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(´・ω・`)は偽りの亡霊を捕まえるようです
424
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:22:24 ID:T8wS26JU0
'_
(´・ω・`) 、
聞きたい話は、山ほどある。
デミタスは貴重な、まだ犯人が接触していない関係者だ。
先回りできているのは、大きなアドバンテージとなる。
加え、知り合いということもあり、
初対面だと話してもらえなさそなことも、聞き出せる。
(´・ω・`) 「失礼」
(´・_ゝ・`) 「どうぞ」
時間も限られている局面だ、
手短に、簡潔に、重要そうなことだけを聞かなければならない。
というのに、着信音が横やりを入れてきた。
誰だ、と思うと、少し嫌な予感がした。
ワカッテマスからかかってきたのだ。
.
425
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:23:45 ID:T8wS26JU0
(´・ω・`) 「僕だ」
ヤマを追っている時のワカッテマスからの着信は、
得てして不吉の前兆となっている。
その嫌な予感は、的中しそうだ。
ワカッテマスは少し、声が弾んでいた。
「芹澤ミセリの動向について、なにか聞かされていますか」
(´・ω・`) 「…どうした?」
(´・ω・`) 「僕は、なにも聞いてないけど」
「いま、彼女のアパートにいるのですが」
「インターホンの呼びかけに、一切応答しません」
(´・ω・`) 「………」
(´・ω・`) 「電話にも、か」
「それが…」
「コールすら、かかりません」
.
426
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:25:23 ID:T8wS26JU0
(´・ω・`) 「コールすら?」
「電波の届かないところにいるか、電源が切られているか…」
「とにかく、一切つながらないのです」
(´・ω・`) 「なに?」
'_
(´・_ゝ・`) 、
思わず、眉がつりあがった。
事前に、ミセリには電源は切らないよう忠告してある。
ミセリは、いつ、なんどき襲われるかわからない身だ。
そのため、電源が切れていたら緊急事態と判断する、と伝えた。
それは無論犯人の知らないやり取りである。
最近のスマホは、GPS機能で簡単に居場所を割り出せる。
近年の殺人犯は、それを警戒してスマホを破壊することが多いのだ。
.
427
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:26:53 ID:T8wS26JU0
(´・ω・`) 「大家に一報入れて、無理にでも部屋に入れ」
(´・ω・`) 「ぎょろ目には、僕から連絡入れておく」
「わかりました」
深刻な声色を最後に、電話は切られた。
不吉だ。
事前に約束してあるんだ、ミセリが電源を切るとは考えにくい。
もうひとつ不吉だったのは、
いま、現場にはぎょろ目しか控えていない。
ペニーと壁はいまは情報収集に回しているし、私服警官もまだ到着していないのだ。
(´・ω・`) 「もしもし、僕だ」
(´・ω・`) 「いま、公園か?」
ぎょろ目は、ワンコールで応答した。
事件中の奴は、電話にはワンコールで出るよう徹底している。
もし応じなかった場合は、なにかがあった、ということだ。
.
428
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:27:50 ID:T8wS26JU0
ぎょろ目は、散歩するふりをして、現場の地理を把握しているところだった。
不吉なものはまだ感じ取っていないのだろう、いつも通りの声だ。
(´・ω・`) 「ワカッテマスから、共有だ」
(´・ω・`) 「ミセリが、こちらの呼びかけに応答しない」
僕がワカッテマスから聞いた時と同様に、
奴も嫌なものを感じ取ったのか、一瞬声を詰まらせた。
(´・ω・`) 「インターホンには対応せず、電話もつながらない」
(´・ω・`) 「いま、ワカッテマスに部屋に乗り込むよう言ってある」
「つながらない、というのは、コールが続くということですか」
(´・ω・`) 「いや、コールすら鳴らない」
(´・ω・`) 「電源が切れただけか……破壊されたか。」
.
429
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:28:48 ID:T8wS26JU0
ぎょろ目が押し黙る。
さまざまなケースが考えられるのだ。
あれから犯人が、公園とは別の時間と場所を指定して、
ミセリが警察に共有せずに応じたケース。
あるいは、もう既に、殺されてしまったという可能性もある。
考えたくはないが。
(´・ω・`) 「そっちは、どうだ」
(´・ω・`) 「何か、変わった出来事は」
「現状、騒ぎなどは、特に」
と言いながら、断続的に息の弾む音が聞こえた。
公園内を、走って巡回しだしたのだろう。
(´・ω・`) 「なにかあったら、すぐ連絡しろ」
(´・ω・`) 「ワカッテマスからの連絡も、すぐに回す」
.
430
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:30:12 ID:T8wS26JU0
「わかりました」 とだけ残して、電話は切れた。
時刻は、まだ十三時だ。
アクションを起こすには、いささか早い気もする局面。
アパートには、ワカッテマスが。
公園には、ぎょろ目が先回りしたはずだったが。
既に、犯人に先手を打たれたのか?
しかし、犯人からのアクションがあったとして、
ミセリから連絡が入っていないのが妙だ。
連絡する間もなく、なにか事態に発展したのか。
だとすると、犯人はアパートに向かった可能性もある。
この上なく不吉で、不愉快だ。
(´・ω・`) 「……」
(´・_ゝ・`) 「何か、あったんですか」
(´・ω・`) 「ん。 ああ…」
.
431
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:31:29 ID:T8wS26JU0
ここは、公園からもアパートからも、やや離れた位置にある。
急行したところで、数十分のラグが発生する。
すぐに向かうべき、なのだろうか。
しかし、公園で何かあったとは考えにくいところでもある。
(´・_ゝ・`) 「セリっちが……いないんですか?」
(´・ω・`) 「うん」
(´・ω・`) 「電話も、つながらないらしい」
と言いながら、僕も電話をかける。
しかし、ワカッテマスの言っていたように、コールすらかからない。
急行準備だ。
コーヒーを飲み干して、目下優先すべきことを考える。
(;´・_ゝ・`) 「……まさか、もう…?」
(´・ω・`) 「ん」
(;´・_ゝ・`) 「殺され……たんですか?」
(´・ω・`) 「それは、わからない」
.
432
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:32:01 ID:T8wS26JU0
(´・ω・`) 「わからないけど…」
(´・ω・`) 「ひとまず、僕は戻ろうかと思う」
(;´・_ゝ・`) 「…」
さて。
悩むのは、デミタスをどうするか、だ。
デミタスを同行させるのは、容易い。
デミタスがそれを拒んでも、警察のほうで保護させればいいだけだ。
問題は、現場まで同行させるか、どうか。
デメリットは、言うまでもなく、犯人の目に晒すことになる点。
しかし裏を返せば、犯人もデミタスにその姿を晒すことになる、とも取れる。
サークルの内外問わず、当時の関係者がそこにいれば、
デミタスは、すぐに見つけることができるだろう。
この諸刃の剣は、警察側の数少ない武器だ。
取り扱いを誤れば、最悪の展開すら考えられる。
.
433
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:33:19 ID:T8wS26JU0
(´・ω・`) 「そこで、だ」
(´・ω・`) 「あんたも、連れていこうかと思う」
(;´・_ゝ・`) 「!」
(;´・_ゝ・`) 「………。」
押し黙るのは、自分も殺され得るから、に他ならない。
しかしすぐに拒まないのを見るに、奴もわかっているのだろう。
自分なら、犯人を見つけ出すことができる、と。
そうでなくても、デミタスを、近くに置いておきたいという気持ちが強い。
いつでも自ら保護に回れるし、
話をするのにこの近辺にいられちゃあ不都合だ。
(;´・_ゝ・`) 「………。」
(´・ω・`) 「拒むなら、強制はできないけどね」
.
434
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:34:27 ID:T8wS26JU0
(;´・_ゝ・`) 「………。」
(;´・_ゝ・`) 「……拒み……は、しないよ」
(´・ω・`) 「!」
違うのか。
来るかどうか、を悩んでいたのではないのか。
だとしたら、この沈黙はなんだ。
保護されるか、現場まで来るかを考えているのか、あるいは。
(;´・_ゝ・`)
(;´・_ゝ・`) 「……」
(´・ω・`) 「時間がもったいない、行くぞ」
(;´・_ゝ・`) 「……」
デミタスは、ちいさく頷いた。
.
435
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:35:13 ID:T8wS26JU0
覆面パトカーに乗り込んで、すぐに着信はきた。
ワカッテマスからだ。
ミセリの部屋に押し掛けたはいいが、
案の定、とでも言うべきなのか。
無人だったらしい。
また、部屋の様子からして、連れ去られたなどといったことでもないそうだ。
洗濯機がまわっていたり、照明がつきっぱなしでも、なく。
ミセリの意思で外出したであろうことは明白だった、と。
立会人の大家は、彼女がいつ頃出掛けたのか、はわからないらしい。
もとより、大家は彼女を監視していたわけでもない。
仕方ないこととはいえ、その情報がわかるだけでも助かったのだが。
アパートはワカッテマスに任せて、僕は公園に向かうことにした。
奴も、すぐに公園に向かうべきか聞いてきたが、
僕の指示で、先に軽く室内を漁らせることにした。
しかし、時間もない。
ワカッテマスの捜査能力は、高いとはいえ。
空回りする時間が惜しいのは言うまでもない。
奴が、どこを漁るべきか、指示を仰いでくる。
調べるべき、ものか。
.
436
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:35:42 ID:T8wS26JU0
(´・ω・`) 「書置きの類は、ないんだね?」
「真っ先に確認しました」
(´・ω・`) 「そうか……だったら。」
(´・ω・`) 「家から紛失している、」
(´・ω・`) 「凶器になり得る、なにか」
ワカッテマスが息を呑むのが窺えた。
「凶器になり得る…?」
(´・ω・`) 「考えても見ろ」
(´・ω・`) 「犯人に会いにいくッつーのは、つまり」
(´・ω・`) 「自分の夫を殺した野郎に会いにいく…ッてことだぞ」
.
437
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:36:55 ID:T8wS26JU0
ワカッテマスは黙った。
早足で室内を歩く音が聞こえる。
凶器になり得るもの。
若い女性なのだから、スタンガンの類を買っていてもおかしくない。
近頃では、一般向けの警棒もさまざまなものがあると聞く。
しかし、僕もワカッテマスも、真っ先に浮かんだものは違った。
一般人が、殺意を抱くときに携えるもの。
「ありました」
「いや なかった、と言えばいいのか……とにかく。」
(´・ω・`) 「……ひょっとして」
「包丁が、ひとつもありません」
.
438
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:38:07 ID:T8wS26JU0
(;´・ω・`) 「………」
確定した。
ミセリは、犯人に、会いに行った。
ここで、何も情報が上がらなければ、
買い物にでも行った矢先、うっかり充電が切れたか、落としたか、があり得た。
ただ、包丁のない家庭というのは、あり得ない。
包丁を持って出かけることも、あり得ない。
一般人が 「凶器」 と考えて、真っ先に思い浮かぶもの。
間違いなく、包丁だ。
(;´・ω・`) 「……部屋の捜査は、所轄に任せろ」
(;´・ω・`) 「令状はいらん、大家に立ち会わせておけ」
「なら、私は」
(;´・ω・`) 「公園だ」
(;´・ω・`) 「ヴィップの滝公園」
(;´・ω・`) 「応援要請は僕がしておく」
.
439
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:39:06 ID:T8wS26JU0
自然と、アクセルを踏む力も強くなる。
ハンドルを握る手に、汗が滲んできた。
彼女が、いつ、部屋を出たのかがわかれば。
それも、つい少し前、というのであれば、まだ事態を防ぐことはできる。
この上なく嫌な予感がしやがるのは、
電話がつながらない、ということだ。
犯人と会って、電話がつながらない事態に発展した。
その時点で、半分望み薄ではあった。
あり得るとするならば、
電話をかけようとして犯人に叩き落され、電話だけが壊れたケース。
あるいは、滝壺にでも水没したのか。
そのどちらも、状況を考えれば十分に考えられることだ。
そして、それを考えるのではなく、祈らなければならない。
.
440
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:39:26 ID:T8wS26JU0
(´・ω・`) 「…僕だ」
「はい」
すぐに、ぎょろ目にも共有だ。
僕の声色を察して、奴も声のトーンをひどく落とした。
(´・ω・`) 「要点は、ふたつ」
(´・ω・`) 「まず、ミセリは自宅にはいなかった」
(´・ω・`) 「もう一つ」
(´・ω・`) 「彼女は、包丁を持って出掛けている」
ぎょろ目は、何か言いかけたのを堪えて、舌打ちだけした。
おそらく、眉間にシワを寄せているだろう。
考えたくない事態が、発生したからだ。
警察への相談なしに、彼女は独断で、犯人と会いにいった。
しかし、だったらどうして、何時間も早い今に。
あるいは、もっと早くに。
.
441
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:40:30 ID:T8wS26JU0
考えるまでもなかった。
あれから、犯人との更なるやり取りがあったのだ。
それも、指定していた十六時よりも、早くの合流。
早くする理由は、警察を撒く以外に考えづらい。
しかしそれは、ミセリが提案したことかもしれない。
警察の介入なく、真剣な話をしたく思ったかもしれないのだ。
(´・ω・`) 「所轄もすぐさま配置させる」
当初、警官を配置するのは控えておくつもりだった。
ただ、事態が事態だ。
リスクなど考えていられる余裕はない。
ここまできたら、ぎょろ目もワカッテマスも、反対しようとしなかった。
むしろ、一刻も早く、一人でも多くの応援を求める。
(´・ω・`) 「あんたは、とにかく写真を持って聞き込みに回れ」
(´・ω・`) 「身分も明かして構わん」
.
442
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:40:56 ID:T8wS26JU0
こうなると、兎にも角にも時間が惜しい。
言うだけ言って電話を切り、僕もパトランプを装着した。
サイレンを鳴らしながら、無線機を握る。
(´・ω・`) 「こちら、捜査一課ショボーン」
(´・ω・`) 「至急、ヴィップの滝公園に応援を要請する」
頬を、汗が伝う。
思わず、僕まで眉をしかめてしまう。
これでも、捜査一課の警部だ。
ヴィップの警官にはだいたい名が知られている。
そんな僕が、急遽応援を要請するのだ、
公園に近い署から順に、現場に到着するだろう。
懸念事項があるとすれば、ヴィップの滝公園が現場である可能性だ。
最初の指示は、滝公園だった。
しかし、後日再度やり取りがあった時に、指定場所が変わっているかもしれない。
.
443
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:42:05 ID:T8wS26JU0
となると、いよいよ犯人に出し抜かれることになる。
重要なのは、そもそもどうして、犯人はヴィップの滝公園に呼び出したのか。
犯人が言っていたことは、要は以下の二点。
自首しようと思う。
その前に、ふたりで話がしたい。
殺すつもりであることも、公園側への殺人予告もない。
犯人の意図が、ここにきて汲み取れなくなっている。
再三話し合ったが、やはりミセリを殺すつもりだろうという見解は変わらない。
ここで、犯人が隠し持つ殺意と、ミセリへの電話内容が食い違う。
この食い違いも加味するとなると、
犯人は、その殺意が気づかれないようにミセリを殺す必要があるわけだ。
そして、その要素が滝公園に
含まれている点から先回りして、推理を進めなければならない。
.
444
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:43:09 ID:T8wS26JU0
滝公園は、地元民には知られている名所であり
一ヴィップ民である僕も、当然よく知っている。
しかし、あそこに、その要素はあるのか。
滝公園にあるものは、広場、自然、出店、そして滝。
滝がある以上、滝壺はあり、そこから園内を巡る川もある。
真っ先に思い浮かぶのは、溺死だが。
溺死か。
溺死の線は、薄くはない。
場所を滝公園に指定した時点で犯人側に殺意があった場合、
犯人側は、どうにかして足のつかないような殺人方法を用意する。
その点、溺死は、指紋を残さず、凶器も必要としない点で優秀だ。
逆に、即死という概念がない以上、時間と手間がかかる。
ミセリは細腕の女性だ、難しくはなかろうが、抵抗が懸念される。
その過程で水を浴びてしまうと、そこから足がつく可能性もある。
.
445
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:44:21 ID:T8wS26JU0
(´・ω・`) 「…」
(;´・ω・`) 「クソッ!」
考えが、いまいちまとまらない。
犯人は目の前まで迫っているのに、未だに、霞がかっている。
近年、時代の流れか、覆面パトカーも全車禁煙にすべきだ、と言われている。
だが、この際そんなものはどうでもいい。
煙草のフィルターを噛み、乱暴に火をつけた。
思いっきり吸い込む。
一気に一センチほど燃焼した。
(;´・ω・`) 「考えろ…」
(;´・ω・`) 「考えろ…」
現時点での武器は、ずばりぎょろ目が現場に既にいる、ということ。
奴を使えば、あるいは犯人を確保できるかもしれないし、
そもそも殺人そのものを未然に防げるかもしれない。
.
446
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:44:58 ID:T8wS26JU0
東風ミルナという刑事の容姿が、脳裏に浮かぶ。
白髪が目立ってきた、渋い古風な刑事だ。
僕以上のキャリアを持ち、あらゆる能力はワカッテマスに負けるとも劣らない。
老いてもなお頭は冴えているし、現場から証拠を取りこぼすことはないのだ。
ただひとつ弱点が、鋭い推理力が備わっていない。
僕が、奴を差し置いて警部に成り上がっているのも、
僕自身の功績以外に、奴自身が上に立つのを嫌った背景がある。
捜査スキルが高い。
上に立ち、下を巧みに操る技術にも長けている。
情報を一から七、八にするのは得手だし、
七、八ある情報から事件を解決するのも得手だ。
ただ、一しかない情報、
あるいはまったくのゼロから、ロジックを構築できない。
そして現況、情報は一、二程度しかない。
ミセリが共有してくれた、犯人とのやり取り。
加え、犯人の思惑の矛盾と現場状況の照らし合わせくらいか。
だとすると。 、 、
聞き込みと並行して奴に見てもらうべきものは?
.
447
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:45:20 ID:T8wS26JU0
、
(;´・ω・`) 「 水かッ! 」
すぐさま電話を手に取る。
既に、答えは出していた。
犯人は、水を利用した犯行を企んでいた可能性が否定できない。
それが溺死なのか、あるいは滝の上からの転落死か。
どちらにせよ、関わってくるのは水である。
滝の上か、その先の滝壺か、滝壺から続く川か。
ぎょろ目は走りながら電話にすぐさま応じた。
(;´・ω・`) 「現況ッ」
「今のところヒットなしッ」
(;´・ω・`) 「オーケー」
(;´・ω・`) 「聞き込みは、滝から末端の川までを沿うようにしてくれ!」
.
448
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:45:46 ID:T8wS26JU0
ぎょろ目は、意図を汲み取り損ねたのか、一瞬黙った。
だが、すぐさま頷いて電話を切った。
滝公園の、園内を渡る川は、一本だけだ。
幅数メートルある大きなもので、丁寧な装飾が施されている。
川近辺に人は集まりやすい。
文明の発展においても、観光名所においてもだ。
(;´・ω・`) 「間に合ってくれよ……」
万が一を考え、覆面パトカーで来ていてよかった。
パトカーなら、多少は法定速度を無視しても咎められない。
もっとも、法を破るものを追うのに法に縛られるのは本末転倒と思わなくもないが。
アクセルを深く踏んで、信号も無視して、とにかく前へ。
あと十分ほどで、公園が見えてくる。
.
449
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:46:10 ID:T8wS26JU0
(;´・ω・`) 「!」
こちらからかけてばかりだった電話が、震えた。
ワカッテマスではない。
ぎょろ目からだ。
(;´・ω・`) 「僕だ」
「目撃証言ッ」
(´・ω・`) 「ッ!」
「少し前に、滝壺になにか大きなものが落ちた音がしたッ」
「鯉が跳ねたにしては大袈裟すぎたと、市民が証言ッ」
(;´・ω・`)
全身に、悪寒が走った。
滝壺に、大きなものが落ちた音がした。
鯉が跳ねた程度ではない音。
.
450
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:46:39 ID:T8wS26JU0
(;´・ω・`) 「 いつ頃だッ!」
「五分か、十分か前、とのこと」
(;´・ω・`) 「沈んだのか? 流されたのか?」
「これより検証、しばらく応答できませんッ」
(;´・ω・`) 「…!」
これより検証?
何を言っている?
(;´・ω・`) 「わかった、川下のほうに向かっていけ!」
(;´・ω・`) 「僕もすぐにそっちに着く!」
がちゃがちゃ、と何かを外すような音が聞こえてきた。
茂みにいるであろう音も併せて聞こえてくる。
検証、か。
鉄砲などを外して茂みに隠し、滝壺に潜るつもりか。
.
451
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:47:10 ID:T8wS26JU0
(;´・ω・`) 「 ………。」
これが、ぎょろ目の強さだった。
夏に向かっているとはいえ、まだ暑くはない気候。
歳も増すばかりで、冷水に飛び込むのは危険も伴う。
それでも、躊躇などなしに、その程度のことをやってのける男なのだ。
(;´・ω・`) 「………」
(;´‐ω‐`) 「……」
拳を、強く握りしめた。
僕のまわりには、優秀な刑事が集まっている。
日頃は、どこか気の抜けた連中ばかりだが
それが今この瞬間、この上なく心強く思えた。
(´・ω・`) 「飛ばすぞ」
(;´・_ゝ・`) 「…え?」
(´・ω・`) 「ケーサツには、黙っててくれよ」
.
452
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:48:02 ID:T8wS26JU0
┏━─
午後十三時二二分 ヴィップの滝公園
─━┛
現場には既に、第一群が到着していた。
ここから一番近い所轄だ。
とても、まだ事件が発覚したとは思えない情景だった。
連続予告殺人を扱うこの僕が、要請をかけたんだ。
これで僕の推理が外れていた場合、始末書程度では済まないだろう。
だが、ある種の確信はあった。
死亡したかどうかは、定かではない。
しかし、確実に、既にここでミセリは犯人と接触している。
ミセリは、滝壺に突き落とされたのだ。
それが五分、十分程度だったなら、存命の確率はまだ十分にある。
ぎょろ目が、すぐさまミセリを救い出せるかどうか、が鍵だ。
.
453
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:48:43 ID:T8wS26JU0
(´・ω・`) 「半分は滝の上、半分は川沿いを南に」
(´・ω・`) 「聞き込み、調査に分かれて迅速にかかれ」
所轄の陣頭指揮を執る。
サイレンの音を聞きつけたのだろう、パトカーを降りた瞬間所轄に出迎えられた。
僕の指示に一切疑問を持つことなく、言われるがまま警官たちは分かれた。
(´・ω・`) 「そこのキミ」
警官 「はッ はい!」
'_
(;´・_ゝ・`) 、
(´・ω・`) 「彼は、重要参考人だ」
(´・ω・`) 「一緒にパトカーに乗って、保護しておけ」
警官 「わかりました!」
(;´・_ゝ・`) 「…刑事さん」
.
454
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:49:26 ID:T8wS26JU0
(´・ω・`) 「さて…」
僕はすぐに、滝壺に向かう。
周囲を見渡すと、ぎょろ目が置いていったのであろう拳銃などが茂みに隠されてあった。
となると、ここから池に飛び込んでいる。
少し、滝壺の様子を見る。
しかし、ここに潜っている気配はない。
川下に向かって、警官に遅れる形で走り出す。
滝壺に潜っていない、ということは、ミセリは沈まず、流されている、ということ。
そこまで人は多くないが、
それでも公園に訪れていた人たちの好奇の視線が突き刺さる。
聞き込み担当の警官が、そんな彼らに声をかけていく。
目立っているのは、かえって好都合だろう。
既にミセリは犯人から離れている。
今更我々の存在が犯人に知られようが、関係ない。
騒ぎを聞きつけた野次馬たちが、少しずつ顔を出す。
彼らを逃さず、所轄が捕まえていく。
近隣の所轄に片っ端から応援をかけたのは正解だったようで、
捜査の取りこぼしの心配はなさそうだった。
.
455
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:49:50 ID:T8wS26JU0
(´・ω・`) 「!」
'_
(;゚д゚) 、
(´・ω・`) 「おいッ!」
ある程度走っていると、川べりにぎょろ目が上がっていた。
全身ずぶ濡れで、僕の声に応じて奴も振り返った。
(;゚д゚) 「イツワリさん!」
(´・ω・`) 「ミセリは!」
(;゚д゚) 「それが……妙なのです」
(´・ω・`) 「妙…?」
少しずつ溜まりつつある不吉な予感が、形を成していくのがわかる。
ぎょろ目は、からだを拭おうともせず、続けた。
(;゚д゚) 「滝壺から、ここまで泳いで見渡してきましたが」
(;゚д゚) 「ミセリは、どこにも見受けられません」
.
456
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:50:41 ID:T8wS26JU0
(´・ω・`) 「……ッ」
(;゚д゚) 「ひょっとして、滝壺の音、というのは勘違いでは……」
(´・ω・`) 「いや、そんなはずは……」
犯人の思惑と、現場の状況。
照らし合わせる限り、溺死、転落死が濃厚だ。
そして、鯉が跳ねたとは思えないような、音。
音、しか証言されていないのがポイントなのだ。
つまり、証人はそのシーンを 「見て」 はいない。
現場を見ていない証人が、思わず証言するような音。
それだけ大きな音を鳴らすものなど、
現状、ミセリが突き落とされた以外には考えづらい。
(;゚д゚) 「しかし」
(;゚д゚) 「自然に流されているならば、既に追いついています」
(´・ω・`) 「どこかに引っかかった、とかは…」
(;゚д゚) 「そんなもの、見落としません」
.
457
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:51:21 ID:T8wS26JU0
見落とさない。
ぎょろ目が言うと、信じるしかない言葉だった。
となると、どういうことだ。
その時の音、はなんだったのか。
(;゚д゚) 「むろん、滝壺には粗大ゴミの類もありませんでした」
(;゚д゚) 「と、言うより……」
、 、、 、 、、、 、 、 、 、 、 、、 、 、
(;゚д゚) 「なにも落とされた形跡がありません」
(;´・ω・`) 「なんだって…?」
刑事に驚き、ただ鯉が跳ねただけの音を、過剰に勘違いしてしまったのか。
大きなものが落ちた時の音と鯉が跳ねる音は、比較にならないぞ。
人間は、そんなに大きな勘違いをしかねないとでも言うのか。
滝公園の水は、底のほうは泥でよどんでいるものの、
上の方は澄んでいる、奴が見落としたりする要素はない。
(;゚д゚) 「……あった、とすれば」
(;>д゚) 「 え、ぶえっくしょん!」
.
458
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:52:02 ID:T8wS26JU0
ぎょろ目は、盛大なくしゃみをした。
思わずシャツを脱ぎ、はたいて水を切りだす。
(´・ω・`) 「……風邪は、引くなよ」
(´・ω・`) 「今はあんたが頼りだ」
(;゚д゚) 「失礼」
(´・ω・`) 「で」
(´・ω・`) 「あったとすれば?」
(;゚д゚) 「ゴミ……が浮かんでいた、程度」
(´・ω・`) 「ゴミ? ゴミくらい普通に……」
(´・ω・`) 「……いや。 確かに、妙だな」
(;゚д゚) 「はい」
(;゚д゚) 「この公園は、ゴミのポイ捨てにはやたら厳しいです」
.
459
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:52:27 ID:T8wS26JU0
ヴィップの名所ともされている、ヴィップの滝公園。
環境美化にとことん拘っている公園で、
川にペットボトルなどが浮かんでいることは、ほぼない。
市民も、この公園には誇りを持っているのだ。
ゴミを捨てようと考える人も、少ない。
(´・ω・`) 「なにがあったの?」
(;゚д゚) 「何かの包み……でしょうか?」
(;゚д゚) 「一応、拾っておいた程度ですが……」
ぎょろ目は、ポケットからそれを取り出した。
紫色の包みで、花がプリントされている。
(´・ω・`) 「…………アネモネ」
.
460
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:53:37 ID:T8wS26JU0
(;゚д゚) 「?」
(;゚д゚) 「アネモネ……って、この花、ですか?」
(;´・ω・`) 「おい!」
(;´・ω・`) 「これ……どこにあった!」
思わず、声を張ってしまう。
ぎょろ目はキョトンとしたまま、落ち着いて答えた。
(;゚д゚) 「滝壺の、ど真ん中にあったんです」
(;゚д゚) 「ただのポイ捨てにしては、いささか不自然な……」
.
461
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:54:19 ID:T8wS26JU0
(;´・ω・`) 「滝壺に戻るぞ!!」
(;´・ω・`) 「それはミセリの遺留品だ!!」
(;゚д゚) 「な……」
言い放って、一直線で駆け出す。
ぎょろ目も、シャツを羽織りながらついてくる。
(;゚д゚) 「何を根拠に!」
(;゚д゚) 「ミセリ宅に、似たようなものが?」
、 、 、 、 、、 、 、 、、 、
(;´・ω・`) 「それは僕があげたものだ!」
と言いながら、僕もポケットに忍ばせていたキャンディーをひとつ取り出す。
花がプリントされた、シンプルな包装。
間違いなく、僕が喫茶店で彼女に渡した、アネモネの飴だ。
.
462
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:55:39 ID:T8wS26JU0
(;゚д゚) 「 本当ですか!?」
(;゚д゚) 「たまたま同じもの、では…」
(;´・ω・`) 「それは、通販でしか売られてないキャンディーなんだ!」
(;´・ω・`) 「そこらにありふれてる物じゃない!」
塩見製菓にて、お徳用のみが、通販限定で売られている 「花飴」 。
この期に及んで、偶然捨てられていた、などあり得ない。
(;´・ω・`) 「ミセリは、確かに!」
(;´・ω・`) 「滝壺に、落とされたんだ!」
.
463
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:56:01 ID:T8wS26JU0
(;゚д゚) 「じゃあ、ミセリはどこに!」
(;´・ω・`) 「犯人が掬い上げたわけはない!」
(;´・ω・`) 「沈んでも、流されてもないなら、滝の下だ!」
(;゚д゚) 「 なッ …。」
物理学には、疎い。
しかし、消去法で考えるなら、可能性があるのは、ひとつ。
滝の下だ。
滝が作り出す水流が渦を巻いて、
落とされたミセリを、その水流が落水地点まで運んだなら。
落水地点なら、ぎょろ目の眼をもってしてもミセリを見つけ出すのは難しい。
だからといって近くまで泳いで確認することもできない。
考えられない話ではあるが、滝の下以外にミセリが姿を消す場所など、ないのだ。
.
464
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:56:43 ID:T8wS26JU0
滝壺まで戻る。
滝の下など、どう潜ればいいのだ。
(;´・ω・`) 「さて、」
( ゚д゚) 「は?」
とにかく、潜るしかない。
そう思ったが、その前に。
(´・ω・`) 「どうした?」
( ゚д゚) 「…」
(;゚д゚) 「………え? え?」
(´・ω・`) 「おい! どうしたんだ!」
ぎょろ目が、明らかに異変を見せた。
滝壺、ではない、上の方を見て、目を何度も擦っていた。
.
465
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:57:03 ID:T8wS26JU0
(;´・ω・`) 「滝…?」
(;゚д゚)
(;゚д゚) 「………い、イツワリさん」
(;゚д゚) 「上のほう」
(;゚д゚) 「なんか、いませんか?」
(´・ω・`) 「う…上?」
僕が目をやったよりも、もっと上。
ぎょろ目は、滝口のほうを指さした。
(;゚д゚) 「なんか、何か、が…」
(;゚д゚) 「上へ、上へ…」
(;゚д゚) 「滝を、登って、いるような…」
.
466
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:58:00 ID:T8wS26JU0
(´・ω・`) 「え」
水飛沫で、よく見えない。
しかし、確かに、なんか、何かが。
上へ、上へ、滝を登っているようなものは見える。
なるほど確かに、これは目を擦る。
目を細めて、その何かを、見る。
(´・ω・`)
(´・ω・`) 「……あ」
見えた。
服装は違うし、髪形も崩れてはいるが。
ミセ:::-:)リ
.
467
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:58:47 ID:T8wS26JU0
( ;´゚ω゚) 「 なああああああアアアアアアアアアアアッッ!?!?」
芹澤ミセリが、こちらを見ながら。
まるで、昇天するように、滝を、登っていた。
.
468
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:59:19 ID:T8wS26JU0
|`ヽ /|
|. \ /. i
| ヽ / ノ
! `ー‐- '、
| .、
l !
r---ゝ !
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l :::::::::::::::゙ 、 _| n
イツワリ警部の事件簿 File.4 `,_::::::::::::::::::::`ヽ, ノ,´αm
く l lへ、:::::::::::::::`'ー、r ||\
第四幕 「 滝登り 」 ' '、-_l ヽ、::::::::::::::::::`>;;::;;:|
` ..‐,,..、 丶、 冫:::::::::::/>;;;;;;;;\
,' /´ ::ヽ.:.:.:::::::::::::::丶_;;::;;::|
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¦ ! ,;:::: ̄'' 7ー-、_....;.;.;.;、:::://::|
Y ;:::::::::│ / `――\/::::|
l ,,;:::::::::l / :::::::::'、:;:;、;;|
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.
469
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 03:59:45 ID:T8wS26JU0
序幕
>>2-69
第一幕
>>82-211
第二幕
>>218-296
第三幕
>>304-388
第四幕
>>398-468
470
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 06:58:10 ID:yBpu.qtE0
ミセリは鯉か?
人数とか諸々気になるな……乙
471
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 08:41:49 ID:1p5ES8NU0
一向に解決に向かわないこの状況…支援!
472
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 10:42:23 ID:wLEeQYaw0
どういうことぜよ…
473
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 15:47:22 ID:ZR.gt21w0
乙
なんかすげえことになってんぜ、続き期待してます
474
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 16:25:01 ID:bEAFNA7g0
首でも釣られているんかね
475
:
名無しさん
:2018/09/20(木) 18:59:37 ID:eCv6Pbms0
どういうこった…
乙
476
:
名無しさん
:2018/09/21(金) 01:18:12 ID:UVCLjSoo0
よーっやく読み返し終えて追いついたぜ乙
にしても全く解決の糸口が見えてこないな・・・どうなるんだ・・・
477
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:36:11 ID:BblhGUlY0
┏━─
五月六日 午後十三時五二分 ヴィップの滝公園
─━┛
(;´・ω・`) 「こちらショボーン!」
(;´・ω・`) 「女がひとり、滝を登っている!」
( ;´゚ω゚) 「 ジョークじゃねえんだ!!すぐ保護しろ!!」
(;゚д゚) 「言っても無駄だ!はやく向かいましょう!」
言って、ぎょろ目は走り出した。
滝の上は、多少の石畳こそあるものの、
一般人の立ち入りが想定されたものではない。
公園の管理団体が、暫定で取り付けたものなのだ。
入り組んだ茂みを抜け、その石畳を駆け上っていく。
滝の上へと続く道、いわゆる 「裏」 に市民は、誰一人としていない。
警官が捜査している程度である。
.
478
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:36:31 ID:BblhGUlY0
いちいち連中に説明するのも、手間がかかる。
警戒を強化しろ、とだけ伝え、僕とぎょろ目は、上へ、上へと進む。
滝口、つまりはダムの頂点だ。
出来損ないのダムは、明らかに整備がされていなかった。
警官が数人、捜査している。
連中には、まだ詳細なことを伝えていない。
とにかく、めぼしいものはかき集めろ、と言ってある。
それがゴミであっても、足跡でも、なんでも。
ひょんなものが、決定的な証拠になることも、多々ある。
(;´・ω・`) 「……」
ぎょろ目が、たまたま見つけた、不自然な包装。
これこそまさに、ひょんな、決定的な証拠だった。
(;´・ω・`) 「……」
アネモネ。
紫のそれは、あなたを信じて待つ、という花言葉がある。
.
479
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:37:05 ID:BblhGUlY0
ほんとうは、ミセリを信じて待つ、というつもりで渡したものだった。
皮肉にも、ミセリが僕を信じて待つ、という意味になるとは思いもしなかった。
(;゚д゚) 「イツワリさん!」
(´・ω・`) 「どうした!」
ぎょろ目は、滝上の茂みのほうにいた。
大急ぎで手をこまねいている。
(;゚д゚) 「これ………見てください」
(´・ω・`) 「なんだ…コレ」
ぎょろ目は、何やら大きい機械を指さして言った。
漁獲船にありそうな、網を引くローラーだ。
それが、カリカリと音を立てて稼働している。
(´・ω・`) 「……」
(;´・ω・`) 「ッ! そういうことか!」
.
480
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:37:34 ID:BblhGUlY0
互いに合点がいったようで、無言で示し合わせて、
そのローラーが巻いているロープを引く。
ロープは滝口、その下まで伸びている。
となれば、簡単な話だった。
ミセリは、これに縛られて、滝を逆流しているのだ。
(;´・ω・`) 「クソッ!!」
かなりの重量がある。
ミセリやロープ自体は、重くないだろう。
ただ、ミセリは、滝をまともに受けているのだ。
その分の重量が、ロープに重く圧し掛かっている。
男ふたりで引いても、まるで手ごたえがなく感じられる。
(;゚д゚) 「おい! お前らも来い!」
.
481
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:37:57 ID:BblhGUlY0
ぎょろ目が、大声で周囲の警官を呼び寄せる。
もとより厳つい刑事だ、恫喝されて半ば怯えながら駆けつけてきた。
全員で力をあわせて、ロープを引っ張る。
少しすると、まるで大物でも釣り上げたかのように、ロープが緩んだ。
全員が反動で後ろに倒れる。
滝口から、ミセリがこちらに向かって飛び込んできた。
(;゚д゚) 「おい!!意識はあるか!!」
すぐに対応したのは、ぎょろ目だった。
ミセリをすぐに抱きかかえて、首にかかっていたロープを外す。
奴は間髪入れず、全身を揺らしながら、大きな声をかけた。
時折、呼吸や心拍音を確認する。
しかし、一向にぎょろ目の顔色は変わらない。
むしろ、悪くなっていく一方だ。
(´・ω・`) 「代われ」
.
482
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:38:18 ID:BblhGUlY0
ぎょろ目が、困ったような顔を浮かべながら、僕に場所を譲る。
その場にしゃがみ込み、検視に入った。
検視、といっても器具などは一切持ち合わせていない。
ただ、どう死亡したかは、判断できる。
(´・ω・`) 「…」
体温は、恐ろしく低い。
水に浸かり、滝に打たれたためだろう。
脈、心拍音、呼吸、そのすべてがない。
死後硬直は見られない。
あらかじめ殺し、滝壺に落としたわけではなさそうだ。
また、水をほとんど飲みこんでいない。
溺死でも、ない。
もしや、と思い眼をうかがうと、溢血点が確認された。
首元にも索条痕が残っている以上、絞殺が疑わしい。
滝を登った時にできたものの可能性もあるため、断言はできないものの。
とにかく、芹澤ミセリは、殺害された。
疑いようのない事実だった。
.
483
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:38:40 ID:BblhGUlY0
(´・ω・`) 「……五月六日、十四時十二分」
(´・ω・`) 「芹澤ミセリの死亡を確認」
(;゚д゚) 「ッ!」
がばッとぎょろ目が屈み込んだ。
僕が眼を見たのと同様に、ぎょろ目もそれを確認した。
(;゚д゚) 「…」
(;゚д゚) 「これ、は…」
(´・ω・`) 「溢血点。 おそらく、絞殺だ」
ぎょろ目は、僕ほど検視の知識はない。
溢血点は、絞殺された時に、眼球に現れるちいさな点だ。
この時点で、首を絞められ殺されたのは明らかとなる。
駆け寄った警官が、なりふり構わず写真を撮ったり、現場状況を確認し始めた。
手際がいいのはよろしいことだが、今はそっとしておいてほしい気もした。
(´・ω・`) 「ただ、殺されてまだ浅いぞ」
(´・ω・`) 「近辺に犯人がいる可能性は、高い」
.
484
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:40:51 ID:BblhGUlY0
(#゚д゚) 「まだ来てない所轄も呼べ!」
(#゚д゚) 「周囲を、徹底的に囲うんだ!」
ぎょろ目の恫喝に、警官たちが畏縮する。
全身が濡れたままの老体とは思えない、怒声だった。
(´・ω・`) 「…」
ミセ:::-::)リ
(´・ω・`) 「…」
その間、僕はそっと、ミセリの顔を見つめた。
死んだとは思えない、静かな寝顔だ。
花飴の包装を、見る。
あなたを信じて待つ。
もう少し早く、この包装の存在を知れたら、あるいは生還させられたのだろうか。
(´・ω・`) 「…」
(´・ω・`) 「くそ」
.
485
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:41:26 ID:BblhGUlY0
地面を、強く殴る。
防ぐことは、できなかったのだろうか。
ワカッテマスの言う通り、無理にでも保護すればよかったのだろうか。
人命を軽んじたつもりは、ない。
ないが、今回は、自分の判断ミスが生んだ結果にしか思えなかった。
( ゚д゚) 「……イツワリさん」
ミセリの顔にハンカチを載せて、言った。
感情的になりそうな自分を、なだめるような声だった。
( ゚д゚) 「陣頭指揮は、自分に任せてください」
( ゚д゚) 「まだ、事件は終わってないんです」
(´・ω・`) 「…」
奴ほど、捜査を任せて安心できる男はいない。
短くない警部人生で、幾度となく痛感させられてきたことだ。
.
486
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:42:03 ID:BblhGUlY0
( ゚д゚) 「盛岡デミタス、流石兄者」
( ゚д゚) 「残るは、ふたり」
( ゚д゚) 「つまり、少なくともあと一度、事件が起こる可能性が、あるんです」
僕に、はやく次のステップに進め、と言っているのだろう。
ただ、ひとつ、いやに引っかかることがあった。
(´・ω・`) 「……流石兄者」
( ゚д゚) 「?」
(´・ω・`) 「至急、奴にコンタクトを取る必要がある」
(´・ω・`) 「まだ、ペニー達は洗い出せてないのか?」
( ゚д゚) 「自分は、聞いてないですが」
.
487
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:42:29 ID:BblhGUlY0
( ゚д゚) 「盛岡のほうは、どうだったんです」
( ゚д゚) 「確か、先ほどまで、警部が対応していましたよね」
(´・ω・`) 「ああ」
(´・ω・`) 「パトカーで保護させてるよ」
( ゚д゚) 「…パトカー」
(;゚д゚) 「パトカー!? そこのですか!?」
急な出来事だったので、デミタスをここまで連れてくる運びとなった。
危険だから、と警官をひとり、配置させている。
それも、僕が適当な奴を捕まえて指示したことだ。
(´・ω・`) 「この瞬間、盛岡デミタスには、完全なアリバイができた」
(´・ω・`) 「警察が、じきじきに奴のアリバイを立証している」
.
488
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:42:49 ID:BblhGUlY0
(;゚д゚) 「と、なると…」
(´・ω・`) 「流石兄者だ」
(´・ω・`) 「現状、犯人たりうるのは、奴しかいない」
流石兄者。
現在、三十四歳だろうか。
ヴィップ大学在籍時の情報は得られたが、
盛岡デミタスと違い、未だに奴は捕捉できていない。
立ち上がって、ミセリに合掌一礼。
呆然とするぎょろ目の背中に、一発平手を叩き込む。
(´・ω・`) 「頼んだぜ、先輩」
(´・ω・`) 「こっちは、任せろ」
(;゚д゚) 「……」
.
489
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:43:19 ID:BblhGUlY0
(;>д゚) 「 ぶえッくし!」
(´・ω・`) 「ぶっ」
強く背中を叩いたからか、えらく情けないくしゃみをした。
先ほどまでの沈着な態度はどこに行ったのか、気まずそうに鼻をすする。
(´・ω・`) 「なりふり構わず泳ぐからだ」
( ゚д゚) 「……歳は、いやですね」
(´・ω・`) 「まったくだ」
( ゚д゚) 「……すみません、鼻かみ、ありますか」
(´・ω・`) 「鼻かみ?」
( ゚д゚) 「ポケットに入れっぱなしで、濡れてしまって……」
(´;ω;`) 「……ぶひゃ、ひゃひゃ!」
ポケットから、鼻かみと一緒にキャンディーも取り出す。
ごつごつした手のひらに、叩きつけた。
.
490
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:45:22 ID:BblhGUlY0
( ゚д゚) 「ン……これは」
(´・ω・`) 「鼻は大切にしろよ。 じゃあな」
( ゚д゚) 「どう、も。」
( ゚д) ・’
っ
.
491
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:48:49 ID:BblhGUlY0
|`ヽ /|
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イツワリ警部の事件簿 File.4 `,_::::::::::::::::::::`ヽ, ノ,´αm
く l lへ、:::::::::::::::`'ー、r ||\
第五幕 「 アネモネ 」 ' '、-_l ヽ、::::::::::::::::::`>;;::;;:|
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492
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:49:44 ID:BblhGUlY0
┏━─
午後十四時五七分 捜査本部
─━┛
(;´・_ゝ・`)
( <●><●>) 「アリバイは、確かのようですね」
覆面パトカーで、一度捜査本部まで戻ってきた。
いま一度、核心に迫る必要があった。
車に乗せたままだったデミタスに、ミセリが殺された旨を告げた。
デミタスは顔を真っ青にして、言葉を失っていた。
捜査本部までの同行を伺うと、ふたつ返事で快諾してくれた。
すぐそこで、連続殺人の続きが起こってしまったのだ、当然だろう。
また、消去法でいけば、犯人は流石兄者で、
次、つまり最後のターゲットは、自分ということになる。
デミタスが拒む理由は、どこにもなかった。
(;´・_ゝ・`)
(;´・_ゝ・`) 「……じゃあ、やっぱり」
.
493
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:50:11 ID:BblhGUlY0
壁とペニーには、ひと段落つき次第、捜査本部に戻るよう指示した。
できる限り早急な帰還が望まれたが、幸い、ふたりとも長引きはしなさそうだった。
戻る際、ワカッテマスにも連絡を入れた。
公園手前まで迫っていたようで、捜査本部に戻ったのは同刻だった。
デミタスと出会った事件、密室鉄道にはワカッテマスもいた。
もっとも、雑談などしていられる空気ではなかったが。
(´・ω・`) 「害者宅は、どうだった」
( <●><●>) 「鑑識を手配しています」
( <●><●>) 「情報は逐一私に送るよう言ってありますので」
(´・ω・`) 「……なにか、上がりそうか?」
( <●><●>) 「直観で言えば、望み薄かと」
ミセリは、犯人と会うつもりで家を出た。
それも、包丁と、決死の覚悟で。
そんな女性が、部屋にあからさまな痕跡を残すとは思えなかった。
書置きの類があったなら、ワカッテマスが押し掛けた時点で押収している。
.
494
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:52:22 ID:BblhGUlY0
(´・ω・`) 「となると、だ」
びっしり書き込まれたホワイトボードを、目で辿る。
貼ってあった写真の類は、スペースを広げるためにひっぺがした。
そんななか、一番情報が少ないのは、右端、流石兄者の項目。
(´・ω・`) 「流石兄者、サークル部長」
(´・ω・`) 「奴こそが、事件の鍵となる」
( <●><●>) 「そして、現状容疑者筆頭、と」
(;´・_ゝ・`) 「…」
現在わかっている情報は、少なかった。
ヴィップ大学文学部。
家族構成は両親と弟のみ。
留年することもなく四年で卒業し、就職先は不明。
大学では、就職についてアンケートをとっているようだが、
回答に強制力はなく、流石兄者も回答を控えていた学生のひとりだった。
警察のデータバンクに照会しても、ヒットしなかった。
デミタスが異例だっただけで、だいたいの人間はヒットすることがない。
.
495
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:54:09 ID:BblhGUlY0
ペニーが、実家にアプローチしている手筈だが、
家族も、いま兄者がどこに住んでいるかはわからないらしい。
隠そうとしているわけではなく、ただ単に話す機会がなかっただけとのこと。
電話番号は把握しており、それは既に僕のもとまで上がってきている。
取り込み中なのか、電話は今のところ、繋がっていない。
(´・ω・`) 「是が非でも、奴は確保する」
(´・ω・`) 「犯人ならもとより、犯人でなかったとしても、だ」
( <●><●>) 「保護を拒否した場合は」
(´・ω・`) 「サークルメンバーのうち、四人が殺されてるんだ」
(´・ω・`) 「拒むッてことは、もう確実に犯人だ」
(´・ω・`) 「その場で、犯行を立証してやるだけさ」
.
496
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:54:39 ID:BblhGUlY0
(;´・_ゝ・`) 「でも、あの人が犯人なら、どうして……」
(´・ω・`) 「そこを検討したくて、あんたをここまで呼んだ」
(´・ω・`) 「あのな、一般人は入れない場所なんだぜ、ここ」
(;´・_ゝ・`) 「……ども。」
犯行を立証するにあたって、どうしてもネックとなるのが、動機だった。
どうして、十年経った今になっての犯行なのか。
そこを立証できなければ、逮捕は不可能だ。
現状、犯人をぴたりと立証する決定的な証拠がない。
状況証拠すべてが兄者を指し示したところで、焼け石に水なのだ。
( <●><●>) 「心当たりは、ないのでしょうか」
(;´・_ゝ・`) 「……心当たり、ッて」
( <●><●>) 「たとえば、そうですね……」
.
497
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:55:00 ID:BblhGUlY0
具体例を示そうとしたところで、ワカッテマスが口ごもった。
十年前に所属していたサークルでの、連続殺人。
動機がまるで予想できないことに、ワカッテマスは気づかされた。
( <●><●>) 「…」
( <●><●>) 「警部は、どうお考えですか」
(´・ω・`) 「僕に振るなよ」
(´・_ゝ・`) 「少なくとも、僕は同窓会とか聞いてないよ」
'_
(´・ω・`) 、
同窓会、か。
興味深い着眼点だ。
(´・_ゝ・`) 「ッてより、十年前から、連絡なんてなかったんだ」
(´・_ゝ・`) 「当時はスマホもなかったしね。 連絡手段は、メールか電話だよ」
(´・_ゝ・`) 「どっちも、変わったり忘れたりするもんさ」
.
498
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:55:32 ID:BblhGUlY0
近年は、スマホアプリの進化で、手軽に連絡が取れるようになっている。
それも、通信費以外料金がかからないシステムで、だ。
アプリの利点は、携帯会社を変えても残るところだ。
メールアドレスは会社を変えるとドメインが変わるし、
電話番号も、手軽とはいえ手続きを踏まなければならない。
電話番号のない格安スマホやSIMの普及で、
電話番号そのものを手放すユーザーも少なくはない。
となるといよいよ、連絡が取りづらい点がキーとなる。
(´・ω・`) 「でも、犯人は、把握していた」
( <●><●>) 「ヒッキー小森、ならびに芹澤ミセリへの電話がいい例です」
(´・_ゝ・`) 「え…?」
デミタスがきょとんとする。
まだ奴は知らない情報なのだ。
情報の整理がてら、デミタスにも教えることにする。
電話番号から発信着信の関係に至るまで、
すべて、ホワイトボードに書かせておいた。
.
499
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:55:58 ID:BblhGUlY0
(´・ω・`) 「あんたは、050番号ッて知ってるかい?」
(´・_ゝ・`) 「ああ。 IP電話ですね」
(´・ω・`) 「知ってるのか」
(´^_ゝ^`) 「まあ……使ったことはないですが」
焦点となるのは、050の、身元不明の番号だ。
サービス提供会社、ならびに端末の会社に問い合わせたが、
やはり名義貸しが噛んでいたらしく、特定は不可能らしい。
名義主は多額の借金を持っていて、名義を売ったとのこと。
売り先から暴こうかと思ったが、暴力団が関わってくるらしく、
捜査四課にも協力を要請しているが、ガサ入れの取っ掛かりが掴めないようだ。
( <●><●>) 「四月三十日、この番号をヒッキー小森が受けています」
( <●><●>) 「また一昨日、五月四日、同じ番号を芹澤ミセリが応対」
(´・ω・`) 「僕も隣にいたね」
.
500
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:56:25 ID:BblhGUlY0
(´・_ゝ・`) 「その電話で、殺人予告を…?」
(´・ω・`) 「ああ、そうさ」
自首しようと思う、その前に話をしたい。
犯人の要求は、この一点だ。
実際に自首するつもりで、なにか大切な話をしたかったのだろうか。
その過程で、事態が急変して殺さざるを得なくなったのだろうか。
最初から殺人を計画していたものを睨んでいるものの、
ミセリが包丁を持っていってしまったのが面倒だった。
そこから、正当防衛という名の反撃材料を与えてしまうことになる。
(´・_ゝ・`) 「だったら、声でわかるはず、ですよ」
(´・_ゝ・`) 「いくら十年経ったとはいえ、同じサークルの人なんだから」
( <●><●>) 「そこなんですよ」
(´・_ゝ・`) 「はい?」
.
501
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:56:45 ID:BblhGUlY0
ワカッテマスが、デミタスにもわかりやすく教えるように、ホワイトボードを指さす。
奴は我々が持つ最後の武器だ、ありったけの情報は共有しておきたい。
( <●><●>) 「ボイスチェンジャー、とでも言いましょうか」
( <●><●>) 「犯人は、機械で、声を変えていたんです」
(´・_ゝ・`) 「声を…?」
( <●><●>) 「なので、男か女か、すらわからないと」
(´・_ゝ・`) 「え?」
( <●><●>) 「何か」
(;´・_ゝ・`) 「えっと……ちょっと、整理していいですか」
( <●><●>) 「はい、ゆっくりと」
デミタスは、ホワイトボードの人物名を舐めるように見渡す。
殺された順に、擬古、小森、三階堂、芹澤。
残るは、盛岡、流石。
(;´・_ゝ・`) 「……ごまかすまでもなく、男しかいないよね」
(;´・_ゝ・`) 「なんで、男女をごまかすような声が?」
.
502
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:57:09 ID:BblhGUlY0
( <●><●>) 「……ム」
(´・ω・`) 「男女がわからない、ッてのはあくまで表現だ」
(´・ω・`) 「ポイントは、声の主がわからない、ッてところでね」
(;´・_ゝ・`) 「でも、兄者氏の話し方、すごいわかりやすいよ」
(;´・_ゝ・`) 「残ってるのも、僕と兄者だけ……なんだろう?」
( <●><●>) 「……」
言われてみると、確かに気になるところではあった。
このご時世、わざわざ変声機を使う必要があったのだろうか。
隣に僕がいたなんてことは、犯人は知りようがない。
自首する、話がしたい、という言い分を信じるなら、
ミセリには声がばれても不利益は被らないはずである。
(;´・_ゝ・`) 「声をごまかしたところで、兄者氏かどうかはわかるし」
(;´・_ゝ・`) 「自首する、とか言ってる人が声を変えたりするかなあ?」
.
503
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:57:35 ID:BblhGUlY0
(´・ω・`) 「……」
急所を突く指摘だとは、思わなかった。
ただ、デミタスだからこその気づきであるには違いない。
どうして、声を変えたのか。
考えられるとするなら、兄者が口調を変えて、
デミタスと兄者の区別がつかないようにした、などだろうか。
(;´・_ゝ・`) 「しかも、これから会おうとしてるんだよ?」
(;´・_ゝ・`) 「なのに、名乗らない、声もわからない、ッてのは」
( <●><●>) 「外部犯の可能性、というものを示すことができます」
(´・_ゝ・`) 「外部犯?」
ワカッテマスが、横やりを入れる。
なるほど、情報を検討するのにデミタスを呼んだのは正解だったようだ。
.
504
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:58:41 ID:BblhGUlY0
( <●><●>) 「現状では、サークル内部の犯行である線が濃厚ですが」
( <●><●>) 「外部犯の介入の可能性が認められた時、」
( <●><●>) 「はじめて変声機の存在に意味が出てきます」
(´・_ゝ・`) 「外部犯の可能性って?」
(´・ω・`) 「それも検討したいから、あんたを招いたんだ」
(´・_ゝ・`) 「検討……たとえば?」
(´・ω・`) 「サークル外の誰かに恨みを買ったりさ」
(´・_ゝ・`) 「恨み……さすがに、ないかなァ」
ただの、アウトドアサークルだ。
そう簡単に、十年の歳月を経て蘇る怨恨などあるとは思えない。
しかし、凶悪犯罪者の動機は、
得てして被害者側にはその罪意識がないものだったりする。
人は、思わぬところで恨みを買うものなのだ。
.
505
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:59:13 ID:BblhGUlY0
(´・ω・`) 「それも、併せて検討したい」
(´・ω・`) 「まず、成り立ちから聞かせてもらおうかな」
(´・_ゝ・`) 「成り立ち、か」
デミタスとの話は、中途半端にしかできていなかった。
今、犯人はアクションを起こしていない。
落ち着いて話を聞ける、最後のチャンスかもしれない。
(´・_ゝ・`) 「まあ……」
(´・_ゝ・`) 「発端は、兄者氏だ」
( <●><●>) 「それは、何年生の時で」
(´・_ゝ・`) 「僕らが入学する前くらいだね」
( <●><●>) 「となると、部長が三年になるくらいのタイミングか」
ワカッテマスが、ホワイトボードに書き加えていく。
.
506
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:59:37 ID:BblhGUlY0
( <●><●>) 「キッカケは、聞いていますか?」
(´・_ゝ・`) 「ほら、三年にもなったら、暇になるからね」
(´^_ゝ^`) 「暇つぶしが欲しい、どうせなら青春がしたい…ッて」
(´・_ゝ・`) 「それで、ヒッキー氏も誘ってサークルを創ったんだ」
( <●><●>) 「ヒッキー小森……アルプス学院大学」
( <●><●>) 「どうして、よその大学の人を誘ったんでしょうか」
(´・_ゝ・`) 「さあ?」
(´・_ゝ・`) 「ただ、兄者氏とは昔からの仲らしくてね」
(´・ω・`) 「距離的には、まあまあ離れてるぜ」
(´・ω・`) 「ヒッキーは、そんなに活動には参加しなかったの?」
(´・_ゝ・`) 「まさか。 むしろ皆勤賞だよ」
.
507
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 12:59:58 ID:BblhGUlY0
少々、疑問の余地はある。
しかし、だからどうした、といった疑問でもある。
(´・_ゝ・`) 「あくまで、活動内容はアウトドアだ」
(´・_ゝ・`) 「アルプスとかシベリアにも行ったし」
(´・_ゝ・`) 「距離は大した問題じゃなかったんだと思うよ」
( <●><●>) 「そう言われては、そうですが…」
(´・_ゝ・`) 「逆に、アウトドアじゃなかったら、ヒッキー氏も参加してなかったと思う」
(´・ω・`) 「なるほどね」
(´・ω・`) 「そのふたりが中心となって、結成されたワケだ」
まず、サークルのキッカケは、兄者とヒッキー。
兄者が三年になるにあたって、暇つぶしにサークルを創設する。
どうせなら、ということで青春を楽しむためにアウトドアを考案。
アウトドアのため、唯一離れた位置に住まうヒッキーもこれを承諾。
.
508
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:01:40 ID:BblhGUlY0
(´・ω・`) 「メンバーは、どんな感じで集まったんだい?」
(´・_ゝ・`) 「勧誘、だね。 順番までは知らないけど」
(´・_ゝ・`) 「セリっちも、クックルも、ギコも言った通り」
(´・ω・`) 「口達者な兄者に惹かれたンだね」
( <●><●>) 「あなたは?」
(´・_ゝ・`) 「僕かい?」
(´^_ゝ^`) 「……その、いろいろ共通の趣味があって、盛り上がって……」
( <●><●>) 「そうでしたね。 シツレイしました」
デミタスの趣味、ということで、ワカッテマスも合点がいった。
思い出したくないことを思い出した、といった具合だった。
.
509
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:02:03 ID:BblhGUlY0
(´・ω・`) 「それ以上メンバーが増えることはなかったの?」
(´・_ゝ・`) 「次の年は、ビラ撒きとかしなかったね」
(´・ω・`) 「どうして?」
(´・_ゝ・`) 「居心地が、よくなったんだ」
(´・_ゝ・`) 「どうせ、兄者氏の思い付きでできた、ちいさなサークルだ」
(´^_ゝ^`) 「現時点で十分楽しいし、別にいっか、ッて」
( <●><●>) 「勧誘は、初年度のみ、と」
( <●><●>) 「みんなは、仲良かったので?」
(´・_ゝ・`) 「勿論」
.
510
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:02:29 ID:BblhGUlY0
( <●><●>) 「なにか、個人間の諍いは」
(´・_ゝ・`) 「………」
( <●><●>) 「ありますか?」
デミタスは、即答しない。
諍いは事件解決の糸口となり得る可能性がある。
なるたけ、慎重に伺いたいところだ。
(´・_ゝ・`) 「………」
(´^_ゝ^`) 「細かないざこざは、そりゃあ、しょっちゅうだよ」
( <●><●>) 「たとえば」
(´・_ゝ・`) 「うちのサークルさ、オタクとそうでない人が分かれてたんだ」
( <●><●>) 「芹澤ミセリなんかがそうですね」
.
511
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:03:01 ID:BblhGUlY0
(´・_ゝ・`) 「ギコ、クックルもオタク趣味はなかった」
(´・_ゝ・`) 「で、僕やヒッキー氏、兄者氏とは、文化が違うんだ」
文化ときたか。
(´・_ゝ・`) 「酒にしてもそう、バーベキューにしても、そう」
(´・_ゝ・`) 「細かいところで噛み合わないことは、多かった」
( <●><●>) 「殺意に繋がるほどの大きな怨恨は?」
(´・_ゝ・`) 「……ないと思うよ?」
'_
(´・ω・`) 、
( <●><●>) 「なにも、殺意に繋がる必要はない」
( <●><●>) 「男女のもつれ、借金、就職絡み」
( <●><●>) 「そういったところで残った種が、花開いた可能性もあります」
.
512
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:04:16 ID:BblhGUlY0
(´・_ゝ・`) 「少なくとも、就職はないな」
(´・_ゝ・`) 「兄者氏が、就職に無頓着だったんだ」
(´・_ゝ・`) 「だいたい、僕らが就活する前にサークルは終わったんだ」
( <●><●>) 「終わった、ですか」
(´・_ゝ・`) 「兄者氏が卒業したから、だよ」
詮索されたくないのか、デミタスが先手を取った。
( <●><●>) 「卒業するのは、兄者とヒッキーだけ」
( <●><●>) 「他の四人で集まって遊んだりしなかったので?」
(´・_ゝ・`) 「なかったと思うよ」
( <●><●>) 「それはどうして?」
(´^_ゝ^`) 「………僕が、誘われてないからね」
( <●><●>) 「それは……失礼」
(´・ω・`) 「………。」
.
513
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:04:40 ID:BblhGUlY0
やはり、おかしい。
デミタスは、何かを偽っている。
すごくわかりやすい態度だ。
しかし、わかりやすいだけに、妙だ。
昼頃の会話でも、奴は犯人の心当たりに関して、一切偽りは見せなかった。
先ほどからも、節々で妙な態度を見せている。
何かを隠しているのは、疑いようがない。
ない、が。
隠すとしたら、なんだ。
自分も容疑者になり得る局面で、
わざわざ犯人の心当たりをごまかしたりしないだろう。
デミタスほどの小心者なら、尚更だ。
自分が疑われてでも隠し通したいものでは、ない。
ロジックを整理すると、こうなる。
「隠し通したいことではあるが、それは犯人候補とは関わらない」 。
.
514
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:06:17 ID:BblhGUlY0
( <●><●>) 「なら、男女のもつれは」
( <●><●>) 「男性ばかりのサークルに、女性がひとり」
( <●><●>) 「三角関係など、考えられないことではありません」
(´・_ゝ・`) 「あー、オタサーの姫だしね」
( <●><●>) 「姫、ですか」
(´^_ゝ^`) 「どちらかと言えば、女王かな?」
( <●><●>) 「はあ」
ワカッテマスが呆れ返っている。
奴は、まだデミタスの偽りに気づいていないのだろうか。
(´・_ゝ・`) 「……マ。」
(´・_ゝ・`) 「じつは、僕はそこまで詳しくないんだ」
.
515
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:06:37 ID:BblhGUlY0
( <●><●>) 「詳しくない、ですか」
(´^_ゝ^`) 「クックルとセリっちの結婚も、知らなかったし」
(´・_ゝ・`) 「ただ、泥沼はあったかもしれないね」
( <●><●>) 「クックル、ミセリに加わる、三角関係ということで」
(´・_ゝ・`) 「……あったかも、だ」
(´・_ゝ・`) 「兄者氏は、たぶんなんでも知ってると思うけど」
( <●><●>) 「……なるほど」
なんでも知っている。
裏を返せば、我々の知らない動機を持っている可能性もある。
いよいよ、兄者を確保する必要が生まれてきた。
目下ペニーが兄者の後ろを追いかけているところだ。
執念はショボーン班でも随一だ、必死に食らいついているとは思う。
.
516
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:06:58 ID:BblhGUlY0
( <●><●>) 「ずばり、犯人に心当たりは」
(´・_ゝ・`) 「ないよ」
既に、僕もかけた質問。
デミタスは、迷いなく即答した。
( <●><●>) 「警察では、流石兄者の犯行だと睨んでいますが」
(´・_ゝ・`) 「僕も、ずっと、考えてたんだ」
(´・_ゝ・`) 「何か、あの人に僕らを皆殺しにする動機があったか、ッて」
( <●><●>) 「…結果は」
(´・_ゝ・`) 「兄者氏では、ないと思う」
( <●><●>) 「根拠は」
(´・_ゝ・`) 「人望、人柄、なにより今更になって僕らを殺そうとする理由がないこと」
( <●><●>) 「かつては、あったのですか?」
(´・_ゝ・`) 「元々なかったんだ、十年経った今殺す理由なんてましてない」
.
517
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:08:12 ID:BblhGUlY0
ワカッテマスが押し黙った。
デミタスの眼は、嘘を吐いているように見えない。
現状わかっていることで消去法的に犯人を割り出すと、必然的に兄者となる。
しかし、それがあまりにも不自然だ、と当事者が証言する。
やはり、どこかに偽りが眠っている。
'_
(´・ω・`) 、
(´・ω・`) 「僕だ」
待ち望んでいた着信が、ついに来た。
ペニサス伊藤から。
一瞬、心臓がドクンと跳ねた。
「やりましたよ」
(´・ω・`) 「!」
思わず顔がほころぶ。
ペニーの声には、明らかに闘志が宿っていた。
.
518
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:09:45 ID:BblhGUlY0
「流石兄者」
「ただいま、一緒に捜査本部まで向かってます」
(´・ω・`) 「よくやった」
(´・ω・`) 「いまは……パトカーかい?」
「一緒にいますよ」
「任意同行です」
(´・ω・`) 「よし」
(´・ω・`) 「どこにいたんだ」
「病院ですね」
「アルプス神経病院です」
(´・ω・`) 「病院?」
.
519
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:10:22 ID:BblhGUlY0
思わぬ施設が告げられた。
兄者は、別に医療関係の人間ではないはずだ。
見舞いにでも行っていたのだろうか。
それにしても、ヴィップではなくアルプス、それも神経病院か。
「その点に関しては、聞き出せなかったですね」
「プライベートだから、と」
(´・ω・`) 「まあ、吐かせるのは後でいい」
(´・ω・`) 「どれくらいかかりそうだい?」
「一時間は見積もっていただきたいですね」
(´・ω・`) 「……一時間か」
時計を見やる。
十五時二二分。
アルプスからだと、車でもそれくらいはかかるか。
短いようで、長い時間だ。
.
520
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:11:58 ID:BblhGUlY0
(´・ω・`) 「奴の様子は」
「複雑そうな面持ちではありましたが……」
「別段、反抗には出ていません」
(´・ω・`) 「なんて言って同行を求めた?」
「連続予告殺人の重要参考人、と言えば、しぶしぶ」
「いまは、窓の外を眺めて、ぼーっとしてます」
(´・ω・`) 「ふむ…」
「今、そちらには誰が?」
(´・ω・`) 「僕とワカッテマスに、盛岡デミタスだ」
(´・ω・`) 「ぎょろ目は、公園殺人の初動捜査を担当している」
「初動捜査に進展は」
(´・ω・`) 「ないね、今ンところは」
.
521
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:14:31 ID:BblhGUlY0
奴が指揮を執って現状進展なし。
言い換えれば、めぼしい証拠がない、ということで、
それはすなわち、ミセリが持参した包丁も見つかっていない、ということだ。
犯人が、持ち去ったのだろうか。
あるいは、滝壺の底に沈み、泥に隠れたかもしれない。
包丁の出所から、新しい情報が生まれるかもしれないが。
少なくとも、犯行現場である滝口でミセリが落としたわけではなさそうだ。
(´・ω・`) 「詳しいことは、あんたが戻ってからにするよ」
「頭が痛くなるくらいの冷たいコーヒー、お願いします」
(;´・ω・`) 「買ってこい!以上!」
ペニーは、けらけら笑っているだろう。
ショボーン班のなかでも、ひときわ感情に左右されやすい刑事だ。
犯人を確保したり、容疑者を吐かせた時は、上機嫌に高笑いする。
それが、心強くもあった。
.
522
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:15:29 ID:BblhGUlY0
( <●><●>) 「確保、ですか」
(´・_ゝ・`) 「!」
(´・ω・`) 「任意同行だ」
( <●><●>) 「応じたんですね」
(´・ω・`) 「……そこが、ちょっと引っかかった」
任意同行は、文字通り任意だ。
仮に兄者が犯人だとして、こちらに証拠が一切ない以上、
兄者には同行を拒否することができる。
証拠がないことは伝えてないだろうが、
それでも、兄者は、応じた。
犯人では、ないのだろうか。
(´・_ゝ・`) 「……」
( <●><●>) 「だいたい、到着はいつ頃に」
.
523
:
名無しさん
:2018/09/24(月) 13:16:05 ID:BblhGUlY0
(´・ω・`) 「一時間前後、かなァ」
( <●><●>) 「まあまあですね」
(´・ω・`) 「アルプスの病院にいたところを、捕まえたみたいだ」
病院?
ワカッテマスも食いついた。
(´・ω・`) 「別に、彼がかかっていたワケじゃない」
(´・ω・`) 「見舞いか、はたまた仕事関連か」
( <●><●>) 「……ふム。」
兄者と病院を繋げるファクターは、見つかっていない。
もっとも、それもまとめてペニーに聞けばいい話だ。
兄者から、あるいはペニーから。
どんな証言が飛び出すかわからない以上、
現時点での検討に、あまり意味はないような気がしてきた。
.
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