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スピカを沈めるようです
1
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 15:19:36 ID:.Jf8dnAE0
ラノブンピック参加作品
イラストはNo32をお借りしました
https://f.easyuploader.app/eu-prd/upload/20200318142340_34676d6a654d666c4c51.jpg
88
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:31:24 ID:.Jf8dnAE0
( ^ω^)『……あ』
僕らがちょうど横断歩道を渡ろうとしたその瞬間、信号が点滅し始めた。
ここの道路は幅が短い。渡ろうと思えば渡ってしまえる。
ζ(゚、゚*ζ『ここの信号長いんだよねぇ』
( ^ω^)『まぁ、のんびり待つお』
急ぐ必要もなかったし、デレを走らせるのも気が引けた。
何よりこれで、もう少し長くデレと手を繋いでいられる。ちょっと気持ち悪い考えだけど。
点滅していた信号が切り替わる。
これでもう渡ることはできない。なのに、動く影があった。
89
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:32:42 ID:.Jf8dnAE0
(; ^ω^)『お?』
*(‘‘)*
僕らの向かい側にいた女の子が、赤信号だというのに横断歩道を渡りだした。
余程急いでいるんだろうか、女の子は険しい表情をしていた。
重そうなランドセルを背負って、小走りで僕たちのほうに向かってくる。
車がいなくてよかったと僕が安堵するのと、
後ろの路地から車が左折してくるのは、ほとんど同時だった。
90
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:33:40 ID:.Jf8dnAE0
(; ゚ω゚)『――!!』
ここは車通りも、人通りも少ない。
だから運転手は油断していたんだろう。カーブにしてはスピードが出すぎていた。
(; ゚ω゚)『危ないっ!!』
叫んで、横断歩道をほとんど渡り終えていた女の子に手を伸ばす。
女の子も迫ってくる車に気付いたのだろう。だけど重い荷物を抱えた体が咄嗟に動くわけがない。
手を伸ばす。めいっぱいに。
届かない。だめだ。間に合わない――
91
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:34:19 ID:.Jf8dnAE0
そして、僕の真横からデレが飛び出した。
.
92
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:35:07 ID:.Jf8dnAE0
( ゚ω゚)『デ――』
一瞬だった。
デレが女の子を突き飛ばしたのも、女の子が尻もちをつくように倒れたのも。
車の急ブレーキが間に合わず、デレが跳ね飛ばされたのも。
弾き飛ばされたデレは数メートル先に倒れこみ、タイヤがその体に乗り上げた。
車体と地面の隙間から、さっきまで繋いでいた手が見える。
薬指のスピカの指輪が、生々しく光っていた。
93
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:36:03 ID:.Jf8dnAE0
( ω )『……あ……』
手はぴくりとも動かない。
( ω )『あ、あ……』
何か赤いものが、アスファルトの上で珊瑚状に広がっていく。
( ω )『ああああ!!! うわああああああ!!!』
力の限り叫んだ。それは覚えている。
だけどそのあとどうなったのかは、まったく覚えていない。
***
94
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:36:55 ID:.Jf8dnAE0
( ω )「僕は、デレが好きだお……今でもまだ、好きなんだお……」
('A`)「義務感や惰性で想い続けてるなら、それはもう好きじゃないだろ」
('A`)「……お前もいい加減、自分の人生を生きるべきなんだって」
('A`)「だって、」
( ω )「もういいお、宇田。わかってるお」
( ω )「デレはもう、死んでしまったんだお」
( ;ω;)「もう、どこにもいないんだって……わかってるお……」
95
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:37:55 ID:.Jf8dnAE0
デレを喪ったとき、彼女を永遠に愛し続けると誓った。
だけどそれは、死んだ恋人を想い続けるという行為に酔っていただけなのかもしれない。
純粋な恋心が醜い執着に変わったのは、いったいいつからだったんだろう。
想い続けることが義務になったのは、いったいどの瞬間だったんだろう。
96
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:38:57 ID:.Jf8dnAE0
恋の寿命は三年だという。
僕の恋は、いったい何年続いたんだろう。
甘やかな匂いも、血の匂いも、彼女を愛していたことも、すべて覚えているのに。
どうして思い出に変わってしまうんだろう。
それが大人になるということなら、僕は子供のままでよかった。
ずっとデレのことを好きでいたかった。
『好きになってはいけないと思うのが恋のはじまりで、好きでいなければいけないと思うのが恋の終わり』だと、昔どこかで聞いた。
本当に、その通りだと思う。
***
.
97
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:40:36 ID:.Jf8dnAE0
ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さん、星を見に行きませんか」
津出さんに誘われたのは終業後のことだった。
( ^ω^)「今日かお?」
ξ ゚⊿゚)ξ「はい。内藤さんの予定がなければ、ですけど」
( ^ω^)「予定はないお」
津出さんに続いて会社を出た。
僕らの会社の近くには公園がある。てっきりそこで見るのかと思って、のんびりついていった。
だから着いた先が、津出さんの車だったことには驚いた。
98
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:41:12 ID:.Jf8dnAE0
(; ^ω^)「車で行くのかお?」
ξ ゚⊿゚)ξ「はい。うちの近く、星がよく見えるんです」
( ^ω^)「津出さんの家って……」
津出さんが口にしたのは、確かに星がよく見えそうな場所だった。
はっきり言ってしまえば、街灯の少ない田舎というやつ。
津出さんが自家用車で通勤しているのにも納得がいく。あの場所なら交通機関は使いづらい。
99
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:41:55 ID:.Jf8dnAE0
ξ ゚⊿゚)ξ「酔ったら言ってください」
いったいどれだけ荒い運転なのかと身構えたものの、拍子抜けするほど優しく車は発進した。
通勤路ということもあってか、迷う素振りもなくスイスイと進んでいく。
なんとなく口を開きづらいのは、この前のことがまだ尾を引いているからだろう。
ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さん、酔いました?」
( ^ω^)「え? あ、大丈夫だお」
ξ ゚⊿゚)ξ「そうですか、よかったです」
気がついたら十分近く経っていた。
何か話さないとと話題を探してみたけど、結局最後まで気の利いた話題が浮かばなくて、何も言うことができなかった。
100
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:42:31 ID:.Jf8dnAE0
ξ ゚⊿゚)ξ「ここです」
車はスーパーの駐車場に停まった。
二十四時間営業ではないスーパーは暗く沈黙しているし、当然駐車場に停まっているのもこの車しかない。
窓越しに見上げる空は黒いキャンバスのようで、白い星がいくつも散りばめられていた。
高いビルや電灯がほとんどない環境が、空本来の美しさを遺憾なく発揮させている。
津出さんの趣味が星を見ることだということも理解できる。
きっと仕事帰りで疲れているとき、こうして車を停めて空を見上げるんだろう。
それはとても癒されそうで、少し羨ましいと思った。
101
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:43:10 ID:.Jf8dnAE0
( ^ω^)「きれいだおね」
ξ ゚⊿゚)ξ「そうでしょう。私のお気に入りの場所です」
( ^ω^)「お気に入りの場所なのに、僕なんかに教えていいのかお?」
ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さんだから、教えたいと思ったんです」
( ^ω^)「……」
本当は、最初からわかっていた。
津出さんは僕に好意を持ってくれている。
僕のどこに惹かれる要素があるのかわからないけど、恋は理屈じゃないということを、僕はよく知ってる。
102
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:43:51 ID:.Jf8dnAE0
ξ ゚⊿゚)ξ「私、星の中でもスピカが一番好きなんです」
( ^ω^)「前にも言ってたおね。おとめ座は春の星座だから、ちょうど今の時期だお」
ξ ゚⊿゚)ξ「ええ。でもなかなか見つけられなくて」
( ^ω^)「あれだお、あの白い星。あれがスピカだお」
ξ ゚⊿゚)ξ「あ、見つけました。あれがそうなんですね」
( ^ω^)「そうだお。だからあれが麦の穂先だおね」
ξ ゚⊿゚)ξ「麦?」
( ^ω^)「スピカは麦を持った女神の形なんだお」
103
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:44:48 ID:.Jf8dnAE0
僕が指さしたのが助手席側の窓だったせいか、津出さんは僕に身を寄せる形で空を見る。
むずがゆいような、よくわからない感情。
きっと女子に密着されるのに慣れてないせいだ、と結論づけた。
気を散らすために、おとめ座についての雑学をぺらぺらと語り続ける。
デレを想って調べた、付け焼刃の知識を。
104
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:45:28 ID:.Jf8dnAE0
( ^ω^)「スピカだけがおとめ座ってわけじゃないんだお」
ξ ゚⊿゚)ξ「え?」
( ^ω^)「スピカはおとめ座の中でも一番目立つってだけで、他にも色んな星が集まってるんだお。ポリマとか、ミネラウバとか」
ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さん、詳しいんですね」
( ^ω^)「wikipedia様々だお」
津出さんが微笑む。その笑みがなんとなく寂しそうに見えたのは、気のせいだろうか?
ξ ゚⊿゚)ξ「私、おとめ座ってスピカのイメージしかなかったです」
( ^ω^)「仕方ないお。一番有名だし、実際目立つし。それにおとめ座の他の星は見つけづらいから」
ξ ゚⊿゚)ξ「きっとスピカの光が強すぎるんですよ。だから他の星が目に入らないんです」
105
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:46:47 ID:.Jf8dnAE0
今度は僕が微笑む番だった。
津出さんの解釈はまるで僕自身を指しているようで、胸に刺さる。
だって、スピカがあまりにも輝き続けるから。
忘れられなくて、忘れたくなくて、僕は手を伸ばし続けた。
星に手なんて届くはずもないのに。
強すぎる光は、人を盲目にさせる。
僕はスピカに目を焼かれてしまって、他の星が見えない。
こうして隣にいて、僕を見つめている津出さんの顔も。
106
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:47:23 ID:.Jf8dnAE0
ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さん」
ξ ゚⊿゚)ξ「私、あなたが好きです」
( ^ω^)「……」
ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さんは、私のこと嫌いですか?」
ξ ゚⊿゚)ξ「私じゃだめですか?」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「津出さん、ごめ」
黒い影が視界いっぱいに広がるのと、唇に温かいものが触れるのはほとんど同時だった。
107
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:48:25 ID:.Jf8dnAE0
津出さんは座席ごと僕を抱き締めるように、僕に覆い被さっていた。
とはいっても相手は女の子だ。力なら圧倒的に僕が勝る。
津出さんの肩を押して、無理やり引きはがした。
ルームランプが津出さんを照らして、その顔を露わにしていく。
津出さんの表情はいつものツンと澄ましたものじゃなかった。
笑っていた。
ξ ー )ξ「内藤さん、本当に馬鹿ですね」
ξ ー )ξ「星もいつかは死ぬんです。永遠に輝き続ける星なんてない」
ξ ー )ξ「スピカなんて、もうどこにもないんですよ」
宇田に言われた『執着』という言葉が過ぎる。
勝ち誇ったような顔をした津出さんの顔が近付いてくる。
今度は拒めなかった。
***
.
108
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:49:44 ID:.Jf8dnAE0
その夜、夢にデレが出てきた。
僕らはあの日と同じように、二人で一緒に歩いていた。
違うのは、僕とデレの手が繋がれていないことだけ。
数歩先を行くデレ。その後ろ姿を追うような形で僕が歩く。
当然だけど顔は見えない。
デレがどんな顔だったのか、もうおぼろげにしか思い出せない。
109
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:50:36 ID:.Jf8dnAE0
ζ( *ζ「ボート、いつ乗りに行こっか。今月だとまだ寒いかなぁ」
( ^ω^)「デレ」
ζ( *ζ「あ、私お弁当作って行くね! こう見えても料理得意なんだよ」
( ^ω^)「デレ」
ζ( *ζ「ブーンくん、おかず何がいい? 唐揚げ? 卵焼き?」
( ^ω^)「僕と別れてほしいお」
( ^ω^)「他に好きな子ができちゃったんだお」
110
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:51:39 ID:.Jf8dnAE0
( ^ω^)「十年も付き合わせたのにこんな結末でごめんお」
( ^ω^)「ずっと好きでいられなくてごめんお」
( ^ω^)「でももう、前を向いて生きなきゃいけないから」
( ^ω^)「だから、もうデレのことは、忘れたいんだお」
ζ( *ζ「……」
ζ( ー *ζ「ずっと好きでいるって、言ったのに」
ζ( ー *ζ「嘘つき」
111
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:52:26 ID:.Jf8dnAE0
それ以来、デレが夢に出てくることはなくなった。
頬を触ってみたけど、やっぱりそこは乾ききっていて。
デレを想って泣いた日々は、もう手が届かないほど遠くなったんだと知った。
***
.
112
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:54:44 ID:.Jf8dnAE0
ξ ゚⊿゚)ξ「男の人って、いつまでも初恋を引きずりますよね。そういうの、一途というより不毛だと思います」
( ^ω^)「ロマンチストなんだお」
日曜日の公園は賑わっていて、ボート乗り場には列ができていた。
雲ひとつない快晴だけど、日差しは柔らかくてうっとおしさは感じない。
僕たちは湖――と呼べばいいのか池と呼べばいいのか――のちょうど真ん中に陣取っていた。
たまに他のボートが横を通り過ぎていくものの、大体は僕らと同じように、思い思いの場所でぷかぷかと浮いている。
113
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:55:19 ID:.Jf8dnAE0
ξ ゚⊿゚)ξ「ちゃんと持ってきました?」
( ^ω^)「……持ってきたお」
ポケットから指輪を取り出して、津出さんに見せた。
僕たちがこうしてボートに乗っているのは、何もピクニックに来たわけじゃない。
ξ ゚⊿゚)ξ「ゴミ箱に捨てるなんて最期じゃあんまりですもんね」
デレとの思い出であるこの指輪を、捨てるためだ。
114
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:55:59 ID:.Jf8dnAE0
デレが乗りたがっていたボート。
だけど今、僕の目の前にいるのはデレじゃなく津出さんだ。
髪型や顔立ちこそよく似ているものの、最近では津出さんにデレを重ねることもなくなっていた。
少しずつ自分の中からデレが消えていく。
それを拒む気持ちすら薄れていく。
「宇田は間違っていなかったんだ」と冷静に思えることこそが、僕の恋が終わってしまった証左だと思った。
( ^ω^)「……」
もう一度、指輪を見る。
ところどころ黒ずんだ指輪。
デレの指に嵌っていたときの輝きは、もう見えない。
115
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:56:47 ID:.Jf8dnAE0
ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さん」
( ^ω^)「……わかってるお」
呆気なく、音もなく、僕の手から指輪は滑り落ちた。
濁った水に身を潜らせ、すぐに見えなくなってしまった。
後に残るのは、水面の小さな波紋だけ。
( ^ω^)「……」
終わった。
僕の十年間が、こんなにも呆気なく。
116
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:57:25 ID:.Jf8dnAE0
ξ ゚⊿゚)ξ「……内藤さん?」
( ;ω;)「……お……」
ξ ゚⊿゚)ξ「大丈夫ですか?」
( ;ω;)「ご、ごめんお。大丈夫だお」
ボートが揺れた。
間を置かず、柔らかい感触と、柑橘類の匂い。
津出さんに抱き締められている。そう気付くのに時間はかからなかった。
117
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:57:59 ID:.Jf8dnAE0
ξ - -)ξ「いいんですよ。今はいくら泣いたって」
ξ - -)ξ「デレさんのこと、少しずつでいいから忘れていきましょう」
( ;ω;)「津出さん」
ξ - -)ξ「大丈夫。私がずっとそばで、あなたを支えるから」
ξ - -)ξ「おやすみなさい、ブーン」
(。 ω )「……」
118
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:58:58 ID:.Jf8dnAE0
あれ?
津出さんはどうして僕のあだなを知っているんだろう。
デレの名前も、僕は教えていたっけ?
わからない。とにかく今は眠い。きっと年甲斐もなく泣きじゃくったせいだ。
泣くのには意外と体力がいる。久し振りすぎて忘れていた。
沈んでいく意識の中で、自分の頬に涙が伝うのだけははっきりとわかった。
119
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 16:59:33 ID:.Jf8dnAE0
さよなら、スピカ。
デレが好きだった、思い出の星。
.
120
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 17:00:05 ID:.Jf8dnAE0
***
すっかり寝入ったブーンを撫でる。
無防備な寝顔は、なんて可愛いのだろう。
ずっとずっと、こうしたかった。やっと手に入れた。
ξ ー )ξ「ねえ、ブーン。私ね、すごく頑張ったのよ」
ξ ー )ξ「何度も挫けそうになったし、諦めたほうがいいのか何度も悩んだのよ」
ξ ー )ξ「でも……足掻いてみるものね」
ξ ー )ξ「時間はかかったけど、ようやく届いたわ」
ξ ー )ξ「邪魔で仕方なかった星にも、あのとき掴めなかった手にも」
121
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 17:01:15 ID:.Jf8dnAE0
顔を変えて、場所を変えて、人生のすべてを懸けて追い続けた。
走っても走っても届かなくて、まるで星を追っているようだった。
それでも諦められなかった。
登下校のときにすれ違う彼のことを。
車に轢かれそうな私に向かって手を伸ばす、彼のことを。
122
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 17:02:26 ID:.Jf8dnAE0
一目惚れで、初恋だった。
あの女と寄り添う姿を見たとき、初めて嫉妬という感情を知った。
殺してやりたいとすら思った。
ξ ー )ξ「私もね、ずっと忘れられなかったのよ」
ブーンの目から涙が伝う。
大丈夫、大丈夫よ。私が必ず、忘れさせてあげる。
もう邪魔するものはどこにもないんだから。
湖の底で朽ちていく指輪を想像すると、自然に顔が綻んだ。
最後に愛が勝って結ばれる、なんて素敵なハッピーエンド!
十年温め続けた恋が、ようやく叶った。
たとえこれが醜い執着でも、私は一向に構わない。
123
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 17:03:00 ID:.Jf8dnAE0
さよなら、スピカ。
邪魔で仕方なかった、憎たらしい星。
.
124
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 17:03:30 ID:.Jf8dnAE0
ξ ー )ξスピカを沈めるようです 終
.
125
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/04/25(土) 17:04:19 ID:.Jf8dnAE0
投下は以上です。
春は出会いと別れの季節なのでそういうのを書きました。
素敵なイラストを描いてくれた絵師さん、読んでくれた方、ありがとうございました!
126
:
名無しさん
:2020/04/25(土) 18:23:54 ID:hqLRSxYI0
乙乙
127
:
名無しさん
:2020/04/25(土) 19:21:11 ID:mNh7jVJ20
なんて素敵なハッピーエンド!
の歪さがとても好き
乙
128
:
名無しさん
:2020/04/25(土) 21:24:34 ID:0RCIYQ760
乙乙
なにか他に作品書いてたりします?
差し支えなければ教えて欲しいです!
129
:
名無しさん
:2020/04/25(土) 21:33:41 ID:KccFUDSU0
ラノブンピック開催中は作者バレ禁止だぞ
130
:
名無しさん
:2020/04/25(土) 23:31:05 ID:QvGkJZ.U0
結果発表後の「はい俺ー!」タイムになったら教えてもらおうず
131
:
名無しさん
:2020/04/26(日) 05:52:55 ID:IdAiTguk0
良作乙!
132
:
名無しさん
:2020/04/26(日) 07:00:53 ID:CKHD8ZJI0
いい話だったぜ!乙
133
:
◆S/V.fhvKrE
:2020/05/07(木) 00:05:27 ID:B2gQsZ2.0
【投下期間終了のお知らせ】
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(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
134
:
名無しさん
:2020/05/09(土) 21:43:42 ID:RZGvvpRo0
歩行者信号が赤で信号待ちの人がいて後方から左折…?スピード落とさず?まぁドライバーマナーがクソって事か
135
:
◆/cEv93/Jd.
:2020/05/24(日) 01:00:07 ID:5eNov7cs0
>>128
ありがとうございます!
専スレでもハイ俺済みですが「( ^ω^)天使はライブハウスにいるようです」「ξ ゚⊿゚)ξ整形シンデレラのようです」
おわはじ祭では「( ^ω^)ゴーストライターは踊るようです」を書きました。
お時間のあるときに読んでもらえたら嬉しいです!
136
:
名無しさん
:2020/05/28(木) 00:29:49 ID:/l6xTuuk0
「さよなら、スピカ。」の文にぶん殴られた
乙
137
:
名無しさん
:2020/06/21(日) 20:40:47 ID:DtZqanvg0
乙乙
擦り切れるのはCDじゃなくテープだが
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