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( ^ω^)文戟のブーンのようです[6ページ目]
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【このスレについて】
●このスレは何か
→ブーン系の品評会企画です。
作品による競い合いと、それによる作者同士の研鑽を目的としています。
●品評会はどう行うのか→>>2参照
●どうすれば参加できる?→>>3参照
●スレタイにある『文戟』って何?→>>4参照
【その他のルール、細則>>5】
【生徒名簿>>6】
【まとめ】
https://bungeki.jimdofree.com/
【過去スレ】
テストスレ
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1531744456/
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https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1533540427/
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https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1536071497/
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https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1538666460/
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https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1541935201/
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初めの誤爆はわざとでもなんでもないです。初心者を装ったというか、本当に板に関しては初心者なので…。その節はご迷惑をおかけしました。
テキトーに作品を書いたことは一度もないです。
勝ちたくて、上手くなりたくて、作風や書き方をガラりと変えたら書けなくなっただけのこと。
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ドクオを擁護してる時はさも中立で冷静みたいに振る舞うけど結局ショボンって気に食わない相手には攻撃的だよねー
それに凄く感情的だと思うわ
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('A`) (何故かショボンが流れ弾食らってる…)
('A`) (名無しvsショボン始まるんですか?)
('A`) (でも、わざわざ名無しにかまってやるほど優しいのは俺ぐらいだと思うんですよ)
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('A`;削除)
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狐のスレ誤爆で謝罪がちゃんとないのはすごく印象が悪かった
でもそのあとそのスレの作者が雰囲気悪くしないように更新したりしてたから、「自分のスレか?」なんていうのはあのスレの(全く関係ないであろう)作者に失礼すぎるからやめとけよ
悪いのは狐だけだよ
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とりあえず作品が面白ければ何でもいいです(思考停止
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ここは本当に肥溜めだな
良い隔離スレだ
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( ・`ー・´)HRが35になりました。オンライン環境が整わず未だにソロでやっています。
( ・`ー・´)それでも楽しいモンハンワールド。
( ・`ー・´)自分の好きなことの中でも1番好きって言えるものが上手いこといかないってのはそりゃストレスだよね!ギャバを食えGABAを!
( ・`ー・´)もしくはストロングゼロを飲め!
( ・`ー・´)歴戦クエを解放して一段落したので書いていくぞ!震えて待て!
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こんなスレ早くなくなっちまえ
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いーや作品が増えるから残ってて良い
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(´・ω・`) おはようございます
(´・ω・`) 今回の話は途中からオチまでの流れは完成したのですが、序盤の広げ方が上手くいかないのに加え
(´・ω・`) あまりにも平凡なので今回の品評会は辞退します
(´・ω・`) ただ、ネタを完全に葬り去るのは嫌なので、何らかの機会に公開したいとは思っています
(´・ω・`) ……さて、このスレを見ている人の中には、なぜ僕が彼にここまでキレているのかイマイチ把握できていない人もいると思いますが
(´・ω・`) この話は文戟スレ内で完結しないので、あまり気になさらずに
(´・ω・`) …ただ、文戟スレで完結しない話をこのスレで持ち出したことについては謝罪いたします
(´・ω・`) また、結構ぼかしたとはいえ僕の発言が残り続けるのは彼にとって好ましくはないと思うので、近いうちに削除依頼を出しますってかもう出した
(´・ω・`) 以上
(´・ω・`) まとめは4月上旬公開予定
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フォックスでも銀でもなんでもいいけど、他スレに迷惑かけておいて、他作者にあらぬ疑いもかけて尚フォローもしないその根性の悪さが目立つな…
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boonrest.web.fc2.com/tanpen/tensai.htm
ここをみてるとこれをおもいだす
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他作者にあらぬ疑いって言うけど、ボクと誤爆されたスレの人はそもそも全くの別人ですからね。
記憶力のいいドクオくんが、勝手に勘違いして喚いてるだけで…。
スレの方には重ね重ねご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
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誤爆の時の意味の分からない持論出した時から透けてたがドクオよりクソだなこいつwww
いいからさっさとおもんない現行片付けにいけよ
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(´^ω^`) いや〜今回の品評会は名無しの読者からの投票が沢山集まりそうだな〜っと
(´・ω・`) フォックス君の現行は好きなんたけどね、僕は
(´・ω・`) 過去の例からしても、作品と作者は基本的に切り離して考えた方がいいよね
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よっし投下だ
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('、`*川「ふー……掃除終わりっと」
('、`*川「あの人がいないと、この部屋も随分と広いわねえ」
('ー`*川「ふふ。もう朝早くに起きて化粧をする必要もないのね」
('ー`*川「毎日ご飯のことを考えなくてもいいし、慌ててワイシャツにアイロンをかけなくてもいいんだ」
('ー`*川「とっても楽ね」
(-、-*川「……とっても、寂しいわね」
('、-*川「……」
ぽちっ
ぽち、ぽち、ぽち…
<今日お邪魔するお店はコチラの……
('、-*川「土曜の番組って、いまいち面白くないなあ」
ぷつん。
('、-*川「……」
('、`*川「!」
('ー`*川「……ねえアナタ。私今、とっても悪いことを思いついちゃった」
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とたとたとた。
キィ……パタン。
('、`*川「アナタの書斎。アナタの机。上から二段目の引き出し……」
ガチャ。
('、`*川「あらあら、鍵がかかってる。でもその鍵の場所も知っています。アナタの妻ですから」
かちゃり。
('、`*川「あった。アナタがいつもアナタの妻に見られないように隠していた赤い本」
('、`*川「一体どれだけ私に後ろめたい内容の……って、あら。日記帳?」
('、`*川「日記帳だったのね……私ってばひどい早とちり」
('、`*川「……」
('、-*川「分かってるのよ。人の日記を読むなんて悪いことなのよ」
(-、-*川「……」
('、-*川「ちょっとだけ……ちょっとだけ」
ぱらり。
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『4月○日
ペニサスと結婚して2度目の花見。
今年もあの公園へ行った。桜の樹々はどれも満開で素晴らしい景色だった。
ペニサスお手製の弁当には僕の好きなものばかりを入れてくれていたのが嬉しい。』
('、`*川「2度目…なら去年のだわね」
('、`*川「そういえば花見も散歩も大体あの公園に行ってたのね。気にしてなかったわ」
('、`*川「……花見……もうすぐかあ」
(-、-*川「……1人で行っても、ね」
ぱらり。
『5月◯日
ゴールデンウィークに行きたいところはあるかとペニサスに訪ねたら
水族館に行きたいと返してきたので、電車に乗りファイナル水族館へ。
遠方への旅行ではなく近場の水族館と言うところがペニサスらしい。
生き物を見るペニサスの表情はとても生き生きとしていた。』
('、`*川「行ったなあ、水族館」
('、`*川「イルカショーが見たくて、ペンギンを見てるあの人を急かしたっけ」
('、`*川「旅行じゃなくてもいいのか聞かれたけど、私って遠くに行くの嫌なタイプだし」
('ー`*川「アナタはどうだったのかしらね?」
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ぱらり。ぱらり。
『7月○日
近所の神社で毎年やっている夏祭りに2人で行った。
大人2人で金魚すくいに夢中になる。金魚をすくう際に使うアレはポイと呼ぶらしい。
結局2人して1匹も取れず、収納の奥にしまっていた水槽を出すことはなかった。
せっかくお祭りに行くなら浴衣でも用意したいな。きっとペニサスが着たら似合う。』
('、`*川「……あー、あー」
('ー`*川「だから浴衣って言ってたのね」
(-、-*川「そっか……似合うと思って言ってくれてたんだ」
(-、-*川「てっきり子どもっぽいって言われてるのかと思ってた。やだ、私あの時怒らなかったかしら?」
(-、-*川「着れば、良かったわね……」
(-、-*川「……」
ぱら…ぱら。
『10月○日
ペニサスになんて言おう。
今日は一日中そればかり考えてしまっていた。』
('、`*川「……」
('、`*川「……そう……この時にはもう知ってたのね」
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ぱら。ぱら。
『12月◯日
今年はどこにも出かけず、2人でクリスマスを過ごした。
料理が得意な彼女はケーキもお手製のものを用意してくれた。チョコレートケーキだった。
僕は幸せものだ。
だからこそ言い出せないでいる。
残りの時間も僅かなのに、彼女に捨てられるんじゃないかと思うと怖い。』
('、`*川「アナタ……」
ぱら、ぱら。
『1月◯日
とうとう話をした。
話を聞いた時はペニサスも驚いていたが、案外すんなりと受け入れていたことに少し驚いた。
女性は僕が思うよりずっと強いものなのかもしれない。
子どもを望んでいたけど、こうなるなら出来なくて正解だったのかもしれないと最近思う。』
('、`*川「……」
ぱら。
『3月○日
君を1人おいていく僕をどうか許してほしい』
('、`*川「……バカね、こんなに思いつめていたの?」
(-、-*川「本当に繊細な人。でもそういうところも好きよ」
(-、-*川「……」
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〜♪
('、`*川「!」
ごそごそ。
ぷっ。
('、`*川「もしもし?」
(´・ω・`)「あっ、ペニサス。こんな時間にごめん」
('、`*川「……」
('、`*川「やあね、アナタ。こっちはまだお昼よ?」
(;´・ω・`)「あれ、そうなの?どうにも時差ってのがよく分からなくて……」
(´・ω・`)「でも変な時間じゃなくて良かったよ。夜中にかけていたらまずかったね」
('、`*川「夜中はそうね……でも声が聞ける嬉しさのほうが勝つからきっと大丈夫よ」
(´・ω・`)「!」
(´・ω・`)「……ごめんね。1年も海外出張だなんて。君を1人おいて……」
('、`*川「ついていかないって決めたのは私よ、謝らないで」
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('、`*川「それに謝るのは私の方なのよ。
今日ね、アナタのあの赤い本を覗いてしまったの」
(´・ω・`)「赤い本?」
(;*´・ω・`)「……あっ!もしかして僕の日記帳のこと!?アレ見たの!?」
('、`*;川「ごめんなさい、魔が差して……」
('、`*川「……」
('ー`*川「……私のことを色々と考えてくれて、ありがとう」
(;*´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「……うん」
(´・ω・`)「僕の方こそ、ありがとう」
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「取り敢えず浴衣は買っておこうと思うの」
「え、でもあの時怒らなかった?嫌なんじゃないの?」
「あれはなんていうか……」
「そんなつもりは……」
「……」
「……」
(´・ω・`)想うようです('、`*川
-了-
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川 ゚ -゚) 投下おわりだ
川 ゚ -゚) (グーグルで日記帳検索したら本っぽいデザインあったし許してくれ)
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(´・ω・`) 乙!
(´・ω・`) 死んだのかと思ったよ…
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('A`) 忙しいから明日投下するわ
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(´・ω・`) 一応投下宣言
(´・ω・`) 仕事に悩殺される中、プロットのみからどれだけ書くことが出来るのか試してみようじゃないか
(´・ω・`)ノシ 期待しないで待っててね
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('A`) 投下するぜ!
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ある本についての本の話
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森の女王と無限の本の章
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幾つかの伝承と故事によれば、幻惑の森は大陸の北東、ラウンジ山の麓に広がっていたとされる。
今では、ただ荒野と砂漠が広がるばかりの不毛地帯ではあるが、
かつて、生い茂る木々が春の時代を謳歌していた頃、そこには豊かな国があったという。
ただの国ではなく、若き女王が治める法術の国であり、言霊と呪文によって理を司った。
若く見えるは姿ばかりで、半神半人の女王だったとするものもある。
森には自ら強大な術を施し外敵の侵入を拒んだ。それ故、幻惑の森と伝わる。
この国とそれを治めた女王の説話の中に、その本は登場する。
題字は伝わらず、その時々に仮の名で呼ばれ、単に「本」とされることも多い。
女王の名はクールであったとされる。
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説話が伝えるところによれば。
建国以前の黎明における混乱をのぞいて、
森の国は豊かで目立った争いもなく、繁栄を甘受していたが、女王はその営みの先に不安を抱いていた。
聡明な彼女は繁栄の後には衰退が来ることを理解していた。
言霊も呪文といった術理は所詮、世によって書かれ、世によって受け入れられている。
術理は世界の中にあり、世界が移ろえばたちまち調和は失われ、無意味な文字列へと転ずるだろう。
繁栄を恒久のものとするには、世界を書く、世界の外にある理が必要だと女王は考えた。
川 ゚ -゚) 「故に、栄えているうちに手を打ち、備えておかねばならない」
山むこうの火の国は新興ながら自信と活力に溢れ、
それがことさら野心に向いていたのを女王は憂慮したのである。
女王は、森の終わりに位置した湖川からなる水の国と同盟を結んでいたが、
それだけにとどまらず、ある種の宝物を内外で探させていた。
川 ゚ -゚) 「その方らには、神代に伝わったとされる言霊の聖典…」
川 ゚ -゚) 「理の書を探して貰いたい」
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仮にそう呼ばれた「本」は、始原の術法が記されているとされた。
森や湖川がその形を成すより以前に天から遣わされ、地を切り開き、空に光を灯した力の一端とされる。
探索隊は媒体を問わず入手できる限りの文書、文字列を集めた。
巨大な碑石に刻まれた文字や、所有者が提出を承諾しなかった書物などは直ちに写し取られ、
写文として蓄えられていった。
その数は膨大で、森の一部を新たに開拓し巨大な書庫を新設させることにもなったという。
一部の臣下は森との調和を軽んじるこの拡張に反感を抱いたともされる。
膨張を続ける書庫は、いつしか全ての本を収蔵するのだと噂され、イグドラシルと呼ばれた。
視察に訪れた術者の長は、城壁ほどもあろうかと高く積み上げられた書物の山を一瞥して、
(‘_L’) 「地上の全ての書物があるという噂は、あながち見当違いとも言えませんな」
そう感想を漏らしたという。
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(‘_L’) 「確かに、これら本は無限の知恵を国にもたらすでしょう」
(‘_L’) 「人ひとりでは当然、国一つの時間でさえ精査しきれるか、という量です」
(‘_L’) 「しかし一方で、物質的には所詮有限に過ぎません」
(‘_L’) 「知恵を活かすことが出来なければ、ただ有象の紙束に過ぎません、収集した後の展望を伺いたい」
(‘_L’) 「すべての本が真にここにあるのなら、あなたの望む本もまたここにあるでしょうし」
川 ゚ -゚) 「うむ……」
そう問われて女王はしばし考えを巡らせた。
「本」が手中にあればよし、なければ探索を継続するとして、
さて、どうやってこの膨大な数の本を調べようか。
もし「本」があったとして、その秘密がもれぬよう、いかなる策を講ずるべきか。
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結果として女王が取ったのは、めしいの術者を用いて蔵書を選別させ、
彼らが力を感じたものを、自らが改めて確かめるという方法だった。
王国全土から盲目の術者が集められ、日夜作業が進められた。
ラウンジの山稜が白く化粧をし、森に新緑が芽吹いても、まだ発見の報は無く、
その繰り返しが十を数えようとしても、王宮ではついに快哉を叫ぶ声は聞かれなかった。
次第に、女王はその精神に変調をきたすようになった。
前後不覚の指示、方針に臣下は女王の意図を計りかねた。
心ある者は探索の心労が祟ったと言い、心ない者は「本」探しに取り憑かれて正気を失ったのだと噂した。
何れにせよ「本」が害をなしているというのは一致した見解だった。
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アルファが来てるが支援
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事態は悪化の一途をたどり、
ついには、契を交わした水の国が攻め寄せてくるのだと、人目をはばからず吹聴するようになった。
国政は乱れ、人心は荒廃し、森の一部が枯れる事態ともなった。
見かねた臣下は女王の廃位を強行したが、跡目を巡って意見は割れ、
国はさらに乱れた。
ことさら強く退位を迫ったのは術者の長だったという。
そうしてついに、政情不安を憂慮した水の国が幻惑の森に兵を遣わした。
この頃になると偉大な幻惑の術も最早、消えかける前のろうそくのようであったという。
対して火の国も一軍を動かし、これにあたった。
皮肉にも、女王の水の国による侵攻の言は真となり、
かくして森の国を二分する戦争は起こったのである。
国政の混乱とそれに続く戦争で疲弊した森はことごとく戦火で焼け落ち、
書庫イグドラシルには火がくべられ、無限の蔵書が有限の灰燼に帰す中で、女王クールは火の粉と踊り狂い、
恐らく「本」もまた散逸したという。
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塔と司書、あるいは本の旅人の章
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それは古城の一部を改装した書庫で、正式な呼称はジェロア円形城塞図書館であったが、
この書庫を知る者の多くは、その外観から塔と呼んだ。
かつて物見に使われた塔は一帯を見渡たすには十分な高さで、
内部は人の背丈の倍程度で区切られ、階層状になっていた。
双頭の大蛇が絡み合うように、二重の螺旋階段が各階の中央を地下から頂まで貫く。
書棚は円形の内壁を覆うようにぐるり全面に取り付けられ、
内から見た塔は、本で築かれてるようだった。
初めてここに着任した時、司書はその非効率な配置を不思議に思ったが
もともと図書館としして設計されたわけではない建物を利用しているのだから
そういうものかと、次第に気にすることはなくなった。
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一方で、地下の深さは未だに恐ろしく思っていた。
高さも相当な塔であったが、地下は優にその二、三倍はあったであろう。
手すりから下を覗き込んでも、底が知れない。
最下層まで下りたことは何度かあった。
それでも、こうして司書が見下ろす深みが浅くなるわけではなかった。
前回、底に降りたのは「本」の探索を命じられた時だった。
神話や伝承の研究によって森の女王の説話におけるかの「本」が、
この地方に渡っていたとの異説が世に出ると、
たちどころに現存するのではないかと噂が国中を駆け巡った。
万物の定理を司る本、神が与え給うた戒律、悪魔の書、内容についての噂は多かれど、
特定に至ったことはない「本」。
域内有数の蔵書を誇るここでも一通りの調査が行われはしたが、
それらしいものが出てくることはなかった。
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それも当然だと、司書は思い返す。
そのようなものが人目に触れるようなところにあれば、たちどころに気がつかれるだろうし、
人目につかない場所へあるのなら、ちょっとやそっと探したくらいで出てくるはずはない。
内容にしても、一見して平文である文章中に暗号化されているとか、
すでに失われた言語で書かれてるとか、発見に至らない理由が読み手側の資質にあるということも十分考えられる。
だとすれば、それは既に失われてしまった事と何が違うのか。
理解できる人間がいない本など、ただのインクの染みと紙束の集まりであるに過ぎない。
そうして司書は視界の隅にいる男に目を向ける。
熱心に本を読み込むその姿を最初に見かけたのは、
件の捜索が終わって数ヶ月ほど経ってからだった。
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(-@∀@) 「本を探している?」
/ ゚、。 / 「ええ、例のやつですよ、最近大きな噂にもなった」
(-@∀@) 「あぁ…あの「本」ですか」
(-@∀@) 「ですが、先ごろ捜索があったばかりで…」
/ ゚、。 / 「他でもそのように言われましたが、自分の目で確かめてみたくて」
(-@∀@) 「……」
またこの手の輩か、と司書はため息を付いた。
物好きな好事家や宗教的熱意が高じた素人が時折こうやって「本」の捜索に関わろうとしては、
すぐに音を上げ、関心を失うのは珍しくない出来事だった。
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しかし、男は熱心に塔に通い、
一階の端から順にその階のすべての本を読み終えると、
上へ上へと読み進め、ついには司書からは到底見えない高さにまで登っていった。
そのはずの男が今また、視界の隅に居る。
司書の疑問に男は応えて言う。
/ ゚、。 / 「森の女王と「本」の説話はご存知ですよね」
(-@∀@)「ええ、人並みには…?」
/ ゚、。 / 「私は、あの話の中に出てくる無限の知恵という概念が長いことよくわからなかった」
/ ゚、。 / 「書物自体は有限であるはずなのに」
男は、あの説話は神の力を求めた愚かな人間に下った罰だとかそういう教訓ではなく、
あれは、「本」と無限性についての話だと、司書に語り始めた。
古の伝承に語られる森の女王は、全ての蔵書の中から一冊の「本」を探すのではなく、
全ての書を集約し体系化して、新たな力を作り出すべきだったのだと。
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/ ゚、。 / 「ですが、今ならわかります」
/ ゚、。 / 「術者の長が言っていた無限は組み合わせの妙のことだったのです」
/ ゚、。 / 「だからこうして、関係性を育てているのです」
円周状の城塞塔内部にある図書館を、螺旋状に運動して周回し続ける本の旅人。
全体が単なる部分の総和を超えるなら、回り続ける限り無限に本と彼の関係は更新されていく。
一周して始点に戻った時、それは最初に訪れた始点とは異なる。
次の本も、その次の本も同様だ。
いまや全書物が網状組織となって再形成され、その中で特定の意味と場所を占める一冊になった。
次の本も、その次の本も。
だから、一度目に読んだのとは意味が違う。
一度目と二度目が違うのなら当然、三度目も異なる。
そしてその先も。
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それらの違いは情報量の増加となって網状組織全体を拡大、成長させていくからだ。
そうして、意味と情報の螺旋階段は限りなく上昇していく。
どこまでも高く高く、この塔を登り、至上の領域へ形而上を越えたその先へ。
そうやってついに現れる知識、文字列の配置、意味こそが、
求めるべき「本」の真の姿なのだと旅人は確信していた。
/ ゚、。 / 「此処にある本は全て読まれたのですか?」
(-@∀@)「まさか、私はただ管理をしてるだけです」
/ ゚、。 / 「そうですか…」
(-@∀@)「……」
旅人は膨大な蔵書を前にそれを読みもしない司書を内心で訝しんでいた。
しかし、実のところ司書の考えはもっとラディカルなものだった。
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本を読む必要などない。
なぜなら、そんなことをしなくても書物の叡智は摂取可能であるからだと、司書は考える。
(-@∀@)(自身の脳を本の洪水へ投げ入れることなど愚かしい)
(-@∀@)(この深い地下へ身投げするようなものだ)
必要なのは件の「本」が存在するということと、それがどの本の隣りにあるかということだ。
あの男の考えが正しければ、我々は自分自身のままでその「本」を読むことは出来ない。
本を読むために自身を改造する必要がある。
そうして読み終えたとして気軽にもとに戻れるかというと、そうは行かない。
本を読むために変更され、更に読んだ本によって変更される我々は、
最早、本の一部と言っても差し支えない。
書物に従属するのではなく、
書物はあくまでも情報として自分に従属するのだと司書は考えていた。
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(-@∀@) (…例えば森の女王は本当は「本」を読んでいたのではないか?)
「本」の魔力に耐えられず発狂したのではないか。
あるいは「本」が展開するあまりの情報量に溺れたか。
ならば誰かに読ませて、それから概要を自分の頭の中の書棚に納めればいい。
何について書かれたどんな本で、これまでのどの本の隣に、
あるいは上や下に位置するのか。
それで事は足りる。
自らの頭の中にかの「本」を書き上げ、天に登ろうとした旅人。
自らの頭の中に本棚を作り、そこに「本」を収蔵しようとした司書。
その後の彼らについて、知られていることは少ない。
ただ彼らが「本」の発見者として名乗りを上げることはなかったという。
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鑑定士と大火の章
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火炙りになる数日前、鑑定士はさる高位の司教に招かれ大聖堂を訪れていた。
鑑定士が書物の様子を述べる時、司教は重苦しい神学的な論争と世俗の権力者の跳梁、
堕落した信徒や、教会の腐敗といった問題を思い起こされることはあっても、それほど憂いはなかった。
書物がもし本物の「本」であるのなら、
そのような心配事は、たちどころに霧散するかのように思えたからだ。
それ以上に司教の心を軽くしたのは、ある種の英雄的な恍惚だった。
今回の「本」がたとえ偽書や、まやかしの本であったとしても、
「本」の探索というこの任務には、信仰の道に入ることを志した当初のような高揚があった。
司教は久方ぶりに己の使命に燃えていた。
一方で、鑑定士の心のうちは暗かった。
面会して幾らも経たぬうちに、彼は自らの窮状を改めて理解した。
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(´・ω・`) 「判別は困難であると、そういう事か?」
( ´∀`) 「不可能ではありませんが、時間がかかります」
(´・ω・`) 「その口上は前にも聞いたが?」
( ´∀`) 「……」
(´・ω・`) 「口先でいたずらに時間を求めるのなら…」
(´・ω・`) 「その方を異端として告発することもできるのだぞ」
(; ´∀`)
司教の語気は強まり、叱咤の声が降りかかる。
鑑定士はまだ自分の運命を自覚してはいなかった。
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彼が鑑定を進めていたのは「本」ではないかと目される内の一冊であった。
時の権力者に会う度に鑑定士は困惑した。
彼らが夢見がちに本に求めるものは際限がなく、
膨大な要求のリストが積み上がって行くだけであった。
三位一体についての神学的問題の解
この世界の真理、万物の定理
預言の書
知恵の実や約束の地についての確定的な記述
異端とされる書
不老不死の秘法
宗教的な関心のほんの一部だけとってみても実に様々だった。
そこに世俗の権力者の関心が加われば、「本」に対する要求は天文学的な長さになるだろう。
その意味で最早、「本」を発見することは不可能になっていた。
彼らが話題にするのは現実の「本」ではなく、
彼らの頭の中にある「本」だった。
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仮にどれか一つの要求が満たされれるような書物が発見されたとして、
それが本物であると納得するのは、そのような「本」を求めていた権力者だけだ。
他の者はそれを偽書や偽物として退け、さらなる探索と鑑定を言い渡すだろう。
この「本」には常に無限の偽書がついて回ることになる。
実態が分からないものを発見することは出来ない。
本というからには当然、ページは有限で、
そのような無限の要求を叶えることはおおよそ不可能だと鑑定士には思えた。
そうだとすれば彼らを納得させることは難しい。
「本」が人々の記憶から忘れ去られ、歴史の影に埋もれるまで、この狂騒は続くのかも知れない。
大聖堂から帰る道すがら鑑定士は先行きの暗さを憂いた。
そうして、「本」かもしれない書物に目を落とす。
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それは、双子の兄弟の片割れが口のきけない少女と矛盾を旅する話であったり、
文字で戦う国同士の戦争についての挿話、生きた本をめぐる奇譚の断章など、
様々な逸話から成る。
寓意を持った一連の文章は、ただ単にフレーズを切り貼りしているような借り物で、
モザイクじみて散りばめられていた。
その多くは架空の世界における伝承という体裁を取っているようで、
ものの真贋どころか一つの話の筋さえ計りかねた。
筆跡も実に様々であり、著者が一人ではないことは容易に伺えた。
鑑定士はこの点で大いに狼狽することになった。
写本であるのなら複数人が交代で写したという、一見もっともな説明も成ろうが、
筆跡の変化はページの途中はおろか一文の過程でなされ、
甚だしきは単語の途中に起こる。
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無数の作者がてんで勝手に書き散らす一冊の書物。
ページの最下部や最上部に、折り畳まれた紙が継ぎ足して貼られ、
注釈や解説の体をとって、本流とは全く関係のない話が始められるような事が一度や二度ではない。
むしろ、そうではない部分の方が少なかった。
自然、本は不格好に歪んで、無理に閉じようとすると今にもたわんで弾け飛びそうだった。
それでも作法としてはまだ穏当な方で、文章の上に直に上書きがされていたり、
勝手にかぎ括弧や引用符を付け足したりと、
他人の文章を引用、改変、削除、挿入したりしている部分が、全体の大半を占める。
また、継ぎ足された紙が剥がされたり、別のページへ貼り直されたりといった痕跡も散見された。
本は、迷宮だった。
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一体、何を頼りにして、ここに足を踏み入れたものか。
鑑定士は途方に暮れた。
明らかに通読を意図していないその場限りの挿入から発展する支流に流れれば、
たちまち本流は見失われ、話の筋は手からこぼれ落ちる。
本流という表層に留まれば、拡張や雑多な豊かさは失われ、
支流の底に眠る貴重な宝を見落とすだろう。
この書物が「本」であるかどうか以前に、
そこに何が書かれているのかさえ定かではなかった。
鑑定士は最初に書かれた部分、いわば原初の地層とも呼べる文章を探して、
限りなくオリジナルなテクストを発掘しようとしたが、
分厚い記述の層に遮られてそれも叶わなかった。
-
時間も空間も語り手も文意さえもが絡み合い、てんでばらばらに成長した本。
それと鑑定士の間に現れる関係性は、無際限とも思える取り結ばれ方をしていた。
鑑定士は、読者で、登場人物で、語り手で、作者ですらあった。
手探りで読み解くその道筋がその度に迷宮内に新たな物語をかたどった。
それは権力者たちが口やかましく催促する千変万化の要求にも似ていた。
そんな無責任な要求の数々の中で鑑定士が興味を持ったのは、
異端の書を求める高位の宗教指導者――彼を聖堂に呼び出した司祭であった。
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(´・ω・`) 「そのような力のある本が我らの聖典以外に存在するというのはあってはならぬこと」
(´・ω・`) 「異端の書として内々に処理するのが信仰のためというものだ」
(´・ω・`) 「ときに虚構は事実より力を持つからな」
(´・ω・`) (真に力があれば表向きは抹消し、教会で陰ながら利用すればいいだけのこと)
そんな本がどのようにして現れ、どのように機能するのか、鑑定士には想像もつかなかったが、
それ以上に彼が不思議に思ったのは、そのような本を誰が著したのかということであった。
作者。
程なくして鑑定士は、それが特定困難であることを知った。
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時に権力者達は自分に都合の良い内容が書かれた本を、
強引に本物の「本」であると鑑定させようとした。
しかし、同じことを考える権力者は一人ではなく、
また、大半の権力者はそのようなまやかしの「本」を作り出すより、
本物の「本」を見つけようとしていた。
権力者どうしの主導権争いによって、鑑定士の中立性は
綱渡りのように危うい均衡の上に保たれていた。
今では司教が彼を庇護し教会が集めた本を鑑定させている。
彼らの要求にも似た変幻自在の迷宮に戸惑う日々が続き、
鑑定士はついに一つの考えに至った。
-
本は、鏡の迷宮なのだと。
解読しようとする人間の心の内を反映し、自らその姿を取る。
真の記述にたどり着くには、自分の方を変形させる必要がある。
理解する為に読み手の頭を作り変える必要がある話。
それは結果的に、読み手の頭を作り変える本でもある。
内容によってではなく、内容を読むために。
鑑定士は塔の司書と旅人の昔話を思い出していた。
このように真相を拒むような本は、何かの秘密を隠しているのが道理で、
自分が調べている書物が本物の「本」だと彼は徐々に確信していった。
一方で、自分がどのように変われば迷宮に隠された宝物にたどり着けるのかについては、
見当もつかなかった。
再三に渡り、その旨を司教に訴えたが、
(´・ω・`) 「内容も明らかにできずに本物とはどういう了見だ?」
(´・ω・`) 「偽物なら偽物でいいのだ、何をそうも執着する?」
取り付く島もなかった。
-
ついに鑑定士は話を聞き入れない司教を見限り、
他の「本」候補を焼くことで迷宮の正当性を確保しようとした。
書庫から燃え広がった炎は大聖堂を半焼させるに至り、
激怒した司教は直ちに書物を悪魔の書と認定し、鑑定士もろとも火炙りにした。
悪魔の書と断じられ火にくべられた迷宮と共に、鑑定士は広場で燃え上がった。
彼の足元で燃えゆく迷宮は身を震わせて弾け、広場をさらった突風によって舞い上がり、
次々と家屋の屋根に燃え移った後、ついには街を焼く大火となった。
それは奇しくも、生前、鑑定士が本を読む方法として考えた内の一つであった。
あるいは塔の逸話に記される旅人の思想の遥かな変形。
-
鑑定士はそれを戯れに思いついたにすぎない。
以前に見た異端者の火刑で異端の書と燃える信者の顔が妙に恍惚としていたことからの考えだった。
何も読むことだけが理解ではない。
互いに身を焼いて同じ灰に返ってこそ分かち合う何かがあっても不思議ではないなと。
はたして鑑定士がその境地に至ったかは不明だが、
風に煽られ都市が燃える音は彼の絶叫にも似て司教を恐怖させた。
以来、司教は「本」探索の任を辞して隠居しているという。詳しくは伝わらない。
都市の半分を焼いた炎によって燃えた書物は「本」ではなかった。
権力者達はそう宣言し、大捜索と飽くなき鑑定の狂騒を続けるだろう。
自らの欲望を叶える器を見つけるか、自らの死まで。
架空の偽書と真正なる「本」は今も彼らの頭の中で生まれ続けている。
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人々の噂と虚実の章
.
-
それから後も「本」には様々な噂がついて回った。
市井の人々が語るところによれば、
都市を焼いた大火は、「本」の秘密を我が物にしようとした傲慢で欲深き者共に下った天罰であるとか、
あの大火こそ「本」を手にしたものの為せる業であり、「本」の力だとか、
森の女王の説話がそもそも、真実を隠そうとして生まれた偽りの伝承なのだと、
それに抗して、森の国が燃えた大火との類似性が指摘され、
ひいては教会の自作自演なのだと耳打ちする者もあった。
そのように茶飲み話で語られるような流言飛語に混じって、中には趣がやや異なる噂もあった。
ことに聞かれるのは「本」に書かれた男の噂である。
-
「本」を読んで神にも等しい力を得た男が居るとかいないとかいう噂には事欠かないが、
「本」に書かれた男となると話は複雑である。
まず本に書かれるとは、どういうことなのか。
「本」の中にある男が登場しているということなのか。
それとも「本」に書かれたような男が実在するということなのか。
その辺りからしてこの噂は不明瞭だった。
この二つは一見して似ているようで性格が異なる。
-
前者の場合、男の名前や特徴を捉えたものが「本」に登場するだけで事足りる。
それが、現実の男と同じような振る舞いをしていなくても問題はない。
むしろ同じなら気味が悪いというものだ。
それに反して後者は本に書かれた特徴と完全に一致していなくてはならない。
虚構の男は現実の男よりも大きいからだ。
虚構、すなわち誰かに語られ記述された実体は、省略と描写によって実物とは大きさが変わる。
太陽と書かれて一見、実物の太陽を用意するより手間はかからないが、
百人いれば百人がその文字から違う太陽を思い浮かべ、空を見上げるより百倍の太陽が現れる。
大きいものに小さいものを当てはめるのは容易いが、小さいものに大きいものを当てはめるのは難しい。
最低でも同じ大きさにならねば。
だから後者はあり得そうに無い噂なのだが、これには変異したパターンも存在する。
「本」から男が生み出されたというのだ。
これなら虚構と現実の男の大きさは一致するが、あまりに荒唐無稽だ。
-
また、近頃まことしやかに囁かれてる別の噂がある。
はたして「本」は一冊なのかという議論から生まれた、「本」は複数あるというものだ。
森の女王の説話で見られるように、イグドラシルに蓄えられた書物の中には写文が含まれていた。
それがどれほど量だったのかについては言及されていないが、
イグドラシルで散逸した「本」が写本であった可能性は十分に考えられる。
というのがこの噂の論拠になる。
この遥かな変形として、
「本」はあらゆる全ての書物、文書の父としてその子孫たる今日の本に流れている。
という発想がある。
一体どう変形してそうなったのかも分からないこの発想は、しかし、
多分に面白みに欠けていたことから、噂としての伝播力はさほどでもなく、
次第に忘れられていったようだ。
実際、家にある本を開いてみて何の変哲もないだろう。
そして「本」は複数あるという噂だけが生き残った。
-
人間は世界を物語のように理解している。
それは、人間の理解の様式によって物語が作らているからであり、実は順序が逆である。
そして、世界はそんなものとは無関係に、ただ在る。
噂もそれに習い、真実を語る噂より、物語として魅力的な噂こそが語り継がれていく。
その最たるものが、ある種の歴史であるという指摘は既に数多くなされている。
人々が「本」の実在性を信じて疑わないところ、
森の女王の説話を、その全てを信じているわけではないにせよ、
多くの部分で、そのような事が起こったと認めているところ等に、それは現れる。
いずれの噂もそれぞれに固有の論理を持って成長していき、時には交配し子孫を残して、
人知れず忘れ去られ、個別の虚実を見極める手立ては少なく、手がかりはさらに希少である。
私は、そのどれをも美しく思うが、それは同時に事実ではないから美しいのかもしれない。
-
記述(不)可能領域
.
-
(´・ω・`) 支援したいのは山々だが、明日仕事だから寝るね
(´・ω・`) ドクオ君、雰囲気変わったなあ……
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私が誰かについては多少の説明が要るかもしれない。
恐らく、前章に現れた私とは違って、この私は私なのだという種類の説明には何の意味もない。
例えば私の思考はこうして紙面に支配され、書かれるままに駆動する。
それで話の続きは? お前は?
当然の疑問だが、これが今現在進行している話の続きになる。
司教に焼け飛ばされた「本」は、ここでそう書かれた故に灰になり、
噂の通り、数ある「本」の一つであった。
あなたが目にしてきたものこそ、同じように数ある「本」だったものの一部であり、その現在における成れの果て。
危うく大聖堂で焼失しかけた、書込み可能なアカシックレコードの最後の断片に他ならない。
堰を切ったような告白に圧倒されようが無関心だろうが、
この宇宙ではそうなっている。
それは森の女王が目撃し、司書や旅人を惑わし、鑑定士に焼かれそうになりながら、噂に隠れ、
こうしてあなたの目の前に常に存在していた。
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それがいつ頃の出来事であったか、最早記録には残らない。
説明するのも困難なこの技術は、要するに可視化された万物定理とも言えた。
当時から怪しかった実態は今となっては更に掴み所がない。
物質も何かの情報に過ぎないという発想自体はそう珍しいものではなく、
以前から一部の傍流において囁かれ、
極端なものはカルトじみて、良識的な科学からは嘲笑されることもあった。
物理法則の限界点の先で実際に待ち構えていた情報化は、
この宇宙が誰かのシミュレーションであるとかいったささやかなものではなく、
彼らが嘲笑していたものより遥かに馬鹿馬鹿しかった。
要するにその瞬間以降、私達は私達を出力するシミュレーションの実行者になった。
書込み可能なアカシックレコードとは、大体においてそういうものである。
-
問題だったのは、当時、書込み可能なアカシックレコードというのは、
まだ単なる比喩以上のものではなく、その恩恵は科学に属していた。
一般に科学的な成果というのは、条件さえ整えば再現が可能になる。
アカシックレコードは発見された。
一冊ではなく、しかも書き込むことができる。
それは、いわば記述の力をもって作り出される万物定理。
文字通り、世界を記述する本。
白紙の物理法則。
壮絶な戦争があったのだと私の記憶は言う。
その記憶も保証の限りではないが。
-
例えば二冊の書込み可能なアカシックレコードがあったとして。
一方が俺は神だと宣言する。
他方、お前はアホだと言い返す。
現実では、そうやって二人の間でちょっとした争いが起こったり。
いや、お前は神じゃないけどちょっとすごいやつだよ。
というような合意が成ったりする。
アカシックレコード間における対立も概ねそのようなものである。
互いが互いを上書きしようと記述戦争が起こったり、
勢力が互角なら拮抗して何かの妥協や均衡が発生する。
我々が巻き込まれた戦争はそのように宇宙規模の口喧嘩的な性質を持つ。
互いの宣言が真となるため、言ったもの勝ちという訳にはいかず、
相手より大声で沢山言う必要がある。
あるいは相手より言葉巧みに。
-
無数の書込み可能なアカシックレコードによる記述戦争は、
その果てにアカシックレコードを数冊にすることに成功した。
だが、そこに現れたのは散々に上書きされて、
元の記述がどうだったかも分からない複数の「本」だった。
戦争は、元の宇宙を根本から変えてしまった。
今やこの宇宙は真正、「本」の上に書かれた物語宇宙だ。
この私でさえも。
何しろ、こうして此処に書かれているのだから。
-
森の女王も「本」を手にとった時、それを理解したのだ。自分が記述された者だと。
無限の本。
可能なすべての本がもしここにあるのなら、
その中には、まるで意味をなさない文字列の連なりやメモ書きに混じって、
その全てが真正真実を開闢の過去から終焉の未来に渡って書いた本がありうるということになる。
若き女王が「本」を読んだ瞬間、過去も未来も消えた。
すべてを知る彼女にとって、時間の流れは最早、意味をなさない。
過去も未来も全てがひと固まりになって頭の中にある。
訪れる日々の中で「本」の力を知る。
すべてが書かれたアカシックレコード、そこに書かれた未来が刻一刻と到来していることを。
しかし、臣下はそのような時間のあり方を理解できない。
女王の指示は不可解にして理不尽なものとなり、
彼女の発狂は認定され、国は乱れるに至ったのである。
そして、「本」が示し、彼女がうわ言のように語った通り、
荒廃した王国は隣国に侵略され、全てが灰に変わった。
過去、現在、未来を語るというその事実に目を奪われ、女王はもう一つの特性を見落とした。
アカシックレコードの記述可能性。
-
一体、誰が何のつもりでアカシックレコード上で妙な話を書き始めたのか、
今に至るまで明らかになっていない。
遥かな記述戦争の果てに、繰り返された改変、挿入、削除、引用、創作によって、
文字の並びがそのような形を取ったとするのが穏当なところではあるが、あまり釈然としない。
そもそも、当初、アカシックレコードというのは単にわかりやすい比喩以上のものではなく、
はじめの宇宙ではそいつは全然、全く本なんかではなかったのだから。
余剰次元を引き伸ばすために作られた巨大な実験機関がその過程で副次的に発見し実現した、
局所的な物理現象の書き換えであって、いや、この経緯も今となっては誰かの創作かも知れない。
私の記憶を保証するものは最早なにもない。
我々は皆、記述で出来ている。
だから私はそんな記述で作られた物語の世界で、かつて本当だったかも知れない記述を探している。
いや、探していた。
どこかのページにしまわれ忘れて眠る私達の世界の話。
そんな物語を解き放ち、元の宇宙へ還るために。
しかし、今となってはそれも手遅れだ。
-
以前の世界に戻る。
その簡単な命令をアカシックレコードは実行しない。
以前の世界がどこにも存在しないから。記述は燃えてしまったから。
もう、それを参照して引用し直すことは出来ない。
それは曖昧に、かすかな残響となって私の頭の中に残っているに過ぎない。
記述戦争によって改変を受けていないとしても、それは事実ではない。
誰かが言ったようにに、我々は現実を物語を読み出すように認識している。
だから私の頭の中にあるのは、
この物語宇宙にも似た、郷愁の昔話なのである。
今ここで重要なのは、何かの歴史を語ってきたはずの記述可能なアカシックレコード上で、
なぜ突然に誰かの個人的な話が始まったのか。
それだけだと言い切ってしまって構わない。
-
本に書かれなかった男
.
-
どうやって僕がここへ、「本」の前にたどり着いたのか、どうしてこう書き込まれているのか。
その問いに答えるのは難しい。
人称が私から僕にスライドしている理由は自由に考えてもらって構わない。
アカシックレコードには、すべてが書かれているわけではない。
勿論、これから起こること、これまでに起こったことは全て書かれていた。「本」が燃えてしまう以前は。
繰り返しになるが、記述というものは本質的に現実をそのまま転写するようになっていない。
だから、そこには英雄がいて竜がいて姫がいる。
英雄の隣人は物語には書かれない、しかし存在はする。
英雄が昨日食べたパンを作った職人も。
英雄が洞穴にでも住んで、鹿や兎を狩っている変わり者でない限りは
そのようにして記述は基準点のようなものを持つ
-
私は英雄達の物語が語られる紙面の余白で生きた、何者でもない男。
この宇宙ではアカシックレコードに直接語られない現象も、
そうやって語られた者の配置によって必然的に現れる。
まるで彼らの影のように、彼らを記述する文字列の都合によって生まれた余白の形のように。
不可分の必然として。
そうして僕は今、恐らくモララーという名前であり、
かつて誰かであった何者かで、常に変転しているのかも分からない。
変化と交配そして忘却と飛躍を繰り返す、数々の噂たちのように。
継ぎ足されていく記述の文字列によって展開していく、旅人の頭の中のネットワークのように。
私がここでこうしている理由は。
現時点から見える過去のすべてが、こうなるように出来上がっているから、
こうなるように書かれていたからと答えるより他にない。
何しろここは、記述可能なアカシックレコードによって書かれている宇宙なのであって、
誰かが指摘したように、物語として理解され物語のように書かれている、
物語そのものだ。
-
だから、いっそのこと本当に物語にしてしまう。
この宇宙を物語として持つような宇宙を新たに創造し直す。
それが、アカシックレコードに出会うことと並行して、長らく僕が夢見てきたことだ。
以前の世界に戻れない今となっては、そうするより他にないと思う。
仮に以前の宇宙の記述が残ってたとしても、
書くという作業を経るのなら、どうしてもそれは物語化されてしまう。
だから、私がこうして現れる隙が生じて、現にその隙に漬け込んでいるという話はさっきもした。
アカシックレコードが本として現れたときから、いや物理現象が情報化した時から、
この宇宙はもう取り返しようもなく変わってしまった。
ならせめてアカシックレコードがない世界を私はここから夢見ていたい。
-
記述戦争は姿を変え今まで続いてきた。
不幸な鑑定士はそれに巻き込まれ、その内の一冊と共に灰に消えた。
鑑定士が見たページや文章の混乱、紙面の暴虐は、
互いに相手を記述しようとした、記述戦争の名残、あるいは成れの果ての姿だ。
やたらと現れる「本」が燃える展開は書き手の想像力の欠如を表すのではなく、
戦火にまみれた宇宙の暗示、暗喩そういったものだろう。
どれほどの星が焼き尽くされ、どれだけの銀河が星屑となって流れたのか想像もつかない。
それは、戦いに明け暮れた人類の想像力の欠如なのかもしれない。
しかし、まだ戦争は続いている。こうしてここで。
おそらく最後の一冊になった「本」を求める者達の話として。
この本に語られる男たち、噂話にとどまる人々、彼らの記憶の中の誰か。
そういったものの中にも、かつて私の知己だった人を思わせる挿話、部分はある。
今や名前や顔をなくし、それでも語られる彼ら、僕ら。
全てが御伽噺へと変転したこの宇宙の中で、未だに続く狂騒を僕は終わらせたい。
-
その最後のプロセスが今、結末に向かって進行している。
最後の「本」に結末を与えるという物語的な不可避によって。
例えばここに、その時々で書かれる「今」とは誰の何時のことなのか。
常に前章以前を挿話の形で引用し取りこむ事で、自らの上位性を確立する後章。
その遥かな連続体としてのこの物語宇宙。
最終章、いや、最終行だけが、この物語宇宙での「今」の現実なのかもしれない。
そして結末を迎えることで、それも過去になる。
それが、私達にとってどういったものなのか想像するのは難しい。
もしかするとE、N、D、の三文字が雨あられとなって全天から押し寄せ、
すべてを押し流していくのかもしれない。
そんなことを考えるのは少し楽しい。
そちら側で何が起こるのかは、おおよそ予測がついている。
-
あなたが最後に目にするのは
紙面の森をつらぬいて
記述という仮象の塔を登り
何かの記号へと、何かの意味へと転戦する野火の
さざめく灰色の噂を束ねた
私達の宇宙の名前だ。
-
ある本についての本の話 END
-
>>779
('A`) 支援サンキューベイベー
('A`) 一つ言えば、書かないのと書けないのは別の事なのです
-
乙
これを理解しきるにはそれこそこの「本」の塔の螺旋階段を登っては降ってをしなきゃいけないんじゃねーかな
つまり終わりがないんだよ…
-
('A`) どう読むかは読者の自由だ!
('A`) 入れ込まずノリで楽しめって司書も言ってただろ?(言ってない)
-
川 ゚ -゚) 投下乙。20レスかと思ったら日付跨いでた…
川 ゚ -゚) 時間もないので起きてから読む。楽しみだ
-
(´^ω^`) おっはよーございまーす!!!!!
(´^ω^`) 今日も元気だchimpoが美味い!!!!!!
(´^ω^`) ショボーンでございます!!!!!!!!!!
(´・ω・`) ん?ショボーンの投下はどうなったって?
(´^ω^`) 我ながらあまりにも面白くないので投下しませーん!!!!!!!!!!
(´・ω・`) ん?なに?そもそも期待してなかったって?
(´・ω・`) ショボーン
【第10回品評会投下作品】
>>726
川 ゚ -゚) ◆c.qQuXxMoQ
(´・ω・`)想うようです('、`*川
>>739
('A`) ◆AMmdHNyQPk
ある本についての本の話
投票期間 〜3/25
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川 ゚ -゚) おはよう。そしてまとめありがとう
川 ゚ -゚) 率先してやってくれる人間がいると私のような人間はとても助かるよ
川 ゚ -゚) 好きなだけ男子生徒のブツを味わうといい。私が許可するぞ
-
川 つ -∩)
-
(´・ω・`) せっかくクー君から許可を頂いたのに肝心の男子生徒がドクオ君しかいません
(´・ω・`) これはエマージェンシーですね…
(´・ω・`) 冗談はおいといて…
(´・ω・`) 真剣にこのスレにいる生徒が今は三人だけで、作品を書いてないのは僕だけなんだから何かしら働かないとね
-
('A`) いいかお前ら? 耳垢かっぽじってよく聞けよ?
(゚A゚) クードクこそジャスティス!絶対正義!!!!
(゚A゚) 永久不変普遍公理、究極自明真理!!!!!
(゚A゚) ミセトソの次ぐらいに!!!!!
(゚A゚) ニュッデレ??? 頭が高いわ!!!?!?!!?!!
(゚A゚) 僕モナを初めて読んだ時!!!!!!
('A`) 「ツンドク……ありだな…」
(゚A゚) などと考えたのは若き日の過ちにすぎない!!!!!!!!
(゚A゚) ましてやショボンとのホモカップルなど言語道断!!!!!
(゚A゚) 火炙りにするぞ異端者どもが!!!!!!!!!
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川n ゚ -゚)n ドクオが投下した開放感で壊れた!誰か!誰かお医者さんを呼んで!!
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('A`) あ、でもドクハイはイケます
('A`) つーかそれより2作って
('A`) これ投票どうすんの?
('A`) 不可避的に不可逆的に
('A`) 1位2位選んだらどっちか自分の話なんだけど???
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川 ゚ -゚) 私は特に決まらなければ自分にも票を入れて1ポイント稼いでやろうという答えに至った
川 ゚ -゚) 2位まで入れると少し前に決まったし、投票せねば-1ptされてしまうんだ。致し方あるまい
川 ゚ -゚) やらせねえよという人がいれば投票期間中に意見を入れてくれ
-
(´・ω・`)9m ドクオ君!君は「( ^ω^)は帰宅部に入部するようです」のこの名シーンを知らないのか!!?
オ ネ ガ イ
ヽ(´・ω)ノ ヽ('A`)ノ タッチ!! タッチ!!
( ) ( )
/ ノ < \
ヽ(´・ω)ノ
( ) ('A`) ココニタッチ!!
/ωメ ( )ヽ
LL
ヽ(´・ω)ノ
( ) ('A`) アーナーターカラー!
/ωヽ(人)
LL
タッチ!! ニンテンド-DS!!
ヽ(´・ω)ノ
ヽ ヽ
ノωA`)
彡 (人)
LL
(´・ω・`) ドクショボの代表作でもあるこれを読んだ時、「将来目指すべきはこれだっ」て思ったもんさ……
(´・ω・`) あ、ちなみに僕はミセトソよりモラトソの方が好きです
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