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(´・_ゝ・`)ペアリングのようです(゚、゚トソン
1
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:02:26 ID:Q.JOBvVs0
彼は、私の主人。
彼は、私の事を名前で呼ぶ。
彼は、大の甘党。
.
2
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:03:05 ID:Q.JOBvVs0
コンコン、
ノックの音。物置の扉がカタカタ揺れた。
ここは彼の家だというのに、随分律儀だと思う。
はあい、と返事をすると扉が開いた。
(´・_ゝ・`)「トソンくん、トソンくんやい」
(゚、゚トソン「何です、人の名前をトムヤムクンみたいに」
(´・_ゝ・`)「何してるの」
(゚、゚トソン「お掃除ですよ、私の仕事です。主人」
(´・_ゝ・`)「自分から言うのもなんだけど、その呼び方、どうなの?」
(゚、゚トソン「どうなの、とは」
3
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:03:38 ID:Q.JOBvVs0
(´・_ゝ・`)「仮にも使用人が雇い主に向かって『主人』って。『ご』と『様』は?敬いの気持ちは?」
(゚、゚トソン「敬いの気持ちと言われましても、私ここで働き始めてまだ1ヶ月ですし、主人のことまだ敬えるような身分ではありませんので」
(´・_ゝ・`)「え?え?雇われた時点で敬うものじゃ…え?」
(゚、゚トソン「私が敬うのは酒の神様と酒をつくる人たちぐらいですし」
(´・_ゝ・`)「じゃあ何ヶ月働いても君は僕を敬わないよ…」
(゚、゚トソン「ああ、面倒ですね。何です?用事があったんじゃないんですか?」
(´・_ゝ・`)「ああそうそう、あのね、かき氷が食べたいんだ」
4
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:04:20 ID:Q.JOBvVs0
1.たかが氷、されど氷
.
5
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:04:59 ID:Q.JOBvVs0
人の良さそうな、悪く言えば気弱そうに見える眉毛の男性は、私の雇用主デミタスという金持ちだ。
私は彼の身の回りを世話する、使用人である。
この雇主は、いい歳をこいて大の甘党だった。
別に何を嗜好にしようが本人の勝手だが、彼の場合は私にも関係する事なので、少しくらい悪く言っても良いだろう。
ーーー彼は、手作りの甘いものが大好物なのである。
彼が欲するものを作るのは、この屋敷ただ1人の使用人、私だけなのだ。
6
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:05:38 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「かき氷、ですか。秋の始めに、まぁ」
甘いもの、と言ってかき氷を求めるのはどうなのだろうとは思いながらも、最近若者の間で変わったかき氷が流行っているらしいから、そんな物なのだろうと流す。
主人は若くはないけれど。
(´・_ゝ・`)「今年は食べてなかったなって思って」
毎年食べていたのだろうか。
金持ちの思考も嗜好も、私にはよくわからない。
(゚、゚トソン「機械あります?」
(´・_ゝ・`)「無いね」
(゚、゚トソン「だから貴方は主人止まりなんですよ」
(´・_ゝ・`)「なんかごめんね」
7
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:06:35 ID:Q.JOBvVs0
舌打ちをしたら傷付いたと言わんばかりの顔をされたけれど、気にしない。
ただでさえ甘いものばかりを摂取してるこの主人を甘やかしてやる必要はない。
(゚、゚トソン「フードプロセッサーあったから代用するか」
かき氷は作れないわけではない。むしろ焼いたりなんだりするケーキよりは幾分も楽だ。
(´・_ゝ・`)「味は任せたよ」
(゚、゚トソン「だから貴方は主人止まりなんですよ」
(´・_ゝ・`)「だからごめんね」
8
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:07:08 ID:Q.JOBvVs0
主人を放ってキッチンに立つ。
この屋敷は私以外誰も働いていないくせにただただ広く、設備も整っている。
キッチンも、コックが数名働いていてもおかしくはない広さだ。
(゚、゚トソン「さて作りますか」
(゚、゚トソン「かき氷を機械無しで作る時の注意点。氷に気を使うこと」
(゚、゚トソン「氷を制す者がかき氷を極める者となります」
◇⊂(゚、゚トソン「ここに私が用意した最高の氷があります」
◇⊂(゚、゚トソン「これをフードプロセッサーに」
◇⊂(゚、゚トソン
◇⊂(゚、゚トソン「入れたくねぇ……」
9
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:07:55 ID:Q.JOBvVs0
◇⊂(゚、゚トソン「給料のため、金のためですトソン。我慢するのです」
◇⊂(゚、゚トソン『そうは言ってもよ、トソン。
この氷は仕事終わりのお楽しみ☆ウィスキーロックのために用意したもの。
それをあんな三十路過ぎて甘いものばかりを欲しがる面倒な主人に使うなんて…(裏声)』
◇⊂(゚、゚トソン「仕方ないんですよトソン。これが私の仕事ですから…」
◇⊂(゚、゚トソン『現実は非常ね……(涙声)』
一人二役の大役を勤めあげ、氷をフードプロセッサーに放り込んだ。
氷が悲鳴をあげながら小さく細かくなっていく。
(゚、゚トソン「あ、半分貰えば良いのか」
ズガガガガガガガ
(゚、゚トソン「……全部かきごおってしまいましたね、ふぁっ◯」
10
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:09:28 ID:Q.JOBvVs0
氷はまぁまぁふわふわな状態だ。良い氷はやはり違う。
ああ、ああ、(主人の金で揃えた)最高の氷の、悲しい姿。
早く氷を着飾らせてあげないと。ただの水になってしまう。
(゚、゚トソン「シロップはなんでも良い、って何ですかね」
(゚、゚トソン「なんでも良いなら氷舐めてればいいのに」
何かを作って貰う際の『なんでもいい』は、胸ぐら掴まれても仕方ないと思って欲しい。
11
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:10:32 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「私が沸ってもしかたありません、お湯を沸かしますよ」
(゚、゚トソン「あっという間にすぐに沸く」
(゚、゚トソン「フフーンフン♪」
カチッ
(゚、゚トソン「沸きました」
(゚、゚トソン「淹れて冷まして…あ、ラフランス有りましたね。よしよし」
12
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:11:12 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「主人、かき氷が出来ましたよ」
(´・_ゝ・`)「ああ、なんかいい匂いだ」
かき氷を持ってリビングへ行くと、チェアでまったりしていた主人がゆったりと振り向いた。
(゚、゚トソン「ダージリンとラフランスのかき氷です。お好みでミルクかけてください」
(´・_ゝ・`)「ああ、美味しそうだ。いただきます」
(゚、゚トソン「あったかいほうじ茶、淹れますね」
(´・_ゝ・`)「うん?うん…あー、美味し冷たい」
かき氷に熱々のほうじ茶?と訝しげな顔を主人が向けた。
わかってない、わかっていないな。
私は小さくバレないようにほくそ笑んだ。
13
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:11:49 ID:Q.JOBvVs0
ダージリンの良い香りがほのかに漂う。主人はミルクを少し入れ、細かく混ぜていた。
シャクリシャクリと涼しげな音。
9月に入ったものの、気だるい暑さが続く今日、大人のかき氷というのも、悪くないのかもしれない。
(´・_ゝ・`)「トソンくんは食べないのかい?」
(゚、゚トソン「私は仕事終わりに楽しみますので」
(´・_ゝ・`)「ふーん……ごちそうさまでした。美味しかった」
(゚、゚トソン「お粗末さまでした、ほうじ茶どうぞ」
(´・_ゝ・`)「ん、ありがとう」
14
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:12:23 ID:Q.JOBvVs0
(´・_ゝ・`)「…おお、冷えていた体にありがたい温度だ」
(゚、゚トソン「ふふん、そうでしょう。『かき氷にほうじ茶!?愚かだな!』という顔をしやがったことを悔やんでください」
(´・_ゝ・`)「そこまでは思ってないよ…」
(゚、゚トソン「かき氷は女老人には厳しいです、身体の熱を奪いますから。温かい飲み物が良いペアリングになりますよ」
(´・_ゝ・`)「ふーん………ちょっと待って、今僕のこと老人扱いした?え?ねぇちょっと」
15
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:13:16 ID:Q.JOBvVs0
ブツブツとまだ若いだの言いながらも、
甘いものを摂取し満足した主人は、自室へ戻って行った。
これでしばらくは部屋から出てこないだろう。
主人は食事とトイレなど以外はずっと部屋にいる。
『仕事』をしているのだ。
広すぎて寂しさを感じさせる屋敷と、
甘いものを与えておけばいい主人の世話だけで破格の給料が貰えるこの仕事、面倒ではあるけれど嫌いではない。
なぜなら私は酒が好き。大好き。
そして、酒の次に金が好きだから。
金がなければ酒は飲めず、働かなければ金は得られず。皮肉なものね。
16
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:13:55 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「ああ、仕事が終わりました。今日も1日お疲れ様トソン、稼ぎましたねトソン」
待ってましたと言わんばかりに冷凍庫をばかっと開ける。
(゚、゚トソン「さて、私も大人のかき氷を楽しみましょうか」
(゚、゚トソン「ああ案の定かきごおった氷が大きな氷の塊になってますね」
今更だけれど、私は料理中に独り言をいう癖がある。
周りに誰もいないから、困ることではない。
17
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:14:44 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「もう一度フードプロセッサーにかけましょうね」
(゚、゚トソン「夜中に騒音?関係ありません。酒があればいつだってナイトフィーバーです」
(゚、゚トソン「氷は二度死ぬ」
ああ、待たせてごめんよ。
いそいそと主役様を取り出す。
思わず笑みがこぼれる。
(゚、゚トソン「このかき氷に」
(゚、゚トソン「最高のウイスキーいっちゃいます、かけちゃいますうひゃーー」
失礼。酒を目の前にすると理性が消える。仕方のないことだけど。
(゚、゚トソン「ラフランスも添えて」
(゚、゚トソン「……はー。最高。最高の産物。」
18
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:15:27 ID:Q.JOBvVs0
ペアリング、という言葉をご存知だろうか?
いえ、アベックが交際数ヶ月で買い求める方ではなく。
フードペアリング。
お酒と相性が良い食べ物や、料理の事。
私はお酒が大好きだけれど、お酒と一緒に何かを楽しむのも大好きなのだ。
.
19
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:16:33 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「あー、高い酒と高い食材楽しむのサイコ〜」
最高の氷に、最高のウイスキー。
面倒な主人をツマミに最高の酒。
最高のペアリングかもしれません。
1.終
20
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:25:00 ID:Q.JOBvVs0
彼は、甘いものが切れると弱る。
強い時なんて、あまりないけれど。
.
21
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:25:37 ID:Q.JOBvVs0
(´・_ゝ・`)デミタス。屋敷の主人。甘党。金持ち。
(゚、゚トソン トソン。使用人。酒党。金好き。
.
22
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:26:34 ID:Q.JOBvVs0
庭の掃除は、割と好きだ。
この屋敷はだだっ広くて何も無いわりに、庭は木々や花々で賑やかだから。
今の時期は秋桜が綺麗に咲いている。
他の花壇を見る限り、春夏秋冬楽しめるようになっているのだろう。
小さいが、薔薇のアーチもある。
……私が雇われる前は誰が世話をしていたのだろうか。
柔らかい芝が踏まれる音がして、時計を確認したら14時半。
もうそんな時間か。
23
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:27:43 ID:Q.JOBvVs0
(´・_ゝ・`)「トソンくん、甘いものが食べたい」
だいたい自室にこもってるだけなのに、体内時計は正確な主人。
これが小さい子供なら微笑ましかったかもしれないが、相手は30を超えたオジサン。
微笑ましさも、可愛さも、全くない。
(゚、゚トソン「主人、甘いものが食べたいのなら良いものがあります」
(´・_ゝ・`)「お、作り置きでもあるのかい」
(゚、゚トソン「ジャジャン、砂糖です」
(´・_ゝ・`)「虫か」
(゚、゚トソン「砂糖は素晴らしいですよ。
つまみがない時、砂糖を舐め酒を飲み、塩を舐め酒を飲み…酒を永遠に飲んでいられます」
(´・_ゝ・`)「恐ろしいやつだなきみは…一度健康診断を受けた方が良い」
(゚、゚トソン「それは多分、主人もです」
24
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:28:38 ID:Q.JOBvVs0
庭掃除を一時中断して、屋敷内に入る。
掃除も私の仕事。主人の甘いものを作るのも私の仕事。
(゚、゚トソン「漠然と甘いものって言われましても…連日台風で買い物にも行けていませんからね。材料何かあったかな」
(´・_ゝ・`)「あっ、ゼリー食べたいなゼリー」
(゚、゚トソン「ゼリー。まだ夏抜けてませんね」
(´・_ゝ・`)「まだちょっと暑いし、糖分摂取でもしないと集中出来なくて」
集中。『仕事』をするにあたっての事だろう。
主人が自室にこもっているのは、『仕事』をするためだ。
25
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:29:25 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「今週は何でしたっけ」
(´・_ゝ・`)「今は翻訳家だよ」
(゚、゚トソン「主人、何ヶ国語わかるんです?」
(´・_ゝ・`)「えーと、5…?」
(゚、゚トソン「5だと何リンガルですか?タンバリンリンガル?」
(´・_ゝ・`)「何だそれ。ペンタリンガルだよ、確かね」
(゚、゚トソン「へー」
(´・_ゝ・`)「聞いておいてあんまり興味ないだろ、きみ」
26
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:29:57 ID:Q.JOBvVs0
2.プルプルしてればいいと思うな
.
27
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:30:48 ID:Q.JOBvVs0
この屋敷は、初めて入った人間は大体迷子になる位、広い。
私も初めて来た時は迷子になった。
正直このキッチンだって、私1人住めそうな程広いのだ。
こんなに広いのに使用人は私1人。
お菓子を作るのも私1人。
私がやらねば主人はずっと甘味を求め続ける。
金の為に、作らねば。
(゚、゚トソン「ゼリーは簡単です。お中元でいただいたカルピス。これを使います」
砂糖にでも漬けていた方がいいような主人だが、人望や繋がりは意外とあるらしく、私がこの屋敷に勤め始めた時にお中元の品々の片付けをさせられた。
酒類など好きに持って帰っていいとの言葉に我を忘れかけたけれど、食べ物も結構な量があり、消費期限との闘いの日々だった。
頂き物ということもあるけれど、極力食べ物を無駄にはしたくない。
28
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:31:42 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「私はアガー使用のゼリーが好きなのですが、屋敷にアガーがありませんので今回は板ゼラチンを使います」
(゚、゚トソン「主人の事ですから甘めの方が良いでしょう。カルピスは濃いめです」
(゚、゚トソン「原液でも喜ぶかもしれませんね」
(゚、゚トソン「混ぜます」グルグル
(゚、゚トソン「生クリームと卵を別のボールで」
(゚、゚トソン「混ぜます」 グルグル
(゚、゚トソン「……」グルグル
(゚、゚トソン「ネッテオイシイネルネルネル…」グルグル
(゚、゚トソン「おっといけない、年代がバレる」
29
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:32:24 ID:Q.JOBvVs0
ゼリーを冷蔵庫に大事にしまい、あるものを持ってリビングへ向かう。
糖分の切れかかった主人は少し元気がなくなってしまう。今もソファに深く沈んでいた。
(゚、゚トソン「主人、ゼリー固まるまで時間がかかります」
(´・_ゝ・`)「どれくらい?」
(゚、゚トソン「固まるまでです」
(´・_ゝ・`)「oh……」
(゚、゚トソン「それまでこれ食べててください」
(´・_ゝ・`)「わぁ、何これ」
(゚、゚トソン「揚げパスタです。私のおつまみ用に作ったので、全部食べちゃだめですよ」
(´・_ゝ・`)「あ、美味しい」ぽりぽり
(゚、゚トソン「でしょう」
30
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:33:17 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「翻訳家って、何を翻訳するんですか?」
私はあまり頭が良くない。というか、学がない。
そして変なプライドも無いので、疑問に思ったことはすぐポロっと聞いてしまう癖があった。
主人はそんな私を決して馬鹿にはせず、大抵、そうだねと一拍置いて答えてくれる。
(´・_ゝ・`)「小説、雑誌、歌詞、色々だね」
(゚、゚トソン「主人は何を?」
(´・_ゝ・`)「僕は今、小説を翻訳してるよ」
小説。
普段読書をしない私だが、何故だか少し興味を持った。
(゚、゚トソン「面白い話ですか?」
(´・_ゝ・`)「どうだろう、戦争を題材にした話だからなぁ」
(゚、゚トソン「せんそー系ですか」
(´・_ゝ・`)「うん」
31
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:33:55 ID:Q.JOBvVs0
ポリポリ。軽い音が跳ねる。
良かった、どうやら主人も気に入ったようだ。
先ほどよりは元気が出たようで、少し明るくなった顔で私を見ていた。
(´・_ゝ・`)「興味あるの?小説」
(゚、゚トソン「いえ…小説というか、主人が手掛けたものに興味があったので」
(´・_ゝ・`)「僕?」
君もどうぞと揚げパスタを差し出されたけど、仕事中ですので、と断る。つまみは酒と一緒でナンボです。
(゚、゚トソン「はい。主人は大の甘党である甘ちゃん野郎ですが、博識でいらっしゃいますし。
面白そうなものを手掛けそうだなと」
32
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:34:56 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「知り合いが作ったものって、愛着というか特別な感情があるじゃないですか」
(´・_ゝ・`)「…へぇ、そんなものか………今さりげなく僕のこと馬鹿にしなかった?」
(゚、゚トソン「おや、そろそろゼリー固まりましたかね。見てきまーす」
(;´・_ゝ・`)「こんな使用人、初めてだよ…」
(゚、゚トソン「……」
当たり前だけれど、やはり私が来る前にも使用人がいたのか。
主人の何気ない言葉を背に、私はまたキッチンへと向かった。
33
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:35:52 ID:Q.JOBvVs0
ぷるんぷるん。
運ぶ際、その身を揺らす、冷えたゼリー。
林檎のコンポートも添えて、彩りも良い。
(*´・_ゝ・`)「わぁ、凄いな。二層になってる」
(゚、゚トソン「案外、簡単なんですよ」
(´・_ゝ・`)「いただきます」
(゚、゚トソン「はーい」
スプーンでゼリーを優しく掬う。
ゼリーはプルプルと小さな反抗をしてみせるも、一口分ぽっかりと穴を開け主人の口へと運ばれて行った。
34
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:36:44 ID:Q.JOBvVs0
(*´・_ゝ・`)「うん、美味しいね。この林檎がまた、合ってる」
(゚、゚トソン「それは良かった」
(´・_ゝ・`)「ねぇ、トソンくんはどんな本読むんだい?」
(゚、゚トソン「私ですか?酒に関する書籍は大体目を通します。あとはそうですね…ファンタジーが好きです」
主人がわざとらしく噎せた。
(´・_ゝ・`)「意外だ」
(゚、゚トソン「物語くらい、夢のある話が良いので」
(´・_ゝ・`)「ふぅん」
35
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:37:44 ID:Q.JOBvVs0
ごちそうさま、と綺麗に完食した主人はまた部屋に戻って行った。
翻訳とやらはだいぶ大変なのだろう。特に戦争小説ともなると、多大な知識がなければ訳すのは難しそうだし。
人が死ぬような話は苦手だが、主人が訳したものとあれば。
(゚、゚トソン(読んでみても、いいかもしれませんね)
少しだけそう、思った。
36
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:38:21 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「さぁさぁ皆さんお待ちかね☆トソンのワクワク晩酌会のお時間です」
(゚、゚トソン「今日もよく働いた!頑張った私!」
(゚、゚トソン「今日はフッフッフ」
(゚、゚トソン「カルピスを使いましょうねぇ」
仕事終わりの私はいささかテンションが高い。
仕方ない。酒を飲めない状況というのは、おあずけを喰らった犬と同じだ。
職務を果たした私は『待て』を解かれた状態。涎が垂れても仕方がない。
37
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:38:56 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「まず先に、揚げパスタを作り直しましょうね」
(゚、゚トソン「全部食べるなっつったのに主人め、いつの間にか完食しおって…」
(゚、゚トソン「あっぶらあっぶらにパスタをズドン」
(゚、゚トソン「パチパチしてます。この音がまた美味しそうですよね」
(゚、゚トソン「油を切って塩胡椒のやーつとコンソメのやーつ」
揚げパスタは偉大だ。油とパスタがあれば出来るおつまみ。
なければ調味料だけで済むけど。
38
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:39:27 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「さて、主役を作りましょう」
(゚、゚トソン「今日の主役、カルピスさんとヒロインのビールさんの登場です。ヒュー」
(゚、゚トソン「出会って2秒の2人を混ぜます」
(゚、゚トソン『キャーイヤーナニー!?(高い裏声)』
(゚、゚トソン『ゲヘヘイイダロゲヘヘ(低い裏声)』
(゚、゚トソン「そして2人の愛の結晶、ダブルカルチャードが完成です」
(゚、゚トソン「何をしてるんだ私は」
(゚、゚トソン「やはり素面だと駄目ですね。酒だ酒だ、酒を飲むぞ」
39
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:40:17 ID:Q.JOBvVs0
(゚、゚トソン「林檎のコンポートとモッツァレラチーズも作ってあります」
(゚、゚トソン「実はこの林檎、赤ワインに漬けていたので彩りも豊かなのである」
(゚、゚トソン「モッツァレラも普通のスーパーではなく、お取り寄せしました。主人の金で」
(゚、゚トソン「あーあ、豪勢。豪華。最高の晩酌」
(゚、゚トソン「仕方ないんですよ、ビールもカルピスもお中元で腐る程頂いていて、腐らせてしまっては勿体無いですから。仕方ないんですよ」
(゚、゚トソン「では、いただきます」
40
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:42:40 ID:Q.JOBvVs0
ダブルカルチャードは簡単に作れるビアカクテルだ。
カルピスによってビールの苦味を抑えられてるので、苦手な方も結構飲みやすいはず。
甘苦い味わいなので、甘いおつまみもしょっぱいおつまみも合う。最高。
(゚、゚トソン「あー、カルピスは夏の風物詩。爽やか。夏はもう終わってるけど」
苦味だらけの小説も、主人の優しさが混じれば読めそうな気がする。
少しだけそう思ったけれど、明日には忘れてそうだ。
今日のペアリングも最高でした。
2.終
41
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 16:45:01 ID:Q.JOBvVs0
本日の投下は以上になります。
お正月ですが、お酒の飲み過ぎ、おやつの食べすぎにはご注意下さい。
ありがとうございました。
42
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 17:36:46 ID:c4PQ0n52O
ゆるい飯テロいいな
43
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 18:27:57 ID:MpmoZSlU0
揚げパスタうまそう乙
44
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 18:56:46 ID:kNa30W0w0
乙 今年は酒控えようと思ってたのになんてスレだ…… 来年から控えるか……
45
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 21:24:34 ID:3x.xzfJU0
こりゃいいな…
乙
46
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 21:31:49 ID:Wdfv3M2w0
体質的にアルコールダメだけど、甘いもの好きです。おいしあわせな食べ合わせ、期待してます!
47
:
名無しさん
:2018/01/02(火) 23:16:16 ID:yshFT/vY0
禁酒なうの俺が読むんじゃなかった
トソンのこだわり良いなぁ
48
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 08:50:43 ID:p1//NYd20
酒弱いけど久々に飲みたくなった
ベイリーズ+ホットミルクだけど
49
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:36:55 ID:Z1FMOz0U0
彼は、何でも出来る。
魔法の手を持っている。
彼は、料理が出来ない。
魔王の手を持っている。
.
50
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:37:39 ID:Z1FMOz0U0
3.芋栗南瓜が好きな奴は大体良い奴
.
51
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:38:17 ID:Z1FMOz0U0
(´・_ゝ・`)デミタス。偉い。甘いものが好き。
(゚、゚トソン トソン。偉そう。酒が大好き。
.
52
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:39:05 ID:Z1FMOz0U0
リビングの掃除をしていたら、玄関のチャイムが鳴った。
この家はチャイムの音まで何やら上品な気がする。
玄関まで遠いが、反射的にはぁいと大きな声で返事をして、小走り気味に向かった。
宅配便が届いた。
お中元しかり、この屋敷の主人はどうやら顔が広いらしく、色んな荷物が色んな所から届く。
それにしたって、今回の荷物は謎だ。
53
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:39:44 ID:Z1FMOz0U0
(゚、゚トソン「主人」
(´・_ゝ・`)「わぁ、びっくりした。あれ?もうおやつの時間?」
(゚、゚トソン「いえ、残念ながら。すみませんね、ノック何回かしたんですけど反応が無かったので『菓子無し死』してないか心配になりまして」
(´・_ゝ・`)「ああ、集中してたから気付かなかったよ。ごめんね……菓子無し死って何?」
(゚、゚トソン「そんなことより主人、手を貸してくださいませんか」
(´・_ゝ・`)「手?」
(゚、゚トソン「そう、それです」
自分の両手を、まるでオペを始めるように掲げる主人。
そのまま玄関まで連行。
54
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:41:48 ID:Z1FMOz0U0
(゚、゚トソン「こんな荷物が届きまして」
(´・_ゝ・`)「やぁやぁ、大きな荷物だ」
(゚、゚トソン「でしょう。流石にか弱くてか細いスレンダー美人の私1人では持てなくて」
(´・_ゝ・`)「流石に僕1人じゃツッコミきれないよ?」
(゚、゚トソン「私、箸より重いモノ持てませんからー」
(´・_ゝ・`)「お酒は?」
(゚、゚トソン「お酒は持ち物じゃなくて飲み物ですからー」
大きな箱の向こう側を持つよう、指示する。
僕に荷物持たせる使用人なんて…とかなんとかごちゃごちゃ言っていたけど気にしない。
主人は少しフラフラしながら、どうにか2人でリビングまで運んだ。
55
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:42:35 ID:Z1FMOz0U0
(゚、゚トソン「あら、これはまた立派な」
(´・_ゝ・`)「ああ、良いね。もうそんな時期なんだ」
ダンボールを開け、中に御坐すは大きな大きな南瓜とサツマイモ。そして、いっぱいの栗。
秋が箱に詰められてやってきた。
(゚、゚トソン「凄いですねこれ」
(´・_ゝ・`)「差出人は……ああ、なるほど」
(゚、゚トソン「?」
差出人を見た主人は何やら少し悲しげな顔して、小さく笑った。
56
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:43:17 ID:Z1FMOz0U0
『蛯沢でぃ』
ちらりと差出人を見る。
名前だけでは女性か男性かも判断がつかない。
主人と深い付き合いがあるのだろうな、と言うことだけぼんやりわかる。
南瓜の傍にあった手紙を読んで、また主人が悲しげに笑った。
(´・_ゝ・`)「……昔お世話になってた人でね、今は田舎に帰ってるんだけど、そこで採れる野菜をたまに送ってくれるんだ」
(´・_ゝ・`)「手紙に『お菓子ばかりではなくお野菜もちゃんと食べてくださいね』って書いてあるよ」
(゚、゚トソン「良い方ですね」
(´・_ゝ・`)「…うん。」
(´・_ゝ・`)「凄く、良い人なんだよ」
57
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:43:52 ID:Z1FMOz0U0
深くは聞き出さなかった。
興味が全くないといえば嘘になるが、人の過去をとやかく聞くものではない。
何かがあったにせよ、今こうしているその人が全てだと思うから。
しゅんと元気をなくした主人。
私が出来ることといえば。
(゚、゚トソン「じゃ、これでおやつ作りましょうかね」
(*´・_ゝ・`)「スイートポテトが食べたいな!」
ほら元気になった。
いやこれは流石に現金すぎるけど。
(゚、゚トソン「スイートポテトですね。昨日丁度良いものを買ったのでそれも使いましょう」
(´・_ゝ・`)「楽しみだなぁ」
(゚、゚トソン「おやつの時間までお待ちください」
58
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:44:34 ID:Z1FMOz0U0
大きな南瓜とサツマイモ、そして栗。
すっかり秋満載になったキッチン。
今回の主人公、サツマイモ様を両手に掲げ、いざ。
(゚、゚トソン「作りますか」
(゚、゚トソン「お芋は良いですね、素朴な感じが好きですよ」
皮を剥いて小さくし、水たっぷりの鍋に入れる。
結構な量があるから、サツマイモの天ぷらも良いな。明日の夕飯にしよう。
(゚、゚トソン「サツマイモの天ぷら蕎麦でポン酒を一杯……」
(゚、゚トソン「ぐへへ…」
(゚、゚トソン「あっいけない、涎垂れるとこでした」
59
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:45:13 ID:Z1FMOz0U0
(゚、゚トソン「ヘイ、マッシュしマッシュよ」
(゚、゚トソン「貴方たちに恨みがあるわけではありません…しかしこうしろと主人が…」
(゚、゚トソン『良いんだトソン、仕方ないよ……ぐぇぶ(裏声)』
(゚、゚トソン「ごめん…ごめんなさい芋たち…」
(゚、゚トソン「裏ごしをします」
家庭菜園で収穫したものとは思えないほど立派なサツマイモ。
とても綺麗な黄金色をしたそれを、一心不乱に潰す。
こういう力作業なら嫌いではない。
美味しい物のための苦痛は、終わった後の幸せを考えながら出来るので良い。
60
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:45:56 ID:Z1FMOz0U0
(゚、゚トソン「ホクホク系も好きですが今日はクリーミーでいきましょう。お芋本来の甘さを活かすために砂糖は無しで」
(゚、゚トソン「しっとりさせるためにバターと生クリームをヘイヘイヘイ」
(゚、゚トソン「色と香りを良くさせる卵黄とバニラオイルをヘイヘイヘイ」
(゚、゚トソン「丸めて丸めてオーブンでブン!ヘイ!」
芋栗南瓜は好きだ。テンションが上がってしまう。
昔はよくふかし芋をおやつに食べてたな。華美な装飾のないおやつだってご馳走だ。少なくとも、昔の私は。
今は調味料だってご馳走。酒のつまみになるのだから。
(゚、゚トソン「南瓜と栗はまた次に使いましょうね」
61
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:46:32 ID:Z1FMOz0U0
時間は15時。
焼きたてのスイートポテトを持ってリビングへ行くと、待ってましたと言わんばかりの主人がいた。
(*´・_ゝ・`)「やぁやぁ、良い匂いだ」
(゚、゚トソン「ずっとリビングで待ってたんですか?」
(´・_ゝ・`)「部屋に戻ろうかと思ったんだけど、そのまま篭っちゃいそうだったから」
(゚、゚トソン「主人はおやつの時間は絶対出てきますよ絶対」
(´・_ゝ・`)「……うんまぁ、僕もそう思う」
(゚、゚トソン「さ、どうぞ召し上がってください」
(*´・_ゝ・`)「いただきます…あっ、紫のもある!」
(゚、゚トソン「先日駅前で沖縄物産展をやってまして、丁度紅芋を買っていたんですよ」
(*´・_ゝ・`)「紫と黄色、うん、秋色だね」
62
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:47:27 ID:Z1FMOz0U0
焼きたてのものというのは大抵良い匂いがする。
中でも芋は格別だと思う。
焼き芋の匂いにつられ、車を何度追いかけたことか。
小さなフォークでスイートポテトの身を割る。
トン、カチャン。ふわり。
バニラオイルの優しい香りがした。
(*´・_ゝ・`)「美味しい」
(゚、゚トソン「それは良かった」
すっかり元気になった主人に、子供みたいだなと思う。
三十路を超えたいい大人だけれど。
高そうなコップに牛乳を注ぎ、主人に差し出す。
牛乳と芋の相性の良さを知らない人がいたら速攻で教えてあげたい。
芋と牛乳のまろやかオブまろやか、口の中の平穏状態。
ベストカップル、芋とミルク。彼らの仲人なら、喜んで引き受ける。
主人がコップを口にし顔を綻ばせたので、間違いはない。
63
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:48:13 ID:Z1FMOz0U0
(゚、゚トソン「主人、今は何をしてるのですか」
(´・_ゝ・`)「今はね、小説を書いてる」
(゚、゚トソン「小説を」
今回の彼の仕事は小説家だという。
先週は小説の翻訳をしていたが、今回は自ら小説を書いているのか。
もともとあるものを訳すのも難しいだろうが、一から話を作り出すのも大変だろう。
(´・_ゝ・`)「ファンタジーものを書いてるよ」
(゚、゚トソン「…主人は本当になんでも出来ますね」
(´・_ゝ・`)「よくわからないんだけどね、幼い頃から変に器用なんだ、僕」
(´・_ゝ・`)「やろうと思えば大体のことが出来てしまう」
64
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:48:54 ID:Z1FMOz0U0
(゚、゚トソン「それでしたらお菓子作りもしてみればいいのでは」
我ながらナイスアイデアだと思った。
この甘いもの大好きおじさんが自分でお菓子作りをするようになれば、私の仕事がだいぶ減る。
(´・_ゝ・`)「うん、僕なんでも出来るんだけどね」
パッと主人が明るい顔をした。
(´・_ゝ・`)「何故か、食べ物は作れないんだ。昔オムライスを作ろうとして、よくわからない物質が生まれてから、料理は禁止されてる」
だから無理!と元気に拒否をしてくる。
僕は食べるの専門だ、とでも言いたそうにスイートポテトの最後の一切れを口に入れた。
(゚、゚トソン「はぁ、使えな…いえ、難儀ですねえ」
(´・_ゝ・`)「使えないって言った?今使えないって」
(゚、゚トソン「まぁ、好きと得意は違いますからねえ」
好きだからといって出来るわけでも、得意だから好きというわけでもない。そんなことはよくある話。
(´・_ゝ・`)「うーん、そうだね」
65
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:49:26 ID:Z1FMOz0U0
それでも、料理以外は出来るという主人の小説。
前回の翻訳した小説は無理だったが、今回の小説は私の好きなファンタジーだというし。
(゚、゚トソン「今度」
(´・_ゝ・`)「うん?」
(゚、゚トソン「小説完成したら、読ませてください」
(´・_ゝ・`)「いいよ、少し恥ずかしいけどね」
(゚、゚トソン「そういうものですか」
(´・_ゝ・`)「うん。でもね、トソンくんがファンタジー好きって言ってたからさ。なんとなく書いてみよーって思って」
(゚、゚トソン「……そうですか」
(゚、゚トソン「秋の夜長、晩酌しながら読む本は楽しそうです」
(´・_ゝ・`)「…小説、汚さないでね」
66
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:49:59 ID:Z1FMOz0U0
届いた荷物を見た時は少し元気のなかった主人だけど、もうだいぶ回復したようだった。
『蛯沢でぃ』とは誰で、どういう関係なのか。私が聞けば主人は答えてくれるだろうか。
…けど、また先ほどのように悲しげに笑う彼に戻ってしまうのなら。
(゚、゚トソン(別に聞かなくてもいいか)
私もだいぶ、スイートポテトのように彼に甘くなっている気がする。
67
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:50:43 ID:Z1FMOz0U0
(゚、゚トソン「終わった!仕事!終わった!業務!」
(゚、゚トソン「アイムフリー!!」
両の手を広げ、天を仰ぐ。
そう、私は自由。業務時間が終了すれば全て自由。フリータイムの始まりである。
(゚、゚トソン「さて、ここにあるのはサツマイモ(黄)紅芋(紫)!!」
主人も言っていた秋色が、私の両手にあった。
この重さが尊く、愛おしい。
(゚、゚トソン「ちょっと落ち着きましょう私、大丈夫。お酒は逃げない。大丈夫」
夜、屋敷のキッチンは私の城になる。
者共であえであえ。今宵は芋を攻めるぞ。
68
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:51:25 ID:Z1FMOz0U0
(゚、゚トソン「例によって彼らはマッシュしマッシュ」
(゚、゚トソン「黄色い方はバターや生クリームは使いません、シナモンと卵黄、そしてまたマッシュマッシュ!」
(゚、゚トソン「揚げます。ええ、揚げスイートポテトです」
油を熱する。
夜中の揚げ物という背徳感抜群の言葉は、私をさらに興奮させた。
揚げ物に合う飲み物を知っているだろうか。
そう、酒である。
(゚、゚トソン「紫は牛乳を混ぜつつマッシュマッシュ!」
(゚、゚トソン「こちらは普通に焼いて胡麻をまぶします」
揚げ物でなくても、スイーツにも合う飲み物を知っているだろうか。
そう、酒である。
誰がなんと言おうと、酒である。
69
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:52:01 ID:Z1FMOz0U0
(゚、゚トソン「揚げスイートポテトにはこれです」
【芋】(゚、゚トソン「芋焼酎!」
(゚、゚トソン『芋芋しいわ、トソン!しかしそれがまたいい!(裏声)』
(゚、゚トソン「胡麻スイートポテトにはこれです!」
【泡】(゚、゚トソン「泡盛!」
(゚、゚トソン『一緒に物産展で買っておいたトソンくんに拍手!(裏声)』
(゚、゚トソン「私は今日、芋クイーンになる…」
(゚、゚トソン『ひゅー!!!(裏声)』
70
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:52:42 ID:Z1FMOz0U0
今日は2つもお酒を楽しむために夜ご飯は抜いておいた。
何かを得るには、何かを失わなくてはいけない。
こうかとうかん…とうかこうかん?なんでもいい。
(゚、゚トソン「芋焼酎、今日はロックにしましょうか」
(゚、゚トソン「ああ、芋に囲まれてる私。幸せ」
(゚、゚トソン「良い芋ですね、揚げるとまた美味しそうな匂いがします」
(゚、゚トソン「紅芋も綺麗な紫で」
(゚、゚トソン「では、いただきまーす」
(゚、゚トソン
71
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:53:25 ID:Z1FMOz0U0
(゚、゚トソン「あーーーー…なんくるないさぁ…」
食欲の秋、
読書の秋。
でも秋の夜長には、やっぱりお酒が1番だと思うんですよ。
どの芋も主張をし過ぎず、しかし遠慮もせず。
本日も良いペアリングでした。
.
72
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 16:56:02 ID:Z1FMOz0U0
本日分は以上になります。
禁酒中の方も、お酒が得意でない方も、
読みながらお酒を楽しんでる気になれたら、と思います。
ありがとうございました。
73
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 17:06:59 ID:PFY8gdsQ0
乙
スイートポテト食べたくなった
74
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 17:24:42 ID:A4cRqocQ0
乙
スイートポテトとか長いこと食べてないな
75
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 20:36:43 ID:RpbZdeeU0
乙
トソンの独り言ずっと楽しそうだな
76
:
名無しさん
:2018/01/03(水) 21:01:39 ID:zzTKCb.c0
甘味と酒っていう相反するものを交互に描写するのいいな
77
:
名無しさん
:2018/01/04(木) 17:32:57 ID:gv6aY6w20
タイトルそっちの意味か
乙
78
:
名無しさん
:2018/01/05(金) 00:55:47 ID:yS5wqgEM0
甘いものと酒って合うよなー
大福と日本酒とか食う人いるよね
79
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:14:12 ID:gveljbA60
彼はよく、サプライズのような事をする。
彼のその一つ一つが、私には宝物のようだった。
.
80
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:14:54 ID:gveljbA60
グラグラ、グツグツ、ふつふつ。
大きなお鍋の中で、沸騰したお湯が騒ぎ立てている。
急かされるようにグラグラと動く『それら』を見て、思わず笑みが零れた。
(゚、゚トソン「ふっふっふ…」
(゚、゚トソン「栗ご飯…渋皮煮…栗とサツマイモのコロッケ…」
(゚、゚トソン「ふっふっふ…」
(゚、゚トソン「ふーっふっふっふ!」
笑いが止まらない。
無理もない。
秋の味覚、栗が大きなお鍋いっぱいにあるのだ。
団栗ではなく、栗。
小さい頃、栗が食べたいとせがんだら、団栗があるでしょと言われてずっと団栗を食べていた事がある。
黒歴史だ。
栗。本物の栗。何にして食べようか。どの酒と飲もうか。
ああ、ああ、涎が。
81
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:15:34 ID:gveljbA60
(´・_ゝ・`)「何してるの?」
突然後ろからかけられた声に驚く。もうそんな時間か。
栗を煮ることに集中していたら、時間がだいぶ経っていた。
キッチンに主人が来るのは珍しい。
私を探してここまで来たのだろうか。
いや、私というより『私の作るおやつ』か。
(゚、゚トソン「主人。突然現れないでください、驚きましたよ」
(´・_ゝ・`)「嘘でしょ?眉ひとつ動かさなかったじゃない」
(゚、゚トソン「顔にはあまり出ませんが私は繊細ですので、小さな音にも心を痛めてしまうのですよ。騒がしいのとかマジ勘弁です」
(´・_ゝ・`)「僕、君が夜中にキッチンでお酒飲んで騒いでるの知ってるよ」
(゚、゚トソン「嫌ですね主人。それ、夢ですよ」
82
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:16:31 ID:gveljbA60
4.栗と団栗は似て非なる(味)
.
83
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:17:35 ID:gveljbA60
(´・_ゝ・`)デミタス。主人。塩と砂糖を遠目からでも見分けられる。
(゚、゚トソン トソン。使用人。酒と水を遠目からでも見分けられる。
.
84
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:18:44 ID:gveljbA60
ストン。
包丁で栗を切る。
茶色い渋皮の中は綺麗な黄色だ。
(´・_ゝ・`)「わぁ、すごいね!美味しそうだ」
(゚、゚トソン「ええ、こんなに綺麗なんて、びっくり〜ですね」
(´・_ゝ・`)「え?」
(゚、゚トソン「え?」
(´・_ゝ・`)「これ、何作るの?」
(゚、゚トソン「そうですね、まだ決まってないんですよ。びっくり〜ですが」
(´・_ゝ・`)「え?」
(゚、゚トソン「え?」
85
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:20:01 ID:gveljbA60
ちょっと今はこの栗の素晴らしさに夢中で主人に構っていられない。
ほくほくとお芋のように美味しそうな栗達。
どう活かしてあげようか。
私は可愛らしい所もある人間なので、『期間限定』に弱い。
栗だなんて『秋』にしか楽しめない物を、嫌いにはなれない。
けれど自分ではなかなか買ったりはしない。栗を買うならワンカップを買う。そんな私も嫌いではない。
そんな、甘く切ない関係である栗がこんなにたくさん、美味しそうな状態で目の前にあるのだ。
興奮などせずにいられるだろうか。いや、いられない。
主人の目など気にせず栗達に微笑みかける。
(゚、゚トソン「貴方達を何にしてあげましょうかねえ」
86
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:20:47 ID:gveljbA60
(´・_ゝ・`)「あっ、僕モンブランが食べたいな」
(゚、゚トソン「………えっ」
(´・_ゝ・`)「モンブラン」
(゚、゚トソン「………えっ?」
(´・_ゝ・`)「モンブラン」
(゚、゚トソン「山ですか」
(´・_ゝ・`)「ケーキの方」
速攻で決まった。
ええ、ええ。この栗は主人への贈り物ですから。主人に決定権がありますよ、ええ。
さらば栗ご飯。あなたに使う分は、大量のマロンペーストに生まれ変わるのだ。
87
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:22:06 ID:gveljbA60
(トソン)「……モンブランですね、わかりました……」
(;´・_ゝ・`)「そ、そんな顔しなくても…ていうか何がどうなってるのその顔…」
(トソン)「顔なんてただの飾りです…金持ちにはわからんのですよ…」
(´・_ゝ・`)「余った栗は好きに使っていいからさ」
(゚、゚トソン「今初めて主人が輝いて見えます、ああっ、眩しい…後光が…」
(´・_ゝ・`)「きみ、結構図太いよね」
(゚、゚トソン「よく言われます。なんでしたっけ、モンブラン。よしきた、たくさん余らせよ」
(´・_ゝ・`)「きみ、大物になるよ」
(゚、゚トソン「何を仰います。もうなってますよ」
88
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:23:29 ID:gveljbA60
リビングで待機していてくれと主人を送り出す。
キッチンは私の城であり、今から戦場と化するのだ。
危ないから、というか邪魔なので。
(゚、゚トソン「まず栗クリーム作りますよ、栗クリーム」
(゚、゚トソン「栗たちを潰して漉します」
(゚、゚トソン『た、助けてくり〜やめてくり〜(裏声)』
(゚、゚トソン「ふっ、大丈夫ですよ。あとの方々は潰したりしません」
(゚、゚トソン『な、なんだって〜命の恩人だ〜(裏声)』
(゚、゚トソン「あとの方々は栗ご飯にしますからね!」
(゚、゚トソン『ええ〜びっくり〜!(裏声)』
(゚、゚トソン「漉した栗と牛乳、砂糖を鍋で煮込んで〜」
グツグツという音すら、美味しそうに聞こえる。
今日の私は素面でもハイテンションだ。
89
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:24:23 ID:gveljbA60
ロ ⊂(゚、゚トソン「じゃん!ラム!羊じゃない方です」
ロ ⊂(゚、゚トソン「有るのと無いのじゃ大違いです、これ大事」
ロ ⊂(゚、゚トソン「これも入れます。飲みません、我慢します」
"ロ(゚、゚トソン
ロ(゚、゚トソン
ロ⊂(゚、゚トソン「我慢します」
トポポ。
ラムダークが良い匂いを振りまいて鍋の中へ入っていく。
アルコールを飛ばさなきゃいけないなんて。
ああ、悲しい。けど美味しい。美味しくなる為には仕方がない。
90
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:26:08 ID:gveljbA60
(゚、゚トソン「栗クリームは冷蔵庫で冷やして固めます」
作業工程が多いものほど、慌ただしくせず落ち着いて行動する。
私はテンションが上がりすぎるとあまり良くいった試しがないから。
(゚、゚トソン「その間にメレンゲを作ります」
(゚、゚トソン「それではチームメレンゲの皆さんに登場してもらいましょう!卵白さん、グラニューさん、アーモンプーさんです」
(゚、゚トソン「数回に分けて混ぜます。とにかく混ぜます。ひたすら混ぜます」
カシャカシャカシャカシャ
(゚、゚トソン「全ての料理に言えることですが、特にメレンゲを初めて作った人は何を思いながらひたすらに卵白を混ぜていたのでしょうね」
カシャカシャカシャカシャ
(゚、゚トソン「『メレンゲが出来る』という事実を知らなければ、卵白をひたすら混ぜ続けるこんな行為、やってられませんよ」
カシャカシャカシャカシャ
(゚、゚トソン「ふぅさっくり。これを丸ーい感じに絞って焼きます」
シボリシボリ
91
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:27:29 ID:gveljbA60
(゚、゚トソン「良かった、有りました」
このキッチンには、魔法の引き出しがある。
といっても食器棚を含め収納スペースはたくさんあって、まだ全部を確認出来てはいないけれど。
お菓子を作るのに必要な器具やら何やらは、大きな引き出しの中にきちんと保管されていた。
まぁ、主人は手作りの菓子が無いと萎れて消えてしまうだろうから、私が来るまで勤めていた人が買い揃えたのだろう。
今回もモンブランを作るのに必要不可欠なモンブラン口金を、魔法の引き出しから発掘した。
(゚、゚トソン「……私が来る前は誰が作っていたんでしょうかね」
(゚、゚トソン「……まぁいいか。モンブラン搾りましょう」
92
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:28:26 ID:gveljbA60
綺麗な薄黄色。
真ん中に一つ大きな栗を乗せたそれを持ってリビングのドアを開ける。
目があった主人の顔はパァっと光が射したように明るくなった。
糖分を見ると喜ぶ、パブロフの主人。
まぁ私はアルコールを見ると喜ぶのであまり人のことは言えない。
(゚、゚トソン「主人、モンブラン出来ましたよ」
(*´・_ゝ・`)「わぁすごいね、お店で売ってるやつみたいだ」
(゚、゚トソン「ありがとうございます」
(´・_ゝ・`)「前から思ってたんだけどさ」
(゚、゚トソン「はい」
(´・_ゝ・`)「トソンくん、料理の腕すごいけどシェフとかだったの?」
(゚、゚トソン
(゚、゚トソン「いえ。料理を作る機会が、わりと多かっただけですよ」
(´・_ゝ・`)「そうなんだねぇ、他の家事も上手だから、前職も使用人みたいな感じなのかと思ったよ」
93
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:29:35 ID:gveljbA60
栗に負けないくらいホクホクとした顔の主人は、話しながらもあまり私に集中してない様子だった。
目はモンブランしか見えていない。
(゚、゚トソン「…使用人という呼び方ではなかったですね…」
(´・_ゝ・`)「え?」
主人がモンブランから私へと視線を移した。
こほん。
(゚、゚トソン『おかえりなさいませぇ、ご主人様ァ(裏声)』
(´・_ゝ・`)
(゚、゚トソン「ここに来る前の前…?だったか、メイドさんしてましたよ…主人、どうしました鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」
(´・_ゝ・`)「………今の声どこから出して…びっくりした…」
(゚、゚トソン「そこですか驚くの」
(´・_ゝ・`)「………えっ、待って…前のとこでは普通に『ご主人様』って呼んでたの」
(゚、゚トソン「そこですか突っ込むの」
94
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:30:48 ID:gveljbA60
『メイドをやっていた』というところは気にしないのか。
そもそも主人は『そういうメイド』を知っているのだろうか。
(゚、゚トソン「…まぁ、とりあえずどうぞ召し上がってください」
(´・_ゝ・`)「はい、いただきます」
待ってましたと言わんばかりにフォークを握り、モンブランを小さく切る。
柔らかいクリームの中のメレンゲが、ホロリと崩れた。
(*´・_ゝ・`)「やぁ、美味しいなぁ。クリームがちょうどいい甘さだ」
(゚、゚トソン「……」
主人はそれ以上、私のことについて聞いてこなかった。
モンブランを楽しみたいが為に他の情報を排除したのかもしれないが、
むやみやたらと過去にベタベタ触れてこないところが有り難かった。
95
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:32:12 ID:gveljbA60
主人は黙々とモンブランを食べている。
まるで山登りをしてるかのように真剣な顔で。(少し緩んでいるが)
(*´・_ゝ・`)
何故甘味を求めるか。そこに甘味があるからだ。
アッサムをストレートで淹れる。甘い香り。
淹れてすぐに主人が飲もうとするも、紅茶の攻撃を食らったようで
あちと小さい悲鳴を上げて、ふぅふぅと息を送っていた。
(´・_ゝ・`)「ふぅ…ごちそうさまでした」
(゚、゚トソン「お粗末様でした」
(´・_ゝ・`)「あ、そうだトソンくん」
(゚、゚トソン「はい?」
(´・_ゝ・`)「これ、どうぞ」
表紙が存外しっかりとした、一冊の本を手渡される。
少しばかり厚い。表紙の絵は暖かみがあって、好きだ。
96
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:32:54 ID:gveljbA60
(゚、゚トソン「これは?」
(´・_ゝ・`)「この前言ってた僕の小説。出来上がったからさ」
(゚、゚トソン「え」
(´・_ゝ・`)「あれ、あげるって約束だったでしょ」
先日までの主人の仕事であった『小説』だ。
私が好きなファンタジー物を書いたと言っていた。
出来たら読ませて欲しいと私は言った。
ーーー丸々貰えるとは思っていなかったけれど。
(゚、゚トソン「あ。そう、でしたね」
97
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:33:35 ID:gveljbA60
(´・_ゝ・`)「どうしたの?」
(゚、゚トソン「…いえ、人から何かを頂くのは、…久しぶりでしたので少し驚きました」
(´・_ゝ・`)「ああ、サプライズだったかな」
主人は、静かに小さく笑った。
思いのほか優しい笑顔で、私もつられてしまう。
(´・_ゝ・`)「びっくりーした?」
(゚、゚トソン
(゚、゚トソン「はい。びっくりーしました」
特に凄い事をしたわけでも言ったわけでもないのに、本を抱えた胸が何故だか暖かくなった。
98
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:34:07 ID:gveljbA60
(゚、゚トソン「ふっふっふ…」
(゚、゚トソン「ふっふっふふっふっふ」
(゚、゚トソン「仕事終わりーましーた!」
(゚、゚トソン「明日は栗ご飯ですし、今日はプレゼントも貰いました!」
(゚、゚トソン「盆と正月が一緒に来たかのような!!素晴らしさ!!」
(゚、゚トソン「これで酒飲まなきゃおかしいって事で飲みますよ」
業務が終わればナイトフィーバー。
特に今日はいつもよりハイテンションでお送りしております。
99
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:34:54 ID:gveljbA60
(゚、゚トソン「今日の主役はこの方、そうですマロン様です」
(゚、゚トソン「メロンにメロメロ、マロンにはマロマロ」
(゚、゚トソン「主人のおやつの残り、モンブランがおつまみです」
冷蔵庫を開ける。
主人に作ったものよりは少し雑なモンブラン。
それでも高貴なオーラを放っている。モンブランは偉大なのだ。
(゚、゚トソン「よいしょっと」
このキッチンには魔法の引き出しがあり、そして秘密の扉もある。
床下収納だ。
扉を開けるたびに心が弾む。床の下は私の秘密基地。
そう、私がキッチンを任されてから、床下はお酒の保管庫その1になっている。
(゚、゚トソン「ブランデー様、今日は貴方に決めた!」
(゚、゚トソン「モンブランブランデー」
(゚、゚トソン「ブランブランですね」
100
:
名無しさん
:2018/01/12(金) 15:35:35 ID:gveljbA60
トクトクトク。
お酒を注ぐ音が好きだ。
もちろん注ぐだけじゃ済まないけれど。
(゚、゚トソン「なんて美しい、透き通った琥珀色…」
うっとりしてしまう。
自分のお金じゃ買えないような、手の届かないお酒様。
もちろん主人のお金で買ったのだけれど。
(゚、゚トソン「しかぁし!」
(゚、゚トソン「今日はそれだけでは終わりません」
そのままブランデーを楽しもうとしていた自分を叱咤し、再度栗と対面する。
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