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( ∵)なぜなら鉄面皮だからのようです
1
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:19:44 ID:TPwRPwxI0
彼女の匂いが好きだった。
どこにでも売ってる安物の柔軟剤と、髪の毛から漂うシャンプーの香り。
彼女はこちらを決して見ない。
見られていることに気付いてもいない。
僕は眺める。
空気と同化して、彼女の一部になれればどんなに素敵だっただろうか。
でもきっと、この願いも、この思いも、恋慕も希望も全て、叶わずに終わるのだろう。
決して交わることのない平行線上で、僕は彼女を眺め続ける。
そう、本当にそれだけだと思っていた。
2
:
◆MSKEobRqzo
:2020/06/19(金) 02:20:22 ID:TPwRPwxI0
( ∵)なぜなら鉄面皮だからのようです
.
3
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:21:18 ID:TPwRPwxI0
(゚、゚トソン「お疲れ様、部活にはもう慣れた?」
いそいそと帰り支度を整えながら、抑揚の少ない声に話しかけられる。
スラリとして凹凸の少ない体型が魅力的な、黒髪ポニーテールの彼女。
彼女は一つ上の先輩の都村トソン。
所属している部活動で、なにかと面倒を見てくれる人だ。
彼女の双眸はこちらを捉えず、手元の学生鞄と掌台のカメラケースに注がれている。
( ∵)「ようやくって感じですかねぇ…」
僕は無難に返答する。
肩が触れてしまいそうなほど近くにいる先輩を、極力意識しないように。
ああ、でも、やっぱりいい匂いだ。
一生このままでも良いとすら思ってしまう。
4
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:22:07 ID:TPwRPwxI0
(゚、゚トソン「良い傾向よ。別に焦らなくて良いからね」
(;∵)「いやいやいや、僕でもちょっと焦りますよ!」
(゚、゚トソン「あら、なんでかしら?」
先輩が帰り支度をしながらこちらを見やる。
僕の発言が意図する内容を、分かっているのに無視しているみたいな、訝しげな視線。
本当に、見れば見るほど綺麗な人だなあ。
焦ったフリをやめて、長い睫毛とまん丸な瞳をずっと眺めて堪能していたい。
スラリとした肢体を、舐めるように見ていたい。
(;∵)「そんなの、決まってるじゃないですか!」
(;∵)「部員が僕たち2人しかいないんですから、そりゃ焦りますよ!」
5
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:24:01 ID:TPwRPwxI0
僕が所属している写真部は現在、三年生が引退して部員が僕と先輩の2人しかいない。
顧問の先生は写真部と書道部を掛け持ちしており、最近は大会も近いので書道部につきっきりの状態。
先輩と一緒にいる時間が主なので、早いところこの珍妙な現状に慣れる必要があるのだ。
(゚、゚トソン「わたしはもうビコーズ君にかなり慣れたけどね。
君もわたしのこと、それなりにわかってきたでしょ?」
ニヤニヤとほくそ笑みながら僕を見てくる。
イタズラな視線と子供に話しかけるような口調。
やや挑発的ともいえる態度が癪に触ると同時に、とても愛おしく感じる。
先輩は小柄だ。
僕より頭一つ分、背が低い。
だから自然上目遣いで目線を合わせてくるのだが、先輩の子供っぽい体型や顔立ちも相なって、年下の女の子に子供扱いされてるみたいな気分になる。
それがなんとも苛立たしくて、一方で可愛らしいと思っている。
6
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:24:57 ID:TPwRPwxI0
( ∵)「先輩が人をからかうのが大好きで、コーヒーはブラック以外認めないってことは分かりましたよ」
(゚、゚トソン「失敬な、人生の先輩としてアドバイスしてるだけよ。
それにコーヒーは苦いからこそ美味しいのよ、それが分からない内は、まだまだお子ちゃまなのよ」
( ∵)「…」
(゚、゚;トソン「な、なによ。ジロジロと」
( ∵)「…先輩、イチゴ牛乳とかココアとか飲んでる方が似合いますよ。
というか実際、コーヒーより牛乳の方がよく飲んでるじゃないですか」
(゚、゚;トソン「なー?! 君はそういうところで失礼だな。自分の体型ぐらい分かってるよ」
( ∵)「もう高校生なんですから、女子の成長期はピーク過ぎてますよ。
現実を受け入れましょうよ」
7
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:25:49 ID:TPwRPwxI0
だらだらと他愛もない会話をする。
この時間が学校で何よりも楽しい。
先輩との会話は、僕の人生を明るく彩ってるような気さえする。
西日が窓から差し込んでくる。
橙色から茄子色に移り変わっていく空模様が僕は好きだ。
怪しい色味が人間の心理を表しているみたいで妙に不安を感じるのは、僕が今幸せに包まれているからだろうか。
(゚、゚トソン「…あー、もう。甘いものの話してたらお腹空いてきちゃったじゃない。
ダイエット中なのよ?」
(;∵)「それ以上どこを痩せるっていうんですか…。
細いんですから、甘いものの一つや二つ平らげたところで問題ないでしょう…」
(゚、゚*トソン「え、何? 細くて美しくて可愛いって?
スタイル抜群モデル体型なトソン先輩最高だって?
もうっ! そんなに褒めなくたって理解してるからね!」
(;∵)「自身過剰もそこまでくれば、いっそ清々しいですねまったく…」
8
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:26:30 ID:TPwRPwxI0
言葉ではお茶を濁してみるけども、先輩の言ってることは僕が彼女に抱く印象と、ほぼ合致している。
身長は低く平らなボディなのでスタイル抜群かどうかは不明だが、僕の好みにはどんぴしゃで当て嵌まる。
彼女の細長い手足も、平坦な臀部と胸部も、それでいてキュッ括れた腹部も、白く透き通った肌も、ぷっくりとした唇も、あどけなさを残す幼い表情も、外見は全て好みだった。
ただ、その自惚れた性格は、あまり好みではなかった。
9
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:27:29 ID:TPwRPwxI0
(゚、゚トソン「と、いうことで」
( ∵)「?」
(゚、゚トソン「どうせ今の時期は暇でしょう?
駅前に新しくできた喫茶店に寄ってかない?」
( ∵)「先輩それ毎日言ってますよね。そして毎日ダイエット云々を投げ出して、お菓子ガツガツ頬張ってますよね」
(゚、゚トソン「お菓子は別腹だからいいんですぅー。
食事に換算されないから大丈夫なんですぅー」
( ∵)「そんでもって、その後大抵焼肉食べ放題行きますよね。
必ず週三で僕を誘って、あわよくば奢らせようとしますよね」
(゚、゚トソン「食べたって運動すれば問題無いんですぅー。
次の日にカロリー抑えれば、たくさん食べても戻せるんですぅー」
10
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:28:07 ID:TPwRPwxI0
唇を尖らせて駄々を捏ねる姿を見てると、本当に彼女は上級生なのかと心配になってくる。
屁理屈を重ねる精神年齢の低さも顕著で、年齢に対しひどく幼稚だ。
ああもう本当に可愛い、好き、尊い、愛くるしい。
矛盾を抱えた不安定な情緒と、未熟な精神がたまらない。
甘美な時間、甘露な日常風景。
焦らして熟れさせて甘い果実を実らせるために、僕は静観を貫く。
11
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:28:59 ID:TPwRPwxI0
( ∵)「…あーもー、わかりました、付き合いますよ。
だからさっさと行って、さっさと帰りましょう」
(゚、゚トソン「もう十分、部活に慣れてるじゃない。
完全に馴染んでるわよ」
( ∵)「慣れたのは先輩の扱いであって…部活は先輩じゃないですよ」
(゚、゚トソン「あんまり変わらないわ。わたしと君しかいないんだし」
( ∵)「…」
(゚、゚トソン「まあ、言葉で何を言おうと自由だからね。
…さっさと行って、食べましょう」
満足げに微笑む彼女。
この笑顔を独り占めしている優越感で肩が震える。
愉悦に頬を綻ばせないように注意しながら、僕は彼女の隣を歩いた。
12
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:30:19 ID:TPwRPwxI0
※※※
(゚、゚*トソン「じゃあ〜、この日替わりジャンボパフェとー、パンケーキと…あ! あとホットコーヒー下さい、ブラックで!」
( ∵)「レアチーズケーキとアイスカフェオレで、お願いします」
あれからなんやかんやあって、焼肉に行きたいとか、冬はやっぱりラーメンが食べたいとか、お酒も飲んでみたいだとか、そんな会話をしている内に喫茶店に到着した。
木目調の床と落ち着いたクラシックが流れる小洒落たカフェ。
平日の夕方ということもあり来店客は疎ら、服装や年齢、性別に統一感は無い。
窓から見える景色は日が既に傾いており、夜の帳が降りつつある。
そんな落ち着いた雰囲気の中、目の前の彼女だけは場違いと言わんばかりに顔を綻ばせている。
これからの食事が堪らなく待ち遠しいかのように、忙しなく視線を泳がせている。
13
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:31:10 ID:TPwRPwxI0
( ∵)「先輩、はしたないですよ。
ちょっとは落ち着いて下さい」
(゚、゚トソン「む。別に、ワクワクしてるだけじゃない。
少しくらいはしゃいだっていいでしょう」
そう言って彼女はこちらを見据える。
吸い込まれそうなほど黒い瞳に、思わず釘付けになる。
(゚、゚トソン「こういうのは楽しんだもの勝ちなのよ。
その場の空気に合わせて無理してたら、美味しいデザートも美味しく感じられなくなるじゃないの」
( ∵)「まだ注文届いてないですよ…運ばれてきてから楽しみましょうよ」
(゚、゚トソン「むう、一理ある」
14
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:32:02 ID:TPwRPwxI0
こういうところは、彼女は案外脆い。
今の発言からは意外と思われるだろうが、この人は無碍に場の空気を乱さない。
その場その場に応じた対応や言葉使いなどを、案外しっかり弁えている。
しかし実際のところ、分かった上でそれを崩す愉悦を楽しんでいる節もあるので、なかなか扱いが難しい。
誰も知り合いのいない街中でいきなり奇声を挙げたり、真面目顔で唐突に下ネタをぶっ込んできたりとか。
長所とも短所ともなりえる気質だったが、僕の中では断然長所だ。
無闇矢鱈に持論を押し付けない性格と、からかい上手で悪戯な態度は、僕の性癖を刺激する。
15
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:32:44 ID:TPwRPwxI0
(゚、゚トソン「そういえば気になってたんだけど、ビコーズ君はなんで写真部に入ったの?」
唐突に出た会話の糸口は、少しだけ答えずらい質問だった。
入部当初に散々尋ねられ、適当にいなして誤魔化し続けて来た質問。
先輩に惚れたのが主な理由だが、別に特別写真が好きだったわけでもない。
強いて理由があるとするなら、
( ∵)「…彼女にフられたから、ですかねぇ」
(゚、゚;トソン「はっ…、え? 彼女?」
驚いている表情は珍しい。
あまり見慣れない分、長時間堪能していたい気持ちもあったが、彼女はそれを許してはくれなそうだ。
16
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:33:35 ID:TPwRPwxI0
(゚、゚トソン「なにそれ? 詳しく聞かせてよ」
思わせぶりな発言は他人に興味を魅かせるには、もってこいな手法だ。
僕は単純に先輩と話していたいだけ。
中身のあることも無いことも、どちらでもいいから話していたい。
( ∵)「中2くらいかなぁ…席が隣の女の子と、ゲームとか本とかの話題で盛り上がって、仲良くなったんですよ」
(゚、゚トソン「うっわー、めちゃくちゃ青春してんじゃん」
( ∵)「みんなそんなもんじゃないですかね? 僕も彼女も、そのまま友達の延長線の関係を続けてたんです」
( ∵)「その子はまぁ、顔も可愛いかったし、スタイルも悪くなかった。
成績はそんな良い方じゃないんですけど、そんな天然気質がまた可愛らしくて…その後は言わずもがなですね」
(゚、゚*トソン「ふんふん」
17
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:34:19 ID:TPwRPwxI0
彼女は頬をやや紅潮させて、僕の話に聞き入っている。
思えば恋愛話を話題にするのは初めてだった。
会話の中で、先輩に恋慕の情を抱いていることがバレてしまうのを忌避していたからだ。
しかし過去の恋愛談という括りなら、しかも予め用意しておいた内容なら、間違えることもないだろう。
それに、これはただのホラ話。
根も葉もない眉唾物の、友人から訊いた彼の実体験。
僕とは全く無関係な色恋沙汰だ。
だから危うくなったタイミングで、これは嘘だと告白すれば終了だ。
こういう時に、僕のポーカーフェイスは役に立つ。
本音も嘘も、聞く人次第で変化する特性。
持って生まれた以上、利用するほかない。
18
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:35:13 ID:TPwRPwxI0
( ∵)「それでだいたい半年くらい経ったころに、一緒に紅葉を見に行こうって誘われたんです。
地元は別に四季の風物詩が有名なわけじゃなかったんですけど、なにぶん田舎だったんで、自然ばっかり豊かだったんですね」
( ∵)「僕ら2人とも小学校は違ったんですが案外家は近かったんで、近所の丘にでも行こうって運びになりましてね」
(゚、゚;トソン「…山デートって…なかなかスリリングなことするのね。
女の子って、男より虫やら汚れやらに敏感なものよ…あ、彼女からの提案なんだっけ」
( ∵)「そうです。てかむしろ僕の方がそういうのは苦手だったんで、普段は専ら都会デートだったんですけども…。
彼女のお願いじゃ、断りづらいですよ、そこは」
19
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:36:09 ID:TPwRPwxI0
(゚、゚トソン「顔に似合わず男っぽいのね」
( ∵)「誰がボーリング玉みたいな顔面だってぇ?」
(゚、゚トソン「言ってない言ってない、中性的な顔立ちって言いたかったのよ」
( ∵)「物は言いようですね」
(゚、゚トソン「自覚はあったのね」
( ∵)「それで渋々山登りを始めたんですけど…。
あっ、山って言っても鬱蒼としてるやつじゃないですよ。
他の土地より少し盛り上がってるだけで、道も整備されてるタイプの…丘陵って感じです」
(゚、゚トソン「じゃあ虫やらの心配も、少ないわけね」
20
:
名無しさん
:2020/06/19(金) 02:36:58 ID:TPwRPwxI0
( ∵)「登り始めると、やっぱり紅葉が綺麗なんですよ。
雲一つない澄んだ秋の空と、柔らかい日差しが紅・黄・焦げ茶の葉を透かして照らしていて…日本の四季をこれまで堪能してこなかったことを後悔すらしましたね」
(゚、゚トソン「その瞬間の美を切り取りたいから、写真部に入ったってこと?」
( ∵)「四分の一くらいはそうです。
紅葉を背にした彼女の姿に見惚れたのが、更に四分の一で」
(゚、゚トソン「比率めっちゃ微妙やん、ちゃんと彼女を理由の半分にしろよ」
( ∵)「別れたから割合が減ったんですよ。
僕が写真部に入ったのは、自分の愛した人を、もっと長い間記憶に留めていたいと思ったからです」
(゚、゚トソン「ほー…」
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