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Ammo→Re!!のようです

991名無しさん:2021/09/19(日) 08:51:51 ID:ctbjoZXk0
<]゚王゚[>『お前のは対話じゃない、ただの殺戮だ』

从'ー'从「人を殺すって、とっても気持ちいいのよぉ?
     その人の人生がそこで終わるの。
     あぁ、今日までせっかく善人でいたとしても、一瞬で終わるのよぉ。
     この手で、終わらせてあげられるのぉ。

     今頃、街の人たちもそうやって終わっているはずだけど、あなたは気づかないでしょう?
     そんなものよぉ」

<]゚王゚[>『なっ……!!』

その動揺が、ラキにとっては致命的であり、女にとっては絶好の機会だった。
僅かに遅れた斬撃の隙間を、女の一撃は見逃さなかった。
滑りこむ様にして脇の下の装甲の隙間に入り込み、その奥にあるケーブルを切断する。
両腕の駆動系を破壊されただけでなく、ラキの体にまでその一撃は到達した。

血管の集中する場所への一撃は、彼の体から一気に血液を奪い取った。

<]゚王゚[>『あっ……がぁっ……』

从'ー'从「あははっ!! ね?
     さっきまで元気だったのに、いい事言っていたつもりなのに、呆気ないでしょう?
     これまでの人生の何もかもは、こうやって私に殺されるためにあったのぉ」

<]゚王゚[>『ぶ……ブーオに……』

从'ー'从「あぁん、駄目よそんなことしたら」

ラキの喉を、鉤爪が貫いた。
音声入力による自爆コードの起動が奪われ、女を巻き添えに殺すことも叶わない。
あらゆる攻撃手段は彼の血液と共に急速に失われ、意識が遠のく。

从'ー'从「死ぬ前にガガーリンちゃんに会いたいでしょう?
     あっ、違うかぁ。
     死ぬ前のガガーリンちゃんに会いたいでしょう?
     まぁ何にしても会えないんだけどねぇ」

<]゚王゚[>『ご……の……』

从'ー'从「安心して、ちゃんと命は無駄にはしないわよぉ。
     命の最後の一滴まで、ちゃんと私が楽しんであげるわぁ」

ラキの左手首を一瞬で切断し、女はそれを拾い上げた。
女はその場にラキを残し、まるでデートを前にした少女のような足取りで歩き出す。
増援が来ない理由よりも、ラキは今、自分の自信が粉々に打ち砕かれ、無力感に苛まれていた。

<]゚王゚[>『に、にげろ……が……っ――』

992名無しさん:2021/09/19(日) 08:53:13 ID:ctbjoZXk0
――ラキが絶望の中で死に抗っている頃、ガガーリン・ザラキは絶望を前に立ち向かう道を選んでいた。
彼女がブーオ最後の砦であることは、彼女自身がよく理解している。

<]゚王゚[>『く、来るな!!』

金色のアストレア・カスタムは、ブーオの市長が代々引き継いでいる由緒ある棺桶だ。
戦場では何一つ優位性を生まない黄金色の塗装は、ブーオの市長である証。
邸宅内にいた護衛は全て殺され、今、絶望が目の前にいた。

( ・トェェェイ・)「いやいや、そう拒否しないでくださいよ」

悪魔の顎としか形容できないマスクを装着した男は、護衛と秘書を兼ねていた女の死体を一瞥した。

( ・トェェェイ・)「私は対話に来たのに、こんなに手荒な歓迎を受けるなんて……」

<]゚王゚[>『黙れ!! 侵略者を我々は断固拒否する!!』

( ・トェェェイ・)「はぁ……交渉は決裂ですか」

<]゚王゚[>『今すぐ消えろ!! 消えてなくなれ!!』

次の瞬間、男は笑顔を浮かべた。

( ・トェェェイ・)「いいですね、その気丈な態度。
       どうやれば壊れるのか、ぜひ試したい」

<]゚王゚[>『無礼るなぁ!!』

大口径のライフルを構え、威嚇射撃を行う。
それは彼女の体に染みついていた一撃目。
いかなる相手でも、対話の道を用意することがブーオ市長の務めなのだ。

( ・トェェェイ・)「あぁ、駄目ですって、そんな虚勢。
       人を撃ったことがないのがすぐに分かってしまって……あぁ、興奮しますよ」

男が一歩で間合いを詰め、ガガーリンの手を取る。
優雅、あるいは紳士的なまでのその仕草には一切の殺意がない。
そのため、致命的なまでの接近を許したことに半瞬遅れて気が付いた。

<]゚王゚[>『あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!』

男の顎が接吻をするように、ガガーリンの右腕を食い千切った。
焼き鏝を当てられたかのような激痛が走り、次いで、肉が焦げる嫌なにおいがした。

( ・トェェェイ・)「うぅん、いい声ですね。
       思った通りだ、貴女は強がるよりもそうやっている方が素敵だ」

<]゚王゚[>『こっ、この!!』

( ・トェェェイ・)「落ち着いてください、興奮していると対話が出来ないですから」

993名無しさん:2021/09/19(日) 08:54:57 ID:ctbjoZXk0
無事な左手で男を殴りつける。
その拳を口で受け止め、男はガガーリンの拳を噛みちぎる。
親指以外の指が装甲ごと噛み取られ、男は口に挟んだ指を弄ぶように転がし始める。

<]゚王゚[>『ひっぎぃいい!?』

地面に指を吐き捨て、男は言った。

( ・トェェェイ・)「血の気が多いわりに、どうにも鉄分が少ないみたいですね。
       さぁ、対話の準備はよろしいですか?」

从'ー'从「どう? お話は出来そう?」

両手に鉤爪をつけた女が割れた窓から入り込み、そんな言葉を吐き出した。

<]゚王゚[>『お前たちはっ……!! 内藤財団の奴らだな!!
     こんなっ……こんなことをして!!』

从'ー'从「世界に発信するって?
     あははっ、無理よぉ。
     船には全部仕掛けをしてあるから、みんな沖に出た頃に沈んでいるはずよぉ」

<]゚王゚[>『そ、そんな……』

( ・トェェェイ・)「あー、後は兵士の話を忘れていましたね。
       どうします? 私から説明します?」

从'ー'从「えぇ、どうぞお好きに」

( ・トェェェイ・)「兵舎の空調機器にDV-Xガスを仕掛けたから全滅していますよ。
       残念ですね。
       いや、本当に心からお悔やみを申し上げますよ」

<]゚王゚[>『ば、ばか……な……』

( ・トェェェイ・)「冗談でも嘘でもないですよ。
       ほら、さっき庭の方でこの女性が使っていたでしょう?」

从'ー'从「あ、そうそう。
      これ、お土産」

女が造作もなくガガーリンの前に投げたのは、人間の手首から先だった。
その指は血で汚れているが、薬指にはめられている指輪は見覚えがある。
彼女の夫であるラキに送られた銀の指輪だ。

<]゚王゚[>『ら、ラキ……!? きっ……!!
     貴様らぁあぁあああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!』

994名無しさん:2021/09/19(日) 08:55:36 ID:ctbjoZXk0
从'ー'从「予定通り、交渉は決裂みたいね」

( ・トェェェイ・)「じゃあ、後は好きにさせてもらいましょう。
       あ、そうそう。 一つ質問なのですが――」

<]゚王゚[>『死ねぇ!!』

( ・トェェェイ・)「――血液型、教えてもらえませんか?
       輸血しながらヤりたいので」

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この夜。
ブーオの歴史は大きな変化を迎えた。
内藤財団の交渉を拒否したことにより、彼らは滅びの道を辿ることになる。
外部から島に接触する手段がないことが災いし、島から外に情報と人間が流出することの出来ない鳥かごと化したのだ。

凌辱の限りを尽くされ、死を懇願する程の扱いを受けたガガーリンの心は完全に壊れ、あらかじめ用意されたシナリオ通りに動く人形となった。
言われた通りに書類にサインをし、島全体に放送をかけて声明を発表した。
更にいくつかの録音が完了すると、ようやく、ガガーリンは死を許された。
しかしある意味で、その結末は彼女にとっていい物だったのかもしれない。

――この後、ブーオに文字通り降り注いだ終末を見ないで済んだのだから。

995名無しさん:2021/09/19(日) 08:56:10 ID:ctbjoZXk0
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同日 PM11:59

イーディン・S・ジョーンズは防寒着を着込んだ状態で、その場に腕を組んで立っていた。
彼の耳にはイヤーマフが装着され、視線は星空に向けられている。
正確には星空ではなく、その下。
修復が完了した規格外の巨大さを誇る“対都市攻略用強化外骨格”棺桶、ハート・ロッカー。

約240メートルの巨体がこうして空の下に姿を晒すのは、恐らく、開発されてから初めてのことだろう。
とは言え、地下に作られた施設の天井が開いただけであり、その全貌を地上に出しているわけではない。
今から行う実験に伴い、一時的にその姿を見せるだけなのだ。
右肩に装着された巨大な砲門は、狭い場所での運用を可能にするために折り畳み式の砲身を採用した。

折りたたんだままでの使用も可能だが、今回の実験では展開して長距離精密砲撃を行う必要があった。
ジョーンズは無線機に向かって声をかけた。

(’e’)「よーし、用意はいいかな?」

彼らには時間がなかった。
世界を変えるという大義を実現するためには、圧倒的に時間が不足している。
今現在、ラヴニカから部品の到着を待っている段階だが、いつまでも待つことが出来ない。
彼らに今必要なのは、超長距離精密砲撃が可能であるという事実と実績だった。

(’e’)「よし、位置につきたまえ」

再び無線機に声をかける。
しかし返事はない。

996名無しさん:2021/09/19(日) 08:56:34 ID:ctbjoZXk0
(’e’)「コードの入力だ」

その言葉に対して、返事とは言えないが、反応があった。

『そして、大好きだった物も忘れていく。 私には一つだけ残っている』

淡々とした女性の声が無線機から聞こえてきた。
その直後、ハート・ロッカーの全身が僅かな軋みをあげて動き始めた。
やや前傾姿勢を取り、折り畳まれていた砲身を動かす。
長大な砲身を上空に向けたまま、ゆっくりと無限軌道が後退する。

地響きのような音が響き渡る前に、ジョーンズはイヤーマフを装着していた。

(’e’)「うんうん、いいぞ。
   さて、後は微調整だな。
   砲身をもうちょっと下にしてくれ」

細かな指示はそれから2分ほど続き、ようやく砲身が固定された。

(’e’)「じゃあ、撃ってみよう」

直後、爆音が施設中に響き渡った。
閉鎖的な空間の空気全てを震わせるほどの音は、イヤーマフを貫通し、ジョーンズの耳の機能を一時的に奪った。
夜空に向けて放たれた巨大な砲弾は弧を描き、南に位置するブーオに向けて進んでいく。
3分ほどして、ジョーンズの持つ無線機に反応があった。

『……ちらスカイアイ。 繰り返す、こちらスカイアイ。
聞こえるか?』

(’e’)「あぁ、聞こえるよ。
   で、どうだった?
   修正はどれくらい必要かね?」

『着弾先は市長邸宅。
市街地への被害は見られません』

(’e’)「ひとまずは命中か。
   よし、次は焼夷弾とフレシェット弾を連続で撃ってみよう」

大型クレーンによってハート・ロッカーから巨大な薬莢が取り除かれ、すぐさま別の砲弾が装填される。
その間、ジョーンズは腕時計の秒針に目を向けていた。

(’e’)「装填完了に15秒だ!! 次はもっと短縮してくれたまえ!!
    ようし、座標の修正を完了したかな?
    では二発目、いってみよう!!」

再びの爆音。
しかし、先ほどとは違い、クレーンの作業員はすぐさま薬莢を取り除き、装填作業を行う。
お互いの聴力がまだ完全でない中、ジョーンズは聞こえていないことを前提に声を荒げた。

997名無しさん:2021/09/19(日) 08:56:54 ID:ctbjoZXk0
(’e’)「12秒!! いいぞ!!
   着弾点はどうだ?!」

『市街地に着弾、山にも引火しました。
消防隊が動き出しています』

(’e’)「うんうん、いい判断だ。
   フレシェット弾、いってみよう!!」

災害的なまでの音が、三度施設を揺らした。
放たれたのは数万の鋼鉄製の雨を降らせるフレシェット弾。
木造の家屋程度であれば、容易に貫通し得るものだ。
そしてその圧倒的な数、起爆するように設計された高度。

鉄の驟雨は容赦なく住宅地に降り注ぎ、地上に血の海を作り出す。

『……着弾を確認。
まだ生存者がいる模様』

(’e’)「うーん、そうなると後は……
   毒でもまいてみようか。
   よし、装填作業開始!! 今度はベストタイムを頼むよ!!」

排莢と装填。
射撃と成果の確認。
修正と実行。
そして再び排莢と装填を行い、砲撃精度の確認がされる。

全ては訓練通りに行われ、ブーオは一夜にして死で溢れ返った。
対岸でその爆音と炎を確認した人間は大勢いたが、その原因を知る者はいなかった。
翌日、一部のラジオと新聞ではブーオが秘密裏に開発していた兵器が暴走、爆発を起こした結果の悲劇であることを報じた。
だがどの報道関係者も、ブーオに取材に行こうとはしなかった。

海には依然として機雷があり、命がけで取材をしなければならないからだ。
そこまでして中立の街を取材する価値が見いだせない以上、誰も真実を探ろうとは思わない。
それよりも記者たちの関心事は、クラフト山脈で発生した雪崩と轟音の関係性についての方に向けられていたが、それもごく僅かだ。
しかし――

――イルトリアとジュスティアだけは、ブーオに起きた一連の事件に関する精確な情報を得ていた。

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Ammo→Re!!のようです
Ammo for Rebalance!!編

第二章 【roar of dreamers-夢見る者達の咆哮-】 了

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998名無しさん:2021/09/19(日) 08:58:42 ID:ctbjoZXk0
これにて今回の投下は終了です

質問、指摘、感想など有れば幸いですが、
次スレにお願いします

Ammo→Re!!のようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1632009467/


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