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( ・∀・)ハイパー・レプリゼントのようです

1名無しさん:2021/06/20(日) 18:24:58 ID:gcQI7MFo0
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ハイパー・レプリゼントのようです



モダン・カフェ・モーロは親父が三代受け継いでいるもので
何十年も変わらないレトロな佇まいが売りだと、奴は折に触れて虚勢を張るが
その実、改装費をロクに用意できないからそのままなのであって
事情を分かってしまえば、ただの薄汚れた時代遅れの純喫茶に過ぎない。

店の入口横、アルミ製の貧相な階段があり、ギシと音を立てて上がると俺の家がある。
オンボロの木造だから壁向こうの音が筒抜けで、時折階下の喧騒すら聞こえてくる。
元々喫茶店だから客もおよおそ静かで、今までは精々皿が割れた音にひるむくらいの些細なものだったが
俺が中学生の時に設置されたカラオケセットが、大分まずかった。

ある日、大きな段ボールを数箱積んだトラックが軒先に停まり
俺を含めた数人がかりでそれらを店まで運んで、包装を剥がしてみれば、どこかで見たことがあるような黒い箱。
何だと聞けば、カラオケだと親父は言う。

(・∀ ・)「常連さんが皆欲しい欲しいって言うから、まあ、ちょっとしたテコ入れよ」

設備屋が店のオーディオとカラオケセットを繋ぎ、それは次の日から稼働されたが
どうも俺が思っている以上にこの店の客はカラオケが大好きな人間ばかりらしく、子供のようにはしゃいでは
若い頃好んで聴いていたらしい歌謡曲を片端から入れるのだった。


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2名無しさん:2021/06/20(日) 18:26:06 ID:gcQI7MFo0
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奴らはエコーが大好きなようで
必要以上に強くかけるあまり、終いには人間の声かどうかも怪しい「どよめき」と化す。
例えば俺が健気にお勉強などに打ち込んでいようが
「もしもピアノが弾けたなら」によく似たどよめきが、階を抜けて俺の耳を通過せんと突いてくるわけで
実際、その頃から俺の成績は斜め四五度向こうに急降下した。
それから数年後、名前を書けば誰でも入れると噂されている地元の工業高校に進学せざるを得なくなった時
親父は苦虫を噛み潰したような顔を抑えきれていなかったが
俺から言わせてみれば、全部あんたのせいだ。



カラオケで、もう一つ思い出した。導入されて間もない頃の話だ。
親父は商店街振興会の何かしらの役どころを持っているらしく、店のカウンターにノートを広げては
向かいの魚屋やクリーニング屋のあたりと、熱心に話し込んでいる光景をしばしば見かけた。
それで俺が学校から帰って店に顔を出したある日、その面々が声をかけてくる。

(・∀ ・)「お前、まだ『すみかわ光のつむぎ』歌えるよな?」

( ・∀・)「はあ?」

一瞬固まったが、すぐに思い出した。小学校の頃に合唱コンクールで無理矢理歌わされた、市制50周年記念歌だった。
ここまでする必要あるのかと友人間でぼやいていたくらい何度も歌わされたから、嫌でも覚えていた。

(・∀ ・)「入ってんだよ、これに」


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3名無しさん:2021/06/20(日) 18:27:22 ID:gcQI7MFo0
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親父がカラオケセットを手で軽く叩き、自慢気に言う。
それでどうしたと聞くと、どんなものか聞いてみたから、一回だけ歌ってみろと言う。

(・∀ ・)「これはな、俺達もちょっとだけ噛んでるんだから。作詞に『すみかわオールスターズ』ってあるけど、俺達のことだから」

俺達のようなおっさん共が歌うより、コンクールで何度も練習した若い奴が歌った方が曲の為だ、と言う。
よく分からない理屈だったが、嫌だと言っても先がややこしいことになりそうな気がしたから、素直に歌うことにした。
駄目出しされて何度も歌わされたらたまったものではないと、なるべく真面目に丁寧に歌った。



元北台から見渡せば 空と海とせせらぎの青
岸辺の緑も太陽浴びて 温もりにまどろむ午後の幸せ

光と光がつむぎ合って 私達はこの街で笑い合う
光と光がつむぎ合って すみかわは今日も羽ばたき続ける



俺が歌い終えると彼らはパチパチと手を叩き、素晴らしい、この街を担う有望な若者だ、と言った。
よしてくれ、と俺は思った。何も、光と光をつむぎ合ったり
笑い合ったり羽ばたいたりしながら、この街で生き続けてきた記憶はない。

驚愕したのはそれから数日後のことで、やはり俺が学校から帰る時、商店街を歩いていると
アーケードに設置されたスピーカーから聞き覚えのある曲、声が聞こえてくる。

「( ・∀・)『きっしべのみどりもお、たいようああびてえ、ぬっくもりにまあどろむ』」

チープな打ち込みのピアノに乗る、妙に堅く無機質で調子外れなその声は、まさしく俺のものだった。
奴ら、俺に黙ってカラオケを録音したどころか、テープまでこさえて、挙句の果て、それを商店街で流しやがる。


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4名無しさん:2021/06/20(日) 18:27:54 ID:gcQI7MFo0
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思わず、周囲を二、三度ほど見渡した。
平日午後のアーケードに人の姿はまばらで、ひとまず知り合いがいないことを確認すると
なるべくすれ違う人間、すれ違う人間に顔を見られぬよう、下を向いて帰った。
店のドアを開くと、カウンターに立っていた親父が驚いただろう、と悪びれもなく言う。

(・∀ ・)「録ったテープな、中々良かったから振興会の代表に聞かせたら、凄く気に入ってくれてよ」

その代表とやらの鶴の一声で、わざわざ市にも許可を取った上、商店街でしばらく流すことが決定されたらしい。
すみかわオールスターズとしても、父親としても鼻が高い、と親父は言ったが
満足気に虚空を見上げるばかりで、俺の目を見ることはなかった。
それを見て、もう何を言っても無駄だと、俺は特に異議を唱えることもなかったが
その後も商店街のスピーカーから俺の声が垂れ流される度、虫唾が走るような気分を幾度と無く覚えた。



誤算と言えば、それから十年近くが過ぎた今でも、俺の声が鳴り止む気配が無いことだ。
流れ始めた当初は、やはりと言うか、知り合いと言う知り合いに散々言及された。
商店街の顔馴染みからは、流石生まれついての須美川人、若いのが地元愛を持つことは素晴らしいと褒めそやされ
学校の人間からは、何度聞いてもだせえ歌と茶化され、イントロが聞こえてくるだけで笑えると小突かれ
声の堅さや、歌い回しの調子が外れた感覚を真似され、とにかく馬鹿にされ続けた。

それでも、人の噂が七五日で限界ならば、俺のカラオケもそのくらいが寿命だったようで
苛めへと発展する前に飽きられたことは、大分幸運だった。
おまけに俺の声変わりもその頃から始まっており、それから数ヶ月経ってしまえば、完全に別人の声だった。


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5名無しさん:2021/06/20(日) 18:28:29 ID:gcQI7MFo0
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どうせ新しい音源をこさえるのが面倒だとか、その程度の理由で今まで使い倒しているのだろう。
今、俺の声が商店街にどれだけの音量で響き渡ろうが、誰も構いやしない。
当事者としても、別に明日から急に流れなくなろうが、地球が滅ぶまで鳴り続けようが、勝手にしてくれれば良い。



既に俺の声ではなくなった俺の声を耳に受けつつ、店横の階段を上り、家に帰った。
居間のテーブルにはラップがけされた夕飯が二人分、親父は当然店にいるとして、お袋もパートに出ているようだった。
妹の部屋の前に行き、飯食うかと聞いた。反応は無い。

( ・∀・)「飯だって」

大分声を張り上げたが、それでも反応は無い。少々乱暴にドアを叩き、めしめしめしと叫ぶと
ドアが開き、妹が上目使いで睨む。

lw´‐ _‐ノv「分かってるよ」

( ・∀・)「じゃあ、最初に呼んだ段階で出てこいよ」

|w´‐ _‐ノv「聞こえなかったんだもん、カラオケで」

階下から「カモメが翔んだ日」によく似たどよめきが聞こえてくる。
レンジで温めた皿を妹に差し出すと、彼女は僅かばかりの会釈を返して席につき、黙々と箸を動かした。
元々から寡黙な子だったが、受験勉強が本格化したここ数ヶ月で、いよいよ静けさに磨きがかかった。
いや、分からない、俺の前だけの話かもしれない。とにかく口数が少ないから、その場その場の感情もいまいち掴めない。


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6名無しさん:2021/06/20(日) 18:29:15 ID:gcQI7MFo0
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( ・∀・)「気が散らないのか」

箸の動きはそのままに、首を傾げる。

( ・∀・)「カラオケ、平気なのか」

傾げた首を元に戻し、頷く。

( ・∀・)「俺、あれが駄目でこんなんなったのに」

俺が鼻笑混じりに返すと、彼女も含み笑いを漏らした。

lw´‐ _‐ノv「あれくらいで駄目になったら、一生このままだし」

( ・∀・)「あ?」

lw´‐ _‐ノv「こっちの話」

それきり妹は口を開かなかった。俺も、その先の言葉を聞きたいとは思わなかった。
ここ数年、ずっとこうだ。妹は俺に――俺以外の家族にもそうかもしれないが――薄い侮蔑の膜を張って、生きている。
思い当たる節はさておくとしても、具体的な言葉を吐かずとも分かるさ。何せ俺は、お前の兄だから。


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7名無しさん:2021/06/20(日) 18:29:48 ID:gcQI7MFo0
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冷凍ピザの切れ端を無理矢理口に押し込むと、皿洗いも適当に済ませ、再び家を出る。
五〇CCのスクーターに跨ると、それは頼り無い排気音を吐き、おもむろに発進する。
人気の無いアーケードを切れかかった電灯が淡く包み込み
道の中心を寒風が我が物顔で通り抜け、半ヘルが頭上でガタガタと揺れた。
赤茶に錆びたシャッターの連なりばかりが眼を掠めるのは、何も夜に限った話ではない。

俺の家も、いつかこうなるだろう。
先の話と気楽に構えていられる日々はとうに過ぎた、俺でさえ漠然と知っている。

あんたが思い付きで買ったカラオケセットの元は取れたか。
ロードサイドのチェーン店へと離れていった客は取り戻せたか。
光と光がつむぎ合って、今日も羽ばたき続けられるなんて、本気で思っているのか。
あんた、本当はとうの昔に全てがおとぎ話だと分かっているんじゃあ、ないのか。

漠然と浮かんでは消える恨み言を、寄っては去る沿道のガードレールに擦り付け
しばらく進むと、この地域の大動脈たる国道へと抜ける。
チェーン店が整然と立ち並び、パチンコ屋とスーツ屋に挟まれたスーパーマーケットが、俺の勤め先だった。

今日のシフトは変則的だった。
原則、日勤、夜勤を一週間毎に交代するようなシフトを組まれているが
近場に住んでいてすぐ出勤できるが故、イレギュラーな時間帯での出勤を店長直々に「頼み込まれ」ることがある。


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8名無しさん:2021/06/20(日) 18:30:49 ID:gcQI7MFo0
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やはり昨日も、店長に呼ばれた。いつも夜入っているパートの人が諸事情で来れないと。
だから一九時入り、明け方翌三時上がりでよろしく、と。俺に拒否権は無い。
了解ですと、何をも思っていないそぶりを見せ、シフト変更届を主任に出せば、それでお終い。
後は、何も考えるな。しょうもないことで、いたずらに感情を揺り動かす必要は無い。

誰もいない休憩室の灯りを点け、裾がほつれたジーンズを引きずって入る。
静まり返った部屋を跳ね返るは、時計が秒針を打つ音のみ。
喫煙コーナーでベイプを取り出して、この前ドンキで買ったマンゴークリームのリキッドを吸い
あまりの甘ったるさに喉からむせ上がり、灰皿に手をついて、うずくまる。

( ・∀・)「ああ、ダメダメダメ、これはダメ……」

秒針が、休憩室のしじまを突き破らんと躍起になっている。一八時五九分、観念の時。
擦り切れたスニーカーを履き、糸くずにまみれたエプロンを付けて、フロアに出る。
今日も元気です。須美川のお客さん、今日も私は元気です。いらっしゃいませ、いらっしゃいませ、いらっしゃいませ――。

レジ、須美の地酒を手に、これは本当においしいから何本も買っちゃうのよ、老婆は言う。
そうなんですか、と俺は返す。

J( 'ー`)し「これねえ、私の近くのところに工場あってねえ、そこでも売ってるんだけどねえ」

( ・∀・)「そうなんですか」


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9名無しさん:2021/06/20(日) 18:31:28 ID:gcQI7MFo0
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J( 'ー`)し「でもこんな夜でしょ? それで夜でも売ってるのがここしか無いって知ってるから」

( ・∀・)「あっ、そうなんですか」

J( 'ー`)し「でもねえ、これは本当においしいから何本も買っちゃって、もう切らしてることがなくてねえ」

( ・∀・)「ええ、そうなんですか」

J( 'ー`)し「で、私んとこの近くにこれ作ってる工場あってねえ、そこでも直売してるんだけど」

( ・∀・)「へえ、そうなんですか」

J( 'ー`)し「でもこんな夜だから直売所も閉まってるでしょ? それで夜でも売ってるのが」



一部始終を見ていたらしい。レジを外れた段階で、主任に呼び出された。
いくらボケ老人とは言え、あのあたり方は無いだろう。

(´・ω・`)「そりゃ、ああいう人は一定いてさ、うざったい気持ちも分かるんだけど、それを見た客はどう思うかね?」

( ・∀・)「不快だと思うと思います」


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10名無しさん:2021/06/20(日) 18:32:14 ID:gcQI7MFo0
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(´・ω・`)「それに、あの婆さんと同じくらいの人は沢山来ててさ。何だったら、うちのボリュームゾーンはあの辺りなんだから」

その同じくらいの人が、レジでぞんざいな態度であしらわれているのを見たら、どう思う?
凄く不快だと思うと思います。
そうじゃなくても、このスーパーってまともに話をしてくれない子がレジやってるんだって、思われるでしょ?
本当に凄く不快だと思うと、思います。

(´・ω・`)「いや、本当こう、あんまり言いたくないんだけど」

主任が背にもたれる度、椅子がミシと鈍い轢音を上げる。

(´・ω・`)「確かに君は地域基幹職って形で採用されてるんだけど、だからって総合職よりも立場とか責任とかが軽いとか
そういう風に思ってもらってるとしたら、会社的には困るって話でね」

その割には、給与形態はお前ら総合職より三割も低い形で設定するのか。
それでいて、立場も責任もお前らと同等の意識を要望するとは、随分と都合が良い話だな。
寸でのところで、言葉を堪えた。

( ・∀・)「すいません、思ってません」

椅子の軋みが、激しさを増す。


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11名無しさん:2021/06/20(日) 18:32:50 ID:gcQI7MFo0
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(´・ω・`)「あくまでさ、転勤も無くてね、ここで根を張って働くことで経済回して、地元に貢献するっていう――
そういう地元愛的な思いがあって、地域職を選んだわけでしょう?」

その設定は何だろう。そのような気概を持ち合わせたことは、些細も無かったはずだ。
ましてや、思っていたところであんたにそれを見せるわけもない。
底辺高校を出て、ここのそういう採用フローにしか拾ってもらえなかったから、仕方無くその位置に甘んじているだけだ。
それとも、面接でそれらしいことを話しただろうか。だとしたら、数年前のことなんて忘れたよ。

( ・∀・)「すいません、本当、気を付けます」

(´・ω・`)「若いのにさ、都会に出ずに地元で働くってのはさ、それだけで武器なんだから」

須美川の若者の代表として、もっと町を引っ張っていくっていう意識で仕事をしてもらしたいよね。
厳しいこと言ったけど、こうやって期待も凄いわけだから。
すいません、有難うございます。地元の若者代表として頑張っていきたいです。



( ・∀・)「須美川の若者の代表だ?」

午前五時、定時をとうに過ぎ、朝のパートへの引き継ぎ作業も適当に放り投げ
社員用トイレの個室で、灯りも点けず、スマホを睨みながら、誰にも届かぬ独りよがりの呪詛を独り言つ。
ただでさえまともな行く末が何一つ見えてこない町。ろくな資本も無ければ目立った観光地、目を引く名勝も無い。
その上、街を代表する若者が俺とは笑わせてくれる。滅びて然るような町ではないか。


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12名無しさん:2021/06/20(日) 18:34:04 ID:gcQI7MFo0
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ツイッターのタイムラインを漫然と下から上へ捲り上げていると、呟きがひとつ、目に留まる。
「Georges-N a.k.a O!P!I!」と名乗るソレは、十数年来の幼馴染、長岡拓のアカウント。
  _
( ゚∀゚)「インタビューされたッス。よろしく」

その下に、記事へのリンクと、「須美酒造」の大瓶を持った長岡の写真。
奴の実家であり、現在の奴の家業だった。
記事を開くと「それでも僕が地元に残る理由『地酒とラッパー、二足の草鞋で故郷をアゲていく』」とある。
  _
( ゚∀゚)「ラッパーにはレペゼンって文化があって。俺はこの町を代表してラップする、みたいなやつなんですけど」
   _
( ゚∀゚)「僕がこの町をレペゼンして音源出して、色々な町でライブやって、須美川って町の知名度をもっと上げていきたくて
『須美川って、あのGorges-Nの町でしょ?』みたいな。それで僕のホームのクラブにも来てもらえると思うし」
  _
( ゚∀゚)「現場で知り合った奴には絶対実家の酒振舞ってるんですよ。本業は酒造メーカーなんですけど(笑)
地酒って分かりやすく地元の特産品としてのブランドがあるし。こうやって須美川を知ってもらえるようにって」
  _
( ゚∀゚)「いい町なので、是非須美川に来てください。MCバトル常時受付中(笑)」

実家を継ぐ傍らで趣味としてラップを続けていることまでは知っていたが
メディアに取り上げられる程、注目されているとは思わなんだ。
この男の方が、よほど須美川を代表する若者として相応しい振る舞いを心得ているではないか。



鬱々とした気分でトイレを出ると、バックヤードのエレベーター前で台車を引きずる主任と遭遇し
飲料の補填が済んだら、今日はもう帰って良いと言う。
俺は何も言わず主任に頭を下げると、フロアに出て飲料コーナーをざっと眺め
欠品している商品を三、四種類ほどそそくさと補填した後、タイムカードを切って休憩室へ向かった。


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13名無しさん:2021/06/20(日) 18:35:01 ID:gcQI7MFo0
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さっき、あまりの甘さにむせ返ったマンゴークリームリキッドがどうだろう
勤労で芯から萎え果てた俺の、肺から足の小指の先まで、滋養としてしみじみと行き渡るような気すら覚えるな。
俺はスマホを取り出し、改めて奴の記事を開いたが
よく読んでみれば、ラッパーとして地元を活性化、地酒で地元を活性化
始終どこかで聞いたことがあるような、紋切り型の話だ。記事にしてまで有難がる意味はあるのだろうか。

( ・∀・)「リアルじゃないな」

独り言ちる。地元を若者を代表するにしては、既に色々なものを持ち過ぎている。
それとも、これは持たざる者のエゴと片付けられて然るべきだろうか。



昇り行く陽光を背にスクーターを転がして家に帰ると、開店前の店から灯りが漏れている。
ドアを開けると、カウンターの上に転がった瓶、ラベルには「須美川酒造」の文字。
机に突っ伏して鼾を立てる振興会の面々、の中に、親父の姿。
その光景をただわけも無く眺めていると、奴は半目を開け、やがて俺に気付き、掠れた声で言う。

(・∀ ・)「お前はあれだな」

( ・∀・)「あれ?」

(・∀ ・)「お前はあの悪魔の手先の、すたばあとかたりいずとか、そういうやつが並んでるところで働きやがってよ」

お前、それがどれほどの親不孝かってのを分かってんのか、お前はよ。
そう吐き捨てると、目を閉じ、再び眠りに落ちた。
俺は何も言わずにそっとドアを閉め、もしも俺がこの町の代表として地元に貢献する意識があるのならば
一刻も早く、重機でこの喫茶店を跡形も無く潰すところから始めるだろう、と思った。






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14名無しさん:2021/06/20(日) 18:36:27 ID:gcQI7MFo0
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過去書いたもの


( ・∀・)ワンダリング・ジャックに捧ぐようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1544363311/

ミ,,゚Д゚彡東京者のようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1560001539/

( ・-・)('、`*川マーチのようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1585463214/

(・∀ ・)(,,^Д^)グラン・ギニョル・ザギンのようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1618656837/


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15名無しさん:2021/06/20(日) 18:45:54 ID:gcQI7MFo0
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>14
あとコレも書きました

(´・ω・`)( ・∀・)性鉄のようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1620128938/


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16名無しさん:2021/06/20(日) 20:28:31 ID:Aje663pk0
性鉄書いたのマーチの人だったのか

17名無しさん:2021/06/20(日) 21:16:23 ID:pKrqerJA0
続!続!

18名無しさん:2021/06/20(日) 21:38:06 ID:HHxTbD8c0
乙! 鬱屈した田舎の話になるんだろうか、続きが楽しみ

19名無しさん:2021/06/20(日) 21:50:35 ID:lH5Sw5aQ0
ああ〜〜〜いいなあ、この勝手に期待された子供の頃と虚構の期待を掲げる今の自分……虚しい……
あと性鉄と同じ人なのかよワロタ

20名無しさん:2021/06/20(日) 23:03:56 ID:Vyp6SOog0
このリアル感がいいね

21名無しさん:2021/07/02(金) 21:05:11 ID:XhjPcokk0
いいねえ〜

22名無しさん:2021/07/11(日) 18:12:25 ID:Yd8hwCB20
続!
たのしみ

23名無しさん:2021/08/01(日) 17:19:17 ID:DDxmwY4s0
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ハイパー・レプリゼントのようです2



テレビの向こう、ローカルニュース
カモシカと衝突して電車が止まったとアナウンサーが言った。
山と山を無理矢理突っ切ることで町同士を繋いでいる路線だから
そうそう珍しいことではなかった。

妹を、修子を高校まで送り届けてくれと、お袋が俺に頼み込む。
お父さんがまた遅くまでお酒飲んじゃって、もうあんたしか運転できないから――
別に弁解は要らない。
俺はニュースを見た段階で全て察しているから、心配しないでもらいたい。

もう何十年使っているかも分からない店のハイエースを出し
修子を乗せ、隣町の高校へと向かう。

暦は秋だった。朝の須美川、空は抜けるように透き
遥か上方を羊雲が広がり、市北部に構える山脈へと続いていた。

通勤時間帯、小川沿いの市道は思うように流れず俺の舌打ちばかりが増えていくが
一番焦るべきであるはずの妹の面構えは、あくまで平静を崩さない。


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24名無しさん:2021/08/01(日) 17:19:56 ID:DDxmwY4s0
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( ・∀・)「遅れちまうな」

反応は無い。

( ・∀・)「大丈夫なのか、授業間に合わなくて」

小さく頷き、ようやく口を開く。

lw´‐ _‐ノv「してないから」

( ・∀・)「え?」

lw´‐ _‐ノv「授業出なかったくらいで置いてかれるような勉強の仕方、してないから」

閉口した。どうもこの数ヶ月、彼女はずっとこうだった。
受験勉強のストレスか周囲の期待に対するプレッシャーか
それとも、何万人もの見えざる敵を蹴落とすことに
疑心暗鬼を重ね続ければ自ずとこうなってしまうのか、俺には分からなかった。

交差点、ハンドルを右に切りながら漠然と思い出す。
まるであいつにそっくりだ、そう、あいつだ。朝日にそっくりだ。
奴もまた、時折こうやって癪に障るような言い回しを飛ばしたものだった。
決して悪い人間ではなかったが、俺はどこかしらで苦手意識を持ち続けていた。


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25名無しさん:2021/08/01(日) 17:20:48 ID:DDxmwY4s0
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( ・∀・)「流石、元高生……」

皮肉にもならない皮肉を言うのがやっとで、その先に続く言葉は無い。

そのうち道は緩く傾斜がかかり、元北台の新興住宅街へと続く。
中学を卒業した後、別の高校へと進学した朝日賢太郎とは疎遠になったが奴はどこへ通っていただろうか。
いや、思い出した。それこそ、あいつも元北高校に進学していたのだった。



元北高校は、元北台の小高い丘を少し登った先に位置する。
大概の生徒は元北口駅を降りて坂を十数分ばかし登っての登校だから
中々骨が折れることだろう。

偏差値の高低は海抜の高低に比例する、とは昔誰かから聞いたしょうもない噂話だが
確かに元高はこの地区でもトップレベルの進学校で
俺が通っていた須美工――須美工科高校は、須美川の河口
その地域でも最も低まった、ひたすらジメジメとした区域にあった。

俺と修子の偏差値差はどうだろう、30くらいならまだ優しい方か。
敷地の手前で車を停め、妹はやはり何も言わずに軽く頭を下げると
校門へと吸い込まれる鉄紺の制服の群れに溶け込んでいった。


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26名無しさん:2021/08/01(日) 17:21:26 ID:DDxmwY4s0
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こいつら、皆が皆、卒業と同時にこの町を出て
東大だか早慶だかは知らないが良さげな大学に入り、そのまま戻ることはない。
この丘を歩いている段階から、俺の生活と交わることは最早一片も無い。
当たり前の話、それがある時、どうしようもなく憎らしく思えてくるのは何故か。



来た道を引き返さずに直進すると、やがて住宅は失せて道幅も狭まり、峠道へと続く。
いくつかのカーブを抜けると、右手にひっそりと見えるは
数台分を停められる猫の額ほどの駐車場と、ログハウス風の小さな東屋。
須美川地区をざっと見渡せる展望台で、ここから見渡せる景色が
そのまま「すみかわ光の町」の冒頭に綴られていた。

よく晴れた日に立ち寄ると、山紫水明とまでは行かずとも
それなりに見栄えも良く開けたパノラマビューを拝むことができた。

車を停めて、東屋のベンチに腰掛ける。
見下ろすは、右に左に蛇行する須美川、向こう一面を敷き詰めるように並ぶ田畑、
の合間合間にぽつぽつと建てられた家並み
港の運河をまたぐ大きな鋼橋、焦茶色に塗られたオンボロ倉庫の群れ、その先に線を引く水平――

夜勤明け、磨りガラスのような解像度の頭で、何をも区切ることなく、ひたすらに眺めて、十数分。
ふと、思い出したのが、中学校に入って一年目の夏休みのことだ。


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27名無しさん:2021/08/01(日) 17:22:00 ID:DDxmwY4s0
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あれは俺と、長岡と、荒巻と、あとは誰だったか、朝日もいたような気がする。
ともかくその数人がかりで、一時間そこらかけて登ったのだった。
理由こそ覚えてはいないが、その頃の俺達は部活にも入らず、気になる女の子もおらず
ただただ暇を持て余していた。

路側帯はまともに整備されておらず、行く車来る車にクラクションを鳴らされ
腹は減り喉も渇き、流石に心も折れそうになったその頃合いに、俺達は展望台に辿り着いたのだった。

水平線が燃え上がっては橙色の縁取りを作り
まるで須美川ごと飲み込んでしまうかのような夕景があった。
川、海、町、人、それぞれ独立する、一つ一つのエレメントが重なり合って単のレイヤーの上に調和を図り
暮れの光に均一に塗り潰され
それは写真でも映像でもなく、俺達が初めて生身で触れた
ささやかながらも自然の神秘的な超感覚だったのかもしれなかった。
  _
( ゚∀゚)「凄え!」

それを目の当たりにし、長岡が言うには
  _
( ゚∀゚)「俺、須美川に生まれてよかった!」

今思えば、奴のレペゼン志向の萌芽だったのかもしれない。
ただ、その時ばかりは確かに俺も、同じことを思っていたのかもしれなかった。



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28名無しさん:2021/08/01(日) 17:22:34 ID:DDxmwY4s0
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俺達は単純だったから、それこそ、自分らが生かされている空間、その全てが美観として眼前に晒された時
まるで、その全てを無上の善きものとして受け入れてしまうのだった。
須美川は恐らく素晴らしい町だったし、そこに生きる俺達もまた、素晴らしい日々を送るであろうことに違いはなかった。

今になって考えれば、と、水平線の向こうへと目を凝らす。
どんなものであれマクロな立ち位置から眺めてしまえば、何となく抽象的に、良さげに整ったように見えるもので
ズームにズームを重ねてしまえば、所々が歪にねじ曲がっているもので、いつ壊れるか分からないところを
寸でのところで踏み留まっている――往々にして、そうだろう。

あの時覚えた、ぼやと輪郭を欠いたような町の美しさはまやかしで
俺達のリアルはそれを引き伸ばし、引き伸ばし、その先にようやく見えてくる国道のチェーン店や
閑古鳥が鳴く駅前の商店街にしか、存在し得ない。

大分寄り道をしてしまった。昼になる前に寝て、次の夜勤に備えなければいけなかった。
車に戻ろうとベンチから立ち上がった時、スマホのバイブを右のポケットに覚える。
  _
( ゚∀゚)「おお、出た、出たじゃん」

聞き覚えがある声だった。あいつだ、長岡だ。
夜明け、トイレで読んだ「Georges-N a.k.a O!P!I!」の記事が頭をよぎる。
  _
( ゚∀゚)「久しぶりじゃん。何やってんの? 就職してんでしょ? まだ須美川いるんだべ?」


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29名無しさん:2021/08/01(日) 17:23:20 ID:DDxmwY4s0
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次の連休さ、朝日がこっち戻ってくるんだってよ。だから1-3の奴らに適当に声かけてて
まあ、プチ同窓会的なやつ? やろうと思ってんだけど、まあ仕事とかそういうのだったらアレだけど
とりあえず俺と朝日と、あと荒巻と……あと適当に誰か、みたいな感じで――

長岡は矢継ぎ早に繰り出し、俺に言葉を挟む隙を与えてはくれなかった。
話を聞くに、さっき俺が思い浮かべていた「元北山探検隊」の面子は一通り揃うようだった。

( ・∀・)「行くよ、うん」

すっかり調子付いた長岡の顔を一目見てやりたいという気分も、無くはなかった。
  _
( ゚∀゚)「え、マジ? あっ、本当」

自分から誘ったくせに、長岡は俺の返事に若干狼狽したようだった。
どうせ、俺は数合わせで適当に打診されたのだろう。
  _
( ゚∀゚)「じゃああのお、駅裏のさ、『ちよちゃん』あるじゃん? お好み焼きのね、あそこだから。土曜日、6時半」

長岡はそう捲し立てると、こちらの予定を伝える時間も与えずに電話を切った。
幸か不幸か、土曜日はシフトが入っていなかった。

( ・∀・)「ああ、そう……」

俺は出所不明の舌打ちを繰り返しては、軽く伸びをして、展望台を離れることにした。


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30名無しさん:2021/08/01(日) 17:24:42 ID:DDxmwY4s0
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その日、予定通り6時半に「ちよちゃん」に向かうと、既に何人かが席に着いていた。
長岡と荒巻、何故か見知ったことがない顔もちらほらと。
長岡は店に入った俺を見ると手招きをし、知らない数人の顔に、何やら耳打ちをしている。
おおよそ何を伝えているかは、漏れてくるフレーズの断片から、おおよそ把握できる。
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( ゚∀゚)「あいつ――商店街――下手な歌――きっしべのってやつ――」

あからさまに、俺に聞こえるように意識的に漏らしているように見えるが、気のせいか。
ほら、あいつは俺の顔を横目にほくそ笑んでいる。それとも、元々こんな顔だったっけか。
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( ゚∀゚)「よお、何年ぶりだ? こいつらね、俺のサイファー仲間」

( ・∀・)「どうも」

( ^Д^)「『どうも』だって! 堅いよ、堅いって」

サイファー仲間とやらが俺の肩をバンバンと叩く。
  _
( ゚∀゚)「俺がラップやってんの、知ってるべ?」

( ・∀・)「昨日見た、ネットニュースみたいなやつで」
  _
( ゚∀゚)「ああ、あれ見たの? で、こいつら一緒のハコでやってて、さっきまでやってたから」

(=゚ω゚)「よろっす、真面目クン」

「SUMI-Georges. CREW」として活躍中の御一行らしいが、要は長岡の徒党だろう。
P☆GERAだとか射陽だとか、気色の悪いステージネームと共に何人かを紹介されたが
俺が律儀にそれを覚えるとでも思っているのだろうか、こいつらは。


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31名無しさん:2021/08/01(日) 17:25:27 ID:DDxmwY4s0
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徒党達は本当に顔を出しただけのようで、何分もしないうちに帰って行き
入れ替わるようにして朝日がやって来る。

東京の大学でよろしくやっている朝日、あの頃から変わっていないとすれば瓶底のような厚いレンズの眼鏡くらいで
背格好、髪型、服装、身に付けている諸々が、須美川ではまず見かけないであろう
アーバンを生きる者としての余裕と言うべきか、そのような雰囲気に満遍無く包まれており
俺には何となく、鼻につくのだった。

(-@∀@)「ごめん、新幹線が遅れてた」

朝日はそう言いながら、俺の隣に着いた。
  _
( ゚∀゚)「ああ、おーけーおーけー。じゃあこれで集まったということで」

長岡が声を張る。
  _
( ゚∀゚)「朝日君がもう大分……一年ぶり? くらいに帰ってきたってことで、プチ同窓会みたいなね!」

乾杯、何故か俺が来る前からグラスに注がれていた生温いラガービールを飲み干し
テーブルを囲む奴らの話もよそに、粛々とお好み焼きの形を整えていれば
朝日が、こう話しかけてくる。

(-@∀@)「中学以来か」

( ・∀・)「そうね」

お好み焼きをひっくり返す。生焼けの部分から半端な崩れ方をし
どこからか、何やってんだお前とヤジが飛んでくる。


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32名無しさん:2021/08/01(日) 17:26:11 ID:DDxmwY4s0
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(-@∀@)「あれ、高校どこだったんだっけ? 須美青陵とか受けてたよね」

( ・∀・)「いや、スミコー」

(-@∀@)「ああ」

朝日が押し黙る。そうだろうよ、俺はヘラでお好み焼きを押し潰す。
下手クソかお前、再びヤジが飛ぶ。

( ・∀・)「朝日はあそこでしょ? モトコーでしょ」

(-@∀@)「そうね、一応そこ出て、今東京の大学行ってる」

東京の大学。まあ、どこかは聞かないでおこう。知ったところで、その価値は俺に分かるまい。
朝日以外の俺達誰にしたって、学問の為にモラトリアムを拡張する意味を理解することは、死ぬまで無いだろう。

他方で、俺は彼に聞きたかったことがあった。

( ・∀・)「お前さ、諸原修子って知ってる? お前が三年の時一年だったんだけど」

(-@∀@)「え? ああ」

朝日の視線が、一瞬だけ壁に貼られたメニュー表に移ったかと思うと、すぐに戻った。

(-@∀@)「知ってるよ。って言うか生徒会で一緒だったし」

( ・∀・)「え? 何それ、聞いてないんだけど」


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33名無しさん:2021/08/01(日) 17:27:25 ID:DDxmwY4s0
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恥ずかしいんでしょう、そういうこと切り出すのが――朝日は、さも分かっている風に言うが
俺はどうにも腑に落ちず、ラガーを瓶ごと飲み干すと、一気に眠気が畳みかけ
その後、俺に聞こえてくる会話は始終断片的なものだった。



霞んだ思考の向こうで、長岡が管を巻く。奴の声は主張が激しいから、比較的形状を保ったまま届く。

須美川人としてはさあ、やっぱ商店街がどんどんショボくなってるの見て、めっちゃ悲しいってのが――
皆便利だからって国道のチェーンばっか使っちゃって、全然文化が無くて面白くない――
俺達だけでも昔からの町残してくべっつって、なるたけ国道の方には行かないようにして――
さっきのあのクルーの奴らもそれ言ったら凄え賛成してくれて、商店街盛り上るっしょって――

お前、気楽なもんだな。浮き沈みを繰り返す思考を手繰り寄せ、独り思う。
小さな小さな、小さな小さな小さな世界でオピニオンリーダーでも気取るつもりなのか。
お前の前にいるんだよ、その国道で食い扶持を保っている奴が。

荒巻も朝日も、奴の言葉にうんうんと頷きを繰り返す。
朝日は言った。実際ここに来て須美川駅周辺の空洞化ってのはもう無視できない問題で
それは、今寝ちゃってるのか、諸原クンが一番肌で感じてる部分だと思うんだけど――

( ・∀・)「俺の名前を出すな、俺の名前を出すな、俺の名前を出すな……」



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34名無しさん:2021/08/01(日) 17:28:25 ID:DDxmwY4s0
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間を置かずして、「プチ同窓会」はお開きとなり、鈍く重く痛む頭を抱えながら家に戻ると
妹がリビングのソファに座り、英単語帳を開いては、何かをブツブツと呟いている。
俺に一瞥もくれず、勉強熱心でよろしいことだった。

( ・∀・)「修子さあ」

俺は言った。元高の先輩と会ってきたよ、朝日って奴。
お前、あいつと生徒会一緒だったんだろう。

その瞬間だけ、妹の背中が小刻みに上下したところを、俺は見逃さなかった。
ああ、そうか。朝日の反応にしても、何かがありそうな気はしていたのだ。

( ・∀・)「あいつ、やっぱり生徒会でも優秀だったんだろ」

lw´‐ _‐ノv「知らないし」

( ・∀・)「いや、同じ生徒会だったんだろ?」

lw´‐ _‐ノv「知らないし」

妹は、決して俺に目線を向けようとはしなかった。
もう少し無難な反応もあっただろう、俺は鼻で笑うと、リビングを後にした。





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35名無しさん:2021/08/01(日) 17:29:14 ID:DDxmwY4s0
次はもうちょい早目に更新できると信じています

36名無しさん:2021/08/01(日) 17:42:38 ID:Pcczvl2I0
お互いに優劣なんか感じなかったありし日の風景と、それぞれ立場ができて心の距離が空いた今との対比が空間の広さに反比例してていいな


37名無しさん:2021/08/01(日) 18:21:39 ID:AIMcgIpo0
otsu

38名無しさん:2021/08/02(月) 01:22:30 ID:HTz1XtqQ0
きになる終わり方!
おつ


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