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ξ゚⊿゚)ξHappy Birthdayのようです
1
:
◆GUYKH.r4.s
:2021/10/23(土) 15:03:10 ID:ycgnVYww0
「夜はね、あちらさんの時間。」
「だから夜に出かけちゃいけないよ。」
子供の頃に聞いたお伽話が、まさか本当だったなんて。
ξ゚⊿゚)ξHappy Birthdayのようです
https://imgur.com/a/4zhfM3r
.
135
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 20:38:28 ID:nI.Nq1es0
ξ;゚⊿゚)ξ(またんきよりも、もっと幼い…)
10歳頃だろうか?
灰色の髪に赤い目のその子は、シーツの真ん中に穴を開けてそこに頭を通したような、不格好な服を着ている。
その服は酷く汚れていて、黒い。
そして背中には、真っ黒な翼が生えている。
ξ;゚⊿゚)ξ(私以外の吸血鬼…本当にいたんだ…)
ξ;゚⊿゚)ξ「で…誰なのかしら…?」
从 ゚∀从「ハイン…。」
ξ;゚⊿゚)ξ「そう…。私は、ざくろよ。」
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、ここはハインのお家なの?」
从 ゚∀从「違う…。もっと遠くの山に住んでる。…吸血鬼の家を見付けたのがここだけだから、たまに来てる。」
ξ゚⊿゚)ξσ「…それでここに来ては、その手に持ってる手紙をポストに入れてるってワケね?」
从 ゚∀从「ああ。」
ξ゚⊿゚)ξ「私、会話が出来る吸血鬼に会うのは初めてなの。あなたは会った事ある?」
从 ゚∀从「…ずっと前に、ある。」
ξ゚⊿゚)ξ「その人は、良い吸血鬼だったの?」
从 ゚∀从「…」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、矢継ぎ早に聞き過ぎたわね。良かったらお茶にしない?」
そう言って私は、大きな布を地面に広げた。
ドクオと食べるつもりだったいつものプルーンクッキーとネトルティーを、ハインに渡した。
从 ゚∀从「……」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたの?」
从 ゚∀从「このクッキー、ずっと前に会った吸血鬼にも、もらった事がある。」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、そうなの?吸血鬼定番のレシピなのかしら。」
从 ゚∀从「分からない…。」
ξ゚⊿゚)ξ「そう…。」
136
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 20:42:24 ID:nI.Nq1es0
ξ゚⊿゚)ξ「ハインは、どうして吸血鬼になったの?それと今までは、どう過ごしてきたのかしら?」
私がそう聞くと、ハインはずっと前だからもう覚えていないと言った。そして気付けばこの習慣だけを繰り返していると。
ξ;゚⊿゚)ξ(…。私ももっと長く生きたら、こんな風になるのかしら…?)ゾッ
私はプルーンクッキーを頬張りながらその子を見つめた。
服の汚れは、どうやら獣の血のようだ。
その血が何度も重なった結果、黒っぽい服のように見えるのだろう。
ξ゚-゚)ξ(こんな小さな子でさえ…。私みたいに放り出されたのかしら?)
ξ゚⊿゚)ξ「……ねえ、ハインはどんなお肉が好き?兎?鹿?私は断然、鹿ね。」
从 ゚∀从「…クマとイノシシ。」
ξ;゚⊿゚)ξ)) ?!!
ξ;゚⊿゚)ξ「…クマなんて、どうやって狩るの…?」
从 ゚∀从「…?おなかが空いて、気付いたら食べてる。」
ξ;゚⊿゚)ξ!!??
素手で狩っているということだろうか。
私は罠猟しかした事がないので、驚いて一歩だけ後退った。
ξ;゚⊿゚)ξ(もし私が素手で獲物を捕まえられるとしたら…どういう状況かしら。)
そう想像すると、もしかしたらハインは限界までお腹が空く度に、本能で狩っているのかもしれない。
ξ゚⊿゚)ξ(そう考えると、人間ってトロくてお手頃なのかも…)
ξ;゚⊿゚)ξノシ(って、今ヤバい事考えてたわ。無し無しっ!!)
137
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 20:46:22 ID:nI.Nq1es0
この後ドクオの所にもう一度寄ろうと思っていたが、そんな事を考えた罪悪感から、今夜は止めておく事にした。
ξ゚⊿゚)ξ「順番が逆になっちゃったけど、ご飯も食べる?鹿肉サンドよ。」
从 ゚∀从「…いる。」
渡されたサンドイッチを見たハインは、不思議そうな顔でこちらを見つめた。
ξ゚ー゚)ξ「パンが白くて驚いたでしょ?普通の小麦じゃないから焼き色が付かないのよ。でも、美味しいわよ。」
そう言うと、ハインは大きな口を開けて食べだした。
从*゚~从 モグモグ
あっという間に何口も食べている。
頬をぷっくりと膨らませて、まるで栗鼠のようだ。
ξ*゚⊿゚)ξ(これは…ドクオとはまた違う趣があるわね…。)ジーッ
気付けばハインは、パンだけを先に食べてしまった。
从゚~从 モグモグ
ξ゚⊿゚)ξ(鹿肉は、それほどって感じなのね…。ハインには、補助的な栄養の方が足りていないのかしら。)
138
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 20:49:58 ID:nI.Nq1es0
ξ゚⊿゚)ξ(…)
私は、先程の手紙の事を思い出していた。
【これを読んだ人がいたら、私と友達になってください。】
ξ゚⊿゚)ξ(友達が欲しいのね…。今のハインがそう思っているのかは、分からないけれど。)
____________________________
ξ*゚ー゚)ξつ「じゃあ、私が友達になってあげるわ!」
ξ*゚ー゚)ξつ「小さいのに今までよく頑張ったわね!これからは私と一緒に住みましょう!」
____________________________
ξ゚⊿゚)ξ(…なんてのは、英雄症候群よ。たった一言だけで、相手が内心どうしてほしいと思っているかなんて分からない。行動に移す事なんて出来ないわ。)
ξ゚⊿゚)ξ(人間のまたんきとはワケが違う。この子は私なんかよりもずっと長くこの姿で生きてきた逞しい子よ。熊だって倒せるんだから。)
ξ゚ー゚)ξ(今は共喰いされないかとか、そんな事を心配した方が良いわね。)
クスクス笑っていると、食事を終えたハインが私に話しかけてきた。
从 ゚∀从「前の吸血鬼、薬草を集めてた。」
ξ゚⊿゚)ξ「薬草?」
そう言うとハインは立ち上がり、家の裏の方へと歩いて行ってしまった。
ξ゚⊿゚)ξ …?
139
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 20:54:07 ID:nI.Nq1es0
散歩するように追いかけると、そこには様々な植物の生える庭があった。
生えっぱなしで、もはや森と同化しそうな勢いだ。
ξ゚⊿゚)ξq(ぱっと見、家にもあるような植物ばかりね…。)
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、ハイン。その吸血鬼は薬草を集めて何をしようとしていたの?」
从 ゚∀从「人間に戻るための薬を作るって、言ってた。」
ξ゚⊿゚)ξ「…。それは、上手くいったのかしら?」
从 ゚∀从「……分からない。」
ξ゚⊿゚)ξ「…そう…。」
ξ゚⊿゚)ξ「…」
ξ゚⊿゚)ξq「あら?」
私は、ある2つの植物を見付けた。
小さなラグビーボール状の袋を持ったイネ科と、白くて小さな丸い粒が沢山の植物。
後ろの家を見ると、横に煙突が付いている。
ξ゚⊿゚)ξ「ねえハイン。お土産にパンを焼いてあげるわ。」
ξ゚⊿゚)ξつ| ギィ…
ξ゚⊿゚)ξ「まあ、うちも鍵無いし開くわよね。」
私はハインを連れて、石造りの家の中に入った。
それからリビングキッチンへと向かい、窓を開ける。
月明かりが差し込み、部屋の中がよく見えるようになった。
ξ゚ー゚)ξ「煙突があるから、ここにも石窯があると思ったのよね。ふふん。」
ξ*゚ー゚)ξ「あっ、火打ち石と火打ち金もあるじゃない。これなら楽勝ね!」
ξ;゚⊿゚)ξ「だけどやっぱり酷い汚れね…。まあ、中は湿気てなくて良かったわ。」
爪ξ゚⊿゚)ξ爪「それじゃ。」バサッ
140
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 20:58:21 ID:nI.Nq1es0
爪ξ>⊿<)ξ爪=3「それそれそれ〜っ!!!」バッサバッサバッサ
私は部屋の端から翼で扇いだ。
部屋の中のホコリが、モクモクと窓から外へと流れ出ていく。
爪ξ;゚⊿゚)ξ爪 ゼーゼー
从 ゚∀从「…」
爪从 ゚∀从爪))) ブンッッ!!
爪ξ;゚⊿゚)ξ爪「あ…ありがと。一発で綺麗になったわ。」
ξ゚⊿゚)ξ「それじゃ、出てすぐの川で布を濡らしてくるわ。雑巾がけしましょう。」
私はピクニック用の敷き布を雑巾代わりに、川の水に浸してギュッと絞った。
それからキッチンを拭いてまた手を洗い、台に収穫した植物を置いた。
ξ゚⊿゚)ξ「イネの袋の中身と、白い粒を手で潰しながら混ぜるの。小麦粉と酵母みたいな物ね。」
ξ゚⊿゚)ξ「それから、予備に持ってきたネトルティーを加えて、もっとよく混ぜて…」トトト…
ξ゚⊿゚)ξ「発酵の間に窯に薪をくべて、温めておくわ。」
从 ゚∀从「…」
ハインは私の指示に従って、生地を捏ねたり火の様子を見ている。
ξ゚⊿゚)ξ「良いわね。そうしたら、生地を窯に入れて少し待つわ。」
141
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 21:04:04 ID:nI.Nq1es0
_____
___
__
ξ*゚⊿゚)ξ「表面が乾いたし、もう良いわね。引き上げましょう。」
木製のピールに乗せたそのパンを、ハインはじっと見ている。
从 ゚∀从「すごい…。焼く前より何倍もふくらんでる…。」
ξ゚ー゚)ξ「一つだけ味見してみない?」
从 ゚∀从つ○「する。」
从*゚~从 モグモグ
ξ゚⊿゚)ξ ジーッ
从 ゚∀从「うまい。」ゴクン
ξ゚ー゚)ξ「ここに濾した動物の脂を入れると、カリっとしてもっと美味しくなるのよ。」
ξ゚ー゚)ξ「良かったら、また教えに来るわ。一人でも作れるようになったら、いつでも食べられるでしょう?」
从 ゚∀从「…教えてほしい。」
ξ゚ー゚)ξ「それじゃあ、次の寝待月はどうかしら?5日後よ。」
从 ゚∀从「分かった。」
____________________________
142
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 21:06:56 ID:nI.Nq1es0
_____
___
__
从 ゚∀从つ√ ザッザッ
ξ゚⊿゚)ξ「そうそう、筋が良いわ。そのくらい温まればもう生地を入れても良いわね。」
从 ゚∀从「この間よりパンが多いけど、かまの熱さも同じでいいのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。だけどパン同士はよく離すよう気を付けてね。膨らむとくっついちゃうから。」
从 ゚∀从「ああ。」
パンが焼けるのを待つ間に、私達はお茶を飲むことにした。
ξ゚⊿゚)ξ「そういえば、あの手紙はどうやって用意しているの?」
从 ゚∀从「庭の綿花を、岩の上に重石と乗せて乾かして作るんだ。」
ξ*゚⊿゚)ξ「紙はハインが作っていたのね!」
話し慣れてきたのか、ハインの口数がどんどん増える。
ハインの家には児童書が沢山あるらしく、そのおかげか見た目よりもしっかりとした口調だ。
同じ吸血鬼であるハインの話は、私にとって興味深くて楽しいものだった。
ξ;*゚⊿゚)ξ「ね…ねぇ、熊肉ってどんな味がするの…?」
从 ゚∀从「ドングリを食べているから、油が甘いんだ。」
ξ*゚⊿゚)ξ「へぇー!いつか食べてみたいわ。」
ξ゚⊿゚)ξ「ハインの家は山の中なのよね?他にも何かいるの?」
从 ゚∀从「鮎が捕れる。」
∑ξ;゚⊿゚)ξ「魚!?吸血鬼はお肉しか食べないと思っていたわ!すっごいカルチャーショック。」
_____
___
__
143
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 21:10:17 ID:nI.Nq1es0
パンが焼けて、私達はまた一つだけ味見をした。
今回は動物の脂も入れたため、外はカリカリでサクッと、中はモチモチで甘味があり、とても美味しく焼けた。
ξ゚ー゚)ξ「完璧!これからは一人でもここで作れちゃうわ。」
ξ゚ー゚)ξ「念のためレシピをこの家に置いていくから、分からなくなった時はそれを読んでね。」
从 ゚∀从「ああ。ありがとう。」
ξ゚⊿゚)ξ「…そろそろ時間ね。お互い、朝になる前に帰らなきゃ。」
私はそう言って、立ち上がった。
ξ゚⊿゚)ξ「ん…?」
服が机のささくれに引っ掛かったのかと思ったが、目線の先に行き着いたのは、私の袖を掴むハインの姿だった。
从 ゚∀从つ「あ…」
ハインは酷く傷付いたような顔をして、袖を離した。
ξ;゚⊿゚)ξ「どうしたの?」
从 ゚∀从
从 ;∀从
∑ξ;゚⊿゚)ξ「わ、え?!どっ、どうしたのっ!!?」
144
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 21:12:05 ID:nI.Nq1es0
ハインは悔しそうに泣くばかりで、見ているこっちが辛かった。
私は、ハインの頭をゆっくりと撫でた。
ξ゚⊿゚)ξノ「大丈夫だから…。話してみて。」
从 ;へ从 ヒッグ…ヒッグ…
从 ;∀从 ……ヒック…
从 ;∀从「…ざくろといると…、楽しい。だから、もっと一緒にここに居たいって、思ったんだ。」
从 ;∀从「…だけど、オレは前にも…同じ事をした。あの人は帰ろうとしてるんだって…分かってたのに。」
从 ;∀从「一人がイヤだからって、自分の幸せしか考えていない事を繰り返してる。…サイテーだ。」
ξ゚⊿゚)ξ「ハイン…。」
145
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 21:16:22 ID:nI.Nq1es0
私はハインの手を握り、目線を合わせて言った。
ξ゚⊿゚)ξ「…あなたが本当に友達になりたいのは、『自信』よ。」
从 ;∀从「自信…?」
ξ゚⊿゚)ξ「そう。人って、誰かと関わって生きているでしょう?親や兄弟、友達にパートナーとか…」
ξ゚⊿゚)ξ「その感覚を知っていると、誰かが側にいるのが当たり前。そうでないと変だとか、不安で仕方なくなってしまうのかもしれない。寂しがり屋の人は特にね。」
ξ゚⊿゚)ξ「だけどハインは、私よりも長くこの姿で生きてる。人間という、たった一種類の社会から抜けてしまえば、あなたはとても強い存在なんじゃないかしら。」
从 ;∀从「…」
ξ ⊿ )ξ「私、初めて会った時に、『会話が出来る吸血鬼に会うのは初めて』と言ったでしょう?」
从 ;∀从「…?ああ。」
ξ ∀ )ξ「…それはね、会話なんてする前に、相手の血を吸い切ってしまうからなの。」
从;゚д从))「ヒッ!?」
ξ*゚⊿゚)ξ「冗談よw誰も彼も疑えって訳じゃないけど、同じ立場だからってすぐに気を許したらいけないわ!」
私より何倍も強いであろうハインが怖がるので、私は思わず笑ってしまった。
ξ゚ー゚)ξ「私達の人生は、きっと長いわ。だから何事も、少しずつ知っていきましょう?」
从 ;∀从「…」
146
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 21:20:26 ID:nI.Nq1es0
ξ゚ー゚)ξ「また、会いに来るわ。でも、同情で仲良くしようだなんて思っていない。」
ξ゚ー゚)ξ「私がここに来る時は、ハインに会えたら嬉しいなって思う時。」
ξ゚ー゚)ξ「手紙を書く時は、ハインに伝えたい事があってワクワクしている時よ。」
从 ;∀从「…うん…。」
_____
___
__
爪ξ゚⊿゚)ξ爪 バッサバッサ
ξ゚⊿゚)ξ、「あら…今日は来てないのね。残念。」
私はたまに、石造りの家を訪れるようになった。
ハインに会えなければ手紙を残すので、約束はしていない。
ハインも同じで、ついでにパンを焼いて帰るそうだ。
ξ゚⊿゚)ξつ「ふふ〜ん♪」パカッ
私はポストの手紙を抜き取り、代わりに自分が書いた手紙と2つの荷物を入れた。
黒くて、水で洗うだけでどんな汚れでもツルツル落ちるワンピース。
それから、焼いたパンを入れるための、麻のショルダーバッグ。
フタの端に、頬を膨らませた栗鼠の刺繍をしたものだ。
爪ξ*^ー^)ξ爪「果たして、自分がモデルだって気付くかしら?」 クスクス
続く
147
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 21:23:22 ID:nI.Nq1es0
从 ゚∀从
・強さ★★★★★(飛行速度など)
・味覚 血肉と子どもが好むような味は感じ取れる
ξ゚⊿゚)ξ
・強さ★★★☆☆
・味覚 ココアの実の効能を知らずに、ごく少量ずつお菓子で取っているおかげか正常に近い
(クーが森の方に植えた種が育った)
川 ゚ -゚)
・強さ★☆☆☆☆
・味覚 悪。血肉以外は基本鈍い味がするか不味い。
148
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 21:34:55 ID:nI.Nq1es0
_____
___
__
爪ξ*゚⊿゚)ξ爪「あっ!今日はいる!!」バッサバッサ
月の照る日にドクオのいる村を訪れるのは、もはや私の習慣だ。
爪ξ゚⊿゚)ξ爪 ストッ
ξ゚ぺ)ξ「もうっ!最近全然来ないじゃないっ!」
('A`)「ごめんな。仕事で忙しかったんだ。」
ξ゚⊿゚)ξd「早く食べて今日も描くわよっ!」
ξ;゚⊿゚)ξ(……。)
ドクオが、以前よりも更にやつれている気がする。
149
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 21:37:50 ID:nI.Nq1es0
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、初めて会った時に描いていたような絵は他にもないの?」
('A`)φ「俺の住んでいた村…風景画の事か?」
ξ゚⊿゚)ξ「そう。ドクオって実は、風景画の方が得意でしょ?密度が違うわ。」
('A`)φ「そうなのか?村の子ども達に頼まれて似顔絵ばかり描いてたから、俺はそっちのが得意なのかと…」カリカリ
('A`)φ「合間を縫って少しずつ描いたものだから、まだあの絵だけだ。」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなの…。」
ξ゚⊿゚)ξ「私ね、夜に出掛けるようになってから色々な場所へ行ったの。朝までに帰れる範囲だけどね。」
ξ゚⊿゚)ξ「夜光虫で青く光る海や、黄金の麦畑。流れ星が沢山流れて黄緑色になった空。それが特に綺麗だったわ。」
ξ゚ー゚)ξ「私だけが見ても、最近はなんだか勿体ないって思うのよね。ドクオだったら、絵に残しておけるのにって。」
('A`)φ「…俺はざくろが話すまで、海が本当にある事すら知らなかったよ。人に話すことがあるだけで充分有意義だ。」
('ー`)φ「だけど、色んな場所を飛び回って絵を描けたら、それは楽しいだろうな。」カリカリ
ξ*゚ー゚)ξ「私が叶えてあげるわ。」
ξ*゚⊿゚)ξ「あのねっ!最近出来た吸血鬼の友達が言ってたのだけど、翼の力って特訓で強く出来るんですって!」
ヽξ*゚⊿゚)ξノ「だから今は無理でも、いつかはドクオを持ち上げて運んであげるわ!」
∑(;'A`)φ「それは頼もし…吸血鬼って、ざくろの他にもいるのか!?」
ξ;゚⊿゚)ξ ムムッ…
ξ;゚⊿゚)ξ「え、ええ…。その子以外は見たことないけれどね。お互いが住んでるとこから、中間辺りでたまにお喋りしているの。」
150
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 21:41:05 ID:nI.Nq1es0
ξ゚⊿゚)ξ「…そういえば、私がモデルの絵は、これで何枚目なのかしら?」
自分で振っておきながら、ドクオの興味がハインに向いた事に焦った私は、話題を変えた。
('A`)φ「…8枚目かな。」カリカリ
ξ゚⊿゚)ξ「結構あるじゃない!もう少し増えたら、個展が開けそうだわ。」
('A`)φ「個展って、何だ?」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオの描いた絵だけを、どこかで披露する事よ。私も人間の頃に栄えた街から来た人に聞いただけで、詳しくはないんだけどね。」
('ー`)φ「それは、格好良いな。」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ…でも、私の絵を飾ったら、ドクオが吸血鬼と知り合いなのがバレちゃうかもしれないわね。」
ξ;゚⊿゚)ξb「その時は私の事、『夢で見た人』とでも言ってちょうだい?」
('∀`)φ「はは。分かっ…」
ドサッ
151
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 21:43:47 ID:nI.Nq1es0
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと!どうしたの?!!」
('A`)「大丈夫…今、立つから…」
ξ;゚⊿゚)ξ「全然大丈夫じゃないわよ!家どこ!?肩貸すから…!」
私はドクオの左側から肩を貸して、ゆっくりと歩いた。
ドクオがすぐ側の建物を指差したため、誰の家の前も通らずに済んだ。
ξ;゚⊿゚)ξ「…本当にここに住んでいるの…?」
その外観はどう見ても、農具を入れるような古い納屋だ。
木製で隙間もある。
('A`)「6帖はあるし屋根も雨漏りしていないから、充分だ。夜も戸を開けておけば、月の光が入って仕事も進められるし…」
ξ;゚⊿゚)ξ「そういう問題じゃっ…!とにかく、横になって休んで!」
(((;'A`)「分かったよ…」
ドクオは、端に寄せた藁の上を寝床にしているようだ。
あとは周りを見渡しても、製図用の机と粗末なキャビネット、私が渡した絵の具セットに水瓶以外は殆ど何もない。
ξ#゚⊿゚)ξ「…」
ξ#゚⊿゚)ξ「…もう我慢出来ない。」
152
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 21:46:10 ID:nI.Nq1es0
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ…。私の家に…、来ない?」
('A`)「ざくろの…家に?」
ξ゚⊿゚)ξ「そう。少なくとも、ここに居るよりは何千倍もマシよ。」
ξ゚⊿゚)ξ「だけど、私がドクオの血を吸わないって保証は無いわ。ドクオが嫌なら、私は別の場所に移り住んでも良い。1つだけ、当てがあるの。」
('∀`)「…はは。美人と一緒に住むなんて、最高だな。」
爪ξ#゚⊿゚)ξ爪「茶化さないで!こんな生活続けてたら、死ぬって言ってんのよ!!」
ガタッ
爪ξ;゚⊿゚)ξ爪「あ…」
私が怒りのあまり翼を出すと、机に当たり重ねてあった紙の束が勢いよくあちこちに散った。
ξ;゚⊿゚)ξつ「ごめんなさい…。これ、仕事道具よね…?」
ξ゚⊿゚)ξ「え…?」
そこには私がモデルをした絵の他に、ドクオが私向けに用意した図案の試作のような絵や、一瞬の表情を抜き取ったようなラフスケッチが沢山あった。
どの私も、優しく微笑んでいる。
ξ;*゚⊿゚)ξ))
(;* A )「…ぁ…ぅ…」
ξ;*゚⊿゚)ξ
「この絵の図案も、いつか貰えるのかしら?」
私はそう言って、はぐらかす事しか出来なかった。
続く
153
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 22:05:33 ID:nI.Nq1es0
中々全ての方にお返事出来ず申し訳ありません。
次回完結です。
154
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 23:02:40 ID:dGgWr/C20
乙。もう終わりなんか…
155
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 23:11:36 ID:5VcMSwqY0
あああああー!
156
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 23:22:58 ID:gFQE9g.A0
乙
157
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 23:26:32 ID:EeS3Xmd20
乙
もっと続くもんだと思ってた
158
:
名無しさん
:2023/06/11(日) 23:45:57 ID:8ufEYng.0
バサバサするツンさんかわ
159
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:00:33 ID:8hXcnLRs0
>>154
-
>>157
ありがとうございます。
予定通りの話数で完結します。
>>158
実際翼付いたら、みんなバサバサしたくなっちゃいますよね…?
160
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:29:05 ID:8hXcnLRs0
爪ξ゚⊿゚)ξ爪 バッサバッサ
冬がもう終わりそうな日の夜。
私はまたんきに会うために、養蜂箱を模した箱のある林へと向かった。
(・∀ ・)ノ(おーいせんせー!)
またんきが、口だけを動かして私を呼んだ。
爪ξ゚⊿゚)ξ爪「遅くなって、ごめんなさい。」ストッ
(・∀ ・)「いや、そんなに待ってないよ。」
ξ゚⊿゚)ξ「…卒業、おめでとう。」
(・∀ ・)「ありがとう。」
ξ ⊿ )ξ「…」
( ∀ )「…」
私が沈黙を、破らなければ。
ξ ⊿ )ξ「__そろそろ、私達の商売も終わりにしましょう。」
161
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:30:09 ID:8hXcnLRs0
ξ ー )ξ「あなたはもう女装が似合わないくらい、立派な体格になったわ。それに、毎週きちんと街へ通ったから、貯金も貯まったでしょう?」
(( ∀ ) コクリ
ξ ⊿ )ξ「街で仕事も探してたのよね?…就職先は、見つかったかしら?」
( ∀ )「ああ。せんせいの仕事ほど、超高待遇じゃないけどな。だけどこの町で探すよりは良さそうだ。」
ξ ー )ξ「そう…。」
( ∀ )「せんせい…。」
162
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:31:41 ID:8hXcnLRs0
(;∀ ;)「…ありがとう。一人で心細かった時に、声をかけてくれて。」
(;∀ ;)「オレ、せんせいがずっと無理してくれてたの、知ってた。いつも変わらない量の商品を用意してくれて…」
(;∀ ;)「なんにも出来なくて、ごめん。」
ξ゚ー゚)ξ「良いのよ。私だって、一人では何も手に入らなかったんだから。またんきが頑張ってくれたおかげよ。」
ξ゚ー゚)ξ「美味しいお土産も、よく貰ったしね。」
(;∀ ;)「あのさ、あのさ…」
(;∀ ;)「オレさ、自分の力で頑張ってみるよっ!…隣町だし、もしかしたらあいつらが来るかもしれない。だけど絶対負けずに生きていくよ!」
ξ*゚ー゚)ξ「ええ。たとえ何があっても、持ち前の機転ですり抜けていきなさい。またんきなら出来るわ。」
163
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:34:22 ID:8hXcnLRs0
ξ゚⊿゚)ξ「…テーラーのミルナさんだけが心残りね。勝手に布の供給を止めるのが、申し訳ないわ。」
(・∀ ・)「それなら話はついてる。元々引退して指導にまわろうか考えてたみたいだし、大丈夫だ。」
(・∀ ・)「オレが隠れて尋ねるのが大変なくらい、ミルナさんの店は盛況だったよ。最後にひと花咲かせられたって言ってた。」
ξ゚ー゚)ξ「…安心したわ。」
(・∀ ・)「…。」
(・∀ ・)「せんせいは、大丈夫なのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
(・∀ ・)「買い出し係が、いなくなるじゃないか。」
ξ゚ー゚)ξ「どれも質の良い物を買ってきてもらったし、最初に私が持たされた荷物の倍は手に入れたわ。とりあえず10年くらいは大丈夫よ。」
ξ゚⊿゚)ξ「だけどそうね、目印を持っておきましょう。」
そう言って私は、月の光に当たると金色に光る刺繍を施した旗を取り出した。
ξ゚⊿゚)ξ「街に着いたら、これを明るい夜に部屋の外に飾って。居場所を把握しておくわ。」
ξ゚ー゚)ξ「たまに手紙を書かせてちょうだい。落ち着くまでは、見守らせてね。」
(・∀ ・)「じゃあ、手紙を入れるような箱も旗の近くに置いておくよ。」
ξ゚ー゚)ξ「そうしてもらえると助かるわ。」
ξ゚⊿゚)ξ「ここに置いてある箱じゃ…大きすぎるものね。これは私が後で数日かけて回収するわ。」
(・∀ ・)「何から何まで、ありがとう。」
ξ゚ー゚)ξ「ええ。」
爪ξ*^⊿^)ξ爪「…それじゃあ、さようなら。元気でねっ!」
(・∀ ・)ノ「さようなら!せんせいも元気で!」
私は勢い良く地面を蹴った。
(*・∀ ・)ノシ(さようなら!せんせいありがとう!!本当にありがとう!!!)
164
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:35:38 ID:8hXcnLRs0
爪ξつー゚)ξ爪(栄えた街じゃ長居も出来ないし、もうめったに会えないわね。なんだか凄く寂しいわ。)
爪ξ゚ー゚)ξ爪(この姿になってから、最初に関わった人だものね。)
爪ξ゚⊿゚)ξ爪「きっとこれからも、色々な事があるわね。誰とどんな事を話したかとか、記録を付けといた方が良さそう…。」
爪ξ;゚⊿゚)ξ爪「日記は…絶対飽きるわ。」
爪ξ;゚⊿゚)ξ爪 ウーン…
爪ξ*゚⊿゚)ξ爪「そうだわ。お話仕立てにして本みたいにまとめましょう!主人公の私が大冒険するお話よ!」
話し上手のまたんきに、栗鼠ほっぺのハイン。それから、絵描きのドクオ。
これからもっと沢山の人と、知り合うのだろう。
爪ξ*゚∀゚)ξ爪「きっと一冊じゃ足りないわね。ふふっ。」
____________________________
165
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:40:22 ID:8hXcnLRs0
_____
___
__
ξ゚⊿゚)ξ「よいしょっと…。」
私は、熱々の膠を瓶に入れて保温袋に仕舞った。
爪ξ゚⊿゚)ξ爪「いってきまーす。」バサッバサッ
冬の寒さに堪えたのか、ドクオはやっと私の提案に乗り気になった。
それでも今受け持っている仕事が終わってからにしたいのだと言う。
私は心底呆れたが、計画の準備もあるので翌月まで待つ事にした。
ξ゚⊿゚)ξ ペタペタ
('A`)、「あと少ししかいないのに、悪いな…。」
私の家から持ってきた端材に、膠を塗る。
納屋によく似た色味で補修が目立たぬよう、出来るだけ傷みのある板を選んだ。
これで納屋の隙間を埋めて、少しでもドクオが過ごしやすいようにするのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「そう思うなら、来月のためにしっかり栄養をつけなさい。沢山歩くんだから。」
私は連日栄養のありそうな食べ物を持てるだけ持ってきては、ドクオに与えた。
ドクオの栄養失調具合いだと、血の保存食の方が良いのかもしれない。
だけど人間には美味しくない物だろうし、私もドクオを運ぶのに力を沢山使う予定のため、分け与える余裕がないのだ。
ξ゚⊿゚)ξ(ずっと抱えて飛ぶのは無理だけど、兎が跳ねるように勢いを付けて距離を稼げば、ドクオを無理に歩かせずとも7日くらいで家まで運べるはず。)
ξ゚⊿゚)ξ(人に見つからないためのルートも確認しておかなきゃ。本当は宿に泊まらせてあげたいけど、足がついたらまずいわ。)
ξ゚⊿゚)ξ(絶対に、成功させるわ。)
____________________________
166
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:41:15 ID:8hXcnLRs0
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(;'A`)φ「はぁ…疲れたな…。」
('A`)(…)
('A`)つ□ カタッ
('A`)φ(ざくろの絵を見て…頑張ろう。どうせここへは誰も来ない。仕上がった仕事は毎度持って行くし…)
('A`)φ …
('A`)φ(本当に、一緒に住むのか…?)
(;*'A`)φ(良いのかな…俺の気持ち、バレてるはずなんだけど…。)
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167
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:43:40 ID:8hXcnLRs0
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( ^ω^)「…本当に、このお値段でよろしいのですかお?」
( ^Д^)「ええ、ええ!材料の提供や大工を向かわせる事が出来ず申し訳ないのですが、その分お安く出来るんですよ。」
(*^ω^)「それは助かりますお。材料や大工はこちらで手配出来るのですが、私共は何分洒落た意匠が不得手でして…」
(*^ω^)「町にやって来た旅人から聞いた噂は、本当でしたお。『とてもお安く建物の設計図を提供してくれる村がある』と。」
(*^ω^)「それでは明日また来て、もう少し話を詰めてから契約をさせて頂きますお。」
( ^Д^)「ありがとうございます!よろしくお願いします。」
(-@∀@)「宿泊される宿は隣町ですか?村の入口までお見送りしますよ。」
( ^ω^)「ありがとうございますお。」
( ^ω^) テクテク
( ^ω^)(…ん?あれはなんだお?)
(;^ω^)(うわー、随分傷んでる納屋だお…。)
( ^ω^)(…僕の町や他の村町にも似たような納屋はあるはずなのに、…妙に気になるお…。)
(( ^ω^) スタ…スタスタ
(;^Д^)つ「お客様、隣町はそっちではありませんよ?」
(;^ω^)σ「あっ…すみませんお。あちらの建物がなんだか凄く気になってしまって。何なんでしょう?」
(;-@∀@)「はは。ただの納屋ですよ。」
(;-@∀@)「あっ!もちろんあんな仕上がりにはなりませんからね!?古いからもう取り壊そうかと思っていたところです。ハハッ!」
( ^ω^)「……そうでしたかお。」
( ^ω^)「そういえばこの辺りに、昔女神が舞い降りたという言い伝えの岩があるんですおね?話し合いの合間に聞いた…」
(*-@∀@)「ええ。住を司る女神様で、建てる棟の数だけお布施をすれば、災害が起きてもその棟だけは無傷だというジンクスがあります。」
( ^ω^)「そちらを見学してから宿に行きたいので、見送りはこれで結構ですお。ありがとうございましたお。」
168
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:47:52 ID:8hXcnLRs0
_____
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__
( ^ω^)?「うーん…?どう見ても、何の変哲もない岩だお…。」
( ^ω^)(…なんかこの村、変だお。近くに良い川があるのに、ろくに治水もせず大半が荒れ果てた地のまま。それに…)
( ^ω^)(…)
(( ^ω^)「…やっぱり、さっきの所が気になるお。」スタスタ
( ^ω^) ヒョコ
( ^ω^)(人がいて…仕事中かお。…こんな所で?)
( ^ω^)(何か…絵が置いてあるお……)
( ゜ω゜)「!!!」
169
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:48:40 ID:8hXcnLRs0
( ゜ω゜)つ/「あのっ!!すみませんお!!!」
∑(;'A`)「えっ…どちら様ですか…?」
( ゜ω゜)「この絵の人をご存知なのですかお!??」
(;'A`)「えっ…?」
(;'A`) ハッ
(;'A`)「ぁ…」
170
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:51:26 ID:8hXcnLRs0
(;'∀`)「ぉ…俺にはさっぱり。…ただ、夢で見た人を描いただけです。」
(;゜ω゜)「絶対…、そんなはずはないですお。このベールに、このドレス…」
(; ω )「…っ」
<(; ω )>「…あぁ…ああっ!!」
(; ω )「……。ツンの両親は、吸血鬼を良く思っていない人達でしたお。なんでも、ツンの祖母が年老いても吸血鬼に大荷物を運ばされていたんだとか…」
(; ω )「そんな態度を取っていた手前、自分の娘を贔屓する事は許されなかったのでしょう。後悔していましたお。」
(; ω )「だけど町の老人達は、吸血鬼の言い伝えを話す時には決まって、優しい笑顔で語っていたんですお。きっと良い吸血鬼だったから、ツンの祖母も会いに行っていたのかもしれませんお。」
(; ω )「きっとツンも、良い吸血鬼になる。だから僕は、ツンの両親に約束しましたお。何があっても誰も僕達を知らないような土地まで行って、添い遂げると…。だから安心してほしいと…。」
(; ω )「だけど、何度ツンのもとへ行こうとしても、必ず誰かに見付かって引き戻されてしまうんですお。僕の家族は町を取り仕切っていて、兄達を支えるために僕は教育を受けてきたんですお。労働力が減ってはたまらないと、町の人達は思っていたのかもしれませんお。」
(; ω )「…それでも…どうして僕は、たったの3年ぽっちで、諦めてしまったのだろう…?」
('A`)「…。帰って…頂けませんか…。」
(; ω )「そんな…」
(; ω )「…。…一つだけ……聞かせてくださいお。」
(; ω )「…この人は今、泣いていませんかお…?この絵のように、笑っていますかお…?」
('A`)「…」
('A`)「…分かりません。夢で見た人、ですので。」
(; ω )「………そう……ですかお……」
171
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:53:14 ID:8hXcnLRs0
(; ω ) フラフラ…
(;^Д^)「どうされました!?なぜ納屋から…」
(; ω )「…あの…。契約は、やめますお。」
(;-@∀@)「えっ!?あの男に何かされたんですか?!!」
(; ω )「いいえ、何もされていませんお。」
(; ω )「…村に来た時から、気になっていた事があるんですお。」
(; ω )「どうして村の中で、こんなに貧富の差があるのか。」
(; ω )「貴方がたは良い身なり、良い肌艶。それなのに村を歩けば、着のみ着のままのような人を何人も見かけましたお。」
(; ω )「それに建物も、見せて頂いた完成図のような建物が、ありませんお。本当にこれで建つのですかお…?」
(;^Д^)「そこはご安心ください!ちゃんと実績のある者が製作しておりますので!」
(; ω )「…信じられません。僕はそんな危ない道は渡りませんお。契約に使うお金は町のみんなの税金ですお。狸に化かされて巻き上げられたなどとあっては、示しが付きませんお。」
((; ω )「本当に…この話は…無かった事に…。」
(;^Д^)つ「あっ!待ってください!!」
____________________________
172
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:54:37 ID:8hXcnLRs0
('A`)つ□(…片付けよう。)
(;'A`)(…まさか、ざくろの婚約者に会うとは…。)
('A`)φ(…。あの人はきっと、誠実な人だった。)
('A`)φ(さっきの事を伝えたら喜ぶだろうな。見捨てられた訳じゃなかったんだと分かるから。)
('A`)φ(ざくろの家の近くの町に…住んでいるんだろうか?…望むなら、俺が伝達役でもしよう。)
('ー`)φ(……俺の気持ちなんて…)
「「おい!!!!」」
(#^Д^)(#-@∀@)
(;'A`)「え…?」
(#^Д^)「おまえ…一体何をしたんだぁ?」
(;'A`)「何…を…?」
(#^Д^)Ο「客が逃げたじゃねーか!!」ドカッ!!!
(°;A°)「ガッ‼」
(#-@∀@)「俺達がいったい何日贅沢出来ると思ってんだよっ!!!」
(#-@∀@)Ο「這いつくばって詫びろっ!!」バキッ!!!
_____
___
__
173
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:56:04 ID:8hXcnLRs0
爪ξ゚⊿゚)ξ爪(うん。ルートもこれで良さそうね。開けているし、飛びやすいわ。) バサッバサッ
私は月を見上げた。
今夜はギリギリ外に出られるほどの明るさで、これから数日かけて月は丸まっていく。
爪ξ゚⊿゚)ξ爪(明日にでも決行するわ。ドクオにも言っておかないとね。)
天候の悪い日は、やはり宿を利用しなければならない。ドクオの服はボロボロなので、不審がられないように服の用意もした。
爪ξ゚⊿゚)ξ爪(仕事が終わってなくたって構わないわ。問答無用で連れて行くの。)
今夜は先に、ドクオの荷物を引き受けよう。
_____
___
__
174
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 00:58:28 ID:8hXcnLRs0
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ…?」
家の前に来てみると、やけに静かだった。
今夜はもう、寝ているのだろうか?
ξ゚⊿゚)ξ(起こさないように食事を置いて、荷物を引き取っていきましょう。メモも残しておかなくちゃ…)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「…え?」
目の端に、不思議な物が見えた気がする。
恐らく、ドクオの脚だ。
ξ゚⊿゚)ξ(だけど寝床はそっちじゃないはず…__)
ξ;゚⊿゚)ξ「っ…!!!」
ドクオが__うつ伏せで倒れている
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと!どうしたの!!?」
ドクオの上には更にキャビネットが倒れていて、私は急いでそれを退かした。
ξ;゚⊿゚)ξ(…?キャビネットの移動中に倒れたのかしら?だけど何か…)
ξ;゚⊿゚)ξ「!!!」
ドクオの頭の先に、大量の血が広がっていた
そこにドクオの髪が浸り、筆代わりとなった引きずり跡がある
ξ ⊿ )ξ(誰が…こんな酷い事を…)
( A )「………ぅ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ドクオっ!?」
175
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 01:00:46 ID:8hXcnLRs0
私はドクオを抱きかかえた
血の出処は口からのようで、顔が真っ赤に濡れていた
だけど少しだけ、息がある。
ξ;゚⊿゚)ξ(ハインに助けを求めて、一緒にまたんきの所まで連れていって、それから医者を…)
ξ;⊿;)ξつ(嫌だ…どうしてこんなに冷たいの…)
ぬるいを通り越して、冷たいと言った方が早い体温だ
私の選択によって命の灯が消えてしまうかもしれない恐怖から、急がなければいけないのにその場を動くことが出来なかった
( A )「ぁ…」
ξ;⊿;)ξ「…え…?」
176
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 01:02:53 ID:8hXcnLRs0
( A )∂
ドクオが震える手で、自分の首を指差した
ξ;⊿;)ξ(…いらないわよ。あんたの不味そうな血なんて…)
そう言おうとした、その時。
方方飛び回り、綺麗な場所を見て、その絵を描くドクオの姿が思い浮かんだ。
ξ;⊿;)ξ
ξ;⊿;)ξ「そっか…」
ξ;ー;)ξ「私が、叶えてあげる…。」
机の上の紙に、私の家の道順を書いた。
177
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 01:05:44 ID:8hXcnLRs0
私は愛しい人の首筋に牙を立て、涙を流した
これは悲しみの涙でも、別れの涙でもない
誰かを愛する事が出来た、喜びの涙だ。
ξ− −)ξ
瞼が、どんどん重くなっていく。
だけどこれだけは、祈らせてほしい。
どうかこの人を、生き永らえさせて________
終
178
:
名無しさん
:2023/06/21(水) 12:32:48 ID:o9K4YyHo0
なんとも言えない気持ちになりました、乙
179
:
名無しさん
:2023/06/22(木) 00:40:19 ID:DhaNFE/60
乙
なんと言うか、残酷な童話を読んだような、そんな読後感
180
:
名無しさん
:2023/06/22(木) 01:01:34 ID:ye0/Xe8I0
またんきの性癖が完全に破壊されてるな・・・生涯独身決定・・・なんと罪深い女なのか・・・
そしてブーンとドクオにより我が性癖が破壊された、どうしてくれるんだ!謝罪と賠償を求めるニダ!
181
:
名無しさん
:2023/06/22(木) 06:44:33 ID:rJuOMeR60
乙
182
:
名無しさん
:2023/06/23(金) 00:22:52 ID:9JR8Q9CI0
乙やで。これはこれで美しいエンドやな…
183
:
名無しさん
:2023/06/26(月) 09:32:21 ID:MFl0AF.c0
ぞくっとした
乙
184
:
名無しさん
:2023/07/02(日) 22:09:32 ID:fWSyc7NY0
乙
全てが良い方向へ向かう予感があったのにそんな…
どのキャラの事考えても辛いけどこの終わり方は好き
スレタイのセンスも好き
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