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ξ゚⊿゚)ξは夏祭りに行くようです
1
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 20:49:16 ID:djGL6jMA0
ξ゚⊿゚)ξ「こんな時期に呼び出すなんて、随分余裕ね?」
中学3年
終業式の前日
夏空を映す大きな窓のある踊り場に、私は呼び出された
( ^ω^)「お…すまんお。」
( ^ω^)「ツン」
( ^ω^)「夏祭り、一緒に行かないかお?」
ξ゚⊿゚)ξは夏祭りに行くようです
2
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 20:50:28 ID:djGL6jMA0
ξ゚⊿゚)ξ「いったいなんなのよ…」
蚊除けのため、お風呂に入って汗を流す。
ξ゚⊿゚)ξ(最近連絡なんてしてこなかったのに…。)
____________________
ブーンと知り合ったのは、小学1年生の頃。
私は一人、帰宅途中の公園でブランコを漕いでいた
ξ゚⊿゚)ξ「…。」キーコキーコ…
( ^ω^)「おっ?おなじクラスのこだお!」
( ^ω^)「かえらないのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「…。」
( ^ω^)「ランドセルをおうちにおいてからじゃないとあそんじゃいけないんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「…」
ξ゚⊿゚)ξ「おうちにいたって、だれもいないもん。」
ξ゚⊿゚)ξ「つまんない…」キーコキーコ…
3
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 20:51:37 ID:djGL6jMA0
( ^ω^)「ブーンちもそうだお?」
( ^ω^)「じーちゃんとばーちゃんは、はたけにいるけどおうちのなかはブーンひとりだけだお。」
ξ゚⊿゚)ξ「そーなんだ…」
ξ゚⊿゚)ξ「うちはねー、きんじょでおじいちゃんとおばあちゃんがおみせやさんをやってるの。」
ξ゚⊿゚)ξ「いつもはそこでおとうさんとおかあさんをまってるの。」
ξ゚⊿゚)ξ「でも…おきゃくさんがたくさんきて、おじいちゃんとおばあちゃんはぜんぜんあそんでくれないんだぁ…」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンは、さみしくないの…?」
( ^ω^)「うーん、そういわれてみると、さみしいお。」
ξ゚⊿゚)ξ「おとうさんもおかあさんも、おうちにかえってもいないんだよ?」
( ;ω;)「あれれ?なんだかすごくさみしくなってきたお…!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ごめんね。」
ξ゚⊿゚)ξ「がくどうほいくがあればいいのになあ。」
( ^ω^)「がくどうほいく?」
4
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 20:52:44 ID:djGL6jMA0
ξ゚⊿゚)ξ「とかいには、こどもががっこうのあとにあつまるところがあるんだって。」
( ^ω^)「そこでなにをするんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「しゅくだいしたり、あそんだりするんだよ。」
(* ^ω^)「たのしそうだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「いいよねー。でもここらへんにはないんだって。」
(* ^ω^)「じゃあ、ぼくたちでつくるんだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「?」
(* ^ω^)「がくどうほいくを!」
ξ*゚⊿゚)ξ「!」
ξ*゚⊿゚)ξ「うんっ!」
____________________
5
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 20:54:09 ID:djGL6jMA0
ドライヤーで髪を乾かした私は、昨年着た浴衣を畳に広げた。
ξ;゚⊿゚)ξ「うーん、これでいいかな?」
白地に濃いピンクの花と赤い帯。
中学生が一人でも着ることができる二部式の物だ
ξ;゚⊿゚)ξ「柄は良いんだけど、ちょっと子供っぽい気がする…」
('、`*川「あら?ツン、何してるの?」
ξ;゚⊿゚)ξ(げっ、お母さん…)
ξ;゚⊿゚)ξ「べべ別に大した事じゃないわよ?!」
ξ;゚⊿゚)ξ「お祭りに行きたいってせがむブーンに付き合ってあげようと思って!」
ξ;>⊿<)ξ「今年は受験生だってのにおこちゃまよね!?まったく!!」
('、`*川
('、`*川 ピーン!
('、`*川「そういうことなら、任せなさい!」
母は全速力で二階に駆け上がっていった。
6
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 20:55:21 ID:djGL6jMA0
('、`*川「これにしなさい。」
('、`*川「お母さんが着せてあげるから。」
母が畳紙から取り出したのは、白地に藍と灰色で朝顔が描かれた着物と、赤茶の帯
黄色の帯締めにとんぼ玉の帯留め。
https://imgur.com/a/DpToze8
ξ゚⊿゚)ξ「えっ、これ大人物じゃ…?」
('、`*川「今のツンの身長なら大丈夫よ。」
p('、`*川「お母さんはこれでお父さんをオトしたんだから!」
ξ ;///)ξ「ちょっ、そんなこと聞いてないってば…!」
7
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 20:57:24 ID:djGL6jMA0
____________________
2年生になったら、私達が始めた"がくどうほいく"に仲間が増えた。
('A`)「家にいてもじーちゃんにこきつかわれるだけだしな。」
川 ゚ -゚)「子どもどうしであそんだ方が、ろう人の体力をうばわずすむ。」
ξ*゚⊿゚)ξ「今日は何してあそぶー?」
(* ^ω^)「おにごっこしようお!」
私達はじゃんけんで鬼を決めた。
(;'A`)「げ…」
川 ;゚ -゚)「ブーンか…」
ξ;゚⊿゚)ξ「気をひきしめないと…」
8
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 20:58:50 ID:djGL6jMA0
三⊂( ^ω^)⊃「ドクオー、まつおー!!」
ブーンの足は、とても早い。
三(;'A`)「ヒイイイイィィィ!!!」
⊂(* ^ω^)⊃「ドクオ、大すきだおっ!」
三( ^ω^0);A;)
モチイイイイイィィィィンンン!!!
(;A;)「ぴぎゃあああぁぁぁ!!!」
川;゚ -゚)「ドクオオオおおおぉぉぉ!!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「クー!早くにげなきゃ!!」
彼のほっぺは異様にもちもちしていて、当時の私達にとってそれはそれは…恐怖だった。
三⊂( ^ω^)⊃「つぎは、クーいくお!」
三川;゚ -゚)「イヤアアアアァァァァ!!」
⊂(* ^ω^)⊃「クー、大すきだおっ!」
三( ^ω^0)川 ; -;)
モチイイイイイィィィィンンン!!!
川 ; -;)「み"や"ゃあああぁぁぁ!!!」
9
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:00:09 ID:djGL6jMA0
ブーンのこの癖は、お母さん譲りらしい。
从 ゚∀从「ブーン。大好きだぞー!」
从 ゚∀从^ω^*)ギュッ!
(^ω^*)「かーちゃん、くすぐったいお!」
こんな風に、よくふざけてブーンを抱きしめていたそうだ
ブーンはお笑い芸人のネタのように、それを真似していた。
三⊂( ^ω^)⊃「さいごは、ツンだお!」
三ξ;>⊿<)ξ「いやーっ!!」
三⊂(* ^ω^)⊃「ツン、大すきだおーっ!!」
ブーンにギュッてされると思うとドキドキして、誰よりも必死で逃げた。
おかげで6年生までブーンに全勝という記録を残しているし、中学ではテニス部のエースにもなった
______________________
10
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:01:15 ID:djGL6jMA0
ξ ///)ξ(今思うと、ちょっと勿体ないことしたかも…。)
ξ゚⊿゚)ξ(髪型は、どうしようかな…)
中学に入って以来、部活で動きやすいようにポニーテールにしているけれど今日は気合を入れたい。
ξ゚⊿゚)ξ(着物が大人っぽいからまとめ髪にしようかな?)
ξ゚⊿゚)ξ(前髪を編み込むのも良いなあ…)
ξ゚⊿゚)ξ(でも…)
11
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:02:40 ID:djGL6jMA0
中学生になりそれぞれ忙しくなったが、連休や長期の休みになるとみんなで集まって図書館で勉強したり出かけたりもした。
クーは私立の学校に進んでいたから、私達と会えて特に喜んでいた。
だけど2年の春休みを過ぎた頃から、誰からも集まろうという声は上がらなくなった。
私から何度か誘ってみたが、みんな忙しいらしく「そのうち会えたらいいね!」で終わってしまう。
12
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:04:21 ID:djGL6jMA0
その頃から全校集会で、陸上部の表彰からブーンの名前が上がらなくなったのを覚えている。
私の中学では少しでも良い高校に進みたくて、早めに勉強一本に絞る子も割といるのであまり気にならなかった。
でも、その事を聞く気にはなれなかった。
ブーンはとても走るのが早かったし、もし未練があるまま辞めていたら…。
ただでさえ疎遠になっているのに、気まずい。
ξ゚⊿゚)ξ(ドクオは何か聞いているのかしら?)
13
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:05:26 ID:djGL6jMA0
ブーンとドクオは3年間同じクラスでいつもつるんでいた。
ξ゚⊿゚)ξ(ドクオ、ずるい…。)
クラス分けをした人のせいだけど、羨ましくてしょうがなかった。
中学に入りしばらくして、ブーンは背が伸びてドクオみたいにヒョロヒョロとして、ちょっぴり女の子達にキャーキャー言われているようだった。
ξ゚⊿゚)ξ(私は小さい頃のポチャポチャでもいいのに…。)
ξ;゚⊿゚)ξ(まさか誰かと付き合ったりしてない…よね…?)
14
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:06:57 ID:djGL6jMA0
ξ゚⊿゚)ξ「これでいいわね。」
結局まとめ髪はやめて、小学生の頃と同じツインテール
そっちの方が私らしいと思ったから。
前髪は軽く流してパールが連なったヘアピンを付けた
色付きのリップも少しだけ。
母に浴衣を着せてもらって、巾着と下駄で完成。
ξ゚⊿゚)ξ「行ってきます。」
('、`*川「行ってらっしゃい!ファイトよ!」
ξ ;///)ξ「だから違うって!!」
15
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:07:51 ID:djGL6jMA0
慣れない下駄
この季節、夜に変わる前の藤色を含んだ空気が私は好きだ。
ξ*゚⊿゚)ξ(昼間は暑かったのに、意外と涼しいわね…)
夏草の匂いを満喫しながら、ゆっくりと歩く。
ξ゚⊿゚)ξ(そういえば…)
ξ゚⊿゚)ξ(ブーンのお母さんは、今日ブーンが私と会うことを知っているのかな?)
ξ゚⊿゚)ξ(嫌だと思われていたら…どうしよう…。)
16
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:09:03 ID:djGL6jMA0
______________________
3年生の新学期に職員室で、ブーンのお母さんを見かけて声をかけた時。
ξ*゚⊿゚)ξ「こんにちは!」
从 ゚∀从「あ…ああ…。」
バツが悪そうな笑顔で返され、早々に帰っていってしまった。
ξ゚⊿゚)ξ(どうしたんだろう…?)
ξ;゚⊿゚)ξ(小学生の頃は、飛び付くくらいに抱きしめてくれたのに…。)
______________________
あの時は…かなりショックだった。
女の子を持つ父親のように、年頃の異性の子を持つ親の心は複雑だと聞くけれど、いつも優しかったブーンのお母さんもそうなのだろうか?
私だけ…小学生の頃の思い出に取り残されて、みんな、知らぬうちに変わっていってしまったのだろうか?
ξ゚⊿゚)ξ「……。」
凄く、寂しい。
17
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:11:01 ID:djGL6jMA0
ξ゚⊿゚)ξ「まだ来てないのね…。」
神社前の鳥居で待ち合わせの予定だが、ブーンの姿は見えない。
私の横を通りがかった人が立ち止まった。
( ^Д^)「おっ!津田さんじゃん。」
(* ^Д^)「なになに!?今日めっちゃ可愛いじゃん!!」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、こんばんは。」
同じクラスの男子だ。
( ^Д^)「俺ん家近くだから一人でフラっと来たんだけど、一緒に見て回らね!?」
ξ゚⊿゚)ξ「何言ってんの。こんなにめかし込んでんだから先約があるに決まってんでしょ?」
( ^Д^)「…あー、それもそっか!」
( ^Д^)ノシ「んじゃ、また学校でな!」
ξ゚⊿゚)ξノシ「はいはい。」
ξ゚⊿゚)ξ(まったく、慌ただしい奴ね。)
ξ゚⊿゚)ξ「またね…か。」
18
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:12:05 ID:djGL6jMA0
______________________
ξ゚⊿゚)ξ「そろそろかえるじかんだね。」
ξ*゚⊿゚)ξ「きょうはブーンがあそんでくれて、うれしかったよ!」
ξ*゚⊿゚)ξノシ「ばいばい!」
( ;ω;)「やだお!」
( ;ω;)「ツンちゃんばいばいっていわないでだお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「なんでー?」
ξ;゚⊿゚)ξ「さよならのときは、ばいばいっていうよ?」
( ;ω;)「ちがうお!またねっていうんだお!」
( ;ω;)「つぎのおやくそくをするから、ばいばいよりぜんぜんさみしくないんだお!」
ξ*゚⊿゚)ξ「そーなんだー!」
ξ*゚⊿゚)ξノシ「またね、ブーン!」
(* ^ω^)ノシ「ツンちゃん、またねだおー!」
______________________
19
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:13:14 ID:djGL6jMA0
( ^ω^)「…。」
∑ξ;゚⊿゚)ξ「って、ブーン!」
ξ;゚⊿゚)ξ「いるなら声かけてくれれば良いのに!」
物思いにふけているところを見られて、目茶苦茶恥ずかしい。
ξ;゚⊿゚)ξ(というかさっきの男子と仲が良いって思われたら嫌だなぁ…)
プギャーにはちょっと失礼だが本心だ。
良い奴なんだけどね。
( ^ω^)「ツン……」
ξ゚⊿゚)ξ「何?」
20
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:14:21 ID:djGL6jMA0
ブーンが私をじっと見つめる。
ξ;゚⊿゚)ξ「…」
( ^ω^)
ξ;゚⊿゚)ξ「……?」
( ^ω^)
ξ;゚⊿゚)ξ「………??」
( ^ω^)
ξ;゚⊿゚)ξ「………!??」
( ^ω^)「綺麗だお。」
ξ;*゚⊿゚)ξ「っ!!!?」
ξ* ///)ξ「ぁっ、ありがとう…。」
21
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:15:19 ID:djGL6jMA0
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンは、どうして制服なの?」
( ^ω^)「今日は学校に用事があったんだお。」
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん…あんたも大変ね。」
( ^ω^)「そんなことないお。めかし込む方が大変だったお。」
ξ *///)ξ「っ、もぉっ…!!」
これ以上ないくらい顔が熱くなったので、手であおぎながら話題を変えた。
ξ゚⊿゚)ξ「花火はもう始まるけど、屋台を少し見て回りましょうか。」
( ^ω^)「良いお。」
22
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:17:06 ID:djGL6jMA0
開催の放送の後に遠くで打ち上がる花火の音。
でもこの辺りは、屋台の発電機の音の方が大きい。
ξ゚⊿゚)ξ「何か食べなさいよ。」
( ^ω^)「お?」
ξ゚⊿゚)ξ「最近あんた、痩せすぎなのよ。」
( ^ω^)「…そうかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「男の子はちょっとぽっちゃりしてる方が可愛いのよ?」
(;^ω^)「男の子は初耳だお。」
ξ*゚⊿゚)ξσ「ほら、あそこに牛串が!」
(;^ω^)「なんでそんなにこだわるんだお…」
ξ゚⊿゚)ξ「だって……」
ぽっちゃりな頃のブーンは、いつも私のことを大すきだと言ってくれたから。
また、言ってくれないかなって…
ξ;* ///)ξ(…そんな恥ずかしい事、言えるわけないじゃない!)
23
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:18:17 ID:djGL6jMA0
ξ;*゚⊿゚)ξ「もうっ!!」
オレンジ色に光る屋台の道
私は数歩進んで振り返り、勝ち気な言葉で照れ隠しすることにした。
ξ*゚ー゚)ξ「ブーンっ!!」
ξ*゚ー゚)ξ「今日は、ダイエットはお休みよっ!」
( ^ω^)
( ^ω^)「………ツン。」
( ^ω^)「ツン。」
( ^ω^)「______。」
ξ;゚⊿゚)ξ「なにー?聞こえないー!」
( ^ω^)「今行くお。」
ξ*゚⊿゚)ξ「はやくー!」
24
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:19:40 ID:djGL6jMA0
お小遣いも充分あるし、今日はブーンに付き合おう。
…そう思ったのに。
ξ゚⊿゚)ξ「…本当にそれだけでいいの?」
( ^ω^)「良いんだお。」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンの好きそうな物、いっぱいあるわよ?」
振り返ればたこ焼きに焼きそば、フランクフルトにぐるぐるポテト。
他にもかき氷とか、沢山ある。
昔は目を輝かせてどれにしようか悩んでいたのに、ブーンが手に持っているのは、かざぐるま。
紺色にまち針みたいな黄色の模様が入っている。
ξ゚⊿゚)ξ(くるくる回ると流れ星みたい…)
そんなことを思いながら、私は小さめのりんご飴をちびちびと食べた。
https://imgur.com/a/YKm4jGF
( ^ω^)「これで良いんだお。」
( ^ω^)「同じところに戻ってくるのが良いんだお。」
そう言ってブーンはかざぐるまをじっと見つめていた。
ξ;゚⊿゚)ξ「ふーん…??」
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーンって理系だったっけ…?」
( ^ω^)……。
頭があまり良くなくてごめん。
そこで静かになるのやめて。
25
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:21:33 ID:djGL6jMA0
私の町は田舎だけど、このお祭りは結構人が集まる。
神社を囲むように静かな湖があるから、ロケーションが良くて割と規模も大きい。
ξ;゚⊿゚)ξ(人が増えて歩き辛くなってきたわね…。)
ξ;゚⊿゚)ξ「あっ、すみません!」
向こうから歩いてきた人とぶつかって、お互い謝った。
気を付けて歩かなきゃ、と思った時。
ξ*゚⊿゚)ξ「あ…」
( ^ω^)「行くお。」
ブーンが、私の手を掴んだ。
その手は骨ばってぬるくて、子供の頃のプニプニとしてあついくらい温かい手とは違う。
26
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:22:43 ID:djGL6jMA0
花火が打ち上がる度に照らされる、ブーンの後ろ姿。
ふんわりとした茶色の髪と、白いシャツ。
背が伸びて、細くなって、声も低くなって、
口数も私の方が多いくらいになって。
でも、変わらずブーンは優しかった。
ξ*゚⊿゚)ξ「…」
幼い頃、大きな犬に吠えられた時。
クラスの子と喧嘩して泣いていた時。
すすきだらけの道を冒険して、迷子になった時。
いつもこうして手をとって、前を進んでくれた。
懐かしくて嬉しくて、ありがとうって言いたいのに…、声が出ない。
27
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:23:50 ID:djGL6jMA0
私は
ブーンの事が好き。
28
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:25:17 ID:djGL6jMA0
神社の端の方で、やっと座れる場所を見つけた。
みんな思い思いに花火を見ていて、私達もしばらく花火を眺めた。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「……」
しゅるしゅるとのびて大きく咲く花、
ぽっと小さく沢山咲くカラフルなものや、下で忙しなく咲く扇状のたんぽぽ。
実際の名前がたんぽぽかは知らないけれど、昔ブーンがたんぽぽみたいだと言ったからそう覚えている。
29
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:26:45 ID:djGL6jMA0
______________________
( ^ω^0))「たこ焼きサイコーだお!」モグモグ
('A`))「ぐるぐるポテトもうまいぞ!」カリカリ
川 ゚ -゚))「この合ってるんだか分からんみかんのクレープもくせになるぞ。」モチモチ
ξ゚⊿゚))ξ「りんごあめウマー。」パリパリ
私達は屋台で買ったそれぞれの物を称えながら、夜空の大輪を眺めた。
(;'A`)「うわっ、何だあれ!生き物みたいに動くぞ!」
川;゚ -゚)「私はあのどデカい、やなぎみたいなのがこわい。」
ξ゚⊿゚)ξ「音もやたら大きいわよね。」
( ^ω^)「あっ、あれならたんぽぽみたいでこわくないお!」
ξ*゚⊿゚)ξ「たんぽぽw」
(*'∀`)「絶対ちがうだろww」
川*゚ -゚)「でもそう見えなくもないなww」
______________________
30
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:27:49 ID:djGL6jMA0
ξ*゚⊿゚)ξ(懐かしいなあ…。)
ξ*゚⊿゚)ξ(今年の花火もとっても綺麗だけど…)
ξ;゚⊿゚)ξ(もう30分以上見てるのに、なんの会話もないわね…?)
花火で光るブーンの横顔を、ちらりと見た。
( ^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ(ブーンは、どうして私だけを誘ってくれたんだろう?)
ξ゚⊿゚)ξ(ここならドクオとクーも家が近いのに…。)
ξ゚⊿゚)ξ(…そう思うくらい……)
ξ;* ///)ξ(二人きりなんて、何年ぶりだろう…。)
31
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:29:04 ID:djGL6jMA0
本当に最近のブーンは分からないことだらけだ。
でも…
ξ−⊿−)ξ(今しか…ないわよね…?)
ξ゚−゚)ξ(私の気持ち、全部、言おう。)
ξ゚−゚)ξ(またみんなで会いたいって。)
ξ゚⊿゚)ξ(…そしてブーンに、私の小さい頃からのずっとずっとを。)
いつも引っ張ってもらっていた。
だから今日は…、私から勇気を出そう
ξ;*゚⊿゚)ξ(…大丈夫。言えるっ…!)
情けないくらい手は震えているけれど。
今日は特別な浴衣だって、着ているのだから。
32
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:30:06 ID:djGL6jMA0
私はしっかりとブーンの方を向いた
ξ゚⊿゚)ξ「…ねえ、ブーン。」
ブーンは指で回していたかざぐるまを止めて、こちらを見た
( ^ω^)「…お?」
ξ゚⊿゚)ξ「…冬休みの後から、私達全然会ってなかったじゃない?」
ξ゚⊿゚)ξ「学校でもクラスが違って、話も出来なくて……」
ξ゚⊿゚)ξ「…すごく、寂しかったよ。」
( ^ω^)
ξ;*゚⊿゚)ξ ドキドキ…
33
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:31:12 ID:djGL6jMA0
人生で一番素直になって、緊張で胸が壊れそうなくらい苦しい。
ξ;*゚⊿゚)ξ「受験が終わったら、また昔みたいにみんなで遊ばない!?」
ξ;*゚⊿゚)ξ「電車に乗って、買い物に行ってみたりとか…。」
ξ;*゚⊿゚)ξ「…」
( ω )
ξ;゚⊿゚)ξ「……ブーン?」
( ^ω^)「ツン、僕は遠くへ行くんだお。」
言葉と同時に、花火の大きな音が鳴った
34
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:32:16 ID:djGL6jMA0
ξ゚⊿゚)ξ「え…?」
ξ;゚⊿゚)ξ「引っ越すってこと…?」
( ^ω^)「そうだお。」
ξ;゚⊿゚)ξ「そんな話一度もしたこと無いじゃない!」
( ^ω^)「ごめんお」
35
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:33:01 ID:djGL6jMA0
ξ;゚⊿゚)ξ「どこ…!?」
( ^ω^)
ξ;゚⊿゚)ξ「県外!?」
( ^ω^)「……」
ξ;゚⊿゚)ξ
( ^ω^)「…すごく、すごーく遠くだお。」
36
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:33:49 ID:djGL6jMA0
ξ;゚⊿゚)ξ「え…」
ξ;゚⊿゚)ξ「…………海外?」
( ^ω^)
肯定とも否定ともいえない表情。
ブーンの瞳は
見たことのないほど
静かな光
37
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:34:45 ID:djGL6jMA0
ξ;゚⊿゚)ξ「…だ、大丈夫。」
( ^ω^)
ξ;゚⊿゚)ξ「高校生になったら、バイトも出来るようになるし」
ξ;゚⊿゚)ξ「お小遣い貯めて行くよ!」
( ^ω^)
ξ;>⊿<)ξ「…ど、どこへだって、絶対会いに行くから!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「だって私、ずっとブーンの事が大す
( ^ω^)「ツンは絶対に来れないとこだお。」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「……え…」
私の言葉を掻き消したのは、
氷のように冷たい声だった
38
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:35:51 ID:djGL6jMA0
『第〜回目の花火大会は、これにて終了です』
そうアナウンスが流れ、皆一斉にゾロゾロと入り口に向かって歩きだす
( ^ω^)「花火も終わったし、そろそろ帰るお。」
ブーンは私の手を取って、その流れに入り込んだ
私は、真っ白な頭でなんとか言葉を作った
ξ゚⊿゚)ξ「…ねぇ、今日はどうして…誘ってくれたの…?」
( ^ω^)
ブーンは、答えない
39
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:36:37 ID:djGL6jMA0
( ^ω^)「ツン、今日は来てくれて…ありがとう。」
( ^ω^)「気を付けて、帰るお。」
( ω )「バイバイだお。」
さっきとは真逆の、ひどく優しい声だった。
ブーンは手を振り、背を向けて歩きだした
40
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:37:32 ID:djGL6jMA0
ξ゚⊿゚)ξ「おかしいよ…。」
今まで私達が別れる時は、何度もいたずらのように振り返っては笑い合うのが癖だった。
ξ;゚⊿゚)ξ「いつもみたいにまたねって…、言ってよ!」
ξ;>⊿<)ξ「バイバイじゃさみしいよ!」
ブーンの姿は、もう見えない
ξ;゚⊿゚)ξ「…っ……!!」
ξ;⊿;)ξ「嫌だよ、ブーン!!」
ξ;⊿;)ξ「ねぇ、どうして…?」
___どうしてそんなに大事そうに、かざぐるまを持っているの___?
41
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:38:20 ID:djGL6jMA0
ξ;⊿;)ξ グスッ…ヒック
上手く歩けず脱げそうな下駄
人の波に流されて、来た道を1人で歩く
ξ;⊿;)ξ(私、何か嫌われること言っちゃったのかな…?)
ξ;⊿;)ξ(ブーンの気持ちが…分からない……)
出口はいくつかあるけれど、今追いかければ間に合うかもしれない
それでも、またあの冷たい瞳で見つめられたらと思うと
足がすくんでしまう
42
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:39:07 ID:djGL6jMA0
好きか嫌いかも聞けなかった
ξ;⊿;)ξ(でも…)
ξ;⊿;)ξ(1つだけ確かなこと…)
ξ;⊿;)ξ(私は…)
彼に
拒絶された
43
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:40:12 ID:djGL6jMA0
「ツン、大すきだおーっ!」
頭の中で幼い頃のブーンの声が響いた。
屋台で光るブルー、ピンク、オレンジ
ユラユラと揺れて、マーブルになる
色の海に溺れないように、私は目を閉じ息をこらえた
終
44
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 21:40:59 ID:djGL6jMA0
数年前にUSENで聴いて一聴き惚れした曲からイメージしました
Nabowa つかのま feat. Port of Notes
https://youtu.be/n_5tb_le4_c
https://imgur.com/a/HMY0NOs
45
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 22:19:22 ID:rf00T54g0
ブーンにかざぐるまを宛がうことで、供養としての道具以上の意味を持たせてるのがいいなと思いました。勢いよく走るブーンとくるくる回るかざぐるまってどこか似てますよね。
46
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 22:20:18 ID:rf00T54g0
ところで一応訊くんだけど、これ祭りに出品するために書いた作品じゃないよね、、、?
47
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 23:00:47 ID:djGL6jMA0
>>46
ご感想ありがとうございます。
今夏の投下予定がずれ込んだ物で、祭りに出すにも準備期間長かったしな、って感じの通常投下です。
48
:
名無しさん
:2021/09/30(木) 23:20:11 ID:rf00T54g0
>>47
なるほど、間違いじゃなくて良かったです。
曲聴きながら読み直したんですけど、爽やかで切ないような演奏に気だるそうな歌が作中の雰囲気とピッタリで凄く良かったです。絵も綺麗!
次回作を楽しみにしています。
49
:
名無しさん
:2021/10/01(金) 23:31:00 ID:wQuA9B160
乙です。めちゃくちゃ良かった……
ブーンに何があったのか、なぜ諦めたような絶望したような様子なのか
作中のちょっとしたヒントから想像が膨らむし、
色々考えてみるほどに、勝手ながら切なくなってしまう
50
:
名無しさん
:2021/10/02(土) 10:03:16 ID:KUz/eRQ.0
乙乙乙
51
:
名無しさん
:2021/10/07(木) 04:41:25 ID:5wzq/uO.0
乙です
切なすぎる…ツンはいつか気づく日が来るんだろうか…
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