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ミ,,゚Д゚彡東京者のようです
1
:
名無しさん
:2019/06/08(土) 22:45:39 ID:IrprkArI0
.
東京で一日を過ごして、その間、おれは一体
どのくらいの人間とすれ違うなり、同じ空間を共有するものだろうか、考えることがある。
( ^ω^)「五万人くらいじゃない、ざっと」
同僚の内藤は、僕の顔を見ずに答えた。
その数字にさして根拠は無さそうだった。
ミ,,゚Д゚彡「そんなにいるかね」
( ^ω^)「だってさ、新宿駅って一日に何百万も乗り降りするわけじゃん」
( ^ω^)「乗り換えで数分歩くとしたって、絶対数千人レベルですれ違うでしょ」
おれと内藤は、中央線を新宿駅で降り、小田急線に乗り換えたばかりだった。
ミ,,゚Д゚彡「今のでそんなに行くか」
( ^ω^)「行ったでしょ、帰宅ラッシュだし」
帰宅客を詰め込むだけ詰め込んだ小田急線は新宿駅のホームをおもむろに抜け出し
低速で神奈川方面へと南下し始める。
乗り込んだ車両の中で、声を立てているのはおれ達だけだった。
内藤の返事を曖昧な相槌で受け流しつつ、隣のスーツ姿の女に目をやると
手に持っている分厚い手帳に、仏頂面で何かを書き込んでいる。
.
55
:
名無しさん
:2019/10/21(月) 23:51:58 ID:jL1ON/6M0
.
( ^ω^)「おれにも?」
ミ,,゚Д゚彡「お前にもあるし守屋さんにもある」
ミ,,゚Д゚彡「マックの女子高生の店員にもあるしマッキンリー(三歳、オス)にもある、みんなみんなある!」
おれの気迫に内藤はたじろいだのか、二、三歩後退りした。
おれはそれを見て少し得意気になり、ハイライトの煙を天井に向かって勢い良く吹き出せば、
汚い靄がかりが内藤のむくれた身体を包むように降り注いだ。
ミ,,゚Д゚彡「お前もやれば分かるよ」
( ^ω^)「やれば分かる」
ミ,,゚Д゚彡「東京者の仏頂面を一瞬だけ外して、シラフとは別の次元で倫理を乱していけ」
ミ,,゚Д゚彡「……丁度いい範囲内で」
おれは咄嗟にフォローを入れたつもりだったが、内藤にはそれすらもどうも届いていないようだった。
( ^ω^)「誰も見てないところでちんこって言えばいいのか、それとも職場でコーラをブチこぼせばいいのか」
これはまずいな、と思った。
それはお前のさじ加減に任せるよ、とおれは一言言って喫煙室を離れた。
あの男が何をやらかそうとおれの責任にはしないでほしい、とだけ思った。自分のキチガイは自分で始末すべきなのだ。
続
.
56
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 00:10:22 ID:b0/XxbR20
房野君、脳内会話が口に出ちゃってるぞ!!
57
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 00:34:32 ID:cTsmhTGk0
ちょっと分かる気もするしマジで何なんだ房野という気もする
58
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 00:36:04 ID:DiYYE6sA0
これ分かるけど分かりたくないすごく身近な狂気だな
好きです 続き楽しみ
59
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 01:53:11 ID:8n7.ftTg0
ふとした時の意味のない衝動に意味を持たせるとこうなるのか
60
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 03:02:07 ID:LKKrrj.Q0
良いねえ…
61
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 13:48:05 ID:cCS9wM.w0
.
コーラにまみれた書類をもう一度出力するなどしていたらいつの間にか二〇時を回っていた。
内藤はとうに帰っており、おれは独り狛江への帰路に就いた。
小田急線の準急は相もわらずマイナス十度の仏頂面で埋め尽くされているわけだが
おれから見て向かい側のドアにいる男の周りにだけ、何故か不自然な空間が形成されていることに気付いた。
その男の周囲、丁度五〇センチ程がぽっかりと空いていたのだ。
( ´曲`)「あああああ」
( ´曲`)「今にも、今にも強力な電磁波が新宿を襲ってくるというのに小池は何も対策を打たず!」
( ´曲`)「これはヒロシマ以来の未曽有の危機、一体識者は何を考えておられるのか――」
ああ、そういう人か、おれは理解した。
しかし東京の人間は慣れたもので、この男の言動に眉一つすら動かす気配が無い。
おれの田舎であれば――
例えば、このような男が電車の中で、駅の改札で、商店街の中央で、同じようなことを叫んでいれば
たちまちどこかしらから怒号が飛んでくることだろう。
駅の助役の長岡さんや、魚屋の椎名さん辺りが
_
( ゚∀゚)「こらこらこらどうしたのどうしたの、ダメだよそんな大声で、皆もいるからほらほらほら」
(*゚ー゚)「あんたもう、さっきからうちの前で変なことばっかり言って! どっか行った行った!」
とでも言って、男をどこか自分とは関係の無いところへ飛ばそうとするだろう。
しかし東京は違う、この男はここにいながらにして、初めからいないものとして見なされているのだから。
.
62
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 13:48:26 ID:cCS9wM.w0
.
しかし、おれはこの男がどこかで羨ましかった。
精神の病とは言え、男は無意識のうちに、いや、無意識だからこそ東京者としての秩序をいとも簡単に
そう、いとも簡単におれの前で破ってみせたのである。
ミ,,゚Д゚彡「気持ちいいか、おじさん」
( ´曲`)「ああ、我々ヒノモトの民は過去遥かなる長きにわたる苦痛と」
ミ,,゚Д゚彡「気持ちがいいのか、おじさん」
( ´曲`)「日ごと夜ごとこのようにして思考停止を続け、エコノミックアニマルとしてのお」
ただ、男は言わずもがな正気では無いので、この男が「ぶち壊す」ことで「世界を広げた」とて
そのカタルシスを存分に味わえたかと考えると、それは無いだろうな、となった。
おれの至上命題は、「いかにして正気を保ちながら東京者としての物語を破りつつ
最大級のカタルシスを得るか」なのだなと、ここに来て漸く分かりつつあった。
ただ、おれはその構図に挑むにしてはどうにも臆病でもあった。
おれは狛江で降り、男を乗せた準急は夜の帳へと吸い込まれる。
夕飯を作るにはどうにも遅く、昨日と同様、高架下のマクドナルドへと向かうことにした。
果たして店頭のレジで客を構えていたのは、件の女子高生だった。
.
63
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 13:48:46 ID:cCS9wM.w0
.
ミ,,゚Д゚彡「うわっ」
おれは思わず足を止めてしまったが、彼女はおれの存在に気付いてしまったらしく
うらうやしくお辞儀をし、確かに「いらっしゃいませ」と口を動かしていた。
おれはどうも引き返せなくなったようで、じりじりとレジの方向に足を動かすより仕方が無かった。
ミセ*゚ー゚)リ「お決まりですか?」
レジに着くなり、彼女はメニューを選ぶ時間を与えてはくれなかった。
おれはたじろぎ、仕方無くテーブルの上に置かれているメニュー表を適当に指差し
そこにあったものを頼むことにしよう、と考えた。
ミ,,゚Д゚彡「えー」
おれの指先はソフトツイストに止まったので、自動的にそれが俺の晩飯となった。
一度決めたことは覆すまい。
ミ,,゚Д゚彡「ソフトツイストください」
ミセ*゚ー゚)リ「はい、お持ち帰りでよろしいですか?」
ミ,,゚Д゚彡「はい、はい……」
しばらくしておれの右手にソフトツイストが渡され、彼女は正しい笑みをおれにこぼし
お気を付けてお持ち帰りくださいと言った後、こう続けた。
ミセ*゚ー゚)リ「今日は雨も降ってないですよ!」
.
64
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 13:49:13 ID:cCS9wM.w0
.
ミ,,゚Д゚彡「はっ?」
たじろいでしまった。してやられた、と思った。
しかしおれがお前に求めていたのは、そういう「サービス」ではないのだ。
ミ,,゚Д゚彡「あっ、そうですね、気を付けます、あっ、ははは」
完全に、彼女とおれとで昨日とは立場が逆転してしまった。
「こんな夜遅くにソフトツイストだけを持ち帰りで注文するコミュニケーションが苦手なスーツ姿の男」と化したおれは
逃げるようにして狛江マルシェを離れ、できるだけ人通りが少ない裏路地へと急いだ。
秋の夜長は、いよいよ「刺し込むような」という表現が似合うような冷気をたたえ始めていた。
おれはなるべく街灯を避けながら、すれ違う人間にできるだけ気付かれぬようソフトツイストを舐めては身を震わせ
恐らくは世界で最もくだらない晩餐を謳歌していた。
ミ,,゚Д゚彡「誰もおれを見るなよ……」
おれはすれ違う人間達に聞こえぬようにして呟いていた。
ミ,,゚Д゚彡「誰もソフトツイストを舐めるおれを見るなよ……」
おれはソフトツイストを舐めながら、これもまた小規模ではあるものの
東京を静かに混乱無く秩序立てて生きる上でのプロセスを乱しているかもしれない、と考えたが
堂々とそれをやってのけることができずにコソコソと物陰に隠れてしまう以上、たかが知れてもいた。
.
65
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 13:49:46 ID:cCS9wM.w0
.
部屋に着き、ベッドへと横になりつつ
おれがシャワーを浴び歯を磨く、その気分になる頃合いをひたすら待っていたが
何十分待てどその気にならないので、おれはついに諦め、もう今日はそういう日なのだ、と思うことにした。
日々の生活、日々の営み、日々の動作は気の持ちよう次第であり、その気にならなければそれはもう、無理なのだ。
ミ,,゚Д゚彡「今日は寝るのが一番良かった」
おれは消え入るような声で独り言ちた。
ミ,,゚Д゚彡「納得している」
その時、ベッドの端に乱雑に放り投げたスマホが、点滅しながら揺れているのを視界の隅で捉えた。
おれは手を伸ばし、画面を見ると、内藤からの着信だった。
ミ,,゚Д゚彡「はい」
電話の向こうで、内藤がやたらと籠った声でこう言った。
( ^ω^)「あのさあ」
ミ,,゚Д゚彡「うん」
( ^ω^)「おれさあ、お前の言う通りに、やってみたんだよ」
ミ,,゚Д゚彡「何を?」
( ^ω^)「楽しかったんだよ……背徳感みたいなやつが凄いんだけど、それが良かったし」
.
66
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 13:50:46 ID:cCS9wM.w0
.
ミ,,゚Д゚彡「いや、だから何を?」
内藤はしばし間を置いて応えた。
( ^ω^)「おれ、昔サバゲーにちょっと凝ってたって言ったじゃない」
ミ,,゚Д゚彡「はあ」
( ^ω^)「その時のモデルガン引っ張り出してさ、金切り声で『死ね死ね団のテーマ』歌って」
( ^ω^)「妹とか親父とかに『うちゅぞ! うちゅぞ!』って言ったら、メチャメチャ楽しいんだ……」
ミ,,゚Д゚彡「はあ」
電話の向こうで、内藤が何を話しているかがいまいち分からず
おれはひとまず、部屋の壁をよじ登る小さな蜘蛛の動きを目で追うことにした。
( ^ω^)「そしたら、本気で心配された……」
ミ,,゚Д゚彡「はあ」
( ^ω^)「おれが仕事でとんでもなく何かを抱えてるんじゃないかって、『爆発する前にどうして相談しなかったんだ』って」
( ^ω^)「『どうしようもなくなったら、まだ父さんや母さんに頼っていいから』って……」
小さな蜘蛛は壁に貼り付く力が弱いのか、何度も落ちては上がりを繰り返しており
いつまでも前進しないそのもどかしさに、おれは苛立ち始めていた。
.
67
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 13:51:09 ID:cCS9wM.w0
.
( ^ω^)「おれはただ、倫理を乱したかっただけなのに……」
ミ,,゚Д゚彡「お前、もう寝ろよ」
おれは内藤の電話を切り、いつまでも天井によじ登れない小さな蜘蛛をティッシュで包み
くしゃくしゃに丸めた後、近くのゴミ袋の中に放り投げた。
そのままベランダに出てハイライトに火を点け、夜風に身体を冷やされつつ、おれは改めて
先程聞いた内藤の話を整理することにした。
よもやおれは、内藤に先を越されたのではなかろうか?
ミ,,゚Д゚彡「やりやがったな、やりやがったな内藤」
おれはその時、確かにじわりじわりと何かに急かされるような気分を覚えた。
ハイライトの煙はおれの心持ちをよそに、のろのろと暗がりの中を上っては溶けていく。
ミ,,゚Д゚彡「ふざけやがって、ふざけやがって……」
続
.
68
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 17:28:06 ID:cCS9wM.w0
.
おれは再びベッドに倒れ込み、このまま眠ることなく、まんじりともせずに朝を待ってやろうと思っていたが
おれの意志とは関係無く身体は眠る時には眠るものであり、白々しくも朝がやって来た。
昨日のマクドナルドの店員が発した「そうじゃない」答えと、内藤が電話で話していた一連の顛末が
おれの頭の底流の方をずるずると這いずり回り、どうにも気分が優れないまま小田急線に飛び乗り、職場へと向かった。
朝の小田急に乗り込んではすし詰めに成り行く乗客は今日もマイナス十度の仏頂面で綺麗に統一されており
おれもまたその一員になることで、恐らく今日も何事も無く職場に着く予定だった。
仮におれがこの環境の中で、大声で
「サブプライムローン長谷川」
と叫ぼうものなら、おれの周囲の人間は一斉に「ぎょっ」とした顔でおれを見るだろうが
すぐに瞬時に元の顔に戻り、おれを「無かったこと」にするだろう。
だが、おれもまた、隣に立っている男が急に
「おれのパイナップルが戻ってこない」
と絶叫したらば、多分同じ行動を取るだろうし、それを分かっている以上、おれは誰をも責めることはできなかった。
しかし、この車内の何百人が、この電車の何千人が、小田急でそれぞれの居場所へ向かう何十万人が
どれほど東京者としての安寧の名のもとに、互いを縛り合ってきたことだろうか!
ミ,,゚Д゚彡「たった数秒の『ぎょっ』こそが、解放していかんとする者に多大なるダメージを与えるのだ」
ミ,,゚Д゚彡「それさえ乗り越えられる強靭な精神を付けることができれば、おれは更なる高みを目指せるだろう」
おれは静かに、しかしながら力強くそう確信した。
電車は祖師ヶ谷大蔵をノロノロと弱々しく通過していた。
.
69
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 17:28:34 ID:cCS9wM.w0
.
職場に着くと、内藤がおれを待ち構えていた。
( ^ω^)「まだ分からなかった」
ミ,,゚Д゚彡「え?」
( ^ω^)「おれには、まだ分からなかった」
知ったことではない。
おれは内藤を押しのけ、デスクに鞄を置いた。
ミ,,゚Д゚彡「お前なあ、我の解放って言ったって、所詮お父さんお母さん妹の前での話だろ」
ミ,,゚Д゚彡「親兄弟にじゃれるくらい珍しくないんだよ、当たり前のことなのよ」
おれは何故だか分からないが、急速に苛立っていた。
ミ,,゚Д゚彡「それともなんだ、東京の人間は親兄弟の前ですら仏頂面で過ごすのが当たり前なのか?」
内藤の垂れ下がった頬が徐々に丸く膨らみ始め、眉のあたりが微細動を起こしているのが見えた。
オーブントースターの中で膨れ上がる餅を見ているようだな、とおれは思った。
( ^ω^)「お前、そろそろ無いぞ本当に」
.
70
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 17:29:00 ID:cCS9wM.w0
.
ミ,,゚Д゚彡「そんなんじゃ分かんないよ、分かんない分かんない」
おれはそう捲し立てながらも、気ばかり焦っていた。
家族間であれ、確かにこの男は「ぎょっ」を乗り越え、おれとはまた違う景色を見ている。
そう思えば思うほど、おれは闇雲に分かんない分かんないと言い続けるほかは無かったのである。
( ^ω^)「分かったよ、やってやるよ」
ミ,,゚Д゚彡「え?」
( ^ω^)「お前、見てろよ、ほら、やってやるからよ」
内藤はそう言うと、おれの目の前でシャツのボタンに手をかけ、おもむろに服を脱ぎ出した。
やがて下着一枚の格好になった彼は、醜く弛んだ裸体を震わせてはオフィス内を練り歩き、高良部長のデスクによじ登る。
( ^ω^)「刮目しなさい!」
内藤が言わずとも、既に彼の奇行にオフィスの人間の視線は集まっていた。
そして、彼が穿いている大きなトランクスは不自然にめくれ上がっており
彼の膨れた身体に不相応な、頼りない「ナニ」がそこから露出し、所在無げに左右に揺れていた。
( ^ω^)「刮目しろ!」
彼は自分の胸板を両方で強く叩き、やがて低く構え、その体勢を整えた。
何かが始まるのだな、とおれは思った。
.
71
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 17:29:21 ID:cCS9wM.w0
.
( ^ω^)「あああああ」
内藤が低く唸る。
( ^ω^)「ひとつとせえ」
( ^ω^)「ひとりでみても、よかちんちん」
すると、後ろから聞き覚えのある声が飛んできた。
( ・∀・)「はあーよかちん、よかちん!」
おれはぎょっとしてしまった。
あの日おれが興味本位で殴りつけた、あの守屋係長の合いの手だった。
( ^ω^)「ふたつとせえ」
( ^ω^)「ふたりでみても、よかちんちん」
(,,^Д^)「はあーよかちん、よかちん!」
高良部長だ。
ヒラ社員にデスクによじ登られた挙句自慢するほどでもない陰茎を見せつけられ
本来なら怒りのあまり内藤の首を絞めたとしても不思議では無い立場にいるあの高良部長が
守屋に続いて合いの手を入れている。
.
72
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 17:29:51 ID:cCS9wM.w0
.
( ^ω^)「みっつとせえ!」
( ^ω^)「みんなでみても、よかちんちん!」
オフィスは歓喜の声に包まれ、はあーよかちんよかちんと、誰もが合いの手に加わり
とうとうおれだけが独り、取り残された。
ミ,,゚Д゚彡「よかちん音頭というのは、空のビール瓶をナニに見立てていかに面白く踊るかがポイントであって」
ミ,,゚Д゚彡「おまえはただその粗末なナニを露出して仁王立ちになっているだけで、根本的に間違っているじゃないか」
おれの懸念はよそに、内藤に煽られた彼等は彼等で、とうとう我を忘れ始めた。
高良が言う。
(,,^Д^)「素晴らしい! 彼は例え職場の中だろうが、自分の存在感を自分なりに創造し、発信している、素晴らしい!」
(,,^Д^)「皆も、これに続くのが望ましいですね! こうやってこう、壁の向こう側に行きましょうね!」
高良はそう言って、突然両手を頭に当て、腰を左右にぎこちなく振り始めた。
(,,^Д^)「おれは、セックスマシーンだ」
彼は腰を左右に振りながら、じりじりとおれに近付き、こう言った。
(,,^Д^)「おれはセックスマシーンだ、房野君はどう?」
ミ,,゚Д゚彡「いや、ぼくはセックスマシーンじゃないので」
.
73
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 17:30:12 ID:cCS9wM.w0
.
その時、足元に何か硬いものが当たり、ふと下を見ると、守屋が前転の練習に勤しんでいた。
彼はどうも運動神経が悪いらしく、何度試しても前へと進めず、横脇に崩れ落ちてばかりいた。
( ・∀・)「だるまさんだよ、だるまさんだよ」
ミ,,゚Д゚彡「だるまさんですか?」
( ・∀・)「ぼく、だるまさんになる。だるまさんになって、お婆ちゃんを安心させるから」
ミ,,゚Д゚彡「ああ……頑張ってください」
おれは顔を上げ、改めて周囲を見渡した。
内藤はとうに全裸になっていたが、彼の頼りない「ナニ」は相変わらず萎えた果実のように弱々しくその股間にぶら下がっていた。
天真爛漫でお調子者の斉藤は自分のデスクに繰り返し繰り返し頭を打ち付け、既に額から血が溢れている。
澁澤は愛飲している「わかば」を一箱丸ごと開けては丸ごと口に咥え、それでも足りないのか両鼻の穴両と耳の穴に各三本ずつ突っ込んでは
その全てに火を点けて至上の喫煙を嗜んでいるし
この部屋で紅一点の渡辺は、両手足を規則正しく曲げたり伸ばしたりしては
从'ー'从「お嫁に行けなくなっちゃう! お嫁に行けなくなっちゃうの!」
と、執拗に連呼していた。
果たして、この事象は何なのであろうか。おれが蒔いた種なのだろうか。
しかし、おれが求めていた風景は、これではなかった気がした。
ミ,,゚Д゚彡「帰ります、具合が悪いんで」
おれは下手な前転を繰り返している守屋に別れを告げ、職場を出た。
続
.
74
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 17:48:54 ID:eQ32X/8k0
>>71
あれ、結局殴りつけてなかったんじゃ
75
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 18:13:36 ID:3Ldi43Vw0
どうしちゃったんだよ
76
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 18:39:05 ID:scP7yPe.0
狂気も感じるけどクソワロタ
77
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 18:48:49 ID:b0/XxbR20
マジキチすぎりゅ……
78
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 21:01:19 ID:2hp8AJVo0
おつ
話すときの「」が変わらないからほんとに言ったかどうかわからないんだよな
79
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 21:29:36 ID:O2ayWzN20
これ、このままだと次の100選にマジキチで選出されるぞ
80
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 21:30:53 ID:fhW2rCdY0
静かじゃない狂気
81
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 22:18:14 ID:S8K.584w0
みんな発狂した…
82
:
名無しさん
:2019/10/22(火) 23:45:14 ID:DiYYE6sA0
これは夢かうつつか……
83
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 00:10:35 ID:VlWjcFcc0
.
昼前、陽は南へと高度を上げ、湿気こそ無いが日差しはじりじりと暑く
職場の最寄りに着く頃には既に汗が滲んでいた。
おれは鞄の奥底から職場のスマホが振動しているのを感じ、誰かも確認せずに、その電話に出ることにした。
ミ,,゚Д゚彡「はい」
( ・∀・)「あっ、房野君か、良かった繋がって」
ミ,,゚Д゚彡「お疲れ様です、すいません昨日は」
( ・∀・)「昨日?」
ミ,,゚Д゚彡「いや……不意に殴ってしまいまして」
( ・∀・)「殴ったって?」
電話の向こうの守屋の声は訝し気だった。
そうだ、そう言えば、おれはこの男を殴るところまでは行かなかったのだ。
ミ,,゚Д゚彡「あっ、すいません、やっぱり殴ってないです、殴ってないです」
( ・∀・)「いや、まあいいよそれは、良くないけど」
( ・∀・)「それより、なんでさっき無断で帰っちゃったの?」
.
84
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 00:10:57 ID:VlWjcFcc0
.
ミ,,゚Д゚彡「えっ?」
予想外の質問に動揺した。
おれが帰った理由なんて、火を見るより明らかではないか。
( ・∀・)「内藤君に聞いたけどさ」
( ・∀・)「さっき軽く挨拶したらそのまま何分も突っ立って、やっと動いたと思ったらそのまま帰ったって……」
ミ,,゚Д゚彡「ええっ?」
おれはそれ以上守屋の言葉を聞かないことにし、電話を切り、スマホの電源も落とした。
おれがさっき見たものが一体何だったのかは、考えないことにしようと思った。
平日、午前、下り、各駅停車の小田急線に乗客はまばらだった。
とは言え東京を生きる人間達の表情には一片の抜かりも無く、おれもまたその通りであった。
おれは東京を生きていて、お前達も東京を生きている。
おれには東京を生きるお前達の感情が分からない。
おれには東京を生きるお前達の心の内は、とうとう最後まで分からないだろう。
ミ,,゚Д゚彡「だから、お前達はおれがこれから何をするかも分からないはずなんだ」
おれもお前も互いの心の内が分からないから、関わらずに生きていける。
だからこそ東京一億人の赤の他人同士は、日々安泰の中で営みを繰り返すことができたのだ。
おれは人々の、涙ぐましい日々の努めを否定したくはなかった。
ただ、そんなおれも、向い側に座っているお前も、時として、どこかで……。
.
85
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 00:11:17 ID:VlWjcFcc0
.
昼の狛江駅は、昼食を求めて手頃な店を探し回るサラリーマンと
中間テストが終わり帰路に就く学生とで適度に賑わいを見せており、南口もまた例外ではなかった。
さて、房野俊彦は極めてニュートラルな……いや、形容するならばニュートラルからほんの十度ほど感情を
「負」に傾けたような表情をして、改札を降り立った。
華奢な体系に似合わず大柄な肩幅のスーツを着ており、ややもすると貧層にすら思えるような見てくれだった。
狛江の街は陽光の中に和らぎ、安寧のまどろみの中での昼下がりといった趣であった。
彼はロータリーの中央部に移り、かんかんの日照りにも関わらず雨用のビニール傘を取り出すと
流れ行く人混みの中で何を決意したのだろうか、息を飲んでは、途端に大声でこう叫び始めた。
ミ,,゚Д゚彡「あいむ!」
ミ,,゚Д゚彡「あいむ! しいいいいいいいいいいんぎにんざれいん!」
その時、確かに人の群れは面白いようにぴたりと制止し、皆の目線は一様に彼の顔へ向いた。
そして彼はほんの一瞬だけ口の端でニヤリと笑った、間違いなく笑ったのである。
ミ,,゚Д゚彡「じゃすっしいいいいいいいいいいんぎにんざれいん!」
ミ,,゚Д゚彡「わなぐろおおおおお……歌詞忘れた」
.
86
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 00:11:40 ID:VlWjcFcc0
.
彼は傘を大げさに振り回し、細い手足をぴょこぴょことぎこちなく捻じ曲げては
奇妙なタップダンスを始めた。
人の群れが止まったのはほんの僅かな時間であり、やがて再びこれまでの規則通り
極めて順序良く流れ始め、最早誰も彼を気にかける者はいなくなった。
彼は確かにそこにはいるのだが、最早そこにはいないのである。
ミ,,゚Д゚彡「だあんすいんざれいん……」
ミ,,゚Д゚彡「たあらりあああああららりらあああああ……」
次第に房野の挙動は弱々しくなり、その声にも息が目立つようになったが
彼はこの不可解なリサイタルを決して止めようとはしなかった。
何の使命か、それとも彼が自発的に行っているのか定かではないが
まるで負け戦だと分かっていながらも尚も抗っているような、安い悲壮感さえ漂わせているようだった。
房野の不審な挙動が既に目新しいものでなくなってから数分経ったが
その中でただ独り、ふと足を止めた女性がいた。
彼女こそ、駅に併設された商業施設「狛江マルシェ」のマクドナルドで働くアルバイター、浪瀬凛だった。
彼女はバネ人形のような怪しいタップダンスを踊っては傘を振り回す房野の姿に
昨日、ソフトツイストを一つだけ買って帰って行ったおかしな男の面影を見たのだった。
ミセ*゚ー゚)リ「……あの」
声をかけてみたはいいが、男の心ここにあらずといった雰囲気で
彼女のことは気にも留めていないようだった。
.
87
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 00:12:21 ID:VlWjcFcc0
.
ミ,,゚Д゚彡「てーってれってれ……てーってれってれ……」
ミセ*゚ー゚)リ「……すみません、何でもないです」
そして彼女は踵を返し、足早に狛江駅へのコンコースへと去って行くが
この男には最早、何もかも関係が無いのであった。
ああ、これが、もしこれが彼の思っている高みだとしたら
東京者の仮面を脱いだ者だけが得られる境地だとするならば、得られるはずのカタルシスは、どこにある?
ミ,,゚Д゚彡「いや、もう小難しいことは抜きにしようや」
ミ,,゚Д゚彡「おれを見ろ、おれを刮目しろ、このおれもまた、東京が抱える倫理の一つなのだから……」
房野は長いこと踊り続けた。その棒切れのような身体で、何十分も踊り続けた。
歌うだけ歌い、叫ぶだけ叫んだ、そしてこの時、既に彼は独りだった。彼は無事、東京の安寧と秩序から脱したのである。
おめでとう房野俊彦、心から祝福しよう。おめでとう房野俊彦……。
やがて彼はロータリーの真ん中で仰向けに倒れ、呟くように言うのだった。
ミ,,゚Д゚彡「ダメだ、もう無理だ」
ミ,,゚Д゚彡「……おれ、やっぱりインコ飼うんだ、インコ飼うんだよ、インコ……。」
終
.
88
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 00:15:18 ID:VlWjcFcc0
おしまいです
いずれもうちょいまともに加筆修正したやつをどこかに載せるので
その際にはまたアナウンスします、お粗末様でした
89
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 00:39:22 ID:4I9IhNZU0
どこからが房野の幻覚だったのか 面白かった乙
90
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 00:56:15 ID:yXl7blKw0
振り切っていて素晴らしかった
乙
91
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 01:17:24 ID:KbsWbufE0
房野が振り切れたとしても、この後もどうせ人生続いていくんだろうなと考えると遣る瀬無いな そこが好き
乙でした!
92
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 01:44:37 ID:F2MhzVYA0
これが東京か
東京怖い
93
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 04:53:17 ID:lFxTtA9Y0
作者氏と房野君に盛大なる乙を
白昼夢的作品とても素晴らしかったです
94
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 05:01:40 ID:/CzxKAYY0
おつ
悲しくて涙が出てきた
95
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 06:51:10 ID:Ka6/T8b60
小さな狂気が徐々に積み重なってついに弾けるカタルシス……と呼ぶには余りに虚しい…
独特の酩酊感。無二のセンス。面白かった!
96
:
名無しさん
:2019/10/23(水) 16:29:40 ID:96rp8tdE0
おつ
フサが徐々に崩れるのが見たかったぜ
97
:
名無しさん
:2019/10/26(土) 21:42:06 ID:3FT1WL8gO
なんか上手く言えないけどすげぇもんを見ちまった気分だよ
98
:
名無しさん
:2019/12/18(水) 14:07:13 ID:Uro65GKw0
どうしようもない話を文学的なエモさで包み隠さずぶちまける感じ好き
乙
99
:
名無しさん
:2020/05/08(金) 18:52:33 ID:Qbnzet5c0
ナイス
100
:
名無しさん
:2021/01/16(土) 21:39:17 ID:xMGGrV0E0
>>88
>いずれもうちょいまともに加筆修正したやつをどこかに載せるので
>その際にはまたアナウンスします
待ってるけどまだか?
101
:
名無しさん
:2021/01/20(水) 20:56:18 ID:rrpvwxRM0
まだです!!!!
まっててね!!!!!!!!!!!!!!!!
102
:
名無しさん
:2021/01/21(木) 00:36:35 ID:cisvVrE60
いつまでもまってるからすぐお願いします
103
:
◆.LuQ4TdvBw
:2021/01/25(月) 11:10:11 ID:7QALSi960
こんな話かけるの裏山!くやしいから絵投下してやる。
あえて画質落としたバージョンが上で、ちょっと画質マシなのが下なんだからね。
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2642.jpg
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2643.jpg
104
:
名無しさん
:2021/02/01(月) 22:30:53 ID:NX9e9Gyw0
>>103
えっ、めっちゃ怖いですね
嬉しいです、ありがとうございます
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