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(´・ω・`)は偽りの亡霊を捕まえるようです
1
:
◆wPvTfIHSQ6
:2018/08/23(木) 01:38:11 ID:qgB33Ij20
▼シリーズ過去作
(´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです+α
http://boonsoldier.web.fc2.com/ituwari.htm
(´・ω・`)は偽りの根城を突き止めるようです+α
http://boonsoldier.web.fc2.com/ituwariII.htm
(´・ω・`)は偽りの絆をつなぐようです
http://boonsoldier.web.fc2.com/ituwariIII.htm
逃亡しないことを祈ってる
あと作中に過去作に登場した人物の名前が出たりしますけど
特に描写がなければまったくの別人物だと思ってください(スターシステム)
シリーズに複数回登場したAAがかぶることはないです
210
:
名無しさん
:2018/08/27(月) 17:32:16 ID:OAVw79X60
( <●><●>) 「 ッ 」
「警備員がやられた!」
「走ってるやつがいたら片っ端から捕らえろ!」
「こちら、ライトゲートやや南ッ!」
(;<●><●>) 「らッ… 」
ちょうど、反対側だ。
いま、自分はレフトゲートを通過した当たりだ。
犯人が、すぐそこにいる?
走っている?
「絶対に逃すな!」
「周囲の警備員も動かせ!」
(;<●><●>) 「!」
.
211
:
名無しさん
:2018/08/27(月) 17:32:50 ID:OAVw79X60
はッとして、前後を見た。
警備員は、まだ連絡が行き渡っていないのか、ただ立っているだけだ。
前方、近くにいた警備員に肉薄した。
警備員 「…?」
( <●><●>) 「いッ」
( <●><●>) 「今すぐ、警備員全員で周囲を捜索しろ!」
警備員 「なッ 」
( <●><●>) 「ライトゲート付近で、警備員が殺された!」
( <●><●>) 「犯人はまだ、この近辺にいる!」
三度目の予告は、どうやら遂行されたようだった。
.
212
:
名無しさん
:2018/08/27(月) 17:36:12 ID:OAVw79X60
序幕
>>2-69
第一幕
>>82-211
213
:
名無しさん
:2018/08/27(月) 17:42:37 ID:CZ4aqXp.0
いいところで……
乙!!
214
:
名無しさん
:2018/08/27(月) 19:12:25 ID:04C1g/ns0
乙
予告殺人といえばABC殺人事件だけど
215
:
名無しさん
:2018/08/28(火) 03:23:35 ID:Blvne0Sg0
乙
ドキドキするな
216
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 08:24:37 ID:iG753x8o0
vip総合でかいたイツワリさん
https://i.imgur.com/7xkO63j.png
217
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:39:56 ID:XxFQ.4eo0
>>216
ありがとう なに、お礼に続き投下しろだと 卑怯なやつめ わかったよ
218
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:40:48 ID:XxFQ.4eo0
┏━─
五月四日 午前六時一三分 牛丼屋
─━┛
昨晩、恐れていたニュースが報道された。
五月三日付、十九時過ぎ、ヴィップスタジアム場外にて警備員が殺害された。
( ´・ω・)
っ= ’
喉元を一突き、即死だったそうだ。
被害者は、クックル三階堂。
当時、現場のヴィップスタジアムには、ある殺人予告が届けられていた。
「五月三日、十九時より開演される渋沢栄吉のライブ中に、観客一名を殺す」
渋沢栄吉といえば、一時代を築いたトップスターだ。
当然ライブは中止され、厳重な警備体制が敷かれた。
殺されたクックル三階堂も、派遣されたうちの一人だった。
.
219
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:41:33 ID:XxFQ.4eo0
( ´・ω・)
っ=,・
現場は、警備員や所轄の刑事、
そして県警からふたりの刑事が出動していた。
警部補、東風ミルナと天才、ワカッテマス。
ヴィップ県警が誇る優秀なふたりだ。
その二人が迅速に対応し、事件の発覚後即座に検問が敷かれた。
待機していた警官の多くが対応し、ヴィップスタジアム近辺を捜索した。
ただし捜査の甲斐なく、犯人には逃走を許す運びとなった。
( ´・ω・) ,
っ= ・
( ´・ω・) 「ゲーフ…」
っ=
話の根本、殺人予告についてだが、
これはいわゆる連続予告殺人と呼ばれるもので、
ライブ殺人は三件目に実行されたものだ。
僕は二件目、ビジネスホテルのヒッキー小森殺人事件を追っていた。
事件が発生した時、害者宅を捜索していた。
.
220
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:43:11 ID:XxFQ.4eo0
突如、ぎょろ目の野郎から電話がかかってきた。
いやな予感がしたんだ。
電話越しに、焦燥がうかがえた。
警備員がやられた、としきりに連呼していた。
この男にしては珍しく、感情的になっていた。
捜査は同行していた壁にまかせて、
現場に急行せざるを得なかった。
そこから、夜通し現場の捜査、状況の把握、現場の指揮。
ひと段落ついて、ようやくメシにありつくことができた。
スタジアム近くというだけあり、飲食店には困らなかった。
'_
( ´・ω・)y- 、
( ´・ω・) 「はい、ショボーンです」
しかし、食事中も、食後の一服も。
立て続けに電話が鳴るのだから、たまったもんじゃない。
.
221
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:43:42 ID:XxFQ.4eo0
矢継ぎ早に飛んでくる、情報情報また情報。
重要そうなもの以外は、聞き流していく。
夕食を抜き、夜通し起きていた中年が、
細かな情報を逐一覚えていられるはずもなかろう。
ほどなくして、現場に戻った。
鑑識があちらこちらに立っており、マスコミや野次馬はまだ数が減っていない。
朝の日課だろう、ランニングや犬の散歩をしていた老人たちも集まっている。
群衆をかき分け、黄色いテープをくぐった。
途中で何度かマスコミがマイクを向けてきたが、すべて無視した。
(´・ω・`) 「戻ったぞ」
( ゚д゚) 「はい」
初動捜査は、ぎょろ目が先導していた。
遺体は既に運ばれているが、まだ現場には生々しい事件の跡が残っている。
.
222
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:44:28 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「メシはいいのか」
( ゚д゚) 「大丈夫ですね」
(´・ω・`) 「いいから、ほれ」
戻ってくる時にコンビニで買った、豆乳とあんぱんを押し付けた。
ぎょろ目は見た目通り、古風な刑事だ、捜査中の食事にはあんぱんを好む。
ただ、近頃は健康に気遣って、豆乳も併せて飲んでいるらしいけど。
( ゚д゚) 「どうも」
(´・ω・`) 「無理はするなよ。 じいちゃん言われても仕方ねえ歳だ」
( ゚д゚) 「やっぱり歳ですかね、朝日が厳しい」
(´・ω・`) 「弱音吐かないでくれ。 あんたが頼りだ」
ぎょろ目は袋を握って、スタジアムに向かった。
僕もついていく。
.
223
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:44:57 ID:XxFQ.4eo0
害者は、スタジアム外壁から数メートル、植え込みのなかで殺された。
道路は十メートルほど向こうにあり、あまり人目につかなさそうな位置取りである。
ぎょろ目は、ライトゲートをくぐった。
眠そうな顔をしている警官が、ぎょろ目を見て初々しい敬礼をした。
気だるげに 「ウッス」 と返すだけである。
( ゚д゚) 「ふう…」
(´・ω・`) 「僕だけ先に食ってすまんよ」
ぎょろ目は 「構いませんよ」 と言った。
僕は、現場近くで立ちながら食うメシが嫌いだった。
今更、あらためて言う必要もない、ぎょろ目はわかってくれている。
豆乳を一口で飲み干し、パックを握りつぶす。
よっぽど疲労がたまっていたと見受けられる。
(´・ω・`) 「ヤニ、足りてるか?」
( ゚д゚) 「足りてる、わけがないですね」
あんぱんを三口ほどで胃に押し込んで、笑った。
だろうと思ったよ。
.
224
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:45:32 ID:XxFQ.4eo0
近頃、マスコミや市民の目は厳しい。
ライトゲート外にも喫煙所はあるが、僕たちは中ほどにある喫煙所に向かった。
( -д)y-~~
一口目で、一センチが一気に燃え尽きた。
かなり深い吸い込みだ。
(´・ω・`) 「ひとまず、わかったことから整理していこうか」
(´・ω・`) 「…の前に、ワカッテマスは?」
( ゚д゚) 「取り調べですね」
(´・ω・`) 「あいつにも、なんかメシ食わせとけ」
いまどきの若者にしては珍しく、ワカッテマスは限界以上に働きたがる。
好奇心に駆られやすい性格とでも言えば聞こえはいいのだろうが、
夜通し、食事もなしに捜査に明け暮れるのはただのオーバーワークだ。
( ゚д゚) 「必要に応じて、勝手に食うと思いますよ」
(´・ω・`) 「そこまで面倒は見てられんがなあ」
(´・ω・`) 「まあ、後で呼び出しておこう」
.
225
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:46:13 ID:XxFQ.4eo0
( ゚д゚) 「とにかく、事件について」
( ゚д゚) 「繰り返すことが多くなりますが、確認も兼ねて」
(´・ω・`) 「頼むよ」
ぎょろ目は、ようやく落ち着いてきたようだ。
さっそく一本目を吸いきって、ゆっくり二本目に手を伸ばす。
( ゚д゚) 「まず、害者はクックル三階堂」
( ゚д゚) 「ケイビー警備会社に勤めていたアルバイターです」
ケイビー警備会社は、ヴィップ県警近くに本社を構える、大きな企業だ。
何度か上層部と顔を合わせたこともある。
( ゚д゚) 「ヴィップ在住で、三十二歳の既婚者、子はなし」
( ゚д゚) 「免許証も照合しましたが、虚偽ではありませんね」
(´・ω・`) 「…」
.
226
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:46:52 ID:XxFQ.4eo0
( ゚д゚) 「現場は、ライトゲートをやや南に向かった植え込み」
( ゚д゚) 「目下聞き込み中ですが、とりあえず目撃者はゼロ」
( ゚д゚) 「人が見ていないのをいいことに、犯行に及んだものと見られます」
(´・ω・`) 「ふむ…」
( ゚д゚) 「十九時十分頃、でしょうか」
( ゚д゚) 「犯人と害者は植え込みに移動後、」
( ゚д゚) 「喉元をナイフで突かれ即死しました」
(´・ω・`) 「ナイフの鑑定結果は」
現場には、即座に鑑識が駆けつけた。
遺留品、といってもナイフしかなかったが、検査結果は既に出ている。
( ゚д゚) 「指紋は確認されませんでした」
( ゚д゚) 「比較的新しいもののようで、出所はこれから洗います」
( ゚д゚) 「ただ、ありふれたものなので、こちらも大した手がかりにはならないかと」
.
227
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:47:18 ID:XxFQ.4eo0
( ゚д゚) 「以上までで、なにか」
(´・ω・`) 「彼の配属状況とかは」
(´・ω・`) 「どういった経緯で、ここに配属されたか、とか」
( ゚д゚) 「問い合わせ中です」
(´・ω・`) 「オーケー」
(´・ω・`) 「……年齢が三十二、というのは間違いないんだね」
( ゚д゚) 「こちらに嘘はなかったです」
(´・ω・`) 「ペニーや壁には回したか?」
( ゚д゚) 「ワカッテマスが回していましたね」
、 、 、 、、 、 、
( ゚д゚) 「……三件すべて、三十代少しの男が殺されている」
( ゚д゚) 「ここまでくれば、偶然ではないでしょう」
、 、 、
(´・ω・`) 「浮かんできたな、共通点」
.
228
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:47:47 ID:XxFQ.4eo0
皮肉でこそあるが、ここにきて、漠然と被害者三人に共通点が見えてきた。
フッサール擬古は三十二歳、ヒッキー小森は三十四歳。
続けて殺されたクックル三階堂は、三十二。
もはや偶然ではない。
年齢が近しいことがひとつ、この事件のキーとなるのは間違いない。
( ゚д゚) 「害者の経歴はまだ詳細にはわかっていません」
(´・ω・`) 「履歴書はまだ照合してないんだ?」
( ゚д゚) 「アルバイトの履歴書なんて、いくらでも偽装ができますからね」
( ゚д゚) 「こちらは所轄に任せています」
ひとまずわかったのは、年齢と住所。
免許証に記載されてあることは真実と断定済みだった。
(´・ω・`) 「そこまではオッケーだ」
( ゚д゚) 「初動捜査で、ひとまず浮かんだ疑問点ですが、」
(´・ω・`) 「あれから何か出た?」
.
229
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:48:30 ID:XxFQ.4eo0
事件を聞きつけ、なるべく現場に急行したものの、
まだ、ぎょろ目から詳細な情報共有は済ませていない。
( ゚д゚) 「現状、一番不審な点は、インカムですね」
(´・ω・`) 「インカム?」
( ゚д゚) 「当時、警備員は全員、インカムをつけていました」
( ゚д゚) 「ヴィップスタジアムで、イベントに使用されていたものですね」
(´・ω・`) 「ほう」
インカムの情報は、聞いていなかったな。
( ゚д゚) 「で、インカムって、チャンネルを合わせて音声を共有するのですが、」
( ゚д゚) 「当時、警備員は一番に合わせていました」
(´・ω・`) 「うん」
( ゚д゚) 「一方、自分とワカッテマスも、同じ型番のインカムを使用していました」
.
230
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:49:03 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「うん…?」
( ゚д゚) 「ただ、チャンネルは五番で合わせていました」
(´・ω・`) 「警備員とは、共有していなかったと」
( ゚д゚) 「問題はそこですね」
(´・ω・`) 「そこ?」
( ゚д゚) 「害者のインカムも、五番に合わされていたんですよ」
(´・ω・`) 「なに…?」
(´・ω・`) 「その、五番が警察用ッてのは、周知だったか?」
( ゚д゚) 「まさか」
( ゚д゚) 「聞いたところ、我々も同じインカムを使うことすら知らされていなかったようです」
(´・ω・`) 「……」
.
231
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:49:38 ID:XxFQ.4eo0
腹の底のほうで、異物感を覚えた。
ぎょろ目は続ける。
(´・ω・`) 「他の警備員は、どうだった」
( ゚д゚) 「皆、一番で合わせていました」
(´・ω・`) 「その、インカムの仕様がよくわからないんだけど、」
( ゚д゚) 「ごく普通のものですね」
( ゚д゚) 「電波だけは高性能、といった程度」
( ゚д゚) 「違うチャンネルでやり取りがあっても、一切気づけません」
(´・ω・`) 「……ふーん」
懐から、最後の一本取り出した。
空き箱を捨てて、ふた箱目を懐に忍ばせておく。
.
232
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:50:10 ID:XxFQ.4eo0
( ゚д゚) 「こちらは、また戻り次第、検討しましょう」
( ゚д゚) 「イツワリさんは、何か気づいたことは」
(´・ω・`) 「…」
いま、言うべきか。
ひと段落したとは言え、まだ初動捜査の段階だ。
いたずらに余計なことを言いたくないとは思う。
ただ、どうしてもひとつ、確認しておきたいことがあった。
(´・ω・`) 「あるッちゃ、ある」
( ゚д゚) 「はい」
(´・ω・`) 「ライブ殺人の、予告状……」
(´・ω・`) 「一字一句、違わず確認させてくれ」
( ゚д゚) 「一字一句、ですか」
.
233
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:50:42 ID:XxFQ.4eo0
言われて、ぎょろ目は手帳を取り出した。
最後のページに挟んであった資料を広げる。
五月三日、十九時より開演される
渋沢栄吉のライブ中に、観客一名を殺す。
勘違いであってほしい、とは思ったが、いよいよ疑問が明らかになった。
ぎょろ目やワカッテマスが気づいているかはわからないけど。
(´・ω・`) 「…」
( ゚д゚) 「なにか」
(´・ω・`) 「いや…何か、じゃないよ」
ぎょろ目とワカッテマスは、ずっと現場にいた。
僕のような、客観的でいられる第三者のほうが気づけるのかもしれない。
、 、
(´・ω・`) 「予告は、観客に向けられてたんだろ?」
(´・ω・`) 「害者は、観客じゃねえぞ」
、 、 、
(´・ω・`) 「警備員だ」
.
234
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:51:17 ID:XxFQ.4eo0
( ゚д゚) 「…」
( ゚д゚) 「……な…」
言われて、ぎょろ目は再び資料に視線を落とした。
渋沢栄吉のライブ中に 「観客」 一名を殺す。
(;゚д゚) 「…」
ぎょろ目は、口をぽかんと開けた。
眉間にしわが寄っていく。
すると、乱雑に携帯を取り出し、耳元に当てた。
大方、ワカッテマスにも共有するのだろう。
ワンコールほどで繋がったようで、ぎょろ目はすぐに、そのことを告げた。
何度か応答を繰り返し、切る。
(;゚д゚) 「…」
(;゚д゚) 「まーーた…面倒なところに気が付きましたね」
.
235
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:51:59 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「いや、フッツーに気づけるよ」
(´・ω・`) 「あんたらが、気張りすぎなんだ」
( ゚д゚) 「…でしょうな」
ペニーでも、壁でも気づけそうなもんだ。
僕も、連絡がきた瞬間に、引っかかるものはあった。
観客が、殺されるんじゃあなかったのか。
どうして、警備員が殺されたんだ。
( ゚д゚) 「……」
( ゚д゚) 「そうか、観客…」
(´・ω・`) 「殺されたのが、一般人ならまだわかった」
(´・ω・`) 「ただ、殺されたのが警備員となると…」
( ゚д゚) 「…」
( ゚д゚) 「あの予告は、観客に注意を寄せて、こっそり警備員を殺すための罠だった」
.
236
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:52:26 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「断言はできないけど……まあ、そう捉えたくなるね」
( ゚д゚) 「ここにきて、狂言が挟まれたわけですな」
(´・ω・`) 「イマドキの殺人予告って、結構律儀なやつが多いんだよ」
(´・ω・`) 「それだけに、こんな小手先をしてくるとわかると……面倒だ」
殺人予告を出す犯人の特徴は、決まって自信家ばかりである点が挙げられる。
予告を出す以上、相手にも最大限の準備をさせてしまう。
それを潜り抜けられるだけの自信がなければ、
たとえ嘘を交え虚を衝く作戦を練ろうが、予告などしないだろう。
虚を衝いて予告を成功させられるなら、それこそ最初から予告する必要性もない。
( ゚д゚) 「…」
( ゚д゚) 「ひとまず、目先の現場を優先させましょう」
( ゚д゚) 「ここは自分が担当しますが……イツワリさんはどうします?」
(´・ω・`) 「ん……そうだなあ」
.
237
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:52:49 ID:XxFQ.4eo0
やるべきことは山ほどあるが、取っ掛かりというものが少ないのが現状だ。
まだ、具体的な犯人像が一切浮かんできていない。
(´・ω・`) 「害者にはヨメさんがいるんだな?」
( ゚д゚) 「ええ。 まだ事件のことは知らないはずですね」
(´・ω・`) 「別居もしてないんだよね」
( ゚д゚) 「の、はず」
腕時計を、チラッと見る。
まだ七時にはなっていないが、車を飛ばしている間に
七時のニュース番組が始まることだろう。
害者のデータを控えた。
(´・ω・`) 「だったら、僕がじきじきにヨメさんとこに行こう」
( ゚д゚) 「わかりました」
(´・ω・`) 「…もう起きてるかなあ?」
「さあ」 と言って笑った。
僕とぎょろ目は、歳のせいもあってか早起きに抵抗がなくなっているが、
七時といえば、若者からすれば十分な早朝だ。
起きてくれていると助かるのだけど。
.
238
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:53:48 ID:XxFQ.4eo0
┏━─
午前七時一六分 アパート
─━┛
車を走らせて二十分ほど、見えてきたのは質素なアパートだった。
僕が二十代頃に住んでいたワンルームのそれに似ている。
このご時世に、洗濯機が廊下に野ざらしになっているアパートはいっそ珍しい。
( ´-ω-)y-~~
車の中で、一本を十分ほどかけてじっくり味わった。
朝早いから、というのもあるが、事件を聞きつけてから、
ほとんど心を休ませる暇がなかった。
( ´・ω・)y-~~
伸びてきた顎ひげをさすりながら、アパートを眺めた。
三十過ぎの夫婦が住むには、いささか可哀想な外装だ。
しかし、こんな古びたアパートは、なかなかどうして住みたくなる衝動にも駆られる。
近頃の格安賃貸は、月五万ほど払えば、きれいな内装に家具家電が完備されているものだ。
となると、このアパートは月いくらほどなんだろうか。
.
239
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:54:11 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「…さて」
事件が発生したばかりで、犯人はもちろん、
害者の容態や現場状況がまったく掴めてていない場合、
親族への連絡が遅れてしまうことがある。
何もわかっていないのに、それこそ犯人も捕まっていないのに
いきなり連絡だけ入れても、いたずらに悲しませるだけだ。
実のところ、ただ人手が足りていないだけなのだろうけど。
軋む階段を上って二階、三つ目の扉に向かう。
インターホンは備わっているようで、二度鳴らすと、なかから足音が聞こえた。
ミセ*゚-゚)リ 「…はーい?」
寝起きなのが見てとれる、小柄な女性が顔を出した。
むろん、化粧も髪のセットもしていないため、三十代にしてはくたびれた容貌に見える。
ためらう必要はなかった。
僕はさっと、構えていた警察手帳を見せた。
ミセ;゚-゚)リ 「…ッ」
.
240
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:54:33 ID:XxFQ.4eo0
女性は、それを見た瞬間眠気が払われたようだった。
目がくわっと開く。
化粧したら美人なのだろう、大きな目をしていた。
(´・ω・`) 「ヴィップ県警の者です」
ミセ;゚-゚)リ 「…………ハイ」
急に声がちぢこまった。
警戒されているのか、ドアのチェーンは外してもらえていない。
さっさと、本題を切り出したほうがいいだろう。
夫が、殺されましたッてな。
(´・ω・`) 「クックル三階堂さんは、おたくの旦那さんですか?」
ミセ;゚-゚)リ 「そう……ですが」
ミセ;゚-゚)リ 「主人が、なにか、しましたか?」
(´・ω・`) 「何者かによって、殺されました」
ミセ;゚-゚)リ
.
241
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:54:56 ID:XxFQ.4eo0
ミセ;゚-゚)リ
こわばった顔が、引きつった。
引きつったというより、固まったといったほうがいいだろう。
彼女は、息を深く吸い込んでいる。
目はぱちくりと開いたままだ。
そりゃあそうだ。
朝早くに刑事がきたと思えば、旦那が殺されたと告げられたのだ。
ミセ;゚-゚)リ
ミセ;゚-゚)リ 「は?」
(´・ω・`) 「旦那さんは先日、ヴィップスタジアムの警備に行ってい」
ミセ;゚-゚)リ 「あの」
(´・ω・`) 「はい」
ミセ;゚-゚)リ 「手帳」
ミセ;゚-゚)リ 「それ、ホンモノですか?」
.
242
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:55:39 ID:XxFQ.4eo0
いっそう、警戒を強めさせてしまったようだ。
あまりにも信じられなさすぎて、新手の勧誘か詐欺か、を疑われたのだろう。
(´・ω・`) 「ホンモノですよ」
(´・ω・`) 「といっても、ニセモノだとしても、見分けつかないかもですが…」
ミセ;゚-゚)リ 「…」
確かに、と言いたげな顔をしつつも、手帳をじっと見つめる。
ヴィップ県警捜査一課、警部、ショボーン、僕の顔写真。
警察手帳は説得力があるように思われるが、
次々となりすましの詐欺が横行している昨今、
手帳なんて見慣れない一般人からすれば、それに一切の説得力はない。
そういう時は、拳銃だ。
(´・ω・`) 「こっちのほうが、信用、されますかね」
ミセ;゚-゚)リ 「ッ」
.
243
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:56:16 ID:XxFQ.4eo0
腰のホルダーから、拳銃を抜いた。
スミス&ウェッソン製の、五連リボルバー。
弾がフルに装填された弾倉まで見せると、女性は小刻みにうなずいた。
ミセ;゚-゚)リ 「………」
(´・ω・`) 「いま……お時間、だいじょうぶですか?」
ミセ;゚-゚)リ 「え」
ミセ;゚-゚)リ 「主人が、殺されたんですか?」
ミセ;゚-゚)リ 「主人が?」
(´・ω・`) 「現場写真を見せられなくはないのですが、」
ミセ;゚-゚)リ 「見せて」
(´・ω・`) 「…」
絞殺などではない、刺殺だ。
それも、大量出血を伴っている。
決して、家族、それも女性に見せるべきシロモノではないのだが、
世の遺族は、それでも被害者の最後の姿を見たがるものだ。
わからなくは、ないけど。 僕なら見たくない。
.
244
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:56:56 ID:XxFQ.4eo0
ミセ*゚-゚)リ 「 ……ッ」
(´・ω・`) 「ご主人で、間違いありませんね?」
ミセ*゚-゚)リ
::ミセ*゚-゚)リ:: 「……」
女性は、ようやく事の重大さを理解したのだろう。
全身の力が抜けたようで、小刻みに震えながら、少しずつ、くずおれていった。
そのまま、ドアを押さえる力すらなくなり、
チェーンのかけられたままだったドアは、力なく閉じられた。
女性はドアにもたれかかったようで、扉越しでも嗚咽を漏らすのが聞こえてきた。
(´・ω・`) 「…」
(´-ω-`)
っ ‘・
いつになっても、慣れないものだ。
僕は廊下の柵に上体を預け、煙草に火をつけた。
こうなると、少なくとも五分、十分は、遺族のかたは動けない。
.
245
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:57:43 ID:XxFQ.4eo0
( ´・ω・)y-~~
'_
( ´・ω・) 、
紫煙を遊ばせていると、物音がした。
チェーンが外される音だ。
続けて、扉がゆっくり開かれた。
ミセ*゚-゚)リ
目が赤くなっている。
ずいぶんと擦ったようだ、荒れていると言ってもいい。
ミセ*゚-゚)リ 「…」
ミセ*゚-゚)リ 「汚いとこですけど…あがっていただけませんか」
(´・ω・`) 「わかりました」
煙草を携帯灰皿に押し込んで、おじゃますることにした。
若い二人暮らし、ということで、室内に余計なものはなかった。
.
246
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:58:25 ID:XxFQ.4eo0
促されるがまま、客用であろう座布団に腰を下ろす。
女性はマグカップに、たくさんの氷と麦茶を注いでくれた。
ミセ*゚-゚)リ 「どうぞ」
(´・ω・`) 「ありがとうございます」
ミセ*゚-゚)リ 「で……」
ミセ*゚-゚)リ 「その」
女性が言いよどんだ。
落ち着いたとはいえ、あまりにも急すぎる話に、まだ混乱しているのだろう。
室内を、失礼にならない程度に見渡す。
いつかは、ここも捜査しなければいけないのだ。
少年誌や生活雑誌などが、ちらかっている。
まだ中身が残っているポテトチップスや、チューハイの空き缶もだ。
.
247
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 18:58:51 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「では、あらためて……捜査一課の、ショボーンです」
ミセ*゚-゚)リ 「芹澤ミセリ……と言います」
(´・ω・`) 「…?」
おや、と思った。
セリサワ? どこからその名前が?
(´・ω・`) 「あの、失礼ですが」
(´・ω・`) 「クックル三階堂さんとは、籍を入れては…?」
ミセ*゚-゚)リ 「ああ」
ミセ*゚-゚)リ 「入籍は、しています」
ミセ*゚-゚)リ 「ただ、苗字はそのままにしてます」
ミセ*゚-゚)リ 「最近、そういう家庭も少なくないみたいですよ」
(´・ω・`) 「なるほど……いや失礼」
.
248
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:01:00 ID:XxFQ.4eo0
自分も、結婚していた時の頃を思い出す。
ミセリ、クックルの年代を考えると、およそ十年は違うわけだ。
すっかり、時代というものは変わっているらしい。
ミセ*゚-゚)リ 「別にいいですケド…」
(´・ω・`) 「挙式しない夫婦も、年々増えているそうですしね」
ミセ*゚-゚)リ 「そう、ですね…」
ミセ*゚-゚)リ 「お金が、かかりますから」
結婚式を挙げない夫婦も、確実に増えている。
不景気はもちろん、若者の意識に変化が現れているらしく、
一日限りのセレモニーにウン百万と払うのに、抵抗があるそうだ。
僕も、挙式はしていない。
もっとも、当時からすれば珍しいほうだったのかもしれないが。
もし再婚する機会があったら、式くらいは挙げようか。
(´・ω・`) 「ご主人は、ケイビー警備会社にお勤めで?」
ミセ*゚-゚)リ 「ケイビー…だか知らないですが、そうですね」
.
249
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:03:11 ID:XxFQ.4eo0
あまり亭主の職業に興味を抱いていないようだった。
ということは、少なくとも職場結婚ではないだろう。
(´・ω・`) 「社員としてではなく、あくまで非正規雇用、で」
ミセ*゚-゚)リ 「そうですね」
ミセ*゚-゚)リ 「とりあえず生活するために……ということです」
(´・ω・`) 「以前、お仕事はなにを?」
ミセ*゚-゚)リ 「いや…いろいろですよ」
結構デリカシーのないことを聞いているつもりなのだけど、
ミセリは存外ふつうのことのように答えてくれた。
ミセ*゚-゚)リ 「配送業だの、土木だの…」
ミセ*゚-゚)リ 「大学を出てとび職に就いてたんですが、一年で辞めてましたね」
(´・ω・`) 「いやあ…男らしい仕事ばかりで」
ミセ*゚-゚)リ 「ガクがないですよ。 主人は」
.
250
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:03:32 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「しかし、大学は出ていたのでしょ?」
ミセ*゚-゚)リ 「まあ」
話を察するに、大学で知り合った夫婦のようだ。
でなければ、大学を出てとび職に就いていた、といった言い方はしない。
ミセ*゚-゚)リ 「でも、遊んでばかりでしたので」
ミセ*゚-゚)リ 「その………そうですね」
(´・ω・`) 「…?」
ミセリは一呼吸置くように、麦茶を飲んだ。
僕もあわせて一緒に飲んだ。
結構しぶみが出ている。 昨日作ったものではなさそうだ。
ミセ*゚-゚)リ 「で、最近、警備員になる、って言って」
(´・ω・`) 「はやく定職に就いて! とかはなかったんですか?」
ミセ*゚-゚)リ 「別に……最低限、生活さえできれば、いいので」
(´・ω・`) 「ふむ…」
.
251
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:03:53 ID:XxFQ.4eo0
雑談も、この程度でいいだろう。
警備員、というワードが出たのだから、ここから本題に入ろう。
(´・ω・`) 「マ。 その警備員ですが…」
(´・ω・`) 「昨夜、ご主人はヴィップスタジアムにお勤めなさっていました」
(´・ω・`) 「ヴィップスタジアムは、ご存じですか?」
ミセ*゚-゚)リ 「まあ…」
ミセ*゚-゚)リ 「○○市ですよね」
(´・ω・`) 「そうですそうです」
ミセリもヴィップの人間のようで、
軽く近辺の話などをして探りを入れると、そのどれもに食いついてきた。
同じヴィップの人間として、親近感がわく。
(´・ω・`) 「ヴィップスタジアムなんですが、」
(´・ω・`) 「どうして警備員が発注されたか、ご存じですか?」
ミセ*゚-゚)リ 「まあ……主人が言っていたので」
.
252
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:04:16 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「そうですね」
ミセ*゚-゚)リ 「渋沢が、ライブするんでしたよね」
(´・ω・`) 「ええ……、え?」
ミセ*゚-゚)リ 「え?」
間違っては、いないが。
もしかして、連続予告殺人を知らないのだろうか。
ミセ*゚-゚)リ 「渋沢……じゃなかった?」
ミセ*゚-゚)リ 「なんにせよ、誰かのライブがあるから、って聞いてましたが」
(´・ω・`) 「ま、間違っちゃあいませんが」
ミセ*゚-゚)リ 「なんですか」
ああ、煙草が吸いたい。
害者も愛煙家だったようで、ローテーブルに透明の灰皿がある。
しれっと吸っても、怒られないかな。
(´・ω・`) 「ヴィップスタジアムといえば、あれですよ」
(´・ω・`) 「話題の、予告殺人……ご存じじゃ、ないので?」
.
253
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:04:46 ID:XxFQ.4eo0
ミセ*゚-゚)リ 「連続…?」
ああ、だめだ。
しれっと吸っちゃえ。
(´・ω・`) 「失礼」
っ ”
ミセ*゚-゚)リ 「ン……どうぞ」
( ´-ω-)y-~~
どういうことだ。
害者は、奥さんに連続予告殺人のことを言っていなかったのか。
それとも、そもそも詳しいことまで話す関係じゃなかったのか。
確かに、奥さんの口ぶりから察するに、
そこまで害者の仕事に関しては、興味を抱いていなさそうだが。
(´・ω・`) 「最近、ニュースで話題になってませんかね」
(´・ω・`) 「ここ数週間で、立て続けに、同一犯による殺人予告が送られ…」
(´・ω・`) 「次々と、人が、殺されている」
.
254
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:05:26 ID:XxFQ.4eo0
ミセ*゚-゚)リ 「…」
ミセ*゚-゚)リ 「えっと、全国で…?」
(´・ω・`) 「ヴィップで。 です」
ミセ*゚-゚)リ 「…!」
知らなかった、と小声でつぶやいた。
あまり、ニュースなど見ないのかもしれない。
若者のニュース離れはよく聞いているが、
ニュースを見るまでもなく、SNSなんかでも情報は得られるとも聞く。
なにかあったのか、単なる偶然か。
(´・ω・`) 「初回が、地下鉄の、××駅」
ミセ*゚-゚)リ 「!」
ミセリが、リアクションを見せた。
ここからはそう近くないローカル線の駅だが、知っていたか。
生まれも育ちもヴィップなのだろう。
.
255
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:05:51 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「ああ、知っていましたか」
ミセ*゚-゚)リ 「…そうですね」
ミセ*゚-゚)リ 「昔、大学に通ってる時に…ハイ」
(´・ω・`) 「あの辺の大学、というと、ヴィップ大学ですな?」
ミセ*゚-゚)リ 「はい。 刑事さんも、卒業生ですか?」
(´・ω・`) 「ヤ、自分は大学には…」
僕は、高卒でそのまま警察学校の門をくぐった。
大学全入時代は、それこそ僕が三十前後から言われている言葉だ。
しかし、ヴィップ大学は、その名の通りヴィップに根差す大学で、
もともとローカル大学だったのが、今ではかなり大きく成長している。
(´・ω・`) 「で、二件目が、ビジネスホテル宛てに出された殺人予告」
ともすれば、と思い、駅名や場所を言ったが、こちらはピンとこなかったようだ。
確かに、あちらは意味もなく訪れるような場所ではない。
.
256
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:06:08 ID:iG753x8o0
支援
257
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:06:38 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「そちらでも犯人は、逃亡を果たした」
(´・ω・`) 「あらためて捜査本部が設置され、ワレワレ県警の捜査一課が担当したわけです」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
(´・ω・`) 「三つ目の予告は、ヴィップスタジアムが舞台でした」
(´・ω・`) 「渋沢栄吉のライブに合わせたものです」
ミセ*゚-゚)リ 「渋沢…ハイ。」
合点がいったようで、ミセリはうなずいた。
そして、そこに主人が配備されていた、というわけなのだ。
(´・ω・`) 「連日、報道されておりますが」
(´・ω・`) 「ミセリさんは、知りませんでした?」
ミセ*゚-゚)リ 「……まあ」
ミセ*゚-゚)リ 「恥ずかしながら」
.
258
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:06:59 ID:XxFQ.4eo0
肩をすぼめるようにして言った。
この様子だと、別段ごまかしているわけでもなさそうだ。
ミセ*゚-゚)リ 「私は、全然テレビとか見なくって」
(´・ω・`) 「ご主人も?」
ミセ*゚-゚)リ 「主人は、よく見ていましたね」
ミセ*゚-゚)リ 「朝早く出勤する時は、勝手に見てた……はず」
(´・ω・`) 「でも、知らなかった……と」
ミセ*゚-゚)リ 「私は、朝に弱いので…」
言われて、時計を見た。
まだ八時にはなっていない。
(´・ω・`) 「朝早くに、すみませんね」
ミセ*゚-゚)リ 「まあ、目は覚めたので…ハイ」
.
259
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:07:35 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「ミセリさんは、お仕事は」
ミセ*゚-゚)リ 「近所のスーパーで、パート、してます」
ミセ*゚-゚)リ 「といっても、昼すぎからのシフトですので」
(´・ω・`) 「今日も」
ミセ*゚-゚)リ 「そうですが……」
さすがに、旦那が殺されて、のうのうと出勤するわけにもいかないだろう。
断るつもりだ、というのが雰囲気から推しはかれた。
ミセ*゚-゚)リ 「…」
ミセ*゚-゚)リ 「主人が殺されたのは……どこまでわかってるんですか?」
(´・ω・`) 「どこ…というと、捜査状況ですか?」
ミセ*゚-゚)リ 「そうですね」
.
260
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:08:31 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「まず、犯人は目下捜索中」
(´・ω・`) 「現場にいた人全員に、取り調べ中です」
(´・ω・`) 「また、事件発生直後から周囲に検問を敷き、片っ端から捜査してます」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
(´・ω・`) 「かなり、強固な捜査網を張っています」
(´・ω・`) 「犯人が捕まるのは、時間の問題でしょう」
取り逃してごめんなさい、とは言わなかった。
そんなことを言うと、それに便乗して感情的になられてしまうことがある。
ただ、ミセリはそこまで感情的にはならなかった。
家族が殺されると、この上なく感情的になるか、この上なく生気が抜けるかに分かれる。
ミセリは、後者のパターンだったようだ。
(´・ω・`) 「そこでお伺いしたいのですが」
(´・ω・`) 「お時間、だいじょうぶでしょうか。 なんなら、先に朝食くらい、待ちますが」
ミセ*゚-゚)リ 「ん…」
.
261
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:08:54 ID:XxFQ.4eo0
ミセリも、ベッドに置いてあるデジタルの置時計に目をやった。
そうですね、と詰まりながら言った。
ミセ*゚-゚)リ 「そっちのほうが」
(´・ω・`) 「わかりました。 だいたい、何時ごろに、」
ミセ*゚-゚)リ 「別にいいですよ。 横にでもなってて」
(´・ω・`) 「へ」
最初警戒していたのはなんだったのか、
想像以上に、ラフな性格なんだな、と思った。
ミセ*゚-゚)リ 「…」
ミセリはそうとだけ言って、冷蔵庫から牛乳を取り出した。
グラノラを盛って、牛乳を多めに注いでいる。
旦那が殺されたわりに、落ち着いているなと思った。
落ち着いている、というよりは、まだ実感が湧いていないともとれる。
.
262
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:09:15 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「…」
ミセ*゚-゚)リ ・‘
もう、僕は眼中にないようだ。
ぽけーっとしている。
我、ここに在らずといった印象だ。
(´・ω・`) 「…」
( ´・ω・)y-~~
最初は、ぽりぽり、ぽりぽりとテンポよく食べていたが、
五分もすれば、すっかりスピードは遅くなり、
木製のスプーンを置いて、口を押さえて俯いた。
( ´・ω・)y-~~
( ´・ω・)y-~~
いたたまれなくなり、僕はベランダに出た。
ベランダ、といっても、でっぱりがあるだけだ。
そこから身を乗り出し、紫煙を浮かべた。
.
263
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:10:01 ID:XxFQ.4eo0
ミセリが、声にならない泣き声を上げる。
この上なく気まずかったが、いま彼女を一人にするのはまずい気がした。
あまり、クックルとミセリが仲良かった印象は感じられない。
しかしそれでも、毎日を一緒に過ごしてきた家族というのは、かけがえのないものだ。
ミセ :::::)リ 「 ――――‐ッ ――‐ッ」
誰かがいることの、安心感。
ベッドの上で寝返りを打つだけで、布ずれの音が聞こえる。
缶ビールを飲むだけで、喉を鳴らす音や、缶を置く音が聞こえる。
そんな、ノイズとも変わらない生活音が聞こえるかどうかだけで、
暮らしというものは驚くほど変わるものだ。
夫婦生活、独身生活を往復した僕は、よくわかる。
僕も、昔は、嫁がいた。
黒髪と澄んだ小顔がきれいな美人だった。
母のいいところだけを受け継いだ娘にも恵まれた。
( ´・ω・)y-~~
二十代の頃だ。
犯人の恫喝に怯み、人間の亡骸に怯え、上司の叱責に泣く男だった。
.
264
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:10:23 ID:XxFQ.4eo0
そんななか、のちに嫁となる美人と出会った。
僕は、垂れた眉毛からうかがえるほどの情けない男だったが、
刑事であることだけを武器に、懸命に恰好をつけて、結婚まで漕ぎ着けた。
弱虫なところは、どうやら付き合って一週間で看破されたようだが、
それでも嫁は僕を愛してくれたものだった。
死んだけど。
( ´-ω-)y-~~
放火だった。
当時、三十手前だ。
まだ警部補にすらなっていない、ヒラの刑事だった。
考えてみれば、ミセリと、面白いくらいに境遇が似ていた。
僕の家族が引き裂かれた事件も、連続で発生していたものだった。
数年前の誘拐事件といい、僕はつくづく、連続殺人というものと縁がある。
違うのは、僕はその日を、その事件を境に、大きく豹変したということだ。
当時の警部、のちに一課長となる上司からは、あの頃から急にふてぶてしくなった、と言っている。
( ´・ω・)y-~~
結構な執念だったなァ、と自分で思う。
時間こそかかったが、ようやく自分も、警部という地位まで上り詰めた。
.
265
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:11:00 ID:XxFQ.4eo0
娘は、事件をきっかけに、頼りになる知り合いに預けた。
まだ話すことすらままならない歳だったのだ、
常に家を空けてしまう職業柄、僕が男手ひとつで育てるわけにはいかなかった。
知り合いも快諾してくれたようで、そのまま父親代わりで育ててもらった。
場所も、ヴィップでも辺境にある田舎で、あそこは空気がいい。
僕がリッパになった頃にはもう一度娘と、なんて思っていたが、
結局、いまのいままで、一緒に暮らす日が訪れることはなかった。
ミセ*::-::)リ
ミセリは、吹っ切れたのか、突然グラノラをかきこみだした。
牛乳を一気に飲み干し、そのままテーブルの上に突っ伏す。
上に立っていた空き缶が、次々床に転がり落ちていった。
( ´・ω・)y-~~
ミセ*::-::)リ
'_
( ´・ω・) 、
.
266
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:12:12 ID:XxFQ.4eo0
ミセリは突っ伏したまま、周囲を探り出した。
クックルが吸っていたであろう煙草を手に取り、そのまま放り投げる。
中身は空だったようだ。
ミセ*::-::)リ
( ´・ω・) 「…」
懐から、煙草の箱を取り出してミセリにパスした。
ミセリは少しして、僕の煙草に触れ、顔をあげる。
目で、吸え、と促すと、ミセリは戸惑いがちにうなずいて、一本を取り出した。
その時のミセリの目は、赤く腫れ上がっていた。
これは、長丁場になりそうだ。
.
267
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:12:36 ID:XxFQ.4eo0
|`ヽ /|
|. \ /. i
| ヽ / ノ
! `ー‐- '、
| .、
l !
r---ゝ !
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
l :::::::::::::::゙ 、 _| n
イツワリ警部の事件簿 File.4 `,_::::::::::::::::::::`ヽ, ノ,´αm
く l lへ、:::::::::::::::`'ー、r ||\
第二幕 「 未亡人 」 ' '、-_l ヽ、::::::::::::::::::`>;;::;;:|
` ..‐,,..、 丶、 冫:::::::::::/>;;;;;;;;\
,' /´ ::ヽ.:.:.:::::::::::::::丶_;;::;;::|
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
| l ..,,_ .::::::::ノ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:::::::::::::::l ヽ」
¦ ! ,;:::: ̄'' 7ー-、_....;.;.;.;、:::://::|
Y ;:::::::::│ / `――\/::::|
l ,,;:::::::::l / :::::::::'、:;:;、;;|
/ ,,;;:::::::::::::::// l:::::::l
.
268
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:13:23 ID:XxFQ.4eo0
┏━─
午前十一時三九分 アパート
─━┛
( ´・ω・)y-~~
ミセ*゚-゚)リ
ミセリは再び、落ち着きを取り戻していた。
ただ、話を聞けるほどの雰囲気でもなかった。
少しすると、ミセリはちいさな音楽プレイヤーを操作した。
世代相応の、メジャーな邦楽が雑な音質で流れている。
ああ、昔流行ったなァ、と思わせられるナンバーだった。
軽快なラブソングが、儚げなギターソロでフェードアウトした。
ミセリは様々な音楽を聴いていたようで、
次々と流れるナンバーは、当時流行っていた以外の共通点がなかった。
次は、かなり静かなギターのアルペジオが流れてきた。
これも、どこかで聴いたことのあるナンバーだ。
しかし、古めかしいサウンドだ。
.
269
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:14:09 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「…」
(´・ω・`) 「なんでしたっけ。 この歌」
ミセ*゚-゚)リ 「えっと…」
ミセ*゚-゚)リ 「ああ。 渋沢ですね」
(´・ω・`) 「渋沢……あァ」
思い出した。
抱かれてバラッド、というヒットナンバーだ。
確か、ペニーも知っている、と言っていたな。
奇しくも、ペニーも三十手前の、若い刑事だ。
いまどきの三十代は、渋沢などあまり知らないだろうが、
それでもこの歌は知られているほどの、若者ウケする名曲と言える。
逆に、おじさんには馴染みの薄い若者向けの歌、とも捉えられる。
ミセ*゚-゚)リ 「この、イントロがいいんですよね」
(´・ω・`) 「だよね」
.
270
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:14:36 ID:XxFQ.4eo0
静かなアルペジオが、そのままメロディアスな旋律につながる。
指弾きのはずなのに、多くの音が次々と鳴らされる。
テレビで彼の演奏を見たことがあるが、確かに彼ひとりが、一本のギターで鳴らしていたサウンドだった。
恋人同士と抱き合って、その時に頭のなかで流れたメロディ、
そういったものがコンセプトとなった、歌だ。
とてもおじさんが歌っているとは思えない、キャッチ―な旋律が印象的だ。
ミセ*゚-゚)リ 「…」
(´・ω・`) 「…」
テレビは流さず、音楽をかける。
窓の向こうを走る電車の音が、聞こえる。
ゴミ収集車の音や、静かに走り抜けるバイクの音も重なる。
どこか感傷的な、のどかなコーラスだった。
ミセ*゚-゚)リ 「即死だったんですよね」
(´・ω・`) 「ああ」
煙草に火をつけ、僕は言った。
ミセリが入れてくれた、無糖の安いアイスコーヒーを飲む。
.
271
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:15:03 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「ご主人は、知っていたと思うんですよ」
(´・ω・`) 「配備先が、殺人予告の叩きつけられたとこなんだ、って」
ミセ*゚-゚)リ 「でも、主人はそんなこと、一言も」
ケイビー警備会社のほうで、箝口令が敷かれていたのかもしれない。
箝口令、というほどでもないだろうが、とにかく安易に口外するな、程度にはあったと思う。
デリケートな問題なのだから、スタッフに何か過ちを犯させるわけにはいかなかったのだ。
ただ、それでもミセリは、渋沢がライブをするヴィップスタジアム、ということは知っていた。
そのことは話したのだろうか。
(´・ω・`) 「でも、渋沢がライブする、ってのは知ってたんですよね」
(´・ω・`) 「それは、ご主人から?」
ミセ*゚-゚)リ 「そうですね」
(´・ω・`) 「いつ頃?」
ミセ*゚-゚)リ 「先月か……それくらいだったと思います」
.
272
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:15:31 ID:XxFQ.4eo0
殺人予告にあわせて、会社は多くの警備員を手配しただろう。
しかし、少なくとも害者は、最初から現場に配備されていたらしい。
殺人予告はつい最近されたのだが、ライブ自体はずいぶんと前から決まっていたのだ。
となると、やはりデリケートなことは言わないようにしていたのだろうか。
それとも、そもそもミセリが害者の仕事に興味を示さなかっただけか。
(´・ω・`) 「最近のご主人に、なにか変わったことは?」
ミセ*゚-゚)リ 「特になかったですよ」
(´・ω・`) 「ふむ」
ミセ*゚-゚)リ 「少なくとも、殺人予告なんてされていたようには」
(´・ω・`) 「…」
厳密に言えば、まだクックルという男に予告がされたとは決まっていない。
予告で言われていたのは、あくまで 「観客」 なのだ。
そして、先月ほどから配属が決まっていたということは、 「観客」 にはなりえない。
逆に言えば、先月ほどから、害者が現場にくるということはわかっていた。
犯人は、惑わせるために 「観客」 と言ったのだろうか。
.
273
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:15:54 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「ご主人は、誰かに恨まれるようなことは」
ミセ*゚-゚)リ 「さあ」
ミセ*゚-゚)リ 「仕事関連でなにかあったんなら、私は、知らないですけど」
警備会社は、なにかとデリケートな問題に付き合わされる。
機密情報を取り扱うわけだし、金庫などがすぐ隣にあることもある。
そういったつながりで、害者がなにか見てはいけないものを見てしまったり、
何かしらの怨恨を買ってしまった可能性は否定できない。
ただ、それが連続殺人となると、あまり考えられないことでもある。
(´・ω・`) 「最近の、ご主人の動向を教えてください」
ミセ*゚-゚)リ 「昨日は、朝早くからスタジアムにいってましたね」
ミセ*゚-゚)リ 「時間とかは見てないケド……だいぶ、早かった」
(´・ω・`) 「おとといは?」
ミセ*゚-゚)リ 「昨日が特別だっただけで、最近は、美術館に常勤してましたよ」
.
274
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:16:18 ID:XxFQ.4eo0
美術館で、何かあったのだろうか。
(´・ω・`) 「美術館というと、ヴィップ環境美術館ですかな?」
ミセ*゚-゚)リ 「いや、アスキーミュージアムですね」
(´・ω・`) 「アスキー?」
思わず首をかしげた。
ヴィップの警備会社なのに、わざわざ首都のほうまで出動していたのか。
国内でも随一の美術館で、確かにあそこは常に警備員不足が叫ばれている。
ミセ*゚-゚)リ 「系列の会社が、応援を頼んでたみたいですよ」
(´・ω・`) 「それは、いつ頃から」
ミセ*゚-゚)リ 「ここ二、三ヶ月は、ずっと」
ミセ*゚-゚)リ 「遠いからいやだ、なんて話をしてましたけど」
(´・ω・`) 「そうですよね。 なんでわざわざ」
ミセ*゚-゚)リ 「たまたまじゃないんですか?」
ミセ*゚-゚)リ 「ただ、交通費と別に、手当てが支給されるから」
ミセ*゚-゚)リ 「主人は、それ目当てで、まじめに勤めてましたね」
.
275
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:16:47 ID:XxFQ.4eo0
ミセリの経済事情は、家のようすを見ていればおおむね伝わってくる。
裕福でないのは間違いないし、なんなら貧困層寄りと言えるだろう。
(´・ω・`) 「ご主人は、休みの日は?」
ミセ*゚-゚)リ 「私と休みが一緒だったら、買い物とか行ってましたけど」
ミセ*゚-゚)リ 「基本的に、常に出払ってましたね」
ミセ*゚-゚)リ 「飲みなのか、仕事関連なのかは知らないけど」
(´・ω・`) 「ふむ…」
一緒に買い物を行くほどの仲だったようだ。
旦那に対して無関心だなとは思うが、気にするほどではない。
(´・ω・`) 「事件前日……おとといの晩ですね」
(´・ω・`) 「ご主人は、どんな感じでした?」
.
276
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:17:09 ID:XxFQ.4eo0
ミセ*゚-゚)リ 「どうも何も…」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
と言いかけたところで、言いよどんだ。
(´・ω・`) 「ん」
ミセ*゚-゚)リ 「…あー」
ミセリは、煙草に火をつけた。
ミセ*゚-゚)リ 「…あんまり、人に言いたいことじゃ、ないんだけど」
(´・ω・`) 「いいですよ」
ミセ*゚-゚)リ 「最近、その…………レスだったんですケド」
ミセ*゚-゚)リ 「そういえば、急に誘われたりは、しましたね」
確かに、あまり人に言いたいことではないな。
本人が気にしないようなら、別にいいけど。
(´・ω・`) 「…ふむ」
ミセ*゚-゚)リ 「それくらいしか、変わったことは」
.
277
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:17:10 ID:xmdEPXKA0
しえん
278
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:18:00 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「つまり、ここ最近のご主人は、結構冷たい感じだったので?」
ミセ*゚-゚)リ 「冷たい、ッてか、元からあんなンですよ」
ミセ*゚-゚)リ 「無口なんです」
(´・ω・`) 「仲が悪くなった、とかではなくて」
ミセ*゚-゚)リ 「いや……そういうのじゃ、ないですね」
ミセ*゚-゚)リ 「感情の起伏がない、っていうか」
(´・ω・`) 「なるほど」
旦那に対して無関心な彼女を見ていると、だいたい想像がついた。
あまり燃えない関係でこそあったが、根っこに愛がないわけでもない。
年頃の、気難しい関係だったのだと言えるだろう。
ミセ*゚-゚)リ 「それなのに、おとといだけは」
ミセ*゚-゚)リ 「言われてみれば、ちょっとだけ感情の起伏はあったなァ…って」
.
279
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:18:46 ID:XxFQ.4eo0
ミセリの考えすぎか、必然だったのかはわからない。
ただ、なんにせよ、殺される前夜、害者は少しだけ感傷的だった。
捉えようによっては、それまで首都アスキーのほうまで出向いていたのが、
地元ヴィップの、それも華のあるスタジアムの配備に
なったから、気分をよくしただけなのかもしれない。
(´・ω・`) 「別に、どちらかの誕生日が近い、とか」
(´・ω・`) 「記念日が迫っているとか、でもないんですよね」
ミセ*゚-゚)リ 「まあ…違いますね」
(´・ω・`) 「…」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
ミセ*゚-゚)リ 「殺されるのが、わかっていたから……とかじゃあ、」
不安げに、ミセリが聞いてきた。
.
280
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:19:21 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「考えにくいですね」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
しかし、即座に否定すると、ミセリは少し安堵の色を見せた。
(´・ω・`) 「そもそも、犯人の予告によると」
(´・ω・`) 「当夜のターゲットは、観客、なのです」
(´・ω・`) 「もし犯人がご主人を狙っていたとすると、おかしくなる」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
それだけなら、ぎょろ目同様、ただのひっかけだ、と思われるだろう。
ただ、それだけではない。
(´・ω・`) 「まして、ターゲットが自分だ、と知りようがない」
(´・ω・`) 「二件目の殺人は、名指しの犯行だったのですが、」
(´・ω・`) 「その時のターゲットは、心当たりがなく、笑って無視したんですよ」
281
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:19:48 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「おそらく、今回の予告殺人は、」
(´・ω・`) 「少なくとも……現時点では、ターゲットに自覚がないのです」
ミセ*゚-゚)リ 「自覚?」
(´・ω・`) 「殺される、自覚です」
ミセ*゚-゚)リ 「…ッ」
(´・ω・`) 「もっとも、ご主人は自分がターゲットだと知っていた線もある」
(´・ω・`) 「ただ、それなら尚のこと、どうして自ら殺されにいったのか」
(´・ω・`) 「裏付けが必要となることが、多くなる」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
どこか、腑に落ちないと言いたげな顔をしている。
曖昧な部分が多いからだろう。
.
282
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:20:13 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「安心してください」
(´・ω・`) 「ご主人が、今生の別れを意識していたとは思えません」
ミセ*゚-゚)リ 「……、…」
ミセリは、頷きこそしなかったが、
煙を肺いっぱいに入れたのち、俯きながら吐き出した。
行き場をなくした紫煙が、あちらこちらに霧散する。
(´・ω・`) 「…」
気が付けば、渋沢の歌は終わっていた。
これまた、当時世間を賑わせた人気アイドルグループの歌が流れている。
残念、この歌は僕は全然知らなかった。
ミセ*゚-゚)リ 「…」
ミセ*゚-゚)リ 「ん」
.
283
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:20:39 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「どうぞ」
無機質な着信音が鳴った。
ミセリ宛ての電話だった。
ミセ*゚-゚)リ 「…?」
ミセ*゚-゚)リ 「もしもし」
(´・ω・`) 「…」
職場からの電話だろうか。
ミセリは、しばらくは休みを取るつもりだと聞く。
旦那が殺されたのだ、気持ちを整理する時間はたっぷりといる。
この様子だと、貯金や生命保険なんてないだろうが、
それでも、金銭的に厳しくなることがわかっていても、休暇は取らなければいけない。
ミセ*゚-゚)リ 「えっ…」
(´・ω・`) 「?」
.
284
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:21:03 ID:XxFQ.4eo0
しかし、様子が変だった。
まず、着信がきた時点で、きょとんとしていたのだ。
少しためらいながら電話に出ては、
声を聞き、言葉を発し、更に戸惑ったような顔色を見せる。
すると、ミセリは口を噤んで、硬直してしまった。
一分ほど黙って見ていたが、ミセリは視線ひとつ動かそうとしなかった。
(´・ω・`) 「み、ミセリさん?」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
(´・ω・`) 「警察からですか?」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
近寄って、肩を揺すった。
また、彼女の心を抉る連絡かなにかが来たのかもしれない。
彼女はスマホを落としたが、その画面は既に暗くなっていた。
数分前の時点で、既に電話は切られていたのだろう。
.
285
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:21:29 ID:XxFQ.4eo0
ミセ*゚-゚)リ 「け」
ミセ*゚-゚)リ 「刑事さん」
(´・ω・`) 「な、なんだい?」
ミセリの顔を、間近で見た。
やはり、小顔のわりに目が大きく、美人の片鱗が窺える。
しかし、その顔は、どこか怯えていた。
僕は、嫌な予感がした。
ミセ*゚-゚)リ 「いま、あの、」
ミセ*゚-゚)リ 「主人を殺したッていう人から、」
(´・ω・`) 「は?」
ミセ*゚-゚)リ 「なんか、」
.
286
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:21:55 ID:XxFQ.4eo0
目が泳いでいる。
僕は彼女の両肩を握って、落ち着かせる。
それでも、彼女は明らかにおかしくなっていた。
あからさまな爆弾発言すら飛んできている。
ミセ*゚-゚)リ 「自首しようと思う、その前に話をしよう、って」
(;´・ω・`) 「は、犯人から?」
(;´・ω・`) 「電話の相手は、犯人を、名乗っていたのか!?」
思わず、恫喝に近い声を出してしまう。
握っている肩が、かなりちいさく感じられる。
肩越しに、全身の震えが伝わってきた。
ミセ*゚-゚)リ 「よ、よくわからない…」
(;´・ω・`) 「ちょっと、失礼…」
ミセリは、混乱している。
僕は了承を得る前に、彼女のスマホを借りた。
.
287
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:22:40 ID:XxFQ.4eo0
(;´・ω・`) 「……」
(;´・ω・`) 「ミセリさん、その番号を見せてください」
ミセ*゚-゚)リ 「へ、えっ、」
(;´・ω・`) 「ご主人を殺した犯人を、逮捕するためだ!」
ミセ*;-゚)リ 「あ、うん…」
ミセリに手渡すと、彼女は覚束ない手つきでパスコードを入力した。
0216と打つところが見えてしまった。 誕生日だろうか。
ロックが解けたのを見て、慌ててスマホを借りる。
着信履歴を追うのだ。
(´・ω・`) 「……」
(´・ω・`) 「………」
(´・ω・`) 「この番号から……かかってきたんですね?」
ミセ*;-゚)リ 「え…はい。 そうですね」
(´・ω・`) 「…ッ!」
.
288
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:23:28 ID:XxFQ.4eo0
見て、僕は背筋が凍る心地がした。
見覚えのある電話番号だったのだ。
見覚えがある、といっても、僕の知り合いの番号ではない。
というより、僕が記憶している十一ケタでもない。
ただ、
、、、、、
(;´・ω・`) 「この050番号……間違いないですね!?」
050番号。
通称IP電話。
十一ケタすべてに見覚えはなかったが、
この、頭の三ケタだけには、確かに覚えがあった。
(;´・ω・`) 「もしもし。 僕だ」
(;´・ω・`) 「おい、いま電話、大丈夫か」
すぐさま、自分の携帯を取り出し、電話する。
相手は鈴木ダイオード。
ホテル殺人、ヒッキー小森を洗っている最中だろう。
.
289
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:23:59 ID:XxFQ.4eo0
(;´・ω・`) 「至急確認したいことがある」
(;´・ω・`) 「小森の電話にかかってきてた、050番号!」
(;´・ω・`) 「その十一ケタを、いま、口頭でいいから教えろ!」
手汗が滲んできた。
あまりに突然すぎる進展に、脳がパニックを起こしていた。
犯人を名乗る人物から電話。
ミセリに会いたがっている。
その番号は050。
一方、第二の事件、ホテル殺人の被害者、
ヒッキー小森の携帯には、身元不明の050番号からの着信があった。
このご時世、050番号は普及していない。
まして、たった今、ミセリは犯人を名乗る人物から電話を受けている。
偶然のはずがなかった。
(;´・ω・`) 「…!」
050番号は、十一ケタすべてが、合致していた。
.
290
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:24:27 ID:XxFQ.4eo0
どうしたのですか、と呑気な様子で壁が聞いてくる。
共有は後回しだ、僕は急務に追われている。
(;´・ω・`) 「まだ、身元は割ってないんだな?」
(;´・ω・`) 「最優先で、この番号を突き止めろ!」
(;´・ω・`) 「まさしく犯人なんだよ、この番号が!」
ミセ*゚-゚)リ 「…!」
(;´・ω・`) 「事情は後でまわす!」
(;´・ω・`) 「とにかく、犯人を名乗る人物が、この番号から電話してきた!」
(;´・ω・`) 「以上!切るぞ!」
.
291
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:25:02 ID:XxFQ.4eo0
ミセ*゚-゚)リ 「ど、どういうこ」
(´・ω・`) 「ミセリさん、落ち着いて話してください」
ミセ*゚-゚)リ 「え、……は、ハイ」
(´・ω・`) 「いったい、どんな話をしたんですか?」
ミセ*゚-゚)リ 「え…?」
(´・ω・`) 「確か、犯人が、自首したいけど、その前にアナタに会いたい…」
ミセ*゚-゚)リ 「そうです…ね」
ミセ*゚-゚)リ 「その人は、主人を殺した、と最初に言ってきました」
(´・ω・`) 「男か、女か」
ミセ*゚-゚)リ 「それが……わからないです」
ミセ*゚-゚)リ 「知らない声……ッていうか、変な声……」
ミセ*゚-゚)リ 「機械音…?」
(´・ω・`) 「……ボイスチェンジャーか」
.
292
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:25:30 ID:XxFQ.4eo0
ミセ*゚-゚)リ 「その人は、言いました」
ミセ*゚-゚)リ 「自首…しようと思うんだけど」
ミセ*゚-゚)リ 「その前に…ミセリに、会いたい」
ミセ*゚-゚)リ 「会って、話がしたい…」
(´・ω・`) 「…!」
ミセ*゚-゚)リ 「明後日……滝公園で会おうッて」
(´・ω・`) 「明後日、五月六日か」
(´・ω・`) 「滝公園というと、あの?」
ヴィップの滝公園、と言えば地元の人には知られる名所だった。
もともとダムが建設される予定だったものの、
地元住民の反対が苛烈化し、開発中止となった。
中途半端に工事が進んだため、
最終的にそこは人工的な滝が出来上がった。
.
293
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:25:55 ID:XxFQ.4eo0
地元民の結束で、悪徳なダム建設を防いだ。
それが彼らの間では武勇伝じみた伝説となり、市の協力のもと、公園がつくられた。
今となっては、ダム周囲には木々や蔦が生い茂ることでその石壁を隠し、
遠くから見れば、自然的な滝に見えるほどになった。
撤退時に回収されなかった機材などは、見せしめに、とそのままにされている。
二度の開発を経て、ちょっとした出店や噴水なんかが設けられるほどの規模となっている。
ミセ*゚-゚)リ 「…」
(´・ω・`) 「具体的な時刻、要求などは」
ミセ*゚-゚)リ 「夕方の四時くらいに…って」
(´・ω・`) 「ひとりで来い、とかは?」
ミセ*゚-゚)リ 「ひとりで…とは言ってなかったけど、」
ミセ*゚-゚)リ 「ふたりきりで、大切な話をしたい…って」
.
294
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:26:15 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「………」
どういうことだ。
これは、犯人からの挑戦状か?
あるいは、これが、次の殺人予告か?
と思ったところで、僕はその考えを振り切った。
いま、僕がここにいるのは偶然であって、
犯人は、ミセリ個人に、電話をかけている。
犯人は、まさかすぐ隣に警察がいるとは思っていないだろう。
となると、殺人予告、にしてはいささかおかしい。
(;´・ω・`) 「んん…?」
今までの殺人予告は、必ず、ターゲットがいる場所、そのオーナー側に告げられた。
フッサール擬古なら地下鉄。
ヒッキー小森ならビジネスホテル。
クックル三階堂ならスタジアム。
そして、少なくとも小森の件を察するに、
ターゲットに、直接殺すと言っている様子はない。
小森は、生前、犯人と思しき050番号の主と電話しているが、
もしその時に殺害予告をされれば、ホテルに泊まる時、
素直に別のホテルに移動するなりするだろう。
.
295
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:26:49 ID:XxFQ.4eo0
ミセ*゚-゚)リ 「他は、特に…」
(;´・ω・`) 「…」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
(´・ω・`) 「ミセリさん」
ミセ*゚-゚)リ 「はい」
(´・ω・`) 「もし、ミセリさんが大丈夫なら…」
(´・ω・`) 「警察では、あなたを保護したいと思いますが」
ミセ*゚-゚)リ 「…え?」
ミセリは、ぽかんとした。
事の重大さを、まだ理解していないというのか。
あるいは、パニックの連続で、思考回路が停止しているのか。
.
296
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:27:28 ID:XxFQ.4eo0
(´・ω・`) 「電話の主は、十中八九、連続殺人の、」
(´・ω・`) 「あなたのご主人を殺した、張本人です」
ミセ;゚-゚)リ 「…」
(´・ω・`) 「そして、そんな犯人が、」
(´・ω・`) 「自分が殺した男の奥さんと、二人きりで話したい、と言う」
ミセ;゚-゚)リ 「…」
(´・ω・`) 「……はっきり言いましょう」
(´・ω・`) 「言われるがままに二人きりで会えば、あなたは、殺されます」
.
297
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:27:50 ID:XxFQ.4eo0
序幕
>>2-69
第一幕
>>82-211
第二幕
>>218-296
298
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 19:28:31 ID:iG753x8o0
乙
次の殺人はあるのだろうか
299
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 20:24:08 ID:Uzw.bCLw0
乙
これは続きが気になる!
300
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 21:49:07 ID:RJtDM6PE0
乙! 続きが待ち遠しい
そしてじっくり読み返す時間が欲しい
301
:
名無しさん
:2018/08/31(金) 05:47:25 ID:4cXItsaE0
乙
みせり死なないで…
302
:
名無しさん
:2018/08/31(金) 17:23:47 ID:fKNR.g1M0
偽りシリーズ、続きキタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
まさか来るとは…。一体全体どうしたってんだ!めちゃくちゃうれしいぞ♪
303
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 20:20:06 ID:oPBVYApU0
はよ
はよ!!!!
304
:
名無しさん
:2018/09/04(火) 21:31:59 ID:vj1roGtw0
┏━─
五月四日 午後十四時三九分 捜査本部
─━┛
ミセリにそう告げると、彼女は存外素直に、同行してくれた。
いまは、事務を担当する同年代の女性を同伴させている。
近くの喫茶店で、軽く探りを入れてもらいながら、雑談しているだろう。
まずは緊張状態なのをほぐさせないといけない。
それも、無機質な部屋に収めるより、華やかな喫茶店で寛がせるのがいい。
( <●><●>) 「いま、他のふたりは」
(´・ω・`) 「ひとまず、引き続き害者まわりを洗ってもらってるよ」
ライブ殺人を捜査していたふたりは、捜査本部に呼び寄せた。
先に到着したのはぎょろ目だった。
というのも、夜通し捜査していたのだ、
時刻で考えれば、二十時間ほど経過している。
だいたいの情報は、あらかた洗い出せているだろう。
.
305
:
名無しさん
:2018/09/04(火) 21:32:21 ID:vj1roGtw0
近況の共有も兼ねて、僕は数時間、捜査本部でデータをまとめた。
ホワイトボードには、関係者の相関図を展開させている。
他の害者がスカスカなのに対して、ミセリとクックルの周囲だけ、文字が多い。
これから、このホワイトボードに、次々と情報が付け足されていくことだろう。
そして先ほど、ワカッテマスが帰還した。
( <●><●>) 「なるほど」
(´・ω・`) 「さて、あんたにも共有しよう」
(´・ω・`) 「四人目の殺人予告が、数時間前に届いた」
ぎょろ目は、パイプ椅子を並べ、仰向けに寝ている。
売店で買ったであろう新聞を顔に載せている。
その一面でも、やはり連続殺人事件がありありと報道されていた。
ワカッテマスは、まだ寝なくてもいいらしい。
というより、本部に戻る際、巡査にハンドルを任せ、数十分ほど仮眠をとったんだとか。
(´・ω・`) 「四人目の、ターゲット」
(´・ω・`) 「それは、三人目の被害者、クックル三階堂の配偶者」
(´・ω・`) 「芹澤ミセリ、すぐそこの喫茶店に控えさせている」
.
306
:
名無しさん
:2018/09/04(火) 21:32:43 ID:vj1roGtw0
( <●><●>) 「芹澤…ですか」
(´・ω・`) 「籍を入れる時、苗字は変えなかったらしい」
( <●><●>) 「なるほど」
(´・ω・`) 「さて、媒体だが、今回は電話だった」
( <●><●>) 「はがきではないんですね」
(´・ω・`) 「ン…そうだ」
言われてみれば、それまでの予告は、すべてはがきで届いていた。
しかし、考えると、そもそも今回はフォーマルな予告ではなかった。
、 、 、
(´・ω・`) 「注意してもらいたいのは、これは実質的な予告だ、ということだ」
(´・ω・`) 「十二時前、だったかな」
(´・ω・`) 「嫁さんに、一本の電話が入った」
.
307
:
名無しさん
:2018/09/04(火) 21:33:06 ID:vj1roGtw0
(´・ω・`) 「その相手は、自らをクックル殺しの犯人と名乗り、」
(´・ω・`) 「明後日五月六日、ヴィップの滝公園に十六時頃、ふたりで会いたいと言った」
( <●><●>) 「ほう」
ワカッテマスは、ホワイトボードやセミナーの上に並べられた資料、
そのすべてを適宜見やりながら応じる。
(´・ω・`) 「ポイントは、みっつ」
指折りしながら教える。
(´・ω・`) 「ひとつ、相手はボイスチェンジャーを使っていた」
(´・ω・`) 「男か女か、そもそも誰なのか、なんてのはわからない」
( <●><●>) 「古典的ですね」
(´・ω・`) 「ふたつ、相手は嫁さんの番号を知っていた」
(´・ω・`) 「ここから、クックルの殺害が行きずりでないことは確定だ」
.
308
:
名無しさん
:2018/09/04(火) 21:34:33 ID:vj1roGtw0
、 、 、 、 、
ライブ殺人は、観客が予告されていたにも関わらず、警備員のクックル三階堂が殺された。
この点から、ぎょろ目と少し話した通り、幾分かの疑念を残していた。
それがまだ晴れてはいないが、何にせよ、犯人視点で言えば
確固たる計画性、殺意のもと、クックルを殺したと言える。
でなければ、ミセリにあのような電話をするはずがない。
(´・ω・`) 「みっつ、ッてかここが肝心だ」
(´・ω・`) 「その電話は、050番号でかけられたわけだがね」
(´・ω・`) 「身元が特定できない、いわゆる名義貸しの端末からかけられたんだ」
( <●><●>) 「ほう…」
(´・ω・`) 「更に、その番号は、」
ホワイトボード、ヒッキー小森の項目から線を伸ばしている。
050番号から謎の電話、と書き足している。
その隣に、十一ケタも追記しておいた。
(´・ω・`) 「この、ホテル殺人で登場した謎の番号と合致している」
( <●><●>) 「!」
.
309
:
名無しさん
:2018/09/04(火) 21:34:56 ID:vj1roGtw0
ワカッテマスが、嫌な顔をした。
この事件の片鱗が、あからさまに顔を出してきたからだ。
それにより事件が解決の方向に向かうならともかく、
いっそう謎が深まるとなれば、話は別だ。
(´・ω・`) 「さて、殺人予告とは言ったが、」
(´・ω・`) 「正確には違う」
( <●><●>) 「犯人、と思しき人物が、芹澤ミセリに個人的に会いたい、と言った」
( <●><●>) 「……確かに、殺人のサの字もありませんね」
だが、ワカッテマスはそこを突っ込んだりはしなかった。
突っ込むだけ、野暮なのだ。
(´・ω・`) 「どう考えても、次の標的は嫁さん、となった」
(´・ω・`) 「前もって言っておきたいのは、動機が定かでないことだ」
.
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