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ハハ ロ -ロ)ハ ハロー//グッバイのようです (^ω^ )

1 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:20:19 ID:iSbP72lo0
ラノブンピック参加作品です

25 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:46:12 ID:iSbP72lo0
( ^ω^)「あー、ちょっとした生活指導? ってやつだお」

(´・ω・`)「生徒数が少ないのに、よくやるね」

授業中、僕は窓の外を眺めていた。
荒廃した日常の景色。
VIPPERに荒らされ、壊れ果てた日常。

僕の日常。
世界の日常。
昔の、非日常。

――視界の端で、何かが光ったような気がしたが、先生の方に目を戻して気にすることはなかった。

( ^ω^)「ショボン、独り立ちって何だと思うお?」

(´・ω・`)「そりゃ、自立して生活できることだろう。
     稼いで、喰って、生きて行けば生活さ」

( ^ω^)「じゃあ、高校生が独り立ちするってことは、一人暮らしするしかないのかお」

(´・ω・`)「うーん。 状況によるんじゃないかな。
      そもそも僕たちが一人暮らしをするって、中々ハードルが高いからさ。
      例えばシェアハウスに住みながら働く、とかね」

( ^ω^)「なーるほど。
      でも、この街にそんな余裕ってあるのかお?」

(´・ω・`)「そりゃあないよ。
      街の復興だってこんな状況なんだ、就職先は精々土建屋ぐらいじゃないかな。
      シェアハウスというより、タコ部屋しかないよ」

どうあっても、僕が一人で大丈夫なのを証明するには姉の傍を離れるしかなさそうだ。
姉と離れることを惜しむ気持ちもあるが、このまま僕が何もできないと姉が心配するだろう。
それはもっと嫌だった。

(´・ω・`)「ま、焦ったって独り立ちしたところで転んで怪我するだけだよ。
      気楽にいこうぜ」

そうも言っていられない。
明日には答えと結果を出さないと、僕は何もなさないまま姉と別れることになる。
それだけは避けなければならない。

(´・ω・`)「そんなことよりさ、ずっと気になってることがあるんだ」

( ^ω^)「な、何だお?」

(´・ω・`)「エロゲってさ、どうしてキスしたらすぐにセクロスの流れになるんだろね。
     多分論文書けると思うんだよ、僕は」

26 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:46:39 ID:iSbP72lo0
放課後、姉と合流して家路につく。
遠回りの帰り道。
街灯のまばらな荒れた道を走る。

家に着くと、姉は珍しくもう少し走ってくると言って、そのまま行ってしまった。
僕は部屋に行き、カバンからグロックを取り出した。
弾倉を抜いてから薬室に弾が入っていないことを確かめ、それぞれカバンに戻した。

それから僕は夕食の準備を始め、姉が帰ってくるのを、テレビを見ながら待つことにした。

(*゚ー゚)『速報です。 VIPPERの出現に伴い、周辺諸国からナンジェイ国への移民が多数押し寄せているキャンプ地で、大規模な自爆テロが発生しました。
    被害規模は分かっていませんが、少なくとも114人が死亡、514人が重傷を負っているとのことです。
    ゲハ教の過激派組織、ハチマ派の最高指導者ジョルジュ・ジンがこの一件に関して犯行声明を発表しました』

そして映像が切り替わり、ピンク色のターバンを被った色白の男が画面いっぱいに写る。
左右のスペースにはこれでもかと彼らを支持する組織や個人の画像が映し出されていた。
彼らはこうして支持する組織をアピールすることで、広告費を得る組織だった。
  _
( ゚∀゚)『我々は、何年間も待ったのだ!!
    解放の時、自由を得る時!』

世界にVIPPERが現れたところで、戦争やテロがなくなるわけではなかった。
変わらずに続く日常。
バイクの音が、姉の帰宅を知らせる。

ハハ ロ -ロ)ハ「I'm home.」

( ^ω^)「おかえりー。
      今日は生姜焼きにしたお」

ハハ ロ -ロ)ハ「Seriously?」

( ^ω^)「しかもしっかりと漬け込んでるから味が濃くて白米が進むお!」

冷蔵庫から豚肉を出して、フライパンで焼く。
その間に姉に大根の葉っぱを使った味噌汁を作ってもらい、夕食になる。
テレビはつけたままにしている。

ハハ ロ -ロ)ハ「んめっ!んめっ!」

( ^ω^)「ちょっとしょっぱい?」

ハハ ロ -ロ)ハ「んにゃ、これがbest!
       ガシャガシャ!ぐァつぐァつぐァつ!」

姉の胃袋を満たし、僕の心は満たされる。
料理を仕事にするのも悪くないかもしれない。
今はアルバイトもしていないが、それを仕事にすれば、自立と同時に姉を満たすことが出来る。

27 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:47:21 ID:iSbP72lo0
僕は将来の指針を一つ見つけ、食後、自室で調べることにした。
料理を生業にするには、やはり技術は絶対だ。
包丁の使い方もそうだが、フライパンの扱いや皿洗い、食材の搬入や機材の運搬など、体力が必要になる。

体を鍛え、心を鍛える仕事。
しかしその世界も奥が深く、務める場所によってはまるで異なる仕事内容になるそうだ。
夜遅くまで調べごとをしている内、僕は気がついたらそのまま眠ってしまっていた。

明日には、答えを出さなければ。
僕の心は少しずつ、ゆっくりと、眠りの世界に落ちていく。

――翌朝、目覚まし時計よりも早く僕の目が覚めた。

( ^ω^)「お……」

カーテンの向こうには冬の青空。
今日は姉に言われた期日だ。
だがその時、僕は自分がベッドの上で目を覚ましたことに気が付いた。

(;^ω^)「あれ?」

寝ぼけながら布団に入り込んだのだろうか。
頭に疑問符を浮かべながら、僕は日常に戻ることにした。

( ^ω^)「入るおー」

〇「……」

変わらず、布団にくるまって眠っている。
僕はいつものようにカーテン、そして窓を開ける。

( ^ω^)「ねーちゃん、起きるお」

〇「Already起きてる……」

だが声は眠そうだった。

( ^ω^)「栄光に向かって起き上がってお」

〇「そんな終わりのないdefenseはやだ……」

もごもごと動いて、拒絶を示す。
でも僕は構わず、姉の布団を剥いだ。
太陽の光が、姉の顔を直撃した。

ハハ 'A`)ハ「Shine!」

叫び声と共に、姉が顔を覆う。
まるで太陽を浴びた吸血鬼の様だ。
顔を覆う手に、眼鏡を持たせると、姉の指がそれを掴む。

28 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:47:59 ID:iSbP72lo0
ハハ ロ -ロ)ハ「もう少し優しく起こそうとは思わないのか、youは」

( ^ω^)「これでも相当優しいと思うお。
      朝ごはんは豆腐の味噌汁と漬物だお」

ハハ ロ -ロ)ハ「漬物は白菜?」

( ^ω^)「そうだお。
      結構いい漬かり具合だお。
      ねーちゃんいっつも葉っぱのところしか食べないけど、芯の部分が特に美味いお」

ハハ ロ -ロ)ハ「OK、実食して確認する」

そしてまた、僕はリビングに降りてテレビを点けて姉を待つ。
世界がどんな風になっていたとしても、僕に関係がなければそれも日常の一つでしかない。
一応、関係がないかどうかを知るためにもニュースを見る。

(゚、゚トソン『次のニュースです。
    昨日、シベリア国の大統領が正式にVIPPER難民の受け入れを表明し、数百万人規模の移動を視野に入れている旨を伝えました。
    専門家の間では、極めて乏しい国内事情にも関わらず受け入れるのは無責任ではないか、との意見も出ています。

    ただし、一方ではシベリアに出現したVIPPERは被害を出さずに消えたという報告もあり、意見が分かれています。
    これに対してシタラバ国が支援を申し出ており、本日電話会談が行われる模様です』

アナウンサーの声を聞きながら、僕は朝食の支度を終えにかかる。
白菜の入ったタッパーを机に置いて、姉が使う柚子胡椒と醤油、そして小皿を出す。

(゚、゚トソン『人気長寿ラジオ番組、極道ラジオFM893のパーソナリティが交代するとの知らせが……』

ニュースはいつの間にか芸能関係の話に切り替わり、上から姉が降りてくる跫音が聞こえてきた。
僕は丁度、味噌汁をよそおうとしたところだった。
姉が横に来て、僕の分の白米を茶碗によそってくれる。

ハハ ロ -ロ)ハ「ふぅん、豆腐の味噌soupねぇ」

( ^ω^)「何か?」

悪戯っぽい笑みを浮かべながら、姉がそんなことを言った。

ハハ ロ -ロ)ハ「具は豆腐とネギ、つまりtwo種類……
        Very good. こういうので、いや、むしろこういうのがいい」

( ^ω^)「味が濁るとか言わないのかお?」

ハハ ロ -ロ)ハ「HAHAHA! そんなこと言うmotherfuckerは味噌だけ飲めばいい」

過激な発言である。
しかし、料理を褒められるというのは自分を褒められるのと同じことで、僕は嬉しかった。
これを仕事にする人の気持ちも、なんとなくは分かる。

29 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:50:18 ID:iSbP72lo0
配膳を済ませ、二人でご飯を食べ始める。
姉は真っ先に漬物に箸を伸ばし、珍しく味わうようにゆっくりと食べ始めた。

ハハ ロ -ロ)ハ「んむ、美味い」

ジャクジャク、と白菜を食べる姉の姿。
これで一回に取って食べる量がもう少し減れば、上品と言ってもよかったかもしれない。

( ^ω^)「いい感じだお?」

ハハ ロ -ロ)ハ「浸かり具合、perfect!
        私を太らせる気かな、このbroは」

茶碗一杯に盛られていた白米が、もうほとんど無くなっていた。
白菜もタッパーの半分以下に減っており、恐るべき食欲を垣間見た。
呆れる反面、気に入ってもらえたのだと分かったのが嬉しかった。

食事と支度を終え、通学の準備をする。
弾倉を装填したグロックをホルスターに入れ、カバンの底にしまう。

ハハ ロ -ロ)ハ「準備はOK?」

( ^ω^)「おっけーだお」

答えは今日見せなければならない。
見せるだけの時間も、場所も、非常に限られている。
朝の時間は朝食と登校で使われるため、実際に見せることが出来るのは、下校時と夕食時だけだ。

ヘルメットを持って家の外に出る。

ハハ ロ -ロ)ハ「……」

バイクの前で姉が立ち止まり、周囲を見渡す。
まるで物音に気付いたオオカミの様だった。

( ^ω^)「どうしたんだお?」

ハハ ロ -ロ)ハ「Don't care.」

( ^ω^)「それ、絶対に何かあるやつだお、知ってるお」

姉は溜息を吐いて、面倒くさそうに言った。

ハハ ロ -ロ)ハ「たぶん、motherfuckers がこっちを見てる」

( ^ω^)「ドクオって人達?」

ハハ ロ -ロ)ハ「May be.
        あんた、学校でも気をつけなね」

30 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:50:43 ID:iSbP72lo0
言われなくても、その準備はできている。
もうあんな風に殴られるだけなんて、起きない。
グロックが僕を暴力と立ち向かわせてくれるのだ。

バイクで学校に向かう途中、確かに、複数の視線を感じ取った。
普段は人通りがほとんどない道で、スモークガラスの車と何度かすれ違った。
確かに、見られているのかもしれない。

学校についてから、僕は教室に行くよりも先に職員室に向かった。
進路について訊きたいことがあったからだ。

( ゚д゚ )「お、内藤じゃないか。 どうした?」

五人だけの職員室で緑茶を飲んでいた担任のミルナ先生が僕に気づいて手招きをしてくれた。
軽く一礼して中に入り、先生の前に立つ。
すると先生はどこからか折り畳みの三脚椅子を取り出して、僕に手渡してくれた。

遠慮せずに座り、用件を伝える。

( ^ω^)「ミルナ先生、進路について訊きたいことがありますお」

( ゚д゚ )「へぇ、珍しいな。 なんだ、どんなことだ?」

( ^ω^)「料理人って、どうしたらなれますかお?」

( ゚д゚ )「何だ、内藤、お前料理人になりたかったのか。
     専門学校に行くか、まぁ後は無難に就職だな」

(;^ω^)「就職先って、今あるんですか?」

( ゚д゚ )「まぁこんな時世だからないと思うだろうが、高校生はちっと特殊でな。
     お前は来年からだろうから、まぁ、今知っていても損はないだろう。
     昔も今も、高校生の就職は学校が経由して紹介することになってるんだ。

     ネットで調べるか、もしくは学校に送られてきた求人票を見るんだ。
     今年の料理関係の求人票は、聞いて驚け1024件だ。
     ぶっちゃけると、こんな時だからこそ若い働き手が欲しいのさ」

(;^ω^)「す、すごい!」

( ゚д゚ )「単純に元の離職率が高いってのもあるが、やっぱりきついみたいだな、高校を卒業してすぐは。
     後は高卒だから給料がそこまで高くない」

先生が見せてくれた求人票に書かれている月給は、僕には高いか安いかの判断はつかなかった。

( ゚д゚ )「どうせ行くならな、ファミレスとかじゃなくて個人経営の店がお勧めだ。
     大量生産の技術じゃなくて、一品を作る技術を学べる。
     今のところは、な」

31 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:51:31 ID:iSbP72lo0
一体いつ何が起こるか、それは誰にも分からない。
ある日突然、誰かの日常が失われてしまうかもしれない。
それが分かれば、誰もきっと、後悔の無い人生を歩むことになるだろう。

失わないと気づかないなんて、人間はどうしてこうも進歩がないのだろうか。

( ゚д゚ )「ところで、お前の顔、具合はいいのか?」

(;^ω^)「実はまだちょっとだけ痛いですお」

( ゚д゚ )「学校の中の怪我なら保険が降りるから、病院に行ったら教えろよ。
     そのための一日欠席だったんだろ?」

(;^ω^)「まぁ、そんなところですお

( ゚д゚ )「お前が本当のことを言いたくないんなら深入りはしないけどよ、あんまり思い詰めるなよ。
    さ、俺たちはこれから朝礼があるから先に教室に行きな」

( ^ω^)「ありがとうございますお」

礼を言ってから、僕は教室に向かった。
教室ではショボンが愛読している雑誌を開いていた。

(´・ω・`)「おう」

( ^ω^)「おいすー」

(´・ω・`)「具合はよさそうだな」

( ^ω^)「若いからね」

(´・ω・`)「一昨日の悩みが少しは和らいだのかな」

( ^ω^)「まぁちょっと進展した感じだお。
      将来、料理人を目指してみようと思うお。
      ミルナ先生に訊いたら、料理系の求人があるらしいお」

(´・ω・`)「へぇ、いい選択じゃん。
      少なくとも飢え死にはしないからね」

( ^ω^)「それに、料理が出来れば独り立ちの証明にもうってつけだお。
      というわけで、今晩は独り立ちを証明する飯を作るお」

(´・ω・`)「ほぅ、ちなみにメニューは?」

( ^ω^)「肉じゃが……」

(´・ω・`)「インパクトに欠けるなぁ」

( ^ω^)「……と、炭火で作ったサンマの塩焼き」

32 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:52:11 ID:iSbP72lo0
(´・ω・`)「……大根おろしとか、たっぷり乗ってる奴?」

( ^ω^)「あぁ、ポン酢とすだちも使っていいお……」

(´・ω・`)「お前、天才だよ。
      最高だ」

そして授業が始まり、僕にとっては悩ましい時間が過ぎていく。
凝った料理でなくていい。
僕が作ることのできる、精一杯の料理でいい。

家の冷蔵庫に残っている食材で不足しているのは、サンマだけだ。
サンマなら帰り道にスーパーに寄ってもらって買えばいい。
頭の中で最適なレシピを思い描いて、段取りを考える。

それを考えるだけで、僕の心は落ち着きを失っていた。
早く作りたい。
早く姉に食べてもらって、僕が料理の道に進んで独り立ちできることを見せつけたい。

そわそわとしている中の時間は、残酷なほどにゆっくりと過ぎていく。
姉と過ごす時間はあれだけ早く過ぎるのに。
どうして時間は流動的なのだろうか。

ノートに流れを書いても時間が余るため、他にも出来ることを羅列した。
そしてお昼休みになり、僕はすぐにミルナ先生のところに向かった。
ミルナ先生はカップラーメンと塩おにぎりを食べていた。

そのメニューが不健康だと指摘したら、先生は毒を摂取しなければ毒に勝つことはできない、と言っていた。

( ゚д゚ )「あん? どうした?」

( ^ω^)「朝言っていた求人票、コピーさせてもらえますかお?」

( ゚д゚ )「あぁ、いいぞ。 むしろこれやるよ」

封筒に入れられた求人票の束を、先生がまとめて渡してくれた。

( ゚д゚ )「三年で就職するやつがいなくてな。
     もう使わないんだよ」

( ^ω^)「ありがとうございますお!」

( ゚д゚ )「ま、頑張れ。
     ちゃんと飯食えよ」

( ^ω^)「先生もね」

急いで教室に戻り、食事をしながら求人票の仕分けを行った。
給与もそうだが、勤務地と勤務時間、面接に必要な資格や試験に目を通す。
そして、朝に先生が言っていた離職率にも注目した。

33 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:53:07 ID:iSbP72lo0
(´・ω・`)「熱心だねぇ、しかし」

( ^ω^)「んぐんぐ」

購買で買ったカレーパンを咀嚼し、僕は返事をした。

( ^ω^)「結構給与違うお」

(´・ω・`)「へー、時給換算するとヤバイところもあるね。
     やる気を評価します、だってさ」

( ^ω^)「絶対難癖付けられるやつだお、それ。
      でも離職率0%だおね」

(´・ω・`)「……なのに、高卒の従業員数は減ってるのね」

( ^ω^)「数字のマジックだお!」

(´・ω・`)「こっちの求人凄いよ。
      残業時間月平均30分だってさ。
      お店の閉店時間と勤務時間が同じだけど、どうやってやってるんだろ……」

( ^ω^)「イッツアマジック!」

興味のあるもの、そして勤務条件がまともそうなものを選んだら残ったのは三社だけだった。
クリアファイルに入れて、カバンにしまう。
それからショボンと雑談をして時間を過ごし、待ちに待った放課後になった。

靴を履き替えて校門に行くと、そこに姉が待っていた。

ハハ ロ -ロ)ハ「Yo」

( ^ω^)「おいすー。
      ねーちゃん、今日スーパーに寄ってもらいたいんだけど、いいかお?」

ハハ ロ -ロ)ハ「いいぞ、今夜の料理がupgradeするなら是非もない」

バイクに乗り、二人で走り出す。
いつもと帰り道を変え、姉は河川沿いにあるスーパーに寄ってくれた。

( ^ω^)「ちょっと待っててお」

ハハ ロ -ロ)ハ「Sure.」

鮮魚売り場に小走りで向かい、新鮮なサンマを三尾選んで袋に詰める。
レジに行く前に、ふと花屋の店先に並んだ色んな花に目が奪われた。
その中で寂しそうに咲くピンク色の花に目がいった。

理由は分からないが、安売りの対象になっていた。

34 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:53:48 ID:iSbP72lo0
( ^ω^)「これ、プレゼント用の小さな花束にしてもらえますかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「はい、いいですよ」

結局、僕は花とサンマ買うことにした。
会計を済ませ、店を出る。

('A`)「よぅ、小僧。 荷物、持ってやろうか?」

黒いスーツを着たドクオが、ニヤニヤとした笑みを浮かべて僕を見ていた。
まさか店の前で待ち伏せをされるとは、考えていなかった。

(;^ω^)「げっ?!」

('A`)「おおっと、そう大きな声を出すなよ。
   俺と一緒にドライブしようぜ」

本能が僕に命令する。
今は、姉のところに行くべきだと。

('A`)「逃がすな!」

だけど、僕が動くよりも先に、背後から羽交い絞めにされた。

( ゚∋゚)「済まないな、少年」

(;^ω^)「は、離すお!」

万力に挟まれているかのように体が動かない。

ξ゚⊿゚)ξ「大人しくしなさい」

川 ゚ -゚)「別に君に危害を加えようってわけじゃない」

( ・∀・)「事情を説明すれば君も分かってくれる」

ぞろぞろと、物陰や車の中からスーツ姿の男女が現れる。
人数の差と力の差が、僕の前に非常な現実として立ちはだかる。

('A`)「奴に見つかると厄介だ、急いで――」

ハハ ロ -ロ)ハ「――Kill you.」

次の瞬間、僕を羽交い絞めにしていた男の手から力が抜けた。
自由になった僕の手を姉が掴み、走り出す。

ハハ ロ -ロ)ハ「今は逃げるよ」

35 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:54:52 ID:iSbP72lo0
夕日が沈みゆく。
空が群青色からオレンジ色のグラデーションに染まる。
僕らは河川沿いに走る。

後ろからドクオたちが黒塗りの車に乗って追いかけてくる。
人の足と車とでは、その差は歴然だった。
車が僕の横に並び、ぬっと腕が伸びてくる。

襟首が掴まれるのと同時に車が加速し、僕の手が姉の手を離れた。

ハハ ロ -ロ)ハ「……!!」

車の中に押し込まれそうになった刹那、車が宙を舞っていた。
何かに激突したかのように、否、吹き飛ばされたかのような衝撃。
僕の体は勿論、車も土手に転がり落ちる。

草の上に放り出された僕は、全身の鈍痛と恐怖で少しの間動けなかった。
これがコンクリートだったら、間違いなくもっとひどいことになっていただろう。
車は僕から離れた場所に横転していた。

ややあって中から扉が蹴り開けられ、スーツの男女が出てくる。
彼らの手には、ライフルが握られていた。

ξ;゚⊿゚)ξ「あー、くっそ……!!」

(;・∀・)「これ労災降りるよね」

身動きが出来ず、逃げることも出来ない。
プロらしくすぐに切り替えた彼らは、ライフルの銃腔を――

川 ゚ -゚)「動くな!!」

――僕の後ろにいる、姉に向けた。

ハハ ロ -ロ)ハ「……」

姉は立ち止まり、両手を軽く上げている。
何がどうしてこうなったのか、僕は体の痛みを抑えて考えた。

('A`)「ったくよ、俺に面倒をかけさせるなってんだ。
   お前が協力してりゃ、こんなことせずに済んだのによ」

(;^ω^)「何で、こんなこと……」

('A`)「何で? お前、さっきの見てもまだそんなこと言えるのかよ」

見たさ。
知っているさ。
誰よりも、僕は知っているんだ。

36 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:55:21 ID:iSbP72lo0
('A`)「そいつはVIPPERなんだよ」

(;^ω^)「ねーちゃんだお!」

('A`)「おいおいおい、洗脳でもされてんのか?
   お前の両親の直接の死因がそいつだぞ!」

当然、知っている。
あの日に何が起きたのかも、僕は知っているし、覚えている。
知っていて、僕は彼女を姉と慕うのだ。

('A`)「第一発見者がよりにもよって俺だったから、よく覚えてる。
   あんな殺され方して、お前は良かったのかよ!!」

(;^ω^)「そんなの、どうでもいいお!!
     僕たちのことは放っておいてくれお!!」

(;'A`)「こいつ、頭がピンク色になってやがる……!
   はいそうですか、って出来ると思うのか?
   そいつがいる限り、この世界はVIPPERに怯え続けなきゃならねぇ。

   独り善がりでモノ言うんじゃねぇ、殺されてぇか!」

その言葉で、僕は痛みを忘れた。
体が動く。
カバンの中に手を入れて、グロックをホルスターから抜き取って両手で構える。

(;^ω^)「世界なんて、そんなの、知ったことじゃないお!!」

(;'A`)「銃を降ろせ、この馬鹿!
   そいつはおもちゃじゃねぇんだぞ!」

不思議と、心と体の温度は逆になっていた。
心が熱く怒りで燃え、体は氷のように冷たい。
両手で握っている銃が震える。

ξ゚⊿゚)ξ「武器を確認、発砲許可を!」

(;'A`)「待て! あぁ、くっそ!
   これだからガキは嫌いなんだよ!!」

(;^ω^)「早く僕たちの前から消えるお!!」

川 ゚ -゚)「お前が銃を降ろさないなら、私がそこのVIPPERを撃つ。
     十秒待ってやる」

(;゚ω゚)「うわあああ!!」

37 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:56:04 ID:iSbP72lo0
頭が真っ白になった。
僕は銃腔をその女に向け、銃爪を引いた。
だけど、何度銃爪を引いても乾いた音が鳴るだけで弾は出なかった。

(;^ω^)「……あれ?」

( ・∀・)「安全装置がかかったままだぞ、ルーキー」

その言葉で、僕は思い至った。
男の言った言葉が嘘であること。
そして、なぜ弾が出なかったのかということ。

グロックに安全装置はない。
銃爪に備わっている機構により、完全に引ききるまでは弾が出ない。
僕は薬室に装填する作業を忘れていたのだ。

川 ゚ -゚)「時間切れだ」

僕の体が、動いていた。
痛みも何もかもを忘れて、僕は立ち上がる。

(;^ω^)「っ……!!」

僕の日常を奪われたくない。
奪われるぐらいなら。
ただ黙って見ているだけならば。

それなら、立ち向かいたい!
立ち向かって、守りたい!
遊底を引いて、薬室に初弾を送り込めば、弾は出るんだ!

(;'A`)「ちっ!!」

銃声。
衝撃。
僕は何かに殴られたかのように、仰向けに倒れていた。

何が起きたのか分からなかった。
僕は銃を撃てたのだろうか。
僕は、姉を守れたのだろうか。

不思議とぼやけた視界に、逆さまになった姉の姿が写る。
風の音が聞こえる。
気持ちのいい、夜の匂いのする風。

そうだ。
今日は、サンマを焼かないといけないんだ。
僕が独り立ちできると、姉に見せるために。

38 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:56:28 ID:iSbP72lo0
肉じゃがを作って、サンマを焼いて。
あぁ、そうだ。
白菜の漬物も用意しないと。

後は、もらった求人票を見せて――

( ;ω;)

――涙が溢れる。
姉に言いたいことがたくさんある。
まだまだ言いたいことがある。

好きだと。
愛していると、伝えたい。
陳腐な言葉でも、何でもいい。

貴女のいない世界などいらない。
貴女のいない世界などどうなろうと知ったことではない。
貴女のいない世界なんか、クソくらえだ。

僕の人生に貴女がいなければ意味がないのだと。
貴女と歩む人生が欲しいのだと。
貴女に褒められる時が、最高に幸せなのだと伝えたい。

この胸にある気持ちを伝えなければ、もう、二度と伝わらない。
頭が混乱し、何を考えているのかも、何を考えるべきなのかも分からない。
感情も、記憶も、何もかもが一気に溢れ出てくる。

( ;ω;)「あ……っ……」

――姉と初めて会った時のことが脳裏に浮かぶ。
夜中、両親に車に乗せられ、僕は冬の山に連れていかれていた。
それがピクニックでないことぐらい分かっていた。

僕を毎日殴って、家の外に放り出して、残飯を投げつけていた両親だ。
消毒と言いながらお湯をかけて、僕が泣き叫ぶのを嗤ってみていた両親だ。
そんな両親が僕に優しくする道理はない。

抵抗する気力も気持ちもなく、僕は段ボールの中に入れられていた。
手足は粘着テープで硬く拘束され、口には雑巾が詰まっていた。

J( 'ー`)し「ねぇあんた、今からでも遅くないから」

(´・_ゝ・`)「あぁ? 前にも言っただろ、駄目だ」

J( 'ー`)し「そこらの変態に売っちゃえば金になるだろ?
     その方が有意義じゃないか」

(´・_ゝ・`)「足がついたら俺たちが売ったのがばれるだろうが。
     誘拐保険に入れて、山に埋めて熊や犬に食わせた方がよっぽど安全だ」

39 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:56:59 ID:iSbP72lo0
J( 'ー`)し「熊が出てきたらどうするんだい?」

(´・_ゝ・`)「44マグナムがあるんだ、大丈夫に決まってる」

J( 'ー`)し「後、保険が降りるのって時間がかかるんじゃないのかい?
     誘拐犯からの電話とかないとあたしら疑われちゃうだろ」

(´・_ゝ・`)「ばっかお前、平気だよ。
      そんなの適当にネカフェ行ってメール送っとけばばれねぇって」

J( 'ー`)し「そうかい、それならいいんだけどさ。
     それにしても臭いねぇ、酷い臭いだ。
     車に臭いが残っちゃうよ」

( ´ω`)

僕は何も言えない。
僕は何もしない。
僕は、もう、何でもよかった。

苦しいだけの人生なら、終わった方がいいと思う。
僕がいない方が両親は喜ぶのだ。
なら、それでいい。

車が止まり、僕は段ボールごと車から蹴落とされる。
痛かった。

(´・_ゝ・`)「へへっ、前に来た時にいい穴があったんだ。
      多分獣が掘った穴だから、また来るだろうさ。
      ほら、そこに入れよ」

父に蹴られ、僕は芋虫の様に体をよじって動く。
月明かりの下、落ち葉の匂いの中。
僕は、車から少し離れた場所にあった深い穴の中に自分から入った。

(´・_ゝ・`)「よーし、後は」

何かがきらめき、僕は反射的に頭を動かしていた。
直前まで頭があった場所に、スコップが突き刺さっていた。

(´・_ゝ・`)「んだよ、避けるんじゃねぇよ」

J( 'ー`)し「そうだよ、大人しくしな」

( ´ω`)

死を願われることは、とても辛い。
言葉で言われるよりも、行動がそれを示している場合はなおさらだ。
でもここで死ねば、僕はもう苦しまなくていいのかもしれない。

40 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:57:25 ID:iSbP72lo0
そして、再びスコップが振り上げられ。
眩い閃光が、頭上から落下してきた。

(;´・_ゝ・`)「ぬわっ?!」

J(;'ー`)し「な、何だい?!」

閃光は最初、球体だった。
やがて形が変わり、人の姿を成し始めた。
だが光は依然として輝き続け、その表情などは見えない。

(:::::::::::)「6j5qafuyq@?」

(;´・_ゝ・`)「ああ?! 何言ってんだ、こいつ!!」

J(;'ー`)し「あんた、こいつ殺してよ!!」

(;´・_ゝ・`)「くっ、バケモンが!!」

(:::::::::::)「f@:mkukt?」

スコップが光に振り下ろされる。
それを受けた光が、再び何か言葉を発する。

(:::::::::::)「wgq@u」

そして手の形をした光が両親を掴むと、軽く放った。
僕に投げていたゴミの様に、両親が車の方に勢いよく飛んでいく。
ぐちゃ、という音がしたのは聞こえたが、穴の中からはどうなったのかが見えない。

(:::::::::::)「6j5f?」

光が、僕に何かを問いかけているように思った。
だけど口の中に入っている雑巾のせいで、僕は何も話せなかった。
尚且つ、話す気力さえもなかった。

(:::::::::::)「……bs@mt
     d@2@yqakbs@m,b\c4sdqkt」

手が伸ばされる。
僕も投げられるのだろうか。
そう思っていると、驚くほど優しく、その手が僕の口から雑巾を取り、手足の粘着テープをはがしてくれた。

何が起きているのかよく分からないまま、僕は光を見上げる。

(:::::::::::)「0qdfwgw@fue」

( ´ω`)「……?」

(:::::::::::)「……:@yb@lter.torbdjw」

41 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:57:52 ID:iSbP72lo0
そう何かを言って、光が僕に触れたまま動きを止める。
暖かかった。
冬の冷たい風の中でも、その暖かさは春の日差しのように感じられた。

(:::::::::::)「これで、少しは分かる?」

それは、人の言葉で、僕にも分かる言葉だった。
優し気な女性の声。
返事の代わりに頷くと、光も頷いた。

(:::::::::::)「名前は?」

( ´ω`)「ほ、ホライゾン」

(:::::::::::)「ホライゾン、よし。
     さっきの二人は誰?」

( ´ω`)「両親ですお」

(:::::::::::)「そうか、その二人は私が殺した。
     私に対して敵対したからだ」

( ´ω`)「はい」

(:::::::::::)「……怒らないのか、ホライゾンは」

( ´ω`)「はい」

(:::::::::::)「そう。 これからどうするの?」

( ´ω`)「……」

分からない。
僕を嫌う人がいなくなって、それで、どうしたらいいのかなんて知らない。

(:::::::::::)「このままだと話づらいかな。
     形を変えよう」

――そして、僕の目の前に非日常が現れた。

( ;ω;)「ねぇ……ちゃ……」

現実に意識が戻り、僕は姉を呼ぶ。
もう、何も見えなかった。
だけど、いつの間にか、僕は姉に抱きかかえられていた。

感じる体温。
届く匂い。
全てが姉のもので、全てが僕の欲した物。

42 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:58:46 ID:iSbP72lo0
( ;ω;)「ぼ……く……」

僕、大丈夫だよ。
そう言おうとしても、喉に力が入らなかった。
姉の手が僕の頬に触れる。

嗚呼。
僕を地獄の淵から救ってくれた時と同じ。
あの時と同じ暖かさだ。

貴女がいれば、それだけで僕はいいのだ。
それだけで世界が続いていく。
それだけで日常が続く。

一緒にいるだけで、良かったのに。
もう。
それだけが。

それだけが、僕の望みなのだ。

( ;ω;)「けほっ……」

口いっぱいに広がる血の味。
そして僕は、最後に全身に姉の体温を感じたまま――

三三三三三三三三三三三三三三三二 ニ - ‐ ‐
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三二 ニ - ‐ ‐
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三二 ニ - ‐ ‐
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三二 ニ - ‐ ‐
三三三三三     さよなら、ねーちゃん     三三三三三三三三三二 ニ - ‐ ‐
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三二 ニ - ‐ ‐
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三二 ニ - ‐ ‐
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三二 ニ - ‐ ‐
三三三三三三三三三三三三三三三二 ニ - ‐ ‐

('A`)「糞っ、寝覚めが悪くなりそうだ」

ホライゾンを殺した男が忌々し気に吐き捨て、今まさに彼を殺した銃を私に向けた。

('A`)「抵抗をするなよ」

ハハ ロ -ロ)ハ「……」

抱きかかえた弟の体温が失われていくのが分かる。
胸に空いた穴の向こうから、血が流れ、私の手と体を赤黒く染める。
命とはあっけのないものだ。

命を失った体は、こうも重いのか。
弟を失う痛みは、こんなにも私の胸を締め付けるのか。
胸に穴が空いたようなこの虚無感と形容し難い痛みが原因で、人は命を落とすのだろうか。

43 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:59:26 ID:iSbP72lo0
ハハ ロ -ロ)ハ「はぁ……」

私は溜息を吐いた。
この弟は自衛のために銃を買って、その結果、自分の命を失うきっかけを手にしてしまった。
そんなこと、しなくて良かったのに。

その場に弟を横たえ、私はまっすぐに目の前にいる敵を睨みつけた。

ハハ ロ -ロ)ハ「どうして放っておかなかった」

('A`)「世の中には二種類の人間がいるんだ。
   誰かがやればいいと思っている奴と、自分でやろうと思うやつだ。
   ここにいるのは、後者の人間なんだよ、VIPPER。

  俺たちは100を救うために1を切り捨てる覚悟がある。
   勿論、さっきお前が脳幹を壊して殺した男もだ」

弟を羽交い絞めにしていた男のことだろう。
人間にしては鍛えていたようだが、私から見たら小枝のようなものだった。

ハハ ロ -ロ)ハ「私はそんな名前ではない」

('A`)「あ?」

ハハ ロ -ロ)ハ「私には弟がくれた名前がある、ハローという名前がな。
        お前らに名前を与えてもらう理由などないし、そもそも初対面なら“さん”を付けるのが礼儀だろ」

('A`)「お前まで頭ピンク色なのかよ。
   人間と宇宙人じゃあ、姉弟になれるわけねぇだろ」

ハハ ロ -ロ)ハ「……もういい。
        お前たちは、もう、いい」

('A`)「生け捕りにしろと言われているが、無理なら俺は躊躇いなくお前を殺すぞ、VIPPER」

ハハ ロ -ロ)ハ「……」

ξ;゚⊿゚)ξ「え?」

河川敷の道路に刺さっていた標識が、土台のアスファルトごとふわりと宙に浮かぶ。

(;'A`)「やばい、撃て!!」

銃弾が雨の様に撃ち込まれる。
放たれた銃弾は全て、私と弟に届く前に地面に落ちていく。

ハハ ロ -ロ)ハ「人間はいつもそう。
       自分が特別と思い込んで、自分勝手にふるまう」

44 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 19:59:48 ID:iSbP72lo0
宙に浮かせた標識を、黒髪の女の顔に向けて飛ばした。
銃弾よりも早い速度で飛来した標識は、女の顔を両断した。

川 ゚ ;◇━┫;*。゚ ・ ゚ 「あぷっ」

ハハ ロ -ロ)ハ「力や権力があれば、それで何でも出来ると思ってしまう」

(;・∀・)つ占「くそっ、グレネード!!」

リンゴ型の手榴弾を投げようとした男の手が、ピンを抜いたまま停止する。

(;・∀・)つ●「手が、動かないっ……!?」

ピンの抜けた手榴弾を持つ手を、自分の口に入れさせる。

(;・∀・)「よ、よせっ! も、ごがあああ!?」

歯を食いしばって受け入れまいとする男の意思を無視し、彼自身の手はでたらめな力で歯を折り、口腔に手榴弾を迎え入れた。
レバーが歯の間から落ち、男の頭が内側から爆散し、血と肉の花火が周囲を赤黒く染めた。
頭を失った体は少しの間立っていたが、結局自立できずに倒れた。

ハハ ロ -ロ)ハ「失って、傷つくまで分からないんだ。
        自分たちは特別な加護があるかのように信じて、過信する」

(;'A`)「ツン、すぐに本部に連絡を入れろ!!
   俺が時間を稼ぐ!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「了解!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「何故? 何故、お前たちは自分の持つ以上の力を求める?」

女が、横転した車に向かって走り出す。
私は一歩、前に踏み出る。
彼らにとって、この一歩は恐怖そのものだろう。

彼らは道具を使って攻撃をするが、私は違う。
私はこの世界に存在する物であれば、触れなくても自在に動かすことが出来る。

(;'A`)「この、化け物が!!」

円柱状の物が私の足元に投げられる。
閃光手榴弾だ。
爆音と閃光で相手の動きを止める道具。

ハハ ロ -ロ)ハ「自己顕示のため? それとも、進化をしていると錯覚したいから?
       優れていると認識して安定したいから?」

それを一瞥して、私は前に進む。
車に向かう女に、投げられた閃光手榴弾を銃弾並みの速度で飛ばす。
閃光手榴弾は女の右膝を関節ごと貫き、バランスを失った女が倒れる。

45 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:00:11 ID:iSbP72lo0
倒れた女の顔と地面の間で、閃光手榴弾がさく裂した。
白い光と大きな音が超至近距離で女の顔を襲った。
広がるはずった光も、音も、衝撃も、全て女一人に集約される。

ξうД⊂)ξ「ぎゃああああああ!!」

目を押さえながら、女が地面でのたうち回る。
物体を触らずに動かすことが出来るのであれば、その内部の化学反応を自在に操ることも出来る。
彼らはあまりにも無知すぎる。

こちらがその気になれば、彼らを一瞬で殺すことも出来るが、今そうしない理由を考えもしない。

(;'A`)「ば、馬鹿なっ!?
   そこまで操れるのか、こいつはっ?!」

ハハ ロ -ロ)ハ「答えろ、人間。
        お前たちは、何故上を目指す」

(;'A`)「VIPPERに答えることは無い!!」

懲りずに銃を撃つ男。
この男が弟を殺した。
この男は、許されないことをした。

復讐などという行為は好きではないが、この男だけは許すことはできない。

ハハ ロ -ロ)ハ「上を目指すために、何故他者を犠牲にする。
        他者への愛を口にしながら、何故だ。
        何故に矛盾と欺瞞に満ち溢れた生き方を選ぶ」

('A`)「黙れ!!」

許されないからこそ、私は訊かなければならない。
人間に対して私が抱いている疑問の、その答えを。

ハハ ロ -ロ)ハ「何故に生存のための最適解を選ばない。
        何故に死に至るまで己の保身に執着する。
        戦争も疫病も、全ては最小限の被害で終わらせられるはずだ。

        だがお前たちは、いつだって経済と自己の生存を選んだ。
        種の保存を最優先としないその生き方、私は理解できない」

('A`)「宇宙人の化け物に、人間のことなんて分かるかよ!!」

ライフルの弾が切れたのか、男は拳銃に持ち替えて発砲を続ける。
いい加減、私の話に答えてもらいたいものだ。
悲鳴を上げ続ける女が不快になったので、その頭を圧縮して肉塊にした。

ξ;。゚ ・ ξ「あぴゅっ」

46 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:00:49 ID:iSbP72lo0
壊れた機械仕掛けの人形のように、女の手足が意味もなく動いていた。
それも不快に思い、私は彼女の体を全て潰した。

ハハ ロ -ロ)ハ「答えを求めているのだ、私は」

('A`)「なら、答えてやるよ。
   これが人間なんだよ」

それは答えではない。
いや、正確に言えば私が聞きたい答えではない。
私は地球に来てから、多くのことを観察した。

学生服に袖を通し、学生であるかのように立ち振る舞って学校を観察した。
人間と同じように生活し、人間と同じ目線で見てきた。
人との交流も、社会と呼ばれるものも経験した。

また、遠隔操作で動かした私の一部――彼らはそれをVIPPERと呼んでいる――から、この街以外の報告を受けている。
人間が敵視しているのはあくまでも大型の私であって、全ての私ではない。
小型化した別の私は既に街の中、人々の生活に入り込んでいる。

そして人間というものを見聞してきた。
その上で、私は男に質問をしたのだ。
この男の言葉は、極めて感情的で、そして逃げるための言葉でしかない。

ハハ ロ -ロ)ハ「――ところが、だ。
        弟は違った。
        彼は違う答えを見せてくれたんだ。

        大多数の中の超少数だろうが、彼は私の疑問に答えるに相応しい存在だった。
        もうその答えを訊くことはできないのが残念で仕方がない」

('A`)「何度でも言ってやる、これが人間って生き物なんだよ。
   そしてここは、お前たちが来るべき場所じゃねぇんだ!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「やはり、お前たちでは答えはでないか。
       最後の質問だ。
       お前の一番大切なものは何だ?」

('A`)「……んだと?」

ハハ ロ -ロ)ハ「これは、お前個人に対する質問だ。
       お前の一番大切なものは何だ、と訊いたのだ。
       お前の命以上に大切なものは何だ?

       人間にはあるらしいじゃないか、自分よりも大切なものが」

('A`)「そんなの、決まってるだろ!!
   この世界だ!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「そうか……よく分かった」

47 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:01:24 ID:iSbP72lo0
ハハ ロ -ロ)ハ「そうか……よく分かった」

その瞬間、私の頭上から緑色の光が降り注いできた。
このような自然現象は地球にはない。
人為的な、かつ人工的な何かが起きている。

('A`)「……へっ、これで終わりだ」

ハハ ロ -ロ)ハ「スポットライト、というわけではないな」

('A`)「お前がVIPPERの親玉だって分かった時から準備をしていたんだよ、俺は。
  時間稼ぎに付き合ってもらって助かったぜ」

私は力を使い、周囲の物体を持ち上げる。
先ほど女の顔を潰した標識や、カバン、死体、薬莢など、一切合切が重力に逆らって空中に持ち上げる。

ハハ ロ -ロ)ハ「……」

(#'A`)「お前の力が凄いのは知っていたさ。
    だから、こっちも人類の力って奴を見せてやる!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「ほぅ」

(#'A`)「時間切れだ、VIIPPRER!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「なるほど……WKTKシステムか」

WKTKは戦争抑止力の名目で打ち上げられた衛星兵器だ。
超高出力のレーザー攻撃を宇宙空間から射出することで、直接敵対勢力を壊滅させ得るとして、一時期話題になっていた。
使用に際しては、世界各国の最高責任者が集う会議で90%以上の承認が必要となり、今までに一度も使われたことがない。

男の口ぶりから察するに、すでに射出の承認は済んでいるのだろう。
もしくは、別の方法を使って超法規的に実行する手段が予めあったのだ。
恐らくは私たちがこの地球に現れてから、承認の段階を飛ばして最優先で攻撃が出来るように整えていたのだ。

そしてそれを口にするということは、射出の入力は既に行われており、準備が終わり次第頭上からレーザーが降ってくるのだろう。
この距離なら当然、男も巻き添えになる。
それを覚悟して、彼らはここで時間を稼いでいたのだ。

弟に接触し、こちらに警戒心を抱かせたのも。
わざわざスーパーの前で弟を拉致しようとしたのも、全てはこの瞬間のため。
私を一か所に留め、確実に殺すための下準備。

48 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:01:58 ID:iSbP72lo0
(#'A`)「どうあがいてもこれで終わりだ!!
    あばよVIPPER!!」


             Hello, goodbye.
ハハ ロ -ロ)ハ「違う。 さよならハローさん、だ」


https://f.easyuploader.app/eu-prd/upload/20200318142246_537843617234594f756c.png

周囲の何もかもを、私は浮上させる。
弟のカバンからノートや花があふれ、宙に浮かぶ。
ノートには今日の夕食の献立について書かれていた。

銃声を聞いていながらも近くで犬の散歩をしていた人間が浮く。
何かを喚いているが、気にすることは無い。
川の水が全て浮き上がる。

魚が空を飛ぶ。
地中深くに埋まっていた岩が、地面から産まれるように浮上する。
頭上の光が細くなり、発射が間もなくであることを予告する。

まるで、舞台のスポットライトが幕引きと共に小さくなるように。

ハハ ロ -ロ)ハ「……時間だ」

(#'A`)「今更何しようが間に合うかよ!!」

死を覚悟した人間の叫びが聞こえる。
だが、そうではないのだ。
ゆっくりと手を伸ばし、私は淡々と言葉を続ける。

       Time to say hello to goodbye
ハハ ロ -ロ)ハ「さよならに挨拶する時間だ」

――初めに、世界は光で満ち溢れた。
光は視覚情報の全てを奪い去り、白い闇をもたらした。
万物は形状を失い、光の中に融解していった。

次に、世界は音で溢れ返った。
音の洪水は聴覚情報の全てを洗い流し、爆発的な無音を生み出した。
万物は声を失い、音の中で一体となった。

そして、世界は姿を失った。
匂いも、温度も、何もかもが無になった。
無の中は驚くほど広大で、全ての感覚が一つになる。

最後に、世界には何かが残された。
それは万物が持つ、質量も色彩も持たない何かだった。
それは光と音に支配された世界に残された、たった一つの何かだった――

49 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:02:24 ID:iSbP72lo0
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┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━
 " " ヾ ; " ; " ; ; ヾ
"ゞ ; ; ; ゞ ; ;ヾ ; ; ヾ ;ゞ
ヾ ; ;";;/" ; ;ヾ ;ヾ ""
; "i "; ;ヾ; ;ヾ; ;メヾ            こうして、人類の時代が終わりを告げた
ii;, メソ ヾ; ;ゞ "   ゙
|i;, |ソ   ""      ゙         私はこの結果に後悔をしていない
Il;: |
!i;: |  ゙                  私は、私の心に従ったのだ
|!;; |
II;; |
从 ゝ,,
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┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━

50 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:03:12 ID:iSbP72lo0
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 " " ヾ ; " ; " ; ; ヾ
"ゞ ; ; ; ゞ ; ;ヾ ; ; ヾ ;ゞ
ヾ ; ;";;/" ; ;ヾ ;ヾ ""
; "i "; ;ヾ; ;ヾ; ;メヾ           
ii;, メソ ヾ; ;ゞ "   ゙                  Hello
|i;, |ソ   ""      ゙   弟のいない世界に    私    が送る言葉があるとしたら
Il;: |
Il;: |                    Goodbye
!i;: |  ゙            それは、“さよなら”に他ならないだろう
|!;; |
II;; |
从 ゝ,,
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51 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:03:42 ID:iSbP72lo0










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 " " ヾ ; " ; " ; ; ヾ
"ゞ ; ; ; ゞ ; ;ヾ ; ; ヾ ;ゞ
ヾ ; ;";;/" ; ;ヾ ;ヾ ""
; "i "; ;ヾ; ;ヾ; ;メヾ
ii;, メソ ヾ; ;ゞ "   ゙     ハロー              グッバイ
|i;, |ソ   ""      ゙     Hello /            / Goodbye
Il;: |
!i;: |  ゙
|!;; |
II;; |
从 ゝ,,
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52 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:06:26 ID:iSbP72lo0
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 " " ヾ ; " ; " ; ; ヾ
"ゞ ; ; ; ゞ ; ;ヾ ; ; ヾ ;ゞ
ヾ ; ;";;/" ; ;ヾ ;ヾ "" 
; "i "; ;ヾ; ;ヾ; ;メヾ     そして私は、
ii;, メソ ヾ; ;ゞ "   ゙      Hello/ さよならの向こう側 /Goodbye
|i;, |ソ   ""      ゙                        を目指す
Il;: |
!i;: |                    再び彼に、会うために
|!;; |
II;; |
从 ゝ,,
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53 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:07:17 ID:iSbP72lo0
世界――スレッド――には無限の可能性がある。
可能性の数だけ世界は分岐し、存在する。
私達はその存在を、チャンネルと呼んでいる。

今回、私が訪れたのは2チャンネル。
即ち、基本となる世界から分岐した二番目のチャンネルということだ。
地球上にいた人類、そして人工物の全てが消え去った世界。

それはあの男が命よりも大切だと言った“世界”を消し飛ばした世界だ。
人類史の長い選択の果てが、あの結末だ。
実に呆気のない結末に、私は溜息を吐いた。

ハハ ロ -ロ)ハ「……ふぅ」

世界消却が済んだ黄昏時の川の傍に、私は佇んでいた。
そこに、唯一存在を消さずにおいた人間がうつぶせに倒れている。
弟を撃ち殺した男。

この男は世界を守る、と言っていた。
大切なものを奪われた人間がどう生きていくのか、私は少しだけ興味があったが、その最期の瞬間だけで十分だとも思った。
人間の文明が失われた世界で、彼は果たして、何を守るというのだろうか。

絶望し、自殺をするかもしれない。
過酷な食物連鎖の末に死ぬかもしれない。
正気を失い、獣のように生きるのかもしれない。

私はゆっくりと目を閉じ、新たなチャンネルへと旅立つ準備を整える。
並行世界の中で弟に再び巡り合える確率は、極めて低いかもしれない。
どの時点で世界が分岐したのか、それは観測してみないと分からない。

私と弟が出会ったあの日。
彼が殺されそうになっていたあの日に至ることのできるチャンネルは、どれだけあるのだろう。
特定のチャンネルを探すという行為は、正に、砂漠の中に落とした砂金を拾う行為に等しい。

チャンネルを移動する時、私は特定の時間に遡ることが出来る。
あくまでも遡るだけであって、早送り、つまり未来に行くことだけは出来ない。
未来のチャンネルは存在しないため、道がないのである。

未来はその瞬間に存在する全てが影響し、作り上げていくのだ。
毎秒、毎瞬に世界は増減を繰り返す。
こうして世界を観測しているだけでも、世界は増え続ける。

私はその中から、私が求める世界を見つけ出したい。
私を姉と慕う彼が幸せを手にすることのできる世界。
その世界で彼がどう終わりを迎えるのか、それが知りたい。

世界の分岐点は、彼の両親がまともな人間である必要がある。
片方が違えばそれだけで彼が生まれる確率はなくなるためだ。
両親の生い立ちが違えば出会うこともなく、性交することもない。

54 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:07:38 ID:iSbP72lo0
要は、彼が生まれてからの両親が問題なのだ。
正に、それが問題だった。
彼の両親が虐待をしなければ、彼はあの山に現れなかった。

そして、私を頼ることもなかった。
つまるところ、彼の幸せを願う以上は姉と弟という関係を続けるのは非常に難しいということだ。
無論、私の一部を世界中に派遣し、観測をしなければあの男たちが現れない可能性もある。

あくまでも可能性でしかなく、確実性はない。
常に効率と確実性を重要視してきた私の生き方を振り返れば、今の状況が如何に愚かしいか、よく分かる。
感情に身を委ね、私は地球の歴史を大きく書き変えてしまった。

本来、私たち“チャンネラー”は歴史に対して不干渉であるべきなのだ。
これは私の独断であり、チャンネラーとしては極めて誤った判断と言える。
現に、今こうしてチャンネルを探している間にも、仲間たちからの声が絶えない。

  ∧_∧
 ( ´∀`) < どういうつもりだモナ?
 (    )    歴史に介入するだけでなく、文明を一つ滅ぼした――スレッドストッパー――理由は何だモナ?
 | | |
 (__)_)

ハハ ロ -ロ)ハ「回答拒否。 断固拒否」

    _,,..,,,,_
   / ,' 3  `ヽーっ  回答を要請するNP3228。
.  l   ⊃ ⌒_つ  貴殿の行為は我々の存在意義に対する明確な反逆である。
   `'ー---‐'''''"

  ∧_∧
 ( ´∀`) < 激しく同意。
 (    )    我々は非生産的な存在で、観察者であり傍観者――ROM――でなければならないモナ。
 | | |    存在意義に反する行為だモナ。
 (__)_)

ハハ ロ -ロ)ハ「私はNP3228ではない。
       私は、ハローだ」

  ((( )))
  (,;´Д`) < 何を言う、NP3228。
  (     )   我々の名は――
   |  |  |
  (___)_)

ハハ ロ -ロ)ハ「私は、ハローだ。
       貴様ら老いぼれの言うことなど、聞くつもりはない」

55 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:08:03 ID:iSbP72lo0
   /⌒ヽ    スレッド
  / ´_ゝ`) < 地球に干渉しすぎて気が狂ったか、NP3228……
  |    /
  | /| |
  // | |
 U  .U

ハハ ロ -ロ)ハ「いいや、いたって正常だ」

  ∠ ̄\∩
    |/゚U゚|丿 < NP3228、これ以上の暴言は激しく許されない。
  〜(`二⊃
   ( ヽ/
    ノ>ノ
   UU


ハハ ロ -ロ)ハ「ならばどうする、私を始末――BAN――するか?」

               ____
             /      \
           / ─    ─ \
          /   (●)  (●)  \    それを望むなら、そうするお。
            |      (__人__)     |
          \     `⌒´    ,/
          /     ー‐    \

ハハ ロ -ロ)ハ「望むわけがないだろ、馬鹿かお前は」

  彡(゚)(゚)
  彡  と < なんや、随分と反抗的な言葉やな。
  (   )   NP3228の望みは何や?
  |||
  (_)_)

現在チャンネラーの中で最も発言力がある“J・FOX”が他の面々をなだめながら発言した。

ハハ ロ -ロ)ハ「私が望むチャンネルへの移動、それだけだ」

  彡(゚)(゚)
  彡  と < ええで。 ただし、条件を二つ、つけさせてもらうわ。
  (   )
  |||
  (_)_)

ハハ ロ -ロ)ハ「条件とは何だ」

56 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:08:31 ID:iSbP72lo0
  彡(゚)(゚)
  彡  と < チャンネルへの移動は、一度だけや。
  (   )  そして、その時からNP3228の持つ一切の権限・能力をはく奪する。
  |||  BANとまではいかんが、十分な処罰になる。 どうや?
  (_)_)

ハハ ロ -ロ)ハ「つまり、地球人として生きろ、と?」

  彡(゚)(゚)
  彡  と < せや。 そんなにあの星に執着するんなら、その方がえぇやろ。
  (   )   それともう一つ。
  |||   これまでの全ての記憶を消させてもらうで。
  (_)_)

私は逡巡した。
記憶を消すということは、私は弟を救うということも忘れるということ。
名前も何もかもを失って、私は、果たして彼を救えるのだろうか。

だが迷うだけの時間も、そして、選択肢も私にはなかった。
彼を救える可能性が生まれるのであれば、チャンネルを切り替える力がはく奪されたとしても惜しくはない。

ハハ ロ -ロ)ハ「いいだろう」

  彡(゚)(゚)
  彡  と < 飛びたいチャンネルなら、ワイが見つけておいたで。
  (   )   5チャンネルや。
  |||
  (_)_)

ハハ ロ -ロ)ハ「……どうやったんだ」

  彡(゚)(゚)
  彡  と < ワイの仲いい奴があの星にいるんや。
  (   )   頭の切れる原住民で、どのチャンネルでもあるタイミングでこっちの存在に気づいとる。
  |||   せやから、もういっその事早い段階で接触したろ、思うてな。
  (_)_)

ハハ ロ -ロ)ハ「そうか」

  彡(゚)(゚)
  彡  と < 行くんなら早めに行きぃや。
  (   )    逝ってよし、ってやつや。
  |||
  (_)_)

ハハ ロ -ロ)ハ「そうさせてもらう」

私は意識を集中し、チャンネルへと移動を開始する。
先ほどまで見えていた他のチャンネラー達の姿は消え、最後に何か言葉が聞こえた気がしたが、次の瞬間にそのことも忘れていた。

57 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:09:00 ID:iSbP72lo0
                    Say hello
「もし向こうでショボンにあったらよろしく言っといてくれや」

                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                             ┃
                                ・
                                ・
                                ・
                               :
                               :
                               :
                             |



                             |
                             ¦
                                  !

青白い月が頭上に輝く冬の夜空。
ざわざわと波を思わせる木々の音が、優しく響く夜だった。
それが、私の最初の記憶だった。

ハハ ロ -ロ)ハ「……あ?」

他には何もなかった。
何が私に起きて、何が目的でここにいるのかも分からない。
名前は分かる。

常識も、言語も分かる。
ただ、記憶と呼ばれるものが私にはなかった。
周囲を見渡し、ここが山中であることが分かった。

眼下に見える街の明かりを見て、私は下山するべきであると判断した。
幸いなことに車道はすぐに見つけることが出来た。
自分の過去を思い出せないというよりも、そもそもそんなものがあるのかも分からない。

しばらく歩いていると、後ろから車の近づく音がした。
反射的に音の方を見ると、白いパトカーだった。
パトカーは私の少し先で停車し、そこから警官姿の男が降りてきた。

('A`)「どうしたんだ、お嬢ちゃん」

ハハ ロ -ロ)ハ「いや……その……」

58 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:09:40 ID:iSbP72lo0
('A`)「迷子、ってわけじゃないだろ?
   何かあったのか?」

ハハ ロ -ロ)ハ「よく、分からないんデス」

('A`)「何?」

ハハ ロ -ロ)ハ「どうも、記憶喪失ってやつみたいなんデス」

('A`)「マジかよ……
   名前は分かるか?」

ハハ ロ -ロ)ハ「ハロー、デス」

('A`)「それはファミリーネーム? それとも?」

ハハ ロ -ロ)ハ「多分、ファーストネーム」

('A`)「分かった。 それじゃあ少し待ってな」

男はそう言ってパトカーに戻り、無線で何かを報告している。
ほどなくして、男が戻ってきた。

('A`)「このまま君を保護することにした。
   今署の人間がハローって名前の行方不明者を調べてるところだから、ひとまず安心してくれ」

ハハ ロ -ロ)ハ「ありがとうございマス、えぇと……」

('A`)「ドクオだ。 少しの間だけよろしくな。
   あったかい紅茶が車内にある。
   安心してくれ、何も悪いことは起きないさ」

ドクオはそう言いつつ、肩に装着した小型のカメラを指で示した。
確か、警官の言動を録画するためのボディカメラと呼ばれるものだ。
あまり得意ではないのか、微笑を浮かべた彼は恭しく後部座席のドアを開けた。

私は車内に入り、暖房のありがたさに思わず溜息を吐く。

('A`)「紅茶に砂糖は?」

ハハ ロ -ロ)ハ「あ、えっト」

('A`)「疲れた時は砂糖を摂るのがいいらしい。
   ちょっとだけ待ってくれよ、俺が毒見をしてやる」

紙コップをグローブボックスから取り出して、ドクオはそこに魔法瓶から紅茶を注ぐ。
立ち上る湯気がその暖かさを如実に語っていた。
シュガースティックの封を切って半分ほどコップに入れ、飲んで見せた。

59 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:10:03 ID:iSbP72lo0
('A`)「うん、美味い。
   ウチの署はケチだが、紅茶はダージリンにしてくれるんだ」

新しい紙コップを私に持たせ、ドクオはそこに紅茶と砂糖を入れてくれた。
その芳醇な香りに、私は礼を言うよりも先に一口飲んでいた。

ハハ ロ -ロ)ハ「スズ……
       あ、美味しいデス」

('A`)「そいつは良かった。
   じゃあ、今から署に向かうからシートベルトを締めてくれ」

そしてパトカーがゆっくりと坂道を下って行く。
彼は何も質問をしようともせず、ラジオの音と紅茶の香りだけが車内を満たしていた。

('A`)「ん? なんだ、あの車……」

ドクオの視線の先に、一台の車が停まっていた。
林の傍に停められた車はアイドリング状態で、近くに人影は見えなかった。

('A`)「わりぃ、ちょっと見てくる。
   いいか、外に出ないでそこで伏せてるんだ」

パトカーを不審な車から離れた場所に停め、ドクオは出て行った。
私は言われた通りにシートの上に伏せ、彼が戻るのを待った。

(#'A`)「手前ら何やってんだ!!」

それは、ドクオの怒声だった。
先ほどまでの彼が発したとは思えない程、その声は怒りに満ち、聞いた者を怯えさせるほどの迫力があった。

(#'A`)「銃を捨てて、その場に伏せろ!!」

不審者が犯罪者に変わった瞬間だった。

(#'A`)「捨てないと発砲するぞ!!」

そして、銃声が三つ木霊した。
声はそこで終わり、私は時間が過ぎるのをそのまま待った。
跫音がパトカーに近づいてきたので、私は窓の外を見た。

('A`)「……わりぃ、ちょっと署に行くのが遅れる。
   ちょっとそっちに詰めてもらえるか?」

後部座席の扉を開けたドクオが、苦虫を潰したような顔をしていた。
彼はすぐ傍らから、一人の少年を抱き上げた――

60 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:10:31 ID:iSbP72lo0
                             ┃
                             ┃
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                             ┃
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                             |
                             ¦
                                  !

僕は、その日のことをよく覚えている。
両親に殺されかけていた僕は、白い光に救われたのだ。

(´・_ゝ・`)「んだよ、避けるんじゃねぇよ」

J( 'ー`)し「そうだよ、大人しくしな」

( ´ω`)

振り被られたスコップ。
それが今まさに振り下ろされるという瞬間に、白い光と怒鳴り声が聞こえた。

(#'A`)「手前ら何やってんだ!!」

眩いライトと共に、男の人は両親に拳銃を向けていた。
彼の服装が警察官であることを物語っている。

(;´・_ゝ・`)「げっ、警察?!」

J(;'ー`)し「ちょっと、何でこんなところに」

(#'A`)「今すぐそのスコップと銃を捨てて、地面に這いつくばれ、糞虫が」

男の人の声に、両親は従おうとはしなかった。

(;´・_ゝ・`)「ちょっと待ってくれよ、これはゲームをしてい――」

(#'A`)「捨てないと発砲するぞ!!」

J(;'ー`)し「なめるんじゃないよ!!」

61 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:11:02 ID:iSbP72lo0
母がそんな事を口にしながら、父の腰からリボルバーを抜こうと手を伸ばした。
次の瞬間、母の米神から血飛沫が上がった。
そしてそのリボルバーを父が掴み、警官に向け、銃爪を引いた。

銃弾は明後日の方向に飛び、警官は恐ろしいほど正確に二発目の銃弾を父の胸に撃ち込んだ。

(#'A`)「ああっ、糞!!」

吐き捨てるようにそう言って、警官は拳銃をホルスターにしまった。
無線機らしきものを手にし、何かを呟く。
それが終わると、彼は僕を穴から引き上げ、抱きかかえてくれた。

('A`)「声は聞こえるな? もう大丈夫だ、お前は生きてる」

( ´ω`)「お……」

('A`)「俺はお前を傷つけない。
   分かるか? 俺は、お前の味方だ」

( ´ω`)「味方? 僕の?」

('A`)「あぁ、そうだ」

( ´ω`)「どうして?」

('A`)「そりゃあ決まってるだろ。
   俺は子供と善人の味方で、101人を救う男さ。
   お前は子供で善人だ。 だから、俺はお前の味方だ」

( ´ω`)「……?」

彼の言葉の意味を、僕はよく理解できていなかった。
茫然自失とする僕を、彼は連れて森を抜け出た。
少し歩いたところにパトカーが停まっていた。

('A`)「寒かっただろ? 車の中が暖かいから、そこで一緒に待とう」

車のドアを開き、彼は言った。

('A`)「……わりぃ、ちょっと署に行くのが遅れる。
   ちょっとそっちに詰めてもらえるか?」

それは車の中にいる、もう一人の人間に対しての言葉だった。
そして僕は、その瞬間を決して忘れることは無い。

ハハ ロ -ロ)ハ

それまで、僕の日常は暴力と苦しみに満ちていた。
そんな僕からしたら、その人は、僕にとっての非日常そのものだった。
金髪碧眼で、赤い淵の眼鏡をかけた非日常。

62 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:11:31 ID:iSbP72lo0
幼心ながらも、僕はその人の容姿に一目ぼれをしていた。
何と奇麗なのだろうか。
肩まで伸びた金髪はサラサラと風に揺れ、透き通った碧眼は全てを見通しているかのよう。

         Hello
ハハ ロ -ロ)ハ「初めましテ。 ハローでス」

( ´ω`)「は、初めまして、ホライゾンですお」

('A`)「ちゃんと挨拶できるなんて偉いじゃないか。
   俺はドクオだ。
   ホライゾン、紅茶は飲めるか?

   二人とも腹減ってるだろ、チョコバー食べるか?」

――その日から、非日常が僕の日常になった。
まず、警察署の前に僕はハローさんと一緒に病院に連れていかれた。
二人は同じ病室になり、毎日少しずつ会話が増えていった。

ハハ ロ -ロ)ハ「ホライゾン、私のにんじんとそっちのトマト交換しヨウ」

( ^ω^)「えぇ…… 僕、ハンバーグの方がいいですお」

ハハ ロ -ロ)ハ「いいかホライゾン、よく聞くンダ。
        お前はにんじんが苦手ダ」

( ^ω^)「うん」

ハハ ロ -ロ)ハ「私はトマトが好きダ」

( ^ω^)「うん」

ハハ ロ -ロ)ハ「だから交換しヨウ」

( ^ω^)「ちょっとよく分からないお」

ハハ ロ -ロ)ハ「空は何故青いか知っていルカ?」

( ^ω^)「知らないですお」

ハハ ロ -ロ)ハ「つまりそういうこトダ。
       知らなくても納得しなければならないことがアル。
       それに、にんじんを食べられる男の子はモテるらしいゾ」

入院してから、一か月が過ぎた頃。
僕たちに大きな変化が訪れた。

('A`)「よう、元気そうだな」

63 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:12:12 ID:iSbP72lo0
ドクオさんがお見舞いに来てくれた。
僕たちは別室に呼び出され、ドクオさんは短い言葉で要件を伝えてくれた。

('A`)「これから先のことについての話だ」

まずドクオさんは、僕たちの状況についてそれぞれ話をした。
僕は両親がいなくなったことに加えて、親戚もいない。
そのため、施設に送られることになる。

また、ハローさんに関する情報は何も見つかっておらず、僕と同じように施設に送られると話した。
それぞれ年齢が違うため、異なる施設に送られることになると言われ、僕は戸惑った。
彼女との日々を手放すのは非常に心苦しく、正直に言えば、嫌で嫌で仕方がなかった。

('A`)「で、一つ確認がある。
   お前たちは一緒にいたいか?」

二人は同時に頷いた。
それを見て、ドクオさんは少し驚いた風に目を見開いたが、すぐに不器用な笑顔を浮かべた。

('A`)「なら、俺と家族にならないか?」

僕とハローさんは二人で顔を見合わせ、それからドクオさんを見た。

('A`)「あの日お前たちを見つけたのは何かの縁だと思ってな、勿論、嫌なら別にそれで構わない」

ハハ ロ -ロ)ハ「ドクオさん、結婚してるノ?」

(;'A`)「随分と心に来る一言だな。 答えはノーだ。
   俺は独身男だ」

ハハ ロ -ロ)ハ「やっぱり、そうだと思っタ」

(;'A`)「お前たちを引き取ったら、俺はしばらくの間在宅での仕事になる。
   家を留守にすることは無いし、いざとなれば女の同僚が来てくれるからそこは安心してくれ。
   あと、こう見えて料理は得意なんだ」

机の下で、ハローさんが僕の手を握る。
僕はその手を握り返す。
僕たちは少しだけ笑って、ドクオさんに言った。

ハハ ロ -ロ)ハ「お世話になりマス」

( ^ω^)「僕も、お願いしますお」

('A`)「そうか、そりゃあよかった。
   晩飯は何を食いたい?」

僕とハローさんは、前から不思議と食べたいものが一致していた。
理由は分からない。
僕はそれを食べたことがないはずなのに、その料理の名前はすらりと出てきたのだ。

64 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:14:58 ID:iSbP72lo0
だから、僕たちは打ち合わせがなくても、同時に同じ言葉を言うのだった。






ハハ ロ -ロ)ハ『肉じゃがとサンマの塩焼き』(^ω^ )






そして、この日から。
僕が憧れた非日常が、僕の日常になったのだ――


















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 " " ヾ ; " ; " ; ; ヾ
"ゞ ; ; ; ゞ ; ;ヾ ; ; ヾ ;ゞ
ヾ ; ;";;/" ; ;ヾ ;ヾ ""
; "i "; ;ヾ; ;ヾ; ;メヾ 
ii;, メソ ヾ; ;ゞ "   ゙
|i;, |ソ   ""      ゙
Il;: |               ハローグッバイのようです
!i;: |  ゙              ハハ ロ -ロ)ハ(^ω^ )
|!;; |
II;; |
从 ゝ,,                                           The END
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┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━

65 ◆T0ARMD6X22:2020/04/25(土) 20:16:34 ID:iSbP72lo0
使用イラストは
【登録ナンバー】No.24
となります
素敵なイラスト、ありがとうございました

66名無しさん:2020/04/25(土) 20:36:30 ID:Bpm3Q5uc0
めちゃくちゃ面白かった、乙です

67名無しさん:2020/04/25(土) 20:39:23 ID:fAyqXUBA0
おつ!!

68名無しさん:2020/04/26(日) 01:21:18 ID:QXnDDyIo0
掲示板メタとAAネタをここまで上手く料理するとは。良いもん読めた。めちゃめちゃ面白かった乙

69名無しさん:2020/04/26(日) 05:37:19 ID:9QCWk1ew0
素晴らしい

70名無しさん:2020/04/26(日) 19:23:55 ID:4y7Utq7E0
おつ

71名無しさん:2020/04/28(火) 05:27:06 ID:qlK3Pubw0
めちゃくちゃ引き込まれてしまった
おつおつ

72 ◆S/V.fhvKrE:2020/05/07(木) 00:05:53 ID:mUl6yEVs0
【投下期間終了のお知らせ】

主催より業務連絡です。
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73名無しさん:2020/05/11(月) 01:05:23 ID:gm3q8KD60
めちゃくちゃよかった大好きだこの話

74名無しさん:2020/05/11(月) 14:12:14 ID:nc76uDC.0
乙です、すごく面白かった
この三人の日常がいつまでも続いて欲しい


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