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( ^ω^)運命と戦う仮面ライダーのようです part2

65223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:16:45 ID:iHA3g/GI0


 訓練所を出て到着した創作デパート。

 建物自体を外から見る限りでは、何の問題もないように見える。
 だが、建物の中より逃げ出したと思わしき多くの人々が、デパートをただ見つめている光景は異常だった。

 人込みを掻き分け、ドクオは建物の前にグリンクローバーを停める。
 そこには、モララーが乗っていたであろうレッドランバスも停めてあった。


('A`)「モララーさん…!」


 ヘルメットを外し、人々の注目を余所に一人デパートの中に入っていく。


 風除室の時点で、既に電気は消えていた。
 その奥に見える店内も、当然真っ暗。
 何も見えないわけではないが、不安が煽られる暗さだ。
 
 ましてや、この中にアンデッドがいるかもしれない。


(;'A`)「ッ……どこにいるんだよ……!」

(;'A`)「モララーさん!モララーさん!!」


 暗闇の中、大声でモララーの名を叫ぶ。



「……クオ……!」

65323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:17:10 ID:iHA3g/GI0


('A`)「モララーさん…?」

「ドクオ……!!下だ……!」


 はっきりと、モララーの声が聞こえた。
 その声は、崩れ落ち穴の空いた床を通して下の階から聞こえる。


('A`)「地下か…!」


 周囲を見渡し、頭上に光る緑色のランプを発見。
 瓦礫が落ち足場の悪くなった床を慎重に歩きながら、非常階段へと辿り着く。

 地下に繋がる階段をゆっくりと下り、一階より視界の悪い地下へと出た。


('A`)「モララーさん!!」

( ; ・∀・)「ドクオ…こっちだ……!」


 モララーがかざすスマホの光が、暗闇の中場所を示した。
 足元に注意を払いながらも駆け寄るドクオ。


「………」

「誰か来たぞ…!」


 その周囲に見える、逃げ遅れた人々の姿。
 ドクオの姿を見ると、救助隊ではないことにひどく落胆する人もいた。

65423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:17:57 ID:iHA3g/GI0


( ; ・∀・)「何故来た、とは言わない。お前を待たせておきながら、みっともないな……うっ!」

('A`)「モララーさん、腕にケガを…!」


 アンデッドに負わされた怪我だろうか。
 服を裂かれ、左腕からは血を流していた。
 モララーの背後には、庇ったであろう母と小さい女の子の親子が動けぬまま座っていた。


( ; ・∀・)「俺の心配はするな……それより注意しろ」

( ; ・∀・)「まだどこかにいるかもしれない、また現れる前にこの人達を逃がせ!」

('A`)「………はい」

( ^ω^)「モララーさん!ドクオ!」


 そこに、後から駆け付けたブーンの声が響いた。
 すぐに非常階段から下りてきたブーンは、ドクオ達のもとへ駆けつけようとする。

 だが、足元より現れた存在によって足止めを余儀なくされてしまう。


『コオオオオオオオオォォォッッ!!』

( ^ω^)「ッ!?」

65523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:18:22 ID:iHA3g/GI0


 床を突き破り現れたのは、以前取り逃がしてしまったモグラのアンデッドだった。
 
 そう、このデパートの崩壊はすべてこのアンデッドの手によるもの。
 デパートの内部を暴れ回り、多くの人々がいる中で存分に戦うことの出来ないギャレンをも追い詰めた張本人。

 そして今、再びその姿を現した。


( ^ω^)「アンデッド…!」

「きゃああああっ!!」

「ひいっ……!!」


 恐怖に怯える人々。
 ブーンはバックルを装着し、ゲートを射出しながらアンデッドへと突進した。


( ^ω^)「変身!」


    【 -♠TURN UP- 】


( OwO)「ドクオ!僕が抑えてる間に早く避難させるんだお!!」


 ブレイドに変身し、モグラのアンデッドを強引に押し出す。
 壁を崩壊させ、アンデッドが掘ったであろう空洞に突き抜けながら、人々の前よりその脅威を一時的に無くした。

65623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:19:14 ID:iHA3g/GI0


( ; ・∀・)「今のうちだ、ドクオ……頼む!」

('A`)「は、はい!」


 恐る恐る、モララーが背後に匿っていた親子に手を差し伸ばす。


('A`)「こ、こっちです…!俺が地上まで案内します!」

「あ…ありがとうございます…!」

('A`)「よしよし……もう大丈夫だからな、お兄ちゃん達が助けてあげるから…」

「うん…!」


 女の子を抱え上げ足場の安定した場所に立たせ、母親の手を握り身体を支えるドクオ。
 スマホのライトで足元を照らすよう指示すると、また別の人物のもとへと手を伸ばす。


('A`)「歩けますか?」

「はい…!」

('A`)「こっちです、もう大丈夫ですよ!」

「ああ……ありがとう!本当にありがとう!」


 老いた男性からは、手を握られながら感謝を。
 ドクオに助けられた人々が皆、頭を下げながら感謝の言葉を述べていく。

65723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:19:47 ID:iHA3g/GI0


 地下で動けない人々は、ドクオの手によって次々と助けられた。
 残るは、モララーを除き奥のほうに見える一人だけ。


('A`)「待たせてすみません!今から――」

「……ドクオ……!」

('A`)「………!!」


 ドクオの名を紡ぐのは、一人の男性。
 その顔がはっきりと見えた途端……ドクオの差し伸べたはずの手が、引き戻された。 
 

('A`)「お前は……」

( ;´ー`)「……そうだよ。お前を昔いじめてた、白根だよ」

(;'A`)「ッ……!」


 そこにいたのは、ドクオが苛まれ続けてきた忌々しい過去を作り出した張本人。
 白根と名乗るその人物は、小学や中学に渡って、いじめ集団のリーダー格として動いていた。

 ドクオの中に、トラウマが蘇り始める。


( ;´ー`)「ドクオ……俺のことなんて助けたくないだろ?だから助けなくていい」

(;'A`)「なに……?」

( ;´ー`)「そのかわり……聞いてくれ」

( ;´ー`)「ドクオ、本当に悪かった…!」

65823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:20:21 ID:iHA3g/GI0


( ;´ー`)「俺、お前に散々ひどいことしたよ。今更謝ったって許されるとは思ってない」

( ー )「けど……俺、ずっとそのこと後悔しながら生きてきたんだ!
    お前に、謝りもしないでのうのうと過ごしてきたこの時間……お前のことを忘れたことはなかった!」

('A`)「………」

( ;ー;)「本当にごめんな…!俺がバカだった、愚かだったよ…!これは俺への天罰だと思ってる!
     今更お前にとっちゃムカつくよな……遅すぎるよな……」


 涙を見せながら、ひたすら謝り続ける。
 そんな白根を見つめるドクオは、拳を握り締め、歯を食いしばり……今までの怒りを露にした。


(# A )「ッ……当たり前だろ!!!」
     
( ;ー;)「ぐすっ……」

(# A )「俺は……俺はお前らのせいで、この長い時間ずっと苛まれ続けてきたんだ!!
    俺みたいな人間に価値なんかないって、俺みたいなのが頑張ったって……報われないって!」

(# A )「俺みたいな人間は、誰にも感謝されず……誰かを助けることが出来るような人間じゃないって……!
    そうやってずっっっと思い続けてきたんだよ!!お前らにその気持ちが…今更分かってたまるか!!」

(# A )「ッ……けどな……!!」



(#;A;)「ぐすっ…俺みたいな人間を、見捨てずに……向き合ってくれる人がいるんだよ!
     俺みたいな人間でも、やれば出来るって……お前が必要だって言ってくれる人がいるんだ!!」

( ; ・∀・)「……ドクオ……」

(#;A;)「……ここでお前を助けなきゃ、俺は変われない」


 言って、ドクオは引いた手を再び差し伸べる。

65923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:20:54 ID:iHA3g/GI0


( ;ー;)「っう……本当に悪かった!ドクオ…許してくれ…!」


 泣きながら、白根はドクオの手を掴んだ。
 ゆっくりと立ち上がり、ポケットからなにやら取り出す。


('A`)「……早く行けよ」

( ´ー`)「待ってくれ……これ、受け取ってくれ」

('A`)「??」


 一枚の紙切れ。
 折りたたまれながらも、くしゃくしゃになった紙。
 めくると、そこには電話番号らしき数字が並んでいた。


( ´ー`)「いつかお前に逢った時の為にと思って、長い事持ち歩いてたんだ」

( ´ー`)「みんな俺と同じ気持ちなんだよ……だから、ちゃんと全員で謝らせてくれ!
    そして、やり直そう…!あの時を、ちゃんとやり直させてくれ!」

('A`)「………」


 今までずっしりと、重たいものが圧し掛かっていた心が、一気に軽くなった。
 心の中に差し込んでいた光は大きな光となり……あたたかい光が、広がっていた闇を包み込んだ。




('∀`)「……ああ!」


 無意識に湧き出る笑顔。
 互いに笑いながら、力強く握手をする。

66023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:21:16 ID:iHA3g/GI0


 白根と共に地上に上がると、表にはたくさんの人々が拍手で二人を迎えた。
 先に逃げ出していた人や、ドクオに救助された人々。

 たくさんの人達の笑顔に、感謝に溢れていた。


「よかった…!本当によかった!」

「君、すごいよ!ありがとう!」

「助けてくれてありがとうございました…!」

('A`)「い、いえ……」


 誰かを助けて感謝される喜びを知らないドクオは、困惑すら覚えた。
 けれど、胸にあたたかく広がる嬉しさ、喜びは確かなものだった。
 
 最初に助けた親子の母がドクオに近付き、深々と頭を下げる。


「本当にありがとうございました…!あの、お名前は…?」

('∀`)「……無事でよかったです!」


 名を語らず、ドクオは再び建物の中に戻る。

 未だ地下で負傷したままのモララーのもとへ戻り、今度こそモララーを助けた。

66123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:21:55 ID:iHA3g/GI0


('A`)「これで全員です!」

( ・∀・)「ドクオ……強くなったな」

('A`)「……いえ、俺一人だったらあいつに謝られてもきっと許せなかった」
 
('A`)「モララーさんや、ブーンが……俺に気付かせてくれたからです」

( ・∀・)「そうか……なら、何をすればいいか分かるな?」

('A`)「分かってます……俺は――」


 ポーチよりレンゲルバックルを取り出す。
 カードを装填し、バックルを腰に装着。

 曇りのない、真っ直ぐな瞳が、モララーを見つめる。


('A`)「俺は戦います!人を守る、仮面ライダーとして!」

( ・∀・)「そうだ……お前ならやれる!行け!」

('A`)「はい!!」


 大きく頷き、ドクオは走り出す。
 突き破れた壁の奥に広がる闇の中へ。
 けれど、怖くは無い。

 ドクオの頭の中に浮かぶ、人々の笑顔。感謝の言葉。
 みんなの笑顔が、眩しいくらいに輝いて見えた。


('A`)(俺は守りたい……あの笑顔を)

('A`)(みんなの笑顔を、光を守りたい…!!)

66223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:22:43 ID:iHA3g/GI0

 ――――――
 ――――
 ――


( ; OwO)「ぬうううッ!!!」

『シュウウウゥゥッ…!』


 その奥では、モグラのアンデッドと戦うブレイドの姿が。
 アンデッドの顔面に備わったドリルの放射攻撃を受け、防ぎながらも押されていた。
 大きな右手で側面を殴打され、吹き飛ばされる。


( ; OwO)「うぐっ…!」


 そこに、己の戦う目的を見出した、新たな戦士が現れる。


('A`)「ブーン!!」

( OwO)「ドクオ…!」


 アンデッドを前にしても怯まぬ姿勢。
 腰に光る金色と紫のバックル。鳴り響く待機音が与えるのは、もう絶望ではない。希望だ。


( OwO)「仮面ライダーとしての使命、お前にも背負えるようになったみたいだな!」

('A`)「どうかな……まだ俺にもわからない。でも……!」





('A`)「俺は、仮面ライダーとしてみんなの笑顔を守りたい!!」

66323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:24:22 ID:iHA3g/GI0


 ♪レンゲル、天地を揺るがし - https://www.youtube.com/watch?v=OsZlNyvhAjI


 両手をパッと前面に構える。
 右手をゆっくりと下げ、変身の構えを取った。


('A`/)「変身!!」



    【 -♣OPEN UP- 】


 強く叫び、両腕をクロスすると勢いよく下げた。
 開いたバックルより射出するゲート。紫色の光が辺りを照らす。
 
 接近するゲートを見つめるドクオの脳内に、一つの言葉が過ぎる。

 "あなたのお名前は?"

 その答えは、ドクオにとって単純なようで複雑。
 一体自分が何者なのか、それすら分かっていなかったことに気付いた。
 思い出に怯え、一歩を踏み出せず、自分などありもしないくせに、仮面ライダーになりたがっていた。
 


('A`)「けど……今なら、俺は自分の名を堂々と言える!」

('A`)「俺は三葉ドクオ!そして……仮面ライダー……」

(#'A`)「仮面ライダー、レンゲルだ!!!」

66423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:24:44 ID:iHA3g/GI0


 ゲートがドクオの身体を包み込み、レンゲルへと変身させる。
 レンゲルのスーツを纏った両手を力強く握り締め、地を駆けた。


( #OHO)「うおおおおおおおおおおおおッッ!!!」


 腰に提げたレンゲルラウザーを掴み、シャフトを伸長。
 ブレイドに襲い掛かるアンデッドの後頭部を、すべての力を乗せ叩き込んだ。


『ゴギャアウゥッ!!』

( OHO)「大丈夫か!?」

( OwO)「へっ……お前に心配されなくても、僕の方が慣れてるお!」

( OHO)「……そうだったぜ、先輩!」


 差し伸べられた手を掴まず、意地を張り素早く起き上がった。

 拳をぶつけ合うブレイドとレンゲル。
 親友として過ごしてきた二人の関係は、レンゲルを通して崩れかけてしまっていたかのように思われた。
 しかし、無視をせず取り乱し、自分に辿り着いたことで、ブーンとの絆は再び堅く結ばれた。


( OwO)「行くぞ!」

( OHO)「おう!」


 アンデッドに立ち向かう二人。
 モグラのアンデッドは、ドリルを放射し二人の動きを牽制。
 すると、地面を掘り起こしまたも姿を隠してしまった。

66523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:25:23 ID:iHA3g/GI0


( ; ・∀・)「……ドクオ、剣藤…!」 


 腕を抑えたままのモララーが、崩壊した壁を跨ぎ現れた。
 二人との距離を取り、戦いを眺めている。
 
 ギャレンへ変身しようと思えば出来た。
 だが、腕を負傷したまま戦ったところで足手まといになるだけ。
 二人を信じていればこそ、その決断が出来た。


( OwO)「ドクオ、足元も頭上も注意しろお!」

( OHO)「っ……」


 どこから襲い来るか分からない。
 周囲を隈なく警戒する二人。

 しかし、こちらから見えずとも、モグラのアンデッドは二人の存在を地中の中から察知出来る。
 背中を向けているつもりはなくても、アンデッドにとって背後を取ることは容易だった。


『コオオオオッッ!!』

( ; OHO)「うああっ!?」

( OwO)「ドクオ!!」


 背後を取られ、左手に装着した大きな盾で背中を斬りつけられた。
 モララーのもとへと吹き飛ばされ、地面を転がる。


( ・∀・)「ドクオ!大丈夫か!?」

( OHO)「大丈夫です…!こんな程度じゃやられねぇ!!」

66623話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:25:50 ID:iHA3g/GI0


 地面を叩き起き上がり、手放してしまったレンゲルラウザーを拾い上げる。
 強く握り締め、諦めずにアンデッドに立ち向かうレンゲル。


『フシュウウッ!』
 
( OHO)「ふッ!どりゃあっ!」


 再び放たれるドリル攻撃。
 目の前から接近するそのドリルが、スローで接近する野球の球に見える。
 放たれたドリル全てをレンゲルラウザーで払い落とし、怯むことなく突き進む。


( OHO)「うおおああァッ!!」


 振るいながらしっかりと持ち直し、距離が縮まったアンデッドを尖端の三枚刃で斬りあげた。
 

( OwO)「ふあッ!」

『ググウウゥッ!?』


 ブレイドとレンゲルの波状攻撃。
 レンゲルが大振りな一撃で斬りつけては、ブレイドが懐に入り細かな斬撃を繰り出す。
 アンデッドの背後に回ったレンゲルが背中を叩きつけては、ブレイドは剣を思うままに振り続ける。

 肩を並べる二人。目の前のアンデッドに向け、同時に蹴りを放った。


( OwO)「はあッ!!」

( OHO)「うおおりゃああッ!!」

『コシュウウウゥゥッ…!!』

66723話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:28:01 ID:iHA3g/GI0


 同時に蹴りを受け、アンデッドは尚強く吹き飛ばされる。
 二人の攻撃を受け、アンデッドは弱っている。
 トドメを刺すなら、まさに今が好機。


( OwO)「今だドクオ!」

( ・∀・)「やれ!!」

( OHO)「……よし!」


 ブレイドとモララーに促され、ドクオはカードケースから三枚のカードを引き抜いた。
 縮小したレンゲルラウザーを逆手に持ち、後端のラウザー部分にラウズする。


    《-♣4 RUSH-》 《-♣5 BITE-》 《-♣6 BLIZZARD-》

          《-♣BLIZZARD BREAK-》 


 ラウズしたカードが紋章となり、力となりてレンゲルの身体に宿る。


( OHO)「はっ!!」

『ググッ!?』


 伸ばした手から吹雪を繰り出し、アンデッドの身体を氷結させ動きを封じる。
 両足に冷気を纏いながら、駆け足でアンデッドに向け接近。
 高々と跳躍し、向ける両足から冷気を噴出。
 氷結状態のアンデッドを更に冷気で包み、生み出した氷解の中に閉じ込めた。


( #OHO)「ウオオオラアアアアアァァッッ!!!!」


 "♣4 RUSH"で強化された突進力と"♣5 BITE"で強化された脚力。
 ばたつかせるように動かす両足で、氷を強引に砕きながらアンデッドに強烈な二段蹴りを叩き込んだ。

66823話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:28:31 ID:iHA3g/GI0
 

『グコオオオオオォォッ!!』


 迫り来る蹴りをただ氷の中で見ることしか出来なかったアンデッド。
 ようやく動けた時には、既にレンゲルの必殺技を受け吹き飛んでいる最中。
 
 地面に叩きつけられ転がった後、モグラのアンデッドは起き上がらない。
 ぐったりと倒れたまま、アンデッドのバックルが左右に展開された。


( OHO)「はぁ……はぁ……倒した、のか……?」

( OwO)「そうだお!倒したんだ、お前の意志で!」

( OHO)「……やった……!」


 拳を突き出し、喜びを露にする。
 自分の意志で、自分の戦い方でアンデッドを倒した。その事実が、嬉しくてたまらなかった。


( ・∀・)「ドクオ!ライダーは、倒したアンデッドを封印するものだ」

( OHO)「……でも、俺……モララーさんからカードを奪おうとしたりして……」

( ・∀・)「何言ってんだ!お前が倒したアンデッドだ、お前の手で封印しろ」

( OwO)「ほら、早くやれお」

( OHO)「……分かった」

66923話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:29:41 ID:iHA3g/GI0


 二人に促され、ドクオは引き抜いたカードをモグラのアンデッドに向け投擲。
 倒れたアンデッドの身体に突き刺さったカードが、みるみる吸収を始め瞬く間に封印した。

 レンゲルの掌中に帰還したカードには、"♣3 SCREW"と記され、モグラの絵が描かれた。


( OHO)「ブーン、それにモララーさん……」

( OwO)「ん?」

( OHO)「……ありがとうございました!」


 二人を交互に見渡し、頭を下げる。
 そんなレンゲルに近付き、モララーは肩を叩いた。


( ・∀・)「浮かれるのは早いぞ」

( OwO)「そうだお。覚悟は決まったのか?」

( ・∀・)「お前にはこれから、アンデッドと戦う辛い日々が待ち受けている。それに臨む覚悟は出来たのか?」

( OHO)「はい、覚悟は出来てます」


 ブレイドとレンゲルの変身を解く二人。
 もとの姿に戻り、三人はそれぞれ向かい合った。

67023話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:30:59 ID:iHA3g/GI0


('A`)「俺も戦います。レンゲルとして、人を守るために!」

( ・∀・)「お前には仲間がいることを忘れるな。俺達が、共に戦う仲間だということを」

('A`)「……はい!」

( ^ω^)「じゃあ、三人でこれやっときますか?」


 笑顔を見せながら、ブーンは拳を突き出す。
 それを意味するものが分からず、ドクオとモララーは顔を見合わせた。


( ^ω^)「ライダーが三人揃ったんだから、結束のグータッチだお!」

( ・∀・)「……よし!」


 ブーンが突き出す拳に、モララーが拳を合わせた。


('A`)「ええ……?随分臭いことさせるな。……でも」

('∀`)「そういうの嫌いじゃないぜ!」


 言って突き出す拳。
 三人の拳が合わさり、それぞれ頷く一同。

 こうして、カテゴリーAの邪悪な力を乗り越え、ドクオはレンゲルを自分のものにする事が出来た。
 
 全てのライダーの力は揃った。
 世に蔓延るアンデッドを全て封印する……いつかその日が来るまで、ブーン達はこれからも戦い続ける。

67123話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:31:40 ID:iHA3g/GI0





     【 第23話 〜輝く勇気〜 】 終




.

67223話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:32:10 ID:iHA3g/GI0

=========

 【 次回予告 】 https://www.youtube.com/watch?v=Yyh12l21WkA


ミセ*゚ー゚)リ「私達は他のアンデッドの姿を借りる力なんて持ってないわ。それはカテゴリー2も同然」

ミセ*゚ー゚)リ「それなのに……何故かしらね??」

(; ゚д゚ )「姿は確かにカリスだった……俺が間違えるはずもない」


 ミルナと接触するミセリ。
 謀略のため、再び動き出す。


ミセ*゚ー゚)リ「人間どもが作ったライダーシステム、それと同じものだとしたら?もしくは――」

ミセ*゚ー゚)リ「――あいつの正体が、"ヤツ"だとすれば……?」

67323話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:33:31 ID:iHA3g/GI0


 人間をアンデッドへと変貌させてしまう上級アンデッドが出現。
 アンデッドと孤独に戦う、一人の男と出会う。


( ^ω^)「死んだ人をアンデッドに変化させる力…!?」

(,,^Д^)「そうだ。奴は何らかの力を殺害するときに送り込み、亡骸をアンデッドとして操っている」

(,,^Д^)「ここ最近動き出したアンデッドで間違いない。あんな力を持つアンデッドは他にいない」

('A`)「そんな……じゃあ、そのアンデッドを野放しにしとけば被害者がこれからもたくさん……」

(,,^Д^)「そういうことだ」

( ・∀・)「何故そんなことを君が知っているんだ?君は何者だ?」

(,,^Д^)「……人を守るのはお前達仮面ライダーに任せる。俺は一人で奴を追う」

67423話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:33:57 ID:iHA3g/GI0


 ミルナと対峙するクー。
 カテゴリーAのカードを奪われ、その真実が明るみになる。


(; ゚д゚ )「まさか……あの女の言っていたことは、本当だったのか……!?」

川 ゚ -゚)「貴様……」

(; ゚д゚ )「……お前は何者だ?怪しいとは思ったが、そもそもその姿もカテゴリー2のものだ!」

(; ゚д゚ )「カリスの姿を借り、カテゴリー2の姿をも借りたお前は何者だ!!
     他のアンデッドに変身出来る力……お前が……お前が本当に"ヤツ"なのか!?」

川 ゚ -゚)「………」

67523話 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:35:46 ID:iHA3g/GI0


 そして、戦う力を失くしたクーを救うべくブーンが立ち上がる!

    。
ミミ/ ゚王゚)『フッ……人間がアンデッドを守り、またアンデッドも人間を守る。か……。
      まさかお前が人間に媚びを売り生き残ろうとするヤツだったとは、呆れたぞ!』

( ^ω^)「クーは……自分がアンデッドと知りながらも、家族のように接してくれるみんなを心から愛している!」

( ^ω^)「自分が守りたいと願ったものを命懸けで守ろうとしてる。その素晴らしさに、人間もアンデッドも関係ない!!」

( ^ω^)「アンデッドの使命に苦しみながらも、変わることが出来たクーを僕は守りたい!」

( #^ω^)「だから……そんなクーを蔑むようなことは、僕がさせない!!」

川 ゚ -゚)「………お前……」
    。
ミミ/ ゚王゚)『この戦いの中で愛など語るようなアンデッドに、勝たせるわけにはいきませんね!』
 

 人間とアンデッド……時には傷つけ合い、相容れなかったブーンとクー。

 今こそ、二人は力を合わせることが出来るのか!?



 次回、【 第24話 〜大切なもの〜 】


 ――今、その力が全開する!


==========

676 ◆7MnOV.oq7w:2018/01/28(日) 11:38:46 ID:iHA3g/GI0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話
>>605 第23話

677名無しさん:2018/01/28(日) 11:55:40 ID:YyYvT.WY0

ドクオかっけえよお

678名無しさん:2018/01/28(日) 19:48:40 ID:F.b.KnK.0
乙!

679名無しさん:2018/01/29(月) 01:38:00 ID:nQGUhrtM0
第2ラウンド来てたか!
おつ!今から読む

680名無しさん:2018/02/04(日) 11:16:20 ID:2qbBk9dg0
( OwO)…今日は来ない…?

681名無しさん:2018/02/05(月) 03:46:50 ID:rQ/S9e2k0
この文量を欠かさず毎週とはいかんか

682第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:08:19 ID:jvu.zAqQ0





     【 第24話 〜大切なもの〜 】




.

683第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:08:51 ID:jvu.zAqQ0


 夜の街、人で賑わう大きな交差点。
 青の信号の合図と同時に、歩道の人溜まりが一斉に道路へと歩き出す。
 交差点の中心にあっという間に出来る人込み。
 その中に、人の姿をした人ならざる者の姿もあった。


ミセ*゚ー゚)リ(さて、次はどんな手を打とうかしら……)

ミセ*゚ー゚)リ(……そういえば、あのアンデッドは今だ健在なのかしら。気配すら感じないけれど、一体どこに……)


 次なる策を考えている。
 自分の手を汚さず、他者を利用するやり方を。
 そのためなら、どんな面をすることも厭わない。

 ミセリが紛れ込む人込みの中には、"同じ"者がもう一人いた。
 そいつは、ミセリの対向側より歩いてくる。


( ゚д゚ )「――おい」

ミセ*゚ー゚)リ「……あら」


 流れる人込みの中、逆らうように動きが止まる。
 交差点の中心で、二人は向かい合った・

684第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:10:52 ID:jvu.zAqQ0


ミセ*゚ー゚)リ「この間はありがとう、邪魔してくれて」

( ゚д゚ )「偽りの話で俺を欺こうとした分際で、何を偉そうに」

ミセ*゚ー゚)リ「ふふ、私よりカリスを信用してるみたいね?」

( ゚д゚ )「お前などと比べるのも虫唾が走るくらいにな」

( ゚д゚ )「裏でこそこそと手を回し、汚いやり方で勝ち残ろうなどと……自分を恥ずかしいとは思わないのですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「ごめんなさい、私はあなた達のように誇り高き戦士ではないの。
      カテゴリーQだからと言って虎女と一緒にされても困るもの」

ミセ*゚ー゚)リ「そんなことより……また新たな疑問が生まれたわ」

( ゚д゚ )「聞くつもりはありませんよ。次カリスに手を出せばお前を真っ先に付け狙う」


 ミセリの横を通り過ぎようとするミルナ。
 だが、不本意にもその足は止められることとなる。


ミセ*゚ー゚)リ「♥のカテゴリー2。あなたも知ってるわよね?」

( ゚д゚ )「……何?」

ミセ*゚ー゚)リ「あれはカリスじゃないと言った私の話を信じないのは勝手だわ」

ミセ*゚ー゚)リ「でも……」



ミセ*゚ー゚)リ「あの女の姿――カテゴリー2の姿から、何故カリスに変身出来るのかしら?」

( ゚д゚ )「――!!」

685第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:11:43 ID:jvu.zAqQ0


ミセ*゚ー゚)リ「私達は他のアンデッドの姿を借りる力なんて持ってないわ。それはカテゴリー2も同然」

ミセ*゚ー゚)リ「それなのに……何故かしらね??」

(; ゚д゚ )「姿は確かにカリスだった……俺が間違えるはずもない」

ミセ*゚ー゚)リ「カテゴリー2の説明はどうつけるつもり??」

(; ゚д゚ )「……何が言いたい?」

ミセ*゚ー゚)リ「人間どもが作ったライダーシステム、それと同じものだとしたら?もしくは――」

ミセ*゚ー゚)リ「――あいつの正体が、"ヤツ"だとすれば……?」

(; ゚д゚ )「ッ……!……まさか……ありえない……!」

ミセ*゚ー゚)リ「どうかしらね?ありえない話でもないと思うけれど」

(; ゚д゚ )「……俺がこの目で確かめる。手出しはしないでください」

「「!?」」


 冷静を保っていたミルナに、戸惑いの色が見え始める。
 背中に生える翼。
 骨と化した翼を羽ばたかせ、ミルナは空へと舞い上がった。


ミセ* ー )リ「………ふふ、もちろんよ」


 静かに不敵な笑みを浮かべ、無数の花びらに包まれる。
 僅かに吹く夜風に乗り、ミセリもまた交差点から姿を消した。

686第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:12:11 ID:jvu.zAqQ0


 同じ夜空の下、別の場所での事。
 

「ハハハハハ!お前それマジか!」

「マジだよ、やべえだろ!?」

「やべぇなそれ!」


 夜の街を歩く三人の若者。
 いかにも不良らしさを主張した服装、髪型、そして態度。
 向かいから人が歩いているにも関わらず、横一列に並び避けようともしない図々しさ。
 配慮のない大声での会話や笑い声は、周囲の人の視線を悪い意味で集め、避けられていた。

 人の目など気にもせず、我が物顔で立ち振る舞い続ける。
 ぶつかりそうになってもお構いなし。ぶつかれば、弱そうな相手を威嚇するだけ。
 
 そんな三人の前に、また一人近付いて来る。


「でよぉ、アイツが見たときには――」



 ドンッ!


 
「って……!」

687第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:12:39 ID:jvu.zAqQ0


「チッ、おい待てコラ!」

「おいおい何ぶつかってんだよてめぇ!」


 一人に対して三人がかりで責めかかる。
 まくし立てながら、ぶつかった相手の肩を掴み強引に振り返らせる若者。


(,,^Д^)「………」


 振り返った顔を見ると、どうやら相手も男のようだ。
 だが、若者たちの威嚇に臆する様子もなく、ただ静かに三人を見つめる。


「おい、ぶつかったんだから謝罪くらいさっさとしろやボケ!」

「怪我してたらどうすんだよ?ああ?金払えや金!!」

(,,^Д^)「………」

「何ダンマリ決め込んでんだ?なめてんのかてめぇ!!」

 
 男の胸倉を掴み、更に脅しをかける。
 それでも男は微動だにせず、見開いた若者たちの目を見続ける。

 そして、口を開いた。


(,,^Д^)「お前達」

「んだコラ?」

(,,^Д^)「気を付けろ、狙われてるぞ」

688第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:13:17 ID:jvu.zAqQ0


「はあ?何言ってんだてめぇ!」

(,,^Д^)「お前達が襲われないことを祈るよ」

「うおっ!?」


 胸倉を掴む手を強引に払い、男は走り去る。
 男が残した謎めいた言葉に、若者たちは怒りを忘れ困惑。


「何だあいつ?」

「頭おかしいんじゃね??」


 あっという間に姿を消した男の背を見ながら、小馬鹿にした言葉を漏らす若者たち。
 後を追う気も失い、再び正面を向き歩き始めようとした。

 だが、謎めいた男の言葉の意味を、すぐに思い知る事になる。



「おい、なんかいるぜ?」

「あ?」


 街灯が薄く照らす道路。
 その薄い明かりに照らされた何かが、目の前から迫ってくる。

 遠目からでも見て分かるのは……黒光りした身体と、全身を覆う爪のような飾り。
 微かに聞こえてくる、荒い呼吸。

 そして、腰に煌く金色のバックル。

689第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:13:51 ID:jvu.zAqQ0


彡,,   彡『フー……フー……』

「……おい、何かコスプレっぽくなくね?」

「だよな……声かけてみるか?」

「マジかよ!ちょっとやばくねぇか…?」

「大丈夫だろ!ちょい行ってみるわ」


 身の程を知らない人間が、異形の者に近付く。
 自分より背丈も身体も大きい相手に向かい、顔を覗き込みながら語りかける。


「おい、こんな時間に何そんなもん着てウロウロしてんの?迷惑考えろや!」

彡,,   彡『フウー……フウー……』

「聞いてんのかよコラァ!!」


 片手を伸ばし、その複雑な形をした胸板を突き飛ばす若者。
 しかし、突き飛ばした痛みを負ったのは相手ではなく、自分の手。


「いって!……は??」


 掌を見ると、突き飛ばした時に当たった装飾部分の形がくっきりと、切り傷として残った。
 血が滲み、血液が溢れ出す。

 そして、目の前の存在から感じる違和感。途端、感じたことのない恐怖に襲われる。


「………」


 ゆっくりと、恐る恐る顔を見上げる。

690第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:14:32 ID:jvu.zAqQ0

  (
彡,,メ皿゚彡『ガルアアアアアアアアアッ!!!』


 異形の咆哮。
 人ではないその声、その存在をようやく把握し、恐怖に陥る若者たち。


「うおおおぉぉっ!?」

「ばっ、化け物…!!」
  (
彡,,メ皿゚彡『哀れな人間共…!恐怖を知らぬ愚か者共め!!』


 目の前の若者の首を掴む。
 人外の力が喉をきつく締め付け、伸びた爪が肌を突き破りそうな程に食い込む。
 口を開き、狼が如く鋭い牙を見せ、露にした若者の喉元に食らいついた。


「ひっ……!た、たすけ……ぎゃあああああああッッ!!」

「ッッ……!!!」


 断末魔の叫び。
 肉が破れ、血が迸る生々しい音が薄暗い夜に響く。
 喉元を食い破られ、息絶えた若者は道路に投げ捨てられる。

  (
彡,,メ皿゚彡『だが……』

「うっ…うわああああああ!!!」

「はっ、はっ、はっ……死にたくない、死にたくない……!」
  (
彡,,メ皿゚彡『傀儡となる貴様等に、恐怖など知る必要はない!』

691第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:15:09 ID:jvu.zAqQ0


 仲間の残酷なる死を目の当たりにし、一目散に逃げ出す若者たち。
 先程までの勢いや傲慢さは無く、死を前にして生にしがみつき恐怖に震える愚か者へと変貌する。
 

「誰か助けてくれー!!」

「誰か!化け物が――」
  (
彡,,メ皿゚彡『ガアアッ!!』

「がっ――」


 走る若者の頭上を飛び越え、すれ違いさまに喉を掻っ切った。
 鋭い爪は、頚動脈など諸とも断ち切る程喉を深く斬り裂き、若者は血を噴出させながら倒れた。
 

「ああああああっ!いやだ、いやだいやだいやだ!!助けてくれええええッ!!」


 一人取り残され、パニックに似た衝動に駆られる。
 諦めかけている自分。それでも生きたいと願う自分を捨てきれず、涙で顔を濡らし失禁しながらも助けを請う。

  (
彡,,メ皿゚彡『死ね!そして俺のために蘇れ!!』


 しかし、無情にも若者の胸を貫く鋼鉄の右手。
 骨を砕かれ、内臓をも引きちぎられた。

 アンデッドに命乞いなど不毛なこと。
 今宵、一体のアンデッドによって三人の若者の人間としての生涯は、無惨な最期と共に閉ざされた。

692第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:15:45 ID:jvu.zAqQ0

 ――――――
 ――――
 ――


 アンデッドの反応を聞き付け、三人のライダーが現場に到着した。
 ブルースペイダー、レッドランバス、グリンクローバーが立ち並び、それぞれの運転者がバイクより降りる。

 だが、時すでに遅し。
 これまで人がアンデッドに襲われてきた中でも、悲惨な光景が薄明かりの下広がっていた。

 肉が散らばり、臓器が見え、血は飛び散っている。


( ; ^ω^)「ッ……ひどすぎる……!」

( ; ・∀・)「…………」


 アンデッドに襲われた人の姿は一番見てきたであろうモララーでさえも、思わず言葉を失ってしまう光景。
 耐え切れず、ドクオは口を抑え嘔吐しそうになる自分を抑えた。


(;'∩`)「うっ……おええっ!!」

( ・∀・)「目を逸らすな!これがアンデッドだ……その目で現実を見ろ」

(;'A`)「ッはぁ…はぁ……、はい……」


 ブーンとモララーは、静かに目を閉じそっと掌を合わせた。
 グロテスクな光景に思わずえずいてしまったドクオも、込み上げてくる吐き気を堪えながら掌を合わせる。

 
( ^ω^)「サーチャーが捉えた反応は、♥のカテゴリーJだった。一体どんな上級アンデッドなんだ……」

( ・∀・)「これまでの傾向だと、上級アンデッドは目的がない限り人を襲わないはず」

( ・∀・)「けど……この殺し方に目的があるようには見えない……」

693第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:16:30 ID:jvu.zAqQ0


(;'A`)「……そ、そろそろ、連絡すべきとこにしましょうよ。警察とか――」


 ドクオが言いかけたその時。


「うっ……」

( ・∀・)「!?」

(;'A`)「な、なんだ!?」


 突如、緑色に発光を始める目の前に転がる遺体達。
 同時に、死んだはずの遺体が意識を取り戻し、呻きに似た声を上げ始めた。


「うううううううう……ッ!!」

「ぐうう……ガ……ガルル……!」

( ; ^ω^)「!?!?」


 発光する遺体の身体が、生まれ変わったかのように瞬時に変化。
 人の色を保っていた肌は灰色にくすみ、服越しでも分かる程に筋肉が膨張。
 小さな口は裂かれたように大きくなり、開いた口から見える、生え並ぶ狼の如く牙。
 頭や腕は毛で覆われ、手には鋭い爪が伸びる。

 人ではなくなった三つの遺体は、新たな生を受け蘇る。
 ゆっくりと立ち上がり、赤黒く大きな瞳が不気味に蠢き目の前の獲物を睨んだ。
 
 まるで、狼人間のような姿。
 死んだ人間が、狼人間となり蘇ったのだ。


( ; ^ω^)「死んだ人が……アンデッドになったのか……!?」

694第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:16:50 ID:jvu.zAqQ0


「ウギャアアアアアッ!!!」

「アオオオオォォォォンッ!!!」


 疑問を余所に、アンデッドらしき化け物に変貌してしまった人間はブーン達に襲い掛かる。
 雄叫びを上げ、遠吠えのような声を張り上げ、三体は同時に動き出した。


('A`)「来る!!」

( ・∀・)「考えるのは後だ!迎え撃つぞ!」

( ^ω^)「どうなってんだお……!」


 揃ってバックルを取り出す三人。
 ありえないことが起きているが、今更ありえないと驚いてばかりでは詮無き事。
 戸惑いを抱きながらも、手に持ったバックルにカードを装填しようとした。


「ギェアアアッ!!」

「グギャアアッ…!」

('A`)「今度はなんだよ!?」


 しかし、三人に襲い掛かろうとした狼人間は、何者かの手によって動きを止められた。
 どこからか響く、銃声らしき音。
 狼人間に被弾したのか、撃たれたと思わしき箇所からは緑色の血を噴出させ、三体の狼人間は悲鳴をあげながら地面に倒れた。

 狼人間が倒れ見通しの良くなった目の前。
 そこに、拳銃らしきものを構えた人間が立っていた。

695第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:17:44 ID:jvu.zAqQ0


(,,^Д^)「大丈夫か?」

( ^ω^)「え……」

(,,^Д^)「さっきの奴ら……化け物の兵隊と化してしまったか」


 先刻、若者の集団に因縁をつけられていた男だ。
 銃を下ろし、狼人間となってしまった亡骸に歩み寄るとしゃがみ込みその身体を撫でた。


( ・∀・)「なんだ、君は」

(,,^Д^)「俺のことなんかより、怪我はないのか?」

( ^ω^)「は、はい……僕達は全然――」

( ・∀・)「君はなんなんだ?この状況の何を知っている?」


 ふと、ブーン達が手に持ったままのバックルに男の目はとまった。


(,,^Д^)「……!それは……仮面ライダーのベルト……!」

(,,^Д^)「そうか……お前達が仮面ライダーだったのか」

( ・∀・)「聞いているのか?俺の問いに答えろ」

(,,^Д^)「ああ…すまない、俺の名はタカラ。お前達が仮面ライダーなら話は早い。
      お前達に話さなければならないことがある」

696名無しさん:2018/02/25(日) 10:17:57 ID:p6SPU4NI0
おーおーおー!第2ラウンド来てるじゃんかよ!

697第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:18:37 ID:jvu.zAqQ0

 ―――――
 ―――

 
 警察が現場に到着し、辺りはたくさんの赤い明かりに照らされた。
 狼人間へと変わってしまった亡骸は発火し、服のみを残して消滅してしまった。
 モララーが仮面ライダーであることを警察に告げると、ブーン達は事なきを得たようだ。

 現場から少し離れた場所で、タカラと名乗る男の話に三人は耳を傾けていた。


( ^ω^)「死んだ人をアンデッドに変化させる力…!?」

(,,^Д^)「そうだ。奴は何らかの力を殺害するときに送り込み、亡骸をアンデッドとして操っている」

(,,^Д^)「ここ最近動き出したアンデッドで間違いない。あんな力を持つアンデッドは他にいない」

('A`)「そんな……じゃあ、そのアンデッドを野放しにしとけば被害者がこれからもたくさん……」

(,,^Д^)「そういうことだ」


 タカラの話に、真剣に耳を傾けるブーンとドクオ。
 だが、モララーだけは違った。


( ・∀・)「何故そんなことを君が知っているんだ?君は何者だ?」


 むしろ、アンデッドについて詳しいタカラの正体を怪しんだ。
 人間に擬態する能力を持つ上級アンデッド。
 目の前のこいつも、アンデッドの可能性は高い……そう睨んでいた。


(,,^Д^)「………」

( ・∀・)「答えられないのか、なら信用は出来ない」

698第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:20:05 ID:jvu.zAqQ0


 答えを出し惜しむタカラだったが、ついにその口を開いた。


(,,^Д^)「……俺の家族は、奴に殺された」

( ^ω^)「……!」

(,,^Д^)「そして、奴は俺の家族を俺の目の前で………あのアンデッドと同じ姿にした……!」
 
( ・∀・)「………」

(,,^Д^)「最近よく報じられる化け物の件は知っていた。だが、信じてなどいなかった。
      そんなものは、退屈な世の中に誰かが流し込んだ真っ平な嘘だと……」

(,, Д )「だが………嘘じゃなかった……!忘れもしない、九ヶ月程前……化け物は俺の前に現れ、両親や妹を殺した!」

(,, Д )「化け物になってしまった家族を撃ち殺す感覚が、光景が……脳裏に焼きついて離れない!」


 腰に提げた、特異な形状をした拳銃を手に取るタカラ。


(,,^Д^)「この銃は、BOARDに携わっていたある女から譲り受けた銃だ。
      普通の銃ではない。アンデッドを倒すことの出来る特殊な銃弾を扱った銃だ」

( ・∀・)「BOARDに携わっていた女……?」

(,,^Д^)「俺は復讐を決意した……この手で、俺の家族を殺したあのアンデッドを倒すと!」

(,,^Д^)「……人を守るのはお前達仮面ライダーに任せる。俺は一人で奴を追う」

699第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:21:16 ID:jvu.zAqQ0


( ^ω^)「待ってください」

(,,^Д^)「……?」

( ^ω^)「タカラさん……その決意を止めるような真似はするつもりはないですお。でも……」

( ^ω^)「僕達と共に、戦ってくれませんかお?」

( ・∀・)「剣藤!?」

('A`)「お前何言ってんだ!?生身でアンデッドと戦うなんて危険だろ!」

( ^ω^)「わかってる。だから僕達と一緒に戦うんだお」

(,,^Д^)「……どういうつもりだ?」

( ^ω^)「分かりますお。大切なものが奪われそうになった時の悲しみや怒り……。
      タカラさんはそれを奪われてしまった、それ以上に深い怒りも悲しみを抱えてるでしょう」

( ^ω^)「でも、もしその復讐を果たして……その先に待ってるものに、一人で耐え切れますかお?」

(,,^Д^)「そんなことどうでもいい!俺はただ、家族の仇を取れればそれで…!」

( ^ω^)「仇をとっても、タカラさんが元気で生きていなきゃご家族は浮かばれない!」

( ^ω^)「確かにライダーの力は、アンデッドに対向出来る大きな力です。でも一番重要なのはライダーの力じゃないんです!
      共に戦う仲間がいなければ……一人だけで戦い抜くことは出来ない!」

( ^ω^)「行動を共にしろとは言いませんお。けど、タカラさんの力になりたいんです。
      アンデッドに果敢に立ち向かうタカラさんの力も、僕達には必要だって感じてます」

(,,^Д^)「………何故、俺にそこまで肩入れしようとする?」

( ^ω^)「人間なら、当然のことですお」

700第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:21:49 ID:jvu.zAqQ0


( ・∀・)「………確かに、君一人でアンデッドに対峙させるのは危険だ。
      それにその銃、BOARDが関係していると言ったな?なら尚更見過ごすわけにはいかない」

(,,^Д^)「………」

('A`)「あの……意外といいもんですよ、こう言ってくれる人がいるってのは」


 それまで強張っていたタカラの表情が、一気に緩んだ。


(,,^Д^)「……ふっ、ライダーの力を持っていながら俺みたいな小さな力が欲しいのか。ライダーってのも、存外大したことないんだな」

( ^ω^)「そんなもんですお」

( ・∀・)「力が全てじゃない。戦いを通して学んだよ」

(,,^Д^)「いいだろう、そこまで言うなら手を貸してやる。
      だが俺は俺の行動をする、あのアンデッドも俺の手で倒す。それだけは忘れるな」

( ^ω^)「はい!」



(,,^Д^)「まったく……お人良しな奴らだ。その甘さが命取りになることだってあるぞ」

( ・∀・)「俺達はともかく、剣藤は人を信じている。どれだけ自分が馬鹿を見ても」

( ・∀・)「百回嘘をつくような人間より、百回騙されて馬鹿を見る人間の方が俺は好きだな」

(,,^Д^)「………」

701第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:22:09 ID:jvu.zAqQ0





 ―――――




.

702第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:22:37 ID:jvu.zAqQ0


 翌日。朝を迎えた栗沢家でのこと。

 
从'ー'从ノシ 「行ってきま〜す!」

(#゚ -゚)ノシ 「行ってきまーす」

川 ゚ -゚)「行ってらっしゃい」

(´・ω・`)「気を付けて行くんだよー」


 ショボン達に見送られながら学校へ向かう渡辺達。
 最近はでぃも小学校へ通うようになり、子供として失われていた時間を取り戻しつつあった。
 今では姉のような存在でもある渡辺と一緒に、毎日学校へ通うのが当たり前だ。


(´・ω・`)「ふう……」


 子供達を学校に向かわせ、今日も一息。


川 ゚ -゚)「食器洗ってきます」

(´・ω・`)「ああ……ありがとう」


 家の中に戻っていくクーに、ぎこちない返事。
 先日の一件から、クーとの距離を無意識に置いてしまっている。

703第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:23:24 ID:jvu.zAqQ0


 以前から、クーの謎めいた外出や行動には疑問を抱いていた。
 けれど、それは触れてはならないと自分に言い聞かせていた。
 正体など知らずとも、今が幸せだったからだ。

 しかし、アンデッドという化け物が世に存在することを知った今。
 クーの口から、アンデッドという言葉を聞いてしまった今。
 あの謎が深まる会話を聞いてしまった今では、クーの正体を知る必要がある。

 ショボンは、意を決していた。


(´・ω・`)「………」


 リビングに戻って見えるのは、食器を一枚一枚丁寧に洗うクーの姿。
 カウンターテーブルの前に立つショボンに、クーが気が付いた。


川 ゚ -゚)「……どうかしましたか?」

(´・ω・`)「……いや、その……」

川 ゚ -゚)「あの、今日の昼頃なんですが――」

(´・ω・`)「クー」

川 ゚ -゚)「?」

(´・ω・`)「答え難ければ答えなくていい。ただ、聞きたいことがある」

川 ゚ -゚)「はい」





(´・ω・`)「………君は、何者なんだ?」

704第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:24:35 ID:jvu.zAqQ0


(´・ω・`)「ごめん、この間聞いてしまったんだ。君がスーツを着たお客さんと話していること……」

川 ゚ -゚)「……!」


 食器を洗う手がピタリと止まった。
 目が露骨に泳ぎ出し、戸惑っているのが分かる。


(´・ω・`)「僕達も被害にあったけど、アンデッドって化け物が関係してるのかい?
      君はアンデッドについて何を知っているんだ?あの化け物と君は何の関係があるんだ?」

川 ゚ -゚)「………それは……」

(´・ω・`)「一万年前、って……どういうことなんだ?」

川;゚ -゚)「………」


 とうとう核心に迫られた。
 隠し続けてきた事実に触れられそうになって、はじめて焦りが生まれる。
 
 本当の姿を暴かれたら、居場所を失う。
 愛するこの家には、もう居られなくなる。
 

(´・ω・`)「答えられないのかい?」

川 ゚ -゚)「………買い出し行ってきます」


 質問を濁らせる行為ほど、疑惑を深めさせるものはない。
 しかし、今のクーにはこれが精一杯の避け方だった。

 食器とスポンジをシンクの上に置き、泡だらけの手をそのままにリビングを出た。

705第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:25:00 ID:jvu.zAqQ0


(´・ω・`)「待ってくれクー!」


 クーの後を追って外へと出る。
 それでも足を止めず無言を貫きバイクへと跨るクーの前に、ショボンが立ちはだかった。


(´・ω・`)「頼む、クー。僕はただ真実が知りたいだけなんだ!君が何者でも構わない!」

川 ゚ -゚)「………」

(´・ω・`)「僕は……いや、あまねやでぃだってそうだ。みんなクーを信用してる。
      クーは僕達の大事な家族だから!」

(´・ω・`)「だから頼むよ、せめて僕には本当のことを話してくれ!」

川 ゚ -゚)「………でも」


 本当のことを話せば、切り捨てられるのが目に見えている。
 自分がアンデッドであることを知れば、その事実を隠し通してまで大事にしてきたものが全て壊れてしまう。
 
 ショボンを信じたいけれど、怖い。怖くてたまらない。
 全てを失う恐怖から、クーは答えられずにいた。







「よしましょうよ、無理に答えを聞き出そうとするのは」

706第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:25:55 ID:jvu.zAqQ0


 割ってはいるように声が聞こえる。
 ショボン達が視線を向けた先に、その男はいた。


(´・ω・`)「あなたは……あの時の?」

( ゚д゚ )「彼女、答えたがっていないじゃないですか」

川 ゚ -゚)「貴様、何の用だ……!?」


 ミルナだ。
 眼鏡を一本の指で上げながら、ショボンに不敵な笑みを見せる。


(´・ω・`)「……すみません、今大事な話をしてますので――」

( ゚д゚ )「その必要はない。あなた達に知る義務はありません」


 眼鏡を外すミルナ。
 同時に、人に擬態する異形の正体をショボン達の前で露にした。 

    。
ミミ/ ゚王゚)『カリスの正体が何なのか……答えを知るのは俺だけでいい!』

(;´・ω・`)「ッ……アンデッド……!?」

川 ;゚ -゚)「貴様ッ……ぐうっ!」


 バイクから降り掴み掛かろうとしたクーを、鈎爪の背で殴打し弾き飛ばす。
 そして、驚いたまま身体を硬直させるショボンの後ろ首を掴み、鋭い眼光で睨み付けた。

    。
ミミ/ ゚王゚)『人間とは不思議な生き物ですね。共存すべき命と共に過ごそうとはせず……ふっ!』

(´ ω `)「うっ……!」

707第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:26:26 ID:jvu.zAqQ0


 ショボンの腹部に叩き込まれる膝。
 瞬時に気絶こそしないが、痛みにうずくまるショボンをミルナは軽々と肩に抱え上げる。


川 ;゚ -゚)「ショボンさん!!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『カリス、俺を追ってください。あなたが来るのを待ってます』

川 ;゚ -゚)「待て!どこへ行く!?おい!!」


 翼を羽ばたかせ、宙に浮き空を飛翔する。
 見上げるクーに背を向け、そのまま何処かへと飛び去って行ってしまった。


川 ;゚ -゚)「チッ…!」


 再びバイクに乗り直し、アクセルを踏む。
 まるで追って来いと言わんばかりに放っているミルナの気配を、強く感じる。
 

川 ゚ -゚)(何の真似だ、あのアンデッド……!)

川 ゚ -゚)(カテゴリーA……約束を交わしたと言うカリスに関係があるのか?)

川 ゚ -゚)(いや、そんなことより今はショボンさんを……!)


 ヘルメットを被り、気配に導かれながらバイクを走らせる。
 
 自らがアンデッドでありながら、抱く感情の不可思議さに疑問を抱くこともない。
 たとえ罠であろうが何であろうが、ショボンを助ける。
 
 ただ、その想いだけがクーを動かした。

708第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:26:50 ID:jvu.zAqQ0

 ――――――
 ――――
 ――


 クー達が一悶着起こす少し前に時間は遡る。
 この日もブーン宅には、三人のライダーが集っていた。
 ブーンとドクオが隣合わせに座り、テーブルを挟んで向かいにはモララーが座っている。
 
 テーブルの上に並んでいるのは、トランプとラウズカード。
 中央に並べられたトランプのカテゴリーに合わせ、三人が持つラウズカードが並べられている。


( ・∀・)「まず、カテゴリーA。このカードの力でライダーに変身することが出来る」

('A`)「ふむふむ」

( ^ω^)「ふむふむ」

( ・∀・)「それ以外のカードは、ラウズすることで効果を発揮するものばかりだ。
      このカテゴリー2は武器の威力を強化し、カテゴリー3は腕力を強化する。カテゴリー4は自分の動きを強化するもの」


 カテゴリーを指差しながら、各カテゴリーごとの能力を説明しているようだ。


( ・∀・)「カテゴリー5は脚力、俺達がトドメとして愛用してるカードだな。
      カテゴリー6は属性をもたらす力を持つ。このカードを軸にして戦うことも多いだろう」

('A`)「ふむふむ」

( ^ω^)「ふむふむ」

( ・∀・)「カテゴリー7は、剣藤が前に使ったな。物質の特性を得ることが出来る。
      カテゴリー8は敵の動きを抑制する力を持ち、カテゴリー9は高速移動や分身と言った戦闘力の補助だ」

('A`)「ふむふむ」

( ^ω^)「ふむふむ」

( ・∀・)「……剣藤は聞かなくてもいいだろ?」

( ^ω^)「いやぁ何となくで使ってたから、改めて聞くとなるほどな〜って感じですお」

709第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:28:47 ID:jvu.zAqQ0


( ・∀・)「そしてカテゴリー10、超能力的な力を得ることが出来る」

( ^ω^)「カテゴリー10って使ったことない……ていうか持ってないお」

('A`)「………俺は持ってる」

( ・∀・)「そうだ。特にこの、♣のカテゴリー10」


 トランプのカテゴリー10に合わせて並べられた、"♣10のREMOTE"。
 封印されたアンデッドを解放し操ることが出来るという、危険過ぎる力を持つ。


( ・∀・)「このカードについては、もうお前達も理解してるよな?」

( ^ω^)「はい……もう散々でしたお」

(;'A`)「……すみません」

( ・∀・)「カテゴリーごとの能力はこんなものだ、使い方は追々覚えればいい。
      だがドクオ、お前は特に気を付けろ。このリモートの力だけは安易に使うな。いいな?」

(;'A`)「はい……あの、二人が封印した上級アンデッドの力は?」

( ^ω^)「ああ……これか」

( ・∀・)「ラウザーのポイントがチャージされるだけだ、今のところはそれ以外使い道はない」


 ブーンは♠のカテゴリーQを、モララーは♦のカテゴリーJを手に取る。

710第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:30:13 ID:jvu.zAqQ0


('A`)「そうなんですか……じゃあ、カテゴリーAは一体なんで俺に♣のカテゴリーKを封印させようとしたんだ?」

( ^ω^)「♣のカテゴリーK……!?また新しいカテゴリーKが現れたのかお!?」

('A`)「あ……いや、その」


 ブーンはまだ知らない。ヒッキーが♣のカテゴリーKであるという事実を。
 思わず口が滑ってしまい、しどろもどろになる。


( ・∀・)「……けど、戦いを忌み嫌う変わったアンデッドだったな。そういうアンデッドは、今は無理に構う必要はない」

(;'A`)「そ、そうですね!」

( ^ω^)「へえ……まるでモスみたいなアンデッドだな」


 モララーの機転が効いてか、話は何とか上手く収まった。
 ドクオは一息つき、胸を撫で下ろす。


('A`)「……俺にも上級アンデッド、倒せますかね?ブーンはまた新しい上級アンデッドに逢ったんだろ?」

( ^ω^)「逢ったけど……何だか良く分かんないお。クーさんと関係してるのか何なのか。
      人間を好んで襲うようなことはしないアンデッドというか……何かこう、紳士的なアンデッドだったような」

( ・∀・)「上級アンデッドは確かに強い、無理に戦いに挑んだところで危険だ。そう焦らなくていい」

('A`)「でも、倒せるようにならないと……じゃないと足手まといになっちゃうし、ブーンだけに任せるのは……」

( ・∀・)「大丈夫だ。剣藤は強い」

( ・∀・)「お前はカテゴリーAに操られ……俺は恐怖心に負け、ライダーシステムの弊害に呑み込まれた。
      けど剣藤は最初からライダーシステムを使いこなし、アンデッドとの融合係数も高い」

( ・∀・)「俺達にはない力が、剣藤にはあるんだろう」

( *^ω^)ヾ「フ……フヒヒwwそう言われると照れるお」

711第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:31:12 ID:jvu.zAqQ0


('A`)「はは、まったく頼りにしてるぜ」

( ^ω^)「お前も頼りにしてるお」

d('A`)「おう、任せとけ。こう見えて俺はヒーローの素質があるっておばあちゃんに言われながら育ってきたんだ」
 _
( ゚∀゚)「すぐ調子に乗るんじゃねーよバカ」

('A`)「おばあちゃんが言っていた…ってやつだよ!知ってるだろ?カブトムシのヒーロー!」

('∀`)/ 「俺もああなりてぇな〜、こう手をかざしてクールに決めてさぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなことしなくても、もうドクオはみんなのヒーローよ」

(*'A`)「えっ…?そうかい??お、俺がみんなのヒーローなのかい??」
 _
( ゚∀゚)「ヒーローなんだからもっとみんなのために頑張ってくれないとなぁ?」

( ^ω^)「そりゃそうだ、ヒーローはみんなのために頑張るもんだお」

(*'A`)「お、おう!任せておけよ!ツンちゃん身体凝ってないかい?ひ、ヒーローが揉んで差し上げるぜ??」

ξ#゚⊿゚)ξ「むり」



( ・∀・)「どうやって空飛びながら揉むんだ?」

(*'A`)

('A`)「は??」

( ・∀・)「ヒーローは空飛ぶものだろ?飛びながらマッサージじゃ相手が落ちちゃうだろ」

ξ;゚⊿゚)ξ「何言ってるの?」
 _
( ゚∀゚)「ヒーローが空飛ぶイメージを当たり前みたいに言わないでくださいよ」

712第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:32:00 ID:jvu.zAqQ0


 その時、和気藹々とした空気を切り裂く無情な音がリビングに響き渡る。
 全員の視線は一斉にPCに向けられ、ツンは直ぐにサーチャーの反応に目を通した。


ξ゚⊿゚)ξ「カテゴリーJの反応をキャッチ!場所は……バーボンハウスに近いわ!」

( ^ω^)「バーボンハウス!?」
 _
( ゚∀゚)「おいおいまたかよ!?」

ξ゚⊿゚)ξ「この間の蜻蛉アンデッドのときみたいに、バーボンハウスから離れてってる……まさか」
 _
( ゚∀゚)「また誰か攫われたか…!?」

( ^ω^)「カテゴリーJ……もしかして、あのアンデッドがそうなのか!?」


 カリスを守った鷲のアンデッドを思い出す。
 クーとの関係性に疑いが残る中、バーボンハウス付近に出没したとなれば可能性は高いと読んだ。


( ^ω^)「行ってくる!二人は待機しててくれお、また例のアンデッドが出たときのために!」

( ・∀・)「あっ、おい!」


 呼び止める声は届かず、既に玄関の扉が開かれた音が聞こえる。
 後を追うことはせず、窓からブルースペイダーを走らせるブーンを見送った。

713第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:32:20 ID:jvu.zAqQ0





 ―――――




.

714第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:32:54 ID:jvu.zAqQ0


 ミルナの気配を追ってクーが到着したのは、観光スポットとしても有名な吊り橋のある崖。
 見下ろすことで見ることが出来る、岩崖に打ち付けられる波はとても迫力がある。
 
 バイクから降り、足場の悪い岩を素早く踏み進んで行く。
 崖まで進むと、そこに奴はいた。


( ゚д゚ )「カリス、待っていました」


 だが、ショボンの姿が見当たらない。
 ミルナは確かにショボンを背負い、クーから逃げていたはず。


川 ゚ -゚)「貴様……ショボンさんは何処だ」

( ゚д゚ )「あの人間のことでしょうか……カリス、何故人間を庇おうとする?」

川 ゚ -゚)「貴様には関係ない。何の目的があってこんな事をする?」

( ゚д゚ )「あなたの正体を探っていたからですよ。邪魔だろう?そんな奴。
     人間如きが、俺達の神聖な戦いを汚している……許せなくはないか?」

川 ゚ -゚)「ショボンさんは何処にいる?」

( ゚д゚ )「カリス……目を覚ましてくれ、俺達はこの戦いに誇りを持っていたはずだ!」

川 ゚ -゚)「居場所を吐かぬのなら力ずくで聞き出してやる」


 腰にカリスラウザーを召喚。
 ミルナを睨み、取り出したカテゴリーAのカードを構えた。

715第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:33:50 ID:jvu.zAqQ0


( ゚д゚ )「……!ふっ!」

川 ゚ -゚)「ッ!?」


 ミルナが投げ飛ばした羽根手裏剣。
 構えたクーの右手に直撃し、カテゴリーAのカードを掴んだ羽根はミルナのもとへ帰還した。

 奪ったカードに目を通すミルナ。
 そして、大きな衝撃を受けることになる。


(; ゚д゚ )「……!!……これは、マンティスアンデッド……カリス!!」

(; ゚д゚ )「まさか……あの女の言っていたことは、本当だったのか……!?」

川 ゚ -゚)「貴様……」
 
(; ゚д゚ )「なんてことだ……!!カリス、あなたは……こいつに封印されてしまったというのか!?」


 カテゴリーAのカードを、"カリス"と呼び続けるミルナ。

 カリスとは、クーがカテゴリーAに変身した姿を指すものではなかった。
 ♥のカテゴリーA・マンティスアンデッド。カテゴリーAの中でも最強と謳われたアンデッドの、呼称に過ぎなかったのだ。

 カードを前に動揺を隠せず、悲しげにカマキリが描かれた絵柄を指の腹で撫で続ける。
 しばらくカードと向き合った後、ミルナはゆっくりとクーを睨み付けた。


(; ゚д゚ )「……お前は何者だ?怪しいとは思ったが、そもそもその姿もカテゴリー2のものだ!」

(; ゚д゚ )「カリスの姿を借り、カテゴリー2の姿をも借りたお前は何者だ!!
     他のアンデッドに変身出来る力……お前が……お前が本当に"ヤツ"なのか!?」

川 ゚ -゚)「………」

716第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:34:34 ID:jvu.zAqQ0


(#゚д゚ )「答えないのか……お前が"ヤツ"だろうと構わない。カリスを利用し、その名と力を騙った罪は重い!」

(#゚д゚ )「カリスの仇だ……!俺達の約束の邪魔をしたお前には――」
    。
ミミ/#゚王゚)『罰を受けてもらう!!』

川 ゚ -゚)「チッ……!」


 アンデッドの姿となり、背後に浮遊させた羽根手裏剣を一枚ずつ射出。
 クーは手裏剣による遠距離攻撃を瞬時に避け、岩場を器用に飛び移りながら後退。

    。
ミミ/#゚王゚)『お前だけは許さん…!』
 
川 ゚ -゚)「アンデッド同士に友情など抱く方が間違っている」
    。
ミミ/#゚王゚)『黙れ!ならば人間と仲良く過ごすお前は何だ!?アンデッドであるはずのお前が!!』

川 ゚ -゚)「ッ!!」


 ミルナ自身が飛翔し、空いた距離を一気に詰める。
 反射的に両腕を構え防御の姿勢を取るクーだが、頭上を通過しながら鈎爪を振るわれ腕を斬りつけられた。


川 ゚ -゚)「くっ……」
    。
ミミ/ ゚王゚)『どうした、何故あの姿にならない?戦うつもりはないのか!?』

川 ゚ -゚)「なるつもりはない」
    。
ミミ/ ゚王゚)『何……?」

川 ゚ -゚)「だが、相手はしてやる……別の力で」

717第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:35:18 ID:jvu.zAqQ0


 戦いの火蓋は切って落とされた。
 そこに、ミルナの反応を辿って急行したブーンが駆けつける。
 クーのバイクの横にブルースペイダーを停め、足場を慎重ながら急いで歩き渡る。


( ^ω^)「クーさん……あいつ、この間のアンデッド!」


 ミルナと向かい合うクーの姿が見える。
 腰に見えるカリスラウザーから、まさに今戦いが始まると察した。

 だが、カリスへ変身すると思われたクーに、異変が起きる。





川 ゚ -゚)「変身」
  っ□

    【 -♥REFLECT- 】


 カリスへ変身する時のように発生する透明のオーラ。
 飛沫となってはじけ飛ぶオーラの中から現れたのは……。


( ; ^ω^)「!?!?」
    。
ミミ/ ゚王゚)『貴様、どういうつもりだ!?』



( ; ^ω^)「どうなってんだお…!?モスに変身したっていうのか!?」

718第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:35:58 ID:jvu.zAqQ0


 クーが変身したのは、カリスではなく別のアンデッドの姿。
 "♥8のREFLECT"のカードをラウズしたことで、モスの姿へと変身した。
 腰にはアンデッドバックルではなく、カリスラウザーが巻かれている。


( ; ^ω^)「……んぐぐ、悩むのは後だお!変身!」


    【 -♠TURN UP- 】


 カリス以外の姿への変身を目の当たりにし、驚きを隠せないブーン。
 困惑を押し殺し、装着したブレイバックルのハンドルを引きブレイドへと変身した。

 ブレイドの存在に気付いたミルナは、羽根手裏剣でブレイドを牽制しつつクーを攻撃。


( OwO)「うおっ!?」
    。
ミミ/ ゚王゚)『仮面ライダーのおでましですか、アンデッドでありながら人間の助けを得ようとは!』

ノ( ゚ニ>)『チッ……カリスに比べれば、やはり力が劣る……』


 発生させた鱗粉でダメージを軽減しながら抵抗を試みるも、下級アンデッドであるモスの力ではミルナに太刀打ちは不可能。
 通す攻撃一発一発を当てたところで、ミルナは怯む様子はない。
 翼で起こす風で鱗粉を吹き飛ばされ、胸部を両腕の鈎爪で二度裂かれた。


ノ( ゚ニ>)『うぐっ…!』

( OwO)「クッソ…!鬱陶しいお!」


 ブレイラウザーを抜き、二枚のカードを選択。
 次々と迫る羽根手裏剣を突破する方法を思いついた。


    《-♠4 TACKLE-》 《-♠7 METAL-》

719第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:36:45 ID:jvu.zAqQ0


 身体を鋼の力で硬化させ、強化された突進力で羽根手裏剣を強引に押し退ける方法。
 日の光を受け身体を輝かせながら、ブレイドは岩場を駆け抜ける。


( OwO)「おおおおおおおおおおッ!!!」


 身体に当たる羽根手裏剣をもろともせず、ことごとく跳ね落とす。
 クーを攻めるミルナに接近すると、肩から体当たりを狙い全ての体重を乗せ突進した。

 しかし、ブレイドに気付いたミルナはクーを蹴り飛ばし素早く宙に浮遊。
 突進を容易に躱したまま、宙に浮いたままカリスのカードを二人に見せ付けた。


( ; OwO)「わああっ!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『カリスは俺がもらう!必ず封印を解く手段を見つけてみせる……あの人間は返してやる、ついてこい!』

( OwO)「おい!待てお!」

ノ( ゚ニ>)『チッ……』


 ミルナはそのまま宙を移動し、崖の下へと飛び去った。
 モスは毒蛾。空を飛ぶことは可能だが、鷲であるミルナに到底追いつけるはずもない。

 ブレイドは、ミルナの背を見つめるクーのもとに近付き、モスである姿を怪訝な目で見つめる。


( OwO)「クーさん、どういうことだおこれ……」

ノ( ゚ニ>)『カテゴリーAを……いや、まずはショボンさんを助けなければ』

( OwO)「え……ショボンさんに何があったんだお!?」

ノ( ゚ニ>)『お前に構ってる暇はない!』


    【 -♥SPIRIT- 】

720第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:38:13 ID:jvu.zAqQ0


 ブーンを余所に、クーはバイクのもとへと走った。
 ブレイドの変身を解除し、バイクに跨るクーの前の行く手を阻むように立ち塞がる。


( ^ω^)「ちょっと待ってくれお!もしかしてまた攫われたのかお?」

川 ゚ -゚)「あのアンデッドは人質を取るような事はしない、きっとヤツのもとに居るはず。退け!」 

( ^ω^)「あのアンデッドとまた戦うことになるお!カリスの力がないと無理だ!」

川 ゚ -゚)「お前には関係ない」

( ^ω^)「クー!!」


 怒号が、急くクーを静まらせた。
 合わせようとしなかった目線を向け、ブーンの目を真っ直ぐに見つめる。


( ^ω^)「関係あるとかないとか、僕はそんなつまらないことで動いてるわけじゃない!!」

( ^ω^)「いいか?カテゴリーAは僕が取り返す、クーはショボンさんを助けるんだお」

川 ゚ -゚)「何故お前がカテゴリーAを取り返す?何のために?」

( ^ω^)「そうしなければ、クーが傷付いてしまうから」

川 ゚ -゚)「私が傷付くから……?私はアンデッドだ、人間の敵だ。何故アンデッドの心配などする?」

川 ゚ -゚)「人間の敵の心配などして、何の意味がある。私はただアンデッドであることを証明するために――」

( ^ω^)「そうやって自分に言い聞かせて、本当の心に嘘をついてるんだろ?」

川 ゚ -゚)「何…?」

721第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:39:20 ID:jvu.zAqQ0


( ^ω^)「アンデッドであることを証明するために戦うって言いたいんだろ?アンデッドなら、そんなことを考えながら戦ったりしないお」

川 ゚ -゚)「………」
 

 図星を突かれたことが、自分でも痛いほどに感じる。
 確かに、人間と共存する前までの自分は、アンデッドとしての証明のために戦ってなどいなかった。

 それほどまでに、人間に毒されてしまったのか。
 ブーンが言うように、本当の心に嘘をつこうとしているのか。
 アンデッドでありながら、誰にも言えぬ許されない思いを抱いてしまった己の心に。


川 ゚ -゚)「……いつまたお前達に襲い掛かるか分からないんだぞ?
     カテゴリーAを取り返して……アンデッドの手助けなどして、お前に何の得がある?」

( ^ω^)「人を愛する心に、平和を愛する心に人間もアンデッドもないお」

( ^ω^)「アンデッドはみんな敵だと思ってた、人間を襲う絶対的な悪だと……。
      でも、クーやモスと出会ってその概念に疑問を持ち始めたお」

( ^ω^)「僕は仮面ライダーとして人間を守る義務がある、だから戦い続けなきゃならない。
      けど、クーやモスのようなアンデッドと戦おうとは思わない。むしろ、守りたい!」

( ^ω^)「それに、ショボンさん達を想うからクーさんを信じるんじゃない。僕はクーさんを……いや、愛川クーを信じるんだ」

川 ゚ -゚)「……何故だ、何故そんなに私を信じようとする……?」

( ^ω^)「信じたいから信じる、それだけ。形に捉われてしまったら、本当に大事なものは見えてこないお」

川 ゚ -゚)「……!」


 真っ直ぐ過ぎるブーンが、眩しくも見えた。
 自分の心に素直になることが、どれ程心地良いものだろう。
 人間もアンデッドも関係ない……その言葉に胸を打たれてしまった自分がいることを、認めたくはなかった。

722第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:39:50 ID:jvu.zAqQ0


川 ゚ -゚)「……ヤツの気配を感じる。この崖を下った場所だ」

( ^ω^)「お?」

川 ゚ -゚)「ついてくるなら勝手にしろ、私は行く」

( ^ω^)「……おう!」


 アクセルを踏み道を遮るブーンを払い除ける。
 ヘルメットを被り、見られることを拒んだ己の表情を隠した。


川 ゚ -゚)「勘違いするな。別にお前と馴れるつもりはない」

川 ゚ -゚)「ただ……お前が私をアンデッドだと拒絶するつもりがないのなら、敵対もしないだろう」

川 ゚ -゚)「お前とはそれ以上も以下もない、それだけだ」

( ^ω^)「分かってるお、クー。……って、呼んでいいかお?」

川 ゚ -゚)「好きに呼べ」


 不器用に返答すると、ブーンを置き去りにバイクを走らせた。
 ミルナの気配がする崖の下へと向けて。


( ^ω^)「……よし」


 一人で大きく頷き、ブルースペイダーでクーの後を追い走り出す。

 クーの答えに希望と勇気が沸いてか、より一層前向きになった気分。
 ライダーとして戦っていた最初の頃の孤独感や迷いは、今のブーンには微塵も残っていなかった。

723第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:40:27 ID:jvu.zAqQ0

 ――――――
 ――――
 ――


 崖下の海に面した平らな陸地。
 その岩場には、連れ去られたショボンが気を失った状態で倒れていた。
 
 倒れたままのショボンに近付き、憎き心を押さえ込みながら見下ろすミルナ。

    。
ミミ/ ゚王゚)『……あなた方人間は憎き存在ですが、こんな卑怯な形で利用してしまったことは詫びましょう。
      己の信念を汚してまでも、確かめたい真実だったのです』

(´-ω-`)


 気を失ったショボンに言葉を掛けるが、当然反応はない。
 迫り来る二人の気配を感じると、ミルナは仁王立ちで自らが招いた客を待つ。

    。
ミミ/ ゚王゚)『もうすぐ帰しますので安心してください。敵だとしても、命は尊重されるべきですから』


 バイクの排気音は徐々に近くなり、明確になる。
 草が無造作に生え乱れた砂利道を通って、バイクに乗った二人は現れた。


( ^ω^)「ショボンさん!」


 並ぶように停めたバイクから降り、ヘルメットを外す。
 ミルナの背後で倒れたままのショボンが目に入ると、二人はミルナのもとへと走った。

724第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:40:59 ID:jvu.zAqQ0

    。
ミミ/ ゚王゚)『心配しなくても、この人間の命を取ろうなどとは思っていない』
    。
ミミ/ ゚王゚)『だが……お前達と共に元の生活に戻れるかと言われれば、そうとは限らない。
      お前達は、今ここで俺が倒す!』

( ^ω^)「そんなことはさせない!クーもショボンさんも僕が守る!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『フッ……人間がアンデッドを守り、またアンデッドも人間を守る。か……。
      まさかお前が人間に媚びを売り生き残ろうとするヤツだったとは、呆れたぞ!』

川 ゚ -゚)「知ったことか」
    。
ミミ/ ゚王゚)『人間にアンデッドとしての魂を売り、腑抜けになったか!?』

川 ゚ -゚)「………」


 カテゴリーAの言葉が重なる。
 あの時もミルナと同じようなことを言われ、それを機に再び己を"アンデッド"だと強く思い込むようになった。
 まるで、己の存在を否定されたように感じたから――。

 ……だが、再び地に引きずり込もうとする言葉は全て、ブーンによって振り払われた。


( ^ω^)「違う!クーはそんな理由でショボンさん達と暮らしてるわけじゃない!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『ふん、聞こうか』

725第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:42:03 ID:jvu.zAqQ0

 ♪大いなる力 - https://www.youtube.com/watch?v=d18HxqqREGk


( ^ω^)「クーは……自分がアンデッドと知りながらも、ショボンさんやあまねちゃん達との時間を大切に思い大事にしている。
      家族のように接してくれるみんなを、心から愛している」

( ^ω^)「そして、自分が守りたいと願ったみんなを命懸けで守ろうとしてる。全てを投げ出してまでも!
      その素晴らしさに、人間もアンデッドも関係ない!!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『……ふん』

川 ゚ -゚)「………」


 クーがアンデッドと知り、激昂した過去を思い出す。
 あの頃は、アンデッドを憎み、アンデッド全てを倒すことだけを考えていた。


( ^ω^)「人間とアンデッド、全ての者が共存するのは……確かに無理かもしれない。
      お前のように人間を見下すアンデッドがいるように、人間もアンデッド全てを悪と見る人がいる。これは仕方のないことだ」

( ^ω^)「だから、これからも僕は野心を抱き、人間を襲うアンデッドと戦い続けるだろう」

( ^ω^)「けれど……中には争いを好まず、平和を愛す者がいる。
      人の愛を知ったアンデッドのように、アンデッドの愛を知った人間だっているんだ!」


 でぃとモスの互いに想い合う確かな愛に触れ、クーとショボン達の曇りなき愛に触れたことで、何が正しいのか…その答えを密かに求め続けていた。
 だが、答えはとうの昔から自分の心の中にあったのだ。
 人間とアンデッド……その形に捉われ、その答えが曇ってしまっていた。


( ^ω^)「自分が変われば世界は変わる!
      アンデッドの使命に苦しみながらも、それが出来たクーを僕は守りたい!」

( ^ω^)「だから……そんなクーを蔑むようなことは、僕がさせない!!」

川 ゚ -゚)「………お前……」

726第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:43:54 ID:jvu.zAqQ0

    。
ミミ/ ゚王゚)『……素晴らしい。愛を知った者同士が互いに現実から目を逸らし、傷を舐め合っているわけですね』
    。
ミミ/ ゚王゚)『悪いが、そんなものに興味はない……!俺は己が種族の繁栄のために戦っている。
      皆が万能の力を目指している。これは、その力に相応しい者を決めるための聖戦だ!』
    。
ミミ/ ゚王゚)『この戦いの中で愛など語るようなアンデッドに、勝たせるわけにはいきませんね!』


 両腕の鈎爪を研ぎ、臨戦態勢を取った。
 翼を広げたと同時に出現する羽根手裏剣が、翼の扇ぎを受けて一斉にブーン達のもとへ放たれる。


( #^ω^)「それがお前の限界だお…!変身!」

川 っ -゚)「ッ……!」


    【 -♠TURN UP- 】


 クーの前に立ち、庇いながら射出したゲートで羽根手裏剣を全て防御。
 落ちたことを確認すると、ブーンはゲートに向け走りブレイドへと変身した。


( OwO)「カテゴリーAを返せ!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『無理な相談ですね、♣のカテゴリー10を持っているのは誰だ!?』

( ; OwO)「ううっ!!」


 再び宙を浮遊され、すれ違う瞬間に鈎爪で切り裂かれる。
 ブレイラウザーを抜き応戦するも、攻撃など届くわけもなくあっという間に防戦一方となった。

    。
ミミ/ ゚王゚)『あの力さえあればカリスの封印を解くことが出来るはず!お前か!?』

( ; OwO)「そんなこと言うわけないだろ…!うあっ!?」

727第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:45:09 ID:jvu.zAqQ0


 空中より羽根手裏剣を投擲され、防ぎ切れない羽根が身体を斬りつける。
 カードを使っても届かないどころか容易に躱されてしまうであろう空中を、どう対処すべきか。


( ; OwO)「クソッ!どうすればいいんだお……届かない!」

川 ゚ -゚)「これを使え!」
  っ□


 その時、クーが一枚のカードをブレイドに投げた。
 すかさずカードを掴み取り、カードを見る。
 渡されたカードは、"♥4のFLOAT"。蜻蛉のアンデッドのカードだ。


( OwO)「これは……」
  っ□

川 ゚ -゚)「その力で空を飛ぶことが出来るはずだ」

( OwO)「そいつは実にナイスだお!………閃いた!」


 受け取ったカード、それに加え展開したトレイから選んだ一枚のカード。
 二枚のカードを、ブレイラウザーにラウズする。
 

    《-♥4 FLOAT-》 《-♠9 MACH- 》


( ; OwO)「おおっ!?って……高いとこ怖ェお!!」
 

 カードをラウズした瞬間、ブレイドの身体が浮遊を始める。 
 原理は不明だが、自分が飛びたいと念じる方へ身体を浮かせることが出来ている。
 

( OwO)「ええい、駄目だ駄目だ…!こいつで一発逆転狙うんだお!」

728第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:45:38 ID:jvu.zAqQ0


 空を自在に飛び回るミルナの尻尾を追い、ブレイドも空を飛翔。
 自分を上回った速度で接近するブレイドに驚きを隠せず、思わずたじろいぐミルナ。

    。
ミミ/ ゚王゚)『なっ……!何故空を飛んでいる!?』

( OwO)「アンデッドの力を借りたのさ!はあっ!!」
    。
ミミ/;゚王゚)『ぐうっ…!』


 ミルナとの距離はすぐに縮まり、仕返しの斬撃を見舞った。
 鈎爪を払い、圧倒的な速度で何度も身体を切り刻み、とうとう空中での動きを制した。

 すると、ミルナの腰に備えられたカテゴリーAのカードを見つける。
 磁石のように羽根に密着しており、奪うのは簡単そうだった。

    。
ミミ/;゚王゚)『クッ……ちょこまかと!』

( OwO)「カードは返してもらうお!!」
    。
ミミ/;゚王゚)『なっ!?しまった……!!』


 空中での土俵から降ろすべく、背後に回ったブレイドは背に生えた翼を強引に両断。
 目に捉えられぬ速さからか、ミルナは対応出来ぬまま翼を切られ、支えを失い地上に向け落下。
 

( OwO)「もらったああああああ!!!」


 落下するミルナの腰に向け、ラウザーを振り下ろす。
 的確に腰に備わった羽根を斬りつけ、宙に舞ったカードを強引に掴み取った。


( OwO)「クー!!」


 そのままミルナの落下を見捨て、ブレイドは急いでクーのもとへと舞い戻る。
 そして、取り返したカテゴリーAと"♥4のFLOAT"のカードを差し出した。

729第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:46:12 ID:jvu.zAqQ0


( OwO)「ふう…!なかなか痺れたけど、これありがとうだお!」
   っ□

川 ゚ -゚)「………すまない」
   っ□
    。
ミミ/#゚王゚)『クッ…………おのれェ!!!』

( OwO)「さぁ、こっから形勢逆転だお!クーがいれば心強い!」


 カードを渡し、ブレイドは再び戦いへと戻る。
 地上に落下こそしたが、ミルナは未だ健在。むしろカテゴリーAを取り返され、怒り心頭の様子だ。

 クーは、カードを握り締めブレイドの背を黙ったまま見つめる。
 
 
川 ゚ -゚)(……何故だ)

川 ゚ -゚)(受け入れられるということが、こんなに嬉しいものなのか……)


 今まで、ただ拒んでいただけのブーンに対し心を開き始めている自覚がある。
 未だ素直になり切れないが、確かにクーの心は変わりつつあった。
 
 自分のこと、本当のことに向き合う度、心が騒ぎ出す。
 現実を忘れ、目覚めるほどに身体が熱くなる。


川 ゚ -゚)(この感情が何を意味しているのか……そんなことを考えるのは、もうやめていいかもしれない)

川 ゚ -゚)「疑問に縛られ不安になるくらいなら……心を求めて戦い続けるだけだ……!」
  っ□


 カテゴリーAのカードを構えたクーの腰に、カリスラウザーが召喚。
 目の前で起きる戦いを睨み、今度こそカリスへ変身しようとした。

730第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:46:39 ID:jvu.zAqQ0


(´-ω-`)「ん……ぐ……」

川 ゚ -゚)「……!!」


 その時、気絶していたショボンが唸り声を上げ始める。
 身体がゆっくりと動き出し、腹部を抑えながら上体を起こした。

 ショボンの意識が、戻ってしまった。


( ; OwO)「ふっ!……っぐうう!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『どうした、アンデッドの力を借りなければその程度か!?』

(´・ω・`)「ッ……ブーン君!?」

( OwO)「ショボンさん…!?目が覚めたのか……ッ!」


 ショボンが目に入ったのは、ブレイドとミルナの争い。
 剣と鈎爪、殴り合う鈍い音と怒号が激しく繰り広げられ、見ている手に力が入った。

 ふと、違う視線を感じるショボン。
 視線を向け、そこにいるのは……今まさに変身しようとしたクー。


(´・ω・`)「クー…!?」

川 ;゚ -゚)「………」


 カテゴリーAをラウザーに当てた手が、止まってしまった。
 
 このまま変身してしまえば……今まで隠し通してきた事実が、全て明るみになってしまう。
 そう考えた途端、その後に待ち受けている事を想像するだけで、恐怖を感じた。

 クーの正体を怪しんでいたショボンも、この現場にいる事がクーに関連付いていると見ていた。
 腰に巻かれた謎のベルトと、手に持っているカード。クーに対する疑念は深まる一方だ。

731第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:47:11 ID:jvu.zAqQ0


( OwO)「ッ……クー!大丈夫だ!何も心配しなくていいんだ!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『フン!ハアアアッ!』


 躊躇しているクーの姿が見えた。
 ブレイドは、ミルナの攻撃に晒されながらも躊躇いを抱くクーに言葉を掛け続ける。


( ; OwO)「うぐっ…!……誰も君のことを見捨てたりしない!僕達は仲間だ!」

川 ;゚ -゚)「………」

( OwO)「自分に自信を持て、誇りを持て!お前のすべてを今見せるんだお!!」

( OwO)「ショボンさんもあまねちゃんも、でぃちゃんも……お前が守るって決めたんだろ!!!」
    。
ミミ/ ゚王゚)『何をべらべらと話している!戦いの最中だぞ!』

( ; OwO)「がはっ…!」


 両の鈎爪の刺突攻撃が、ブレイドの胸部に直撃。
 胸を押さえながらブレイラウザーを振るうも、容易に弾かれ蹴り飛ばされてしまう。


川 ゚ -゚)「………私は……」

(´・ω・`)「クー、何をするつもりなんだ…?」


 ミルナに圧されるブレイドと、クーを見て離さないショボンを交互に見つめる。
 
 ショボンとの絆を取るか、ブーンの言葉を信じるか。
 二つの選択肢に迫られ、クーは深く悩みだす。

732第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:48:04 ID:jvu.zAqQ0


(´・ω・`)「君は、一体……」

川 ゚ -゚)「………」


 答えは決まった。

 ショボンに向けていた視線を外し、ブレイドと戦うミルナを睨み付ける。
 
 もしかしたら、これでショボン達との縁が切れてしまうかもしれない。
 その恐怖が、クーの心を強く締め付けてしまっていた。


 ……それでも構わない。
 ショボンさんやでぃちゃん……あまねちゃんが平和で笑顔に暮らせるなら、それで。

 傍に居れなくとも、みんなを守ることは出来る。
 みんなの幸せこそ……私の幸せなのだから。



 クーは選んだ。
 カリスとして、今ここで戦うことを。


川 ゚ -゚)「……変身!」
  っ□

    【 -♥CHANGE- 】


 ショボンの目の前で、カリスへと変身するクー。
 その一部始終は……しっかりと、ショボンの目に焼きつかれた。


(;´・ω・`)「……!!!」

(;´・ω・`)「クー……君は……!!」

733第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:48:31 ID:jvu.zAqQ0


( <::V::>)『ショボンさん』

(;´・ω・`)「ッ……!」

( <::V::>)『今まで嘘をついていてごめんなさい……これが私です』

(;´・ω・`)「………」


 ショボンに近付き、手を差し伸べる。

 だが、反射的に後退りしてしまうショボン。
 唖然としてしまい、言葉が出てこない。
 クーが恐ろしい姿へと変化してしまったことへの恐怖も、多少なりとも感じてしまっていた。


( <::V::>)『………ここは危険です、逃げてください。私が守ります』

(;´・ω・`)「君は……何者なんだ……?」

( <::V::>)『……私は、愛川クーです。言い訳はしません……けど、これが私なんです』

( <::V::>)『さぁ、早く逃げて!』

(;´・ω・`)「ッ……あ、ああ」


 脇下を掴まれ、強引に起こされるショボン。
 状況が読み込めず混乱したままだが、構わず背中を押し退避を促す。
 
 逃げ走るショボンの背を見届けると、左手にカリスアローを召喚。
 戦いの中へと目を向け、今度は自分がブレイドを助けるため、走った。

734第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:49:07 ID:jvu.zAqQ0

 ♪Rebirth - https://www.youtube.com/watch?v=SgXC5Z4R3-c

    。
ミミ/ ゚王゚)『デヤアアアッ!!』

( ; OwO)「くっ…!このォ!!」


 軽快な身のこなしで、ブレイドを蹂躙するミルナ。
 ブレイラウザーで左腕の鈎爪の一撃を弾き、ようやく腹部に蹴りを入れた。

    。
ミミ/ ゚王゚)『うっ…!ふん、甘い!』


 すかさず体勢を整え、再び羽根手裏剣を発生させる。
 だが、その構えは一瞬にして崩された。


( <::V::>)『ふっ!』

( OwO)「!?」
    。
ミミ/;゚王゚)『ぐふっ…!』


 ブレイドの頭上を回転しながら飛び越えたカリスが、着地すると同時にカリスアローでミルナを斬りつけた。
 斬りあげるようにして振り上げたカリスアローで胸部に斬撃を与え、素早く身体を左に回転させ右足による延髄切りを叩き込んだ。

    。
ミミ/;゚王゚)『ぐあっ!………!?』

( <::V::>)
    。
ミミ/;゚王゚)『か……カリス……!!』

735第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:50:07 ID:jvu.zAqQ0


 カリスの姿を見た途端、ミルナの動きが止まった。
 
 この瞬間を見逃さなかった。
 ブレイドは、ブレイラウザーのトレイを展開させ二枚のカードを選択。
 カリスも同様に三枚のカードを取り出し、それぞれ順番にラウズした。


( <::V::>)『行くぞ!』

( OwO)「オーケー!!」


    《-♠2 SLASH-》 《-♠6 THUNDER-》

    《-♥4 FLOAT-》 《-♥5 DRILL-》 《-♥6 TORNADO-》

    。
ミミ/;゚王゚)『いや、違う……!こいつはカリスじゃない!!』


 ふと我に返り、目の前のカリスが偽者であることを思い出す。
 ようやく動き出そうとするが、この窮地から逃れることは難しい。
 今まさに、両者によるトドメの一撃が放たれようとしていた。
 

     《-♠LIGHTNING SLASH-》 《-♥SPINING DANCE-》


 コンボ名を告げる電子音声。
 カリスは"♥4 FLOAT"の力で高々と宙に浮遊し、竜巻に包まれる。
 ブレイラウザーには青き雷光が纏い、ブレイドは両手でラウザーを構えた。

736第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:50:41 ID:jvu.zAqQ0


 カリスは空中移動を自在にすることで、竜巻の力を最大限に引き出せる。
 両足を揃え身体を高速で回転させ、地上に立つミルナに向け一気呵成に突進した。

    。
ミミ/;゚王゚)『クッ……なるほど、逃げ場はないというわけですか』
    。
ミミ/;゚王゚)『………認めたくはないが、負けですね』


 逃げようとはせず、その場に仁王立ちする。
 決してしまった勝敗を素直に受け入れ、自分にトドメが刺されるのを待つ。
 
 
( OwO)「はあああああああぁァァッ!!!」

( <::V::>)『ふんッ!!』


 雷と竜巻が共鳴し、竜巻に雷が帯び、雷に竜巻が纏った。
 上空より迫り来るカリスとタイミングを合わせ地を駆けるブレイド。
 強烈な錐揉み回転蹴りがミルナに直撃すると同時に、鋭い雷斬が一閃。
 ミルナの腹部は斬り裂かれ、カリスの一撃で大きな爆発が引き起こされた。
 
    。
ミミ/;゚王゚)『うあああああああァァァァッ……!!!』
 

 両者の必殺技を受け遠くへ吹き飛び、地を転がる。
 全身を感電させながら倒れ、アンデッドバックルは左右に展開された。
 バックルには、【♠ J】と彫刻されている。

737第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:51:10 ID:jvu.zAqQ0


 竜巻に身を包まれながら、ゆっくりと着地するカリス。
 ブレイドはブレイラウザーを振り雷を振り払い、トレイからカードを一枚取り出す。


( <::V::>)『お前の力だ、封印しろ』

( OwO)「クー……ありがとう」

( <::V::>)『………』

( OwO)「……へっ」


 視線を背ける。
 この行動が意味していることは、今でこそ分かる。
 だからこそ、背けられたことが妙に嬉しく感じた。


(; ゚д゚ )「ぐう………」


 だが、安心も束の間。
 二人の必殺技の前に倒れたはずのミルナが、人間の姿へとなりゆっくりと起き上がった。


( OwO)「!?まだ立てる力があるってのかお!?」

( <::V::>)『放っておけ、今だけだ』

(; ゚д゚ )「まったく……なんて、情けない負け方だ……一生消えぬ恥となるだろうな……」

(; ゚д゚ )「違うと分かっていたはずなのに……」

( <::V::>)

(; ゚д゚ )「カリスを見た瞬間、油断してしまった……」

738第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:51:50 ID:jvu.zAqQ0


( <::V::>)『聞く。お前とカリスの一万年前の約束とは何だ?』

(; ゚д゚ )「ッ……戦うことですよ、アンデッドにはそれしかないでしょう?
     俺とカリスは、あなた達のように友誼を結んでいた仲でした……」

(; ゚д゚ )「お互いに他のアンデッドを全て倒した後……最後に残ったアンデッドとして、雌雄を決しよう!
     最高の敵として、最後の舞台で戦おう!そう約束したんですよ……」

( <::V::>)『それが、カリスとの約束……最後に戦うのが約束だと?』

(; ゚д゚ )「ふっ……あなた達と同じですよ」


 不敵に笑みを見せるミルナ。
 意味深な言葉に、ブレイドは思わず反応を示す。


( OwO)「どういう意味だ!」

(; ゚д゚ )「人間とアンデッドが手を取り合う……そんなものが、いつまでも続くと思っているんですか?」

( OwO)「出来るさ、僕達が望みを捨てなければ!」

(; ゚∀゚ )「……フッ、フハハハハ!」

( OwO)「何がおかしい!?」

(; ゚д゚ )「無駄ですよ……あなた達人間も、再開されたこの戦いの"運命"に呑まれているに過ぎません」

( OwO)「何……?」

739第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:52:51 ID:jvu.zAqQ0


(; ゚д゚ )「人間とアンデッド、今は手を取り合っていても……俺達のようにいつかは戦う"運命"」

( OwO)「"運命"……?」

(; ゚д゚ )「ふっ、内心それを望んでいるのは……」

( <::V::>)

( OwO)

(; д )「あなた達かも……しれませんがね……―――」


 力尽き、吸い込まれるように地に倒れた。
 アンデッドの姿に戻り倒れるミルナを、二人は立ち尽くしたまま見つめる。

 ミルナが残した意味深な言葉が、深く突き刺さっている。
 先程までの喜びが、一瞬にして不穏なものへと変わってしまった。


( OwO)「………」

( <::V::>)『………』


 何も言わず、ミルナに背を向けるカリス。
 まるで言葉の意味を知っているかのように。

 ブレイドは静かにカードを投擲し、ミルナを封印。
 掌中に帰還したカードには、"♠J FUSION"と記され、鷲が大きな翼を広げる絵が描かれた。

740第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:53:43 ID:jvu.zAqQ0


 互いに変身を解除し、元の姿に戻る。
 打ち解けたと思われたはずの二人の間に、不穏な空気が流れる。


( ^ω^)「………」

川 ゚ -゚)「………」

( ^ω^)「……あんな奴の言うこと、気にする必要ないお。
      確かにちょっと紳士的な感じだったけど……苦し紛れの一言みたいなもんだお!あんなの!」

川 ゚ -゚)「………」

( ; ^ω^)「……あー、うん。先のことなんて今決め付けるもんじゃないしさ?」


 背を向けたままクーは反応せず。
 嫌な空気を払拭しようと必死に言葉を紡ぐが、全く効果がない。
 何より、ブーン本人が一番ミルナの言葉を気にしている。


( ^ω^)(………最後には戦う"運命"にある。だと……?)

( ^ω^)(考えもしなかった……アンデッド同士で行われるこの戦い。勝ち残った者は万能の力を手にする)

( ^ω^)(……その先には、何が待っているんだ?)

( ^ω^)   川 ゚ -゚)


 クーの背中を見つめる。
 アンデッドならば、その答えを知っているはず。
 だが、聞く勇気などなかった。


( ^ω^)(この戦いは、どこへ向かうんだ……?)

741第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:54:38 ID:jvu.zAqQ0


 沈黙が流れる中、クーに急かされ避難していたはずのショボンが姿を見せた。
 クーの名前すら呼ぼうとはせず、重たい足取りで近付いてくる。
 

(´・ω・`)「………」

( ^ω^)「ショボンさん!」


 ショボンに駆け寄り、その肩を支える。
 が、ブーンの肩をとんとんと叩き支えを拒んだ。

 ショボンを見たまま、近寄ろうとはしないクーへと自分の足で歩み寄る。


(´・ω・`)「……クー、君はずっと隠していたのか」

川 ゚ -゚)「……はい」

(´・ω・`)「僕達に内緒で、ずっとアンデッドと戦っていたのか」

川 ゚ -゚)「………はい」

(´・ω・`)「ブーン君、君は知っていたんだね?」

( ^ω^)「すみません……隠してたことは謝りますお」

(´・ω・`)「………」

川 ゚ -゚)「………ショボンさん、私は……」

川 ゚ -゚)「私は……私は人間じゃ――」

742第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:55:02 ID:jvu.zAqQ0


 言いかけたところで、優しく包まれた。
 ショボンは、クーが全てを話す前にそっと抱きしめたのだ。


川 ゚ -゚)「……!」

(´・ω・`)「僕達がいるのに、一人で頑張ってたのかい?アンデッドと戦って、何度も傷付いてたのかい?」

(´・ω・`)「そんなことをずっと隠しながら過ごして……辛かっただろう」

川 ゚ -゚)「………」


 あやすように、両手で優しく背中を叩く。
 ショボンの声はとても穏やかで、言葉が温かく心に染みる。


(´・ω・`)「初めて出会ったときから、何かあるとは思ってた。
      君が一体何者なのかを知りたがってた自分もいた」

(´・ω・`)「でも……改めて思ったよ」

(´・ω・`)「クーが何者でも、そんなことは関係ない。どうでもいいんだよ。
      一番大事なのは心なんだ。もう、僕達にとってクーは居なきゃいけない存在なんだよ」

(´・ω・`)「どんな姿をしても、クーはクー。愛川クーだよ。
      あまね達に知られたくないならそれでもいい、無理に打ち明ける必要はない」

(´・ω・`)「もう君は一人じゃない。君の居場所は、ここにあるんだから!」

川 ゚ -゚)「………ショボンさん」

(´・ω・`)「なんだい?」

川 ゚ -゚)「ありがとう………ありがとう、ショボンさん」


 目の奥が熱くなるのを感じる。今まで覚えたことのない感覚だ。
 

川 ゚ -゚)(これが、人間なのか……)

743第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:56:00 ID:jvu.zAqQ0


 クーを離し、肩に手を添える。
 真っ直ぐ目を見つめながら、口元に優しく笑みを浮かべた。


(´・ω・`)「一緒に家に帰ろう、クー」

川 ゚ -゚)「はい」

( ^ω^)「ショボンさん、よかったお……安心しました」

(´・ω・`)「ブーン君……君には、お世話になりっぱなしだな」

( ^ω^)「いやいや、僕は何も……クーもよかったな」

川 ゚ -゚)「……ああ」

( ^ω^)「ふっ」

(´・ω・`)「……ははは」


 クーを間に挟み、三人は肩を並べバイクのもとへと歩く。
 ミルナが残した意味深な言葉、その意味を考えることを後回しにする程に嬉しい気持ちに満たされる。
 この想いを持ち続ける限り、剣を交えることなどありえない。
 そう、強く思った。

744第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:56:22 ID:jvu.zAqQ0





 ―――――




.

745第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:56:49 ID:jvu.zAqQ0


 一方、モララーとドクオはアンデッド出現の報せを受け現場へと向かい到着していた。
 サーチャーが捉えた反応は、♥のカテゴリーJ。
 昨夜現れたそのの姿は誰も見ていないが、人間の死体をアンデッドと化す力を持つアンデッドということは既に把握済みだ。

 そして、その力がまた猛威を振るってしまった。

 到着した時には……既に、アンデッドと化してしまった何人もの人の姿が。
 両手を垂らしながら歩く姿は、まるで生きた屍。ゾンビそのものだ。


( OMO)「ふっ!」

「ギイイィエエエエエエェェッ!!」

( OHO)「ウオォラァッ!」

「グオオオォッ……」


 ギャレン、レンゲルへと変身していた二人は狼人間の掃討を開始。

 ギャレンが構えたギャレンラウザーが複数の敵を射撃しつつ、レンゲルラウザーを握ったレンゲルが次々と蹴散らしていく。
 狼人間の個々の力は下級アンデッドにも及ばぬ程のようで、倒すだけなら簡単だった。

 全滅を確認し、自分達の手で倒した転がる死体に目を向ける。


( OMO)「人を殺め、その亡骸を利用するとは……許せない」


 元は人間。致し方ない事とは言え、そう割り切ることの出来ない心が痛むギャレン。

 
( OHO)「封印できないアンデッドかぁ……倒すだけなら確かに楽だけど」

( OMO)「おい、口を謹め」

( OHO)「あっ……すみません」

746第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:57:19 ID:jvu.zAqQ0


 その背後で、倒したはずの死体が蠢く。
 ゆらりと起き上がり、ゆっくりと顔を上げ目の前の二人を睨む赤く充血した眼。


「ウウッ……ガアアアァァッ!!」

( OMO)「!?」

( OHO)「はっ…!」


 咆哮に気付き振り返ると、既に迫り来る死体の姿が。
 咄嗟に臨戦態勢に入る二人だったが、死体は二人に手を伸ばすことなく倒れた。


「ギャアウッ!」

( OHO)「え……?」

(,,^Д^)「油断するなよ」

( OMO)「お前は……」


 そこには、銃を構えたタカラの姿があった。
 ギャレン達に触れる前に、タカラが放った銃弾が死体の後頭部を撃ち抜いたようだ。


(,,^Д^)「アンデッドは見たのか?」

( OHO)「いや……見てません、来たときにはもう」

(,,^Д^)「そうか……」

( OMO)「何故此処が分かった?」

(,,^Д^)「奴についた家族の血の臭いは、今も消えることはない」

747第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:57:45 ID:jvu.zAqQ0


(,,^Д^)「気を付けろ、奴は至るところに現れる。いつでも動けるように心掛けておけ」


 言って、タカラは去って行く。
 変身を解いた二人。モララーは、タカラの背中を怪訝な目で見つめた。


( ・∀・)(……あいつ、やっぱり怪しいな)

('A`)「タカラさん、相当恨んでるんですね……本能的にアンデッドの気配感じてるってことでしょ?」

( ・∀・)「ドクオ」

('A`)「はい」

( ・∀・)「あいつに注意を払え」

('A`)「え……タカラさんに?」

( ・∀・)「確証は無いが……どうも気掛かりだ」

('A`)「どういうことですか?」

( ・∀・)「………」

748第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:58:18 ID:jvu.zAqQ0


 そして、その光景を遠くから見つめるミセリがいた。


ミセ*゚ー゚)リ「へぇ……面白いことしてるのね」


 背後に感じる、アンデッドの気配。
 突然現れた気配にも臆することなく、ミセリは背後の存在に語りかける。


ミセ*゚ー゚)リ「私と手を組めば、もっと面白くなると思うわ」

『断る』


 影が差し、その全貌が明らかにならない。
 荒い呼吸が聞こえ、今にもミセリに襲い掛かりそうな凶暴さすら感じ取れる。


ミセ*゚ー゚)リ「何故?」

『貴様等は所詮――』


 ミセリに歩み寄り、影に覆われる場所から抜け出た。
 日が当たり、全貌が明るみとなる。
 青い毛並みの身体を包む真っ黒な革、その上から装着した鋼鉄の武器による防具。
 縦横無尽に備えられたナイフが、不気味に光を放つ。



  (
彡,,メ皿゚彡『――俺の敵だからだ』


 次なる刺客は既に、ブーン達を待ち受けている。

749第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:58:48 ID:jvu.zAqQ0





     【 第24話 〜大切なもの〜 】 終




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750第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 10:59:20 ID:jvu.zAqQ0

==========

 【 次回予告 】 https://www.youtube.com/watch?v=Yyh12l21WkA


( OwO)「うおおおおっ!!!」

「ガウウゥゥッ!!」


 増殖を続ける狼人間。
 根源であるアンデッドを捕まえることが出来ず、狼人間達との戦いに明け暮れるライダー達。


(,,^Д^)「一体ずつ相手をしようとするな、一気に倒せ!」

( OMO)「ドクオ、こいつらの動きを封じろ!」

( OHO)「はい!」

751第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 11:00:04 ID:jvu.zAqQ0


ミセ*゚ー゚)リ「はぁ、残念ね。乱暴なことはしたくなかったんだけど…」
  (
彡,,メ皿゚彡『望むところだ…!』


 一触即発となるミセリとカテゴリーJ。


「おいお前ら、人のテリトリーで勝手に騒ぎを起こして……」

「……特別に許可してやる。さぁ、戦ってくれ」

ミセ*゚ー゚)リ「お前は……!」
  (
彡,,メ皿゚彡『貴様……!?」

( ゚∋゚)「いいからいいから、どちらかが潰れるまで戦ってくれ」


 また新たなアンデッドが現れることに。
 屈強な肉体をした男。上級アンデッドとしてのその正体とは?

752第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 11:00:42 ID:jvu.zAqQ0


 三体のアンデッドが揃う中、ブーン達三人のライダーが集結!


ミセ*゚ー゚)リ「フフフ、一旦お預けね。三対三でどうかしら?」
  (
彡,,メ皿゚彡『仕方ない……仮面ライダーを葬るまたとない機会だ』

( ゚∋゚)「勝手にやってくれ」


( ・∀・)「上級アンデッドが三体……やれるか?」

('A`)「はい、せめて一体は封印してやる!」

( ^ω^)「やるしかないお…!」


 上級アンデッド三体という、かつてない脅威に立ちはだかるライダー達。
 はたして、ブーン達はアンデッドに打ち勝つことが出来るのか!?

753第24話 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 11:01:25 ID:jvu.zAqQ0


(  w )「たくさんの人を手にかけ、尊い命をお前は一体いくつ奪った……?」
  (
彡,,メ皿゚彡『フン!さぁな、数など数えるわけないだろ?』

(  w )「それだけじゃない……亡骸を化け物に変えて、操って……」

(  w )「人の命を奪うだけに留まらず、その命を蹂躙し冒涜した……」 
  (
彡,,メ皿゚彡『なら、お前はどうする?』

(  w )「許さない……」



( #OwO)「――お前だけは……絶対に許さない!!!」


 遂にカテゴリーJの尻尾を掴んだブレイド達。
 激しい怒りと共に、ライダー達の逆襲が始まる!


 次回、【 第25話 〜血を呼ぶ嘘〜 】


 ――今、その力が全開する!


==========

754 ◆7MnOV.oq7w:2018/02/25(日) 11:03:53 ID:jvu.zAqQ0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話
>>605 第23話
>>682 第24話

細々と書いてますがなかなかまとまった時間が取れず・・・しばらく毎週は無理そう
申し訳ない

755名無しさん:2018/02/25(日) 11:59:31 ID:XPQUlbVo0
乙!いつも楽しませてもらってます
無理せずゆっくりどうぞ〜

756名無しさん:2018/02/25(日) 12:19:30 ID:8uUjVOAY0
乙です
毎週じゃなくても生きて投下してくれればそれでいいよ
最近じゃ一番の楽しみよ

757名無しさん:2018/02/25(日) 22:20:51 ID:dEr5JJPE0
乙津

758名無しさん:2018/02/25(日) 23:31:06 ID:4eaPjfsE0
待ってた!最近ブレイドの口調が荒い時多いね

759名無しさん:2018/02/26(月) 18:48:46 ID:SSuX3xU20
モララーの天然は原作準拠っぽいww
次回更新楽しみにしてる

760名無しさん:2018/02/26(月) 21:27:56 ID:CWnQ7qDA0
ミルナとの決着は思ったより早かったな

761名無しさん:2018/03/31(土) 00:49:05 ID:T.2NByG60
待ってるぜ

762名無しさん:2018/03/31(土) 12:40:33 ID:s2NU0MvQ0
そういやもう1ヶ月投下ないのか…

763名無しさん:2018/05/10(木) 00:38:59 ID:kpn2vQYE0
俺は待ってるんだぜ

764名無しさん:2018/05/12(土) 17:39:11 ID:L2m9Z4q20
俺も待ってる

765名無しさん:2018/06/03(日) 22:31:10 ID:2S8pjJ4I0
最近こねえな

766名無しさん:2018/06/07(木) 03:02:06 ID:p2kuEwck0
( OwO)待ってるウェイ!

767 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/06(金) 02:14:17 ID:YRrjfChQ0
( ^ω^)< 夏だお

( ^ω^)< 7/8(日)

768名無しさん:2018/07/06(金) 05:51:23 ID:wEg5hjNE0
投下予告!?
生きてたのか!久々のニチアサブーン系楽しみに待っとるぞ

769名無しさん:2018/07/06(金) 05:52:05 ID:Dg3J09N60
おっ!?

770名無しさん:2018/07/07(土) 11:41:32 ID:lyJ317AA0
待ってた!

771名無しさん:2018/07/08(日) 07:38:43 ID:QmaM35bM0
待ってたぞ!

77225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:01:20 ID:wQXRKlTg0





     【 第25話 〜血を呼ぶ嘘〜 】




.

77325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:01:55 ID:wQXRKlTg0


 ミルナを倒してから数日。
 上級アンデッドをまた一体封印したブーン達だったが、未だアンデッドの脅威は続く。
 ♥のカテゴリーJなる存在は、猛威を振るい続けていた。
 

( OwO)「うおおおおっ!!!」

「ガウウゥゥッ!!」


 次々と狼人間に成り果てる人間。
 アンデッドの反応をキャッチしても、共通点のない場所への出現は先読みをすることすら叶わない。
 反応を辿り到着すれば、既に変わり果てた人の姿しかなく、まさにトカゲの尻尾切りだった。


(,,^Д^)「一体ずつ相手をしようとするな、一気に倒せ!」

( OMO)「ドクオ、こいつらの動きを封じろ!」

( OHO)「はい!」


 ギャレンの指示を受け、レンゲルはカードを二枚レンゲルラウザーにラウズ。


    《-♣3 SCREW-》 《-♣9 SMOG-》


 "♣9のSMOG"。煙幕を発生させ、相手の動きを抑制する効果を持つ。
 それに合わせ、"♣3のSCREW"の力で右手をドリルのように回転させることで、煙幕を素早く広範囲に展開。
 狼人間達の視界を奪い、動きを封じた。

77425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:02:34 ID:wQXRKlTg0


( OwO)「ナイスだドクオ!」

( OMO)「後は任せろ!」


    《-♠2 SLASH-》 《-♠9 MACH-》

    《-♦2 BULLET-》 《-♦9 GEMINI-》


 ブレイド、ギャレンはそれぞれ二枚のカードをラウズする。
 分身したギャレンは同時にギャレンラウザーを構え、強化された銃弾で煙幕に塗れた狼人間達を射撃。
 加速の力を身に着けたブレイドは、切れ味が倍増したブレイラウザーで光の如く速さで斬り捨てた。
 

「グギャアアアァッ!!」

「ギイイィッッ!!」


 狼人間から噴き上がる緑血。
 元々は人間だった彼等の血すら、アンデッドのものと化してしまった。

 ブレイド達の手によって、今のところ全ての狼人間は倒された。
 倒れた遺体は謎の発火を引き起こし、炎に包まれ焼失していった。


(,,^Д^)「さすがだな、仮面ライダー」

( OwO)「そんなこと言ってる場合じゃないですお……人を守るのが僕達の義務なのに!」

( OMO)「早く上級アンデッドの尻尾を掴まなければ、人類が皆アンデッドにさせられてしまう……」

( OHO)「………」

( OHO)(俺だって、こいつらくらいすぐに倒せるってのに……)

77525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:03:12 ID:wQXRKlTg0


(,,^Д^)「そうだな……だが、奴の逃げ足が早いのも確かだ。全くイライラさせてくれる……!」

( OMO)「奴の行動パターンは分からないのか?」

(,,^Д^)「分かるものか、アンデッドのことなんか……奴は神出鬼没だ。それに一度現れた場所には現れない」

(,,^Д^)「せめて……俺にもお前達のようなバイクと、カードがあればな」


 ライダー達が乗るバイクへ目を向けるタカラ。
 通常のバイクとは比にならぬ性能を誇るライダー専用のバイクは、ラウズカードシステムを搭載。
 全てのカードの対応はしていないが、特定のカードの効果を得ることが出来る仕様となっている。

 それだけ言い残すと、タカラは背を向け静かに去って行った。

 変身を解除した三人。
 その中でも特に、モララーはタカラの背を見つめたままだった。


( ・∀・)(何故、ライダービークルの事を知っている……)

( ・∀・)(本当にただの人間か?一体、BOARDと何の関係が)

( ^ω^)「モララーさん、ずっとタカラさん見つめてどうしたんですかお?」

( ・∀・)「……いや、何でもないよ」


 ブーンの問いに首を横に振って答える。
 焼失した亡骸があった場所を向き、合掌するモララー。
 タカラへの疑いを心の中にしまいつつ、バイクのもとへと歩いた。

77625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:04:42 ID:wQXRKlTg0

 ――――――
 ――――
 ――


 その日の夜。
 ブーン達五人は、バーボンハウスへと来ていた。
 今夜は酒を飲むためではなく、夕飯を食べに訪れている様子。
 ブーンとモララーの前にはカツカレー、ドクオの前にはオムライスがあり、ツンの前にはカルボナーラが。

 上級アンデッドの正体を掴めぬ中、お酒を飲んでは緊急時に向かうことが出来ない。
 そう考えると、自然と酒を飲みたい欲も無くなった。


川 ゚ -゚)「お待たせ致しました」


 注文を受けた料理をトレーに乗せ運んだ来たのはクー。
 トレーの上には、イカやエビ、ホタテが贅沢に使われた大盛りのピラフが乗っている。


川 ゚ -゚)「こちらシーフードピラフになります」
 _
( ゚∀゚)ノ 「はい……俺です」

川 ゚ -゚)「……どうぞ」
 _
( ゚∀゚)「……ども」


 気まずい雰囲気。
 二人が対面するのは、植物園の一件以来となる。
 ジョルジュは未だに根に持っていて、クーを見ると自分の不甲斐なさを思い出してしまうようだ。

77725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:05:19 ID:wQXRKlTg0


( ^ω^)「お前まだ気にしてんのかお?」
 _
( ゚∀゚)「っせーな……散々俺のこと嫌ってる奴に助けられたんだ、しかも仮にも女に……男として立場がねぇよ……」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたが今も元気にご飯食べれるのはクーさんのおかげなんだから、感謝してればいいの」
 _
( ゚∀゚)「へーい」


 ふてくされた態度を取り、スプーンをピラフの中に潜り込ませ、山盛り掬った米を口の中に頬張った。


ξ゚⊿゚)ξ「そういえば、例の上級アンデッドはどうなの?」

( ・∀・)「……どうしても正体が掴めずに終わってしまう」

('A`)「逃げ足が早いのか、俺達が遅いのか……どっちだろうな」

( ^ω^)「何にしても、このままだと誰一人守れずに次々と……」

ξ゚⊿゚)ξ「何か良い方法があるはず!みんなで考えて、必ず上級アンデッドを捕まえようよ!」

( ・∀・)「うん……そうだね」

('A`)「にしてもこう、次は俺がビシッと締めたいな!俺も成長したところ見せないと!」

( ^ω^)「お前は十分やってるお、協力して倒すことが一番の目的なんだから」

('A`)「まぁ、そうなんだけどさ……」


  ♪テケテンテンッテンテンテンテンテンッ


('A`)「あ、ちょっと待ってくれ」

( ^ω^)「はいお」

77825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:05:57 ID:wQXRKlTg0


( ・∀・)「剣藤、タカラのことだけど……」

( ^ω^)「タカラさんがどうかしましたか?」

( ・∀・)「うーん……個人的にだけど、あまり信用出来ないんだ」

( ^ω^)「それは、どうして?」

( ・∀・)「変じゃないか?」

ξ゚⊿゚)ξ「何が?」

( ・∀・)「何で奴はいつも、的確にアンデッドが現れた場所に現れる?それも毎回、俺達が現れた後にだ。
      あれ以来、奴が現れなかったことがないし先に現れてたこともない」

( ・∀・)「尻尾を掴めない程に後を追えていないのに、何故場所が分かる?血の臭いを追っているなんて現実的じゃない」

ξ゚⊿゚)ξ「確かに……」

( ^ω^)「………でも、タカラさんは家族の仇を」

( ・∀・)「それが嘘だったら?」
 _
( ゚∀゚)「嘘って、何でそんな嘘つくんだ?」

( ^ω^)「……モララーさん、疑ってるんですかお?」

( ・∀・)「確証はないけどね……何だか、どうしても疑っちゃうんだよ。俺が疑うのも皮肉な話だけどね」

( ^ω^)「ふむ……」


 自虐を交えながらも、歯切れの悪い返答。
 サクサクの衣のカツにカレーを被せ、大きな口を開け一口。

 モララーの言葉に賛同し切れぬブーンは、浮かない顔で同じようにカレーを口に含んだ。

77925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:06:28 ID:wQXRKlTg0


('A`)「悪い悪い」


 電話を終えたドクオが席に戻る。
 手を振りながら謝罪するが、その顔はどこか緩んでいるように見える。


( ^ω^)「何ニヤニヤしてんだお気持ち悪い」

('A`)「うるせぇロリコン、実はな……」

('A`)「この間助けた同級生からの電話でさ、同窓会やらないか?って」

( ^ω^)「おお、行くのかお?」

('A`)「うん、みんながちゃんと謝りたい場でもあるから……来てくれると嬉しいってさ」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、その人達のこと許せるようになったの?」

('A`)「どうだろうな……もうしばらく顔合わせてないし、顔見たらあの時の感情が蘇るかもしれない。
   でもさ、あの時助けたアイツの顔忘れられないんだよ。だから俺はいつまでも過去に引っ張られるのはもうやめた!」

('A`)「そろそろ前向いて、次のステップ踏まないとさ」

ξ゚⊿゚)ξ「……うん、そうだね」
 _
( ゚∀゚)「お前もしっかりしやがってよぉ……何か俺だけ取り残されたみてぇじゃん」

('A`)「自覚あるんだな?」
 _
( ゚∀゚)「あん??」

( ・∀・)「ドクオ、よかったな」

('A`)「モララーさん達のおかげですよ、これも」

78025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:06:55 ID:wQXRKlTg0


( ^ω^)「なんだか嬉しいこと続きだな〜!やっと僕の苦労が報われてきたって感じだお」

ξ゚⊿゚)ξ「本当ね、最初はどうなるかと思ってた」

( ^ω^)「モララーさんとはちゃんとした関係が出来たし、ドクオは自分をしっかり持つことが出来たし……」


 そこに、再びクーがやってきた。
 今度は飲み物を運んできたようで、五つのグラスがトレーの上に並んでいる。


川 ゚ -゚)「お待たせ致しました」

( ^ω^)「クーとも、やっと打ち解けられた気がするし……」

川 ゚ -゚)「勝手なことを言うな」

( ^ω^)「はいはい」


 笑顔で見つめるブーンに対し、作らずとも出来ていたはずの冷たい表情を作るクー。
 素気ない返事にも慣れた様子で、それがまたクーの調子を狂わせた。
 

ξ゚⊿゚)ξ「あれ?クーって呼んでる……いつの間に?」

( ^ω^)「んー、ちょっと前から?」

(#'A`)「お前……いつの間に親交深めやがったんだよ!?おい!!お前ばっかり抜け駆けしやがってェ!!」

(#'A`)「俺も」

(*'A`)「クー♪」

(#'A`)「って呼びたい人生なんだよ!!」

( ^ω^)「呼んでみれば?」

78125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:07:26 ID:wQXRKlTg0


(*'A`)「ク……」

川 ゚ -゚)

(*'A`)「ク……ク……」

川 ゚ -゚)「気安く私を呼ぶな」

(;'A`)「駄目だ……」

( ^ω^)「残念だったな」

(#'A`)「残念だったなじゃねぇよ」




( ・∀・)「まぁ、今があるのも剣藤のおかげだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。ブーンがブレイドじゃなかったら、きっと私達バラバラだった」

('A`)「……ムカつくけど、俺も立ち直れなかっただろうしな」
 _
( ゚∀゚)「ギャレンがモララーさんでよかったとも俺は思うぜ、レンゲルもな」

( ^ω^)「要するに、誰一人欠けちゃいけないってことだお」

( ^ω^)「今はみんなと一緒だって強く実感出来るし……幸せな気持ちの方が勝ってるお」



( ^ω^)「……このまま、何もなければいいんだけどなぁ」

78225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:07:50 ID:wQXRKlTg0





 ―――――




.

78325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:08:12 ID:wQXRKlTg0


 数日後。
 この日は、ドクオが招待された小学校同窓会の日。
 ドクオは自分の家で、その支度を行っていた。


('A`)「んー……こんなもんでいいか」

('A`)「あまり決めすぎると、また何か言われるかな……?」


 洗面台の鏡を見ながら、髪型をセットする。
 ワクワクした気持ちを抱きつつも、あの頃のトラウマが消えたわけではない。

 また、何かされるかもしれない。

 無意識にそう思ってしまう自分がいた。


('A`)「いや……大丈夫だろ。何か言われたら言い返す!それだけだ」


 緊張で高鳴る胸を撫で下ろし、深呼吸。
 胸をとんとんと叩き、鏡に映る自分に頷いた。

 部屋に戻り、軽く荷物を纏める。


('A`)「そろそろ出るか……」

('A`)「……俺がこうしてる間にまたアンデッドが出たら、どうするかな」

('A`)「あの二人だけでもどうにかなるだろうけど……放っとけないよな」


 ライダーとしての自覚が芽生えてか、ブーン達が心配になった。
 机の上に置かれたレンゲルバックルを取り、バッグの中にしまう。
 忘れ物がないことを確認し、バッグを背負いドクオは部屋を出た。

78425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:08:37 ID:wQXRKlTg0

 ――――――
 ――――
 ――


 だが、皮肉にもドクオの心配は、まさにその時に的中していた。
 ドクオが同窓会に向かうため早めに家を出たと同じ頃、アンデッドサーチャーが一つの反応をキャッチ。
 キャッチしたのは、もちろん♥のカテゴリーJ。

 ブレイド達は再び、アンデッドサーチャーがキャッチした反応のもとへ急行していた。


ξ゚⊿゚)ξ[もうすぐよ、何体いるか分からないから気をつけて] 

( OMO)「了解!」

ξ゚⊿゚)ξ[今のところ、カテゴリーJの反応はまだそこにあるわ]

( OwO)「みたいだな……今度こそアンデッドをとっ捕まえてやるお!」


 更にバイクを加速させ、目的地へと突き進む。


「おい、あれ仮面ライダーじゃないか!?」

「すげぇ!本当にいたのか!」


 公道を走る仮面ライダーの姿を見ては、指を差しスマホのカメラを向ける者が横目で何人も確認できる。
 

( OwO)(早くアンデッドを封印しないと、この人達もいずれ……)

( OwO)(それだけは、絶対にさせないお!)

78525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:09:08 ID:wQXRKlTg0


 バイクを走らせて数分後。
 目的地は着実に近付いている。目の前に示されている反応もとても近くなった。


( OwO)「もうすぐ着くお!」

ξ゚⊿゚)ξ[……ああ!まただわ……]

( OMO)「なんだ?」

ξ゚⊿゚)ξ[……やっぱりだめ、また消えた]

( OMO)「なに!?」

( #OwO)「クソッ!毎回毎回見計らったかのように消えやがって……!!」


 サーチャーの反応をいち早く確認することが出来るツンは、カテゴリーJの反応が途絶えたことを報告。
 ライダー達の眼前に見えているサーチャーからも、確かに反応が途絶えた。
 もう少しというところで毎回途絶えてしまう反応は、まるでブレイド達の来着を監視しているようだった。


 悔しさを噛み締めながら現場に到着する二人。
 そこにはやはり……狼人間の群れが跋扈していた。


「グルルルル……」

「ワオオォォォォォン!!」

( OMO)「チッ……やるぞ……!」

( OwO)「はい……」


 バイクから降り、二人はそれぞれの武器を手に取る。
 アンデッドを捕まえることの出来ない無力さに苛まれながら、また罪のない人間を裁く。

78625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:09:28 ID:wQXRKlTg0


ξ゚⊿゚)ξ[ちょっと待って!]

( OMO)「今度はなんだ?」


 狼人間の群れに向かおうとした二人は、ツンの呼び止める声に気を引かれた。


ξ゚⊿゚)ξ[カテゴリーJの反応を確認!そこから更に遠く離れた場所……!]

( OwO)「このタイミングで別の場所に現れたってのかお!?」


 再びカテゴリーJの反応を確認するアンデッドサーチャー。
 二箇所目に出現するのは此度が初めての事。
 ましてや、まだ目の前の狼人間を倒せていない時に。


( OMO)「剣藤、ここは俺に任せてカテゴリーJを追え!」

( OwO)「えっ!?でも、モララーさん一人じゃ……」

( OMO)「これ以上被害を増やさないことの方が先決だ、いいから行け!!」

( OwO)「……分かりました!気をつけて!」


 ギャレンの命令を受け、ブルースペイダーに乗り遠く離れた場所に出現したカテゴリーJを追い始める。
 背中を見届けることはせず、ギャレンは狼人間達に向けギャレンラウザーを構えた。

 その時、ひとつの疑問が頭を過ぎる。


( OMO)(何故タカラは現れない?このことを予測して先回りしているのか?)

( OMO)(いや……何の情報も得られない普通の人間に、そんなことは出来ない……)

( OMO)「ツン、カテゴリーJが消えても場所が分かるように剣藤が向かった位置の特定をしてくれ」

ξ゚⊿゚)ξ[了解!]

78725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:09:49 ID:wQXRKlTg0





 ―――――




.

78825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:10:13 ID:wQXRKlTg0


 ギャレンに最初の場を任せ、単身カテゴリーJを追跡するブレイド。
 ブルースペイダーの性能を以ってしても、そこそこ時間が掛かってしまった。

 ブレイドが到着したのは、隣町の遊園地。
 だが、既にカテゴリーJの反応はまたも途切れてしまっていた。
 遊園地にも関わらず人一人の影はなく、スタッフの存在すら見受けられない。


( OwO)「もしかして……アンデッドが!?」


 最悪の展開を想像してしまう。
 全員がアンデッドにやられてしまっていたとすれば……遊園地なだけに、人数の規模も今までとは桁が違う。
 警戒しながらも、無人の入り口を突破し、遊園地の内部へと進む。

 
 たくさんの遊具や乗り物が立ち並ぶ内部。
 何度も周囲を見渡すが、やはり人がいるような気配はない。


( OwO)「どういうことだお……みんな逃げれたのかお?」

「ぐっ……!」

( OwO)「!?」


 突如、人の呻き声。
 すぐに反応し、背後から聞こえるその声に警戒する。


( OwO)「……!?あなたは!?」

78925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:10:36 ID:wQXRKlTg0


(,,メ;^Д^)「くっ……ブレイドか……」

( OwO)「タカラさん!!」


 そこには、大きく裂かれた腕を押さえながら苦しそうに歩くタカラがいた。
 服はボロボロに引き裂かれ、見える素肌には引っ掻き傷がたくさん形成されている。
 ブレイドのもとへ辿り着く前に力が尽きたのか、タカラは膝から崩れ落ちた。


( OwO)「タカラさん!!どうしたんですかこの傷は!?」

(,,メ;^Д^)「奴だ……!奴を、見つけた……!」

( OwO)「例のアンデッドのことですかお!?」

(,,メ;^Д^)「そうだ……うぐっ!」

( OwO)「タカラさん、傷がひどいですお……!」

(,,メ;^Д^)「構うな!」

( OwO)「………」

(,,メ; Д )「クソッ…!なんて無様だ……一矢報いることも出来ずに、このやられ様か……」

(,,メ; Д )「こんなものを持ってても、何も出来ないのか俺は……!!」


 家族の仇を果たせぬどころか、一方的に打ちのめされたタカラ。
 銃を置き、悔しさに歯を食いしばる。そして、硬い地面を拳で殴りつけた。

79025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:11:03 ID:wQXRKlTg0


(,,メ;^Д^)「あいにく、ここにいた人は全員逃げることが出来たようだ……俺の仕事じゃないというのに」


 タカラの言葉は、タカラ自身が命を懸けて人を守ったことを意味していた。
 その言葉に安心してか、ブレイドは変身を解除。地に跪くタカラに向け、手を差し出した。


( ^ω^)「……タカラさん、命があっただけでもよかったですお」

( ^ω^)「安全な場所まで肩を貸します。痛むかもしれないけど、立ってください」

(,,メ; Д )「………大丈夫だ、自分で歩ける」


 ブーンの手を借り立ち上がる。
 肩を借りることを拒んだタカラは俯いたまま動かない。


( ^ω^)「着いてきてくださいお」


 タカラの心中を察するブーンは、それ以上の言葉をかけない。
 一言だけ告げると、タカラを背に遊園地内の安全な場所へと向け歩き出した。


(,,メ; Д )「………」

(,,メ^Д^)


 顔をあげ、ブーンの背中を見つめるタカラ。

 




(,,メ ゚∀゚)


 ――その表情が、変わった。

79125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:11:25 ID:wQXRKlTg0


(,,メ ゚皿゚)Ш 「………」
   
( ^ω^)「タカラさん、大丈夫ですお。そのアンデッドは必ず僕達が捕まえます」

(,,メ ゚皿゚)Ш「……ああ」


 人間のものとは思えぬ鋭利な爪が伸びた右手。
 むき出しにする歯はとても鋭く、肉を食いちぎるのはとても容易だろう。

 ――目の前の、ブーンの肉も。


( ^ω^)(許せないお……カテゴリーJ……!)


 人間を次々と殺め、自分の駒として戦わせる残虐なアンデッド。
 その憎しみは日を重ねるごとに募っていく。
 

 憎んでいる存在が、背後に居るとも知らず。


(,,メ ゚皿゚)Ш「………ウヴヴゥ゙ゥゥッ!!!」


 低い唸り声を喉から鳴らす。
 そして、ブーンの背中を貫くために、構えた右手を勢いよく伸ばした。
 

 だが、間一髪でその腕は掴まれた。


(,,メ ゚皿゚)「ウヴッ!?」

( ^ω^)「!?モララーさん!?」

79225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:11:46 ID:wQXRKlTg0


( #・∀・)「正体を現したな、タカラ……いや。カテゴリーJ!」

( ^ω^)「モララーさん……それにドクオ!?」


 ブーンが振り返ったそこには、タカラの腕と首を掴み押さえ込むモララーの姿。
 そして、同窓会へ向かうはずのドクオの姿があった。
 

(,,# ゚皿゚)「グウッ…貴様ァ……!!」

(#'A`)「てめぇ、俺達を騙してたのか!!」

( ^ω^)「……?どういうこと……」

( ; ^ω^)「!?!?」


 モララーが掴むタカラの腕。その右手を見た途端、ブーンは言葉を失った。
 タカラの右手は、人の手とは思えぬ形状と化していた。


( #・∀・)「貴様はあたかも俺達の味方のようなフリをして、俺達の動向を確認しながら動いていた。
      人間のフリをして、俺達に近付いたんだろう!?」

( #・∀・)「通りで俺達が辿り着く前に、アンデッドが都合良く居なくなる訳だ」

( ; ^ω^)「……嘘でしょ?タカラさん…!?」

( #・∀・)「家族が殺されたなどというのもでっちあげた嘘だ、俺達を信用させるためのな!
      貴様は人間社会に潜り込み、俺達の監視から外れた場所で効率よくアンデッドを倒すため……!」

79325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:12:08 ID:wQXRKlTg0


(,,# ゚皿゚)「ンウグゥアァッ!!」


 強引にモララーの拘束を振り払う。
 再び俯くタカラ。
 だが、俯いていても分かる。


 タカラは、笑っている。


(,,メ Д )「……フッ、クククク……」

(,,メ゚∀゚)「フッハハハハハハハ!!」

(#'A`)「何笑ってんだお前!?」

(,,メ^Д^)「少しだけお前の言うことを訂正してやろう」

(,,メ^Д^)「家族が殺されたのは嘘じゃない、あれは本当にあったことさ」

(,,メ゚∀゚)「そう……この姿をした男の前で、確かに俺は家族を殺した。そして……この男さえも殺した!!」


 人間の姿の自分を見せつけながら話すタカラ。
 タカラが擬態している人間の姿は……タカラ自身が殺した人間の姿だった。


(,,メ^Д^)「だがな、あれはただの実験に過ぎなかった。失敗したが、俺が人間どもを下僕に変えるための力を試しただけだ。
       あの女が俺に授けた力をな……」

( ・∀・)「BOARDの女性の話か?そんなものも嘘だろう!」


(,,メ^Д^)「――いや?それは本当さ」

79425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:12:31 ID:wQXRKlTg0


( ・∀・)「何……?」

(,,メ^Д^)「奴は俺の正体を知っていて近付いて来た。そして……普通ではありえないこの力を俺に授けた」

(,,メ^Д^)「あの女が何を考えてそうしたかは知らないが、そんなものには興味ない!
       俺はこの力を使って、あることを考えたんだ……」

(,,メ^Д^)「クククク……フハハハハ……!」


 不気味な高笑い。
 三人は、タカラをただ怪訝な目で睨み続ける。


(,,メ^Д^)「お前達……俺を追い詰めて、正体を明かしてそれで全てが済むと思ってるんだろう?」

(,,メ^Д^)「ヒャハハハハ!!馬鹿な奴らだ、お前らは本物の間抜けだなァ!!」

( #・∀・)「………」

(,,メ^Д^)「おい……この訳の分からない物が建ち並ぶ広い場所に、本当に人間が一人もいなかったと思うのか?」

(,,メ^Д^)「俺が手を掛けた奴らが一体どんな姿になってきたかは知ってるだろう?
       奴らは俺の思うままに動く、下僕に過ぎない」

(,,メ^Д^)「ただ……下僕でも腹を空かせるからなぁ、餌を与えないといけないんだ」

('A`)「さっきから何が言いたいんだ!?」


 痺れを切らし怒鳴りつけるドクオを見ては、目を見開き満面の笑みを浮かべる。


( #・∀・)「貴様……全員を殺したのか!?」

(,,メ゚∀゚)「大当たりだ!!全員俺の下僕に変わり果てた!それで、ちょっとばかり餌を食わせに行ったのさ……」

(,,メ゚∀゚)「お前らが大事にしてる、"仲間"って奴の肉をなァ……!!」

79525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:12:54 ID:wQXRKlTg0


( ; ・∀・)「………!!」

( ; ^ω^)「まさか……!!」


 ポケットのスマホを取り出し、急いでツンへと発信するブーン。
 モララーも同様に、ジョルジュへと発信。
 耳に当てたスマホから、相手を呼び出す音が流れる。


 …………。

 …………。


( ; ^ω^)「ツン……!」


 …………。

 …………。


( ; ^ω^)「………」

( ; ・∀・)「出ない……」
 

 ツンもジョルジュも、二人の着信を取ることはなかった。


(,,メ^Д^)「今頃どうしてるんだろうなぁ……?奴らに捕まって、今にも食われそうになってるかもしれないなぁ」

( #^ω^)「貴様………!!」

79625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:13:16 ID:wQXRKlTg0


(,,メ^Д^)「ヒヒヒヒヒ……!!でもひとつだけ助かる方法はあるぞ。
       奴らは俺の意思で動く、俺が止めろと命令すれば奴らは止まる」

(,,メ^Д^)「そうだなぁ、俺の条件を飲めば……助けてやらんでもない」

( ; ・∀・)「……最初からそれが目的だったのか!?」

(,,メ^Д^)「ご名答だ!貴様らの命も人間の命もどうでもいい、俺の目的はただひとつ……」

(,,メ^Д^)「ライダーのバイクとカードを俺に寄越せ。特にブレイド……♠スートの力は俺と相性がぴったりでな。
       お前のカードを寄越せ!そうすればお仲間の命は助けてやるよ」

( ・∀・)「なんだと!?」

(,,メ^Д^)「他のアンデッドは全て俺の敵だ!貴様が言った事は間違いじゃない。
       だが、封印する術は今のところ貴様らしか持っていない」

(,,メ^Д^)「なら、カードの力を発揮できるバイク……そしてそのカードを手にすればいい!そして俺はアンデッドとして最強になる!
       アンデッドを俺の手で全員ぶっ倒して、俺の力とする!そして最後に勝ち残るのは……俺だ!!」


 全ては、ライダーの持つ力を狙ったタカラの計算通りだった。
 悲劇の人間を装いブーン達に近付き、ライダーの動きを監視する。
 自分への疑いを無くすことで、監視から外れたタカラは自由に動き回ることが出来た。
 狼人間を常にライダー達に与えながら、自分の存在を警戒させながらも自分を信用させる。

 そして、最後は自分の正体が明かされても問題の無いように、ツンやジョルジュを人質に仕組む。

 モララーの疑念は、間違ってはいなかった。
 だが、ブーンはタカラを強く信用してしまった。

79725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:13:40 ID:wQXRKlTg0


( ^ω^)「………分かった」


 カードデッキを取り出し、タカラに差し出すブーン。
 

(,,メ^Д^)「フッ、それでいい。物分りが良くて助かる」


 鼻を鳴らし、カードデッキを奪い取る。
 カテゴリーAを含む全てのカードを確認すると、タカラは口角を吊り上げる。


( ^ω^)「それで……それでツン達を助けてくれるんだろうな?」

(,,メ^Д^)「ああ、もちろんさ。俺は嘘をつかない……」

(,,メ゚∀゚)「……というのは嘘だ!」

( ^ω^)「何……!?」

(,,メ゚∀゚)「ハハハハハハ!!どこまでも馬鹿な奴らだ!生かしておくわけないだろう!!
      アンデッドを倒そうとする連中も、カードが手に入った今みんな邪魔だ!!貴様らの命などどうでもいい……わけないだろ!?」

( # ω )「ッ………!!!!」

( #・∀・)「貴様……!!」

(,,メ^Д^)「クククク……!」


 思うままに騙される人間共に、滑稽過ぎて笑いが止まらない。
 ブーンとモララーの怒りに満ちる表情が、タカラの笑いをより誘った。


(,,メ゚皿゚)「……フーッ、フーッ…!ウウウヴヴヴヴゥッ!!」

( ; ^ω^)「うっ!?」

79825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:14:04 ID:wQXRKlTg0


 再び歯をむき出しにし、突如息を荒げる。
 ブーンを突き飛ばしたタカラは、軽々と宙を回転しながら人としての姿を消した。
 着地して現れたのは、全身に鋭いナイフを纏った狂気すら感じる姿のアンデッド。
 狼にも似た風貌は、まさに狼人間の生みの親であることを証明していた。

 ブルースペイダーへと一直線に疾走するタカラは、華麗に飛び乗る。
 人の文化を知らないアンデッドとは思えぬ程、器用にバイクのエンジンをかけた。

  (
彡,,メ皿゚彡『コイツも今から俺の力だ!』

( ・∀・)「待て!!」


 呼び止める声など意味を成さない。
 タカラは、そのままブルースペイダーを走らせ何処かへと去って行ってしまう。


('A`)「ブーン、大丈夫か?」

(  ω )「………モララーさんの言う通りだった」

( ・∀・)「剣藤……?」


 ドクオに差し伸べられた手を掴まず、ブーンは地に倒れたまま小声で囁いた。


(  ω )「僕のせいだお……僕があいつを、何の警戒もせず信じてしまったから……」

(  ω )「ツンもジョルジュも……モララーさんやドクオも、こんなことに巻き込んでしまった……!」


 酷く責任を感じ、自分を責めるブーン。
 同時に、アンデッドに騙されたことの悔しさでギリギリと歯を食いしばる。


( ・∀・)「……剣藤、立て」

79925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:15:23 ID:wQXRKlTg0

 ♪大いなる力 - https://www.youtube.com/watch?v=d18HxqqREGk


( ・∀・)「お前だけの責任じゃない……俺にも責任はある」

( ・∀・)「BOARDの女性……奴が言った言葉に、希望を感じてしまっていた部分があった。
      奴を通じてその女性に接触すれば……所長達と力を合わせ、BOARDの再建も有り得ると思ってしまった」

( ・∀・)「全部一人で責任を負おうとするな。俺達は痛みを分け合っていく仲だろ」

( ^ω^)「でも……僕は、ただただ何回も何回も騙されて……」

( ・∀・)「百回人を騙す奴より、百回騙されて馬鹿を見る奴の方が俺は好きだ」

( ・∀・)「それに……どんなことがあっても、最後までお前と共に戦うと覚悟を決めた本当の仲間なら、此処にいる」

( ・∀・)「俺が府坂に騙されていた時のように、今度は俺がお前を導く。それが仲間だと、お前が教えてくれたんだ」

( ^ω^)「モララーさん……」


 手を差し伸べるモララー。
 既に掴むべき手は差し出されているにも関わらず、ドクオも再び手を差し伸べた。 


('A`)「そうだよ!あんな奴、俺達が一丸になればぶっ倒せる!ツンのとこにはジョルジュがいるんだろ?簡単にやられやしないさ」

('A`)「まぁ、これは根拠のない自信だけど……さっきまでツンはサーチャーの反応を送ってくれてたんだろ?
   それに狼人間の群れが本当に向かってたとしたら、俺達は途中でその群れを見てるはずだ」

('A`)「でも、あいつがはったりかましてるとも思えないし……とにかく急いでなんとかしないと!」

80025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:15:46 ID:wQXRKlTg0


( ・∀・)「奴を倒せば、狼人間の動きも制御出来るはず。すぐに奴を追おう、今度こそ俺達で奴を倒すんだ!」

('A`)「協力して倒すことが重要。だろ?お前が言ったんだぜ?」

( ^ω^)「……へっ、お前に元気付けられるなんてな」


 両手を伸ばし、差し出された二つの手を掴む。
 二人に引っ張られながら自分の足に力を入れ、深く深呼吸。


( ・∀・)「カテゴリーAは渡さなかったんだろう?」

( ^ω^)「もちろん、あいつは力になるカードしか欲しくないだろうと思って」

( ・∀・)「なら問題はないな。俺の小型サーチャーを渡すから、後ろに乗って道を案内してくれ」
   っ■

( ^ω^)「分かりましたお」

('A`)「じゃあさっさと行こうぜ、とっとと倒して俺も同窓会に行くんだ」

( ^ω^)「よし、行こう!」


 アンデッド打倒に向け、一つになった心が共鳴する。
 タカラを追うため、三人はバイクのもとへと走って行く。






 ――その背中を、高い位置で宙吊りになった観覧車の上から見つめる、一人の少女。


o川*゚ー゚)o「………」

o川*゚ー゚)o「……お友達、なれるかなぁ」

80125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:16:11 ID:wQXRKlTg0





 ―――――




.

80225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:16:35 ID:wQXRKlTg0


 逃走したタカラは、人一人いない広々としたプールへと侵入。
 盗んだブルースペイダーで柵を越え、プールサイドに華麗に着地する。

 そして、ブーンから騙し取った♠スートのカードを懐より取り出す。

  (
彡,,メ皿゚彡『フッフッフッ……コイツがあれば、アンデッドの力を俺のものに出来る!』


 自身の左手と、ブルースペイダーに搭載されたラウザーシステムを交互に見つめる。

  (
彡,,メ皿゚彡『このバイクに俺のアンデッドウィルスを注入すれば、更に俺に適したマシンになる…!』
  (
彡,,メ皿゚彡『俺は強力な力で全てのアンデッドを倒し、自分でアンデッドを封印することが出来る…!最高だ!!』


 カードにブルースペイダー……そして、BOARDの女性と言う者から得た力。
 他のアンデッドには持つことの出来ない力を手にし、喜びに満ち溢れる。
 力を全て駆使し、アンデッドを封印する姿を想像する。笑いが止まらない。

 だが、喜びに浸るのも束の間。
 余韻を邪魔する、一人の気配を感じた。

  (
彡,,メ皿゚彡『………貴様から試してやろうか?』


 気配のする方へ視線を向け、ブルースペイダーから降りる。
 すると、その声に応じるように視線の先から現れた。

80325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:18:57 ID:wQXRKlTg0


ミセ*゚ー゚)リ「ふふ、やっぱり面白いことしてるじゃない」


 現れたのはミセリ。
 タカラの一連の行動を陰から監視し、機を伺っていたのだ。
 

ミセ*゚ー゚)リ「私の予想は当たったわ、きっとそれが目的だと思った」
  (
彡,,メ皿゚彡『フン、だったらどうする?俺から奪おうと言うのか?』

ミセ*゚ー゚)リ「私と手を組めばそんなことはしないわ」
  (
彡,,メ皿゚彡『馬鹿な…俺は誰とも手は組まないと言ったはずだ』


 片手のみで扇形に綺麗にカードを広げ、ミセリに見せ付ける。
 

ミセ*゚ー゚)リ「はぁ、残念ね。乱暴なことはしたくなかったんだけど…」

ミセ*゚ -゚)リ「……お前がその気なら、力ずくで奪うまでだ……!」
  (
彡,,メ皿゚彡『望むところだ…!』


 交渉は決裂し、互いに敵意を見せ始め一触即発な状態へと加熱していく。
 睨み合いながら距離を取る両者。
 まさに今、戦いの火蓋が切って落とされようとした。

 その時。

 手を叩くような乾いた音が、パン、パン!とプールに響き渡った。

80425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:19:28 ID:wQXRKlTg0


ミセ*゚ー゚)リ「……?」


 音のする方へ、睨み合っていた二人の視線は向けられる。
 
 プールの中心。
 繋がった広いプールサイドとは隔離されたように点在する、小さい子供用のプールだろうか。 
 その脇にビーチパラソルを差し、白いビーチチェアに寝そべる一人の男がそこにはいた。

 深々と被った麦わら帽子を僅かに上げ、視界を広げる。


「……ああ、まったくうるさいな」


 気だるそうにゆっくりと立ち上がった男。
 エスニック系の白い緩めの服で覆っている身体は、服越しでも分かるとても強靭な肉体。
 背丈は高く、その見た目だけで人を威圧出来る。
 帽子に手を当て、対岸で対峙しているミセリとタカラを見つめる。


「おいお前ら、人のテリトリーで勝手に騒ぎを起こして……」


 直後、スパンの無い跳躍で軽々とプールを飛び越え、対岸へと渡る屈強な男。
 二人の前に立ちはだかり、ようやく顔がはっきりと露になる。
 そして、気だるそうな表情で言葉を続けた。


( ゚∋゚)「……特別に許可してやる。さぁ、戦ってくれ」

ミセ*゚ー゚)リ「お前は……!」
  (
彡,,メ皿゚彡『貴様……カテゴリーJか!?』

80525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:19:48 ID:wQXRKlTg0


 男を見た瞬間、威勢の良かったミセリが微かに萎縮している。
 タカラによって正体が判明した。
 この男もアンデッドであり、上級アンデッド。タカラと同じカテゴリーJだ。

 ブーンとモララーがそれぞれ封印したカテゴリーJ。
 残るカテゴリーJは二体で、そのうちの一体は♥スートのタカラである。

 と、すれば……残るカテゴリーJは、♣スートのみ。


( ゚∋゚)「いいからいいから、どちらかが潰れるまで戦ってくれ」


 二人の意識が男に向けられているにも関わらず、男は二人の戦いを促す。
 

ミセ*゚ー゚)リ「……あら、ごめんなさい。あなたのテリトリーだとは知らなかったの。
      あなたを怒らせるのは得策じゃないから、やめておくわ」

( ゚∋゚)「気にするな、俺は何もしない」
  (
彡,,メ皿゚彡『ハッ!今の俺なら、お前も倒せるかもしれんな。無敵の力を手にしたこの俺なら!』

( ゚∋゚)「フム……」


 上級アンデッドによる三つ巴。
 殺気を見せず落ち着いている男の隠し持った力を知ってか、ミセリは一歩引いている。
 それに対して、タカラは好戦的な態度を示すも、男は興味のない素振りを見せた。


( ゚∋゚)「…ん?」


 突如、近付く気配を感知する男。
 やがて近くなるバイクの排気音にミセリ達も気付き、その正体が何かを感じ取った。

80625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:20:14 ID:wQXRKlTg0

  (
彡,,メ皿゚彡『フン、来たか』


 二台のバイクが到着し、ブーン達三人が現れた。
 モララーの後ろに同乗していたブーンが真っ先に降り、手に持ったサーチャーをポケットにしまう。
 そして、並び立つ面々を一人ずつ確認する。


( ・∀・)「貴様……」


 ヘルメットを取るモララー。
 言わずとも目に入ったのはタカラ。奪われたブーンのカードを手に持っている。
 先に降りたブーンが最初に目に入ったのは、ジョルジュを騙し母とでぃを人質に取られた因縁を持つミセリ。


( ^ω^)「義永ミセリ……!お前もいたのかお!」

ミセ*゚ -゚)リ「お友達は元気かしら?」

( #^ω^)「ふざけんな!!お前だけは許さない!!」

ミセ*゚ -゚)リ「ふん」


 冷たく見下した目が、ブーンを睨み付ける。
 グリンクローバーから降りたドクオは、面識のないもう一人の男に気が付いた。


('A`)「お前もアンデッドなのか!?」

( ゚∋゚)「仮面ライダーか……倒すならコイツらにしてくれ、俺は戦いが嫌いなんだ」

('A`)「そんなこと信じられるか!」

80725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:20:38 ID:wQXRKlTg0


ミセ*゚ー゚)リ「フフフ、一旦お預けね。三対三でどうかしら?」
  (
彡,,メ皿゚彡『仕方ない……仮面ライダーを葬るまたとない機会だ』

( ゚∋゚)「勝手にやってくれ」


 臨戦態勢を取るアンデッド達。
 男だけは乗り気ではなく、立ち尽くしたまま。


( ・∀・)「上級アンデッドが三体……やれるか?」

('A`)「はい、せめて一体は封印してやる!」

( ^ω^)「やるしかないお…!」


 ドクオを真ん中に肩を並べる三人。
 上級アンデッドが三体という、かつてない脅威に立ちはだかる。
 独特な緊張感が漂うも、ブーンだけはアンデッドへの怒りで滾っていた。

 ブーンはバックルを取り出し、モララーがカードを装填し、ドクオはバックルを装着。
 三人一斉に装着したバックルから、三つの待機音が重複して複雑な音を奏でる。
 アンデッドを真っ直ぐ視界に捉えながら、同時に変身の構えを取る。

80825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:21:01 ID:wQXRKlTg0

 

( ^ω^)ψ
    /

('A`/)       「「「変身!」」」


o( ・∀・)
 \


    【 -♠TURN UP- 】 【 -♣OPEN UP- 】 【 -♦TURN UP- 】

80925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:21:25 ID:wQXRKlTg0


 バックルを展開し、三つのゲートが射出される。
 接近するレンゲルのゲートに、変身者の通過を待つブレイドとギャレンのゲートが二つ。
 ドクオの両サイドに並んでいたブーンとモララーがゲートに向け走り出し、ドクオは構えたままゲートを待機。

 ブレイトとギャレンへ変身しアンデッドへと向かって行った二人に対し、変身を終えたレンゲルが遅れて動き出した。


( OwO)「うおおおおおッ!!!」

ミセ*゚ー゚)リ「ふふ、そんなに私が憎いか…!?」


 ブレイドが狙いを定めたのは、因縁深いミセリ。
 自身を狙う理由は察しがついている。
 故に不気味に笑ってみせると、ミセリはアンデッドへと姿を変身しブレイドに応戦。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ふっ!』

( OwO)「お前のっ!その攻撃にはもう乗らないおっ!!」


 ミセリが伸ばした幾つかのツルを、咄嗟の判断で抜いたブレイラウザーで斬り落とす。
 障害のなくなった道を突き進み、右手に持った剣でミセリを斬りつけた。

   ∧Λ
∠*゚`ー´)ゝ『うっ…!ふふふ、少し甘く見てたわね…!』


 胸部より流れる緑血を指で掬い、妖艶な唇から覗かせた舌先で舐め取る。

81025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:21:45 ID:wQXRKlTg0

 
( OMO)「これ以上貴様の思い通りにはさせない!」
  (
彡,,メ皿゚彡『ハハハ!止められるものなら……止めてみろ!!」


 ギャレンは、今回の元凶であるタカラを攻撃。
 騙された事への怒りと、危険に晒されているツンを救うための焦りが生じていた。

 両手の拳で繰り広げるパンチをことごとく躱され、遂には右腕を取られてしまう。
 すぐに蹴り上げた左足で腕を振り解こうとするも、タカラは頭を下げたと同時に掴んだの腕を離す。
 蹴りの勢いで右へ回転するギャレンの背中を、両手に伸びる鋭利な爪で二度切り裂いた。


( ; OMO)「ぐうっ…!」
  (
彡,,メ皿゚彡『早速力を試してやる、どけ!』


 ギャレンの背中を蹴り飛ばし、ひと飛びでブルースペイダーのもとへ移動。
 カードを一枚取り出し、ラウザーシステムにカードをスライドさせた。


    《-♠9 MACH-》


 カードをラウズしてすぐ、左手をラウザーシステムへと突っ込む。
 本来ならブルースペイダーにしか付与されない力を、物理的に強引に自らへと付与させたのだ。

  (
彡,,メ皿゚彡『感じる……これがアンデッドの力を使うということなのか……!!』


 "♠9のMACH"の力を得たことで、タカラに高速移動の力が宿った。
 再びギャレンのもとへと走るタカラ。
 その速度は、もはや視界に捉えることが難しいほど。
 元々素早い動きを得意とするタカラに、高速移動の力が加わった事によって、この上ない速度を生み出す。

81125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:22:08 ID:wQXRKlTg0


 圧倒的な素早さ。
 全身に備わったナイフを活かし、高速の体当たりをギャレンに見舞った。


( ; OMO)「うああっ!くっ……速過ぎる!」


 まるで、疾風の刃の如く。
 四方から飛翔する刃に切り刻まれるような攻撃に、ギャレンは為す術なく蹂躙される。

  (
彡,,メ皿゚彡『ヒャハハハハ!!最高だァ!!こいつは気分が良いぜ!!!』

( ; OMO)「ううっ…!!」

( OHO)「モララーさん!!」


 男へと立ち向かうも相手にされずにいたレンゲルが、ギャレンの危機に気付いた。
 戦おうとはしない男をそのままに、レンゲルラウザーに一枚のカードをラウズ。


    《-♣9 SMOG-》


 カードの力を得たレンゲルラウザーを突き出し、大量の煙幕を発生させる。
 素早く移動を繰り返すタカラを包み込み、ようやく動きを制御させることが出来た。

  (
彡,,メ皿゚彡『チィ…ッ!何だこの煙幕は!?』

( OHO)「大丈夫ですか!?」

( OMO)「ドクオ、すまない…っ!」

81225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:22:31 ID:wQXRKlTg0


 果敢にもタカラに再び挑むギャレン。
 アンデッドの力の効力が切れ、タカラの攻撃は一旦の落ち着きを見せる。


( OHO)「戦う気になったのか!?」


 ギャレンを救ったレンゲルは、もう一度男に向け殴りかかった。
 しかし、男はレンゲルの拳を片手で受け止める。
 

( OHO)「!?うッ……!」

( ゚∋゚)「面倒だ……何故俺に突っ掛かる?」


 体感したことのない力が、レンゲルの拳を握り潰さんとする勢いでギリギリと締め付ける。
 その強靭な肉体から繰り出される力は、説得力十二分と言ったところか。
 表情一つ変えずレンゲルを青い瞳で見つめ続け、掴んだ片手のみで軽々と投げ飛ばした。


( ; OHO)「うわぁっ!?」


 地に叩き付けられ、何が起きたかも分からず困惑すら覚えるレンゲル。
 それでも男は追撃しようとせず、先程からプールサイドに着いた両足は全く動いていない。


( ; OHO)「コイツ……やばい……!」

( ゚∋゚)「フム……全く、まだ新たな顔ぶれが来るのか」

( ; OHO)「なに言ってんだ!?」

81325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:22:52 ID:wQXRKlTg0


 ライダーとアンデッド、三対三で展開される乱戦。
 もはや収拾がつかず、いつ誰が先に倒れるかが読めない状況だ。


( OMO)「ふうっ!」
  (
彡,,メ皿゚彡『ぐうっ!?』


 腕を取り、素早く懐に潜り込むと一本背負いでプールサイドにタカラを叩き付けるギャレン。
 地にタカラを押し付けながら、ギャレンは激しく捲くし立てた。


( OMO)「BOARDの女性とは誰のことだ!!言え!!」
  (
彡,,メ皿゚彡『さぁな、名前なんて興味がない』

( OMO)「嘘をつけ!!」
  (
彡,,メ皿゚彡『そんなことより、自分のお仲間の心配でもしたらどうだ?』


 ギャレンに取り押さえられながら、タカラは静かに笑い始めた。

  (
彡,,メ皿゚彡『クククク……』
  (
彡,,メ皿゚彡『お前達の仲間の女、今頃食われてるぜ』

( OMO)「!?」

81425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:23:16 ID:wQXRKlTg0

  (
彡,,メ皿゚彡『グアアアァアッ!!』

( OMO)「くっ……!」


 ギャレンの一瞬の気の緩みを突き、強引に払い除ける。
 仰向けのまま腰と両足を宙に浮かせ、タカラは勢い良く飛び起きた。
 
  (
彡,,メ皿゚彡『残念だったなぁ!俺が向かわせた狼人間は、さっきの場所の奴らだけじゃないんだよ!!』

( OwO)「なに!?」

( OHO)「!?!?」


 ミセリと交戦中のブレイド、男に投げ飛ばされたレンゲルも、タカラの発言に気が向いてしまった。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ふん!』

( ; OwO)「うああぁっ!!」


 顔が入れ替わったミセリの口から、無数の花びらが放たれた。
 ブレイドの身体に纏わりつき、爆竹のように小さな爆発が引き起こされる。
 小さな爆発が無数に重なり、爆発に包まれたブレイドは痛みに声をあげながら体勢を崩した。

  (
彡,,メ皿゚彡『ククク…!確かにさっきの場所から向かわせたのは事実だが、それ以前にもっと近い場所から向かわせておいたのさ!』
  (
彡,,メ皿゚彡『そう、お前が下僕を相手にしていた場所からな…!』

( ; OMO)「……!?」


 ギャレンを指差すタカラ。
 タカラの反応を辿って最初に着いた場所。ギャレンは、ブレイドを先に行かせ一人でその場を受け持っていた。
 全ての狼人間を倒したつもりだったが……既に、取り逃がしていた狼人間が何体もいたのだ。

81525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:23:40 ID:wQXRKlTg0

  (
彡,,メ皿゚彡『お前達は本当に馬鹿でどうしようもないマヌケだ!騙され踊らされ……お前達がこうしてる間にも、仲間の女は……!』

( ; OwO)「ッ……嘘だ!どうせそれも嘘なんだろ!?」
  (
彡,,メ皿゚彡『なら……今から戻ったらどうだ?きっと残ってるのは、食い荒らされた女の肉だけだぜ…!!』

( ; OHO)「………そんな………」

( ; OMO)「………」


 沈黙する三人。嘘かもしれない可能性を疑い切れない。
 絶望に打ちひしがれているのか、地に倒れたまま身動きが取れず、呆然としてしまう。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『あらあら……可哀想ね』

( ゚∋゚)「ふ、くだらん」 


 捨て台詞のように吐き出した男は、そのまま静かに立ち去った。
 だが、誰も男を追おうとはしない。
 
  (
彡,,メ皿゚彡『どうした…?悲しすぎて立ち上がることも出来ないか?』

( # w )「………貴様……」


 怒りや悔しさ、悲しみが渦巻く。
 握り締める拳が震え、あまりの怒りにそう呟く声も小さい。

  (
彡,,メ皿゚彡『安心するんだな。今からお前達も……仲間のもとへ送ってやる!』

81625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:24:04 ID:wQXRKlTg0


 再び跳躍し、ブルースペイダーのもとへと移動。
 今度はブルースペイダーに乗り、選んだカードを一枚ラウズした。


    《-♠6 THUNDER-》


 ラウズした直後、先程と同様に左手をラウザーシステムへと突っ込んだ。
 途端、ブルースペイダーとタカラの身体に電撃が走り始める。
 ハンドルに両手を掛け、地に両膝を着いたままのブレイドへとブルースペイダーの正面を向かせた。
 何度もアクセルを吹かす行為は、己の存在を知らしめるかのように。

 そして、ブルースペイダーのアクセルを全開に急発進。
 青い閃光を描きながら、短い距離に位置するブレイドに向け突進した。
 
  (
彡,,メ皿゚彡『自分の持っていた力に倒される極上の気分を、味わえ!!』

( ; OwO)「ッ……!」

( ; OMO)「剣藤!!させるか――」
 
 
 右腰のギャレンラウザーを引き抜き、疾走するタカラに構える。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『邪魔をするな!』


 しかし、ミセリの花びらによる攻撃が視界を遮り、同じように小さな無数の爆発に巻き込まれた。
 

( ; OMO)「ぐああぁっ!!」

( ; OHO)「ううっ!!」
  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『ブレイドを倒すまたと無い機会、逃がしはしないわ!』

81725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:24:28 ID:wQXRKlTg0


( ; OwO)「うぐ……っ!」
  (
彡,,メ皿゚彡『死ねェ!仮面ライダー!!』


 殺意に満ちた狂気の声が、轟くバイクの音を掻き消す。
 ゆらりと身体を起こすブレイドだが、タカラの操るブルースペイダーは既に眼前へと到達。
 

( ;  w )「がはっ――!!!」
 

 正面からの衝突、更には電撃の力が加わり、ブレイドは身体を痺れさせながら吹き飛ばされる。
 激突したフェンスや壁を壊しながら、崩壊して生まれた瓦礫の上に崩れ落ちた。

  (
彡,,メ皿゚彡『終わりだ……!!』

( ;  w )「……ッぐ……」
 

 倒れたブレイドに向け、再びアクセルを全開にしたタカラ。
 用済みとなった、ただただ邪魔な仮面ライダーにトドメを刺せることに心が躍る。
 アンデッド討伐のために開発された正義のマシンは、アンデッドが操る殺戮マシンと化した。

  (
彡,,メ皿゚彡『アンデッドと戦う"運命"にあった己が生を憎むがいい!』
  (
彡,,メ皿゚彡『貴様ら全ての仮面ライダーを、俺の手で殺してやる!!!』

81825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:24:48 ID:wQXRKlTg0


 瞬く間に接近するブルースペイダー。
 荒ぶる雷は排気音と共鳴し、轟音を鳴り響かせる。

 もはや、ブレイドに逃げる時間はなかった。
 

( ;  w )「………ッ!」


 間に合わない。
 そう確信せざるを得なかったブレイドは、反射的に両目を瞑る。
 両腕を顔の前に翳し、微塵の意味も成さない守りの構えを取りながら。




 ――だが、目を瞑り視界の途絶えた目の前で突如、タイヤが地面を急激に擦る音が響いた。
 

( ; OwO)「……?」


 音が鳴った途端、衝突は免れぬであろうと思われていたはずのブルースペイダーも、衝突する気配はない。
 気のせいでなければ、ブルースペイダーはブレイドに突進する前に、急ブレーキをかけている。

 そう思ってか、翳した両腕をゆっくりと下ろし、瞑った目を開く。
  
 開いた視界にまず映ったのは……ブルースペイダーに乗ったタカラの姿ではなかった。
 ブレイドに対し背を向け立つ女性。
 そこに居たのは……。

  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『チッ、厄介なのが来たわね…』
  (
彡,,メ皿゚彡『貴様……!何のつもりだ!?』

81925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:25:09 ID:wQXRKlTg0


( OwO)「クー……!」

川 ゚ -゚)


 タカラによる突進から、ブレイドを守るようにして立ちはだかるクー。
 クーの介入は予想していなかったのか、タカラは特に驚いた反応を見せた。

  (
彡,,メ皿゚彡『退け!』

川 ゚ -゚)「退かぬと言ったら?」
  (
彡,,メ皿゚彡『何だと?何故貴様がこいつらを助ける!?』

川 ゚ -゚)「そう見えるならそれでも構わない。私はただ、お前達を倒すことにしか興味がない」


 クーの腰に、カリスラウザーが浮かび上がる。
 カテゴリーAのカードをコートのポケットより取り出し、タカラにそれを見せ付けた。

  (
彡,,メ皿゚彡『貴様……!』

川 ゚ -゚)「どうした?戦う準備なら出来ている。さっき狼の群れを狩り尽くして、腕を温めたばかりだ」
  (
彡,,;メ皿゚彡『!?!?』

( OwO)「クー、それ……まさか」

川 ゚ -゚)「……この間は私が助けられた。借りが出来たままなのが嫌なだけだ」

川 ゚ -゚)「安心しろ。ツンも、あの男も無事だ」

82025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:25:29 ID:wQXRKlTg0


 サーチャーでは捉えられぬ狼人間の反応。
 だが、アンデッドであればその気配を感じ取ることが出来る。
 大勢の狼人間がツン達に迫っていたことを、クーは感知。
 そして、本人達の知らぬところで、すべての狼人間を排除していた。

 
( OwO)「……よかった……」
  (
彡,,#メ皿゚彡『貴様余計なことをォ……!!』


 想定外の邪魔者。それだけでなく、企みまで阻止される始末。
 タカラの怒りはすぐに爆発し、クーを睨みながら鋭い八重歯を光らせる。


川 ゚ -゚)「ふん、怒ったか?策士を気取った荒削りな企みなど、容易に打ち破れる。
     身を潜めてこいつらの動向を探っていたくせに、私に注意を払わなかった時点でお前の負けだ」
  (
彡,,#メ皿゚彡『グウウウウウ……!!!』

川 ゚ -゚)「くだらない余興はここまでだ。嘘をつき過ぎれば、誰ももうお前の言葉を信用しなくなる」

川 ゚ -゚)「変身」
  っ□


    【 -♥CHANGE- 】


 カリスへと変身した直後に召喚したカリスアロー。
 眼前のタカラへと構え、光の矢を数発射出。

  (
彡,,メ皿゚彡『クッ…!』


 矢を回避する為、咄嗟にブルースペイダーから降りたタカラ。
 受け身を取りながらプールサイド上で身を構えたところに、カリスは急接近する。

82125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:26:01 ID:wQXRKlTg0

 
 軽く地面を蹴り上げ、宙に浮いた身体を勢いよく前に回転させながらタカラに斬りかかるカリス。
 タカラも咄嗟にこれを躱し、右足による回し蹴りを脳天目掛け放った。

 だが、カリスはタカラの右足を敢えて腕で防ぎ、右腕でタカラの脚をしっかりと掴んだ。


( <::V::>)『今だ!カードを奪え!』 
  (
彡,,メ皿゚彡『なっ…貴様…!』

( OMO)「ッ……!」


 カリスの声に真っ先に動いたのは、ギャレン。
 地面を拳で叩いて立ち上がり、カリスに掴まれたタカラに向け走り出す。
 カードを奪われまいと、タカラは何度も何度もカリスを殴打して抵抗するが、カリスは脚を掴んで離さない。

  (
彡,,メ皿゚彡『クソッ!離せ!離せェッ!!』

( OMO)「カードは返してもらうぞ!!」


 通りすがりに、タカラの腰に提げた巾着袋に手を伸ばし、強引に引きちぎる。
 カードを奪ったことを確認したカリスは、タカラの顔面に何度も肘を叩き込み、身体を翻し左足の踵を脳天目掛け叩き込んだ。

  (
彡,,;メ皿゚彡『ウグウゥッ…!』


 その隙に、ギャレンはブレイドへと袋を渡す。
 受け取ったブレイドは、袋の中からカードを出し全てのカードが揃っていることを確認する。


( OwO)「……大丈夫、全部ありますお」

( OMO)「そうか、ならよかった」

82225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:26:27 ID:wQXRKlTg0


  *∧Λ*
∠*゚`ー´)ゝ『これは……逃げたほうが良さそうね。ここはあなたに任せるわ!』

( <::V::>)『させるか!』


 状況不利と判断しては、タカラを残し逃走を図ろうとするミセリ。
 だが、そう何度も逃げることはカリスが許さなかった。

 目の前のタカラを蹴飛ばし、両足を揃え跳躍。
 空中で身体を回転させながらミセリの前へ着地し、振り返りながらカリスアローを斜め上に斬りあげる。

  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『ぐうぅッ…!』

( <::V::>)『貴様に借りは無いが、個人的な恨みはある。今度は私が貴様を追い回す番だ!』
  *∧Λ*
∠*;゚`ー´)ゝ『お前ェ……!!』

( <::V::>)『その狼はお前達にくれてやる、煮るなり焼くなり好きにしろ!』


 ミセリの背後に回り込み、首に掴み掛かったままそう言い放つ。
 ミセリは、カリスを振り払うことをしないまま、姿を消すための花びらを自身の周囲に発生させる。
 カリスもろとも花びらに包まれると、二人はその場から姿を消した。
 吹いていないはずの風に乗ったいくつかの花びらが、プールの水面の上に落ちる。


 優勢だったはずのタカラは、カリスたった一人の手によってあっという間に戦況を覆された。

 屈強そうな男はどこかへと去り、そのカリスもまたミセリと共に姿を消した。



 残されたのは、仮面ライダー三人に……アンデッドが一体。

82325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:26:52 ID:wQXRKlTg0

  (
彡,,#メ皿゚彡『クウッ……カリスウウゥゥ!余計な真似をしやがってェ……!!』


 既に消えたカリスに向かい、怒りを爆発させる。
 全てが自分の思い通りに、順調に進んでいた計画が……たった一人の気まぐれで全て台無しにされた。
 そう思うと、腹の底が煮え滾ってどうしようもなくなった。

 しかし、この場にいない者への怒りを見せている余裕など、本来タカラにはない。

  (
彡,,メ皿゚彡『……!!!』


 怒りに捉われ、まったく気が付かなかった。
 振り返ったそこに……三人のライダーが立ち並んでいたことなんて。



( OMO)「……好きにしていいそうだ、どうする?」


 首を回し、掌で拳を包みながら指をポキポキと鳴らすギャレン。


( OHO)「どうするって……なぁ?」


 レンゲルラウザーを右手に持ち、シャフトを伸長するレンゲル。

 答えは既に定まっている。
 六つの眼が、タカラを睨んで離さない。
 それは、ブレイドも同じこと。

 だが、ブレイドは二人の問いかけには答えない。

82425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:27:14 ID:wQXRKlTg0


(  w )「たくさんの人を手にかけ、尊い命をお前は一体いくつ奪った……?」
  (
彡,,メ皿゚彡『フン!さぁな、数など数えるわけないだろ?』

(  w )「それだけじゃない……亡骸を化け物に変えて、操って……」


 一度腰に収めたブレイラウザーを左手で逆手に持ち、引き抜いて右手に持ち変える。
 肩を並べていた二人から突き抜け、ゆっくりとタカラに近付く。


(  w )「人の命を奪うだけに留まらず、その命を蹂躙し冒涜した……」
  (
彡,,;メ皿゚彡『ッ………』


 僅かに俯きながら、声色静かに淡々と話すブレイド。
 その話し方や様子から、タカラ以上に燃え盛る怒りが垣間見えた。

 タカラの戦いに身を置く者としての本能が感じ取る、ブレイドが発するオーラ。雰囲気。
 そして、計り知れない怒りと、殺気。
 誤魔化し切ることの出来ない畏怖した心が、近付くブレイドに対して後退りする形で表れていた。
 
  (
彡,,;メ皿゚彡『……な、なんだ……お前は……!?』

(  w )「許さない……」



( #OwO)「――お前だけは……絶対に許さない!!!」

82525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:27:35 ID:wQXRKlTg0


 顔を上げ、声を張り上げた瞬間、地面を蹴り走り出す。
 一向に縮まらない距離を一気に詰め、右手で逆手に持ったブレイラウザーを左へと横薙ぎに振り払う。

 タカラはこの攻撃を、背後へステップすることで躱す。

 回避行動を取られたブレイドは、それに応じた動きを見せた。 
 回避された直後に生じた距離を咄嗟に踏み出した右足で埋め、左足による後ろ回し蹴りを腹部に叩き込んだ。

  (
彡,,;メ皿゚彡『ぐふっ……!』


 重たい蹴りが直撃し、腹部を抑えるタカラ。
 その隙に、ブレイラウザーを再び横薙ぎに。手首をスナップさせ往復して振り払う。
 タカラの胸部に装備されたナイフの装飾もろとも斬り落としながら、その奥に潜む肉体を斬り刻んだ。


( #OwO)「うおらああぁッ!!」
  (
彡,,;メ皿゚彡『グウッ…!ウアアァッ…!!』


 緑血が迸り、ブレイラウザーの剣先から跳ねた血が赤いプールサイドの上に零れる。
 
  (
彡,,メ皿゚彡『クッ……この――』


 後方へと怯みながら後退りし、胸を抑え身体に作られた傷口を見遣る。
 反撃に転じんとするタカラだったが、ブレイドによるものではない違う攻撃が、タカラの身体に見舞われた。

  (
彡,,;メ皿゚彡『ウウゥッ!!』

 
 ブレイドの背後より、肉眼では捉えることの出来ない紅い銃弾が、真っ直ぐ弾道を描きながらいくつも撃ち放たれる。
 タカラへと的確に命中する銃撃は、黒い衣装を纏った身体から火花を散りばめた。

82625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:27:55 ID:wQXRKlTg0


( OMO)「ドクオ!行け!」

( OHO)「よっしゃ!」


 ギャレンラウザーによる銃撃でタカラを牽制する中、ギャレンはレンゲルに攻撃指示を出す。

 両足で地面を押し飛んだと同時に、レンゲルラウザーの後端を思い切り地面に叩き付けるレンゲル。
 その力を利用して更に高く浮き上がり、ブレイドの頭上を飛び越える。


( OHO)「これ以上てめぇの思い通りにさせねぇっつったろ!!!」
  (
彡,,;メ皿゚彡『グフッ……!!』


 落下しながら右腕を目いっぱい延ばし、着地する寸前でレンゲルラウザーの尖端でタカラの腹部を貫いた。
 

( #OHO)「でええあありゃああアァァァァッ!!」


 突き刺したままのラウザーの柄を両手で握り締め、持てる力全てを出し強引にタカラを吊り上げる。
 そして、思い切り遠くへと放り投げた。

  (
彡,,;メ皿゚彡『ガアアァアッッ!?!?!』


 プールと外とを遮断する柵を飛び越え、タカラは施設外へと投げ出された。
 

( OHO)「やべっ!やりすぎたか!?」

( OMO)「追うぞ!」


 タカラが投げ飛ばされた方向へと走り、三人はそれぞれのマシンに乗ると、柵を飛び越え駐車場へと出た。

82725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:28:46 ID:wQXRKlTg0


 誰一人いないどころか、車も多くは停まっていない駐車場。
 不運にも、駐車されていた車の上に、レンゲルに投げ飛ばされたタカラが落下。
 車のガラスは粉々に砕け散り、ルーフやボンネットは岩でも落とされたかのように大きくへこんでしまった。

 落ちた車の上から転げ落ち、負った傷に身体を痛めながらゆっくりと立ち上がる。

  (
彡,,#メ皿゚彡『グフッ……馬鹿な!俺が……俺が貴様らになど……ッ!』


 予想だにしなかった現状に、悔しさや怒りがこみ上げる。
 
 しかし、ライダーによる追撃はまだ終わらない。
 柵を飛び越え現れたブレイド達は、駐車場に着地しタカラの姿を確認すると、タカラに向け一直線に走り出した。


( OHO)「観念しろ!アンデッド!!」

( OMO)「もう貴様に逃げ場はない!」


 ギャレンによる銃撃を受け身動きの取れない状況の中、ブレイドとレンゲルが接近。
 
 ブレイラウザーで、タカラを横ぎりながら傷を負った胸部を斬り付けるブレイド。
 レンゲルラウザーを両手で振り回し、同じように横ぎりつつ殴打するレンゲル。
 タカラの背後に回った二人は、同時に武器の尖端をタカラの背に向け突き付けた。

  (
彡,,メ皿゚彡『グウウッ…!ま、待て!貴様ら…俺は別の下僕を放っている!俺を倒せばそいつらを止められないぞ!』

( #OwO)「……もうお前の言葉なんて、聞く価値もないお!!」

82825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:29:12 ID:wQXRKlTg0


 見苦しくも、最後の悪あがきに出たタカラ。
 しかし……嘘に嘘を重ねたタカラの言葉に耳を貸す者は、もういない。
 この期に及んで未だ欺こうとする下劣な性根をしたタカラの言葉は、寧ろブレイドの怒りに油を注ぐだけだった。


( #OwO)「はぁっ!!」
  (
彡,,;メ皿゚彡『ヴウウゥッ……!!』


 幾重にも重なるブレイラウザーの太刀筋が、タカラを執拗に斬り刻んでいく。
 身体中に備えたナイフは全て斬り落とされ、黒の衣装はズタズタに引き裂かれた。
 肉が見え、身体の至るところより緑血を流している。


( #OwO)「命を命とも見ない、心無いアンデッド!僕はそんなお前達を絶対に許さない!」

( #OwO)「お前達がどれだけ謀略を巡らせようと、どれだけ力を誇示しようと!
      一丸となった僕達の前に、倒せない者はいない!!」
  (
彡,,;メ皿゚彡『ヌウウウウゥゥゥッ……!!黙れ!!俺はこの戦いを……"バトルファイト"を勝ち抜くために――』

( #OwO)「そんなことのために……!誰かのささやかな幸せを踏みにじりやがって……!!」



( #OwO)「お前は、今ここで必ず封印する!!」

82925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:29:32 ID:wQXRKlTg0

 ♪Rebirth - https://www.youtube.com/watch?v=SgXC5Z4R3-c
 

( OwO)「モララーさん!ドクオ!」

( OMO)「ああ!」

( OHO)「おう!」


 ブレイドの掛け声と共に、三人は三角形の点線を描くように展開しタカラを取り囲む。
 そして、同時にラウザーを構えた。
 ブレイドとレンゲルは、オープントレイを展開。レンゲルは短縮したラウザーを脇に抱え、カードケースを開く。
 それぞれ二枚のカードを選び抜き、ラウザーへとカードをラウズした。


    《-♠5 KICK-》 《-♠6 THUNDER-》

    《-♦5 DROP-》 《-♦6 FIRE-》

    《-♣5 BITE-》 《-♣6 BLIZZARD-》

 
 一度に六つの電子音声が重なって流れる。
 三人の背後に紋章となったカードが浮遊し、計六つのカードがライダー達の身体に吸収され、力を与える。
 複雑な音を奏でた後、三人のコンボを告げる音声は、今度は重なることなく順番に流れた。


    《-♠LIGHTNING BLAST-》 《-♦BURNING SMASH-》 《-♣BLIZZARD CRASH-》


( OwO)「終わりだ!!」
  (
彡,,#メ皿゚彡『………ッッッ!!!ウガアアアアアァァァアァッッ!!!』


 自暴自棄とも取れる咆哮。
 両腕を広げ、天を仰ぎながら、やり場の無い感情を叫び声に乗せる。

 もう、逃げ場はない。

83025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:29:55 ID:wQXRKlTg0


( OwO)「はっ!」


 両足を揃え、バネを伸ばすように地面を押しながら高々と跳躍する三人。
 
 ブレイドの右足に、タカラを断罪する為の青い閃光走らせる稲妻が。
 ギャレンの両足には、罪深きタカラを焼き尽くす地獄の業火が纏い始め、
 レンゲルの両足からは、タカラを磔にするための冷気が発生。

 身体を縮めた後、右足を伸ばすブレイド。
 宙で身体を反転させるギャレン。
 レンゲルの両足から放たれる凍て付く吹雪がタカラを覆い、氷の中へと閉じ込める。

  (
彡,,;メ皿゚彡『アッ……!ガ……!』


 身動きの出来なくなったタカラに、三人は落下を始める。
 雷が、炎が、冷気が。三つの相容れることのない属性が、空中で交差する。
 そして、三人の燃える闘志が遂に重なり――。



( #OwO)「うぇえええええええええいぃッ!!!」

( OHO)「ウオオオォアラアアァッ!!」

( OMO)「はあァッ!!」

  (
彡,,;メ皿゚彡『ウアアアアアァ"ァ"ァ"ッッ!?ガハアアアァッ!!!』
 

 突き刺すようなブレイドの蹴り。叩き割るようなギャレンの爪先。強引に砕くようなレンゲルの二段蹴り。
 三方から繰り出される強烈な蹴りが、同時にタカラに叩き込まれた。

83125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:30:17 ID:wQXRKlTg0


 氷は砕け散り、逃げ場のない挟撃はより深いダメージを与える。
 タカラの身体に雷が感電し、炎が燃え移り、更に氷による凍傷。
 吹き飛ぶことも許されず、タカラは三方の蹴りを受け、その場に力無く崩れることしか出来なかった。

  (
彡,,;メ皿 彡『ガッ………ハ………』


 地面に大の字になるタカラ。
 三人による必殺技を同時に受けてしまえば、立ち上がることなど出来はしない。
 握りこぶしを作ることすら敵わず、そのままぐったりと倒れた。

 もう、起き上がることはないだろう。
 腹部のアンデッドバックルが左右に展開されたことが、何よりそれを証明した。


 着地したブレイドは、倒れたタカラに向け一枚のカードを投擲。
 ♥スートのアンデッドであるタカラは、♠スートのカードでは封印出来ない。
 代わりに、どのスートにも属さない所謂フリーのカードを用いれば封印出来る。

 タカラに突き刺さったカードが封印を終え、ブレイドの掌中に帰還。
 正体は♥のカテゴリーJで間違いないが、スートフリーのカードに封印されたタカラは♥スートとしての役割を果たしていない。
 その証拠として、"♥J FUSION"と記され狼の絵柄こそ描かれたものの、背後の風景は真っ黒のままだった。


( OwO)「もう二度と目を覚ますなお……!」


 封印したタカラを尚、ブレイドは睨んだ。

83225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:36:43 ID:wQXRKlTg0


 タカラを倒した三人は、変身を解除。
 決して喜ぶことの出来ない勝利に、三人は後味の悪さを噛み締める。


( ・∀・)「これで、やっと人間が化け物にならなくて済むな……」


 ふぅ……、と深く溜息を吐く。
 アンデッドとの戦いはまだまだ続くが、ひとまずの収束を迎え安堵する。


('A`)「でも、大勢の人を守れなかった……」

( ・∀・)「………守れなかった言い訳をするつもりはないけど、あまりにも多くの人を犠牲にしてしまった」

( ^ω^)「痛みに変えるしかないお……辛いこと、悲しいこと全部バネにして生きていくしかない。それも、仮面ライダーの役目だお」


 気持ちはただただ沈む一方。
 全てを守ると豪語しておきながら、犠牲者が出るのを止められない。
 しかし、これもアンデッドと戦う者としての業である。受け入れ、進み続けるしかない。

 だが、ドクオはこれに異を唱えてしまう。
 


('A`)「……すべての人を守ることなんて、本当に出来るのかな」

83325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:37:46 ID:wQXRKlTg0


( ^ω^)「出来る出来ないの話じゃない、やらなきゃ駄目なんだお」

('A`)「だって……今回のことは、はっきり言って俺達のせいでもあるんだぞ?
    一体何人犠牲にしてしまったんだ?正直、考えるのも怖いくらいだ」

('A`)「なんてったって、俺達はその犠牲者をこの手で倒したんだから……」


 自分の両手を見つめるドクオ。
 その表情は、悲痛の色に満ちている。
 化け物と言えど、元は人間だったはずの者を倒す。
 今こうして冷静になって考えれば、どれだけおぞましい事か……それを、強く実感している。


( ^ω^)「……それでも、立ち止まって良い理由にはならないお。
      誰かがやらなきゃならない、それを僕達が背負う以上どんなことがあっても」

( ^ω^)「すべての人を守る、確かに現実的じゃないかもしれない。けど、その想いを失くしたらいけないお」

('A`)「想いだけじゃ人は救えないだろ!?」

( ^ω^)「まず人を突き動かすのは、想いの力だお!」


 熱くなる二人。
 向き合い、互いの主張をぶつけ合う。
 今にも胸倉を掴み出しそうな雰囲気の二人の間に、モララーが割って入った。


( ・∀・)「よせ、二人とも!」

83425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:38:07 ID:wQXRKlTg0


( ・∀・)「ドクオ、お前の言いたいことも分かる。確かに今回の件は間違いなく過去最大に酷い被害だ。
      しかもアンデッドに騙され……本当にすべてを守ることが出来るのか不安になってしまう。そうだろ?」

('A`)「……はい」

( ・∀・)「剣藤の言うことも分かる。現実的でなくとも、その気持ちが無ければ
      人一人の命のために戦うことなんて出来ない。そう言いたいんだよな?」

( ^ω^)「そうですお」

( ・∀・)「どちらの言い分も分かる。でも、ぶつけ合うことじゃない。
      過ぎてしまったことはどうにもならない……だからこそ、口だけにならないように今回のことを教訓にしなければならない。
      その上で、人間を守るために戦うという想いを強く抱けばいい。違うか?」

('A`)「……そう、だな」

( ^ω^)「うん……そう、それですお」

( ・∀・)「なら、揉めるのはもうやめろ。ほら握手して」


 互いの主張は、決して間違っているわけではない。偏ってしまった意見が衝突したに過ぎない。
 第三者の冷静な観点によって二人は落ち着いた。
 モララーは二人の手を取り、強引に握手という形に持ち込む。


( ^ω^)「悪かったお、ちょっと熱くなっちまった」

('A`)「いや、俺の方こそ……」


 無理矢理繋がれた手だが、素直に謝りながら互いに手を握り締める。
 その様子に、モララーは一人笑みを浮かべ満足そうだ。

83525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:38:29 ID:wQXRKlTg0


 手を離し握手を終えたと同時に、ブーンのスマホに一件の着信が入った。
 着信を知らせるバイブレーションが震動している。

 ポケットの中に手を入れスマホを取り出し画面を確認する。
 画面には、『廣瀬ツン』と表示されている。
 電話をかけてきているのは、ツンだった。


( ^ω^)「ツンからだ!やっぱり無事だったんだお!」

( ・∀・)「そうか、よかった……」

 
( ^ω^)ロ 「ツン!大丈夫かお!?」

ξロ゚⊿゚)ξ 《え?》

( ^ω^)ロ 「アンデッドがそっちに向かったのを、クーが助けてくれたんだお!」

ξロ゚⊿゚)ξ 《……何の話?着信入ってたから掛けただけよ。
       あ、途中でサーチャーの反応送信出来なくてごめんね。なんか停電しちゃって……》

( ^ω^)ロ







( ^ω^)ロ 「……は?」

83625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:38:52 ID:wQXRKlTg0


ξロ゚⊿゚)ξ 《スマホもどこに置いたか忘れちゃってすぐに掛け直せなかったの。それよりアンデッドは!?》

( ^ω^)ロ 「…………」

( ^ω^)「停電しただけだって……」

('A`)「は……??」

( ^ω^)「狼人間が向かってたことすら知らないってお……」

(;'A`)「んだよそれえええええええええええ!!!もおおお………」

( ・∀・)「はは……安心したよ、その程度のことでよかった」

ξロ゚⊿゚)ξ 《もしもし?何騒いでるの??》

( ^ω^)ロ 「あっ、いやなんでもないお。アンデッドならとっ捕まえて倒したお!」



('A`)「まぁ……一安心するとこはしていいみたいだな。クーさんに感謝だ」

( ・∀・)「うん。もう仲間を失うのはごめんだ……本当によかった」

('A`)「……じゃあ俺、今度こそ同窓会向かいます」

( ・∀・)「ああ、呼びかけに応じてくれてありがとな」

('A`)「いえ、また何かあったら呼んでください!すぐ駆け付けますよ」


 ブーンとモララーを残し、ドクオはグリンクローバーのもとへと駆け足で向かう。
 今度こそ、楽しくなると信じてやまない同窓会へと行くために。

83725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:39:12 ID:wQXRKlTg0





 ―――――




.

83825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:39:32 ID:wQXRKlTg0


 夕方になり日は沈み始めた。
 特殊なデザインをしたグリンクローバーを走らせるドクオは、人々の注目を一際多く浴びていた。
 ライダー専用のマシンを愛用車にしてから、それは常日頃感じていたことだ。


「ねぇちょっと見て、あのバイクやばくね?」 

「金と深緑って派手だなー」

('A`)「………」


 この後の同窓会でも、きっとこのくらい注目を浴びるんだろう。
 何せ、過去のことをみんなで謝りたいと言っていたくらいだから。

 そう思うと、楽しみにしていたはずの心が、緊張で震えてきた。
 元々注目されることには慣れてない。
 人目の届かないような端っこをずっと選んできたような人間だ。


(;'A`)(あーやべぇ……めちゃくちゃ緊張してきた)

(;'A`)(だ、大丈夫だ!落ち着けよ……ファーストコンタクトが肝心なんだ、最初さえ上手く行けば大丈夫だ)


 ざわつく心を落ち着かせようとすればする程、余計に緊張感を煽っている。

83925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:39:54 ID:wQXRKlTg0


 頭の中で独り言を並べながら、あっという間にその時は来た。
 待ち合わせ場所に指定した、通っていた小学校。

 校門の前でグリンクローバーを停め、久しぶりの母校の姿をじっくりと眺める。
 あの頃の懐かしい記憶に想いを馳せ、ノスタルジックな気持ちになる。


('A`)「なつかしいな……少し建物増えたか?」


 外装は色褪せ年を取った校舎に対し、まだ出来て間もないであろう校舎が見えた。
 

('A`)「………さて、行くか」


 緊張が高まり、心臓の鼓動がドクン、ドクンと高鳴る。
 胸を撫で下ろしながら深呼吸。
 意を決して、まるで招いているかのように開かれた校門を、グリンクローバーで潜った。

 敷地内に入ると、あの頃と変わらない校庭のグラウンドが広がる。
 そして、校庭全体を見渡すかのようにポツンと存在する朝礼台。

 その朝礼台の前に……あの頃の面々はそろっていた。

84025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:40:17 ID:wQXRKlTg0


( ´ー`)「ドクオー!」


 白根がドクオを呼ぶ。
 ドクオを呼ぶその声に、他の同級生の目も一斉にドクオへと向けられた。


(;'A`)「………」

「早くこっち来いよー」

(;'A`)「あ……うん」


 鼓動はより一層高鳴る。
 自分を呼ぶ声に返事をするも、ヘルメットの中にのみその声は響いた。

 緊張隠せぬまま、グリンクローバーでグラウンドを跨ぎ、五人の同級生達の前に停まった。
 そして、ゆっくりとヘルメットを外し、久しぶりに顔を合わせる。


「そのバイクどうしたの?特注?」

('A`)「え、あ……えっと、うん……そんな感じ」

「すげぇなドクオ、金持ちにでもなったの?」

('A`)「いやぁ、そんなんじゃないよ……うん」


 気さくに話し掛けて来る同級生達に対し、ぎこちない返事。
 彼らは緊張などしちゃいないかもしれないが、ドクオからすれば……過去に自分をいじめていた人間達だ。
 そう簡単に埋まる距離ではない。

84125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:40:39 ID:wQXRKlTg0


「……ドクオ、もう白根から聞いてると思うけど」


 そのうちの一人の女性が、楽しそうな雰囲気の中ドクオに切り込んだ。
 

( ´ー`)「ドクオ……まず、来てくれてありがとうな。お前のおかげで、俺こうやって生きてるよ」

('A`)「いいよ……もうそのことは」

( ´ー`)「みんなこう見えて緊張してんだぜ」

「ドクオ……俺達、ずっとこの日のことを考えてたんだよ」

「俺達、本当に馬鹿だったよ。マジでどうしようもなかったよ……」

('A`)「………」

「あたし達が今更こんなこと言っても、すぐに許せるわけないと思う……でも」

「この場を借りて、ちゃんと謝らせてくれ!」


 全員が横並びになり、ドクオを真っ直ぐ見つめる。
 誰を見ていいか分からず、ドクオの目は泳ぎ落ち着かない様子。

84225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:41:02 ID:wQXRKlTg0


( ´ー`)「本当に……本当に、すみませんでした!」

「「すみませんでした!!」」


 一斉に頭を下げ、ドクオへの謝罪の言葉を発する。


('A`)「………顔あげろよ」


 グリンクローバーから降り、頭を下げる白根の肩を叩く。
 約十年の時を経て、自分が腐ってしまった忌々しい過去に、ようやく光が差した。
 もう、苛まれなくて済む……そう確信したのだ。
 

('A`)「もう、いいよ」

(  ー )「……でも」

('A`)「言っただろ、俺。許すことが出来ないと自分を変えられないって」

('A`)「だからもう、過去にすがるのはやめるんだ。……信じていいんだよな?その言葉。だから信じるよ」


 未だ頭を下げたままの全員に対し、笑顔で答える。
 緊張感や抵抗感はない。
 これでいいんだ。と、言い聞かせることもしない。


('A`)「俺が言うのもアレだけどさ……あの頃をやり直そうよ、みんなで」


 これが、自分の答えだから。

84325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:41:33 ID:wQXRKlTg0



(  ー )「………ありがとう、ドクオ」

('A`)「いいって」

「やり直そう、みんなで…」

「うん、みんなでやり直そうぜ」














「あの頃みたいに、みんなでやり直そう」

84425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:41:55 ID:wQXRKlTg0


('A`)「……?」



「ああ……あの頃の続きを、みんなでやり直そう」




('A`)「……あの頃の、続き……?」









(  ー )「ああ、あの頃の続きをやり直すんだ。俺達と…………お前とで」



('A`)「………!!!」


( ´゚ー゚`)「大人になっても、馬鹿でどうしようもねぇお前とでよぉ!!!」

84525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:42:21 ID:wQXRKlTg0


('A`)「………え………」

( ´ー`)「ブッハハハハハ!!おいおい!まさか……俺達が本当に謝りたくて呼んだと思うのかぁ!?」

( ´ー`)「なんで俺がお前みたいなゴミクズのために謝らなきゃならねぇんだよ!?なめてんのかぁ!?!?」

(;'A`)「ッ―――!!」


 突如、白根の態度が急変する。
 ドクオを罵り始め、髪の毛を乱暴に掴んだ。
 至近距離で見下すようにドクオを見つめる目は……あの頃と、いや……あの頃以上に残酷な目をしている。


「ハハハハ!おい聞いたか!?過去にすがるのはやめるんだってさ!俺達のこと許してくれるってよ!」

「聞いた聞いた〜、てことは過去のことは全部水に流してまた新しく始めていいってことだよな〜?」


 白根に続いて、他の同級生達もドクオに対し威圧的な態度を取り始める。
 ドクオを取り囲む五人。
 まるで、あの頃を思い出させるように。


(;'A`)「ッ……ど、どういうことだよ……?」

「あはは!あんたマジで馬鹿すぎない?考える頭ないわけ〜??」

( ´ー`)「全部お前を誘き寄せるための演技に決まってんだろうが、バーカ!!」


(;'A`)「……!!」

84625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:42:44 ID:wQXRKlTg0


( ´ー`)「いやぁ、俺達大人になってさぁ、社会人として働いてるとどうしてもストレス溜まるわけよ」

( ´ー`)「だからみんなで話してたんだよ。いつかまたお前を見つけて、あん時みてぇにやっちまうか?ってな!」

(;'A`)「………そんな………」


 白根の言葉が、ドクオの心を抉るように痛め付ける。


( ´ー`)「しかしあん時は焦ったぜ、化けモンが暴れまわって俺まで巻き込まれるとはなぁ」

( ´ー`)「でも……あれは本当に運命だと感じたよ!まさかお前が助けにくるだなんてな!
     こんな絶好な機会は二度とないと思ったね!
     だから俺は、わざとあの状況でお前に謝りたいって嘘をついたんだよ!!」

(;'A`)「………」

「ったくよぉ、何調子こいてこんなバイク乗ってんだ?おい!」


 一人がグリンクローバーを蹴飛ばし、転倒させた。
 まくし立てながら倒れたグリンクローバーを、何度も何度も踏みつける。


(;'A`)「やっ、やめろ……!」

「うっせぇなコラ!!」

(;'A`)「ううっ…!!」


 別の一人が、ドクオの腹部に拳を叩き込んだ。
 髪の毛を掴まれたままのドクオは身動きが取れず、両手で腹部を押さえるだけ。

84725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:43:06 ID:wQXRKlTg0


( ´ー`)「……おい、てめぇ逃げられると思うなよ?」

(;'A`)「ッ………」

( ´ー`)「お前の番号も、住所も全部特定したからよ。何かあったらいつでもお前んとこ行くぜ?」

「楽しみだなぁ、またあの頃みたいにお前をいじめれるなんてなぁ」

「あはは!あの頃みたいにわーわーまた泣くんじゃない?男のくせに、だっさ」

('A`)「………」


 髪の毛から手が離されたと思えば、その場に跪かせられる。
 ドクオを囲む同級生達は、一人一人罵声を浴びせ続けた。
 痛んで痛んで、ズタズタに裂かれたドクオの心など、お構いなしに。
 

( ´ー`)「ッは!じゃあ俺達さ、お前と再会を記念して飲みに行くからよ。とりあえず金出せや。
     10万くらいは欲しいなー、やっぱめでたい日にはパーッと金使わないとな?」

「いいねー、今日は飲みまくれるじゃん!」

( A )「…………」

84825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:43:41 ID:wQXRKlTg0


 あの時……白根を助けた時。
 白根の言葉で、過去に苛まれ続けた自分を変えれると思った。
 
 みんなでやり直そう。あの言葉があったから、前を向けた。
 カテゴリーAの邪悪な力に惑わされず、仮面ライダーとしての戦いに向き合えるようにもなった。

 もちろん、ブーンやモララー達の後押しのおかげでもある。

 でも、何より一番のきっかけとなったのは………過去をやり直そうと言ってくれた、白根の言葉だった。



( A )(………なんで……)
 
(;A;)(なんでなんだよぉ……!!)



 無意識にこぼれる涙。
 両の拳を握り締め、悲しみがドクオの心を支配する。

 信じたのに。
 信じたそばから、裏切られた。
 変われると思ったのに……結局、俺は過去を振り切れないのか。
 また、苛まれ続けなければならないのか。





 ……どうして、こいつらは俺に固執するんだ?

84925話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:44:07 ID:wQXRKlTg0


 何故だ。

 何故、そうまでして俺をいたぶりたい?

 傷を負わせたい?

 痛めつけたい?

 悲しませたい?

 

 なんで。


 なんで……






(# A )(何で……俺を怒らせる……!?)


 ボロボロに傷付いた心に、暗闇が立ち込め始める。
 悲しみを越え、怒りと憎しみだけが心の中……ドクオの身体中に充満する。

 闇に満たされた時――"蜘蛛の声"は、再びドクオの心の闇に問い掛けるのだ。

85025話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:44:36 ID:wQXRKlTg0


 『――俺の声を聞け』


( A )「………」


 『――お前は、こんな奴らを守りたかったのか?汚くて、卑怯で、下劣で、生きる価値すらないこんな人間を』


( A )「………違う」


 『――馬鹿馬鹿しい!情けなくはないか?力がないあまりに、お前はこんなみじめな思いをしている。
    力がない故に、お前はこんな屈辱を受けている!』


 『――力無き者は、悪だ!力が無ければ、こうして踏みにじられるだけだ!
    力こそ全て。力さえあれば、お前は何者にも臆する事はなくなる!上級アンデッドでさえ、お前の手で倒すことが出来る!』


 『――こんな薄汚い奴らなど、すぐに打ちのめす力を持っているではないか。
    それはレンゲルだけの力ではない……この俺の力だ』


( A )「………」


 『――さぁ、もう一度俺を受け入れろ。俺の力はお前のものだ。
    お前の思うままに、俺とレンゲルの力を使え。そうすれば……お前は最強になれる!』


.

85125話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:45:16 ID:wQXRKlTg0





( A )「………俺は………」



 『――さぁ、受け入れろ』



( A )「俺は………!!」



 『――受け入れろ、俺の力を!!』




.

85225話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:45:43 ID:wQXRKlTg0













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85325話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:46:08 ID:wQXRKlTg0


 ………日が沈み、辺りは闇に包まれた。
 

 校庭に、ドクオの姿はない。

 足蹴にされたグリンクローバーの姿もない。










 そこにいたのは、








 


 血を流し、校庭のど真ん中に積み重ねられた白根達だけだった。


.

85425話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:46:31 ID:wQXRKlTg0





     【 第25話 〜血を呼ぶ嘘〜 】 終




.

85525話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:47:04 ID:wQXRKlTg0

==========

 【 次回予告 】


 謎に包まれる少女が動き出す。


o川*゚ー゚)o「おともだちが欲しいの」

川 ゚ -゚)「アンデッドと馴れるつもりはない」

o川*゚ー゚)o「どうして?人間と仲良くするのはいいの?わたしたちはアンデッドなのに」

川 ゚ -゚)「何が目的だ?ここの人達に手を出すつもりなら、私はお前を許さない」

o川*゚ー゚)o「そんなことしないよ」

o川*゚ー゚)o「それに……人間に手を出すのは、わたしじゃないよ」

o川*゚ー゚)o「どちらかというと、人間に……いや、あなたが大切にしてる人たちに手を出すのは――」

o川*゚ー゚)o「―――あなただよ」

85625話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:47:37 ID:wQXRKlTg0


 プールサイドでの戦いの際に遭遇した、もう一人の上級アンデッド。
 ドクオは単身、アンデッドのもとへと乗り込むことに。


('A`)「あんた、♣のカテゴリーJだよな?」

( ゚∋゚)「だったらなんだ、人間。……いや、臭うな」

('A`)「何?」

( ゚∋゚)「昨日はそこまで気にならなかったが、今のお前からキツイ程臭うぞ」

( ゚∋゚)「――毒蜘蛛の臭いがな」

( ゚∋゚)「だが残念だったな。あいにく俺は戦うのは好きじゃない」

('A`)「だったら――」

( ゚∋゚)「と言えば、こちらから行くぞ。などと言い出すんだろうな。まったく面倒くせぇ……」

('A`)「俺の言うこと全部分かってんだったら、これからすることも分かってんだろ!?」

( ゚∋゚)「……ふん、見えるぞ。お前の背を這う蜘蛛の姿が」


 そして、遂にその正体が露になる!

85725話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:48:03 ID:wQXRKlTg0


бし゚益゚し『ただ試したかっただけなんだが……もしかして、今お前達を潰せるのかもな』

( ; OMO)「くっ……」

бし゚益゚し『俺は得体の知れない奴と真っ向勝負するのは嫌いでな。
       相手の力量が知れるまでは戦わない主義なんだ』

бし゚益゚し『ライダーとかいう奴らがアンデッドを次々と封印していると風の便りで知ったから警戒はしていたが…』

бし゚益゚し『さっきのガキといいお前達といい、思ってたより大したことはないのかもしれないな……?』

( ; OMO)「やはり、お前は俺達を試していたのか……!」

85825話 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:48:50 ID:wQXRKlTg0


бし゚益゚し『お前がどれだけのアンデッドを相手にしてきたかは知らんが、他のカテゴリーJと一緒にされると困るなぁ』

бし゚益゚し『特に、昨日の狼野郎のような奴と一緒にされると……腹が立つんだよ!!』

бし゚益゚し『まずはお前達の力を測らせてくれた感謝の気持ちだ、受け取れ!』


 驚異的な力を誇るカテゴリーJの前に苦戦するライダー達……。


( #OHO)「ふざけやがってェ……!!」

( ; OwO)「うわああぁッ!!」

( ; OMO)「くうぅ……ッ!!!」

бし゚益゚し『俺の手によって死ね、仮面ライダー共!!』


 ブレイド達は、この苦境を乗り切ることができるのか!?
 そして、ドクオに何が起きたのか!?


 【 次回、第26話 〜完全なる敗北〜 】


 ――今、その強さが全開する!


==========

859 ◆7MnOV.oq7w:2018/07/08(日) 11:52:18 ID:wQXRKlTg0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話
>>605 第23話
>>682 第24話
>>772 第25話

860名無しさん:2018/07/08(日) 12:20:35 ID:I1PoxkUo0
乙!久しぶりー!

861名無しさん:2018/07/08(日) 14:10:46 ID:iinRX1lk0
乙!!ずっと待ってたぞー!!
つべのライダー配信もいつの間にか響鬼が終わってカブトになったからか、剣がやたら懐かしく感じる

862名無しさん:2018/07/08(日) 15:18:26 ID:chiB0Now0

そういやこの作品みて原作に手を出していつの間にか原作見終わってたわ

863名無しさん:2018/07/08(日) 21:46:58 ID:hzM94CsM0


864名無しさん:2018/07/25(水) 18:41:04 ID:j4athSg20
今更投下に気づいた

ドクオ…これは闇堕ちやむなしか

865名無しさん:2018/09/02(日) 17:40:43 ID:BNz/ys.I0
待ってるよ��

866名無しさん:2018/09/02(日) 17:41:09 ID:BNz/ys.I0
ありゃ文字化け

867名無しさん:2018/09/09(日) 02:27:14 ID:zR6B7vWM0
待ってる

868名無しさん:2018/10/13(土) 06:10:45 ID:oNWB5iM20
待ってるよ( OwO)

869名無しさん:2018/11/28(水) 01:25:05 ID:sHIzfnwM0
待ってるからね

870名無しさん:2019/01/27(日) 15:18:19 ID:FqIGyy4E0
CSMブレイバックル発売決定したぞ
続きはよ

871名無しさん:2019/01/27(日) 19:56:09 ID:Lm.mg6sc0
今でも俺は待ってるよ

872名無しさん:2019/04/05(金) 12:31:28 ID:vE.PkwIU0
今ジオウで剣回やってるぞ!復活せよ!


してください

873 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 01:39:50 ID:dVuufZLM0
( ^ω^)


( ^ω^)< 1/9(日) 迄に

874名無しさん:2022/01/08(土) 01:41:58 ID:EsF4TPA20
うおっえ

87526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:01:46 ID:dVuufZLM0





     【 第26話 〜新たなる力〜 】




.

87626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:02:45 ID:dVuufZLM0


川 ゚ -゚)


 日差しが心地良い休日の昼下がり。
 バーボンハウスの前にあるプランターを手入れするクーの姿。
 隣に寄り添う渡辺が、クーに手入れの仕方を指導している。


从'ー'从「寄せ植えするときは、奥と手前で高低差をつけた方がいいんだよ〜」

从'ー'从「これを、こうやって……高いのを奥に植えて、低いのを手前にって感じで」

川 ゚ -゚)「うん」

从'ー'从「はい!やって?」

川 ゚ -゚)「分かった」


 見様見真似で、背の高い花をプランターに植えていく。


川 ゚ -゚)「ん……なんか違う気がする」


 自分でやりながら、本能で感じた違和感に気が付いた。
 高低差に意識を集中し過ぎるあまり、配色に悪いムラが出てしまっていることに。
 人間が持つ感性のように研ぎ澄まされてはいないが、色合いが悪いことは、アンデッドである自分でも理解出来たようだ。


从'ー'从「うーん、ちょっと色がね〜……こうしたらどうかな?」

川 ゚ -゚)「……うん、こっちの方が良い。綺麗」

从'ー'从「ふふふ、でしょ〜?」

87726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:03:25 ID:dVuufZLM0
从'ー'从「そういえば、もうすぐクーさんと出逢って一年になるね〜」

川 ゚ -゚)「一年……もうそんなに経つ?」

从'ー'从「うん、あの時は本当驚いたなぁ〜。あんな雷雨の中で人が道路に出てくるんだもん」

川 ゚ -゚)「………」

川 ゚ -゚)(あれから、もう一年か……)


 長い年数を経て、自らがこの世に再び解き放たれた時を思い出す。
 
 約一万年前とは、別世界となってしまったこの星。
 人間という種族が主となった世界。
 アンデッドである自分達が、まるで御伽噺の世界の住人のような扱いを受けている。

 そんな現世で、今、人として生きようとしている。
 あの頃の自分では、今の自分の有り様などとても想像も出来るものではなかった。


川 ゚ -゚)「"生きる"ということは……何があるか分からないな」


 無意識に、小さく声に出して呟く。


从'ー'从「ん?なぁに?」

川 ゚ -゚)「ん……いや、なんでもないよ」

87826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:03:50 ID:dVuufZLM0
(#゚ -゚)「二人ともー、お昼ご飯出来たよ!」


 店のドアが開かれ、でぃの小柄な顔が覗いた。
 美味しそうな臭いが漂ってきているなと思えば、ショボンが昼飯を作っていたからのようだ。
 

从'ー'从「はーい!今行く〜!」

川 ゚ -゚)「先行ってていいよ、後は私がやってみるから」

从'ー'从「そう〜?じゃあ……お言葉に甘えちゃおっかなぁ。お腹空いちゃったし……」

川 ゚ー゚)「早く食べておいで」


 恥ずかしそうに空腹を訴える渡辺の背中を、土で汚れた手袋を外した両手で軽く押す。
 渡辺とでぃが店の中に戻るのを見届け、足元に投げた手袋に手を伸ばす。
 

川 ゚ -゚)「………?」


 手袋を掴んだ瞬間。
 それまでいなかったはずの存在の気配に、背中がざわつくのを感じる。
 
 気配の出どころは、背後から。
 決して気付かなかっただけ、ではない。
 ついさっきまで、其処には誰もいなかったはずなのに。

87926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:04:12 ID:dVuufZLM0
川 ゚ -゚)(何だ、このざわめきは……)


 本能が、警戒心に強く呼びかけている。
 自分の持つ"何か"に、共鳴しているようにも感じる。
 
 恐る恐る、ゆっくりと、背後へと振り向いた。


川 ゚ -゚)「………」




















.

88026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:04:32 ID:dVuufZLM0

























o川*゚ー゚)o「ひさしぶり」

88126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:04:58 ID:dVuufZLM0
川 ゚ -゚)「………!!」

川 ゚ -゚)「お前は……」

o川*゚ー゚)o


 振り向いた視線の先に、少女の姿はあった。
 愛らしいはずの笑顔。しかし、どこか冷たさを帯びていて……。
 目だ。目に光がなく、笑っていない。

 少女の放つ異様な気配に、クーは警戒心を強める。


o川*゚ー゚)o「ねぇ、そんなに怖い顔しないでよ」

o川*゚ー゚)o「せっかく会えたんだもん、嬉しい顔してよ」

川 ゚ -゚)「何を馬鹿な……」


 悪寒すら感じさせる気配。
 親しげに接してくる少女とは対照的に、鋭い目付きで睨み続けた。


o川*゚ー゚)o「ねぇ、いまはその子の力を使ってるんだね。カリスの力を」

川 ゚ -゚)「……そうだな、お前はすぐに気付くだろうな」


 クーの正体を知っているかのような言葉。
 クーもまた、少女の正体を把握しているような、思わせぶりな言葉を返す。

88226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:05:27 ID:dVuufZLM0
o川*゚ー゚)o「ねぇ、人間の子と仲良く暮らしてるの?」

川 ゚ -゚)「………」

o川*゚ー゚)o「ねぇ……わたしとも、仲良くしてほしいな」


 作られた笑顔が崩れることなく、ゆっくりと近付く少女。
 少しの変化も無い表情が、言い表しがたい不気味さを放っていた。


o川*゚ー゚)o「おともだちが欲しいの」

川 ゚ -゚)「アンデッドと馴れるつもりはない」

o川*゚ー゚)o「どうして?人間と仲良くするのはいいの?」

o川*゚ー゚)o「わたしたちはアンデッドなのに」

川 ゚ -゚)「何が目的だ?ここの人達に手を出すつもりなら、私はお前を許さない」

o川*゚ー゚)o「そんなことしないよ」

o川*゚ー゚)o「それに……人間に手を出すのは、わたしじゃないよ」

o川*゚ー゚)o「どちらかというと、人間に……いや、あなたが大切にしてる人たちに手を出すのは――」









o川*゚ー゚)o「―――あなただよ」

88326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:05:50 ID:dVuufZLM0
川 ゚ -゚)「………」

o川*゚ー゚)o「ふふふ」

「クーさん!ご飯冷めちゃうよ〜!」


 二階の窓から顔を覗かせる渡辺の呼ぶ声が木霊する。
 

川 ゚ -゚)「今行くから!」

「はやく〜!」


 鋭くなった目付きを和らげ振り返り、にこやかな表情で答える。
 二階より見下ろしているはずの渡辺は、見えているはずの少女に触れようとはしない。

 顔が引っ込むと同時に、クーの視線も戻った。


 だが、そこに居たはずの少女の姿がない。
 思わず咄嗟に周囲に目を配るが、後ろ姿も見当たらなければ、気配も感じない。

 渡辺が少女について触れなかったことを考えると、閃光の如く一瞬の出来事だ。

 
川 ゚ -゚)「………」


 兎も角、近くに居ないことだけは分かった。

 結局、少女の行動の意図は読めず、何が目的だったのかも分からぬまま。
 分かったのは、後味の悪さだけ。
 胸の内に明確な不気味さを残したまま、手袋をプランターの上に投げ置き、店の中へと戻った。

88426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:06:29 ID:dVuufZLM0





 ―――――




.

88526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:06:49 ID:dVuufZLM0


 時を同じくして、ブーン宅でも昼食の時間を迎えようとしていた。

 _
( ゚∀゚)「おーい腹減ったぜ〜まだかよ〜」

( ^ω^)「もう完成するから後少し我慢しろお」


 キッチンに立ちご飯を作っているのは、家主であるブーン。
 作っているのは、味には自信があるらしい炒飯と卵スープ。
 ソファで横になっているジョルジュの催促を聞き流しながら、強火で熱されているフライパンを器用に振り、パラパラな炒飯を舞わせる。
 最後にまわすように入れた醤油の香ばしいかおりが部屋中に広がる。
 美味そうなにおいに、口の中には唾液が溢れ出した。

 用意しておいた四つの皿に炒飯を均等に分け、ツンがスープを注いでいく。
 

( ・∀・)「俺持っていくよ」

( ^ω^)「お願いしますお」


 出来上がった昼飯をトレーに乗せるモララー。
 スープを注ぎ終えたツンは、エプロンを外しながらソファに寝そべるジョルジュのもとへと歩いた。

        _
ξ#゚⊿゚)ξ ( ゚∀゚)
   u彡 パシンッ!
 _
( ; ゚∀゚)「ってー!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「手伝え」

88626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:07:30 ID:dVuufZLM0


ξ゚⊿゚)ξ「いっつも何もしないんだから!皿くらい洗わないとあんたの分のご飯作らないから!」

ξ゚⊿゚)ξ「一応居候の身だっていうのに、あんたはくつろぎすぎ!」
 _
( ゚∀゚)「チッ……へいへい分かりましたよ」

( ・∀・)「じゃあこれから皿洗いはジョルジュ担当だな」


 テーブルの上、4つの椅子の前に料理を配りそれぞれ着席。
 スプーンを持ち湯気立つ炒飯を掬い、口に頬張る。
 各自自分のペースで食事を進めていると、ブーンが手の動きを止め口を開いた。


( ^ω^)「今日、久しぶりに職場に顔出しに行こうかと思ってるお」

ξ゚⊿゚)ξ「ん…そっか、結構お休みさせてもらってるのよね」

( ^ω^)「うん、もう働いてた感覚すら忘れちゃったくらい。快く休暇を許してくれてるし、せめて挨拶くらいはしないと」
 _
( ゚∀゚)「ほんっと律儀な奴だよな。俺なら休めてラッキー!くらいに思って絶対行かないけどな」

ξ゚⊿゚)ξ「アンタがドクズなだけよ」
 _
( ゚∀゚)「いやいや、俺はいつだって自分に正直なだけだぜ?」

( ^ω^)「まぁ気持ちは分かるけど、そう思えるような理由で休みもらってるわけじゃないからなぁ…久しぶりにヘリカル達にも直接挨拶したいし」

( ^ω^)「これ食ったらちょこっと行ってくるお。何かついでに買ってきてほしいものあれば買ってくるお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんと?そうね…じゃあ牛乳と卵2パックと、あと食器洗剤お願いしようかな」
 _
( ゚∀゚)「俺コーラな、でかいやつで」

( ^ω^)「分かったお。モララーさんは何かありますかお?」

( ・∀・)「ん、俺か。そうだな…じゃあ」

88726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:08:30 ID:dVuufZLM0






( ・∀・)「ひまわりの種がいいな」

( ^ω^)「え…種?」

ξ゚⊿゚)ξ「何に使うの?」

( ・∀・)「使うというか…食べてみたいからかな、ハムスターも食べるだろ?
      いつ見ても美味しそうなんだよね」
 _
(;゚∀゚)「またこの人の天然炸裂かよ」

(;^ω^)「モララーさん、前から薄々感じてたけど…ちょっと変なとこあるお」

88826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:10:39 ID:dVuufZLM0
 ――――――
 ――――
 ――

 
 食事を終えたブーンは早々に家を出て、早速VIPへと辿り着いた。
 

( ^ω^)「いやぁ、久しぶりだお…VIP」


 仮面ライダーとなってから、半年以上振りに来た。
 働いていた時は毎日のように、何の意識もなく目に入っていたこの景観。雰囲気。
 一度離れてから目にすると、何とも懐かしいような、胸の辺りがそわそわするような感覚を覚える。
 メットを外しバイクから降車、VIPに向け足を動かす。
 妙な緊張を抱いたまま、入り口の自動ドアを潜り風除室を抜けると、スーパー特有の有線が耳に入り、より懐かしい気持ちを膨らませる。


(゜д゜@「いらっしゃいませ……あらやだ!?」

( ^ω^)「あ、新谷田さん!お久しぶりですお」

(゜д゜@「ブーン君じゃない!あらやだ、久しぶりねぇ!元気してたの??」

( ^ω^)「あ、いや……まぁそこそこですお」

(゜д゜@「あらそう、でも元気そうで何よりだわぁ。今日ヒッキー君やヘリカルちゃんもいるのよ。挨拶はした?」

( ^ω^)「これから挨拶しようと思ってますお」

88926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:11:00 ID:dVuufZLM0


 久しぶりの従業員との再会。
 新谷田おばさん以外にも、目に入る従業員は皆ブーンを見ては会釈をしたり手を振ったり、近付いてきたりした。
 一人一人丁寧に挨拶に回っていると、特に気心知れているヘリカルに遭遇した。


( ^ω^)「ヘリカル!」

*(‘‘)*「ん……え、え!?ブーン!?」


 品出し中の手を止め声のする方へと振り向くと、予想外の来客に目を丸くした。
 駆け足気味に歩み寄り、久々に見た同僚の姿にヘリカルは笑みを見せる。


*(‘‘)*「もう、今まで何してたの!?LINEしてもろくに返事もしないんだから!」

( ^ω^)「ごめんお、返すようにはしてたんだけど中々そんな時間がなくて…。元気かお?」

*(‘‘)*「私は元気、この職場は相変わらずだけど何とかやれてるわ」

*(‘‘)*「……ほら、ブーンが来たのを嗅ぎ付けてやってきたわよ」

89026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:11:25 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「?」


 ヘリカルが顎をくいっとさせ、ブーンの背後を知らせる。
 振り向くと、顔馴染みである後輩が近付いてくるのが見えた。


( ^ω^)「おお、お疲れだお」

(-_-)「あれ?ニート満喫中のブーン先輩じゃないっすか。いよいよ辞表持ってきました?」

(;^ω^)「気まずくなる冗談を言うんじゃないお」
 
*(‘‘)*「えっ…そういうことなの?」

(;^ω^)「いやいや、そんなわけないお!騙されるなお」 


 半年以上振りの三人でのやりとりは、空白の期間を埋めるかのようにテンポ良く繰り出される。
 

*(‘‘)*「あ、丁度ウチら休憩入るところなんだけど、ブーンも時間あったらどう?」

( ^ω^)「おっおっ、そしたら先に店長に挨拶してくるお。後から合流するお」

(-_-)「先輩、先に言っときます。今まで本当にお世話になりました…」

(;^ω^)「まだ言う?お前がそんな弄りしてくるから絶対辞めてやらんお」


 他愛もない言葉を交わし、ブーンは一人でスーパーのバックヤードへと向かった。

89126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:11:46 ID:dVuufZLM0


 店長への挨拶を済ませたブーンは、スーパーの外にあるベンチに座るヘリカルらと合流。
 昼食は既に終えていたため、お茶を片手にヘリカルとヒッキーの間に肩を並べて座る。
 話題は、ここ最近定期的に各媒体で報道される化け物の件――アンデッドの話になった。


*(‘‘)*「しかし最近物騒よね…見たことがないから本当にいるのかも分からないけど」

*(‘‘)*「仮面ライダーってのも見たことないのよねぇ、VIPの人はみんなないみたいだけど。ブーンはある?」

( ; ^ω^)「え……うーん、いやぁないお」

*(‘‘)*「やっぱないんだ。何か、マスコミに踊らされてる気がしちゃうよね。そんな戦隊ヒーローみたいなことあると思う??」

( ;^ω^)「ははは…本当だお」

(-_-)「いるかもしんないっすよ、意外と近くにね」

*(‘‘)*「え?」

(;^ω^)「おっ、おい!お前何言ってんだお…!」 ボソボソ

(-_-)「分かんないじゃないっすか、てか居たらカッコよくないですか?」


 ブーンの焦りの制止を気にすることなく、ヒッキーは真顔で話し続ける。


(-_-)「だってもしそれが本当にあることだとして、俺たちにその活躍を公にすることなく戦ってるんでしょ?
    そんなの滅茶苦茶にカッコいいでしょ。体張って、命懸けて俺らの為に戦ってくれてるんだから」

( ^ω^)「……」

*(‘‘)*「まぁ、本当にあることだとしたらね?本当にいるなら感謝もするし応援もしたいけど…」

(-_-)「ですよね。だから俺は誇りに思いますね、そんな人がいる素晴らしい世界で生きてるってことを」

( ^ω^)「ヒッキーお前…」


 ヒッキーの言葉に、思わず胸が熱くなってしまう。
 普段おちゃらけている彼の口から出る言葉だからこそ、尚のこと感動してしまった。

89226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:12:10 ID:dVuufZLM0
*(‘‘)*「もう、まるで目の当たりにしたことがあるみたいな口ぶりじゃない?」

(-_-)「いや?ないですよ、あったら写真撮ってSNSに上げてるし」

*(;‘‘)*「さっきまで真剣に語ってた人が取る行動とは思えないわね」

( ^ω^)「ははは…」


 胸を撫で下ろし、下手くそな愛想笑いを漏らす。
 すると、ヒッキーがヘリカルに思いがけない話を切り出した。


(-_-)「ヘリカルさん、そういえばドクオさんとはどうなんですか?」

( ^ω^)「ドクオ?」

*(‘‘)*「え?……なんで?」

(-_-)「だってほら、年末は一緒に過ごすって言って喜んでたじゃないですか。
     あれからその話してこないなぁと思って」

( ^ω^)「え、そうだったのかお?アイツそんなこと一言も…」


 ヒッキーが間接的にドクオの現状を探ろうとする。
 ドクオが何をしているのか、何故ヘリカルが話をしてこないかの理由は大まかに把握はしていた。
 理由はただひとつ――レンゲルの"運命"を背負ってしまったから。
 
 ヒッキーがその話を掘り返すと、ヘリカルの表情はたちまち暗くなった。
 

*(‘‘)*「………結局行かなかったわ」

(-_-)「そうなんですか…何か連絡とかは?」

*(‘‘)*「ない、結局あとになってLINEが来て、謝ってきたけど…何か、最近様子が変というか…」
 
(-_-)「変?」

89326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:13:22 ID:dVuufZLM0


*(‘‘)*「ちょっと前までは全然返事来なくて、ある時突然元気になったような感じになったかと思えば…。
     また暗くなったりとか、LINEの既読もつかないみたいな感じになったりして」

( ^ω^)「……」


 これの理由はブーンも何となく理解している。
 レンゲルになってからの苦しみや葛藤と戦った日々の間の事だろう、と予測できる。
 

*(‘‘)*「それに昨日も、同窓会行って夜には帰ってくるからまた連絡するって言ったっきり返事もないの」

( ^ω^)「え?そういや、確かに今日になっても何の連絡もないお…」

*(‘‘)*「ていうか、今朝のニュース見た?ドクオの出身の学校で、人が山積みになって倒れてたって…」

( ^ω^)「何だおそれ?どういうことだ…?」


 同窓会に行くと言っていたドクオ。相手は過去にドクオをいじめていた人達。
 今までのパターンでは、ドクオからの連絡がない時は、何かがあった時。

 ……嫌な予感がする。
 悪い予想を頭の中で巡らすブーン。
 言葉を発さないヒッキーは、何処か深刻そうな表情。


 ――そこに、足音が近付く。


( ^ω^)「……!」


 何気なく足跡の方へと視線を向けたブーン。
 悪い予想は、当たってしまった。

89426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:13:50 ID:dVuufZLM0


( A )

( ^ω^)「ドクオ…!」

*(‘‘)*「え?……ドクオ!」


 全員の視線がドクオに向けられる。
 ヘリカルは思わず席を立ち、ドクオを見つめた。
 

*(‘‘)*「ドクオ、何してたの!?すっごい心配したんだから!」

( A )

( ^ω^)「……ドクオ?」

( A )


 立ち尽くしたまま、反応がない。
 昨日までの活き活きとした様子はなく、頭の重さに逆らわず首をだらんと下げ、どこか一点をボーッと見つめている。
 表情がよく見えないドクオの視線を、目で追うブーン。
 その先には……表情を合わせようとしない、ヒッキーがいた。


( A )「おい」

(-_-)「……俺ですか?」

( A )「来い、話がある」

*(‘‘)*「え、ちょ…ちょっとドクオ?ヒッキーに何か用があるの?」

89526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:14:16 ID:dVuufZLM0


 状況が呑み込めない、ブーンとヘリカル。
 ヘリカルがドクオに積極的に言葉をかけるが、ドクオには一切聞こえていないかのよう。
 ドクオはヒッキーに近付き、片腕を掴み強引に引っ張り上げる。


( A )「来い」

( ^ω^)「お、おい!ちょっと待てお!」

*(‘‘)*「ちょっと、何やってんの!?」


 ドクオの乱暴な姿を見て、止めに入るヘリカル。
 ヒッキーを引っ張るドクオの腕を解こうと割って入った。


( A )「――せぇ……」

*(‘‘)*「…?」




(#'A`)「――うるせぇんだよ、クソが…!!」

*(;‘‘)*「……え……、きゃっ!?」


 ヘリカルを引きはがし、突き飛ばす。
 思わぬ行動に動揺し、突き飛ばされるがまま地面に尻餅を着いてしまう。


( ^ω^)「ヘリカル!?」

(-_-)「ヘリカルさん!?」


 倒れたヘリカルの体を咄嗟に支えるブーン。
 あまりにも暴力的かつ理不尽なドクオに、ブーンは怒りを見せる。


( #^ω^)「おい…お前何考えてんだお!?」

89626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:14:40 ID:dVuufZLM0


 ドクオに問い詰めようとしたブーン。
 その前に、ドクオに突っかかられたヒッキーが立ち上がり彼の胸倉を掴んだ。


('A`)「ッ…!?」

(#-_-)「そうかそうか……お前はそうなっちまったんだな?
      闇を選んだ…いや、闇を選ばざるを得なかったというべきか」

(#-_-)「自己責任っちゃ自己責任だが、お前を焚きつけるクソ野郎共が居たってことだな…。
      こうなっちまったら、もう取り返しがつかないな」

( ^ω^)「ヒッキー…?」


 胸倉を離し、ドクオを突き飛ばす。
 何の話をしているのか訳が分からず、二人を交互に見つめるブーン。


(-_-)「ヘリカルさん、ちょっと此処で待っててください。
     俺、ドクオさんとどうしても大事な話があるの忘れてて…すぐ戻りますから」

*(‘‘)*「へ……ヒッキー……?」

(-_-)「…来いよ」

('A`)「ふん、やっとその気になったか」

( ^ω^)「おっ、おい二人とも!?」


 ヒッキーがドクオを連れ、どこかへと向かってしまう。
 何が起こったのか、何故暴力を振るわれたのか、何故あんなに豹変していたのか…。
 状況が飲み込めず、ただ呆然とするヘリカル。


*(‘‘)*「………」

( ^ω^)「ヘリカル、先に中に入ってるんだお。僕が二人を何も起こらないように見張っとくから!
       大丈夫だお、ドクオのことは僕に任せて!」


 ヘリカルの両肩を撫でながら、慰めの言葉を掛けるブーン。
 起き上がらせてベンチに座らせると、ブーンは二人の後を追った。

89726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:15:12 ID:dVuufZLM0
――――――
 ――――
 ――


 VIPから少し離れた場所、路地裏に辿り着く二人。
 二人は距離を置き、互いを睨み合う。
 ドクオの目は、昨日までとは違い――とても、憎しみや怒りを抱いていた。


(-_-)「どうやら、俺が願った通りにはならなかったみたいだな」

('A`)「そうかもしれないな。だが、俺はこれでよかったのかもしれない」

(-_-)「何?」

('A`)「気付いたんだよ。弱さは罪だってな」


 ドクオの両の拳が、ギリギリと強く握られている。
 怒りからか、強く強く握りしめるせいで、手がプルプルと震えている。


(#'A`)「何が過去との決別だ…何が俺自身が変わるだ?
    俺が変わったからって、奴らは変わらない…俺が弱いことも変わってない…!」

(#'A`)「過去の俺に酷い仕打ちをした奴らをな、俺は助けた。
    あいつらは自分が死にそうな状況になった途端、この俺に助けを求めたんだ!無様だよなァ!?」

(#'A`)「俺にあんな仕打ちをしておいて…だけどそんな奴らを助けてやったんだ。
    そしたらどうだ!?アイツらはその恩も忘れ、また昔と同じことを、喜びながら俺に……ッッ!!」


 近くに積まれているビールケースを思い切り蹴り飛ばし、呼吸を乱す。
 

(#'A`)「フーッ…フーッ……!」

(-_-)「だから、その力を使ったのか?」

(#'A`)「ああ、これか!?」


 レンゲルのベルトを取り出し、口端を吊り上げ不敵に笑みを浮かべる。
 
 ――そこに、二人の後を追ってきたブーンが到着した。
 既に一悶着あったかのような現場の状況、更にはドクオの手に握られるレンゲルのベルトーー。

89826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:15:41 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「おい、お前本当に何しようとしてんだお!?」

(#'A`)「黙れ!!」

( ;^ω^)「うおっ!?」


 制止しようとするブーンを振り切り、ベルトを腰に装着するドクオ。
 もう一度止めようとドクオを抑え込むが、遠慮のない力がもう一度ブーンを跳ね返した。


(#'A`)「そうだよ、俺はコイツを使ったさ。コイツだけじゃない…カテゴリーAの力も受け入れた」

( ^ω^)「えっ…!?」

(-_-)「……」

(#'A`)「俺に教えてくれたよ。お前はこんな汚い奴を助けたかったのか?ってな。
    お前が弱いからこんなことになる…力さえあれば、お前はこんな惨めな思いをしなくていいってな」

(#'A`)「――その通りだな、って思ったぜ…!変身ッ!!」


    【 -♣OPEN UP- 】


 バックルより射出されたスピリチアルエレメントが、薄暗い辺りを紫光で照らす。
 構えも取らずに、ドクオは接近するゲートを潜り抜け、レンゲルの装甲を身に纏った。


( ; ^ω^)「ちょっ…!!おい、お前何を…ッ!?」

( #OHO)「俺に触るなッ!!」

( ; ^ω^)「がふっ…!」


 もう一度掴みかかってくるブーンを、壁に向かい投げ飛ばすレンゲル。
 人間の姿であるブーンは容易に投げ飛ばされ、背中を壁に強打した。

89926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:16:13 ID:dVuufZLM0


(-_-)「先輩、下がっててください」

( ; ^ω^)「なっ…何言ってんだおっ!ドクオやめるお!」


 痛む体で声を出し絞る。
 ヒッキーの言葉など届くわけもなく、まだレンゲルを制止しようとする。

 ――だが、次の光景を見て、ブーンは言葉を失う。


(-_-)「先輩…俺、先輩のこと嫌いじゃなかったですよ。
     俺のこの姿を見たら、さっきまでのような仲では居られなくなると思うけど…これが俺なんで」

(-_-)「ちょっとばかり、コイツの為に人肌脱ぎますよ…!」


 刹那、ヒッキーの体から別のシルエットが浮かび上がる。
 アンデッドとしての、禍々しく歪な姿が。ヒッキーの本来の姿が、ブーンの前で露になった。


( ; ^ω^)「ッッ!?!?ヒッキー……!?」

( #OHO)「そうだよ、その姿を待ってたんだよ…カテゴリーK!!」
    。
< \゚皿゚/>『レンゲルーーいや、ドクオ。お前を止めてやる』

 
 後退りをするブーン。
 ヒッキーが、アンデッドの姿に――次から次へと襲い掛かる理解不能な状況に、何をしたらいいか分からない。


( ^ω^)ロ[……ツン、今カテゴリーKの反応が出ても、誰にも何も指示しないでほしいお。頼むお]


 ブーンの困惑を他所に、レンゲルはレンゲルラウザーを装備し、ヒッキーに襲い掛かる。

90026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:16:39 ID:dVuufZLM0


( #OHO)「ウォラアアァッ!!」


 振りかぶるレンゲルラウザー。
 身を翻しながら冷静に躱すヒッキーに対し、縦横無尽に、乱暴に振るい続ける。
 
    。
< \゚皿゚/>『どうした、そんなもんか?
      ――おい、カテゴリーA!聞こえてるんだろ?構ってやるから来いよ!』

( #OHO)「こんの、クソがアアァァッ!!」


 横薙ぎに払われた斬撃を、後方にステップし躱す。
 
 突如、レンゲルの額にある宝石が紫に強く光りだす。
 すると、力み切っていたレンゲルの体から、フッと力が抜けたのが見て分かった。
 ゆらり…と動き始め、ラウザーを握り締めたのち、的確にヒッキーを狙い振るい始める。

    。
< \゚皿゚/>『ようやくお出ましか、何で勿体ぶったんだ?コイツに期待してるのか?』

( OHO)『フン、相変わらず口が減らない奴だ。いつまでその余裕が続くかな?』

( ; ^ω^)「この声……カテゴリーA!?何で…!」


 レンゲルの声が、ドクオのものではないのが分かる……カテゴリーAに操られたあの時のように。
 
 ヒッキーはレンゲルに向け口から蜘蛛の糸の弾丸を射出。
 レンゲルはそのすべてをラウザーで払い落し、カードを2枚引き抜きラウズ。


    《-♣2 STAB-》 《-♣4 RUSH-》


( OHO)「ウオオオオッ!!」


 "♣2 STAB"の力で武器の攻撃力を上げ、"♣4 RUSH"の力で突進力を強化。
 ラウザーの矛先をヒッキーに向けるように構え、地を蹴り突撃。

90126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:17:04 ID:dVuufZLM0

    。
< \゚皿゚/>『そんな戦い方じゃ、俺は倒せないぞ』


 眼前に右手を翳し、大きな蜘蛛の巣を展開。
 盾のように作った蜘蛛の巣はレンゲルの攻撃を防ぎ、且つラウザーに絡み付いて捕らえた。

 右手を握り締め拳を翻すと、大きな蜘蛛の巣がレンゲルをガバッ!と覆い出す。
 まるで巨大な怪物が獲物を捕食するかの如く、レンゲルのそのまま飲み込んだ。


( ; OHO)「ぐっ!?クソ…ッ!うああぁぁッ!」


 捕らえられた蜘蛛の巣の中で、無数の火花が散り始める。
 巣の中で、何かがレンゲルを蝕んでいるように見える。レンゲルは痛みに悶え、悲鳴を上げた。


    。
< \゚皿゚/>『フンッ!!』

( ; OHO)「ぐはあぁっ!」


 体の自由が利かない状態のまま、ヒッキーの異常に発達した左手がレンゲルを殴打。
 後方に吹き飛ばされ、ブーンの目の前に転がる。
 

( ; OHO)「んぐ……クソォ…ッ!カテゴリーK…お前の力を得れば、俺は絶対的な強さを得られるんだ…!」

( ; ^ω^)「カテゴリーK……前に話してた♣スートのカテゴリーKが、ヒッキーだっていうのかお…!」
    。
< \゚皿゚/>『俺を倒すだと…?その程度で往なされる程、俺はやわじゃねぇ』

90226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:17:35 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「………ドクオ」

( ; OHO)「クッ……絶対、絶対にお前を封印してやる!覚えておけ…!!」


 ブーンを一瞥するレンゲル。
 地を乱暴に叩き付け、痛む体を起こす。
 これ以上の戦いは無駄だと判断したのか、レンゲルはフラフラとしながらブーン達を残し去っていった。

 残された二人の間に、沈黙が流れる。
 ブーンは立ち上がり、ヒッキーに怪訝な視線を向ける。


( ^ω^)「ヒッキー……説明しろお。何でお前がアンデッドなんだお!?」
    。
< \゚皿゚/>『…ま、そうなっても仕方ない』


 人間態に戻り、ヒッキーは事の顛末を話す。
 
 自分がカテゴリーKであること。再び生を受け、再開されたアンデッド同士の戦いから逃れる為に人間に化けていたこと。
 争う気は更々ないことなど、全て。

 始めはヒッキーを警戒していたが、話に耳を傾けている内に自然とヒッキーの存在を受け入れられていた。


( ^ω^)「そうかお……信じていいんだな?お前を」

(-_-)「信じてもらえるなら」

( ^ω^)「なら信じるお。アンデッドの中にも戦いを望まない者もいる、僕はそれを知ってるお」

(-_-)「……いいんですか?俺はカテゴリーKですよ」

( ^ω^)「だから何だお、お前が人を襲うような奴だったらとっくに襲ってるだろ?
       それに…まだ期間は短いけど、VIPで一生懸命働いてるお前を知ってるから」

(-_-)「……はは、流石ですね。やっぱ人間はすごいわ」


 ブーンの言葉に安堵したのか、ヒッキーは自然と笑みがこぼれた。

90326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:18:00 ID:dVuufZLM0


(-_-)「それはそうと、ドクオのことです。あいつについて話しておきたいことがあります」

( ^ω^)「ああ、そうだお…ドクオについて何か知ってるのかお?」

(-_-)「実は――」


 ヒッキーは、ドクオに何があったかの一部始終を話した。
 白根達に裏切られたこと。♣スートのカテゴリーKから見た、カテゴリーAの影響力。
 ドクオとカテゴリーAは互いに適合出来ている為にジョルジュのような洗脳を受けないが、かつてのギコのように
 心の闇に漬け込み、凶暴さを増幅させていることを。


( ^ω^)「ドクオ、そんなことが……確かに、そうしたくなる気持ちも分かるけど……」

(-_-)「思ってる以上に状況は悪い。ゆくゆくはカテゴリーAによって人格を形成され、それがドクオを蝕んでしまうかもしれない」

( ^ω^)「そんな……!何か手はないのかお!?」


 ヒッキーの表情がより真剣さを帯び、険しさを増した。
 そして、真っ直ぐな眼差しでブーンを見つめる。


(-_-)「……先輩、ドクオをどうしたいですか?助けたいですか?」

( ^ω^)「当たり前だお!あいつは僕の親友だお、こんなことになって…何とか救ってやりたいお!」

(-_-)「ですよね。なら、ドクオを救い切るまで、諦めないことを誓えますか?」

( ^ω^)「ああ、誓うお。僕はあいつを、本当のあいつを取り戻すまで何があっても諦めないお!」

(-_-)「……分かりました。取り敢えず――ッ!」

( ^ω^)「どうしたお!?」


 ヒッキーが何かを察知する。
 路地裏を吹き抜ける風が、彼に遠くで起きている事を伝えている。

90426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:18:28 ID:dVuufZLM0


(-_-)「先輩、♣のカテゴリーJ…ドクオがそいつのもとに向かってます。
     ガタイの良い、屈強な大男に擬態してます」

( ^ω^)「ガタイの良い大男…?まさか、あの時の…!」


 ヒッキーが紡ぐヒントには心当たりがある。
 ミセリとタカラ達と対峙した、あのプールにいたもう一人の男。


(-_-)「コイツはかなりの暴れん坊です、勝てるかどうか…」

( ^ω^)「僕が助けに行くお!反応出ればきっと知らせてくれるから…!」


 急いでブルースペイダーのあるVIPに戻ろうとするブーン。
 路地裏から出て姿の見えなくなったブーンが、まだヒッキーのいる路地裏を再度覗き込む。


( ^ω^)「ヒッキー、ありがとうだお!これからも頼むお!」

(-_-)「うっす」


 ぶっきらぼうな返事を見届けると、ブーンは今度こそVIPに向けて駆け出した。


(-_-)「……やっぱ、人間は守らなきゃいけないな。こんな俺を受け入れてくれたんだから」

(-_-)「――さて、腹括るか」

90526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:18:52 ID:dVuufZLM0





 ―――――




.

90626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:19:50 ID:dVuufZLM0


 ブーン達の騒動の裏では、別のアンデッドが"また"動き始めていた。
 そのアンデッドは今、人になりすまし、お昼に営業中の飲み屋の前に立っている。


ミセ* ー )リ「フフフ……」


 そう、バーボンハウスの前に――。

 ドアが開き、カランカランと鈴が鳴り響く。
 普段であれば、誰かが来客を迎え入れようとするところ。

 だが、そうはいかなかった。


川 ゚ -゚)「出ろ、貴様如きが踏み入っていい場所じゃない」

ミセ*゚ー゚)リ「あら、やっぱりいたのね」


 ドアを開けてすぐ。そこには、クーが既に立ちミセリの来訪を待ち構えていた。
 後退るミセリ、クーはじりじりとミセリとの距離を詰めていく。


川 ゚ -゚)「死に損ないが、今度こそ貴様を封印してやる」

ミセ*゚ー゚)リ「それはどうかしら?フフフ」


 突如、アンデッド態へと姿を変えるミセリ。
 右手に伸びるツタを振るい、クーへと襲い掛かった。
 咄嗟に頭を下げ躱すクーだが、ミセリの先制攻撃によって完全に火が付いた。

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『さぁ、私の後を追ってきなさい!』

川#゚ -゚)「ふざけた真似を…!」


    【 -♥CHANGE- 】


 カリスへと変身し、シャドーチェイサーを呼び寄せミセリを追跡。
 分かりやすい挑発、誘導行為ではあるが、散々機会を逃してきたミセリにケリをつけたい思いも強くあった。

90726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:20:17 ID:dVuufZLM0


 ミセリを追跡した果てに辿り着いたのは、例のプール。
 ここまで連れてこられた時点で、カリスは何となく察しが着いた。

 ――敵は、一人ではない。と。


「いやいや、全く…またお前か」


 麦わら帽子を顔面に乗せ、顔を隠す大男が一人。
 離れのプールサイドにて横になりながら、カリスの来訪に溜息を吐いた。


( <::V::>)『貴様か、私を此処に呼び寄せたのは』

「何の話だ?」


 大きな片手で麦わら帽子を取り、上体を起こす。
 ゆっくりと気怠そうに立ち上がり、カリスを見た。


( ゚∋゚)「俺は戦う気はないぞ」

( <::V::>)『馬鹿を言うな、こんな所までおびき寄せておいて…。
      隠れているんだろう?繭女。2対1でも構わないぞ?』

( ゚∋゚)「ほう……なるほど、そういうことか」


 大男――クックルに、若干の苛立ちが見えた。
 そこに、カリスを此処まで誘引したミセリが背後より現れる。

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『――フッ!』

 ツタを伸ばし、カリスの体を拘束しようとした。
 カリスはシャドーチェイサーから跳躍して回避。
 ミセリの背後に着地し背を取ると、カリスアローで一太刀浴びせる。

90826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:20:43 ID:dVuufZLM0

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『ぐうっ…!?すばしっこい奴…!』

( <::V::>)『一人では戦えないか、まぁいい…同時に相手をしてやる。来い』


 二体の上級アンデッドを目の前にし、構えを取る。
 臆しないカリスの姿勢を見て、ミセリは高らかに笑った。

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『アハハハハ!この状況で随分と威勢が良いわねぇ』
  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『彼を前にして、本当に私を倒せる余裕があるのかしら?』
  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『ねえ?カテゴリーJ――』
  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『ッッ!?』


 背後のクックルを振り向いた瞬間、ミセリの胸部に被爆する爆弾。
 硝煙がミセリの胸元から沸き立ち、爆発の威力で転倒。

 そこには、大男の姿はない。
 立っていたのは、とても巨大なーー。


бし゚益゚し


 黒い装甲に覆われる緑色の地肌。3本指の手足。
 右腕の装備にはモーニングスターが数本吊るされており、その手にはハンマーが握られている。
 右肩から背中を伝い、左脚にまで垂れ下がる長いホース状のものは、まるで"象"の鼻にも似ている。

90926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:21:10 ID:dVuufZLM0


бし゚益゚し『貴様か、この俺を無駄に争いに巻き込もうとした大馬鹿者は』
  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『クッ…何を…!?共にコイツを潰せる良い機会でしょ!?』

бし゚益゚し『そうやって貴様は、他の連中を焚き付けて利用してきたんだろう。
      あいにく俺は、貴様の思い通りにはならない…フンッ!』
  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『うあッ……!!』


 右腕のモーニングスターを飛翔させ、ミセリに追撃。
 鉄球がミセリの頭部に直撃すると、その重さからミセリは吸い込まれるように地に倒れ、転がりながらカリスの足元へ。

 一部始終を静観していたカリスだが、足元に転がってきたミセリの首を雑に掴み、強引に立ち上がらせる。
 そして、容赦のない斬撃を見舞った。


( <::V::>)『ふっ、予定外…といったような顔をしているな?』
  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『ううッ…、こんなはずじゃ…!』

( <::V::>)『残念だったな、恨むなら己の所業を恨むことだ!』


    《-♥6 TORNADE-》 《-♥7 BIO-》


 二枚のカードをラウズ。
 突き出した右手から伸びる触手がミセリを捕らえ、動きを封じる。
 右手を引きミセリを強引に引き寄せると、風の力を纏ったカリスアローの両刃で斬り付けた。

  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『うあぁァッ!!…ッ、ガハッ……』

бし゚益゚し『ふん』
 

 全身を風の刃で刻まれ、至る所から緑の血を流す。
 血反吐を吐きながら、ふらふらと立ち上がるミセリ。
 クックルはその様子を眺めながら、自業自得の末路を鼻で笑ってみせた。

91026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:21:30 ID:dVuufZLM0

  *∧Λ*
∠*;゚`-´)ゝ『まだよ…まだ、終われないの…ッ!』


 顔面の表裏が入れ替わり、周囲に大量の花吹雪を撒き散らす。
 全身の力を振り絞って、ミセリはこの窮地からの離脱を図った。

 カリスとクックルが顔面を覆い、視界を眩まされる。その隙にミセリは逃走。
 フッ、と花弁が消失した時には、ミセリの姿がなかった。


( <::V::>)『この機は逃さない…確実に奴を仕留める。
      貴様の相手は後だ、それまで此処で余生を楽しめ』

бし゚益゚し『そうか、ならお言葉に甘えよう』


 カリスは、ミセリの消え切らない気配を辿りその場を後にした。
 


 人間態になり、一息吐くクックル。
 邪魔者がいなくなり、再び休息に入ろうとした……その時だった。


( ゚∋゚)「…今度は別の奴か」

91126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:21:53 ID:dVuufZLM0


 近付いてくる気配を感じる。
 人間?アンデッド?どちらも感じ取れる気配。
 それは、プールと外を遮る塀を超えてすぐに現れた。

 緑と黄金に輝くバイクーーグリンクローバー。
 それを器用に乗りこなす、ドクオの姿が。

 バイクから降車し、足取りが覚束ないままクックルを鋭い目で睨みつける。


('A`)「あんた、♣のカテゴリーJだよな?」

( ゚∋゚)「だったらなんだ人間……いや、臭うな」

('A`)「何?」

( ゚∋゚)「昨日はそこまで気にならなかったが、今のお前からキツイ程臭うぞ――毒蜘蛛の臭いがな」

( ゚∋゚)「だが残念だったな、あいにく俺は戦うのは好きじゃない」

('A`)「だったら――」

( ゚∋゚)「と言えば、こちらから行くぞ。などと言い出すんだろうな…全く面倒くせぇなぁ…」

(#'A`)「俺の言うこと全部分かってんだったら、これからすることも分かってんだろ!?」

( ゚∋゚)「……ふん、見えるぞ。お前の背を這う蜘蛛の姿が」


 息を乱しながら、レンゲルバックルを装着する。
 先刻のヒッキーとの対峙で、体力・肉体的にかなり消耗しているが…今のドクオには関係ない。
 
 力が欲しい。上級アンデッドを倒し、強くなりたい。
 ただ、それだけ。

 ーーそう思い込むように、カテゴリーAがドクオに内側から呼び掛けていることにも気付かず。

91226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:22:14 ID:dVuufZLM0


(#'A`)「変身…ッ!」

    
    【 -♣OPEN UP- 】


 レンゲルへの変身を果たした直後、クックルに向け駆け出す。
 ひと飛びで離れたプールサイドを飛び越えると、勢いそのままに右手で握り締めた拳をクックルに突き出した。


( #OHO)「オラアアァッ!!」


 胸部に確かにヒットしたが、クックルは微動だにせず。
 一瞬、レンゲルに怯んだ様子が垣間見えたが、何度も胸に向かい拳を叩き込む。

 だが、


( ゚∋゚)「お前、昨日より力が落ちているな。体が限界なんじゃないか?」

( #OHO)「クッ、黙れ!俺はお前を封印する!」

( ゚∋゚)「おお、そうか…。大人しく言うことも聞いてくれないみたいだなぁ。なら――」

бし゚益゚し『少し灸を据えてやろう』

( ; OHO)「!?ぐふっっ……!!」


 拳を掌で受け止めるクックル。
 左足の重たい一撃が、レンゲルの腹部に見舞われる。
 何かが吐き出そうな程の衝撃がレンゲルを襲い、思わず蹲る。

 クックルは追撃を止めない。
 右手のハンマーを高々と振り上げ、蹲るレンゲルの背中に勢いよく振り下ろした。

91326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:22:41 ID:dVuufZLM0


( ; OHO)「がはぁっ!!」


 背中にとてつもない重力と衝撃が圧し掛かる。
 逆らえない重力に、レンゲルはそのまま地に伏せられた。


бし゚益゚し『他愛もない…フン!』

( ; OHO)「うああぁっ…!!うぐっ…!」


 脇腹を蹴り上げ、レンゲルの重たい体を蹴り飛ばす。
 まるでボールを蹴り飛ばすかのように。
 プールサイドには届かず、体を打ち付けプールに落下。大きな水飛沫が吹き上がり、辺りを水で濡らした。

 
бし゚益゚し『何だ、大したことないな…こんなものなのか?』

бし゚益゚し『しかし、ここの場所も大分知られてしまったな…そろそろ住処を変えるとするか』


 プールの中で沈むレンゲルなど気にも掛けず、この場を去ろうとする。
 戦い続きで、辺りの崩壊が目立って来た。狙われていては落ち着いて過ごすことも出来ない。
 
 しかし、それすらも遮ろうとする存在が、再び接近している事に気付く。
 

бし゚益゚し『ああ、面倒くせぇ…!』

91426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:23:11 ID:dVuufZLM0


 次に現れたのは、ブレイドとギャレンだった。
 ヒッキーからの情報を得た通りにカテゴリーJの反応をキャッチ。
 この場所は覚えていたため、比較的早く到着できた。


( OwO)「やっぱりお前だったかお…!」

( OMO)「こいつ、この間の大男か?」

бし゚益゚し『何だって今日はこんなに客が多いんだ?』

( OwO)「ドクオ!」


 プールの底で沈むレンゲルを発見する。
 ブレイドが急いでプールに飛び込み、水圧に苦戦しながらもレンゲルを救い上げた。
 

бし゚益゚し『そろそろ静かにさせてもらおうか。
      俺は得体の知れない奴と真っ向勝負するのは嫌いでな。
      相手の力量が知れるまでは戦わない主義なんだ』

( OMO)「何だと?逃がさないぞ、アンデッド!」


 ギャレンラウザーを引き抜き、クックルに向け銃撃を見舞う。
 クックルの体に被弾し火花が散るが、効いている様子はない。


бし゚益゚し『全く、馬鹿な連中だ…!』

91526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:23:35 ID:dVuufZLM0


 クックルが動いた。 
 重そうな体から繰り出したとは思えない跳躍。
 ブレイドらがいる対岸に着地すると、両足が着いた部分から地響きが起き、周囲に地割れが伝染。
 
 左手にハンマーを持ち替え、右腕の鉄球を振るいギャレンを雑にぶん殴る。


( ; OMO)「ぐあっ!…何て力だ…!?」

( OwO)「モララーさん!うおおおお!」


 ブレイラウザーを抜き、クックルに立ち向かう。
 接近し胴体を斜めに斬り付けるが、これもまた効いていない。


бし゚益゚し『んん?どうした、こんなものなのか?ライダーってのは』

( ; OwO)「何!?うわあぁっ!!」


 左手に持ち替えたハンマーで、下から打ち上げるように脇腹を殴打。
 更に振り上げ、ブレイドの顔面めがけ振り下ろした。


бし゚益゚し『フンッ!!』

( ; OwO)「ッ…!」

( ; OMO)「剣藤!!」

91626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:23:58 ID:dVuufZLM0


 ハンマーがブレイドの顔面に直撃。
 その瞬間……ブレイドの顔面を覆う仮面が砕かれ、辺りに破片が飛散。
 中身が露呈されたブーンの顔には、頭部から出血した血が流れていた。


( ;|^/wO)「くっ……」

( ; OMO)「オリハルコンブレストが、破壊されただと…!?」


 120tの衝撃をも吸収するライダーの装甲。
 アンデッドの攻撃をも防ぎ切ってきたこの完全無欠の装甲が……遂に破壊された。
 この事実は、クックルがとてつもない力を誇るアンデッドであることを知らしめた。

 攻撃も通じず、一発一発の重みが桁違い。更にはアーマーを突き破る程の力。

 
( ;|^/wO)「ッ、まだまだだお…!」

( ; OMO)「よせ剣藤!このアンデッドは…今までの奴らとは違う!」


 顔面を割られても尚、立ち向かおうとするブレイドを阻止した。
 ギャレンは本能的に察した。
 こいつは、やばい。


бし゚益゚し『ライダーとかいう奴らがアンデッドを次々と封印していると風の便りで知ったから警戒はしていたが…。
      さっきのガキといいお前達といい、思ってたより大したことはないのかもしれないな…?』

( ; OMO)「やはり、お前は俺達を試していたのか……!」


 これ程の実力があっても自ら進んで戦おうとしない、その矛盾に違和感を抱いていた。
 先程の発言からしても、まだ本腰を入れて戦ってはないとも解釈できる。
 考えただけでも、自然と恐ろしさが沸き上がってしまった。

91726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:24:19 ID:dVuufZLM0


( OMO)「クッ…剣藤、ここは撤退しよう。これ以上は危険だ!」

( ;|^/wO)「でも…!」

( OMO)「命を無駄にするな!今の俺たちでは…勝てない!」

( ;|^/wO)「……クソッ!」


 ギャレンの言葉を否定したいが、認めざるを得ない。
 現に、力の差を見せつけられてる。クックルに対抗できる手段が思いつかない。
 悔しさを滲ませながら、ブレイドは変身を解いたドクオを抱え、クックルの前から退散…。
 ギャレンは銃口を向けながら、撤退の殿を務める。

 しかし、クックルは追おうとはせず逃げる様を見ている。


бし゚益゚し『腰抜けめ、自分から仕掛けておいて逃げるか』


 自身の手を見つめ、クックルは感触を掴んだ。
 ライダーとの邂逅。実戦を交えたことで、明確になった。


бし゚益゚し『……これなら、奴らに勝てる!』


 不動を貫いてきた象が、己が名を上げる為に重い腰を上げ始めた。

91826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:24:42 ID:dVuufZLM0





 ―――――




.

91926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:27:27 ID:dVuufZLM0


 _
( ゚∀゚)「ふふふ〜ん」


 車道を一人、車で走るジョルジュ。
 ブーン宅で昼食を済ませた後、ジョルジュも単身外に出ていた。気分転換のドライブも兼ねて。
 車の窓を開けて、風を感じながら鼻歌を歌う。

 _
( ゚∀゚)「最近嫌なことばっかだったし、たまにはこういう気晴らしも必要だよな」


 賑やかな街並みを避け、自然溢れる静かな車道を走る。
 ドライブをする自分に言い聞かせるように、独り言を呟く。

 _
( ゚∀゚)「……しかし、どうやってアンデッドに向き合ったらいいか分かんなくなってきたな…」


 ぼそっ、と呟く。普段であれば口にしないであろう本音が漏れた。
 アンデッドは敵――それが当たり前だと思っていた。その概念を持って今までやってきた。
 だが、クーのような、モスのような例外もあるアンデッドの存在を知った。
 知ったことで、ジョルジュの中で複雑になっていた。

 しばらく車を走らせていると、前方に何かを確認。

 _
( ゚∀゚)「ん?何だあれ」


 減速し、ゆっくりとその前を通り過ぎようとする。
 徐々にはっきりとしてくる。そこにあるのは……うつ伏せに倒れている人だった。

 _
( ゚∀゚)「おっ、おい!大丈夫ですか!?」


 路肩に車を止め、倒れている人に近付く。
 よく見ると、倒れている人は女性だった。
 肩を揺さぶってみても反応がない。

 ジョルジュは、半ば無理矢理に体勢を仰向けに入れ替える。

 _
( ;゚∀゚)「ッーー!!」

92026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:27:50 ID:dVuufZLM0


 顔がハッキリとした途端、ジョルジュがパッと手を放しその場から立ち上がる。
 ジョルジュが助けようとした女性、それは――


ミセ* ー )リ
 _
( ;゚∀゚)「義永…ミセリ…」


 アンデッドであるミセリだった。
 先の戦いで深くダメージを追い、ここで意識が途切れてしまった様子。
 ジョルジュはスマホを急いで手に取り、ブーン達に連絡しようとした。
 ……が、その手は止まった。

 _
( ;゚∀゚)「………」


 人間にしか見えない、綺麗な横顔。
 アンデッドであること、危険な目に合わされたことを覚えている。
 覚えているはずなのに…何故か、躊躇いを感じている。

 _
( ;゚∀゚)「……どうしたら……」


 迷いが生まれている。
 スマホとミセリを何度も何度も交互に見つめる。

 しかし、次の瞬間――急に体が勝手に動いた。

 _
( ゚∀゚)「ああもう…!知らねぇ!なるようになれだ!」


 スマホをしまい、ミセリを抱え上げるジョルジュ。
 車の中に乗せると、ジョルジュは人気のない場所へと車を走らせた。

92126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:28:12 ID:dVuufZLM0

 ――――――
 ――――
 ――

 
 人気のない場所に車を止め、ジョルジュはハンドルに蹲る。

 _
( ゚∀゚)「ハァァ……、何やってんだ俺……」


 仮にもアンデッドを助けてしまった行動を今になって後悔。
 それと同時に、衝動的な自分を制御出来ない事に情けなく感じている。
 
 _
( ゚∀゚)「そりゃレンゲルにだってなれねぇし、ライダーには向いてないよな…」


 自虐に浸る。
 だが同時に、この行動を取ってしまったことを悔いていない自分もいる。
 どこか、不思議な感覚だ。


ミセ*゚ -゚)リ「何故私を助けた?」
 _
( ;゚∀゚)「うわああああっ!?」


 何の気配も音もなく、ミセリが突然口を開いた。
 驚いたジョルジュは跳ね上がり、ミセリから距離を取った。


ミセ*゚ -゚)リ「何のつもりだ、お前」
 _
( ;゚∀゚)「い、いや……それは、その……」

92226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:28:38 ID:dVuufZLM0


ミセ*゚ -゚)リ「私はアンデッドだぞ?お前のことも殺めようとした」
 _
( ;゚∀゚)「そ……そんなことは分かってる!」


 ミセリの冷たい表情。繰り返し詰め寄られるジョルジュが、半ば自棄気味に返事をする。

 _
( ゚∀゚)「分かってるよ、そんなことくらい…あんたが俺に何したかなんてことくらい。
     アンデッドだってことも分かってんだよ!」
 _
( ゚∀゚)「でも……あんた、倒れてただろ?そんな姿見たら、何か…体が勝手に動いてたんだ!」

ミセ*゚ -゚)リ「今この瞬間、殺されると分かっていても?」
 _
( ゚∀゚)「ッ……ああ、そうだよ。分かってても動いちまったもんはしょうがねぇだろ!?」


 ミセリの言葉に身構え、恐怖を覚えるジョルジュ。
 しかし、強気な姿勢は崩さない。

 _
( ゚∀゚)「あんたは目的があって俺らに手を出したんだろ?
     もちろん許せることじゃねぇよ、でも…目的がなけりゃ人のことも襲わないってことだろ?」

ミセ*゚ -゚)リ「……何が言いたい?」
 _
( ゚∀゚)「アンデッドってのは自分の目的の為に戦ってるんだろ?中でもあんたらみたいな上級の連中はさ。
     要するに、身を削ってるってことだろ?」

ミセ*゚ -゚)リ「……」
 _
( ゚∀゚)「ずっと考えてたんだよ、俺…あんたらアンデッドは許せねぇよ、そんな戦いに俺たちを巻き込みやがってさ。
     でも、戦いを強いられて苦しんでるんじゃないかって…どっかでそう思うようになってた」
 _
( ゚∀゚)「アンデッドでも、人と暮らしてる奴がいるからな…」

92326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:29:00 ID:dVuufZLM0


ミセ*゚ -゚)リ「フッ…まさか人間如きに憐れまれるとはな。
     だからと言って何故それが私を助ける理由になる?」
 _
( ゚∀゚)「分かんねぇよ、分かんねぇ!ただ…そう思ったら、あんたを助けたくなった!それだけだ!」


 逆ギレのように言葉を返す。
 ジョルジュに向けていた目線を、ミセリは逸らした。

 _
( ゚∀゚)「殺すなら殺せよ、あんたを助けた時点で分かってた展開だよ。
     こんな密室で、逃げられる訳がねぇ…」

ミセ*゚ -゚)リ「いいのか?そんなことを言って」
 _
( ゚∀゚)「ああ、いいよ!しょうがねぇだろ、自業自得だ…」

ミセ*゚ -゚)リ「…そうか。恨むなら自分を恨め」


 正面を見つめるジョルジュ。
 ミセリは両手を、ゆっくりとジョルジュの首元に向け伸ばす。
 きつく締め上げようとしたミセリだったが……。

 _
( ;゚∀゚)「ッ……」

ミセ*゚ -゚)リ「………」
 _
( ;゚∀゚)「へ……?」


 ミセリの手が止まった。
 呆然とするジョルジュを他所に、ミセリは車を降りる。

92426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:29:33 ID:dVuufZLM0


 そして――自分を追ってきたであろう、狩人を見つける。
 

ミセ*゚ -゚)リ

( <::V::>)


 言葉を発さない両者。
 バックミラー越しにカリスの姿を視認すると、ジョルジュも急いで車を降りた。

 _
( ゚∀゚)「ク、クーさん……!」

( <::V::>)『この女を介抱したのか』
 _
( ;゚∀゚)「ま、待ってくれ。これには訳があるんだ…」

( <::V::>)『散々な目に合わされたくせに、よくも助けたな。
      やはり貴様とは分かり合えない』
 _
( #゚∀゚)「ッ……何が分かるんだよ、あんたに!!」


 カリスの言葉に、ジョルジュが声を荒げる。
 いつもはクーに対してどこか怯えて劣等感を感じていたが、そんなことを忘れさせるくらい、大きな声で。

 _
( #゚∀゚)「分かったような口ぶりで好き勝手に…そもそもあんたのせいだろ!?」

( <::V::>)『私が何かしたとでも言うのか』
 _
( #゚∀゚)「ああ、してるね。あんたはアンデッドなのにショボンさん達と仲睦まじく暮らしてるじゃねぇか!
     アンデッドなんて好きでも何でもねぇよ、でも……あんたみたいな奴もいるんだってことを知っちまった!」
 _
( #゚∀゚)「だから俺は、アンデッドはただの殺戮マシーンじゃないかもしれないって可能性を考えるようになっちまったんだよ!
     そんな俺の気持ちがあんたには分かるか!?分かんねぇだろうな!いつも人のこと浅く見て好き勝手言いやがって!」

( <::V::>)『………』


 ジョルジュの言葉が何故か、嫌というほど刺さる。
 いつもなら適当に躱す言葉を返せるが、この時ばかりは返す言葉が見つからなかった。

92526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:30:18 ID:dVuufZLM0

 _
( #゚∀゚)「そんなわけでな、義永ミセリも本当は好きでこんなことやってるんじゃないって思っちまうんだよ。
     だから介抱した、これで殺されても自業自得だ。俺は誰も攻めやしねぇよ!文句あんのか!?」

( <::V::>)『……その覚悟があるなら好きにしろ。私はその女を封印しに来ただけだ』

ミセ*゚ -゚)リ「………」


 ミセリを指差すカリス。
 そのミセリは、隣でジョルジュの言葉を聞きながら…自然と、ジョルジュのことを見てしまっていた。

 感じたことのない感情が芽生える。
 
 これまで、戦いの中でしか生きてこなかったアンデッド達。ミセリも然りだ。
 己に課せられた"運命"、宿命であり、勝つことが全てだった世界。
 どんな卑怯な手でも使って、生き残ってやる。どんな手段を用いてでも、勝ち抜いてやる。
 そんな世界の中では、決して芽生えることのない感情。


ミセ* - )リ(ああ……これが……)


 ミセリの中で、何かが動いていた――。


ミセ*゚ -゚)リ「ジョルジュさん」
 _
( ゚∀゚)「……え?」

ミセ*゚ -゚)リ






ミセ*゚ー゚)リ「ありがとう」

92626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:30:40 ID:dVuufZLM0

 
 ジョルジュの首に向けツタを伸ばし、首を絞める。
 ふっ、と口から吹いた花弁がジョルジュを包み

 _
( ゚∀゚)「へっ…!?……ミセ……リ……」
 _
(  ∀ )「さ―――」


 その意識を、遠ざけた。
 首に巻くツタを緩めると、力なく、だらんと地面に倒れるジョルジュ。


( <::V::>)

ミセ*゚ -゚)リ「……さぁカリス」


 自分を迎えに来た、目の前の死神を見つめる。
 ミセリは両手を広げ、その姿を歪なものへと変化させる。

  *∧Λ*
∠* ゚`-´)ゝ『これで終わりにしましょう…!』


 カリスは言葉を発さない。
 カリスアローにラウザーを装着し、カードを引き抜く。

 ミセリは、横目で倒れているジョルジュを見る。
 最期に、自分のことを初めて分かってくれようとした存在を目に焼き付ける為に――。

92726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:31:09 ID:dVuufZLM0


    《-♥4 FLOAT-》 《-♥5 DRILL-》 《-♥6 TORNADO-》


  *∧Λ*
∠*#゚`-´)ゝ『……ウアアアアアアアアアアッッ!!』


         《-♥SPINING DANCE-》


 カリスの体が、宙に浮遊を始める。
 足先から発生する竜巻の威力はみるみると増幅し、やがて周囲の枯葉を巻き込みながら暴風へと変化。
 幾重にも回転する体を、カリスは足先からミセリに向かって突進。

 ダッシュでカリスに挑むミセリ。
 カリスは容赦なくその体に足を突き刺し、ミセリの体を貫通させるかのようにドリル状の攻撃を浴びせ続ける。


 やがてカリスは、ミセリの体を突き破り、そして――。















.

92826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:31:40 ID:dVuufZLM0

 



 ―――――




.

92926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:32:01 ID:dVuufZLM0


 命辛々逃げることに成功したブーン達は、自宅へと戻っていた。
 クックルに負わされた怪我を、ツンによって手当されている。
 頭部を狙われたブーンは頭に包帯を巻いていた。


ξ゚⊿゚)ξ「ブーンとモララーさんが二人掛かりでも勝てないアンデッドだなんて…」

( ・∀・)「アイツは今までのアンデッドとは違う。
      同じカテゴリーJの府坂やタカラとはタイプが違うにしても…元々のパワーが桁違いすぎる」

( ^ω^)「まさか、ライダースーツが破壊されるだなんて思いもしませんでしたお…」

ξ゚⊿゚)ξ「これからどうやって戦うつもりなの?」

( ・∀・)「そうだな…真っ向勝負では歯が立たないのは一目瞭然だ。
      何か、奴の弱点を得られれば――」

「そんなもんは奴にはない」

( ・∀・)「?」

ξ゚⊿゚)ξ「誰!?」


 突如、廊下の方からいないはずの誰かの声がした。
 声のする方へ視線を向ける3人。モララーとツンは、その声に警戒する。
 しかし、家主であるブーンだけはこの声に驚きはしなかった。
 
 声の主が、廊下からリビングに現れる。
 そこには、ブーンの後輩…カテゴリーKでもある、ヒッキーがいた。

93026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:32:21 ID:dVuufZLM0


(-_-)「あの象の野郎に弱点なんかない。あの力、あの図体…そのまんまの力を持ったのが奴だ」

( ・∀・)「君は…」

( ^ω^)「ヒッキー?お前…勝手に入ってくんなお」

(-_-)「ああ、すんません。でも一大事だと思って駆けつけましたよ」

( ^ω^)「そうか…助かるお」

ξ゚⊿゚)ξ「え…ちょっと待って、どういうこと?」


 ブーンとモララーは、ヒッキーがアンデッドであることを既に認知済みである。
 此処にいる中で、唯一ツンだけがヒッキーの存在を詳しく知らない。


(-_-)「ああ、俺実は――」
    。
< \゚皿゚/>『これなんすわ』

ξ;゚⊿゚)ξ「ッッーー!?!?」


 驚き、息をのむツン。
 これ程至近距離で突然アンデッドを見たのは初めてで、思わず腰が抜けてしまった。


( ^ω^)「心配しなくていいお、ツン。コイツは僕らの味方だお」

( ・∀・)「剣藤、お前知ってたのか?彼がアンデッドだって…」

( ^ω^)「今日知ったばっかですお。モララーさん…知ってたんですかお?」

( ・∀・)「…ああ、実は…」

ξ゚⊿゚)ξ「……知らなかったの、私だけ?」

93126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:32:42 ID:dVuufZLM0


(-_-)「とにかく、どんな力を持ってしても並大抵のものではアイツは倒せない」

( ^ω^)「かもしれない…だからお願いがあるお。お前の力を貸してくれないかお?」

( ・∀・)「そうだ、君はカテゴリーKだろう?レンゲル相手に一切臆しなかった」

(-_-)「うーん……そうじゃねぇんだよなぁ」


 二人の協力要請を、腕を組み首を傾げ拒むヒッキー。


(-_-)「並大抵の力では勝てないとは言ったけど…一つ、大事なことをしっかり持てば勝てるかもしれない」

( ^ω^)「もう、勿体ぶんなお!それってなんだお!?」

(-_-)「それは――」


 焦れる様子のブーン。
 ヒッキーが答えようとした矢先、インターホンが鳴り響く。
 

( ^ω^)「こんな時に誰だお…!」

ξ゚⊿゚)ξ「私が出るわ」


 苛立ちを見せるブーンを抑え、ツンは一人玄関へと向かう。
 玄関のドアを開けると、そこには



ξ゚⊿゚)ξ「所長…!」

93226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:33:06 ID:dVuufZLM0


 そこに立っていたのは、ブーンの実父であり元BOARD所長・ロマネスク。
 その手には、一つ箱が。


( ФωФ)「廣瀬、ついに完成したのである」

ξ゚⊿゚)ξ「完成?とにかく、上がってください」


 ツンに招き入れられ、家の中へと入るロマネスク。
 リビングには既に役者は揃っていた。
 また、来客がまさかのロマネスクであったことを受け、ブーンは突如反抗的な態度を示し始める。


( ^ω^)「お前…!何しに来たお」

( ФωФ)「廣瀬、菱谷、ホライゾン。遂に完成したのである。
       ライダーの力を更に増強させる、新たなシステムーー」

( ФωФ)「"ラウズアブゾーバー"が…!」


 テーブルに置いた箱から取り出した装着型の機械のようなもの、
 "ラウズアブゾーバー"……そう呼ばれるものを、ロマネスクは手に取った。


ξ゚⊿゚)ξ「これって、この前言ってた上級アンデッドの力を引き出せるシステムですよね?」 

( ・∀・)「それが、遂に完成したんですか…!」

( ФωФ)「うむ。これを用いることで上級アンデッドの力を引き出し、更に強力な戦闘力を有すことが出来る」


 ロマネスクが以前、提唱していた新たなシステム。ラウズアブゾーバー。
 カテゴリーJからの上級アンデッドのカードに秘められた強大な力を、最大限に引き出すというもの。
 ブーン達が封印してきた上級アンデッド達の力を、このシステムを使えば引き出せるということだ。

93326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:33:26 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「てことは…これを使えば、あのカテゴリーJも倒せるんじゃ…!」

( ФωФ)「恐らく。他のカードのようにラウズして力を得るのではなく、このラウズアブゾーバーは
       使用者自身に強力な力を付与されるように作られている。
       更なる強敵にも叶うように開発されたのが、このシステムである」

( ^ω^)「これ、早速使わせてくれお!どうしても倒したいアンデッドがいるんだお!」


 大きな可能性を秘めた物を前にして、希望を見出すブーン達。
 ロマネスクに懇願するブーンだったが…。

 ソファに腰掛け、一部始終を黙認して聞いていたヒッキーが、鼻で笑った。


(-_-)「フッ……新しいシステムねぇ、上級アンデッドの力を引き出すだって?」

(-_-)「要するに、それは誰の力なんだい??」


 ソファから立ち、ブーン達の輪に入る。
 そして、彼ら人間の顔を一人一人見渡した。


( ^ω^)「ヒッキー、どういうことだお?」

(-_-)「上級アンデッドの力を引き出して戦おうってんでしょ。だから、それって結果的に誰の力なのかって聞いてるんです」

( ^ω^)「それは……上級アンデッドの力だお」

(-_-)「でしょ?てことは、先輩達の力じゃないってことじゃないですか」


 謎にブーン達に突っかかるヒッキー。
 何を言っているんだ?と、ヒッキーを見る一同の目はそう物語っている。

93426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:33:47 ID:dVuufZLM0


( ^ω^)「そうだお。僕達の力では及ばなかった、だからこの力を使って――」

(-_-)「――それって、ドクオとやってることはどう違うんですかね??」

( ^ω^)「……!」


 ヒッキーの核心をついたかのような言葉に、思わず言葉を詰まらせる。
 アンデッドの力を欲し、人間を捨てたかのように暴れ回っているドクオ。
 強くなりたい一心のそんなドクオを、ブーン達は心配していた。
 

ξ゚⊿゚)ξ「でも、ドクオさんとブーンは意味が違うわ!
      ブーンは、ただアンデッドを倒すという目的の為に――」

(-_-)「そうなんですか?先輩。先輩は何で仮面ライダーやってるんですか?」

( ^ω^)「それは…アンデッドを倒すため、人間を守るのが僕のライダーとしての使命だからだお!」

(-_-)「本当にそれだけですか?他に、先輩を動かすもっと大事なことは?」

( ^ω^)「ヒッキー、こんな間違い探しみたいなことしてる場合じゃないんだお!
       僕達はあのカテゴリーJを倒さないといけないんだお!」

(-_-)「先輩……俺も遊びでこんなこと言ってるわけじゃあない。腹括った上で首突っ込んでるんだよ」


 これ以上何と答えたらいいか分からない。
 ヒッキーの真剣な表情と声色に、ブーンは一瞬、言葉を失った。


(-_-)「今のところ残念っすね…先輩。見損ないましたよ。
     先輩達はアンデッドを倒すことに意識が行き過ぎて、もっと根本的なことを忘れてるんじゃないですか?」

(-_-)「とりあえず…コイツは俺がもらっとく」


 テーブルの上に置かれたラウズアブゾーバーを、ヒッキーは奪い取る。

93526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:34:09 ID:dVuufZLM0


( ФωФ)「おい、君!何をしているのだ!?」

( ^ω^)「おっ、おいヒッキー!何してんだお、それを渡せお!」

(-_-)「こんなもの持ってても、次また倒せなくなったアンデッドが出た時におんなじこと言い出すだろ?
     新しい力を引き出してー、ってな。だから持ってたって何の為にもならないさ」

( #^ω^)「ヒッキー、お前いい加減に…!」


 苛立ちを覚え始めるブーン。
 何かと因縁づけるような口ぶりのヒッキーに対し、少々威圧的な態度になった。

 ――すると、そんな険悪な空気を切り裂くように鳴り響くアンデッドサーチャー。
 ツンが咄嗟にパソコンの前に立ち反応をキャッチ。アンデッドの正体を確認した。


ξ゚⊿゚)ξ「アンデッド出現!♣のカテゴリーJ、他の反応はない…街中で暴れているわ!」

(-_-)「ほら、暴れてますよあのアンデッドが。行かなくていいんですか?」

( ^ω^)「…言われなくても、僕はアンデッドを倒しに行くお!」

( ・∀・)「待て剣藤、俺も行く!」

( ФωФ)「ホライゾン、菱谷。気を付けるのである」

( ^ω^)「言われなくても分かってるお」

(-_-)「……じゃ、行きますか」


 ブーン達は、反応をキャッチした場所に向かい始める。
 ヒッキーの言葉に払拭しきれない何かを抱きながら、カテゴリーJの元へと急いだ。

93626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:34:34 ID:dVuufZLM0


 同じ時、ブーンに助け出され一人家に戻っていたドクオにも、その知らせが入る。
 カテゴリーAを通して。


 『―――奴だ、奴が現れた』

('A`)「…そうか」

 『今度こそ奴を倒せ!でなければ、お前はこの地獄から抜け出せはしないぞ…!』

('A`)「うるせぇ…黙って俺に力を貸せ!」


 クックルの気配を感じる。
 彼に徹底的に打ちのめされたことを、もう覚えていないのか。
 ドクオは起き上がると、カテゴリーAが知らせてくる場所に向かうため、家を出た。





.

93726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:35:04 ID:dVuufZLM0





 ―――――




.

93826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:35:28 ID:dVuufZLM0


 ――ここは、したらばスタジアム。
 今日はサッカーの試合がこのスタジアムで開催され、席には両サポーター達がユニフォームを着て観戦に来ていた…はずだった。

 しかし、スタジアムの中でサッカーをしている者は誰一人としていない。
 中に響く声は、熱の籠った応援の声ではなく……阿鼻叫喚の声。


「きゃあああああっ!」

「うわあああぁぁっっ!?!?」

бし゚益゚し『オオオオオォォォッ!』


 クックルが、観客席で椅子や壁を破壊し尽している。
 巨大な怪物が暴れているのを目の当たりにし、人々はパニックになりながら逃げ惑う。


бし゚益゚し『さぁ来い、仮面ライダー共…!』

「うわああっ!!!………」


 後方に振りかぶったハンマーが、背後のコンクリートを粉々に粉砕。
 コンクリートの壁にひっそり隠れていた男の姿が露わになる。
 悲鳴を上げる男だが、次の瞬間――失禁をしながら、気を失い倒れた。

 そこに、接近する気配を感じ取り始めるクックル。
 待ち詫びた存在の到着に、胸を躍らせる。


бし゚益゚し『ふう…やっとお出ましか、待ちくたびれたぞ』

93926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:36:06 ID:dVuufZLM0


 まず到着したのは、ブーンとモララー。
 その後すぐにドクオが合流。三人はそれぞれバイクを降り、クックルを睨んだ。


( ^ω^)「ドクオ!」

('A`)「アイツは俺の獲物だ、邪魔するな!」

( ・∀・)「ドクオお前…またカテゴリーAに操られてるのか!?」

бし゚益゚し『何をブツブツと喋ってる?とっとと俺と戦え!』


 三人はベルトを装着し、クックルに向かい合う。


    【 -♠TURN UP- 】 【 -♦TURN UP- 】 【 -♣OPEN UP- 】


 それぞれバックルを展開させゲートを射出すると、ライダーへと変身。
 まずはギャレンとレンゲルがクックルに勝負を挑む。

 
( OHO)「うおおおおおっ!」

( OMO)「今度こそ貴様を封印する!」


 ギャレンラウザーの銃撃を受けながら、接近し距離を詰めてきたレンゲルのレンゲルラウザーをも胴体で受け止める。
 だが、やはりどちらも効果が無い。

 ギャレン、レンゲルは交互に肉弾戦を挑む。
 クックルは一人、二人のライダーからの攻撃を受け切りつつも、しっかりと防御もしている。

 ここまではクックルのイメージ通りだった。
 ライダーとの戦いを元に、"仮面ライダーの倒し方"をイメージしていたクックル。
 そして次の行動に移ることも、イメージ通りだ。


бし゚益゚し『やはり、弱い…!』

94026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:36:32 ID:dVuufZLM0


 レンゲルの攻撃を片腕で払い除け、右腕を振りかぶり鉄球でレンゲルの顔面を殴打。


( ; OHO)「ぐうっ!?」


 更にギャレンを右足で押し込むような蹴りを腹部に与え、左手に構えたハンマーを横薙ぎに振るい打ち飛ばした。


( ; OMO)「ぐはっ!!……ッ、クソ、やはりこいつ…!」


 胸を押さえながら徐々に立ち上がろうとするも、蓄積ダメージが大きくすぐに立ち上がれないギャレン。
 レンゲルもまた然りだった。
 顔面を殴打されたことで、脳震盪のような感覚が頭を襲い、しっかりと体勢を保つことができない。


( #OwO)「貴様アァァッ!!」

бし゚益゚し『何度来ても同じだ、お前達では俺には到底敵わない!』


 ブレイドがラウザー片手に突進。
 "♠6 THUNDER"と"♠8 MAGNET"のカードをラウズし力を放出。
 クックルを磁力の力で押さえつけ、雷の力を纏った剣で攻撃しようという算段だ。
 ――だが、


бし゚益゚し『ほう、俺を止めれるとでも思ったのか……フゥ"ン"ッ!!』

( ; OwO)「なっ…!?」


 クックルは、カードの力を強引に振り解き拘束を抜け出した。
 そして、向かい来るブレイドに向かって右手を翳すと、ぶら下がる鉄球から光弾を発射。


( ; OwO)「うああああッ!!」


 ブレイドに被弾した途端、多数の爆発を引き起こす。

94126話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:36:59 ID:dVuufZLM0


 シュウウ…と、音を立てながら装甲から吹き上がる煙幕。
 爆撃を受けてブレイドはその場に背中から倒れこんでしまう。


( ; OMO)「剣藤…ッ!」

( ; OwO)「こいつ、やっぱり他のカテゴリーJよりレベルが違うお…」


 ブレイドの言葉を耳にした途端、クックルの様子が変わった。
 今までは静かに闘う意志を燃やし、冷静にライダー達と戦っていたが…。
 クックルの鼻息が、どことなく荒くなった。


бし゚益゚し『お前がどれだけのアンデッドを相手にしてきたかは知らんが、他のカテゴリーJと一緒にされると困るなぁ。
      特に……昨日の狼野郎のような奴と一緒にされると……腹が立つんだよ!!』


 ハンマーを高々と振り上げ、全身の力を込めて、そのまま一直線に地に向かって振り下ろす。
 振り下ろされた地面からコンクリートで出来た辺り一面に、バキバキッ!と地割れが起きる。
 ゴゴゴゴゴ…と地鳴りのような不穏な音が響き渡ると、突然――、


( ; OwO)「おわぁあっ!!」

( ; OMO)「なっ…!!」


 地面は砕かれ、割れた部分からブレイド達は下の階へと落下する。
 叩き付けられ、更にクックルの追撃を受けスタジアム中央の広場へと放り投げ出される。


( ; OHO)「んぐっ…!このでかい会場を、崩落させただと…!?」


 ハンマーの一振りで、スタジアムの一部を崩壊して見せたクックル。
 とてつもなく強大な力を前にし、レンゲルは自然と心が恐怖に染まってしまっていた。

94226話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:37:20 ID:dVuufZLM0


 一方、この戦いを傍らで観戦している者がいる。


(-_-)


 ヒッキーだ。
 崩壊を免れた客席にて、椅子に腰掛け足を組みながらライダー達の戦いを見ている。

 その隣の席には、ロマネスク達が開発したラウズアブゾーバーが。


(-_-)「ん…?」


 戦いを見ていたはずのヒッキーだが、いち早く何かに気付いた。
 遠くからぼんやりと見える。物陰に隠れ、動けないでいる何かが。
 よく見ると……そこには、まだ10歳にも満たないであろう女の子が、恐怖で震えていたのだ。

 ヒッキーはこれに気付いたが、動こうとはしない。
 あくまで、傍観を決め込んでいる。


(-_-)「さて、どうなるかな…」



.

94326話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:37:42 ID:dVuufZLM0


( ; OwO)「くっ……こんなとこで、倒れるわけにいかないんだお…!」

бし゚益゚し『そうか。だが残念だったな、お前達は此処で終わりだ』


 拳を突き立て、立ち上がろうとするブレイド。
 クックルは見せしめにと言わんばかりに、片手でギャレンとレンゲルの首を掴み、軽々と持ち上げた。


( ; OMO)「ぐう…」

бし゚益゚し『これはお前達の力を測らせてくれた感謝の気持ちだ、受け取れ!』

( ; OHO)「ふざけやがってェ…!」


 鉄球から光弾を発生させ、吊り上げたギャレンとレンゲルに至近距離で発射。
 無数の火花が激しく散り、爆発が二人を巻き込んだ。
 

( ; OwO)「モララーさん!ドクオ!!」


 立ち込める煙幕の中から、二人の体が投げ出される。
 地面に落下した後、二人の変身はダメージを受けすぎたが故に強制的に変身を解除される。


( ; ・∀・)「かはっ…!」

(;'A`)「ううぅ…」

( ; OwO)「こんのォ……!!」


 痛む体を叩き起こし、二人を庇うようにクックルに立ち向かう。
 しかし、クックルのハンマーによる殴打によりいとも容易く吹き飛ばされてしまう。

94426話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:38:18 ID:dVuufZLM0


( ; OwO)「うぐ…っ!」

「きゃあああっ!!」


 壁にぶつかり崩れ落ちるブレイド。
 その壁の向こう側で、何か悲鳴のような声が聞こえた。


( ; OwO)「え…?」

「ぐすっ…!うううぅぅ…!」


 女の子の泣き声。
 ブレイドは壁に手を掛けながらゆっくり起き上がり、向こう側を覗いた。
 そこには、うずくまって震えている女の子が一人で隠れていた。


( ; OwO)「まだ、逃げきれてない人がいたのかお…」

бし゚益゚し『何だ、別の人間の声がするな。まだいたのか』


 クックルが、背を向けるブレイドの方へとゆっくり歩み寄る。
 すると、女の子がいると分かりながら、鉄球から光弾を発射。


( ; OwO)「ッ!?危ない!!」


 それに気付いたブレイドは、咄嗟に庇うように立ち上がり背中で光弾を受け止めた。


( ; OwO)「ッッぐぅっ…!!」

94526話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:39:20 ID:dVuufZLM0


 背中を襲う痛みに、歯が欠けそうな程に食いしばって踏ん張る。
 既に体はボロボロ、両脚もおぼつくが、ブレイドは倒れない。
 むしろ…涙を流す女の子に向けて、サムズアップしてみせた。


( ; OwO)「ッ……大丈夫、安心するんだお…!お兄ちゃんが守るから!
     今のうちにほら、お母さんのとこに逃げるんだお…!行けるね?」

「……うん」

( ; OwO)「よしよし、偉いお。さぁ、走って行くんだお!」


 女の子は、ブレイドの顔を見つめながら問いかけに頷いた。
 彼の言葉に安心したのか、女の子は立ち上がってすぐに出口の方へと駆けていく。
 その姿を見届けたブレイドは、ふと……気が付いたことがあった。
 いや、正確には…忘れていたこと。かもしれない。


( ; OwO)「そうか……」


 ヒッキーに言われたことが、頭を過る。

 ――先輩は何で仮面ライダーやってるんですか?
 ――先輩を動かすもっと大事なことは?
 ――先輩達はアンデッドを倒すことに意識が行き過ぎて、もっと根本的なことを忘れてるんじゃないですか?


( OwO)「……そうだ、分かったおヒッキー」

(-_-)「……」


 遠くから見守っていたヒッキーは、ブレイドの変化に気付き、僅かに身を乗り出す。

94626話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:40:15 ID:dVuufZLM0


( OwO)「僕の体を動かすのは、義務とか使命なんかじゃない…。
     そこにいる人を守りたいという思い、助けたいという思いが、僕の体を動かしているんだ…!」

( OwO)「アンデッドを倒す事だけじゃない、人を守るために戦う……僕は人間を愛しているから戦っているんだお!」

(-_-)「そうだよ…それが聞きたかったんだよ、先輩…!」


 柵に足を掛け、高々と跳躍するヒッキー。
 蜘蛛の糸をブレイドの元へ伸ばし、糸を伝い瞬時に移動。


бし゚益゚し『ん?お前は…』

(-_-)「やっと気付いてくれましたね、先輩」

( OwO)「ヒッキー、お前の言う通り…僕はアンデッドと戦うことばかりに意識が集中してたお。
     大事なことを忘れかけてた」

(-_-)「そう、その想いが力になる。アンデッドの力だけでは本当の強さは手に入らない。
    それは、先輩が今までの戦いを通してみんなに教えてくれたことじゃないですか」

(-_-)「俺も、先輩からの教えを先輩に叩き入れ直しただけですよ」

( OwO)「ヒッキー……」

бし゚益゚し『何をゴチャゴチャと喋っているんだ…カテゴリーK、お前も人間とつるむようになったのか?』

(-_-)「黙れ、デカブツ。残念だがお前の計画はここで終わりだ」

бし゚益゚し『ほう、それはどういうことかな?』

94726話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:40:38 ID:dVuufZLM0


 ヒッキーが、ラウズアブゾーバーをブレイドに差し出す。
 ブレイドがそれを受け取ると、ヒッキーは後退りしてその場を離れる。
 

( OwO)「これが、ラウズアブゾーバー……よし!」

( ФωФ)[ 聞こえるか、ホライゾン ]

( OwO)「ああ、聞こえるお」

( ФωФ) [ そいつを左腕に装着するのである。そしてカテゴリーQのカードを装填させ、カテゴリーJをラウズするのである! ]


 ロマネスクの指示通り、ブレイドはラウズアブゾーバーを左腕に装着。
 ブレイラウザーを引き抜き、オープントレイを展開させ、♠Jと♠Qのカードを選択。
 そして、ラウズアブゾーバーの中央部に、♠Qのカードを装填。


    〘-♠ ABSORB QUEEN-〙

 
 神々しい待機音が鳴り響く。
 そして、もう一枚の♠Jのカードを、ラウズアブゾーバーにラウズした。


    〖 -♠ FUSION JACK- 〗



( OwO)「!?」

94826話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:41:04 ID:dVuufZLM0

 ♪rebirth - https://www.youtube.com/watch?v=SgXC5Z4R3-c


 突如、♠Qのカードが黄金の光を放ち始め、辺りから羽根がひらひらと舞い落ちる。
 翼を広げた黄金の鷲が現れ、ブレイドの銀色の装甲を覆うように吸収。
 鷲を纏ったブレイド。黄金の光が消えた後に現した姿は――、


( ; ・∀・)「はっ……!」

(;'A`)「あ、あれは……?」


  ∧
( OwO)


 仮面のスペードシールド、胴体の装甲のオリハルコンブレストが、黄金に輝いている。
 胸部のスペードマークの中には、イーグル――鷲が紋章として浮かび上がり、背中には銀と紅の翼がマント状に装着されている。
 更に、ブレイラウザーの剣先には新たな刃が形成され、刃の長さが伸長。

 光り輝くその姿は、上級アンデッドの力を引き出した新たな力――ジャックフォーム。


бし゚益゚し『何だ、その力は…!?』


 無敵と言わんばかりにライダーを圧倒してきたクックル。
 ジャックフォームと化したブレイド、その姿から感じる力の脈動に…どこか困惑を隠せない様子。


( ; ・∀・)「あれが、新しい力なのか…!?」

94926話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:41:27 ID:dVuufZLM0

  ∧
( OwO)「何だこの力…感じるお、奥底から湧き上がる力を…」


 先程までボロボロになっていたのに、今はその苦痛も薄い。
 呼吸を整え、ブレイラウザーを構える。
 最大の敵であるクックルを前に、冷静さを取り戻した。


бし;゚益゚し『何なんだ、こいつは…!!』
  ∧
( OwO)「覚悟するお、カテゴリーJ…!」


 クックルに向かって駆け出すブレイド。
 翼を靡かせながら、瞬く間に距離を詰める。

  ∧
( OwO)「貴様を、倒す!!」


 そして、ブレイラウザーを――勇気の剣を、振り下ろした。

 新たなる力を得たブレイドの反撃が、今、始まる。

95026話 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:41:48 ID:dVuufZLM0




 
     【 第26話 〜新たなる力〜 】 終




.

951 ◆7MnOV.oq7w:2022/01/08(土) 12:49:52 ID:dVuufZLM0
しおり

>>9 第15話
>>84 第16話
>>152 第17話
>>234 第18話
>>308 第19話
>>372 第20話
>>454 第21話
>>530 第22話
>>605 第23話
>>682 第24話
>>772 第25話
>>875 第26話


( ^ω^)< またそのうち

( ^ω^)< 中途半端だから多分次スレかも

952名無しさん:2022/01/08(土) 17:10:27 ID:GlcYoc5A0
乙ッッッ

953名無しさん:2022/01/08(土) 22:57:38 ID:7qO65VCA0
乙!
お帰り!!!


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