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( ^ω^)|ムシヨ|ニクヨ、と──のようです
326
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 20:18:07 ID:5H281t8g0
リィン
(´・ω・`)「やあ」
(..'A`)「出たな」
(´・ω・`)「オバケみたいな言い方やめてもらえる?
それよりシィ、また外の世界のお話し聞かせてよ」
(..'A`)「昨日も聞かせてもらっただろ。 なんだっけ、星の話」
(´・ω・`)「『星座』」
(´・ω・`)「ちょっとくらい覚えたらどう? 外の世界にはいきたがるくせに!」
(..'A`)「聞くのと覚えるのは別もんだろ? それにオレはいけないことがしたいだけ」
(*゚ー゚)「なんの話する? 動物? 植物? 音楽?」
(..'A`)「なんの話が聞きたいんだ?」
(´・ω・`)「外の世界の人間はどんなことして遊ぶの?」
(*゚ー゚)「遊園地、映画館、動物園」
(..'A`)「遊び方の名前だけ言われても分かんねーって」
(´・ω・`)「ドクオだけずるいんだ。 どうしてキミにだけ言葉が分かるの?」
(*゚ー゚)「どうして?」
(..'A`)「そんなんオレのが聞きたいぜ」
.
327
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 20:19:00 ID:5H281t8g0
( ^ω^)「今日こそボクのエダのお花咲いてるかお?」
(..'A`)「いんや、いつもとおんなじだな」
( ^ω^)、「そっかぁ」
「今日もあの子が夢に出てきたよ!」
「まるでママみたいだね」
「あの子がママだったならいいな」
ξ゚⊿゚)ξ「みんな夢のあの子のウワサしてるわね」
( ^ω^)「どうしてシィだけおんなじ夢を見ないんだろう」
(;;*゚ー゚)「聞かせて。 夢の話」
(..'A`)「今日の夢はあの子がオレに蝶の本を見せてくれた。
オレは蝶にもひとつひとつ種類の名前があったって知るんだ」
(..'A`)「そんでもって、蝶が好きって言ったあの子のために、
オレはイッショウケンメイ蝶の名前を覚えるんだ」
(;;*゚ー゚)
ピシッ
ヒラヒラ
( ^ω^)(夢のお話しを聞くたんび、シィの体のヒビが多くなっていくお)
( ^ω^)(はがれ落ちたカケラは蝶になって、どっかに飛んでいく)
( ^ω^)(これがボクにしか見えないシィのカタチなんだお)
ビキィ...
( ^ω^)(そしてシィの体のヒビが増えるたんび、お空のヒビも大きくなっていく)
( ^ω^)(お空が割れちゃったら、またお肉のカタマリがふってくるんだお?)
.
328
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 20:19:46 ID:5H281t8g0
ξ゚⊿゚)ξ カキカキ
ξ゚⊿゚)ξ「もうすぐ教会の地図が真っ赤になっちゃうわ」
( ^ω^)「探せるところも減ってきちゃったお」
(..'A`)「やっぱりだれかさんが持ってるもんなのかねぇ?」
(;;*゚ー゚)「わたしが外に出られれば」
コンコン
ガチャッ
o川*゚ー゚)o「みんなー! 鳳蜘蛛のニンキモノ、キュートちゃんがきたよー!」
川⁂ 々゚)「クルウちゃんもいまーす!」
(;;*゚ー゚)
o川;*゚ー゚)o ビクッ
川;⁂ 々゚)「キューちゃん、クルちゃんこわい」
o川;*- -)o「ふたりで手つないで、目をつむってれば大丈夫!」ギュッ
川;⁂ 々-) ギュッ
.
329
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 20:20:35 ID:5H281t8g0
ξ゚⊿゚)ξ「落ち着いて。どうしたの?」
(..'A`)「オマエさんたちが秘密基地にくるなんて珍しいこった」
o川*- -)oっ「……これ!!」ズイッ
川⁂ 々-)っ「これぇ!」ズイッ
ξ゚⊿゚)ξ「これは?」
o川*- -)oっ「キューちゃんとクルちゃんのタカラモノ!」
川⁂ 々-)っ「ボロボロのおにんぎょうさんと、ボロボロのぬいぐるみ!」
o川*- -)oっ「キズついてるもの探してるって聞いたから……」
(*^ω^)「!」
ξ*゚⊿゚)ξ「!」
(..'A`)「!」
(*゚ー゚)っ「ありがとう」
チョンッ
o川*- -)oっ「ツンちゃんの手って、すっごくあったかいね?」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ? ちがうわ、いまの手はワタシじゃないわ」
(..'A`)「待てよ? ひょっとしたら……」
.
330
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 20:21:24 ID:5H281t8g0
(;;*゚ー゚)「できた」
ξ゚⊿゚)ξ「うんうん、じょうずにかけてるわ!」
( ^ω^)「ボクもドクドク文字教えてもらいたいお!」
(..'A`)「よかろう」
( ^ω^)「これでドクオがこれまで書いた日記読めるようになるおね!」
(..'A`)「よくない」
(;;*゚ー゚)「ここにあるのでぜんぶじゃないの」
(..'A`)「いんや、もっとあるぜ」
ξ゚⊿゚)ξ「いっぱいすぎて秘密基地の床の下に置いてあるの」
( ^ω^)「ここだお。 よいしょ、っと!」
ゴトッ
(;;*゚ー゚)「!」
(;;*゚ー゚)「こんなにたくさん。 いったいいつから」
(..'A`)「『いつから日記を書いてるか』って?
そんなんむかしからだよ、ずっとむかしから」
(;;*゚ー゚)「あなたたち、いくつなの」
(..'A`)「んん? そりゃあ、ひとりだろ」
.
331
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 20:22:09 ID:5H281t8g0
コンコン
( ^ω^)「おっ?」
ξ゚⊿゚)ξ「ワタシにまかせて! はーい、いま開けるわー」
ガチャッ
ξ;゚⊿゚)ξ「びゃあっ!!」ブワッ
(..'A`)「アニジャとオトジャが来たな?」
(==_ゝ|★)人(☆|<_==)
(==_ゝ|★)「おじゃま」
(☆|<_==)「します」
( ^ω^)「どうしちゃったんだお?」
(..'A`)「なんで目かくしなんかしてんだ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「びっくりしたぁ……」
(==_ゝ|★)「ふたりで手をつないでいれば」
(☆|<_==)「目かくしで歩くのもなんのその!」
\(==_ゝ|★)人(☆|<_==)/
ξ゚⊿゚)ξ「ひょっとして、目かくししたまんまここまできたの?」
(..'A`)「なにしにきたんだよ? また夜にはならないぜ?」
.
332
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 20:23:05 ID:5H281t8g0
(==_ゝ|★)「肌の溶けた少女と」
(☆|<_==)「触手の生えた少女から聞きました」
(==_ゝ|★)「目かくししたまんま」
(☆|<_==)「『シィ』に触れば」
(==_ゝ|★)「ほんとの『シィ』に会えると」(☆|<_==)
(*^ω^)「!」
ξ*゚⊿゚)ξ「!」
(==_ゝ|★)「シィがオレらのことを」
(☆|<_==)「許してくれればですが」
(==_ゝ|★) ペコリ
(☆|<_==) ペコリ
(==_ゝ|★)「怖がってごめんなさい」(☆|<_==)
ξ*゚⊿゚)ξ「ですって! ねぇシィ? どうかしら?」
(;;*゚ー゚)「わたしでいいの」
(..'A`)「オマエさんがいいに決まってるだろ」
.
333
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 20:24:08 ID:5H281t8g0
リィンッ
(´・ω・`)「なぁにこれぇ?」
(`・ω・´)「はっはっはっ! いやはや驚いた驚いた! まさかこんなことになるなんてね!」
(;;*゚ー゚)「静かにして。 起きちゃう」
(..'A`)b「シィーッ」
( ─ω─) スヤスヤ
ξ- ⊿-)ξ スウスウ
川⁂ 々=)〜 スヤスヤニョロニョロ
o川*=ー=)o「むにゃ……キューちゃんかわいい……キューちゃんかわいい……
キューちゃんかわいい……むにゃむにゃ」スウスウ
(;=_=)「う゛ううっ……きゅーちゃん……かわいい……?」スウスウ
从=皿从 ギリギリスヤスヤ
(´・ω・`)「ボクたちよりハインの歯ぎしりどうにかしたら?
それとあちこちニョロニョロしてるクルウの触手も」
(`・ω・´)「うんうん、いいねいいね、青春だね! みんなで秘密基地でお昼寝かい?」
(´・ω・`)「ちょっと呑気すぎじゃない? そろそろイノチ探索の
お手伝いが必要かなー、って来てみたらこれだよ!」
(´・ω・`)「よくもこんな真っ赤な部屋でくっついて寝られるよね。
まるで肉の中で寝てるみたい」
(..'A`)「目かくししないとシィといられないけど、
目かくししてると眠くなっちまうんだとさ」
(´・ω・`)「なにそれ? みんなおこちゃまなんだから!」
(´・ω・`)「シィ、キミ。 嫌なら嫌って言いなよね?」
(;;*゚ー゚)「嫌じゃないわ」
.
334
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 20:24:54 ID:5H281t8g0
(´・ω・`)「ここんところ教会の子供達の間じゃあ、
キミが『ママ』ならよかったのにって、もっぱらの噂だよ?」
(..'A`)「そういやブーンとツンのヤツも言ってたな。 オレはまあ、シィに任せるけどよ」
(´・ω・`)「そんなの嫌だよね?」
(;;*゚ー゚)「子供達はかわいい。でもわたしにはなんにも出来ない。
ママにはなれない」
(..'A`)「『みんなのことはかわいいけど、ママにはなれない』ってさ」
(´・ω・`)「そらみたことか! 兄さんもそう思うでしょ?」
(`・ω・´)「いや、名案だ!」
(´・ω・`)「えっ?」
(`・ω・´)「うんうん、そうだ、それがいい!」
(´・ω・`)「えっ? えっ?」
(`・ω・´)「どうだろうか、シィ?イノチを探すのはもうやめにして、
このままここにいてくれないか?」
(;´・ω・`)「だめだめ! イノチを探すの諦めるだなんて、とんでもないよ!」
(;;*゚ー゚)「命をなくしてしまうくらいなら、わたしは何者にもならない」
(..'A`)「……はあ。こじれちまった」
.
335
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 20:26:58 ID:5H281t8g0
ξ゚⊿゚)ξ カキカキ
ξ゚⊿゚)ξ「教会の地図、ぜんぶ真っ赤になっちゃったわね」
(..'A`)「シィは?」
( ^ω^)「屋根の上にいるお!」
ξ゚⊿゚)ξ「真っ赤な教会を見て悲しそうなお顔してたわ」
(..'A`)「これ以上どこ探したらいいんだか」
( ^ω^)「シィのヒビ、もう体ぜんぶに広がってるんだお」
( ^ω^)「お空のヒビだって、まるで、シィが落っこちてきた日みたいだお」
(..'A`)「どうにかなる前にはやく見つけてやりたいもんだな」
ξ゚⊿゚)ξ「……見つかって欲しいけど、ちょっとだけ、見つかって欲しくないわね」
( ^ω^)「どうしてだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「もしもそれを見つけたなら、シィ、お外の世界に帰っちゃう気がして」
( ^ω^)「えっ」
(..'A`)「あー……」
( ^ω^)「そんなの、考えても、なかったお」
.
336
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 20:27:18 ID:5H281t8g0
いったん休憩します
337
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:04:50 ID:5H281t8g0
再開します
338
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:05:26 ID:5H281t8g0
ξ*゚⊿゚)ξ「遅くなってごめんなさい! レモナ先生、聞いて聞いて!」
|゚ノ ―∀―)
ξ*゚⊿゚)ξ「ここのところ、いつもとちがうことばっかり起きるの!
まるで長い夢を見てるみたいだわ!」
|゚ノ ―∀―)
ξ*゚⊿゚)ξ「鳳蜘蛛の子も斑蜂の子も、みんなシィのイノチを探すお手伝いしてくれた、ってお話しはしたわよね?
みんなキズついたタカラモノを持って、シィに会いにきてくれたのよ」
|゚ノ ―∀―)
ξ*゚⊿゚)ξ「目をつむってシィに触ると、シィのほんとのカタチが分かる、ってお話しもしたわね?
子供達みんなシィのお話しを聞くのが大好きみたい。 目かくしして秘密基地に集まるのよ」
|゚ノ ―∀―)
ξ゚⊿゚)ξ「ママってこんなかんじなのかな?」
|゚ノ ―∀―)
ξ゚⊿゚)ξ「でもね、どうしてかしら」
ξ゚⊿゚)ξ「教会の地図がぜんぶ真っ赤になって、子供達みんなのタカラモノも調べたのに、
シィのイノチはどこにも見つからないの」
|゚ノ ―∀―)
ξ゚⊿゚)ξ「せめてシィが秘密基地から出られたらいいのに。
レモナ先生に会ったらなにか思い出すかもしれないのに」
|゚ノ ―∀―)
ξ゚⊿゚)ξ「ちいさなママったら、まだ出たらいけないって言うのよ。
ほんっとに分からずやなんだから!」
コツンッ
( <◯><◯>)「誰が分からずやですって?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ぴゃっ!?」
.
339
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:06:17 ID:5H281t8g0
( ・∀・)「キズつくじゃないか」
ξ;゚⊿゚)ξ「なんでここに!?」
( <◯><◯>)「ただお友達に会いにきただけですよ、いけませんか?」
( ・∀・)「オレたち二人は仲がよくないのさ、でもオレたち三人は仲よしなのさ」
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「お、お願い! シィをここに連れてきてもいい?
せめてレモナ先生に会わせてあげたいのよ!」
( ・∀・)「シッポの生えた少女、言っただろう?
レモナとは仲よしなのさ、どうして危ないことを許せるんだい?」
ξ;゚⊿゚)ξ「いまここに、ちいさなママがいるから! それなら安心でしょう?」
( <◯><◯>)「ワタシたちはちいさなママですよ、まだ子供なんですよ。
あんなおぞましい魔女相手に、なにができるとでも?」
ξ゚⊿゚)ξっ「シィは魔女でも怪物でもないわ! いいから、こっちに来て!」
ガシッ
( <◯><◯>)「離しなさい。 ぶちますよ」
( ・∀・)「どこにいくつもりだい?」
ξ゚⊿゚)ξっ「目をつむって触れば、ほんとのシィが分かるんだから!」
グイグイ
.
340
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:07:30 ID:5H281t8g0
ξ゚⊿゚)ξ「ただいま!」
( ^ω^)「おかえり、お?」
( <◯><◯>)
( ・∀・)
(..'A`)「げげげっ。 なんてもん持って帰ってきたんだ」
( <◯><◯>)「好きできたわけではありません」
( ・∀・)「キミたちの秘密基地もだいぶもとどおりになってきたね」
(;;*゚ー゚)「いらっしゃい」
( ・∀・) ビクッ
( <◯><◯>) ビクッ
(*゚ー゚)「怖がらないで」
ξ゚⊿゚)ξ「目をつむって、手をのばして。 シィのお顔をさわって」
( ・∀・)
( ―∀―)っ
( ―∀―)っ(゚ー゚*;;) スッ
( ―∀―)っ
( ―∀―)っ(……なんだ)
( ・∀・)っ(オレたちとおんなじ人じゃないか)
(;;*゚ー゚)
( ・∀・)「すまなかったね、ごめんなさいを言わせておくれ」
(;;*゚ー゚)「分かってくれたならそれでいい」
( <◯><◯>)「正気ですか?」
.
341
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:08:33 ID:5H281t8g0
( ^ω^)っ
(..'A`)っ
ξ゚⊿゚)ξっ
( <◯><◯>)「なにするんです」
( ^ω^)「怖くないように、ボクたちが目かくししてあげるお!」
(..'A`)「オマエさん体に目いっぱいあるから、
他の人よりよっぽど怖かったんじゃねーか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ほらほら、手をのばして」
( <◯><◯>)「バカバカしい」
(;;*゚ー゚)「おいで」
( <◯><◯>)
( ^ω^)っ
(..'A`)っ
ξ゚⊿゚)ξっ
( <◯><◯>)(ワタシは手のひらにだって、目があるんですけどねぇ)
( <―><―>)(いまだけはつぶっておいてあげましょうか)
( <―><―>)っ
( <―><―>)っ(゚ー゚*;;) スッ
( <―><―>)(目がふたつ、鼻がひとつ、口がひとつ、あったかい手がふたつ)
( <―><―>)(ワタシたちと違って、なんにも変わったところのない、つまらない人)
( <―><―>)(これまでワタシが見ていた、たくさんの絵本の魔女がまざりあったおぞましいカタチと違う)
(;;*゚ー゚)
( <―><―>)「……ああアナタ、ワタシよりも背が高かったんですねぇ」
.
342
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:09:13 ID:5H281t8g0
( <◯><◯>)「『怪物ではないシィ』が秘密基地から出ることを許します」
(*^ω^)「やったぁ!」
ξ*゚⊿゚)ξ「わあ!」
( <◯><◯>)「ただし、ワタシたち『ちいさなママ』が一緒にいるときだけです」
(..'A`)「ケチんぼ!」
( <◯><◯>)「だまらっしゃい」
( ・∀・)「すまないね、もう少しだけ待っておくれ」
(;;*゚ー゚)「かまわないわ」
( ・∀・)「だれかを信じるのも、こわいものに勝つのも、
どうしたって時間がかかるんだ」
( ^ω^)「おう?」
ξ*゚⊿゚)ξ「ともかくレモナ先生のところにいきましょ!」
.
343
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:10:29 ID:5H281t8g0
コンコン
ガチャッ
ξ*゚⊿゚)ξ「せんせえ、せんせえ! シィを連れてきたわ!」
|゚ノ ─∀─)
(;;*゚ー゚)「なぜ棺桶の中にいるの」
(*^ω^)「ブーンもいるお!」
(..'A`)「よっ、センセ」
( <◯><◯>)「おじゃましますよ」
( ・∀・)「やあやあ、ごきげんよう、レモナ!」
ξ*゚⊿゚)ξ「おほんっ。 紹介するわね、レモナ先生デス!」
(;;*゚ー゚)「この子がレモナ」
ξ*゚⊿゚)ξ「不思議だわ。 先生が二人いるだなんて」
(;;*゚ー゚)「この子に見えてたのね」
(..'A`)「おう。ツンにはオマエさんがレモナ先生に見えてるんだぜ」
( ^ω^)「どう? なにか思い出したかお?」
(;;*゚ー゚)「いいえ。なにも」
(..'A`)「なんにもか」
|゚ノ ─∀─)
(;;*゚ー゚) ギュッ
(;;*゚ー゚)「よかった。 手、あたたかい。 生きてる」
(..'A`)「『手があたたかい』だって? そりゃあまあ、眠ってるだけだからな」
「〜♪」
.
344
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:11:23 ID:5H281t8g0
(;;*゚ー゚)「この歌は?」
ξ;゚⊿゚)ξ「先生にさわってはいけないわ!」
グイッ
(;;*゚ー゚)「なぜ」
ξ;゚⊿゚)ξ「どうしてか分からないけど、先生に触れてるとね、
どこからか夢で聞いた歌が聞こえてきて、触ってる人まで眠っ……ちゃ……」
「〜♪」
(* ー ) フラッ
ξ ⊿ )ξ フラッ
ξ ⊿ )ξ(どうして、ワタシ、先生にさわってない、のに)
ξ ⊿ )ξ(ああ、レモナ先生に触ってるシィに触ってる、から)
( ^ω^)「シィ? ツン?」
(..'A`)「どうしたってんだ?」
コツンッ
( <◯><◯>)「さがりなさい」
( ・∀・)「ふたりはシャキンさんを呼んできたまえ!」
(;^ω^)「でも!」
( ・∀・)「ここはちいさなママに任せて、さあいくんだ!」
(;..'A`)「くっそぅ! いくぞ、ブーン!」
(;^ω^)「おん!」
.
345
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:12:28 ID:5H281t8g0
ドクン
ドクン
ξ-⊿-)ξ
ドクン
ドクン
「〜♪」
(*゚ー゚)
ξ゚⊿゚)ξ(またあの子の夢だわ)
(*^ー^) ニコッ
ξ゚⊿゚)ξ(でもこの夢は見たことがある)
(*゚ー゚)『大丈夫なのです』
ξ゚⊿゚)ξ(おんなじ夢を見るのははじめてだわ)
(*゚ー゚)『ツンちゃんのお花、きっと咲きます!』
ξ゚⊿゚)ξ
(*゚ー゚)『綺麗なお水をあげてくださいね、温かい光をあげてくださいね。
いっぱい声をかけて、いっぱい笑って。それから、それから……』
ξ゚⊿゚)ξ(やっぱり声がでないわ)
(*゚ー゚)『きっととっても綺麗なのです!どんなお花が咲いたかあとで教えてくださ……
( )っ
ξ゚⊿゚)ξ
|゚ノ ^∀^)っ「起きて」
.
346
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:13:41 ID:5H281t8g0
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「せん、せ……?」
|゚ノ ^∀^)「起きてください、ツンちゃん。こんなところにいてはいけませんよ」
ξ*;⊿;)ξ「せんせえ!!」
ギュッ!!
ξ*;⊿;)ξ「せんせえ、せんせえ! せん、せっ……せんせい、先生だ……レモナせんせえ……!」
|゚ノ ^∀^)「はい、レモナ先生ですよ。 ほらほら泣かないの」
ξ*;⊿;)ξ「だって、せんせえ、ずっと! ワダジ、ずっと! ずっどぉ……!」
|゚ノ ^∀^)「そうですよね、ボクは夢の中でしか、
ツンちゃんは夢の外でしか、会えませんでしたもんね」
|゚ノ ^∀^)「ぜんぶ聞こえてましたよ、お話ししてくれたことぜんぶ」
|゚ノ ^∀^)「ずっと待っていてくれたんですよね? 待たせてしまってごめんなさいね」
ξ*;⊿;)ξ「う゛、うう……」
ξ*;⊿;)ξ(言いたいこと、いっぱいあるのに)
ξ*;⊿;)ξ(もしも先生に会ったらこう言おうって、ああ言おうって)
ξ*;⊿;)ξ(何度も何度も、レンシュウしたのに、だのに)
|゚ノ ^∀^)ノ「よしよし」
ξ*;⊿;)ξ「う゛わ゛あ゛あああああああああああああああん!!」
.
347
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:14:43 ID:5H281t8g0
タタタタタッ
(;;*゚ー゚)「ツン!」
|゚ノ ^∀^)「よしよし。 泣かないで」
ξ*;⊿;)ξ「うえぇ……っく、ひっく……」
(;;*゚ー゚)「ツンをいじめないで」
|゚ノ ^∀^)「あら、はじめまして。 アナタがシィちゃん、いいえ、シィさんですね?」
ξ*;⊿;)ξ「あっ、シィ! よかった、会えた!」
(;;*゚ー゚)「よくない。 泣いてる」
|゚ノ ^∀^)「あれあれ? ひょっとして、勘違いされてるかな?」
ξ*ぅ⊿;)ξ「シィ! 大丈夫よ、この人がレモナ先生よ!」
|゚ノ ^∀^)「ボクはレモナ。 モララーやワカッテマスと一緒に、はじめにママに連れてこられた子供です。
先生だなんてたいそうなものじゃないんですけどね、いつからかそう呼ばれてます」
|゚ノ ^∀^)「よろしくお願いしますね?」
(;;*゚ー゚)「この子、足が」
|゚ノ ^∀^)「ああ、この足かな? これは生まれつきですよ、
長いこと夢の中にいたせいじゃありません」
【 |゚ノ ^∀^) レモナ 】
【 足が無数の蔓になっている少年?少女? 】
|゚ノ ^∀^)「ボクたちみたいな変わったカタチの人、
外の世界じゃあんまり見ないでしょう? びっくりさせちゃいましたね」
(;;*゚ー゚)「見ないわ。 異形で生まれた子供はみんな、
大人になる殺されてしまうの」
(;;*゚ー゚)「『化物』と呼ばれて」
|゚ノ ^∀^)「……?」
.
348
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:15:51 ID:5H281t8g0
ξ*゚⊿゚)ξ「先生! 一緒に帰りましょう?」
|゚ノ ^∀^)
ξ*゚⊿゚)ξ「みんな先生が目を覚ますの待ってるわ!」
|゚ノ ^∀^)「……ごめんね? それはできません」
ξ;゚⊿゚)ξ「そんな! どうして?」
|゚ノ ^∀^)「ボクにはね、まだここでやらなくてはいけないことがあるんです」
ξ゚⊿゚)ξ「ここって、ここは……」
ξ゚⊿゚)ξ(夢で見た暗いメイロの中だわ!)
ξ゚⊿゚)ξ(右からも左からも、上からも下からも。
あっちこっちから太い木が伸びてきていて、ほんのちょっと先も見えない)
ズズズ...
(;;*゚ー゚)「!」
ξ;゚⊿゚)ξ「なに!? なにかが木から出てくる!」
( <―><―>)
( ―∀―)
ξ;゚⊿゚)ξ「モララー? ワカッテマス?」
|゚ノ ^∀^)「アナタたちを心配して、ここまできたんでしょうね」
ξ;゚⊿゚)ξ「眠ってるの? おかしなカタチの袋に閉じこめられてるわ」
|゚ノ ^∀^)「これは蝶のサナギです」
(;;*゚ー゚)「蝶の蛹……」パキッ
.
349
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:16:55 ID:5H281t8g0
|゚ノ ^∀^)「キミたちもさっきこうして夢の中に入ってきたんですよ」
|゚ノ ^∀^)「眠ってる子供達はみんな、夢の中で半透明の蛹になります」
( <―><―>)
( ―∀―)
|゚ノ ^∀^)「二人には申し訳ないな。 『ちいさなママ』とはいえ
まだまだ子供なのにね、夢の外の世界のことをまかせっぱなしで」
「〜♪」
ξ゚⊿゚)ξ「あっ! これ!」
|゚ノ ^∀^)「優しい声でしょう?」
(;;*゚ー゚)「この歌声は……」パキッ
|゚ノ ^∀^)「この子守歌を聞いてると、みんなここで眠ったままになってしまうんです。
だれかが起こして夢の外に帰してあげなくてはね」
( )っ『起きて』
(
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208803/112_hlxrqp.jpg
)
ξ゚⊿゚)ξ「……あれは先生だったのね」
|゚ノ ^∀^)「ママがいなくなって、教会の子供達が
おんなじ夢を見るようになって、すぐのことでしたね」
|゚ノ ^∀^)「ボクがここにいること、何度も伝えようとして、
でも出来なくて……ツンちゃんたちには心配かけてしまいましたね」
ξ゚⊿゚)ξ「いったいなにが起きてるの?」
.
350
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:17:49 ID:5H281t8g0
|゚ノ ^∀^)「それはボクにも分かりません」
|゚ノ ^∀^)「分かってるのは……ママがトビラの向こうにいってから、
なにもかも変わってしまったということだけ」
ξ゚⊿゚)ξ「先生はずっとここにいるの? こんなところで、ひとりぼっちで」
|゚ノ ^∀^)「ツンちゃん、ボクはひとりぼっちなんかじゃありませんよ。
夜になれば子供達が眠って、ここに来てくれますからね」
ξ゚⊿゚)ξ「でも」
|゚ノ ^∀^)「ときどきね、お話ししたりもするんですよ?
目を覚ましたときに子供達がそのこと忘れてしまうのが残念ですけど」
|゚ノ ^∀^)「でもいいんですよ、ボクがちゃんと覚えてるから」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、でも」
|゚ノ ^∀^)「それにね? これは本当にときどきですけど、
あの子とお話しすることもあるんですよ」
ξ゚⊿゚)ξ「あの子?」
|゚ノ ^∀^)「この森のまんなかに、もうひとりだれかがいるんです。
いまだに顔も名前も知らない子なんですけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「もしかして、その子がコモリウタを……」
|゚ノ ^∀^)「かもしれませんね。 あの子は泣いて謝るばっかりで、それ以外はなんにも」
|゚ノ ^∀^)「さてツンちゃん、アナタはもうあのお姉さんとお帰りなさい」
.
351
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:18:52 ID:5H281t8g0
ξ゚⊿゚)ξ「まだここにいたい」
|゚ノ ^∀^)「いけません。 モララーとワカッテマスは、
もうしばらくしたらボクが起こしておきますから」
ξ゚⊿゚)ξ「……はーい」
|゚ノ ^∀^)「ありがとうね? 会いにきてくれて嬉しかったですよ、ほんとに」
ξ゚⊿゚)ξ「!」
ξ゚⊿゚)ξ「待っててね、レモナ先生! きっと、
ううん、ゼッタイ! どうにかしてみせるわ!」
ξ゚⊿゚)ξ「シィ、シィ! いったん帰りましょ!」
「〜♪」
(;;* ー )
ξ゚⊿゚)ξ「シィ? どうしたの?」
「〜♪」
(;;*;ー;) ポロポロ
ξ゚⊿゚)ξ「泣いてるの?」
「〜♪」
|゚ノ ^∀^)「いってらっしゃい、ボクの子供達」
|゚ノ ^∀^)「……なんてね。 ボクだってまだまだ、子供なのにね」
|゚ノ ^∀^)っ「さあ、起きて」
.
352
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:19:46 ID:5H281t8g0
ξ- ⊿゚)ξ「ん……」
(。;;*゚ー゚)「…………」
(*^ω^)「ツン! シィ! 目を覚ましたんだおね!」
(;..'A`)「ったく、ヒヤアセかいたぜ……シィ? どうした?」
(;;*ぅー゚)「なんでもない」
ξ゚⊿゚)ξ「ここはどこ?」
リィンッ
(´・ω・`)「まったくもう! キミたちといると、ほんっと飽きないよね!」
(..'∀`)「だろぉ?」
(´・ω・`)「褒めてないんだけど?」
(..'A`)「分かってるんだけど?」
( ^ω^)「ここはシャキンとショボンのお部屋だお!」
(..'A`)「二人が眠っちまったあと、シャキンとショボンを呼んだんだ。
んでもって、戻ってきたらなんかモララーとワカッテマスまで寝てやがってさ」
(..'A`)「どうにかこうにかオマエさんたち四人をここに運んで、
シャキンはいつもの見回りに出かけて、いまにいたるってわけだ」
.
353
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:20:34 ID:5H281t8g0
( <―><―>) スウ...
( ―∀―) クークー
(;;*゚ー゚)「モララーとワカッテマス。 どうなるか分からないのに、
わたしたちのあとを追ってきてくれたのね」
(´・ω・`)「運ぶのは他の子供達に手伝ってもらったんだよ。
ボクとシャキン兄さんじゃあ、どうしたって運べやしないからね」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとう、みんな」
( ^ω^)「ツンとシィが起きたって、シャキンに教えてくるお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「待って!」
ξ;゚⊿゚)ξ「大切なお話しがあるの! ワタシたち、夢でレモナ先生に会ったの!」
( ^ω^)「先生に?」
(..'A`)「くわしく聞かせてくれ」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっとね、えっと!」
(;;*゚ー゚)「落ち着いて。 わたしも一緒に話す」
.
354
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:21:18 ID:5H281t8g0
(..'A`)「あの手はレモナ先生だったのか」
( ^ω^)「先生、元気だったお?」
ξ゚ー゚)ξ「いつもどおりだったわ。 みんなに心配かけてごめんなさい、ですって」
ξ゚⊿゚)ξ「なんにも変わってなくて、ワタシの覚えてる先生のまんまで、ほんとによかった」
(;;*゚ー゚)「怖かったのね、ツン」
(..'A`)「……ああ、いつもとおんなじでよかったな」
ξ゚⊿゚)ξ「どうにかしてママがいったトビラの向こうにいかなくっちゃ!」
( ^ω^)「トビラの向こうにママがいるんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「分かんない!」
(..'A`)「でもカギかかってるんだろ、どうやっていくんだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「分かんない! でもいかなくっちゃ!」
( ^ω^)「いますぐいくお! シャキンが戻ってくる前に!
モララーとワカッテマスが起きる前に!」
(..'A`)「シィのイノチも見つかってないのに、トビラのカギも探さないといけないのか」
(;;*゚ー゚)「そうよ、鍵だわ」
.
355
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:22:12 ID:5H281t8g0
(..'A`)「なにか分かったのか?」
(;;*゚ー゚)「鍵の場所を知っている、かわいくて頼もしい仲間がいるの」
(..'A`)「『鍵の場所を知ってる』? 『かわいくて頼もしい?』
……なんだかやな予感がするぜ」
リィンッ
(´・ω・`)「ふふんっ。待ってましたぁ!」
(;..'A`)「うへぇ。やっぱりやな予感だった」
(;;*゚ー゚)「どんなに悪くても汚くてもかまわない」
(´・ω・`)「さあ良い子のみんな、悪い子になる準備はいいかい?」
(*^ω^)ノ「はーい!」
ξ;゚⊿゚)ξノ「は、はいっ」
(;;*゚ー゚)「よくないみたい」
(..'A`)「いい子のお返事しやがって」
(´・ω・`)「おほんっ、大変結構! じゃあまずは、シャキン兄さんに
あどけなく『ごめんなさぁい』する練習しようか?」
.
356
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:23:42 ID:5H281t8g0
バタンッ‼︎
(´・ω・`)「ねっ? なかなかいい作戦だったでしょ?」
(..'A`)「オマエさんにしてはなかなかなんじゃないか?」
(´・ω・`)「どうして素直に褒められないかな?」
(..'A`)「へーへー、ショボンが手伝ってくれたらカンペキだったな」
(´・ω・`)「猫にだってできないことはあるよ」
(;;*゚ー゚)「信じられないわ。 いつもこんなことしてるの」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたの、シィ? なにかびっくりしてるみたい」
(´・ω・`)「そんなにびっくりすることかな?」
(´・ω・`)「手と足を切ってお仕置き部屋に閉じ込めるだなんて、
ママが僕や子供達によくやってたことじゃないか!」
(´・ω・`)「それにシャキン兄さんなら大丈夫だよ、知ってるでしょ?」
(´・ω・`)「この教会の子供達と僕達の傷や病は、
時間があれば絶対に治るようになってるんだから」
(;;*゚ー゚)「だからブーンがバラバラになっても、グチャグチャになっても治ってたのね」
(´・ω・`)「しばらくもしたら兄さんもキレイさっぱり元どおりさ」
( ^ω^)「シャキンはおハナがいいんだお。 追いつかれる前に、はやくいこうお!」
(´・ω・`)「こうでもしなくっちゃ、兄さんは鍵をくれたりしないもん。
きっとあの扉の鍵を開けたら、世界が終わるとでも思ってるんだろうよ」
.
357
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:24:43 ID:5H281t8g0
(;;*゚ー゚)
( ^ω^)
( ^ω^)(シィも、お空も、いまにも割れちゃいそうだお)
ヒラヒラ
( ^ω^)「おっ」
(..'A`)「ブーン? なに見てるんだ?」
( ^ω^)「シィのヒビからでてきた蝶々が」
(..'A`)「オマエさんにだけ見えるやつか?」
( ^ω^)「蝶々がボクたちとおんなじところに向かってるんだお」
ヒラヒラ
( ^ω^)「あっ」
(´・ω・`)「ママの扉についた!」
( ^ω^)「トビラの向こう側にいっちゃったお」
(..'A`)「それってつまり、どういうことだ?」
(;;*゚ー゚)「ツン、鍵を」
ξ;゚⊿゚)ξ「開けるわ! せーのっ」
ガチャリッ
ギィ...
(
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208781/22_jpvbtc.png
)
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ……?」
.
358
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:25:33 ID:5H281t8g0
( ^ω^)「お外へのトビラじゃないのかお?」
(´・ω・`)「下におりられるみたい」
(;;*゚ー゚)「地下室ね」
(..'A`)「『チカシツ』? ママの部屋か?」
(´・ω・`)「中はまっくらだ。だれか灯りを持ってきて」
(..'A`)「たまには自分で持ってこいや」
(´・ω・`)「このかわいい肉球に言ってるの?」
( ^ω^)「持ってきたおー!」
トントン
トントン
( ^ω^)「ねぇ、知ってるお?」
(;;*゚ー゚)「なに」
( ^ω^)「ママのお部屋では息をしたらいけないんだって」
ξ゚⊿゚)ξ「どうして?」
( ^ω^)「『セイイキ』だから」
(..'A`)「だれがそんなこと言ったんだ?」
( ^ω^)「うんとね、ワカッテマス!」
(´・ω・`)「そういえば兄さんがワカッテマスにそんなこと言ってた気がする」
ξ゚⊿゚)ξ「知らなかったわ」
.
359
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:26:25 ID:5H281t8g0
トントン
トントン
(´・ω・`)「階段はここでおしまい」
(..'A`)「ここがママの部屋か?」
( ^H^)「むぐっ」
(;;*゚ー゚)「なにしてるの」
(..'A`)「シィの言うとおりだ。 なにしてるんだ?」
( ^H^)「息していいのかお?」
(´・ω・`)「あたりまえ!」
ξ゚H゚)ξ「えっ」
ξ゚⊿゚)ξ プハッ
ξ゚⊿゚)ξ「そうよそうよ、いいに決まってるでしょっ」
(;;*゚ー゚)「きっと子供達をここに入れないための嘘だったのね」
(´・ω・`)「ママはどこかな?」
ξ゚⊿゚)ξ「よく分からないものばっかりね、これはなにに使うのかしら?」
(;;*゚ー゚)「知らなくていい。 美容と拷問の道具ばかり」
(..'A`)「本がこんなにたくさん。 ああくそっ、文字が読めたらな」ペラッ
( ^ω^) ペラッ
(;;*゚ー゚) ペラッ
(;;*゚ー゚)(?)
(;;*゚ー゚)(本の間に何か挟まってる。どうやら手紙みたいだけど)
(;;*゚ー゚) ペラッ
.
360
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:26:56 ID:5H281t8g0
「親愛なる友人へ
ずっと留守みたいだったから手紙を書いたよ。
紙じゃあ貴女の顔を見られないのが残念だ。
貴女はとても美しい人だからねぇ。
実は聞きたい事があるのさ。
これは極秘中の極秘なんだけれども。
会って話がしたいんだ。
扉の鍵を開けてくれないか?
どうせ中にいるんだろう」
.
361
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:27:43 ID:5H281t8g0
「親愛なる友人へ
私からの手紙が届いてないのかな?
極秘事項だが事は一刻を争うもんでね。
黄色の犬と青色の猫を見なかったかい?
数日前、阿呆がうちの施設から盗んだらしくてね。
やんなっちまうよ。
もうすぐ二匹を始末する予定だったってのに。
それが正義の味方である私の仕事だからね。
なぁ。
もしも見つけたら捕まえといてくれ。
代わりにぶっ殺してくれても構わない。
犬と猫に何を言われても、耳を貸してはいけないよ。
色のある獣は人を惑わす、悪魔だからね。
返事を待ってる」
.
362
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:28:43 ID:5H281t8g0
「親愛なる友人へ
扉の鍵を開けてくれなかったね?
ならせめて、手紙の返事くらい寄越したらどうだい?
まいったな。今日お役人さんがうちに来たよ。
街で異形の子供らが次々に攫われてるらしい。
貴女も気を付けた方がいい。
とっくに大人だとはいえ、下半身が百足の異形なのだから。
それに……。
貴女は神様になんて祈りやしないんだろう?
いずれ役人もこの教会を見つけるだろうよ。
お国の役人より先に、色のある獣を見つけなくては。
誰かに悪用されてしまう前に。
もしも見かけたらすぐに連絡するように」
.
363
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:29:22 ID:5H281t8g0
「親愛なる──
なぁ。
そろそろ返事をくれてもいいんじゃないかな?
それとも疚しいもんでも隠してるのかい。
例えば【色のある獣】だとか、【異形の子供】だとか」
.
364
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:30:22 ID:5H281t8g0
「親愛なる友人へ
昨日の手紙は冗談さ!
怒らないでくれるよね?
心配で心配で堪らないんだよ。
美しい貴女が誑かされてやしないかってね。
色のある獣……あの悪魔に。
悪魔と契約した者は悪魔になってしまうんだ。
知ってるだろう?
過去、色のある獣の願いを使ってただの人間達が起こした、事件の数々を。
誰かの願いで大量の人間が洗脳されて死亡した。
誰かの願いでとある種族の生き物が絶滅した。
誰かの願いで異形を持った子供が生まれるようになった。
誰かの願いで蘇生と破壊を持った双子が生まれた。
(読みきれないほど書いてある)
じゃあね。
明日こそは返事くれるよね?」
.
365
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:30:47 ID:5H281t8g0
「貴様こそが悪魔だ!!!」
.
366
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:31:19 ID:5H281t8g0
「████!!(文字が汚くて読めない)
ふざけるな!!この████!!(文字が汚くて読めない)」
.
367
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:32:44 ID:5H281t8g0
「親愛なるクソアマへ
貴様がした事を知ってるぞ
やってくれたな、盗っ人め
ただちに私達の病院に【蘇生の欠片】を返せ
【色のある獣】を返せ
【異形の子供】を返せ
醜い百足の化物め!
貴様なんぞが友人であるものか!
とんだ笑い話だ!
化物が人間の美しさについて勉強してるだなんて!
色の獣に永遠の若さでも望むつもりか?
そんなにも醜い姿のままで!」
.
368
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:33:56 ID:5H281t8g0
「親愛なる親友へ
まずは昨日の事を謝らせてください。
素敵な御手紙ありがとうございます。
ようやく返事をくれましたね。
美しい貴女とお話し出来て嬉しいです。
本当に、本当に。
ねぇ、貴女。
御手紙に書いてあった願い事は。
あれを本当に願う気ですか?
どうかお願いです。
貴女が醜い【異形の子供達】を連れて、外界から隔離された空間を作るのは止めません。
どうかその場所に【蘇生の欠片】を持っていくのはやめてください。
破壊の欠片と同じ分だけ、蘇生の欠片が必要なんです。
どちらかひとつ足りないだけで、欠片はもう片方の力に勝ってしまいます。
世界の均衡はたやすく崩れてしまいます。
どうかどうか、お願いです。
もしも、貴女が【蘇生の欠片】を持ち出して、
世界が【破壊の欠片】の力に満ちてしまったならば、
この世界は、」
(;;*゚ー゚) ペラッ
ξ゚⊿゚)ξ「シィはなにを読んでるの?」
(;;*゚ー゚) 「なんでもないわ」
( ^ω^)「みんなー!こっちこっちー!」
(´・ω・`)「部屋の奥にもうひとつ扉があるんだ」
.
369
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:35:18 ID:5H281t8g0
ξ゚⊿゚)ξ「カギかかってる?」
(´・ω・`)「ドクオ、扉を開けてよ」
(..'A`)「自分でやりなさい」
(´・ω・`)「むっ」
(#´・ω・`)「フーッ、フーッ」ガチャガチャ
ξ;゚⊿゚)ξ「ああっ! ワタシが開けるわ!」
ガチャッ
ギィ...
( ^ω^)「わあ……」
ξ゚⊿゚)ξ「ここ、見たことあるわ」
(;;*゚ー゚)「レモナの夢の中で見た場所」
(..'A`)「ああ。 夢で見た、緑のメイロだ」
ドクン
ドクン
ξ゚⊿゚)ξ「この音はいったいどこから?」
(´・ω・`)「まるで木のイノチの音みたい」
「〜♪」
(;;*゚ー゚)「ああ、この歌声……」
ξ゚⊿゚)ξ「まちがいないわ、コモリウタ!」
( ^ω^)「いつも夢で聞いてる歌だお!」
ξ゚⊿゚)ξ「レモナ先生が言ってたわ!
この木のまんなかに、コモリウタを歌ってる子がいるのよ!」
(..'A`)「コモリウタ?」
.
370
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:36:10 ID:5H281t8g0
ξ゚⊿゚)ξ「その子の歌をとめれば、先生が目を覚ますにちがいないわ!」
(;;*゚ー゚)「あの歌は、あの声は」
(..'A`)「シィ? どうした?」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたの?」
(..'A`)「様子がおかしいんだ」
( ^ω^)「よーし、まんなかを目指していくおー!」
(..'A`)「しかしこれは、ひどいメイロだぜ?」
(´・ω・`)「待って待って、くれぐれもはぐれないでよね?
迷子になった君達を探すのは僕なんだから!」
( ^ω^)「みんなでいれば大丈夫だお!」
(´・ω・`)「みんなで迷子になるなんて、最悪の中の最悪だ!」
(;;*゚ー゚) パキッ
ヒラヒラ
( ^ω^)(シィのキズから蝶々が!)
( ^ω^)「みんな! ボクについてきてお!」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたの?」
( ^ω^)「蝶々だお!」
(..'A`)「ブーンにだけ見える蝶々か!」
( ^ω^)「追いかけなくっちゃ! 見うしなっちゃうお!」
(´・ω・`)「どういうこと? 説明してくれる?」
.
371
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:37:02 ID:5H281t8g0
タッタッタッタッタッ
( ^ω^)「蝶々がいったところに!」
タッタッタッタッタッ
( ^ω^)「蝶々が消えるところに!」
タッタッタッタッタッ
( ^ω^)「きっと、そこに、シィのイノチが!」
ヒラヒラ
フワッ
( ^ω^) ピタッ
( ^ω^)(蝶々が消えたお)
( ^ω^)(ううん。 あの中に入っていったんだお)
( ^ω^)(あの、光っててすけてる、へんてこなカタチをした、木の中に)
ドクン
ドクン
(*^ω^)「キラキラしてキレイだお!」
(..'A`)「あれがこの木のまんなかか?」
ξ゚⊿゚)ξ「レモナ先生が言ってた蝶のサナギみたいだわ」
(´・ω・`)「知らなかったや、教会の下にこんなところがあっただなんて」
(..'A`)「なんだあれ?」
( ^ω^)「おっ?」
(´・ω・`)「!」
(;;*゚ー゚)「!」
.
372
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:38:21 ID:5H281t8g0
( ^ω^)(光ってる木の、蝶のサナギの、まんなかに、なにかが)
( ^ω^)(小さく丸まった、まるで人みたいな、カタチをした、なにかが)
ドクン
ドクン
( )「〜♪」
( ^ω^)(あれは)
(*- -)「〜♪」
( ^ω^)「シィ?」
(;;*゚ー゚)
(..'A`)「シィが、ふたり?」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしてサナギの中のシィがコモリウタを?」
(*- -)「〜♪」
( ^ω^)「おーい、おはようだおー! 起きておー!」
ξ゚⊿゚)ξ「起きなさーい! もうひとりのシィー!」
(..'A`)「だめだこりゃあ。 たたいてもゆすっても、サナギの中までは届かないぜ」
(´・ω・`)っ「もうこの蝶の蛹を破るしか……」
(;;* ー ) バッ
(..'A`)「なんだなんだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「いきなりどうしたの?」
( ^ω^)「シィ?」
( ^ω^)(こんなシィ、はじめてだお)
.
373
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:39:22 ID:5H281t8g0
(;;* ー ) ブチブチッ
( ^ω^)(夢中でサナギを壊してる)
( ^ω^)(自分の手がよごれることも、キズつくことも考えてない)
( ^ω^)(ボクたちがいるってことすら、忘れちゃったみたいだ)
(;;* ー ) ブツンッ
( ^ω^)(見えた)
( ^ω^)(サナギの中から、もうひとりのシィが)
(;;* ー ) ズルッ...
(*- -)「〜♪」
(..'A`)「眠りながら歌ってるのか……」
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、ひょっとして。 シィのイノチって、ひょっとして!」
( ^ω^)「あっ!」
(;;*゚ー゚)っ パキパキ
( ^ω^)(シィのヒビが体ぜんぶに広がっていく)
(;;*゚ー゚)っ パラパラ
( ^ω^)(肌がこなごなになって、はがれ落ちていく)
ヒラヒラ
ヒラヒラ
( ^ω^)(なにが起きてるんだお?)
( ^ω^)(シィからはがれたカケラが、蝶のカタチになって、
つぎつぎと、もうひとりのシィの体に入っていく)
( ^ω^)「おう……?」
(;..'A`)「げほげほっ! うわっ、なんだこれ!」
.
374
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:40:20 ID:5H281t8g0
ヒラヒラ
ヒラヒラ
( ^ω^)「なんでボクたちの口から蝶が出てきたんだお?」
(;..'A`)「知るもんかよ、いつのまにオレとブーンの体の中に入ったんだ」
( ^ω^)「もうひとりのシィの方に飛んでいくお!」
ヒラヒラ
ヒラヒラ
(;;* ー )
(*- -)「〜♪」
ξ;゚⊿゚)ξ「シィ!」
(´・ω・`)「危ない! 離れて!」
( ^ω^)(たくさんの桃色の蝶にかこまれて、まるでサナギみたいで)
( ^ω^)(ああどうしよう! ふたりのシィが見えなくなっていく!)
ヒラヒラ
ヒラヒラ
(*- -)「〜♪」
(;;*;;ー;;)「ああ」
(;;*;;ー;;)「思い出したわ」
(;;*;;ー;;)「ぜんぶ」
.
375
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:40:57 ID:5H281t8g0
パリンッ...
.
376
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:42:47 ID:5H281t8g0
「むかしむかしあるところで、二人の少女が手をつないで生まれました」
「二人の少女は他の人とはちょっぴり変わってるところがありました」
(あの日もあなたは笑っていた)
(無理やり連れて来られて、体を縛られながら、涙をこらえながら、唇を震わせながら)
(その声は恐怖と慈愛に満ちていた)
(*^ー^) ニコッ
「一人はただそこにいるだけで、周りに癒しと蘇生の力をふりまきました。
一人はただそこにいるだけで、周りに腐りと破壊の力をふりまきました」
「蘇生の力を持つ少女は『魔女』と呼ばれました。 蘇生の力を持つ少女は『怪物』と呼ばれました」
(* ー )『大丈夫、なのですっ……』
「けれども、大丈夫です。 二人でいれば、大丈夫です」
「二人でいれば、お互いの力をかき消すことができるのです。
二人でいれば、二人はなんでもない少女でいられるのです」
(* ー )『███のお花……きっと咲きます……!』
「『幸せを分け合いましょう、みんなで幸せになりましょう』と、蘇生の少女は言いました」
「自分の力を困ってる誰かのために使うことをいといませんでした。
世界中のだれもかれもが、蘇生の少女のことを知りました」
(* ー )『綺麗なお水をあげてくださいね、温かい光をあげてくださいね。
いっ、いっぱい声をかけて、いっぱい笑って……。それから、それから……』
「人々は蘇生の少女の草花を育て、傷や病を治し、命の時を遅くさせる力を欲しがり、やがて争うようになりました」
「あるとき人々は気付きました。 みんなが幸せになる方法を。 そうです、争う必要なんてなかったのです」
(*;ー;)『きっと、とっても、綺麗なのです……! どんなお花が咲いたか、あとで教えてくださ……
「『幸せを分け合いましょう!』『みんなで幸せになりましょう!』」
「『幸せを分け合いましょう!』『みんなで幸せになりましょう!』」
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ
(* ー )『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああああああああああああ!!』
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ
「『幸せを分け合いましょう!』『みんなで幸せになりましょう!』」
「『幸せを分け合いましょう!』『みんなで幸せになりましょう!』」
377
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:43:49 ID:5H281t8g0
「人々は幸福を何十にも何百にも細かく切り刻んで、みんなで分け合いました」
「そのときです。幸福のひとつひとつが、美しい蝶の羽に形を変えました」
「まるで神話のようだと、人々は腹を抱えて笑いました」
( )((シィ))
( )((シィ、シィ、シィ))
( )((花は蕾のまま枯れたわ、蝶は蛹のまま死んだわ))
( )((あなたが、いないから))
「こうしてみんな、幸せになりましたとさ」
「めでたしめでたし」
( )(そうよ、私は)
( )(世界中に散りばめられてしまった、貴女の欠片を探していたんだわ)
( )(そして……やってはいけないことをしたんだわ)
( )(シィの欠片の最後のひとつが捕らえられている、この教会の空間に入るために。
ここは誰かの願いで守られていた場所だから、願いに守られた人しか入れなかったから)
( )(私が貴女ならば中に入れるから。
あのとき私の破壊と正反対の蘇生を持つ、シィの欠片を自分の体にまとったんだわ)
( )(あのとき……)
.
378
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:44:37 ID:5H281t8g0
ギュッ...
ドロッ
( )((お互いの力を拒絶して、私の体が溶けていく))
ドロドロ
( ;;)((からっぽの肉の塊になっていく))
ドロドロ
(;;;;)((貴女の欠片だけは綺麗ね。蝶の羽の形をしてるの))
ビキッ
ビキビキッ...
バリィンッ‼︎
( ^ω^)((お空が、割れて))
( ^ω^)((なにかが。 おっきな、なにかか))
( ^ω^)((上から、ぼくに。 おっこちて))
( ^ω^)
( ^ω^)『…………あっ』
ドチャッ‼︎
.
379
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:45:34 ID:5H281t8g0
((自分の形をなくしても))
(*゚ー゚)『なまえなんていらないわ』
ξ゚⊿゚)ξノ『デレ!」
(*゚ー゚)『どうして』
((名前をなくしても、記憶をなくしても))
(..'A`)ノ『ミセリ』
(*゚ー゚)『わたしなんかのために、あなたたちは』
((世界をなくしてもいいわ))
(*^ω^)ノ『シィ!』
(。*゚ー゚) ポロッ
((私にはシィ、貴女が残ればそれでいいの))
(;^ω^)『泣かないで、泣かないでお』
(。*゚ー゚) ポロポロ
((からっぽの中に、貴女がいてくれれば))
((シィ))
(;;*;;ー;;)(……だめね)パラパラ
(;;*;;-゚)(貴女が命をかけて守ってくれた『私』のことまで忘れちゃうだなんて)パラパラ
(;;゚;;-゚)(私は)パラパラ
(#゚;;-゚)(私の本当の名前は)
.
380
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:46:31 ID:5H281t8g0
(*- -)
(*゚ー゚) スッ
(#゚;;-゚)
(*゚ー゚)「ディ、ちゃん?」
(#゚;;-゚)
(。#゚;;-゚)「あっ……」
ポロッ
(。#゚;;-゚)「ああ、あ……」
ポロポロ
(*゚ー゚)「大丈夫、ですか……? 泣いてるのですか……?」
(。# ;;- )「シィ!シィ、シィ! シィ……!!」
ギュッ!!
(。# ;;- )「うっ……ううう……!」
(*゚ー゚)「よしよし。 ディちゃん、大丈夫ですよ」
(。# ;;- )「う゛っ、うううううう……」
(。# ;;- )(貴女はいつもそうね。 なんにも変わってないわ。 なんにも、なにひとつ)
(*゚ー゚)「ディちゃん、よかった……、また会えたんですね……」
(。# ;;- )(私ね、世界中を旅したのよ。 貴女の欠片を探して。 もう一度、会いたくて)
(。# ;;- )(ぜんぶ集めるのに、100年かかってしまったけれど)
(*゚ー゚)「ごめんなさいね、私、弱虫だから。 また、助けてくれたんですよね?」
(*^ー^)「ありがとう、ディちゃん」
(。# ;;- )「あああっ……あ゛ああああああっ……っ、……あああああ……」
.
381
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:47:57 ID:5H281t8g0
ヒラヒラ
ヒラヒラ
( ^ω^)「おっ!」
ξ゚⊿゚)ξ「見て! 蝶が消えていくわ!」
(..'A`)「あそこにいるのは……」
(。#゚;;-゚)
(*゚ー゚)
(#ぅ;;-゚)「シィ、どこも足りないところはない?
貴女はぜんぶ揃ってる? 傷ひとつない?」
(*゚ー゚)「うんっ。 ディちゃんが頑張ってくれたおかげなのです!」
(*゚ー゚)「ディちゃんこそ、お耳が。 それに、傷だらけなのです。
まさか欠片を外の世界に? 探しにいかなくっちゃ!」
(#゚;;-゚)「どこにもいかないで。 貴女は何も心配しなくていいの」
(*^ω^)「シィだ!」
ξ*゚⊿゚)ξ「シィー!!」
(..'A`)「おーい、シィー!」
(´・ω・`)「ああ、待ってっ」
バタバタ
バタバタ
(#゚;;-゚)「!」
(*゚ー゚)「?」
.
382
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:48:59 ID:5H281t8g0
(*^ω^)「こっちがボクたちのシィだおね?」
ξ*゚⊿゚)ξ「ようやく会えたわ!」
(..'∀`)「それがほんとのシィのカタチか」
(#゚;;-゚)「どう、して、私だって?」
(*^ω^)「分かんないけど、分かるんだお!」
ξ*゚⊿゚)ξ「分からないわけないでしょ、あんなに一緒だったんだから!」
(..'∀`)「オマエさん、こんな声してたのかぁ」
(#゚;;-゚)「……どうして」
(*゚ー゚)「まあ。 かわいい子供達ですね」
(*^ω^)「ブーンだお! はじめまして、イノチ!」
ξ*゚⊿゚)ξ「はじめまして、シィのイノチ! ワタシはツンよ!」
(..'A`)「いやシィのイノチにも名前はあるだろ。
ああ、オレの名前はドクオだぜ」
(´・ω・`)「僕はショボン。 よろしくね、イノチさん」
(*゚ー゚)「イノチ?」
(#゚;;-゚)「聞かないで。 あとで話すわ」
(*゚ー゚)「?」
.
383
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:49:57 ID:5H281t8g0
(#゚;;-゚)「紹介するわ、こっちが本当のシィ」
(*゚ー゚)「はじめまして、『シィ』っていいます。
えへへ、みんなと仲よくできたら嬉しいのです」
(#゚;;-゚)「本当の私は『ディ』よ」
(*^ω^)「よろしくだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「シィがディ?」
(..'A`)「ややこしいな」
(#゚;;-゚)「きっと私が体にまとっていたシィの欠片を
シィに返したから、本当の私の形が見えるようになったんだわ」
( ^ω^)「?」
ξ゚⊿゚)ξ「?」
(..'A`)「オレたちの口からシィの蝶が出てきたのは?」
(#゚;;-゚)「私が形をなくして中の世界に来たとき、
ブーンとドクオを潰してしまったでしょう」
(#゚;;-゚)「きっとそのとき、シィの欠片を飲み込んでしまったのね」
( ^ω^)「?」
ξ゚⊿゚)ξ「?」
(..'A`)「あー……」
(´・ω・`)「なるほどなるほど、分かった分かった」
.
384
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:50:50 ID:5H281t8g0
(´・ω・`)(結局、ママなんてどこにもいなかったな)
(*^ω^)「はやいとこみんなのとこに戻ろうお!」
(..'∀`)「けけけ。 ちいさなママどものびっくりした顔が目に浮かぶぜ」
(´・ω・`)(……まっ、これはこれでいっか)
ξ゚⊿゚)ξ「ディとシィは、ずっとこの教会にいるわよね?」
(#゚;;-゚)
ξ゚⊿゚)ξ「いなくなったりなんか、しないわよね?」
(#゚;;-゚)
トクン...
トクン...
( ^ω^)「あれ?」
(..'A`)「どうした?」
( ^ω^)「木のイノチの音が小さくなってるお」
ξ゚⊿゚)ξ「言われてみれば。 いまにも消えちゃいそう」
(..'A`)「いったいぜんたい、なんの音なんだ?」
(*゚ー゚)「!」
(*゚ー゚)「ディちゃん、あの子は?」
(#゚;;-゚)「誰」
(*゚ー゚)「私が目を覚ましたということは、あの子は……」
ゴゴゴゴゴゴ...‼︎
( ^ω^)「おうっ?」
(;..'A`)「なんだこれ? 地面がゆれてるぞ!」
.
385
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:52:09 ID:5H281t8g0
グラグラッ
(;*゚ー゚)「っ」
(#゚;;-゚)「シィ、大丈夫?」
(;*゚ー゚)「大丈夫ですよ。 私より子供達を先に」
ξ;゚⊿゚)ξ「きゃっ!?」
(#゚;;-゚)っ「ツン、手をとって」
ξ;゚⊿゚)ξ「だ、大丈夫! ゆれてるのとまったみたい!」
(..'A`)「なんだったんだ?」
( ^ω^)「地面がグラグラするなんて、こんなのはじめてだお」
(` ω ´)「子供達!」
( ^ω^)「おっ?」
(;´・ω・`)「ひっ」
(`・ω・´)「なんてことをしたんだ!」
(..'A`)「シャキンだ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ごめんなさぁい!!」
(`・ω・´) グチャ...
(;´・ω・`)「に、兄さん、まだ手足がちゃんとくっついてないよ、そんな無理に」
(`・ω・´)「ショボン、お兄ちゃんに言うことは?」
(;´・ω・`)
(;´ ω `)「……ごめんなさい」
.
386
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:53:16 ID:5H281t8g0
(`・ω・´)「あとでゆっくり話そう」
(;*゚ー゚)「ひどい怪我……、ちょっと見せてください」
(`・ω・´)「君は、ママの」
(*゚ー゚)っ フワッ
(*゚ー゚)「よっぽどひどいめに遭ったのですね。 これでもう大丈夫ですよ」
(`・ω・´)「……すまない」
(#゚;;-゚)「シャキン、そういうときは『ありがとう』よ」
(`・ω・´)「……そうだね、ありがとう」
(*^ω^)「シィ、すごいお! キズを治しちゃったお!」
(*゚ー゚)「私、ちょっとだけ傷や病を治せるんです。
だからなにかあったら言って欲しいです!」
(#゚;;-゚)「『ちょっとだけ』じゃないわ」
(;*゚ー゚)「ちょっとですよう。 ディちゃんのことだけは治せないのですもの」
ゴゴゴゴゴゴ...‼︎
ガタガタッ‼︎
(`・ω・´)「まずいぞ! 今にも天井が崩れそうだ!」
(;*゚ー゚)「わ、わっ! はやく地下室から出なくっちゃ!」
(#゚;;-゚)「子供達、先にいって。 誰も置き去りにしない」
(;^ω^)「おん!」
ξ;゚⊿゚)ξ「はいっ」
(;..'A`)「お、おう」
.
387
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:54:09 ID:5H281t8g0
タッタッタッタッタッ
(`・ω・´)「こっちだ! みんな頑張れ! もうすぐ外だ!」
バタンッ‼︎
(*^ω^)「ついたお! これでもう、だいじょう……」
( ^ω^)「ぶ……?」
ゴゴゴゴゴゴ...‼︎
(..'A`)「大丈夫なもんかよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「ね、ねぇ、分からないの。 どうしてかしら?」
ξ゚⊿゚)ξ「どうして、お空が、割れてるの?」
(´・ω・`)「……僕が地下室にママを探しにいこうなんて言ったせいだ。
バカみたい、結局ママはいなかったのに」
(#゚;;-゚)「私のせいね。 私が外の世界から無理やりここに来たから」
(;*゚ー゚)「それは違うのです! 私が目を覚ましたからなのです!」
(`・ω・´)「君達はなんにも悪くないさ! ただ、ママが約束を守っただけだ!」
(´・ω・`)「……兄さん?」
ガラガラッ‼︎
(`・ω・´)「気をつけろ! 床が崩れるぞ!」
(;´・ω・`)「わわ、わっ!」
.
388
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:55:15 ID:5H281t8g0
ガラガラッ‼︎
(;*゚ー゚)「あっ」
(#゚;;-゚)っ「シィ!」
グイッ
(;*゚ー゚)「ありがとう、助かったのです」
(#゚;;-゚)「貴女が無事ならそれでいい」
(;*゚ー゚)「床に大きな穴が空いちゃったのです」
(#゚;;-゚)「危うく地下室に逆戻りするところだったわね」
(`・ω・´)「なんてこった! ショボンだけ穴の向こうにいるぞ!」
( ^ω^)ノシ「ショボーン! 聞こえるかおー!」
(..'A`)ノシ「大事ないかー?」
(´・ω・`)ノシ「聞こえるよー! こんなんへっちゃらだよー!」
(`・ω・´)「こっちに来れそうかー?」
(´・ω・`)「ちょっと別の部屋を回れば戻れそうー! すぐいくから待っててー!」
タッタッタッタッタッ
ξ;゚⊿゚)ξ「でも、でも! 空が割れたからって、それがなんだっていうの?」
( ^ω^)「そうだおね。 わるいことなんか、起きないおね?」
(.. A ) フラッ
(#゚;;-゚)っ「だめ」
(.. A ) ドサッ
( ^ω^)
( ^ω^)「ドクオ?」
(;.. A )「はあ、はあ……」
.
389
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:56:15 ID:5H281t8g0
( ^ω^)「どうしたんだお? どっかいたいのかお?」
(;.. A )「ははっ……なんか、チカラ入んねー……、ど、なってんだ……?」
(;^ω^)「ドクオ、その手、どうしたんだお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「どうして、右手が干からびて……?」
(#゚;;-゚)「……老いてる」
(;*゚ー゚)「!」
(;.. A )「う、う……」
(;*゚ー゚)っ「お願い、戻って!!」フワッ
(;..'A`)「!」
ξ;゚⊿゚)ξ「よ、よかった……」
(;..'A`)「も、戻った! オレ、どうなってた?」
(;^ω^)「手が細くなって枯れてたお!
それがどんどん、体に広がっていったお!」
(`・ω・´)「事情が変わったぞ! はやく地下室に戻るんだ!
あそこにはママがいる、少しはしのげる!」
( ^ω^)「ママが?」
(..'A`)「チカシツに?」
タッタッタッタッタッ
(´・ω・`)「ただいま」
(`・ω・´)「おかえり」
(#゚;;-゚)「子供達が教会に残ってるわ。 置いていくつもりなの」
.
390
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:57:12 ID:5H281t8g0
(*゚ー゚)「そんな、助け、にっ」
(* ー ) フラッ
(#゚;;-゚)っ ガシッ
(#゚;;-゚)「シィ、怪我は」
(;*゚ー゚)「ごめんなさい、まだ体がいうことをきかなくて」
(#゚;;-゚)「無理しないで」
(`・ω・´)「長いこと眠ってたせいだろうね、
まだ満足には体を動かせないだろうさ」
ξ゚⊿゚)ξ「!」
ξ゚⊿゚)ξ ダッ
( ^ω^)「ツン!? 待ってお!」ダッ
(;..'A`)「バカふたりっ! どこいくんだ!?」ダッ
(´・ω・`)「ああもう! 僕が連れ戻してくる!」
(`・ω・´)「待つんだショボン! お前は地下室にいきなさい!」
(#´・ω・`)「子供扱いしないでくれる!? 僕だってみんなよりお兄さんなんだから!」
(`・ω・´)「ショボン!! 君にしかできないんだ!!」
(´・ω・`)「……?」
(`・ω・´)「ショボン、ママは地下室にいる。」
(`・ω・´)「君はずっと一緒にいただろう、あの部屋に入った瞬間から、
出ていく瞬間まで、ずっと一緒に」
(´・ω・`)「……えっ?」
トクン...
トクン...
.
391
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:58:22 ID:5H281t8g0
( )っ「起きて」
( ・∀・) パチッ
( <◯><◯>) パチッ
( ・∀・)「ワカッテマス、起きてるかい? この天井はどこだろうね?」
( <◯><◯>)「はあぁ……話しかけないでください。
シャキンさんとショボンくんの部屋ですね」
( ・∀・) ムクッ
( ・∀・)「枝の生えた少年と、鱗の生えた少年と、尻尾の生えた少女は?」
( <◯><◯>)「ブーン少年とドクオ少年とツン少女です。
いい加減に子供達の名前を覚えなさい」
( ・∀・)「覚えようとしても覚えられないのさ。
そういうキミこそ、子供達のカタチを覚えてあげたまえよ」
( <◯><◯>)「ザンネンながら、ワタシもどうしたって
覚えられないんですよ。 不思議なことに」
( ・∀・)「まあ、焦ることはないさ。 これだけやって
覚えられないなら、きっとそこだけ成長するのがおそいんだろうよ」
( <◯><◯>) ベシッ
( ・∀・)「いま杖でぶったかい?」
( <◯><◯>)「いいえ。 蹴ったんです」
( ・∀・) ベシッ
( <◯><◯>)「いたいですよ、仕返しなんてサイテイです」
( ・∀・)「あはははは! 一回は一回というやつさ!
これでウラミッコなしにしようじゃないか!」
( <◯><◯>) ムクッ
( <◯><◯>)「アナタと話していてもつまらない。
はやくあのイタズラっ子たちを探しましょう」
.
392
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 21:59:23 ID:5H281t8g0
ザワザワ
ザワザワ
( ・∀・)「やややっ? なにやらお庭がさわがしいぞ?」
( <◯><◯>)「いったいなにを見上げてるんでしょうか」
「見て見て! あんなのはじめて見た!」
「ちいさなママに知らせなくっちゃ!」
「あっ! あそこにちいさなママがいるよ!」
( ・∀・)「やあやあ! みんなで集まってなにしてるんだい?」
ビキビキ
o川*゚ー゚)o「ねーねー! ちいさなママー!」
( ・∀・)「なんだい?」
ビキィッ
o川*゚ー゚)o「どうしてお空にヒビが入ってるの?」
( ・∀・)
バリィンッ‼︎
(*><)「お空が割れたんです! キレイですね、ポッポちゃん!」
(*‘ω‘ *)「ぽっぽー!」
.
393
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:00:32 ID:5H281t8g0
ゴゴゴゴゴゴ...‼︎
(;><)「ぎゃあっ!?」
⊂(*‘ω‘ *) グイッ
(;><)「あ、ありがとうなんです! ポッポちゃん!」
( <◯><◯>)「訳がわかりませんね。
空が割れたかと思えば、お次は大地がゆれるだなんて!」
(;-_-)「ひぃひぃー! お、お、お、お助けをー!」
川⁂ 々゚)「おー、おー、ゆれるー?」
( ・∀・)「みんな教会の中に入りたまえ!」
「全員、そのまま動かないでください!」(<◯><◯> )
( ・∀・)「同時に話さないでくれたまえ!」
( <◯><◯>)「それはこちらのセリフです」
从; ゚∀从「ママ! ママ! 助けてくれ!!」
( <◯><◯>)「ハインリッヒ少年、その手はどうしたんです?」
从; ゚∀从「さわっても、つねっても、なんにもかんじねーんだ!」
( ・∀・)「枯れてる……?」
从; ∀从「ママ、ママ! オレの手……ゴホゴホッ、ひっ、息がっ……」
(;<◯><◯>)「ハインリッヒ少年! 許しませんよ、しっかりしなさい!」
ゴゴゴゴゴゴ...‼︎
(;・∀・)「ああっ! また地面が!」
(;´_ゝ|★)「オトジャ、無事か?」
(☆|<_`;)「アニジャ、大丈夫か?」
.
394
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:01:22 ID:5H281t8g0
(;<◯><◯>)「シャキンさんを呼んできなさい!」
「羽の生えた少年を運ぶんだ!」(・∀・;)
(;<◯><◯>)「…………」
(;・∀・)「…………」
(;<◯><◯>)「いっそワタシとアナタは仲がいいのかもしれませんね」
(;・∀・)「おもしろい! キミでもつまらないジョーダンを言うんだね」
( <◯><◯>)「ええ!」
( ・∀・)「よし!」
( <◯><◯>)「全員! ふたりのちいさなママに注目しなさい!」
( ・∀・)「動けない子には動ける子が手を貸してあげたまえ!」
( <◯><◯>)「ちいさなママ、手を貸してください」
( ・∀・)「一緒に乗り越えるんだ、ちいさなママ!」
.
395
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:02:14 ID:5H281t8g0
タッタッタッタッタッ
(;^ω^)「みんなー! こっちだおー!」
(;..'A`)「ママのトビラの向こう側にいくぞー! あそこにはママがいるんだー!」
( ・∀・)「聞いたかい? みんなオレについてきたまえ!」
( <◯><◯>)「ワタシはイチバンうしろから。
ビロード、ハインリッヒ少年に肩をかしなさい」
(;><)「はあ、はあ……わ、かっ、……くん……」
( <◯><◯>)「ビロード?」
( ) ドサッ
( <◯><◯>)「ビロード、起きなさい!」
( _ゝ|★) ドサッ
(☆|<_ ) ドサッ
(;・∀・)「アニジャ、オトジャ! ああなんてことだ!」
ドサッ
ドサッ
( ^ω^)「子供達がみんな、倒れていくお……」
(..'A`)「ああ……」
.
396
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:03:27 ID:5H281t8g0
ズル...ズル...
|゚ノ ;^∀^)「はあ、はあ……」
ズル...ズル...
|゚ノ ; ∀ )「ああ、これは、困ったな……」
|゚ノ; ∀ )(目を覚ましたのはいいものの、体ってこんなにも重いものだったかな)
|゚ノ ; ∀ )(地べたをはっていくのもままならない)
ガチャッ‼︎
ξ;゚⊿゚)ξ「レモナ先生!」
|゚ノ; ^∀^)「ツンちゃん……? おはようございます、
すみませんね、だらしないかっこうで……」
ξ;゚⊿゚)ξっ「やっぱり体が動かないのね? むかえにきたわ!」
|゚ノ ^∀^)「……いけませんよ、アナタだけでも逃げてください」
ξ;゚⊿゚)ξ っ「手をかすわ。 よいしょっ、と」
ズシッ
|゚ノ ^∀^)「重いでしょう? ツンちゃんの体でボクを支えるのはムリです」
ξ; ⊿ )ξ「う゛うっ……むりじゃ、ないっ」
.
397
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:04:12 ID:5H281t8g0
ズリ...ズリ...
|゚ノ ^∀^)「ボクを置いてってください。 大丈夫ですよ、
きっといい方法をひらめいてみせますから」
ξ; ⊿ )ξ「おいて……か、ないぃ……」
ズリ...ズリ...
|゚ノ ^∀^)「……ツン、先生のいうことをききなさい。
怒りますよ? ボク、怒ったら怖いですよ?」
ξ; ⊿ )ξ「こわく、ないっ……!」
ズリ...ズリ...
|゚ノ ^∀^)「……お願いですから、ツンちゃん」
ξ; ⊿ )ξ「ほら、もうすぐ、部屋の、外にっ」
ガクンッ
ξ; ⊿ )ξ ドサッ
ξ; ⊿ )ξ「?」
ξ; ⊿ )ξ(やめてよ)
ξ; ⊿ )ξ(なんでこんなときに、ワタシの足)
ξ; ⊿ )ξ(なんにも感じないの)
.
398
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:05:07 ID:5H281t8g0
トクン...
トクン...
(´・ω・`)「ここってさっきディがシィの蛹を見つけた場所だよね?」
(´・ω・`)「兄さん、僕にウソついたの? ママなんてどこにもいなかったじゃないか」
(`・ω・´)「初めて教会に来た日のことを覚えてるかい?」
(´・ω・`)「ううん。まだ小さすぎたから」
(`・ω・´)「ママの本当の名前は? 本当の姿は?」
(´・ω・`)「ううん。話しかけても返してくれなくて、
まともに話したことすらなかったから」
(`・ω・´)「俺がママにした一生に一度のお願いは?」
(´・ω・`)「……『この小さな世界を自分達以外の
誰も入ってこられないように閉じて欲しい』?」
(`・ω・´)「そうだ。 ママが俺にお願いするように命じたのはそれだ」
(`・ω・´)「だが兄ちゃんはな、せめてもの抵抗をしてしまったんだ。
俺の一生をかけた願い事なのに、本当にしたい願い事を
できないだなんて、そんなのは不公平だと思ったんだ」
(´・ω・`)「なんてお願いしたの?」
(`・ω・´)「『この小さな世界を自分達以外の
誰も入ってこられないように閉じて欲しい、
……シィの欠片が再び揃う日まで』」
(´・ω・`)「!」
(`・ω・´)「ママはそりゃあもう怖かったんだろうさ。
手に入れたはずの『永遠』を手放さないといけない」
(`・ω・´)「だからママは、シィの欠片を呑み込んでしまったんだ。
他の誰にも奪われてしまわないように」
.
399
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:06:52 ID:5H281t8g0
(`・ω・´)「本来なら体が耐えきれずに死んでしまうはずだった、でもママは生きていた。
少女が死なさないようにとしたのか、ママがお願いしたのかは分からない」
(`・ω・´)「とにかく蘇生の少女が子守歌でママを眠りにつかせたからだ」
(`・ω・´)「蘇生の少女はママの腹の中で歌い続けた。
そして、中の世界の時間はそのまま止まってしまった」
トクン...
トクン...
(´・ω・`)「にい、さん」
(`・ω・´)
(´・ω・`) 「初めて教会に来た日のことを覚えてる?」
(`・ω・´)「覚えているぞ! シャキンとショボンとママの三人だったな!
やがてモララーとワカッテマスとレモナをさらってきた」
(`・ω・´)「子供達が少しずつ増えていって、シィの欠片を見つけてきて、
俺の願い事で世界を閉じたんだ」
(`・ω・´)「いまからもう、100年くらい前のことだね」
(´・ω・`)「ママの本当の名前は? 本当の姿は?」
(`・ω・´)「名前は知らないが、本当の姿なら知ってるぞ!」
(`・ω・´)「ママは醜い醜いと嫌っていたな。 ほんのりと
緑色の暗い光を放つ、大きな大きな百足の悪魔だった」
(´・ω・`)「!!」
トクン...
トクン...
(´・ω・`)(地下室のイノチの音は……)
(´・ω・`)(ディが破ったシィの蛹は……)
.
400
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:07:45 ID:5H281t8g0
(`・ω・´)「……ショボン」
(`・ω・´)「音が止まってしまう前に、願い事をしなさい。
君には一生に一度のお願いがまだ残ってる」
(*´・ω・`)「!」
(*´・ω・`)「ついにこの日がきたんだね!
僕、お願い事はとっくの昔にもう決めてあるんだ!」
(`・ω・´)「ショボン、兄ちゃんの一生に一度のお願いを聞いてくれないかい」
(´・ω・`)「なに言ってるの、兄さん? 兄さんらしくないよ?」
(`・ω・´)「もう一度、中の世界を閉じてくれないか」
(´・ω・`)「はっ……?」
(`・ω・´)「お願いだ」
(´・ω・`)「……やだ」
(`・ω・´)「ショボン! 聞いてくれ!」
ガラガラッ‼︎
(`・ω・´)「くっ! ガレキがっ」
(´ ω `)「やだやだやだ! 絶対やだ!!」
(`・ω・´)「待つんだショボン! 話を聞いてくれ!!」
トクン...
トク...ン...
.
401
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:08:33 ID:5H281t8g0
ズリ...ズリ...
(;^ω^)「よいしょ、よいしょ! ハインー、寝たらダメだおー!」
从 ∀从「ひっ……はっ……」
(;^ω^)「おーん、どんどん枯れていってる、おー」
(;-_-)「ば、バチが、あたったんだ……ボクたちが、わるいこだから……
シィのこと、バケモノだって、こわがったから……」
(;..'A`)「怖いもんは怖いだろ、オマエさんは怖くても
仲よしになりたいって思ったんだろ? いまでも怖いのか?」
( _ ) 「こ、こわい……よ、こわいけど、でも……
シィのこと、キライじゃ……な……、…………」フラッ
( _ ) ガクッ
(;..'A`)「おいヒッキー!? くっそー!
動けるのはオレとブーンとモララーとワカッテマスだけかよ!」
( ω ) ドサッ
(..'A`)
(..'A`)「……ブーン?」
( ω )
(..'A`)「ウソだろ、やめてくれ」
.
402
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:09:37 ID:5H281t8g0
ズリ...ズリ...
(;・∀・)「アニジャ、オトジャ、もう少しの、シンボウ、だ!」
( _ゝ|★)「モララーさま……オレら……」
(☆|<_ )「どう、なっちゃうのかな……」
(;・∀・)「あはははは! このモララーにまかせたまえ!
なんにも、なんにも心配は、いらないさぁ!」
( _ゝ|★)「モラ、さま、が……」
(☆|<_ )「そ、いうなら、だい、じょ……」
(;・∀・)「あは! あははは、ははは! あはははは、は、ははははは!」
( _ゝ|★) ガクッ
(☆|<_ ) ガクッ
( ;∀;)「あは、は……いやだ、……はは、はははっ……
ああどうしよう、いやだぁ……」フラッ
( ∀ ) ドサッ
ズリ...ズリ...
( <◯><◯>)
(。><)「うっ、うっ……もうおしまいなんです……」
( <◯><◯>)「だまらっしゃい」
(* ω *)「ワカッテマスくん……たすけてっぽ……」
( <◯><◯>)「ナキゴトなんて聞きたくありません。
助かることだけ考えてなさい」
(;><)「ママが、いてくれれば、いいのに……」
(* ω *)「ママ……ママ……」フラッ
( <◯><◯>)「……そうですね」
.
403
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:10:44 ID:5H281t8g0
( ) ガクッ
(* ω *) ガクッ
( <◯><◯>)「こら。 目を開けなさい、許しませんよ。 かってに、
許さない……許さない……、ワタシの……こどもたち……」フラッ
( < >< >) ドサッ
ゴゴゴゴゴゴ...‼︎
ガラガラッ‼︎
(;..'A`)「くそっ、くそくそっ! 道がふさがっちまった!
これじゃあもう、どこにもいけやしねー!!」
( ω )「うっ……」
(;..'A`)「バカブーンめ……まるで絵本に出てきたロージンみたいだぜ……?」
( ω )
(;..'A`)「オレたちまで……たおれて、どうすんだよ……」
( ω )「マ……マ……」
(;..'A`)「ママなんて……いないんだ……、
もう、……帰ってこないんだよ……ママなんて……!」
(.. A )「ママなんて……」
(.. A )「ママ……」
(.. A ) ドサッ
.
404
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:11:20 ID:5H281t8g0
( ω )
(.. A )
( ∀ )
( < >< >)
( _ゝ|★)(☆|<_ )
( )
(* ω *)
o川* ー )o
川 ⁂々 )
从 ∀从
( _ )
.
405
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:12:18 ID:5H281t8g0
フワッ
( )っ「……起きて!」
.
406
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:13:10 ID:5H281t8g0
( ^ω^) ハッ
( )っ「もう大丈夫ですよ、よく頑張りましたね」
( )「あとのことは任せて」
( ^ω^)「……ママ?」
(*゚ー゚)っ
(#゚;;-゚)
( ^ω^)「……シィ? ディ?」
(;..'∀`)「ははっ……マジかよ……」
(*゚ー゚)っ「私の蘇生の力でみんなを元に戻します! ほんの少しなら保つはずです」
(..'A`)「でもよ、教会があちこちくずれて、道がふさがっちまったんだ」
(#゚;;-゚)「私の破壊の力でみんなの道を開けるわ。 いまのうちに地下室へいこう」
川*⁂ 々゚)「……ママ? ママだ」
o川*゚ー゚)o「ふたりのママだ!」
.
407
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:14:20 ID:5H281t8g0
(#゚;;-゚)「みんなついてきて。 誰も置き去りにはしない」
( <◯><◯>)「お待ちなさい」
( ・∀・)「何者だい?」
(*゚ー゚)
( ・∀・)「キミ、夢の中の?」
(#゚;;-゚)「説明してる時間はないわ」
( <◯><◯>)っ「信用できません。 こっちへ来なさい」
ガシッ
グイッ
(#゚;;-゚)「離して」
( <◯><◯>)「!」
( <◯><◯>)(この傷だらけの手には覚えがあります)
( <◯><◯>)(あたたかくて、つまらない手)
( <◯><◯>)「『シィ』なのですね」
(*゚ー゚)「はい! そうなのですっ」
(#゚;;-゚)「ええ、そう」
.
408
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:15:31 ID:5H281t8g0
ズリ...ズリ...
|゚ノ ;^∀^)「ツンちゃん、起きて。 起きてください、お願いだから」
ξ ⊿ )ξ
|゚ノ ;^∀^)「ああ、そんな……わるい夢だと言って……」
ξ ⊿ )ξ
|゚ノ ∀ )「どうか、ママ……みんなを、子供達を……どうか……」
|゚ノ ∀ ) ガクッ
|゚ノ ∀ )
|゚ノ ∀ )
ゴゴゴゴゴゴ...‼︎
( ∀ )っ「起きたまえ!」
( < >< >)っ「起きなさい!」
|゚ノ ^∀^)「!」
( ・∀・)
( <◯><◯>)
|゚ノ ^∀^)「ああ……」
( ・∀・)「ごきげんよう、レモナ! ずいぶんと長いお昼寝だったじゃないか!」
( <◯><◯>)「さんっざん人のこと起こしておいて、自分だけ眠りほうけるだなんてなさけない!」
|゚ノ ;∀^) ポロッ
|゚ノ ぅ∀^)「えへへ……なつかしいなぁ、変わってないなぁ……」
(;^ω^)「よかったお! 間に合ったお!」
.
409
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:16:12 ID:5H281t8g0
(;..'A`)「シィ! こっちこっち! レモナとツンを頼む!」
(*゚ー゚)っ フワッ
(*゚ー゚)「さあ、起きて」
ξ;゚⊿゚)ξ「ぷはっ!!」
( ^ω^)「ツン!」
(..'A`)「よっ、ツン」
ξ;゚⊿゚)ξ「先生は?」
|゚ノ ^∀^)「おかげさまで。 ありがとうございますね、イノチのオンジンです」
ξ*゚⊿゚)ξ「よかった……」
ξ゚⊿゚)ξ「それにしても、ふたりとも? どうしてここに?」
( ^ω^)「ツンがこっちに走っていったのを思い出して、
シィとモララーとワカッテマスを連れてきたんだお!」
(..'A`)「あの二人ならレモナ先生を運ぶなんてちょちょいのちょいだ」
ξ*゚⊿゚)ξ「ありがと。イノチのオンジンだわ!」
(..'A`)「いまディと子供達がチカシツに向かってる。 オレたちも一緒にいこうぜ」
ξ゚⊿゚)ξ「ディだけで大丈夫なの?」
( ^ω^)「大丈夫だお! みんなつよい!」
.
410
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:17:07 ID:5H281t8g0
(#゚;;-゚)「ワタシが前を歩いてガレキを壊すわ」
( ´_ゝ|★)「オレら兄弟は」
(☆|<_` )「ディさまの」
( ´_ゝ|★)「お手伝いを」(☆|<_` )
o川*゚ー゚)o「だぁれも迷子にならないように、キューちゃんの
溶けた肌をメジルシにたらして歩くねっ」ドロドロ
川⁂ 々゚)「ちっちゃい子! クルウ、いっぱいもってく!」ニョロニョロ
(-_-)「う、動けない子は、ボクの手で、で、
連れていくけど、も、モンク言わないでよ……」ブツブツ
( ><)「ポッポちゃんはヒッキーくんと一緒に、動けない子をお願いするんです!」
(*‘ω‘ *)「ぽっぽー!」
从 ゚∀从「オレはイッチャン後ろで飛んで、だれひとり
はぐれないように見てるぜ!」ブブブブブッ
( ><)「後ろでなにかがあったときは、ボクの声で
すぐイチバン前に知らせられるようにするんです!」
(#゚;;-゚)「みんな、こわい?」
( ´_ゝ|★)「こわいけど、」
(☆|<_` )「へっちゃら!」
o川*゚ー゚)o「こわくても、がんばるもん!」
川⁂ 々゚)「こわいのこわいの、とんでけー!」
(#゚;;-゚)「いい子ね」
.
411
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:18:43 ID:5H281t8g0
タッタッタッタッタッ
(`・ω・´)「はあ、はあ、ショボン! 隠れてないで出ておいで!」
(´・ω・`)「やだ」
(`・ω・´)「なんだって? もっと大きな声で言ってくれ! さっぱり聞こえないんだ!」
(´・ω・`)「やだ」
(´・ω・`)「聞いてくれ! 君が外の世界に憧れてることは知ってる! 」
(´・ω・`)「外の世界にいきたいわけじゃない。
兄さんったら、なんにも分かってないんだから」
(`・ω・´)「俺達兄弟は長寿だ! もしも世界が開いたら、外の世界にいけるだろう!
きっとたくさんの楽しいことと、それよりたくさんの悲しいことがあるだろう!」
(´・ω・`)「外の世界の人はどんなカタチをしてるの? 外の世界の人はどんなことをして遊ぶの?」
(`・ω・´)「でも教会の子供達は、子供達はみんなここまでだ! 全てが元に戻ってしまう!」
(´・ω・`)「外の世界では、猫が人になるっておかしいことかな?」
(`・ω・´)「幸福だった100年の年月が、子供達を追ってくるんだ!こうしてる今にも、みんな老いて死んでしまう!」
リィンッ
(´・ω・`)
(`・ω・´)「ショボン、見つけたぞ! ああ逃げないでくれ、
話し合いをしよう! 言いたいことがあるなら聞こう!」
(´・ω・`)「この鈴……大っ嫌い」
(`・ω・´)「うん」
(´・ω・`)
(´・ω・`)「ねぇ、兄さん。ボクね、人になりたい」
.
412
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:19:40 ID:5H281t8g0
(`・ω・´)「うん」
(´・ω・`)「みんなと怪物ごっこがしたい。魔女かくしもしたい」
(´・ω・`)「簡単に扉だって開けたい、瓶だって自分で閉めたい、フォークでごはんを食べたい」
(´・ω・`)「みんなと肩を並べて歩きたい、小さい子を抱っこしてあげたい」
(`・ω・´)「うん」
(´・ω・`)「みんなみたいに優れた形してなくていい。普通の形の人だってかまわない」
(´・ω・`)「……ダメかな?」
(`・ω・´)
ゴゴゴゴゴゴ...‼︎
(`・ω・´)「ショボン、ごめんな」
(´・ω・`)
(`・ω・´)「そうだよな、みんなと一緒がよかったんだよな。
兄ちゃんなんにも知らなかったよ。 ……悪い兄ちゃんだったな」
(´・ω・`)「……別に」
(`・ω・´)「教会のことだって、ママのことだって、なんにも教えようとしなかった。
なんにも知らない子供のまんま、幸せでいて欲しかったんだ」
(`・ω・´)「教会の子供達とおんなじように」
(´・ω・`)
(`・ω・´)「いいぞ、ママとの契約はもうおしまい。ショボンの好きにしていいんだ。
兄ちゃんはその選択を尊重する。 どんな未来になったって、俺達兄弟はいつもとおんなじだ」
(`・ω・´)「なっ?」
(´・ω・`)
(´・ω・`)「……ありがと。そんな風に言って欲しかったんだ」
.
413
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:20:38 ID:5H281t8g0
(#゚;;-゚)「シィ!」
(*゚ー゚)「ディちゃん!」
(#゚;;-゚)「無事でよかった」
(*゚ー゚)「みんな地下室まで戻ってこれたのです。
ここならまだあの子のお願いの力が効いてるはずです」
(#゚;;-゚)「長くは保たないわ」
(*゚ー゚)「そのときは、私が」
(#゚;;-゚)「やめて」
(*゚ー゚)「ごめんなさいね? そうですよね、
これからのことを考えないと、ですっ」
(#゚;;-゚)「これからのこと」
(*゚ー゚)「ディちゃんはどんなディちゃんになりたいですか?」
(#゚;;-゚)「……なれるかしら」
(#゚;;-゚)「怪物にも魔女にも英雄にもなれなかった私が、
誰かになれるかしら」
(*゚ー゚)「ふふふっ。 もうなってるじゃないですか!」
(#゚;;-゚)「……うん」
.
414
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:23:19 ID:5H281t8g0
|゚ノ ^∀^)「全員みんなそろってますか?」
ξ゚⊿゚)ξ「どうかしら……、分からないわ……」
( ^ω^)ノ「ブーン!」
(..'A`)「いきなりどうした?」
( ^ω^)ノ「自分の名前を叫ぼう!なんだお!いつもみたいに!」
ξ゚⊿゚)ξ「そうよね、そうだわ!」
ξ゚⊿゚)ξノ「ツンー!」
(..'A`)ノ「ドクオ!」
|゚ノ ^∀^)「ふふふ、素晴らしいひらめきですね?」
( ・∀・)「さあさ子供達、おっきな声で自分の名前を叫ぼうじゃないか!」
( <◯><◯>)「ええ、ええ。 やりましょう、いつもどおりに」
( <◯><◯>)ノ「ワカッテマス!」
( ><)ノ「ビロード!」
(*‘ω‘ *)ノ「ちんぽっぽー!」
(-_-)ノ「ヒッキー!!」
从 ゚∀从ノ「ハインリッヒ!」
( ・∀・)ノ「モララー!」
\( ´_ゝ|★)「アニジャ!」
(☆|<_` )/「オトジャ!」
o川*゚ー゚)oノ「キュートちゃん!」
川 ⁂々゚)ノ「クルウー!」
|゚ノ ^∀^)ノ「レモナ!」
(#゚;;-゚)ノ「ディ」
(*゚ー゚)ノ「シィ!」
.
415
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:24:38 ID:5H281t8g0
トクン...
トクン...
(´・ω・`)「ママ、ひさしぶり」
(´・ω・`)「ショボンだよ、知らないだろうけど」
「ブーン!」
(´・ω・`)(!)
(´・ω・`)(遠くからみんなの名前が聞こえてくる)
「ツンー!」
「ドクオ!」
(´・ω・`)「さようなら」
「ワカッテマス!」
「ビロード!」
「ちんぽっぽー!」
(´・ω・`)「さようなら」
「ヒッキー!!」
「ハインリッヒ!」
(´・ω・`)「さようなら、ママ」
「モララー!」
「アニジャ!」
「オトジャ!」
(´・ω・`)「さようなら、世界」
.
416
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:25:39 ID:5H281t8g0
「キュートちゃん!」
「クルウー!」
(´・ω・`)
「レモナ!」
「ディ」
「シィ!」
ゴゴゴゴゴゴ...‼︎
(´-ω-`)(たとえば人の形になれたって、みんながいなくなっちゃうなら、
いったいだれと怪物ごっこすればいいの、だれと魔女かくしすればいいの)
(´-ω-`)「ママ、ママ。 僕の一生に一度のお願いです」
(´-ω-`)「なにもかもいつもどおりに戻してください。
もう一度、僕達の世界を閉じてください」
(´-ω-`)「今度は、永遠に」
(´・ω・`)「……でも次はもうちょっと広い方がいいな、なんてね」
トクン...
トッ...
......
......
「おやすみ、ママ」
.
417
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:27:03 ID:5H281t8g0
ブワッ
(*^ω^)「おお! 蝶の花びらが飛んでるお!」
ξ*゚⊿゚)ξ「それもこんなにいっぱい! こんなのはじめてだわ!」
(;..'A`)「どういうことだ? 枯れてた蝶の花が、
崩れてた教会が、もとどおりになっていくぞ!」
(#゚;;-゚)「ここにいたら建物の修復に巻き込まれる」
( ・∀・)「任せてくれたまえ! 子供達は俺についてくるんだ!」
( <◯><◯>)「私は後ろからみんながはぐれないよう見てます」
|゚ノ ^∀^)「僕はまんなかにいますね、なにかあったらモララーとワカッテマスに知らせます」
|゚ノ ぅ∀^) グイッ
ξ゚⊿゚)ξ「レモナ先生、どうしたの?」
|゚ノ ^∀^)「なんでしょうね、ちょっぴり、寂しくなっちゃっただけですよ」
ξ゚⊿゚)ξ「?」
(#゚;;-゚)「シィ、私達もいきましょう」
(* ー )「……いってしまったのですね」
(#゚;;-゚)「どうしたの」
(*;ー;) ポロポロ
(#゚;;-゚)「貴女が泣いてると私も悲しい」
(*ぅー;)「ごめんね、なんでもないのです。 すぐ泣き止みます、すぐ泣き止みますからね」
.
418
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:27:43 ID:5H281t8g0
ヒラヒラ
ヒラヒラ
(*^ω^)「おっおー!」
ξ*゚⊿゚)ξ「すごいわ! どこもかしこも、もとどおりよ!」
(..'∀`)「もとどおりどころか、キレイになってねーか?」
ξ゚⊿゚)ξ「あら? ブーン、そのアタマ!」
(*^ω^)「おっ?」
(..'A`)「花だ! オマエさん、エダに花が咲いてるぜ!」
(*^ω^)「ほんとに!?」
(..'∀`)「おめでとさん。 二つだけだけど、ゴリッパなもんだぜ」
ξ*゚⊿゚)ξ「おめでとう! もっとよく見せなさいよ!」
(*^ω^)「どんなお花が咲いてるお?」
ξ*゚⊿゚)ξ「えっとね、桃色と緑色のかわいいお花だわ!」
.
419
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:28:24 ID:5H281t8g0
( <◯><◯>)「アナタばっかり仕切らないでください」
( ・∀・)「こうしようじゃないか! 次の戦いで勝った方が偉いと!」
|゚ノ ^∀^)「まあまあ。 ケンカしないで、モララー、ワカッテマス」
( <◯><◯>)「止めないでください」
( ・∀・)「レモナの言うことはごもっともさ。 オレにイチャモンつけるのやめたまえ!」
|゚ノ ^∀^)「ああそうだ、夢の中でも何度か聞いたんですけどね、気になってたことがあって」
|゚ノ ^∀^)「どうして子供達の洋服が白と黒で分かれてるんでしょうか?」
( <◯><◯>)
( ・∀・)
|゚ノ ^∀^)「クラスで分けるのかな? だとしたら、ときどき
クラス替えしてみるのもいいんじゃないかな、って」
( <◯><◯>)「…………」
( ・∀・)「…………」
|゚ノ ^∀^)「あ、あれあれ? なに? まずかったでしょうか?」
.
420
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:29:16 ID:5H281t8g0
(´・ω・`)
(`・ω・´)「ごらんよ、英雄! これが君の守った世界だ! あれが君の守った子供達だ!」
(´・ω・`)「よしてよ、英雄だなんて。僕はただのかわいい猫ちゃんだよ」
(`・ω・´)「君はショボンだ! そして俺の弟!」
(`・ω・´)「いいことを思いついたぞ、レモナに頼み込んで君の勇気を物語にしてもらおう!
寝る前のお話しは必要だからね、いもしない魔女と怪物の物語の代わりに! うんうん、それがいい!」
(`・ω・´)「小さな世界を救った猫のお話し!」
(*´・ω・`)「なにそれ? ふふふっ、悪くないかもね?」
(`・ω・´)「新しい遊びも必要だ! 外の世界の本にあった、『鬼ごっこ』や『かくれ鬼』なんてどうだろう?
あれはルールがシンプルでいいぞ、今度は俺達も一緒にやろう! きっと楽しいに違いないぞ!」
川*⁂ 々゚)「あたらしいあそびのおはなし!?」
o川*゚ー゚)o「とうとうショボンちゃんも一緒に遊んでくれるんだ!」
(;´・ω・`)「えっ、いや、僕は」
从 ゚∀从「ハッハァ、待ってたぜ! ギッタンギッタンにしてやる!」
(-_-)「ショ、ショボン、なら、……ボク、勝てる、かも……?」
(´・ω・`)
(*´・ω・`)「いいよ、遊んであげる! 言っとくけど、僕は強いよ!」
.
421
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:31:52 ID:5H281t8g0
(#゚;;-゚)「綺麗な場所でしょう」
(*゚ー゚)「はい、とても。 こういうのって、楽園っていうのでしょうか」
(#゚;;-゚)っ「シィ、手をとって。 私が先を歩くわ」
(#゚;;-゚)∞(゚ー゚*) ギュッ
(#゚;;-゚)「教えてあげる。 私達のいる教会のこと」
(*゚ー゚)「ついていくよ、ディちゃん」
(#゚;;-゚)「みんなの前でおじぎをして、にっこり笑うの」
(#゚;;-゚)「いいわね?」
(*゚ー゚)「はいっ」
(#゚;;-゚)
(*゚ー゚)
「ママ」
「ママだ」
「ママ!」
(#- ;; -) ペコリ
(*- -) ペコリ
「おかえり、ママ!」
「ママおかえり! みんな待ってたよ!」
「100年ずっと、アナタを待ってたよ!」
(#゚;;-゚) ニコッ
(*゚ー゚) ニコッ
「「ただいま」」
.
422
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:32:26 ID:5H281t8g0
( ^ω^)|ムシヨニクヨ、と夢を見る百年|のようです 終
.
423
:
◆EINyjQHjEo
:2020/09/20(日) 22:34:49 ID:5H281t8g0
一周目は何も知らない子供のまま。
二周目で何も知らない子供のままではいられない。
お借りした絵→ No.18、No.22、No.112
(
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208782/18_evv8ua.png
)
(
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208781/22_jpvbtc.png
)
(
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208803/112_hlxrqp.jpg
)
424
:
名無しさん
:2020/09/21(月) 07:28:18 ID:CrfzQq8M0
改めて一気読みしたよ!乙!
ただ美容と拷問ってどゆこと?ママの趣味?
425
:
名無しさん
:2020/09/21(月) 07:32:30 ID:yTwS1HEs0
乙
でぃの言葉のおかげで、謎が解けていって面白かった
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