[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
( ^ω^)戦国を歩いたギタリストのようです
314
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:18:05 ID:L9irMuC20
――
(´メω・`)♪〜♪♪〜
ζ(゚д゚;ζ
(´メω・`)♪〜♪〜♪〜
ζ(゚д゚;ζ
出麗の部屋で琴を教え始めてから数日。
渚本介の覚えの速さは異常なほどで、基礎はあっという間にできるようになってしまった。
普通なら一か月以上はかかるであろうレベルに既に達している。
ζ(゚д゚;ζ「…ほんとに琴は初めてなの?」
(´メω・`)「ああ。ぎたーなら何度かあるがな」
ζ(゚д゚;ζ「それもおかしいけど…」
それにしても、上達が速すぎないだろうか。
渚本介の持つ音楽センスに驚きつつも、出麗はふと別のことが気にかかった。
.
315
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:18:52 ID:L9irMuC20
ζ(゚- ゚*ζ「そういえば、確かめたいことがあるって言ってたけど、ぎたーが弾けるから琴も弾けるかってこと?」
(´メω・`)「……いや」
琴爪を外し、丁寧に置く。
その仕草も既に様になっている。
(´メω・`)「俺は、ブーンを羨んでいた」
出麗と目を合わさず、琴を眺めながら渚本介が語る。
(´メω・`)「あいつの音楽に触れるたびに、俺は自分の人生の価値の無さを突き付けられる気分だった。俺は憎しい相手を追って刀を振っていただけだからな」
(´メω・`)「だがあいつは違った。自分の為に、ひたすら音楽の道を歩んでいた。俺が陰なら、あいつは陽だ。それが羨ましかった」
(´メω・`)「だから、天野を斬った後、俺はブーンからぎたーを習った。あいつのように、俺も音楽で人生が変わるんじゃないかと期待したんだ」
ζ(゚- ゚*ζ「……」
.
316
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:19:26 ID:L9irMuC20
無言で見つめる出麗。
渚本介は相変わらず下を向いている。
(´メω・`)「…だが、あいつが最初に未来に帰ったとき、俺は音楽から離れた。あいつの音楽はぎたーだ。そのぎたーが無いなら意味がないからだ」
(´メω・`)「そして、あいつはお前に曲を託した。未来から来た音楽を、この時代の琴に託したんだ。だから、触れてみたかった」
(´メω・`)「確かめたいのは、俺も音楽で人生が切り開かれるか、ということだ。ブーンの認めた琴なら――」
ζ(゚- ゚#ζ「もういい」
出麗が静かに話を切る。
その声は明らかに怒気を含んでいる。
渚本介は、一瞬、何が起きたか理解できなかった。
.
317
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:20:08 ID:L9irMuC20
ζ(゚- ゚#ζ「なら、ブーンがいなければ、私の琴は音楽ですらなかったってこと?」
(´メω・`)「いや、そういうわけでは…」
ζ(゚- ゚#ζ「そんな偉そうな姿勢で音楽に触れるのは、音楽家に対する侮辱よ。ブーンが示した音楽がすべてじゃない。ブーンだって、きっとそんなつもりでぎたーを弾いてない」
ζ(゚- ゚#ζ「気分が悪いわ。出て行って」
(´メω・`)「……」
暫く固まったあと、無言で立ち上がり、出麗の部屋を出た。
兵舎の裏庭で、ひとり座る。
渚本介は暫く戸惑った。なぜ出麗が怒ったのか理解できなかったからだ。
彼女を侮辱するつもりも、傷つけるつもりもなかった。
何が彼女を怒らせたのか、よくわからない。
.
318
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:20:32 ID:L9irMuC20
(´メω・`)「…火を起こすか」
いつもそうしているように、一人で火を起こし始める。
こうして外で作業をしていると、ブーンと旅をしていた日々を思い出し、気持ちが落ち着いてくるのだ。
ブーンはいつだって平和だった。彼の住む未来では、斬り合いなんか起きていない、平和な時代なのだと教えてくれた。
緩んだ顔が一瞬で固まり、手が止まった。
(´メω・`)「……」
ブーンと出会った日の、彼のある一言が、急に脳裏をよぎったからだ。
それは、芸能は高貴なものだと教えられたブーンが、憤慨して発した言葉だった。
.
319
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:20:53 ID:L9irMuC20
――音楽や芸能というものは人間すべてが楽しめるもので、愛すべきものなんですお!――
.
320
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:22:14 ID:L9irMuC20
(´メω・`)(ブーン…)
体が熱くなる。
そうか。そういうことだったのか。
熱がひたすら体中を駆け巡る。
火起こしを途中で放り投げ、渚本介は自室へと急いだ。
出麗に謝ろう。それはもちろんのことだ。
そして、出麗にある贈り物をしよう。今考えられる謝罪と弁明は、これしか思いつかない。
その準備が必要だ。
飛び込むように部屋に入ると、渚本介は一晩中それに打ち込んだ。
――
.
321
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:22:42 ID:L9irMuC20
――
翌日の夜。
渚本介は出麗の部屋の前に来た。
一つ深呼吸し、呼びかける。
思いっきり不機嫌な顔の出麗が、襖を開けた。
ζ(゚- ゚#ζ「…なに?」
(´メω・`)「謝りに来た」
堂々と言い切る渚本介。
謝る者の態度なのかと思いつつ、出麗は渚本介を中に入れた。
(´メω・`)「昨日のあの後、俺なりに考え込んだ。そして気づかされた。あれは音楽に対する、お前に対する非礼だった。申し訳ない」
ζ(゚- ゚#ζ「…なんで私が怒ったか、本当にわかってるの?」
(´メω・`)「勿論だ」
.
322
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:23:55 ID:L9irMuC20
そう言い切るなり、渚本介は立ち上がり、部屋の端にある出麗の琴へと歩き出した。
ζ(゚- ゚;ζ「は?何する気?」
(´メω・`)「一曲、聴いてくれ」
渚本介は琴爪をつけ、琴の前に座った。
何が起きてるか、何がしたいのか理解できない出麗の前で、渚本介は構わず演奏を始めた。
途端、出麗の目が大きく見開かれた。
(´メω・`)♪〜♪♪〜
ζ(゚- ゚;ζ「え、それもしかして…」
出麗は体が崩れそうになるのを堪えるのに必死だった。
その感情を、言葉として精一杯絞り出す。
ζ(゚- ゚;ζ「どうなってんの…それ…」
ζ(゚- ゚;ζ「ブーンの曲じゃない!」
.
323
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:24:44 ID:L9irMuC20
渚本介が弾いたのは、ブーンが残した名前のない曲だった。
出麗に琴を習っていた数日の間に、出麗が必死に書き写している琴用の楽譜を、渚本介は暗記していたのだ。
そして前の晩、渚本介はそれを別の紙に書き写し、自分なりに加筆し、見事その曲を完成させてしまった。
ζ(゚- ゚;ζ「……」
その才能の底知れなさに驚きながらも、出麗はやはり渚本介の考えがわからなかった。
まるで琴の腕前を自慢されているような気もしたが、渚本介がそんな嫌味なことをするはずがない。
曲が終わり、音の余韻が薄くなると同時に、渚本介は真っ直ぐ出麗を向いた。
(´メω・`)「…俺が間違っていた」
その声には、昨日の語りとは違った、明るい響きがあった。
.
324
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:26:34 ID:L9irMuC20
(´メω・`)「ブーンが教えてくれたのは音楽そのものではない。音楽は誰でも平等に愛せるということだ。だから、ぎたーひとつで大勢の人間を救えた」
(´メω・`)「これは、そんなことすら理解できなかった俺にお似合いの曲だ。孤独な男の歩みの曲だ。だが、もう違う」
渚本介に笑顔が宿る。
出麗も、自分の心に少しずつ高揚が増していくのがわかった。
(´メω・`)「俺は、この曲をブーンに送り返そうと思う。俺の人生をかけて、この曲を、音楽を、音楽の持つ自由さを広め、未来に贈ろうと思う」
(´メω・`)「手伝ってくれるか、出麗」
出麗の胸には、もはや怒りも戸惑いもなかった。
この男は、音楽をまるで便利な道具のように捉えていた。そして、ブーンの音楽以外を認めていなかった。
だが今は違う。音楽に向き合い、自分の人生を、音楽に捧げようとしている。
まるでブーンの生き様のように。出麗の生き様のように。
音楽を愛する、すべての人々と同じように。
ζ(゚ー゚*ζ「…うん」
.
325
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:27:32 ID:L9irMuC20
笑顔で頷く。
渚本介も笑顔を返し、立ち上がって出麗のもとに歩み寄った。
出麗の琴爪を、そっと差し出す。
ζ(゚ー゚*ζ「……」
出麗はそれを受け取る際、渚本介の手に触れた。
たまたま触れたのか、わざとそうしたのか、自分では判断がつかなかった。
指先に感じた渚本介の温もりに、心臓が反応する。
(´メω・`)「…雪か」
はっとする。
渚本介は手に触れたことなど全く意に介さない様子で、格子の外を眺めていた。
やっぱり、何を考えているのかよくわからない。
.
326
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:28:03 ID:L9irMuC20
ζ(゚ー゚*ζ「そうね」
降り注ぐ雪を見つめる二人。
火を眺めるのも、雪を眺めるのも、気持ちは大して変わらない。
誰と見るかが重要なのだ。
心地の良い沈黙が、二人を包み込んだ。
明応八年、十二月二十五日のことである。
――
.
327
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:28:30 ID:L9irMuC20
――
('A`)「君たちに…報告がある…!」
( ^ω^)「は?」
ξ゚⊿゚)ξ「あ"?」
('A`)「それやめてくれない?」
クリスマス当日。
相変わらず冷え切った事務所内の一角で、ストーブの前で三人は集まっていた。
('A`)「君たちの作ったクリスマスソングだが…」
('∀`)「……絶賛大ヒット中でございますッッッ!!」
(*^ω^)「マジですか!!やっほーう!!!」
ξ゚⊿゚)ξ(ネットの評価見たらわかるだろ…)
.
328
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:29:15 ID:L9irMuC20
二人の作った曲は、見事に大ヒットした。
ネット販売、動画共有サイトでの急上昇ぶりは恐ろしいほどだ。
('∀`)「いやはや、恐れ入ったよ。まさか本当にバズるとは思わなかった」
( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ(こいつ…)
('∀`)「この調子で頼むよ!音楽の世界では、有名になればなるほど軌道に乗りやすいからな!」
('∀`)「次はお正月ソングでも作ってもらおうかな!?つって」
( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ「あ"?」
('A`)「すみません」
.
329
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:30:04 ID:L9irMuC20
事務所を出て、同じアルバイト先に向かう二人。
夕暮れの中、街灯やイルミネーションがうるさいほど二人に降り注ぐ。
(*^ω^)「ドクオさんの言う通り、結局は大成功だったおね」
ブーンが嬉しそうに呟く。
ツンはそっけなく相槌を打った。
(*^ω^)「音楽で生きるっていう夢が、徐々に現実になりつつあるお。なんだか実感わかないお」
ξ゚⊿゚)ξ「私もです。就活もしないでこの世界に入って、本当に成功しそうなのが信じられないです」
ブーンは満足気に頷いた。
二人の夢は共通している。音楽で生きていくということだ。
その夢に日増しに近づいていく感じが、いい意味で、なんだかむず痒い。
.
330
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:30:46 ID:L9irMuC20
( ^ω^)「それにしても、まさかクリスマスまでバイトのシフトぶち込まれると思わなかったお」
ξ゚⊿゚)ξ「どうせ予定ないでしょ」
(;^ω^)「いやそうなんだけど…あれ、ツンちゃんも予定ないのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ないですよ。相手いないし、いてもデートとかめんどくさいので」
( ^ω^)「てことは、今日は僕とコンビニデートするようなもんだおね」
ブーンはいつもの調子で軽口を叩いた。
そして、すぐ違和感に気づいた。
いつもならメンタルを潰されるギリギリのツッコミを入れられるのだが、その反応がないのだ。
思わずツンの横顔を見ると、彼女は少し顔を赤らめ、俯いていた。
ξ*゚ -゚)ξ「…そうですね」
その声はあまりにも小さく、ブーンには届かなかった。
心地の良い沈黙が、二人を包みこんだ。
戦国を歩いたギタリスト 番外編
完
.
331
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 19:31:35 ID:L9irMuC20
以上です!!
皆様も良きクリスマスを!!!
332
:
名無しさん
:2020/12/23(水) 21:20:46 ID:5VHcFOBo0
クリスマスプレゼントありがとう
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板