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从'ー'从線香花火は甘口なようです

16 ◆znvwArexpA:2017/08/26(土) 22:38:26 ID:ZJZaYyds0

 ………気がつくと、虫の声がせわしない。


( "ゞ)「…………頭いた……」

 どっと押し寄せてきた記憶に、頭がくらくらとする。
 忘れがたいほど鮮烈で、楽しさも苦さも、間違いなく大事な思い出だった。というのに、思い出したからこそ、よくわかるのは。今まで、本当に彼女の言ったとおり、ほとんど全てを『忘れてしまっていた』ということだった。

 中学に上がった夏の頃には、もう一人で線香花火をすることなどなくなり、すっかり彼女は見えなくなってしまっていた。

――あの子は元気かい。

 これは、いつの会話だったか。祖母が唐突に、そう問うてきたことがあった。

――え、誰のこと?

――それでいい。

 祖母も……もしかしたら、彼女と出会ったことがあったのかもしれない。そして、僕と同じように、別れたのかもしれない。…もっとも、真相はもう聞けない。僕がここで思い出したことを、語れる相手は誰もいない。

 ……誰もいない? 本当にそうだろうか。



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