したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

ξ゚⊿゚)ξHappy Birthdayのようです

84名無しさん:2023/05/24(水) 06:37:40 ID:YC4sGJho0
ガヤガヤ

(’e’)「クーさん、この荷物はどうしますか?」

川 ゚ -゚)σ「ああそれは、軽い日用品だから上の方に置いてくれ。」

ζ(゚ー゚*ζ「クー、みんなも準備出来たって。」

川 ゚ -゚))

川 ゚ー゚)「じゃあ、そろそろ行こうか。」


____________________________

85名無しさん:2023/05/24(水) 06:40:50 ID:YC4sGJho0
私があの吸血鬼に遭遇したのは、一昨日の晩の事だ。

仕事に夢中で、気付けば日はとっぷりと暮れていた。
秋なのに雪の降る日のように寒く、仕事場に泊まり込む訳にもいかず仕方なく家に帰ることにしたのだ。


(( 川 ゚ -゚)(月が明るくて、あんな高いところにある。そりゃ寒いよな…)

川 ゚ -゚)「ん?」


目の前に、人がいる。


(;・□・)「ひっ…」

川 ゚ -゚)?


その人は、私を見ると怯えの表情を見せた。
この国の習わしで夜に外出する人はまずいないため、驚いたのだろう。


川 ゚ -゚)「どうしたんですか?こんなに夜遅くに。」

私もまさか人がいるとは思わなかったので、この人に何があったのかと気になった。

86名無しさん:2023/05/24(水) 06:42:21 ID:YC4sGJho0
(;・□・)「あのあのぼぼぼく!としとしのははなれれたいもうとががいるのですがっ!」

(;;□;)「そその子はっ!びょうきででうまれた時から身体がとてもっ弱くてっ…!ぼくはもうずっと離れてくらしててて!!こんなに寒い日に大丈夫かっっ、どうじてもどうしでも気きになってしまったのででですっ!!!」


男は、怯えながら叫ぶように言った。


川;゚ -゚)「そうだったんですか。妹さんは、どんなご病気なんですか?」

(;;□;)「かっ…カーネリアン病です。」

川 ゚ -゚)「…きっと大丈夫ですよ。私は薬師ですが、医師からその病の人がこの町にいると聞いた事はありません。町の子達もみんな元気ですし、安心してください。」

カーネリアン病は、代謝の異常で虚弱になり、肌が所々紅玉髄のような色になる病気だ。

川 ゚ -゚)(あれ?でもカーネリアン病って、妊婦への予防生薬投与が義務化されて何十年も前から症例が報告されていないはずじゃ…)

そう思いながら男を見ると、私の下の方に目線を向けていた。

川 ゚ -゚)「あ…」

職業上消毒液を頻繁に使うせいか、手の甲にあかぎれができていた。
血が小さな一滴を作り、甲の外側に流れようとするほどだった。


川 ゚ -゚)「…え?」

87名無しさん:2023/05/24(水) 06:43:14 ID:YC4sGJho0
(;・□・)


気付けば男は、すぐ目の前にいた。


黒だと思っていたその目は真っ赤で、思わず私は後ずさった。


川;゚ -゚)「ヒッ…」


けれど素早く手を引かれ、恐怖でぎゅっと目を瞑ると、ぷつり。と嫌な音がした。



痛いと叫ぼうとしたが、瞼と身体がどんどん重くなっていく。




暗闇の中で、私の手を啜りながら嫌だ、嫌だと泣く声だけが聞こえた。



.

88名無しさん:2023/05/24(水) 06:47:31 ID:YC4sGJho0
__私は翌朝、血溜まりの中で目が覚めた。

川;― -―)「う…」

酷く頭が痛くて、昇り始めた太陽が眩しい。 

川;゚ -゚)「…駄目だ、この場には居られない。」

このまま太陽の下にいると、喉がカラカラになりそうだ。

とにかく気分が悪い。
服にべっとりと付いた血が己の物かは分からないが、これほどの血が出る怪我はないようだったので、私は家に帰ることにした。

____________________________


私の帰宅に気付いて起き出してきた家族は、悲鳴を上げた。
娘が血まみれで帰ってきたからだろう。

川 ゚ -゚)「ただいま。風呂に入るよ。」

私はそう言って、風呂場に直行した。

川 ゚ -゚)(そういえば、昨夜誰かに会って、それからどうしたんだっけ…?)

川 ゚ -゚)「…ん?」

89名無しさん:2023/05/24(水) 06:49:26 ID:YC4sGJho0
ゴシゴシと身体を洗っていると、違和感に気付いた。
なんだか背中がいつもより分厚くて、デコボコとしているのだ。


川;゚ -゚)


凄く嫌な予感がして、泡を流して急いで洗面所の前に立った。


川;゚ -゚)「なんだ?これ………」


背中を見ると、真っ黒な翼のようなものが体に埋まるように畳まれている。


そういえば、目も真っ赤だ。


まるで、昨日見た人のような_____


____________________________


川 ⊃ -゚)「ん…」

気付くと私は、自室のベッドの上にいた。
外はもう夜で、部屋の中はランプに照らされている。
ベッドの横には、泣いている両親と友人達がいた。

川 ゚ -゚)「……」


川 ゚ -゚)「なんだか深刻そうだけど…ごめん。お腹が空いているんだ。」

川 ゚ -゚)「レバーか、赤身肉とかないかな?」

_____
___
__

90名無しさん:2023/05/24(水) 06:51:49 ID:YC4sGJho0
(゚、゚トソン「身体に気を付けるんですよ。」

( <●><●>)「時間が取れ次第、会いに行きますから。」

川 ゚ー゚)「ありがとう、母さん、父さん。」

川 ゚ー゚)「私は薬師だ。必ず解決法を見付け出してここへ帰ってくるよ。」

両親と別れの挨拶をした私は、友人の待つ馬車へと乗り込んだ。

____________________________


ゴトゴト

ζ(゚ー゚*ζ「クー、身体の方は大丈夫?」

川 ゚ -゚)「ああ。」

私は、ブカブカのローブに押し付けていた唇を離してから返事をした。
友人のデレは淡い色のワンピースを着ているというのに、私がこんな真っ黒な服を着ているのは、透過した陽の光が肌に当たる事を防ぐためだ。


川 ゚ -゚)「…」


見慣れた町並みが、どんどん遠ざかっていく。

91名無しさん:2023/05/24(水) 06:52:52 ID:YC4sGJho0
__両親と話をすり合わせた結果、どうやら私は吸血鬼になってしまったようだ。

一昨日の晩に遭遇した男は吸血鬼で、私は手を噛まれた。
けれど何の免疫か、私の血は対抗し打ち勝った。
私の血が吸血鬼にとって毒だった、と言った方が早いかもしれない。
けれど傷口から吸血鬼の血が混じり、私も吸血鬼になってしまったのだ。

川 ゚ -゚)q(それは血液感染で片付けるとして、血以外の形跡が無いのは奇妙だな…誰かが動かしたようでもなかったし…)

そんな事を考えても、わたしが吸血鬼になってしまった事実は変わらない。

赤い目はともかく、翼が動かぬ証拠だ。

92名無しさん:2023/05/24(水) 06:54:35 ID:YC4sGJho0
吸血鬼への扱いは、成人して暫くしてから頃合いを見計らって親から伝えられるのが習わしなのだそうだ。
成人してからの私は、毎日仕事の後も勉強に明け暮れていたし、両親も似たようなものなので話す機会が取れなかったのだろう。


私はこれから、誰も居ない森の中へと隔離される。


けれど、森の中で何もせずじっとしている訳ではない。
私が今までのような仕事が出来るように伝達役をすると、友人達が名乗りを上げてくれたのだ。

町から持ち込まれる仕事に、この地の薬草や素材の調査、吸血鬼の症状を改善するための研究。

それが、これからの私の役目だ。

93名無しさん:2023/05/24(水) 06:56:51 ID:YC4sGJho0
川*゚ー゚)o「クー、これはどこに持ってく?」

川 ゚ -゚)「じゃあ、リビングに。」

l从・∀・ノ!リ人「お仕事道具はそっちのちっさい部屋にぶち込んどくのじゃ〜!」

lw´‐ _‐ノv「米と食料はひとまず地下に置くぞ。」

ζ(゚ー゚*ζ「リネン類、整えてくるね。」

友人は皆、歳の近い幼馴染だ。
キュートと妹者は1つ下で、シュールは同い年、デレは1つ上だ。

重い物は、仕事仲間の二人が運んでくれた。

川 ゚ -゚)、「御者までしてくれたのに、悪いな。」

(’e’)「早く戻ってきてくださいね、リーダー。」

( ・3・)「吸血鬼の治療薬が出来たら、大儲けっすよw頑張りましょww」

川 ゚ー゚)「ああ。」

使えないわけではないものの、仕事をするには井戸の補修が必要だと、二人が後日また手伝いに来てくれる事になった。

川 ゚ -゚)ノシ

川 ゚ -゚)「それじゃ、まずは家の中を調べるか。」

____________________________


それから私は、掃除がてら家中を観察する事にした。

リビングの小さな本棚には数冊のノートがあり、
罠猟の手順や肉料理のレシピ等がそれぞれ書き綴られている。

川 ゚ -゚)(森の中の獣を獲って生活をしろと言われたが、これを参考にしよう。他に使えそうな物は…無さそうだな。)

川 ゚ -゚)(安全確認のために、最初に私がこの家に入って一通りを見た。どれもこれも置いてある物は酷くボロボロなのに、生活感があった気がする。)

川;゚ -゚)(私はそれを見て…怖いと思った。本当に誰か…吸血鬼がいたのかもしれないと。それをみんなも感じたはずだ。)


川;゚ -゚)「…」


みんなはこれから、本当に来てくれるのだろうか?

94名無しさん:2023/05/24(水) 07:00:11 ID:YC4sGJho0
____________________________


(’e’)「おはようございます。早速始めますので、しばらく家の中に居てください。」

( ・3・)「ついでに獣用の罠や解体器具も社長から預かってきたっす。」

私の心配をよそに、二人は約束通りの日に来てくれた。
材料と工具だけ持ってきてくれるのだと思っていたら、工事までしてくれるそうだ。

川 ゚ -゚)「ああ、助かるよ。食料の確保には、なるべく時間を割きたくないからな。」

早速、家の中で仕事の書類を確認する。

私達は、生薬を取り扱う仕事をしている。
上の部署が作った素材の分量をもとに、片っ端から組んでいくのが主な仕事で、手が空けば新素材が何に使えるかを調べる作業にも駆り出される。

組織の中では一番下っ端だ。
ただ、私の両親と叔父が経営している会社という事もあり昔馴染みが多く、皆可愛がってくれるので居心地は悪くない。

川 ゚ -゚)(これからは、持ち込まれた素材を調べるのが私の仕事か…)

川 ゚ -゚)(まあ、吸血鬼が組んだ薬なんて、誰も飲みたがらないだろうしな。)

_____
___
__

(’e’)「次回は大体、2ヶ月後でしょうか。デレさん達が2人組で荷物を運んでくれる予定です。」

( ・3・)「仕事と吸血鬼に関しての報告書も、帰りに渡してください。」

(’e’)「では、私達はこれで。」

川 ゚ -゚)「ああ、分かった。二人共、今日はありがとう。気を付けて帰ってくれ。」

川 ゚ー゚)「それとこれを遅い昼食に。鹿肉入りのサンドイッチとお茶だ。」

二人が井戸の滑車を取り替えてくれている間に、作った物だ。

(*’e’)「ありがとうございます。」

(*・3・)「あざっす!うまそーっす。」

川 ゚ー゚)「ああ。」

95名無しさん:2023/05/24(水) 07:15:37 ID:YC4sGJho0
_____
___
__

ζ(゚ー゚*ζ「クー!」

l从・∀・ノ!リ人「会えて嬉しいのじゃ〜っ!」

川 ゚ー゚)「やぁ、二人共。」

私の隔離生活は、想像していたほど孤独ではなかった。

私の誕生日には両親も来てくれたし、3ヶ月に一度は誰かが実家の馬車を借りてやって来ては、荷物のやり取りついでに長話をしていってくれるのだ。

私はハーブティーと焼き菓子を、5人用のテーブルに置いた。
それから窓の外に見える、町では見られない珍しい草花を眺めながら話をするのだ。

l从・∀・ノ!リ人○「クーが出してくれるお茶とお菓子を食べると、なんだか元気になるのじゃ〜!」サクサク

川 ゚ー゚)「この家の本棚で見付けたレシピさ。造血を助ける効果のある材料が組み合わさっているんだ。」

ζ(゚ー゚*ζ「クー、何か必要な物はない?次に来る時に持ってくるわ。」

川 ゚ -゚)q「そうだな…すまないけれど、生薬を保存する瓶をあと20個お願いしたいな。」

ζ(゚ー゚*ζ「分かったわ。あと、これ。」

そう言ってデレが後ろから私に羽織らせたのは、薄緑色のカーディガンだった。

尻が隠れるほどの丈で、厚手だ。
肩や袖はすっきりしているが、下に向かって丸みを帯びるように、裾にはゆとりがある。
胸の左右には、生成色の花の刺繍が施されている。

川 ゚ -゚)「流行が変わったのか?私が町に居た頃は、短い丈が流行っていたじゃないか。」

ζ(゚ー゚*ζ「森の中は寒いでしょう?心配で気付いたら、こんなに長く編んでしまったの。」

川 ゚ー゚)「…そうか、ありがとう。」

大人っぽいとよく言われていた私には、少し可愛過ぎるかもしれない。
けれど、デレのエメラルドグリーンの瞳を白で薄めたような色のカーディガンを、私はとても気に入った。

96名無しさん:2023/05/24(水) 07:18:03 ID:YC4sGJho0
l从・∀・ノ!リ人「また来るのじゃ〜!」

ζ(゚ー゚*ζ「元気でね。」

川 ゚ー゚)ノシ「ああ。」

川 ゚ -゚)ノ

川 ゚ -゚)(この別れ時が、一番嫌だな。)

人が近くに居ても、獣の血の保存食を食べ補助となる食品を頻繁にとっていれば、少々飢えは感じるもののこんな風に過ごす事が出来る。

本当は追いかけて、一緒に町へ帰りたい。

だけどデレと妹者が、困った顔をしたら。
断られて、もう来てくれなくなったら。

そう思うと、家から飛び出す事は出来なかった。

川 ゚ -゚)(ここへ来てくれるのだって、きっと大変なはずだ。)

友人はそれぞれ、私や両親とは関係のない職に勤めている。
良く思わない人だって、周りにはいるかもしれない。

川 ゚ -゚)(デレ達がここへ来る事を町の人が納得するような…何か特別な強みが私には必要だ。)

____________________________

97名無しさん:2023/05/24(水) 07:19:47 ID:YC4sGJho0
続きは夜に投下します

98名無しさん:2023/05/24(水) 20:45:50 ID:YC4sGJho0
_____
___
__

ζ(゚ー゚*ζ「瓶の熱が取れたわ。」

o川;*゚ー゚)o「こっちも粉の計量終わったよー。」

川 ゚ -゚)「ありがとう。」

私達は年に1度だけ、みんなで集まる日を設けている。
今回は2度目で、2泊してくれる予定だ。

今夜は、みんなで豪勢な夕食を楽しんだ。
貧血予防のために私はワインを飲めなかったけれど、酔っ払ったみんなと浮かれて踊るのは、とても楽しかった。

最近の私といえば、庭に大量に生えているハーブをベースに繭の粉等を混ぜた保湿剤を完成させ、町に卸している。
今は、昼間からの作業を引き続きみんなに手伝ってもらっているところだ。


川 ゚ -゚)つφ「なんだ、みんな。まだ結婚していなかったのか。」

私は煮沸後の硝子瓶にスポイトで保湿剤を入れる手を止め、顔を上げた。

町では成人に併せて結婚する人が多いのに対し、私達は18を超えてもまだ独身だった。
そのため、そんな言葉が出たのだ。

lw´‐ _‐ノv「君がまとめて嫁にしてくれたら良いんだよ。そうしたらみんな玉の輿さ。」

シューが、戯けるように言う。

私の両親達の会社は、町で3本の指に入るほどの規模だ。
もし私が男だったら、令息などと呼ばれていたことだろう。
しかし年頃の女を四人も娶ったら、町の男達に恨まれてしまうなと苦笑した。


川 ゚ー゚)「私は誠実なんだ。四人のうちから誰か一人に決めてみせるさ。」

99名無しさん:2023/05/24(水) 20:46:54 ID:YC4sGJho0
ζ(゚ー゚*ζ「もう、シューったら。」

ζ(゚ー゚*ζ「…それなんだけど、報告があるの。」

川 ゚ -゚)「報告?」

lw´‐ _‐ノv「私達、婚約者が出来たんだ。私は冬に、知り合いの米農家と結婚するよ。」

ζ(゚ー゚*ζ「私は従兄弟と、春に結婚するわ。」

l从・∀・ノ!リ人「妹者は嫁に行くと兄者と弟者がうるさいから、お婿さんに来てもらうのじゃ〜!」

川 ゚ー゚)「……そうか。式には行けなくて申し訳ないが、幸せになってくれ。」

l从・∀・ノ!リ人「あ、でもキュートはまだなのじゃ。」

o川;*゚ー゚)o「もーっ!気にしてるのに!!」

100名無しさん:2023/05/24(水) 20:49:18 ID:YC4sGJho0
川 ゚ -゚)「それじゃ…ここへはもう、めったに来られなくなるのか…?」

川 ゚ -゚) ハッ

川;゚ -゚)「ごめん。忘れてくれ。」

私は祝いの場で、なんと自分勝手な言葉を呟いてしまったのだろう。

o川*゚ー゚)o「何言ってるの!こんなに凄い特産品を生み出したくせに!」

ζ(゚ー゚*ζ「そうよ。もう町でどこにも、あなたの商品を置かない宿はないわ。」

川;゚ -゚)「…?」

デレと妹者の実家は、宿屋だ。
私達の町には、宿場町ほどではないが数件の宿がある。
料理が美味いだとか温泉が有るなんて強みもなく、旅人からは『急なアクシデントに見舞われた時に便利』程度の認識だった。

それがデレの実家の宿に置いた保湿剤の噂が広がり、婦人を中心に宿泊には私達の町を選ぶ人が増えたのだという。
この保湿剤を取り扱う雑貨屋も増え、以前の町よりも賑わいがあるそうだ。

lw´‐ _‐ノv「うちの米も他の街の人には珍しいみたいで、名物として宿屋に卸すようになったんだ。」

lw´‐ _‐ノv「君のお陰で町が潤っているんだ。保湿剤だけに。この動きを止めようとする人なんていないよ。」

l从・∀・ノ!リ人「仕事を口実に、変わらず会いに来るのじゃ〜!!」

川 ゚ー゚)「そ…そうか…。」ホッ

____________________________

101名無しさん:2023/05/24(水) 20:51:21 ID:YC4sGJho0
__それから、半年が経った。
「他にも何か商品を」と町から依頼された私は、リップクリームを作った。

保湿剤に使っているハーブをより濃く煮詰め、その際紅色の花を粉にして混ぜ、ツルツルとした木の実の殻を器代わりに使う。
そちらも保湿剤とまとめて、飛ぶように売れた。

ただ1つ、問題があった。

主な材料となるハーブが、町の土では上手く育たないそうなのだ。
ハーブを煮詰めてもとろみが出ずにサラサラとして、本来の効果が期待出来ないのだと。

作ってしまえば保湿剤は半年、リップクリームは1年持つ。
そのため、基本的には私一人で製作している。

川∩;゚ -゚)(町から持ち込まれる研究の仕事は無くなったけど、ひたすら忙しいな…)フゥ…

川;゚ -゚)(でも、これがあるから誰かが月に一度は来てくれるまでになったんだ。)

川;゚ -゚)(欲を言えばもっと、吸血鬼を治す方法を調べるのに時間を割きたいんだけれど…。仕方ないな。)

____________________________

102名無しさん:2023/05/24(水) 20:53:18 ID:YC4sGJho0
_____
___
__

o川*゚ー゚)o「こーんにーちはー!」

l从・∀・ノ!リ人「朗報なのじゃーっ!」

川 ゚ー゚)「どうしたんだ?今日は、みんなで。」

まだ、荷物を取りに来るには早い日だ。

lw´‐ _‐ノv「なんと、ついにキュートが結婚するんだ。」

o川*゚ー゚)o「その挨拶でーす。」

川 ゚ー゚)「そうだったのか…。おめでとう!」

川 ゚ー゚)「日差しが強いから、早く中に入ってくれ。」

o川*゚ー゚)o「はーい。」

_____
___
__

川 ゚ -゚)「それで、どんな人と結婚するんだ?」

o川*゚ー゚)o「ほら、私って今は保湿剤の販売の窓口をしてるでしょ?」

キュートは私の保湿剤が売れだしてから、うちの化粧品部門へと転職してくれたのだ。

o川*゚ー゚)o「それでいつも買い付けに来てくれる人の紹介で、四つ隣の街の商家の二男坊にプロポーズされちゃったの!」

l从・∀・ノ!リ人「スピード結婚なのじゃ〜!」

川 ゚ー゚)「良かったじゃないか!」

川 ゚ー゚)「…」

川 ゚ー゚)「気に入らなかった時は、教えてくれよ?私が噛んでやる。」

o川;*゚Д゚)o「ちょ…やめてよ!人がやっと惚気られるってのにさー!」

川 ^ -^)「ごめんごめん。冗談だよw」


それから私は、キュートの気が済むまで馴れ初めを聞いてやった。

____________________________

103名無しさん:2023/05/24(水) 20:55:35 ID:YC4sGJho0
川 ゚ -゚)「子ども達は、元気か?」

ζ(゚ー゚*ζ「ええ。」

lw´‐ _‐ノv「うちはもう、立って歩くようになった。」

l从・∀・*ノ!リ人「凄いのじゃ〜!!」

o川;*゚ー゚)o「…なんか知らない土地で、いつか子育てするかもって思うと不安になってきた…。」

lw´‐ _‐ノv「それは不安だ。何しろ米があるかも分からない土地だからな…」

o川;*゚ー゚)o「お米、関係ある?」

私達は夕飯を取りながら、近況について話し合った。

急に来たから鹿肉のスモークサンドイッチと茶菓子くらいしか出せなかったが、『クッキーさえあれば最高なのじゃ!』と妹者が言ってくれたので、良しとしよう。

____________________________


話し込んでいたら、あっという間に就寝の時間だ。
私のベッドルームの床に綿布団を敷き詰めて、みんなで横になった。

川 ゚ -゚)(あったかい…)

隣でスヤスヤと寝る妹者の肩が、当たっているのだ。

川 ゚ー゚)(この子はいつまでも子供体温なのかな…?)

川 − -−)。° ウトウト



o川*゚ー゚)o「…寝ちゃったかな?」

布団の端の方から、囁くような声が聞こえる。

私は反対側を向いていたけれど眠くて、振り向かずに聞き耳だけ立てる事にした。


o川*゚ー゚)o「クーのこと、よろしくね。」

ζ(゚ー゚*ζ「うん。」



川 - )

____________________________

104名無しさん:2023/05/24(水) 20:58:08 ID:YC4sGJho0
o川*゚ー゚)ノシ「それじゃあ、行ってきまーすっ!!」

そう言って、キュートが馬車から手を振る。
一生懸命出しているような、大きな声だった。

川 ゚ー゚)ノシ「行ってらっしゃい!!」

私も負けじと、精一杯の声を出した。

馬車は、どんどん遠ざかっていく。


川 ゚ -゚)「…」


友人が、遠くへお嫁に行ってしまう。
実家に帰る機会だって、たまにしかないだろう。


川 ; -;)



もうここへ来てくれることは、無いのだろう。




川 ⊃ -;)(早く…治療薬を完成させて、町に戻らなきゃ…。)

____________________________

105名無しさん:2023/05/24(水) 20:59:41 ID:YC4sGJho0
_____
___
__

(’e’)「__そのため、これからは品種改良して町で生育しているハーブをもとに、大衆向けのラインを作る方針となりました。」

川 ゚ -゚)「え…?」

私は飲もうとしていたティーカップを、皿に置いた。

私が作る化粧品類の話題は、馬車を使って10日かかるような街にまで広がっているそうだ。
社長が両親達から従兄弟のジョルジュに代替わりするのに併せ、より町民の雇用に繋がる道へと舵を切るという事らしい。

正直品種改良側で作った保湿剤の効能は、従来の物と比べて6、7割だろうか。
ただし持ちはそちらの方が若干良いので、販路を拡げるには妥当な判断だろう。

( ・3・)「ジョルジュさん、今までクーさんに任せきりで申し訳なかったって、言ってたっす。」

川 ゚ -゚)「…いや、ジョルジュらしい良い判断だよ。…素晴らしい事だと思う。」


川;゚ー゚)「ほら…私はさ、自分の研究に打ち込めるから…さ…。」

____________________________

106名無しさん:2023/05/24(水) 21:04:00 ID:YC4sGJho0
_____
___
__

ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、思い付いたのだけど、クーも外に出掛けてみるのはどうかしら?」

デレ達がそう言ってきたのは、私が25歳の秋のことだった。

川 ゚ -゚)「外に…?昇った日の光に当たると辛いんだが…」

l从・∀・ノ!リ人b「夜に出掛ければ良いのじゃ〜っ!」

ζ(゚ー゚*ζ「この国の人は吸血鬼対策で夜に出掛けないのだから、夜の間だけはもっと自由にしても良いんじゃないかしら?」

川;゚ -゚)q「うーん…?」

私が返事に困っているとデレが立ち上がり、ソファーに置いた肩掛け袋から2つの服を取り出した。

まずは黒いワンピースを着るよう促され、その上から新しい薄緑色の、前と変わらず裾の長いカーディガンを羽織らせてくれた。
今度は、背中の羽が出し入れ出来るようなスリットが入っている。

ζ(゚ー゚*ζ「他の吸血鬼に会って、友達になれるかもしれないわ。」

川 ゚ -゚)「…。」

l从・∀・ノ!リ人「もしかして、自分を噛んだヤツみたいなのばっかり居るんじゃないかって、気にしてるのじゃ?」

l从・∀・ノ!リ人b「だけどクーみたいに、良い子もいるかもしれないのじゃ!」

l从・∀・ノ!リ人b「それに、クーにも翼があるのじゃ。嫌なヤツだったら、大急ぎで逃げれば良いのじゃ〜!!」

川 ゚ -゚)「………それもそうだな。」

川 ゚ -゚)「…ありがとう。大事に着るよ…。」

____________________________

107名無しさん:2023/05/24(水) 21:05:23 ID:YC4sGJho0
二人の提案は、私にとって不快なものだった。

川 - )(どうして…そんな事を言うのだろう?)

治療薬さえ完成すれば、私は町に帰るのに。
だから吸血鬼の友達なんて、必要ないのに。

__だけど、出掛けることには一理ある。
私は今、庭中の植物を調べていて、治療薬の素材としていくつかの候補をあげた。
だけど肝心の鉄を補うための素材が無い。
庭の外も調べる必要がある。


爪川 ゚ -゚)爪 バサッバサッ


満月の夜に、私は初めて翼を使った。


爪川 ; -;)爪

108名無しさん:2023/05/24(水) 21:07:15 ID:YC4sGJho0
爪川 ⊃ -;)爪「ん…?」

町の反対方向へと進み、ヤケクソで夜のうちに帰れるギリギリの場所まで来てみると、不思議な森を見付けた。

なんとなく、私の住んでいる森に似ている。

爪川 ゚ -゚)爪「…降りてみよう。」

森の中には、石造りの家があった。

川 ゚ -゚)「…」

窓から中を覗いてみたが、誰も住んでいないようだ。
もう何年も使われていないのか、家の中は蜘蛛の巣が張り巡らされている。

川 ゚ -゚)(郵便ポストがある…)パカッ

Σ川;゚ -゚)「わっ…」ドサドサッ

川;゚ -゚)q(誰から誰への手紙だろう?)

私は、いけないと思いながらも手紙を開いた。


【これを読んだ人がいたら、私と友達になってください。】


川;゚ -゚)(これは…?)

「あ…」

川;゚ -゚))「…っ?!」


後ろを振り向くと、私のように黒い服を着た女がいた。

109名無しさん:2023/05/24(水) 21:08:54 ID:YC4sGJho0
翼を持つその女は、ハインと名乗った。

私と同じように、つい夜に出掛けて運悪く吸血鬼に遭遇してしまったらしい。
それから、もう何十年も変わらない姿で生きているのだそうだ。

川 ゚ -゚)「…」

「なあ、アンタはこんなとこで何しているんだ…?」

川 ゚ -゚)「…植物の採集に。ここは、私の住む森に似ていたから降りてみたんだ。」

「そ、そっか…。でも何で植物を?」

川 ゚ -゚)「吸血鬼を治す治療薬を作るためさ。」

「…?そんなこと、出来るのか?」

川 ゚ -゚)「ああ、私は薬師だからな。必ず成し遂げるよ。」


町に帰るために。


「…それ、私にも手伝わせてくれないか?」

川 ゚ -゚)「え…?」

ハインは、この辺りに生える植物の採取を手伝う他に、自分の住む場所の植物も持ってきてくれると言う。
代わりに、その間は話し相手になってほしいと。

川 ゚ -゚)「分かった。」

110名無しさん:2023/05/24(水) 21:12:14 ID:YC4sGJho0
_____
___
__

それから私達は、月の照る日に合わせてポストのある家に待ち合わせた。
ハインには私が渡した布の袋に植物を入れてきてもらい、ポストの家でも二人で採集して、それを持ち帰る。

土混じりの袋はとても重かったけれど、急がなければいけない。
自分の家の庭に植えて、ある程度定着してから少量摘み取り乾燥させ、粉にする。
そして結局のところは、しばらく飲んで体調の変化を見るのだ。

川 ゚ -゚)(私は何ともなくても、人間の体には毒の物もあるかもしれないな…。)

2年もすればポストの家の庭と森中の、粗方の植物の採集と検証が終わった。
2つほど候補が見付かり、しかしそれらも鉄の吸収を助けるような効果の物だった。


川#゚ -゚)⊃ ダンッ!


私は机を叩いた。

とんだ無駄足だった。

別れ際に、ハインから一緒にポストのある家に住まないかと引き留められた。
長年誰も住んでおらず、獣の数も増えているだろうからと。


川 ゚ -゚)「すまない。私にはやるべき事があるから。」


鬱陶しいその手を、長く握る事で払った。

____________________________

111名無しさん:2023/05/24(水) 21:13:53 ID:YC4sGJho0
私が32歳になる日に、デレが私の家を訪ねてくれた。

ζ(゚ー゚*ζ「お誕生日、おめでとう!」

川*゚ -゚)「ありがとう。」

私は、いつもより大量のプレゼントを貰った。
中には寝具もあり、とても嬉しかった。

川 ゚ -゚)、(だけど出来れば、みんなの分の寝具を新調したかったんだけどな…)

川 ゚ -゚)「父さんと母さんではなく、デレが来るのは珍しいな。」

ζ(゚ー゚*ζ「…その前に、喉が乾いちゃって。お茶を飲みたいわ。」

川 ゚ー゚)「あ、ああ…。」

_____
___
__

ζ(゚ー゚*ζ「前に知り合った吸血鬼さんとはどう?仲良くしてる?」

川 ゚ー゚)「え…?あっ。まあ、仲良しだよ。」

私は嘘を付いた。
もう何年も会っていないのだから。

川 ゚ー゚)「それにしても、君が一人で来てくれるのも、初めてじゃないか?」

川 ゚ー゚)「シュールと妹者は?」

デレ達がここへ通うようになってから、もう10年以上だ。
馬車を確認したらすぐ獣の血の保存食さえ取れば、日の光は依然辛いものの、私は人と過ごす事が出来る。
だから、安心して一人で来られると判断したのだろう。
みんなには複数人の子どもがいるし、手分けして来たほうが通いやすいのだろう。

ζ( Д ζ「それ…なんだけど…」

112名無しさん:2023/05/24(水) 21:19:36 ID:YC4sGJho0
ζ( Д ζ「町の中で、…クーをよく思っていない人が増えているの。」

川;゚ -゚)「…え…?」

ζ( Д ;ζ「クーは町の功労者よ。みんなで窘めてもいるの。でも、若い人達が…」

川;゚ -゚)(町に、私を知らない人が増えたからか…)

若い衆は、この町から吸血鬼が出たと周りに知れたらどうするのだとか、獣や植物を独占している事に不満があるらしい。

川;゚ -゚)(そんな…私は決まりでここへ来ただけなのに…)

そんなにこの場所が良いのなら、私は大喜びで代わるのに。

川;゚ -゚)

川;゚ -゚)「な…なぁ…次はシュールと妹者のどちらが来てくれるのかな…?」

ζ( Д ;ζ「シュールは…家族からここへ来るのを止められて…妹者は…今…病気で……」

川;゚ -゚)「っ!!」

川 - )「……父さんと、母さんは?元気にしてるかい?」


そういえば、母さんは2度誕生日の日に来てくれなかったな


ζ( Д ζ「…………おばさんは…3年前に……おじさんも……今年…」

川 - )


私が町にいないからと、しばらく隠しておくつもりだったのかもしれない。


川 - )「…デレは?どうして来てくれるんだ…?」

ζ( ー ζ「私は、変わらないわ。」

ζ( ー ζ「結婚する時に、条件にしたの。年に二度は必ず、友人のもとへ通うって。」

川 - )「…」


デレの手が、私の涙を拭ってくれた。


デレの手は…こんなに硬かったかな

113名無しさん:2023/05/24(水) 21:23:18 ID:YC4sGJho0
川 ゚ -゚)「…」

私にとっての不幸が大量に押し寄せて、何も手に付かなくなった。
机に突っ伏して、窓の外を眺める。

川 ゚ -゚)「…なんだ?あれ…」

庭の遠くの方に、見知らぬ植物が見える。

川 ゚ -゚)(…?)ザッザッ

私は昼間だというのに、ローブで身体を覆って吸い寄せられるようにその植物のもとへと辿り着いた。
ここは、ポストの家で採取した植物を移植した場所だ。

川 ゚ -゚)(こんな植物、採集した覚えはないけど…)

土に種が混ざっていたのかもしれない。
その植物の実は赤黒く、3cmほどの実が3つ成っていた。

川 ゚ -゚)「とりあえず2つ取ってみるか…」

私は家に戻り、実を数日乾燥させることにした。

____________________________


川 ゚ -゚)⊃ ゴリゴリ

乾燥させた実を、薬研にかけ、粉にする。

川 ゚ -゚)「とりあえず、数回分に分けて飲んでみよう。」

川 ゚ -゚) モグッ

舌で転がすと、覚えのある味がした。
いつか、母が旅行土産で買ってきてくれた物だ。
こんな味の粉を湯で溶かして、砂糖と牛乳を入れて飲ませてくれた。

風味はこちらの方がキツい。
ほのかにシナモンと鉄のような味がするのだ。
私はこの植物を、ココアの木と名付ける事にした。

____________________________

114名無しさん:2023/05/24(水) 21:25:43 ID:YC4sGJho0
川*゚ -゚))「なんだか…食べ物が、美味しくなった気がする。」モグモグ

ここ数日、今まで補助的に取っていた食品の味が、はっきりとしだした。
ドロドロとした、ほのかに酸っぱい何かという印象だったトマトが、酸味を強く感じ取れるようになったのだ。

川*゚ -゚))(今試しているのは、ココアの木だけだ。残りの実を分解して種を取り出せるか試してみよう。)

_____
___
__

川 ゚ -゚)「うーん…。」

小さ過ぎるのか、解してみても種が見付からない。
顕微鏡は流石に職場にしか無いし、デレも来たばかりなので次の機会に頼む事になりそうだ。

川 ゚ -゚)「勿体ない気がするけれど、とりあえずこのまま植えてみるか。」

____________________________


爪川 ゚ -゚)爪 バサッバサッ

私は月の明るい日を待ち、もう一度ポストのある家へ行く事にした。

川 ゚ -゚)(元々持ってきた植物の方は…どの辺りに生えていたっけ…)

代わり映えのない、蜘蛛の巣のかかった家を横切った。
ハインはあれからここに住んだ訳ではないようだ。

川 ゚ -゚)「見付かったけど、ココアは生えていないな…」

川 ゚ -゚)(しばらくここに通って、探してみることにしよう。)

それから私は、他の土地にも出掛けてみる事にした。

爪川 ゚ -゚)爪(流石に一箇所だけを調べるのも非効率だろうし…)バサッバサッ

____________________________

115名無しさん:2023/05/24(水) 21:27:45 ID:YC4sGJho0
それからまた、2年が経ってしまった。

そのうちに実は5つしか成らず、デレに頼んでスケッチと共に職場に顕微鏡で種を調べてほしいと依頼した。
依頼料の代わりとして、今まで採取した中で、特に薬効のありそうな植物も添えた。

川 ゚ -゚)q(これで何か分かると良いんだけど…)

_____
___
__

それから約半年が過ぎて、デレがやって来た。

その際職場から預かってきた手紙には、「挿し木をしてはどうか」と書かれていた。

川 ゚ -゚)(確かに、挿し木が出来そうな大きさになったな。)

依頼した種は、引き続き職場で調べてくれるそうだ。
だけど、ほんの僅かしか取れない種の発芽を待つなら、挿し木のほうが可能性がありそうだ。

ζ(゚ー゚*ζ「その実を粉にして飲むと、クーの味覚が良くなるんでしょう?沢山成ると良いわね。」

川 ゚ー゚)「ああ。そうしたらデレにも、昔私が母さんに作ってもらったココアを再現してご馳走するよ。」

ζ(^ー^*ζ「まあ!楽しみね。」

____________________________


川∩;゚ -゚)「これで良いんだろうか…?」フー…

私は、手紙に添えられた農家が書いたというメモを頼りに、挿し木を済ませた。

川 ゚ -゚)(この字、見たことがある。…シュールか?)

川 ゚ -゚)(…。)ギュッ

根が張るまでには、時間がかかるそうだ。

川 ゚ -゚)(また数年…か…。それまでにもとの木に実が沢山成ると良いんだけど…。)

____________________________

116名無しさん:2023/05/24(水) 21:30:21 ID:YC4sGJho0
ある年の私の誕生日に、デレがこう言った。

ζ(゚ー゚*ζ「私に、孫が出来るそうなの。」

ζ(^ー^*ζ「産まれるのはまだまだ先なんだけど、お嫁さんが美人だから、きっと孫も可愛いわよ。ふふ。」

川 ゚ー゚)「それは、楽しみだな。」

デレが、もう孫が出来る歳だなんて。
私にはピンと来なかった。

川 ゚ -゚)「そうだ。前に言ったココアなんだけど、丁度牛乳を持ってきてもらったし、味見してみないか?」

ζ(゚ー゚*ζ「前に…?ごめんなさい。覚えていないけれど、飲んでみたいわ!」

私は、その言葉が少しショックだったけれど、キッチンへ向かい練習していたレシピ通りに作った。

川 ゚ -゚)「どうぞ。飲んでみてくれ。」コトッ

ζ(゚ー゚*ζ「…とっても美味しいわ!なんだか元気の出る味ね。」

川 ゚ー゚)「良かった!実はこれが、町へ戻れる鍵になるかもしれないんだ。」

ζ(゚ー゚*ζ「そうなの?やったじゃない!」

デレのお母さんのような声で、デレがそう言った。

収穫量は段々と増えていき、今年の実は15個も取れた。
候補にしていた複数の素材と併せて取る事で、20包につき鹿を狩る頻度を1度減らせる。
空腹時に獣に近付いてみる事で実験したが、以前ほどの衝動はない。

そして驚くことに、欠かさず飲み続けている間は、眼の色が赤から元の色に戻るのだ!

これを纏めた報告書をデレに持ち帰ってもらい、服用中の一時帰宅が可能か、職場と医師に相談する。
きっと受け入れてくれるはずだ。

今回もデレは、沢山の荷物を持ってきてくれた。

____________________________

117名無しさん:2023/05/24(水) 21:33:02 ID:YC4sGJho0
_____
___
__

デレに報告書を渡し、ひと月程してから来客があった。

( ・3・)「お久しぶりっす。」

川 ゚ -゚)「…!久しぶりだな、ボル。」

彼は私より2つ年上だ。
最後に会ったのは確か20代半ばだったので、あまりの変わり様に驚いた。

私は「いつも一緒のジョンはどうしたのか?」と聞きたかったが、ジョンはボルより更に歳上だった事を思い出し、口を閉じた。

( ・3・)「一時帰宅の許可が降りたっす。20包用意出来たなら、半月滞在出来るっす。」

川 ゚ -゚)「半月…」

徒歩で帰るとしたら丸1日かかるため、実質12日だ。

( ・3・)「貰った報告書から見ればまあ、1ヶ月半は可能だという判断なんすけどね。」

( ・3・)「ただ若者達の心証を考慮して、大成功を見せ付けてやらなくちゃいけないんす。」

川 ゚ -゚)「…。分かったよ。それでいこう。」


やっと、長年掛けて手にしたチャンスだ。
絶対に逃しはしない。

118名無しさん:2023/05/24(水) 21:34:24 ID:YC4sGJho0
( ・3・)「そういえば、顕微鏡の結果っすけど、ウチで保管してる植物の種子で似た系統の物は無かったっす。」

川 ゚ -゚)「…ひとつも?」

( ・3・)「はい。クーさんの奥様が飲ませてくれたというアオイ科の植物とも似ても似つかなかったっす。」

川;゚ -゚)「…」

( ・3・)「なんとか種は余らせて持ってきたんすけど、ここに植えます?」

川;゚ -゚)「あ…ああ…。ただ、日の当たりやすい場所は埋まっててな…。森の方に植えるよ。」

____________________________


川 ゚ -゚)q(来年の夏に収穫するとして、一時帰宅は秋頃か…。)

夏の少しの間にだけ、実がなる木
私はそれから、如何に多くの実を収穫出来るかを考えていた。

川 ゚ -゚)q(野菜くずの肥料を増やしてみるか。)

119名無しさん:2023/05/24(水) 21:36:06 ID:YC4sGJho0
_____
___
__

川 ゚ -゚)「…あれ?」

6月がもう終わる頃の夜明けに、私がココアの木を見に行くと、葉の色が斑の茶に変化していた

川;゚ -゚)(去年は、こんな風だったか…?)

変わった事といえば、先日前方の木が1本倒れてごく僅かに日当たりが良くなったくらいだ

川;゚ -゚)(肥料と水をよくやって様子を見てみよう。)

_____
___
__

川 ゚ -゚)


川 ゚ -゚)「……うそ…」


翌日様子を見ると、もとの木と挿し木のどちらも、葉は全て落ちていた
枝には小さな実や、花の咲いた跡がいくつもある


川 ゚ -゚)


水だけはしっかりとかけて、私はフラフラとしながら家に戻った



川 - )



そういえば、デレもしばらく家に来ない




翌年も、翌々年も待ったが、木が再び花を咲かせる事はなかった

____________________________

120名無しさん:2023/05/24(水) 21:41:31 ID:YC4sGJho0
ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは。」

川 ゚ -゚)つ/「っ!!デレ!!」

久しぶりの馬車の音に驚いた私は、急いでドアを開けた。
デレは、私の祖母が来ていたような服を着ている。

ζ(゚ー゚*ζ「お誕生日、おめでとう。」

川 ゚ -゚)「ありがとう…」

ζ(゚ー゚*ζ「プレゼントを…」

そう言って荷物に手を伸ばしたデレが、よろけた。

川;゚ -゚)「あっ、私がやるよ…!」

_____
___
__

ζ(゚ー゚*ζ「これで最後ね。私からのプレゼントよ。」

川 ゚ -゚)「絵の具セット…?」

ζ(゚ー゚*ζ「孫のクリスマスプレゼントと同じで悪いんだけど、思い付かなくて…。クーは植物の研究でスケッチもしているし、絵の具はどうかと思ったのよ。」

川 ゚ー゚)「あ、ああ!嬉しいよ、ありがとう。」

ζ(゚ー゚*ζ「あとは、はい。」

そう言って渡されたのは、薄紫色のカーディガンだった。

川 ゚ -゚)「…」

ζ(゚ー゚*ζ「ごめんなさいね。クーの気に入っている薄緑の色は、廃盤になってしまったそうなの。」

ζ(゚ー゚*ζ「だけどいつの日かみんなで食べたプルーンクッキーの色みたいで、素敵でしょう?」

川 ゚ -゚)「ああ、そうだな。…大事にするよ。」


そのカーディガンは以前の物と比べると、目にガタ付きがあり丈も短かった。

121名無しさん:2023/05/24(水) 21:44:08 ID:YC4sGJho0
°。ζ(゚0゚*ζ「ふあぁ…」

デレが、大きな欠伸をした。

ζ(゚ー゚*ζ「ごめんなさいね。ソファーで少し寝かせてくれるかしら。」

川 ゚ -゚)「ああ。遠いところをありがとう。今、毛布を持ってくるから…」

そう言って2階を行き来し戻ると、既にデレは寝息を立てていた。

ζ(−、−*ζ グーグー…

川 ゚ -゚)(昔は、着くなりみんなでずっと話していたのに…。)

_____
___
__

ζ(゚ー゚*ζ「ご馳走様。」

川 ゚ -゚)「まだ半分も皿が残っているじゃないか。遠慮しないで食べてくれよ。」

ζ(゚ー゚*ζ「いいえ、沢山頂いたわ。じゅーぶん。」

川 ゚ -゚)「そうか、じゃあお茶でも飲みながらはな…」

°。ζ(゚0゚*ζ「食べたら眠くなってきちゃった…ふあぁ…」

_____
___
__

川 ゚ -゚)(…)

今日は、あまりデレと話せなかった。
布団に入るなりすぐ寝てしまったデレを、私は見つめる事しか出来ない。

ζ(、*ζ「ゴホッ…ゴホッ…」

川;゚ -゚)「!おいデレ!大丈夫か?!」

ζ(、*ζ「スゥ…グゥ…」


デレは夜中の間、何十回も嫌な咳をした。

____________________________

122名無しさん:2023/05/24(水) 21:46:20 ID:YC4sGJho0
爪川;゚ -゚)爪 バサッバサッ

デレが帰ってから、私は毎夜のようにあの木を探し回った

爪川;゚ -゚)爪 (早く町に戻らなくては…!デレの病気を治すんだ!!)

別れ際に医者に行く事を勧めたけれど、デレの小さな背中を見ると不安でしょうがなかった。

全速力で飛んではあちこち調べ、家に帰って寝る生活だった。
だけど、どこを探しても見つける事は出来なかった。
その間、庭の木が芽吹くこともなかった。

寂しさのあまり、獣を狩ることをやめた。

彼らは私の近くで生きているのだから。


ただひたすらに飛んだ。


デレはあの日以来ずっと来ない。


ずっとずっとだ。


人は50近くにもなれば、寿命を迎える。


月は何度、満月を迎えたのだろう?

123名無しさん:2023/05/24(水) 21:48:17 ID:YC4sGJho0
川 - )「…っ…っ!!」

川 ; -;)「うわああ"あ"ぁぁん!!!もう嫌だよおおぉぉっ!!!!!!」



愛する人達の幸せを心の底から祝うことも出来ず


誰の傍に居ることも出来ず


みんなが大事にしてくれた私自身を最優先にせず、何十年も無駄にした馬鹿な私が


大嫌いで、苦しくて、喉が傷んで声が出せなくなるまで泣き叫んだ



川 ; -;)(……一人ぼっちは…嫌だ……)

川 ; -;)(…せめて…みんなをひと目だけでも…そうしたら…絶対にまた…頑張るから…)


私は、デレが編んでくれた薄紫色のカーディガンを羽織って扉を開けた

____________________________

124名無しさん:2023/05/24(水) 21:50:32 ID:YC4sGJho0
爪川 ゚ -゚)爪 バサッバサッ

爪川 ゚ -゚)爪「…」

月明かりが照らす町を、見下ろすように飛ぶ。

何十年かぶりに来た町は、思うほど様子が変わってはいなかった。
メイン通りがレンガ造りの道になり、周りに建物が少し増えた程度で、街灯すら交番の前にあるだけだ。


爪川*゚ -゚)爪「っ!!!」


その中で、私は懐かしい姿を見付けた。

カールした髪は、もっとキャラメル色だったはずだけど、あのエメラルドグリーンの瞳は…間違いない。



デレだ!!



__だけど、どうして若い頃の姿なのだろう?



……そうかっ!



きっと仕事仲間が、みんなもずっと若くいられる薬を作ってくれたんだ!



ジョルジュが支援してくれたりしてさ。




だって彼らは、優秀だったのだから!!


.

125名無しさん:2023/05/24(水) 21:53:09 ID:YC4sGJho0
爪川 ; -;)爪「デレっっ!!デレぇっ!!!」


私は、勢い良くデレに抱き着いた

全身に力を込めて、絶対に離れないように。

犬歯が鉤針のようで丁度良かったから、デレの首筋に突き立てた


湧き出る温かい人の匂いに、ホッとした。

126名無しさん:2023/05/24(水) 21:54:59 ID:YC4sGJho0
みんな私だけを置いて、変わっていってしまう。


嫌だ

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ


嫌だ!!!


母のように血管の浮き出た手で、涙を拭ってほしくなんかない。


ずっとそばにいて、またあの薄緑色のカーディガンの上から優しく抱きしめて


艶のある睫毛が頬に当たって、くすぐったくて私は笑うんだ


それから手を取って、一緒に町まで帰ろう




お願いだよ




お願いだから





みんな









年なんて、取らないで!!!!!!!!


.

127名無しさん:2023/05/24(水) 21:56:32 ID:YC4sGJho0

ξ ⊿ )ξ「……ねぇ…どうしてお祖母ちゃんの名前で私を呼ぶの………?」







………?







……君が何を言っているのか、よく分からないよ。








積もる話は明日にしよう。








なんだか酷く、瞼が重いんだ__________





.

128名無しさん:2023/05/24(水) 21:57:18 ID:YC4sGJho0


129名無しさん:2023/05/24(水) 22:11:14 ID:ZzQZyVE.0
はぁー・・・きれい

130名無しさん:2023/05/24(水) 22:12:22 ID:yPD98bOw0


131名無しさん:2023/05/29(月) 21:27:22 ID:5vazpvcA0


現行の作品で一番好き

132名無しさん:2023/06/11(日) 20:26:12 ID:nI.Nq1es0
>>129
ありがとうございます。
頑張りました!

>>130
ありがとうございます。
折返しに入りました。引き続きお付き合い頂けましたら幸いです。

>>131
大変光栄なお言葉を、ありがとうございます!
メインディッシュだらけの現行陣ですが、中間に出てきたパンもなんか美味しかったよね?と言ってもらえるよう、励んでおります!

133名無しさん:2023/06/11(日) 20:33:20 ID:nI.Nq1es0
爪ξ゚ぺ)ξ爪「むー…」バッサバッサ

私は不機嫌だ。
最近ドクオを訪ねても、いつもの場所に居ない日が増えたからだ。

理由を尋ねると、仕事だと言っていた。
なんでも受け入れの条件で、衣食住の代わりに建物の製図をしているのだと。

「いきなりそんな事が出来るものなの?」と私が驚いて聞くと、ドクオは否定した。
この村は昔、近くで倒れた人を村人が助け、お礼に持っていた沢山の建物の製図を“貰った”のだそうだ。
そしてその写しを売る事で、この村は成り立っているのだという。

最初は、他の村人達と同じ作業をしていたそうだ。
けれど細かい要望のある客を逃すまいと、一からの製図をドクオだけがやるように言い付けられたのだと。

ドクオの故郷は木材加工業で成り立っていたが、ドクオ自身は別の仕事をしていたため今の仕事は大変だと言っていた。

爪ξ゚ぺ)ξ爪(その報酬で仕上がるのが、あのガリガリってわけ?虐待じゃないの?)

爪ξ゚ぺ)ξ爪「指示してるヤツの血、干枯らびるまで吸ってやろうかしら?…キショいからしないけど。」バッサバッサ

∑爪ξ;゚⊿゚)ξ爪「…って、ここドコ?!」

イライラしながら飛んでいたら、いつの間にか見知らぬ土地まで来ていた。

爪ξ゚⊿゚)ξ爪「あら?あれは…?」

134名無しさん:2023/06/11(日) 20:35:47 ID:nI.Nq1es0
森の中に、石造りの小さな家が見える。

爪ξ゚⊿゚)ξ爪「なんだか…うちの雰囲気と似てるわね…」

爪ξ゚⊿゚)ξ爪「降りてみましょ。」バッサバッサ


ξ゚⊿゚)ξ シーン…

ξ゚⊿゚)ξ「…絶対に誰も住んでいないわね。窓が真っ黒に汚れて中も見えないもの。」

ξ゚⊿゚)ξ「あら?ポストがあるわ。」パカッ ドサドサッ

ξ;゚⊿゚)ξ「わっ!」

ξ;゚⊿゚)ξ「何か書いてある…?」


【これを読んだ人がいたら、私と友達になってください。】


「あ…」

ξ;゚⊿゚)ξ))「っ…!?誰?!!」


从 ゚∀从


振り向くと、変な格好の子どもがいた。

135名無しさん:2023/06/11(日) 20:38:28 ID:nI.Nq1es0
ξ;゚⊿゚)ξ(またんきよりも、もっと幼い…)

10歳頃だろうか?
灰色の髪に赤い目のその子は、シーツの真ん中に穴を開けてそこに頭を通したような、不格好な服を着ている。
その服は酷く汚れていて、黒い。
そして背中には、真っ黒な翼が生えている。

ξ;゚⊿゚)ξ(私以外の吸血鬼…本当にいたんだ…)

ξ;゚⊿゚)ξ「で…誰なのかしら…?」

从 ゚∀从「ハイン…。」

ξ;゚⊿゚)ξ「そう…。私は、ざくろよ。」

ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、ここはハインのお家なの?」

从 ゚∀从「違う…。もっと遠くの山に住んでる。…吸血鬼の家を見付けたのがここだけだから、たまに来てる。」

ξ゚⊿゚)ξσ「…それでここに来ては、その手に持ってる手紙をポストに入れてるってワケね?」

从 ゚∀从「ああ。」


ξ゚⊿゚)ξ「私、会話が出来る吸血鬼に会うのは初めてなの。あなたは会った事ある?」

从 ゚∀从「…ずっと前に、ある。」

ξ゚⊿゚)ξ「その人は、良い吸血鬼だったの?」

从 ゚∀从「…」

ξ;゚⊿゚)ξ「あ、矢継ぎ早に聞き過ぎたわね。良かったらお茶にしない?」

そう言って私は、大きな布を地面に広げた。
ドクオと食べるつもりだったいつものプルーンクッキーとネトルティーを、ハインに渡した。

从 ゚∀从「……」

ξ゚⊿゚)ξ「どうしたの?」

从 ゚∀从「このクッキー、ずっと前に会った吸血鬼にも、もらった事がある。」

ξ゚⊿゚)ξ「あら、そうなの?吸血鬼定番のレシピなのかしら。」

从 ゚∀从「分からない…。」

ξ゚⊿゚)ξ「そう…。」

136名無しさん:2023/06/11(日) 20:42:24 ID:nI.Nq1es0
ξ゚⊿゚)ξ「ハインは、どうして吸血鬼になったの?それと今までは、どう過ごしてきたのかしら?」

私がそう聞くと、ハインはずっと前だからもう覚えていないと言った。そして気付けばこの習慣だけを繰り返していると。

ξ;゚⊿゚)ξ(…。私ももっと長く生きたら、こんな風になるのかしら…?)ゾッ

私はプルーンクッキーを頬張りながらその子を見つめた。
服の汚れは、どうやら獣の血のようだ。
その血が何度も重なった結果、黒っぽい服のように見えるのだろう。

ξ゚-゚)ξ(こんな小さな子でさえ…。私みたいに放り出されたのかしら?)

ξ゚⊿゚)ξ「……ねえ、ハインはどんなお肉が好き?兎?鹿?私は断然、鹿ね。」

从 ゚∀从「…クマとイノシシ。」

ξ;゚⊿゚)ξ)) ?!!

ξ;゚⊿゚)ξ「…クマなんて、どうやって狩るの…?」

从 ゚∀从「…?おなかが空いて、気付いたら食べてる。」

ξ;゚⊿゚)ξ!!??


素手で狩っているということだろうか。
私は罠猟しかした事がないので、驚いて一歩だけ後退った。

ξ;゚⊿゚)ξ(もし私が素手で獲物を捕まえられるとしたら…どういう状況かしら。)

そう想像すると、もしかしたらハインは限界までお腹が空く度に、本能で狩っているのかもしれない。

ξ゚⊿゚)ξ(そう考えると、人間ってトロくてお手頃なのかも…)

ξ;゚⊿゚)ξノシ(って、今ヤバい事考えてたわ。無し無しっ!!)

137名無しさん:2023/06/11(日) 20:46:22 ID:nI.Nq1es0
この後ドクオの所にもう一度寄ろうと思っていたが、そんな事を考えた罪悪感から、今夜は止めておく事にした。

ξ゚⊿゚)ξ「順番が逆になっちゃったけど、ご飯も食べる?鹿肉サンドよ。」

从 ゚∀从「…いる。」

渡されたサンドイッチを見たハインは、不思議そうな顔でこちらを見つめた。

ξ゚ー゚)ξ「パンが白くて驚いたでしょ?普通の小麦じゃないから焼き色が付かないのよ。でも、美味しいわよ。」

そう言うと、ハインは大きな口を開けて食べだした。

从*゚~从 モグモグ

あっという間に何口も食べている。
頬をぷっくりと膨らませて、まるで栗鼠のようだ。

ξ*゚⊿゚)ξ(これは…ドクオとはまた違う趣があるわね…。)ジーッ

気付けばハインは、パンだけを先に食べてしまった。

从゚~从 モグモグ

ξ゚⊿゚)ξ(鹿肉は、それほどって感じなのね…。ハインには、補助的な栄養の方が足りていないのかしら。)

138名無しさん:2023/06/11(日) 20:49:58 ID:nI.Nq1es0
ξ゚⊿゚)ξ(…)

私は、先程の手紙の事を思い出していた。


【これを読んだ人がいたら、私と友達になってください。】


ξ゚⊿゚)ξ(友達が欲しいのね…。今のハインがそう思っているのかは、分からないけれど。)

____________________________

ξ*゚ー゚)ξつ「じゃあ、私が友達になってあげるわ!」

ξ*゚ー゚)ξつ「小さいのに今までよく頑張ったわね!これからは私と一緒に住みましょう!」
____________________________


ξ゚⊿゚)ξ(…なんてのは、英雄症候群よ。たった一言だけで、相手が内心どうしてほしいと思っているかなんて分からない。行動に移す事なんて出来ないわ。)

ξ゚⊿゚)ξ(人間のまたんきとはワケが違う。この子は私なんかよりもずっと長くこの姿で生きてきた逞しい子よ。熊だって倒せるんだから。)

ξ゚ー゚)ξ(今は共喰いされないかとか、そんな事を心配した方が良いわね。)

クスクス笑っていると、食事を終えたハインが私に話しかけてきた。

从 ゚∀从「前の吸血鬼、薬草を集めてた。」

ξ゚⊿゚)ξ「薬草?」

そう言うとハインは立ち上がり、家の裏の方へと歩いて行ってしまった。

ξ゚⊿゚)ξ …?

139名無しさん:2023/06/11(日) 20:54:07 ID:nI.Nq1es0
散歩するように追いかけると、そこには様々な植物の生える庭があった。
生えっぱなしで、もはや森と同化しそうな勢いだ。

ξ゚⊿゚)ξq(ぱっと見、家にもあるような植物ばかりね…。)

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、ハイン。その吸血鬼は薬草を集めて何をしようとしていたの?」

从 ゚∀从「人間に戻るための薬を作るって、言ってた。」

ξ゚⊿゚)ξ「…。それは、上手くいったのかしら?」

从 ゚∀从「……分からない。」

ξ゚⊿゚)ξ「…そう…。」

ξ゚⊿゚)ξ「…」

ξ゚⊿゚)ξq「あら?」

私は、ある2つの植物を見付けた。
小さなラグビーボール状の袋を持ったイネ科と、白くて小さな丸い粒が沢山の植物。

後ろの家を見ると、横に煙突が付いている。


ξ゚⊿゚)ξ「ねえハイン。お土産にパンを焼いてあげるわ。」



ξ゚⊿゚)ξつ| ギィ…

ξ゚⊿゚)ξ「まあ、うちも鍵無いし開くわよね。」

私はハインを連れて、石造りの家の中に入った。
それからリビングキッチンへと向かい、窓を開ける。
月明かりが差し込み、部屋の中がよく見えるようになった。

ξ゚ー゚)ξ「煙突があるから、ここにも石窯があると思ったのよね。ふふん。」

ξ*゚ー゚)ξ「あっ、火打ち石と火打ち金もあるじゃない。これなら楽勝ね!」

ξ;゚⊿゚)ξ「だけどやっぱり酷い汚れね…。まあ、中は湿気てなくて良かったわ。」

爪ξ゚⊿゚)ξ爪「それじゃ。」バサッ

140名無しさん:2023/06/11(日) 20:58:21 ID:nI.Nq1es0
爪ξ>⊿<)ξ爪=3「それそれそれ〜っ!!!」バッサバッサバッサ

私は部屋の端から翼で扇いだ。
部屋の中のホコリが、モクモクと窓から外へと流れ出ていく。

爪ξ;゚⊿゚)ξ爪 ゼーゼー

从 ゚∀从「…」

爪从 ゚∀从爪))) ブンッッ!!

爪ξ;゚⊿゚)ξ爪「あ…ありがと。一発で綺麗になったわ。」

ξ゚⊿゚)ξ「それじゃ、出てすぐの川で布を濡らしてくるわ。雑巾がけしましょう。」

私はピクニック用の敷き布を雑巾代わりに、川の水に浸してギュッと絞った。
それからキッチンを拭いてまた手を洗い、台に収穫した植物を置いた。

ξ゚⊿゚)ξ「イネの袋の中身と、白い粒を手で潰しながら混ぜるの。小麦粉と酵母みたいな物ね。」

ξ゚⊿゚)ξ「それから、予備に持ってきたネトルティーを加えて、もっとよく混ぜて…」トトト…

ξ゚⊿゚)ξ「発酵の間に窯に薪をくべて、温めておくわ。」

从 ゚∀从「…」

ハインは私の指示に従って、生地を捏ねたり火の様子を見ている。

ξ゚⊿゚)ξ「良いわね。そうしたら、生地を窯に入れて少し待つわ。」

141名無しさん:2023/06/11(日) 21:04:04 ID:nI.Nq1es0
_____
___
__

ξ*゚⊿゚)ξ「表面が乾いたし、もう良いわね。引き上げましょう。」

木製のピールに乗せたそのパンを、ハインはじっと見ている。

从 ゚∀从「すごい…。焼く前より何倍もふくらんでる…。」

ξ゚ー゚)ξ「一つだけ味見してみない?」

从 ゚∀从つ○「する。」


从*゚~从 モグモグ

ξ゚⊿゚)ξ ジーッ

从 ゚∀从「うまい。」ゴクン

ξ゚ー゚)ξ「ここに濾した動物の脂を入れると、カリっとしてもっと美味しくなるのよ。」

ξ゚ー゚)ξ「良かったら、また教えに来るわ。一人でも作れるようになったら、いつでも食べられるでしょう?」

从 ゚∀从「…教えてほしい。」

ξ゚ー゚)ξ「それじゃあ、次の寝待月はどうかしら?5日後よ。」

从 ゚∀从「分かった。」

____________________________

142名無しさん:2023/06/11(日) 21:06:56 ID:nI.Nq1es0
_____
___
__

从 ゚∀从つ√ ザッザッ

ξ゚⊿゚)ξ「そうそう、筋が良いわ。そのくらい温まればもう生地を入れても良いわね。」

从 ゚∀从「この間よりパンが多いけど、かまの熱さも同じでいいのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ。だけどパン同士はよく離すよう気を付けてね。膨らむとくっついちゃうから。」

从 ゚∀从「ああ。」


パンが焼けるのを待つ間に、私達はお茶を飲むことにした。

ξ゚⊿゚)ξ「そういえば、あの手紙はどうやって用意しているの?」

从 ゚∀从「庭の綿花を、岩の上に重石と乗せて乾かして作るんだ。」

ξ*゚⊿゚)ξ「紙はハインが作っていたのね!」

話し慣れてきたのか、ハインの口数がどんどん増える。
ハインの家には児童書が沢山あるらしく、そのおかげか見た目よりもしっかりとした口調だ。
同じ吸血鬼であるハインの話は、私にとって興味深くて楽しいものだった。

ξ;*゚⊿゚)ξ「ね…ねぇ、熊肉ってどんな味がするの…?」

从 ゚∀从「ドングリを食べているから、油が甘いんだ。」

ξ*゚⊿゚)ξ「へぇー!いつか食べてみたいわ。」

ξ゚⊿゚)ξ「ハインの家は山の中なのよね?他にも何かいるの?」

从 ゚∀从「鮎が捕れる。」

∑ξ;゚⊿゚)ξ「魚!?吸血鬼はお肉しか食べないと思っていたわ!すっごいカルチャーショック。」

_____
___
__

143名無しさん:2023/06/11(日) 21:10:17 ID:nI.Nq1es0
パンが焼けて、私達はまた一つだけ味見をした。
今回は動物の脂も入れたため、外はカリカリでサクッと、中はモチモチで甘味があり、とても美味しく焼けた。

ξ゚ー゚)ξ「完璧!これからは一人でもここで作れちゃうわ。」

ξ゚ー゚)ξ「念のためレシピをこの家に置いていくから、分からなくなった時はそれを読んでね。」

从 ゚∀从「ああ。ありがとう。」

ξ゚⊿゚)ξ「…そろそろ時間ね。お互い、朝になる前に帰らなきゃ。」

私はそう言って、立ち上がった。

ξ゚⊿゚)ξ「ん…?」

服が机のささくれに引っ掛かったのかと思ったが、目線の先に行き着いたのは、私の袖を掴むハインの姿だった。


从 ゚∀从つ「あ…」


ハインは酷く傷付いたような顔をして、袖を離した。


ξ;゚⊿゚)ξ「どうしたの?」


从 ゚∀从


从 ;∀从


∑ξ;゚⊿゚)ξ「わ、え?!どっ、どうしたのっ!!?」

144名無しさん:2023/06/11(日) 21:12:05 ID:nI.Nq1es0
ハインは悔しそうに泣くばかりで、見ているこっちが辛かった。

私は、ハインの頭をゆっくりと撫でた。

ξ゚⊿゚)ξノ「大丈夫だから…。話してみて。」

从 ;へ从 ヒッグ…ヒッグ…

从 ;∀从 ……ヒック…


从 ;∀从「…ざくろといると…、楽しい。だから、もっと一緒にここに居たいって、思ったんだ。」

从 ;∀从「…だけど、オレは前にも…同じ事をした。あの人は帰ろうとしてるんだって…分かってたのに。」

从 ;∀从「一人がイヤだからって、自分の幸せしか考えていない事を繰り返してる。…サイテーだ。」

ξ゚⊿゚)ξ「ハイン…。」

145名無しさん:2023/06/11(日) 21:16:22 ID:nI.Nq1es0
私はハインの手を握り、目線を合わせて言った。


ξ゚⊿゚)ξ「…あなたが本当に友達になりたいのは、『自信』よ。」

从 ;∀从「自信…?」

ξ゚⊿゚)ξ「そう。人って、誰かと関わって生きているでしょう?親や兄弟、友達にパートナーとか…」

ξ゚⊿゚)ξ「その感覚を知っていると、誰かが側にいるのが当たり前。そうでないと変だとか、不安で仕方なくなってしまうのかもしれない。寂しがり屋の人は特にね。」

ξ゚⊿゚)ξ「だけどハインは、私よりも長くこの姿で生きてる。人間という、たった一種類の社会から抜けてしまえば、あなたはとても強い存在なんじゃないかしら。」

从 ;∀从「…」

ξ ⊿ )ξ「私、初めて会った時に、『会話が出来る吸血鬼に会うのは初めて』と言ったでしょう?」

从 ;∀从「…?ああ。」

ξ ∀ )ξ「…それはね、会話なんてする前に、相手の血を吸い切ってしまうからなの。」

从;゚д从))「ヒッ!?」

ξ*゚⊿゚)ξ「冗談よw誰も彼も疑えって訳じゃないけど、同じ立場だからってすぐに気を許したらいけないわ!」

私より何倍も強いであろうハインが怖がるので、私は思わず笑ってしまった。


ξ゚ー゚)ξ「私達の人生は、きっと長いわ。だから何事も、少しずつ知っていきましょう?」

从 ;∀从「…」

146名無しさん:2023/06/11(日) 21:20:26 ID:nI.Nq1es0
ξ゚ー゚)ξ「また、会いに来るわ。でも、同情で仲良くしようだなんて思っていない。」

ξ゚ー゚)ξ「私がここに来る時は、ハインに会えたら嬉しいなって思う時。」

ξ゚ー゚)ξ「手紙を書く時は、ハインに伝えたい事があってワクワクしている時よ。」

从 ;∀从「…うん…。」


_____
___
__

爪ξ゚⊿゚)ξ爪 バッサバッサ

ξ゚⊿゚)ξ、「あら…今日は来てないのね。残念。」

私はたまに、石造りの家を訪れるようになった。
ハインに会えなければ手紙を残すので、約束はしていない。
ハインも同じで、ついでにパンを焼いて帰るそうだ。


ξ゚⊿゚)ξつ「ふふ〜ん♪」パカッ

私はポストの手紙を抜き取り、代わりに自分が書いた手紙と2つの荷物を入れた。

黒くて、水で洗うだけでどんな汚れでもツルツル落ちるワンピース。
それから、焼いたパンを入れるための、麻のショルダーバッグ。
フタの端に、頬を膨らませた栗鼠の刺繍をしたものだ。


爪ξ*^ー^)ξ爪「果たして、自分がモデルだって気付くかしら?」 クスクス



続く

147名無しさん:2023/06/11(日) 21:23:22 ID:nI.Nq1es0
从 ゚∀从
・強さ★★★★★(飛行速度など)
・味覚 血肉と子どもが好むような味は感じ取れる

ξ゚⊿゚)ξ
・強さ★★★☆☆
・味覚 ココアの実の効能を知らずに、ごく少量ずつお菓子で取っているおかげか正常に近い
(クーが森の方に植えた種が育った)

川 ゚ -゚)
・強さ★☆☆☆☆
・味覚 悪。血肉以外は基本鈍い味がするか不味い。

148名無しさん:2023/06/11(日) 21:34:55 ID:nI.Nq1es0
_____
___
__


爪ξ*゚⊿゚)ξ爪「あっ!今日はいる!!」バッサバッサ

月の照る日にドクオのいる村を訪れるのは、もはや私の習慣だ。

爪ξ゚⊿゚)ξ爪 ストッ

ξ゚ぺ)ξ「もうっ!最近全然来ないじゃないっ!」

('A`)「ごめんな。仕事で忙しかったんだ。」

ξ゚⊿゚)ξd「早く食べて今日も描くわよっ!」

ξ;゚⊿゚)ξ(……。)


ドクオが、以前よりも更にやつれている気がする。

149名無しさん:2023/06/11(日) 21:37:50 ID:nI.Nq1es0
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、初めて会った時に描いていたような絵は他にもないの?」

('A`)φ「俺の住んでいた村…風景画の事か?」

ξ゚⊿゚)ξ「そう。ドクオって実は、風景画の方が得意でしょ?密度が違うわ。」

('A`)φ「そうなのか?村の子ども達に頼まれて似顔絵ばかり描いてたから、俺はそっちのが得意なのかと…」カリカリ

('A`)φ「合間を縫って少しずつ描いたものだから、まだあの絵だけだ。」

ξ゚⊿゚)ξ「そうなの…。」

ξ゚⊿゚)ξ「私ね、夜に出掛けるようになってから色々な場所へ行ったの。朝までに帰れる範囲だけどね。」

ξ゚⊿゚)ξ「夜光虫で青く光る海や、黄金の麦畑。流れ星が沢山流れて黄緑色になった空。それが特に綺麗だったわ。」

ξ゚ー゚)ξ「私だけが見ても、最近はなんだか勿体ないって思うのよね。ドクオだったら、絵に残しておけるのにって。」

('A`)φ「…俺はざくろが話すまで、海が本当にある事すら知らなかったよ。人に話すことがあるだけで充分有意義だ。」

('ー`)φ「だけど、色んな場所を飛び回って絵を描けたら、それは楽しいだろうな。」カリカリ

ξ*゚ー゚)ξ「私が叶えてあげるわ。」

ξ*゚⊿゚)ξ「あのねっ!最近出来た吸血鬼の友達が言ってたのだけど、翼の力って特訓で強く出来るんですって!」

ヽξ*゚⊿゚)ξノ「だから今は無理でも、いつかはドクオを持ち上げて運んであげるわ!」

∑(;'A`)φ「それは頼もし…吸血鬼って、ざくろの他にもいるのか!?」

ξ;゚⊿゚)ξ ムムッ…

ξ;゚⊿゚)ξ「え、ええ…。その子以外は見たことないけれどね。お互いが住んでるとこから、中間辺りでたまにお喋りしているの。」

150名無しさん:2023/06/11(日) 21:41:05 ID:nI.Nq1es0
ξ゚⊿゚)ξ「…そういえば、私がモデルの絵は、これで何枚目なのかしら?」

自分で振っておきながら、ドクオの興味がハインに向いた事に焦った私は、話題を変えた。

('A`)φ「…8枚目かな。」カリカリ

ξ゚⊿゚)ξ「結構あるじゃない!もう少し増えたら、個展が開けそうだわ。」

('A`)φ「個展って、何だ?」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオの描いた絵だけを、どこかで披露する事よ。私も人間の頃に栄えた街から来た人に聞いただけで、詳しくはないんだけどね。」

('ー`)φ「それは、格好良いな。」

ξ;゚⊿゚)ξ「あ…でも、私の絵を飾ったら、ドクオが吸血鬼と知り合いなのがバレちゃうかもしれないわね。」

ξ;゚⊿゚)ξb「その時は私の事、『夢で見た人』とでも言ってちょうだい?」

('∀`)φ「はは。分かっ…」


ドサッ

151名無しさん:2023/06/11(日) 21:43:47 ID:nI.Nq1es0
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと!どうしたの?!!」

('A`)「大丈夫…今、立つから…」

ξ;゚⊿゚)ξ「全然大丈夫じゃないわよ!家どこ!?肩貸すから…!」


私はドクオの左側から肩を貸して、ゆっくりと歩いた。
ドクオがすぐ側の建物を指差したため、誰の家の前も通らずに済んだ。

ξ;゚⊿゚)ξ「…本当にここに住んでいるの…?」

その外観はどう見ても、農具を入れるような古い納屋だ。
木製で隙間もある。

('A`)「6帖はあるし屋根も雨漏りしていないから、充分だ。夜も戸を開けておけば、月の光が入って仕事も進められるし…」

ξ;゚⊿゚)ξ「そういう問題じゃっ…!とにかく、横になって休んで!」

(((;'A`)「分かったよ…」

ドクオは、端に寄せた藁の上を寝床にしているようだ。
あとは周りを見渡しても、製図用の机と粗末なキャビネット、私が渡した絵の具セットに水瓶以外は殆ど何もない。


ξ#゚⊿゚)ξ「…」

ξ#゚⊿゚)ξ「…もう我慢出来ない。」

152名無しさん:2023/06/11(日) 21:46:10 ID:nI.Nq1es0
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ…。私の家に…、来ない?」

('A`)「ざくろの…家に?」

ξ゚⊿゚)ξ「そう。少なくとも、ここに居るよりは何千倍もマシよ。」

ξ゚⊿゚)ξ「だけど、私がドクオの血を吸わないって保証は無いわ。ドクオが嫌なら、私は別の場所に移り住んでも良い。1つだけ、当てがあるの。」

('∀`)「…はは。美人と一緒に住むなんて、最高だな。」

爪ξ#゚⊿゚)ξ爪「茶化さないで!こんな生活続けてたら、死ぬって言ってんのよ!!」

ガタッ

爪ξ;゚⊿゚)ξ爪「あ…」

私が怒りのあまり翼を出すと、机に当たり重ねてあった紙の束が勢いよくあちこちに散った。

ξ;゚⊿゚)ξつ「ごめんなさい…。これ、仕事道具よね…?」

ξ゚⊿゚)ξ「え…?」


そこには私がモデルをした絵の他に、ドクオが私向けに用意した図案の試作のような絵や、一瞬の表情を抜き取ったようなラフスケッチが沢山あった。
どの私も、優しく微笑んでいる。



ξ;*゚⊿゚)ξ))


(;* A )「…ぁ…ぅ…」


ξ;*゚⊿゚)ξ




「この絵の図案も、いつか貰えるのかしら?」


私はそう言って、はぐらかす事しか出来なかった。





続く

153名無しさん:2023/06/11(日) 22:05:33 ID:nI.Nq1es0
中々全ての方にお返事出来ず申し訳ありません。
次回完結です。

154名無しさん:2023/06/11(日) 23:02:40 ID:dGgWr/C20
乙。もう終わりなんか…

155名無しさん:2023/06/11(日) 23:11:36 ID:5VcMSwqY0
あああああー!

156名無しさん:2023/06/11(日) 23:22:58 ID:gFQE9g.A0


157名無しさん:2023/06/11(日) 23:26:32 ID:EeS3Xmd20


もっと続くもんだと思ってた

158名無しさん:2023/06/11(日) 23:45:57 ID:8ufEYng.0
バサバサするツンさんかわ

159名無しさん:2023/06/21(水) 00:00:33 ID:8hXcnLRs0
>>154->>157
ありがとうございます。
予定通りの話数で完結します。

>>158
実際翼付いたら、みんなバサバサしたくなっちゃいますよね…?

160名無しさん:2023/06/21(水) 00:29:05 ID:8hXcnLRs0
爪ξ゚⊿゚)ξ爪 バッサバッサ

冬がもう終わりそうな日の夜。
私はまたんきに会うために、養蜂箱を模した箱のある林へと向かった。


(・∀ ・)ノ(おーいせんせー!)

またんきが、口だけを動かして私を呼んだ。

爪ξ゚⊿゚)ξ爪「遅くなって、ごめんなさい。」ストッ

(・∀ ・)「いや、そんなに待ってないよ。」

ξ゚⊿゚)ξ「…卒業、おめでとう。」

(・∀ ・)「ありがとう。」


ξ ⊿ )ξ「…」

( ∀  )「…」



私が沈黙を、破らなければ。




ξ ⊿ )ξ「__そろそろ、私達の商売も終わりにしましょう。」

161名無しさん:2023/06/21(水) 00:30:09 ID:8hXcnLRs0
ξ ー )ξ「あなたはもう女装が似合わないくらい、立派な体格になったわ。それに、毎週きちんと街へ通ったから、貯金も貯まったでしょう?」

(( ∀  ) コクリ

ξ ⊿ )ξ「街で仕事も探してたのよね?…就職先は、見つかったかしら?」

( ∀  )「ああ。せんせいの仕事ほど、超高待遇じゃないけどな。だけどこの町で探すよりは良さそうだ。」

ξ ー )ξ「そう…。」

( ∀  )「せんせい…。」

162名無しさん:2023/06/21(水) 00:31:41 ID:8hXcnLRs0
(;∀ ;)「…ありがとう。一人で心細かった時に、声をかけてくれて。」

(;∀ ;)「オレ、せんせいがずっと無理してくれてたの、知ってた。いつも変わらない量の商品を用意してくれて…」

(;∀ ;)「なんにも出来なくて、ごめん。」

ξ゚ー゚)ξ「良いのよ。私だって、一人では何も手に入らなかったんだから。またんきが頑張ってくれたおかげよ。」

ξ゚ー゚)ξ「美味しいお土産も、よく貰ったしね。」

(;∀ ;)「あのさ、あのさ…」

(;∀ ;)「オレさ、自分の力で頑張ってみるよっ!…隣町だし、もしかしたらあいつらが来るかもしれない。だけど絶対負けずに生きていくよ!」

ξ*゚ー゚)ξ「ええ。たとえ何があっても、持ち前の機転ですり抜けていきなさい。またんきなら出来るわ。」

163名無しさん:2023/06/21(水) 00:34:22 ID:8hXcnLRs0
ξ゚⊿゚)ξ「…テーラーのミルナさんだけが心残りね。勝手に布の供給を止めるのが、申し訳ないわ。」

(・∀ ・)「それなら話はついてる。元々引退して指導にまわろうか考えてたみたいだし、大丈夫だ。」

(・∀ ・)「オレが隠れて尋ねるのが大変なくらい、ミルナさんの店は盛況だったよ。最後にひと花咲かせられたって言ってた。」

ξ゚ー゚)ξ「…安心したわ。」

(・∀ ・)「…。」

(・∀ ・)「せんせいは、大丈夫なのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

(・∀ ・)「買い出し係が、いなくなるじゃないか。」

ξ゚ー゚)ξ「どれも質の良い物を買ってきてもらったし、最初に私が持たされた荷物の倍は手に入れたわ。とりあえず10年くらいは大丈夫よ。」

ξ゚⊿゚)ξ「だけどそうね、目印を持っておきましょう。」

そう言って私は、月の光に当たると金色に光る刺繍を施した旗を取り出した。

ξ゚⊿゚)ξ「街に着いたら、これを明るい夜に部屋の外に飾って。居場所を把握しておくわ。」

ξ゚ー゚)ξ「たまに手紙を書かせてちょうだい。落ち着くまでは、見守らせてね。」

(・∀ ・)「じゃあ、手紙を入れるような箱も旗の近くに置いておくよ。」

ξ゚ー゚)ξ「そうしてもらえると助かるわ。」

ξ゚⊿゚)ξ「ここに置いてある箱じゃ…大きすぎるものね。これは私が後で数日かけて回収するわ。」

(・∀ ・)「何から何まで、ありがとう。」

ξ゚ー゚)ξ「ええ。」

爪ξ*^⊿^)ξ爪「…それじゃあ、さようなら。元気でねっ!」

(・∀ ・)ノ「さようなら!せんせいも元気で!」


私は勢い良く地面を蹴った。


(*・∀ ・)ノシ(さようなら!せんせいありがとう!!本当にありがとう!!!)

164名無しさん:2023/06/21(水) 00:35:38 ID:8hXcnLRs0
爪ξつー゚)ξ爪(栄えた街じゃ長居も出来ないし、もうめったに会えないわね。なんだか凄く寂しいわ。)

爪ξ゚ー゚)ξ爪(この姿になってから、最初に関わった人だものね。)

爪ξ゚⊿゚)ξ爪「きっとこれからも、色々な事があるわね。誰とどんな事を話したかとか、記録を付けといた方が良さそう…。」

爪ξ;゚⊿゚)ξ爪「日記は…絶対飽きるわ。」

爪ξ;゚⊿゚)ξ爪 ウーン…

爪ξ*゚⊿゚)ξ爪「そうだわ。お話仕立てにして本みたいにまとめましょう!主人公の私が大冒険するお話よ!」


話し上手のまたんきに、栗鼠ほっぺのハイン。それから、絵描きのドクオ。
これからもっと沢山の人と、知り合うのだろう。


爪ξ*゚∀゚)ξ爪「きっと一冊じゃ足りないわね。ふふっ。」

____________________________

165名無しさん:2023/06/21(水) 00:40:22 ID:8hXcnLRs0
_____
___
__

ξ゚⊿゚)ξ「よいしょっと…。」

私は、熱々の膠を瓶に入れて保温袋に仕舞った。

爪ξ゚⊿゚)ξ爪「いってきまーす。」バサッバサッ

冬の寒さに堪えたのか、ドクオはやっと私の提案に乗り気になった。
それでも今受け持っている仕事が終わってからにしたいのだと言う。
私は心底呆れたが、計画の準備もあるので翌月まで待つ事にした。


ξ゚⊿゚)ξ ペタペタ

('A`)、「あと少ししかいないのに、悪いな…。」

私の家から持ってきた端材に、膠を塗る。
納屋によく似た色味で補修が目立たぬよう、出来るだけ傷みのある板を選んだ。
これで納屋の隙間を埋めて、少しでもドクオが過ごしやすいようにするのだ。

ξ゚⊿゚)ξ「そう思うなら、来月のためにしっかり栄養をつけなさい。沢山歩くんだから。」

私は連日栄養のありそうな食べ物を持てるだけ持ってきては、ドクオに与えた。
ドクオの栄養失調具合いだと、血の保存食の方が良いのかもしれない。
だけど人間には美味しくない物だろうし、私もドクオを運ぶのに力を沢山使う予定のため、分け与える余裕がないのだ。

ξ゚⊿゚)ξ(ずっと抱えて飛ぶのは無理だけど、兎が跳ねるように勢いを付けて距離を稼げば、ドクオを無理に歩かせずとも7日くらいで家まで運べるはず。)

ξ゚⊿゚)ξ(人に見つからないためのルートも確認しておかなきゃ。本当は宿に泊まらせてあげたいけど、足がついたらまずいわ。)

ξ゚⊿゚)ξ(絶対に、成功させるわ。)

____________________________

166名無しさん:2023/06/21(水) 00:41:15 ID:8hXcnLRs0
_____
___
__

(;'A`)φ「はぁ…疲れたな…。」

('A`)(…)

('A`)つ□ カタッ

('A`)φ(ざくろの絵を見て…頑張ろう。どうせここへは誰も来ない。仕上がった仕事は毎度持って行くし…)

('A`)φ …

('A`)φ(本当に、一緒に住むのか…?)

(;*'A`)φ(良いのかな…俺の気持ち、バレてるはずなんだけど…。)

____________________________

167名無しさん:2023/06/21(水) 00:43:40 ID:8hXcnLRs0
_____
___
__

( ^ω^)「…本当に、このお値段でよろしいのですかお?」

( ^Д^)「ええ、ええ!材料の提供や大工を向かわせる事が出来ず申し訳ないのですが、その分お安く出来るんですよ。」

(*^ω^)「それは助かりますお。材料や大工はこちらで手配出来るのですが、私共は何分洒落た意匠が不得手でして…」

(*^ω^)「町にやって来た旅人から聞いた噂は、本当でしたお。『とてもお安く建物の設計図を提供してくれる村がある』と。」

(*^ω^)「それでは明日また来て、もう少し話を詰めてから契約をさせて頂きますお。」

( ^Д^)「ありがとうございます!よろしくお願いします。」

(-@∀@)「宿泊される宿は隣町ですか?村の入口までお見送りしますよ。」

( ^ω^)「ありがとうございますお。」


( ^ω^) テクテク

( ^ω^)(…ん?あれはなんだお?)

(;^ω^)(うわー、随分傷んでる納屋だお…。)

( ^ω^)(…僕の町や他の村町にも似たような納屋はあるはずなのに、…妙に気になるお…。)

(( ^ω^) スタ…スタスタ

(;^Д^)つ「お客様、隣町はそっちではありませんよ?」

(;^ω^)σ「あっ…すみませんお。あちらの建物がなんだか凄く気になってしまって。何なんでしょう?」


(;-@∀@)「はは。ただの納屋ですよ。」

(;-@∀@)「あっ!もちろんあんな仕上がりにはなりませんからね!?古いからもう取り壊そうかと思っていたところです。ハハッ!」

( ^ω^)「……そうでしたかお。」

( ^ω^)「そういえばこの辺りに、昔女神が舞い降りたという言い伝えの岩があるんですおね?話し合いの合間に聞いた…」

(*-@∀@)「ええ。住を司る女神様で、建てる棟の数だけお布施をすれば、災害が起きてもその棟だけは無傷だというジンクスがあります。」

( ^ω^)「そちらを見学してから宿に行きたいので、見送りはこれで結構ですお。ありがとうございましたお。」

168名無しさん:2023/06/21(水) 00:47:52 ID:8hXcnLRs0
_____
___
__

( ^ω^)?「うーん…?どう見ても、何の変哲もない岩だお…。」

( ^ω^)(…なんかこの村、変だお。近くに良い川があるのに、ろくに治水もせず大半が荒れ果てた地のまま。それに…)

( ^ω^)(…)

(( ^ω^)「…やっぱり、さっきの所が気になるお。」スタスタ


( ^ω^) ヒョコ

( ^ω^)(人がいて…仕事中かお。…こんな所で?)

( ^ω^)(何か…絵が置いてあるお……)



( ゜ω゜)「!!!」

169名無しさん:2023/06/21(水) 00:48:40 ID:8hXcnLRs0
( ゜ω゜)つ/「あのっ!!すみませんお!!!」

∑(;'A`)「えっ…どちら様ですか…?」

( ゜ω゜)「この絵の人をご存知なのですかお!??」

(;'A`)「えっ…?」

(;'A`) ハッ

(;'A`)「ぁ…」

170名無しさん:2023/06/21(水) 00:51:26 ID:8hXcnLRs0
(;'∀`)「ぉ…俺にはさっぱり。…ただ、夢で見た人を描いただけです。」

(;゜ω゜)「絶対…、そんなはずはないですお。このベールに、このドレス…」

(; ω )「…っ」

<(; ω )>「…あぁ…ああっ!!」

(; ω )「……。ツンの両親は、吸血鬼を良く思っていない人達でしたお。なんでも、ツンの祖母が年老いても吸血鬼に大荷物を運ばされていたんだとか…」

(; ω )「そんな態度を取っていた手前、自分の娘を贔屓する事は許されなかったのでしょう。後悔していましたお。」

(; ω )「だけど町の老人達は、吸血鬼の言い伝えを話す時には決まって、優しい笑顔で語っていたんですお。きっと良い吸血鬼だったから、ツンの祖母も会いに行っていたのかもしれませんお。」

(; ω )「きっとツンも、良い吸血鬼になる。だから僕は、ツンの両親に約束しましたお。何があっても誰も僕達を知らないような土地まで行って、添い遂げると…。だから安心してほしいと…。」

(; ω )「だけど、何度ツンのもとへ行こうとしても、必ず誰かに見付かって引き戻されてしまうんですお。僕の家族は町を取り仕切っていて、兄達を支えるために僕は教育を受けてきたんですお。労働力が減ってはたまらないと、町の人達は思っていたのかもしれませんお。」

(; ω )「…それでも…どうして僕は、たったの3年ぽっちで、諦めてしまったのだろう…?」


('A`)「…。帰って…頂けませんか…。」

(; ω )「そんな…」

(; ω )「…。…一つだけ……聞かせてくださいお。」

(; ω )「…この人は今、泣いていませんかお…?この絵のように、笑っていますかお…?」

('A`)「…」

('A`)「…分かりません。夢で見た人、ですので。」

(; ω )「………そう……ですかお……」

171名無しさん:2023/06/21(水) 00:53:14 ID:8hXcnLRs0
(; ω ) フラフラ…

(;^Д^)「どうされました!?なぜ納屋から…」

(; ω )「…あの…。契約は、やめますお。」

(;-@∀@)「えっ!?あの男に何かされたんですか?!!」

(; ω )「いいえ、何もされていませんお。」

(; ω )「…村に来た時から、気になっていた事があるんですお。」

(; ω )「どうして村の中で、こんなに貧富の差があるのか。」

(; ω )「貴方がたは良い身なり、良い肌艶。それなのに村を歩けば、着のみ着のままのような人を何人も見かけましたお。」

(; ω )「それに建物も、見せて頂いた完成図のような建物が、ありませんお。本当にこれで建つのですかお…?」

(;^Д^)「そこはご安心ください!ちゃんと実績のある者が製作しておりますので!」

(; ω )「…信じられません。僕はそんな危ない道は渡りませんお。契約に使うお金は町のみんなの税金ですお。狸に化かされて巻き上げられたなどとあっては、示しが付きませんお。」

((; ω )「本当に…この話は…無かった事に…。」

(;^Д^)つ「あっ!待ってください!!」

____________________________

172名無しさん:2023/06/21(水) 00:54:37 ID:8hXcnLRs0
('A`)つ□(…片付けよう。)

(;'A`)(…まさか、ざくろの婚約者に会うとは…。)

('A`)φ(…。あの人はきっと、誠実な人だった。)

('A`)φ(さっきの事を伝えたら喜ぶだろうな。見捨てられた訳じゃなかったんだと分かるから。)

('A`)φ(ざくろの家の近くの町に…住んでいるんだろうか?…望むなら、俺が伝達役でもしよう。)

('ー`)φ(……俺の気持ちなんて…)



「「おい!!!!」」



(#^Д^)(#-@∀@)



(;'A`)「え…?」


(#^Д^)「おまえ…一体何をしたんだぁ?」


(;'A`)「何…を…?」


(#^Д^)Ο「客が逃げたじゃねーか!!」ドカッ!!!


(°;A°)「ガッ‼」


(#-@∀@)「俺達がいったい何日贅沢出来ると思ってんだよっ!!!」


(#-@∀@)Ο「這いつくばって詫びろっ!!」バキッ!!!

_____
___
__

173名無しさん:2023/06/21(水) 00:56:04 ID:8hXcnLRs0
爪ξ゚⊿゚)ξ爪(うん。ルートもこれで良さそうね。開けているし、飛びやすいわ。) バサッバサッ

私は月を見上げた。
今夜はギリギリ外に出られるほどの明るさで、これから数日かけて月は丸まっていく。

爪ξ゚⊿゚)ξ爪(明日にでも決行するわ。ドクオにも言っておかないとね。)

天候の悪い日は、やはり宿を利用しなければならない。ドクオの服はボロボロなので、不審がられないように服の用意もした。

爪ξ゚⊿゚)ξ爪(仕事が終わってなくたって構わないわ。問答無用で連れて行くの。)

今夜は先に、ドクオの荷物を引き受けよう。

_____
___
__

174名無しさん:2023/06/21(水) 00:58:28 ID:8hXcnLRs0
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ…?」

家の前に来てみると、やけに静かだった。
今夜はもう、寝ているのだろうか?

ξ゚⊿゚)ξ(起こさないように食事を置いて、荷物を引き取っていきましょう。メモも残しておかなくちゃ…)

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚⊿゚)ξ「…え?」


目の端に、不思議な物が見えた気がする。

恐らく、ドクオの脚だ。


ξ゚⊿゚)ξ(だけど寝床はそっちじゃないはず…__)


ξ;゚⊿゚)ξ「っ…!!!」



ドクオが__うつ伏せで倒れている



ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと!どうしたの!!?」

ドクオの上には更にキャビネットが倒れていて、私は急いでそれを退かした。

ξ;゚⊿゚)ξ(…?キャビネットの移動中に倒れたのかしら?だけど何か…)


ξ;゚⊿゚)ξ「!!!」


ドクオの頭の先に、大量の血が広がっていた

そこにドクオの髪が浸り、筆代わりとなった引きずり跡がある


ξ ⊿ )ξ(誰が…こんな酷い事を…)

( A )「………ぅ……」

ξ;゚⊿゚)ξ「ドクオっ!?」

175名無しさん:2023/06/21(水) 01:00:46 ID:8hXcnLRs0
私はドクオを抱きかかえた

血の出処は口からのようで、顔が真っ赤に濡れていた

だけど少しだけ、息がある。


ξ;゚⊿゚)ξ(ハインに助けを求めて、一緒にまたんきの所まで連れていって、それから医者を…)

ξ;⊿;)ξつ(嫌だ…どうしてこんなに冷たいの…)


ぬるいを通り越して、冷たいと言った方が早い体温だ

私の選択によって命の灯が消えてしまうかもしれない恐怖から、急がなければいけないのにその場を動くことが出来なかった


( A )「ぁ…」


ξ;⊿;)ξ「…え…?」

176名無しさん:2023/06/21(水) 01:02:53 ID:8hXcnLRs0

( A )∂



ドクオが震える手で、自分の首を指差した



ξ;⊿;)ξ(…いらないわよ。あんたの不味そうな血なんて…)



そう言おうとした、その時。


方方飛び回り、綺麗な場所を見て、その絵を描くドクオの姿が思い浮かんだ。



ξ;⊿;)ξ



ξ;⊿;)ξ「そっか…」


ξ;ー;)ξ「私が、叶えてあげる…。」





机の上の紙に、私の家の道順を書いた。

177名無しさん:2023/06/21(水) 01:05:44 ID:8hXcnLRs0

私は愛しい人の首筋に牙を立て、涙を流した




これは悲しみの涙でも、別れの涙でもない




誰かを愛する事が出来た、喜びの涙だ。




ξ− −)ξ




瞼が、どんどん重くなっていく。






だけどこれだけは、祈らせてほしい。










どうかこの人を、生き永らえさせて________










178名無しさん:2023/06/21(水) 12:32:48 ID:o9K4YyHo0
なんとも言えない気持ちになりました、乙

179名無しさん:2023/06/22(木) 00:40:19 ID:DhaNFE/60


なんと言うか、残酷な童話を読んだような、そんな読後感

180名無しさん:2023/06/22(木) 01:01:34 ID:ye0/Xe8I0
またんきの性癖が完全に破壊されてるな・・・生涯独身決定・・・なんと罪深い女なのか・・・

そしてブーンとドクオにより我が性癖が破壊された、どうしてくれるんだ!謝罪と賠償を求めるニダ!

181名無しさん:2023/06/22(木) 06:44:33 ID:rJuOMeR60


182名無しさん:2023/06/23(金) 00:22:52 ID:9JR8Q9CI0
乙やで。これはこれで美しいエンドやな…

183名無しさん:2023/06/26(月) 09:32:21 ID:MFl0AF.c0
ぞくっとした



新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板