。
醜く肥大した喉から出る断末魔を、あえてすぐに止めさせはしなかった。

143名無しさん:2021/11/28(日) 22:25:36 ID:E/9XTgoU0


144 ◆MxHvQqijkA:2021/12/04(土) 22:01:12 ID:v5E9w4vE0
(・c・)『じゃあ兄ちゃん』

(・d・)『あ?』

(^c^)『最後に薬、ありがとう』

(;・d・)『おい!戻れ坊主!シィィィィ!!!!!』

( ゚c゚)『ディー兄ちゃぁぁあああああああああああああああん!!!!!!!!!!!!』

あの日の爆発音。

(・・・)『罪から目を逸らし、逃げ続けたければそうすればいい。
だがあの子供達がどうなるか、お前は知っているはずだな?
契約を交わした以上、お前は私の物だ。宿命の糸に操られし人形だ。
待っているぞ。待っているぞ…』

(;・ハ・)「ハッ!」

銃を構える。夢だった。
いやに脂汗をかき、ベットと寝巻がベトベトになる。

(;・ハ・)「糞が!」

ガキどもには一度も見せた事がない憤りを、銃を投げ飛ばして発散する。

あいつを守ってやりたかった。楽しげにゲームの話をしながらどこか悲しげで寂しげなあいつを。

なのに俺はしくじった。
一度目は三十年前、二度目は【奴】の召喚時。
だから俺は逃げ出した。ガキどもを拾ってママゴトを
しかし三度目はクロエの…

やるべき事は一つだ。
犯した罪と引き換えに命が欲しいならくれてやる。
闇に堕ちろというなら同じ土俵に登ってやろう。

だが、ガキどもだけは…
未来への希望達が生きるこの世界だけは、奴の好きにはさせはしない。
【奴】は俺を完全にナメている。
かつての仲間の居場所を潰し尽くしたのが挑発と挑戦だろう。

だが、容易く眷属に堕ちる気はない。
ちっぽけな俺の総てと引き換えに、油断しきったあの嘲りが浮かぶような貌なき貌を!
【奴】の世界もろとも壊し尽くす!

(・ハ・)「…行くか」


服を着替え、腰に七星剣を携え、夜が明けないうちにそっと「家」を出る。

145 ◆MxHvQqijkA:2021/12/14(火) 21:01:27 ID:CgETzR8Q0
永い間お待ちさせてしまい申し訳ありません。
イズン狂を極めたいのと、体調不良精神バステでしばらく休載します。
(?'A`? ) いやー参ってるところにリアルメシア教の救済勧誘はきついっす、休載だけに

146名無しさん:2021/12/14(火) 21:12:25 ID:mlOxet7.0
お大事に!!!!!!

147 ◆MxHvQqijkA:2022/04/05(火) 22:52:39 ID:4ezJCqR.0
あれからどれほど経っただろうか。
「親父」がいなくなってから、ディーが暫定の指導者として戦っていた。
何も悪魔との交戦だけが戦いではない。
シンジュクでの交易、拾ってきてから少し大きくなってきた子供達への防衛指導。
兄貴も最近姿を見せてくれていない。
代わりに変な神父が常駐するようになった。

(黒^Ω^)つ「よくできましたお」

ジャックが勉強を任意で教え、授業に出た子供達には褒美に神父が菓子を配っていた。

(・d・)「ありがとうございます内藤さん。最初は疑ってしまって申し訳ない」

(黒^Ω^)「いいんですお。私も子供達の相手は楽しいですからお。
ところで、このエンブリオンという組織名に意味はあるんですかお?」

(・d・)「卵とかそういう意味だったような気がします。
行き場のない子供達がこれから巣立っていけるような場所…
創設者達はどう思ったかわかりませんが、俺はそういう組織にしたいと思っています」

(黒^Ω^)「ほうほう。子供達が大事なんですおね。
それはそれは…」

神父がより深い笑顔を見せる。

(・五・)「ボス、今日の狙撃訓練終わりました」

数人の子供達を引き連れてサツキが報告に来る。

(-d・)「お疲れ様。隊のみんなで休んでくれ
それとボスはやめてくれ、俺はあくまで暫定だ」

頭を掻いて照れる。

(・五・)「悪魔狩りなだけに?あははっ」

お互いに大笑いする。

(;・d・)「夜の見張りは俺がす…」

くらっと眩暈がして、倒れかけた。
サツキが咄嗟に支えてくれる。

(・e・)b「ディーのアニキ、今日は俺の当番だぜ」

向こうからやってきたイーがサムズアップして肩を叩く。

(;・d・)「そう…だったかな」

(・e・)「アニキ最近動きすぎだぜ。少し安静にしてた方がいいんじゃないの」

148 ◆MxHvQqijkA:2022/04/05(火) 22:53:07 ID:4ezJCqR.0
(・d・)「そうするか。すまんが任せたぞ」



ラン ゚ -゚)「リーダー、少し頑張りすぎです。2日はゆっくり休んでくださいね」

ランから睡眠薬をもらうと、自室に戻った。

(・d・)「アヤメ」

(・殺・)「ディー、くたくただね」

アヤメがベッドに腰かけて足をぶらぶらしていた。

(;・d・)「おっ」

ふらつき倒れかける。
アヤメが胸で支える。

(;・d・)「すまんな」

(・殺・)「少し気を張りすぎなんじゃないの?お師匠がいなくなったからって全部背負うことないのよ」

(;・d・)「アヤメの胸も張ってるな。このまま寝てしまいたいようだ」

冗談を言いながら、睡眠薬を水で流し込む。
アヤメに抱かれながら、少し感情を吐く。

(・d・)「結局、俺達は子供なんだ。あんな正直胡散臭い神父に頼らなきゃいけない程に」

(・殺・)「それはそうよ。私達中核メンバーはおおよそまだ16よ。
大破壊前ならコウコウ?っていうのに通っている頃」

(・d・)「大破壊前なら18歳で大人扱いになるっていう法律が決まりかけてたらしいな。
あと2年でエンブリオンを立派な大所帯にしないとな」

(・殺・)「今日はこっちはいいの?あっ…」

アヤメの胸元をまさぐり、口に舌を入れる。

(;・殺・)「うぐっ…うっ!」

(・d・)「すまん。書庫にあった本に書いてあったキスっていうのを試してみたんだが…」

(・殺・)「もっと優しく。やってみようよ」

二人でベッドの上に座り込み、改めて再挑戦する。
しばらくするとがくんと糸の切れた人形のように倒れ込み、アヤメを押し倒してしまった。

ランの睡眠薬が効いてきたようだ。

149 ◆MxHvQqijkA:2022/04/05(火) 22:55:54 ID:4ezJCqR.0
なんだこの官能小説もどき(セルフプリンパドン引き)
本調子ではないですがリカームしました。
これから食いしばりからデスカウンターをかましていきますのでコンゴトモヨロシク…

150名無しさん:2022/04/05(火) 23:42:59 ID:pHJfpOYs0
otsu

151名無しさん:2022/04/05(火) 23:46:32 ID:s.hspgVU0
おつつ

152 ◆MxHvQqijkA:2022/04/06(水) 23:17:19 ID:QTmH2m8o0
目を覚ました時には二日後の深夜だった。
スマホの時計でわかった。

(-殺-)「zzz…」

アヤメが隣で寝ている。
様子を見ていてくれいたのだろう。

(;・e・)「アニキ、大変…うわぁ!
なんでアヤメ姉まで!?」

(-d・)「どうした。」

(;・d・)「あ、いや、これはなんだ…ずっと寝てたみたいだから心配だったみたいだ」

(・j・)つ「そんな事より緊急事態だリーダー。正体不明の悪魔がシンジュクからアカサカ付近に現れた。
巨躯で辺りを破壊し始めている。
我々のアジトまで侵攻してくる可能性もあるが。どうする
試しに数人送り込んだが、対人、対通常悪魔の戦術が効かず踏みつぶされた」

ジャックがイーを押しのけて入ってきた。

(:・e・)「そうなんだよ!銃もろくに効かねえ!魔法石をブン投げてもダメだった!」

(#・d・)「お前ら!なんで未熟な戦士を向かわせた!」

(・j・)つ「これを見て欲しい。遠目から撮影してもこの大きさだ」

https://pbs.twimg.com/media/DlcKuvGUcAEMcF6.jpg

(;・d・)「おぞましいな…」

(・j・)「ウェンディゴの群れも周囲にいる。部隊を編成しても焼け石に水だろう」

(・d・)「わかった。オオツキロボで出る。整備は大丈夫か」

(・e・)「おう!定期的にじじいに見てもらってるから大丈夫なはずだぜ!」

(・d・)「装甲が貫通される可能性もある。できるだけ防具を着込んで先に搭乗していてくれ。
すぐに俺も向かう」

(・j・)「了解。念のためにサツキの仕込んだ狙撃部隊も呼び出しておく」

二人は早足で出て行き、スウスウと寝息を立てるアヤメを一瞥する。




防具を着込んで歩きつつ、厳重にカギをかけた親父の部屋に入る。
木箱を開ける。

153 ◆MxHvQqijkA:2022/04/07(木) 23:01:49 ID:OyahfsWY0
(;・五・)「そんな!困るよ!ボクの部隊を囮に使うなんて…」

(・j・)「追い出されたいか?それに別に特攻して死ねというわけではない。
遠方から狙撃して奴の弱点部位を探ればいい」

ドックに着くと、サツキとディーが言い争いをしていた。

(・d・)「ジャック!さっきも言ったが仲間を…」

(・j・)「仲間ではない。仲魔だ。
数人ではなく数体と言うべきだったな。語弊があったのは謝る。
私の部下達に交渉で手に入れさせた弱小悪魔を送り込んだのだ」

(;・d・)「しかし仲魔も仲間のようなものだ。無暗に使い潰すなんて…」

(#・e・)「とにかく行こうぜ!シンジュクをブッ潰されたら元も子もねえ!
ジャックの野郎をぶっ飛ばすのはその後でいいだろアニキ!」

(・d・)「ああ。そうだな
…サツキ、無理はしなくていい。巨大悪魔の取り巻きをそこそこやってくれれば」

(・j・)「まずはオオツキロボでウェンディゴの群れを一掃する。それから巨大悪魔と交戦だ。
側面や遠方から後方部隊が援護。プランは急造だがこれでいいか、リーダー」

(・d・)「ああ、行くぞ!」

三体のオオツキマシンが飛ぶ。
ホブゴブリンはサツキ隊につき、コカトライスは家の防衛にまわす。

(・d・)「チェンジ!オオツキ、ワン!」

人型になったメカが空中からマハラギストーンを濃縮させ放つ。
紫の邪鬼の軍団は一瞬にして溶けつきた。

(・j・)「やはり本体に魔法攻撃は効果が薄いようだ」

着地したオオツキロボと巨大悪魔は二倍ほどの差があった。
火炎を意にも介さずシンジュクビルを触手で破壊している。

(・j・)「行け」

ジャックが無線機で指示すると、地下街入口からとっこうたいとしょけいライダーの軍隊がやってくる。
各々突っ込む、銃を乱射するなど応戦するが抵抗むなしく触手に絡めとられて嫌な音を立てて喰われていく。

154 ◆MxHvQqijkA:2022/04/07(木) 23:02:30 ID:OyahfsWY0
(;・e・)「うげ」

(・d・)「まさか…仲魔っていうのは…」

(・j・)「奴らは金さえ払って契約すれば従順な仲魔となる。これも作戦の一環だ。
シンジュク周辺にのさばるチンピラも一掃できて一石二鳥。
逃げろ!シンジュクの街から遠ざかれ!」

凡庸なガイア教徒の脚力では触手から逃げることはできない。
全力疾走するライダーのバイクは貫かれ、爆炎とともに焼けた肉となる。

(・e・)「見てられねえぜ!チェンジ!オオツキスリー!」

戦車型のメカが太い腕で悪魔を殴りつける。

「わしゃしゃしゃ」

(・j・)「オープンゲット!」

ジャックが合体を解除する。
先ほどまでの場所に、衝撃で大穴が空いていた。

(・j・)「このマシンはワンオフ物だ。粗末に破損させるな」

(・e・)「おらおらこっちだぜ!獲物はよぉ!」

戦車で触手を撒く。

(・j・)「チッ」

ジャックが空中用に改装されたメカで機銃を撃つ。
悪魔の巨大な羽が穴だらけになる。
だが徐々に穴が塞がれていく。

(・d・)「そうか。異様な耐久だけではなく、再生能力も高いんだ」

(・j・)「アナライズ、未完成だがデータを送る。
先ほどの異様な衝撃波に加え、麻痺毒を持つ牙、触手を巻きつけての破壊攻撃が主なようだ。」

(・e・)「要は近付かなきゃいいんだろ!」

イーが戦車で体当たりをしつつヒットアンドアウェイで寸分の見切りを発揮する。

(・j・)「マグレに頼るのは危険だ。もっと注意深く」

尖ったトサカの生えた人鳥の群れが現れた。凶鳥フリアイだ。
次々と悪魔に突っ込んで喰らわれていく。

(・d・)「ダーク悪魔同士で戦いを…?」

155 ◆MxHvQqijkA:2022/04/07(木) 23:02:51 ID:OyahfsWY0
(・j・)「縄張りを荒らされて周辺の悪魔も怒り心頭のようだ。少し離脱しよう」

次々と触手に貫かれていき牙で砕かれるフリアイ達。
地霊ブッカブー達もやってきてブフーラの応戦をする。
一瞬触手が凍り、吹き飛ばされる。

コクピットに設置してあるスマホで悪魔に呼びかける。

(・d・)「近付きすぎてもやられる!できるだけ遠距離から放つんだ」

『あぁ?契約もしてねえのに俺様達に命令なんぞ…ギャ』

一体が氷結のつぶてを触手に上乗せで返されてミンチになる。

(・d・)「死にたいのか!このままではこの一帯が奴に食われるぞ!」

恐慌に陥ったブッカブー達は逃げまどいつつブフーラを放っていく。
突如、通信が入った。

ラン ゚ -゚)『リーダー、ランです。今は家からリモートで戦いの様子を見ています。
あの悪魔は、捕食する度に徐々にですが大きさを増しているようです。
あまり野良の悪魔に餌食になられても困るかも』

(・e・)「流石ドクターオペレーター。無事帰れたら悪魔のキスの一つでもしてやっかな」

(・j・)「殺すぞ」

(・d・)「ジャック、マハブフストーンとマハジオストーンの残量はどのくらいだ」

(・j・)「キョウ氏からの供給が絶たれている今、そう余裕はない。
それに一発づつ撃っても焼け石に水というのはリーダーが実感しているはずだが」

(;・e・)「ええい!なんとかならねえのかよ!」

(・d・)「ん?これは…
ジャック、マハブフストーンを一発づつ、違う部位から当ててみてくれ」

(・j・)「リーダーの提案には従うが…」

ジャックは空中からマハブフストーンを投擲してゆく。
頭、羽、触手、腕。
一瞬だけ凍り付くが、すぐに動き始める。

ラン ゚ -゚)『兄さん。やはり頭が一番効果的なようね。コンマ程度の差だけど』

(・d・)「フリアイさん、これ以上は退いてくれ。
人と悪魔として普段争っている仲だが、ここで奴の餌になられても寝覚めが悪いんだ」

『あら、アイツにいっぱい食べられた仲間達の仇は取ってくれるのかしら?』

156 ◆MxHvQqijkA:2022/04/07(木) 23:03:12 ID:OyahfsWY0
(・d・)「ああ、約束する」

『いいわ、言う事聞いてあげる。次に会う時には倍返しね!』

フリアイの一団は足早に去っていった。

(・e・)「ケッ、逃げ足だけ早いでやんの」

触手に絡め取られた戦車を、ジャックの機銃が援護する。

(・j・)「余り手間をかけさせないでほしいな」

(;・e・)「今回は感謝してやらあ!」



ドンッ。

赤い触手の目玉に、一発の銃弾が炸裂した。

「うごおおおおおじゅるる」

(;・五・)『サツキ隊、援護します!』

(・d・)『今のは通常弾か?ショットシェルか?』

(;・五・)『エンブリオンのお金で神経弾買っちゃった!ごめんね!』

(;・e・)『バカヤロー!あれ地味に高いんだぞ!
俺だって自腹で買って大事に使ってんだぞ!』

(・d・)『この際不問だ。毒針弾はあるか』

(・五・)『一応あるけど、ちょっとだけだよ。
悪魔相手なら睡眠効果で動きを封じられる神経弾の方がいいからね』

(・d・)『そのままスナイパーライフルで交互の弾を目玉に当ててみてくれ。
危なくなったらすぐに退避を』

(・五・)『了解!』

数百メートル先の高台からひたすら目玉を狙い撃つ。
多少再生能力が落ちているような気がした。
残った多数の目玉がギロリとサツキを見つめた。
睨んだのではなく、見つめた。
そのままノロノロと接近していく。

(・d・)「チッ!」

メカを降り、マンティコアを召喚して背に飛び乗る。

157 ◆MxHvQqijkA:2022/04/07(木) 23:03:34 ID:OyahfsWY0
(・j・)『リーダー』

(・d・)『恐らくはフリアイ達の放った防御破壊魔法、ラクンダが効いているんだ。
俺のマシンは回避優先の自動操縦にしてある。そっちの指揮はお前が取れ』

(・<_,・。)「久々の呼び出しじゃの。ワシに何か妖怪」

(・d・)つ「これで奴の触手を片っ端から滅多斬る。俺を乗せて奴の周りを旋回してくれ」

忍び寄る触手を、ジャックがマハブフストーンを投擲して凍らせる。
そこを切り取っていく。

(・j・)つ「絶止正棒(ゼットセイバー)!」

親父の部屋の木箱にある一振りの剣を持ち出していた。
未曽有の危機がきたら迷わずあれを使え、と言われていたが…
命を燃やせ、怒りを燃やせ。今がその時だ。

やっと形になってきたエンブリオン。
その希望を奪い去る者はどんな奴も許さない。
魂が震える、発ち上がるんだ。

機械で作ったと親父は言っていた。
普通の剣と違い、エネルギーの刃でよくしなる。
強靭だったはずの触手がバターのようによく斬れる。

マンティコアはスレスレのところで攻撃を回避する。
尻尾からの麻痺針で牽制もしてくれた。

(#・<_,・。)「ウオオオオオオオオオオ!」

噛み付こうとしてくる悪魔をバインドボイスで怯ませる。
知性があるかわからないが、触手をだいぶ切り落とされた事で弱気になってはいるようだ。

「ごにょおおおおおおおおお!」

突如、悪魔が家に向かって動き出した。
接近戦を挑んでいたディーは降り落とされそうになり、マンティコアに拾われる。

(・d・)『イー!』

(・e・)「チェンジ!オオツキ!スリー!」

素早く合体し、パワー重視の戦車ロボで足止めをする。

(;・e・)『サツキ!早く逃げやがれ!』

(;・五・)『わ、わかった!』

サツキは駆け足で要塞へ向かう。教え子たちは連れてきていなかったようだ。

158 ◆MxHvQqijkA:2022/04/07(木) 23:04:07 ID:OyahfsWY0

悪魔が下半身の触手を地面に刺し込む。
肉体の損傷が大幅に回復していく。

(;・d・)『イー!早く引っこ抜け!地面から生気を吸うつもりだ!』

(#・e・)『どおおおりゃあああああ!!』

ギシギシと嫌な音を立てながらも、巨椀が悪魔を薙ぎ倒す。

(・d・)『ジャック!ありったけの氷をぶちこんでやれ!』

(・j・)『!?』

(・d・)『マンティコア!俺を奴の口の中に思いっきり投げ飛ばせ!』

(;・<_,・。)「おいおいお前さんなぁ…」

(・d・)つ『勇気はあるか!希望はあるか!信じる心に!
明日のために戦うのなら!
今が!その時だァ!』

ディーが襲い来る牙を易々とバターのように斬り、口の中に突入する。

(・j・)『オープンゲット!』

合体を解除し悪魔の真上に浮かんだジャックは、全てのマハブフストーンをビームにして撃ち出す。
流石の巨大悪魔も数分は凍り付かざるを得なかった。

(・e・)「おい!アニキが中にいたんだぞ!」

(・j・)「リーダーの決定だ」

数分後、徐々に悪魔の表皮が内側から切り裂かれていく。
悪魔の上顎を寸断して出てきたのは、ディーだった。

(;・e・)「アニキィ!」

(・d・)b「シメは頼むぜ」

(・e・)「チェンジオオツキスリー!
渾身の!ハンマーパンチッ!!」

氷漬けの悪魔の体は粉々になった。
灰にはならず、大量の禍々しい色のマグネタイトが放出、分散されていく。


(・鼠・)『こちらネズミ!ウエノからジオンガストーン諸々仕入れてきたでやんす!』

(;・d・)(;・e・)(;・<_,・。)「「「おせーよ!!!」」」

159 ◆MxHvQqijkA:2022/04/10(日) 23:49:16 ID:gkzOBLmY0
(・j・)つと(・e・)

約束の殴り合いをする。
意気揚々と帰還する一行に、緊急通信が入る。

(・d・)『こちらディーだが。何かあったか』

『リーダー!子供達がいきなザザ…り…』

(;・j・)「ラン!」

ジャックは低飛空スレスレで単独でマシンを飛ばす。
道中のブッカブー達が寸断される。

(;・d・)『何があった』

『一部の子供達に角が生えて…他の子供達を…うう…
アヤメさんは念動力で抑えようとして、私は個室に隠れて…ごめんなさい』

(;・d・)『アヤメが前線に!?』

AI操作にマシンを任せ、マンティコアを全力疾走させる。

(;・e・)つ「二人とも焦りすぎだぜ!
サツキ乗れ!」

自分の戦車にサツキを引っ張って乗せる。

(;・e・)「うー、俺のが一番ノロいんだよなぁ…
お前を乗せてるから余計にな」

(#・五・)「自分から乗せといて!」

銃口でイーを思いっきり殴る。

(;・e・)「ばかやろばかやろ!誤射で殺す気か!
漫才やってんじゃねーんだぞ!」






家に真っ先に到着したジャックが銃を構えつつ城門を抜ける。
中庭でネズミが魔法石を投げて必死に謎の悪魔に対抗している。

(・j・)『リーダー。悪魔の襲撃だ。小柄で角が生えている。』

ディーは嫌な予感がした。

160 ◆MxHvQqijkA:2022/04/10(日) 23:49:38 ID:gkzOBLmY0
マンティコアが俊足で爪を降り、悪魔を切り裂く。

(・j・)「リーダー」

(・d・)「これは…アカサカシェルターで見た鬼そっくりだ…
頭を噛み砕け!」

マンティコアは再生途中の鬼の頭を噛み砕く。
おぞましい脳漿が飛び散る。

(・<_,・。)「まっず!」

マンティコアはペッペと吐き捨てる。

(・j・)「アヤメとランの通信が途絶えた。リーダーは中へ頼む。
イーが来るまで私達が凌ぐ。」

銃を構えてネズミと並ぶ。

まさか。
ディーの脳裏に嫌な予感が再び。
あの巨大悪魔の散ったマグネタイトは自分のスマホに吸収されなかった。
ではどこに行ったのだ?

(・d・)「マンティコアもここで迎撃だ。
外から便乗して悪魔が襲ってくる可能性もあるからな」

むき身の剣を片手に行く。
建物の中には子供達の死体と散らかった臓物が散乱していた。




(;・殺・)「みんな元に戻って!」

ホブゴブリンが盾になり、アヤメが鬼達に念を送っている。

(:・く・)

肉体と斧をぶんぶんと振り回して鬼を牽制する。

(;・殺・)「お願いホブゴブリンさん!殺さないで!」

(:・く・)「わかってる。でもこれ以上はキツイぜ」

(d)「マハラギオンだ」

(;殺・)「やめて!」

(・d・)「マハラギオン!」

161 ◆MxHvQqijkA:2022/04/10(日) 23:49:58 ID:gkzOBLmY0
スマホで強制命令を出す。
鬼達の引っかきに耐えきれなくなったホブゴブリンが炎を出す。

(・d・)「タルカジャ」

炭化した鬼達を、強化魔法をかけた剣で首をひたすら刈り取る。

(;殺;)「なんで…」

(・d・)「アカサカで見たはずだ。
ああなってしまってはもう…」

(・d・)『ラン、応答できるか。今そちらに行く。
どこにいる』

『二階の角部屋にいるわ…複数の音が扉を叩いてる』

泣き崩れるアヤメをホブゴブリンに任せ、二階へ上がる。
階段で背後から飛び掛かる鬼の頭を銃撃で砕く。

(・d・)「あそこか!」

親父からもらっていたデータに載っていた、幽鬼ガキにそっくりな鬼が扉をドンドン叩いている。
手榴弾を抱えた鬼が一体向かって来る。
腹を蹴り返し、ソードオフショットガンを手榴弾に命中させ大半の鬼を一掃する。

銃を投げ捨て、息のある鬼を剣で切り裂き室内のドアを開く。

(・d・)「ラン。無事か」

『アニキ!取り逃した奴が建物に向かっていきやがった!
気ィを付けてくれ!』

ラン ;゚ -゚)「ありがとうございますリーダー。
兄さんは?」

ランは複数の子供達と抱き合い、震えていた。

ラン ゚ -゚)「よかった。
みんな眠っている間に急に…子供達が急に」

(;・d・)「今は話さなくていい。
うぐっ」

鬼がショットガンを持ち、撃ったのだ。
ラン達を散弾から背中で庇う。
幸い最近はいい防具をつけていたので、致命傷にはならなかった。
振り向きざまに滑り込んで首を斬る。

(・d・)「さよならだ」

162 ◆MxHvQqijkA:2022/04/10(日) 23:50:19 ID:gkzOBLmY0
夜明けの10時ごろ、幹部会議が始まった。
生き残ったある程度の年齢のメンバーは、鬼達による破損個所を悪魔達と一緒に補修している。

(・j・)「私の隊では10人行方不明になった」

鬼達は恐らく子供達が変異したものだろうが、灰になってしまい身元がわからない。
故に行方不明者として扱うしかなかった。

(・e・)「俺のとこは15人だな」

(・鼠・)「地下の寝床もひどいもんでやんす。
逃げ出せた子はいるけど血まみれで臭いでやんすね」

(・d・)「アヤメのところでは6人だそうだ。」

(・j・)「彼女はどこにいる。そしてあの神父も」

ランに手当てされながらディーは続ける。
ランの医療班では犠牲は出なかったようだ。
緊急時があればライフラインの自分達はすぐ避難できるように日頃から教えていたおかげだろう。

(・d・)「アヤメはショックで自室にこもってる。
あの神父は姿を見ないな。ラン、何か知らないか」

ラン ゚ -゚)「深夜だったからわからないわ。
死体がないということは、どさくさに紛れて逃げられたのかもしれない」

(・j・)「サツキの隊では行方不明者は一人だけ、恐らくリーダーを撃った者だろう
よく鍛えた結果がこれとは皮肉だな?」

(・五・)「…」

(・d・)「やめておけ。どこの隊でも犠牲者が出たのは事実なんだ。
それにサツキはこれで二度目だ。トラウマになっていてもおかしくない。
ラン、ありがとう」

自分で巻いた下手な包帯を巻きなおしてもらい、立ち上がる。

(・e・)「アニキ、どこへ?」

(・d・)「アヤメと話をしてくるよ。それと各自、今回の事で遺恨は持たない事」

そしてランに耳打ちをする。

(・d・)(すまないが手が空いてる時でいい、神父が持っていた菓子があれば解析を頼みたい。
あのアホっぽくてお人好しな人を疑いたくはないが、万が一ということもありうる。
悪魔学に精通した人を呼ぶならマッカの用意をしておくから)

ラン ゚ -゚)(わかりました。秘密裏にやっておきます)

163 ◆MxHvQqijkA:2022/04/10(日) 23:50:48 ID:gkzOBLmY0

アヤメの部屋の扉をノック。

「誰?」

(・d・)「俺だ」

一言で開けてくれた。
やつれている気がする。心なしか。

(・d・)「朝食は…食べる気がまだないか?」

(・殺・)「うん…」

(・殺・)「ごめんなさい」

(・d・)「ん?」

(・殺・)「その怪我…私が躊躇わず戦えていればしなくて済んだかもしれないのに」

ベッドに座る。

(・d・)「意外と大した事はないさ。数日休ませてもらって悪魔狩りでカンを取り戻すよ。
それに多分見てたんだろ?子供達が鬼に変わる様を
仲間が悪魔になったからって即殺せなんて、躊躇するのも仕方ない」

(;殺・)「うん」

早くも半泣きになっている。

(・d・)「ここだけの、あとランとの間だけの話なんだが。
アカサカと今回の件の原因は徹底的に洗うつもりだ。」

(;殺;)「やはり元凶がいるの?」

(・d・)「サツキが助けを求めに来た時の話だと、悪意ある人間か悪魔が噛んでいる可能性が高い。
この家も正直人が頻繁に出入りしているから、いくらでも隙はあるといえばある。
これからは客人にも検問を設置するしかないのかもな…」

(;殺;)「悔しい…悔しいよ…何もできない私が…!」

今回はアヤメがディーの胸に飛び込んだ。

(・d・)「俺もだ。所詮まだ俺達も子供だから。
じっくり、もっと力をつけないといけない」




幼少期編 完

164名無しさん:2022/04/11(月) 10:45:58 ID:Hx01HWos0


165名無しさん:2022/04/11(月) 22:09:45 ID:YG4CyVVg0
おつ

166 ◆MxHvQqijkA:2022/04/14(木) 22:31:35 ID:HpJybzAY0
鬼の惨劇から約2年後。

(・D・)「お疲れ様です」

城門前まで来た商人と、護衛のメンバーを出迎える。
スマホをかざし本人認識をして、取引を始める。
デビルアナライズを流用したものだ。
人間に化けていないか、殺されて成り代わられていないか、悪魔の因子を持っていないかのチェックだ。

「今回はこれとこれとこれですね。一万マッカでどうでしょう」

古米と多少の肉、少量の酒がトラックに積まれている。

(・D・)「これだけの数を調達してくれたんだ。倍出しますよ
超えた範囲はバレない程度に小遣いにでも」

「ありがとうございます。護衛までつけていただいて」

(・D・)「店主によろしく伝えておいてください。もう慣れましたか?」

「いやあまだまだ。買取品の査定も勉強中でして」

男は照れくさそうに頭を掻く。
シンジュクを出禁になったエンブリオンの為にジャンク屋の店主が孤児を拾い、出張販売用と店番として雇ったのだ。

(・D・)「せっかくです。食事でもlされていかれますか?」

男は手を横に振る。

「いえ今回は遠慮しておきます。早く帰らないと親父にどやされるし、ちょっと酒も飲みたいんですよ
本当に申し訳ない。」

男はメンバーに連れられ、空荷のトラックに乗せられていった。
朗らかな顔で手を振ると、リーダーらしき顔に戻り近くのメンバーに指示を出す。

(・D・)「食糧の検品を頼む」

「了解しました」

敬礼をすると、メンバーはリヤカー一杯の食糧を運んでいく。
酒はディーの手の中だ。

自室に戻る。

(・D・)「さて、どうしたものかな…」

今回買取に出せる戦利品はなかった。
ジリ貧だ。
粗悪な酒を煽りながら、掌を額に当て今後の事を考える。
そして、ほんの1,2か月前の事を思い起こしていた。

167 ◆MxHvQqijkA:2022/04/14(木) 22:31:56 ID:HpJybzAY0
ある時、気分転換にアヤメと二人でシンジュクをぶらついていると、数人の男に囲まれた。
白制服に警棒、オザワ配下の私設警察達だ。
その中心にいる長官が口を開く。

「抵抗は無駄だ。オザワ様が話があるという。ついてきていただけるかな?」

(綾゚ -゚)(どうするの、ディー?
私のテンタラフーで撹乱して逃げられるけど)

(・D・)(ここで騒ぎを起こしたらシンジュクに来れなくなるかもしれない。
ここは従っておくのが得策だ)

ディーとアヤメは両手を上げる。
私設警察ディーに軽く身体チェックを行う。
次はアヤメの版だ。
いやらしい顔つきで、丸みを帯びて女性らしくなったアヤメに手を伸ばす。
まずはノースリーブのジャケットの胸のファスナーに手をかける。

すかさずディーが腕をつかんで押し返す。

(・D・)「彼女は武器を何も持っていない。銃オンチでね。
彼女に触っていいのは俺だけだ」

(綾゚ -゚)「あっ…」

ディーが素早くアヤメの体をまさぐる。
頭、胸、腰、脚、全てに触れていく。
特に膨らんだ胸には少し力を入れた。

(綾#゚ -゚)「ちょっと痛い…!」

(・D・)「すまない。これでいいかな?」

苦虫を噛み潰したような顔をして、長官が口を開く。

「いいだろう。抵抗すれば即座に射殺させてもらう」

そのまま南東のクラブを横に通り、連行される。
喧騒が外からでも聞こえる。

(・D・)(俺達が孤児で虐げられてる間、こいつらは毎日楽しく過ごしてたんだよな。
オザワに媚びを売って、シンジュクから出られないまま)

南西のオザワのオフィスに向かう。
オフィスビル内には悪魔がうようよいる。
威嚇する豹の悪魔や冷ややかな視線をアヤメに向けるガイア教徒の女。
しかし私設警察が同行しているからか、敵としては認識されないようだ。
ドロドロの緑色の、人間を合わせたような何かが蠢いていたりする。

「ようこそ。デートの途中申し訳ないね」

168 ◆MxHvQqijkA:2022/04/14(木) 22:32:20 ID:HpJybzAY0
( ・ノ∀・)「私はオザワ。知っているかもしれないがこのシンジュクを…」

(・D・)「まずこいつらをどうにかしてくれませんか。銃を向けられていると気分が悪い」

俺はもう18だ。
自分が生まれた日はわからないが、親父に拾われた日を誕生日としていいだろう。
大人同士で対等な話ができる。

( ・ノ∀・)つ「下がりなさい」

スーツにガウンを羽織ったセンス最悪の出で立ちで、ワイングラスを傾けて言う。
私設警察達が一礼してオフィスを出ていく。

(・D・)「要件はなんでしょう」

( ・ノ∀・)「君達の保有するマシンを無償で譲っていただきたいのだよ」

心臓がどくりと鳴った。

(・D・)「何のことでしょうか」

( ・ノ∀・)「とぼける必要はない。
シンジュク外部に取り付けてあったカメラに記録が残っていた。
度々、シンジュクを守ってくれていたようだね。
特に一年半前の巨大な悪魔との戦いは実に素晴らしかった。
テンプルナイトの群れですら」

(・D・)「…それがどうして、譲渡する事に繋がるのですか?」

( ・ノ∀・)「否定はしないのだね。
いいかね、君達のような無知な若者には過ぎた力は危ないのだよ。
私達の方が有意義な使い方ができる」

(・D・)「あれは我々が自分達を守る力です。
あなた方の物にはなりません。
シンジュクに脅威がまた迫れば出撃しましょう。
手を引いていただきたい」

オザワのこめかみがピクッと動き、歯をむき出して笑う。

( ・ノ∀・)「大した自信だな。
君達がシンジュクを守るといっても何ができる。
君らの巣穴は知らんが、シンジュクまで遠くからやってくる間に犠牲者は出るのだぞ?
私の治めるシンジュクにあのマシンを納めれば、即座に防衛に移れる。
君達をヒーローとあがめる民も出ている。それを聞かれれば私設警察にお灸をすえられてしまうのにな。」

(・D・)「…何が治めるだ。支配だろ」

( ・ノ∀・)「民に希望を与えてそれを奪う。ずいぶん非道い事をしてるんだよ。君達はッ!」

169 ◆MxHvQqijkA:2022/04/14(木) 22:32:42 ID:HpJybzAY0
ディーは壁に思いっきり拳を叩きつける。

と(#・D・)「お前らはなんだ!私設警察を使って俺達に使って暴力を使ってたじゃねえか!」

( ・ノ∀・)「暴力に頼り使うような暴徒になる前に教育をしてあげているだけ…
…ん?お前達はまさかシンジュクの浮浪児出身か?」

(・D・)「そうだ!俺達はまだ幼い頃に私設警察に殴られ虐げられ人売りに投げられた!
どうにか生き延びてこの数年、自分達の力で生きて来たんだ!」

(綾;゚ -゚)「ディー、熱くならないで」

せき止められていた鬱憤は止まらない。

(・D・)「シンジュクから逃げ出して撃ち殺された大人達も幼い目でよく見て来た!
この彼女なんか私設警察に辱められそうになった!」

( ・ノ∀・)「ほう。シンジュクからの脱走者か。それはいけないな。
私の素晴らしいオフィスに来る途中、汚らしい肉塊を見なかったかね?」

(・D・)「まさか…貴様」

( ・ノ∀・)「そう。シンジュクの掟を守れなかった者たちの末路。
屍鬼コープスだよ。
そしてここまで話したということは…わかるね?」

扉を開けて私設警察達がなだれ込んでくる。
入口に集結する奴らを次々とサブマシンガンで掃射する。
血だまりの中から警棒を拾い、長官を殴り飛ばす。

(#・D・)「やれるものならやってみろ!」

次は悪魔達が押し寄せてくる。

「あらぁ、いい男ねぇ。いただきま」

幽鬼マンイーターがオザワ側から噛み付いてくる。

(綾゚ -゚)「テンタラフー!」

アヤメが両手をかざし、悪魔達を昏睡させる。

(;・ノ∀・)>「むっ…精神干渉か!」

オザワもたまわず耳を塞ぐ。
ディーがマンイーターの頭を足で思いっきり砕き、オザワに詰め寄る。

(・D・)「!」

オザワが懐から出した拳銃を咄嗟に避ける。

170 ◆MxHvQqijkA:2022/04/14(木) 22:33:15 ID:HpJybzAY0
( ・ノ∀・)「私には悪魔召喚の心得もあってね。それっ!」

ボロマントを纏った悪鬼が数体、壁として立ちふさがる。

「マハーブフ!」

寒波の連続に腕、脚がかすかに凍る。

(;・D・)「く…」

( ・ノ∀・)「そっちの彼女はいい体をしているね。
最上級のマンイーターにして私の愛人にしてあげよう」

「マハー…」

「マハジオンガ!」

氷結の渦を、雷撃が打ち消し貫いた。
躍り出てきたのは、ハイレグアーマーにマントを羽織った女性だった。
オフィス入り口をチラリと見ると、焼け焦げた悪魔達が徐々に灰と化していた。
長官はへっぴり腰で逃げ出していく。

( ・ノ∀・)「また君かね救世主様。いい加減しつこいんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「ドルミナー」

肉の壁達は感電から立ち直った途端に昏睡して倒れ込んでしまった。

ξ゚⊿゚)ξ「貴方たちは早く逃げてください!トラポート!」

(綾;゚ -゚)「な、なに!?」

二人の姿が徐々に消えていく。

( ・ノ∀・)「散々君には煮え湯を飲まされたものだが、もう終わりだよ。
君はこの悪魔に勝てない
救世主伝説はここで幕を閉じるのだ!」


気付けばシンジュク地下街の出口にいた。

(・d・)「どけっ!乗れ!」

いきなり現れた人間を見て呆然としているしょけいライダーを蹴り倒し、バイクを奪う。
アヤメを後ろに乗せて、フルスロットルで爆走する。
突風で体についた氷が溶けて飛び散っていく。

(綾゚ -゚)「つめたっ」

逃避行は、数十分が数時間にも感じられるような必死さと緊迫感だった。

171名無しさん:2022/04/15(金) 13:07:20 ID:7kCAGorc0


172名無しさん:2022/04/15(金) 21:18:05 ID:rZTR35pw0
おつ

173 ◆MxHvQqijkA:2022/04/23(土) 01:49:34 ID:6f/N0vP.0
(・D・)「腰が痛い」

(・J・)「は?」

(・D・)「腰が痛い」

(・J・)「…どういう意図だ、リーダー?」

(・D・)「オザワから逃げてきた時に無茶にフルスロットルしたから身体がガタガタだ。
ランから痛み止めの薬をもらってきてくれないか」

(・J・)「別に構わないが…何があったのだ?」

ディーは、事のありさまを洗いざらい話した。

(・J・)「あなたはリーダーであるという自覚がない。
もう少し護衛をつけるなど自愛を…」

(・D・)「わかってるさ。しかしここ最近のシンジュクは何か様子がおかしかったんでな。
偵察でこれ以上メンバーを失うわけにはいかないだろう?」

アヤメとのデートを兼ねていたのはヒミツだ。

(・J・)「兵隊の代わりはいくらでもいる。リーダーの代わりはいない。忘れな」

(・D・)「そしたら次のリーダーはお前がなれ」

(・J・)「…ッ」

(・D・)「時折俺を射る視線、気付かないとでも思ったか?」

(・J・)「だからなんだというんだ!」

(・D・)「俺は別に責めているわけじゃない。親父がいなくなったら俺、俺がいなくなったらお前、だ。
イーは俺ほどじゃないが無茶をしすぎて後先を考えない。アヤメは戦闘スタイルからして精神的に不安定に陥る時がある。
今のうち、参謀候補でも見つけて叩き込んでおけよ」

(・J・)「…ランに薬をもらってくる」

(・D・)「あー…それとな。すまんがランにメディック隊の誰かに看護してもらうように頼んでもらえないか。」

(・J・)「リーダーをか。無防備な間は護衛でも何でも付けるつもりだ」

(;・D・)「いや…アヤメ…にだ。
シンジュクを脱出する際、テンタラフーを最大放出したらしい。
だからこうやって二人とも戻ってこれたんだがな」

(・J・)「了解した。幸いメディック隊は女子ばかりだから特に何もないだろう」

その後、もらった痛み止めと睡眠薬で強制的に眠りについた。

174 ◆MxHvQqijkA:2022/04/23(土) 01:49:55 ID:6f/N0vP.0
翌日。
幹部内で緊急会議が行われた。

(・J・)「悪い知らせといい知らせがある。どちらから聞きたい」

(;・D・)「ラン!アヤメは…」

睡眠薬でだるい体をマッスルドリンコで起こし、一番遅れてやってきた。

ラン ゚ -゚)「大丈夫よリーダー。魔力…精神力かしら?を使いすぎて軽い昏睡状態に陥っているだけだわ」

(・J・)「いい知らせがそれだ。悪い知らせは…」

















(・J・)「ゲリラ行為を行っていた自称メシアがオザワに敗北し、行方不明になった。
つい昨日の事だ。
ついでに言うと、私設警官の警備が強化されたとの情報がネズミからがあった」

ジャックは蔑みの視線をディーに向けた。
全て君のせいだよ、と言うように。

(;・E・)「はぁ!?マジかよブラザー!
例のメシア様はヒットアンドアウェイで持ちこたえてたって話じゃなかったのかよ!?」

(;・鼠・)「マジでやんすブラザー!」

各地から物資を買いあさってきたネズミが入ってくる。

(・J・)「ここは幹部以外立ち入り禁止だが?」

(・D・)「気にするな。情報の共有は大事だ」

(・J・)「何が起きたかは不明だが、事実だ。
オザワが無敵の悪魔を手に入れたという噂もある。
恐らく交渉、調停に赴いて返り討ちにあったのだろう」

175 ◆MxHvQqijkA:2022/04/23(土) 01:50:15 ID:6f/N0vP.0
(・J・)「顔は割れていないか、エンブリオンの存在、所在地は割れていないか、リーダー?
オザワが盤石の力をつけたということは、独裁と侵略が更に過激化するということだ。
他のコロニー、シェルターも各個撃破され屈服する事になるだろう」

(;・鼠・)「アヤメ姉の為に色々と回復薬を調達していたでやんすが、シナガワ大教会内は大混乱だったでやんす。」

(・D・)「その救世主に助けてもらって、すぐにしょけいライダーのバイクで逃げてきたから大丈夫だと…思う。
バイクも一目につかないところで捨てた」

(・J・)「思うだの確定事項でない事を話すな。あなたは私情でシンジュクに出入りし、捕まった。
メシアが健在なら協力を持ちかけてオザワ打倒も不可能ではなかったかもしれない」

(#・E・)「アニキだけ責めんなよテメー!それに確定じゃない事を話してんのはてめえもだろ」

(・J・)「自己弁護と作戦を寝るのは全く違う事だ」

(;・E・)「とにかくよ、メシア様を助けようぜ!
まだ俺らと同じくらいの女の子っていうじゃん!
オオツキロボで出撃してオザワを脅してさぁ…」

(・J・)「ネズミの情報では、メシアに便乗した反乱分子は見つかり次第処刑されているらしい。
超常的な力を持つ小娘をタダで生かしておく理由があると思うか。
恐らくは処刑されたかガイア教への媚の為に引き渡されたか」

(;・D・)「それに、オオツキロボで出撃してどうする。
用心深いオザワはシンジュク中枢のオフィスの中だ。
地下街を荒らしまわって罪もない犠牲者を出すのは容認できないよ。
それにオオツキロボの存在はあの巨大悪魔との戦闘で把握されていたらしい。
奴はそれを欲しがっていた。奴が何か罠を仕掛けていないとも限らない」

ラン ゚ -゚)つ「あ、ネズミお疲れ様。色々買ってきてくれたのね」

「駄目ですアヤメさん!まだ意識が…」

(綾;゚ -゚)「私が…行くわ…」

付き添いのメディックに引っ張られながら、強靭な意思で部屋に入ってくる。

(綾;゚ -゚)「オザワは私を愛人にしたがっていた。メシアさんがまだシンジュクに捕らわれているなら…
私の身柄と引き換えに…」

(;・D・)「やめろアヤメ!奴は確か幽鬼マンイーターを秘書代わりにしていただろう!
つまり…」

(・J・)「別に戦略としては構わないが」

(#・E・)「てっめ…」

殴りかかるイーをかわす。

176 ◆MxHvQqijkA:2022/04/23(土) 01:50:46 ID:6f/N0vP.0
(・J・)「はっきり言っておこうか。
アヤメのような能力者をマンイーターにして奴が嗜虐趣味を満たしたり、私設警察の慰安婦にするとは思えん。
屈服させるか洗脳なりして戦力増強に使うのが妥当だろう」

(;・D・)「何よりアヤメが定期的に念を注がなければオオツキロボは出力不足だ」

「アヤメさん、魔法瓶やおみくじが届きましたよ。これで魔力を整えつつお休みしましょう」

(・D・)「頼んだ」

メディックが袋に入った物資をネズミから受け取り、アヤメをゆっくりと立たせる。




(・E・)「そうだ!オオツキロボがバレちまってるなら、いっそ自爆させて…
っていくら俺でも色んな意味でやべーのはわかるわ」

(・J・)「だろうな。やっと脳細胞が活性化し始めたか」

自体が深刻悪化しすぎて段々とダメ学生の暇つぶしの雑談のようになってきている。

(・J・)「しばらくはシンジュクに行くのはやめておいた方が良いな。
ネズミには悪いが、足の速い物、交渉の上手い者を使い周囲で物資調達してもらおう」

(・D・)「しかし資金は…」

(・E・)「俺達の隊が悪魔狩りや発掘で稼ぐよ、アニキ!
見てくれよ、イッパシにそこそこの頭や悪魔を使えるようになったんだぜ」

スマホをタップして現れたその見慣れた姿。

(;・D・)「ウェンディゴ…!」

(・E・)「ビビらないでって。こいつは俺が合体でちゃんと作った味方だよ。
こいつがいる時に同族に話しかけると、センベツに?ってバカにならねえマッカやマグネタイトをくれる時があるんだ。
俺らの縄張りを荒らさないように話し合いもつけてくれるしな。
言っても聞かない馬鹿はぶちのめすしかねえけど!」

(・J・)「サツキがいないようだが」

(・E・)「どうせ仲魔パワーでグーグー寝てるんだろ。狙撃手は集中力がだから仕方ねえや。
アニキも眠そうだし解散!閉廷!また後で色々考えようぜ!」

各々の去り際に、イーに肩を叩かれ、何か渡される。

(・E・)「いつかウェンディゴと会話したらもらったんだ。元気出してくれよな。アヤメ姉へのプレゼントにもいいかも」

ターコイズ。美しい薄いブルーの天然石には、数々の素晴らしい石言葉があったのをまだ知る由はなかった。

177 ◆MxHvQqijkA:2022/04/23(土) 02:19:09 ID:6f/N0vP.0
訂正

(・E・)「どうせ仲魔パワーでグーグー寝てるんだろ。狙撃手は集中力が命だから仕方ねえや。
アニキも眠そうだし解散!閉廷!また後で色々考えようぜ!」

腰が痛い中で書いてみたらこんな話になりました。
頭イーになりますわほんと

178名無しさん:2022/04/23(土) 13:25:20 ID:tDCojOpY0
おつ

179名無しさん:2022/05/14(土) 00:14:21 ID:ZQ1xlkAY0
2048年、冬。
財源も少なくなってきた頃。

(・J・)「本気か?」

(・D・)「ああ。教徒に扮したネズミから聞いた。
三日後にメシア教本部から、シンジュクに物資輸送トラックが来るそうだ」

(・J・)「それを襲撃すると?リスクが高すぎる。
リーダー、私は反対だ」

(・D・)「アヤメにも散々反対されたよ。
護送にはテンプルナイトが乗っている可能性があるからってね」

ディーは苦笑いする。

(・J・)「では尚更反対だ」

(・E・)「俺は賛成だぜアニキ!上から目線のヤな奴らを合法にぶっ殺せるんならな!
最近ストレスたまってたし」

ラン #゚ -゚)「イー!」

(・E・)「いいじゃねえかラン!おめぇは知らねえだろうが
外に出て会えば、有無言わさず襲い掛かってくるか金を強請ってくるような奴らだぜ」

(・D・)「テンプルナイトとも交戦になるだろう。
シンジュクを出禁になった俺達は収入源がない。
今まで切り詰めてきたところだが、ジャガイモ等の収穫物だけでは幼い子供達の栄養に偏りが出る。
オオツキロボでの悪魔狩りも、オザワに目をつけられている以上は不可能だ」

ノ皐゚⊿゚)「この辺の遺物採掘も、やり尽くしちゃったしねぇ」

(綾゚ -゚)「私の念動力も、もしテンプルナイトが大勢だったら撃ち漏らす可能性があるわ。
殺さず資材だけ奪うにしてもデメリットが高いわ」

(;・鼠・)「…」

(・D・)「今まで散々悪魔を殺してきたし、なんなら売られた喧嘩とはいえガイア教徒を殺している。
全て、生きる為だ。
戦って殺す事が罪ならば、俺が全て背負おう。
もちろん抵抗感がある者は辞退しても構わない。」


結局幹部の多数決で決める事になった。

(・J・)ラン ゚ -゚)(綾゚ -゚)
(・E・)ノ皐゚⊿゚)

否定派が勝ったはずだったが、押し黙っていたネズミが手を挙げて拮抗した。

180名無しさん:2022/05/14(土) 03:34:47 ID:ZQ1xlkAY0
そこに不意に現れた南一佐が挙手したことで、作戦を決行することになった。

(・D・)「決まりだ。ジャックは隊の編成を、ネズミはすまないがまたメシア教に潜入してトラックの経路を調べてくれ」





ディーの自室にアヤメがいる。

(綾゚ -゚)「ねぇ、なんで強硬したんですか」

アヤメはジト目でディーを見る。

(・D・)「わかってるだろ。今年の冬は特に厳しい。
大きく稼いでおかなければ、餓死者も出る」

数年ぶりに久々に現れた南は一人だった。
当然、エンブリオンでも幹部でもない者の挙手にジャックは反発した。
リーダー権限で緊急で幹部にしたのはディーだ。

(・D・)「それに、オザワはいずれ打倒しなければならないのかもしれない。
もし運ばれてくる物資がオザワへの貢物だとしたら、猶更な。
推測に過ぎないが」

(綾゚ -゚)「きっと戦死者がいっぱい出るわ」

(・D・)俺一人でヤツを暗殺するさ。
今回の作戦だって俺が先頭に立って戦う。」

(綾゚ -゚)「そういう事じゃない。あなたは気付いていないかもしれないけれど
その背中にはもう、お師匠以上に命を抱え込んでいるのよ」

急にディーは声のトーンを落とした。

(・D・)(それにジャックは俺を妬んでリーダーの座を欲しがっている。
俺が万が一死ねば、俺以上に優れたリーダーになってくれるだろう。
そうしたら幹部みんなで力を合わせて、エンブリオンをやりくりするんだ)

(綾;゚ -゚)「そんな…なんとなく気付いていたけど…ジャックが…」

(・D・)「親父もどっか行ったまま帰ってこないからな。
正直言うと、ちょっと疲れた。
親父もこんな気分だったのかな」





どっと寝落ちし、アヤメが添い寝をする。

181名無しさん:2022/05/14(土) 12:48:14 ID:ZQ1xlkAY0
三日間の間で、各々の幹部はできる事をやった。

イーは悪魔を片っ端から捕まえ合体し量産する。

ジャックはラン以外の各幹部を隊長に、戦える者を選定し編成していく。

アヤメはオオツキロボを増幅器にし悪霊や精霊たちと交信、霊力(魔力)を上げていった。

サツキはひたすら部下に近距離、遠距離でガンナーとして戦えるように鬼教官のようにしごいた。
南がなだめつつ、しごかれた者には優しくゆっくり指南する。




郊外のバラックに二人の男がいる。

(・D・)「本当にお久しぶりですね、南さん。いつかはありがとうございました。
でも、なんで急にここに?」

(・南・)「鬼子母神、鬼女ハリティーの伝説を知っているかな?」

(・D・)「?」

(・南・)「ハリティーは自分達の子供に、他人の子供の肉を与えていた悪鬼だったそうだ。
釈迦というとても偉い神様に見咎められてね、百人いるうちの子供の一人を隠されてしまったんだ。
百人いるうちのたった一人の末子がいなくなっただけで、彼女はひどく悲しんだ。
しかし哀しいか、人肉を好む性質は変わる事がない。」

(・南・)「ハリティーは飢えに耐えながら、代わりの食べ物を模索し始めた。
やがて人肉に似た味がするザクロという果実を食べるようにし、釈迦に末ッ子を返してくれるように懇願した。
そして無事に末っ子を返してもらい、今までしてきた事の謝罪として安産と育児を司る地母神となったんだ。
いつか一緒に鬼子母神社に行ってみないか?」

(・D・)「…何が言いたいんですか?」

(・南・)「今のエンブリオンと状況が似ていると思わないかね?
100人以上の大所帯、他人に害を負わせても食わせていかなければいけない状況。」

(・D・)「…確かに」

(・南・)「戦いでは流血を避ける事は出来ない。
戦いというものはいつもそんなものだ。綺麗なものなどありはしない。
だが、血を流しすぎるのはよくない。いかに合理的に目的を達成できたとしてもだ。
あまり無理をするな。私が君と共に戦おう。

無言で二人は手を握りあった。

(;・D・)「南さん、力、強い」

(;・南・)「すまん、つい」

182 ◆MxHvQqijkA:2022/05/14(土) 16:35:59 ID:ZQ1xlkAY0
いよいよ前日の朝。

(・鼠・)「リーダー、経路がわかったでやんす。
シナガワの本部から西を突っ切って、シロガネダイ、シブヤを経由してシンジュクに飛ばすようでやんす」

(・J・)「なに?ギンザ方面からではないのか?」

珍しくジャックが虚を突かれる。

(・D・)「ギンザ方面からでは連絡通路を通れるトラックのサイズは限られる。
それに確か、ロッポンギを通るには結界が張られているはず。
だから足止めを食ってしまうんだろう」

(・E・)「でもよぉ、シロガネダイの向こうは海だらけだろ。
どうやってトラックで進むつもりなんだよ?」

(綾゚ -゚)「強力な念動力者でもなければ、トラックを浮かせるのは無理ね」

(・鼠・)「それが、詳細は不明だけど新型の耐水マシンを使ってトラックを持ち上げて
そこから上陸するらしいでやんすよ」

(・D・)「…敵はテンプルナイトだけではないということか。出発時間は?」

(・鼠・)「深夜零時、らしいでやんすよ。予定通りトラックは三台」

(・J・)「では作戦を公表する。
イーの第一部隊が先頭を務め、サツキの第二部隊が狙撃で援護、アヤメの第三部隊が撹乱。
…そしてリーダーと南一佐が伏兵。異存は」

無言の沈黙。

(・D・)「、ということでいいな。各自参加メンバーは11時まで眠っていてくれ」

要点だけ話し合って打ち合わせは終了した。
二人だけ残る。









(・D・)「俺だけでやれますかね?南さんの足を引っ張ったりしません?」

(・南・)「あくまで不測の事態が起こった時だけの役割だ。気を負う事はない。
エンブリオンのリーダー、ディーよ」

南はごつい手で笑いながら肩を抱く。

183 ◆MxHvQqijkA:2022/05/14(土) 17:03:45 ID:ZQ1xlkAY0
(・J・)『…標的がシロガネダイに上陸したのを発見。
例のマシン電源を切って置いていくようだ。
確認できるテンプルナイトは三人』

ジャックが瓦礫の中でスコープを使い、斥候を務める。
戦闘メンバーは隊ごとに散り散りになり、シンジュク地区手前の朽ち果てた巨大道路の上で待ち伏せする。

(・D・)『了解した。ジャックはトラック群が離れ次第、マシンをハッキングできるか試してみてくれ』

(・南・)「流石だな。リーダーが板についてきている」

(・D・)「やめてくださいよ。まだまだ親父には及ばない」

照れ隠しにヘルメットを掻く。

(・J・)『トラックが出発するようだ。シブヤに寄る様子はない』

(・D・)『よほど時間厳守のようだな。奴さん達は。
シナガワから送られてきているテンプルナイトだ、ここらのとはきっと腕が違う。
抜かるなよ!』



















目標が通り過ぎようとした時、サツキ隊の銃弾が雨あられと降り注ぐ。
タイヤを撃ち抜かないように。

「なんだ!?」

「敵襲だ!」

先頭の車から2人のテンプルナイトが出てくる。
盾を貫通し、狙撃を受けて倒れる。

ノ皐;゚⊿゚)「やった!」

184 ◆MxHvQqijkA:2022/05/14(土) 22:35:33 ID:ZQ1xlkAY0
暗闇で獣がごちる。

(・<_,・。)「暇じゃのう。早く人を石化させたいわい」

(・D・)「今日は殺人をしに来たわけじゃないんだ」

止まった一台目に後続の二台目、三台目が追突する。
二台目まではそこそこいいトラックのようだったが、三台目だけはやけに粗末だ。
ジャンク屋の見習いが時たま乗ってくるリヤカーのような軽トラだ。

(・D・)(あれには大したものは積んでいないだろうな)



話しておかなければならない。
まだシンジュクの警戒態勢がもっと厳重になる前の話だ。
面が割れるデメリットを避け、買い出しは一人で行く事になっていた。

地下街の隅で泣いている少年がいた。
手足はヒョロヒョロで、戦闘には向いていなさそうだ。

(・E・)「どうしたよ、オイ。」

「…」

(・E・)「泣いてちゃわかんねえって」

少年によると、両親はウエノ出身というだけでガイア教徒扱いされ過激派のテンプルナイトによって殺された。
その時暮らしていたのはシブヤだった。
彼は悪魔からの襲撃から逃げのび、シンジュクに逃げ込んだのはいいが今度はシンジュクから出られなくなり
古い住民や私設警官にいじめられる日々だという。

(:-E-)「頼むおやっさん!古い付き合いだと思ってこいつを雇ってくれねえか!」

いつも短気で喧嘩っ早いイーが、いくら馬鹿にされてもジャンク屋の親父に頭を擦り付けて頼み込んだ。

「だからなんで俺がそいつを引き取らなきゃいけねえんだ。お前らのところでやれよ」

(;・E・)「こいつの体じゃ戦闘員には向いてねえ!かといってここで浮浪児のままいたら私設警官に殴り殺されちまう!
こいつ足だけは早いみたいなんだ!なんか使えねえか!?」

「…まぁ最近ここも出入りの規制が激しいしな。お前らも売り買いに来るのがめんどくせえだろう。
うちには跡継ぎのガキもいねえな。俺の子って事にしといて見習いで雇ってやる。
そこのおめえ。おめえはどうすんだ、おめえの話だぞ。」

少年は涙と鼻水に塗れた顔を上げる。目には光が宿っていた。

「お願いします。イーさんも、ありがとうございます!!」

ブンブンと手を握られ振られる。イーは帰ったらジャックにしこたま怒られた。

185 ◆MxHvQqijkA:2022/05/14(土) 23:02:43 ID:ZQ1xlkAY0
(#・E・)「お前らはそこで見てろ!うっだらあああああ!」

部下を残し道路から飛び降り、積み荷を確認しに出てきたテンプルナイト達に飛び込む。

ノ皐#゚⊿゚)『イー!俺が撃ちにくいだろうが!』



「ガイアの手の者か?」

体格のいいテンプルナイトが問う。
しかし相対する相手がまだ子供だと見て取り、驚愕する。

「隊長!」

他のテンプルナイトが、イーのアタックナイフによる攻撃を弾く。
それが自分の腹に向けられたものだと察し、ハッとした隊長が指示を出す。

「総員、私に続け!」

第二車両の荷台から次々とテンプルナイトが押し寄せてくる。

「子供だろうと容赦はせんぞ!」

(・E・)「容赦されるいわれはねえぜ!」

チェーンソーを振りかざし、プラズマソードをがりがりと削っていく。
左右からも、テンプルナイトが迫ってくる。




「なんだ、足が…!」

仕掛けておいたマハブフストーンが発動し、トラバサミのようにテンプルナイト達の足を止める。
プラズマソードを折られた騎士はそのまま首筋を斬られ、血の噴水を出して倒れ込む。

イーが後退すると、サツキ達の狙撃がテンプルナイト達の頭を撃ち抜く。
隊長は咄嗟に、トラックの脇について逃れる。

三台目の布をかけただけの粗末な荷台から、数名のテンプルナイトが飛び出してくる。

(綾゚ -゚)「テンタラフー!」

後方からアヤメが悪霊の力を解放し、たちまち聖堂騎士団達は錯乱する。
イーは隊長格を引きずり出し、胸にナイフを突き立てる。

(・E・)「ケッ。」

レ  -)「…サマナーか」

186 ◆MxHvQqijkA:2022/05/14(土) 23:39:22 ID:ZQ1xlkAY0
荷台から一人の男が躍り出る。
テンプルナイトとはまた異質な雰囲気で、全身にレインコートのようなものを被っていて顔が見えない

レ  -)「貴様ら、誰の命令で動いている?
ダークサマナーに雇われたか?」

(・E・)「誰だかしらねーが、不意打ちとはいい度胸じゃねえか。
次はおめーの番だ、死んでもらうぜッ!!」

レ  -)「…まだ幼いようだな。
過ぎた野心は身を亡ぼすぞ」

(#・E・)「やかましいんだよぉォッ!
この状況が分かってんのか、タコ!」

レ  -)「…タコは嫌いだな」

(・E・)「調子乗りやがって!」

素早くスマホから氷結系の悪魔を召喚する。
地霊ブッカブー、邪鬼ウェンディゴだ。

(・E・)ニア「やれッ!こいつを殺っちまえッ!」

氷結が降り注ぐ前に、二体の悪魔は光を受けて消滅した。

(;・E・)「何が起こったってんだ!?
うわああああああ!」

闇雲にチェーンソーで斬りかかる。
単調な動きを見切られ、半身で避けられる。

レ  -)「動揺して攻撃を外すなど、戦士として失格だ。
悪魔を使役するもの…処刑す」

イーに向けた十字架の銃剣を、宙に振りかざす。
サツキ隊の一斉射撃を一振りで防御した。

『BURST MODE』

そのまま道路上を撃つ。悲鳴が上がる。

(;・E・)『サツキッ!この野郎!』

電源が切れかけのチェーンソーを振りかぶる。
脚底で止められ、そのまま踏まれて折られる。

レ  -)「手詰まりだ。死ね」

突如、黒い影が姿を現した。

187 ◆MxHvQqijkA:2022/05/15(日) 00:08:39 ID:Pq3GbDxY0
マンティコアに騎乗したディーと南だった。

(・<_,・。)「ひよっこが!早く逃げんかい!」

男との間に割って入り、疾風の速さで尻尾を振りかざしイーを一台目の運転席に乗せる。

(・D・)『イーはそれに乗って逃げろ。俺がこいつを引き留める』

(;・E・)『すまねえアニキ。どけっ!』

助手席のテンプルナイトを突き飛ばし、エンジンをかける。
マンティコアが勝手にスマホに戻る。

(・D・)「なにっ!?」

『奴はごっどさまなぁじゃ。悪魔を強制的に魔界にレッツゴー!させてしまう厄介な能力持ちじゃ』

(・D・)「ゴッド…サマナー…?」

レ  -)「貴様はゴッドサマナーの存在を知っているようだな。
だがそいつは逃がすか!」

銃剣で一台目のガソリンタンクを狙い撃つ。
それが別の銃弾に阻止された。

レ  -)「やるな…」

(・南・)つ「私の存在を忘れてもらっては困るな。
あまり無益な血を流させたくない。これ以上はお互い痛み分けの撤退にしないか」

レ  -)「何をいまさら。襲ってきたのlはそっちだろうが。
それに貴様からも悪魔の臭いがするぞ」

十字架から光る剣を伸ばし、超速で斬りかかる。

(・D・)つ「南さんッ!ゼットセイバー!」

咄嗟に秘剣を出し、受け止める。

(・南・)「ディーくん」

南を横目で見ながら言う。

(・D・)「あなたは年上で経験豊富な戦士だが、エンブリオン幹部である以上は俺が守ります。
今のうちに他のトラックを奪取して逃げてください」

(・D・)『こちらディー。敵の大将がおいでなすった。総員退避しろ。
運転できる者はトラックを奪って逃げてくれ』

188 ◆MxHvQqijkA:2022/05/15(日) 00:28:30 ID:Pq3GbDxY0
レ  -)「フン、気を取られているとこいつが頭を切り裂くぞ」

光刃がジリジリと迫る。
今受けているのが普通の鉄製の剣ならば、とっくに焼き切られていただろう。

(;・D・)「くっ…!」

レ  -)「あんなゴミクズどもを逃がして殉教でもするつもりか!?
道を違えなければ貴様も筋のいいゴッドサマナーになれていただろうに」

思わず力が入る。

(・D・)「あんたは知らないかも知れないが、みんな親から捨てられたり悪魔に住処を奪われた子供達だ。
癖のある奴ばかりだが、俺達はみんな一緒に生死をかけてここまで生きて来たんだ!!!」






(#・D・)「それ以上、何か言うなら許さない!!!」

一瞬だがゼットセイバーの力が勝った。
数歩だけ相手を押し戻す。

レ  -)「フン、性質の似た剣か。
つまりはエネルギーが切れた時点で生死が分かたれることになるな」

男は怯まず構えなおす。

「テンタラフー!」

レ  -)「精神干渉か。残念だが俺には効かん」

片手で手榴弾を取り出し、地面に放る。

(綾;゚ -゚)「キャ!」

(・D・)『アヤメも早く逃げろ!』

(綾゚ -゚)『でも…ディーを置いていけないよ!』

レ  -)「ゴミクズ同士の庇いあいか。実に美しいことだ。
下らん感傷ごと順番に焼き斬り殺してやるから、首を洗って待っていろ」

(・J・)『リーダー、ここで全員撤退させるのは愚策だ。
相手はかなりのつわものなのだろう。あなたが死ぬぞ』

(;・D・)『俺が死んで皆を生かせるなら、それでいい』

189 ◆MxHvQqijkA:2022/05/15(日) 00:47:41 ID:Pq3GbDxY0
(・E・)「よし!かかった!」

イーは全速力でUターンし南方向に飛ばす。

レ  -)「おっと」

(;・D・)「うおっ!」

二人の間にトラックが突っ込んでくる。
危ういところだったが、お互いが離れ鍔競り合いの膠着状態は解ける。

レ  -)「仕切り直しか。だがそちらはいつまで持つかな」

(;・D・)「…」

見ると、棒状の剣が消えかかっている。
充電は十分したはずだ。この男との闘いでかなり消耗してしまったという事か。
手書きの説明書によると剣の出力は、ロー、ミディアム、ハイ、アルティメットの4段階に調整が可能らしい。
今がアルティメットなので、出力を下げれば長持ちはするだろうが男の剣を受けられるかが怪しい。

「ウオオオオオ!」

物陰から誰かが飛び出し、拳を突き出した。

(・南・)「私はこの子達を何年も見守ってきた!
侮辱するなら、私が許さん!」

余裕ありげにガードの体制を取るが、そのまま吹き飛ばされ宙に浮く。

レ  -)「…チッ!先の小僧との戦いで意外と体力を消耗してしまったか!」

ジェットブーツで足を地面に留める。
素早く回り込んだ南に羽交い絞めにされ、身体を締め上げられる。

レ  -)「わざわざ敵の陣地に入るとは、バカめ」

銃剣を後ろに向け撃つ。
南の拘束が緩まる。

更にジェットブーツの促進による蹴りが顔面に入る。

(;-南-)「ぐっ」

レ  -)「闇の中で、老いさらばえろ」

完全に拘束を解かれ、ガントレットで腹筋に殴りを入れる。
何かが折れる嫌な音が聞こえる。
追い打ちで光弾を連射され、トラックの向こうに吹き飛ばされる。

(;・D・)「南さんッ!」

190 ◆MxHvQqijkA:2022/05/15(日) 01:03:01 ID:Pq3GbDxY0
怒りのあまり男のレインコートの胸倉を掴む。

(・D・)「許さねえ」

レ  -)「ほお」

(・D・)「テメエだけは許さねえ」

レ  -)「オイオイ、悪魔も召喚できないひ弱なサマナーに何ができる」




その時、物陰から巨体が現れた。
https://i.imgur.com/S2Vi4Pt.jpg

ごつい鎧を身に纏った恐ろしくも芸術的な姿の悪魔は、男を張り倒す。

レ  -)「なに!?」

いきなり現れた高位悪魔の出現に、男も狼狽したようだ,。

(・D・)『今がチャンスだ!アヤメ!二号に乗り込め!』

(綾゚ -゚)『…わかった!ディーも生きて帰ってきてね!』

アヤメは素早く乗り込み、必死にエンジンをかける。

レ  -)「させる…ガッ!」

悪魔に連続で張り倒され、男は動くことができない。

(増・д・)「ウオオオオオ!」

三号車を持ち上げ、男に投げつけ下敷きにする。

レ  -)「クソっ」

今がチャンスだ。

(;・D・)「うおおおおお!」

銃であからさまに見えているをエンジンタンクの蓋を撃つ。






三号は爆発、大炎上。

191 ◆MxHvQqijkA:2022/05/15(日) 01:51:54 ID:Pq3GbDxY0
アヤメの二号車も無事にエンジンがかかったようだ。
炎を避け、フラフラしながら走り去る。
いつの間にか、加勢してくれた悪魔はいなくなっている。





(;D;)「やったか…しかし…南さん…すまな…」





倒れ込むディーを、誰かが支える。







(・南・)「大丈夫かね、ディー君」

(・D・)「南さん!?生きて…」

く(;・南・)「面目ない。あの男にやられて気を失っていた。
さっきの爆発で目を覚ました。
軍人失格だな」

苦笑いする

(・南・)「で、あの男は?」

大炎上する軽トラックを指さす。

(・南・)「そうか…できれば殺したくはなかったが…
あれだけの強敵だったのだ、手加減などできなかった。
自分を責める必要はないぞ、リーダー」

(・D・)「恥ずかしいですが、エンブリオンの仲間達を馬鹿にされて頭に血が昇ってしまいました。
俺の方が力が強かったら、命乞いされても殺していたかもしれません」

(・南・)「それは君が真に仲間を思っているという証拠だ。
オザワなど見てみろ。人も悪魔も使い捨てじゃないか。
誇っていいんだ、その怒りは」

(・D・)「とりあえず、帰りましょう。
みんな怪我がないといいんですが」

192 ◆MxHvQqijkA:2022/05/15(日) 20:52:23 ID:Pq3GbDxY0
(綾; -;)「ディー!」

気が付くと医療室のベッドの上。
頭には包帯が巻かれている。

(・D・)「泣きすぎだよ、アヤメ」

飛びついてくるアヤメの頭をなでてなだめる。

(綾; -;)「だって夜明けから三日間も寝てたのよ!?
もうこのまま目を覚まさないかもって…」

(;・D・)「三日!?みんなは無事なのか!」

ラン ゚ -゚)「おはようございます。
焦って逃げて転んで怪我した子とかはいるけど、大事に至ってはいないわ。」

(・D・)「それはよかった」

(;・E・人)「すまねえアニキ!俺のせいだ!」

(・D・)「藪から棒にどうした、イー」

上体を起こして出迎える。

(;・E・)「あの変なマント野郎の代わりに、アニキを吹き飛ばしちまったんだ!」

ラン;゚ -゚)「南さんがあなたを担いで蒼白で帰ってきた時はビックリしたわ。
医療班のみんなの仲魔で回復魔法をかけたんだけど…それでも目を覚まさなくて」

(:E;)「すまねえ…すまねえ…」

土下座して頭をこすり合わせる。

(・D・)「ラン、医療班の仲魔にも攻撃特化の仲魔を一体は入れておけ。
痕跡は恐らく消してあると思うが、メシア教の報復がここまで来るかもしれないかな。
今回の詫びに、イーに合体で適任な仲魔を見繕ってもらおうか」

(・E・)「! やるよアニキ!何でもやる!」

途端に顔を上げて喜ぶ。やはりちょっとアホでいい奴だ。





ラン ゚ -゚)「さあさ、リーダーは怪我人なんだから出てった出てった」

ランが皆を追い出す。

193 ◆MxHvQqijkA:2022/05/15(日) 21:10:19 ID:Pq3GbDxY0
ラン ゚ -゚)「さてリーダー。聞きたい事があるのだけれど」

(・D・)「何かな?」

ラン ゚ -゚)「隠さずに話して。もしかして、帰ってくる途中で頭痛で気を失ったんじゃないかしら」

(・D・)「御明察。よくわかったな」

ラン ゚ -゚)「医学書で調べたんだけどね、車の衝突事故って普通はひどい後遺症が残るものなの。
脳が揺れる脳震盪、脳挫傷、体中が後から痛くなってくるむち打ち症とかね。」

(・D・)「あの男との戦いに夢中で覚えていないが、俺がイーのトラックに撥ねられたっていうのは本当らしいな。
よく死なずに済んだもんだ」

苦笑いして肩をすくめる。





ラン ゚ -゚)「それでね…提案なんだけど…
しばらく休んではどうかしら。
アヤメ姉の報告によると、以前から何日も動いては何日も寝るというのを繰り返していたというし。」

(・D・)「嬉しい申し出だが、断る」

ラン#゚ -゚)「リーダー!」

(・D・)「まぁそう怒るな。あの襲撃がうまくいったかどうか、確かめておく必要があるしな」

ベッドから完全に体を起こし、よろよろと立つ。

ラン ゚ -゚)「どこへ行くの?」

(・D・)「お前の兄貴のところさ。強奪品がどれだけか確かめておきたい。
それと一番強い痛み止めをくれるか」

ラン ゚ -゚)「…」

何も言わずに、瓶をそのまま手渡してきた。
そして数粒飲み、瓶はポケットに入れた。








(・D・)「悪いがこの事は誰にもナイショにしてくれな。」

194 ◆MxHvQqijkA:2022/05/15(日) 21:32:55 ID:Pq3GbDxY0
(・D・)「ジャックか」

(・月・)「おお、久しぶりだな」

(・D・)「科学的根拠爺さん」

(・J・)「リーダー。無事で何よりだ」

振り返るジャック。

(・D・)「何をしているんだ?」

(・J・)「先日のマシンの解析を頼んでいる。
残念だが私には最新鋭のマシンを操れなかったからな。
解体して持って帰ってきた」

(・月・)「時間はかかるが、いい仕様にして組み立てなおすことはできるぞ!
出来ない科学的根拠はないに等しい!」






(・D・)「ジャック。トラックと積み荷は」

(・J・)「あそこに」

顎で指す方向の二台のトラックを調べる。
空荷だ。

(・J・)「どういうことだ、と聞かれる前に言っておこう。
リーダーが昏睡している間、私なりに考えた。
荷物をそのままにして、万が一メシア教に嗅ぎつけられても困る。
マッカは貯蔵庫、武器類は武器庫、弾薬は最低限のものを残してジャンク屋の使いに売った」

(・D・)「マッカの額は?」

(・J・)「約50万マッカだった。
正直、リーダーをチップにしての賭けにしては期待外れだ」

(・D・)「でもこれで冬はどうにか乗り切れるな。
引き続き、できる事を頼む」

次は武器庫で手入れをしているサツキに会う。

ノ皐゚⊿゚)「おーリーダー!生きてたかー!」

(・D・)「お前もな。無事だったか」

195 ◆MxHvQqijkA:2022/05/15(日) 21:47:44 ID:Pq3GbDxY0
ノ皐゚⊿゚)「あの変な野郎に撃たれたけど、ビビって身を隠してどうにか生きてたよ!
それよかリーダー!体の方は大丈夫なのか!」

(・D・)「三日も寝てたらしいからな。ビンビンだ」

ノ皐*゚⊿゚)「あんなバケモノみたいに素早いヤローに引けを取らないなんて、やっぱすげーよ!」

尊敬の眼差しで見つめてくる。
それがディーには痛かった.。

(・D・)「奴の死体は確認できたか?」

一番気がかりだったのはそれだ。

ノ皐゚⊿゚)「手下の連中と一緒に確認に行ったんだけどさぁ、焼けた死体は発見できなかったよ。
まぁトラックの下敷きになって爆発大炎上に巻き込まれたんだ、骨も残ってねえさ!」

男らしく豪快に笑う。
女なのだが。






夕食。
作戦成功祝いに、久々のストーンカ肉のステーキが出た。

(;・D・)(ぐっ…)

飲み込もうとするが、強い嘔吐感が勝った。
急いで水を飲んで誤魔化す。

ラン ;゚ -゚)「リーダー!?」

(・E・)「サツキの調理担当分が当たったんじゃねえの?」

ノ皐#゚⊿゚)「ンだとこら!ギガスマッシャーの巣にするぞ!」

(;・D・)「大丈夫だ。寝すぎたせいか食欲がないだけだ」

バラすなよ、と目くばせをする。

ラン ゚ -゚)「…そうね。数日間絶食状態の人って急に固形物を胃に入れるとショック状態を起こすの。
後で点滴で栄養を取りましょう」

古米に手を付けず、ステーキは9割残して去る。

(綾゚ -゚)「私が食べるわ。命に失礼だもの」

196 ◆MxHvQqijkA:2022/05/15(日) 22:02:27 ID:Pq3GbDxY0
その後数か月、日を挟みつつリハビリとして悪魔狩りによく出かけた。
だが眩暈がして銃の昇順を外したり、剣戟の途中で吐き気を催したりした。

魔獣ストーンカの突進を止め、尾で串刺しにしたマンティコアが言う。

(・<_,・。)「いい加減に公表したらどうかのう、ひよっこよ。
お前は前任のディー程じゃないがよく頑張ったと思うとるよ」

(;・D・)「ハァ…あ…お前からそんな事…言って…もらえる…なんてな」





頼りがいのある妖獣の背に乗り、帰還する。






ラン ゚ -゚)「ちょっと来て」

砦で待っていたランに、病室に連れて行かれる。

ラン ゚ -゚)「幹部ではなく主治医として言います。休養してください」

(・D・)「それはダメだ」

ラン ゚ -゚)「戦闘に支障も出てるんでしょう?今の状態じゃ無理よ。
どうにか腕のいい医者を…」

(・D・)「それもダメだ。エンブリオンの資金を個人的に使う事は許されない。
親父だって同じ立場だったらそうする」

頭がモヤモヤする。
兄貴の葉巻を幼い頃に吸わせてもらった時のような。

ラン - --)「そうね…そうやって意地になるところがお師匠そっくりよ。
私だってお師匠を尊敬している。でも、今会えたら言いたい事があるの。
当時の私達は非力だったかもしれない。でも無力じゃない。
皆の力を頼ってほしかった。なんで勝手に出て行っちゃったの。
リーダーだからって自分だけで全部背負い込んで、帰らぬ事になってしまうなんて…」

ラン ゚ -゚)「そんなところまで真似しないでね。私、そんなところまでは尊敬できない」

(・D・)「わかった。死なない程度に頑張るよ」


「そうだぜ!」

197 ◆MxHvQqijkA:2022/05/15(日) 22:17:31 ID:Pq3GbDxY0
病室の入口には、幹部の面々が立っていた。

(・D・)「お前達」

ラン ゚ -゚)「ごめんなさい、リーダー。でももうバラしちゃった」

下を出して少し笑う。

(・D・)「何故だ…!何故だ…!」

(綾゚;-;)「ディーは私達の事、信用できない?
それとも自分を信用できないの?」

アヤメに抱きつかれる。言葉が出ない。

(綾゚ -゚)「じゃあ、ディーを信じる私を信じて。
私…ディーよりディーの事知ってるから。」

(・E・)「そうだぜ!俺達が十年来の付き合いなんだぜ!」

(・J・)「数々の挙動の不振さ、気付いていないとでも思ったか」

ノ皐゚⊿゚)「俺とネズミは新参だけどよぉ、だいぶ力はついてきたはずだぜ。
俺達も信用しちゃくれねえのかい?」

>…

(-D-)つ「観念した。そろそろ限界か…」

アヤメに抱かれるディーの手から灰がこぼれる。

(綾;゚ -゚)「ディー!?」

















(;・D・)「俺もやっぱり失敗作だったというわけか」

198 ◆MxHvQqijkA:2022/05/15(日) 22:47:59 ID:Pq3GbDxY0
(;・J・)「失敗作?どういうことだ?」

(・D・)「…俺はずっと前に死んでるんだ。
親父に拾われる前の、シンジュクで浮浪児やってる頃にな」

一同が唖然として沈黙する。

(・D・)「アヤメ達と会うずっと昔の頃だ。
親から捨てられ、訳もわからず外に出てとっこうたい達にリンチされ殺された。」

(・D・)「そして邪教の館で、禁断の死体合体の素材にされた。」

(;・E・)「死体合体だぁ!?そんなの聞いた事ねえぞ!」

(・D・)「今考えると、自我のない従順な悪魔兵士でも作りたかったんだろう。
だが実際は失敗だった。俺と似たように殺された仲間は…魔法陣から変な肉塊として出てきた
俺は…合体の儀式の最中に失敗しシリンダーから弾き飛ばされ、息は吹き返した。息はな
覚えているのはそこまでだ」

ノ皐;゚⊿゚)「リーダーは悪魔…ってこと?」

(・D・)「いや、多分合体が失敗に終わったせいで悪魔のデメリット…灰になる事だけ引き継がれたんだろう。
悪魔も瀕死体だったからな」

改めて自分の掌を見る。
意識するほど灰化が進んでいるようで、思わず目を逸らす。


(綾゚ -゚)「お願い。ディーは一度リーダーを降りて、ゆっくり休んで。
私達幹部が協力してエンブリオンを運営するわ」

(・E・)「そうだ!俺とサツキが悪魔を狩って稼ぐぜ!」

(・J・)「…数か月前の襲撃が功を奏したか、冬を凌いでも貯蓄は十分にある。
無理せず悪魔狩りと交易をしていれば、食うには困らないだろう」

(・D・)「みんな…すまん」

ラン ゚ -゚)「きっと諸々の後遺症の治療法も見つかるわ。
いや、見つけてみせるから!」



(・J・)「とりあえずしばらくはアヤメはリーダー、いやディーのそばにいてやってくれ。
精神安定剤がまずは必要だろう」




アヤメは小さくうなずき、弱弱しいディーをおんぶした。

199 ◆MxHvQqijkA:2022/05/21(土) 21:33:04 ID:qK5o..R.0
2049年、某日。
うだるような熱さは、調子の悪さによるものか。
自室のベッドで安静にしているディーは思った。








時々、アヤメがディーをおぶって散歩デートに出かけた。

(綾゚ -゚)「雪は嫌い」

(・D・)「なんで?」

(綾゚ -゚)「両親が焼け死んだのが、雪の日だったから」


アヤメは雪が嫌いだった。
アヤメはシンジュク生まれでなく、移民のようなものだった。

六回目までは楽しかった。
七回目のクリスマスの日、アヤメは両親を失った。

あの日、アヤメは両親と一緒に決して質はよくはない食材を買いに行った時
暴徒達による放火に巻き込まれた。
両親は建物からアヤメを突き飛ばし、代わりに悪魔の炎に巻かれた。
https://i.imgur.com/gvb91SN.jpg

メシア教の上級戦士達が駆けつけ、多大な被害を出しながらも悪魔と暴徒達は討伐された。

真っ黒に焼け爛れたお父さん、お母さんの死体。
いつの間にか雪が降り始めていた。
焼死体の発する熱が雪を解かす。

それは、両親がまだ生きているかのように感じられた。











そしてどこかの業者に引き取られ、シンジュクにぶち込まれるに至る。

200 ◆MxHvQqijkA:2022/05/21(土) 21:52:50 ID:qK5o..R.0
あの話はだいぶ前だったような気がするから、今は冬は終わっているのだろう。
ディーは正反対に雪が好きだった。

雪に当たると、徐々に灰化していく自分の身体が癒されていく気がした。
だから雪の日の夜中には、こっそりフラフラになりながらも浴びに行った。

護衛は相棒がついていてくれる。



(・<_,・。)「ワシは氷結には強くないんじゃがのお」

(-D・)「すまんな。もう少し寝かせてくれ」

獣の背に乗ったまま、まどろみに身を任せる。
ああ、心地よい。
リーダーでなくなった事でディーが気付かないうちにつけていた枷と
生きる気力が同時に失われれていっていた。

(・<_,・。)「ひやっこくて気持ちいいからって雪は食うなよ。
ひよっこにはわからんと思うが、放射能が含まれてるかもしれんからの。
死にたければやるがいい」

(D)「こんな何もできない体だが、まだ死ねないよ。
アヤメを残しては」



最近は立つのも億劫だ。
他の皆は諦めてしまったが、ディーだけは親父の行方を探っている。

はー、と溜息をつきながら、マンティコアは二日に一度はそこら中を走り回る。
人間に狩られかけたことも何度もあったという。
しかし上級の妖獣、全て返り討ちだ。

召喚師が稼がないので、帰りは悪魔を適当に狩ってマグネタイトを補充している。
時々悪魔ハンターを斃した時に装備を持ち帰り、エンブリオンの財源とする。
組織の要である悪魔が独断で行動しているのも、それで言い訳はつく。







今日も頭が割れるようだ。
その時、大声が響いた。


ラン;゚ -゚)「どいてどいて!怪我人よ!」

201 ◆MxHvQqijkA:2022/05/21(土) 22:01:33 ID:qK5o..R.0
外を覗くと、メガネの男が担架に運ばれていく。

ディーは重い腰を上げる。
誰か新人が悪魔にやられたのか。

鬼の事件以来、ディーは自分以外のメンバーが死ぬのは心底イヤだった。
だからあの謎の男との戦いでも、自分だけ残った。









(・D・)「よっ。薬を貰いに来た」

ラン ゚ -゚)「リーダー。ごめんなさい、ちょっと待ってね。
アヤメ姉が外で怪我人を見つけてきたの」

ランは背を向けたまま答える。

「動かないでください!」

(□A□)「余計な事をするなよ。かすり傷だ」

迷彩服を着た男は迷惑そうに言う。
本当にかすり傷程度のようだ。

(綾;゚ -゚)「でもあんな数の悪魔相手に無事なわけがありません」


















(□A□)「お前ら脆弱と一緒にするな。俺はな、生まれた時代が違うんだよ」


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