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( ´_ゝ`)名前をつけるようです

1 ◆taz02XEQOg:2021/10/17(日) 17:05:18 ID:bmA.J.SM0

猫の顔を見分けられるかい?
女と酒を飲むときにいつも聞く。

ノパ⊿゚) 「それ、この前も話してたよ」

( ´_ゝ`) 「そうだっけ」

そうか、君とは初対面ではなかったか。
グラスの中で氷が甲高い音を立ててほどける。
琥珀色のとろみの中に、透明が混ざって消えた。

ノパ⊿゚) 「私は小さな島の生まれでね」

( ´_ゝ`) 「ああ」

ノパ⊿゚) 「島には猫がとにかく沢山いたの」

ノパ⊿゚) 「人より猫の数が多かった」

( ´_ゝ`) 「へぇ」

ノパ⊿゚) 「って話をこの前はしたよ」

( ´_ゝ`) 「覚えてないなぁ」

ノパ⊿゚) 「ひどい人」

見覚えのない顔だった。
でも、身体には見覚えがあった。

2名無しさん:2021/10/17(日) 17:05:50 ID:bmA.J.SM0

( ´_ゝ`) 「この胸は覚えてるよ」

生成りのブラウスをめくりあげると、顔に似合わぬ大きな乳房が現れる。
健康的に焼けた肌、くっきりと浮かび上がる鎖骨、なだらかなデコルテから自然に膨らむ丘陵。
左右対称の膨らみを下からそっと持ち上げる。
柔らかく、自然な重さだ。

( ´_ゝ`) 「いい形だ」

ノパ⊿゚) 「ひどい人」

( ´_ゝ`) 「どんな名医が施術したんだい?」

ノパ⊿゚) 「洗面所に鏡があるよ」

下半身の脂肪をとって、胸に注入したのは一年くらい前か。
脂肪は注入しても大半が体に吸収されてしまう。
彼女の脂肪は注入したうちの四割ほどが定着している。

優秀だ。
下半身の傷跡もほんの僅か。彼女がこれから夜を共にする男たちには気づかれまい。

柔らかく、あたたかい。揉み心地も申し分ない。

( ´_ゝ`) 「君は美人だから、覚えづらくて困るよ」

ノパ⊿゚) 「嬉しいけど、自分の顔には満足してるの」

( ´_ゝ`) 「残念だなぁ」

( ´_ゝ`) 「ここをほんの少し、削るだけで完璧になるのに」

頬骨の一番高いところに口づける。
彼女は目を閉じてはにかんだ。

ノパー゚) 「私、今のままでいい」

3名無しさん:2021/10/17(日) 17:06:25 ID:bmA.J.SM0






( ´_ゝ`) 名前をつけるようです






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4名無しさん:2021/10/17(日) 17:07:24 ID:bmA.J.SM0

(゚、゚トソン 「院長、おはようございます」

タイトなシルエットの制服に身を包んだ受付係が頭を下げてくる。
俺のクリニックのスタッフは美人揃いだ。
スタイルも抜群。
しけた病院の窓口に置いておくのは勿体ないくらいだ。どこに出しても恥ずかしくない、いい女。
全員お直し済みだからな。

 スタッフは特別価格で施術ができます!
 最新技術を誰よりも早くモニターとして受けられます!

求人票に記載しておけば、希望者は次から次へと現れる。
面接して、採用して、研修期間にちょこっと顔をいじらせてもらう。
そしたら名札なんかつけなくっても、スタッフの顔を覚えられる。
己がメスを入れた顔だ。
世の中に数多溢れる女の中から選別して、整えて、自分のサインを入れてしまえば作品が出来上がる。

俺は、自分の作品以外は見分けられない。
相貌失認症だ。

5名無しさん:2021/10/17(日) 17:07:51 ID:bmA.J.SM0

从'ー'从 「二重にしたいんです〜」

( ´_ゝ`) 「埋没? 切開?」

从'ー'从 「前に埋没したけどイマイチで〜、だから切ってくださ〜い」

( ´_ゝ`) 「おk、この道具を使ってシミュレーションしていこうか」

金属の細い棒を使って瞼の皮膚を持ち上げ、理想の二重幅をデザインしていく。
女ってのは不可解だ。
目じりや口元の皺は嫌悪するのに、瞼は切ってでも皺を作りたがる。
薄っぺらい皮膚一枚で序列が決まるなんて、なんて愚かで美しいのだろう。

皮膚を切って黄色い脂肪を取り除き、縫い合わせれば君は生まれ変わる。
これで君と顔見知りになれる。

6名無しさん:2021/10/17(日) 17:08:14 ID:bmA.J.SM0

俺は昔、俺を見分けられなかった。

生まれたときから、いや、母親の腹の中からずっと面を合わせ続けた双子の弟。
俺が覚えられなかった初めての相手だ。

母のことはわかる。女性の骨格の上に規格外についた筋肉がつくりだすガタイのよさと特徴的な髪型で。
父もわかる。輝かしい頭皮と猫背で。
姉もなんとなくわかる。家にいる、母以外の女は姉だけだったから。

家族の中で、弟だけ、分からなかった。

鏡に映った己を弟と呼んだ。
公園で遊んでいる子供たちの中から弟を見つけられず、ただ名前を呼び続けた。
窓の向こうにいる弟が鏡像に見えた。
自分と弟の見分けがつかないことを笑われ、自分だけ髪型を変えた。
それでも、集団の中の弟に気づけずにいた。
探し続けた。見失い続けた。呼び続けた。何度も、何度も。

自分と同じ顔を見失う。
それは、自分を見失うようで。


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