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(´・_ゝ・`)ペアリングのようです(゚、゚トソン

1名無しさん:2018/01/02(火) 16:02:26 ID:Q.JOBvVs0







彼は、私の主人。

彼は、私の事を名前で呼ぶ。

彼は、大の甘党。




.

2名無しさん:2018/01/02(火) 16:03:05 ID:Q.JOBvVs0

コンコン、
ノックの音。物置の扉がカタカタ揺れた。
ここは彼の家だというのに、随分律儀だと思う。
はあい、と返事をすると扉が開いた。

(´・_ゝ・`)「トソンくん、トソンくんやい」

(゚、゚トソン「何です、人の名前をトムヤムクンみたいに」

(´・_ゝ・`)「何してるの」

(゚、゚トソン「お掃除ですよ、私の仕事です。主人」

(´・_ゝ・`)「自分から言うのもなんだけど、その呼び方、どうなの?」

(゚、゚トソン「どうなの、とは」

3名無しさん:2018/01/02(火) 16:03:38 ID:Q.JOBvVs0

(´・_ゝ・`)「仮にも使用人が雇い主に向かって『主人』って。『ご』と『様』は?敬いの気持ちは?」

(゚、゚トソン「敬いの気持ちと言われましても、私ここで働き始めてまだ1ヶ月ですし、主人のことまだ敬えるような身分ではありませんので」

(´・_ゝ・`)「え?え?雇われた時点で敬うものじゃ…え?」

(゚、゚トソン「私が敬うのは酒の神様と酒をつくる人たちぐらいですし」

(´・_ゝ・`)「じゃあ何ヶ月働いても君は僕を敬わないよ…」

(゚、゚トソン「ああ、面倒ですね。何です?用事があったんじゃないんですか?」

(´・_ゝ・`)「ああそうそう、あのね、かき氷が食べたいんだ」

4名無しさん:2018/01/02(火) 16:04:20 ID:Q.JOBvVs0




1.たかが氷、されど氷






.

5名無しさん:2018/01/02(火) 16:04:59 ID:Q.JOBvVs0


人の良さそうな、悪く言えば気弱そうに見える眉毛の男性は、私の雇用主デミタスという金持ちだ。

私は彼の身の回りを世話する、使用人である。

この雇主は、いい歳をこいて大の甘党だった。
別に何を嗜好にしようが本人の勝手だが、彼の場合は私にも関係する事なので、少しくらい悪く言っても良いだろう。

ーーー彼は、手作りの甘いものが大好物なのである。

彼が欲するものを作るのは、この屋敷ただ1人の使用人、私だけなのだ。

6名無しさん:2018/01/02(火) 16:05:38 ID:Q.JOBvVs0

(゚、゚トソン「かき氷、ですか。秋の始めに、まぁ」

甘いもの、と言ってかき氷を求めるのはどうなのだろうとは思いながらも、最近若者の間で変わったかき氷が流行っているらしいから、そんな物なのだろうと流す。
主人は若くはないけれど。

(´・_ゝ・`)「今年は食べてなかったなって思って」

毎年食べていたのだろうか。
金持ちの思考も嗜好も、私にはよくわからない。

(゚、゚トソン「機械あります?」

(´・_ゝ・`)「無いね」

(゚、゚トソン「だから貴方は主人止まりなんですよ」

(´・_ゝ・`)「なんかごめんね」

7名無しさん:2018/01/02(火) 16:06:35 ID:Q.JOBvVs0


舌打ちをしたら傷付いたと言わんばかりの顔をされたけれど、気にしない。
ただでさえ甘いものばかりを摂取してるこの主人を甘やかしてやる必要はない。

(゚、゚トソン「フードプロセッサーあったから代用するか」

かき氷は作れないわけではない。むしろ焼いたりなんだりするケーキよりは幾分も楽だ。

(´・_ゝ・`)「味は任せたよ」

(゚、゚トソン「だから貴方は主人止まりなんですよ」

(´・_ゝ・`)「だからごめんね」

8名無しさん:2018/01/02(火) 16:07:08 ID:Q.JOBvVs0

主人を放ってキッチンに立つ。
この屋敷は私以外誰も働いていないくせにただただ広く、設備も整っている。
キッチンも、コックが数名働いていてもおかしくはない広さだ。

(゚、゚トソン「さて作りますか」

(゚、゚トソン「かき氷を機械無しで作る時の注意点。氷に気を使うこと」

(゚、゚トソン「氷を制す者がかき氷を極める者となります」

◇⊂(゚、゚トソン「ここに私が用意した最高の氷があります」

◇⊂(゚、゚トソン「これをフードプロセッサーに」

◇⊂(゚、゚トソン

◇⊂(゚、゚トソン「入れたくねぇ……」

9名無しさん:2018/01/02(火) 16:07:55 ID:Q.JOBvVs0


◇⊂(゚、゚トソン「給料のため、金のためですトソン。我慢するのです」

◇⊂(゚、゚トソン『そうは言ってもよ、トソン。
この氷は仕事終わりのお楽しみ☆ウィスキーロックのために用意したもの。
それをあんな三十路過ぎて甘いものばかりを欲しがる面倒な主人に使うなんて…(裏声)』

◇⊂(゚、゚トソン「仕方ないんですよトソン。これが私の仕事ですから…」

◇⊂(゚、゚トソン『現実は非常ね……(涙声)』

一人二役の大役を勤めあげ、氷をフードプロセッサーに放り込んだ。
氷が悲鳴をあげながら小さく細かくなっていく。

(゚、゚トソン「あ、半分貰えば良いのか」

ズガガガガガガガ

(゚、゚トソン「……全部かきごおってしまいましたね、ふぁっ◯」

10名無しさん:2018/01/02(火) 16:09:28 ID:Q.JOBvVs0


氷はまぁまぁふわふわな状態だ。良い氷はやはり違う。

ああ、ああ、(主人の金で揃えた)最高の氷の、悲しい姿。
早く氷を着飾らせてあげないと。ただの水になってしまう。

(゚、゚トソン「シロップはなんでも良い、って何ですかね」

(゚、゚トソン「なんでも良いなら氷舐めてればいいのに」

何かを作って貰う際の『なんでもいい』は、胸ぐら掴まれても仕方ないと思って欲しい。

11名無しさん:2018/01/02(火) 16:10:32 ID:Q.JOBvVs0


(゚、゚トソン「私が沸ってもしかたありません、お湯を沸かしますよ」

(゚、゚トソン「あっという間にすぐに沸く」

(゚、゚トソン「フフーンフン♪」

カチッ

(゚、゚トソン「沸きました」

(゚、゚トソン「淹れて冷まして…あ、ラフランス有りましたね。よしよし」

12名無しさん:2018/01/02(火) 16:11:12 ID:Q.JOBvVs0

(゚、゚トソン「主人、かき氷が出来ましたよ」

(´・_ゝ・`)「ああ、なんかいい匂いだ」

かき氷を持ってリビングへ行くと、チェアでまったりしていた主人がゆったりと振り向いた。

(゚、゚トソン「ダージリンとラフランスのかき氷です。お好みでミルクかけてください」

(´・_ゝ・`)「ああ、美味しそうだ。いただきます」

(゚、゚トソン「あったかいほうじ茶、淹れますね」

(´・_ゝ・`)「うん?うん…あー、美味し冷たい」

かき氷に熱々のほうじ茶?と訝しげな顔を主人が向けた。
わかってない、わかっていないな。
私は小さくバレないようにほくそ笑んだ。

13名無しさん:2018/01/02(火) 16:11:49 ID:Q.JOBvVs0

ダージリンの良い香りがほのかに漂う。主人はミルクを少し入れ、細かく混ぜていた。
シャクリシャクリと涼しげな音。
9月に入ったものの、気だるい暑さが続く今日、大人のかき氷というのも、悪くないのかもしれない。

(´・_ゝ・`)「トソンくんは食べないのかい?」

(゚、゚トソン「私は仕事終わりに楽しみますので」

(´・_ゝ・`)「ふーん……ごちそうさまでした。美味しかった」

(゚、゚トソン「お粗末さまでした、ほうじ茶どうぞ」

(´・_ゝ・`)「ん、ありがとう」

14名無しさん:2018/01/02(火) 16:12:23 ID:Q.JOBvVs0

(´・_ゝ・`)「…おお、冷えていた体にありがたい温度だ」

(゚、゚トソン「ふふん、そうでしょう。『かき氷にほうじ茶!?愚かだな!』という顔をしやがったことを悔やんでください」

(´・_ゝ・`)「そこまでは思ってないよ…」

(゚、゚トソン「かき氷は女老人には厳しいです、身体の熱を奪いますから。温かい飲み物が良いペアリングになりますよ」

(´・_ゝ・`)「ふーん………ちょっと待って、今僕のこと老人扱いした?え?ねぇちょっと」

15名無しさん:2018/01/02(火) 16:13:16 ID:Q.JOBvVs0

ブツブツとまだ若いだの言いながらも、
甘いものを摂取し満足した主人は、自室へ戻って行った。

これでしばらくは部屋から出てこないだろう。
主人は食事とトイレなど以外はずっと部屋にいる。

『仕事』をしているのだ。

広すぎて寂しさを感じさせる屋敷と、
甘いものを与えておけばいい主人の世話だけで破格の給料が貰えるこの仕事、面倒ではあるけれど嫌いではない。

なぜなら私は酒が好き。大好き。
そして、酒の次に金が好きだから。

金がなければ酒は飲めず、働かなければ金は得られず。皮肉なものね。

16名無しさん:2018/01/02(火) 16:13:55 ID:Q.JOBvVs0


(゚、゚トソン「ああ、仕事が終わりました。今日も1日お疲れ様トソン、稼ぎましたねトソン」

待ってましたと言わんばかりに冷凍庫をばかっと開ける。

(゚、゚トソン「さて、私も大人のかき氷を楽しみましょうか」

(゚、゚トソン「ああ案の定かきごおった氷が大きな氷の塊になってますね」

今更だけれど、私は料理中に独り言をいう癖がある。
周りに誰もいないから、困ることではない。

17名無しさん:2018/01/02(火) 16:14:44 ID:Q.JOBvVs0


(゚、゚トソン「もう一度フードプロセッサーにかけましょうね」

(゚、゚トソン「夜中に騒音?関係ありません。酒があればいつだってナイトフィーバーです」

(゚、゚トソン「氷は二度死ぬ」

ああ、待たせてごめんよ。
いそいそと主役様を取り出す。
思わず笑みがこぼれる。

(゚、゚トソン「このかき氷に」

(゚、゚トソン「最高のウイスキーいっちゃいます、かけちゃいますうひゃーー」

失礼。酒を目の前にすると理性が消える。仕方のないことだけど。

(゚、゚トソン「ラフランスも添えて」

(゚、゚トソン「……はー。最高。最高の産物。」

18名無しさん:2018/01/02(火) 16:15:27 ID:Q.JOBvVs0


ペアリング、という言葉をご存知だろうか?
いえ、アベックが交際数ヶ月で買い求める方ではなく。

フードペアリング。

お酒と相性が良い食べ物や、料理の事。

私はお酒が大好きだけれど、お酒と一緒に何かを楽しむのも大好きなのだ。

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19名無しさん:2018/01/02(火) 16:16:33 ID:Q.JOBvVs0


(゚、゚トソン「あー、高い酒と高い食材楽しむのサイコ〜」




最高の氷に、最高のウイスキー。

面倒な主人をツマミに最高の酒。

最高のペアリングかもしれません。




1.終

20名無しさん:2018/01/02(火) 16:25:00 ID:Q.JOBvVs0





彼は、甘いものが切れると弱る。

強い時なんて、あまりないけれど。



.

21名無しさん:2018/01/02(火) 16:25:37 ID:Q.JOBvVs0




(´・_ゝ・`)デミタス。屋敷の主人。甘党。金持ち。


(゚、゚トソン トソン。使用人。酒党。金好き。





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