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神話争奪戦
1
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 22:21:56 ID:ukyAQTRk0
-0- とおい未来の遥かなむかし
世界各地に痕跡を残している伝説。当時を生きた当人が書き残した歴史書。直接恩寵を授かった先祖により代々受け継がれた昔話。
神代で起きた現実は、遥か遠い時の流れを経たいまでもなお、我々の生活に多大なる影響を与え続けています。
それでも、現代に暮らす者ならば誰もが知っている神話を架空の出来事だと決めつける者が多いのは、
ひとえにかつての真実を切り刻み、歪んだ事実として後世へと伝えた不心得者達の仕業に他なりません。
罰当たりな語り部達が残したまがい物の存在が、真実を砕き、記録を曖昧にし、足跡を踏みにじってしまったせいです。
広大な異世界で繰り広げられた物語。その多数の断章……幾多の欠片……無数の解釈……。本来はそんなもの、存在しないはずなのに。
ただただ唯一無二の絶対なる神話だけが存在していたに違いないのに。枝分かれした他の物語を目溢ししたばかりに、貶められてしまいました。
万物の魂を喰らい尽くす不死者。願望を現実に顕現させる天使。未来を予言し超越した美貌で生物を支配する女神。
無限に再生し増殖する超高等多細胞生物。惑星の海域すべてを掌握する白鯨。人間に知と力を光を授けた原初神である半神半人。
かつての文明の悉くを滅ぼした魔人。一夜にして一国の生命を絶滅させた死神。天地創造の前より混沌を彷徨していた古龍。
英雄たちの生が終焉を迎えても、彼らの残した伝説は神話となり生き続けています。
我々が眺める夜空の星々は、かつてこの地上で起きた神話の起源を知っているのでしょうか。
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 22:43:04 ID:ukyAQTRk0
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:06:07 ID:ukyAQTRk0
-1- 酒、疑心、窓辺にて
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│ │::::::::::/::::/|::::/ !:::::::::::/ |::::/ ヽ::::ト;::::::::::l::.│ ...│
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│ │::l::::::レ、―リー┬|::::::/ /ィ┬‐┼ァ :::::/:::! │ ...│
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│ │トヘ:::::l |:/ | ,:'/ム::::ll │ ...│
│ │:ヽ_}ヾ、 ′ , / /、:.ヽ:! │ ...│
│ │: : 从 ` - / ,:仁〉: ` │ ...│
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│ │ : /三\ '- ―― ― , ノニ/: :,:':::.│ ...│
│ │: ::|三ニ!、\ ―‐‐ /彡'´: /::::::│ ...│
│ │ : :ヽ三ニ、_丶,///il|ilヾ∨彡': : /:_: :-::│ ...│
│ │ : : : ヽ三三三ニ`┴┴ニ彡': : /'´: : : : ::│ ...│
《अमृतम्》
ギ コ
今、この瞬間こそ、天使――彼女にまだその資格があるとすればだが――からの依頼をこなす絶好の瞬間だった。
ギコの目は、床に転がっている酒瓶に釘付けになっていた。瓶の口からは徐々に紫色の液体が流れ出ており、石の床を汚していく……。
はっと我に返り、思考を巡らせた。主人はとっくに食事を終えて自室へと戻っていった。周囲に目を走らせる。まだ食堂に残っているのは同じ身分である奴隷だけだ。
(,,゚Д゚)(あの天使は酒を取ってこいと言ってたが……なにをするつもりだ? まさか、現実逃避に飲むんじゃあねえだろうな)
4
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:07:37 ID:ukyAQTRk0
猜疑心。ギコの中ではもう、はじめて彼女を見た時に抱いた高貴な印象は、完全に失われていた。
もはや襤褸となってしまった聖職衣に身を包み、恨み言を吐き続ける少女の姿が脳裏に浮かぶ。
灰色に煤けたかつて純白だった両翼。輝きを失いくすんだ金色となった頭上の輪。あの艷やかだった髪は見る影もない。
原因は容姿だけではなく、顔をあわせて会話するほどに垣間見える頼りない発言や腹立たしい態度が原因で不信感ばかりが膨らんでしまっている。
しかしそれでも、ギコはあの天使に縋る他なかった。異文化の信仰を甘く見てかかったせいで伝道に失敗し、敗走して森に逃げ込んだ彼女に。
日常を破壊する可能性を一番孕んでいるのは、間違いなく異分子なのだから。異分子が日常に馴染み、埋もれてしまうその時までは……。
ギコは屈み、手を伸ばした。鎖の音が鳴る。奴隷の証明である音が。彼の記憶の中でその音が聞こえなかった日はなかった。
所有者の名と家紋が刻まれた鉄の輪が両の手首に、満足に腕を広げられない距離までしか伸びないように調整され、繋がれている。両足首も同様に。
これらはすべて、許可なしに外されることはない。片腕だけを伸ばすことはできないため、その酒瓶を迎え入れるように両の手を近づけていく。
奴隷身分からの解放。理不尽からの脱却。自由意志による不自由なき行動。
これらはつまり、《अमृतम्》の儀礼を受けて不老不死の秘法を身に宿すことを意味する。それだけが、ギコの願いだった。
(,,゚Д゚)(……よし)
酒瓶を掴むと、そのまま奴隷服――ここ数年間着続けているので擦り切れ、所々に開いた穴から肌が覗いている――の懐に滑りこませた。
腰布に差し込んだ酒瓶が揺れないよう紐を締め直し少し背を丸めて歩き出した。一刻も早くここから離れるためだ。
ギコの心臓が早鐘を打つ。突如として脳裏に、過去、主人に逆らって罰を受けた奴隷達の姿が浮かび上がってきた。
幼い頃から現在の主人に仕えていたが、明らかな反逆行為を働いたのは、これがはじめてのことだ。
犯行が見つかれば、棒で打たれるのだろうか。焼きごてで烙印を押されるだろうか。まさか、八つ裂きにはされないだろうが……。
嫌な想像ばかりが頭をよぎり、胸中で不安が膨らんでいく……。
(,,゚Д゚)(いや、ビビるな)
ギコは眉間に力を入れ、すぐに覚悟を固めた。
堂々としなければ。もしも不審な点を指摘されても、知らぬ存ぜぬでやり過ごすのだ。
5
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:09:16 ID:ukyAQTRk0
( ・∀・)「ねえ、ギコ」
(,,;゚Д゚)「うおッ!?」
心構えをしたにも関わらず身体が竦み、悲鳴と同義の声がギコの口から漏れた。
うまい言い訳を考えるどころか、知らぬ存ぜぬを決め込む表情すら作れなかった。
( ・∀・)「君がそんなに背中を丸めてるところなんて、始めて見たな」
(,,;゚Д゚)「そ……そうか?」
( ・∀・)「出しなよ。何を隠したの?」
(,,;゚Д゚)「な、なんでも……ない」
大柄で筋肉質なギコが消え入りそうな声に対して、線の細いモララーが凛とした声で言葉を返している。
容姿の印象とは逆のやり取りに気がついた奴隷たちが、食事の片付け作業の手を止めてギコとモララーを見た。
( ・∀・)「嘘。服の中に何か隠してるでしょ」
(,,;゚Д゚)(バレた!)
( ・∀・)「何だったとしても、どんなに小さなものだったとしても、それは旦那様の財産だよ」
モララーは諭すようにそう言った。道理を理解するよう言い聞かせる、冷たい声色だとギコは感じた。
そのため否応なしにこれから先に起こるであろう事態を想像してしまう……。尋問、摘発、懲罰。血の気が引き、唇と膝が微かに震え始めた。
( ・∀・)「ほーら」
埒が明かないと感じたのか、モララーがゆっくりとギコへ歩み寄った。ギコはただ呆然としてモララーを見下ろしている。
彼は同じ奴隷身分ではあるが奴隷内の地位も高く、綺麗な身なりをしており、手錠や足輪をつけられていない。
突如素早い動作でギコの懐へと手を伸ばすと、あっと驚く暇もなく次の瞬間にはもうモララーは酒瓶を握っていた。
(,,;゚Д゚)「モ、モララー」
( ・∀・)「……」
「幼馴染じゃないか」。許しを請うその言葉は、喉の奥につかえて出てこなかった。ギコは自身の声の弱々しさに驚愕する。
思わず、膝から崩れ落ちそうになった。先ほど思い浮かべた拷問がそう遠くない未来、自分の身に襲いかかることに恐怖した。
( ・∀・)「んー?」
モララーが片手で酒瓶の首を掴み、くるくると回す。
6
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:10:41 ID:ukyAQTRk0
( ・∀・)「なんだ。中身入ってないじゃない」
(,,;゚Д゚)「えっ」
( ・∀・)「ダメだって。これだけあって片付けが大変だからって、服の中に入れて一気に運ぼうとするのは危ないよ。転んだらどうするの。
せっかく久しぶりにお屋敷でのお仕事なのにさあ、怪我でもしたらつまらないでしょ。こっちでまとめて後で処分するから、これは貰うね」
(,,゚Д゚)「……ああ」
踵を返したモララーの背中に生返事をするのが精一杯だった。混乱に溢れた脳内ながらも、ギコは彼の思いやりを理解していた。
下手をすれば同罪になるかもしれない危険を冒してまで、背信行為を庇ってくれたのだ。周囲の誰かが勘ぐらないようすべて口に出して説明し、
本当は酒瓶の中身が入っていたにも関わらず、まとめてしまえばどれが今回収した物かわからないだろうと判断して。
(,,゚Д゚)(それなのに、俺ってヤツは……情に訴えて見逃してもらおうだなんて)
自分の浅ましさに深く恥じ入る他なかった。モララーは、何も言わずとも確かな友情を持ってくれているというのに。
先程、自分はわざわざ口に出して信頼の裏付けを求めようとしたなんて。幼い頃から過ごしてきた期間を友好の物差しにしようだなんて。
ギコは自身の無骨で粗野な容姿や性格が原因で主人から疎まれていると知っていた。
そのために屋敷勤務ではなく、普段から村中の様々な辛い雑用や激しい仕事に従事させられていることを。
反対に、整った容姿と物腰柔らかで愛想が良いモララーは主人から特別な役職――あらゆるお世話――を任されている。
(,,゚Д゚)(いや……)
普段の生活が満ち足りているから、不平なく他人に分け隔てなく優しさを分け与えることができるのか?
悪臭に塗れて魚醤を作ることも、鍛冶で頭から灰を被ることも、開墾で全身を軋ませ木の根を除去することも、ガスや崩落に脅えて鉱石を掘り出すことも。
過酷で絶望的な苦行を知らないからこそできる行動なのか? ストレスの当て付けで向けられる悪意と戦ったことがないので他人を信じられる?
立ち尽くしていたギコの頬を風が撫でた。視線を向けると窓の向こう側に家畜小屋が見えた。
そのさらに奥に広がる森にあの少女を匿っている。特別な予感に勝手に一人で痺れているだけなのだろうか。
昨日と同じように今日もまた、就寝時間後に寝室――とは名ばかりの腐った木小屋の中で藁の山で眠る――を抜け出して、天使に会いに行く。
この行為こそが、代わり映えしない奴隷の景色を吹き飛ばしてくれると信じて。
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:17:13 ID:ukyAQTRk0
-2- 魔女が往く
│ │ │ / >、 ` ー- 、 _____ -=ニ 三ハ │
│ │ │ {/ : : \ ー=≦⌒ ー=ニ廴│
│ │ │... /::::::.llllll:.ミト . .│
│ │ │ : /:::::::::::::l!!!!l ::::::ミト . .│
│ │ │ /::::::::| l::::::::::::::::::::\__`_マ≡=- -=ニ爪...│
│ │ │:;l::::::::::|--、l::::::::::::斗┼┼十l:::::::::l::::l :::l:::::::::|/...│
│ │ │ | :::::ト:l二__l:::::::::::从_l_l__l_.l:::::::::|::::l::::l:::::::::l .....│
│ │ │ハ:::::| 杙沙 ',从ハ' ´ 込歹' l:::::::::l::::l::::l:::::::::l ...│
│ │ │ .l:::::l / ::::::::l::::l::::l:::::::/ ....│
│ │ │! l:::::l ノ ./::::::::::/::::l::::l:::::::l .│
│ │ │ l| l∧ ./!:::::::::/::::::l :::l:::::::l │
│ │ │ l|::l::::lヽ __ //:::::::/ :::::/ ::::l:::::::| ...│
│ │ │ |.l::l:: l |::\ ` ̄´ //::::::,イ :::::/i :::::|:::::::| .│
│ │ │ | l:ハ::l |::::::l:\ //:::/ .l :::/l:l:::::::|:::::::| . │
│ │ │ l ll ll |::::::l::l:::::TT///_./:::/ |:ト、:i |_ ::::l ......│
《SARCOPHAGUS》
ク ー
川;゚ -゚)(……撒いたか?)
だだっ広い平原を疾走しながら背後を振り返り、空へと視線を上げてみるとそこにはもう青空と白い雲だけしか存在していなかった。
あの恐るべき共同生命《vähän》の軍勢は確認できない。
すると、命のやり取りから脱出した安心と超高速移動の疲労がどっと押し寄せてきた。クーは足を止めて深く息を吐くと、その場に座り込んだ。
排熱の効率を上げるために黒い三角帽子を脱ぎ、赤いスカーフのついた黒いセーラー服をできるだけ開く。すると服装の隙間からすぐに煙が立ち上ってきた。
川 ゚ -゚)(……クソ。ヴァハンめ)
クーがこれほど長い時間、自身を酷使したのは数十年ぶりだった。
それほどまでに追い詰められてしまった失態と気の緩みを自覚すると、思わず舌打ちをしてしまう。
そこには、この先どれだけ同じような逃避行を繰り返さなければいけないのだろうという辟易も存在していた。
機兵隊《SARCOPHAGUS》。それがクーの所属する組織の名前だ。
8
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:23:41 ID:ukyAQTRk0
肉体の組成を金属へと置き換え、意識を保ったまま生体機能を拡張することを教義とする宗教団体。
自ら思考し、自ら行動し、自らを信仰する……自己と世界の区分に強い信念を抱いて生きていく者たちであるため、
この世界に無数に存在するその他の宗教組織とは違い、組織内の結びつきは極端に薄かった。特定の拠点などもなく、仲間の存在も杳としてしれない。
川 ゚ -゚)(いい加減鬱陶しいから殲滅したいが……自分だけじゃあ手が足りなさ過ぎるしな。日々数を増していくのも腹立たしい……)
一度思考の沼にとられてしまえば、肉体は疲れていても頭脳は働き続けてしまう……。
軽々しく共同生命《vähän》に手を出した数十年前の自分を恨む。己の性能を試したくて仕方がなかったあの頃の若さを。
クーは幾度も行った思考を繰り返す。自責の念と将来の展望を脳内でこね回し続けたが、新しい材料がないため進展した結論が出ることはなかった。
排熱が完了しても続けられていたクーの無意味な思索が打ち切られたのは、唐突に巨大なエネルギーを感知したからだった。
弾かれたように立ち上がり、その方向を睨みつける。反射的に追手の新たなる一手かと思ったが、どうにも感じ取った反応の性質が違う。
臨戦態勢を維持したまま体中のセンサーで周囲の空気を鋭敏に観察するが、特に平原に変わった様子はなく迫りくる驚異もない。
川 ゚ -゚)(この辺りには、何もなかったはずだが)
脳にインプットしておいた世界地図にはもちろん、近辺の国で購入した地図にもこの平原は空白で記されている。
この平原について遥かに詳しい、近隣の地帯で商売を行っている馴染みの商隊との会話ですら、何か特筆すべき事項を聞いたことはなかった。
危機感と好奇心。天秤が揺れる。常人ならば君子危うきに近寄らない選択をする者も少なくないだろうが、クーは自分の肉体を改造するような性格だ。
当然、彼女はエネルギーの真相を探るべく歩きだした。
それからクーは丸一日ほど足を休めることなく進み続け、鬱蒼とした森を抜けると閑散とした村を見つけた。
辺鄙な村だった。クーは木が組み合わされた門の前で立ち止まる。
門から左右に伸びる簡素な柵は本気で外敵を拒む気があるとは思えないほど築造が多く、村の内観が苦労せずとも見渡せた。争いが日常でない証拠だ。
村の外側には家畜小屋や農地が広がっている。動物や野菜の姿も確認できることから、自給自足の生活を送っているのだろう。
クーの祖国の暮らしや、今までに旅をしてきた世界の標準的な文明よりも数段遅れている生活水準ともいえたが、
歩いてきた森にも食事に適したナッツや果実の木々が生えており、地図上では徒歩圏内に浜があるため生存に向いている立地といえた。
しかしなによりも、クーの神経に訴える違和感があった。
人目を忍んで平和に暮らしているような未開の村には不釣り合いな――いや、だからこそ、とも言えるかもしれないが――気配。
川 ゚ -゚)(……何だ? はっきりしないが……)
ちぐはぐとした据わりの悪い感覚こそあれど、昨日感知した莫大なエネルギーが発生した地帯とは思えない。
体験したことがない文明レベルに身を置いているために生じている落ち着かなさ……。そんな言葉で説明できてしまう感覚。
柵を伝って、村の外周からもっと深く観察しようかと考えたが、その様子を村人から見られてしまうと印象は良くないだろう。
ここまで足を運んできて、引き返すという選択肢はない。遅かれ早かれ、いずれ入村するのは間違いないのだ。中を見ないとわからないことは無数にあるだろう。
クーは村に足を踏み入れた。
9
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:25:30 ID:ukyAQTRk0
( ・∀・)「おや、旅人さんですか? こんにちは」
川 ゚ -゚)「どうも。こんにちは」
クーが村を見回しながらしばらく歩いていると、並んで歩く二人の男が話しかけてきた。
中性的で端正な顔立ちをした男と、細く垂れた目が野卑な印象を与える丸々と太った男だった。
どうやら言葉は通じるようだ。挨拶といった文化に違いもないようでクーは安心する。見知らぬ土地で出会い頭に殺害を試みられたことはそう珍しくない。
( ´∀`)「どうもぉなぁ」
間延びした話し方をする太った男は、クーと出会う前から端正な顔立ちの男の肉体をべたべたと触り続けていた。
クーは二人の関係を推測する……。
男色家であることは一目瞭然であるが、おおよそ好ましい要素のない肥満体の男をどうして嫌がらないのだろうか。
文化水準のためか着ている衣服や装飾に差はないが、居丈高な物言いから立場には差があるのだろう。
そうだとしても、初対面の異性の前で接触を続けるのは常識外れの行動ではないのか? 諌めることすらできないほどの格差が?
川 ゚ -゚)(個人の趣向や文化の違い……と一言で断じても良いが)
村の内部に入ってからわかったことが沢山あった。
クーの拡張された身体能力で立ち並ぶ建築物を観察していると、見えてくるものがたくさんある。
村人が集まり騒がしく会話をしていた集会場。昼間は閉店している娼館。鉄と炎の音が轟く鍛冶場。その近くに置かれていた多種多様の作業台。
住民に何かしら明確な違いが窺える石造りの家と木造りの家。前者は後者に比べて遥かに少ない。村の外れには掛け声と剣戟が響く闘技場。
そして村の中央にひときわ大きく建てられた神殿。やはり信仰が存在しているのだろう。クーは警戒を強くするとともに、自身の目的に利用できないかと考えてもいた。
以上のことから、序列が存在すると断定できた。
職業による地位や特権の度合いは測りかねるが、立場の優位性を利用した理不尽に逆らうことはできないルールがあるのだろう。
( ´∀`)「余所者がこうも連続してやってくるなんてぇ、珍しいなぁ」
川 ゚ -゚)「連続して? 以前にも誰かが?」
( ´∀`)「あんたも天使なのかぁい?」
川 ゚ -゚)「……?」
( ´∀`)「いやぁ、翼も輪もないねぇ。他の団体かもぉ? なぁ? モララー」
( ・∀・)「そうですね。モナストレル様」
クーの疑問をよそに会話を進める二人。その会話から主従関係の察しがついた。クーは推測が当たっていたことを満足する。
同時に新しく気がついたことがあった。肌の色だ。モララーは健康的な小麦色の肌をしていたが、モナストレルは不自然な白色をしている。
陽に当たっていない不健康な白や、病人の白ではなく……もっともっと混じり気のない白色をしていた。クーが知る肉体改造者にもこのような肌はいなかった。
10
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:28:34 ID:ukyAQTRk0
川 ゚ -゚)「あの、天使ってなんです?」
( ・∀・)「一昨日にこの村へとやってきた別の神様を信仰していた方です。綺麗な服と、眩しい翼と、輝く輪をしていて……」
( ´∀`)「やぁかましい小娘だったねぇ。《अमृतम्》のシャバーサナである僕らをずっと馬鹿にしてさぁ」
川 ゚ -゚)「……? すいません、いま、なんと?」
( ・∀・)「我々の宗教……信仰の名前です。《अमृतम्》。慣れない方には発音が難しいでしょうし……アムリタ、と発音して頂ければ。」
( ´∀`)「無理矢理な勧誘がしたいのかぁ、頭ごなしに信仰を否定してくるしぃ、教祖様が受け入れてやろうって言っても拒否するしぃ……。
泊まった宿でも食事や寝室に文句をつけてきたしぃ、挙句の果てに逆上してさぁ……本当笑っちゃうんだけどぉ」
( *´∀`)「翌日、『お前らの信仰する宗教なんて大したものじゃないと証明してやるから、わたしに秘術をかけてみろ』なんて言ってさぁ。
モーナモナモナ! そしたらさぁ! 呆気なくかけられたってわけ! そして寛大な教祖様が信徒になるか聞いたのに逃げ出したんだよねぇ。
あんなにしんどい試練を繰り返してようやくぅ、村の奴隷たちが求めてやまないシャバーサナになれたというのにぃ、なぁにが気に入らないんだかぁ」
( ・∀・)「……」
モナストレルは自分たちの宗教の優越感で高揚して気がついていないが、村の奴隷たち、という言葉にモララーの表情が固まる。
生まれ落ちた場所が影響を及ぼす人生。重要視される価値観による財産の有無。生来持つ能力が公正に評価されるかわからぬ無情。
11
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:30:59 ID:ukyAQTRk0
そして会話に出てきた秘術の存在と行使の履歴。クーは感知した莫大なエネルギーの理由を掴んだ。
次いで、どこの誰とも知らない天使とやらに対する嘲笑が湧き上がる。とびきりの馬鹿なのだろうか。
相手の信仰する土地で段階を経て進む術式に身を投じるなんて軽率すぎる。殉教とは聞こえが良すぎる。ただの自殺だ。
川 ゚ -゚)「余程、自信があったんでしょうか」
( ´∀`)「他人の大切なものを否定するヤツは、ロクなもんじゃあないねぇ」
川 ゚ -゚)「ええ、そのとおりだと思います……」
( *´∀`)「それからさぁ、嬉しくて昨日からずっと家で宴会をしているんだよねぇ。
酒を飲んでぇ牛も捌いてぇ。毎日おいしいものが食べられて幸せだよねぇ」
( ・∀・)「お言葉ですが、あんまり消費されますと冬が厳しいですよ……」
( *´∀`)「固いこと言うなよぉ、モララー」
言葉の終わりとともにモララーにしなだれかかるモナストレル。
川 ゚ -゚)「あと、先程から質問ばかりですいません。シャバーサナとは、一体なんでしょう?」
クーの疑問にモナストレルはにやりと笑い、肥えた腕をずいと突き出した。その不自然な白い肌を見せてこう言った。
( *´∀`)「シャバーサナとは、僕らのことさぁ! ……あ、あなたも《अमृतम्》に宗旨変えするかい?」
川 ゚ -゚)「いいえ。わたしには、わたしの信じる神があるものですから」
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:32:28 ID:ukyAQTRk0
-3- 狂乱天使
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《金蓮花》
し ぃ
(#゚ー゚)「あ゛あ゛〜〜〜〜!! マジでムカつくんですけど!! なァ〜〜〜〜にが財団《アシプタ》ですか!!」
ここ一年間で宣教師として目覚ましい活躍を遂げたため、しぃは教団《金蓮花》から多大なる評価を得た。
宗祖から神格を上げてもらい、教団内でのより一層の権力やもっと大きな変換能力を行使できるための祝福。
それから報奨金を手にしたため、これを手に財団《아쉽다》が支配するカジノへと乗り込んだ。
彼女にとってはどんな褒め言葉よりも、組織内の出世よりも、貴重な金品……もっと直接的に言ってしまえば現金を手にすることが何よりも喜びだった。
特別配当金として支払われた金銭を元手にして、カジノで何倍もの勝利を収めるぞと目論んでいるのだ。あわよくば現地にて重ねて勧誘を行い、更に評価を受ける……。
しぃの脳内は幸福でいっぱいだった。
13
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:33:18 ID:ukyAQTRk0
カジノに乗り込んだ初日で持ち込んだ金銭をすべて失い、二日目で貯金をすべて吐き出すまでは。
自分の力を最大限に行使して国をまるごと更地にしてやろうかと本気で考えていたが、個人的な怨恨から宗教戦争を勃発させてしまうと、
命の危機――財団《아쉽다》の報復だけでなく、宗祖や他の大天使から怒られるかもしれない。特に後者が怖かった――に瀕する可能性を考えてなんとか思い留まった。
三日目にはバカンスを切り上げて仕事に戻ろうと決意したのであった。忙しくなれば考えずに済むし、やがて忘れられるのだ。
その旨を通信するとすぐに神託が降りてくるあたり、教団も彼女の性格をよく把握していた。それがまた見透かされているようで、しぃには面白くない。
現在、彼女は教団《金蓮花》からの神託に従い、目的地へと向かっている。
(#゚ー゚)「絶対あいつらイカサマしてますよ! ズルですよ! ズル!
わたしはしていないのに! 正々堂々と自分自身の運と実力だけで戦っているっていうのに! なんでわたしにだけあんなにしっかり見張りをつけるんですか!?
プレッシャーが凄い! 強面で屈強な人間でわたしを取り囲まないで! そんな圧のせいで生来の運気が引っ込み思案! わたしの運命は人見知りなのです!!」
風で流れる髪をぐしゃぐしゃと手で掻き回し、純白の翼を怒りに任せて羽ばたかせ、頭上の輪は声に応じて輝きを増減する。
青空を背景に金色の軌跡を残して音もなく飛行する彼女は、知能こそ少し足りないが補って余りある才能を持った、紛れもない大天使である。
信仰者はひざまずいて祈りを捧げ、教団内には憧憬の念を抱く者も多分におり、若輩ながらも宗祖に名前を顔を覚えられるほど将来有望な少女であった。
(#゚ー゚)「クッソ〜〜〜〜。奇跡さえ使えたらな〜〜〜〜!! あれだけガッツリ見張られてるから行使した瞬間に逮捕されるでしょうけど〜〜〜〜!!
……いや、変換比率的にはどうなるんだっけ……? 自分を対象としたことがないから全然わかりませんね!! でもまあいけたでしょう!!
あいつら、それを盾にして絶対イカサマしてますよね!! だってこっちから指摘したって握りつぶせばいいんですもん!! あ〜〜〜〜!!」
(*;ー;)「わたしのお金〜〜〜〜!!」
これからしばらくの後、しぃは目的地である村に到着し、村内で信仰されている宗教《अमृतम्》に喧嘩を売り、ものの見事に敗走することとなる。
踏んだり蹴ったりの人生だが、彼女はめげず、しょげず、泣かずに今日も雌伏して時の至るのを待っている……。
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14
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:34:23 ID:ukyAQTRk0
-4- 奴隷の日々
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│ │:ヽ_}ヾ、 ′ , / /、:.ヽ:! │ ...│
│ │: : 从 ` - / ,:仁〉: ` │ ...│
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│ │: ::|三ニ!、\ ―‐‐ /彡'´: /::::::│ ...│
│ │ : :ヽ三ニ、_丶,///il|ilヾ∨彡': : /:_: :-::│ ...│
│ │ : : : ヽ三三三ニ`┴┴ニ彡': : /'´: : : : ::│ ...│
《अमृतम्》
ギ コ
奴隷たちの朝は早く、日の出とともに起き上がりすぐに作業へと取り掛かる。
雑役が絶えない村ではあるが、その中でも格段に多様な労役を行っているのがギコであった。
(,,゚Д゚)(やるか)
今日はまず鍬を持って畑へと赴き、土を耕す。鍬を振るう全身運動は彼の肉体を頑強にしていく。
そのため同じ作業場の仲間や上司から割り与えられる仕事も多く、特に消耗の激しい作業はほとんどギコの手によるものだった。
開墾時に深く埋まった木の根があれば鉈で根を切り落とし、縄をくくりつけた馬と一緒に力づくで引き抜く……労苦に比例して達成感こそあれど、好んでやる作業ではない。
激しい作業の後は決まって監督者が果物や木の実をくれた。その瑞々しさや甘さが全身に染み渡る快感は嫌いではなかった。
15
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:36:04 ID:ukyAQTRk0
鉱山での作業は危険が無数に存在する。狭い中振り回すつるはしに、所狭しと動き回るトロッコ。坑道の崩落やガスの噴出。
怪我人は毎日のように出るし、彼らはシャバーサナではないため死者の発生も珍しくない。シャバーサナはこのような場所にいない。
過酷な作業内容。薄暗い空間に響き続ける採掘音と立て付けの悪いレールを走るトロッコの騒音。劣悪な環境で生まれたストレスの矛先は他者に向く。
月日を重ねるにつれて喧嘩を乗り越え、性格や顔を覚えていく。力を合わせて大きな仕事を成し遂げたという連帯感が生まれた。肩を叩きあう気安さは嫌いではなかった。
作業場――鍛冶、裁縫、木工、宝飾、溶媒等様々な作業台が置かれている区画――で一番用心するべきところは、気難しい技術者の機嫌を損ねないことだった。
技術を教わる立場であるという気兼ねもあったが、それぞれの分野の熟練工にしか作れない品は決まって村にとって重要な代替不能な品であるため、
へそを曲げられると困るのは個人だけでなく、家単位や、場合によっては村中から責められるハメとなってしまう。
注文された品の図面を引き、額に汗して組み上げた品物を見た熟練工が豪快に笑って腕の上達を認めてくれるこそばゆさは嫌いではなかった。
魚を内蔵を細切れにしてから塩水に漬ける作業を一通り終えると、次は先日瓶に入れておいた内蔵を撹拌させて塩を加える。
棚に並べられた無数の瓶に同じ作業を行いつつ、十分に発酵し終えたと感じたものは取り出して担当者に確認をとってもらう。
呼吸すらままないほど酷い悪臭が充満する空気の中、体に汗をかきながら、出来上がった食品の水準を下回ることは許されない繊細な労役だ。
作業を終わらせたら特別に出来上がった食品を口にすることを許される。飽きた麦粥に混ぜ込んで食べる美味さは嫌いではなかった。
一般的な食用肉として育てている豚に餌をやり、力仕事や遠出をする際に使用する馬の手入れを行い、
乳を絞り、祭事の時に――《金蓮花》のしぃを《अमृतम्》で征服したここ最近のような――しか食べられない牛の世話を行い、
鶏に脛をついばまれながら彼らの卵を回収して回った。時期がくれば、羊の毛を刈り暖かな布団を裁縫するのだ。
子豚や子牛など、育っていく家畜の世話をしながら過ぎ去る季節を感じるのは嫌いではなかった。
(,,゚Д゚)(家畜小屋……)
始めて天使を見つけたのは、この場所だった。
いつものように仕事をこなそうと思い家畜小屋の扉を開いたら、壁に背をつけて座り込んでいたしぃがいた。
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208797/103_tcf4wc.jpg
《अमृतम्》の秘術に敗北した教団《金蓮花》の大天使であるしぃが虚ろな目で放心している間に手枷と足枷――鉄球と鎖――をつけられ、
教祖の勧誘の言葉に我を取り戻し、激昂した彼女は大声を上げて翼を広げて飛び立った。
だが、他宗教の儀式を身に宿した影響か、本来の力を出すことはできなかったようだ。逃げるほどの気力も持続しなかったため、家畜小屋に隠れたのだと告げられた。
それから天使の手枷と足枷を外してやると、彼女は一方的に協力を要請してきた。
「この状況を変えたいと願うのならば、わたしが叶えてみせましょう!」と自信満々に胸を張ったその御姿には、まだ、神々しさが残っていたというに……。
彼女の雰囲気に気圧されたギコは頼みを快諾し、より人目につかない森に隠れ住むように提言したのだった。
16
:
◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:37:28 ID:ukyAQTRk0
それから三日が経過したが、何一つ状況は変わっていない。
昨夜の会話を思い返しても、特筆すべき有益な内容はなかった。
酒が飲みたかったのに飲めなかったじゃないかと癇癪を起こされただけだ。ギコは頭を抱える。
(,,゚Д゚)(あのクソ天使を匿っていたことがバレたら、ただでさえ主人に疎まれている俺だ。どんな刑罰を受けるか……)
一日の仕事をすべて終えればもう日が沈んでいた。
帰路につきながらこれから先のことを考える……。どんどんと暗くなっていく思考は、背中を叩かれ打ち切られた。
( ・∀・)「オス! 今お仕事終わったところ? タイミングいいね」
(,,;゚Д゚)「うおッ!」
(,,゚Д゚)「……モララーか。びっくりした」
( ・∀・)「ギコってさあ、小さい頃から思ってたけど、気丈夫な背格好してるわりに結構小心者だよね。
……久しぶりに、昔みたいにさ、一緒に湖でもどう? 今日はまだ汗流してないでしょ?」
(,,゚Д゚)「仕事は?」
( ・∀・)「……」
( -∀-)「これから、だよ。身体を洗ってから、御主人様の寝室へ行く決まりなんだ」
(,,゚Д゚)「……そうか」
瞠目して話すモララーの心中をギコはどれだけ想像できるのだろうか。
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17
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:38:27 ID:ukyAQTRk0
-5- 同じ夢を見ている
共同生命《vähän》は生物の特徴を取り込み、進化を続ける能力と教義を持った宗教だ。
母体の中に夢を見る子どもたちを抱え、必要に応じて放出し、周囲の環境や生物を吸収して姿に反映させるのだ。
彼らの最終的な目標は全生物との融合である。生物だけではなく、惑星そのものとの同一化を目指して。
雄大なる青空を滑るように進む巨大な飛行船に似た形の刺々しい赤色。それが現在の母体だった。
他者と自己の肉体と精神の境界をどろどろに溶かしているため、彼らに個は存在しない。集合的無意識のまどろみが彼らのすべてだった。
全は一、一は全の精神は、過去に受けた痛みや恨みを忘れることはありません。誰か一欠片でも被害を受ければ復讐するまで追跡を続ける。
かつて機兵隊《SARCOPHAGUS》に所属するクーという人物に先代の母体の心臓を潰された恨みは、まだ晴らせていない。
彼女がとんでもない速度で逃げてしまうためであったが、最近では鳥類の体形を精度高く再現できるようになったため、追いつく期間が短くなっていた。
《vähän》の精神は高揚している。決着の予感を感じて。クーの顔が絶望で歪むのを想像して。
奴らの宗教組織も取り込み、次なる進化の形に変われるのを心待ちにして《vähän》はクーの元へと移動を続ける。
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:39:59 ID:ukyAQTRk0
-6- 宗教会議
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│', i !.つ:::::iヽ、!' ゝ!七爪!/ │ │:;l::::::::::|--、l::::::::::::斗┼┼十l:::::::::l::::l :::l:::::::::|/...│
│ヘ | 代:::_ノ , ==ミ: /! │ │ | :::::ト:l二__l:::::::::::从_l_l__l_.l:::::::::|::::l::::l:::::::::l .....│
│ノヘ ヽヽ 人 r':::ノ .)'. .│ │ハ:::::| 杙沙 ',从ハ' ´ 込歹' l:::::::::l::::l::::l:::::::::l ...│
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《金蓮花》 《SARCOPHAGUS》
し ぃ ク ー
川 ゚ -゚)「君が受けたのは間違いなく不老不死の秘術だろうな。
シャバーサナと呼ばれているのは、教団の不死者のことだ。村内での序列上位、家屋でいえば石造りに住んでいる奴らとなる。
しかし人数は二十人にも満たないようだな。全体人口がはっきりしないが、一割前後だと考えられる」
(#゚;;-゚)「なぁ〜るほどね! 確かに中央にある神殿でなんか色んなことさせられたんですよ! あそこが一番重要な拠点に間違いないですね!」
19
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:41:26 ID:ukyAQTRk0
川 ゚ -゚)「同意見だ。すぐ隣に常に人が集まっている集会所があるため襲撃は難しいだろう」
(#゚;;-゚)「むむむ。無理矢理ぶっ殺せばいいんじゃないですか?」
川 ゚ -゚)「それがそうでもなさそうだ。奴隷が働いている間、シャバーサナのほとんどは何をしていると思う?
驚いたことに戦闘訓練なんだよ。村外れの円形闘技場で、不死の体を使って文字通り身が千切れ飛ぶ刃物のやり取りをしている。マトモに戦うのは恐らく厳しい」
(#゚;;-゚)「死の条件もわかりませんしね。再生式なのか継承式なのか残機式なのか……。なんにもわかりません!」
クーの拡張された五感ならば、それなりの広さを誇る森の中とはいえ、しぃを見つけ出すのは容易だった。
彼女たちはお互いの事情を打ち明けた後、手を組むことに合意した。なので、今は《अमृतम्》を破壊する方法について話し合っていた。
しぃは他宗教の呪縛から逃れるため、クーはやがて来る共同生命《vähän》の群れと共闘する仲間を求めるため……。
知恵と知識と持ち寄って二人で解決策を導き出そうという計画だったのに、しぃが予想以上に無知でクーは内心苛立っていた。
川 ゚ -゚)「少し本題からはズレるかもしれないが……人間は支配者と被支配者という序列を作れる、と考えられるからともかく……
家畜に儀式を施さないのはなぜだ? 贅沢したいが食べすぎると冬の備蓄がなくなる、と村人がぼやいていた」
(#゚;;-゚)「それはなんとなくわかりますね! ズバリ神聖さ! です!
崇高なものは限られた少数の者に限定すればするほど価値が高まって見えるわけですね。
あと考えられるとすれば……味が落ちるとか繁殖能力を失うとか?」
川 ゚ -゚)「ふむ……再生し続ける肉体や老いを知らぬ美しさは、私たちの機兵隊の仲間でも普遍的な教義として掲げている者は多いからな……」
(#゚;;-゚)「クーさんのところの……さ、サル? なんでしたっけ?」
川 ゚ -゚)「《SARCOPHAGUS》。呼びづらいなら《サルコファガス》でいいよ」
(#゚;;-゚)「ではそちらも《金蓮花》を《キンレンカ》と呼んでください。
……で、《サルコファガス》の教義って何なんです? 戒律とかあるんですか?」
川 ゚ -゚)「うちは比較的自由だと思うな。自由というのも教義に含まれていると言っても良い。
自分自身を神にする……というのが最も重要視されている。科学が我々を神にする。神の欠片……破片を身に宿し、自分だけの神を作り上げるんだ」
(#゚;;-゚)「ふうん……なんだか難しいですね。《金蓮花》は教義も祝福もシンプルでいいですよ。
価値あるものを集めて奉納する。そうすると祝福で対価分の結果を引き起こせる。それだけです」
川 ゚ -゚)「……面白いな。価値を時間に置換するのか。
先の見えない長期的な努力をせず、明確に必要な対価さえ支払えば良い……というのは魅力的だ。
これだけ、という量が決まってさえいればどんなに比率が釣り合っていなくても、今すぐ確実に実行できる、という保証は素晴らしい」
(#゚;;-゚)「価値、というのが厄介なものなんですよね。わたしにとってではなく、捧げる者にとってですから……
情念のこもったモノ、といえばわかりやすいでしょうか。例えばお金なら、お金を巡って血や汗や涙を流したり、命を賭けたりしますものね!
本来はやり取りされるコインや金属自体にはなにひとつとして意味はないのですが!」
川 ゚ -゚)「情念よりも……もっと強い、生きる意思、いやそのためだけに作られた生物を媒体にすれば、かなりの対価が得られるのではないか?」
(#゚;;-゚)「想像する限り、得られるでしょうね」
20
:
◆3x5.wwwwww
:2020/05/06(水) 23:44:39 ID:ukyAQTRk0
川 ゚ -゚)「……」
(#゚;;-゚)「クーさん?」
川 ゚ -゚)「捧げる方法は?」
(#゚;;-゚)「正規の方法は、本人が望むなら……ですが……対象を無力化すれば強制的に対価を抜き出すことが可能です」
川 ゚ -゚)「更に言えば、願いを叶える権利すら横取りできるんだろう? 他者に対価を支払わせて自分の望みを叶えられるだろう?」
(#゚;;-゚)「……」
川 ゚ -゚)「そうでもないと、教団《キンレンカ》は世界で最も大きな宗教組織のひとつに数えられていないだろうからな」
(#゚;;-゚)「……知っていたんですか」
川 ゚ -゚)「当然だろう。今の世の中は宗教戦争。信仰乱世……神の群雄割拠だ。
幾星霜を経たその先に、語り継がれる神話となる組織になるためにどれほどの争いが地上で起きていると思っているんだ?」
川 ゚ -゚)「どこの誰が何の意味もない神を信仰する? 付加価値……見返りがまったくない神なんて人気が出るわけがないだろう。
信徒を試すばかりで姿を表さない教祖、目に見える奇跡を与えてくれない開祖、役に立たない戒律ばかり押し付けてくる宗祖……。
そんなものはすべて淘汰される! 今、私達が生きているこの時代は、紛れもない神話争奪戦の舞台なんだ」
(#゚;;-゚)「……わかりますよ」
川 ゚ -゚)「……ならば、握手をしよう。約束のために」
(#゚;;-゚)「わたしは《アムリタ》の秘術を体から取り除くため、《サルコファガス》の武力を借りたい」
川 ゚ -゚)「私は《ヴァハン》の軍勢を根絶やしにするため、《キンレンカ》の奇跡を行使して貰いたい」
二人が固く手を結ぶ。クーが手あたり次第に共同生命《ヴァハン》の生物を機兵隊《SARCOPHAGUS》得意の武力で無力化し、
しぃが随時、教団《金蓮花》の奇跡の行使の代価として――生贄と言い換えたほうが、適切な生命の消費――使う。
戦場となるギコとモララーの故郷となる村のことなど、二人はまったく意に介していなかった。
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21
:
>>20 訂正
:2020/05/06(水) 23:45:50 ID:ukyAQTRk0
川 ゚ -゚)「……」
(#゚;;-゚)「クーさん?」
川 ゚ -゚)「捧げる方法は?」
(#゚;;-゚)「正規の方法は、本人が望むなら……ですが……対象を無力化すれば強制的に対価を抜き出すことが可能です」
川 ゚ -゚)「更に言えば、願いを叶える権利すら横取りできるんだろう? 他者に対価を支払わせて自分の望みを叶えられるだろう?」
(#゚;;-゚)「……」
川 ゚ -゚)「そうでもないと、教団《キンレンカ》は世界で最も大きな宗教組織のひとつに数えられていないだろうからな」
(#゚;;-゚)「……知っていたんですか」
川 ゚ -゚)「当然だろう。今の世の中は宗教戦争。信仰乱世……神の群雄割拠だ。
幾星霜を経たその先に、語り継がれる神話となる組織になるためにどれほどの争いが地上で起きていると思っているんだ?」
川 ゚ -゚)「どこの誰が何の意味もない神を信仰する? 付加価値……見返りがまったくない神なんて人気が出るわけがないだろう。
信徒を試すばかりで姿を表さない教祖、目に見える奇跡を与えてくれない開祖、役に立たない戒律ばかり押し付けてくる宗祖……。
そんなものはすべて淘汰される! 今、私達が生きているこの時代は、紛れもない神話争奪戦の舞台なんだ」
(#゚;;-゚)「……わかりますよ」
川 ゚ -゚)「……ならば、握手をしよう。約束のために」
(#゚;;-゚)「わたしは《アムリタ》の秘術を体から取り除くため、《サルコファガス》の武力を借りたい」
川 ゚ -゚)「私は《ヴァハン》の軍勢を根絶やしにするため、《キンレンカ》の奇跡を行使して貰いたい」
二人が固く手を結ぶ。クーが手あたり次第に共同生命《vähän》の生物を機兵隊《SARCOPHAGUS》得意の武力で無力化し、
しぃが随時、教団《金蓮花》の奇跡の行使の代価として――生贄と言い換えたほうが、適切な生命の消費――使う。
戦場となるギコとモララーの故郷となる村のことなど、二人はまったく意に介していなかった。
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22
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>>20 訂正
:2020/05/06(水) 23:47:06 ID:ukyAQTRk0
-7- 宗教戦争
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│l i 斗== ミ、 ト / !.,イ i │::|::::::|:::/ー|::/=|:::::::::/ j::/≠‐|/‐}:::::::/}:.│ /::::::::| l::::::::::::::::::::\__`_マ≡=- -=ニ爪...│
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《金蓮花》 《अमृतम्》 《SARCOPHAGUS》
し ぃ ギ コ ク ー
不意に、村が巨大な影に覆われ村人達は空を見上げた。
彼らはこの赤色の飛行船めいた生物が、共同生命《vähän》の母体だとは当然知る由もなく、
ましてやそれが村に訪れた機兵隊《SARCOPHAGUS》に所属しているクーの過去のあやまちに起因するなど……。
23
:
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:2020/05/06(水) 23:49:41 ID:ukyAQTRk0
村の上空でぴたりと移動を止めている母体は肉体の四方八方に穴を開け、そこから無尽蔵に大小様々な生物を放出し始めた。
人体に蝙蝠や鳥の特徴を混ぜ込んだ体形は羽ばたき、人体に有袋類の特徴が結合された体形は滑空し、人体に蟲の特徴が一体化した体形は風に舞う。
姿かたちは千差万別でこそあれど、前述した通り共同生命《vähän》はすべての精神を同一とする。対象を索敵し、情報は即座に伝播する。
( ;´∀`)「こ、これはぁ? いったいぃ?」
受けた仕打ちや屈辱などに対する恨みを心の中にずっと持ち続ける共同生命《vähän》だが、
だからといってエネルギーや進化の糧となる生物を見逃すはずがない。彼らの好奇心は常に進化の方向を見つめている。
放出とともに村中が騒がしくなった。あちらこちらから悲鳴が上がる。
どんな隙間にも入り込み、何もかもを噛み砕く奇々怪々な生物を払いのけようと奮闘する村人であったが、
一人一人はさほどでもない大きさとはいえ、何十、何百人にも集られれば瞬く間に皮膚を破られ、肉を削がれ、骨を砕かれてしまう。
( ;メ∀メ)「モ゛、モ゛ナ゛ッ! モ゛モ゛モ゛モ゛モ゛モ゛モ゛ナ゛モ゛ナ゛モ゛ナ゛モ゛ナ゛モ゛ナ゛ァ ッ!!」
絶命し、取り込まれていく定命の奴隷の混じって、教団《अमृतम्》の不老不死の秘術を身に宿したシャバーサナが四肢をばたつかせてもがいていた。
痛覚は遮断できていないらしく、全身に群がり分解され情報を取り込まれていく自身がはっきりと知覚できるようだ。
(#゚;;-゚)「どうやら、《アムリタ》の不老不死は、再生式みたいですね! それさえわかればやりようはあります!! 直接奉納すればいいのです!!」
しぃが光り輝きながら村中をゆっくりと歩いてきた。自衛できる程度の対価を確保した後、クーとは別れて行動している。
光の防壁を周囲に展開しているため、共同生命《vähän》の軍勢は彼女から一定の距離を置いて離れていく。
既に誰の目にも無力化されたモナストレルに向けてしぃが手をかざすと、肥満の体に詰まっていたすべてが捧げられた。
熱量、生命、信仰、秘術……その他無数のエネルギーが一度空中に光の帯となって拡散し、再びしぃの元へと収束する。
(#゚;;-゚)「むむむ! 不老不死のシャバーサナを捧げたのに、どうしてまだわたしにかかった秘術が解けないんでしょうか!
不可逆? まさか! 《金蓮花》に不可能はありません! 行使者にとって最も都合の良い現象が起こるはずなので!
考えられるのは、解除にはより多くのコストが必要、異宗教のためより多くのコストが必要、《アムリタ》ゆかりの土地なので以下同文!」
しぃは鼻息荒く大股で村を歩き出す。彼女は《vähän》を無力化する手段を持っていないため、
襲われて絶命した奴隷や放置された価値ある建造物、死ねずに苦しみ続けるシャバーサナを《金蓮花》の神の奉納し続けていく……。
クーは高速で移動をしながら軍勢を叩き潰したり、焼き払ったり、切り裂いたり、氷結させたり、風圧で爆散させたり、亜空間に閉じ込めたりと、
身体改造の成果を余すところなく発揮して非常に多彩な方法で、なおかつ目にも留まらぬ速度で無力化を繰り返していた。
木造の家や森に火が燃え移り、石造の建造物は倒壊し、畑は遥か深くから爆発し、家畜に群がる《vähän》ごと消し飛ばしていく。
川#゚ -゚)「─wwヘ√レvv─wwヘ√レvv~─z__」
魔女帽子はとっくに吹き飛ばされており、切り揃えられた長い黒髪が流れる。
着ている黒いセーラー服や赤のスカーフの姿ももはや目で捉えられる速度ではない。
ただ黒い彗星が村中を飛び回り、強力な破壊の魔術や破壊兵器が荒れ狂い、常人ではその余波のみで吹き飛ばされてしまうだろう。
24
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:2020/05/06(水) 23:50:39 ID:ukyAQTRk0
全身の皮膚下に埋め込まれていた兵装――クーにとっての力の象徴。彼女の神――の噴出力が最高潮に達したとき、
薄暗い影の中をより濃い黒線が切り裂くように急浮上し、《vähän》の母体目掛けて突進していく。
しぃの《金蓮花》による加護が《SARCOPHAGUS》のクー自身に超高度の光の防壁を与えたのも相まって、母体の腹に巨大な穴を開けた。
共同生命《vähän》の母体が絶叫と同時に痙攣する。耳を覆いたくなる激痛の声。発せられる吸気音。
体液と臓物を撒き散らし、徐々に高度を下げて墜落していく母体とともにこの世のものとは思えぬ悲壮な叫びを上げる村中の精神同一体。
川#゚ -゚)「――――z____限界だッ! 後は任せたぞッ!!」
(#゚;;-゚)「まっかせてください! 《ヴァハン》と《アムリタ》の絶滅をしっかり《金蓮花》のしぃがやり遂げますからね!」
力を使い果たし、パラシュートのように布を広げてゆっくりと降下していくクーにしぃは満面の笑みを返すと、手近な生物から自身の利益へと変換していく。
何がどうなってこのような惨状となっているかこそわからなかったが、誰がどうにかして目の前の村の景色を生み出したのかは理解できた。
(,,;゚Д゚)「……」
望んでいたはずの日常の破壊。非日常の襲来が現実となったのに喜べないのは何故か。
鉱山での作業中に坑道外から村の異変を伝える知らせが届いた時の期待は何処へ。
( ;・∀・)「なんだよ、これ」
いつの間にか、ギコの隣にモララーが立っていた。ギコよりも遥かに心当たりのない彼にはまさに青天の霹靂と言えた。
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:2020/05/06(水) 23:52:01 ID:ukyAQTRk0
-8- 憤怒
│_./ / , / `ヽ ...│/:::::::::::::::::::::::::::::::;:::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::ハ.│ / >、 ` ー- 、 _____ -=ニ 三ハ │
│./ ./ , / / / , イ ヽ .│:::::::::::::::;::::::::::::::/::::::::::::::::/:::::i::::::::l:::::::::::ハ│ {/ : : \ ー=≦⌒ ー=ニ廴│
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│l i 斗== ミ、 ト / !.,イ i │::|::::::|:::/ー|::/=|:::::::::/ j::/≠‐|/‐}:::::::/}:.│ /::::::::| l::::::::::::::::::::\__`_マ≡=- -=ニ爪...│
│', i !.つ:::::iヽ、!' ゝ!七爪!/ │::l::::::レ、―リー┬|::::::/ /ィ┬‐┼ァ :::::/:::! │:;l::::::::::|--、l::::::::::::斗┼┼十l:::::::::l::::l :::l:::::::::|/...│
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│ノヘ ヽヽ 人 r':::ノ .)'. .│トヘ:::::l |:/ | ,:'/ム::::ll │ハ:::::| 杙沙 ',从ハ' ´ 込歹' l:::::::::l::::l::::l:::::::::l ...│
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《金蓮花》 《अमृतम्》 《SARCOPHAGUS》
し ぃ ギ コ ク ー
川 ゚ -゚)「お、君がギコくんか? 運良く生き残っていたみたいだな。どこか屋内にいたのか?」
(,,;゚Д゚)「……誰だ?」
川 ゚ -゚)「そっちの君は、知らないな」
( ;・∀・)「モララーと言います」
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:2020/05/06(水) 23:53:25 ID:ukyAQTRk0
川 ゚ -゚)「こんな状況でも、きちんと混乱せず答えられる。モララーくんは頭がいいな。好ましいぞ」
クーは排熱が終わるまで、どこからか拾ってきた稲穂を所在なげに握り、くるくると回してみたり振り下ろしたりしている。
ギコは自分が馬鹿にされていると気がついたが、そんなことよりも村の惨状の原因を知りたかった。
(,,;゚Д゚)「これは、どうして?」
川 ゚ -゚)「どうして? って……」
クーは後ろを振り返った。燃え盛る村を囲む森や、所々火がついている廃屋に照らされてギコとモララーの姿も赤く色づいている。
彼女がギコに向き直った。切り揃えられた長い黒髪が揺れる。まだ僅かに残った緑の上で、稲穂を両手で握りながら、言葉を続けた。
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208785/76_zjsecu.png
川 ゚ -゚)「君が望んだ結末だろう?」
(,,;゚Д゚)「……」
( ;・∀・)「……」
ギコは、頷くことができなかった。異分子に期待していた結果になったのに。
理不尽な奴隷制度からの脱却が実現するように心待ちにしていたのに。
( ;・∀・)「……ギコ、お前が望んだのか?」
(,,;゚Д゚)「……」
( ・∀・)「面倒を見てくれたモナストレル様も、田畑を開墾したフサギコさんも、鉱石掘りが上手で力持ちだったクックルさんも、
誰よりも頑丈な品を作る鍛冶職人のロマネスクさんも、美しく細やかな裁縫をするツーちゃんも、滑らかで使い心地の良い木製品を作るドクオくんも、
目が眩むくらい綺麗な宝飾細工を見せてくれたペニサスおばさんも、危険な薬品を軽々しく扱って度々みんなに叱られていたアニジャさんも」
( ・∀・)「みんなみんな、お前が」
( ・∀・)「……」
( ・∀・)「お前が殺したのか?」
(,,;゚Д゚)「違う! 俺じゃない!」
明らかな怒気を孕んだモララーの言葉に、ギコは生来の気質からたじろいでしまう。
27
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:2020/05/06(水) 23:54:50 ID:ukyAQTRk0
(,,;゚Д゚)「こんな……」
(,,;゚Д゚)「ここまで……」
( ・∀・)「その答え方……多少なりとも、こういうふうになるのを望んでいたってことだよね」
ギコとモララー。お互いの存在が助けになって、くぐり抜けた日々もあっただろう。
相手に嫉妬や劣等感を抱いたこともあっただろう。だけどそれでも、二人は幼馴染だった。幼少期からモナストレル家に仕えた奴隷だったのに。
川 ゚ -゚)「破壊願望から異教徒の天使を匿ったばかりにこういうことになる。この平和な国を破壊したのは間違いなく、ギコ君の願いなんだよ」
クーの言葉にギコは何も言うことができない。モララーの突き刺さる視線に胸が罪悪感でいっぱいになっている。
体が震え、膝の感覚が消失した。腰が抜けて座り込んでしまい、目からはぼろぼろと涙が流れてきた。隠しきれない嗚咽。
(,,;Д;)「……」
(*゚ー゚)「じゃじゃーん! 元の姿に戻ったしぃちゃんの参上ですよ〜〜〜〜!! 泣かないでギコく〜ん」
《金蓮花》への十分な奉納により、しぃにかけられていた《अमृतम्》の不老不死の秘術は解呪されていた。
艶のある髪。汚れ一つ無い両翼。光り輝く頭上の輪。
誰が見ても一目瞭然の説得力を持つ天使としての神々しさをすっかり取り戻した彼女は鼻歌交じりに、村中を光の帯へと変換していく。
無念のまま死んだ魂など、彼女には何の役にも立たないのだから。そして余剰はいくらあっても良い。しぃは丁寧に手をかざしている。
( ・∀・)「……」
許せなかった。
川 ゚ -゚)「共同生命《ヴァハン》の母体も、きちんとトドメを刺したのか?」
(*゚ー゚)「いいえ! まだですよ」
(*^ー^)「自分の同一精神体がひとつずつ消えていくのを感じたほうが、遺される想いが強くなるので!」
( ・∀・)「……」
許せなかった。モララーの心に怒りの炎が灯る。
28
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:2020/05/06(水) 23:55:23 ID:ukyAQTRk0
川 ゚ -゚)「おいおい。曲がりなりにも一宗教の母体……教祖なんだぞ」
(*゚ー゚)「大丈夫ですって!! クーさんのパンチで、めちゃでっかい穴ができてたじゃないですか!!」
川 ゚ -゚)「ダメだ。約束はきっちりと守ってもらう。今から私の目の前でトドメを刺すんだ
……この土地に充満する嫌な感じも中々消えないし、落ち着かない」
(*゚ー゚)「んもう! 仕方がないですねえ! 土地は宗祖殺したばかりだから気配が残ってるだけですよ!」
しぃの腕を引っ張ってクーが歩き出した。モララーはギコを一瞥したがその場から動きそうにない。
モララーは一人でしぃとクーの後をついていった。彼女たち二人からはもう仕事を終えたような弛緩した雰囲気が漂っていた。
( ・∀・)「……」
許せなかった。どうして、相手に大切なものがあると分かっているのに壊すことができるのだろう。
《vähän》の母体は、その真紅の巨体を村の外れに横たえていた。
腹に空いた穴からは緑色の体液が未だに流れ出している。土に染み込みきらず、場所によっては小さなぬかるみができていた。
しぃとクーずんずんと近づいていく。突発的に行動を起こされないよう、モララーは注意して彼女たちの横に並んだ。
/ ,' 3「……」
(*^ー^)「起きてますか〜?」
川 ゚ -゚)「生体反応は……まだ消えていない。油断するな」
( ・∀・)「……これは、どういう生き物なんですか?」
川 ゚ -゚)「これはだな……」
クーがモララーに説明しようとした瞬間、しぃが両手をパンと叩いた。打ち切りの意だ。
(*゚ー゚)「クーさん。そんなもの定命の奴隷に伝えたって意味ないじゃないですか。
もう彼らの《アムリタ》は消え去ったんです。神話に残る可能性がゼロ。じゃあもうこれ以上モララー君に説明したって無駄ですよね?」
川 ゚ -゚)「む……そうか」
(*゚ー゚)「はい、というわけで、さっさとこの《ヴァハン》も歴史に残らないようにしますよ!」
( ・∀・)「……」
許せなかった。自分の都合だけで見知らぬ他人の世界を破壊し、本人の目の前でないがしろにできるのだろう。
( ・∀・)「こんにちは。調子はどうですか? 何を考えて生きていたんですか?」
許せなかった。何かしたかった。村でずっとずっと溜め込んできた鬱屈や怒りの感情を抱えたまま、放り出されたくなかった。
両親が奴隷だったから。端正な顔立ちだったから。不平等な生まれから義務付けられた男娼という奉仕を、心を押し殺してこなしてきたのに。
しぃやクーのような力ある者の気まぐれひとつで、自分の生きてきた時間全部がまったくの無意味になってしまうなんて、到底許容できることではなかった。
29
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:2020/05/06(水) 23:55:47 ID:ukyAQTRk0
(*゚ー゚)「モララーくん」
( ・∀・)「……」
道理のわからない子供に教え込む声色。諭す態度が、ますます怒りを膨らませた。
(*゚ー゚)「そんな恨みがましい目で睨まれたって、妬まれたって、なんにも思いませんよ! わたしにとってはいつものお仕事のひとつに過ぎないんですから!
なんですか? 確かにわたしは《金蓮花》の幹部の元に産まれ、さらに才能があるから若いみそらから両親よりも出世しました。
だから何だって言うんです? 身分も地位も出身も関係なく、ただ不幸であればあるほど、報われるべきだって言うんですか?」
( ・∀・)「別に……ただ僕は……。
自分で何も考えず、ただ他人の言いなりになって我慢したり戒律を守ったりするその心を持っているあなたが、
周囲から求められているままの行動をしているだけで、褒められ認められるのが羨ましいだけですよ。自己と他者の期待のベクトルが一致しているというか」
(*゚ー゚)「ハハン! 自分の苦悩が報われないからって八つ当たりはやめてくださいよ!
要するに、私にモララー君が味わってきた艱難辛苦が不要なものだったと、人生が無意味なものだったと否定されることが怖いんでしょう!」
モララーは歯噛みした。しぃの言う通りだった。
耐えても堪えても状況は好転せず、親しかった友には疑われ、一向に癒やされることのない怒り。
そしてまた今回の惨状のようにわけのわからないまま運命に翻弄され、何処ともしれぬ場所へと流されてしまう。
許せなかった。許せなかった。許せなかった。許せなかった。
本当に全知全能を見渡す真実の神が存在するとするならば、殺してやりたかった。手のひらの上で無様に懊悩する様子を見て笑っているのだろう。
感情を憤怒一色に染め上げ、意地を張ってよりよく生きようと背筋を伸ばす。これは叛逆だ。モララーは心に強く誓う。自分に力があるのならば、神話を冒涜してやると!
/ ,' 3「……」
( ・∀・)「……どうしました?」
母体がモララーを見ていた。感情が強さを増すごとに、視線の強さも増していった。
/ ,' 3「失礼致しました。《vähän》教徒でない方々は共通思考領域にアクセスできないのでしたね。
善処致します。発話機能を使用するのは久方ぶりのため……」
川;゚ -゚)「マズイ! 何か……ヤバイぞ!」
母体の言葉をモララーは認識していなかった。上辺だけ発せられた言葉など、何の価値もない。
まだ排熱が完了しておらず、戦闘できないクーが言葉の裏に秘められた感情に感づいている。
川;゚ -゚)「しぃ! 早くそいつを殺せ! 何もさせるな!!」
(#゚ー゚)「うるさいですねえ!」
クーの狼狽えぶりに業を煮やしたしぃが怒って母体から目線を外した瞬間、モララーは母体の穴に向かって飛び込んだ。
そうするべきだと、確信があった。
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:2020/05/06(水) 23:58:31 ID:ukyAQTRk0
-9- 覚醒
│ /.:.:.... ...:.:.:... \_`7Y´三ヾ_{:::} /::::.:.:/ / │
│_./ / , / `ヽ ...│ │ / >、 ` ー- 、 _____ -=ニ 三ハ │
│./ ./ , / / / , イ ヽ .│ │ {/ : : \ ー=≦⌒ ー=ニ廴│
│:′ ,/. イ i / ,イイ . / ! . .ヽ │ │... /::::::.llllll:.ミト . .│
│| ′ i / /X / ./ !! . / .i .│ │ : /:::::::::::::l!!!!l ::::::ミト . .│
│l i 斗== ミ、 ト / !.,イ i │ │ /::::::::| l::::::::::::::::::::\__`_マ≡=- -=ニ爪...│
│', i !.つ:::::iヽ、!' ゝ!七爪!/ │ │:;l::::::::::|--、l::::::::::::斗┼┼十l:::::::::l::::l :::l:::::::::|/...│
│ヘ | 代:::_ノ , ==ミ: /! │ │ | :::::ト:l二__l:::::::::::从_l_l__l_.l:::::::::|::::l::::l:::::::::l .....│
│ノヘ ヽヽ 人 r':::ノ .)'. .│ │ハ:::::| 杙沙 ',从ハ' ´ 込歹' l:::::::::l::::l::::l:::::::::l ...│
│,∠ヘ . ヾ ヾ-' ノィ! ./│ │ .l:::::l_! / ::::::::l::::l::::l:::::::/ ....│
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《金蓮花》 《SARCOPHAGUS》
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:2020/05/06(水) 23:59:06 ID:ukyAQTRk0
共同生命《vähän》の母体との融合。不老不死の秘儀との肉体関係。生まれ育った土地そのものが持つ《अमृतम्》の力。
それらすべてがモララーの内なる憤怒に薪としてくべられ、彼は今、更なる神性を求めて近くにある《金蓮花》と《SARCOPHAGUS》にも牙を剥いた。
( ・∀・)「……」
モララーの姿は、明らかに人間から昇華されたものだった。
全身を覆う未知の金属で作り上げられた銀色の鎧。淡い緑の輝きを中空に残す剣。
いつの間にか跨っていた馬は紫色で、人馬一体をも肥えて意思だけで思うように力強く走らせることができる。
川;゚ -゚)「クソッ! 排熱はまだ完了してないんだぞ!!」
(#゚ー゚)「生意気な奴隷のくせに!! すぐに粉微塵にしてやります!!」
クーは悪態とともに距離を取り、手のひらをモララーへと向けて強烈な弾丸を射出した。万全でないクーは反動の痛みで顔を歪める。
弾丸を軽々と回避し、しぃへと詰め寄ったモララーは剣を振りかぶった。狙いは首だ。一撃で忌々しい天使の息の根を止めるつもりだった。
(#゚ー゚)「馬鹿め!」
直後、光の波がモララーの剣を包み込んだ。
剣は粉々に砕け散り、破片が意思を持ったかのように全身鎧の隙間から入り込み、肉を切り裂いた。
その勢いのまま血管の中へと飛び込み、全身の血流に乗って内蔵器官をズタズタに傷つける。
( ・∀-)「……ぐっ」
絶命。モララーは倒れ込んだ。鎧の隙間から赤色の血が流れ出し、大地を染めていく。
(*゚ー゚)「フフーン! 雑魚ですね! さきほど蓄えておいた対価を行使すれば無力化するのもわたし自身でできるんですよ!」
川;゚ -゚)「……」
クーの背中を伝う冷や汗が止まらない。モララーがあまりにも呆気なく死んだこともあるが……
負傷し動けなくなってしまった今、臨戦態勢に入ったしぃが次は自分を標的に定めても何ら不思議ではない。生殺与奪を完全に握られている。
この状態に気が付かないほど、彼女は甘い人間だろうか……そうとも言えるし、そうとも言えないとも考えられた。
(*゚ー゚)
しぃがクーを見る。少女らしい笑みを浮かべていた。無邪気な表情だった。
クーは死を覚悟した。
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:2020/05/06(水) 23:59:28 ID:ukyAQTRk0
(*゚ー゚)「わたし達の教義で世界を統一する。そうすれば、幾星霜を経た後、わたしたちは神話となるでしょう。
わたしの信じる神が語り継がれるんですよ。……神話の権利は渡せません。一時的に手こそ組みましたが、元はと言えば全部敵ですよね?
クーさんの《サルコファガス》は潰させて頂きます。《金蓮花》こそが神話となり、神話の一員となるためにわたしは頑張っているのです」
しぃの背後から、光の帯が湧き上がった。ゆらゆらと揺れる切っ先は、クーへと照準を合わせている証拠だ。
(*゚ー゚)「この神話争奪戦、わたしたちは絶対に負けませんよ!」
轟音。
溌剌とした少女の決意を、怒りを宿す昏い双眸が粉砕した。
神話を冒涜するという歪んだ願望を胸に、妥協も迎合も拒む苦悩を抱えた処刑人として新たに神の器となった男が。
川;゚ -゚)「……なるほど。この土地一帯そのものに不老不死のエネルギーがあって、そこに村が出来たんだな。
ただ手順を知っていれば、誰もが秘術を身に宿すことができる。そして土地で生まれ育って親和性がある……。
そう考えたら、当たり前だったな。……君の宗教の勝ちだよ、モララー君」
川 ゚ ー゚)「これからは、自由に生きて自由に死にたまえ」
( ・∀・)「どうも」
二人の少女の胴体と首が別れを告げた。彼女たちは《अमृतम्》の祝福を受けていないため、再生することはない。
モララーはしぃとクーの死体に近づき《vähän》の能力を利用して二人を体の中に取り込んだ。《金蓮花》と《SARCOPHAGUS》の二つの宗教も、よりよい進化の糧に。
一己の不屈を魂に纏い、二心を微塵と抱きもせず、三人の信仰者を殉教させ、四個の祝福をその身に宿した五体満足。
モララーは紛れもなく超常の存在として生まれ変わっており、それは新たなる神話の継承者となり得る器だった。
目標や使命を達成すれば幸福が即座に実現するほど、人生は単純ではない。それはまた別の課題なのだ。
火中に身を投じ、自身さえ焼き尽くすかのような戦い方は、あまりに危うく、破滅的に過ぎる
神話争奪戦への参加資格を手にした彼は、長き神話の果てに何を見るのか。
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33
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/07(木) 00:00:28 ID:U3EucWtU0
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│ ,ハ::|::l:::l:/ /::: ‐″ /:::::Λ└―{ヽニ ::{\:.. \}:::ノ人 } j: ∨∧///. │
《Zarathustra》
モ ラ ラ ー
34
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/07(木) 00:00:50 ID:U3EucWtU0
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35
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◆3x5.wwwwww
:2020/05/07(木) 00:01:35 ID:U3EucWtU0
完!
滑り込みセーフ!AAのKB容量で改行エラーになるの何?
36
:
◆S/V.fhvKrE
:2020/05/07(木) 00:25:05 ID:IvgSUBFM0
【投下期間終了のお知らせ】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
このレス以降に続きを書いた場合
◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
37
:
名無しさん
:2020/05/07(木) 08:31:13 ID:6ectTzVs0
ア゛ア゛〜〜〜〜〜〜好き
38
:
名無しさん
:2020/05/09(土) 18:28:10 ID:aXuQ3VPg0
うわー……好き
39
:
名無しさん
:2020/05/09(土) 21:39:54 ID:IwzDGTw.0
限界オタクだらけか?
40
:
名無しさん
:2020/05/12(火) 01:20:20 ID:ArHKzEkI0
とおい未来の遥かなむかしってスレ好きだったな
これも重くて面白くていいね
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