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( ^ω^)病んでヤンでレボリューションのようです
1
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/09/13(金) 22:45:05 ID:HVKX06LI0
・書き終わり済み。
・超ハイテンション。
・投下は週一か二程度。
175
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 14:44:37 ID:D/306Sm.0
◇
( ・∀・)-3「久しぶりに上がったが……どうにも剣呑としているな。何かあったのか、出流?」
(#゚Д゚)「何かも糞も、手前がやってきたから一つの騒ぎになってんだろうが!」
僕を挟んで対峙するのは熊さんと紳士さん。
かたや出流一家という組織の頭領、かたや津々矢財閥と言う組織の頭領。
これって見方によれば裏の世界と表の世界が正面切って戦争しようとしている景色にも見えたりする。
ああ、つまりは頂上決戦にも等しいんじゃ、なんて思いつつ僕は遠くを見つめぼうっとしていました。
_
( ゚∀゚)「いやいや現実逃避をするなよ内藤。ちゃんと受け止めなきゃいけねぇよ」
(; ^ω^)「無理に決まってるでしょう!?」
先から周囲は騒がしい。
それと言うのも現在、僕のいるここ――出流組本家の周囲を武装した一派が取り囲んでいるからだった。
よもや仁侠映画よろしく殴り込みだろうか、なんてドキドキする僕だけども……。
(#゚Д゚)「表立って私兵を動かすたぁ大胆だな津々矢……いいのか、マスコミに知られでもしたらとんでもないことになるぞ」
( ・∀・)「何、そんな心配は無用だ。どこぞの誰かが見ていようとも不足はないよ。
そもそも……我がグループに連なるマスメディアが如何程か知らないお前じゃあるまい、出流」
睨み合う二人はどう見ても一触即発だった。
何でまた僕はこんな騒ぎの中心にいるんだろう。これもまた宿命ってやつなのだろうか。
176
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 14:45:47 ID:D/306Sm.0
_
(;゚∀゚)「親父ぃ! 集団が塀を越えてきやすぜぇ!」
(#゚Д゚)「ちっ……退く気はねぇのか、津々矢」
( ・∀・)「ないな。これは私の見ている前で図に乗ったことに対する制裁だ。潔く受け入れ蹂躙されろ」
(#゚Д゚)「相も変わらずの利かん坊が……手前等、道具持ってこい!」
_
(;゚∀゚)「お、親父! ヤる気で!?」
(#゚Д゚)「何年経ってもこいつとは反りが合わんが、この只今こそが因縁に終止符を打つ時よ!」
( -∀・)「いい度胸だな、出流。社会のはみ出し者程度がこの津々矢モララーに勝てる道理はないと知れ……!」
(; ^ω^)「いや止めて! 本当止めて! なんか銃撃戦とかめっちゃ聞こえてくるんですけどお!?」
外ではドンチャン騒ぎがする。なんか甲高い音だとか鎬を削るような音もするけど、多分覗き見ちゃいけない奴だと思う。
僕は板挟みになりつつ二人を抑えとどめようとする。長岡さんと言えば奥に駆けていったと思ったら日本刀を持ってきた。
_
( ゚∀゚)「親父ぃ! 道具を持ってきやしたぜぇ!」
(#゚Д゚)「ご苦労だ長岡、手前も暴れてこい!」
_
( ゚∀゚)「御意に!」
(; ^ω^)「待って長岡さん! あなたくらいしか話通じる人いないのにこの状況で僕を一人にしないでお願い!」
_
( ゚∀゚)「おおそうだ内藤! これをやろう!」
自身の懐を漁った長岡さん。
そのまま内容を手に掴むと僕に手渡すのだが……。
177
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 14:46:39 ID:D/306Sm.0
( ^ω^)っy=ー「……何これ?」
_
( ゚∀゚)「銃だ」
( ^ω^)っy=ー「え?」
_
( ゚∀゚)「撃ち方は分かるか?」
(; ^ω^)っy=ー「分かる訳ないでしょお!?」
_
( ゚∀゚)、「そうか、ならまずこのセーフティを……」
(; ^ω^)っy=ー「そうじゃないと思うお!? 長岡さん正気に戻って!?」
初めて手にした拳銃は結構ずっしりとしていて、これが命の重みってやつなのかな、なんて思ったりもして。
そんな僕にレクチャーを施そうとする長岡さんに突っ込みつつ、僕は意を決して対峙する覇者二名に言葉を紡いだ。
(; ^ω^)「や、やめてくださいお二方! 何でいきなり争ってるんですかお!」
(#゚Д゚)「止めてくれるなぃ内藤くんよ! この糞野郎だきゃぁ痛めつけてやらにゃいけねえ!」
( ・∀・)「やぁ内藤くん、少し待っていておくれ、この屑共を殲滅したら場を改めて色々と――」
(; ^ω^)「だからぁ!」
そりゃ男の子だもの、喧嘩くらいするだろう。
その規模が普通とは呼び難くても気に入らないことがあれば誰だって怒るし、看過できなきゃ争うだろう。
けどね、あのね、それに巻き込まれる僕のことをね、少しでもいいから考えて頂きたいのです。
178
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 14:47:41 ID:D/306Sm.0
(; ^ω^)「二人の因縁確執がどういったものか知りませんけどお! 少なからず僕に用向きがあるなら津々矢さん……えぇと、モララーさんは僕のお客人な訳でしょお!?
なら手出しは無用ですお組長さん! それと社長さんも矛をおさめてくださいお! こんな騒がしくちゃまともに話も出来ないでしょお!?」
精一杯声を張り上げて叫ぶ僕。
僕の紡いだ台詞に先まで喧騒に満ちていた景色から音が掻き消えた。
それこそは争い合う人たちがその手を止めたからで、皆は愕然とした様子で僕を見る。
(,,゚Д゚)「……成程。確かに内藤くんはすげぇな」
(; ^ω^)「お……え?」
( ・∀・)「ふむ、この胆力は確かに……ツンが執心するのも頷けるな」
(; ^ω^)「はい?」
二人は何故か面白いものを見るような感じで、朗らかな笑みを向けられる僕は困惑をする。
(,,-Д-)「仕方ねぇ……客人の前だ、粗相はするまいよ。手前等、得物を下ろしな」
( ・∀・)「皆も武器をおさめろ。私情に駆られ闘争を仕出かすとは、少々気が幼かったやもしれん」
二人はある程度の冷静さを取り戻すと入り乱れる人の群れにそう命令を下す。
ボスの命令とあらば従わない訳にもいかず、皆は少々不服そうにしつつも静かに武器をおろして沈黙した。
それを見た僕は安堵により胸を撫で下ろし息を深く吐く。
179
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 14:48:37 ID:D/306Sm.0
( ・∀・)「いや、済まなかったね内藤くん」
(; ^ω^)、「あ、その……」
俯いている僕の肩を叩いたのは大財閥の長のモララー社長だった。
彼は申し訳なさそうに言うけれど、僕はどう対応していいのか分からず口をまごつかせる。
(,,゚Д゚)「……ふん。おい、長岡ぁ! 茶ぁ持ってきてやれや!」
_
(;゚∀゚)「な……いいんですかい、親父!」
(,,-Д゚)「構やしねぇ……如何に相手が津々矢と言えどもよ、こいつの面ぁ……人の親の面してやがる」
_
(;゚∀゚)「親父……」
_,
(,,゚Д゚)「いいからさっさとしやがれ!」
_
( ゚∀゚)「へい、ただいま!」
様子を隣で見ていた組長は見かねた様子で、取り敢えず改めて場を仕切ってくれた。
(,,゚Д゚)「おい津々矢よ。ここは一先ず休戦だ」
( ・∀・)「……御節介焼きにでもなったか、出流」
(,,-Д゚)「じゃかぁしい。どうせお前も俺と同じ目的で内藤くんに近寄ったんだろ?」
( -∀-)「一緒にしないで欲しいが……それは事実だ」
座布団に座り直した僕は三つ巴の形で二人と対する。
そんな折、先程出ていった長岡さんが僕達にお茶を差し出す。あ、これ玉露だ。
180
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 14:49:47 ID:D/306Sm.0
(; ^ω^)「えぇと、その……」
( ・∀・)「ああ、挨拶が遅れてしまったね内藤くん。改めて……初めまして、私の名前は津々矢モララー。ツンの父親です」
(; ^ω^)「は、初めまして」
正面切って対峙すると改めて伝わってくるものがある。
その身嗜みは十分に紳士と呼べたけど、風格と言うか覇気と言うか、纏う空気が一般の人とは大きく違う気がした。
まるで後光でもさすかのような貫禄を受ける。ギコ組長が羅刹だとすればモララー社長は帝釈天と呼べた。
( ・∀・)「このような形が初の顔合わせになるとはね……申し訳ない気持ちと共に残念で仕方がない。
済まないね……それもこれもこの出流の馬鹿が全て悪い」
(#゚Д゚)「あぁん!? なんだと手前!」
(; ^ω^)「お、落ち着いてくださいお、組長さん! 社長さんも一々煽らないでくださいお!」
何で直ぐ喧嘩しようとするのだろう。それ程までに根が深い仲なのだろうか。
_
( ゚∀゚)「内藤、一応言っておくがこの二人は幼馴染だ」
(; ^ω^)「えっ」
_
( ゚∀゚)「とは言え昔から仲が大層に悪い。今も確執は続いている。それを覚えておいてくれ」
そう言う情報はもっと早く教えてほしい。とは言え今が知る最大の機会だったか。
181
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 14:51:05 ID:D/306Sm.0
(; ^ω^)「と、兎に角……あの、社長さんも僕に用立てがあったんですかお?」
( ・∀・)「ん、あぁ……その通りなんだ内藤くん。君とはいずれ話をしようと思っていたんだよ」
(; ^ω^)「僕と、ですかお……?」
( -∀-)「第一に感謝を告げたかった。娘と仲良くしてくれてありがとう、内藤くん」
(; ^ω^)「い、いやいやいや! そんな簡単に頭を下げないでくださいよ!」
組長さんと言い社長さんと言い、どうしてこうも簡単に頭を下げるのだろう。仮にも一組織の首魁だろうに……。
( ^ω^)(それが親、なのかお……?)
ツンと関わりをもったのは昨日のことだ。
ゲームセンターで孤独に遊ぼうとしていた彼女を見かねた僕はお節介を焼いてしまったが、明くる日の今日、何故か彼女は僕によく付き纏った。
とは言えデレさんのように愛を紡いでくるわけではない。簡単に言ってしまうとあの距離感は友達の空気であって、やっぱり特別とは呼び難いと思う。
( -∀-)「いいや、それが特別なんだよ内藤くん」
(; ^ω^)「え……?」
( ・∀・)「再度礼を言おう、内藤くん。我が娘を、ツンを……叱ってくれてありがとう」
(; ^ω^)「……はい?」
……驚きの台詞にも程がある。
だって普通、説教をかました相手に礼を言う人なんていないだろう。
しかも愛娘相手に、生意気にも一般人の身分である僕程度が御高説垂れたのだから腸が煮えくり返りもするんじゃないか。
なのに社長さんは頭を下げる。僕はもう、どうしていいのか分からず慌てふためくが、そんな社長さんの隣に座っているギコ組長は渋い表情をして一人頷いた。
182
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 14:52:18 ID:D/306Sm.0
(,,゚Д゚)「内藤くんや。俺が言うのもあれなんだが……君は確かにお節介だろう」
(; ^ω^)「うぐっ……や、やっぱりですか……?」
(,,゚Д゚)「ああ。だが君のそれは立派だと言えるぜ」
立派……何がどう立派なんだろう。
(,,゚Д゚)「君の凄いところはな、例え相手がどんな肩書を持っていようが、“それ”を単一の個としてしか見ん。君は相手を只の人だと思って対峙する」
(; ^ω^)「え……?」
それって普通じゃないのか、と思うけど組長さんと社長さんは首を横に振るった。
( ・∀・)「普通はね、内藤くん。それは無理なんだ」
(,,-Д-)「ごるあぁ……意識して相手を同等の地位にまで思い込むか、或いは相手の土俵に上がることはあれども、
それでも根底にある“差”と言うのは埋め難く、また越え難い」
(; ^ω^)「“差”、ですか?」
( ・∀・)「生まれや環境……人は必ず何かを得て生を授かる。それは育まれステータスとなり、その者を形作る一部となる」
(,,゚Д゚)「生まれながらに極道の娘、生まれながらに大企業の娘。それを知っていたら普通は尻込みするだろうし、
やっぱり美貌も相まって特別視するだろう。俺らなんぞは組織のドンだし、余計に壁を感じるだろうよ」
( ・∀・)「だが君は私達を……いわば頂点に立つ者を前にしても普通だね。取り繕うとかそう言う訳でもない。
君は知ろうが知るまいが“差”を無視してしまえる。それは凄いことだ」
183
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 14:54:10 ID:D/306Sm.0
言われても僕にはよくわからない。だって相手は人間じゃないか。
例えばステータスと言えば王族貴族の流行った中世なんかじゃ普通の話だったんだろうけど、そんなのは古い話な訳で、今じゃ階級身分なんて関係ない。
相手が組の親分だったり財閥の代表だとしても情報はそれだけだ。他に特別な何かがあるのだろうか。
この自由平等社会で未だに差別意識や特別意識を持つ方が変じゃないのか。
(,,゚Д゚)「……どういう教育をされてきたのかが気になるなぁ。よほど父君と母君は平等主義者だったらしい」
( ・∀・)「それは脆い部分にも思えるが、しかし意見を口にし相手と真正面から対峙することは私には美徳に思えるね」
(,,゚Д゚)「ああ、違いねえ。むしろ俺らからすりゃ面白くて仕方がない」
( -∀・)-3「まったくだ。周囲の愚鈍共と言えば辟易するくらいにどうしようもないからな」
何だか意気投合しているお二方だが、僕はおずおずと訊ねてみる。
( ^ω^)、「そ、それで、僕がお節介なのは自覚していますけどお……それとツン……あ、いや、ツンさんを叱りつけたのとどう関係性が?」
( ・∀・)「うん、そうだね。出流は察してくれたようだけど……ねぇ内藤くん。我が娘のツンはとても可愛らしくて初心で天使のようだろう?」
そう言われた僕は無言のまま、けれども刹那で頷きを返した。
184
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 14:55:15 ID:D/306Sm.0
(* ・∀・)「あの小さく華奢な背、軟い肢体は誰もが釘付けになる……端正な顔立ちは言わずもがな男女問わず虜にしてしまうだろう。
おまけにあのツンケンした性格がもう小悪魔で堪らない……そうだろう内藤くん!」
(; ^ω^)「え、あの、えっと」
(;゚Д゚)「落ち着け馬鹿野郎が、何を一人で盛り上がってんだ……」
(* ・∀・)「兎に角! 我が娘、ツンには死角がないのだ! 小ぶりな胸や低い背丈を含めてもあまりある魅力を持っている!」
( ^ω^)「実の父がなに言っちゃってるんですか?」
_,
(,,゚Д゚).「けど、俺の娘のボンキュッボンっぷりと比べたらなぁ……」
(^ω^ )「組長さんもなに言っちゃってるんですか?」
( ・∀・)「……だがね、内藤くん。それ程までの魅力を持つと、この親の私ですらもあの子を特別視してしまうんだ」
( ^ω^)「特別視、ですかお? それって親な訳だから当然なんじゃ……」
( ・∀・)「いいや、そう言うのとはまた別でね。私は確かに忙しい身だからあの子の面倒を見るときは少ない。
それは昔から変わらない。そんな私は彼女を存分に愛で、存分に甘やかしてきた」
我が子が可愛くて仕方がないのは普通だと思う。
よく目に入れても痛くないっていうけど、それくらい親って言うのは子供を愛している訳で。
けれどもそれとはまた別に、ツンの面倒を見てきた周囲の人々も、父であるモララー社長と同等か、或いはそれ以上に甘やかしまくったとかなんとか。
185
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 14:56:32 ID:D/306Sm.0
( ・∀・)「あの子はね、今まで一度も叱られたことがない。ましてや叩かれたことだってない。
女児であれ躾ける、体罰をするというのは一般的だろう?」
( ^ω^)「まぁ、今の時代的には少数派だと思いますけどお……」
( ・∀・)「だがね、悪いことをしたらそれを叱るのが当然だ。私だって父や母や従者達にそうやって躾けられてきた。
それはきっと、どの家庭でも同じだ。女児はまた別にしたって、やはり悪は悪であると教えなければならない」
( ^ω^)「それは、そうですけど……」
(,,゚Д゚)「俺の場合はデレを叱りまくってたぞ。甘やかすのと大切に育てるのとはまた違う話だ」
( -∀・)「それはお前の家系が暴力一家だからだろう、このヤクザ者め」
(#゚Д゚)「ママのパイオツにしがみ付いて小便垂れ流してた幼少期を思い出したかぁ、お坊ちゃん?」
( ・∀・)「……やはり徹底的にやらねば格の違いが分からんか、チンピラめが」
(#゚Д゚)「ははは……葬儀屋への手配は済ませておけよ、お坊ちゃまよぉ……!」
(; ^ω^)「だから睨み合わないでくださいって!」
再度張り詰めた空気を僕がぶった切る。
186
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 14:58:11 ID:D/306Sm.0
(,,゚Д゚)「……まぁ、なんだ。親と言うのは子の模範だし、そうなりゃ善悪や正否の判断をしっかり教えんといけねえ。
何も知らず社会に出たら子供本人が苦労する訳だしな」
( ^ω^)「そうですおね、それは確かに。一般的な倫理観や他常識と呼べる事柄って、結構親から教わってるかも……」
( ・∀・)「そう、それが当然だろう。私自身もそれは痛感するところだ。けれどもね……」
そこで言葉を切った社長は渋い表情をして溜息を吐いた。
(; -∀-)-3「……出来ないんだよ、不思議と。あの子に対して叱るだとかが。むしろ許してしまえるんだよ、何を仕出かしても……」
( ^ω^)「え……?」
(; -∀-)「私だけじゃない。周囲の人間は皆そうだった。ツンは昔からやんちゃでね、よく物は壊したし他人に迷惑をかけたりもあった。
だがそうなっても……誰も叱らないし責めない。被害者である当人ですら笑って受け入れ、どころかツンに謝罪までする光景も多々ある」
その話を聞いて僕は呆けたような顔になる。
だって、それってまるで御姫様のままだからだ。特権階級にも等しい扱いじゃないか。
( ・∀・)「ツンは常々そういう扱いだった。通う学校では教師も生徒も皆彼女を愛したが、彼女が問題を起こしても誰も注意なんてしなかった。
それを受け入れ許す――どころではなく彼女に罪や罰と呼べるものは端から用意されていなかったんだ」
(; ^ω^)「そ、そんなのって……」
有り得ない、と紡ごうとしたが僕は思い出す。
デレさんが特殊とも呼べる空気感を持つように、ツンにもまた特別な空気感があった。
187
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 14:59:45 ID:D/306Sm.0
不良の真似事をしている彼女を叱る人は誰もいなかった。
学校をサボっても教師は注意しなかったし、生徒達も彼女の素行の悪さに対して注意をしなかった。
それって異常に思える。
デレさんの場合は神聖視だが、ツンの場合のそれは神格化された存在……罪を問われない個人に思えた。
( ・∀・)「ツンはね、そんな環境をとても嫌っていたんだ。それを私は知っていたが、けれどもあの子の醸す空気感は親である私ですら無視できない。
あの子が髪を染めても褒めてしまう、あの子がスカートの丈を短くしても笑んでしまう。それくらいにあの子は許され体質なんだ」
( ^ω^)「…………」
それってどうなんだろう。
親であるなしはこの際別にして、本当に彼女のことを思うなら悪い事は悪い事だと言わなきゃいけない。
例えば法に触れるような真似をするなら注意して叱りつけるのが当たり前なはずだ。
ツンの素行の悪さを全て知っている訳ではない。
普段から一匹オオカミで張り詰めている様子なのは見ていたから知っている。
しかしそんな彼女が実のところ浮いているようにも見受けた。
( ・∀・)「浮く、か。それも間違ってはいないだろうね。あの子は別格の扱いな訳であって、
あの子を慕う皆は意識的にせよ無意識的にせよ“差”を感じ、或いは自分から用意する」
( ^ω^)「特別だから、ですかお?」
( -∀-)「ああ。ツンは特別な少女、罪に問うことなかれ、彼女の行動は全て善であり許すべし……そんな共通意識があるんだろうね」
( ^ω^)「まるで宗教ですおね……」
( ・∀・)「故の神格化、故の許され体質なんだ。不良の真似事をしたとて許さなければならない、認めなければならない……そう思うんだ」
( ^ω^)「…………」
188
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 15:00:56 ID:D/306Sm.0
果たしてツンが孤独だった理由は不明だ。
なんでいつも不機嫌そうだったのかも謎だし、どうして不良の真似事をしているのかも分からなかった。
だが僕はモララー社長から話を聞いて氷解する。
彼女の全ての行動には一つの目的がある。それこそは――
( ・∀・)「反抗だろうね。周囲の態度があの子は気に入らないんだろう」
何を仕出かしても許される、特別視される、皆に神格化されてヒロインと称されて――壁を用意される。
皆は平等に彼女を愛すけど、じゃあそれって彼女を真の意味で大事に思ったり大切に扱うことと呼べるのか。
( -∀-)「あの子が髪を染めるのも、制服を着崩すのも、遅くまで遊びまわるのも……全ては意思表示。
自身の行動は全て世間で言うところの悪なんだ、と……そう言いたいんだろうね」
( ^ω^)「けど皆はそれを許してしまう……」
( ・∀・)「そうとも、内藤くん。そう言った行動をしても皆は受け入れて納得してしまう。
ああ、我等が姫君はそう言うお年頃なのだ、しからばお見守りしてあげねば、と」
僕はツンが零した呟きを思い出す。
それは情報室でのことだが、ツンは憎らし気にこう言った。
( ^ω^)「“何をしても持て囃されて許されて受け入れられて……本当、どいつもこいつも馬鹿みたい”」
( ・∀・)「そう言っていたのかい?」
( ^ω^)「ですお。間違いなく」
( -∀-)「……そうか」
189
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 15:02:10 ID:D/306Sm.0
(,,-Д-)「……叱られないと言うことは……ある意味では無関心とも呼べるからなぁ」
( ^ω^)「組長さん……」
(,,゚Д゚)「子供はな、内藤くん。よくウソ泣きをする」
( ^ω^)「ウソ泣き、ですかお?」
(,,゚Д゚)「ああ。特に生まれて間もない頃はよくする。多くの親はこれの見分けがつく。
本当に泣く姿と嘘で泣く姿はまるで別物なんだ」
( ^ω^)「別物……」
(,,゚Д゚)「何故ウソ泣きをするか分かるか?」
( ^ω^)「えぇと、思い通りにならないから、ですかお?」
(,,゚Д゚)「勿論状況は多くあるが、帰結するならば大半はその通りだ。悲しくて泣くんじゃねえ、
不服があるからそう言った意思表示をする。そうして他者の関心をひこうとする」
構って欲しい、話を聞いて欲しい――子供は言葉を持たない代わりに行動で示す。
それがウソ泣きだったり駄々を捏ねることだったりやり方は様々で。
(,,゚Д゚)「津々矢の娘の場合はな、それそのものさ。悪い素行によって他者の関心を得たいんだろう。構って欲しい訳だな」
ツンは言った。己のどこがいいのか分からない、神格化することなんて馬鹿らしい、と。
彼女は見て欲しかったんだ。悪いことをしている自分をちゃんと見て欲しくて、それに対して感情を向けて欲しかったんだ。
190
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 15:03:45 ID:D/306Sm.0
だって許されるばかりで受け入れられる彼女は事実として孤独だった。
みんなが彼女を神格化することにより彼女は己が望まないままに一人になり、ヒロインとして崇められ奉られる。
それって酷い話だ。誰も彼女の本音を聞こうとしないようなものだ。
態度や所作に現れる彼女の意思を皆は無視してる訳で、彼女の全てを黙殺してるのと変わらないじゃないか。
( ^ω^)(ツン……)
思い出すのは彼女の寂しそうな背中。
一人でシューティングゲームをやる彼女を見た時に僕は思った。どうしてこの子は一人なんだろう、と。
あれ程皆に可愛がられ特別な目で見られてるのに、だのに彼女は一人だった。
それも慣れた様子で……一人で遊んでいた。
きっとずっとそうだったんだろう。あの子にとってはそれが普通だったんだ。
だが彼女はそれが嫌で仕方がなかった。だから不良の真似事を始め、皆に叱って欲しかった――構って欲しかったんだ。
( ・∀・)「それを成し遂げたのは……君だけだ、内藤くん」
( ^ω^)「……僕は何もしていませんお、社長さん」
( -∀-)「いいや、した。君は彼女が待ち望んでいた初めての“誰か”なんだ」
……だって、放っておけないじゃないか。
あれだけ皆に女神だ姫だと祭り上げられている子が不良の真似事をしてるんだ。そんなの勿体無いと思うじゃないか。
あんなに可愛らしいのに、どうしてそんな真似をするのか理解出来なかった。
更には周りがそんな彼女を受け入れて許す状況が鼻持ちならなかった。
だから叱ったまでだ。それは完全に僕の独善でしかない。それが正しいとは自分でも思わない。
けど言いたくなる。
だって同じクラスで同じ時間を共有する級友だし、それに僕だって彼女をデレさんと同等の乙女として認識していたんだ。
191
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 15:05:06 ID:D/306Sm.0
( ・∀・)「あの子の従者から昨日連絡を貰った。ツンの機嫌がすこぶるよいとね。それを聞いて何かがあったと理解をしたよ。
直ぐ様調べ上げたが……その要因こそが君だ、内藤くん」
( ^ω^)「僕、ですかお」
( ・∀・)「ああ、そうだ。あの子を叱ったのは彼女の生涯においては君だけだ。あの子を真っ直ぐに見てあげたのも……君だけだ」
ツンの機嫌がよかったかどうかは分からない。僕と彼女の関係は昨日今日程度だからだ。
けれども僕から見る彼女は不機嫌そうではあるが小生意気な性格の美少女で、それが僕にとっての彼女の姿だから、本来の彼女がどう言った具合なのかはさっぱりだ。
( -∀-)「親として私は失格だ。あの子を傷つけていたも同義だからね。そんな私が感謝をすることは間違っているのかも知れないし、笑われることなのかもしれない。
けれども……君には感謝の気持ちを素直に伝えたい。ありがとう、内藤くん。我が娘を叱ってくれて……ありがとう」
(; ^ω^)「そんな、別に僕は……」
お節介なだけだし、こう言う性格なだけだ。きっと僕がしなくてもいつか他の誰かが彼女を注意しただろう。
( ・∀・)「だが事実として君がツンを救ってくれた。だから礼をさせてくれ」
(; ^ω^)「救っただなんて大袈裟な……」
( -∀-)「いいや、大袈裟ではないよ。本当に君には感謝しているんだ、内藤くん」
(; ^ω^)「い、いやいや、言い過ぎですお!」
( ・∀・)「しからば君に対する感謝の気持ちとしてね、このようなものを用意したんだ」
と、突然にモララー社長は己の懐に手を突っ込んだ。
そうして何かを引っ掴むと僕の前に差し出すのだが……。
192
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 15:06:13 ID:D/306Sm.0
( ・∀・)っ「これなるは婚姻届けである」
( ^ω^)「……ん?」
( ・∀・)「君は未だ十六らしいが、なに、署名したものを僕が預かっておこうじゃないか」
( ^ω^)「え、ちょ」
(* ・∀・)「君になら我が娘を任せられる。ツンも君を心の底では慕っているだろうしね……ふふふ、父の目は誤魔化せんのだよツン。
昨日今日と観察記録を見せてもらったが、まるで恋する乙女の顔付きのままじゃないか……」
( ^ω^)「いやあの」
(* -∀-)「ああ、ツンが幸せに笑む未来が見える……その隣では君が連れ添い、愛を育む姿が見える……」
(; ^ω^)「これが感謝の気持ちですかお!?」
( ・∀・)「え? そうだよ? 親の了承も即座に得られたからよかっただろう? 親公認の許婚だよ?」
(; ^ω^)「いやいや色々と可笑しくないですか!?」
( ・∀・)っ「勿論これ以外にもお礼の品はあるよ? ほらこれ」
(; ^ω^)「え、何この紙切れ」
( ・∀・)「小切手さ。小金で申し訳ないが」
( ^ω^)「見たことない数字の羅列になんもリアクショできねえ」
193
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 15:07:40 ID:D/306Sm.0
( ・∀・)φ「十億程用意したが……どれ、零をもう一つ足してあげよう」
(; ^ω^)「いやいりませんおこんな大金! 婚姻届けにも名前書きませんお!?」
(; ・∀・)「何ぃ!? この程度では不服なのかい!? うぅむ、ならば他に土地を幾つかもあげよう!」
(; ^ω^)「いらないし本人の意思を無視した婚姻の取決めとか止めてくださいお!」
(; ・∀・)「何を言っているんだい、ツンは間違いなく君にホの字だよ!」
( ^ω^)「例えが古いね!」
まるで押しせまるセールスマンのようにも思えるモララー社長さん。
しかしそんな掛け合いを横で見ていたギコ組長は静かに立ち上がると、何故かその手に日本刀を握りしめているのだった。
(,, Д )「おい、津々矢……手前は何をしようとしてんだ……」
( ・∀・)「ふむ……何かな出流。何をそうも狂気を振り撒く」
(#゚Д゚)「当然だ腐れ外道が! 何を勝手に内藤くんを手籠めにしようとしていやがる! 彼は俺のデレと結婚させるんだよ!」
( ^ω^)「今初めて聞いた目的に戦慄しちゃう! 不思議ぃ!」
(# ・∀・)「何ぃ……? 内藤くんをお前の娘とだと? はっ、馬鹿を言えよヤクザ風情が……
彼は我が津々矢家に迎え入れる! ツンと幸せな未来を歩んでもらうのだ!」
(#゚Д゚)「勝手なことをほざくんじゃねえぞ手前! そこに内藤くんの意思はあるのか!」
( ^ω^)「いやあなたも僕の意思を無視して婚約させようとしてましたよね?
て言うか思惑が透けて見えると本当あなた達二人ってどうしようもなくない? ねえ?」
194
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 15:09:32 ID:D/306Sm.0
ああ、二人とも親馬鹿なんだ。
娘の慕う男と結ばれて欲しいと思っているそうだが、何でそんなことで僕を取りあうのですか。
そもそも僕の意思関係ないじゃないっすか。
景色は再度闘争のそれだった。
ギコ組長が刀を抜き、モララー社長が懐から拳銃を引き抜くと両陣営は殺意を展開し再び得物に手を掛け合う。
(#゚Д゚)「デレと結婚するんだ!」
(# ・∀・)「いいやツンとだ!」
(; ^ω^)「だから僕の意思を聞いてくれおぉお!」
四方八方から聞こえる銃撃の音や刃で対峙する音。
僕は走り回って逃げようとする――のだが。
ζ( ー *ζ「何をしてるの、パパ……?」
凛、と響いたその声。
あまりにも場に似つかわしくないものだったが、それはまるで染み入るように景色に響く。
ξ ⊿ )ξ「勝手に盛り上がって……あたし達が不在だってのに、どんちゃんしてんじゃないわよ」
更にもう一つの声。甘いソプラノに皆の意識が蕩けかける。しかし声色から窺える感情は怒気だった。
襖を開けて逃げだそうとした僕だが、そんな僕が戸に手をかけようとしたところで突如それは開かれる。
更には向こうの景色から肩を掴まれるのだ。それは今し方声を紡いだ二人の誰かによるもので、左右から掴まれた僕は直立不動になる。
195
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 15:10:47 ID:D/306Sm.0
(;゚Д゚)「な……ななな、しまった、すっかり失念していたぞぉ……!」
(; ・∀・)「い、いや、それよりも……何故お前がここにいるんだ……!」
騒ぎの中心であるギコ組長とモララー社長は青ざめた顔をし、更には得物を捨てると後退る。
先の声の主二名は僕を引きずって二人のもとへと歩いていくのだ。
そうするだけまるでモーセの十戒よろしく人波は裂けていった。
ζ( ー *ζ「ねぇ、私思うの。あなたのこと大嫌いだけど、きっと今抱く感情は一緒なんじゃないかな」
ξ ⊿ )ξ「あたしだってあんたは大嫌いよ。けどそうね、この感情は恐らく同じでしょうね、牛」
ζ( ー *ζ「本当に口の利き方がなってないよね。これだから津々矢の人って嫌いなの」
ξ ⊿ )ξ「そっちこそ態度改めなさいよ。なんで出流の人間ってそうも不遜な態度すんのかしら」
お二方を僕はよく知っていました。だってここ最近すっごい関わってるし、今なんかは二人の話を散々聞かされていたからだ。
今日この場に二人はいなかった。組長さん曰く、当人不在の方が話がしやすい、と言うことだったけど……。
ζ( ー *ζ「ねぇ、パパ? 何をしてるの? 何で私たちの代理のように取りあい合戦して内藤きゅんを困らせてるの?」
(;゚Д゚)「ち、ちが、違うんだデレ、これには深い訳があるんだって!」
ξ ⊿ )ξ「お父様? 普段から忙しく奔走してるくせに、なんで一般人にこんな粗相しでかしてる訳?
しかもあたしとこいつを勝手に結婚させようとか嘗めてんの?」
(; ・∀・)「い、いやいや、これもまた父の思いやりであってだね?」
ξ# ⊿ )ξ「「問答無用!」」ζ( д #ζ
(;゚Д゚)「「はひぃい!」」(・∀・ ;)
196
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 15:12:13 ID:D/306Sm.0
乙女二人の手にはそれぞれ凶器が握られている。かたや短刀、かたや特殊警棒。
ああ、最近の女の子の間では武器の携帯が流行している――訳じゃなかった。
その二人は特殊な生まれで、そう言った凶器は親に与えられた護身用のもので、それが与えた本人に向けられると言うのは……皮肉と言おうか何と言おうか。
( ^ω^)「あのね、二人とも」
ζ(゚ー゚#ζ「なぁに、内藤きゅん?」
ξ#゚⊿゚)ξ「何よ、内藤」
その二人の乙女の名前は出流デレと津々矢ツン。
我が校の誇るマドンナとヒロインであり、その正体こそは極道の娘と大企業の御令嬢だった。
( ^ω^)「あまり痛めつけない程度にやってお?」
(;゚Д゚)「「内藤くぅううん!?」」(・∀・ ;)
ζ(^ヮ^#ζ「うん、了解だよぅ、未来の旦那様ぁ☆」
ξ#゚⊿゚)ξ「一応頭の隅にはおいといてやるわよ、このすっとこどっこい」
そんな乙女二名は血を濃く継いだ御様子で、迫る愛娘を相手に父二名は震えあがり。
ζ(゚ー゚#ζ「ねぇ、パパ。私の内藤きゅんに手を出す輩はね、例え誰であっても……全殺しなんだよ?」
ξ#゚⊿゚)ξ「あのね、お父様。この馬鹿はそもそもあたしの物なのよ。それを理解出来ないんなら……お仕置きだね?」
(; Д )「「ひっ、ひぃい――いぎゃぁあああああ!」」( ∀ ;)
間も無く、出流組本家で悲痛な叫びが響く。
それはこの国を代表する表と裏の顔だけれども、そんな二名が泣き叫んで許しを請う姿を誰もが哀れみの瞳で見つめた。
197
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/06(日) 15:12:48 ID:D/306Sm.0
本日はここまで。
次の投下で最後になると思います。
それではおじゃんでございました。
198
:
名無しさん
:2019/10/06(日) 17:08:12 ID:3DMtjMFo0
展開ワロタ 内藤すげーな
199
:
名無しさん
:2019/10/06(日) 22:13:28 ID:kgDvYMXM0
乙〜〜〜〜〜
200
:
名無しさん
:2019/10/06(日) 23:39:30 ID:ftoH5eFs0
おつ
お父様方からも取り合われるとは流石内藤
お母様方からはどうなんだろう
201
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:20:11 ID:0E69q/ug0
◇
結局、組長さんと社長さんは愛娘達に折檻される羽目になり、僕は無残に横たわる二人を見下ろして黙祷を済ませた。
切った張ったを繰り広げていた出流陣営、ならび津々矢陣営もデレさんとツンの怒りを前にして意気消沈、騒ぎは収束に向かった。
ζ(゚- ゚*ζ「本当にごめんね、内藤くん……パパ達が迷惑を掛けて……」
ξ-⊿゚)ξ「まったく、いい歳した大人が何やってんのって感じよ……くだらないったらありゃしないわ」
そんなこんな、今の僕は解放されて帰路を辿っていた。
帰るとなれば車の一つでも出すか、と長岡さんに言われたけど丁寧に断る。
そうなるとまた隊伍を組んだ軍隊よろしくな景色になると察したし、何よりも僕は少女達に用があった。
僕の両隣を歩くのは我が校の誇るマドンナとヒロイン。
両親を散々痛めつけた二名は後のことも全て放置し僕を送り届ける為に着いてくる。
先までの喧騒がまるで嘘だったかのように付近は静かだった。
もう時刻は夜の時分で、暗がりの道を乙女二名を連れて僕はとぼとぼと歩く。
(; ^ω^)「いや、まぁ二人に責任はないし、謝らなくってもいいお」
ζ(゚- ゚*ζ「でもでも迷惑だったでしょ……?」
(; ^ω^)「まぁ、それはそうだけど……」
ξ-⊿゚)ξ-3「本当、馬鹿馬鹿しいわよ。あんたも大概面倒なことに巻き込まれるわよね、内藤」
(; ^ω^)「はは……それももう、この一週間弱で十分慣れたから、今更何ともお」
自然と溜息を吐いてしまうのは心労がたたってのことだろうか。
肩を落とした僕を見てデレさんは焦ったような顔をし、ツンは鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
202
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:20:44 ID:0E69q/ug0
ζ(゚- ゚*ζ「……嫌になった?」
( ^ω^)「え? 何が?」
ζ(゚- ゚;ζ「いや、その……」
背後で立ち止まる音がした。
振り向けばそこには俯くデレさんがいる。ツンは彼女の様子を見ると渋い面をして言葉を零す。
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃ嫌になるでしょうよ。普通に考えなさいよ。あたし達の家庭事情ってのはこんなもんなのよ、内藤」
( ^ω^)「ツン……」
ξ゚⊿゚)ξ「極道の娘、財閥の娘……それだけでもウンザリするのに、周囲はああ言った馬鹿どもばかりだし、あたし達を見る他人の目も……糞ばかりよ」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
二人の表情は暗い。
先まで騒動の中心にいた僕は二人の生い立ちや環境を知った訳だが、こう言った時、二人の今までの苦労が窺い知れる気がした。
ζ(゚- ゚*ζ「ねぇ、内藤くん」
( ^ω^)「何?」
ζ(゚- ゚*ζ「私のこと……聞いたんだよね」
( ^ω^)、「……お」
ζ( - *ζ「……そっか。そう、だよね」
203
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:21:35 ID:0E69q/ug0
まるでいつものデレさんらしくない。
それは今にも枯れそうな花のようで、僕はそんなデレさんを見て胸が痛んだ。
知らなかったからこそ僕が今までああいう態度をしていた、と思っているのだろう。
知ってしまったら以前までのようにはなれない、戻れないと思っているのだろう。
確かに態度は変わるかもしれないし、話を聞く以前のような状態には戻れないかもしれない。
( ^ω^)「別に関係ないお」
ζ(゚- ゚*ζ「え……?」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤……?」
けど、そんな程度だ。僕はただ話を聞かされて情報を得たという、それだけのこと。
二人は極道の娘と財閥の娘。およそ一般人である僕からすればまるで別次元に住む世界の人々にも思える。
けど……それがなんだって言うんだ。
( ^ω^)「ただ二人の過去を聞かされただけ、今まで二人がどんな環境にいたのかを知っただけ。それは確かに大事なお話だと思うお。
二人を構築する上で過去の様々な出来事……特に辛いことや悲しいことはとても深い要素だっていうのは当然だと思うお」
人を構築する上で重要視される環境や生まれ。
それに差異があれど、或いは持って生まれた能力に差異があれど、今こうして僕達は同じ場所を歩き、同じ学校に通い、言葉を交わし意思を交わしている。
( ^ω^)「僕にとってはお、そっちの方が重要なんだお。だって僕が君たち二人と関与しているのは今だからだお。
過去は嫌なことばかりだったろう、それって誰にも触れて欲しくないことなんだろうと思うお。けど僕は……知ったうえでも、こうして君たちと言葉を交わしている」
聞かされた内容はプライベートなことだった。他人には聞かれたくなかっただろう。
204
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:22:36 ID:0E69q/ug0
( ^ω^)「僕が君達をどんな風に見てるか知ってるかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「「え……」」ζ(゚- ゚*ζ
( ^ω^)「煩くて暴れん坊で、人に直ぐ迷惑を掛けるし……デレさんは積極的過ぎるし、ツンは傲岸不遜極まってるし、
とてもマドンナやヒロインとは呼び難い、やんちゃな子達だと思ってるお」
ξ゚⊿゚)ξ「「……」」ζ(゚- ゚*ζ
皆が称したマドンナとヒロイン。
本人達の意思を無視して祭り上げられた二人は、人には言えない傷を抱えていて、それを誰に言うでもなく秘密にしていた。
或いは周囲の生徒たちは二人の特殊な生まれを知っていただろうし、それ故に誰もが二人に近寄るまいとしていたのかもしれない。
結局、彼女達は闇を抱え続け誰にも知られることなく痛みと対峙し続けてきた訳で、それはきっと今も尚続いている。
対峙することに終わりはないのかもしれない。
過去に体験した出来事により今がある訳で、それを自覚する度に闇と対峙する羽目になるのかもしれない。
( ^ω^)「けど……変わらないお」
僕は二人を見据えて言葉を紡ぐ。
( ^ω^)「二人はやんちゃで利かん坊だけど、変わらないお。誰もが見惚れる美人さんで、誰もが憧れる高嶺の花。
二人がどう言った過去を持とうが……今の二人を知る僕からすれば、今の君達こそが出流デレと津々矢ツンだお」
哀れみはある。けど……それだけだ。
僕は二人の闇を知ったが、それを聞かされて怯えるだとか怖気づくだとか、ましてや近寄るまいとするだとか――今までの関係を全て否定するような真似はしない。
205
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:23:46 ID:0E69q/ug0
だって二人は二人だろう。
過去はどうあれ、今のデレさんは男の人に恋をすることが出来る、ツンは下手なりにでも思うことを態度や口に出せるようになった。
それでいいじゃないか。僕にとって重要なのはそこだ。
二人は決して過去に囚われたままと言う訳じゃない。
切っ掛けがなかっただけで、それさえ得れば二人は闇の中から自分の足で踏み出すことが出来たじゃないか。
( ^ω^)「強い人だお、二人は」
ξ゚⊿゚)ξ「「……!」」ζ(゚- ゚*ζ
それが僕の感想だ。
過去と対峙し今に至った二人は間違いなく強いはずだ。
腐れるだけで終わる程、この美女二名は弱くなんてない。
まあ大袈裟な言い方かもしれないけど、人それぞれに闇と言うのはあって、それの苦心は当人にしか分からないことだ。
だが一歩を踏み出すことが出来た彼女達は間違いなく……美しいんだ。
( ^ω^)「だから嫌いになんてならないし、僕は僕のまま、今まで通りに接するだけだお。それとも二人の思う僕はそんなにヘタレた感じなのかお?」
ζ(゚- ゚*ζ「内藤くん……」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤……」
(; ^ω^)「まあ何にせよ今日は疲れたし早く帰って休みたいお……本当、怒涛と言うか激動と言うか、今日は一日はちゃめちゃが押し寄せた日だったおぉ……」
天を仰いで僕は愚痴を零す。
本当、この二人と関わってからというもの平穏とやらが消え去った。
日々は騒がしく、殺意は常に寄せられるし、心休まる時なんてなくなった。
ただ、それでも思うことがある。
僕は凡を極めたような凡夫だが、そんな僕の傍に立つ美少女達を間近で見ることは、結構役得だったりするのだ。
206
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:24:18 ID:0E69q/ug0
ζ(;д;*ζ「な、内藤くぅーん!」
(; ^ω^)「うわっ、ちょ、何だおいきなり!? 何で抱き付いてくるんだお!?」
ζ(;д;*ζ「だってだってぇー! なんて優しいひとなのぉー! びえぇええええん!」
(; ^ω^)「な、泣かないでおデレさん!」
ξ゚⊿゚)ξ「……ちょっと、この馬鹿内藤」
(^ω^ ;)「わ、え? どうしたんだおツンまで? 袖をそんなに引っ張らないでくれお! こけるこける!」
ξ#゚⊿゚)ξ「いいから早く帰るんでしょ! その邪魔な牛ほっぽっときなさいよ! ほら!」
(; ^ω^)「ちょちょちょ、落ち着いてくれお、二人とも! 危ないから!」
207
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:24:56 ID:0E69q/ug0
僕は二人を高嶺の花として見てきた。
高嶺――それは文字の通りに高根を意味する。
手の届かない比喩であったりする訳だけど、けれども……花と言うものは愛でるものだろう。
誰もが二人と距離を置き、誰もが彼女達を特別な目で見て壁を用意する。
けどそれじゃ意味がない。
花は放ったらかしにしてしまえば枯れてしまうだけだ。
だから僕は今、結構役得だ。
だって高嶺の花にこうして触れて、愛でることが出来るんだから。
とは言え、まあ、僕に特別な感情はない。
これは花を前にして掻き立てられる庇護欲であり、そう、多分……。
今、胸にあるこの安堵感は、麗しい花々の薫香に中てられてのことなのだろう。
.
208
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:25:49 ID:0E69q/ug0
◇
騒動が過ぎ去れば平穏が訪れる――
ζ(^ヮ^*ζ「内藤きゅぅううん! おっはよぉー!」
ξ#゚⊿゚)ξ「ちょっとうっさいわよ牛! 朝っぱらから!」
訳がなかったね。
皆さんお早うございます、今日も清々しく天気が宜しい上に我が寝室に当然の如くやってきた美女二名がおります。
御存じの通りにデレさんとツンで、二人は制服姿で寝入る僕に迫ってくる。
ζ(゚ヮ゚*ζ「ほらほら起きないとダメだよ内藤くん! もう朝だよ! ウェカピポだよ!」
ξ゚⊿゚)ξっ「意味わかんないわよ……ほら、さっさと起きなさいよ馬鹿内藤」
( 'ω`)「…………」
昨日の大騒動から明けて一日なんですけどね、なんでしょうね、何でこの子達もう普段通りなのかな。
僕なんて未だに疲労困憊と言った具合で、肉体的にも精神的にも睡眠を欲しているくらいだ。
だのにこの美女達はまったくそんな様子を見せない。
僕は両サイドから迫ってきた声量に抗うべく布団を頭まで被る。
が、それに手を掛けたツンが無理矢理にはぎ取ってしまった。
ζ(゙д゙*ζ「あはぁ、これだと寝起きに襲うような感じぃ! 内藤きゅん食べたいよぅ、はぁはぁ……!」
ξ;゚⊿゚)ξ「朝っぱらから欲情してんじゃないわよこのド淫乱のド変態! 搾乳してあげようか? あ?」
( 'ω`)「……さむい」
209
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:26:50 ID:0E69q/ug0
秋の気温は他所にして、朝は低血圧な僕はぎゃんぎゃんと騒ぐ二人や肌寒さ、更には睡眠の邪魔をされたことにより苛立つ。
が、そんな僕の様子を気にもせず言い争う美女二名。
僕はいよいよキャットファイトを繰り広げようとしている二人をぼうとして見つめつつ、一つ伸びをして階下に向かった。
( 'ω`)「おはよう母さん……」
从 ゚∀从「おうおはようさん。あんたもやるねぇ平助、もう一人彼女作ったのかよ?」
(; 'ω`)「んな訳ないし、そもそも彼女なんていないから……」
从 -∀从-3「あーあー、まーだどっちつかずな態度とってんのかぁ? そんなんじゃいつか刺されるぜ?」
( 'ω`)「ははっ……」
从 ゚∀从「つーか早起きじゃん。まだ六時なのに。飯も出来てないけど」
( 'ω`)「……ははっ」
あの二人は何時に起きてるんだろう。どんだけ早起きなのさ……。
とζ(゚д゚*ζ「あ、内藤きゅん! 酷いよ放置してくなんて!」
ξ;゚⊿゚>ξ「あだだだっ、こら頬をひっはふはぁ!」
( ^ω^)「人のお家でなんで朝からどんちゃんしてるのかなこの子達は……」
食卓に腰かけ母と会話をしていると階段から美女二人が縺れて落ちてきた。
もうどこから突っ込めばいいのか分からないけど、とりあえず短刀と特殊警棒は取りあげておいた。
210
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:27:55 ID:0E69q/ug0
( ^ω^)「て言うかデレさんはさておき、何でツンまで……?」
ξ;゚⊿゚)ξ「な、なによ、何か悪い訳?」
( ^ω^)「いや悪いも何も……」
ξ;゚⊿゚)ξ「この牛が調子乗った真似してあんたに迷惑かけてるっていうから、あ、あたしもあんたに迷惑かけてやろうと思っただけだし!」
( ^ω^)「どんな理由なのさ……」
何故か赤面するツン。
恐らくは構って欲しさ故にこうしてデレさんと一緒に押しかけてきたんだろうけど……。
( ^ω^)「いや迷惑でしかないからね二人とも? 普段ならあと一時間眠ってるからね、僕」
ζ(゚ー゚*ζ「えぇっ。それは寝すぎだよ内藤くん! 確かに昨日の寝入りは遅かったけど、それでも四時間二十一分三十四秒も眠れたんだから!」
( ^ω^)「何で秒単位まで把握してるの? て言うか何で寝入りの時間を知ってるの?」
ξ゚⊿゚)ξっ「こんなの見つけたわよ、内藤」
(; ^ω^)「何これ小型カメラ!? いつの間に!?」
ζ(゚ー゚*ζ「いやぁ、昨日の朝、起こす前にね?」
(; ^ω^)「何してんのデレさん!?」
ζ(^ー^*ζ「つい出来心で……てへぺろっ☆」
( ^ω^)「出来心で平然と犯罪しないでほしいんだぁ……」
朝っぱらから溜息を吐いて僕は項垂れる。
211
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:28:57 ID:0E69q/ug0
( ^ω^)「……それで、その後二人はどうだったんだお?」
ζ(゚ー゚*ζ「え? どうって?」
( ^ω^)、「いや、あの騒ぎの後……僕は知らないからお」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、そのことね。別に大したことはないわよ」
さて、今回の騒動は実際とんでもない事態だったりもした。
だって出流一家っていう国内最大の暴力団と津々矢財閥っていう国内最強の組織が争ったからだ。
これがマスコミに漏れでもしたら国を揺るがす騒ぎになる。
が、そう言えばモララー社長曰く、そう言ったマスメディアの多くも津々矢グループの一門であると言っていたので隠蔽はお手のものなのかもしれない。
それはまた別にして、表と裏の代表とも呼べる二組織のその後が問題だ。
もしもこの騒動を発端として戦争になったら、それはもう日本社会が転覆する事態となる。
、_
ζ(゚д゚*ζ「ないない。あの二人はいつも喧嘩してるもん」
ξ-⊿゚)ξ「そうよ、今更慌てる人なんて誰もいないわよ」
(; ^ω^)「い、いつも喧嘩してるのかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん、そうだよ? 聞いた話、昔っからあの二人って仲悪いみたいだし」
ξ゚⊿゚)ξ「そもそも敵対関係にも等しいし、こうして激突するのだって年に十回はあるし」
(; ^ω^)「そんなに喧嘩してんのかお!?」
212
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:30:17 ID:0E69q/ug0
ζ(゚ー゚*ζ「馬鹿みたいだよねぇー……だから嫌なんだぁ、津々矢の人って。喧嘩っ早くて」
ξ-⊿゚)ξ「はっ、それを出流の人間が言うわけ? いつも喧嘩売ってきてんのあんたらじゃないのよ」
ξ#゚⊿゚)ξ「「……あぁん?」」ζ(゚ー゚#ζ
( ^ω^)「よしよし、睨み合わないで落ち着こうね二人とも」
やはり二人は親の血を濃く受け継いでいるらしい。
( ^ω^)「でも、昨日は止めに入ってくれてありがとうだお、二人とも」
ζ(゙∀゙*ζ「そ、そんな! 内藤きゅんにお礼を言われる日が来るだなんて……! 感無量だよぉー!」
ξ-⊿゚)ξ「一々大袈裟なのよあんたは……まぁ、止められるのってあたし等くらいだろうし。そもそも発端はあたし達だしね」
とは言え実質喧嘩をしたのは親二名であり二人に責任はないだろう。
僕は昨日の光景を思い返して苦笑いを浮かべるのだが……。
( ^ω^)「あれ……? そう言えば、何で二人は同時にあの場にやってきたんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「「え?」」ζ(゚ー゚*ζ
今更ながらそれが疑問だった。
そもそも犬猿の仲とも呼べる二人が揃って赴くとは考えにくい。
デレさんは実家だったから帰ってくるのは当然だとしても、何故ツンが居合わせたのか……。
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、それなら簡単よ。あんたが拉致されたって報告を私兵から受けてね」
( ^ω^)「私兵って……いやうん、もう突っ込むのも野暮だけどさ、うん……」
ξ゚⊿゚)ξ「そんで車で向かう途中でこの馬鹿牛を見つけたのよ」
ζ(゚ー゚*ζ「今何か言ったかなぁ、おチビさん?」
ξ゚⊿゚)ξ「後で殺すわよ腐れ牛……まぁ、この牛ったら川辺でたそがれててね。
なんか気取ったように見えてムカついたから声をかけて邪魔してやったのよ」
ツンが言うにはこんなやりとりだったそうだ。
213
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:31:07 ID:0E69q/ug0
ξ゚⊿゚)ξ『何してんの牛。なんか見てて不快なんだけど』
ζ(゚- ゚*ζ『……津々矢のおチビさんか。何か用?』
ξ゚⊿゚)ξ『今はその無礼な呼び方は許してあげる。つーかこんなとこで油売ってていいわけ?』
ζ(゚- ゚*ζ『……何が?』
ξ゚⊿゚)ξ『どうせ報告受けてんでしょ。内藤が面倒に巻き込まれてるって知ってんでしょ』
ζ(゚- ゚*ζ『…………』
ξ-⊿-)ξ『はぁ、うざったいくらいに暗いわね……』
ζ(゚- ゚*ζ『別に、どうしようもないし……パパったら全部話す気なんだよ。もう最悪……』
ξ゚⊿゚)ξ『それで一々ヘタレてるって訳ね。普段から超ハイテンションで迫ってるくせに、いざ過去を知られるとなるとそれ?』
ζ(゚- ゚*ζ『……あなただって分かるでしょ』
ξ゚⊿゚)ξ『……別に、あたしは何とも思ってないし』
ζ(゚- ゚*ζ『嘘ばっかし。本当は嫌で嫌で仕方ない癖に』
ξ゚⊿゚)ξ『うっさいわね。そりゃ嫌よ、あの馬鹿内藤に知られるのは。
けどそれ以上に気に喰わないのよ、こんな出鱈目なやり口、どうして見過ごせるってのよ』
ζ(゚- ゚*ζ『…………』
ξ゚⊿゚)ξ『あたしは行くわよ、お父様をこらしめてやるんだから』
ζ(゚- ゚*ζ『あっそう……』
ξ゚⊿゚)ξ『あんたはそうやって気取ってたそがれてれば?』
214
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:32:43 ID:0E69q/ug0
ζ(゚- ゚*ζ『…………』
ξ゚⊿゚)ξ『……うっざ。本当のあんたってそんなんなのね。そりゃ内藤も嫌気さすんじゃない?』
ζ(゚- ゚*ζ『は……?』
ξ-⊿゚)ξ『あーあー、あんたの過去聞かされて、更には今のあんた見りゃ幻滅してあいつあんたのこと嫌うんじゃない?
こんな不細工なデレさんはいやどぅあー、とか言ってさ』
ζ(゚- ゚;ζ『んなっ……』
ξ゚⊿゚)ξ『何よ、どうでもいいからそうして気取ってんでしょうがよ。何で一々腹たててんのよ』
ζ(゚- ゚;ζ『それは……』
ξ-⊿゚)ξ『ふん、うざいわね。そうやって一人で浮き沈み繰り返してなさいよ、この牛』
ζ(゚- ゚;ζ『…………』
ξ゚⊿゚)ξ『そうやって……内藤を甘く見てなさいよ、このバカ牛』
ζ( - ;ζ『っ……』
ξ゚⊿゚)ξ『あいつがそんな程度で幻滅するかってのよ……本当、馬鹿よあんたは。
ウジウジと女々しくしやがって……気に入らないったらありゃしないわ』
ζ(゚- ゚*ζ『津々矢さん……』
ξ-⊿-)ξ『……さっさと乗りなさいよ。ついでだから送ってやるって言ってんのよ、このバカ牛』
と、言った感じだったらしい。
215
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:33:34 ID:0E69q/ug0
( ^ω^)「……ツンってかなり男前な性格だおね。モテるでしょ、女の子から」
ξ;゚⊿゚)ξ「はぁ? なに言ってんのよあんたは」
ζ(^ー^*ζ「まぁ低い身長と子供っぽい顔付きで全部台無しだと思うけどねぇー。ぷぷぷっ!」
ξ゚⊿゚)ξ「殺すわよ腐れ牛?」
なんともまぁ、二人の仲と言うのは犬猿ではあるけども……。
( ^ω^)(二人とも……友だち、ちゃんと出来たじゃないかお)
僕は内心でそんなことを思い、睨み合う乙女二名を見つめて小さく笑みを浮かべた。
从 ゚∀从「なぁにニヤけてんだよブーン?」
(; ^ω^)「べ、別にニヤけてなんかないお、母さん!」
从 ゚∀从「嘘こけ、どう見ても変質者同然なスケベ顔だったぜ」
(; ^ω^)「偏見にも程があるお!」
从*゚∀从っ「まぁアタシとしてはよ、いくらでも恋人つくってくれて構わねえし、子供もバンバンつくってくれても構わんから、まあ……気張れよ!」
( ^ω^)「親が何言っちゃってんの?」
ζ(゚д゚*ζ「わ、私頑張ります、お義母さま!」
ξ*゚⊿゚)ξ、「べ、別にあたしはそういうんじゃないし……!」
( ^ ω ^)「なんでツンまで顔を赤らめるの???????」
从;゚∀从「お前なんちゅー顔になってんだよ……」
216
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:34:40 ID:0E69q/ug0
ああ、本当、僕の日常は大きく様変わりをしてしまった。
これまでは平凡に過ごしてきたけれど、今の僕にそんな景色は見当たらない。
从 ゚∀从「ほれほれ、そうこうしてる間に飯出来たぞ。二人も食べるかい?」
ζ(゚∀゚*ζ「いただいてもいいですかお義母さま!」
ξ゚⊿゚)ξ、「じ、じゃあ、遠慮なく……」
从 ゚∀从「なぁに、いずれ我が義理の娘になる二人だしぃ、今の内から親睦を深めたいのが親としての気持ちだしぃ?」
ξ*゚⊿゚)ξ「「そ、そんな、義理の娘って……」」ζ(゙∀゙*ζ
( ^ω^)「同時に顔赤らめないでー。と言うか僕の意思どこにあるのねー」
ある夕暮れ時、僕はデレさんと出会ってしまった。
最悪な出会いだったし、最悪な告白のされ方だった。
それを運命と呼ぶのなら、神には慈悲も糞もないと思う。
( ^ω^)「それじゃ行ってくるお」
ζ(゚д゚*ζ「道中の安全安心は私にお任せを、お義母さま!」
ξ;゚⊿゚)ξ、「あ、あの、朝ごはんありがとうございましたっ……」
从 ゚∀从「んむー。二人とも実に可愛らしいねぇ。うちの馬鹿息子はどうでもいいから、二人とも気を付けて行ってきな!」
( ^ω^)「母上? 僕は実の息子ですよ? 扱い酷くないです?」
从#゚∀从「うるせえ将来の娘達の方が可愛いんだよ!」
( ^ω^)「もうやだこの馬鹿母ぁ! うわーん行ってきますお!」
217
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:35:21 ID:0E69q/ug0
ζ(゚д゚;ζ「あ、内藤きゅん待ってー!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょ、急に走るんじゃないわよ!」
ある夕暮れ時、僕はツンと出会ってしまった。
酷い騒ぎが巻き起こり、酷い扱いを受けた気もする。
それを必然と呼ぶのなら、神には情けも容赦もないと思う。
( ^ω^)「うわぁ、なんかあからさまに怪しい人たちがいるんだけどお……」
ζ(゚- ゚*ζ「もう、パパったら一々大袈裟なんだから……!」
ξ;-⊿゚)ξ「お父様までわざわざ仰々しいわよ、馬鹿らしい……」
( ^ω^)「取り敢えず無視していこう……」
ζ(゚ー゚;ζ「そうだね……」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、向こうの通りで一般人が拉致られたわよ、牛の組員に」
(; ^ω^)「え!? 何で!?」
ζ(゚ー゚*ζ「あー、内藤きゅんを見てたからだろうねぇ。きっと羨望の眼差しだったんじゃない?」
ξ゚⊿゚)ξ「少しでも危険だと判断すればああなるわよ、内藤」
(; ^ω^)「いやいや止めて! お願い止めて! 僕のせいで罪もない人が消されるとか冗談じゃないお! ちょっと組員さーん!」
ζ(゚д゚;ζ「あわわ、だから待ってよ内藤くーん!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ああもう、朝から忙しないわねぇ……」
218
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:36:38 ID:0E69q/ug0
彼女達は特別な立場で、特殊な生まれで、僕とは程遠い存在と言うか、別次元にある人達だ。
けれども僕はそんな二人に特別な想いを向けられている。
それを僕は未だに受け入れちゃいないし、応えるだけの器量や度量はないと自覚している。
所詮僕は一般人。どこまでも凡で、どこまでも普通だ。
だから僕程度が二人と親しくなると言うのは、やっぱりはばかられることだろう。
( ^ω^)「おはようだお、ドクオ……」
('A`)「おう、我が友よ。今日も美女二名を侍らせ登校とは実に度し難……い……?」
ζ(゚ー゚#ζ「だからなんであなたはいつもいつも私の邪魔をするの? ついに手を繋いで登校できるとこだったのに!」
ξ#゚⊿゚)ξ「はぁ? あんたが邪魔臭く歩いてたから内藤の手を引っ張ってやっただけでしょ? つーか朝から暑苦しいんだけど?」
ζ(゚д゚#ζ「……分かった。もう我慢ならない。今日と言う今日は徹底的に教育してやるぅ……!」
ξ#゚⊿゚)ξ「はっ、やれるもんならやってみなさいよ、このバカ牛……このあたしに対して上等こいた罪、今償わせてやる……!」
( ^ω^)「ドクオ、羨ましいんだろぉ? ならどうかあれを止めてきてくれお……」
(;'A`)「……さーて。皆の者……逃げるんだぜぇー! お嬢達が大喧嘩をおっぱじめようとしてるぞぉー!」
( ^ω^)「本当お前ってここぞという時に最低だよね!」
(;'A`)「ええい離せ内藤! 俺は逃げるぞ! こんな恐ろしい環境にいてたまるかぁ!」
ξ#゚⊿゚)ξ「「うるさい黙れモヤシ!」」ζ(゚д゚#ζ
(#)A(#)「あぎゃぶぁ!」
( ^ω^)「ド、ドクオー!」
219
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:37:54 ID:0E69q/ug0
けど……そんな僕でも、こうして傍で見つめるくらいは許されるんじゃないのか。
だって花は愛でるものだ、こうして触れずとも、二人のこれからを傍で見守ってやるくらい許して欲しい。
ζ(゚д゚#ζ「内藤きゅんは私のものなの! あなたはすっこんでてよ! このチビ!」
ξ#゚⊿゚)ξ「誰がチビだこの牛女! こいつはあたしのものって決めてんのよ! 分かったら諦めて帰れバーカ!」
(; ^ω^)「いやいやもうやめて落ち着いて二人とも! その短刀と特殊警棒おさめてくれお!」
ζ(゚д゚#ζ「あ、内藤きゅん! 内藤きゅんは私の方がいいよね!? こんなチビより私の方が好きだよね!?」
ξ#゚⊿゚)ξ「バッカじゃないの? どう考えてもあんたみたいな暴走機関車選ぶとかないから!
一々答えなくていいわよ内藤、少なくともこいつではないのは理解してるから!」
(; ^ω^)「別にどっちとかはないけどお!? けどお!? こんな騒ぎを起こしちゃいけないと思うんだ、ぼかぁ!」
ζ(゚д゚#ζ「ほら怒ってるじゃない! あなたが怒られてるんだからね、このおチビさん!」
ξ#゚⊿゚)ξ「どう考えてもあんたが説教されてるだけだし、あたしは何も悪くないわよ!」
(; ^ω^)「二人とも悪いに決まってるだろうがおぉおお!」
ただ、その……よく言うじゃないか。綺麗な花には棘があるって。
更には見守っていたらいつしか蔦が伸びてきて、僕はそれにがんじがらめにされている訳で。
僕はそんな変わった花々と共にいる訳だけど、ああ、本当、こう、何と言うか。
(; ^ω^)「この病んでる子とヤンキー娘どうにかなんないのぉ!?」
ξ#゚⊿゚)ξ「「それは無理ぃ!」」ζ(゚ー゚#ζ
(; ^ω^)「だと思ったおこんちきしょぉおおお!」
二人との出会いは僕の日常に革命を……大変革を齎し。
そんな日々に立つ僕は、きっと息をつく暇もないんだろうな、なんて思いつつ。
暴れ回る二人を前にして僕は盛大な溜息を吐くと、大きな声で文句を叫び散らすのだった。
220
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:38:19 ID:0E69q/ug0
( ^ω^)病んでヤンでレボリューションのようです
終
.
221
:
◆hrDcI3XtP.
:2019/10/12(土) 22:39:01 ID:0E69q/ug0
読了、お疲れ様です。以上で「( ^ω^)病んでヤンでレボリューションのようです」は了となります。
元々は某所で一般文芸として公開していたものだったのですが、それをブーン系に改編したものとなります。
とは言え時期で言えば三、四年前のものなので、手直ししている最中に「ひでえなこれ」と思う箇所も多く。
しかしあまり弄ったりせず、ぶっ飛んだテンポを殺さずに済んだかな、と思います。
さて、続編と呼べるかは不明ですが、これからは微笑むシリーズの書き溜めをしようと思います。
とは言え少々リアルが忙しくなってきましたので、早くても年末に投下出来るかどうか、と言った具合になります。
どうか気長に待っていただけたらばと思います。
それではお付き合いいただきありがとうございました。
おじゃんでございます。
222
:
名無しさん
:2019/10/13(日) 10:48:04 ID:7ZmMnljE0
おつ
面白くてニヤニヤが止まらなかった
223
:
名無しさん
:2019/10/13(日) 14:47:16 ID:x2caqsBQ0
乙、面白かったよ!
224
:
名無しさん
:2019/10/19(土) 15:11:47 ID:nF4fGHDk0
乙
面白かった
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