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(´・ω・`)は偽りの亡霊を捕まえるようです <解決編>
57
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:35:19 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「あんた、貞子を突き落としたな?」
.
58
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:35:32 ID:mtW.QSwo0
飄々としてるから、まだ色々隠してそうだな兄者
59
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:35:53 ID:h25gk5nA0
|`ヽ /|
|. \ /. i
| ヽ / ノ
! `ー‐- '、
| .、
l !
r---ゝ !
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
l :::::::::::::::゙ 、 _| n
イツワリ警部の事件簿 File.4 `,_::::::::::::::::::::`ヽ, ノ,´αm
く l lへ、:::::::::::::::`'ー、r ||\
第九幕 「 偽りを捕まえろ 」 ' '、-_l ヽ、::::::::::::::::::`>;;::;;:|
` ..‐,,..、 丶、 冫:::::::::::/>;;;;;;;;\
,' /´ ::ヽ.:.:.:::::::::::::::丶_;;::;;::|
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
| l ..,,_ .::::::::ノ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:::::::::::::::l ヽ」
¦ ! ,;:::: ̄'' 7ー-、_....;.;.;.;、:::://::|
Y ;:::::::::│ / `――\/::::|
l ,,;:::::::::l / :::::::::'、:;:;、;;|
/ ,,;;:::::::::::::::// l:::::::l
.
60
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:36:28 ID:h25gk5nA0
( ´_ゝ`)
自分は、流石兄者という男を詳しくは知らない。
ただ、口が達者で飄々たる言動が目立つものの、
その実思慮深く、大層な肝っ玉の持ち主である、という程度だ。
しかしそんな兄者が、露骨に硬直した。
呼吸が大きくなるでもない、目を見開くでもない。
ただ、何を言われたかよくわかっていない、といった具合だった。
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`) 「……刑事さん」
声色こそ変わらないが、言葉の出だしが多少揺れている。
言われたのが誰であろうとも、
いきなり告発されてしまえば、誰だってそれ相応の動揺はする。
物的証拠がないと言っておきながら、どうして急に。
警部なりの探りなのかもしれないが、それにしては劇薬すぎないか。
( ´_ゝ`) 「え、いま、なんて言いました」
(´・ω・`) 「十年前、アルプス山脈で」
(´・ω・`) 「貞子を突き落としたのはあんただな、ッて聞いてんだ」
.
61
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:37:46 ID:h25gk5nA0
( ´_ゝ`) 「どうして急に」
( ´_ゝ`) 「なにか、あったんスか」
動揺からなる硬直が一転、言葉にわずかな怒りが汲み取られた。
図星だからか、的外れだからか、どちらにせよその興奮は正当なものだ。
しかし警部は、一切動じない。
兄者の反応そのすべてを、初めからわかっているかのようである。
(´・ω・`) 「なにも、ない」
(´・ω・`) 「これからの話に、証拠ッつー証拠はないんだ」
( ´_ゝ`) 「ふざけてんのか」
兄者が眉間に皺を寄せる。
それまでに何度か見せたおどけた様子が、嘘だったかのように。
(´・ω・`) 「きみから、当時の話、詳しく聞いたけどね」
( ´_ゝ`) 「変なところでもあったのか」
(´・ω・`) 「なさすぎたんだ」
.
62
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:38:12 ID:h25gk5nA0
( ´_ゝ`) 「当たり前だ」
( ´_ゝ`) 「多少記憶が怪しい部分があるとは言え」
( ´_ゝ`) 「本当のことしか言ってないんだから」
有無山を選んだこと。
紅葉狩りを提案したこと。
コテージについてから、食事し、カメラを落とし。
室内で遊び、騒ぎ、寝て、起きて、外に出て、貞子を目撃して。
そこに問題があれば、既に十年前の警官が炙り出しているはずである。
(´・ω・`) 「本当のことしか言ってないんだな?」
( ´_ゝ`) 「なッ…」
これが、警部の話術だ。
警部がこれからどんな手筋で兄者を詰めるのかは、予想すらできない。
ただ、これが、警部の話術だった。
.
63
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:39:15 ID:h25gk5nA0
兄者がほんとうに犯人だったとして。
だとすると、それまでに彼が証言してきたことには、偽りが混じっている。
、 、 、、
言い換えれば、兄者が用意した話だ。
そしてそれが十年もの間通用してきた以上、
確かにその証言に怪しいところはなさすぎるし、それを兄者も理解している。
そんななか、怪しいところがないと言うと、
容疑がかかっている兄者は、もちろんだと応答するだろう。
ほんとうのこと、に見せかけた、話をしてきたのだから。
警部が欲しかったのは、その言質だ。
それまでの証言と変わってくるのは、記憶の曖昧性だ。
この言質を取ることで、これから兄者がする反証に、曖昧性は許されなくなってしまうのだ。
警部の推理を裏づけする何かが出てくるたびに、兄者の情勢は、不利になってしまう。
( ´_ゝ`) 「……俺ができる話は、すべて話してきたつもりだ」
( ´_ゝ`) 「これ以上、なにが聞きたい」
しかし。
もし本当に、兄者が犯人だったなら、の話だが。
、
(´・ω・`) 「霧だ」
.
64
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:40:02 ID:h25gk5nA0
( ´_ゝ`) 「…!」
霧、の話などあったか。
おそらくは、有無山でした証言のことだろう。
( ´_ゝ`) 「……」
その証拠に、兄者が、言葉を詰まらせる。
兄者の急所なのか。
(´・ω・`) 「全てがきれいにまとまりすぎていた、あんたの証言」
(´・ω・`) 「たった一つだけ、決定的に食い違っているところがあった」
>
>(´・ω・`) 「十年前って、霧、出てた?」
>
>(´・_ゝ・`) 「霧……ですか」
>
>(´・_ゝ・`) 「あったような、なかったような」
>
>( ´_ゝ`) 「いや、特に」
>
>( ´_ゝ`) 「むしろ、あの時はカラッカラに晴れてたぜ」
>
.
65
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:40:51 ID:h25gk5nA0
( ´_ゝ`) 「……」
( ´_ゝ`) 「記憶が……曖昧なんだ」
想定されていた、曖昧という反論。
これはむしろ、警部がとった言質が作用したといっていい。
本当のことしか話していない。
というところから連想される、曖昧という概念。
だからこそ、主張の弱い部分を突かれると、つい、そう逃げたくなるのだ。
これが、警部の、話術だった。
(´・ω・`) 「霧以外の証言に対してなら、わかる」
(´・ω・`) 「ただ、霧に関しては、曖昧だからッてのは通らないんだ」
( ´_ゝ`) 「どうしてだ。 仕方ないだろう、曖昧なのは」
言い切る前に、警部が返した。
(´・ω・`) 「そもそも!」
( ´_ゝ`) 「…ッ」
兄者が怯む。
.
66
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:41:20 ID:h25gk5nA0
、 、 、 、、 、 、 、、、
(´・ω・`) 「霧の問題は、貞子が見えたかどうか、だ!」
>
>イ(゚、ナリ从 「今朝、事故当時の気象データを洗いましたが」
>
>イ(゚、ナリ从 「実際に、朝方は強い霧が発生していたようですから」
>
>( ´_ゝ`) 「なんだって?」
>
>( ´_ゝ`) 「俺は確かに見たぜ」
>
>( ´_ゝ`) 「………この下に落ちてた貞子を、ハッキリと」
>
、 、 、 、、 、 、 、、
(´・ω・`) 「実際見えたんだろう!?」
、 、 、 、 、 、、 、 、 、 、 、 、 、、
(´・ω・`) 「だったら、どうして記憶が曖昧だった可能性を認めるんだ!」
→ttps://www.youtube.com/watch?v=Rr9AVYDEeMQ
.
67
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:42:04 ID:h25gk5nA0
( ;:::_ゝ::) 「 ッ!」
崖下。 転落。 貞子。 霧。
ピースが、揃った。
兄者は第一発見者だ。
すなわち、崖下に横たわる貞子を目撃した。
しかし、当時霧がかかっていたのだろう。
それを指摘され、しかし兄者は否定した。
この場合、記憶が曖昧だと言って引くのは、あり得ない。
当時見えた以上、間違いなく、少なくとも現場に霧はなかったのだ。
(´・ω・`) 「崖下で倒れている人影が、理屈なしに貞子だと感じた」
(´・ω・`) 「それは、認められる」
(´・ω・`) 「偶然崖下に目をやったのも、この際考えられなくはないとして」
(´・ω・`) 「第一発見者になるのも、不自然ではない」
.
68
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:42:26 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「でもな!」
(´・ω・`) 「それら証言の、すべては!」
(´・ω・`) 「霧がないのが前提で成り立っている!」
(´・ω・`) 「あんたは、是が非でも、記憶が曖昧でも、霧だけは認めるわけがないんだ!」
( ;´_ゝ`) 「あ、曖昧だってのは、前後込みの話だ!」
>
>( ´_ゝ`) 「まして霧が濃かった、車を出して遭難なんてしてられんしな」
>
>(´・ω・`) 「……ん?」
>
> いま、妙なことを言ったな。
> そう思ったのと同時に、イナリちゃんが既に口を切っていた。
>
>イ(゚、ナリ从 「霧は、出ていたのですね?」
>
>( ´_ゝ`) 「え?」
>
.
69
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:43:34 ID:h25gk5nA0
( ´_ゝ`) 「ああ、そうさ、いま断言してやろう」
( ´_ゝ`) 「俺が貞子を目撃した瞬間は、確かに霧なんてなかった!」
(´・ω・`) 「……」
( ´_ゝ`) 「まさか、証拠もなしに、言葉のあやだけをつついて」
( ´_ゝ`) 「それで、人を犯人呼ばわりするつもりか?」
(´・ω・`) 「……」
攻防一転。
兄者が強気に出る。
警部は、一瞬の勢いを消し、黙って兄者を見つめている。
しかし、伝わる。
これは決して、警部が負けを認めたわけではない。
伝わってくるのだ。
警部は、踊りだしたくなるくらい嬉しいことがあっても。
それが、嬉しければ嬉しいほどに。
(´・ω・`) 「……捕まえたぜ」
それを表に出そうとはしなくなるのだ。
.
70
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:43:56 ID:h25gk5nA0
( ;´_ゝ`) 「…!」
(´・ω・`) 「もし無実なら」
(´・ω・`) 「デミタスだろうがミセリだろうが」
(´・ω・`) 「もし本当に、第一発見者にして無実だったら」
(´・ω・`) 「絶対に、真っ先にする反論が、あるんだ」
全身から沸き立ってくる、悪寒。
警部の追究は、究極的なまでに論理的なのだ。
そこに、感情論、小手先は存在しない。
犯人を震え上がらせる、決定的で致命的な武器が、感じられる。
懐に、亡霊がごとき見えないナイフを忍ばせているのが、わかる。
(´・ω・`) 「これはな、兄者」
(´・ω・`) 「目撃証言が作り話だから起こってしまう、矛盾なんだ」
( ;´_ゝ`) 「矛盾……だと?」
.
71
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:44:38 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「……正直なところ、ホッとしたよ」
(´・ω・`) 「もしその、本来ならできる反論をされたら」
(´・ω・`) 「僕は、無実の罪を着せちまうところだったんだ」
( ;´_ゝ`) 「………もったいぶるもんじゃありませんぜ、旦那」
兄者が、警部の気迫に圧されている。
彼も、形こそ見えないものの、感じたのだろう。
一突きで死に至らしめかねない、亡霊のナイフを。
(´・ω・`) 「振り返ろうや、兄者」
(´・ω・`) 「あんたは、崖下の貞子を目撃した……」
( ´_ゝ`) 「その時に霧はなかった」
( ´_ゝ`) 「気象データがなんだ。 確かに、俺は貞子を見たんだ」
(´・ω・`) 「もう一人、それを証言できるやつがいるだろう?」
( ´_ゝ`) 「なに?」
.
72
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:45:30 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「ヒッキー小森だ!」
( ´_ゝ`) 「……?」
( ; ゚_ゝ) 「ッッ!」
>
>イ(゚、ナリ从 「では、その後の行動は」
>
>( ´_ゝ`) 「なんか、こう、なんなんだろうな」
>
>( ´_ゝ`) 「とにかく、ヒッキーを呼んだ」
>
>イ(゚、ナリ从 「ヒッキー……ヒッキー小森ですね」
>
>
>( ´_ゝ`) 「で、見せた」
>
>イ(゚、ナリ从 「見せた」
>
(´・ω・`) 「目撃直後に、ヒッキーも崖下を覗いている!」
(´・ω・`) 「条件が同じなら、やつにも同じ証言ができたはずだ!!」
.
73
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:46:02 ID:h25gk5nA0
( ; ゚_ゝ`) 「奴は……奴は!」
(´・ω・`) 「殺されてしまったからできない……か?」
( ;´_ゝ`) 「俺が殺したわけじゃないが……死人に口なしッ!」
( ;´_ゝ`) 「できねえんだよ! ヒッキーを頼っての証言は!」
(´・ω・`) 「バカ言え」
(´・ω・`) 「ヒッキーに限らず、六人の人間が既に、十年前に証言をしている」
、 、
(´・ω・`) 「取調でな!」
( ;´_ゝ`) 「!」
( ;´_ゝ`) 「あったのか? 霧がかかっていなかった証言は!」
、 、、 、 、
(´・ω・`) 「かかっていなかった……?」
( ;:::_ゝ::) 「!」
.
74
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:47:23 ID:h25gk5nA0
十年前の一件。
それが当時事故として処理されていようが、
それを事故と処理するために、警官は関係者を個別に取調している。
まして、目撃者に関しては、その状況を事細かに尋ねられる。
そこで、被害者が見えたかどうかなんて証言、聞き漏らすわけがない。
(´・ω・`) 「……あんたが、あの子に霧のことを言われた時点で」
(´・ω・`) 「真っ先に言えたはずなんだ!」
、 、 、 、、 、 、、 、 、 、 、、 、、 、 、 、、
(´・ω・`) 「調書を見ろ。 ヒッキーも証言しているはずだ……ッてな!」
( ;´_ゝ`) 「………」
( ;´_ゝ`) 「それは、あんたが慣れてる刑事だからそう思えんだ」
( ;´_ゝ`) 「俺は、ただでさえ十年前の事件を回想してる身だぞ!」
( ;´_ゝ`) 「すぐにそんなこと、思い出せるわけがない!」
.
75
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:48:00 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「違うね」
( <●><●>) 「ちょっと待ってください」
(´・ω・`) 「…!」
自分は、警部が兄者からどんな話を聞いたかはわからない。
本来なら、この場に不釣り合いな人間だ。
しかし。 、 、 、、
それでも、警部はこのことを見越して、自分を呼び寄せた。
裏を返せば。
部外者の自分でもできる反論を、期待しているのだ。
( <●><●>) 「警部の言い分では、当時崖に、霧は、かかっていた」
( <●><●>) 「とすると、明らかにおかしい点があります」
(´・ω・`) 「言ってみろ」
.
76
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:48:33 ID:h25gk5nA0
( <●><●>) 「目撃証言に矛盾が存在しない点です」
( ;´_ゝ`) 「!」
( <●><●>) 「もし、霧で下が見えない状況で、貞子を突き落としたとします」
( <●><●>) 「崖の高さは、兄者は身をもって知っている」
( <●><●>) 「……貞子に大量出血が見られなかったことを、兄者は証言できている」
(´・ω・`) 「……」
>
>( ´_ゝ`) 「こう……理屈じゃなく、貞子が死んでいた、ッて感じたんだ」
>
>( ´_ゝ`) 「血だまりとかもなかったし、なおのこと……理屈じゃなかったと思う」
>
( <●><●>) 「崖からの転落だ、出血を疑うのは当然です」
( <●><●>) 「そして、事件後も霧があったのは、兄者も認めている」
( <●><●>) 「他方、のちの取調で、当然貞子の様子についても聞かれる」
.
77
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:49:02 ID:h25gk5nA0
( <●><●>) 「………血だまりの有無答えられないようでは、当然、怪しまれるのです」
( <●><●>) 「しかし、十年前そういった食い違いや猜疑心はなかった」
( <●><●>) 「兄者は正確に、崖下の貞子の状況を、証言できたのです」
(´・ω・`) 「助かったぜ、ワカッテマス」
( <●><●>) 「……!」
警部が、鋭い笑みを浮かべた。
これがもし、警部を不利に追いやる指摘だったら、と思ったのだが。
突き落とした時も、その後も、霧は晴れなかった。
とすると、どう足掻いても、その後の取調から逃れられないはずなのに。
(´・ω・`) 「兄者は、こう見えて肝心なことに関しては口数が少ない」
(´・ω・`) 「ほんとうは、兄者から、その反論が欲しかったんだがな」
( ;´_ゝ`) 「………どういうことだ」
.
78
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:49:26 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「おそらくは、な」
(´・ω・`) 「霧は、ほんとうに、晴れてたんだよ」
( ;´_ゝ`)「なッ!」
( <●><●>) 「……どういうことでしょうか?」
(´・ω・`) 「朝方に、霧はあったのか」
(´・ω・`) 「それは、十年の歳月が、炙り出してくれた」
(´・ω・`) 「十年前だとわからなかった、真実」
(´・ω・`) 「……霧は、本当にかかっていたんだ」
( <●><●>) 「!」
そういうことか。
霧がかかっていた現場と、霧がかかっていれば成しえない整合性。
この矛盾を解決する状況こそが、次の一手。
これには、兄者による巧みな嘘が隠されている。
それを暴くことで、次の矛盾が顔を出す。
そして最終的に浮かび上がる、矛盾ではあるが偽りでない点。
それこそが、警部の言う、事件を解く、鍵なのだ。
.
79
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:49:56 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「それ以降も晴れていなかった」
(´・ω・`) 「となると次の疑問が出てくるよな?」
、 、
(´・ω・`) 「……兄者は、いつ、崖下の貞子を見たのか」
(´・ω・`) 「それは、夜だ!」
>
>イ(゚、ナリ从 「今朝、事故当時の気象データを洗いましたが」
> 、 、
>イ(゚、ナリ从 「実際に、朝方は強い霧が発生していたようですから」
>
、 、
(´・ω・`) 「霧が発生していたのは、朝方なんだからな!」
.
80
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:50:19 ID:h25gk5nA0
( ;:::_ゝ::) 「ッ!!」
(´・ω・`) 「次の矛盾は……わかりやすいね」
(´・ω・`) 「兄者くん」
(´・ω・`) 「どうしてあんたは」
>
>イ(゚、ナリ从 「事件発覚は、いつですか?」
>
>イ(゚、ナリ从 「また、その、第一発見者」
> 、 、
>( ´_ゝ`) 「朝方……としか言えないな」
>
>( ´_ゝ`) 「具体的に何時か、はわからないですね」
>
、 、
(´・ω・`) 「朝方に目撃したッつー嘘をついたんだ?」
.
81
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:50:41 ID:h25gk5nA0
( ;:::_ゝ::) 「…………」
(´・ω・`) 「……」
本来、暗い夜より、明るい朝のほうが、目撃できる可能性が高い。
しかし、明るい朝に目撃はできず、暗い夜でなければ目撃できなかった。
ただ、チラッと見ただけでは、見落とすであろう。
理由がなければ、もちろん見つけることは難しい。
(´・ω・`) 「たったひとつ」
(´・ω・`) 「………簡単なロジックだ」
(´・ω・`) 「犯人が貞子を突き落としたのが、太陽が昇る前、だからだ」
( ;:::_ゝ::) 「……」
(´・ω・`) 「さあ、次の矛盾」
(´・ω・`) 「どうして、夜暗いなか、気まぐれにチラッと崖下を見ただけで、」
(´・ω・`) 「貞子の転落を一瞬で見つけることができた?」
.
82
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:51:02 ID:h25gk5nA0
( ;:::_ゝ::) 「……」
(´・ω・`) 「………ひとつしか、ない」
、、 、、 、 、 、
(´・ω・`) 「知っていたから、なんだ」
兄者が、猫背になっていく。
両手で全身を覆うように、前で交差させる。
(´・ω・`) 「では、最後の矛盾」
(´・ω・`) 「どうして、夜、予兆もなしに」
(´・ω・`) 「貞子が、崖下に転落していたのを、知っていた?」
(´・ω・`) 「………自分が、突き落としたからだ」
.
83
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:51:22 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「 ッ 」
兄者が目を見開く。
警部の顔は見ていない。
明後日の方角に向いている。
その眼には、十年前の景色が、フラッシュバックしているように見えた。
暗い崖。
崖側に貞子がいる。
勢い。
手に感触。
崖下に横たわる人物。
服装は貞子と同じ。
血だまりはできていない。
霧は発生していない。
貞子は動かない。
.
84
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:51:46 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「 あああああああああああああああああッッ!!!」
翌朝。
第一発見者。
霧が発生している。
しかし兄者はそれを証言できなかった。
夜の記憶を頼りに目撃証言を紡いだからだ。
当時、朝方の霧を証言したのは気象データのみだった。
( ::;゚_ゝ::) 「ああああああああああああああああああああああああ!!!!」
夜に霧はなかった。
雨も降っていない。
夜の情景をそのまま話せば証言は成立していた。
本当に見ていなければできない証言だった。
だから警官は、あの時あの場所にはたまたま霧がなかったものだと判断した。
( ::;゚_ゝ::) 「ああッ!! ああああああああああああああああああッ!!!」
兄者は幸か不幸か、カメラを落としていた。
崖下に落としたそれを前日中に覗き込んでいた。
崖下を覗く、という行為に疑いは感じられなかった。
.
85
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:52:10 ID:h25gk5nA0
なにも食い違いの存在しない真実。
( <●><●>) 「……」
兄者が貞子を目撃したのは夜のことだった。
( <●><●>) 「……」
( <●><●>)
全身に走る悪寒。
( <●><●>) 「!」
(;<●><●>) 「ちょっと待ってください!」
(´・ω・`) 「どうした」
警部が自分を呼んだ、本当の理由がわかった。
情報を知らない第三者に、見つけてもらいたかったのだ。
ほんとうの矛盾を。
.
86
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:52:35 ID:h25gk5nA0
(;<●><●>) 「致命的な矛盾がひとつ、浮き彫りになりました!」
(´・ω・`) 「なに……?」
、
(;<●><●>) 「兄者が貞子を目撃したのは夜……」
、
(;<●><●>) 「霧のかかっていなかった……夜!」
(;<●><●>) 「だとすると、おかしい点が存在する!」
(´・ω・`) 「なッ…」
警部が少し体勢を崩す。
( <●><●>) 「ヒッキー小森の目撃証言ですよ!」
(´・ω・`) 「!」
.
87
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:53:02 ID:h25gk5nA0
(;<●><●>) 「兄者はヒッキーに、崖下を見せた……」
(;<●><●>) 「それが本当だろうが嘘だろうが、矛盾が発生します!」
、 、、 、
(;<●><●>) 「ヒッキーは朝にしか崖下を見ていないんですよ!」
、 、、 、
(;<●><●>) 「霧が発生していた、朝にしか!」
(´・ω・`) 「 ッ」
(´・ω・`) 「ま、待て……整理させろ」
兄者は、巧みに、自然に作り話をでっち上げられる。
そのなかのひとつ。
警部がロジックの展開にも添えた、要素。
現時点で、ふたつの揺るぎない真実がある。
兄者は、貞子を目撃して、ヒッキーにも見せた。
貞子の目撃は、夜にしかできなかった。
.
88
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:53:46 ID:h25gk5nA0
ポイントは、兄者の作り話こそが真実として処理されている点だ。
兄者の語った、騙った真実のうち、見るべきはふたつ。
目撃は 「朝」 。
霧は 「なかった」 。
話をでっち上げた兄者本人はともかく。
第三者のヒッキーが貞子の目撃を証言するとなると、
朝だろうが夜だろうが、霧があろうがなかろうが、必ず矛盾が発生する。
(´・ω・`) 「……」
(;´・ω・`) 「 ……ッ ……!」
警部が、考える。
果たして、取るに足りない食い違いなのか。
ロジックを再構築して、エラーがないかを、考え直す。
(;´・ω・`) 「………」
(;´゚ω゚`) 「……! ッ!」
.
89
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:54:18 ID:h25gk5nA0
どう整理しても説明がつかない。
警部が、ちいさな声で言った。
.
90
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:54:38 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「 ッ ……ッ!!」
(;´・ω・`) 「兄者!」
兄者は放心状態だった。
思わず胸ぐらを揺すって問いかける。
(;´・ω・`) 「どういうことか説明しろ!」
(;´・ω・`) 「ヒッキーに、崖下は、見せていたのか!?」
( ::;゚_ゝ::) 「そッ そうだよ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「俺が!俺が!」
( ::;゚_ゝ::) 「俺が、貞子を、突き落としちまったんだよ!!」
(;´・ω・`) 「違う!!落ち着け!!」
(;´・ω・`) 「聞きたいのはそのことじゃない!!」
( ::;゚_ゝ::) 「俺が突き落とああああああああああああああああああああ!!!」
.
91
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:54:59 ID:h25gk5nA0
兄者が貞子を突き落としたのは、真実だったようだ。
この暴れようを見る限り、間違いないだろう。
しかし、それだと。
どうしても、ヒッキーの存在が噛み合わない。
実際の調書は今、手元にない。
ないが、イナリちゃんが調書をチェックしながら、兄者の話を聞いていた。
ヒッキーの目撃証言は、確かにあったんだ。
でなければ、兄者がヒッキーの下りを話した時に、突っ込んでいる。
(;´・ω・`) 「落ち着け!!」
(;´・ω・`) 「聞いてんのか兄者!!」
( ::;゚_ゝ::) 「 ッるせえよ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「そうだよ!!認めるよ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「貞子が蘇って俺らを抹殺してンのは!!」
( ::;゚_ゝ::) 「部長たるこの俺を徹底的に殺すためなんだよ!!!」
.
92
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:55:19 ID:h25gk5nA0
(;<●><●>) 「……警部!」
兄者がいよいよ暴力的になった。
その瞬間ワカッテマスが加勢し、兄者を一緒に止めた。
すぐに暴行に出そうな動きはしなくなったが、
それでも興奮状態は一切緩和されていない。
(;´・ω・`) 「兄者!」
(;<●><●>) 「鍵が……すぐそこにあるのでは?」
(;´・ω・`) 「なに?」
鍵。
鍵だと。
なんの話を言っている。
(;<●><●>) 「矛盾ではあるが……偽りでない点」
(;<●><●>) 「それが事件を解く……鍵となる!」
.
93
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:56:51 ID:h25gk5nA0
( <●><●>) 「警部の教えですよ!」
(´・ω・`) 「ッ!」
僕は、偽りを見抜く刑事だ。
ワカッテマスにも、イナリちゃんにも、ぎょろ目にも、教えている。
偽りを見抜くプロセス。
見抜く理由、そしてその先に待っているもの。
( <●><●>) 「兄者の嘘はすべて引っぺがした」
( <●><●>) 「残るは、鍵のかかった扉だけです!」
矛盾ではあるが偽りでない点、それが事件を解く鍵とある。
なぜなら、偽りを暴いた結果矛盾がなければ、それがすべて。
犯人が故意に偽ったものを暴けば、事件は解決する。
しかし。
それでもなお、矛盾が残る場合。
真相は、まだ見えないところに眠っていることになるのだ。
.
94
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:57:22 ID:h25gk5nA0
、 、
( <●><●>) 「十年前の事故は、事件だった」
、 、
( <●><●>) 「兄者が、貞子を突き落とした犯人だった」
、
( <●><●>) 「兄者が貞子を目撃したのは夜」
、 、 、
( <●><●>) 「貞子を突き落としたその時に目撃した」
( <●><●>) 「新事実のこれらの、どこかに」
( <●><●>) 「兄者の知らない、嘘」
( <●><●>) 「事件の真相が書き足した、偽りが眠っているんです」
(´・ω・`) 「……!」
事件の真相が書き足した、偽りか。
十年前の事件。
犯人は兄者。
夜にしか目撃できなかった。
兄者は突き落とした時に目撃した。
ロジックが導き出した四つの新事実。
まだ、偽りが残っている。
.
95
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 21:59:52 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「でもなァ!」
( ::;゚_ゝ::) 「聞いてくれ 聞いてくれッ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「貞子を殺したかったわけじゃない!!」
( ::;゚_ゝ::) 「違うんだッ!!」
犯人は兄者。
彼の動揺を見るに、疑いようはない。
果たして、ほんとうにそうだろうか。
兄者は突き落とした時に目撃した。
その時以外で、貞子を目撃できるタイミングなんてない。
果たして、ほんとうにそうだろうか。
( <●><●>) 「殺意がなかったのは認められている!」
( <●><●>) 「突発的な事件だったことに疑いはないんだ!」
殺意はなかった。
突発的な事件だった。
十年前に、一切の殺意はなかった。
有無山の選択、紅葉狩りの提案、兄者の持込品。
確かに、虫取り網をジョークで持ってくるような男に、計画性はなかったはずだ。
.
96
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:00:12 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「俺は貞子に相談を持ちかけられた!」
( ::;゚_ゝ::) 「それも、あの夜、急に、だ!」
( ::;゚_ゝ::) 「だから俺は、夜、崖で二人きりで会ったんだ!」
兄者が貞子を突き落としたのは突発的だった。
それは疑いようのない事実だろう。
しかし。
それでも、出てくる要素そのすべてに、猜疑心が芽生える。
証拠のない今、その一つひとつを検討なんてできない。
( <●><●>) 「その結果、あなたに一瞬の衝動が走っただけ」
( <●><●>) 「それは、一切疑っていない!」
( ::;゚_ゝ::) 「そもそも!」
( ::;゚_ゝ::) 「突き落とそうと思ったわけですらない!」
( ::;゚_ゝ::) 「貞子は、バランスを崩したんだ!」
( ::;゚_ゝ::) 「落ちそうになったんだ!!」
.
97
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:01:55 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「!」
落ちそうになった?
待て。
そもそも、突発的な殺意で突き落としたわけでもなかったのか?
( <●><●>) 「…!」
、 、 、、
( <●><●>) 「では、貞子を、助けようと思って……?」
、 、
( ::;゚_ゝ::) 「俺は落ちそうになって、思わず手を……」
(;´・ω・`) 「!?」
( <●><●>) 「俺、は?」
( <●><●>) 「ちょっと待ってください」
、 、 、、 、、 、、
( <●><●>) 「落ちそうになったのは、あなたなのですか!?」
.
98
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:03:25 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「気がついたら目の前に崖が……」
( ::;゚_ゝ::) 「ん……?」
( ::;゚_ゝ::) 「違う……俺は……俺は?」
見るからに、兄者が混乱している。
焦点があっていない。
視線が、妙な方向に向かっている。
夜。
崖を舞台に選んだのは、単に夜ながらにして景色がよかったからだろう。
吹き込んでくる風に風情を感じた、程度だろう。
新たな問題は位置関係だ。
兄者が貞子を突き落としてしまった、十年前の構図。
、 、 、 、 、 、 、、 、 、、
どうしてそこで、崖側の人間が誰だったかを混乱する?
( ::;゚_ゝ::) 「落ち着いて聞いてくれ」
( ::;゚_ゝ::) 「俺はいま、混乱している」
( <●><●>) 「わかっています」
( <●><●>) 「……深呼吸して、教えてください」
.
99
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:03:50 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「結果として、俺は貞子を崖下に突き落としてしまった」
( ::;゚_ゝ::) 「でも、決して、殺意なんてものは徹頭徹尾、なかった」
( ::;゚_ゝ::) 「だがなァ、そんなもの信じてもらえねえだろう」
兄者が流暢に語る。
( ::;゚_ゝ::) 「事故には違いなかったんだ」
( ::;゚_ゝ::) 「だから俺は、俺は逃げた」
( ::;゚_ゝ::) 「ほんとうのことは証言しないで、」
言葉の節々に、恐怖が感じられる。
.
100
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:04:11 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「なるべく、事故、そう、事故だ、」
( ::;゚_ゝ::) 「事故として通るような、嘘の証言をした」
( ::;゚_ゝ::) 「確かに俺は逃げた!」
兄者もわかっているのだ。
( ::;゚_ゝ::) 「それは認めるが、聞いてくれ」
( ::;゚_ゝ::) 「俺が貞子を実質的に押しちまったのはほんとうに事故」
( ::;゚_ゝ::) 「それで俺の人生が終わっちまうのは嫌だったんだ!」
自分こそが、亡霊の真のターゲットであることに。
.
101
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:06:02 ID:h25gk5nA0
言葉の節々に、感じられる。
ほんとうに、兄者に殺意はなくて。
貞子を突き落としてしまったのも、ほんとうに偶然。
十年前の事件は、
しかしほんとうに事故でもあった。
(´・ω・`) 「……」
だと言うのに。
なんだ、この、心臓を逆撫でするような、気持ちの悪い違和感は。
( ::;゚_ゝ::) 「ただ、俺の昔からの癖だが」
( ::;゚_ゝ::) 「嘘を話しているうちに、嘘を演じているうちに、」
( ::;゚_ゝ::) 「ほんとうは実際どうだったのかを忘れる節があるんだ」
それは、既に何度か見られている。
兄者は、自然のうちに嘘をつき、自分でさえそれに騙される傾向があった。
ミセリとクックルの件なんかがそれだ。
本当はクックルから交際の相談をされていたにも関わらず、
それを周囲に隠そうとするあまり、自分ですら忘れてしまっていた。
.
102
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:06:47 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「……まだ、あるんだ」
冷静に、事実だけを取り出して考えれば、
本来なら気づけるはずの、食い違い、相違。
兄者は、それを自分で見つめなおすことができない男だ。
だからこそ、新しい四つの事実に偽りが現れた。
十年間閉じられたままだった、開かずの扉。
そいつを開く鍵は、どこにある。
( <●><●>) 「それは十分わかりました」
( <●><●>) 「……十年前」
( ::;゚_ゝ::) 「ッ!」
露骨に震え上がる。
十年もの間、自分を包み込んでくれていた偽りが剥がれたのだ。
いま、自分を守ってくれる鎧はない。
鎧に慣れ、鎧があることすら忘れてしまった兄者は、この上なく弱っていた。
.
103
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:07:43 ID:h25gk5nA0
( <●><●>) 「あなたは、朝に貞子を目撃した、と言った」
( <●><●>) 「またそれを、ヒッキー小森にも見せた」
( <●><●>) 「……合っていますか?」
( ::;゚_ゝ::) 「そうだ」
( <●><●>) 「しかし、本当は違う」
( <●><●>) 「あなたは、夜、突き落としたその時に見た」
( <●><●>) 「……となると」
( <●><●>) 「貞子をヒッキーに見せたのも、その直後」
( <●><●>) 「そうなるのですか?」
ワカッテマスの想像以上の察しのよさは、嬉しい誤算だった。
僕が語るロジックの脆弱性を突いてもらえればそれでよかったのだが、
それ以上に、僕と兄者が断片的に出す情報をくみ上げ、
十年前の幻を、この上ない再現度で理解し、落とし込んでいる。
.
104
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:08:17 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「ヒッキー?」
( ::;゚_ゝ::) 「俺は朝に突き落として、直後に呼んだだけだが?」
( <●><●>) 「……」
僕は、いままで多くの偽りを見抜いてきた。
しかし。
自身が放つ偽りに、そのまま飲みこまれる人はそういなかった。
兄者は、ほんとうに、偽りに操られているのだ。
偽りの鎧を、脱ぎきれてないでいる。
もう鎧は脱がされているのに、まだ装甲を纏っている心地になっている。
( <●><●>) 「落ち着いてください!」
( <●><●>) 「あなたは、夜に貞子を突き落としたんだ」
( <●><●>) 「ヒッキーは、夜、貞子を見たのですか?」
.
105
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:10:08 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「ん?」
( ::;゚_ゝ::) 「夜? ヒッキー? 呼んだ?」
( ::;゚_ゝ::)
偽りは、あくまで人が為すものだ。
間違えても、偽りに操られてしまっては、いけないのに。
( ::;゚_ゝ::)
( ::;゚_ゝ::) 「どういうことだよ!」
( ::;゚_ゝ::) 「わかんねえよおおおおおおおおおお!!」
ポケットの電話に手を伸ばす。
(´・ω・`) 「僕だ!」
( <●><●>) 「!」
(´・ω・`) 「至急、十年前の事故のファイルを見てほしい!」
電話はワンコールで繋がった。
アルプス県警捜査一課警部、
三月イナリは一切の事情を問うことなく応じてくれた。
.
106
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:10:44 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「要点はただひとつ!」
(´・ω・`) 「十年前の、ヒッキー小森の目撃証言だ!」
ページの繰る音に続けて、流れるように話される。
時間帯は 「朝」 。
兄者に 「呼ばれて」 現場を目撃。
貞子の状況と目撃証言が 「一致」 している。
(´・ω・`) 「なッ……」
それってつまり。
兄者が着続けてきた鎧と、まったく同じ。
ヒッキーもまた、偽りの鎧をまとっていた。
どういうことだ。
兄者と口裏を合わせたのか。
しかし、果たしてそんなことが、できるのか。
.
107
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:12:56 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「了解、切るぞ!」
( <●><●>) 「どうでしたか」
間髪入れずにワカッテマスが聞く。
(´・ω・`) 「……偽りだ」
( <●><●>) 「…!」
(´・ω・`) 「十年前の兄者の目撃証言と、一緒」
(´・ω・`) 「朝、崖下の貞子の様子を証言できている」
(;<●><●>) 「し、しかし!」
わかっている。
わかっているから、惑っているんだ。
(´・ω・`) 「兄者!」
( ::;゚_ゝ::) 「ンあァ!?」
.
108
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:13:23 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「十年前!」
十年前の時点では、兄者と同じ証言をするのは理に適っていた。
しかし十年経った今、状況はまったく異なる。
兄者と同じ証言をできてしまっていては、矛盾が生じるのだ。
(´・ω・`) 「いつヒッキーを呼びだして、何を言った!」
( ::;゚_ゝ::) 「もうわかんねえよ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「何がほんとうのことか、わかんねえンだ!!」
別にヒッキーを擁護しているわけでもなさそうだ。
完全に偽りに支配され、自分がわからなくなってしまっている。
(´・ω・`) 「じゃあ、確実なことだけを、話せ!」
( ::;゚_ゝ::) 「確実なのは、ヒッキーはいいやつッてことだけだ!」
(´・ω・`) 「……、……」
(;´・ω・`) 「はあ?」
.
109
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:13:34 ID:tpAyMWjY0
支援
110
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:16:26 ID:h25gk5nA0
勘弁してくれ。
これ以上混乱されてしまうと、こっちまで混乱してしまう。
( ::;゚_ゝ::) 「俺は夜に貞子を見て、コテージに戻った!」
、、、 、 、 、、 、 、
( ::;゚_ゝ::) 「しょんべん行ってたヒッキーがな、出迎えてくれたんだ!」
(;´・ω・`) 「待て……」
(;´・ω・`) 「待て、待て」
今まで一切出てこなかった情報が、次々出てくるぞ。
もう一度、イナリちゃんにコールする。
( ::;゚_ゝ::) 「俺の汚れた服! 突き落とした時にできた怪我!」
( ::;゚_ゝ::) 「 その全てを見れば!」
( ::;゚_ゝ::) 「なにかあったのは気づけるはずなのに! 聞かないでくれた!」
( ::;゚_ゝ::) 「ただ一言、何かあったか、それだけ! それだけを聞いて!」
( ::;゚_ゝ::) 「俺は全てを話したよ!」
( ::;゚_ゝ::) 「あいつは俺をかばってくれた!」
.
111
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:16:52 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「かばってくれたんだ!」
( ::;゚_ゝ::) 「額の傷だって、奴が、寝相が悪かったッて言ってくれたんだ!」
なんとなく、状況は察しているのだろう。
イナリちゃんの声が少し、低くなっていた。
(;´・ω・`) 「もう一度、調書の確認だ!」
(;´・ω・`) 「ヒッキーは、夜、起きていた!」
イナリちゃんが驚いたような声を出す。
(;´・ω・`) 「 そんな証言、あったか!?」
今度はページを繰る音もしない。
イナリちゃんが即答した。
いいえ。 ありません。
(;´・ω・`) 「 はァ!?」
.
112
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:19:41 ID:h25gk5nA0
できるはずがない。
夜に起きていたなら、どんな些細なことでも話すはずなのだ。
でなければ、事実はどうであれ、疑われてしまうことになるのだから。
事態は、サークル員の転落だぞ。
取調で、夜の行動を聞かれて、ごまかすはずがない。
(;´・ω・`) 「………わかった! 切る!」
ヒッキーはヒッキーで、何かしらの偽りをまとっていた。
それは、何を意図してのことだ。
( <●><●>) 「それだけではありません!」
(´・ω・`) 「!」
( <●><●>) 「兄者はたった今、明らかに妙な発言をした」
、 、 、、、
( <●><●>) 「兄者は貞子を突き落とす時、怪我をした!」
( <●><●>) 「 ………これは、今までになかった証言です!」
.
113
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:20:03 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「……」
け。
怪我。
調書に、イナリちゃんの報告に、兄者の証言に。
どこに、怪我なんて描写があった。
兄者は、この期に及んでまだなにかを、偽っているというのか。
(´・ω・`) 「……」
(´・ω・`) 「一緒に有無山に来ていないのに」
(´・ω・`) 「よくわかったな、ワカッテマス」
、 、 、、、
( <●><●>) 「犯人としてできた怪我、ということは」
( <●><●>) 「十年間、それは怪我たりえなかった、隠された情報にしかなり得ない」
こいつをヴィップに残してきたのは、大正解だった。
僕自身、アルプスに行ったせいで、偽りを偽りと気づけないよう支配されていた。
信頼できる後ろ盾がある。
あとは、もう一度、歩き出すだけ。
.
114
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:22:33 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「兄者」
( ::;゚_ゝ::) 「…ッ」
(´・ω・`) 「あんたが貞子を突き落とした時のことを……」
(´・ω・`) 「正確に話してくれ」
兄者がよろめく。
偽りに支配され、混乱しきっている兄者が。
( ::;゚_ゝ::)
ふらふらしており、時折頭をさする。
後頭部、前頭葉、続けて。
額を、ゆっくり撫でた。
( ::;゚_ゝ::)
( ::;゚_ゝ::) 「………俺は、貞子を突き落とした」
.
115
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:23:05 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「その時」
( ::;゚_ゝ::) 「俺も転んで、危うく、俺まで落ちかけた」
( ::;゚_ゝ::) 「額を……強く打ったんだ」
兄者も一緒に転んだ。
危うく落ちかけた。
額を強く打った。
( ::;゚_ゝ::) 「誰にも聞かれなかった」
( ::;゚_ゝ::) 「サークルのみんなは誰も気づかなかったし」
( ::;゚_ゝ::) 「警官にも聞かれなかった」
( ::;゚_ゝ::) 「 ………ただ、」
(´・ω・`) 「待て」
(´・ω・`) 「誰も気づかなかったことを、どうしてヒッキーが気づいた」
.
116
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:25:07 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「俺が夜中に、外から戻って来るところを見たからだ」
( ::;゚_ゝ::) 「他の連中は、この傷は、寝相が悪かった程度にしか思わん」
( ::;゚_ゝ::) 「ただ」
( ::;゚_ゝ::) 「ヒッキーだけは」
( ::;゚_ゝ::) 「この傷は夜、外でできたものだ、ッてわかる」
(´・ω・`) 「……」
冷静な思考能力は、戻りつつある。
しかし、気を付けなければならない。
どこに、無意識の偽りが眠っているかがわからないのだ。
( ::;゚_ゝ::) 「とにかく」
( ::;゚_ゝ::) 「転んだ拍子で俺は、崖下を見ていた」
( ::;゚_ゝ::) 「見ようと思って見たわけじゃないんだ」
.
117
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:26:51 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「…」
(´・ω・`)
(´・ω・`) 「?」
じわり、と手汗がにじむ。
( ::;゚_ゝ::) 「転んで、思わず目を瞑った」
( ::;゚_ゝ::) 「目を開くと、そこは崖下だった」
( ::;゚_ゝ::) 「霧がなく、いやに月明かりがハッキリとしていた」
( ::;゚_ゝ::) 「無防備な俺が見せられたのは、貞子の、転落したあとの姿だった」
( ::;゚_ゝ::) 「それが」
( ::;゚_ゝ::) 「あッ まりにもトラウマすぎた」
( ::;゚_ゝ::) 「い……今でも……夢に見る……」
( ::;゚_ゝ::) 「俺……は…ッ 崖が……たまらなく苦手なんだ……ッ!!」
.
118
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:27:17 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「!」
動悸が、激しくなる。
(;´・ω・`) 「兄者!」
(;´・ω・`) 「今からの僕の質問に、イエスかノーだけで答えろ!」
( ::;゚_ゝ::) 「がハ ……ッ!」
(;´・ω・`) 「あんたは、貞子を突き飛ばした!」
頷く。
(;´・ω・`) 「その弾みで、あんたも転んだ!」
頷く。
(;´・ω・`) 「その時に、あんたは額を打った!」
頷く。
(;´・ω・`) 「目を開くと、自分は崖下を見ていた!」
頷く。
.
119
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:28:11 ID:h25gk5nA0
(;<●><●>) 「ッ!!」
(´・ω・`) 「…………捕まえたぞ」
(´・ω・`) 「十年前の……事件ッ」
(´・ω・`) 「ほんとうの偽りを………!」
( ::;゚_ゝ::) 「信じてくれ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「こればっかりは、本当にすべて、本当だ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「トラウマなんだ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「目を開けた瞬間、崖下だぞ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「それだけでも怖かったのに、ましてッ」
( ::;゚_ゝ::) 「自分が突き落とした貞子がその下に、横たわってるんだ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「何を間違えても、あの光景だけは絶対間違わねえ!!」
.
120
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:30:44 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「………」
( ::;゚_ゝ::) 「何がおかしいんだよ!!」
ゆっくり、兄者の後ろに立つ。
硬直した兄者は、目でゆっくり僕を追う。
(´・ω・`) 「自分で言ってて、気づけないのか?」
( ::;゚_ゝ::) 「なッ……」
( ::;゚_ゝ::) 「!」
そして、兄者を背中から押した。
(;<○><○>) 「ッ!」
( ::;゚_ゝ::) 「 」
.
121
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:31:12 ID:h25gk5nA0
無防備で、更に硬直した兄者だ。
背中から強めに押すだけで、兄者はうつ伏せになるように、倒れる。
崖下には落ちない。
体の前面から倒れ、地面に伏す。
(;<●><●>) 「 ナニしでかしてんですか!」
(;<●><●>) 「警部!」
一瞬固まった兄者が、瞬時に起き上がる。
鬼の形相で、僕に肉薄してきた。
( ::;゚_ゝ::) 「……」
( ::;゚_ゝ::) 「てめえ……」
( ::;゚_ゝ::) 「なんのつもりだ……?」
(´・ω・`) 「転んで、目を開いた時」
、 、 、、
(´・ω・`) 「あんたは、地面しか、見えなかっただろ?」
.
122
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:32:32 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「どういうこ……」
( ::;゚_ゝ::) 「…………?」
(´・ω・`) 「転んだときに目を閉じるのは、当然だ」
(´・ω・`) 「転んで、額を打つのも仕方ないだろう」
(´・ω・`) 「だったら、よく考えてみろ!」
(´・ω・`) 「転んだ直後に開いた目で見える光景は、なんなのか!!」
、 、
(´・ω・`) 「それは、どう足掻いても、地面だ!!」
、 、
(´・ω・`) 「間違えても、崖下なんて見れるわけがない!!」
(´・ω・`) 「だったら、どこで額を打ったッていうんだ!!」
.
123
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:34:41 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「!!!」
立ち上がった兄者が、尻もちをついた。
眼球がぎょろぎょろ動いている。
十年前の情景を思い浮かべながら、目を回している。
( ::;゚_ゝ::) 「ッどういうことだ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「俺は間違いなく、貞子を見たんだぞ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「自分から見たわけでも、ないのに!!」
(´・ω・`) 「 ッ」
(´・ω・`) 「……そういう、ことか……」
脳に電流が走った。
たった今、十年前の事件の真相が、わかった。
兄者は、まだひとつ、大きな誤解をしているんだ。
.
124
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:35:02 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「……兄者」
(´・ω・`) 「あんたは、多くの真実を偽ってきたがために」
(´・ω・`) 「本来の真実を、見失っちまっている」
( ::;゚_ゝ::) 「認めるよ!」
( ::;゚_ゝ::) 「認める!」
(´・ω・`) 「だから代わりに、この、僕が」
(´・ω・`) 「十年前の真実を、教えてやろう」
( ::;゚_ゝ::) 「!?」
(;<●><●>) 「!?」
.
125
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:36:48 ID:h25gk5nA0
(;<●><●>) 「……できるのですか、警部!」
(´・ω・`) 「と、言っても、大枠は兄者が話した通りだ」
(´・ω・`) 「あんたは、夜、崖で貞子と会った」
(´・ω・`) 「何かの弾みで、結果的に、貞子を突き飛ばすことになった」
(´・ω・`) 「その時、兄者もバランスを崩して転び、額を打った」
( ::;゚_ゝ::) 「だから、そう言って……」
(´・ω・`) 「違う!」
(´・ω・`) 「十年前のあの時、ほんとうは!」
(´・ω・`) 「貞子はまだ、崖下に転落してはいなかったんだ!!」
.
126
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:40:02 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「!?」
( ::;゚_ゝ::) 「どうしてだ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「実際、転落してるんだぞ!!」
(´・ω・`) 「……矛盾ではあるが、偽りでない点」
( ::;゚_ゝ::) 「…!」
(´・ω・`) 「あんたが転んだのも」
(´・ω・`) 「額を打ったのも」
(´・ω・`) 「目を開けると同時に、崖下の貞子を見てしまったのも」
(´・ω・`) 「すべて、偽りでは、ない」
(´・ω・`) 「なのにそれはあり得ない。 物理的に、食い違う」
(´・ω・`) 「ここに、事件を解く鍵があったんだ」
.
127
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:40:23 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「でも……!」
(´・ω・`) 「夜に貞子と兄者」
(´・ω・`) 「ふたりとも、ただ転ぶだけで、崖下に落ちまではしなかった」
(´・ω・`) 「おかしくなるのは、ふたりの位置だ!」
(´・ω・`) 「だいたい、危ないッてわかってる崖の、それも、暗い夜」
(´・ω・`) 「ちょっと転んだくらいで即転落するような位置で、話なんてするか!?」
( ::;゚_ゝ::) 「だったら、どうして貞子は崖下に……」
(´・ω・`) 「言うまでもないさ!」
(´・ω・`) 「真犯人がいたんだよ!!」
(´・ω・`) 「貞子を殺した、真犯人が!!」
.
128
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:43:15 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「 」
( ::;゚_ゝ::) 「 なッ 」
(´・ω・`) 「一つひとつ、順を追って説明しよう」
(´・ω・`) 「まず、どうして位置が変わっていたのか」
(´・ω・`) 「そもそも、どうしてそれに兄者が気づけなかったのか」
目を閉じると、僕にも浮かんできた。
有無山の、現場となった、崖。
かなりの高所で、一般人が見ても恐怖に目が眩む。
(´・ω・`) 「……舞台は、そこにいるだけで心臓が張り裂けそうな、高所」
(´・ω・`) 「崖だ」
.
129
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:43:47 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「そこで、互いに悪気がなかったとはいえ、」
(´・ω・`) 「転んでもしてみろ」
(´・ω・`) 「………人間にとって、想像を絶する恐怖だ」
( <●><●>) 「!」
、 、 、、 、 、 、、 、 、、 、 、、
( <●><●>) 「ふたりとも転落すると勘違いして気絶したのですか!」
(´・ω・`) 「ただ転んだだけで気絶なんてできない」
(´・ω・`) 「まして、冷静に考えれば、相当運が悪くない限り、転落なんてしない」
(´・ω・`) 「だが、舞台が舞台だ」
(´・ω・`) 「そして何より」
> 、 、 、
>( ::;゚_ゝ::) 「貞子は、バランスを崩したんだ!」
>
>( ::;゚_ゝ::) 「落ちそうになったんだ!!」
> 、 、
>( ::;゚_ゝ::) 「俺は落ちそうになって、思わず手を……」
>
.
130
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:44:07 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「兄者自身が、口走っている!」
、 、
(´・ω・`) 「誰が落ちそうになったかなんて、本来錯綜しないのに!」
(´・ω・`) 「すなわち、兄者も転落を危惧したッていう証拠なんだ!」
( ::;゚_ゝ::) 「………」
( ::;゚_ゝ::) 「気絶……?」
(´・ω・`) 「額の傷は、その時にできた」
(´・ω・`) 「さて、次だ」
(´・ω・`) 「兄者は、目を覚ました」
(´・ω・`) 「気絶という非現実的な現象」
(´・ω・`) 「転落という非現実的な状況」
(´・ω・`) 「……自分が少しの間眠っていた、なんて、思わなかっただろうさ」
(´・ω・`) 「兄者視点で言えば、転んで、目を開けたら……ッてな風に思っちまうんだ」
.
131
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:44:27 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「じゃ、」
( ::;゚_ゝ::) 「じゃあ……俺は……」
(´・ω・`) 「目を覚ますと、そこは崖下だった」
(´・ω・`) 「でも、倒れた時は、地面に伏していた」
(´・ω・`) 「ここまで来たら、ひとつしかあり得ない!」
、 、 、、 、
(´・ω・`) 「真犯人が、兄者を崖先まで移動させたんだ!」
(´・ω・`) 「顔だけ出して、目を開いた瞬間に………」
(´・ω・`) 「真犯人が突き落とした!」
(´・ω・`) 「貞子の無残な姿を、目に焼き付けさせるために!」
.
132
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:44:49 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「 」
声にならない絶叫を、あげていた。
真犯人の思惑通り、目に焼き付けられてしまった、貞子の無残な姿。
兄者のトラウマとなって、この十年間、
誰にも打ち明けることなく、自分のなかに押し込めてきた、偽りの真実。
それが今、本当の真実を前に、浄化されていく。
十年間抱え込んできたものが、消えたのだ。
( ::;゚_ゝ::)
( ::;゚_ゝ::) 「だッ 誰だ!!」
( ::;゚_ゝ::) 「俺と貞子を貶めた、その 真犯人は!!」
(´・ω・`) 「言うまでもないね!」
(´・ω・`) 「その男の名は、ヒッキー小森だッ!!」
.
133
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:45:12 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「ばッ…馬鹿な!!」
(´・ω・`) 「奴にしかできなかったことがふたつある!」
(´・ω・`) 「ひとつ! 貞子を突き落とし、兄者の場所を移動させた!」
(´・ω・`) 「ヒッキーが額の傷をかばったのは、兄者を守るためじゃない!」
(´・ω・`) 「移動の真実を、偽りたかったから!」
( ::;゚_ゝ::) 「ッ!!」
(´・ω・`) 「もうひとつ!」
(´・ω・`) 「事件後の、目撃証言だ!!」
( <●><●>) 「!」
.
134
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:45:38 ID:h25gk5nA0
目撃は 「朝」 。
霧は 「なかった」 。
犯人の兄者以外が、そんな証言をすることは、できなかった。
本来ならば、できなかった。
言い換えれば、こうだ。
犯人だけは、そんな証言が、できる。
(´・ω・`) 「ヒッキーが、目撃証言をできた理由」
(´・ω・`) 「ヒッキーもまた、兄者と同じだ!」
(´・ω・`) 「夜!」
(´・ω・`) 「霧が無い時に!」
(´・ω・`) 「崖下に貞子がいるとわかっているから、目撃ができた!」
(´・ω・`) 「そしてそれは、真犯人にしかできない証言だ!!」
.
135
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:46:05 ID:h25gk5nA0
→BGMここまで
( ::;゚_ゝ::) 「ほ」
兄者が、泣きそうな声を絞り出す。
( ::;゚_ゝ::) 「本当……なのか?」
(´・ω・`) 「……心当たりは、あったんじゃないのか?」
( ::;゚_ゝ::) 「!」
(´・ω・`) 「貞子が相談を持ちかけてきた、とは言うが」
(´・ω・`) 「実のところ、それはヒッキーの話だった、んだろう」
>
>( ´_ゝ`) 「ヒッキーと、繋がりはあったんじゃないかな、とは」
>
>( ´_ゝ`) 「思ってたよ」
>
>(´・_ゝ・`) 「え。 まじ?」
>
>( ´_ゝ`) 「いやあ……怪しいんだけどさ」
>
>( ´_ゝ`) 「ヒッキーと貞子、って見ると、確かにお似合いだな、とは思うんだ」
>
.
136
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:46:27 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「………」
(´・ω・`) 「ああ、言わなくていい、心に秘めておけばいい」
(´・ω・`) 「無理に、関係まで暴くつもりはないし、確かめる手段もないんだ」
(´・ω・`) 「貞子が、ヒッキーのことを好きだったのか」
(´・ω・`) 「あるいは、ヒッキーこそが貞子に迫っていたのか」
(´・ω・`) 「また別の、既に恋仲だったからこその相談かもしれない」
( <●><●>) 「お言葉、ですが」
ワカッテマスが、切り出す。
( <●><●>) 「それは……断定させたほうがいいのでは」
( <●><●>) 「動機に、関わってきます」
(´・ω・`) 「いや。」
(´・ω・`) 「なんとなく、予想はできるんだ」
( <●><●>) 「と、言いますと」
.
137
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:46:55 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::) 「………」
(´・ω・`) 「ああ、言わなくていい、心に秘めておけばいい」
(´・ω・`) 「無理に、関係まで暴くつもりはないし、確かめる手段もないんだ」
(´・ω・`) 「貞子が、ヒッキーのことを好きだったのか」
(´・ω・`) 「あるいは、ヒッキーこそが貞子に迫っていたのか」
(´・ω・`) 「また別の、既に恋仲だったからこその相談かもしれない」
( <●><●>) 「お言葉、ですが」
ワカッテマスが、切り出す。
( <●><●>) 「それは……断定させたほうがいいのでは」
( <●><●>) 「動機に、関わってきます」
(´・ω・`) 「いや。」
(´・ω・`) 「なんとなく、予想はできるんだ」
( <●><●>) 「と、言いますと」
.
138
:
>>137ミス
:2018/11/05(月) 22:47:28 ID:h25gk5nA0
(´・ω・`) 「その後、どうなったかを考えてみろ」
(´・ω・`) 「貞子は、」
(´・ω・`) 「どうしてか起きていたヒッキーに」
(´・ω・`) 「どうしてか殺されかけて」
(´・ω・`) 「どうしてか兄者が罪をかぶせられたんだぜ」
( <●><●>) 「………」
(;<●><●>) 「ッ!」
ワカッテマスも、察しがついたようだった。
夜の、貞子の兄者への相談。
少なくとも、ヒッキーにとっても察しがついていた内容で、
更にそれは、ヒッキーにとってはこの上なく面白くない話だった。
.
139
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:49:21 ID:h25gk5nA0
( ::;゚_ゝ::)
( ::;゚_ゝ::) 「…………」
( ::;゚_ゝ::) 「………………」
結果として、ヒッキー小森は、亡霊に殺された。
また、真実がわかった以上、兄者に殺人未遂の容疑がかかることはない。
十年前の事件、動機を追究したところで、断罪する相手がいないのだ。
亡霊は断罪することができない、か。
まったくをもって、その通りだ。
( ::;゚_ゝ::) 「……」
( :;::_ゝ::) 「……」
兄者は、そっと目を閉じた。
次にその目を開いた時見えるのは、貞子がいない崖下なのだろうか。
.
140
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:49:57 ID:h25gk5nA0
十年前の開かずの扉は、開かれることになった。
.
141
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:50:32 ID:h25gk5nA0
'_
(´・ω・`) 、
くずおれた兄者を見つめていると、ポケットの電話が鳴った。
ワンコール、ツーコールと鳴っているそれの、番号を見る。
(´・ω・`) 「…」
(;´・ω・`) 「…ッ!」
発信者は、亡霊。
開かずの扉の向こうに伸びる、十年後の事件。
連続予告殺人事件を解決しなければならない時が、ついに来た。
.
142
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:50:52 ID:h25gk5nA0
『ショボーン警部』
『ヴィップ大学はご存じですよね』
『明日の朝十一時』
『ヴィップ大学に殺人予告を手配致しました』
『ショボーン警部にお願いがございます』
『盛岡デミタス、流石兄者と会わせていただきたいのです』
『応じていただけない場合』
『一般の方々に犠牲になっていただくつもりです』
『もちろん、同伴者は、警部、あなた一人』
『あなた以外の警官が、お見えになった場合』
『如何なる説得、譲歩があろうと、応じるつもりはありません』
『詳細は、明日の朝、十時』
『追って連絡差し上げます』
.
143
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:51:13 ID:h25gk5nA0
『これが、私からの、最後の殺人予告です』
.
144
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:52:48 ID:h25gk5nA0
第九幕「偽りを捕まえろ」は以上です
次回第十幕「亡霊を捕まえろ」と終幕「成仏」で完結予定 まだ合計200レス以上あるんだけど、、、
145
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:54:23 ID:mtW.QSwo0
乙
過去の謎がとけてとりあえずスッキリ
146
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 22:56:12 ID:o922bokA0
乙!
一つ謎が解けたけどまだまだ謎は多いな
本当にドキドキして面白いよ!
147
:
名無しさん
:2018/11/05(月) 23:27:59 ID:8obcPTjo0
うおおおおおお面白かったぞ乙!!!
解決編のアツさは尋常じゃない
148
:
名無しさん
:2018/11/06(火) 00:09:52 ID:qjzbqNB.0
乙ー!
残りの謎やら展開やら考えたら逆に後2、300レスで足りるのかと思った
149
:
名無しさん
:2018/11/06(火) 02:29:43 ID:wu5pSqx60
おつおつ!!
貞子は本当に誰が自分を殺したのかわからなかったんだな……
150
:
名無しさん
:2018/11/06(火) 04:09:33 ID:Pr/5L/QI0
つづきまだー!?
151
:
名無しさん
:2018/11/06(火) 13:36:45 ID:Bzmnqamg0
乙乙
今までの偽りシリーズの中で一番面白いわ
152
:
名無しさん
:2018/11/06(火) 19:36:22 ID:F3EWoKOE0
貞子には、出所後デミと一緒になる感じの余韻があるといいなぁ。
153
:
名無しさん
:2018/11/06(火) 21:11:47 ID:wauzFnzs0
デミタスとのフラグ一切ないのにやっつけでくっつけられても冷めるわ
154
:
名無しさん
:2018/11/06(火) 23:26:19 ID:Bzmnqamg0
ていうか出所できるわけがなかろう
四人殺してるんだぞ
155
:
名無しさん
:2018/11/07(水) 00:14:21 ID:f/NsJGoE0
そもそも塀の中に入るのか?今んところ本人証言しかないぞ
156
:
名無しさん
:2018/11/08(木) 12:30:33 ID:dA9M9K7M0
まだ電話切れてないなら
(´・ω・`)「犯人ヒッキーだったよ」
川д川「じゃあもうやめます」ってなりそうw
そうならないってことは一山もふた山もあるわけだし楽しみだ
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