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( ^ω^)文戟のブーンのようです[6ページ目]
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【このスレについて】
●このスレは何か
→ブーン系の品評会企画です。
作品による競い合いと、それによる作者同士の研鑽を目的としています。
●品評会はどう行うのか→>>2参照
●どうすれば参加できる?→>>3参照
●スレタイにある『文戟』って何?→>>4参照
【その他のルール、細則>>5】
【生徒名簿>>6】
【まとめ】
https://bungeki.jimdofree.com/
【過去スレ】
テストスレ
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1531744456/
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https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1541935201/
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「うちにはまだデレも居るし、娘なら親のために孝行するもんでしょう?
ツンも分かってくれてるわ。私の娘なんだもの」
(∩゚ω゚)「っそんなわけ……っ」
目眩が起こる。僕は膝をついた。異文化の国に迷い込んだ気分だ。
頭痛がひどい。目頭が熱い。僕はいつのまにか泣いていた。
あの日の泣いているツンを思い出す。さっきの顔に涙の跡を残していたツンを思い出す。
僕の涙を見た父さんが「ああ、 」と声を漏らす。
僕は少しだけ期待した。父さんが正気に戻って、こんなの間違っていると言ってくれると。
さっきまでの悪夢をすべてなかったことにしてくれると。
(`・ω・´)「そうか。すまなかったよブーン」
(`・ω・´)「お前もツンちゃんを抱きたかったのか。仲間はずれにしたから怒ってるんだろう」
信じていた。
(∩ ω )「何、言って」
(`・ω・´)「そうだよなあ。俺と同じ思いを息子にさせるなんて酷な話だよな。
なあブーン、父さんも一緒に頼んでやる」」
父さんが僕の方に近づく。
(`・ω・´)「本当は子どもはダメなんだぞ。ルールだからな。でもお前は子どもなのに知ってしまった。
しかも好きな子が生贄なんだ」
父さんから距離をとりたかったが目眩はまだ収まらない。
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(`・ω・´)「だから特別にさ、なあみんな、良いだろう?」
(`・ω・´)「ブーンにもツンちゃんを抱かせてやってくれよ」
父さんが僕の目の前に来る。
(∩ ω )「ふざ、け」
父さんを睨みつける。父さんはしゃがみこみ僕の目をまっすぐに見る。
(`・ω・´)「だってブーン、ツンちゃんはなあ」
(`・ω・´)「終わったら川に流すから。今抱いとかないと二度と抱けないんだぞ」
僕はその言葉の意味を理解した。
父さんから目をそらす。ふらつく足で立ち上がり扉の方へ歩き出す。
扉をくぐる時に肩がぶつかった。じんじんと痛む。
僕は鳥居を目指した。
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(`・ω・´)「行っちゃった……やっぱり子どもにはショッキングだったかな」
ポリポリと頭を掻く。子どもの頃からの癖。
最初にこれが癖だと気づいたのは前回の生贄の子……好きだった女の子からの指摘だったっけな。
彼はそんなことを思い出す。
「何だか白けちまいましたな」
「全く。シャキンのところの倅のせいですぞ」
(`・ω・´)「いやあ、すみません。多感な年ごろでして。
どれ、酒でも飲んで仕切り直しと行きましょう」
日本酒の瓶を持つ。
煩い男たちのコップに酒を注ごうとした時、入り口のほうから悲鳴が聞こえた。
「痛え!!痛えっ!! 」
男が肩を抑えて転げ回っている。肩からは血液が溢れ出し、抑える手は真っ赤に染まっている。
その向こうがわに立つのは、先程ここを出ていったブーンだった。
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僕はあの瞬間思い出していた。鳥居のそばにあった鎌を。
父さんの話を聞いてもその主張も思考も何一つ理解できなかった。
それに、父さんが囁いたあの言葉。
ツンはこのあと殺される。
騙されて、陵辱されて、川に捨てられ殺される。
この村には悪人しかいない。
自分の子どもを平気で捨てられる悪。何も知らない少女を悪びれもせず犯せる悪。
ツンを救うためには、この悪人たちを。
僕が殺すしかない。
頭はもう頭痛を起こさなかった。
酒で酔い、何も身に着けない、僕より図体のでかい悪は次々と崩れ落ちていく。
昔ツンとした勇者ごっこを思い出す。僕が勇者で、ツンがお姫様。
悪者に連れ去られたツンを救うべく、僕は怪獣や魔物を倒して進む。
「やめ……私が死んだらデレが」
振り切った鎌がツンの母親の喉を裂く。
四つん這いで逃げようとしているツンの父親の手足を裂く。
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(;`・ω・´)「お、おいブーン、お前自分がなにをしてるか分かってるのか!? 」
父さんは汗をかきながら僕に向かって叫んでいる。
(;`・ω・´)「今すぐやめるんだ!こ、こんなことをして、ただですむと思っているのか! 」
父さんのもとへ歩く。鎌は血で真っ赤に染まっている。
鎌を持つ手が滑らないよう、ぎゅっと握り直す。
「ひっ」と悲鳴をあげながらひっくりかえった父が僕を見上げている。
僕は父さんの前にしゃがみ込み父さんの目をまっすぐに見る。
( ゚ω゚)「じゃあ、なんでツンを殺すのは止めようとしなかったんだお」
右手をあげる。鎌から血がしたたる。
父さんの顔に血がぽたぽたと落ちる。
そのまま僕はその手を振り下ろした。
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ξ-⊿-)ξ「……う、ん」
ξ゚⊿゚)ξ「……ここ、は」
( ^ω^)「ツン。良かった。気がついたかお」
抱きかかえたツンは目覚めてからもしばらくはぼーっとしていた。
そのうち思い出してきたらしい。僕を見て青ざめる。
ξ; ⊿ )ξ「っ!わ、私……ブーン、見ないでって私、い、言ったのに……! 」
肩が震えている。僕はその姿を見て泣きそうになる。
きっと僕が想像するよりもずっと辛かっただろう。
僕が一生をかけてもツンの心の傷はなくならないのかもしれない。
( ^ω^)「ツン、大丈夫だお。悪いやつらは全員いなくなったお」
僕はせめて少しでもツンが落ち着けるように、安心させてあげられるように。
ツンに向かって微笑んだ。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン……」
ξ゚⊿゚)ξ「……?この赤いの、血……?ブーン、怪我してるの?」
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( ^ω^)「僕の血じゃないお。あいつらのだお」
僕はそう言うと体を反らす。そして僕の後ろで倒れる肉塊たちを見せる。
ツンを苦しめた人間たちの成れの果てだ。ツンも喜ぶだろう。
ツンは目を見開いている。端から見渡していたツンがある場所を見つめた。
ξ ⊿ )ξ「……おかあさん、おとうさん……? 」
左隅、2つ並んだ肉塊を見て、ツンが呟く。
( ^ω^)「ツンには辛いかもだけど、あの二人、ツンをこいつらに売ったんだお。
ツンがどうなるか知ってたのに。とんだ悪だお。
だから僕が殺したお」
ここであったことを説明しようとツンのほうを向いた僕の目に、衝撃がくる。
(;゚ω )「ッギャアアアア!! 」
そこから広がる痛みに僕は思わず叫んだ。
目に何かが刺さっていた。その刺さっている何かを持っている人間を、残った片目が捉える。
ツンだ。ツンが僕の目に何かを刺した。なぜ。どうして。
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ξ;⊿;)ξ「あんたがおかあさんを!!おとうさんを!!殺してやる、殺してやる!! 」
ツンが叫びながら刺さった何かを引き抜く。
簪だった。紫の小さな花がたくさんついたあの簪だった。
(;゚ω∩)「どうして……僕はただ、ツンを助けたくて……
だってあの二人、ツンを売った悪人で、」
ξ;⊿;)ξ「おかあさんとおとうさんのためなら仕方ないって!私覚悟してた!
それでみんなが幸せになれるならって、思ってたのに!」
抑えた左目から生暖かい感触がする。血が出ているらしい。
痛みが頭の中を暴れまわる。ツンは目の前で泣いている。
ξ;⊿;)ξ「あんたが殺した!私の幸せを奪った!
なにが悪人よ、私からしたら」
ツンが右手を振り上げた。
灯りに照らされて簪がキラキラと光る。ツンの涙がキラキラと光る。
ξ;⊿;)ξ「あんたのほうが悪人よ」
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( ^ω^)贄の涙のようです 了.
.
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川 ゚ -゚)というわけで以上だ
川; ゚ -゚)我ながらひどい出来になってると思うが、とりあえずまずは1本書ききることを目標にした
書くの大変すぎだろこれ 作者やってるやつら化物だぞ
川 ゚ -゚)というわけで寝る。おやすみ。
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最初の乙は俺が頂いた!!!
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しっかり書けてる!!
悪人ってテーマに対して、視点が変われば悪も変わるって内容は好き
個人的に胸糞系は心にくるわぁ………
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乙
ブーンみたいな正欺瞞がやられるのはすかっとしたわ
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(´・ω・`) 乙
(´・ω・`) 感想はちょっと待って…
(;´・ω・`) (どこから攻めたらいいか皆目見当がつかないなこれは)
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川 ゚ -゚) 乙をありがとう、優しさに泣いた
>>119
川;゚ -゚) 無理に感想を言おうとしなくても良いんだぞ… 正直感想とかそれ以前の問題だろう
川 ゚ -゚) 一本書いてみて、作者側にここどうしてるの?と聞いてみたいことがいくらかできた
川 ゚ -゚)感想期間の時に聞きたいので答えてくれると嬉しい
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>>120
(;´・ω・`) 「いや、勿論今僕が抱いている感想はあるんだよ」
(;´・ω・`) 「実際に作品を読んだのだから、何かしらの感想も思いつかないということはあり得ない」
(;´・ω・`) 「でも、今の自分の感想は自分で納得出来るものではないんだ」
(;´・ω・`) 「何かを見落としてるような…何か靄がかかったものがあるような…」
(;´・ω・`) 「はたまた喉に何かがつっかえているような、そんな違和感があるんだよ」
(;´・ω・`) 「それが何なのか分からないんだよね」
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('A`)↑
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('A`) 基本的にはいいと思います
('A`) この話は人が他人に抱いてる幻想とか思い込みとかのミスマッチが炸裂する話だと思うけど
('A`) ブーンとシャキン、ブーンとツンの間で他人の内に見出した自分の勝手な理解、願望、幻想
('A`) いわばディスコミュニケーションの結果
('A`) それが、それぞれどうしようもなく裏目にでて
('A`) 短編としてあるべき場所に収束していると思う
('A`) ただ、なんというかツンもブーンもシャキンもちょっと極端だなって思う
('A`) まあこの辺は個人の感覚の問題だけど
('A`) 気になったのは、途中で1レスだけ地の文章がブーンの一人称から三人称になる部分
('A`) それから、当日に女子供は外に出てはいけないって警告
('A`) この情報は勿論、伏線なんだけど
('A`) これでもうツンが犯されるって展開が読めてしまう
('A`) 一方でそれが分かって心の準備が出来てたから
('A`) 陵辱シーンにそれほど気を取られることなく
('A`) ブーンの心情やその後の展開へスムーズに移行できた
('A`) これはそれを計算に入れてるのか
('A`) そこまでは計算してないのか
('A`) そこが気になる
('A`) 言うなれば先の展開を示唆するための布石だったのか
('A`) そんな感じですね
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読んでて思ったのが、時代背景が分かりにくい
生贄が通用するなら戦前かと思ったけど、比較的現代みたいで困惑した
現代ならネットなり他所からの人間が入ってきた時に廃れそうな物だが、そうなってないって事はかなり閉鎖的な場所だと思うけど、その描写が薄いので違和感がある
生贄自体も数十年に一度なのにシャキンが前回を知っている
年配ならその描写が欲しかった
娯楽が無いなら若いうちに結婚してブーンが産まれているだろうから、少なくとも十数年しか経ってない
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話は起承転結がしっかり出来てて初めて書いたとは思えない
ブーンの日常が崩れたんだなってのが伝わった
ただの正義押し付けじゃなくて、それぞれの立場からの思いが書かれているから、考えさせられる
最後の展開は唸った 展開作るの上手いからこそ惜しいと感じる
面白かったです
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十数年はミス
二十年は経ってるか
冒頭の何十年はどうなんだろって意図で書いた
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(´・ω・`) 「何となく違和感の正体が分かってきたので」
まず、今までに投下された作品の中では一番テーマに沿っていると感じた。
それぞれが持つ価値観の違いによって何が“良し”となり何が“悪し”となるかが違う。使い古された内容だが、それでも“それ”を上手く使って迫力のある物語を書いてくれた。その能力は素晴らしい。ブラヴァー!!
それで、だ。僕が感じたのは、「もっと話の『補強』が欲しい」ということ。君の作品は言ってみれば「スケルトン」みたいなもので、本当に必要最低限しか書かれていない。
贅肉はおとす必要があるが、筋肉は逆につけなければいけない。>>124が指摘しているように、物語に読者を引き込むための設定だったり、より重厚・シリアスにするための文であったり、そういったものはもっとあればいいな、と思った。
二つ目、これは完全なる僕の好みなので全く参考にしないでいいと思う。
個人的には、シャキン側にもっと「正義」が欲しい。価値観の相違をテーマにした話には、それぞれのキャラが「正義・信念」を持っていることが必要だと思うんだよね。
片や両親のために犯されて死ぬことを選んだツン、片やツンを守るために人殺しをしたブーンに対し、快楽を貪るためだけにレイプをする大人達が釣り合っていない。と僕は感じる訳です。
一度書いたけど、あくまでこれは「僕の好み」なので無視してくれて構わない。
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( ・`ー・´)すごいなみんな!
( ・`ー・´)僕なんか「胸糞」「ブーンカワイソス」ぐらいの単語しか出てこなかったぞ!
( ・`ー・´)強いて言えば恐らくものそい閉じられた環境であったはずの集落で、ブーンがどうして僕ら読み手側の常識というか倫理観みたいなあれを持っていたんだろなぁってね!
( ・`ー・´)この集落でいえばブーンの抱いた気持ちや反応なんかは明らかに異端だからさ!
( ・`ー・´)その辺がモヤットボール!
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(´・ω・`) 「まあ、これが本当に処女作なら、クール君、君は素晴らしい能力を持っていると思うよ。」
(´・ω・`) 「無駄を削るって思いのほか難しいことで、僕たち作者はついつい『書きすぎて』しまう事が多い(少なくとも僕はそう)なんだけど」
(´・ω・`) 「必要最低限の文で、伝えたいことはキチッと伝える」
(´・ω・`) 「その能力にはいやはや、感服しました。」
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('A`) 正義とか価値観の違いとか言われてるけど
('A`) 俺はそんなものは始めから無いと思う
('A`) あるのは立場の違いだけ
('A`) なぜなら、価値観の相違が存在するかという部分が全く描写されてないから
('A`) 三者は立場が違いすぎてそれを価値観に還元することは出来ない
('A`) 同じシチュエーションから見たときの相違が価値観の違いになる
('A`) この場合誰も同じシチュエーションに立ってない
('A`) よってこれは立場の違いになる
('A`) そして俺はこれを不足とは思はない
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('A`) それはさておき
('A`) ツンと狼女が来るかどうか俺は気になってるが…
('A`) あと名無し代表( ・`ー・´)は、やはり口だけなのかとかね
('A`) ミセリ…そういえばそんなのもいたな…
('A`) 俺は根暗だから何もかも覚えてるぜ
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( ・`ー・´)まぁまぁ!
( ・`ー・´)まぁ!
( ・`ー・´)まぁまぁまぁまぁ!
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>>130
(´・ω・`) 「価値観の違いだとギャーギャー言ってるのは僕だけだね」
(´・ω・`) 「立場が違えば価値観や倫理観も違うと僕は考えるけどね」
(´・ω・`) 「そして、その価値観の違いの中には『正義』が欲しいと僕は思ってるのさ」
(´・ω・`) 「たとえその正義がただの言い訳や自分勝手なものであったとしても」
(´・ω・`) 「そういえば、僕は少し前に『フランツ・カフカ』の『判決』を読んでてね…」
(´・ω・`) 「そこに今回の話を無理矢理重ね合わせてしまったのもあるかもしれない」
(´・ω・`) 「読んでいなければもっと柔軟な発想を持てたのかもしれないし、読んだからこそこういった発想を持てたのかもしれないし」
(´・ω・`) 「今となっては分からないけど」
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>>131
(´・ω・`) 「個人的にはミセリ君の作品を楽しみにしてるんだけどね」
(´・ω・`) 「今回は参加出来るみたいなことを書き込んでたけど、やはり戻ってはこないのか…」
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('A`) ブーン以外内面描写がないから言動だけで判断するしかないわけで
('A`) そうするとキャラの行動の違いリアクションの違いが
('A`) 内面の指標になるわけだけど
('A`) 行動に影響を与えるのは価値観だけではなく置かれた立場も関係する
('A`) だからこの場合何で動いてるかは特定できない
('A`) ブーンは生贄じゃないし、ショボンはツンに恋してない
('A`) これは各個人のシチュエーションが特殊すぎる
('A`) そこに正義だ価値観だとか大きなものを導入するには
('A`) キャラ描写が全足りてないし
('A`) そういうのは長編的な作りの話でやることだと思う
('A`) これは短編らしい短編で
('A`) 少なくともこの話に必要だとは思わない
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イ从゚ ー゚ノi、 ボク、狼じゃなくて狐なんだけどなあ。
イ从゚ ー゚ノi、 投下するね。
イ从゚ ー゚ノi、 タイトルは「クリスマス大作戦!!」で。
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諸君、悪とは何だろうか。
例えばそれは他人の物を盗むこと、誰かを欺くこと、生命を奪うこと。
果たしてこれらは、本当に悪と言えるのだろうか。
僕らは日々誰かを欺き、何かの生命を奪いながら生きている。
見たくない過程に蓋をし、見知らぬ誰かに押し付け、何事も無いように普通を過ごしている。
今しがた、ここで敵を欺き、その命を奪った僕は悪なのだろうか。
もし仮に僕が悪だとしたら、君達は正義だと言えるのだろうか。
では、何をなせば正義と言えるのだろう。
誰かを助け、正直に生き、自分が損をしようとにこやかに笑っている。
これは正義と言えるだろうか。
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自らの命を放棄することなぞ、生存競争においては何の価値もない。
これでは、正義以前に生き物として失格だろう。
この拳で、この脚で、この頭で、自らが持てる全てを動員して、目的を達成することこそが生き物としての最善手。
ある意味では生き物としての正義と言えよう。
諸君。日々、無為に時間を過ごし、どこぞで聞きかじった情報で武装して、他人に嫉妬してはすぐに噛みつこうとする諸君。
暗い部屋で心許無い灯りに照らされながら、その醜くも悍ましい正体を暴かれぬよう、表向きはいつもニコニコ死んだ目で笑っている諸君。
他人を羨むことに終始し行動を起こすことは決して無く、狭い部屋でその矮小な自分自身を慰めている諸君。
果たして、悪とは何だろうか。
とまあ、そんな小難しいことを考えているフリをしながら、今日も今日とて僕は解体作業に勤しむのである。
(;ФωФ)フー 「ふいぃー」
(⊃ФωФ) 「いい汗かいたー」
( ФωФ)そ 「やべっ!擦ったら、メイクとれちゃう」
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今しがた生存競争に敗れ、動くのをやめたこの生き物は、そこの木箱の影で震えている少女を何度も何度も殴打し、執拗に罵倒した。
その挙句に、少女の耳元で自分勝手な愛を囁いた。最低のロリコン野郎だ。
僕の何物にも代え難い至福の時間。そう睡眠時間をそのだみ声を持って妨げた塵芥以下のクズだ。
女の子が泣くのを見るのは好きじゃない。
それに何より僕は眠い。すぐにでも夢の世界に飛び込んで、甘美な空想に溺れていたいのだ。
( ФωФ) (……しっかし、ずっと泣いててうるさいったらありゃしない)
( ФωФ)そ
( ФωФ) (…原因を排除して、静かにさせればいいのでは!?)
( ФωФ) (それだ……!!)
( ФωФ)ボソ 「天才かよ」
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慰めようと近寄ると、彼女は悲鳴を挙げ、泣き出した。
僕は、思わず耳を抑えて後ずさる。
(;ФωФ) 「……なぜだ?」
絶対に泣き止ませるフレーズをいくつも考えていたってのに。
そもそも近寄ることすらできないのでは意味がない。
(#⊃;-;)
( ФωФ)
( ФωФ) 「…ん?」
( ФωФ) (視線が腹の辺りに……?)
(;ФωФ) 「あら〜?」
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その時、僕は自身が返り血でびちゃびちゃになっていることに気が付いた。
恐らく彼女が泣いているのは、これが原因に違いない。
( ФωФ)+キュピーン (…やはり天才)
流石は僕、天才的だ。
かの名探偵でもびっくり。灰色どころかどどめ色の脳細胞を持っているに違いない。
( ФωФ) (そうと分かれば……!)
裏路地を飛び出して、表通りを歩いていた僕と同じくらいの体格の男に声をかける。
( ФωФ)ノシ 「はっろ〜ぅ♪」
○⌒\
(二二二)
(,,゚Д゚)そビックゥ
めちゃくちゃフレンドリーに声をかけたのに、僕の格好を見るなり、男の顔が恐怖に歪む。
なんて生まれたての山羊みたいにガクガクだ。膝カックンなんてしようものなら、頭をひどく打って大怪我するだろう。
手に持っている可愛らしい小箱も、今にも落としてしまいそうだ。
-
○⌒\
(二二二)
(,,;Д;) 「…あ、あぁ」
( ФωФ)そ
(;ФωФ) (…こいつも泣くのか!?)
そう思った瞬間、僕は腰に着けていた鞘から、ナイフを抜き放つ。
ナイフはコンパスでも使ったみたいに、空中に綺麗な曲線を描いて再び鞘に収まる。
(;ФДФ)ガーン
(;ФДФ) 「やってしまった」
いい悪者ってやつは、たとえ失意のずんどこにあったとしても、常に最善手を考える生き物だ。
いい悪者って何だろう。自分で言っていても不思議だ。
なんかこう、程よく矛盾をはらんでいて、言葉のバランスとしていい感じな気がする。
( ФωФ) 「あ!!」
-
思考が生み出したわけのわからん迷路を押し分けて、名案が浮かんできた。
僕は、男が被っていたみょうちきりんな帽子と真っ白な付け髭を拝借する。
○⌒\
(二二二)
( ФωФ) (……あっ、あの袋良くない?)
ガサゴソ ガサゴソ
○⌒\
(二二二)
(⌒( ФωФ) (……こりゃあ、なかなかサンタだな)
○⌒\
(二二二) w
(⌒( ФωФ) 田
○⌒\
(二二二) w
(⌒( ФωФ)⊃田 「…お前も来るか?」
ついでに、誰の手にも渡ることが無くなった小箱も貰ってしまうことにした。
-
我ながら見事なサンタっぷりである。
万が一、明るいところで見たら、あまりにショッキングな色と濃厚な鉄の香りに、失神する人もいそうだけど。
( ФωФ) 「さて、そうくれば」
髭の位置を調整しながら、彼女がいた路地裏に戻る。
彼女はまだ、木箱の裏で泣いていた。逃げりゃあいいのに。
( ФωФ) 「…マジか」
(#゚;;-゚)ビク
(#゚;;-゚) 「…さ、先程の方ですか?」
( ФωФ)
( ФωФ) (……どないしよ)
ちょっと返答に迷った。
だけど、今の僕はサンタだ。間違いなくサンタだ。
幼気な彼女の手前、この設定だけは守っていきたい。
せっかくのクリスマスなんだ。僕はいい悪人なんだし、ちょっとくらい夢をあげたっていいだろう。
-
( ФωФ) 「そうだよ」
( ФωФ) 「……実は僕、サンタなんだ」
(#゚;;-゚) 「…人を殺めてらしたのに?」
( ФωФ)
(#゚;;-゚)
(;ФωФ)
( ФωФ) 「うん」
(#゚;;-゚) 「そう」
-
わざわざ彼女に見えないように、陰で殺したってのに…。
見られていたとは、僕もまだまだ甘いな。
………完璧だと思ってたのになあ。
(;ФωФ) 「そうそう」
( ФωФ) 「まだ見習いだからね」
( ФωФ) 「聖なる夜に、悪党どもを蔓延らせないのも僕らの仕事なんだ」
(#゚;;-゚) 「…そう」
( ФωФ)
(#゚;;-゚)
( ФωФ) 「そうなんだよ」
(#゚;;-゚)
(;ФωФ) 「ほんとだよ?」
(#゚;;-゚)
(;;ФωФ) 「ほんとだってば」
(#゚;;-゚) 「……そう」
-
( ФωФ) 「これまでのことも含めて、彼は人を殺し過ぎた」
( ФωФ) 「だからサンタのブラックリストに載ってたんだ」
(#゚;;-゚)
彼女は何かを思い出そうとしているような表情で、黙り込む。
なんだか嫌な感じの沈黙だ。
彼女の透き通るような目に映る自分を見つめていると、何故だか全てを見透かされているような気がする。
(#゚;;-゚) 「サンタさんがプレゼントを配るのって、子どもだけなのよね?」
( ФωФ) 「うん」
(#゚;;-゚) 「なんで、大人もリストに載っているの?」
( ФωФ)ギク
(#゚;;-゚)
( ФωФ) 「全ての子どもがいい人になるとは限らないからね」
( ФωФ) 「これまでにプレゼントを配っていた相手もリストに載るんだ」
( ФωФ) 「善良に暮らしている人以外は、黒いリストに載るんだよ」
(#゚;;-゚) 「そうなの」
( ФωФ) 「うん」
-
ギリギリ誤魔化せたって感じだろうか。
流石、僕。瞬時に設定を組み立てられるなんて、小説家にもなれるかも知れない。
そんなことを考えていると、彼女が再び口を開く。
(#゚;;-゚) 「貴方達は見習いなのよね?」
( ФωФ) 「うん」
(#゚;;-゚) 「見習いの服も赤いの?」
( ФωФ) 「君の……」
( //ω//) 「……ぅう」
( ФωФ) 「…君の肌みたいに真っ白な雪に、一番映える色だからさ」
( ФωФ) 「今みたいな時には、色が目立たなくっていいしね」
(# ;;- )クス 「…そう」
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くそう。やはり女性を褒めたりするのはなんか恥ずかしい。さっきの歯の浮くような泣き止ませるフレーズとか言えなかったかもしれない。
僕はロリコンではないはずなのに、なぜ彼女にドキドキしているんだろう。
……なんか笑われてなかったか?
( ФωФ) 「…そう言えば、君は何歳なの?」
(#゚;;-゚) 「なぜ教えなければいけないの?」
( ФωФ)そ
そうかそうか、そう来たか。マジか。
どうしたら自然な感じに、聞き出せるんだろうか。
( ФωФ) 「…いや、ほら」
(#゚;;-゚) 「どうして?」
( ФωФ) 「え、だから…」
(#゚;;-゚) 「どうして?」
( ФωФ)
( ∩ω∩)
-
やばい。どうしようこの子、思った以上に鋭い。
僕のどどめ色の脳味噌が、全くもって息してない。
こんなやり取りなんて、本当は全く得意じゃない。
早く、一刻も早く夢の中に戻りたい。
( ∩ω∩)
( ФωФ)そ (それだ…!)
(#゚;;-゚)
( ФωФ) 「ほら、君にプレゼントを渡すのに年齢確認が必要なんだよ」
( ФωФ) 「最近は、いつまでも若々しいご婦人も多いから」
( ФωФ) 「大人な雰囲気の君が、ティーンエージャーだとは限らないしね」
(#゚;;-゚)
(;ФωФ)
(#゚;;-゚) 「そう」
-
(#゚;;-゚) 「16歳よ」
( ФωФ)
( ФωФ) 「同い年じゃん」
(#゚;;-゚) 「そうなの?」
( ФωФ) 「うんそう」
(*ФωФ) 「なんだ同い年じゃーん」
あっぶねー。見た目が幼いから、てっきり十歳よりも下かと。
なんだよー。同級生かよー。もうほんとびっくりしたわー。
安心しすぎて、地の文の力も抜けちゃうわー。
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(#゚;;-゚) 「ところであなたに幾つか質問があるのだけど」
( ФωФ) 「なに?」
(#゚;;-゚) 「その腰のナイフは何に使う物なの?」
(;ФωФ)そ
(;ФωФ) 「あっ…ああ、これ?」
( ФωФ) 「これは〜悪い人を切り裂いたり、荷解きをしたりとか?」
(#゚;;-゚) 「そう」
このナイフは特注製で、刃先が射出できるようになっている。
柄の部分に彫られた悪魔の顔は、職人さんの厨二心が疼いた結果の産物らしい。
僕は気に入っていて、全ての犯行にこのナイフを使っている。
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(#゚;;-゚) 「その目の傷はどうしてできたの?」
(;ФωФ)そ 「これは〜ほら、その」
( ФωФ) 「この仕事を始める時に、覚悟を決めるためにつけたっていうか……」
いや、待て。何かが可笑しい。
何故こいつは見たことないはずのナイフのことを…傷のことを知っている。
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咄嗟にその場を飛び退いたその時、先程頭があったところを何かが通り過ぎた。
右耳が熱い。
(∩Фω+)チッ
思わず右耳に触れると、鋭い痛みが走った。
( Фω+) (何が起こった!?)
まずい。とにかくここにいてはまずい。
逃げなきゃ。逃げなきゃ死ぬ。瞬時に、背を向けて走り出した。
-
(# ;;- )チャキ 「ばぁか」
(#゚;;-゚) 「逃がすわけないじゃない?」
急に膝の力が抜け、激しい痛みが襲う。
(;;+ω+)⊃ザァ 「う!?」
背後から、小気味いい金属音とともに足音が近づいてくる。
まずい、このままでは狩られる。
せっかくこれまで奪って奪って、殺しに殺してまで命を繋いできたってのに。
(;;+ω+) 「ぐうぅ」
-
痛みに呻きながら、相手から見えないようにナイフの切っ先を向け、照準を合わせる。
こんな所で、僕は死ぬわけにはいかないんだ。
耳を澄ませ、タイミングを計る。
一歩
二歩
三歩
四歩
ここだ。
( +ω+)
(#ФДФ) 「死ねええ!!!!」
間合いは零。高速で放たれた刃は彼女の命を奪う。
-
はずだった。
(#゚;;-゚) 「あーあ」
彼女は事も無げにナイフを叩き落とし、そのまま銃口を僕にmうkEくぇrちゅい
(#゚;;-゚) 「この局面で、武器を捨てるバカがいるなんてね」
ピロリピロリピロリ♪
(#゚;;-゚) 「はい」
( ) 「わたしだ」
(#゚;;-゚) 「なによ」
( ) 「仕事は?」
(#゚;;-゚) 「私がしくじったことがあった?」
( ) 「それもそうだな」
(#゚;;-゚) 「これから、シャワーでも浴びて帰還するわ」
( ) 「わかった」
( ) 「くれぐれも気をつけろよ」
(#゚;;-゚) 「はいはい」
ガチャ
-
(#゚;;-゚) 「死人に口なしって言うしね」
(#゚;;-゚) 「特別に答え合わせをしてあげるわ」
(#゚;;-゚) 「あなたはテキトーに言ってたみたいだけど」
(# ;;- )クス 「結構いい線いってたわよ」
(#゚;;-゚) 「ただ、リストに載ってたのはあなたの方だけどね?」
-
イ从゚ ー゚ノi、 『了』
イ从;゚ ー゚ノi、 勝ちたい、忙しい。でも勝ちたい、でも忙しい。なんてのを繰り返してたらこうなったよ。
イ从゚ ー゚ノi、
イ从゚ ー゚ノi、 うん。後は言い訳しかないから、なんかごめんね。
-
ξ゚⊿゚)ξ「みんな乙よ!」
ξ゚⊿゚)ξ「ツンデレの投下宣言よ〜!」
-
( ・`ー・´)ひとまず乙だ!
( ・`ー・´)滑り込みたい奴は僕の他にいるかい!?
-
( ・`ー・´)じゃあツンちゃんの次は僕だな!
-
わびしい夜でただそれだけ、人気者な街だけが元気に輝いている。
この手の国にありがちな景色なんだが、ここシラーバストリートが良い例だ。
三原色のライトを内側に向け、石畳のひび割れすらも楽しげに彩る。
スコールの夜なんかは特にあでやかだ。
病気を媒介する蚊やネズミどもは引っ込むし、虫よけのハーブはますます香りたつ。
陽気な言葉とパラソルと、音楽の間を光の粒が跳ね回り、どんな人間も疲れを放って楽しむってもんだ。
でも今日は、どんなライトアップも無駄だろな。
パトカー達がストリートへ、産卵シーズンの鮭の如く押し寄せている。
楽しいシラーバの雨夜が、けたたましいサイレンと黄色い催涙弾のせいでメチャクチャだ。
その先頭で一光線を引き、ひた走っている車があるだろう?
車体にはキュートなイラストと【皆さまの暮らしに"安心"と"おいしい"をお届けしています!シラーバフーズへようこそ!】のラッピング。
珍しくも怪しくもない商用車だが……まさしくそれが俺達だ。
どうしてこうなった?
(>、<;トソン⊂「───〜!────〜〜!───〜〜〜!!」
追われている原因はコイツで。
トソン⊂(;´_ゝ)「───────────────!─────。─────────────────!──!─ー!」
事件に巻き込まれたのはコイツのせい。
(´<_` )「─────────、─────……」
事の発端はこうだ。
-
遡ること三時間前、俺達は廃棄コンテナを回収しながら反省会を行っていた。
練りに練った新サービスの交渉に失敗したのだ。
今回のターゲットにフラれたのは、これが初めてじゃない。悪口も言い尽くした。もう打つ手なしだ。
蹴とばしたり落っことしたりしながら、アルミコンテナをどんどん積み込む。
実はこの時、コンテナの中を確認しなくちゃいけないんだが、兄者はこれを怠っていた。
それで俺達はコンテナ中の異物に、気がつけなかった……
商用車は次のポイント目指しトロトロ進む。
文句に飽きた兄者は船を漕ぎ、ラジオはどっかのマヌケが次々と工場を爆発させた影響で、食器に使う消毒液が当分仕入れられない事を報じていた。ほんとツイてねー。
ファイナ通りにさしかかる頃には、ラジオはおたずね者コーナーへと移っていた。
アードルフ……こいつは詐欺師。オズヴァルト……罪状は食い逃げだけど、ほんとは麻薬の元締めだ。
レギーナ、フェーベ、ダニエラの名前は飛ばされた、そういや殺されたんだっけ。最近多いよな。
呪文のように唱えられる名に、俺まで眠くなってくる……
平和だ……最高に平和だった……
殺人鬼のヒルトルートの名前まで行った辺りだったかな……?そこでついに、コンテナが唸りだしたのだ。
「うーいてて……」
(´<_` )「……今なんか言ったか?」
( -_ゝ)「ラジオだろ……不気味な事言うなよ……」
「は!ここは!?」
( ´_ゝ`)(´<_` )
「イテッ!」
-
俺達は黙って相談した。俺はチョキで勝った。
間違えて回収したのは、科学防護衣姿の女だった。
(゚、゚;トソン「あなたは誰ですか?ここはどこですか?私はどうなってるんでしょうか?」
( ´_ゝ`)「俺はお弁当やさん、ここは俺達の車、確認しなかったのは俺のミスだけど、コンテナで寝ていた君も悪いと思う」
(゚、゚;トソン「ビツ工場は……?」
( ´_ゝ`)「そんなもんずいぶん前に通りすぎたわ……とりあえずコンテナから出ようか、ほら、そこに座席がある、どうぞ座って」
(゚、゚;トソン「あの女の人!あぁハイン先生!私!どうしたらいいの!?」
( ´_ゝ`)「……」(´<_` )
女はあきらかに困っていた。
困っている人間に関わるなんてとんでもない。
ここランジアでは、クレイジーな人間と目を合わせる事は、アドベンチャーを求めるのと同じ事である。
導き出される解決策とは……
-
(´<_` )「ヨシ、つまみ出そう」
(゚、゚;トソン「待って!」
( ´_ゝ`)「悪い冗談はよせ」
(゚、゚;トソン「隠れないと……私、悪い人に襲われて……!」
(´<_`#)「おら!さっさと降りろ!」
(>、<;トソン「いやー!やめてーー!!」
(# ´_ゝ`)「こら!暴れんな!」
( ゚д゚ )
(>、<;トソン「見つかったら今度こそ殺されちゃう!」
( ゚д゚ )
(´<_`#)「いい加減にしないとぶちのめ……」
( ゚д゚ ) ( ´_ゝ`)
(´<_` ) ( ゚д゚ )
「……」(´<_` )( ゚д゚ )( ´_ゝ`)「……」
背の高い男達が路肩に止めた車の中で、女の胸ぐらを絞めあげていた。
二人組の男は口汚く罵り、女は死に物狂いで暴れ、開け放たれたドアからは、警官がじっと見つめている……
ファイナ通りの空から雨が降り出してきた。
もう何を責めていいかわからない。
-
( ゚д゚ )「……」
(´<_`;)「こんちわ、いい天気ですネ。ハハ……」
(; ゚д゚ )「動くな!こちらP5、暴行事件発生、男性二名が──」
(;、;トソン「きゃー!いやーっ!!」
( ;_ゝ;)「あーっ!もういやーっ!」
俺は運転席にすっとんでアクセルを踏みつけた!
エンジンが唸り車は踊るように走り出す!
……ランジア警察の場合、逃げた方が安くつく。
聞く耳持たないどころか、薬物や銃の無断携帯の嘘の罰金までついてくるからな。あいつらはいつもそう。
それにありがたい事に最近は、イキの良い町のダニよりも、海外赴任者とかの太ったカモから賄賂をせびるのが、彼らのトレンドなのだ。
ところがだ。そんなランジア警察が、今日はなかなかしつこかった。
路地から路地へ……おんぼろビルの谷間を縫う。
穴だらけのアスファルトでタイヤが跳ねるたびに、どこかで何か壊れる音がした。
やがて雨はスコールになった。
……サイレンが方々から湧き、波のように押し寄せてくるのがわかる。
(´<_` )「……しつこ過ぎないか?」
(#´_ゝ`)「しつこ過ぎるぜこのクソアマ!」
(<_`#)「おい兄者何してる?こっち手伝え!」
ソン⊂(# ´_ゝ`)「何してると思う?このシットな声が聞こえる?」
(゚、゚;トソン⊂「大丈夫です!私が警察の人とお話しします!任せてくださいきっとうまくいきますよっ!」
防護衣の視認性バツグンなイエローカラーと、背中に印字された、ド派手な企業ロゴが目に入る。
さて、どうしたものかな……
-
右手から新しいパトカー。
クラクションを叩きながらシラーバストリートへ抜ける。
ストリートは人質兼目眩ましみたいなもんだな。
俺はケリをつけたかったんだ。ところが……
どうしてこうなった?
(>、<;トソン⊂「お〜〜い警察官のみなさ〜〜ん!勘違いですよ〜〜!本当の悪者はビツ工場にいますよ〜〜〜!!」
トソン⊂(;´_ゝ)「おい弟者ブーンの店が吹っ飛んだぞ!マジで最悪。デブ警官め突っ込むならそこのくそ不味い飯屋にしろ!そこだ!ヤー!」
(´<_` )「ポジティブに考えよう、これでしばらくツケの心配をしなくていい……」
本当にどうしたものか……いや、どうしてやろうか。
物騒な作戦に思いを馳せてカーブを曲がる……瞬間!巨大な何かが脇を掠め、車がギリギリと振動した!
突然の事だった……幸い、俺の手は脳ミソより早く動いていた。
サイドミラーはもげてしまったが。
(;゚_ゝ゚)「Pag-32……」
兄者が呻く。カンペキな異常事態だ。
連中の目的は女の保護でも、俺達の確保でもない。
決まりだな。
(゚、゚トソン「Pag-32……って何ですか?」
(´<_` )「この国でもっぱら人を押し潰す時に使われる乗り物」
( ´_ゝ`)「な?言った通りだろ?説明したって無駄だって!完全にアホなんだよ、そして今、アホの第二段階に入った」
(゚、゚;トソン「そんな……どうして?」
(´<_` )「知らん。知らんが連中の狙いはアンタだ」
( ´_ゝ`)「そして警察は、俺達と君が大親友だと思ってるみたい」
(´<_` )「どうやらこの数時間で、取り返しのつかない何かが進んでしまったらしい」
( ´_ゝ`)「例えばここで、君を捨てて逃げたとしよう。それでも君は蒸発、俺達は後頭部に2発の銃痕のある自殺をするハメになるだろう」
-
(゚、゚;トソン「……どうしたら、いいですか?」
( ´_ゝ`)「協力するんだよ」(´<_` )
(´<_` )「困ってる人を放っておけないだろ〜?」
( ´_ゝ`)「大丈夫、礼は必ず貰う。正義のヒーローじゃないんでね」
(´<_` )「な?悪い話じゃないだろ?」
(゚、゚トソン「でも……警察の狙いは私です」
( ´_ゝ`)「でも君を暴行して誘拐して暴走してるのは俺達だろ?」
食い下がる女だが、ついに兄者がシートベルトで固定してしまった。
緩んだスコールの向こう、目前の交差点をのっそりと塞ぎ、Pagが行進しているのが見える。
……サイレンが近い。
火事場で肝心なのは、馬鹿力でもお祈りでもマトモな思考でもない!己のセンスだ!
(´<_` )「ケツをまくるぜ〜〜〜っ!」
テールランプをたなびかせ、スピンターンでパトカーを滑らかにいなす。
Pagが何かを粉砕した音と、女とタイヤの絶叫は煙が出そうな激しさだ。
( ´_ゝ`)「なぁ、そこのトタンと生け垣、どっちが薄いと思う?」
(゚、゚";トソン「ラッツ?」
喜ばしくも土建屋が、この辺りだけ工事をサボったらしく、土手からバイパス道路へ降りられるようになっていた。
しかも住民の涙ぐましい防音対策のおかげで、この近道を知っているヤツは殆どいない。
(゚、゚";トソン「ハオ、ハオ、ハオ……ラッツ?」
( ´_ゝ`)「おっ生け垣の方か!俺もそう思っていたんだ!ヨシ行こう!」
(゚Д ゚";トソン「ぬわーーーーーーーっ!!!」
俺はスカルチノフ爺さんの生け垣の、一番薄そうなとこを目指した。
生け垣はけっこう固かったよ。
ありふれた景色がちらりと目に入る……ガスボンベと鍋、大量の風邪薬の空き箱……
間もなく、車はライトを飛ばして土手を駆けた。
-
(;、;トソン「……」
( ´_ゝ)「……」
俺達を弾丸とヘリから守ってくれたスコールは消えてしまった。
なんとか合流したバイパス道路は広大で、長距離トラックが像の群れのようにぞろぞろ進んでいる。
トラックのタイヤ磨きを翻し、東方面の車線へにじり寄る……もう少し………あとちょい!
(´<_`#)「あーっクソ!」
( ´_ゝ`)「なぁ、あそこのヴァンなんだけどさ……」
この不気味な一報を聞き終える事はできなかった。
二台のパトカーが詰めて来たからだ。嬉しくない事に前方にはダンプカーのケツ!
ズドンと伝う衝撃に体が弾んだ、シートベルトが骨を軋ませる。なすすべもない。
暴れるハンドルにしがみき、時速100㎞超のつばぜり合いが始まった。
車体は火花と煙を上げてガタガタもがいたが、ダンプのタイヤは着実に迫っている……もう、鼻の先まで……
危機一髪!力の矛先がズレた。
喜ぶ間もなく爆炎にあおられ、隣のパトカーは横転。
俺達の車は待避所の防音壁へ突っ込んだ。
気を失うほどではないが、それでも頭がクラクラする……
発砲音と、男の怒号と悲鳴……文句の内容から察するに、兄者がパトカーに…………ってアレッ?
身をよじって確認すると、複数の影が炎に伸びあがる中、兄者がコンテナを飛ばして応戦していた。
ハチの巣にされかねないこの状況で、簡易保冷庫は素晴らしく役に立っているようだ。
-
(;゚_ゝ´)「おい!?お前いつの間にシートベルトに絡まったんだよ!?」
(;、;トソン「ひどいよ〜!あなたが縛ったんでしょ〜〜!」
イカンイカン!
車を急発進させ照準を奪う。
待ち構えていた兄者が飛びかかり、次々と外へ殴り飛ばしていく。
(;>_ゝ<)「うわ!」
_
( ゚∀゚)「よく逃げたなぁ〜トムラ。死とi3の用意はできたか?あとお友だちへのあいさつはすませたか?ナンマイダ〜って」
( 、 ;トソン「ナスタルーデ!グラッヅィ!グラッヅィ!」
_
( ゚∀゚)「真の男たるもの、命乞いなど気にもかけん!なぜなら同情したって、すてきなストーリーは始まらないからだ!」
ケンカにはけっこう自信があるのだが、驚くべき事に、兄者は押されているようだった。
嫌な音が休む間もなく聞こえてくる。
(´<_`;)「私の兄さんを倒したようだな……しかしヤツはこの中で最弱。俺は強い……すんげぇ強いぞ、逃げた方がいいぞ」
_
( ゚∀゚)「いや、そういうとき大抵2人目が雑魚」
バックミラーの中で、兄者の首を離した男の燃えるような金髪が輝いた。
こっちまで来られたらマジでオシマイだ!
ゆっくりと汗を拭って、ハンドルを握り直す。
_
(;゚∀゚)「!」
エンジンが吠える!タイヤがおどり、遠心力が車内を叩きのめす。
一人がやすやすと、一人が無惨に跳ね回る。
( _ゝ )「今だ捕まえろ!」
すかさずスピンをかけ、敵を左のドアへ押し付ける!DC炊飯器の砕ける音と、遠ざかるうめき声が最後だった。
高架橋を風のように、一気に駆けのぼるボロボロの車。
( 、 トソン「」
(#)´_ゝ`)「ヤツがあれで死ぬとは思えん!急げ!お前も、いつまで、寝てんだ、よっ!人が保冷庫で寝て大丈夫なのは10分までだ!!」
(´<_` )「あのさ!てかさ!道空いてねっ?!」
_, ,_
(#)´_ゝ`)「……」(´<_` )
……なんか、イヤな予感が…………
-
予感は的中した。
Pagが、カブトムシみたいな装甲を嫌らしく並べて道を封鎖している。
完全包囲、充分なサインだ。
これで引き返すヤツは三流のマヌケ。
降参してチャンスをうかがうのが二流。
一流はそもそもこんな事にならない。
俺達は流石だった。
アクセル全開でPagに突進。
捨てられる物はすべて捨て、きたる瞬間に備える。
体が震える、匂いが焦げる……最後に俺達は、連中の驚いた顔と迫る死の壁を見た……
そして連中も見たハズだ!一直線に突っ込んできた車が、ほんの手前で右に逸れ、スコール対策の斜面と縁石によって飛び上がるのを!
ガードレールをかすめ、約2000kgのボディが誇らしげに宙を舞う。
内臓は重力を失い、血液がスッと冷える。
フェルナンブコのこずえに着地すると、車は地面へ落下した。
当然地面にはアスファルトが敷いてあり、それは高架下を通って東へと続いている。
振り返らなかったのでわからないが、ヤツら唖然としてるに違いない。してたらかなり嬉しい。
捜索は夜を徹して行われ、やがてハラサ埠頭で俺達の車を見つけるだろう。
もちろん車は海の底さ、しかし死体は見つからない。
それじゃ俺達はどこへ行ってしまったのか?
新しいマンホールは犯罪防止用の錠がついているんだが、最近閉鎖されたハラサ埠頭では旧式のままだ。
……二番倉庫と三番倉庫の間のマンホール。
はた目では気づかない、小さな、新しい引っ掻き傷が……ついてるハズだ。
-
(´<_` )「おい──」
(; ´_ゝ`)「くっさ!頼むから今話しかけないでくれ!ゲロ吐きそう!」
(´<_`#)「その言い方だと俺が臭いみたいに聞こえないか?」
(; ´_ゝ`)「事実だろ…しかしお前よく平気だな」
(´<_` )「ほっとけ、なぁ、それよりどう思う?」
( ´_ゝ`)「そうだな……凄まじき便臭だ。もう耐えられない。月日を微塵も感じさせない、まるでついさっき──」
(゚<_ ゚ #)「クソから離れろクソ野郎!これからどうすんだって事だよ!」
( 、 トソン「……けほ!はぁ……」
下水道と言えばあまり良い話は聞かないが、ここは特に不愉快だった。
寒い、本当に寒い、寒すぎる。鼻水が止まらなくなるくらい。
悪臭がわからないのも、鼻が詰まっているせいだ。
本当にまいった。
さんざん痛め付けられて、体のふしぶしがズキズキするし、喉もおかしい。
オマケに頭痛がずーっと治らない。実はまだフラついてる。
これからその頭痛の種と向き合わなくちゃならないってのに……
(iii ´_ゝ`)「どうにもならんだろ、放送聞いたか?俺達、暴行暴走誘拐に加えて、なんか工場まで爆破した事になってんだぞ。当分お天道さまの下歩けないぞ、ここは、ルビコン川の向こう岸だ」
(´<_`iii)「だからさ……ってキモ!顔真っ青だぞ!は?なんで?お前酷い下痢でもしてるんじゃないのか?」
(iii ´_ゝ`)「ン?んー……あれ、てかお前もだぞ」
( 、 ;トソン「みなさん、本当にごめんなさい」
( 、 ;トソン「私が、これからの事についてお話しします」
(iii ´_ゝ`)(´<_`iii)
-
(´<_`iii)「言っておくが、そのキズやらタンコブやらに対するクレームは一切受け付けないからな」
(iii ´_ゝ`)「感謝御礼なればいくらでも、さぁどうぞ」
( 、 ;トソン「……やっぱりもう少し、私に協力してください」
(iii ´_ゝ`)「うん?」(´<_`iii)
(゚、゚iiiトソン「死にたくなければ!どうか!」
驚いたドブネズミ達が、キーキーと足の上を走っていったが、俺達は氷のようにひたすらたたずみ、誰も何も言わなかった。
女は防護衣を脱ぐと、しょっていたメディカルポーチを開いて見せる。
覗けば小さなチューブ容器が、シケたサンドイッチの具のように挟まっているだけだ。
(゚、゚iiiトソン「これはウイルス特別輸送用培地。保存されていたのは、i3というウイルスを加工した物です」
シリコン製のチューブ容器。
スマイリーフェイスが3つ刻印されたゴム栓は、ミッチリ接着されているが……
(゚、゚iiiトソン「ご覧のようにすべて気化しています。目視では確認できませんが、おそらく、逃げる際にどこか破損したのでしょう」
(゚、゚iiiトソン「このウイルスは急激な熱性疾患として発症し、悪心、頭痛、関節痛、上気道炎症症状、呼吸器症状、めまい、発汗、まれに猩紅熱様発──」
(; ´_ゝ`)「おいおい俺は弁当売りだぞ?もっとバカみたいに教えてくれ!」
(゚、゚iiiトソン「私達は"すごくひどい風邪"にかかっています、それを治療する為に会社の研究センターへ来て下さい」
-
(´<_`iii)「……めんどくさ、そこらで寝てりゃ治るだろ」
(゚、゚iiiトソン「たしかに普通のi3ウイルスなら、症状が出る方がまれなんです。でもこの合成したi3ウイルスは……」
(´<_`iii)「なんか……マズいの?」
(゚、゚iiiトソン「潜伏期間が非常に短く、しかも重症化しやすい……適切な治療を行わなければ致死率もはね上がります」
(´<_`iii)「ヤバくね、俺達西から東へ大移動してきたんだぞ……?」
(゚、゚iiiトソン「そう!そこなのです!そこがこのウイルスの一番の特徴で"トロイアワクチン接種者のみ"に特殊な症状が出るのです!」
(iii ´_ゝ`)「……」
(´<_`iii)「えーっと……つまりだな……俺達の感染したウイルスってのは普段は無害だけど、トロイア病の予防接種を受けたヤツには有害って事だ……OK?」
(゚、゚iiiトソン「間違いありません」
(iii ´_ゝ`)「こういう時、頭良いと便利だよな〜」
(゚、゚トソン「まさか警察から追われる事になるなんて……トラブルに巻き込んでしまって、本当にごめんなさい……」
(´<_` )「いや、警察に関しては俺達、自業自得な部分あるから」
(゚、゚トソン「助けていただいた事は本当に感謝しています。センターに行けばハイン先生と連絡が取れるので、もう少し協力して貰えないでしょうか」
( ´_ゝ`)b「ウンウン!困ってる人を放っておけないしな!」
d(´<_` )「そうそう!その代わり、隠し事はナシだゾ!」
(^ー^*トソン「もちろんです!ほんとうにありがとう!」
目的を見つけた俺達は、再び歩き出した。
そうさ、目的はいつだって堪え忍ぶ力となり、歴史を動かしてきたんだ。たとえそれがどんな内容でもな。
-
──女はトソン・トムラと名乗った。
ランジアの製薬会社、ハイド製薬に勤めている薬剤師なんだと。
ぶっちゃけ、それは途中から知ってた。防護衣にでかでかと印字してあったからな。
( ´_ゝ`)「試験ウイルス?」
(゚、゚トソン「ハインリッヒ先生からのリクエストです。私はワクチンを開発していました。i3は培養細胞での保存・増殖性に問題があり、プラント工場を使用していました。受精卵だと問題ないのですが……」
俺達が感染したのは、ハイド製薬が秘密裏に開発していた試験ウイルスで、曰く、増殖機構の解明や、ワクチンの開発に使用するらしい……いいねいいね、キナくせぇ臭いがプンプンする。
それはまことにけっこうだが、ヤベーもんは持ち歩くなよ……迷惑な……
(゚、゚iiiトソン「それでビツ工場を視察する予定だったのです。でもヘンな女性に襲われて……私とっさに──」
(´<_`;)「……その女……ゴホゴホ」
(iii ´_ゝ`)「それだけ持って逃げたんだ、よく無事だったね」
⊂(゚、゚iiiトソン「無事じゃないですよ!すっごく怖かったです!親指を下にして、こう!手を後ろに……でも途中で煙がボワーーーってなって、女の人がいなくなって……」
(iii ´_ゝ`)「う〜わ〜、ひどい目にあったね」
(゚、゚iiiトソン「そうなんです!でも工場は……残ったサンプルはこれだけです」
……じめじめした悪寒が背中に張り付いて離れない……喉を、少し動かすだけで、熱い痛みが頭に響く……
つーかよくコイツら元気に喋れるな、俺みたいな繊細な人間は無力だ。
見たところ、知能指数が高いほど効果があるような……悲劇的だ。
-
イ从゚ ー゚ノi、 支援
-
やがて旧下水道は都市水道に合流した。汚水がかくはんされ、こうこうと流れていく。
目的地まではまだまだかかりそうだ。
せっかく暇なので状況を整理しよう。……悪寒を忘れる為にも。
よーし考えるぞ。
トソン・トムラは薬剤師で、殺人ウイルスの生産工場にいたら、謎の女に襲撃されて、どういう訳か警察からも追われている。
そして我々は生活を失い、命を狙われ、健康を脅かされている……と。
ムチャクチャだ。
ぶん殴る理由があっても、お行儀よくおててつなぐ理由なんてない。
特にi3ウイルス。
これ承知できるバカは、そもそも生きるのに向いてないだろ。
トソンと俺達を繋ぎ止めているのは、彼女の恩師だ。
ハイド製薬のトップ、ハインリッヒ・ハインヒル……
ハイド社は、あの世界を揺るがしたオワタ事件後、急成長した貧困諸国の象徴的存在だ。
医療品のみならず、市販薬まで売りさばき、ランジアの経済規模を9位まで押し上げたとも言われるハインヒル氏は、世界で雄飛している。
そんなハイド製薬の黒い噂は絶えない。
俺達がi3ウイルスの話を知って、ニヤッとするくらいには。
病気はドル箱だ。金をもてあました人間は、笑えるくらい金払いが良いし、誰かを殺したい人に売ってもいい。
……ハイド製薬は、俺達がターゲットにしている会社だった。
トソンはハインヒルと繋がりがある。
ハイドはぜったい攻略したい……でなきゃ大赤字だ。
ここはルビコン川の向こう岸、賽は投げられた。
-
(゚、゚トソン「女の人は、ハイン先生の居場所を知りたがってました、警察の人はi3とあと……」
( ´_ゝ`)「女の人はわからないけど、警察は密告があったんだろうね」
(゚、゚iiiトソン「密告?」
(iii ´_ゝ`)「そう、心当たりない?バレたらマズい話」
(゚、゚iiiトソン「……ウイルスは企業秘密であって違法性はないですよ」
( ´_ゝ`)「ランジアではね。他に何か、恨みを買うような……」
煎じるように話を聞いていた兄者の、声の響きが変わったように思う。
そうとも、ここからが問題なんだよ。
憎悪と羨望と嫉妬に焦がされる、ハイド社の秘密を、誰よりも早く嗅ぎつけた存在がいる
ランジア警察をけしかけたのはソイツだ。
しかもソイツは、恐ろしくリッチで必死らしい。
基本、賄賂でなんでもやってくれるランジア警察だが、それでもPagまで使わせてるのは初めて見た……
しかも、最初にトソンを襲った女と、そこにケムリを放った人物もいる。
会社が襲撃されるのは、そこまで珍しい事じゃない……
だからあんまり気にしてなかったが、ハインヒル氏の居場所を知りたがっていたのなら、話は別。間違いなく関係者だろう。
警察サイドに関して、ひとつラッキーなのは、怨恨の可能性が低い事。
国際警察にチクらない辺り、相手はあくまでウイルス狙いらしい。
同業者かマフィアか宗教か……もしかしたらヨソの国かもな。
どうだこれ?中々いい線いってるんじゃないか?
(゚ ゚トソン「ハイン先生は良い人です」
(゚ ゚トソン「先生は、私たちにお金と未来と、チャンスをくれました。ヴァルデューリ、誰もくれなかったチャンスを……」
(゚ ゚トソン「ハイン先生は、どんな国よりすばらしい方です」
-
(゚ー゚トソン「あなた達も、本当にすばらしいですね」
(; ´_ゝ`)「ど、ども……」
猫がヘビをもてあそぶみたいに、あれこれ聞きほじっていた兄者がひるんだ。
どうもこの女、ハインヒル氏の事になると不気味ほど熱心になるようだ。
ただでさえ悪い調子が、ますます悪くなっちまう……誰かに似てる気がするんだが……思い出せない。
(゚、゚トソン「だって、ちゃんとトロイアの予防接種をしています。せっかくトロイアのワクチンができたのに、この国の人達、誰も受けません。あんな恐ろしい寄生虫症……」
(iii ´_ゝ`)「………………予防接種はランジア衛生協会から貰った。なぁ弟者?でも詳しい事はわからないな。俺は忘れっぽいタチだから」
………………俺は正直、この女が、あの悪名高いハイド製薬に勤務する人間だとは、今でもちょっと信じがたい。なぜなら──
(゚、゚iiiトソン「それに、下水にも詳しいです」
(iii ´_ゝ`)「うん、前に何回か来た事があるんだ」
(゚、゚iiiトソン「ランジアのお弁当屋さんって、思ったよりずーっと色んな所に配達するんですね」
(iii ´_ゝ`)「エヘヘ」
──なぜなら世間知らずが過ぎるからだ!
見知らぬ男(しかも二人組)と行動したり、ランジア警察を説得しようとしたり、……トロイア病の予防接種を"やらない"だとか……少なくとも俺の知り合いには、好きでトロイアに罹患したヤツはいないぞ。
それに……ちとしゃべりすぎだ。
他人だからありがたいが、味方だったらゾッとする。
どうなってんだ世界の教育水準。大丈夫かハイド製薬。
……彼女の中の、透明で暗うつな何かがそうさせているのかもしれない……頭が、痛い。
-
便秘症の腸みたいな管をクネクネと追いかけ、俺達はついに廃ビルのボイラー室に出た。
二人と違って、底なし便所から抜け出せてサイコー!とはいかなかったけどな。なにせ俺の鼻はずーっと詰まっている。
それでもやっとたどり着いた研究センターは、宮殿みたいに感じたと思う。
俺達は職員玄関から侵入したらしい。今はメインホールにいるようだった。思い出せないのだ。後部座席でまどろんでいるみたいに、ぽとり、ぽとりと意識が戻ってくる。
(゚、゚トソン「私の家は臨床検査機器を開発をしていました。バイオ医薬品や、薬剤充てん用シリンジや……」
( ´_ゝ`)「継がないの?」
(゚、゚トソン「継げないのです。会社はオワタ社の倒産事件の余波に巻き込まれました」
(; ´_ゝ`)「あっ……ホント……」
(゚、゚トソン「両親は努力していますけど……見通しは立っていません。きっと疲れがたまってるんです、すぐ良くなります」
( ´_ゝ`)「そっか……でも君の活躍を見たら、ご両親も安心するんじゃない?」
(゚、゚iiiトソン「両親は私がハイドに務める事を承知しないです。絶対に」
(`ー゚iiiトソン「二人は自国の産業を守ろうとしているんですね。自分達の暮らしは自分達で支えるべきだと」
乾いた休日の朝日が窓からさし込み、無人の廊下を導いている。
壁のボードマップには、ハイド社が海外に置いている製造事業体が、写真つきで説明されていた。
写真には、必ず一人の中年女性が写っている。
優しさのきざまれたほほえみ。
冬に挑むキダチダリアのように、しゃんと伸びた背。
ランジア人に多い赤毛も、やはり上品な年の重ね方をしている。
そんな、広告とまったく変わらないハインヒル氏の隣に、トソンがいた。
(iii ´_ゝ`)「君はナルジェーから?」
(-、-iiiトソン「ナルジェーは良い国です。ランジアも、良い国です。オワタ社も、良い会社でした……」
(゚、゚iiiトソン「しかしオワタ事件をきっかけに、ナルジェーの有名な大手企業が次々と倒産しているのは事実です。国の医療システムも、不十分です」
(^ー^*トソン「当社は、ランジアを貧困から救いました。私は、この働きが世界を導くと信じています。ランジアだけじゃなく、ナルジェーも」
-
( ´_ゝ`)「はは……そうだな、ランジアはよくやった……本当に、よく持ち直した……でもここより西は酷かった」
(゚、゚iiiトソン「ランジアより西というと、ミカオとかキューチャとかですか?」
(iii ´_ゝ)「というかリーベシアと戦った国だな、おい弟者、パテくれ」
(´<_`iii)「……あ?あぁ……」
俺達は、とある部屋にたどり着いていた。
トソンが、カードかざしてもビクともしない。
中で、恐ろしい怪物を封じ込めている、とでも言わんばかりだ。
タバコ缶を投げる。
兄者は、尻ポケットをまさぐりながらタバコ缶を受けとると、トソンを押し退けドアノブに覆い被さった。
丸めた背中から、火薬の匂いが漂い始める。
( )「地下にいるんだ、アナウサギみたいにな。そんで、通路は狭くて子供しか出入りできない。すばしこいヤツが穴から出て、必要なものをとってくる」
( )「大人は言う。リーベシア兵は狂暴冷血、遊び殺してくるから、けして見つかるな。捕まる前に死ねってね」
( )「でも、優しいんだよ?キャンディーとかくれてな、それを親にやると喜ぶんだ。もちろん出所は誰にも言わない」
( )「裏切り者が、兄弟や友達に隠れてお菓子を貰いに行く。次に空気洗浄剤とか、虫よけとかも貰えるようになる……まぁ虫よけじゃなかったんだけどさ」
(iii ´_ゝ)「そして帰ってきた子供達は地獄を見る。こうして、リーベシア兵はアリの巣をせん滅させていきましたとさ……ほい、開いたぞ」
……なんか、兄者の具合もそうとう悪そうだ。
焦げたノブを掴んで中に入る。
壊れてしまったので、鍵はもう締められなかった。
-
トソンの研究室は嘆かわしい惨状だった。
室というか、巣だ、巣。
ハエの大群みたいにくっついてる資料や論文が、コンクリートに敷かれた寝袋にまで侵食している。
そこの使い込まれた社食のトレイとか……部屋と部屋しか移動してないんじゃないか?って感じだ。せっかく外国に来たってのに。
なんか俺は、朝一の電車に乗るって理由で、トウキョーのサラリーマンたちがホームレスの隣で寝てたのを思い出した。
デスクに写真が伏せられている。手にとってホコリを拭くと、まるまっちい感じの夫婦が三人娘と共に笑っていた。
その横に、ナルジェ語で書かれた治療内容報告書と、手術の同意書が山積みにされている。
両親に宛てた手紙が、ゴミ箱に詰まっているのをぼんやり眺めていると、背を叩かれた。
(iii ´_ゝ`)「ほれ弟者、お前一番最初にやれ、血管に気をつけろよ」
写真をもとに戻し、注射器を受け取る。
……全てがうまくいってるように見えるなら、絶対に何かを見落としているハズなんだ。
最後に兄者が抗ウイルス剤を使おうとした、その時だった。
ドドンと、脳天にカミナリでも落ちたような爆音がとどろいた!
すさまじい衝撃波が木材とモルタルと、ガラス片と俺達を巻きあげる!
1080度の高速スピンが体に起き、全く方向がわからなくなり、半分しか残っていない壁が見えた。
ガレキの嵐を縫って、パトカーのサイレンが躍りあがらんばかりに鳴りだすと、やはり自分はバカだと知った。
── ──────── ──
──── ────
-
──── ────
── ──────── ──
────── ──
……波打つ砂塵のむこうで、ガラスを踏む音が聞こえる
足から胸まで、薬品棚の下だ
足音は何回か通りすぎたが、ついに俺を引きずり出し、ボディバッグに乗せた
二人はすでにそこにいた
どちらもピクリとも動かない
腕に違和感がある
ずいぶんこまごまと、体を調べられている
一人が覗きこむ
防護衣越しでもわかる、燃えるような金……終わりだと思った
-
―22
── ──────── ──
────── ──
ノパ⊿゚)「……」
寒い。
身体の感覚が戻ってきた……が、動かない。
腕が背中にくっついている。
目に、映るものに色はついている。音は鼓膜まで届いている。臭いがわかる。唇をそっと�筋んでみると、痛かった。
(´<_` )「……おっと」
ノパ⊿゚)「おはよう」
(´<_` )「ども」
後ろには手錠とコンクリ壁、横でトソンが死んだ犬みたいにぐったりしている。そんで前には……赤毛の女。
短く切り揃えた髪の下で、目をナイフのように光らせている。
ちなみに下は、錆びたガス缶がゴロゴロ散らかっていた。
ったく、昼さがりの空家のもの寂しさったらない。
過去の人影が、あちこちにたたずんでいる気がして、天井から光がさしてるのに、冷気がさむざむとこたえて来る。
ノパ⊿゚)「さ、協力してくれる?まずは名前から教えて」
(´<_` )「ウゥゥ……女の部屋にしちゃ清潔だな。アンタ刑務所にいたことない?」
俺は口笛を吹いて挑発したが、ガラスみたいに無視された。
状況がわからん。
だが、たしかな事もある。この女は警察関係者だ。
この、親指を下にして腕をまわすやり方は、ランジア警察の由緒ある逮捕術なんだ。
いや、嫌味じゃなくてマジで。
ノパ⊿゚)「どちらか知らないが、兄者弟者、なんて名乗らないで欲しい。おふざけできる状況じゃないのはわかるだろう?知ってる事をすべて話しなさい」
(´<_` )「イヤだな、俺より俺の事知ってるみたいじゃないか。俺がうかれて話したくなるような事、何か知らないのか?」
女は表情を動かさないまま、眼光をゆっくりと俺に突きつけた。
ノパ ゚)「何から知りたい?」
-
(´<_` )「アンタの名前」
軽はずみな話題が飛びそうになったが、ギリギリで飲み込んで、くそつまらない質問で返した。
こういう時、口がうまいと便利なんだがなぁ……まったく、兄者はどこ行っちまったんだ?
ノパ⊿゚)「ヒルトルート」
(´<_` )「ヒルトルート……ヒルトルートさんって、あのギャングを殺しまくってるヒルトルートさん?」
ノパ⊿゚)「そうだね、ヒートでいい」
(´<_` )「俺達なんでここにいるの?」
ノパ⊿゚)「私が助けたから。警察はあなた達を、こなごなにしようとしていた。センターごとね」
(´<_` )「どのくらい寝てた?」
ノパ⊿゚)「3時間くらい……いや、あなたの回復力には恐れ入ったよ」
(´<_` )「そりゃどうも、アンタの質問に答えたら俺はどうなるんだ?どうしたら自由にしてくれるんだ?」
ノパ⊿゚)「もちろん解放する、命の有無は返答しだい。さぁ次は私の番……ハインヒルの居場所はどこだ」
(´<_` )「社長は知らんが、社員ならここにいるぞ」
俺は質問の切っ先をやんわりとスライドさせた。
相手の動機が見えない以上、嘘をつくのは危険だ。
ヒートはため息をつくと、トソンを起こした。
( 、 トソン「うう……」
ノパ⊿゚)「やぁ、また会ったな。トムラ」
(゚Д ゚"トソン「ヒッ!ラッツ!?ラゲリータ!」
トソンはヒートと強烈に目が合うと、ミミズみたいに暴れだした。
思ったより元気そうだ。
ノパ⊿゚)「落ち着けよ」
(´<_` )「よっトソン、知り合いか?」
ノパ⊿゚)「ビツ工場で、トムラに話を聞いてたんだ。今みたいにね、あの時は邪魔が入ったが……おい、いい加減にしろ!ハインヒルの居場所を言え!」
-
(゚、゚#トソン「知らないっ!知ってたって、言うもんかっ!」
ノパ⊿゚)「いい気なもんだよまったく……邪悪な女め」
(´<_` )「そりゃ言いすぎだ、トソンはな、アホなんだ。ちょっぴりな」
ノパ⊿゚)「私が言ったのはハインヒルの方だよ」
(゚、゚#トソン「バラッツェ!ハイン先生を悪く言う!やめろ!」
(゚、゚#トソン「ハイン先生、約束してくれた!オワタ事件でボロボロのナルジェー、雇用も医療も支えるって言ってた!恩返しって!」
ノパ⊿゚)「素敵なご挨拶をどうも。だが挨拶以外ではたいてい最低な女だ」
( 、 #トソン「────!」
(´<_` )「どこら辺が?俺にはすんばらすぃー女性に思えるんだが?」
ヒートがほほえんだ。
興奮を口元ににじませて、眉根をじっとゆがめた。
ノハ ー )「あのね、あなた達を殺そうとしたのはハインヒルだ……ハイエナ警察をけしかけたのは、ハインリッヒ・ハインヒルなんだよ」
-
(゚、゚#トソン「ルックリュー!うそ!」
(´<_`;)「馬鹿馬鹿、相手はサンプルをご所望だ。ハインヒルが開発してたんだぞ?」
ノハ ゚ー゚)「そりゃあ欲しがるだろうね!偽装していたウイルスのプラント工場を、私が焼いてしまったのだから!」
(´<_`;)「次々と工場が爆発してたのはお前のせいかよ……」
ノハ ゚ー゚)「あの女は犯人探しに、警察を買った……今のマヌケデブな警察が、この私を捕らえられる訳がないのにな……」
(´<_` )「……トソン。ヒートから逃げるときにケムリが出たと言っていたな?何色だった?」
(゚、゚トソン「だから黄色ですってば!ボワーーーッて!」
(´<_`;)「あっ……そう……」
ノパ⊿゚)「あの女は今、新しい拠点を巨大貨物船に作っている……内部にネズミがいると思ったのか、ジョルジュという男を雇って、関係者の始末も着々と進めている……」
ノハ#゚⊿゚)「あいつは!ウイルスを増やしてばらまこうとしてるんだ!」
(´<_` )「その話。信じる証拠は?」
ノパ⊿゚)「ない。信じてくれとしか言えないね」
(´<_`;)「う〜〜む……」
信憑性はさておき、リッチで殺意満々の人間がハインヒルだけなら嬉しい話だ。
敵は少ない方がいい!絶対いい!
ヒートが嘘をついてなければありがたい……
トソンがなんの交渉価値もない、ハズレくじだったのは、なかなか残念だが。
重要人物かと思ってたのに……ハイド社の切り捨て対象だったなんてな。
悪巧みってのはやっぱ、色んな方面で危険が伴う、技術も費用も時間もかかる……ヘタすりゃ大損だ。
ランジアだとウイルスの合成は合法。
しかもクソみたいな治安だから、事故に見せかけて関係者を自由に殺せる。
培養細胞と相性の悪いi3ウイルス……
俺は今、兄者がどこにいるかわかる気がした。
(゚、゚#トソン「リウジー!でたらめ!暮らしなんとかする、みんな言う、ナルジェ政府も言ってる!でも行動してるのハイン先生だけ!」
ノハ#゚⊿゚)「暮らし?暮らしだって!?アイツのせいでランジアはメチャクチャだ!」
-
ノハ#゚⊿゚)「ランジアは確かに豊かになったな、でもそれはデータ上の話だ!ランジアの惨めな人間は職を失い、ハインヒルと、腐れ警察と、あんたらみたいな外人が富を握っただけだ!」
ノパ⊿゚)「効きもしない薬を安く売ったせいで、麻薬の抽出まで流行りだして……ハイドが飢餓状態のトロイア病患者を、一人でも減らしたかって話だ」
(゚、゚#トソン「トロイアワクチン、作った!」
ノハ# ⊿ )「あんなモン使えるのは金持ちだけだろうが!!定価くらい知っておけ!」
(´<_` )「しかたないだろ。近年のナルジェーは自国の技術力を取り戻すのに忙しかったんだから。ランジアに渡ってからトソンはカンヅメだったし……適当な常識を育むヒマなんて無かったんだ。うむ」
ノパ⊿゚)「それじゃ、ハイドを失ったらあの女には今何も残らないって事?ひっでー事言うなぁ」
(゚、゚#トソン「私信じない!あなたみたいな知らない人より、知ってる人信じる!さ、協力して逃げましょ!えーと……」
(´<_` )「弟者ね」
(゚、゚#トソン「逃げましょう、弟者さん!」
ノハ#゚⊿゚)「名前も知らない男を信じるってふざけてんのか、お前は。都合の良い事だけを信じたいだけだろ」
(´<_`;)「偉そうに……俺がどっちかわからんクセに……」
ノパ⊿゚)「弟者ねぇ……クヴァルダ・ビャチ・ザヴィ?あなた・の・名前・は?」
(´<_` )「双子は母親のオマンコに先に入った方が弟、先に出てきた方が兄になるんだぜ、知らなかった?詳しくは市役所に聞け」
ノパ⊿゚)「ブルーダー兄弟の日替り配食……ハイド社での売上は?はす向かいの印刷会社の方がよっぽど儲かりそうなのに、なぜハイド支社に新サービスを持ちかけたんだ?」
(´<_` )「ハイド社は金持ち。アル印刷はボチボチ。それだけ。宣伝しとくと、昨日兄者と試食したのはスンゲェうまかった。超オススメ」
ノパ⊿゚)「墜落事故をきっかけに倒産したオワタ社の事件……謎が多いよな?」
ノパ⊿゚)「なんで最新鋭の運送機が墜落したんだろう?しかも運送機なのに、何も積んでなかったんだ。多くの社員の、シークレットカードが消えていたのも不気味だね」
-
(´<_` )「なるほどそれは興味深い……でも何の役にも立たちそうにないな」
ノハ ゚ー゚)「……今はね」
また、ヒートがほほえんだ。
今度はどこか幼いような、夢見るような笑みだった。
ノパ⊿゚)「私はね、警察官だったんだ。まだランジア警察が誇り高かった頃」
ノパ⊿゚)「疑問だった……どんなに邪悪でも、どんなに苦労して捕まえても、お金を払えば出てこれる。払えなくても50年我慢すれば良い……何度も何度も、何度も何度も、同じ事件の繰り返し……」
(´<_` )「ハインヒルを殺すのか」
ノパ⊿゚)「伝えたでしょう?あなたの命は返答しだい……奪いたいのも、奪ったのも一人じゃない。さあ、教えて?他に仲間はいないの?あなたのバックは誰なの?」
( へ トソン「……」
(´<_`;)「アンタは何か、俺達をかんちがいしてるらしい。オワタ事件だかなんだか知らないが、本当に無関係なんだ。これも、信じてくれとしか言えないが……」
(´<_`;)「ハイド社の事も、アンタの事も俺には信じがたい。だからハインヒルがどんな人間なのか、実際に会って確かめに行こう」
ノパ⊿゚)「場所がわからない。船の動きが掴めないんだ。あの女は船にプラント拠点を移そうとしている……完全に移されたら、本当に手も足もでなくなる!」
(´<_` )「乗り込もうぜ?協力する。それで俺の活躍を見て、殺すかどうか決めてほしい」
ノハ#゚⊿゚)「だからその居場所がわからんって話だろうが!」
(´<_` )「ところがどっこい……ちょい、靴底はずしてみ?」
血で固まった制服をバリバリ鳴らしながら、足を持ち上げると、ヒートはあからさまに嫌そうな顔をした。
,_
(´<_` )「確かに、このにおいはちとキツいな……だが文句は下水監理局に言ってくれ。自由にしてくれたら自分でやるんだが……安心しろ、俺は逃げん。ハインヒル氏に預けものがある」
_,
ノパ⊿゚)「……」
はー、しんどかった!ヒートの前でこれ見よがしに肩をまわしてやる。覚えてろよこの野郎。
そんで靴底の中は……ヨシヨシ壊れてないな。
_,
ノパ⊿゚)「……ナニソレ」
(´<_` )「ブルーダー兄弟の日替り配食の新メニュー、おひとついかが?」
日が落ちてすっかり暗くなった室内に、ただそれだけ。発信器の受信画面だけが、ひとつ灯った。
-
ノパ⊿゚)「決まりだな」
話がまとまってからの行動は早かった。
本当に時間がないからな。発信器のバッテリーが持つのは、48時間……俺達が発信器を試飲したのは昨日の朝。まだ大丈夫だろう、たぶん。胃洗浄とかしてなければ。
( 、 トソン「……私も行きます」
(´<_` )「そんな必要ない、俺が見てきてやるから。ナルジェー行きの船でコウモリみたいにじっとしとけ。このおっかない女の気が変わる前にな……」
ノパ⊿゚)「いやいやいや、なんでこいつも解放される事になってるの?」
(´<_` )「あれま!トソン、残念だがここでお別れみたいだ……ま、タイミングの問題だ。予定なら、もう2回は死んでる……運命なんてそんなモンさ」
(゚、゚トソン「ウイルス系のセキュリティは厳重です。指紋認証の他に、光彩認証があります。指紋認証は指を切り取れば良いでしょうが、光彩認証は難しいですよ」
ノパ⊿゚)「削除されてるでしょ」
(゚、゚トソン「私は殺された人間です。殺した人間の心配はしていないと思います」
ノパ⊿゚)「目的は?」
(゚、゚トソン「ハイン先生がどんな人間なのか、もう一度会って確かめたい」
(´<_` )「どう思います?ボス?俺は反対」
ノパ⊿゚)「誰がボスだブッ殺すぞ。後ろにヴァンが止めてある、早く行け」
(´<_`;)「えーっ!」
ノパ⊿゚)「私が運転する、あなたは助手S──」
(´<_` )「いや、後ろで見張りをやる。最悪、戦闘になった時にやりやすい」
ノパ⊿゚)「わかった、後ろに乗れ」
d(´<_` )「まかせろ」
-
窓から差す軽快な朝日を顔いっぱいに浴びる……
いやぁ、実によく寝た!ほとんど全快だ!
見ると、どこかの駐車場にいるらしい、こまやかな砂に海の気配を感じる、運転席の方からはおいしそうな匂い……上々!
(´<_` )「諸君!いいもん食ってるな?ベイクドビーンズとトーストの組み合わせは冷えてても最高!で、俺の分はどこだ?」
ノパ⊿゚)「……」(゚、゚トソン
(´<_` )「腹ペコなんだが」
ノパ⊿゚)「……」(゚、゚トソン
(´<_` )「……」
俺は内ポケットに残っていたクッキーでがまんすることにした。
二人はクッキーを、まるでゴキブリか何かの様に凝視している。とーってもおいしいのに。
脳ミソに栄養補給したら作戦会議といこう!
で、できあがった作戦がコレだ。
1、適当な人を襲撃し、成りすまし、侵入し
2、抗ウイルス剤を回収し、兄者を回収し、ハインヒル氏と面談する
(´<_` )「以上だ!」
ノパ⊿゚)「バカじゃないのか」
(´<_` )「そう思うだろ?しかしバカにすることなかれ……いいから見てろ」
コンテナの影でストレッチをしながら答える。
それから俺はコンテナをよじ登り、毒蛇のように伏せて最初のチャンスを待った。
1台目の車……ボンベ運搬車。よそう、三人も乗れないし、後がめんどくさそうだ
2台目の車……機材のトラック。オッケー!行くぞ!……と思ったら後ろからもう1台来てた、ちぇっ。
3、4台目も同じような感じ。……二人の視線が痛くなってくる……せっかちめ。
5台目……冷蔵車。もうこれでいいや。
血と、ヘドロでどろどろの男がルーフに飛びうつり、膝を固めてドアガラスをぶち破った!……トラックはしばらく蛇行し……停車する。
やがてコンテナのところまでバックしてくると、中から作業着姿の男が手招きした。
ノパ⊿゚)「スマートじゃない」
(´<_` )「……」
-
助手席にトソンを、冷蔵庫にはヒートとドライバーを入れた。
ヒートにはドライバーが目を覚ました時の、万が一だと力説しておいた……
トラックは、いつも通りに貨物船へ乗り込んだと思う。
待機場みたいなとこに通されると、バインダーを持った誘導員が眠たそうに近づいてきた。
( ´ー`)「えーっと、はい、誘導番号は?」
(´<_` )「はいはい、ちょいとお待ちを……えっーと、34っすね」
( ´ー`)「34……34……はいよ。品目は……見てもわからないし、めんどくさいし口頭で教えてください」
(´<_`;)「品目っすか……いっぱいあるんで、ちょっと覚えてないっす」
( ´ー`)「ですよねー、はぁ……じゃ、ちょっと確認させてもらいますね」
(´<_`;)「あの──」
(゚、゚トソン「私が覚えてます。製剤用血液バッグ856個、400mL血液バッグ216個、600mL血液バッグ156個、2単位バッグ900個、採血チューブ66……」
(;´ー`)「あーえー、もう大丈夫です。オッケーです」
誘導員はバインダーに挟んだ紙にチェックをつけると、トラックを搬入エリアへ誘導した。
(´<_`;)「ナイスだ!よくごまかした!」
(゚、゚トソン「暗記するのは得意なんです」
(´<_` )「バカいえ、見たのは一瞬だろ」
ちょっと奥まったところで、壁に隠れるように駐車する。冷蔵庫を開けると、中でヒートが鼻水たらして震えていた。
ヘヘ、ざまぁみろ。
冷蔵搬入室に次々と積み重ねていく……製剤用血液バッグ100個入りの箱が8、400mL血液バッグ200個の箱、600mL血液バッグ50個入りの箱が3個、バラ品56、バラ品16個、バラ品6個……採血チューブ……
物品をしげしげ数えながら次のチャンスを待つ。
やがて、搬入室の扉の向こうからペチャクチャとおしゃべりする声が近づいてきた。
現れたのは防護服を纏った職員だ。
防護服は頭から爪先まですっぽりとおおっている。人数は二人……いいぞ、悪くない。
-
( [ ])「……ん?おい君、そこで何してる」
( [ ])「早く次の仕事に行きなさい」
(´<_`;)「すんません……近くのコンビニのトイレが壊れてて……ちょっと貸してもらえませんかね?」
俺がトイレに案内してもらってから、15分後くらいかな……扉から防護服を着た人物が、ダストカートを押して現れ、冷蔵トラックに乗り込んだ。
そして冷蔵トラックの中で、防護服を着た人物は二人に増え、ダストカートはずっしりと重くなった。
ドライバーを引きずり出し、一番重そうな金属タンクを、少しへこませてトラックとドライバーの間に寝かせておく。
([ ] )「これぞ、まさしく、事故なのだ」
【 】「……本当にこれで大丈夫なんですか?」
([ ] )「突然の事だったし、夢みたいなもんさ」
船内には独特の暗さが漂っていた。長い廊下がしらじらと照らされ、新しい施設なのにも関わらず、古い病院のような無情さがある。
強い消毒液のにおいが、生き物の気配を消してしまったようだ。
天井には監視カメラが、まるまるしたクモみたいにくっついている。
( [ ])「で、どうする?」
([ ] )「言っただろ、兄者か抗ウイルス剤が先だ。ケンカしにきた以上、味方は多い方が良い。ハインヒルと面談して、ハグして手土産もらって、エントランスまで見送ってもらうつもりなら別だが」
( [ ])「わかったよ、抗ウイルス剤から行きましょう。トムラ、心当たりはないの?」
【 】「ウイルス剤は冷所保存になりますので、ヒントにしてください。i3ウイルスは危ないので、下層に隔離されているのでは?」
( [ ])「冷所、下層ねぇ……手分けしましょうか?」
([ ] )「ダメ、絶対ダメ」
( [ ])「なんで?」
([ ] )「連絡手段がないのに無謀すぎる、発信器なんてまだ──」
('、`#川「ちょっとあなた達!何してるの?」
( ; [ ])「はぃぃぃ!」([ ] ;)
-
俺達に声をかけたのは、背の高い女だった。
小鳥のクチバシみたいな、とがったマスクをつけている。
えっ嘘だろもうバレたのか?不吉な感情が渦を巻く。
('、`#川「あなた達はそれを持って、散歩してるのかしら?調剤室のダストボックスを早く何とかして、もう溢れそうなのよ!」
([ ]; )「申し訳ありません……」
('、`;川「そ、そんなに怯えなくたって良いじゃない……ごめんなさいね。運ばれた検体患者につきっきりで、ちょっと疲れてて……タカラ、フサ、こっちよ」
……どうやらバレてないらしい。
もし困ったら、この女もダストカートに入れよう。
俺達は慎重に女の後をついて行った。
('、`*川「いやぁ、それにしてもすごい規模よね〜!迷子になるのもわかる!わかる!」
( [ ])「はぁ……」
('、`*川「てか、一昨日の事件の真相聞いた?ビツ工場に押し入った二人組の男が、ウチの社員を誘拐して、身代金を交渉しようしたやつ!知ってる?」
( [ ])「まぁ……」
('、`*川「私聞いちゃったんだぁ〜!実はもう一人共犯がいたんだって、女の!んで、今度はセンターに侵入した時に仲間割れして、殺しちゃったんだって。それがまだ捕まってないの、怖いね〜」
世間ではそうなっているのか、知らなかった。
この感じだと、すべてを知っているのはほんの一部の人間らしいな。
([ ] )「なんで工場たたんで、船に移したんでしょうね」
('、`*川「そんなの私達の考える事じゃないでしょう〜?私達は自分たちの仕事だけしてればいいのよ!」
-
俺達はついに調剤室へとたどり着いてしまった。
どうすんだコレ……
ヒートと女はダストカートに、ヤバそうなゴミを次々と放り込んでいる……大丈夫かアレ。
そろそろこの女もダストカートに入れようかと、考え始めたその時、俺は!見つけてしまったのだ……サーモスタットが入ったり切れたりしている冷蔵庫の、透明なガラスの向こうに、"i3ウイルス抗剤"とバッチリかかれたシリンジが鎮座しているのを!
超ラッキー!これがi3ウイルス抗剤じゃなかったら一体何だって言うんだ?
ようやく運が回ってきたな。俺は素早く冷蔵庫に手を伸ばし──
……全てがうまくいってるように見えるなら、絶対に何かを見落としているハズなんだ。
_
(;゚∀゚)「あ〜、ここに侵入者がいるらしいんだが……誰かいるか?」
あの男が入り口にいた。
後ろに大勢の警備員、ちゃんと銃を持っている。
調剤室の時が止まる。
続けてパンイチの男達が部屋に駆け込んできた。
ミ,,゚Д゚彡σ「あっ、アイツです!あの防護服、間違いないです!」
( ,,^Д^)「ペニさーん!危ないですよー!」
('、`*川「あれ、タカラ、フサ……えっ……あらっ……」
( # [ ])「てんめぇ!あいつら出て来てんじゃねぇか!何が大丈夫だ!ふざけやがって」
([ ] )「あの縛りを抜けるとは、見事なり!敵ながらあっぱれ!」
( # [ ])「笑ってる場合か?少しは弁護しろ」
_
( ゚∀゚)「俺が見つけて解いてやったんだ……おい、顔を見せな」
もう、カッコつけてる場合じゃなかった。
俺はリクエストに答えて、防護服の頭部プロテクタを外した……
-
(゚、゚*川「いやぁぁぁぁぁぁっ!!」
(´<_`;)「うわっ、びっくりした……」
(゚、゚*川「やだ!近よらないで!」
(゚、゚*川「こいつ!昨日運ばれてきたウイルス患者よ!みんな逃げて!感染するわよ!」
そういや兄者と同じ顔だったな、こりゃうっかり。
リクエストの思わぬ効果で大パニックが起こり、その場にいた人間のほとんどが、驚いたノウサギみたいに飛び出して行ってしまった。
ノパ⊿゚)「我々も続こう」
さて、ここから駆け足だ。
俺はダストカートに腕を突っ込むと、目を白黒させているトソンを掴み、出口へ突進した!
廊下へ出る、右か左か……
ノパ⊿゚)「右だ「」左だ」(´<_` )
ノハ#゚⊿゚)「いや右だろ」
(´<_`#)「右はもと来た道だろが、このマヌケ」
ノハ#゚⊿゚)「マヌケはそっち、あの男達は左から来た」
(゚、゚;トソン「後ろ!後ろ!」
俺は衝撃を腹で受けてふっ飛び、コントロールを失ったまま硬い床につっこんだ。
何が起こったのか、しばらく理解できなかったが、逃げ出す人に踏みつぶされていた金髪の男が、パンチを放ってきたのだった。
_
( ゚∀゚)「すっげぇ!」
-
_
( ゚∀゚)「お前、寝てる方の野郎じゃないな?トムラも、生きてたんだ!」
銃声二発。
ノパ⊿゚)「嬉しいか?なら私に感謝するんだな、ジョルジュ!」
_
( ゚∀゚)「ヒルトルートか!なんてこった!ここは地獄にちがいない!」
( <_ )「右だヒート!」
重心を低くして金髪に突進する!相手が構え、銀の閃光を辛くもかわす!それでも俺は追撃の為に視界から逃がさないようにしているのになんかバタフライナイフが肉を割り裂く感覚が……
ノハ ⊿ ):;「って……てめぇ……」
(゚<_ ゚#)「右だってったろ!左右もわかんねのか!」
ノハ ⊿ ):;「避けるんじゃ……ないのかよ……」
確認する間もなく、アゴに一発良いのを喰らった……ちくしょう、いてぇ。
にじむ光の中に、カカトを振り下ろす影を見つけ、やみくもに床を転がって逃れようとする。
ノハ ⊿ )「右だッ!」
筋肉でふんばり、思い切り右へ飛ぶ!
どこかで放たれた弾丸が、俺の脇腹を鋭く切り裂いて壁をえぐった。
( <_ ;)「……この部屋で武器使うの禁止な」
(゚、゚;トソン「もしかして当たりました?……ごめんなさい」
_
(; ゚∀゚)「バカと銃……いいねぇ、この世で最もデンジャラスなコンビネーションだ」
どっちの弾かは知らないが、金髪の足元に血が滴っていた。顔色は良いので、あんまり期待はできなさそうだが。
-
_
( ゚∀゚)「俺はさ、殺しがしたくてハイドで仕事してるんだ、天職だよね」
_
( ゚∀゚)「でも、ランジア来てさぁ警察官も悪くないよな〜ってさ」
ノハ#゚⊿゚)「覚悟おぉぉぉぉぉ!!!」
ヒートと金髪がやりあっている間、俺は床でナメクジのように移動していた、細かな振動が大勢の人間が近づいてくるのを伝えている。
(´<_`;)「よせ、トソン」
(゚、゚;トソン「弟者さん、でも……」
トソンは、ヒートからもらったらしい銃で、金髪の男を狙っていた。
二人のケンカは隣の部屋までもつれ込み、ステップを目まぐるしく入れ替えている。
ここに素人が発砲するとなると、悲劇の予感が。
(´<_` )「ヒートはつよい。アイツの相手は任せよう」
間もなく増援が到着したらしい。
弾丸が、スコールのように激しく撃ちつける音が聞こえてくる。
トソンをひっ掴み、階段の手すりを飛び降りる俺の背を、催涙ガスが追ってきた。
目指すは船底だ。
……船底でいいんだろうか?
-
受信端末を確認する。発信器のバッテリーはきれてしまったようだ。
この階段が、船底まで続いていれば良かったのだろうが中途半端なところで、行き止まってしまっている。
(゚、゚;トソン「他の、階段を探しましょう……こっちです……たぶん」
(´<_` )「来たことあるのか?」
(゚、゚;トソン「血液バッグを運びいれる時、搬入口の壁のマップを確認できました……あんまり自信ないですけど」
階段の吹き抜けからは銃声が弾け、催涙ガスが景気よく吹き出している。
それが船全体に響き渡り、ポップコーンみたいな賑やかさだ。
円い窓の向うでは、大きな波のしぶきが飛んでいる。
まだ小さいが、遠くでランジア警察のヘリコプターがハゲワシのように旋回しているのが見えた。
背後の階段から、ケムリの臭いが近づいてくる……俺は消火器を蹴って転がした。
(´<_` )「ハインヒルは逃げると思うか?」
(゚、゚トソン「えっ?」
(´<_` )「真っ先に逃げ出す人間だと思うか?富に対する執着は?情を感じる人間か?俺は会ったことがないからわからん」
( 、 トソン「私だって……もうわからないです」
(´<_` )「真実じゃなくて、感想の話だ。気軽に答えてくれ」
( 、 トソン「……」
(゚、゚トソン「逃げません」
(´<_` )「がめついんだな……了解」
(´<_` )「甲板まで行くのに使われそうなルートを教えてくれ」
俺は、エントランスホールを目指す事にした。
-
俺達が廊下を抜けきると、階段からわっと人が押し寄せてきた!
俺はほとんどまともに振り返らなかったが、角を曲がりきる、ほんの一瞬だけヤツらを睨んだ。
転がした消火器を撃ち抜くのには、その一瞬でこと足りる。
破裂音と、そこそこ手応えのある悲鳴が俺達を追い抜いて、防火シャッターを閉めるまでついてきた。
シャッターの向こうは居住系のエリアのようだが、あんなにいた関係者は一人も見当たらない。
エントランスホールに続く道を疾走していると、突然轟音がとどろいた、炸裂弾なんて比じゃない!
合金が大きく軋み、肺の中の空気までビリビリと振動している。
船体がちぎれたんじゃないかと思った。
しかし俺は、船体が揺れているにも関わらず、気づかないフリを貫き通し、通路をまっすぐ突っ走った。
最後の扉は自動ドアだった。
センサーなんか待ってられるか!弾を二発使い、最後の扉を突破して、俺達はついにエントランスホールへ躍り出る。
間に合ったか……?どうだ?
-
……誰もいない。遅かったか?
(゚、゚;トソン「あの〜、もしもし?」
それとも読みが外れたのか……
(゚、゚;トソン「弟者さ〜ん?あの、後ろの……」
チンと、間のぬけた音がきこえる。
驚いた俺は、しっぽを踏まれた猫のようにぶざまに転げてしまった。
なんだ、エレベーターか、驚かせやがって……
俺も大概だが、エレベーターの方も相当驚いていたらしい。
台車に乗せていた、棺おけみたいにばかでかい医療ポッドが、床に落っこちてけたたましい音を立てている。
しかし、ちょっと失礼じゃないか?人の顔を、まるで幽霊でも見たように……ん?
(´<_,` )「おい、アンタらは運がいい……ソイツを置いていけば、命だけは助けてやらんでもないぜ」
銃身を懐から覗かせる。効果はてきめんだった。
ポッドの中身を、おそるおそる確認する……オッシャー!アタリだ!
俺と同じ顔がもうひとつ、ヨダレをたらしてガーガー寝ていた。
(゚、゚トソン「なんか……大丈夫そうですね」
(´<_` )「ヨーシ!後は面接だけだ!とっとと開けるぞ!そーれ!あヨイショ!」
ところがこれが、ウンともスンとも言わない。
見ると鍵がかかっているらしい……
変にこじ開けて開かなくなっても困る、こんなん持って歩くのは絶対にゴメンだ。
なんてこった!ここまで来といて……!
-
次の手を考えようとしたその頭に、強烈な一撃がはじけた!
俺の体は手すりから叩き落とされ、今はエントランスの一階に無惨に伸びている……
このせいで耳がおかしくなってしまった、トソンの声と、サイテーな声がボヤけて聞こえる。
_
(メ゚∀゚)ノシ「よっ兄ちゃん!探したぜ!会いたかったんだぜ〜?」
( <_ ;)「アンタの感想って、なんでいっつもアホの詩みたいなの?」
_
(メ゚∀゚)「俺詩人になれるかな?」
ジョルジュが手すりから飛んだ。
ダガーナイフを手の中で、どう猛に光らせて落ちてくる。
体はまだしびれている……俺はバタフライナイフと足と、まんしんの力を使って、彼を弾き返した。
(´<_`キ)「ヒルトルートはどうした?」
_
(メ゚∀゚)「途中でフラれちゃってさぁ〜、もう身も心もぼろぼろボローニャよ」
(´<_`キ)「……アンタ、リーベシア人?最近のリーベシアは、お粗末だよなあ……」
_
(メ゚∀゚)「なんだ?俺の事が知りたいのか?だったら殺せ!殺してみてくれ!」
嫌な予感が頭にひらめいたが、今は現実の方が大切だ!
汗を拭って気合いを入れると、ジョルジュの懐に飛び込んだ!
-
銃は攻める時は恐ろしい武器だが、守りではまったく頼りにならない、これは距離の問題じゃない。
今の俺は……まことに残念だが、追い詰められていた。
ジョルジュは、素早く、しなやかで、強かった。
どうしようもないことだ。
刃を交えればすぐにわかる、彼は生まれつきの、殺人鬼なんだ。
のど元に迫る迫銀を切り返すが、ダガーナイフは必ずどこかを裂いていく。耳、首筋、腕……
差し込まれた刃を柄で絡めとると、今度は拳が内臓を打った。
ついにナイフは俺の手を離れ、かん高い音をたて床に伏した……
( <_ ;)「まいった……降参だ……もう、あきらめたよ……」
_
(メ゚∀゚)「なんかさぁ……恨みや憎しみで戦場に来る奴って強いけど、すぐ死ぬよな。以上!じゃ!」
( <_ ;)「最期に……ひとつだけ教えてくれないか」
_
(メ゚∀゚)「えーっ!しょうがねぇなぁ〜?プライベートな事は聞くなよ?」
( <_ ;)「医療ポッドの鍵は……どこにある?」
ジョルジュはおもむろに懐に手を突っ込み、鍵を取り出した。
あけすけな笑顔が眩しい。
_
(メ^∀^)つP「これな!俺、貴重品は持ち歩く主義でなぁ」
俺は飢えたカラスよりも素早く鍵をもぎ取ると、待っていたトソンに投げつけた。
(´<_`キ)「なんだぁ……持ってたのなら黙って掠めとれば良かったぜ」
_
(;゚∀゚)つ「ちょっ!おま……人の親切を……」
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医療ポッドのフタが景気よくぶっ飛んだ!
兄者が、一番固そうな観葉植物をもぎ取り、嵐の様に突進してくる!
俺だってしっかりと、折れた机の足を握っていた。
(iii ´_ゝ`)「行くぜ〜〜〜!」
俺達は、意地悪なつむじ風のようにジョルジュへまとわりついた!
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