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( ^ω^)戦国を歩いたギタリストのようです

324名無しさん:2020/12/23(水) 19:26:34 ID:L9irMuC20
 
(´メω・`)「ブーンが教えてくれたのは音楽そのものではない。音楽は誰でも平等に愛せるということだ。だから、ぎたーひとつで大勢の人間を救えた」

(´メω・`)「これは、そんなことすら理解できなかった俺にお似合いの曲だ。孤独な男の歩みの曲だ。だが、もう違う」

 
 渚本介に笑顔が宿る。
 出麗も、自分の心に少しずつ高揚が増していくのがわかった。
 
 
(´メω・`)「俺は、この曲をブーンに送り返そうと思う。俺の人生をかけて、この曲を、音楽を、音楽の持つ自由さを広め、未来に贈ろうと思う」

(´メω・`)「手伝ってくれるか、出麗」
 
 
 出麗の胸には、もはや怒りも戸惑いもなかった。

 この男は、音楽をまるで便利な道具のように捉えていた。そして、ブーンの音楽以外を認めていなかった。
 だが今は違う。音楽に向き合い、自分の人生を、音楽に捧げようとしている。
 まるでブーンの生き様のように。出麗の生き様のように。

 音楽を愛する、すべての人々と同じように。
 
 
ζ(゚ー゚*ζ「…うん」

.

325名無しさん:2020/12/23(水) 19:27:32 ID:L9irMuC20
 
 笑顔で頷く。

 渚本介も笑顔を返し、立ち上がって出麗のもとに歩み寄った。
 出麗の琴爪を、そっと差し出す。
 

ζ(゚ー゚*ζ「……」
 

 出麗はそれを受け取る際、渚本介の手に触れた。

 たまたま触れたのか、わざとそうしたのか、自分では判断がつかなかった。
 指先に感じた渚本介の温もりに、心臓が反応する。

 
(´メω・`)「…雪か」

 
 はっとする。
 渚本介は手に触れたことなど全く意に介さない様子で、格子の外を眺めていた。

 やっぱり、何を考えているのかよくわからない。

 
.

326名無しさん:2020/12/23(水) 19:28:03 ID:L9irMuC20
 
 
ζ(゚ー゚*ζ「そうね」
 
 
 降り注ぐ雪を見つめる二人。

 火を眺めるのも、雪を眺めるのも、気持ちは大して変わらない。
 誰と見るかが重要なのだ。

 心地の良い沈黙が、二人を包み込んだ。
 
 

 明応八年、十二月二十五日のことである。

 
 
 
 
  
 
 
――
 
 
 
.

327名無しさん:2020/12/23(水) 19:28:30 ID:L9irMuC20
 

 
――

 
 
('A`)「君たちに…報告がある…!」

( ^ω^)「は?」

ξ゚⊿゚)ξ「あ"?」

('A`)「それやめてくれない?」

 
 クリスマス当日。
 相変わらず冷え切った事務所内の一角で、ストーブの前で三人は集まっていた。

 
('A`)「君たちの作ったクリスマスソングだが…」

('∀`)「……絶賛大ヒット中でございますッッッ!!」

(*^ω^)「マジですか!!やっほーう!!!」

ξ゚⊿゚)ξ(ネットの評価見たらわかるだろ…)

 
.

328名無しさん:2020/12/23(水) 19:29:15 ID:L9irMuC20
 
 二人の作った曲は、見事に大ヒットした。
 ネット販売、動画共有サイトでの急上昇ぶりは恐ろしいほどだ。

 
('∀`)「いやはや、恐れ入ったよ。まさか本当にバズるとは思わなかった」

( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ(こいつ…)

('∀`)「この調子で頼むよ!音楽の世界では、有名になればなるほど軌道に乗りやすいからな!」

('∀`)「次はお正月ソングでも作ってもらおうかな!?つって」
 
( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ「あ"?」

('A`)「すみません」

 
.

329名無しさん:2020/12/23(水) 19:30:04 ID:L9irMuC20
 
 事務所を出て、同じアルバイト先に向かう二人。
 夕暮れの中、街灯やイルミネーションがうるさいほど二人に降り注ぐ。

 
(*^ω^)「ドクオさんの言う通り、結局は大成功だったおね」

 
 ブーンが嬉しそうに呟く。
 ツンはそっけなく相槌を打った。

 
(*^ω^)「音楽で生きるっていう夢が、徐々に現実になりつつあるお。なんだか実感わかないお」

ξ゚⊿゚)ξ「私もです。就活もしないでこの世界に入って、本当に成功しそうなのが信じられないです」
 
 
 ブーンは満足気に頷いた。

 二人の夢は共通している。音楽で生きていくということだ。
 その夢に日増しに近づいていく感じが、いい意味で、なんだかむず痒い。
 
.

330名無しさん:2020/12/23(水) 19:30:46 ID:L9irMuC20
 
( ^ω^)「それにしても、まさかクリスマスまでバイトのシフトぶち込まれると思わなかったお」

ξ゚⊿゚)ξ「どうせ予定ないでしょ」

(;^ω^)「いやそうなんだけど…あれ、ツンちゃんも予定ないのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ないですよ。相手いないし、いてもデートとかめんどくさいので」

( ^ω^)「てことは、今日は僕とコンビニデートするようなもんだおね」
 

 ブーンはいつもの調子で軽口を叩いた。
 そして、すぐ違和感に気づいた。
 いつもならメンタルを潰されるギリギリのツッコミを入れられるのだが、その反応がないのだ。

 思わずツンの横顔を見ると、彼女は少し顔を赤らめ、俯いていた。

 
ξ*゚ -゚)ξ「…そうですね」

 
 その声はあまりにも小さく、ブーンには届かなかった。

 心地の良い沈黙が、二人を包みこんだ。

 
 
 
 戦国を歩いたギタリスト 番外編

 完

.

331名無しさん:2020/12/23(水) 19:31:35 ID:L9irMuC20
以上です!!
皆様も良きクリスマスを!!!

332名無しさん:2020/12/23(水) 21:20:46 ID:5VHcFOBo0
クリスマスプレゼントありがとう


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