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(´・_ゝ・`)ペアリングのようです(゚、゚トソン
1
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:02:26 ID:Q.JOBvVs0
彼は、私の主人。
彼は、私の事を名前で呼ぶ。
彼は、大の甘党。
.
233
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:02:55 ID:apajkV460
(゚、゚トソン「レンチンします」
(゚、゚トソン「今の若い子はレンジでチンするって言わないと聞いたんですがデマですよね?」
(゚、゚トソン「だって私若いですし…ピチピチピッチトソンちゃんですし」
チーン
(゚、゚トソン「チンできました」
(゚、゚トソン「また混ぜてチンしますの繰り返し」
(゚、゚トソン「人生とは…同じことの繰り返しです」
チーン
(゚、゚トソン「チンできました」
(゚、゚トソン「これに!なんと!秘密兵器を!」
(゚、゚トソン「ま!ぜ!ま!す!」
(゚、゚トソン「……」
(゚、゚トソン「…たくさんのフルーツを前に冷静になろうと勤めてますが気を抜くと熱くなってしまいますね、仕方ない」
234
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:03:39 ID:apajkV460
(゚、゚トソン「バター先輩入ります!」
(゚、゚トソン「続いて秘密兵器バニラエッセンスさん入ります!」
(゚、゚トソン「勢いよく混ぜ!!ます!!!」
(゚、゚トソン「あっすっごっいい匂い!すっごっいい匂い!」
(゚、゚トソン「はー…凶悪なまでにいい匂い…この匂いをツマミにブランデーを飲める…」
(゚、゚トソン「……」
(゚、゚トソン「ちょこっとだけブランデーを混ぜましょう、最強になる」
(゚、゚トソン「よし、これをぶつ切りフルーツにかけます」
(゚、゚トソン「レンジはチン、オーブンはブン、じゃあオーブントースターは?」
(゚、゚トソン「ブンチン」
(゚、゚トソン「嘘です。特に何も言いません」
(゚、゚トソン「あっとは出来るのを待つだけ〜」
235
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:04:26 ID:apajkV460
(゚、゚トソン「そういえばグラタン皿探してませんでした」
(゚、゚トソン「この広いキッチンの、食器棚の何処かにはあると思うんですけど…」
(゚、゚トソン「棚の上の方はまだ見れてないので、今度見て見ましょう」
(゚、゚トソン「…今夜のグラタンはなんかそれっぽい高そうな器に入れて誤魔化そ」
チン
(゚、゚トソン「お、出来ましたね」
甘い甘い匂いが鼻をくすぐる。
この湯気を袋に入れてずっと持っていたい。
(゚、゚トソン「主人を呼びますかね」
温かいうちに召し上がってもらわなくては。
少しだけ小走りで、主人の部屋へと向かった。
236
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:05:00 ID:apajkV460
コンコン
(゚、゚トソン「主人、失礼」
(´・_ゝ・`)「あ、もう出来たの?やぁ、何かここまでいい匂いが来てるね」
(゚、゚トソン「冷めないうちにと思って声をかけたんですが…お仕事大丈夫ですか」
(´・_ゝ・`)「うん、でぃさんから貰ったフルーツたくさん撮ったよ。ちょうど一区切りついたところ」
ゴトリと重そうなカメラを机に置いて、主人は腕をぐぐぐと伸ばした。
(゚、゚トソン「すごいカメラですね」
主人が『仕事』に使ったカメラをまじまじと見てしまう。
恥ずかしながら普通のカメラしか知らない私は、これで撮影が出来るのかと怪しんだ。
何せレンズが2つあるのだ。どうするのかまったくわからない。
237
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:05:39 ID:apajkV460
(゚、゚トソン「アンティーク?メトロ?レトロ…クラシック!クラシックですね?」
(´・_ゝ・`)「お祖父様のだからねぇ」
僕よりうんと歳上なんだよ、とカメラを撫でる主人。
お高そうなので私は絶対触らないと心の中でこっそり誓った。
(´・_ゝ・`)「この家にあるもの…というかこの家自体祖父のだから」
(´・_ゝ・`)「食器とかは母のもあるけどね」
(゚、゚トソン「そうなんですね」
(´・_ゝ・`)「僕は何も持ってない。家もカメラも…全部人のだ」
(゚、゚トソン「……」
238
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:06:12 ID:apajkV460
(゚、゚トソン「カメラが主人のでなくても、撮った写真は主人の作品じゃないですか」
(´・_ゝ・`)「え?」
(゚、゚トソン「写真も、絵も、本も、全部主人のものですよ」
主人が『仕事』で作った物の一部はこの家にもある。
私も持っている。家やカメラがどうだろうと、主人の作品は主人の財産だ。
(´・_ゝ・`)「…あははは」
(゚、゚トソン「?」
私の言葉に一瞬呆けた主人が、いきなり笑い出した。
おやつ切れだろうか。私の心配をよそに、主人の表情は明るかった。
(´・_ゝ・`)「いや、うん。そうだったなって思って」
(´・_ゝ・`)「前にも同じこと言われたんだった。だから僕はこうして仕事をしている」
(゚、゚トソン「はぁ」
(´・_ゝ・`)「そうだったそうだった。はー、笑ったらお腹すいたな。早くおやつ食べよう」
239
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:06:54 ID:apajkV460
いそいそとリビングへ向かう主人についていく。
ふと、気づいたことがある。そういえば。
(゚、゚トソン「そういえばこのお屋敷、写真が一枚もないですね」
(´・_ゝ・`)「え?」
(゚、゚トソン「アルバムも見たことないですし」
(´・_ゝ・`)「ああ、前にね。僕が焼いたんだ」
(゚、゚トソン「は」
(´・_ゝ・`)「庭で写真の類を全部火をつけてお芋を焼いたんだけどね」
(´・_ゝ・`)「ちゃんとした炭とかじゃなかったからか、僕がやったからか、あんまり美味しくなかったんだよね。トソンくんは石焼き芋食べたことある?」
(゚、゚トソン「あります…けど……よく火事になりませんでしたね」
(´・_ゝ・`)「あはは、そうだね」
さらっと黒歴史ならぬ芋歴史を語られた。
未だに主人は謎なことが多すぎる。
(´・_ゝ・`)「今日のおやつなんだろうなぁ」
(゚、゚トソン(謎も何も、おやつのことしか考えてないおじさんにしか見えない時もあるけど)
240
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:07:42 ID:apajkV460
リビングについた瞬間、主人は破顔した。
暖房をつけていたから暖かい空気でふやけたのかもしれない。
(*´・_ゝ・`)「なにこれ?すごいね」
(゚、゚トソン「フルーツグラタンです。果物にカスタードクリームをかけて熱々トロトロにするだけなので簡単です」
(*´・_ゝ・`)「そんな素晴らしいものが……冷めないうちにいただきます」
(゚、゚トソン「召し上がれ」
ふんわりと柔らかなカスタードクリームをスプーンで掬い上げると、ゆったりとした湯気が上がった。
まだ冷めてないようで良かった。
中の苺がほろりと崩れ、甘酸っぱい匂いが漂う。
温かいものは何だかホッとする。(洒落ではない)
241
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:08:10 ID:apajkV460
(*´・_ゝ・`)「カスタードが優しい味だね。甘すぎないからフルーツの甘酸っぱさと合ってる」
(゚、゚トソン「チャイも淹れちゃいましたのでどうぞ」
(´・_ゝ・`)「うん、うん?ありがとう」
(´・_ゝ・`)「あ、チャイも美味しいねぇ。僕寒いの苦手だから、こういう温かいものがありがたいよ」
(゚、゚トソン「主人、靴下2枚履きしてますもんね…チャイは生姜とシナモン、ハチミツマシマシですので身体も暖まると思いますよ」
(*´・_ゝ・`)「温かいものはホッとするね」
(゚、゚トソン「セリフ被ってます」
(´・_ゝ・`)「?」
(゚、゚トソン「いえ」
242
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:08:55 ID:apajkV460
(´・_ゝ・`)「はー、美味しかった。ごちそうさまでした」
(゚、゚トソン「お粗末様でした。あ、そうだ主人」
器を片付けながら思い付く。満腹で満足そうな主人がゆったり、視線をこちらにやった。
(´・_ゝ・`)「ん?」
(゚、゚トソン「写真、出来たら頂けませんか?」
(´・_ゝ・`)「いいけど……写真のフルーツ見ながらお酒飲んだりしない?」
(゚、゚トソン「流石の私もそこまでは……あ、昔イカの塩辛の写真見ながらご飯食べたことはあります」
(;´・_ゝ・`)「ええ…」
お金がなかった頃はそれで凌いでいたものだ。懐かしい。
(゚、゚トソン「もうしませんよ。写真立て買ってきて、飾ろうかと思いまして」
(´・_ゝ・`)「それは…まぁ…いいけど…」
(゚、゚トソン「もう燃やさないでくださいね」
(´・_ゝ・`)「…もうしないと思うよ」
小さく口元だけで笑った主人は、じゃあ現像待っててねとまた部屋に戻っていった。
243
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:09:28 ID:apajkV460
(゚、゚トソン「トソンちゃんの!!」
(゚、゚トソン「フリィィィタァイイム」
(゚、゚トソン「こほん。巻き舌がうまく出来ないんですよね私」
(゚、゚トソン「フルィィ…フリルィ…チョゲプリィ…」
(゚、゚トソン「まぁいいか!酒だ酒酒!酒の時間だぞ!」
(゚、゚トソン「また騒ぎすぎると翌朝主人に白い目で見られますからね…大人しく行きましょう」
(゚、゚トソン「今夜は!何と!!」
(゚、゚トソン「黒ビール様をお呼びしました!!!」
(゚、゚トソン「ヒューヒュー!!わーわー!!」
(゚、゚トソン『キャー!あの黒さ…惚れ惚れしちゃう!(黄色い声)』
(゚、゚トソン『フッ…心は熱いがいつでもクールでいるぜ…(イケボ)』
(゚、゚トソン『キャー!!(甲高い声)ゴホッゴホッ』
(゚、゚トソン「こいつを温めます」
244
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:10:01 ID:apajkV460
(゚、゚トソン「寒い日は何でもホッとにすればいいと思ってる?正解だ!!」
(゚、゚トソン「冷え性はとにかく身体の中から暖かくすることが大事です」
(゚、゚トソン「酒はいいですよ…末端にまで血を巡らせてくれます…」
(゚、゚トソン「ホットにした黒ビールに!」
(゚、゚トソン「シナモンスティックと!」
(゚、゚トソン「オレンジを少々ぶっ込みあそばせます!」
(゚、゚トソン「ハチミツとしょうがも少々!」
(゚、゚トソン「ナツメグも入れちゃいましょう」
(゚、゚トソン「そしてフルーツグラタンと!一緒に!」
(゚、゚トソン「いただきまーす!!」
245
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:10:48 ID:apajkV460
(゚、゚トソン ゴクッ
(゚、゚トソン
(゚、゚トソン「っ あー……」
(゚、゚トソン「寒い日に温かいもの飲んで、喉通るのが分かる感じが、とても好き」
(゚、゚トソン「フルーツ美味しいなぁ…こんなに大きい苺初めて食べたかもしれませんね…」
(゚、゚トソン「フルーツとカスタードもいい具合にバランス取れてますね。ビールのほろ苦さとも合います」
(゚、゚トソン「…蛯沢様にお礼言いたいな…以前の秋の幸もお礼出来なかったし…」
(゚、゚トソン「あ」
ゴソゴソとジョッキグラスを片手に探る。
私は片付けがあまり上手ではないので、使ったものをそのまま置いていたりする。
246
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:11:52 ID:apajkV460
(゚、゚トソン「ありました」
エコバッグ。
グビッとビールを飲み込んでグラスを置く。
中に手を突っ込んで、目当てのものを掴んだ。
小さな紙切れ。
走り書きながらに綺麗な字で住所と電話番号が書かれていた。
蛯沢様が去り際、私に託したもの。
(゚、゚トソン「…『何かありましたら こちらへ』…」
(゚、゚トソン「何か…。沢山のフルーツを頂いてお礼をすることは…何かに入りますかね……」
(゚、゚トソン「……明日、主人に写真焼き増ししてもらいましょう」
食べ物は送りにくいが、写真ならば良いのではないだろうか。
顔を見れなかった代わりに、主人の作品を見れば元気であることが伝われば良い。
主人の作品は、人柄を写しているのか、どこか暖かい。
247
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:12:42 ID:apajkV460
(゚、゚トソン「……よし」
(゚、゚トソン「そうと決まれば頂いたフルーツを楽しみますよー!ヒュー!カスタードと林檎美味しいー!!ビールおかわりー!!」
明日また主人に白い目で見られるのは確実だなと思いながらも、
フルーツと本日のペアリングが最高だったので仕方がないのだ。
.
248
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 17:14:59 ID:apajkV460
本日の投下は以上になります
「続き待ってる」などのコメント、とても嬉しかったです
前回から2ヶ月経ってることに驚きでした
ありがとうございました
249
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 18:09:27 ID:kYGo9ygw0
乙! 待ってたうれしい
250
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 20:42:52 ID:0ItUgcvI0
フルーツグラタンがうまそうすぎる
乙
251
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 21:01:21 ID:Qgoq4B9.0
乙!トロトロ美味そう
252
:
名無しさん
:2018/06/29(金) 21:47:56 ID:ucboNuI.0
乙ー
253
:
名無しさん
:2018/06/30(土) 10:56:48 ID:zZlyZD5Q0
更新うれしい!乙でした
工程でてっきりプティングかと思ってた
フルーツグラタン今度作ってみる
254
:
名無しさん
:2018/06/30(土) 21:15:19 ID:dqq4R3K20
乙乙ー!投下待ってた!
今回もおいしそうなおやつが出てきてうれしい
フルーツグラタン食べてみたい
255
:
名無しさん
:2018/06/30(土) 22:09:05 ID:ugEGyL5M0
調理してるところとかや食べてるところとか全部すき
256
:
名無しさん
:2018/07/01(日) 17:20:51 ID:TIUYBc2I0
だんぼって何だろな…
写真焼いて焼き芋作るデミタスがちょっと怖いな…
257
:
名無しさん
:2018/07/01(日) 17:39:41 ID:TkEYzFic0
旦那様、坊ちゃんかな
258
:
名無しさん
:2018/07/01(日) 18:39:48 ID:TIUYBc2I0
>>257
あだ名かと思った
なるほどな
259
:
名無しさん
:2018/07/01(日) 19:01:41 ID:aHUr.bAU0
ダンディボーイの可能性
260
:
名無しさん
:2018/07/01(日) 19:16:43 ID:0CS8NHwY0
デミタスは福耳だからそれを馬鹿にされているんだよ
261
:
名無しさん
:2018/07/01(日) 19:35:33 ID:Kc5aREps0
これだな!
https://i.imgur.com/soPsubf.jpg
262
:
名無しさん
:2018/07/03(火) 15:53:09 ID:q89ynvig0
わー!待ってました〜!
今回も話、料理全て素晴らしい…
263
:
名無しさん
:2018/08/16(木) 23:45:23 ID:tTqSO4rk0
がんばれがんばれ
264
:
名無しさん
:2018/08/29(水) 01:23:26 ID:TRZ2g2Ys0
まってるよー
265
:
名無しさん
:2018/09/07(金) 22:59:57 ID:mqKdV1jk0
まだかな
266
:
名無しさん
:2018/10/06(土) 15:06:31 ID:WV8ady9k0
まってる
267
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:38:01 ID:GoNfOUa20
彼は私の主人
彼は大の甘党
だから、私は
.
268
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:38:46 ID:GoNfOUa20
買い物帰りのことだった。
いつものように、お世話になりすぎている酒屋
韮束商店を、涎を垂らしながら見回りしていた。
最初は視線を感じた。
気品や美しさが自然に溢れ出てしまうタチなので、仕方ない事だとスルーした。
次に声をかけられた。
よくあるナンパだと思い無視。
しかしこのナンパ、しつこいのである。
269
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:39:24 ID:GoNfOUa20
( ^ν^)「おい、そこの召使い」
(゚、゚トソン
( ^ν^)「おい、女」
(゚、゚トソン
(;^ν^)「なぁおい、おいってば!」
(゚、゚トソン
(;^ν^)「な、なんて呼べば反応してくれるんだよ!なぁおい、頼むから話聞いて!聞いてください!」
(゚、゚トソン「最初から敬語使えジャバ僧」
(;^ν^)(怖え…)
ナンパの正体はいつぞやの雑魚日本代表だった。
270
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:40:18 ID:GoNfOUa20
9.クリスマスなど、美味いものを食う口実の為にある
.
271
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:41:01 ID:GoNfOUa20
(´・_ゝ・`)デミタス。主人。プレゼントはリクエストせず何を貰えるかワクワクしたい派。
(゚、゚トソン トソン。使用人。欲しいものは自分で買ってしまう派。
( ^ν^)雑魚。ザコ。貰うより貢ぐ事のが多い派。
.
272
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:41:37 ID:GoNfOUa20
(´・_ゝ・`)「おかえりトソンくん。何か、遅かったね?」
(゚、゚トソン「ただいま戻りました。いえちょっと色々ありまして」
玄関の戸を開けてすぐ、主人がやってきた。
主人が使用人のお出迎えをしてどうするのだろうか。
諸々を気にすることなく、主人は何か焦ったような顔をして私の前に立っていた。
(´・_ゝ・`)「そう…ところでトソンくん、今12月だよね?」
(゚、゚トソン「ええ」
(´・_ゝ・`)「僕は大事なことを忘れていた…」
(゚、゚トソン「私へのボーナスですか?」
(´・_ゝ・`)「シュトーレンが食べたい」
私へのツッコミはガンスルーだった。いや割と本気で言ったのだけれど。
273
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:42:47 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「酒盗ですか。良いですね、私も好きです」
(´・_ゝ・`)「君は耳にサキイカでも詰まってるの?」
(゚、゚トソン「いえ、サキイカでしたら昨夜焼酎と一緒に食べ尽くしましたので耳に詰めたりなどは」
(´・_ゝ・`)「わかってるよ…嫌味だよ…」
274
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:43:22 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「それで、酒盗レーンとは?」
荷物を置きながら話を続ける。
主人も手伝うと仰ってくれたのだが、やはり使用人の仕事なので丁重に断った。
(´・_ゝ・`)「シュトーレン。知らない?クリスマスを待つ間に少しずつ食べていくんだ。
クリスマスまでもう何日も無いのに、すっかり忘れてたよ」
(゚、゚トソン「ああ、あのチマチマ食べるやつですね」
(´・_ゝ・`)「君本当そういうさぁ…情緒とかさぁ…」
(゚、゚トソン「確かラムに漬けたレーズンとか入れるんですよね」
(´・_ゝ・`)「そうそう。その時点でもう美味しい」
(゚、゚トソン「ラム酒をそのまま飲めば良いんじゃないですか?」
(´・_ゝ・`)
275
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:43:56 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「ラム酒飲みながら、レーズンとマジパンをつまみにして、クリスマスを待てば良いんじゃないですか?
その方が楽しくないですか?私はその方が良いですけど…どうしました主人」
(´・_ゝ・`)「価値観の相違だ」
(゚、゚トソン「方向性が違いましたか…」
(´・_ゝ・`)「バンドだったら解散してたよ」
(゚、゚トソン「あら…」
主人は心底残念そうな顔をしていた。私の考えはそこまで駄目だったのか。
(´・_ゝ・`)「……シュトーレン作ってくれたら君の好きなワインを、一本どれでもあげるよ」
(゚、゚トソン「作りましょう、シュトーレン。ええ、ええ。
クリスマスが待ち遠しい気持ちと、近付くにつれシュトレンが無くなってしまう寂しさのジレンマに陥ってしまうくらいの美味しいシュトレン、作りましょう」
276
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:44:31 ID:GoNfOUa20
主人の言葉を聞いて俄然やる気が湧いてきた。
ワイン。ああワイン。どのワインを頂こうか。
主人はあまり酒を嗜む方ではないが、この屋敷には立派なワインセラーがあるのを、私は知っている。
頂き物や主人のお父様の好みが仕舞われているらしいが、目玉が飛び出るほどの金額のモノがあることも、私は知っていたのだ。
(゚、゚トソン「ふふ…ワイン…ふふ」
(´・_ゝ・`)「…トソンくん、アル中にならないでね」
(゚、゚トソン「大丈夫ですよ、急性中毒にならないようこまめに摂取してますから」
(´・_ゝ・`)「もう手遅れだった…」
277
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:45:20 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「さて、作りますか。工程は大き〜〜く分けると3つです」
(゚、゚トソン「1.混ぜこねる 2.発酵させる 3.焼く」
(゚、゚トソン「たったこれだけ☆お手軽だから誰でも作れる♪」
(゚、゚トソン「……嘘です。細かく分けると13〜14工程くらいあります…めちゃくちゃ面倒だな…」
(゚、゚トソン「………これもワインのため…よし、やりましょう」
⁂⊂(゚、゚トソン「ラム酒に漬けたイチジクと、クルミ、アーモンド、彼らが主役です」
⊂ (゚、゚トソン「……イチジク美味しそうですね……これとクリームチーズと一緒に生ハムでくるんでワインと一緒に…」
⊂(゚、゚トソン「…………」
(゚、゚トソン「はっ!いけないいけない…酒の国と書いて楽園に行ってました…」
278
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:46:01 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「アーモンドやクルミなどのナッツ類はローストして粗く砕きます」
(゚、゚トソン「…よく映画などでクルミの殻をバキッと悪シーンありますよね…」
(゚、゚トソン「……」
ぐっ (゚、゚トソン「痛っっ!!」
(゚、゚トソン「………生半可な気持ちでは割れない、ということですか…やりますね…」
(゚、゚トソン「手が痛い…労災でないかなこれ…」
279
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:46:36 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「中種を作ります」
(゚、゚トソン「強力粉、ドライイースト、牛乳をひたすら混ぜ捏ねます」こねこね
(゚、゚トソン「強力粉さんの頼もしさ、頼りになる感は計り知れないですね…
対してドライなイーストさんと、柔和な牛乳さん…
彼らが一つに混ざると、一体どうなってしまうのか…!?」こねこねこねこね
〇⊂(゚、゚トソン「つるんとした生地になりました」
(゚、゚トソン「これを発酵させます」
(゚、゚トソン「…発酵させてる間暇ですね…ホームベーカリーがあったら楽なんですけど…」
(゚、゚トソン「ありそうだなこの屋敷…探してみますか」
280
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:47:18 ID:GoNfOUa20
何度でも言うがこの屋敷のキッチンは広い。
戸棚やら何やらも大きい。機材もたくさんある。まだ私も知らないものがごろごろある。
(゚、゚トソン「んー…上の方の戸棚はまだ見たことなかったんですよね…脚立頑張れ頑張れ脚立」
脚立を持ってきて登る。小さい頃よくそうやって手伝いをしていた。
(゚、゚トソン「ん、これは」
∬⊂ (゚、゚トソン
(゚、゚トソン『おめでとう、トソンは麺棒を見つけた!タラララ〜♪(裏声)』
丁度良いものを見つけた。あとで使うので出しておこう。
281
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:47:47 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「はっ、本生地を作らなくては…」
(゚、゚トソン「バターをクリーム状に混ぜて、お砂糖、塩、卵黄、牛乳、あるだけ全部少しずつぶち込みます」
(゚、゚トソン「強力粉さん再び登場、アーモンドプードルさんと一緒にぶち込みます」
(゚、゚トソン「発酵させた中種を」
(゚、゚トソン「千切っては混ぜ千切っては混ぜ」ブチィこねこねブチィこねこね
(゚、゚トソン「イチジクとナッツたちを入れてまた発酵です」
(゚、゚トソン「やることが多い!!」
(゚、゚トソン「全然ふざけられないですよ…ふぅ…」
282
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:48:20 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「先程見つけて洗っておいた麺棒で生地の形を整えます」
(゚、゚トソン「そして!!」
(゚、゚トソン「また発酵!!!私は発狂!!」
(゚、゚トソン「あら、私韻踏むの上手くないです?ラッパーになれます??」
(゚、゚トソン「チェケラ焼きます」
(゚、゚トソン「これだけ手間かけて作ったらそりゃチマチマ食べたくなりますよね。1日で食べるのを惜しむ気持ちがわかりました…」
(゚、゚トソン「これが…情緒…」
(゚、゚トソン「さて、麺棒の他に何か使えるもの出てきませんかね…例えば隠し酒とか、お酒とか、アルコールとか…」
283
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:49:05 ID:GoNfOUa20
先程麺棒が出てきたあたりはまだまだ何かがありそうだった。暗い戸棚の奥に手を伸ばし、何かを掴む。
(゚、゚トソン「……ノート…?」
こんな戸棚の奥に、何故?
もしかして主人が書いたものだろうか。
(゚、゚トソン「…」
ノートをめくる。
なんだろう。日記だったらどうしよう。
(゚、゚トソン「…『彼は、私の主人。彼は、私の事を名前で呼ぶ。彼は、大の甘党。』…」
誰かの手書きの文字が連なっている。主人の字ではなかった。
この『彼』というのは主人、デミタス様のことだろう。
しかし私以外にも『主人』と呼ぶ人間がいたのか。
(゚、゚トソン「…人のものを勝手に見るのは良くないです、よね」
主人の物であっても誰のものであっても、勝手に見るのは良くないことだ。反省。
元あった場所に戻して、脚立をしまった。
284
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:49:38 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「焼けました。だいぶいい匂いがしますね…なんていうんでしょう…カントリー?」
(゚、゚トソン「さて仕上げにこれでもかという位のバターをたっぷり塗り込みます」
(゚、゚トソン「粉砂糖をパラパラダバー」
(゚、゚トソン「はい」
(゚、゚トソン「カロリーの鬼の完成です……」
リビングに持っていく。発酵でだいぶ時間がかかってしまった。
こんなにカロリー高なものを今食して、夜ご飯は果たして入るのだろうか。
285
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:50:46 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「主人、シュトレンとやら、出来ましたよ」
(*´・_ゝ・`)「おお、おお!」
目が合った瞬間、主人の顔が輝いた。
発光している…?
(゚、゚トソン「コーヒーに合うようフルーツよりナッツ多めの、シナモンナツメグ増し増しにしました」
主人が匂いを嗅ごうと鼻をスンスンしていた。
犬じゃないのでやめなさいと止めて目の前に皿を置く。
主人の輝きがさらに増した。本当に犬のような反応で引いた。
(*´・_ゝ・`)「良い匂いだね…はー…いただきます」
286
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:51:30 ID:GoNfOUa20
待ちきれないとばかりにナイフとフォークを持ち、シュトーレンを切る。
ほろりと欠けらが皿に落ちたが、主人は御構い無しに一口頬張った。
(*´・_ゝ・`)「…うん、しっとりほろほろしてる…美味しいね
シナモンとナツメグかな?いいアクセントだね、冬ーって感じがするよ」
冬という感じがするというのはわかる。これは寒い寒い冬に食べるものだと思う。
(゚、゚トソン「2〜3日寝かせるともっと美味しくなると思いますよ。はい、コーヒーも淹れてあります」
(*´・_ゝ・`)「明日も明後日もまた違う味になってそうだね、楽しみだなぁ」
287
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:52:03 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「クリスマスまでしばらくこのシュトレンがおやつという事で宜しいですか?」
(´・_ゝ・`)「宜しくない、それは違う」
(゚、゚トソン「でもこれチマチマ召し上がるのに…」
(´・_ゝ・`)「シュトレンはシュトレン。おやつはおやつ。違うんだよ」
(゚、゚トソン「ああ、おつまみとご飯のおかずは違うってやつですね…わかります」
(´・_ゝ・`)「僕はむしろわかんないよ…」
主人は食べ終わってしまったことにか、はたまた私との意見の相違にか残念そうな顔をした。
288
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:52:29 ID:GoNfOUa20
(´・_ゝ・`)「あ、トソンくん」
(゚、゚トソン「はい?」
(´・_ゝ・`)「クリスマスプレゼント、何がいいか考えておいて」
(゚、゚トソン
(゚、゚トソン
(゚、゚トソン
(;´・_ゝ・`)「トソンくん?」
(゚、゚トソン「え、あ、は、はい。あの、えっ、頂ける、のですかクリスマスプレゼント」
289
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:52:57 ID:GoNfOUa20
いきなりの主人の言葉を理解するのに、だいぶ時間がかかってしまった。
(´・_ゝ・`)「うんまぁ、ボーナスみたいなものと思ってよ」
(゚、゚トソン「…」
(´・_ゝ・`)「今ちなみにぬいぐるみ作ってるからそれもオマケにつけるよ」
(゚、゚トソン「今ぬいぐるみ作家でしたっけ…」
(´・_ゝ・`)「うん」
(;´・_ゝ・`)「あ、もしかして現金の方が良かった?」
(゚、゚トソン「いえ!!」
(゚、゚トソン「いえ、嬉しいです…頂けると思わなかったので…」
(゚、゚トソン「ちょっとじっくり考えさせて頂きます」
290
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:53:32 ID:GoNfOUa20
プレゼントをいただけるという喜びで、
キッチンで見つけたノートのことを主人に言いそびれてしまった。
けれど何故だか、主人に伝えるのが、
(゚、゚トソン(……怖い…?)
自分自身よくわからないながら、その事自体流してしまった。
.
291
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:54:21 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「はー!終わった!今日はいつも以上に働いた気がします」
(゚、゚トソン「しかし〜今日は〜臨時収入〜」
(゚、゚トソン「お高いワイン!!」
(゚、゚トソン「ヤッタネ!」
(゚、゚トソン「しかも赤と白2本!!」
(゚、゚トソン「ヤッタネ!!!」
(゚、゚トソン「今日はどちらにしようかな…」
(゚、゚トソン『チマチマしたこと言わずに2本飲めばいいんじゃない!?(裏声)』
(゚、゚トソン「た、たしかにそうですね!そうしましょう!」
(゚、゚トソン「ちょっと勿体無い気もしますが…白ワインを鍋に入れてシナモンとクローブ、それからリンゴを沸騰するまで火にかけます」
(゚、゚トソン「赤ワインも、ラム酒とシナモンとクローブを別の鍋で火をかけます」
(゚、゚トソン「ダブルホットワインの完成です、ひぇ、贅沢…」
292
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:54:59 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「シュトーレン、シュートレン?シュートーレーンー??何が正解でしたっけ…」
(゚、゚トソン「それと一緒に、いただきます」
シュトーレンはパンだったはずだ。パンのようなものをお上品にもナイフとフォークで小さくし、ぱくり。
砂糖の甘さがじんわり舌に広がり、ナッツの香ばしさ、イチジクの酸っぱさが続いてやってきた。
押し流すように、まずは白のホットワインをぐびり。
(゚、゚トソン「あっ……たかぁい…」
喉の奥に温かな幸せが流れていく。
(゚、゚トソン「リンゴがいい仕事してます…」
続いてシュトーレンをもう一口。
そして赤のホットワインをぐびり。
(゚、゚トソン「美味しいなぁ…美味しいですね…お値段関係なく美味しいです…」
今日もまた、良いペアリングが出来たなと嬉しく思い、カロリー爆弾をパクパク食べた。
(゚、゚トソン「……」
酒を飲みながら、今日の事を思い出す。
昼間の、雑魚との会話を。
293
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:55:31 ID:GoNfOUa20
+++++
声をかけてきたのが雑魚だとわかった瞬間、顔をしかめた。
(゚、゚トソン「…それで何です?貴方みたいな親のすねかじり虫の極楽ニートと違って私は暇じゃないんですよ」
(;^ν^)「ニートじゃねぇ、働いてるわ!」
よく見ると雑魚はエプロンをしており、そこには『韮束商店』と書いてあった。
なんという悲劇。喜劇?
いつもお世話になっている酒屋で、この雑魚は働いていたのである。
(゚、゚トソン「ここの…従業員…だったんですか…ちっ…なまじお世話になり過ぎてて悪態つき辛いな…」
( ^ν^)「親父が店主だから手伝ってんだよ…給料は雀の涙ほどしかねーけど」
(゚、゚トソン「それでその雀の涙ほどのお給金でキャバクラ通いですか、いい趣味ですね」
(;^ν^)「あっ、そうだそれだ!何でアンタ俺があの店通ってることとかシンデレラのこと知ってんだよ!」
(゚、゚トソン「知りたかったら金か酒か酒かアルコール出しな」
(;^ν^)「酒カツアゲされたの初めてだ…」
294
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:56:06 ID:GoNfOUa20
韮束商店の良いところは、品揃えが豊富なのはもちろんのこと、角打ちがあることだ。
何度ここで寄り道をしたことか………いえ仕事中は飲んでないです本当に。本当に。本当。
(゚、゚トソン「これは水…水ですね…」
(;^ν^)「本当に水みたいにスイスイ飲んでて怖え…」
(゚、゚トソン「仕方ないので簡易的に作ったおつまみ分けてあげます」
酒貰ったし。あっいや水。水を頂いただけ。
( ^ν^)「あっうめぇ」
(゚、゚トソン「イカのお刺身と納豆混ぜただけですけどね」
今夜の私のおつまみが今ここで犠牲になった。
(;*^ν^)(そういえばかーちゃん以外の女の手料理(?)初めて食った…)
295
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:56:41 ID:GoNfOUa20
美味しい。美味しいおさ……お水は心を潤す。
ついつい気分が良くなる。
(゚、゚トソン「それで、何でしたっけ?」
話を振ると気を抜いていた雑魚がつまみを喉に詰まらせた。
咳払いをし、落ち着いてから話す。一々格好がつかない。
( ^ν^)「ズバリ、シンデレラとの関係だ!何で俺が店に行ってシンデレラ指名してんの知ってんだよ!」
(゚、゚トソン「貴方あの店でちょっと有名でしたよ、明らかに童貞拗らせてて一周回って応援したくなるような客って」
(;^ν^)「!??」
(゚、゚トソン「あと私とシンデレラちゃんの関係はただの知り合いです」
( ^ν^)「!!?」
(゚、゚トソン「好物も嫌いな食べ物も癖も寝るとき何を着てるのかも知ってる程度の、ただの知り合いです」
(;^ν^)「結構な仲じゃねーか!えっ寝るとき何着てんの!?」
(゚、゚トソン「そちらの質問は別料金です…というか店で聞けよそういうのは」
(;^ν^)「直接聞いたらセクハラだろ!!嫌われるだろ!?」
296
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:57:19 ID:GoNfOUa20
ひとしきり騒ぐ雑魚。他に客がいなくて良かった。
けれど何か思い至ったように、小さな溜息をついた。
( ^ν^)「……ああ、でもあれだ」
(゚、゚トソン「?」
( ^ν^)「アンタ、案外悪いやつじゃなさそうだし…シンデレラの大切な関係なんだな」
(゚、゚トソン
( ^ν^)「悪かったな、最初んとき…」
最初。そういえば何か雑魚い登場をして、雑魚く去っていってたな。
( ^ν^)「前に盛岡さんの屋敷の前歩いてたら、変な裏声聞こえてきてよ。変なやつがいるんじゃないかって心配になったんだ」
(゚、゚トソン「エーナニソレウラゴエトカヨクワカンナイ、トソンコワーイ」
( ^ν^)「本当になんだったんだろうな、あれ…」
恐ろしい。通りに聞こえるほど大きな声を出していたつもりはなかった。
確かにキッチンの扉は閉めているのに、主人から「騒いでる」と言われるとは思っていたけれど。
297
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:58:00 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「と言いますか、貴方こそあのお屋敷になんの関係があるんです?」
( ^ν^)「俺、前あそこのキッチンで働いてたんだよ」
(゚、゚トソン「えっ」
( ^ν^)「盛岡さん、俺みたいなやつを雇ってくれた良い人だから辞めた後でも気になってたんだ」
(゚、゚トソン「こいつが先輩かよマジか色々嫌だわー」
( ^ν^)「俺今結構良さげなこと言ってるんだけど…」
(゚、゚トソン「何か不祥事でも起こしてクビになったんですか?」
(;^ν^)「違うわ!……いや、違うと思う…」
( ^ν^)「俺も入りたてだったから詳しくはわからないんだよ」
(゚、゚トソン「…そうですか…」
++++
298
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:58:25 ID:GoNfOUa20
ある程度お互いの情報を交換して、店を後にした。
雑魚がこの屋敷で働いていたのは驚いたが、奴の人柄が何となくわかった気がするので、話せて良かったのかもしれない。
(゚、゚トソン「……」
(゚、゚トソン「…悪い奴ではない、それはまぁ…わかってはいたんですよ…」
残りのシュトーレンを見ながら、ある人の事を思い出した。
明日の朝一番に、やることが決まった。
(゚、゚トソン「…そうと決まれば、いっぱい飲んで早く寝ますかね」
299
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:58:52 ID:GoNfOUa20
韮速酒店を覗く。
いた。レジ台でぼけっとしている。
(゚、゚トソン「やいこらそこな不審者よ」
(#^ν^)「不審者じゃねーよ」
手招きをして店の外へ呼び出した。不思議そうな顔をしていたが、推して量れ。察しろ。酒を愛し酒に愛された人間は酒屋に2日続けて長居できないのだ。
(゚、゚トソン「これを」
シックな袋に包んで入れたシュトーレンを渡す。
不審者は不審者らしく私と袋を4度見くらいした。
300
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:59:19 ID:GoNfOUa20
(;^ν^)「なな、なんだ!?プレゼントか!??お、お前俺のこと好きなのかよ!」
(゚、゚トソン「ちげーわ馬鹿、馬鹿。ばーか。シンデレラちゃんにあげなさいそれ、貴方からのクリスマスプレゼントってことにして」
( ^ν^)「は?シンデレラに?なにこれ?」
(゚、゚トソン「シュトーレンです。あの子、ドライフルーツとかシナモン使ったお菓子好きだったから」
( ^ν^)
(((( ^ν^)))「つまりこれを渡せば」
(゚、゚トソン「好感度が(ほんのちょこっと)上がる(かもしれない)(どうだろう)」
( ^ν^)「姐御と呼ばせてください」
(゚、゚トソン「断る」
( ^ν^)「じゃあリーダー」
(゚、゚トソン「何のだ」
301
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 17:59:45 ID:GoNfOUa20
喜色満面だった雑魚の顔が、瞬時に暗くなってこちらを覗き込んできた。
( ^ν^)「…アンタよ、まさかシンデレラのかーちゃんってことは」
(゚、゚トソン「あ?このピッチピチトソンちゃんから?シンデレラちゃんの歳の子が?産まれるか???あぁ?せめてねーちゃんだろ?違うけど」
( ^ν^)「良かった違ったか良かった」
とてつもなく安堵した表情に変わる。どういう意味だ。
302
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 18:00:27 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「血の繋がりはありませんよ…ただ、本当の妹みたいに可愛がってはいました」
(゚、゚トソン「あの子は本当に優しくて良い子でしたから」
本当に、心の底から。
彼女を思い出すと、胸が温かくなる。
( ^ν^)「……なぁ」
雑魚が深妙な声を出す。何だ、まだ何か素っ頓狂な事を言うのだろうか。
( ^ν^)「アンタに聞きたかったんだが」
(゚、゚トソン「シンデレラちゃんのスリーサイズですか?」
(;*^ν^)「教えてくれるんなら聞きたい!いや違う!」
思わずじっとりとした視線を向けてしまう。
(゚、゚トソン「…教えませんよ…」
(;*^ν^)「だから違うっての!馬鹿!」
303
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 18:00:57 ID:GoNfOUa20
( ^ν^)「あの人…デミタス様は元気か」
何だ、主人の事か。主人は元気だ。元気におやつを食べ、元気に『仕事』をしている。
(゚、゚トソン「元気ですよ、おやつ食べて毎日元気です」
( ^ν^)「……それなら良かった」
( ^ν^)「あの人が亡くなってからのデミタス様を見てなかったから」
(゚、゚トソン「…あの人?」
( ^ν^)「デミタス様の奥様だよ」
(゚、゚トソン
キッチンで見つけたノートの事を思い出す。
あのノートは『主人』について書かれていた。
あのノートの『主人』というのは、私が呼ぶ『主人』と意味が違った。
304
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 18:01:36 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「…あのノートは、奥様が書かれた…」
( ^ν^)「おい、大丈夫か?なんか顔色が…」
(゚、゚トソン「いいから貴様はシンデレラちゃんに早く告白してギッタギタにされて下さい」
(;^ν^)「応援してくれてんじゃないのかよ!」
(゚、゚トソン「白馬にでも乗って薔薇の花束持って、さっさと迎えに行ってあげて下さい」
(゚、゚トソン「貴様にならシンデレラちゃんを任せられなくもなくもなくもなくもなくもなくもない」
(;^ν^)「どっち!?」
(゚、゚トソン「じゃ、急ぐんで!」
(;^ν^)「あっ」
( ^ν^)「あ、ああ、あり、ありがとうな!!」
雑魚の大声が耳に入る。別にシンデレラちゃんの相手として認めた訳じゃない。
ただ出来損ないの弟分に、少しのクリスマスプレゼントをくれてやっただけ。それだけ。
そして今の私は、そんな事より確かめたいことがあったのだ。
305
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 18:02:21 ID:GoNfOUa20
バタバタと音を立ててキッチンへ向かう。
戸棚の奥に戻しておいたあのノートを探す。
(゚、゚トソン「あった」
再びノートを手にする。
(゚、゚トソン「ごめんなさい、ちょっとだけ読ませて下さい」
306
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 18:03:16 ID:GoNfOUa20
(゚、゚トソン「…やっぱりこれは」
(゚、゚トソン「デミタス様の奥様の」
ぐらり
足元がズルっと滑る。
周りが変なスローモーションで流れていく。
やはり人のものは勝手に見るもんじゃない。
こうしてバチが当たるからだ。
──そういえば小さい頃「脚立に乗るときは気をつけなさい」と親から言われたことがあったな
遅すぎる注意を思い出しながら
私は床に叩きつけられた。
307
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 18:05:18 ID:GoNfOUa20
本日の投下は以上になります。
待ってると書き込んでくださった方、ありがとうございます。
3ヶ月も経っていてびっくりしました。
次回の重要なネタバレ「雑魚の出番なし」
ありがとうございました。
308
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 18:45:03 ID:8/R700YE0
次回!トソン死す!アルコールスタンバイ!
おつ!
309
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 20:08:04 ID:gJuYlIfY0
まってたよー!!!
乙!!!!
310
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 20:19:00 ID:FHKn3lLE0
乙!ホットワイン美味しそう
311
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 20:19:04 ID:dGscMwxY0
乙!
続きめっちゃ気になる
312
:
名無しさん
:2018/10/11(木) 22:51:04 ID:SzdCARkk0
乙
シュトーレンの切り方を知ったときその合理性に驚いたの思い出した
313
:
名無しさん
:2018/10/12(金) 07:50:50 ID:9/8XYwv.0
続き来てた!
今まで少しずつ散りばめられてた展開が一気に進んだ感じするな
乙
314
:
名無しさん
:2018/10/12(金) 09:59:48 ID:mh0brJwQ0
うおおおお待ってた!
乙です!
315
:
名無しさん
:2018/10/13(土) 01:11:58 ID:PL4f.Y2U0
更新キター!
乙!
316
:
名無しさん
:2018/10/13(土) 20:11:18 ID:VIMZHm.o0
乙!
前からちょくちょく不穏な感じだったけど核心に近づいてきたかな?
317
:
名無しさん
:2018/10/14(日) 20:33:45 ID:.3.61/Ls0
おつ!
続き気になる
318
:
名無しさん
:2018/10/14(日) 21:01:40 ID:dMC0Z1q.0
乙です!ニュッ君と少し打ち解けられてよかった!
次回もすごく気になる!
319
:
名無しさん
:2018/10/26(金) 06:12:18 ID:g0su1mhU0
乙!やっと追いついた
いい飯テロ作品で呑みたくなる
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2540.jpg
320
:
名無しさん
:2018/10/26(金) 22:34:05 ID:5wCzyPnE0
支援絵おつ
二人ともかわいいw
321
:
名無しさん
:2018/12/14(金) 21:27:34 ID:.rlTyEkw0
つづきが読みたいでふ・・
322
:
名無しさん
:2018/12/16(日) 16:38:08 ID:OSDLjeuQ0
( 私の家はいつも、良い匂いがした。 )
.
323
:
名無しさん
:2018/12/16(日) 16:38:39 ID:OSDLjeuQ0
10.
324
:
名無しさん
:2018/12/16(日) 16:39:10 ID:OSDLjeuQ0
母親は料理上手な人で、毎日手作りのお菓子を作ってくれた。
私は母親が作るものが大好きだった。
きっと年の離れた妹と弟もそうだったはずだ。
(゚ー゚*トソン「お母さん、今日のおやつ何?」
|゚ノ ^∀^)「今日はみたらし団子作るわよ〜」
(・∀ ・)「ハロウィンなのに?西洋文化だよ、和菓子作るの?」
|゚ノ ^∀^)「細かいこと気にしなーい」
(゚ー゚*トソン「私も作りたい!お母さん、お腹に赤ちゃんいるんだから無理しちゃダメだよ!」
|゚ノ ^∀^)「作り方教えてあげるわね、棚の上から白玉粉取ってくれる?」
(゚ー゚*トソン「はーい!」
(・∀ ・)「トソンはお母さんが大好きだなぁ」
(゚ー゚*トソン「うん!」
|゚ノ ^∀^)「あ、トソン!脚立乗るときは気をつけなさい!」
325
:
名無しさん
:2018/12/16(日) 16:39:54 ID:OSDLjeuQ0
ごく普通の、普通だけど幸せな家族。
それが我が家だった。
けれどそれは突然壊れてしまった。
326
:
名無しさん
:2018/12/16(日) 16:40:39 ID:OSDLjeuQ0
(゚ー゚トソン「…」
私が14の時だった。
高校受験のテスト中呼び出された。
母親は死んだ。妹と弟も。事故だった。
滅多に乗らない車を、何故母親は運転していたのか。
いつも使っている自転車がなかったからだ。
私が受験に遅れそうだったため、了承も得ず勝手に借りた。
家から少し離れた保育園に妹と弟を送りに行くには、車を出すしかなかったのだろう。
飛び出して来た猫を避けようとして、電信柱に突っ込んでしまった。
327
:
名無しさん
:2018/12/16(日) 16:41:10 ID:OSDLjeuQ0
(゚、゚トソン
私の受験は当たり前のように落ちた。
例え受かっていても通えなかったと思う。
妻と子を失った父親が、やけになって作った借金が多大だったから。
(・∀ ・)「お前は母親が好きだったもんな」
(゚、゚トソン「……」
(・∀ ・)「だから、良いよな」
父親はある日ことんと消えた。
借金だけを置いて。
それから私は働いた。
色々な所を転々と、色々な仕事を転々と。
328
:
名無しさん
:2018/12/16(日) 16:43:14 ID:OSDLjeuQ0
(゚、゚トソン「大丈夫ですか?」
ζ(-、- ;ζ「ん、だ、大丈夫…です、ごめんなさい…」
(゚、゚トソン「同室のよしみですよ。それに、最初のうちはキツイの、私も知ってますから」
ζ(゚ー゚*ζ「…えへへ。トゥインクルちゃん、優しいね」
働き出して数年が経ち、いくつ目かの働き先。
キャバクラだった。
彼女は同じ店で働いてる、可愛らしい女の子だ。私とそんなに年が変わらない筈。
そして私と同じく、店の寮に住んでいる。ルームメイトというものだ。
彼女もそれなりの理由があってここにいるのだろう。
329
:
名無しさん
:2018/12/16(日) 16:43:45 ID:OSDLjeuQ0
(゚、゚トソン「これ、食べます?」
ζ(゚ー゚*ζ「わぁ、美味しそう!トゥインクルちゃんが作ったの?」
(゚、゚トソン「はい…シンプルなクッキーですけど…」
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう!いただきます!」
(゚、゚トソン「…」
ζ(^ヮ^*ζ「美味しい!」
(゚、゚トソン「…」
330
:
名無しさん
:2018/12/16(日) 16:44:15 ID:OSDLjeuQ0
ζ(゚ー゚*ζ「私、お酒は好きなんだぁ」
ζ(゚ー゚*ζ「お酒は良いときにも悪いときにも飲めるでしょ。喜びを受け止めてくれて、悪い事を受け流してくれる。だから好きなの」
ζ(゚ー゚*ζ「でも得意じゃないからあんまり飲めなくて…」
(゚、゚トソン「そういうことも、ありますよね」
ζ(゚ー゚*ζ「トソンちゃんはお酒好き?」
(゚、゚トソン「私は酒、嫌いですよ。
…ただ前に、家族に会いたくなってたくさんたくさん飲んだことがあって、いくらでも飲めるようになりました」
ζ(゚ー゚*ζ「?そうなんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、トゥインクルちゃんがお酒大好きになったら最強だね!」
(゚、゚トソン「…最強…」
ζ(゚ー゚*ζ「私と一緒に特訓しようよ!」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあまずは泡盛ね!」
(゚、゚トソン「初心者向けからいきましょうよ…」
331
:
名無しさん
:2018/12/16(日) 16:44:47 ID:OSDLjeuQ0
彼女は明るくて優しい子だった。
彼女の源氏名はシンデレラといった。
どういう意味でつけたのか聞いたら
ζ(゚ー゚*ζ「私もいつかシンデレラみたいに、素敵な王子様に見つけてもらいたいから!あと本名が名前の中に入ってるからね!」
とのことだった。ちなみに私の源氏名は店に適当につけられた。
332
:
名無しさん
:2018/12/16(日) 16:45:28 ID:OSDLjeuQ0
ζ(゚ー゚*ζ「トゥインクルちゃん、私もマドレーヌ作ったの!一緒に食べよ!」
(゚、゚トソン「シンデレラちゃん、それ何入れました?」
ζ(゚ー゚*ζ「こないだお客さんから貰ったイカの塩辛!」
(゚、゚トソン「……シンデレラちゃん、今度一緒にお料理しましょう」
ζ(゚ー゚*ζ「本当?楽しそう!」
ζ(゚ー゚*ζ「私、トゥインクルちゃん大好き!おねーちゃんみたい」
(゚、゚トソン「…」
私も彼女の素直さやあたたかさが好きだった。烏滸がましいと分かりながらも、妹のように思っていた。
けれど彼女のように『好き』と口にするのは怖かった。
私のせいで家族がなくなった事を知ったら
嫌われるんじゃないか、離れてしまうのではないか。
怖くて、今一歩踏み出せなかった。
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