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(´・ω・`)は偽りの亡霊を捕まえるようです

1 ◆wPvTfIHSQ6:2018/08/23(木) 01:38:11 ID:qgB33Ij20
 
 
▼シリーズ過去作
(´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです+α
http://boonsoldier.web.fc2.com/ituwari.htm
(´・ω・`)は偽りの根城を突き止めるようです+α
http://boonsoldier.web.fc2.com/ituwariII.htm
(´・ω・`)は偽りの絆をつなぐようです
http://boonsoldier.web.fc2.com/ituwariIII.htm
 
 
逃亡しないことを祈ってる
 
あと作中に過去作に登場した人物の名前が出たりしますけど
特に描写がなければまったくの別人物だと思ってください(スターシステム)
シリーズに複数回登場したAAがかぶることはないです

488名無しさん:2018/09/24(月) 12:42:49 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(;゚д゚) 「と、なると…」
 
(´・ω・`) 「流石兄者だ」
 
 
(´・ω・`) 「現状、犯人たりうるのは、奴しかいない」
 
 流石兄者。
 現在、三十四歳だろうか。
 
 ヴィップ大学在籍時の情報は得られたが、
 盛岡デミタスと違い、未だに奴は捕捉できていない。
 
 
 立ち上がって、ミセリに合掌一礼。
 呆然とするぎょろ目の背中に、一発平手を叩き込む。
 
(´・ω・`) 「頼んだぜ、先輩」
 
(´・ω・`) 「こっちは、任せろ」
 
(;゚д゚) 「……」
 
.

489名無しさん:2018/09/24(月) 12:43:19 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(;>д゚) 「  ぶえッくし!」
 
(´・ω・`) 「ぶっ」
 
 強く背中を叩いたからか、えらく情けないくしゃみをした。
 先ほどまでの沈着な態度はどこに行ったのか、気まずそうに鼻をすする。
 
 
(´・ω・`) 「なりふり構わず泳ぐからだ」
 
( ゚д゚) 「……歳は、いやですね」
 
(´・ω・`) 「まったくだ」
 
 
( ゚д゚) 「……すみません、鼻かみ、ありますか」
 
(´・ω・`) 「鼻かみ?」
 
( ゚д゚) 「ポケットに入れっぱなしで、濡れてしまって……」
 
(´;ω;`) 「……ぶひゃ、ひゃひゃ!」
 
 
 ポケットから、鼻かみと一緒にキャンディーも取り出す。
 ごつごつした手のひらに、叩きつけた。
 
.

490名無しさん:2018/09/24(月) 12:45:22 ID:BblhGUlY0
 
 
 
( ゚д゚) 「ン……これは」
 
(´・ω・`) 「鼻は大切にしろよ。 じゃあな」
 
( ゚д゚) 「どう、も。」
 
( ゚д) ・’
 っ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.

491名無しさん:2018/09/24(月) 12:48:49 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 
 
                                   |`ヽ       /|
                                   |.  \    /. i
                                   |   ヽ /   ノ
                                  !     `ー‐- '、
                                  |           .、
                                 l            !
                               r---ゝ           !
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                                l  :::::::::::::::゙ 、     _| n
    イツワリ警部の事件簿   File.4      `,_::::::::::::::::::::`ヽ, ノ,´αm
                              く  l  lへ、:::::::::::::::`'ー、r ||\
       第五幕   「 アネモネ 」           '  '、-_l  ヽ、::::::::::::::::::`>;;::;;:|
                                ` ..‐,,..、 丶、  冫:::::::::::/>;;;;;;;;\
                             ,'  /´      ::ヽ.:.:.:::::::::::::::丶_;;::;;::|
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.

492名無しさん:2018/09/24(月) 12:49:44 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 ┏━─
    午後十四時五七分  捜査本部
                      ─━┛
 
 
 
(;´・_ゝ・`)
 
( <●><●>) 「アリバイは、確かのようですね」
 
 
 覆面パトカーで、一度捜査本部まで戻ってきた。
 いま一度、核心に迫る必要があった。
 
 車に乗せたままだったデミタスに、ミセリが殺された旨を告げた。
 デミタスは顔を真っ青にして、言葉を失っていた。
 
 捜査本部までの同行を伺うと、ふたつ返事で快諾してくれた。
 すぐそこで、連続殺人の続きが起こってしまったのだ、当然だろう。
 
 また、消去法でいけば、犯人は流石兄者で、
 次、つまり最後のターゲットは、自分ということになる。
 デミタスが拒む理由は、どこにもなかった。
 
(;´・_ゝ・`)
 
(;´・_ゝ・`) 「……じゃあ、やっぱり」
 
.

493名無しさん:2018/09/24(月) 12:50:11 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 壁とペニーには、ひと段落つき次第、捜査本部に戻るよう指示した。
 できる限り早急な帰還が望まれたが、幸い、ふたりとも長引きはしなさそうだった。
 
 戻る際、ワカッテマスにも連絡を入れた。
 公園手前まで迫っていたようで、捜査本部に戻ったのは同刻だった。
 
 デミタスと出会った事件、密室鉄道にはワカッテマスもいた。
 もっとも、雑談などしていられる空気ではなかったが。
 
(´・ω・`) 「害者宅は、どうだった」
 
( <●><●>) 「鑑識を手配しています」
 
( <●><●>) 「情報は逐一私に送るよう言ってありますので」
 
 
(´・ω・`) 「……なにか、上がりそうか?」
 
( <●><●>) 「直観で言えば、望み薄かと」
 
 ミセリは、犯人と会うつもりで家を出た。
 それも、包丁と、決死の覚悟で。
 
 そんな女性が、部屋にあからさまな痕跡を残すとは思えなかった。
 書置きの類があったなら、ワカッテマスが押し掛けた時点で押収している。
 
.

494名無しさん:2018/09/24(月) 12:52:22 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(´・ω・`) 「となると、だ」
 
 びっしり書き込まれたホワイトボードを、目で辿る。
 貼ってあった写真の類は、スペースを広げるためにひっぺがした。
 そんななか、一番情報が少ないのは、右端、流石兄者の項目。
 
(´・ω・`) 「流石兄者、サークル部長」
 
(´・ω・`) 「奴こそが、事件の鍵となる」
 
( <●><●>) 「そして、現状容疑者筆頭、と」
 
(;´・_ゝ・`) 「…」
 
 現在わかっている情報は、少なかった。
 ヴィップ大学文学部。
 家族構成は両親と弟のみ。
 留年することもなく四年で卒業し、就職先は不明。
 
 大学では、就職についてアンケートをとっているようだが、
 回答に強制力はなく、流石兄者も回答を控えていた学生のひとりだった。
 
 警察のデータバンクに照会しても、ヒットしなかった。
 デミタスが異例だっただけで、だいたいの人間はヒットすることがない。
 
.

495名無しさん:2018/09/24(月) 12:54:09 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 ペニーが、実家にアプローチしている手筈だが、
 家族も、いま兄者がどこに住んでいるかはわからないらしい。
 
 隠そうとしているわけではなく、ただ単に話す機会がなかっただけとのこと。
 電話番号は把握しており、それは既に僕のもとまで上がってきている。
 取り込み中なのか、電話は今のところ、繋がっていない。
 
(´・ω・`) 「是が非でも、奴は確保する」
 
(´・ω・`) 「犯人ならもとより、犯人でなかったとしても、だ」
 
 
( <●><●>) 「保護を拒否した場合は」
 
(´・ω・`) 「サークルメンバーのうち、四人が殺されてるんだ」
 
(´・ω・`) 「拒むッてことは、もう確実に犯人だ」
 
(´・ω・`) 「その場で、犯行を立証してやるだけさ」
 
.

496名無しさん:2018/09/24(月) 12:54:39 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(;´・_ゝ・`) 「でも、あの人が犯人なら、どうして……」
 
(´・ω・`) 「そこを検討したくて、あんたをここまで呼んだ」
 
(´・ω・`) 「あのな、一般人は入れない場所なんだぜ、ここ」
 
(;´・_ゝ・`) 「……ども。」
 
 犯行を立証するにあたって、どうしてもネックとなるのが、動機だった。
 どうして、十年経った今になっての犯行なのか。
 そこを立証できなければ、逮捕は不可能だ。
 
 現状、犯人をぴたりと立証する決定的な証拠がない。
 状況証拠すべてが兄者を指し示したところで、焼け石に水なのだ。
 
 
( <●><●>) 「心当たりは、ないのでしょうか」
 
(;´・_ゝ・`) 「……心当たり、ッて」
 
( <●><●>) 「たとえば、そうですね……」
 
.

497名無しさん:2018/09/24(月) 12:55:00 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 具体例を示そうとしたところで、ワカッテマスが口ごもった。
 十年前に所属していたサークルでの、連続殺人。
 動機がまるで予想できないことに、ワカッテマスは気づかされた。
 
( <●><●>) 「…」
 
( <●><●>) 「警部は、どうお考えですか」
 
(´・ω・`) 「僕に振るなよ」
 
(´・_ゝ・`) 「少なくとも、僕は同窓会とか聞いてないよ」
      '_
(´・ω・`) 、
 
 
 同窓会、か。
 興味深い着眼点だ。
 
(´・_ゝ・`) 「ッてより、十年前から、連絡なんてなかったんだ」
 
(´・_ゝ・`) 「当時はスマホもなかったしね。 連絡手段は、メールか電話だよ」
 
(´・_ゝ・`) 「どっちも、変わったり忘れたりするもんさ」
 
.

498名無しさん:2018/09/24(月) 12:55:32 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 近年は、スマホアプリの進化で、手軽に連絡が取れるようになっている。
 それも、通信費以外料金がかからないシステムで、だ。
 
 アプリの利点は、携帯会社を変えても残るところだ。
 メールアドレスは会社を変えるとドメインが変わるし、
 電話番号も、手軽とはいえ手続きを踏まなければならない。
 
 電話番号のない格安スマホやSIMの普及で、
 電話番号そのものを手放すユーザーも少なくはない。
 となるといよいよ、連絡が取りづらい点がキーとなる。
 
 
(´・ω・`) 「でも、犯人は、把握していた」
 
( <●><●>) 「ヒッキー小森、ならびに芹澤ミセリへの電話がいい例です」
 
(´・_ゝ・`) 「え…?」
 
 デミタスがきょとんとする。
 まだ奴は知らない情報なのだ。
 情報の整理がてら、デミタスにも教えることにする。
 
 電話番号から発信着信の関係に至るまで、
 すべて、ホワイトボードに書かせておいた。
 
.

499名無しさん:2018/09/24(月) 12:55:58 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(´・ω・`) 「あんたは、050番号ッて知ってるかい?」
 
(´・_ゝ・`) 「ああ。 IP電話ですね」
 
(´・ω・`) 「知ってるのか」
 
(´^_ゝ^`) 「まあ……使ったことはないですが」
 
 焦点となるのは、050の、身元不明の番号だ。
 サービス提供会社、ならびに端末の会社に問い合わせたが、
 やはり名義貸しが噛んでいたらしく、特定は不可能らしい。
 名義主は多額の借金を持っていて、名義を売ったとのこと。
 
 売り先から暴こうかと思ったが、暴力団が関わってくるらしく、
 捜査四課にも協力を要請しているが、ガサ入れの取っ掛かりが掴めないようだ。
 
 
( <●><●>) 「四月三十日、この番号をヒッキー小森が受けています」
 
( <●><●>) 「また一昨日、五月四日、同じ番号を芹澤ミセリが応対」
 
(´・ω・`) 「僕も隣にいたね」
 
.

500名無しさん:2018/09/24(月) 12:56:25 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(´・_ゝ・`) 「その電話で、殺人予告を…?」
 
(´・ω・`) 「ああ、そうさ」
 
 自首しようと思う、その前に話をしたい。
 犯人の要求は、この一点だ。
 
 実際に自首するつもりで、なにか大切な話をしたかったのだろうか。
 その過程で、事態が急変して殺さざるを得なくなったのだろうか。
 
 最初から殺人を計画していたものを睨んでいるものの、
 ミセリが包丁を持っていってしまったのが面倒だった。
 そこから、正当防衛という名の反撃材料を与えてしまうことになる。
 
 
(´・_ゝ・`) 「だったら、声でわかるはず、ですよ」
 
(´・_ゝ・`) 「いくら十年経ったとはいえ、同じサークルの人なんだから」
 
( <●><●>) 「そこなんですよ」
 
(´・_ゝ・`) 「はい?」
 
.

501名無しさん:2018/09/24(月) 12:56:45 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 ワカッテマスが、デミタスにもわかりやすく教えるように、ホワイトボードを指さす。
 奴は我々が持つ最後の武器だ、ありったけの情報は共有しておきたい。
 
( <●><●>) 「ボイスチェンジャー、とでも言いましょうか」
 
( <●><●>) 「犯人は、機械で、声を変えていたんです」
 
(´・_ゝ・`) 「声を…?」
 
( <●><●>) 「なので、男か女か、すらわからないと」
 
(´・_ゝ・`) 「え?」
 
 
( <●><●>) 「何か」
 
(;´・_ゝ・`) 「えっと……ちょっと、整理していいですか」
 
( <●><●>) 「はい、ゆっくりと」
 
 デミタスは、ホワイトボードの人物名を舐めるように見渡す。
 殺された順に、擬古、小森、三階堂、芹澤。
 残るは、盛岡、流石。
 
 
(;´・_ゝ・`) 「……ごまかすまでもなく、男しかいないよね」
 
(;´・_ゝ・`) 「なんで、男女をごまかすような声が?」
 
.

502名無しさん:2018/09/24(月) 12:57:09 ID:BblhGUlY0
 
 
 
( <●><●>) 「……ム」
 
(´・ω・`) 「男女がわからない、ッてのはあくまで表現だ」
 
(´・ω・`) 「ポイントは、声の主がわからない、ッてところでね」
 
(;´・_ゝ・`) 「でも、兄者氏の話し方、すごいわかりやすいよ」
 
(;´・_ゝ・`) 「残ってるのも、僕と兄者だけ……なんだろう?」
 
( <●><●>) 「……」
 
 言われてみると、確かに気になるところではあった。
 このご時世、わざわざ変声機を使う必要があったのだろうか。
 
 隣に僕がいたなんてことは、犯人は知りようがない。
 自首する、話がしたい、という言い分を信じるなら、
 ミセリには声がばれても不利益は被らないはずである。
 
 
(;´・_ゝ・`) 「声をごまかしたところで、兄者氏かどうかはわかるし」
 
(;´・_ゝ・`) 「自首する、とか言ってる人が声を変えたりするかなあ?」
 
.

503名無しさん:2018/09/24(月) 12:57:35 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(´・ω・`) 「……」
 
 急所を突く指摘だとは、思わなかった。
 ただ、デミタスだからこその気づきであるには違いない。
 
 どうして、声を変えたのか。
 考えられるとするなら、兄者が口調を変えて、
 デミタスと兄者の区別がつかないようにした、などだろうか。
 
 
(;´・_ゝ・`) 「しかも、これから会おうとしてるんだよ?」
 
(;´・_ゝ・`) 「なのに、名乗らない、声もわからない、ッてのは」
 
( <●><●>) 「外部犯の可能性、というものを示すことができます」
 
(´・_ゝ・`) 「外部犯?」
 
 ワカッテマスが、横やりを入れる。
 なるほど、情報を検討するのにデミタスを呼んだのは正解だったようだ。
 
.

504名無しさん:2018/09/24(月) 12:58:41 ID:BblhGUlY0
 
 
 
( <●><●>) 「現状では、サークル内部の犯行である線が濃厚ですが」
 
( <●><●>) 「外部犯の介入の可能性が認められた時、」
 
( <●><●>) 「はじめて変声機の存在に意味が出てきます」
 
(´・_ゝ・`) 「外部犯の可能性って?」
 
(´・ω・`) 「それも検討したいから、あんたを招いたんだ」
 
 
(´・_ゝ・`) 「検討……たとえば?」
 
(´・ω・`) 「サークル外の誰かに恨みを買ったりさ」
 
(´・_ゝ・`) 「恨み……さすがに、ないかなァ」
 
 ただの、アウトドアサークルだ。
 そう簡単に、十年の歳月を経て蘇る怨恨などあるとは思えない。
 
 しかし、凶悪犯罪者の動機は、
 得てして被害者側にはその罪意識がないものだったりする。
 人は、思わぬところで恨みを買うものなのだ。
 
.

505名無しさん:2018/09/24(月) 12:59:13 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(´・ω・`) 「それも、併せて検討したい」
 
(´・ω・`) 「まず、成り立ちから聞かせてもらおうかな」
 
(´・_ゝ・`) 「成り立ち、か」
 
 デミタスとの話は、中途半端にしかできていなかった。
 今、犯人はアクションを起こしていない。
 落ち着いて話を聞ける、最後のチャンスかもしれない。
 
 
(´・_ゝ・`) 「まあ……」
 
(´・_ゝ・`) 「発端は、兄者氏だ」
 
( <●><●>) 「それは、何年生の時で」
 
(´・_ゝ・`) 「僕らが入学する前くらいだね」
 
( <●><●>) 「となると、部長が三年になるくらいのタイミングか」
 
 ワカッテマスが、ホワイトボードに書き加えていく。
 
.

506名無しさん:2018/09/24(月) 12:59:37 ID:BblhGUlY0
 
 
 
( <●><●>) 「キッカケは、聞いていますか?」
 
(´・_ゝ・`) 「ほら、三年にもなったら、暇になるからね」
 
(´^_ゝ^`) 「暇つぶしが欲しい、どうせなら青春がしたい…ッて」
 
(´・_ゝ・`) 「それで、ヒッキー氏も誘ってサークルを創ったんだ」
 
( <●><●>) 「ヒッキー小森……アルプス学院大学」
 
 
( <●><●>) 「どうして、よその大学の人を誘ったんでしょうか」
 
(´・_ゝ・`) 「さあ?」
 
(´・_ゝ・`) 「ただ、兄者氏とは昔からの仲らしくてね」
 
 
(´・ω・`) 「距離的には、まあまあ離れてるぜ」
 
(´・ω・`) 「ヒッキーは、そんなに活動には参加しなかったの?」
 
(´・_ゝ・`) 「まさか。 むしろ皆勤賞だよ」
 
.

507名無しさん:2018/09/24(月) 12:59:58 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 少々、疑問の余地はある。
 しかし、だからどうした、といった疑問でもある。
 
(´・_ゝ・`) 「あくまで、活動内容はアウトドアだ」
 
(´・_ゝ・`) 「アルプスとかシベリアにも行ったし」
 
(´・_ゝ・`) 「距離は大した問題じゃなかったんだと思うよ」
 
( <●><●>) 「そう言われては、そうですが…」
 
 
(´・_ゝ・`) 「逆に、アウトドアじゃなかったら、ヒッキー氏も参加してなかったと思う」
 
(´・ω・`) 「なるほどね」
 
(´・ω・`) 「そのふたりが中心となって、結成されたワケだ」
 
 まず、サークルのキッカケは、兄者とヒッキー。
 兄者が三年になるにあたって、暇つぶしにサークルを創設する。
 
 どうせなら、ということで青春を楽しむためにアウトドアを考案。
 アウトドアのため、唯一離れた位置に住まうヒッキーもこれを承諾。
 
.

508名無しさん:2018/09/24(月) 13:01:40 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(´・ω・`) 「メンバーは、どんな感じで集まったんだい?」
 
(´・_ゝ・`) 「勧誘、だね。 順番までは知らないけど」
 
(´・_ゝ・`) 「セリっちも、クックルも、ギコも言った通り」
 
(´・ω・`) 「口達者な兄者に惹かれたンだね」
 
 
( <●><●>) 「あなたは?」
 
(´・_ゝ・`) 「僕かい?」
 
 
(´^_ゝ^`) 「……その、いろいろ共通の趣味があって、盛り上がって……」
 
( <●><●>) 「そうでしたね。 シツレイしました」
 
 デミタスの趣味、ということで、ワカッテマスも合点がいった。
 思い出したくないことを思い出した、といった具合だった。
 
.

509名無しさん:2018/09/24(月) 13:02:03 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(´・ω・`) 「それ以上メンバーが増えることはなかったの?」
 
(´・_ゝ・`) 「次の年は、ビラ撒きとかしなかったね」
 
(´・ω・`) 「どうして?」
 
(´・_ゝ・`) 「居心地が、よくなったんだ」
 
(´・_ゝ・`) 「どうせ、兄者氏の思い付きでできた、ちいさなサークルだ」
 
 
(´^_ゝ^`) 「現時点で十分楽しいし、別にいっか、ッて」
 
( <●><●>) 「勧誘は、初年度のみ、と」
 
( <●><●>) 「みんなは、仲良かったので?」
 
(´・_ゝ・`) 「勿論」
 
.

510名無しさん:2018/09/24(月) 13:02:29 ID:BblhGUlY0
 
 
 
( <●><●>) 「なにか、個人間の諍いは」
 
(´・_ゝ・`) 「………」
 
( <●><●>) 「ありますか?」
 
 デミタスは、即答しない。
 諍いは事件解決の糸口となり得る可能性がある。
 なるたけ、慎重に伺いたいところだ。
 
(´・_ゝ・`) 「………」
 
(´^_ゝ^`) 「細かないざこざは、そりゃあ、しょっちゅうだよ」
 
( <●><●>) 「たとえば」
 
(´・_ゝ・`) 「うちのサークルさ、オタクとそうでない人が分かれてたんだ」
 
( <●><●>) 「芹澤ミセリなんかがそうですね」
 
.

511名無しさん:2018/09/24(月) 13:03:01 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(´・_ゝ・`) 「ギコ、クックルもオタク趣味はなかった」
 
(´・_ゝ・`) 「で、僕やヒッキー氏、兄者氏とは、文化が違うんだ」
 
 文化ときたか。
 
(´・_ゝ・`) 「酒にしてもそう、バーベキューにしても、そう」
 
(´・_ゝ・`) 「細かいところで噛み合わないことは、多かった」
 
( <●><●>) 「殺意に繋がるほどの大きな怨恨は?」
 
 
(´・_ゝ・`) 「……ないと思うよ?」
      '_
(´・ω・`) 、
 
 
( <●><●>) 「なにも、殺意に繋がる必要はない」
 
( <●><●>) 「男女のもつれ、借金、就職絡み」
 
( <●><●>) 「そういったところで残った種が、花開いた可能性もあります」
 
.

512名無しさん:2018/09/24(月) 13:04:16 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(´・_ゝ・`) 「少なくとも、就職はないな」
 
(´・_ゝ・`) 「兄者氏が、就職に無頓着だったんだ」
 
(´・_ゝ・`) 「だいたい、僕らが就活する前にサークルは終わったんだ」
 
( <●><●>) 「終わった、ですか」
 
(´・_ゝ・`) 「兄者氏が卒業したから、だよ」
 
 詮索されたくないのか、デミタスが先手を取った。
 
 
( <●><●>) 「卒業するのは、兄者とヒッキーだけ」
 
( <●><●>) 「他の四人で集まって遊んだりしなかったので?」
 
(´・_ゝ・`) 「なかったと思うよ」
 
( <●><●>) 「それはどうして?」
 
(´^_ゝ^`) 「………僕が、誘われてないからね」
 
( <●><●>) 「それは……失礼」
 
 
(´・ω・`) 「………。」
 
.

513名無しさん:2018/09/24(月) 13:04:40 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 やはり、おかしい。
 デミタスは、何かを偽っている。
 すごくわかりやすい態度だ。
 
 しかし、わかりやすいだけに、妙だ。
 昼頃の会話でも、奴は犯人の心当たりに関して、一切偽りは見せなかった。
 
 先ほどからも、節々で妙な態度を見せている。
 何かを隠しているのは、疑いようがない。
 
 ない、が。
 隠すとしたら、なんだ。
 
 自分も容疑者になり得る局面で、
 わざわざ犯人の心当たりをごまかしたりしないだろう。
 デミタスほどの小心者なら、尚更だ。
 
 
 自分が疑われてでも隠し通したいものでは、ない。
 ロジックを整理すると、こうなる。
  「隠し通したいことではあるが、それは犯人候補とは関わらない」 。
 
.

514名無しさん:2018/09/24(月) 13:06:17 ID:BblhGUlY0
 
 
 
( <●><●>) 「なら、男女のもつれは」
 
( <●><●>) 「男性ばかりのサークルに、女性がひとり」
 
( <●><●>) 「三角関係など、考えられないことではありません」
 
(´・_ゝ・`) 「あー、オタサーの姫だしね」
 
( <●><●>) 「姫、ですか」
 
(´^_ゝ^`) 「どちらかと言えば、女王かな?」
 
( <●><●>) 「はあ」
 
 ワカッテマスが呆れ返っている。
 奴は、まだデミタスの偽りに気づいていないのだろうか。
 
(´・_ゝ・`) 「……マ。」
 
(´・_ゝ・`) 「じつは、僕はそこまで詳しくないんだ」
 
.

515名無しさん:2018/09/24(月) 13:06:37 ID:BblhGUlY0
 
 
 
( <●><●>) 「詳しくない、ですか」
 
(´^_ゝ^`) 「クックルとセリっちの結婚も、知らなかったし」
 
(´・_ゝ・`) 「ただ、泥沼はあったかもしれないね」
 
( <●><●>) 「クックル、ミセリに加わる、三角関係ということで」
 
(´・_ゝ・`) 「……あったかも、だ」
 
 
(´・_ゝ・`) 「兄者氏は、たぶんなんでも知ってると思うけど」
 
( <●><●>) 「……なるほど」
 
 なんでも知っている。
 裏を返せば、我々の知らない動機を持っている可能性もある。
 
 いよいよ、兄者を確保する必要が生まれてきた。
 目下ペニーが兄者の後ろを追いかけているところだ。
 執念はショボーン班でも随一だ、必死に食らいついているとは思う。
 
.

516名無しさん:2018/09/24(月) 13:06:58 ID:BblhGUlY0
 
 
 
( <●><●>) 「ずばり、犯人に心当たりは」
 
(´・_ゝ・`) 「ないよ」
 
 既に、僕もかけた質問。
 デミタスは、迷いなく即答した。
 
( <●><●>) 「警察では、流石兄者の犯行だと睨んでいますが」
 
(´・_ゝ・`) 「僕も、ずっと、考えてたんだ」
 
(´・_ゝ・`) 「何か、あの人に僕らを皆殺しにする動機があったか、ッて」
 
( <●><●>) 「…結果は」
 
 
(´・_ゝ・`) 「兄者氏では、ないと思う」
 
( <●><●>) 「根拠は」
 
(´・_ゝ・`) 「人望、人柄、なにより今更になって僕らを殺そうとする理由がないこと」
 
( <●><●>) 「かつては、あったのですか?」
 
(´・_ゝ・`) 「元々なかったんだ、十年経った今殺す理由なんてましてない」
 
.

517名無しさん:2018/09/24(月) 13:08:12 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 ワカッテマスが押し黙った。
 デミタスの眼は、嘘を吐いているように見えない。
 
 現状わかっていることで消去法的に犯人を割り出すと、必然的に兄者となる。
 しかし、それがあまりにも不自然だ、と当事者が証言する。
 
 やはり、どこかに偽りが眠っている。
 
      '_
(´・ω・`) 、
 
(´・ω・`) 「僕だ」
 
 待ち望んでいた着信が、ついに来た。
 ペニサス伊藤から。
 一瞬、心臓がドクンと跳ねた。
 
 
  「やりましたよ」
 
(´・ω・`) 「!」
 
 思わず顔がほころぶ。
 ペニーの声には、明らかに闘志が宿っていた。
 
.

518名無しさん:2018/09/24(月) 13:09:45 ID:BblhGUlY0
 
 
 
  「流石兄者」
  「ただいま、一緒に捜査本部まで向かってます」
 
(´・ω・`) 「よくやった」
 
(´・ω・`) 「いまは……パトカーかい?」
 
  「一緒にいますよ」
  「任意同行です」
 
(´・ω・`) 「よし」
 
(´・ω・`) 「どこにいたんだ」
 
 
  「病院ですね」
  「アルプス神経病院です」
 
(´・ω・`) 「病院?」
 
.

519名無しさん:2018/09/24(月) 13:10:22 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 思わぬ施設が告げられた。
 兄者は、別に医療関係の人間ではないはずだ。
 
 見舞いにでも行っていたのだろうか。
 それにしても、ヴィップではなくアルプス、それも神経病院か。
 
 
  「その点に関しては、聞き出せなかったですね」
  「プライベートだから、と」
 
(´・ω・`) 「まあ、吐かせるのは後でいい」
 
(´・ω・`) 「どれくらいかかりそうだい?」
 
  「一時間は見積もっていただきたいですね」
 
 
(´・ω・`) 「……一時間か」
 
 時計を見やる。
 十五時二二分。
 
 アルプスからだと、車でもそれくらいはかかるか。
 短いようで、長い時間だ。
 
.

520名無しさん:2018/09/24(月) 13:11:58 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(´・ω・`) 「奴の様子は」
 
  「複雑そうな面持ちではありましたが……」
  「別段、反抗には出ていません」
 
(´・ω・`) 「なんて言って同行を求めた?」
 
  「連続予告殺人の重要参考人、と言えば、しぶしぶ」
  「いまは、窓の外を眺めて、ぼーっとしてます」
 
(´・ω・`) 「ふむ…」
 
 
  「今、そちらには誰が?」
 
(´・ω・`) 「僕とワカッテマスに、盛岡デミタスだ」
 
(´・ω・`) 「ぎょろ目は、公園殺人の初動捜査を担当している」
 
  「初動捜査に進展は」
 
(´・ω・`) 「ないね、今ンところは」
 
.

521名無しさん:2018/09/24(月) 13:14:31 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 奴が指揮を執って現状進展なし。
 言い換えれば、めぼしい証拠がない、ということで、
 それはすなわち、ミセリが持参した包丁も見つかっていない、ということだ。
 
 犯人が、持ち去ったのだろうか。
 あるいは、滝壺の底に沈み、泥に隠れたかもしれない。
 
 包丁の出所から、新しい情報が生まれるかもしれないが。
 少なくとも、犯行現場である滝口でミセリが落としたわけではなさそうだ。
 
 
(´・ω・`) 「詳しいことは、あんたが戻ってからにするよ」
 
  「頭が痛くなるくらいの冷たいコーヒー、お願いします」
 
(;´・ω・`) 「買ってこい!以上!」
 
 ペニーは、けらけら笑っているだろう。
 ショボーン班のなかでも、ひときわ感情に左右されやすい刑事だ。
 犯人を確保したり、容疑者を吐かせた時は、上機嫌に高笑いする。
 
 それが、心強くもあった。
 
.

522名無しさん:2018/09/24(月) 13:15:29 ID:BblhGUlY0
 
 
 
( <●><●>) 「確保、ですか」
 
(´・_ゝ・`) 「!」
 
(´・ω・`) 「任意同行だ」
 
( <●><●>) 「応じたんですね」
 
(´・ω・`) 「……そこが、ちょっと引っかかった」
 
 任意同行は、文字通り任意だ。
 仮に兄者が犯人だとして、こちらに証拠が一切ない以上、
 兄者には同行を拒否することができる。
 
 証拠がないことは伝えてないだろうが、
 それでも、兄者は、応じた。
 犯人では、ないのだろうか。
 
 
(´・_ゝ・`) 「……」
 
( <●><●>) 「だいたい、到着はいつ頃に」
 
.

523名無しさん:2018/09/24(月) 13:16:05 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(´・ω・`) 「一時間前後、かなァ」
 
( <●><●>) 「まあまあですね」
 
(´・ω・`) 「アルプスの病院にいたところを、捕まえたみたいだ」
 
 病院?
 ワカッテマスも食いついた。
 
(´・ω・`) 「別に、彼がかかっていたワケじゃない」
 
(´・ω・`) 「見舞いか、はたまた仕事関連か」
 
( <●><●>) 「……ふム。」
 
 兄者と病院を繋げるファクターは、見つかっていない。
 もっとも、それもまとめてペニーに聞けばいい話だ。
 
 兄者から、あるいはペニーから。
 どんな証言が飛び出すかわからない以上、
 現時点での検討に、あまり意味はないような気がしてきた。
 
.

524名無しさん:2018/09/24(月) 13:17:05 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(´・ω・`) 「……そうだな」
 
(´・ω・`) 「メシ、食うか」
 
( <●><●>) 「メシ、ですか」
 
        '_
(´・_ゝ・`) 、
 
(´・ω・`) 「そういや食ってなくてね」
 
(´・ω・`) 「あんたは?」
 
( <●><●>) 「いえ」
 
 高い身長に見合った肉体のワカッテマスだが、
 捜査中は滅多なことでは食事を取ろうとしない。
 
 時間を見つけて食うのもスキルのひとつだ、と説いたことはあるけど、
 若いうちは多少無茶をしてでもその他のスキルを磨きます、と返された。
 食事に限らず、あらゆる指摘が、若さを盾に反論されるのが常だ。
 
.

525名無しさん:2018/09/24(月) 13:19:36 ID:BblhGUlY0
 
 
 
(´・_ゝ・`) 「あれですか、カツ丼ですか」
 
(´・ω・`) 「バカ言え、そんな胃がもたれるモン食えるか」
 
( <●><●>) 「今日はなにがご所望ですか」
 
(´・ω・`) 「適当にうどんとおにぎり買ってきてくれ」
 
 
(´・_ゝ・`) 「え、うどん?」
 
(´・ω・`) 「表出てすぐにコンビニあったろ」
 
(;´・_ゝ・`) 「………ああ。」
 
 長財布から、札をワカッテマスに握らせる。
 生意気で、僕に反抗することも多い部下だけど、
 こと使いッ走りに関してはすんなりと応じてくれる男だった。
 
(´・ω・`)y 「あとコイツも」
 
( <●><●>) 「わかりました」
 
 煙草を吸う仕草を見せながら言った。
 ワカッテマスは煙草を吸わない。
 銘柄について詳しくはないと思うものの、僕のそれについては把握していた。
 
.

526名無しさん:2018/09/24(月) 13:23:07 ID:BblhGUlY0
 
 
 
( <●><●>) 「せっかくなので、あなたの分も」
 
(´・_ゝ・`) 「いや、いいですよ。 一緒に行きます」
 
( <●><●>) 「わかりました」
 
 デミタスも、ワカッテマスと一緒に部屋を出ていった。
 足音も聞こえなくなると、いよいよ空調以外なにも聞こえてこなくなった。
 
 
(´・ω・`) 「……」
 
 となるといよいよクチが寂しくなってくる。
 のっそりと、通い慣れた喫煙室に向かう。
 
 おそらく、野菜の多いうどんと、おかか握り辺りを買ってくるだろう。
 僕の愛飲する甘い缶コーヒーと、奴のことだから新聞も買ってくる。
 
 報道というものは、半日経つだけで内容がガラリと変わる。
 いま、世間が連続予告殺人というものをどう取り扱っているのかが気がかりだ。
 
.

527名無しさん:2018/09/24(月) 13:24:53 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 このたびの芹澤ミセリ殺人事件に関してもそうだ。
 もとより公に予告された殺人ではない。
 更に言えば、ミセリが連続予告殺人とリンクしていることも公表していない。
 
 ショボーン班に詳しい記者なんかが担当してしまえば、
 ぎょろ目が陣頭指揮を執っているのを見て、憶測を広げるかもしれないけど。
 たとえば、そう、朝曰新聞のあの男だ。
 ここ数年関係はないが、なるたけ関わりを持ちたくない男だ。
 
( ´・ω・)y-~~ 「……」
 
 
 紫煙を浮かべながら、不思議なものだと思った。
 既に忘れてしまっていたはずの事件の関係者と、
 まったく別の事件で出会うことになってしまった。
 
 盛岡デミタスがその最たる例だし、
 捜査協力ということで、既にオオカミ鉄道の総裁とも協力体制にある。
 燻ぶっている火種を見つめ、そういやあの男も愛煙家だったなァ、と思い起こされた。
 
 全国を揺るがす大きな事件だ。
 朝曰新聞社のエース、メガネのあの男も把握はしているだろう。
 なんだったら、我こそが、と名乗りを上げ担当になっているかもしれない。
 
.

528名無しさん:2018/09/24(月) 13:25:16 ID:BblhGUlY0
 
 
 
 オオカミ鉄道総裁とくだんのエース記者、
 そして僕は数年前に、極寒の地キタコレでプライベートを共にした過去がある。
 
 思えば、クックルの勤務地のひとつ、アスキーミュージアム。
 あの美術館の館長とも、面識があった。
 
 職柄、顔が広くなるのはおかしくないことだけど、
 時たま、因縁というものを痛感する出来事があるのも事実だった。
 
( ´・ω・)y-~~
 
( ´‐ω‐)y-~~
 
 機会があれば、酒でもひっかけに誘おうか。
 凶悪な事件に呑まれている時ほど、人のぬくもりに触れたく思う時はない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.

529名無しさん:2018/09/24(月) 13:26:15 ID:BblhGUlY0
序幕    >>2-69
第一幕  >>82-211
第二幕  >>218-296
第三幕  >>304-388
第四幕  >>398-468
第五幕  >>477-528

530名無しさん:2018/09/24(月) 14:05:24 ID:AWmaVxJk0
ミセリ、だめだったか…乙

531名無しさん:2018/09/24(月) 14:20:11 ID:nOfcqH0Q0

外部犯となってくるともう風呂敷畳めそうに無いんですが…

532名無しさん:2018/09/24(月) 14:53:44 ID:ZDF1.ONg0
( <_  )……

533名無しさん:2018/09/24(月) 14:54:51 ID:KC0i1iMg0
>>532
だよなぁ

534名無しさん:2018/09/24(月) 15:21:04 ID:.viglT.g0
まてまて予想はあかん

535名無しさん:2018/09/24(月) 16:08:59 ID:xS5Lkceg0
乙、ほんと乙

536名無しさん:2018/09/25(火) 03:24:27 ID:/hTg0xqI0
流石兄弟が犯人だとは思えんぞ
謎の呪いの力によるオカルトパワーで被害者は勝手に死んだんじゃないか?

537名無しさん:2018/09/25(火) 08:43:56 ID:YAxBONrg0
パンドラの箱からインチキ叔父さん登場

538名無しさん:2018/09/25(火) 12:39:23 ID:HwZFKvo.0
フォックスは偉い人
そんなの常識

539名無しさん:2018/10/03(水) 16:53:58 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 ┏━─
    五月六日  午後十六時二三分  捜査本部
                                ─━┛
 
 
      '_
(´・ω・`) 、
 
('、`*川 「警部!」
 
 じきに着く、という連絡をもらって、十分後。
 白衣をなびかせながら、颯爽とペニーが部屋に入ってきた。
 
('ー`*川 「キンッキンのコーヒー、ありますか?」
 
(´・ω・`) 「ワカッテマスが買っといてくれてるぞ」
 
('、`*川 「おおッやるう!」
 
 
(´・_ゝ・`) 「…!」
 
( ;´_ゝ`) 「…!」
 
.

540名無しさん:2018/10/03(水) 16:55:11 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 参考人を放置し、いの一番にコーヒーに飛びついた。
 喉がからからだったのだろう、喉を鳴らして飲み干すが、
 空き缶を机のうえに叩きつけてから大声で 「ぬるい!」 と叫んだ。
 
(´・ω・`) 「一時間前は冷たかったんだがなァ」
 
('、`#川 「一時間前ェ!?」
 
 
(´・ω・`) 「それはそうと……」
 
( ;´_ゝ`)
 
(´・ω・`) 「彼が、その?」
 
 落ち着きがない長身の男に歩みかけて、言った。
 ペニーは、言葉を詰まらせながら頷いた。
 
 
('、`*川 「流石兄者」
 
('、`*川 「くだんのアウトドアサークルの創設者にしてリーダー」
 
('、`*川 「アルプス神経病院に来館していたところ、任意同行に応じてもらいました」
 
.

541名無しさん:2018/10/03(水) 16:55:51 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 そうか。
 短く言って、咳払いをする。
 彼は、重要な参考人なのだ。
 
(´・ω・`) 「はじめまして。 捜査一課のショボーンです」
 
( ;´_ゝ`) 「……流石兄者です」
 
 
(´・ω・`) 「そうカタくなさらんでも」
 
(´・ω・`) 「別に、逮捕でも取り調べでもないんだから」
 
( ´_ゝ`) 「………まあ。」
 
 せわしなく、視線をデミタスに向ける。
 およそ十年ぶりの再会なのだ、気になるのも仕方ないだろう。
 デミタスも、様子を伺ったのち、歩み寄ってきた。
 
 
(´・_ゝ・`) 「……久しぶりです」
 
( ´_ゝ`) 「マジでな」
 
.

542名無しさん:2018/10/03(水) 16:56:22 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・ω・`) 「まあまあ」
 
(´・ω・`) 「立ち話もなんだし、適当なとこに座って」
 
 言うと、しぶしぶ二人は腰を下ろした。
 舞台が県警でなければ、
 二人は当時の仲を想起させるようなやり取りを見せていたのだろうか。
 
 デミタスは既にこの空気に慣れているけど、
 連れてこられたばかりの兄者はまだそわそわしていた。
 
 適当な部屋を押さえたりしてもよかったのだけど、
 一番情報が集約されているのが捜査本部だ。
 動くのが億劫で、時間が惜しまれる局面、わがままは言わせない。
 
 
(´・ω・`) 「エット」
 
(´・ω・`) 「確認だけど、十年前のアウトドアサークル……」
 
(´・ω・`) 「そのふたり、で間違いないんだよね」
 
.

543名無しさん:2018/10/03(水) 16:56:50 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・_ゝ・`) 「そうですね」
 
(´・_ゝ・`) 「この人は、間違いなく、流石兄者です」
 
( ´_ゝ`) 「別に言わんでも。 身分証明くらいできるわ」
 
(´・_ゝ・`) 「あ。 やっと免許取ったんですか!?」
 
( ´_ゝ`) 「バカにしやがって」
 
( ´_ゝ`) 「マイナンバーよ」
 
(;´・_ゝ・`) 「取ってねえのかよ!」
 
( ´_ゝ`) 「ガッハッハッハッハッ!」
 
(´・_ゝ・`) 「何わろとんねん」
 
 
(´・ω・`) 「……」
 
( <●><●>) 「どうやら、仲が良かったのは違いないみたいですね」
 
('、`*川 「疲れたし、ちょっと休憩いただきまーす」
 
('、`*川 「今日は豚骨の気分だな」
 
( <●><●>) 「きみの分の弁当も買ってるぞ」
 
('、`*川 「なッ……くそッ……」
 
.

544名無しさん:2018/10/03(水) 16:57:19 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 放っておくと、デミタスと兄者は延々と雑談のひとつ始めるだろう。
 それはそれで悪いわけではないが、事が事だ。
 これは常に手綱を握っておかないと、メンドウなことになりかねない。
 
(´・ω・`) 「兄者さん」
 
(´・ω・`) 「今回、どうしてここに呼ばれたか、ご存じ……ですよね」
 
( ´_ゝ`) 「ッ……」
 
 笑っていたのも束の間、
 一言そうかけるだけで、兄者は真剣な面持ちになった。
 
 
(´・ω・`) 「ただ、どこまで事を把握できているか、わからない」
 
(´・ω・`) 「おさらいも兼ねて、いま警察がわかっていることを共有します」
 
(´・ω・`) 「かいつまんで、だけどね」
 
( ´_ゝ`) 「……どうぞ」
 
.

545名無しさん:2018/10/03(水) 16:59:45 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 レーザーも、指示棒もいらない。
 視線をホワイトボードにやれば、二人は勝手に目で追ってくれるだろう。
 
(´・ω・`) 「すべての発端は、四月二十五日の深夜」
 
(´・ω・`) 「地下鉄にて、ひとりの男が刺殺された」
 
 
(´・ω・`) 「フッサール擬古」
 
(´・ω・`) 「心当たりは?」
 
 言うと、兄者もデミタスも、頷いた。
 
 
( ´_ゝ`) 「大学時代のサークルの、一員でした」
 
( ´_ゝ`) 「言って、大学以来しゃべることはなかったけど」
 
(´・_ゝ・`) 「同じく」
 
(´・ω・`) 「この件に関して、犯人は未だ逃亡中」
 
(´・ω・`) 「目下捜査中、といったところだ」
 
.

546名無しさん:2018/10/03(水) 17:00:51 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・ω・`) 「続けて、二件目」
 
(´・ω・`) 「四月三十日、あるビジホでひとりの男が殺された」
 
(´・ω・`) 「毒殺……に近しい形でね」
 
(´・ω・`) 「ヒッキー小森。 心当たりは」
 
 
( ´_ゝ`) 「あるに決まっている」
 
 兄者は迷いなく答えた。
 二人でサークルを立ち上げた、という話は嘘じゃないと見ていいだろう。
 
( ´_ゝ`) 「俺の、昔からのダチだ」
 
(´・ω・`) 「ちなみに、直近の交流は?」
 
( ´_ゝ`) 「ええと………」
 
      '_
(´・ω・`) 、
 
.

547名無しさん:2018/10/03(水) 17:01:40 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 ずっと交流があった、とでも言うかと思ったが。
 想像に反して、兄者は思考に耽りながら、ぽつぽつ、と言葉を紡いだ。
 
( ´_ゝ`) 「……そうだな」
 
( ´_ゝ`) 「少なくともここ数年は話してなかったけど……」
 
( ´_ゝ`) 「………ああ。 七年くらい前かな」
 
 七年くらい前か。
 大学を出た後も、別に絶縁したわけではない。
 しかし、疎遠には違いなかった、といったところ。
 
(´・_ゝ・`) 「なんで七年前?」
 
( ´_ゝ`) 「コミケがあったんよ」
 
( ´_ゝ`) 「ほんとグーゼン再会してさ。 ほら、中の人事件の年の」
 
( ´_ゝ`) 「ピンクレンジャーのやつ」
 
(´・_ゝ・`) 「あれかwwwwあれかwwww」
 
( ´_ゝ`) 「紅一点ならぬウン紅一点wwww脱糞事件www」
 
(´・_ゝ・`) 「くさそう(確信)」
 
.

548名無しさん:2018/10/03(水) 17:02:16 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・ω・`) 「七年前。 それはわかった」
 
(´・ω・`) 「つまり、ここ最近はさっぱりだった、と」
 
( ´_ゝ`) 「そ、そうですね」
 
(;´・_ゝ・`) 「失礼」
 
 ここはお前らのだべる場所じゃねえぞ。
 ポケットに手を突っ込み、ぎろりと睨むと我に返った。
 これは手間がかかりそうだ。
 
 
(´・ω・`) 「次。 これは有名だね」
 
(´・ω・`) 「ライブ殺人事件。 被害者は、三階堂クックルだ」
 
( ´_ゝ`) 「それで、俺も事件を知った」
 
( ´_ゝ`) 「……身震いしたね。 正直」
 
(´・ω・`) 「ちなみに、その頃あんたはどこで何を?」
 
.

549名無しさん:2018/10/03(水) 17:02:36 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
( ´_ゝ`) 「どうもしませんよ」
 
( ´_ゝ`) 「ネットライターしてんだけど、ツイッター見ながら仕事してただけさ」
 
(´・_ゝ・`) 「え、ライターしてんの?」
 
( ´_ゝ`) 「そうそう。 どこかは言わないけど、普通にでかい攻略サイトのね」
 
 兄者の職業に関しては、そこまで問題はないだろう。
 ミセリの一件で、本件が大学サークルのこじれであることはわかっている。
 
 それ以上に、ツイッターという点に引っかかった。
 三十代と言えど最近の若者、トレンドはニュースじゃなくSNSで収集しているらしい。
 
 
(´・ω・`) 「なるほどね」
 
(´・ω・`) 「……で、今日」
 
(´・ω・`) 「クックルの嫁の芹澤ミセリが、殺された」
 
( ´_ゝ`) 「え」
 
.

550名無しさん:2018/10/03(水) 17:03:04 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 兄者が、とたん無表情になった。
 刹那、全身をさぶイボが走ったようで、肩を一瞬震わせた。
 
(´・ω・`) 「知らなかった、ッてことでいいかい?」
 
( ;´_ゝ`) 「………マジ、で」
 
(´・_ゝ・`) 「間違いないッスよ」
 
(´・_ゝ・`) 「………滝公園、あるじゃん。 あそこだよ」
 
( ;´_ゝ`) 「え、マジ…?」
 
 殺されてまだ日が経っていないということもあるだろうが、
 何にせよ、まだ大々的には報じられていない、ということだろう。
 
 それ以上に、ペニーはそのことを伏せて連れてきてくれたのか。
 有難い話だ。
 
.

551名無しさん:2018/10/03(水) 17:04:13 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・ω・`) 「まず、クックルとミセリが籍を入れていた、ということ」
 
(´・ω・`) 「ご存じで?」
 
( ´_ゝ`) 「……そっか」
 
( ´_ゝ`) 「ケッコン、してたんだなァ……そっか……」
 
 反応を見るに、予感こそあったものの、
 入籍そのものは知らなかった、といったところか。
 
 籍を入れた、としか言っていないのに、
 短絡的に結婚と考えているのを見れば明らかだ。
 
 
(´・ω・`) 「事件は、起こったばかりだ」
 
(´・ω・`) 「目下捜査中だけど……同一犯の可能性は、非常に高い」
 
( ´_ゝ`) 「……連続殺人、ッてこと、ですよね」
 
(´・ω・`) 「ああ」
 
.

552名無しさん:2018/10/03(水) 17:04:47 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・ω・`) 「細かい情報はさて置くとして」
 
(´・ω・`) 「聞きたいことはたくさんある、今日お時間は大丈夫ですか」
 
( ´_ゝ`) 「入稿は済んでるし、大丈夫ですよ」
 
 言質は取った。
 デミタスと兄者、この二人は、事件解決まで僕の監視下に置く。
 
 容疑者でもあり、次の被害者候補でもある。
 どんな理由だろうと、もう二度と、ミセリのような犠牲を出すわけにはいかないのだ。
 
 
(´・ω・`) 「オッケー」
 
(´・ω・`) 「僕、堅苦しいのは嫌いだし、なんかつまみながらしゃべろうぜ」
 
( ´_ゝ`) 「はい……え、え?」
 
(´・ω・`) 「おい、なんかあったッけ」
 
.

553名無しさん:2018/10/03(水) 17:05:10 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 ワカッテマスに聞くと、首を傾げながら、コンビニ袋を漁った。
 奴も僕の性格はよく理解している、
 どうせこうなるだろうと予測がついていたようで、ある程度の菓子類も買ってくれていた。
 
(´・ω・`) 「なんか食おうぜ。 何から食う?」
 
( ´_ゝ`) 「は?」
 
(´・_ゝ・`) 「あーー、のり塩がいいです」
 
(´・ω・`) 「本当はビールが飲みたいけど、コーラでいいや」
 
 
( ´_ゝ`) 「……」
 
( ´_ゝ`) 「は??」
 
.

554名無しさん:2018/10/03(水) 17:05:57 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 ぐびぐびと喉を鳴らして、兄者はウーロン茶を飲んだ。
 緊張のためか、よほど喉が渇いていたようだ。
 半ばヤケクソのようにも窺える。
 
 
( ´_ゝ`) 「……」
 
( ´_ゝ`) 「で、何から話せばいいッスか」
 
(´・ω・`) 「事件で、いま一番気がかりな点がある」
 
( ´_ゝ`) 「ほう」
 
 
(´・ω・`) 「ずばり、ヒッキー小森の案件だ」
 
( ´_ゝ`) 「…!」
 
 ワカッテマスは、少し離れた位置から
 僕らの様子を窺ってくれている。
 情報の共有と併せて、僕が気づけなかった何かに気づいてもらいたいところだ。
 
.

555名無しさん:2018/10/03(水) 17:06:39 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・ω・`) 「ヒッキーは、毒殺に近しい形で殺された、と言った」
 
(´・ω・`) 「でも、厳密に言えば、アレルギーを利用したトリックなんだ」
 
( ´_ゝ`) 「アレルギー?」
 
 ピーナッツオイルが致死量盛られていた、常備薬。
 どのタイミングで盛ったかは、まだ見当がついていない。
 
 あれから、近辺の店や駅のカメラのデータを確認させたが、
 特段めぼしい情報は見つかっていなかった。
 
 
(´・ω・`) 「本件を内部犯の仕業と考えたのは、」
 
(´・ω・`) 「担当医や一部の人しか知り得ない情報で犯行に及ばれたからだ」
 
(´・ω・`) 「……ヒッキーのアレルギー。 知ってる?」
 
.

556名無しさん:2018/10/03(水) 17:07:01 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 アウトドア、ということは、当然バーベキューなんかも嗜む。
 バーベキューに限った話ではない。
 花見、月見、ビアガーデン、挙げればきりがないだろう。
 となると、どこかしらでその情報を知り得る可能性がある。
 
 ピーナッツ、というピンポイントなアレルギーだから知らない可能性もあり得るが。
 少なくとも、酒の味を知ったばかりの学生なら、
 肴にナッツ類を用意するのは至って自然で、そこから判明することもある。
 
 
( ´_ゝ`) 「……アレルギー?」
 
( ´_ゝ`) 「そんなの、あったっけ?」
 
(´・_ゝ・`) 「いや?」
 
(´・ω・`) 「食物アレルギーなんだ、」
 
(´・ω・`) 「ヒッキーが露骨に避けてた食べ物とか……思い出せない?」
 
 十年ほど昔の話だ。
 当時の光景を思い出すだけで結構な労力だろう。
 急かして吐かせるつもりなど、毛頭なかった。
 
.

557名無しさん:2018/10/03(水) 17:08:09 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
( ´_ゝ`) 「……」
 
(´・_ゝ・`) 「あーー。 トマト、無理でしたよね、あの人」
 
( ´_ゝ`) 「そういや」
 
 
( ´_ゝ`) 「イヤ。 でも、アレルギーじゃねえぞ」
 
( ´_ゝ`) 「ゴロッとした固形がだめで、パスタとか普通に食ってたし」
 
(´・_ゝ・`) 「ああ、アレルギー……だった」
 
(´・ω・`) 「アレルギー、となると、基本はエキスもだめだからね」
 
 例外もあるが、話す必要はない。
 要は、彼ら、内部の人間がアレルギーを知り得たかどうか、がキーなのだ。
 
 
( ´_ゝ`) 「好き嫌い……の話、じゃないんスよね?」
 
(´・ω・`) 「もちろん」
 
(´・ω・`) 「好き嫌いなら、過剰摂取して死ぬことはない」
 
.

558名無しさん:2018/10/03(水) 17:08:39 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・_ゝ・`) 「あれですよ、甲殻類」
 
(´・_ゝ・`) 「ほら昔、サビキで釣る時、オキアミ無理とか言ってた」
 
( ´_ゝ`) 「いやあれは、単純に臭いがキライってだけだったろ」
 
(´・_ゝ・`) 「でも、甲殻類食ってるとこ、見たことあります?」
 
( ´_ゝ`) 「潮干狩りの時、アホほどアサリ食ってたぞ」
 
 
(´・ω・`) 「……」
 
 しっかし、よく出るよく出る。
 釣り、サビキ、潮干狩り。
 動機やメンバーはどうであれ、なるほど確かに、アウトドアを満喫していたようだ。
 
( ´_ゝ`) 「てか」
 
( ´_ゝ`) 「そーゆーのッて、司法解剖…?」
 
( ´_ゝ`) 「とかで、特定できるもんじゃないんスか?」
 
.

559名無しさん:2018/10/03(水) 17:09:26 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 チッ。
 ここでピーナッツの話が出てきたらよかったのだけど。
 これはいよいよ、面倒なネックになりそうだ。
 
(´・ω・`) 「あれ」
 
(´・ω・`) 「ああ、ごめんごめん、言ってなかったっけ」
 
 
(´・ω・`) 「ピーナッツだ」
 
(´・ω・`) 「彼は、重度のピーナッツアレルギーだったらしい」
 
 知らないのか、あるいは、とぼけているのか。
 どちらにせよ、ホテル殺人を解き明かすうえで、ひとつの障壁となる。
 
 サークルとホテル殺人を結ぶのに、この穴は埋めなければならないのだ。
 でなければ、犯人がどうやってヒッキーを殺したのか、が争点となってしまう。
 
 
( ´_ゝ`) 「ピーナッツ?」
 
(´・_ゝ・`) 「知ってました?」
 
( ´_ゝ`) 「いや?」
 
.

560名無しさん:2018/10/03(水) 17:09:53 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 アレルギー、というものは、特に話題がなければ自ら話すことはない。
 たとえば、ワカッテマスは軽度のそばアレルギーだ。
 花粉症などと違い、食物アレルギーというのはそこまで知られるものではない。
 
(´・ω・`) 「え、なに」
 
(´・ω・`) 「あんたら、酒飲む時、ミックスナッツとかつままなかった?」
 
( ´_ゝ`) 「いやあ……どうだっけ」
 
(´・_ゝ・`) 「そんな、オッサンじゃないし」
 
 こ、こいつ。
 
 
( ´_ゝ`) 「ツマミとなりゃあ、焼き鳥とか卵焼きだったし」
 
( ´_ゝ`) 「自分らで飲む時も、するめとかポテチだったなァ」
 
(´・ω・`) 「それは、ヒッキーが選んで?」
 
( ´_ゝ`) 「いや?」
 
( ´_ゝ`) 「その時買う人が、適当に買ってたもんですよ」
 
(´・ω・`) 「……ム。」
 
.

561名無しさん:2018/10/03(水) 17:10:15 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・_ゝ・`) 「セリっちは、よくチョコ買ってたけど」
 
( ´_ゝ`) 「あーー。 クックルはチキン食わなかったな」
 
(´・_ゝ・`) 「思い出した! キタコレ行った時も、あいつだけニゲット食わなかった!」
 
( ´_ゝ`) 「あれだ、お前、するめだけ食わなかっただろ」
 
(´・_ゝ・`) 「するめが好きな野郎とは相容れない」
 
 こ、こいつ。
 
 
(´・ω・`) 「なるほど、わかった」
 
(´・ω・`) 「あんたらは、ヒッキーのアレルギーについては知らなかった、と」
 
( ´_ゝ`) 「ピーナッツ……ピーナッツ、か……」
 
( ´_ゝ`) 「食ってた、と言われたらそんな気もするし……」
 
 これ以上詮索すると、勘違いが起こり得る。
 早いうちに切り上げることにしよう。
 
.

562名無しさん:2018/10/03(水) 17:11:03 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 仮に、ここでピーナッツを食べていた、と言われても、
 アレルギーというのは、ある日を境に突然発症することもある。
 先天的なアレルギーばかりが話にあがるが、後天的なものも十分あり得る話なのだ。
 
 それよりも問題は、ここで周知の事実だった、という情報が得られなかったことだ。
 逆に、ここで知らない、と言っておけば容疑の目から逃れかねない。
 もっとも、デミタスも知っていればその回避も防ぐことができたのだけど。
 
 
(´・ω・`) 「次」
 
(´・ω・`) 「この番号、見たことある?」
 
(´・ω・`) 「こう、着信がきたり、さ」
 
 視線を遣って、例の050番号を見せる。
 この番号が犯人だ、ということは書いていない。
 犯人の番号だ、と明示しないのも、ちょっとした話術だ。
 
( ´_ゝ`) 「…?」
 
( ´_ゝ`) 「いや、ないね」
 
.

563名無しさん:2018/10/03(水) 17:11:32 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 一瞬、ピンときた。
 取っ掛かり、と言えるほどでもないが、突起はあった。
 
(´・ω・`) 「ん? 確認しなくていいの? 履歴」
 
(´・ω・`) 「番号なんて、いちいち記憶してられないっしょ」
 
( ´_ゝ`) 「いや……これ、IP電話でしょ」
 
( ´_ゝ`) 「俺、IP電話はチャッキョしてるから」
 
 チッ。
 いまいち空回りで、思わず舌打ちが出る。
 
 デミタスもだが、さすがに機械に強そうな若者なだけあって、
 050という並びを見ただけで、即座にIP電話とつなげることができている。
 
 
(´・ω・`) 「詳しいね」
 
( ´_ゝ`) 「前に、格安スマホの営業に引っかかってさ」
 
( ´_ゝ`) 「電話線じゃなくて、050番号にすれば月千円もかかりませんよ!とか聞いて」
 
(´・_ゝ・`) 「あーーあるある」
 
.

564名無しさん:2018/10/03(水) 17:12:17 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
( ´_ゝ`) 「軽く調べたら、実は結構アブナい番号らしいじゃん」
 
( ´_ゝ`) 「もし、どこかで見てたとしても、覚えてないね」
 
 ポイントは、兄者も050番号には通じている、という点だ。
 裏を返せば、その特性を利用して犯行に利用することもできた、ということ。
 
 兄者が犯人と決まってこそいないが、
 こういったところからでも、疑うべきかどうか、ということが掴める。
 
 
( ´_ゝ`) 「その番号が、どうかしたんスか」
 
(´・ω・`) 「ああ。 犯人の番号なんだ」
 
( ;´_ゝ`) 「なッ……」
 
 一瞬、兄者がよろめく。
 意図を隠して番号を見せたため、犯人のものだ、と予測つかなかったのか。
 あるいは、ただの演技、偽りか。
 
.

565名無しさん:2018/10/03(水) 17:12:45 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・ω・`) 「そっか、珍しい番号だから見覚えあるかな、ッて思ったんだけど」
 
( ´_ゝ`) 「いや……すんません」
 
(´・ω・`) 「いいよ、もう特定はしてるからね」
 
( ´_ゝ`) 「え?」
 
 今のも、話術のひとつ。
 かけた本人が誰か、なんてのは当然、わかってない。
 
 ただ、名義を貸した人と、それで商売していた暴力団については特定している。
 嘘はついていないぜ。
 
 
(´・ω・`) 「どしたの?」
 
( ´_ゝ`) 「いや……え、だったら犯人わかってるんじゃあ……」
 
 クソ。
 引っかからないか。
 
.

566名無しさん:2018/10/03(水) 17:14:06 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・ω・`) 「まあまあ。 そこらは捜査機密ッてやつさ」
 
(´・ω・`) 「そうだなあ。 次」
 
 謎、という謎は多岐にわたる。
 特に、触れてないところで言えば、ライブ殺人。
 
 クックルを呼び出した方法や、カメラの死角を知っていたこと。
 しかし、それらでうまく鎌をかける方法が思いつかない。
 
(´・ω・`) 「……そうだな」
 
 
(´・ω・`) 「根本的なところだ」
 
(´・ω・`) 「兄者さん」
 
( ´_ゝ`) 「はい」
 
.

567名無しさん:2018/10/03(水) 17:15:19 ID:uwtrYaCY0
支援支援

568名無しさん:2018/10/03(水) 17:30:43 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・ω・`) 「知っての通り、本件は、」
 
(´・ω・`) 「十年前、ヴィップ大学にあったアウトドアサークルの面々が織り成す事件だ」
 
( ´_ゝ`) 「……」
 
 
(´・ω・`) 「当時揉める、ならともかく」
 
(´・ω・`) 「十年経った今になって、大々的な連続殺人が起こっている」
               、 、
(´・ω・`) 「その、動機……心当たりはありますか?」
 
 
 核心だ。
 兄者が犯人かどうかなんかより、重要。
 というより、消去法以外、彼を指し示す根拠が一切ない。
 
 犯人だったら、その時に追い詰めれば、いい。
 目下優先して得るべき情報は、動機、因縁、過去の話だ。
 
.

569名無しさん:2018/10/03(水) 17:31:09 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
( ´_ゝ`) 「………」
 
( ´_ゝ`) 「………」
 
 
(´・ω・`) 「……」
 
(´・_ゝ・`) 「……」
 
 
 兄者が、黙る。
 静かになり、デミタスも、菓子をつまむ手を、一旦止めた。
 
 考え込んでいるのかもしれないが、
 その割には、その仕草を見せようとしていない。
 
 
( ´_ゝ`) 「………」
 
(´・ω・`) 「……肯定も否定もない、ッてことは」
 
(´・ω・`) 「あるんですね?」
 
.

570名無しさん:2018/10/03(水) 17:32:09 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
  「いや」 。
 兄者は、その言葉にはすぐに反応を示した。
 
 
( ´_ゝ`) 「そりゃあ、いろんな揉め事は、ありましたよ」
 
( ´_ゝ`) 「でも……それと、十年後ッてのが、いまいちリンクしない」
 
(´・ω・`) 「まあ、それは」
 
 それは、僕も気になっていた点だ。
 十年、とは言うが、厳密には十年きっかりではない。
 
 過去の清算、と言ってきっかり十年後に起こった犯行ではない。
 犯人が、形に拘っているわけでないというのはわかっていることだ。
 
 
 となると必要なのが、どうして今、
 十年 「ほど」 昔の関係を、清算する必要があったのか。
 その理由づけ、裏づけ、動機づけ。
 
.

571名無しさん:2018/10/03(水) 17:42:14 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・ω・`) 「この際、どうして今になって、ッてのは置いとこう」
 
(´・ω・`) 「サークルであった、でかい事件……何がある?」
 
( ´_ゝ`) 「……」
 
 またも、沈黙。
 含みがあるのかどうかが掴めないのが、もどかしいところだった。
 
 
( ´_ゝ`) 「……いや」
 
( ´_ゝ`) 「あんまし、人に言いたいことじゃ、ないんだけど……」
 
 脅すか。
 
 
(´・ω・`) 「はい問題!」
 
( ´_ゝ`) 「は?」
 
(´・ω・`) 「ここ、どーこだ!」
 
( ´_ゝ`) 「え、どこッて…」
 
.

572名無しさん:2018/10/03(水) 17:43:49 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 無機質な捜査一課分室。
 白い壁の一面、ホワイトボードには、事件の概要が書いてあって、
 その手前、セミナーには、生々しい証拠物件の多数が並んでいる。
 
 ふと窓の外を見やれば、パトカーが多く停まっている。
 警官服姿の人も多数いるし、なんなら、目の前にはスーツを着込んだ刑事がいる。
 
 
( ´_ゝ`) 「………警察」
 
( ´_ゝ`) 「警察、ですね」
 
(´・ω・`) 「厳密に言えば、警察本部」
 
(´・ω・`) 「ポリがうじゃうじゃいる、本丸ど真ん中」
 
 
( ´_ゝ`) 「……あのーー」
 
( ´_ゝ`) 「どんなくッだらねえ話でも、しゃべらないと逮捕されるんです?」
 
 察したか。
 しかし、肝が据わっているように見える。
 
(´・ω・`) 「いや、しないよ?」
 
.

573名無しさん:2018/10/03(水) 17:45:16 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 嘘は吐けないんだ。
 近年、警察による強引な取り調べが問題になっている。
 自白の強要、証言のねつ造、と。
 
 さすがに、そんな悪行に走るつもりはないけど。
 何かを察して、あるいは何かに怯えて、
 隠し事をしよう、という気さえなくしてくれれば、僕はそれでいいんだ。
 
 
( ´_ゝ`) 「まあ、別にいいですけどね?」
 
(´・ω・`) 「オッいいね〜〜!」
 
( ´_ゝ`) 「ただ、まァーーじで、くッだらねえもんスよ」
 
(´・ω・`) 「ほうほう、たとえば」
 
.

574名無しさん:2018/10/03(水) 17:47:06 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
( ´_ゝ`) 「一番ヤバかったの、なんだろう?」
 
(´・_ゝ・`) 「………あーー」
 
(´・_ゝ・`) 「あれだ、オナラ事件」
 
( ´_ゝ`) 「あーーー確かに」
 
(´・ω・`)
 
 これは本当に、くッだらねえ話しか出てこない可能性もあるな。
 もしかすると、本当に、彼らは何も知らないのだろうか。
 
 まさか、現職刑事、それも警部が目の前にいる状況で、
 オナラ、え、いまオナラとか言ったか。
 そんな品のない話をするつもりというのか。
 
 あるいは、そんなレベルの話しかない、というのか。
 勘弁してくれ。
 
.

575名無しさん:2018/10/03(水) 17:47:47 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・ω・`) 「………概要だけ、言ってくれ」
 
(´・_ゝ・`) 「あれですよ」
 
(´・_ゝ・`) 「キャンプしてた時、みんなコテージで寝たんだけどね」
 
(´・_ゝ・`) 「この人が屁ェ扱いて……」
 
( ´_ゝ`) 「うんうん」
 
 うんうんじゃねえ。
 
 
( ´_ゝ`) 「ちょっとしたオチャメ心で、俺じゃない、ッて言ったんだ」
 
( ´_ゝ`) 「でも場所が悪かった。 近くにはセリっ……芹澤さんしかいなくて」
 
(´・_ゝ・`) 「で、その時セリっちは、おなか壊してたもんで」
 
 タイミングが悪すぎる。
 
 
( ´_ゝ`) 「ンもうあの子、バチギレよ」
 
( ´_ゝ`) 「でも、俺も言ったからには後に引けなくて……つい……」
 
 いや引けよ。
 
.

576名無しさん:2018/10/03(水) 17:48:31 ID:RuNqH/eU0
 
 
( ´_ゝ`) 「臭いの実況とかしてたら、あの子、半分泣きながら暴れて……」
 
(´・_ゝ・`) 「あの時、まじであの子、泥酔だったからなァ……」
 
 なんてことをしてくれるんだ、こいつら。
 僕だっていやだぞ、そんなの。
 
 
( ´_ゝ`) 「ほら、見てよ、これ」
 
( ´_ゝ`) 「あの子に突き飛ばされて、ベッドの角に脛ぶつけたんだけど」
 
( ´_ゝ`) 「まあ、凹んじゃってね。 痕がまだ残ってる」
 
 確かに一大事すぎるが。
 もしそれが原因で連続予告殺人になったとしたら、犯人はあんただぞ。
 
 
(´・_ゝ・`) 「あれよ、あの子、言ったら姫だったわけじゃん」
 
(´・_ゝ・`) 「みんな、あの子の家に謝りにいったりしてさァ」
 
 小学生かよ。
 
.

577名無しさん:2018/10/03(水) 17:49:29 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(;´・ω・`) 「……わかった、わかった」
 
(´・ω・`) 「で、紅一点の彼女にサークルを抜けられたら困る、と」
 
 
( ´_ゝ`) 「え、紅一点?」
 
 
(´・ω・`) 「ん?」
 
( ´_ゝ`) 「……いや、なんでもない」
 
( ´_ゝ`) 「そう。 姫だからね。 オタサーの姫さ」
 
( ´_ゝ`) 「それもオタクっ娘じゃなくて、マジな陽キャ美人だからね」
 
(´・_ゝ・`) 「セリっち、まじで可愛かったよね」
 
( ´_ゝ`) 「そうそう、今だから言うけど、最初女王に目覚めた時、実は勃ってたよ俺」
 
(´・_ゝ・`) 「ちょwwwww不謹慎だけどwwwwおいwwww」
 
( ´_ゝ`) 「だってwwwwww」
 
(´・_ゝ・`) 「自分は毎回勃ってた」
 
( ´_ゝ`) 「おwwwwまwwwwえwwwwwコラwwwww」
 
( ´_ゝ`) 「俺もだよ言わせんな恥ずかしい」
 
(´・_ゝ・`) 「wwwwwwwwwwwwww」
 
.

578名無しさん:2018/10/03(水) 17:50:39 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 二人が談笑に入った隙に、思わずワカッテマスに一瞥を与える。
 同感だったようで、ワカッテマスもすぐ、隣まで寄ってきた。
 
( <●><●>) 「……いまのは、間違いないですね」
 
(´・ω・`) 「ああ。」
 
 ついに見つけた、取っ掛かり。
 現代の船から、過去の記憶をサルベージするための、きっかけ。
 
       、 、、 、  、、 、 、
(´・ω・`) 「いたんだ。 もう一人。」
 
( <●><●>) 「それも……察するに、女性」
 
 
 今までの、デミタス、ならびにミセリとの会話が、フラッシュバックする。
 僕が常々引っかかっていた、
 しかし取っ掛かりが見つけられないでいた、ひとつのテーマ。
  、 、
 人数だ。
 
 
.

579名無しさん:2018/10/03(水) 17:51:09 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
  >
  >( <●><●>) 「擬古、小森、三階堂、奥さん、流石、盛岡」
  >
  >( <●><●>) 「以上の六人、だったのですか?」
  >
  >ミセ*゚-゚)リ 「…」
  >
  >
  >( <●><●>) 「サークル、となると」
  >
  >( <●><●>) 「OBだったり、新入生だったりが考えられますが」
  >
  >ミセ*゚-゚)リ 「…」
  >
  >ミセリは、煙草を根本まで吸いきった。
  >
  >ミセ*゚-゚)リ 「六人だけ、ですよ」
  >
 
 
.

580名無しさん:2018/10/03(水) 17:51:56 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
  >
  >(´・ω・`) 「フッサール擬古、ヒッキー小森、クックル三階堂、芹澤ミセリ」
  >
  >(´・ω・`) 「あんたと、部長の流石兄者……で全員なんだね?」
  >
  >(´・_ゝ・`) 「…」
  >
  >
  >(´・ω・`) 「…?」
  >
  >即答、しないのか。
  >ちょっと、嫌な予感がした。
  >
  >
  >(´・_ゝ・`) 「……」
  >
  >(´・_ゝ・`) 「そうだ、ね。 ウン」
  >
  >(´・_ゝ・`) 「その六人しかいないよ」
  >
 
 
.

581名無しさん:2018/10/03(水) 17:52:23 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
( <●><●>) 「ミセリが人数に言及する時、わずかに、沈黙を見せた」
 
(´・ω・`) 「デミタスもだ」
 
(´・ω・`) 「どこか腑に落ちないような、遠回しな言い方だったね」
 
 歯車のひとつが、噛み合いはじめる。
 ギシギシと、醜い音を立てて、過去と現代が繋がろうとしている。
 
 しかし、それだけでは、その歯車が成す全体像が窺えない。
 ここからは、更に慎重に言葉を選ばなければならない。
 
 
(´・ω・`) 「そして、兄者も、それを隠そうとしてるんだ」
 
 今の、紅一点、に対するレスポンス。
 明らかに、否定の色を見せていた。
 
 
 ここまで来ると、ミセリが、デミタスが、といった次元ではない。
 サークルの関係者全員が、隠そうとしている事実がある、ということだ。
 
.

582名無しさん:2018/10/03(水) 17:52:44 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 それは、言葉を間違えて、閉口させてしまえば、聞き出すチャンスを失うことになる。
 現状兄者に法的な容疑がかかっていない以上、
 そして容疑があろうが黙秘権は行使できる以上、
 至って自然な、しかし強引な形で、情報を引き出す必要があった。
 
 咳払いすると、ワカッテマスは元いた位置に戻った。
 下手に刑事が二人並んでいると、いらぬプレッシャーを与えてしまう。
 
 
(´・ω・`) 「兄者さん」
 
( ´_ゝ`) 「ハイなんでしょう、兄者です」
 
 これが、素なのだろう。
 飄々とした、掴みどころのない様子を見せた。
 
 
(´・ω・`) 「ここでクーイズ!」
 
( ´_ゝ`) 「いえーい!」
 
( ´_ゝ`) 「ッてなんですかいったい」
 
 少し笑いながら、返す。
 さっきとは全然違うリアクションだ。
 
.

583名無しさん:2018/10/03(水) 17:53:08 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・ω・`) 「ここ、どーこだ!」
 
( ´_ゝ`) 「Police Office」
 
(´・_ゝ・`) 「いい発音だ…」
 
 
(´・ω・`) 「じゃあ、次!」
 
(´・ω・`) 「僕、だーれだ!」
 
( ´_ゝ`) 「えっと……」
 
( ´_ゝ`) 「……ケイージ!」
 
(´・_ゝ・`) 「だめな発音だ…」
 
 
 教えてやるよ。
 正解はショボーン、またの名をイツワリ警部だ。
 
 
(´・ω・`) 「あんた、嘘を吐いてるな?」
 
 
.

584名無しさん:2018/10/03(水) 17:53:58 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 
 
                                   |`ヽ       /|
                                   |.  \    /. i
                                   |   ヽ /   ノ
                                  !     `ー‐- '、
                                  |           .、
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    イツワリ警部の事件簿   File.4      `,_::::::::::::::::::::`ヽ, ノ,´αm
                              く  l  lへ、:::::::::::::::`'ー、r ||\
       第六幕   「 七人目 」             '  '、-_l  ヽ、::::::::::::::::::`>;;::;;:|
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585名無しさん:2018/10/03(水) 17:54:19 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
( ´_ゝ`) 「嘘って?」
 
 緊張は払拭できたのだろう。
 そして、僕の声色を受けて、これがまじめな話であることも察しただろう。
 
 しかし、怯みはしない。
 やはり、相当肝っ玉のある男に違いない。
 
(´・ω・`) 「おさらいも兼ねて、聞こう」
 
(´・ω・`) 「くだんの、サークル……」
          、、 、、 、 、、
(´・ω・`) 「在籍したことのある人は、」
 
(´・ω・`) 「あんた二人、フッサール擬古、ヒッキー小森、クックル三階堂、芹澤ミセリ」
 
 
(´・ω・`) 「以上、六人で、間違いないね?」
 
 
( ´_ゝ`) 「ああ」
 
 捕まえたぞ。
 
.

586名無しさん:2018/10/03(水) 17:54:45 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
(´・ω・`) 「そっちの彼は、知ってるだろうけど」
 
(´・ω・`) 「僕、これでも、関係者にはちょっとしたことで知られてるんだ」
 
( ´_ゝ`) 「なんの話?」
 
(´・ω・`) 「偽りを見抜くプロ……ッてことを、さ」
 
 
(´・_ゝ・`) 「…!」
 
 デミタスが、はッとする。
 この男は、かつての密室鉄道で、その姿を見ている。
 
 
(´・ω・`) 「これまでの話と照らし合わせると、ひとつ」
 
(´・ω・`) 「不思議な点がある」
 
( ´_ゝ`) 「不思議って?」
 
 
(´・ω・`) 「どうして、きみは紅一点という言葉に引っかかった?」
 
.

587名無しさん:2018/10/03(水) 17:55:30 ID:RuNqH/eU0
 
 
 
 兄者に限らず、事件にかかわる人間は、
 何かを隠したり、偽ったりすることがある。
 
 そしてそれらは得てして、事件を解く鍵となり得る。
 重要なことほど、関係者諸兄にも深く根ざすファクターだからだ。
 
 それを聞きだすのに、刑事によって、やり方はあるだろう。
 巧みな話術で、鎌をかける。
 あるいは泣き落とし、同情を誘って、吐かせる。
 
 ペニーのように、相手を圧倒して吐かせる刑事もいる。
 ワカッテマスのように、賢いやり口でポロッと言わせる刑事もいる。
 
 だが、僕のやり方は、違う。
 ロジックの綱渡り、正面切っての真っ向勝負だ。
 
 
( ´_ゝ`) 「……」
 
(´・ω・`) 「この六人なら、百人中百人が、紅一点と認識する」
 
(´・ω・`) 「でも、たった一人だけ」
 
(´・ω・`) 「紅一点じゃない、と認識してしまった人がいるんだ」
 
.


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