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(#゚;;-゚)望みが叶う電車のようです
1
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:34:58 ID:YS5TOkhE0
「おわりとはじまり」祭り参加用です
30レスは超えると思うのでスレ立てしましたが、そこまで長くはならないと思います。
2
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:36:24 ID:YS5TOkhE0
近所の駅に、時刻表にはない電車が来るらしい。
その電車を見た人は、強く望んでいることが叶うのだとか。
そんな他愛もない噂話を、母は目を輝かせながら私に聞かせていた―――
.
3
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:37:32 ID:YS5TOkhE0
(#゚;;-゚)望みが叶う電車のようです
.
4
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:39:06 ID:YS5TOkhE0
母が若年性認知症と診断されてから、どのくらいたっただろうか。
発覚した当初は、軽い物忘れ程度だった。
しかし、蟻に集られた蜥蜴の死骸のように、あっという間に母の理性は蝕まれていった。
昨日買った歯ブラシを、翌日も買ってきた。財布を何度も無くして帰ってきた。
道に迷ってしまい、買い物に行けなくなった。料理の手順を覚えられなくなった。
テレビにお気に入りの俳優が出演していても、見向きもしなくなった。娘の名を思い出すのに時間がかかる。
介護施設を利用したこともあったが、半年間盥回しにされた挙句、症状が一気に悪化した。
家事ができない程度だったのが、食事すら1人ではまともにとれなくなっていた。
日によっては、娘の顔すら判別できなくなり、誰だ、と捲し立てられることもある。
とても、仕事は続けられそうになかった。
5
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:42:10 ID:YS5TOkhE0
* * *
(#゚;;-゚)「…」
ある真夜中、或いは夜明け前、ふと、目が覚めた。
厭な予感がする。
(#゚;;-゚)「お母さん…?」
母の部屋を覗くと、案の定、母の姿がなかった。
徘徊である。
(#゚;;-゚)「…また、か」
6
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:42:53 ID:YS5TOkhE0
自分が仕事を辞めてから、母は徘徊するようになった。
初めて徘徊されたときは、どうすればよいかわからず、警察に協力してもらった。
だが、担当した警察官の表情を見て以来、警察に頼るのはやめた。
…仕方ない、探しに行かねば。
急いで着替え、コートを羽織り、家を出た。
7
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:44:58 ID:YS5TOkhE0
最近ようやく暖かくなってきたとはいえ、夜が明けないうちはまだ寒さが残っている。
このまま風邪でもひかれてしまったら、堪ったもんじゃない。
さて、母はどこにいるのだろう。
行き先に規則性があるならどれだけ嬉しいか。
だが、生憎母はそのような理性をもはや持ち合わせていない。
健常だった頃に毎日のように利用していたスーパーマーケット、
井戸端会議に花を咲かせていた公園、
行きつけだった美容院、
国道と旧道を繋ぐ細道…、候補は無限にあると言ってもいい。
母を見つけるには、町中を探し回る必要があった。
8
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:46:02 ID:YS5TOkhE0
心当たりのある場所を虱潰しに確認してゆく。
しかし、一向に見つからない。
もちろん、入れ違いの可能性もあるため、一度見た場所も再び確認する必要もある。
小さな町とはいえ、自由気ままに彷徨う母を見つけ出すのは至難の業だ。
それでも、見つけなければならない。
(# ;;- )「いつまで続くんだろう…」
白い息とともに、そんな言葉が零れ落ちる。
母のことは嫌いではなかったはずなのに。
.
9
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:47:40 ID:YS5TOkhE0
どのくらい歩き回っただろうか。
ふと、空を見れば、うっすら青みを帯び始めている。
ここまで見つからないのは、初めてかもしれない。
このまま日が昇っても見つからなかったらどうしようか。
半ばやけくそになって町を歩く。
―――そして、気づけば近所の小さな駅の前にいた。
小さい頃は、母と出掛ける時に、そして、大人になってからは通勤に使っていた駅だ。
今まで母が徘徊したときは、こういった建物には侵入していなかった。
だが、小さな町のこの駅には自動改札機がない。入るのは容易い。
(#゚;;-゚)「…」
第六感か、それとも親子の絆なるものか。
なんとなく、母がこの駅にいる気がした。
10
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:49:38 ID:YS5TOkhE0
何の変哲もない駅だ。
見上げれば、天井に冷たく光る蛍光灯が並び、四角い時計が下がっている。
この駅に始発電車が来るのは5時30分だったはずだから、もう少し時間があるようだ。
向かいのホームの壁には、歯医者や大学の名前と電話番号が表記された看板がある。
黄色い点字ブロックが延びている。
そのホームの端に、母は1人佇んでいた。
( ´)「…」
あの水色のパジャマ、間違いない。
11
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:51:05 ID:YS5TOkhE0
(#゚;;-゚)「お母さん!」
背後から、母の肩に手をかける。
(#゚;;-゚)「お母さん、帰るよ!」
いつもなら、母は大人しく従ってくれる。
しかし、虫の居所が悪かったのか、
ヽ(( #´))ノ「うぅ〜!」
いきなり暴れだした。
(;#゚;;-゚)「ちょ、暴れないでよ!」
慌てて押さえつけようとするも、脳内のリミッターが外れている母を止めるのは容易ではない。
(;#゚;;-゚)「落ち着いて、ね!?」
周りに人がいなくてよかった。
ここまで暴れられてしまうと、周りに迷惑が掛かってしまう。
(;#゚;;-゚)「大丈夫だから!」
何が大丈夫なのだろうか。
心のどこかで、自嘲する。
.
12
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:53:26 ID:YS5TOkhE0
ヽ(( #´))ノ「あうあうあー」
母の動きは止まらない。
(;#゚;;-゚)「もう!」
(# ;;- )「いい加減にしてっ!!」
母が元気だった頃に戻りたい。
楽しかったあの時に戻りたい。
もっと仕事を続けたかった。
もっと早く認知症に気づくことができれば。
母は私のことをどう思っているのだろうか。
後悔や苛立ち、怒りや悲しみ、不甲斐なさなど様々な感情が頭の中を渦巻く。
そして、感情がどっと押し寄せた後は、案外、冷静になるもので、
ふと、何気なくホームの方に目を向けると、
いつの間にか電車が扉を開いて止まっていた。
13
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:55:00 ID:YS5TOkhE0
(#゚;;-゚)「…?」
もう、始発の時間になったのか。
そう思い、頭上の時計を確認するも、5時30分到着にしては妙に早すぎる。
時刻表にはない電車だ。
この電車はどこから来て、どこへ行くのだろうか。
―――理由は分からない。
歩き回って疲れていたからか、発車ベルが鳴ったからか、はたまた母との会話を思い出したからか…。
(#゚;;-゚)「…」
とにかく、気づいたときには、開いた扉にふらふらと吸い込まれていた。
14
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:57:39 ID:tqlROM6k0
支援でございます
15
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:57:52 ID:YS5TOkhE0
――――――――
――――
――
ガタンゴトン…
(#゚;;-゚)「…」
車内は特に薄暗くもなく、眩しすぎることもない。普通の車両だ。
だが、車内には誰もおらず、吊革はあるものの広告の類が一切見当たらない。
通常なら行き先を示す電光板は、真っ暗なまま。
取り敢えず、不気味なまでに紅い7人掛けの椅子の左から3番目に腰かけた。
16
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 17:59:08 ID:YS5TOkhE0
ガタンゴトン…
(#゚;;-゚) |(゚-;;゚#)
薄闇を走る電車の窓ガラスは、自身の姿を映している。
(#゚;;-゚)「…ひどい顔」
思わず、独り言ちる。
長年の介護生活で肌からは潤いが失せ、皺が深く刻み込まれている。
手入れをする余裕なんてなかった。まして、化粧を楽しむなんて以ての外だ。
若い頃は結構見た目には自信があったんだけどな、と過去の自分と今の自分を比べる。
今更後悔してもどうしようもないのに。
17
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:00:11 ID:YS5TOkhE0
(#゚;;-゚)「…」 |(゚-;;゚#)
何をするでもなく、ただただ鏡と化した窓ガラスを眺める。
ガタンゴトン…
(#゚;;-゚)「…」 |(゚-;;゚#)
(#゚;;-゚)「…」 |(゚-;;゚#)
(;#゚;;-゚)「!?」 |(゚-''゚*)
.
18
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:02:26 ID:YS5TOkhE0
それは唐突な出来事だった。
自身の姿をありありと映していたはずの窓ガラス。
(;#゚;;-゚) |(゚-''゚*)
そこに映っていたその姿が、
(;#゚;;-゚)「若返ってる…?」
明らかに若返っていた。
さらに、
(;#゚;;-゚) |(*-∀,,-/) (゚-''゚*)
別の人物も映し始めた。
そして、その人物は、
(# ;;- )「お母さん…」
母だった。
19
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:03:34 ID:YS5TOkhE0
ガタンゴトン…
(#゚;;-゚)「…」 |(*-∀,,-/) (゚-''゚*)
映っている姿が変わった時は驚いたが、ただでさえ時刻表にはない電車に乗っているのだ。
そのことを考えると、思ったよりも冷静でいられる。
映し出しているのは、母と最後に遠出したときの光景だ。
すでに認知症の症状は進行していたが、まだまともに会話ができる時期だったはずだ。
行ったのは隣の県の温泉地。
「若返りの湯」なるものがある、とかで母が行きたがっていたところだ。
20
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:05:55 ID:YS5TOkhE0
――――――
(*-∀,,-/)「アンタには迷惑かけるね…」
(*゚''-゚)「何言ってるの、お母さんったら」
(*-∀,,-/)「アタシなんかのために毎日頑張ってくれて」
(*-∀,,-/)「仕事まで辞めさせちまって」
::(* ∀,, /)::「ホントにごめんね…」
(* ''- )「…」
――――――
数年前まで、何度も交わした会話だった。
母の言葉は本心だったのだろうか。それとも、ただの認知症による譫言なのか…。
どちらにせよ、
(#゚;;-゚)「…」 |(*^∀,,^/) (゚‐''゚*)
母がこの旅行を楽しんでいたのは事実で、母の笑顔を見ることができて嬉しかったのは確かだった。
21
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:07:30 ID:YS5TOkhE0
ガタンゴトン…
(#゚;;-゚)「…」 |(,,*^Д^) (゚ー゚*)
映し出される像が変わった。
まだ働いていた時の光景だ。この時期が一番楽しかった。
重大なプロジェクトのリーダーを任された頃だっただろうか。
そう、なぜか一回りも年下の後輩がサポートについたのだ。
正直、頼りない後輩だった。
それでも、純粋でまっすぐな性格の彼は、次第にチームのムードメーカーになっていった。
三十路を超えても仕事一筋だった私にも、彼の魅力は伝わってきた。
そして、最初で最後の初恋の相手だった。
だから、彼から告白された時は、飛び上がりたくなるほど嬉しかった。
それでも―――
22
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:09:30 ID:YS5TOkhE0
――――――
(,,*^Д^)「先輩、オレ、先輩のことが好きです」
(,,*^Д^)「まだまだ頼りないのは自覚しています。ですが、先輩を想う気持ちは誰にも負けません」
(,,‐Д‐)「結婚を前提に付き合ってください!」
(* - )、「…」
――――――
それは、母が認知症と診断された翌日のことだった。
後輩に負担をかけたくなかった。それが、告白を断った唯一にして最大の理由だった。
なかなか彼が引き下がらなかったのを覚えている。
それでも、難しい案件にも生き生きとして取り組む彼を見ていると、母の存在が枷になってほしくなかった。
もし、彼の告白を受け入れていたら。時々そんなことを考える。
今日みたいに母が徘徊したら、真っ先に家を飛び出て町中を探し回るのだろうな。
汗だくになりながら町内を駆け巡る彼の姿を想像して、
(#゚;;‐゚)「ふふっ」
小さく吹き出してしまった。
23
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:10:23 ID:YS5TOkhE0
ガタンゴトン…
(#゚;;-゚)「…」 |(*゚∀゚) (゚ー゚*)
次に映し出されたのは、大学の進学祝いでレストランに行った時のものだ。
どうやら、この窓ガラスの映像は、時を遡っているらしい。
.
24
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:11:15 ID:YS5TOkhE0
――――――
(*゚ー゚)「お母さん、本当にありがとう。大学にかかるお金は働いてちゃんと返すからね」
(*゚∀゚)「アンタ、またそんなこと言って…。学費は気にすんなっていってるでしょ」
(*゚ー゚)「でも…」
(*゚∀゚)「デモもテロもないの!ダンナが死んじまった時の保険金やら賠償金やら慰謝料やらがたんまりあるんだから」
(;*゚ー゚)「う、うん…」
――――――
母はあんなことを言っていたが、複数のパートを兼業して何とか貯めてくれたものなのは分かっていた。
25
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:12:28 ID:YS5TOkhE0
――――――
(*゚∀゚)「にしても、アンタがあんな頭のいいトコに行くなんてねー」
(*゚ー゚)「ちょっと〜、それどういう意味?」
(*゚∀゚)「言葉通りさ。中学入っても九九の7の段が怪しかったじゃないか」
(*゚ー゚)「昔と今は違うじゃん」
(*゚∀゚)「だからってさ、明らかに実力に見合わないトコじゃないの」
(*゚∀゚)「まあ、結果的に入れたからいいんだけどさ」
(*゚ー゚)「頭が良さそうでかっこいいじゃん」
(;*゚∀゚)「アンタ、本気で言ってんの?」
(*゚ー゚)「…」
――――――
少しでも頭の良い大学に行けば、良い会社に入れて、たくさん稼いで、母を少しでも楽にすることができる。
今思い返してもなかなか馬鹿げた考えではあるが、それを母に伝えるのは恥ずかしかった。
26
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:13:23 ID:YS5TOkhE0
――――――
(*゚∀゚)「とにかく、電車でお祈りした甲斐があったよ」
(*゚ー゚)「電車って、あの、時刻表にないってやつ?」
(*゚∀゚)「そうそう。まあ、街に行くついでにお祈りしたんだけどね」
(;*゚ー゚)「行くついでって…。それって、普通の電車じゃないの?」
(*゚∀゚)「その辺は…、気にすんじゃないよ」
(*゚ー゚)「ふふっ、なにそれ」
――――――
他愛もない噂話だと思っていた。
母は駅に行くたびに、時刻表にはない電車を探していたらしい。
結局見つけることはできなかったらしいが、まさか、私がその電車に乗ることになるとは…。
27
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:14:03 ID:YS5TOkhE0
ガタンゴトン…
(#゚;;-゚)「…」 |(*゚∀゚) (゚-゚*)
映し出される自分の姿は、だいぶ幼い外見になっていた。
おそらく、小学校にも入学していない頃だろう。
28
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:14:58 ID:YS5TOkhE0
――――――
ヽ(*゚-゚)ノ「どうぶつえんっ!どうぶつえんっ!!」
(*゚∀゚)「こら、電車では大人しくしなさい」
(*゚-゚)「ごめんなさい、おかあさんとおでかけできるのうれしくて」
(*;-;)「おかあさん、ずっとおしごとしてるから…」
(;*゚∀゚)「ちょ、泣くことないでしょ!?」
――――――
そうだ、母は娘を育てていくために必死に働いていたから、一緒に出掛けたことはほとんどなかった。
この日は、久し振りに母と出掛けることができ、ついはしゃいでしまったのだ。
29
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:16:04 ID:YS5TOkhE0
――――――
(*;-;) グスングスン
(;*゚∀゚)「えーと…、そうだ!」
(*゚∀゚)「ウチの近所の駅にはね、時刻表にはない電車が来るんだって」
(*゚∀゚)「その電車を見るとね、強く望んでることが叶うんだって」
(*;-;) グスン…
(*;-;)「…おかあさん」
(*゚∀゚)「なあに?」
(*;-;)「じこくひょーって、なに?」
(*゚∀゚)「…」
(;*゚∀゚)「えーっと…」
――――――
思い出した。この時に初めて電車の話を聞かせてもらったのだ。
その日以来、電車に乗ると毎回のようにこの話を聞かされた。
何度も何度も話すものだから、聞き飽きてしまっていた。
しかし、この話をする時の母の目はキラキラと輝いていて、そんな母の姿を見るのが好きだった。
30
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:17:03 ID:YS5TOkhE0
ガタンゴトン…
(#゚;;-゚)「…」 |(*゚∀゚) (-。-*)
窓ガラスに映る自分は、いつの間にか、赤ん坊の姿になっていた。
母のここまで髪の長い姿は、初めて見たかもしれない。
病院だろうか。
母はベッドに腰掛け、タオルに包まれた「私」を抱いていた。
31
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:18:06 ID:YS5TOkhE0
――――――
(*-。-)「うー」
(*゚∀゚)「…」
(*゚∀゚)「可愛いな…」
(*-。-)「う?」
(*゚∀゚)「アタシとアンタの娘だよ…」
――――――
小型冷蔵庫の上に置かれているのは、父の写真だった。
父は私が生まれる前に、事故で亡くなっている。
.
32
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:19:28 ID:Ccoqm4Dk0
画面が見えへん、見えへんのや……なんでや
33
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:21:08 ID:YS5TOkhE0
――――――
(*-。-)「あー、うー」
(*゚∀゚)「ホントに可愛い…」
(*-。-)「あうあうー」
(* ∀ )「…」
::(* ∀ )::「ホントに可愛いなぁ…」
(* ∀ )、「うぅ…」グスッ
(* ∀ )「アンタァ…」
(* ∀ )「アタシ、頑張るから」
(* ∀ )「頑張ってこのコ、育ててみせるから…!」
――――――
(# ;;- )「―――」
強いヒトだった。
愛する者に先立たれながらも、たった1人で残された娘を愛し続けてきた。
テレビなどでは、父親のいない子供がそのことについて母親と口論するようなシーンが見られる。
だが、自分にはそんな経験はない。それも、母が父の分まで愛してくれたからだろう。
34
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:22:55 ID:YS5TOkhE0
認知症の発覚以前では、母が泣いている姿を一度も見たことがなかった。
だから、健常な頃の、母の涙は初めて見た。
もしかしたら、気づかなかっただけで、娘を育てていく過程で涙を流していたのかもしれない。
きっと、娘に心配をさせたくなかったのだろう。
やはり、母は強いヒトだ。
(#;;;-;)「―――!―――!!」
様々な感情が心の中を渦巻く。涙が止まらない。
すると、
プワァァァン!!
突然、警笛の音が耳を突き抜けた―――
35
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:24:11 ID:YS5TOkhE0
――――――――
――――
――
(;#゚;;-゚) ハッ
いつの間にか、元の駅のホームに立っていた。
向かいのホームの壁の、歯医者や大学の看板。
左右に延びる、架線と線路。
さっきの車内の光景は夢だったのだろうか。
見上げれば、冷たい蛍光灯。
踵の後ろには、黄色い点字ブロック。
そもそも、なぜ駅にいるのだっけ。
確か、母を探していて…。
そうだ、母はどこだろう―――
.
36
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:25:12 ID:YS5TOkhE0
―――ドンッ!
.
37
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:26:45 ID:YS5TOkhE0
背中に走る衝撃。
気づけば、足元の感覚が消えていた。
全身を纏う浮遊感。
ホームの端には、母が腕を突き出した状態で立っている。
(´-;;゙#)「アンタ、アタシを突き落とすつもりなんだろう?」
(´-;;゙#)「そうはいくもんかい!!」
(´-;;゙#)「親を殺そうとする娘なんかねぇ―――」
死んじまえばいいんだよ。
母の顔は険しい。とても、実の娘に向ける表情とは思えない。
38
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:29:00 ID:YS5TOkhE0
ふと、視界に入ったホームの時計は5時30分を指している。
―――近所の駅に、時刻表にはない電車が来るらしい
重力に従い、体が線路へと落ちてゆく。
―――その電車を見た人は、強く望んでいることが叶うのだとか
眼前には、始発電車が、迫って―――
.
39
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:30:16 ID:YS5TOkhE0
以上です。
着想を得たり意識したりしたテーマは「終わり」「はじまり」「冬」「春」「夜」「曙」「終電」「5時30分」「絶望」「自覚」「死」「誕生」といったところでしょうか。
お読みいただき、また、支援いただきありがとうございました。
40
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:43:11 ID:tqlROM6k0
あれ……?え?終わり……だと?
乙……?
41
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:48:56 ID:zA1rt9mc0
乙
42
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 18:55:31 ID:Ccoqm4Dk0
え、え? は?うせやろ……?
叶える願いちゃうやろ……
43
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 20:32:31 ID:7AsTiVN20
乙
また中々ハードな物を…
44
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 20:48:31 ID:PqyUv7WY0
乙!
45
:
名無しさん
:2019/01/14(月) 22:42:48 ID:tJR8/Y.M0
つらい…つらいよ乙…
46
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 11:44:27 ID:1KIFrheQ0
望みが叶うってのを深く考えさせられたわ
あまりにも辛すぎる…乙
47
:
名無しさん
:2019/01/19(土) 16:50:43 ID:3qIHIZMY0
とことん救いの無い欝エンド、乙
制御する人間のいなくなった母親はこの後どうなったんでしょうか
48
:
名無しさん
:2019/01/25(金) 15:37:01 ID:Z5xPXLV.0
おつ……
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