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(@^ω^) ビート・イット!!のようです。

238 ◆HJSTJA2nos:2018/04/10(火) 21:35:18 ID:cm8n.gFg0
【○I○】 「……あの日から全然姿も見ねえし、誰に聞いても知らねえって言うからよぉ……」



【○I○】 「………ほんっと生きててよかったぜぇ!!」



cr炎ro 「『不死身のジョー』たあ俺のことよ!そう簡単にくたばるかっての!!」



*cr炎ro 「まあ、あとちょっとで美味しい茹でザリガニになるとこだったんだけどな!!」 



【*○I○】 「オレも焼きカブトになるとこだったしな!!」



*cr炎ro*○I○】 「だーはっはっはっはっはwwww」



先程までの雰囲気はどこへやら、人でいう肩や背中をバシバシと叩き合いながら大笑いする二匹。
久しぶりの再会を喜ぶ二匹を見ながら、ブーンはある疑問を抱いていた。

239 ◆HJSTJA2nos:2018/04/10(火) 21:37:56 ID:cm8n.gFg0
( ^ω^) (さっきの会話の中で、二人はノイジーが地震を起こしたって言ってたお)



( ^ω^) (でも、僕と一緒に戦ってた時のノイジーはそんな能力無かったお?)



( ^ω^) 「………一つ聞いてもいいかお?」



cr炎ro 「おう!なんだ!?」



( ^ω^) 「さっきの会話の中で二人はノイジーが地震を起こしたって言ったおね?」



cr炎ro 「ん?……ああ、言ったな」



【○I○】 「それがどうかしたのか?」



( ^ω^) 「……いや、その………僕と一緒に戦ってた時のノイジーにそんな能力は無かったんだお」



【;○I○】 「っはあ!!?あいつが地震を使えなかっただあ!!??」

240 ◆HJSTJA2nos:2018/04/10(火) 21:38:34 ID:cm8n.gFg0
(;^ω^) 「ノイジーは超音波みたいな高速の振動しか使えなかったんだお!」



;cr炎ro 「っあ〜………。それについてなんだが」



cr炎ro 「ブーン。お前さん『個性』をどうやって発動するか知ってるか?」



(;^ω^) 「『個性』は虫が本来持つ能力をギアが制御して、マスターが指示を出すことで使えるものなはずだお?」



cr炎ro 「あ〜……今はそう教わってんのね」



(;^ω^) 「え!??ち、違うのかお」



cr炎ro 「いいか?『個性』ってのはマスターから分け与えられたエネルギーがギアを通じて虫に伝わることで発動する」



cr炎ro 「制御してんのはギアじゃねえ。マスターの方だ」


 
cr炎ro 「虫がより大きな力を使うには、マスターからのエネルギー供給が不可欠なんだ」

241 ◆HJSTJA2nos:2018/04/10(火) 21:39:11 ID:cm8n.gFg0
cr炎ro 「虫がどんなに強力な『個性』を持っていたとしても、マスターの器が小さければ本領を発揮できねえんだよ」



(;;^ω^) 「……な、な…てことは」



cr炎ro  「逆に虫の『個性』が弱くても、マスターの器次第では強力な力になる場合もあるしな」



(;; ω ) 「僕は……僕は…!!ノイジーの力を出し切れてなかったってことかお!!?」



cr炎ro 「……そうなるな。理解が速くて助かるぜ」



(;; ω ) 「そんな!?……そんな!!」

242 ◆HJSTJA2nos:2018/04/10(火) 21:39:44 ID:cm8n.gFg0
cr炎ro 「…ブーン。お前は確かにマスターとしての器が小せえ」



cr炎ro 「だがそれを覆すぐれえの力を持ってる」



cr炎ro 「瞬時に戦況や相手の力量を見抜く目、咄嗟の時に最適解を出せる頭の回転」



cr炎ro 「それになにより、土壇場で身の危険を顧みずに突っ込む度胸もある」



(;; ω ) 「……ッ僕の!!……僕のせいでノイジーは!!」



cr炎ro 「………ノイジーのことを忘れろとは言わねえ」



cr炎ro 「だが、大事な人を守るために、これ以上傷つけさせないために……お前は前を向かなきゃいけねえ」



cr炎ro 「立って歩くか朽ちるか選べよ。ブーン」



cr炎ro 「まだ立って歩く気があるってなら、俺が一から鍛えてやる」



そう言って、ジョーは鋏を突き出す。

243 ◆HJSTJA2nos:2018/04/10(火) 21:40:17 ID:cm8n.gFg0
(;; ω ) 「でも……でも!」



僕にできるのか!?ノイジーを殺した僕に!!
そんな思いが頭の中を埋め尽くしていく。
もう少しで全てが黒に飲まれそうになった時、背中を硬いフ節が叩いた。



【○I○】 「………」



カブト丸は何も言わずに僕を見つめている。
たったそれだけのことだったのに、テレパシーだって使ってないのに、伝わってくるものがあった。



cr炎ro 「……どうする?」



(  ω ) 「僕は……」

244 ◆HJSTJA2nos:2018/04/10(火) 21:41:44 ID:cm8n.gFg0
静かにこちらを見つめるジョーの目を見つめ返す。
覚悟はもう決まった。



ノイジー、きっと君ならこう言うんだろう?



( ^ωI○) 「「……ここで逃げたら男が廃るお」」



(##゚ω゚) 「……僕は…僕は強くなりたい!!!」



【○I○】 「……ジョーの兄貴!!よろしくお願いします!!」



ジョーの鋏をしっかりと握る



cr炎ro 「……お前ら二人、俺が責任持って鍛えてやるよ」



cr炎ro 「……まあ、死なねえようにな」

245 ◆HJSTJA2nos:2018/04/10(火) 21:44:11 ID:cm8n.gFg0



今日はここまでです。

皆さん新生活、色々あるかと思いますが頑張っていきましょうね!!
僕も書くんで!!

246名無しさん:2018/04/10(火) 23:27:05 ID:77lPoN160
(;つ��⊂)ゴシゴシ
( ̄・ω・ ̄)

キタ━━ヽ(´ω`)ノ゙━━!!
おかえり!!!

247名無しさん:2018/04/11(水) 02:44:36 ID:fTUMq5mo0
おつ
そしておかえり!
楽しみにしてた!!

248名無しさん:2018/04/12(木) 19:36:07 ID:mtumNXoM0
>背中を硬いフ節が叩いた。

ここ好き

249 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:42:17 ID:P8E/ocfI0



(@^ω^) ビート・イット!!のようです。Яeboot

第4話

250 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:43:07 ID:P8E/ocfI0
cr炎ro 「さて、そんじゃまあ修行を始めっか!」



cr炎ro 「ブーンの器……謂わば力の限界、容量って感じだな」



cr炎ro 「こいつをでかくする方法はいくつかあるんだが、何せお前らには時間がねえ」



cr炎ro 「だから最短距離で一番険しい山を登ってもらうぜ?」



( ^ω^) 「………覚悟はできてるお」



【○I○】 「ああ、オレもだ」



cr炎ro 「…よし、いい目だ。ついて来な!!」



そう言って、ジョーは歩き出す。
これまで門の外と医務室の中しか見ていなかったのでわからなかったが、雨象之里はかなり広い。
まあ、僕の体が小さくなっているのもあるんだけど……。

251 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:43:44 ID:P8E/ocfI0
里のメインストリートだという、飲食店やら何やらが軒を連ねる通りを過ぎ、里の中央へと向かっていく。
なかなかに人通り……いや、虫通りも多い。時折、その中に人がいた。
以前は虫だけが暮らしていたのだが、ここ数年で人の移住も受け入れるようになったそうだ。
もちろん里のことを口外しないという条件付きだが。



cr炎ro 「うし、着いたぜ。」



cr炎roクイッ 「おうブーン!あれを見てみな!!」



(;; ゚ω゚) 「………な…なんだお?あれ!?」



【○I○】 「こりゃあ懐かしい!!長の家じゃねえか!!」



(;;^ω^) 「…家なの!!?」



(;^ω^) 「家がある所にしちゃあ、ずいぶんぼこぼこで崩れそうだお」

252 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:44:17 ID:P8E/ocfI0
僕らの目の前にそびえ立っている巨大な岩だった。
よく目を凝らして上を見れば、確かに天辺にちょこんと家が乗っかっているのが見える。
まるで花札の松のカスのような、その異様な形状も然る事ながら、僕の目を引いたのはその中腹に開いた大きな穴だった。



(;;^ω^) 「……あれは…なんだお?」



cr炎ro 「あれってのは、あのでっけえ穴のことか?」



cr炎ro 「ありゃあ、十年前にこの里で修行をしていた人間と虫が一撃でぶち開けたもんだ」



cr炎ro 「洪水で里が飲まれるんじゃねえかって時に、あの岩をぶち抜いて水を外に流したって訳よ!!」



cr炎ro 「今じゃ里で修行した人間は、あの大岩に自分の技をぶつけて修行の成果を試すのが習わしになってる」



*cr炎ro 「まあ、岩を完全にぶち抜けた奴は二人しかいねえんだけどなwwww」



(  ゚ω゚)そ 「二人しかいないのかお!!?」

253 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:46:38 ID:P8E/ocfI0
【○I○】 「ちなみにその内の一人はお前も知ってるぜ」



(  ゚ω゚) 「まじかお!!??」



【○I○】 「……ゼロ&ハインだ」



(;^ω^)ゴクリ 「あいつらが……これを」



そう言ってカブト丸が指した2番目に大きいその穴は、中がツルりと滑らかで真っ直ぐに大岩を貫通している。



( ^ω^) 「…………」



【○I○】 「…………」



見れば見るほどその圧倒的なまでの技量と破壊力が身に染みて伝わってくる。
やはり、あの試合の時の彼らは手を抜いていた。
もし彼らが本気を出していれば、ノイジーも僕も全く歯が立たなかっただろう。
本来であれば余裕で勝てる実力を持ちながら、彼らは途中で棄権したのだ。
それなのに僕らは、最高の動きをして互角に戦えていたつもりになっていた。



―――――遊ばれていたのだ。
悔しさから思わず、拳を握りしめる

254 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:47:27 ID:P8E/ocfI0
( ^ω^) 「ジョー……。」



cr炎ro 「ん?どうした?」



( ^ω^) 「僕、この中で一番でっかい穴を開けて見せるお」



cr炎ro 「はっはっはっはwwww最初は皆そう言うんだ!!」



cr炎ro 「……まあでも、お前らにゃちーっと期待してるぜ?」



そう言って、また歩き始めたジョーの足音を聞きながら、僕は大岩から目を離せずにいた。
ライバル達の顔が浮かんでは消えていく。絶対に……絶対にあいつらを越えて見せる。
ハインだけじゃない、ジョルジュもロマネスクもショボンも……ツンだって。

255 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:48:14 ID:P8E/ocfI0
通称都落ち(チャンピオンが負けた場合、強制的に最下位になる制度)によって僕は今、創作小学校の中で一番ランクが低い。
……絶対に勝ちあがって見せる。



( ^ω^) 「カブト丸………ぶちかましてやろうお」



【○I○】 「……ああ!!」



【○I○】 「やってやろうぜ」



そう言って大岩を見上げていると、上から声がした。



#cr炎ro 「おう!!ちゃんとついて来いっての!!」



【;○I○】 「やっべ…急ぐぞ!!乗れ!!」



(;^ω^) 「すまんお!!」

256 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:48:51 ID:P8E/ocfI0
そして、過酷な修行が始まった。



#cr炎roブォン 「おらあ!!」



(;^ω^ノリ ハラリ 「あっぶねえ!?」  



見てくれ。あのザリガニ野郎本気なんだ。
小学生を相手に本気で鋏を振るってやがるんだ。
今の攻撃で僕の前髪が何本か持っていかれた。



たしかに、プロリーグでは人間も試合に加わることが多い。
だが、創作小学校などで行われる試合では基本的に人間は一緒に戦わない。
小学生の身体能力ではむしろ、虫の脚を引っ張ることになってしまうからだ。
前脚、中脚、後脚どれを引っ張ることになるのかは虫フリークの皆の想像にお任せする。

257 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:49:37 ID:P8E/ocfI0
戦闘時に邪魔になるのでギアの設定を変え、イヤホンのような形状の物にした。
僕はヘッドフォン型が一番好きだったのだが、好み云々を言っている場合ではない。
死にたくなければ、ひたすら避けるしかないのだから。



#cr炎ro 「余所見とはずいぶん余裕があるじゃねえか!!」



(;^ω^) 「やっべ!!?」



大振りな右鋏の攻撃を掻い潜り、続け様に放たれた左アッパーに飛び乗って距離を取る。
思ったよりも高く飛び上がったため着地するまでに時間がかかってしまった。



cr炎ro 「おら!!!」



(  ゚ω゚) 「見切った!!!!」



着地直後の隙を狙って、鋏が足元を薙ぐように振るわれる。
着地してしゃがんだ体勢から即座に側中をしてこれを回避。
そのまま懐に走り込んで、ジョーの腹部にある水瓶を取ろうとしたが……。

258 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:50:38 ID:P8E/ocfI0

;cr炎roバヒュッ 「うおぉっっと!!?」



得意のバックスステップで避けられてしまった。
今の所、こっちの攻撃は全部空振りに終わっている。
ジョーの攻撃は致命打にはなっていないものの、こちらはじわじわとダメージが蓄積してきている。
腕とか脚とか痣だらけでめっちゃ痛い。



cr炎ro 「今のは惜しかったな」



cr炎ro 「さっ、十分間休憩したらまた攻撃するからなー」



そう言って、水を浴びに歩いていく。
背中から奇襲をかけようかとも思ったが、体力回復に専念することにした。

259 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:51:47 ID:P8E/ocfI0
この修行のルールはいたって簡単である。
ジョーが腹部に付けた水瓶を取ればいい。ただ、それだけだ。
水瓶には秘伝の霊薬が入っていて、それを飲むとマスターの力を高めることができるそうだ。
『個性』を使わないと聞いて、正直楽勝だと思っていたが、そんなことはなかった。
いついかなる時でも仕掛けていい代わりに、僕が仕掛けるか時間が来るととジョーは攻撃してくる。
これが意外と厄介で、まともに喰らえば動けなくなる攻撃は躱すだけでも一苦労である。



カブト丸はカブト丸で、長達に扱かれているらしい。
毎日、宿に帰る頃には僕と同様、ぼろ雑巾の様になっている。



【;-I-】 「ぅぅう……。キュウリは勘弁……!!」



先日はこんな感じで魘されていた。
修行の中身と関係あるのだろうか、ちょっと気になるところではある。



朝はこんな感じで水瓶奪取と座学に精を出している。
夕方にかけて少し眠って、夜からはもっと過酷な修行が始まる。

260 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:52:25 ID:P8E/ocfI0


(;^ω^)ガバッ 「またかお!!?」



【;○I○】 「寝るなよブーン!!迎え撃つぞ!!」



長達が過去に戦った強敵達が襲い掛かってくるのだ。
これは七つの森の長が協力して、影のような幻影を作り出しているらしい。
幻影とは言ったが、実体はあるので攻撃を喰らえば、もちろんダメージを喰らう。



長達が強敵と認めた相手だけあって、一体一体の歯応えも物凄い。
正直に言うと、一対一での実力は僕らより上だと思う。
そんな相手が一晩中、しかも何体も襲い掛かってくるのだからたまったもんじゃない。



( ^ω^)そ 「囲まれた!!?」



【#○I○】 「あらよっとぉ!!」



(;^ω^) 「ごめん!助かったお!!」



【○I○】 「おう!!いいってことよ!!」

261 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:53:47 ID:P8E/ocfI0
雨象之里の夜は明かり一つ無く、真っ暗になる。
そのため、人間の僕には暗くて、敵の位置や動きが非常に見えにくい。
だが、相手は虫である。暗闇はお手の物。おまけに空も飛ぶ。
常に気を張り巡らせて、自分の周囲を警戒していないといけないのだ。
自分がこれまでいかに甘えた環境で戦っていたのかを痛感させられた。




(;;#゚ω。)○I##】ボロッ ((……ちっくしょう!!)) 



毎日毎日ボロボロになりながらも、どうにか生き残り、強くなる術を模索する日々。
徐々に僕らは肉体的にも精神的にも追い込まれ、喧嘩が増えていった。

262 ◆HJSTJA2nos:2018/04/13(金) 04:57:41 ID:P8E/ocfI0



今回はここまでになります。

意識しないようにとは思っているのですが、レスがあるとやっぱり嬉しいものですね。
ありがとうございます!!

263名無しさん:2018/04/13(金) 07:16:33 ID:xGeBlHVg0
乙です

264名無しさん:2018/04/14(土) 00:17:47 ID:RkW3On4I0


265名無しさん:2018/04/18(水) 16:07:51 ID:QcUXjpTY0
更新きてた嬉しい
おつ

266 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:11:52 ID:bbO.SczU0



(@^ω^) ビート・イット!!のようです。Яeboot

第五話

267 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:13:04 ID:bbO.SczU0
ジョーの尾で弾き飛ばされ、受け身も取れずに地面に叩きつけられた。



(;; ω ) 「うお!!?」



cr炎ro 「どうしたどうしたぁ!?……最初の威勢はどこに行っちまったんだ!!?」



cr炎ro 「そんなにフラフラしてんのに、休まずかかって来る意地と根性は認めてやらあ……」



#cr炎ro 「だが!!そんな状態で俺に勝てると思ったか!!?……舐めんじゃねえよ!!」



鋭く振られた鋏を避けることができず、もろに喰らった。
大型トラックにでも轢かれたみたいな衝撃に、僕は意識を手放した。



それから三日ほど意識を失っていたらしい。
再び目が覚めた時は夕方だった。隣から静かに寝息が聞こえる。
カブト丸はいつも以上にズタボロになっていた。この三日間きっと一人で戦っていたのだろう。

268 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:13:56 ID:bbO.SczU0
傷ついた上翅をそっと撫でる。
僕が不甲斐ないせいで、カブト丸にも負担をかけてしまった。



( ^ω^) (……ごめんお。カブト丸。でも、僕もどうしていいのか…わからないんだお)



( ^ω^) (諦めそうなぐらいなんだお……。本当にギリッギリで。)



( ^ω^) (この前も君に酷いことをしたし……。本当にごめんお)



( ^ω^) (明日こそ……!きっとジョーから水瓶、とって見せるから)



そんなことを思いながら上翅を撫でている内に、いつの間にか眠ってしまっていた。

269 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:14:33 ID:bbO.SczU0
【○I○】 (………ブーン)



【○I○】 (……オレも、酷え態度とっちまったからな)



【-I-】 (…まずは体力を回復しねえと)



ここ一週間、僕とカブト丸は、お互いに一切口を聞いていなかった。
事の発端は些細なすれ違いだった。



――――― 一週間前



修行が終わった後、その日の戦闘内容やお互いの動きなどについて話す。
これが僕らの日課になっていた。



その日はお互いの過去なんかについて話していたんだ。

270 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:15:21 ID:bbO.SczU0
( ^ω^) 「そう言えば、カブト丸はなんでノイジーとアトラと一緒にいたんだお?」



僕がその質問をするとカブト丸は、少し暗い表情になる。
いつも忙しなく動いている触角も、なんだか元気がなくなったように見える。



【-I-】 (はあ……やっぱ気になるよなぁ)



【○I○】 (…まあ、他ならぬブーンだしな。話してもいいか)



少し迷っているような表情をした後、カブト丸は話し出した。



【○I○】 「………まあ、簡単に言うとオレ達は、三匹とも……迫害を受けてたんだよ」



(;^ω^) 「なっ!!?」



【-I-】 「まあ、それぞれ産まれ方が色々あったからな」



そう言うと、カブト丸はフッと息を一つ吐いた。
あまり話したくない話題なのだろう。
だが、この話を聴かなくては、本当の意味で相棒になれないような……。
そんな気がして、僕はカブト丸が口を開くのを待った。

271 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:16:03 ID:bbO.SczU0
【○I○】 「姉御が母親を焼き殺して生まれたのは、この前聞いただろ?」



( ^ω^) 「ああ……言ってたおね」



【○I○】 「ノイジーのは、聞いたことあるか?」



( ^ω^) 「……いや、聞いたことなかったお」



( ^ω^) (そういや僕……相棒のこと、知ってるようで知らないんだな)



( ´ω`) (いや、よく考えたらツンやショボン、ドクオのことも何にもわかってないお…)



【○I○】 「あいつは、能力がコントロールできてなかったからな」



【○I○】 「産まれた直後に物凄え規模の地震が起こったんだ」



【○I○】 「あいつが泣く度に、里が崩壊するレベルの地震が起こってよ…」



【○I○】 「だから捨てられたらしい」

272 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:16:53 ID:bbO.SczU0
【○I○】 「『個性』を封印する輪を角に付けられてな」



( ^ω^) 「…そうだったのかお」



【○I○】 「んでもって……オレは…」



そう言いかけて、カブト丸は一瞬、口ごもる。



【-I-】 「オレは…産まれた時、人間の腕が生えてたんだ」



【-I-】 「かつてそんな産まれ方をしたのは一匹しかいねえ」



【○I○】 「親はオレを森のご神木の前に捨てに行ったらしい」



【○I○】 「そこを拾って育ててくれたのが姉御なんだ」

273 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:18:01 ID:bbO.SczU0
( ^ω^) 「人間の………腕が?」



( ^ω^) 「…そうだったのかお」



僕らが初めて会った時、カブト丸は人の腕を作り出して操作していた。
僕がそれを見て気絶した時、もしかしてかなり傷ついたんじゃないだろうか。



( ^ω^)「カブト丸……もう一つ聞いていいかお?」



【○I○】 「……なんだ?」



( ^ω^) 「君は何で……人の手をよく具現化するんだお?」



( ^ω^) 「…その……君が迫害される理由になったものなのに……」

274 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:19:05 ID:bbO.SczU0
【○I○】 「………ああ…それはな」



【○I○】 「いつか……いつか人間になるのがオレの夢だからだよ」



そう言うカブト丸を見て、僕は笑ってしまった。
それは決して、悪い意味ではなかったけど、とにかくタイミングが悪すぎた。



【○I○】 「………」



【-I-】 「そうか…………お前も笑うのかよ…」 



そう言ってカブト丸は部屋を飛び出していった。
その悲しげな声を聴いて、僕は全てを理解した。
謝罪しようにも、もう遅い。カブト丸は僕と口を聞いてくれなくなった。



今日もカブト丸は僕を避ける。まるで視界に誰もいないかの様に振る舞う。
修行中もカブト丸のことが気になって、なかなか集中できなかった。

275 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:20:06 ID:bbO.SczU0

cr炎ro 「なんだあ?お前ら、話さねえの?」



cr炎ro 「……ったくよぉ。とにかく早いうちに仲直りしろよ?」



ジョーにも物凄く心配された。



そんなこんなで今に至る。




頭上でビョウと風を切る鋭い音が聞こえる。
この後に来るとすれば……右のアッパーか、バックナックルだろう。



(;^ω^) 「グッ!?」



cr炎ro 「おら!!!!避けねえと死ぬぞ!!?」



(;-ω^) (……ちっくしょう!!)



すぐさま起き上がり、ジョーを見る。
次の攻撃は……次のパターンはどれだ!?
脇腹がビリビリと焼けるように痛み、思考を鈍らせる。

276 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:20:55 ID:bbO.SczU0
(;-ω゚) (……右の振り下ろし!!?こんなんパターンに無かったお!??)



疲れと痛みで鉛の様に重くなった身体を、どうにか動かし攻撃を避ける。
脚が縺れたがその倒れこむ力を利用して、さらにもう一撃を避けじわじわと懐に潜り込む。
狭くなった視界の中で、その眼前に迫る赤い閃光に気づいていなかった。



ぞんと肉を貫く音が聞こえたような気がした。



(;;-ω-) (ちくしょう!!またダメだった!!)



この修行が始まって、もう三か月になる。
僕は未だに、水瓶に触れることすらできずにいた。
どさりとその場で膝をつく。このダメージを回復するのに少し時間が欲しい。

277 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:21:27 ID:bbO.SczU0
(;; ω ) (何がダメだった?……力み過ぎて動きに無駄が多いのか?)



(;; ω ) (なんで力むんだ?……あの鋏が怖いからか?痛いからか?)



(;;-ω-) (それだ。鋏は確かに怖い……だが、力を抜け、力を抜け!!)



(;;-ω-) (パターンは忘れろ!その場その場での動きを瞬時に考えるんだ!!)



(;; ω ) (…今日こそ水瓶を取る……取ってカブト丸に謝らないと…!!)



(;;-ω-) (動き方のイメージは、決して触れられない何か……)



( -ω-)フゥー (集中しろ!!……思い描く理想の動きは………煙!!!!)



脇腹の痛みに耐えながら、体力を回復させていく。
僕のスタミナも考えれば、思いっきり攻められるのは後一度だろう。

278 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:22:06 ID:bbO.SczU0


cr炎ro (……そろそろ、限界か?)



cr炎ro 「よし、一旦休憩にするか」



(;; ω ) 「……まだだお」



(;;#゚ω゚) 「まだ!!終わってねえお!!」



地を蹴って、加速。そして、そのまま体を捻り、側中。
迫る真紅を躱したら、姿勢を低くして次の横薙ぎを回避。
水瓶に触ると見せかけて、ジョーの第二胸脚を掴んで飛び上がる。



;cr炎ro (さっきので相当なダメージがあったはずなのに、まだ喰らいつくのかよ!?)



;cr炎ro (それに攻撃を受けた後だってのに、鋏を見てビビる素振りもねえ)



;cr炎ro (なんて胆力してやがんだ。……頭のねじがぶっ飛んでやがる)

279 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:22:56 ID:bbO.SczU0

飛び上がって、背中を駆け上がりながら上着を脱ぐ。
全身をものすごい勢いで捻り、回ることで僕を振り落としながら攻撃しようというのだろう。
―――――その手はもう読んでいる。
 


(;;#゚ω゚) (……今!!)



僕が攻撃を読んだことを悟られないよう、揺れを察知したかのようにグッと踏ん張る。 
ジョーが回転し始めた瞬間に合わせて、膝を抜き、小さく飛ぶ。



(;;#゚ω゚) (僕が落ちたと思ったろ!!?…甘いのはお前だお!!)



ジョーが横に振るった両の鋏を、ととんと蹴って飛び上がる。
そしてその視界を遮るように上着を投げた。



;cr炎ro 「おっと!!?」



バサりと眼前に広がった上着に、戸惑ったお前がとる行動は……!!
―――――得意のバックステップ!!

280 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:23:45 ID:bbO.SczU0
;cr炎ro 「チッ!!」



;cr炎roググッ (!!?…!!!?なんだこりゃあ!!?)



その上着は両袖が結んである。お前の目に引っかかるようにだ!!
バックステップによってグンと身体が引かれる。
チャンスは一度きり。何があろうとこの手は離さない。



(;;#゚ω゚)ボクッ 「ぐうぅぅぅぅぅ!!!!」


物凄い力と速さで急激に引っ張られたことで、左腕の肩が外れた。
それでも必死で上着を掴む。 



cr炎ro (なにがどうなってやがる…!!?)



(;;#゚ω゚) (いっけえええええ!!!!)

281 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:24:18 ID:bbO.SczU0
バックステップの力を利用して、パチンコの様に前に飛ぶ。
着地を少し失敗し、脚を挫いたが、そのままの勢いで跳んで手を伸ばす。



;cr炎ro (しまった…!!)



;cr炎ro 「させるかよぉ!!」



もう一度バックステップをしようとするジョー。
……だがもう遅い!水瓶をしっかりと抱え込んで、衝撃に備える。



(  ω ) 「とったぁあああ!!!!!!」



;cr炎ro 「クソ……!!」



衝撃で水瓶を結んでいた紐が切れる。

282 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:25:02 ID:bbO.SczU0
cr炎ro 「かぁ〜〜〜!!!!取られちまったか!!」



cr炎ro 「よくもまあこの短期間で、水瓶を取れたもんだぜ」



cr炎ro 「ハイン達もお前らより一ヵ月は多くかかったのにな!!」
 


( ^ω^) 



(  ω )バタリ



そのまま僕は再び医務室に運び込まれた。
疲れ過ぎて倒れたらしい。
 


早く、早く相棒に謝らないと。
それだけを考えていた。

283 ◆HJSTJA2nos:2018/04/27(金) 02:26:23 ID:bbO.SczU0



今日はここまでになります。
もうちょっとで試合パートに入れる……。

284名無しさん:2018/04/27(金) 22:52:58 ID:apeKQ1Tk0

裏でやってる設定は公開されるのかな?

285 ◆HJSTJA2nos:2018/04/28(土) 00:42:26 ID:ts3zr2oM0
裏設定の公開については、どこまでやろうか迷ってました。
あんまりやると話がごちゃごちゃして、話の芯が曇ってしまいそうだったので…。

ここが知りたいと指定してくだされば、可能な範囲でお答えさせていただきます。

286名無しさん:2018/04/29(日) 21:58:04 ID:7s7.zKCI0


287名無しさん:2018/04/30(月) 20:43:17 ID:bAJROvtI0
燃えますねアクション!!

288名無しさん:2018/05/03(木) 00:56:04 ID:OUfKSor20
スレタイだけ見てバンド物だと思ってたがこんな熱いバトル物だったとは
乙、ゆっくり続き待ってるぜ

289 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:43:27 ID:lzFumgJ60





(@^ω^) ビート・イット!!のようです。Яeboot

第6話

290 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:44:18 ID:lzFumgJ60
雨象の里では、毎夜のように大きな月が輝く。
今日は珍しく、厚い雲が月を覆い隠している。
里を全体を見下ろせる小高い丘の上で、一匹のカブト虫が雲の切れ間を待っていた。



【-I-】 「………」



【○I○】 (……来たか)



背後の闇に、誰かの気配を感じたのだろう。
カブト丸は振り返らずに声をかける。



【○I○】 「なあブーン……いるんだろ?」



膝どころか自分の頭よりも高い、草の根を踏みつけてかき分けながら、前に進む。
しばらく草と格闘しながら進むと、岩の上にちょこんと座った丸い上翅が見えた。
ゆっくりと歩いてカブト丸の隣に立つ。



( ^ω^) 「……隣いいかお?」



【○I○】 「……おう」

291 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:45:02 ID:lzFumgJ60
普段の威勢がいい荒々しさとは少し違う、穏やか雰囲気に、少し戸惑う。
こんな時どう話したらよかったんだっけ?喉の奥に声が詰まって出てこない。
僕は今まで、誰かと本気で向き合ったことがあっただろうか?
相棒のことも友達のことも、ろくに知らなかった僕が、しっかりと話せるだろうか。
この思いを上手く言葉にして、伝えることができるのだろうか?
そんなことを考えているとカブト丸が先に口を開いた



【○I○】 「なあ、ブーン」



( ^ω^) 「……なんだお?」



声がやや上擦ったような気がする。ドクドクと鼓動が早まっていく。
僕は今、上手く喋れたのか?しっかりと返事ができていただろうか?
不自然jなk



【○I○】 「ブーン。聞こえてるか?」



カブト丸の声にはっと我に返る。
雨上がりの湿った腐葉土の様に落ち着いたその声は、僕の中の不安の芽を
根こそぎ摘み取っていった。



( ^ω^) 「聞えてるお」

292 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:45:41 ID:lzFumgJ60
( ^ω^) 「………カブト丸…僕は君に幾つか言わなきゃないことがあるお」



【○I○】 「おお……なら先に聞かせてくれ」



ゴクりと乾いた唾を飲む。



(  ω ) 「この前は……君の夢……笑って悪かったお」



【-I-】 「……いいんだ。慣れてる」



【○I○】 「だから、今日はお前とお別r」



( ^ω^) 「……最後まで聞いてくれお!!」



カブト丸は僕の表情をまじまじと見て、静かに頷いた。



( -ω-) 「僕があの時、君の話を聴いて笑ったのは……」



そこまで言って、小さく息を吐く。
こんなに緊張したのはいつぶりだろう。普段は大会でも緊張しなかったのに。

293 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:46:13 ID:lzFumgJ60
( ^ω^) 「君の夢が……僕の夢と似ていたからなんだお!!」



【○I○】 「…………!?」



カブト丸の目に疑問と動揺の色が広がっていく。
ここまで、慎重に言葉を選ぶのは産まれて初めてな気がする。
さて、どこから話そうか……。



( ^ω^) 「……まずは僕のことから話したいと思うけどいいかお?」



【○I○】 「……お、おう」



( ^ω^) 「それともいきなり理由だけ聞きたいかお?」



【○I○】 「お前の話したいように話せよ」



【-I-】 「……最後かもしれないしな」

294 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:46:46 ID:lzFumgJ60
最後かもしれない、その言葉に小さく息を呑んだ。
カブト丸の覚悟が痛いほど伝わってきたからだ。
彼のその思いに、覚悟に報いることはできるだろうか。
そう思いながら、慎重に言葉を選ぶ。



( ^ω^) 「僕が産まれた時の話をしたことあったかお?」



【○I○】 「いや………聞いたことねえな。誕生日だけは知ってるが」



( ^ω^) 「僕は普通に皆がイメージする通りの感じで産まれたんだけど……」



( ^ω^) 「……ちょっと変なところがあったんだお」



【○I○】 「変な所………?」



( ^ω^) 「僕のおでこのちょっと上の辺り、触ってみてくれお」



【;○I○】 「あ、ああ」

295 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:47:20 ID:lzFumgJ60

動揺しながらも手を伸ばすカブト丸。
ああ、どんな反応するんだろう。
ふざけてるのかなんて怒るだろうか?
……まあ、大丈夫か。
僕は被っていた麦わら帽子を外した。



【○I○】そ 「……こ、これは!!?」



(  ω ) 「わかったかお?」



【;○I○】 「……な、なんで角が?」



( -ω-) 「僕には産まれた頃から、カブト虫の角が生えていたんだお」



( ^ω^) 「それで………いじめられていたんだお」



【○I○】 「……とったりできなかったのか?」



( ^ω^) 「引っこ抜こうとしたりもしたけどこの角は絶対に折れなかったんだお」



( ^ω^) 「手術は不可能らしいし、成長には全く影響がないってことで隠してるんだお」



【○I○】 「お前……だからいっつも帽子を被ってたのか?」

296 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:47:50 ID:lzFumgJ60
( ^ω^) 「そういうことだお」



( ^ω^) 「ツン達が麦わら帽子を僕にくれたのは、この角を隠すためなんだお」



( ^ω^) 「まっ!今じゃ角のおかげでギアがずれなくて楽なんだけどねwwww」



それを聞いて、呆れたように笑うカブト丸。
久しぶりに笑っているカブト丸を見て、少し緊張が解れた。



【○I○】 「それが………お前の夢と何の関係があるってんだ?」



( ^ω^) 「……僕は、カブト虫になりたかったんだお」



( ^ω^) 「君が人になりたかったように、僕はカブト虫になりたかったんだお」



【○I○】 「お前………」



【-I-】 (嘘を言ってるって目じゃねえな)



【-I-】 (そうか……そうだったのか)

297 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:48:29 ID:lzFumgJ60
【○I○】 「すまねえ……ブーン。」



【-I-】 「あいつの代わりにお前の剣に…盾になるって……あの日誓ったのにな」



そう言って目を閉じるカブト丸。



( ^ω^) 「こっちこそごめんお……あの日、己を偽ることなくって………」



( -ω-) 「………僕は言ったのに」



あの日、森の中でカブト丸と契約した時のことは、今でも鮮明に覚えている。
僕はこの数か月、あの言葉に恥じないマスターとしてやってこれただろうか?
ノイジーに笑われないような男であれただろうか?――――――答えは否だ。



( ^ω^) 「相棒、僕ともう一度……一緒に歩いてくれるかお?」



【○I○】 「ああ!!こっちこそよろしく頼むぜ!!相棒!!」

298 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:52:54 ID:lzFumgJ60
かつてはいつもに口にしていたこの言葉をカブト丸に言うのは久しぶりだった。
なんだか照れ臭いような気もする。
不意にいつかのノイジーの言葉を思い出した。



あれは強いが不安定だ。…師もなく、両親もなく。一人で修行を重ねるうちに強くなった。
好敵手と決めつけた俺とぶつかり合い闘う中で、さらに力を増したが…肝心な時に心が弱い。
マスター、あんたが相棒として、家族として支えてやってくれ。



( ^ω^) (………そういえばそんなことも言ってたお)



( ^ω^) 「さてっと……」



帯に結んでいた紐を解いて、水瓶を手に取る。
これ、本当はマスターが飲むもんらしいんだけど………。
きゅっと蓋を開けて、持ってきた水筒に注いでいく。

299 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:53:57 ID:lzFumgJ60
【○I○】そ 「それ!?ジョーの兄貴が持ってた水瓶か!!?」



( ^ω^) 「そうだお。飲んだモノの力を引き出すってやつ」



【○I○】 「……ついに取ったのか!!」



そう言って、小さくガッツポーズしているカブト丸に水筒を手渡す。
一瞬、戸惑ったのかカブト丸の動きが止まった。



【○I○】そ 「待て!!これ虫にしろ人にしろ、一本飲まねえと効果がねえんだろ!!?」



( ^ω^) 「いいんだお。これは僕一人で取ったもんじゃないし」

300 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:54:28 ID:lzFumgJ60
( ^ω^) 「それに不思議な水で力を得ても僕は嬉しくないお」



( ^ω^) 「だから、相棒と半分に分けるって最初っから決めてたんだお」



【○I○】 「………お前……わかったよ」



カブト丸のフ節が器用に水筒を持っていく。



【○I-】 「にしても杯を交わすってのに…水筒とは風情がないねえ」



( ^ω^) 「まあ、僕ららしくていいと思うお?」



そんなことを思いながら、スッと水を口に含む。
いっせーのなんて合図はいらなかった。

301 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:56:52 ID:lzFumgJ60
ふわりと柔らかな光が一人と一匹を包み込む。
身体にぐっと力が漲るような不思議な感覚があった。



( ^ω^) 「これは……?」



思わず、自身の手を見つめ、何度か開閉してみる。
その時、頭上で激しく鋭い羽音がした。
風を粉々に切り裂かんばかりのその音に、僕は心当たりがあった。
――――――長達もなかなか性格が悪いお。
 


( ^ω^) 「……相棒」



【○I○】 「……おう」



( ^ω^) 「今の僕らの力、見せてやろうお!!」



【#○I○】 「おう!!」

302 ◆HJSTJA2nos:2018/06/11(月) 00:57:55 ID:lzFumgJ60
短いですが今日はここまで。
長かった修行回ももうちょいで終わりです。

303名無しさん:2018/06/11(月) 08:46:58 ID:htyR6ogw0
乙!

304名無しさん:2018/06/11(月) 18:03:43 ID:wUvuZkyY0

こういうことだったか…ギアがずれなくて楽wwww

305 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:37:56 ID:kaLQ2u3A0

激しく大気を揺さぶる羽音とその威圧感は、僕が知る彼とは違っていた。
月にきらりと光るマーマレード色の上翅が静かに閉じ、僕らの目の前に降り立つ。



( ^ω^) 「やっぱり最後は、君が来るような気がしてたんだお」



( ^ω^) 「久しぶり。ノイジー」



(○I○) 「………」



( ^ω^) 「君が幻影なのは知ってるお」



( ^ω^) 「だからって手を抜くなんてことはしないお」



( ^ω^) 「元相棒として、親友として……全身全霊で行かせてもらうお!!」



(@#^ω^)シュゥ 「いくお!!!!カブト丸」



【#○I○】 「おうよ!!!!」



ヘッドフォン型のギアを具現化したのは、なんとなくだ。特に理由なんてない。
ノイジーから目を離さずに、一手目の攻めを考える。

306 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:38:54 ID:kaLQ2u3A0
(@^ω^) (ノイジーは速攻型だったお……てことは)



【○I○】 (……いや、待てブーン。あの目にあの角を低く突き出す構え……)



【○I○】 (たぶんお前と会う前の、能力に制限がなかった頃のノイジーだ)



【○I○】 (お前の記憶とは全然違うファイトスタイルなはずだ。気をつけろ)



(@^ω^) (おk)



(@^ω^) (上翅のペイントが無いってことは、その通りみたいだおね)



ノイジーが脚に力を込め、飛んだ。
低く構えていた角を鋭く突き出しながら、高速でこちらに迫ってくる。
いつもの様に指示を出そうとしたその時、物凄い衝撃が僕を襲った。



(@#-ω゚) 「ぐがッッッ!!!!!?」



【#○I○】 「大丈夫か!!?相棒!!」

307 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:39:44 ID:kaLQ2u3A0
地面を二、三度転がりながら、なんとか体勢を立て直す。
なんだ今の衝撃は。巨人に全身を引っ叩かれたかのような衝撃は。
ビリビリと全身に残る痛みと痺れに、戸惑いながらも指示を出す。



(@#-ω゚) 「大丈夫だお!!相棒、角で叩き落せ!!」



【#○I○】 「おう!!」



(#○I○) 「じぇええああああ!!!!」



鋭く振られた角をカブト丸は叩き落とす。
地面に叩きつけられる直前に、ノイジーは角を捻って拘束を解き、横に薙ぐ。



【#○I○】 「甘ぇ!!」



横薙ぎが来る前に、カブト丸は一瞬羽ばたき、身体を捻ることでそれを回避。
そのまま空中で、一回転しながら縦に角を振るう。
回避が困難と思われたその一撃に、ノイジーは軽く飛びながら、角をぶつける。
そのままカブト丸が角を振る勢いを利用して後方に飛び、距離をとった。

308 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:40:17 ID:kaLQ2u3A0
(@^ω^) (これが……全盛期のノイジービートだっていうのかお?)



(@^ω^) (ちっくしょう。……言ってほしかったなあ)



【 ○I○】 (……感傷に浸ってる暇はねえ!!来るぞ!!)



(@^ω^) 「今度はこっちの番だお!!」



【#○I○】 「いくぞ!!」



カブト丸は真っ直ぐに飛びながら、ノイジーに接近。
そのまま体を錐もみ回転させることで、軌道をずらし、ノイジーの側面に着地する。



【##○I○】 「っしゃあ!!」



掛け声とともに突き上げた角を、ノイジーは後方に飛んで躱す。
その着地地点を狙って、カブトが念力の拳を三度振るう。
不可視の攻撃をノイジーは、全て頭角で弾きながら後退。
着地後、即座に前方に飛び出して、攻勢に転ずる。

309 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:41:03 ID:kaLQ2u3A0
その時、小さな音が聞こえた。
僕がこれまで、聞いたことがない程に鋭いこの音は……!?



(@;^ω^) 「相棒!!まずいお!!角の正面に触っちゃだめだお!!」



【#○I○】 「わかったあ!!」 



(#○I○)シィィィ 「しぇいらああああ!!!!」



カブト丸は、ノイジーの攻撃を側面から叩くようにしていなしていく。
二匹の角と角がぶつかる度に、甲高い音が響いた。
ノイジーの角から静かに響く、鋭い音はまさしく超震甲虫刃の音だ。
だが、音が一つではなく複数ある……。まさか!!



(@;^ω^) 「相棒!!ノイジーの爪にも触れちゃダメだお!!!!」



【;○I○】 「お、おう!!」



(##○I○)シィィィ 「はあああああ!!!!!!」

310 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:41:52 ID:kaLQ2u3A0
角だけでなく両のフ節も超高速で振動させている。
三か所同時に振動を送る。単純なようでいて難しい技だ。
かつての僕らはこの技を成功させることができなかった。



その原因はどうやら僕にあったらしい。
………どれだけ彼に歯痒い思いをさせていたのだろうか。
彼一人の時にはできていた技が使えなくなったのに、彼は文句一つ言わなかった。
一体どんな思いで、彼は戦っていたのだろう。
 


(@^ω^) (……どんな思いで僕の傍にいたんだお?)



目の前では二匹による打ち合いが、その激しさを増していく。
ノイジーの角とフ節による、激しいラッシュをカブト丸は角と念力で弾く。
通常の甲虫の三倍の手数を捌き切れているのは、長達との修行の成果だろうか。



(#○I○) 「しぇいらああああ!!!!」



頭角とフ節による三方向同時攻撃。
一見、回避が困難にも見えるその技に対して、カブト丸は頭角を低く構える。
そして素早く前進すると頭角を突き上げた。
体勢を崩したノイジーのガラ空きになった腹に、カブト丸の念力の拳が突き刺さった。

311 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:42:30 ID:kaLQ2u3A0
(;○I○) 「げああああ!!?」



地面を跳ねながら、転がっていくノイジー。
カブト丸は、すぐに地面を蹴って肉薄し、追撃を試みる。



【#○I○】 「らああぁぁぁぁぁああああ!!!!」



角と念力の拳による息つく間もない連撃。
ノイジーは最初の数発をまともに受けたが、空中で羽ばたき、すぐに体勢を立て直した。
念力の拳を幾つか、受け流すものの、カブト丸の連撃は止まない。



(##○I○) 「だっっっっ!!!!」



連撃に耐えながら力を溜め、一気に解放する。
自身の周囲、全てに衝撃波を発生させ、カブト丸を吹き飛ばす。



【;○I○】 「ちっ!!決めきれなかったか」



(@^ω^) 「カブト丸!!来るお!!」

312 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:43:10 ID:kaLQ2u3A0

再び、飛んでくるノイジーに微かな違和感があった。



(@^ω^) (……いくら何でも馬鹿正直に突っ込み過ぎだお?)



(@^ω^) (何か…ある!?)



次の瞬間、ノイジーが二匹に増えた。
二匹とも超震甲虫刃を発動したまま、猛烈な勢いで突っ込んで来る。



(@;^ω^)ゾク



ヤバいのはわかってる。
でも自然と込み上げて来る笑みを抑えることができなかった。



(@^ω^) (相棒………読んで合わせてくれお)



【;○I○】 (おう!……死ぬなよ)




迫る二匹の間に走り込む。
そして飛び上がると見せかけて、倒れ込む。
体勢を低くすることで、フ節を躱して背後をとる。



体勢を低くした時に拾った石を、水切りの様なフォームで両手を使って投げつける。
それぞれの石は曲がって、二匹のノイジーに向かうが、当たる直前で砕かれる。

313 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:44:48 ID:kaLQ2u3A0
(@;^ω^) (これでいい。まずは僕に戦う意思があることを見せる)



(@;^ω^) (……二匹に増えたからくりは恐らく、超高速の振動によるもの)



(@;^ω^) (………だから、分身との距離が近いんだお!!)



(@;^ω^) (一匹ずつ、いや…同時に!かつ確実に消す)



(@^ω^) (その為に、敵の気を引いて、隙を作る)



(@;^ω^)「相棒!!二匹に同時に攻撃するお!!」



【#○I○】 「おう!!」



(@^ω^) (……僕が攻撃を引き付けるお!!)



【 ○I○】 (……死ぬなよ)



カブト丸が飛び出したのに合わせて、ノイジーに向かって全速力で走る。
走りながら、手近な枝を折ってしっかりと握り込む。

314 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:45:20 ID:kaLQ2u3A0
(@^ω^) (木の棒で叩いて効くかはわからんけども……!!)



左右から飛び掛かって来るノイジー。
左に石を投げ、即座に右のノイジーに木の棒を振り下ろす。



(@#゚ω゚) 「らああぁぁぁぁぁああああ!!!!」



背中を向けた僕に迫るもう一匹のノイジーをカブト丸が角で弾き飛ばす。
分身は木に当たった途端に姿を消した。



僕が振り下ろした木の棒を受け止めようと、角を構えるノイジー。
その角を巻き取るように木の棒を動かして、左に払う。
体勢を崩したノイジーに、カブト丸が念力で攻撃し、弾き飛ばす。
ノイジーが木に叩きつけられる瞬間に合わせて、走り込んで跳躍。
前胸腹板と中胸腹板の間を狙って、木の棒を構える。



(@#゚ω゚) 「もらったああああああああ!!!!」

315 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:45:52 ID:kaLQ2u3A0
木の棒を突き立てようとしたその時、ノイジーがこちらを睨んだ。
次の瞬間、僕の体は弾き飛ばされて、地面に激しく打ち付けられる。



(@;;゚ω゚) 「ぐうっっっ!!!!」


受け身がギリギリ間に合ったが、ダメージがかなり大きい。
仰向けに寝転がった瞬間に、景色が揺らぐのが見えた気がした。
慌てて、横に転がって回避する。転がる僕の真横で、続けて三回、地面が爆ぜた。
横から不可視の衝撃。直感を頼りに、体を跳ねさせて躱すと、そのまま立ち上がる。



【;○I○】 「大丈夫か相棒!!?」



(@⊃ω^)ゴシゴシ 「……なんとかね」



口の横から、つぅと流れた血を拳で拭って、ノイジーを見る。



(@^ω^) (あの振動…。ノイジーを中心に発生させるだけじゃないのかお?)



(@^ω^) (どの距離・方向からも打てるとか…厄介にもほどがあるお)



(@^ω^) (………どうすっかねえ)

316 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:47:30 ID:kaLQ2u3A0
【#○I○】 (お前が死んだら、どうにもならねえんだ)



【#○I○】 (あんまり無茶してくれんなよ!?)



(@;^ω^) (……むっずかしいことをおっしゃる)



その時、視界が激しく揺れた。
足元から何万匹もの蟻が這い上がってくる様な感じがした。



(@;;゚ω゚)ガクッ 「…なる………ほどね」



自然と脚から力が抜け、膝が折れていく。
完全に油断していた。どこにでもあの震動が起こせるってことは。



(@´ω`) 「脳も…狙える…って……わけかお……」



【;○I○】 「相棒!?しっかりしろ!!!!」



倒れて気を失う前に、何とかギアの接続だけは切断できた。
カブト丸への影響はないだろう。

317 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:48:35 ID:kaLQ2u3A0

(#○III○)ブゥゥン 「じゃあああああ!!!!!!」



なるほど、分身は能力の効率が悪いってのに気が付いたらしい。
前脚が六本、頭角が三本に増えたノイジーが飛び掛かってくる。



【;○I○】 「ちぃ!!……くらくらしやがる」



【#○I○】 「仕方ねえ!……お昼寝分の時間位は稼いでやらあ!!!!」



ギアによって、能力に制限が加わってるのは痛いが、何とかするしかない。
派手な角の虫と闘ったことがないわけじゃないが、やっぱりやりにくい。
ましてや相手はノイジービート。相手の頭角に触れれば、こっちの角が切れちまう。



【#○I○】 (なんて手数してやがる……!)



【#○I○】 (情けねえが………防ぐので一杯一杯だ)

318 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:49:09 ID:kaLQ2u3A0
(#○III○)ブゥゥゥン 「シャッ!!シャッ!!」



頭角もフ節も、直接触れて防ぐことができない。
そのため、自らの頭角の周りに、薄っすらと念力を纏わせ、ひたすら猛攻をいなす。



(#○III○)ブゥゥゥン 「ッジャアアアアアアアアア!!!!」



ノイジーの攻撃は回数を重ねるごとに、そのキレと威力を増していく。
防戦一方で、反撃すらままならない。頭角に纏った念力がどんどん削られていく。
何度も弾き飛ばされて、上翅はすっかり傷だらけだ。



【 ○I○】 (ちくしょう……おれはこんなに弱かったかよ)



【 ○I○】 (相棒がいねえと何にもできねえってのか)

319 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:49:48 ID:kaLQ2u3A0
ノイジーの猛攻は凄まじく、無尽蔵のスタミナから繰り出される連撃はなおも止まらない。
頭角の数を増やしたり、減らしたりしながら細かくフェイントをかけて来る。
この駆け引きの上手さは、流石ノイジービートだ。
能力を制限されながらも、蟲帝まで上り詰めただけのことはある。



【 -I-】 (改めて、とんでもねえ野郎だぜ)



【#○I○】 「けど!!負けてらんねえんだよ!!」



攻撃を正面から受けるフリをして、羽を広げて素早く舞い上がる。
そのまま、横に頭を捻って回転。攻撃を空振りして体勢を崩したノイジーの背後をとる。



【#○I○】 「しゃああああ!」



上翅に頭角を思いっきり叩きつけた。

320 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:50:39 ID:kaLQ2u3A0
【;○I○】 (……なんだ!?この手応えは!!?)



地面に埋め込ませるぐらいの気合で、思いっきり打った一撃。
それを喰らってもなお、平然としているノイジー。
何が起こったのかわからないまま、無茶苦茶に攻撃する。



【#○I○】 「ああああああああ!!!!」



(○I○) 「………」



並みの甲虫ならば、すでにこと切れているような猛攻に対し、全く微動だにしないノイジー。
なんだこれは……!何が起こってやがる!!?
無我夢中で攻め続けていると、不意に相棒の声が聞こえた。



(  ω ) 「カブ……ト…丸……!!」



【 ○I○】そ 「起きたのか!!?相棒!!」

321 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:51:30 ID:kaLQ2u3A0
咄嗟にノイジーから、視線を逸らしたその隙を突かれた。
念力で防いで、切り裂かれるのは避けられたが、思いっきり投げられる。
ノイジーの奴、斬れねえとわかった途端に、すぐさま投げに移行したらしい。
激しく視界が回転して、受け身を取れないまま、相棒の横に転がった。



【##○I○】 「……くっそ」



体中が痛くて、言うことを聞かねえ。
相棒の方に目をやると、どうやらまだ目を覚ましていないらしかった。



【 ○I○】 (……じゃあ、さっきのは一体)



くそ……。わからねえことばっかりだ。
おれの攻撃が効かねえわ。気絶してるはずの相棒の声が聞こえるわ。



【;○I○】 (……くそ!!何だってんだ)



とどめを刺そうと近づいてくるノイジーに、念力で攻撃しながら、時間を稼ぐ。
かつて、おれの攻撃を受けた時には、まともにダメージを喰らってたもんだが……。

322 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:55:57 ID:kaLQ2u3A0

【;○I○】 (これがお前の真の強さって訳か………)



ちくしょう。やっぱり勝てねえのか。
こいつが旅に出るまで、結局おれはこいつに一勝もできなかった。
おれは………あの頃と一緒で弱いまんまなのか。



【;-I-】 (……情けねえ)



【  I 】 (ちくしょう……)



かつての敗戦を思い出し、手足が動かなくなる。
すっかり、萎縮して力がこれっぽっちも入りゃしない。



【  I 】 (これで……終わりなのかよ)

323 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:56:36 ID:kaLQ2u3A0
諦めかけたその時、上翅にコツンと小さな衝撃があった。
ギアがリンクした時のあの感覚。



(@^ω^) 「……まだ、負けてねえお」



【;○I○】 「相棒!!!?」



(@^ω^) 「お待たせ。……さあ、反撃開始だお!!」



小さなその手から、確かに伝わる熱がおれの不安をぶっ飛ばしてった。
個性の連続使用で、疲れ切っていた体に、また力が漲る。



【 ○I○】 「遅ぇぞ……馬鹿野郎!!」



フ節をグッと握り締め、気合を入れ直す。
そうだ。勝負を捨てるにゃ、まだ早え。
念力でノイジーを弾き飛ばし、相棒を抱えて木の後ろに隠れる。

324 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:57:21 ID:kaLQ2u3A0

【○I○】 (ほらよっと。記憶を流し込むぞ)



言うが早いか、カブト丸の記憶が流れ込んできた。
打撃の無効化に……これは!!?……僕の声?
どうやら、カブト丸の攻撃に対して、体の表面を振動させた衝撃をぶつけているらしい。
どれだけの衝撃を作り出したのか、カブト丸の攻撃を相殺している。
僕の声は………恐らく、戦う中で声の振動を覚えて、コピーしたのだろう。



(@^ω^) (な〜る………かなりやっかいだおね)



からくりがわかったら、後は攻略法だ。
……何か……何か。



(@^ω^) (あっ!……テンポずらして、二段攻撃だお)



【;○I○】 (お、おう!)



(@^ω^) (んで、ギアからの指示は聴いちゃダメ。全部無視するお。)



【○I○】 (んじゃあ、読みながらって感じだな。)

325 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:57:55 ID:kaLQ2u3A0
【○I○】 (……よろしく頼むぜ!)



(@#゚ω゚) (……いくお!!!!)



呼吸を合わせて、同時に木の後ろから飛び出す。
突然、目の前の景色が揺らいだ気がして、咄嗟に横っ飛びに回避する。
直後、先程まで僕がいた辺りの地面が爆ぜた。



(@^ω^) (不可視の遠距離攻撃に、近距離では斬れる角…挙句の果てに分身?)



(@^ω^) (更には、打撃の無効化に、音声のコピー)



(@;^ω^) (どんだけ個性の使い道あるんだお……)



攻略法を考えながらも、決して脚は止めない。
木の間を潜り抜けながら、ノイジーに向かって走る。
次の一手をカブト丸に伝えようとしたその時、地鳴りのような音が聞こえた。

326 ◆HJSTJA2nos:2018/07/17(火) 23:59:49 ID:kaLQ2u3A0
【;;○I○】 (ちぃい!!!!)



何かを察したカブト丸が、即座に僕の方に向かって飛んで来る。
直後、大きな揺れが僕らを襲った。



(@;^ω^) 「なんだお!!?地震!!!?」



(##○I○) 「じゃあああああ!!!!!!」



こちらに飛んでくるカブト丸の背後で、大きく角を振るうノイジーが見えた。
なるほど、衝撃による全力の攻撃で、僕らを同時に倒すつもりらしい。
揺れのせいで思うように足が動かないが、このままでは致命傷を受けるのがわかった。
無理矢理に足を動かして、カブト丸を庇うように前に出る。
そして、カブト丸を思いっきり突き飛ばした。



【;○I○】 「馬鹿野郎!!!?」



恐らく、ジョーの攻撃よりも威力がある。僕がまともに喰らったら、死ぬかもしれない。
そんなことはわかっていた。でも体が動いちゃったんだから仕方ない。
ギアはもう切ってる。距離も……まあ、十分だろう。
これでカブト丸がダメージを受けることは無いだろう。

327 ◆HJSTJA2nos:2018/07/18(水) 00:00:26 ID:aHa09c4M0
( ^ω^) (あ〜……カブト丸ごめん。僕死ぬかもしれんお)



( -ω-) (……反撃開始だお!!とか言ったのになあ)



ノイジーが頭角を振り下ろすのが、スローモーションの様に見えた。
カブト丸が何か叫びながら、こちらに向かって来るが、よく聞こえない。



( ^ω^) (………ここで……ここでなにもかも終わりなのかお)



(  ω ) (ちくしょう………負けたくないなあ)

328 ◆HJSTJA2nos:2018/07/18(水) 00:02:06 ID:aHa09c4M0
何話か書くのを忘れてました。


(@^ω^) ビート・イット!!のようです。Яeboot

第7話


今日はここまで

329 ◆HJSTJA2nos:2018/07/18(水) 00:03:20 ID:aHa09c4M0
一日も早い復興を、心よりお祈り申し上げます。

330名無しさん:2018/07/18(水) 01:54:26 ID:Du.h8Tpg0
おつ
熱いバトルで面白い

331名無しさん:2018/07/18(水) 10:20:20 ID:N/J32MOk0

夏に読むのに相応しい熱い展開大好き

332名無しさん:2018/07/18(水) 14:45:17 ID:zeno083k0
追い付いた!日本列島よりあついな

333名無しさん:2018/07/18(水) 18:10:42 ID:m98XstP20


334 ◆HJSTJA2nos:2018/07/21(土) 23:59:28 ID:7BTYfeyY0



(@^ω^) ビート・イット!!のようです。Яeboot

第8話

335 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:00:17 ID:8QyRAMCU0
衝撃に備えて、グッと目を瞑り、一応防御の体勢をとる。
……意味があるかはわからないけど。とりあえずだ。
生きてたら、速攻で最高の一撃をぶち込んでやる。
覚えてろよ……。マジで覚えてろよ。



ん?





あれ?




(@-ω-)? 「あれ?」



(@^ω^) (あれ?衝撃が来ないお?)

336 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:00:58 ID:8QyRAMCU0
(@^ω^) 「………一面、真っ白でなんも無いお?」



そっと目を開けると目の前には、ただ何も無い真っ白な空間が広がっていた。
周囲をぐるりと見渡すけれど、高さも広さもわからない。
だだっ広い白の中に僕は立っていた。



(@^ω^) (前にドクオが言ってた潮の湖もこんな感じなのかお?)



(@^ω^)シーン (……………)




(@^ω^) (………なんもねえお)



(@^ω^) (……………)




(@;^ω^) (え?ほんとに何も無えお!!?)

337 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:01:42 ID:8QyRAMCU0
(@;^ω^) (え?……え?え?………何待ち!!!?)



(@^ω^) (……あっ、これよく考えたらギア必要ないお)



( ^ω^)シュゥ (え〜これ……やっぱ死んでるのかお?)



( ^ω^)ハッ (たしか、荒巻校長が餅の早食い大会に出た時……!!)



/ ,' 3 (餅が詰まって死にかけた時、なんもない真っ白な世界が見えた)



( ^ω^) (………とか言ってたお)



( ^ω^) (やっぱ……死んでるのかお)



生きてるにしろ、死んでいるにしろ、ここでボーっとしていても仕方がない。
とりあえず歩き回ってみることにした。

338 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:02:27 ID:8QyRAMCU0
(@^ω^) (やっぱ、どこまで歩いても真っ白けだお)



(@^ω^) (……相棒も…どこに行っちゃったんだお)



そんなことを思いながら、しばらく歩いていると突然、視界が真っ黒に染まった。
ちょっと目の辺りが痛い。ちょっと何か目に入った。



o川* ー )o 「…だ〜〜〜れだ♪」



( ⊃ω⊂) 「あの……ごめん。ちょっと痛いお」



o川*;゚ー゚)oアタフタ 「あっ!えっ?……ごめんね!?」



( ⊃ω-) 「あ〜………うん。大丈夫、大丈夫だお」



o川*゚ -゚)oシュン 「………ご、ごめんね」 



( ^ω-) 「いや…ほんとに大丈夫」

339名無しさん:2018/07/22(日) 00:02:55 ID:QaZ/rmM60
しえんんんんん

340 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:03:15 ID:8QyRAMCU0
( ^ω^) 「いやぁ……びっくりしたお」



( ^ω^) 「……えっと、君は」



o川*゚-゚)o 「うぅ……やっぱそっかぁ」



o川* ー )o 「だよねぇ…」



o川*゚ー゚)o 「私はキュ…!」 



( ^ω^) 「キュー……ちゃん?」



( ^ω^) 「あれ?……キューちゃんなのかお?」



え?……あれ?…なんだ?………これ。
なんでこんなに……なんでこんなに泣きそうなんだ。

341 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:03:45 ID:8QyRAMCU0
( ⊃ω^) 「あれ……なんで?」



o川*゚ー゚)o 「やっと……思い出して…くれた?」



( ⊃ω;) 「なんで……?キューちゃん?どうして?」



o川* ー )o 「……あ〜そっかあ」



o川*゚ー゚)o 「………混乱しちゃったみたいだね」



o川*゚ー゚)o 「……思い出してくれた訳じゃないのか〜」



o川*゚ー゚)o 「ねえ?ブーン?……大丈夫。大丈夫だよ」

342 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:04:36 ID:8QyRAMCU0
( ⊃ω⊂) 「………ごめん。ごめんお」



( ;ω;) 「こんなに……こんなに…色んな記憶が出てくるのに」



( ;ω;) 「僕は……僕は君を知らないんだお」



o川*゚ー゚)o 「うん………うん」



( ;ω;) 「……なんだお?なんなんだおこれ」



色んな記憶が、押し寄せるように浮かんでいく。
なんで……。どうして…なんで!!?
砂が手から零れ落ちていくかの様に、その全てが消えていく

343名無しさん:2018/07/22(日) 00:05:24 ID:M8M/GXIA0
リアルタイム支援!

344 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:05:30 ID:8QyRAMCU0
( ;ω;) 「ごめん……ごめんお………なんで」



o川*゚ー゚)o 「いいんだよ!……いつかきっと答えにたどり着くから」



o川*゚ー゚)o 「それにね?今は時間が無いの」



o川*゚ー゚)o 「私が、この世界を維持できるのも…後少しなんだ」



( ⊃ω;) 「…そう……なのかお?」



o川*゚ー゚)o 「今回は……君を見つけるのに手間取っちゃった♪」



o川*゚ー゚)o 「そ♪だから落ち着いて、話しをよく聞いて欲しいの」

345 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:07:17 ID:8QyRAMCU0
( ⊃ω⊂)ゴシゴシ 「ごめん…………ちょっと待って」



( -ω-)フゥゥ 「………」



( ^ω^)



( ^ω^) 「ごめん………落ち着いたお」



o川*゚ー゚)o 「それにしても君達ってすんごいよね!!」



o川*゚ー゚)o 「この戦いで、ノイジービートの本気を引き出せたのって、君達ぐらいだよ?」



( ^ω^) 「どう……いうこと…なんだお?」



( ^ω^) 「僕ら意外にも、ノイジーと闘った奴がいるってのかお?」



o川*゚ー゚)o 「まあね!一杯いるよ?」

346 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:07:50 ID:8QyRAMCU0
( ^ω^) 「………一杯?」



o川*゚ー゚)o 「うん!いーっぱい」



o川*゚ー゚)o 「今の君には見れないけれど、いつかきっと会えるよ」



( ^ω^) (……今は会えない?どういうことなんだお?)



( ^ω^) (ハインの後に、ここに来たのって僕らだけって聞いてたけど)



( ^ω^) 「……一ついいかお?」



o川*゚ー゚)o 「ん?なになになに!?…質問どうぞ!」



( ^ω^) 「そういえば相棒がいないけど、僕は今死んでるのかお?」

347 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:08:29 ID:8QyRAMCU0
o川*゚ー゚)o 「ん〜〜〜………、その辺は解釈次第なんだよねえ」



o川*゚ー゚)o 「まあ、生きてるとも死んでるとも言えるよ」



o川*゚ー゚)o 「この後の戦いの結末次第って感じ」



( ^ω^) 「そっか…さっきまでの流れだとばっちり死にそうなんだけど」



o川*゚ー゚)o 「まあ、アタシが来たってことは確変入ったってことだよね!」

348 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:09:09 ID:8QyRAMCU0
o川*゚ー゚)o 「おっと…!?やべっ!もう時間がないや!!」



o川*゚ー゚)o 「時間無いから、ヒントね!!……繋がる絆が君の力だよ!」



( ^ω^)そ 「え!!!?何それ!!?」



o川*゚ー゚)o 「新しい力を使いこなして、ばっちり決めて見せてよね!!」



(;^ω^) 「お、おう!見とけお!!」



o川*゚ー゚)o 「おっけー!!いい子だ!!」



o川*゚ー゚)o 「May the cute be with you!!」



o川*^ー^)o 「頑張ってね!!ブーン!!」



( ^ω^)bグッ 「おう!!」

349 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:09:42 ID:8QyRAMCU0
意識が徐々に遠のいていく。



( ^ω^) (キュート、キュート、キュート)



忘れないように何度も心の中で、彼女の名前を唱える。
何度も、何度も自分の中に、染み込ませていくかのように。



( ^ω^) (kyt…きゅー……kと…ッと)



( ^ω^) (あれ?………僕は、何を?)

350 ◆HJSTJA2nos:2018/07/22(日) 00:13:55 ID:8QyRAMCU0
今日はここまで!

今回は短いですが、皆さんのコメントや支援を力に変えて、
次回を早く投下できるように頑張りますね!!

暑い日が続いているので、体調にはくれぐれもお気をつけください。

351名無しさん:2018/07/22(日) 00:15:30 ID:QaZ/rmM60
乙!
楽しみにしてるぞ!

352名無しさん:2018/07/22(日) 00:15:44 ID:M8M/GXIA0
乙!

353名無しさん:2018/07/22(日) 01:24:22 ID:M6Na8FeE0
荒巻校長は自殺願望でもあんのかwwww

354名無しさん:2018/07/22(日) 07:44:44 ID:9UcdZi5A0
まだ忘れてしまうか…

355名無しさん:2018/08/07(火) 22:36:39 ID:WXd1eqbU0
乙!

356名無しさん:2018/08/28(火) 12:43:13 ID:mXSk9Uvk0
支援絵
https://i.imgur.com/UQxe9nq.png

続きはよ!!!!

357 ◆.0rDrvqaU.:2018/08/30(木) 01:39:03 ID:N0G3Es0k0
>>356

うおお!?ありがとうございます!

少し投下に間が開いてしまいましたが、少しずつ書き溜めていきます。
もうちょっとでノイジー戦は終わりますので、お楽しみにしていて下さいな!!

358 ◆HJSTJA2nos:2018/08/30(木) 01:44:03 ID:N0G3Es0k0
トリ間違えてて草。
申し訳ありませんでした。
もうちょっと頑張りますよ!

359名無しさん:2018/08/30(木) 06:53:24 ID:XXK9J68I0
支援絵追加ワッショイ!
https://i.imgur.com/VyGxpXt.png

全裸待機しとるぞ!

360 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:25:37 ID:Y.4OjexQ0


(@^ω^) ビート・イット!!のようです。Яeboot

第9話

361 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:26:18 ID:Y.4OjexQ0

(  ω ) (……負けたくないなあ)



(  ω ) (………負けたくない!!)



そう思った時、僕は思わず拳を握りしめていた。
身を守るための構えを解き、大きく一歩を踏み出す。
そして拳を思いっきり振りかぶった。



( #゚ω゚) 「うぅぅぅぁぁぁぁあああああああ!!!!」



人間の、それも小学生の腕力で、ノイジーの個性に、威力で勝てないことくらいはわかってる。
でも、それでも勝ちたい。こいつに…ノイジービートに僕は勝ちたい。

362 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:26:56 ID:Y.4OjexQ0
( # ω ) 「こい!!」 



( #゚ω゚) 「こいっ!!カブト丸!!!!」



いくぞ!!ノイジービート!!
歯ぁ喰いしばれえ!!!!



背中から何かが飛び込んできたみたいな衝撃があった。
全身に力が漲ってくる。熱い、身体中が熱い。血も皮膚も燃えてるみたいだ。
やれる。今ならきっと、やれる。何が何だかわからないけど……。



こいつに勝てる!!!!!!



ノイジーが頭角を振るうのに合わせて、振りかぶった拳を全力で振るう。



(##○I○) 「ジャアアアアアアアアア!!!!!!」



( #゚ω゚) 「いっけええええええ!!!!!!」

363 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:27:39 ID:Y.4OjexQ0
もしかしたら、死ぬかも知れないのに、不思議と恐怖感は無かった。
ただ、今できる限りの最高の一撃を。それだけを思って拳を振るった。



全身全霊を込めた振動と拳が激突し、激しい衝撃波が生じる。



(##○I○) 「ぐがああ!!!!!!」



吹き飛んだのは僕ではなく、ノイジーの方だった。
ノイジーは木々を薙ぎ倒しながら飛び、地面に激しく体を打ち付けた。
拳を振るい終えたままの体勢で、僕は呆然と立ち尽くす。
……今、何が起こった。なんで、なんで僕は生きてるんだ。

364 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:28:18 ID:Y.4OjexQ0
( ;; ゚ω゚) (い、今何が………?)



思わず拳を見る。
そこにあったのは、焦げ茶色の甲冑のようなものを身にまとった自分の拳。



( ;; ゚ω゚) (これはなんだお!?……カブト丸は?)



慌てて、周囲を見回すが、カブト丸は何処にもいない。
大声で呼ぼうとしたその時、頭の中で声が聞こえた。



(…おいおい、さっきからここだって言ってんのに、聞こえてねえのか?)



( ;; ゚ω゚) (どこにいるんだお!!?)



(お前の両手についてる籠手みたいのが……オレだ)



( ;; ゚ω゚) (な、なんで?……どうなってるんだお!?)



(……混乱するのはわかるが、構えろ!!来るぞ!!!!)



( ;;゚ω゚) (え、あ…わかったお!!!!)

365 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:29:00 ID:Y.4OjexQ0
(##○I○) 「がああああああああああ!!!!!」



砂埃を巻き上げながら、突き進んで来るノイジービート。
混乱しながらも、その軌道と飛び方から、相手の攻め手と狙いを弾き出す。



(  ゚ω゚) 「ここだお!!!!!!」



放ったのは一発の下段突き。更にブーンの拳から、カブト丸の個性である不可視の拳が重ねて放たれる。
その一撃は飛来したノイジービートの転節を打ち抜く。



(;;○I○) 「ぐうぅぅうぅ!!!!」



衝撃を相殺せんとするノイジーだったが、念力の拳とブーンの拳が同時にぶつかり、それを許さない。
転節を打ち抜かれ、ヨロヨロと後退したノイジーに対して、さらに接近し、もう一度転節に掌底を叩き込む。

366 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:29:35 ID:Y.4OjexQ0
(#○I○) 「ジェエエアア!!!!」



よろけながら頭角を振るった甘い攻撃を、ブーンは鋭くいなす。
地面に頭角を叩きつけたノイジーの胸角をめがけて、踵落とし。



( #゚ω゚) 「おおおおおお!!!!」



すぐさま、地面から念力による一撃を入れる。
身体が浮き上がったノイジーだったが、跳ね上げられた瞬間に羽ばたかずに、反撃の体勢を整える。
落下に合わせてブーンが放った後ろ回し蹴りを、ノイジーは身体を捻って回避し、そのまま頭角で切りかかる。



( #゚ω゚) 「それぐらい…読んでんだお!!」



ブーンはその頭角を白刃取りにし、回転。
十二分に勢いをつけ、地面に叩きつけた。
さらに、叩きつけた直後に持ち上げ、浮いた身体に全身全霊を込めた、両手での掌底。

367 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:30:04 ID:Y.4OjexQ0
(…おお!やるじゃねえの!?)



( ;;゚ω゚) (僕が思い描いた動きを……君が読んで、動かしてくれているからだお)



(まあ、長いこと組手もしてたしな。お前の動きの癖ぐらい覚えたさ)



(………相棒、だしな!)



(;;^ω^) (……お!!)



(……さて、そろそろ決めねえとな)



(;;^ω^) (だおね。…この状態、体力の消耗が尋常じゃないお)



本来、小学生の筋力では出せるはずがない威力を、念力で無理矢理にブーストすることによって叩き出す。
その行為による肉体への負担は凄まじい。
ブーンが感じていた体力の消耗は、当然の帰結と言えた。

368 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:30:56 ID:Y.4OjexQ0
その時、頭角を激しく振るいながら、ノイジーがその姿を見せた。



(##○I○) 「ジャッ!!!!ジャラアア!!!!」



(;;-ω-) 「ぐっ………!!」



猛烈な勢いで飛びながら、ノイジーは頭角を地面に叩きつける。
跳ね上げられた砂が目に入らないよう、目を細めて腕で庇う。
突然、視界が急に暗くなった。激しい痛みに涙が溢れ、目を開けることができない。
痛みに耐えながら意識を集中させ、羽ばたく音を頼りに、なんとか横っ飛びで回避する。



(;; ω ) (目が!……目が痛い!!)



(;; ω ) (………砂はブラフ!?振動で目を打ち抜かれた!!)

369 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:32:18 ID:Y.4OjexQ0
(;;-ω-) (くそ……どうしたら!!)



(すまねえ……!今、オレもお前とリンクしてるから、全く周囲の状態が見えねえんだ)



(;;-ω-)(念力で周囲の様子を読み取ったりはできないのかお!?)



(駄目だ!そいつは脳への負担がやべえ!!…ちっ!!来るぞ!!)



思考をまとめる隙を与えまいと、隙のない連撃を仕掛けるノイジー。
その攻撃を予測と感覚のみで、捌き続ける。
しかし、目の見えない相手に攻撃を当てるのなど容易いこと。
ノイジーはブーンの捌き方の癖を読み始める。次第に、攻撃が掠るようになり始めた。

370 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:32:53 ID:Y.4OjexQ0
(;;-ω-) (くそ、ジョーといい、ノイジーといい。また目を狙われるって………対策すべきだった)



(;; ω ) (同じことで躓くってほんと……っ!!?)



ぐじゅりと肉が抉れるような音が頭に響き、右の脹脛に鋭い痛みが走った。
戦闘の要である機動力を奪われ、痛みと絶望に思わず膝をつきそうになる。



(おいっ!!…おい!!!!大丈夫か相棒!!!?)



(;;-ω;) (うっ……!!ううぅ!!!!)



歯を食い縛って、痛みに耐える。
痛みに見開いた目に、ぼんやりとノイジーの姿が見えた。

371名無しさん:2018/10/01(月) 00:33:03 ID:4wdziNyA0
支援

372 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:33:29 ID:Y.4OjexQ0
(##○I○) 「ッジャアアアアアアアアア!!!!」



左腕に冷たい何かが侵入し、一瞬の間を置いて熱が広がっていく。



(;# ゚ω;) 「ああ!!あああああああああああ!!!!」



更に続けて右の大腿を貫かれる。



(相棒……!!!?ちくしょう…やべえ!!)



カブト丸が体を強引に操作し、右手で地面を強く叩いた。
地面を殴った反動で体を動かし、ノイジーが放った止めの刺突を回避する。



(;# ゚ω;) 「ぐううぅぅぅ………ううぅぅぅ」



激痛と血を失い過ぎたことで、意識が飛びそうになる。
右腕意外の感覚が全くない。相棒の声も聞こえない。

373 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:34:14 ID:Y.4OjexQ0
(;# ゚ω;)そ



その時、地面を滑るように、再び飛来するノイジーが見えた。
最後の力を振り絞り、膝立ちになる。腹筋にぐっと力を込め、無理矢理に震えを抑える。
頭の中をクリアにしようと叫ぶ。



(##;ω゚) 「ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」



(##○I○) 「ゼアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」



右腕の籠手が急激に、眩い光を放つ。
その手で自らの角に触れた。

374 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:34:47 ID:Y.4OjexQ0
(##;ω゚) 「うううぅぅぅううううああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」



角に集まったエネルギーのせいか、頭が熱い。



痛い。



苦しい。



泣きたい。



終わりにしたい。



でも、それよりも……何よりも……勝ちたい!!!!

375 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:36:06 ID:Y.4OjexQ0
(##;ω゚) (この一撃で……最後だお)



(##;ω゚) (ここに…今、この時に…!!……僕の!!!…僕らの!!!!ありったけを!!!!!!)



(##;ω゚) 「らあああああああああああ!!!!!!!!!!」



角から、天を貫かんばかりの光が伸びるのが見える。
それをノイジーに向け、ありったけの力を込めて振り下ろした。



どさりと地面に崩れ落ちる。
全身にこれっぽっちも力が入らない。
何も聞えない。何も感じない。

376名無しさん:2018/10/01(月) 00:39:27 ID:KVkv1loI0
しえ

377 ◆HJSTJA2nos:2018/10/01(月) 00:40:41 ID:Y.4OjexQ0
今日はここまでになります。
>>356>>359支援絵とても嬉しかったです。
逃げそうになった時、すごく励みになりました。

長い長い夏休みをいただいて、めっちゃリフレッシュできたので、ぼちぼち投下していきます。

378名無しさん:2018/10/01(月) 01:00:59 ID:4wdziNyA0


379名無しさん:2018/10/01(月) 01:07:09 ID:7fSrPPsE0
激アツかよ……最高

乙!

380名無しさん:2018/10/05(金) 21:30:50 ID:/r6hfTIE0
乙乙

381 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 22:35:15 ID:iwKSCnME0



(@^ω^) ビート・イット!!のようです。Яeboot

第10話


.

382 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 22:36:07 ID:iwKSCnME0
(/##/ω^) (今度は………知ってる天井だお)



(/##/ω^)ガバッ



身体が痛みに悲鳴を挙げている。



(/##/ω゚)そ 「あだだだだだ!!!!?」



(/##/;ω゚) (……いったあ)

383 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 22:36:41 ID:iwKSCnME0
上体を少し起こして、辺りを見回す。
日を浴びて白く輝くカーテンに、薄っすらと人…いや、虫影が見えた。
こっくりこっくりと船を漕いでいる。恐らく相棒だろう。



(/##/ω^) (僕が生きてるってことは……)



(/##/ω^) (ノイジーには…勝てたのかお?)



頭に巻かれた包帯をずらし、恐る恐る右目を開けてみる。
何度か瞬きをすると少しぼやけていた視界が、段々クリアになった。



( ^ω^) (トイレに行きたいお)



( ^ω^) (……あ、でも外の様子も気になるお)



(;^ω^) (いでででで)

384 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 22:38:34 ID:iwKSCnME0
相棒を起こさないよう、そっと静かにベッドを降りる。



(;×ω×)ゴン 「あだっ!!?」



足が滑った。


尻餅をつくと同時に、後頭部をベッドに強か打ち付ける。
その音に相棒が目を覚ました。



【-I○】 「おう、ようやく起きたのか」



( ^ω^) 「相棒、ちょっと外に行かないかお?」



【○I○】 「…おう、いいぜ」



相棒がニヤリと笑ったように見えた。
あの時の勝敗が気になるが、今は少し体を動かしたい気分だ。
散歩がてら、丘の上まで行ってそこで聞くことにした。



( ^ω^) 「よし、行くお」


靴ひもを締めなおして相棒に声をかける。



【○I○】 「ああ、いいぜ」



暖簾の様になっている大きな葉っぱを押して、外に出た。

385 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 22:39:00 ID:iwKSCnME0
(;-ω-) 「うわっ!?…眩し!」



【;○I○】 「うおっ!?ほんとだ」



眩しい日差しに、一瞬視界が奪われる。
目が段々に慣れるにつれて、雨象の里の風景が見えてきた。



( ^ω^) 「……あれ?」



( ^ω^) 「………誰も…いない」



【○I○】 「………」



(;^ω^) 「…いない!?なんでだお?」

386 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 22:42:37 ID:iwKSCnME0
(;^ω^) (もしかして……敵襲でもあったのかお?)



小さな虫の大群が背骨に沿って、這い上がってくるような感覚。
耳を澄ませながら、ぐるりと周囲を見回す。



( ^ω^) (この里の虫達をこれだけ静かに倒すって、相当な手練れだお)



( ^ω^)ゴクリ



(;^ω^) 「…一体、どんな敵が」



なんだか嫌な予感がした。

387 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 22:46:28 ID:iwKSCnME0
(;;^ω^) 「…どこにいるんだお?」



何故だろう。周囲の景色に違和感を覚えた。
先程からやけに神妙な面持ちの相棒が口を開く。



【*○I○】 「なあ、ブーン…周りをよく見てみろ」



周囲に敵が潜んでいるかも知れないというのに、なぜか可笑しくてたまらないという表情のカブト丸。



( ^ω^) (……どういうことなんだお?)



( ;; ゚ω゚)ゾワァ (まさか!…敵の『個性』なのかお!!?)



敵の『個性』ははっきりとは分からないが、恐らくカブト丸の様子から察するに、洗脳系や操作系だろうか。
かつて戦った上級生のーちゃんのコクワガタ。その『個性』は敵を操り人形にしてしまうものだった。
ノイジーと組む前だった僕は『個性』のカラクリを見破るまでに時間がかかり、随分と苦戦したのを覚えている。

388 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 22:48:57 ID:iwKSCnME0
( @ ゚ω゚)ヴゥン



ギアを具現化して、左足を半歩引く。



( ;; ゚ω゚) (……どこから攻めて来るんだお?)



だが里の全員を操作することは、現実的に可能なのだろうか。
彼女は操作対象と有効範囲を絞ることによって、その能力をより強力なものにしていた。
『個性』の出力とその規模を考えると、脳への負担が大きすぎる。
ということは細かな部分までの指示はできない可能性が高い。

389 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 22:54:40 ID:iwKSCnME0
【*○I○】 「なあ、相棒。周りをよく見てみろって」



【*○I○】 「何か変わってるだろ?」



ヘラヘラと笑うカブト丸。
テレパシーにも返答がない所から、恐らく洗脳を受けているに違いない。
『個性』によって精神攻撃に耐性があるはずのカブト丸を洗脳できること察するに、相当強力な『個性』なのだろう。



(@;^ω^)?



何が起こるかわからない。
すっかり疑心暗鬼になりながら、周囲をもう一度見まわす。



(@^ω^) 「あれ?なんか物足りないような」



【*○I○】 「だろ?」



(@^ω^) 「ん?」

390 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 22:58:21 ID:iwKSCnME0
あれ?会話が成立してる…。
カブト丸の表情がなんとなくボクのことを馬鹿にしているようにも思える。



(@^ω^)ジー



雨象の里の象徴とも言える、大岩が無くなっていた。



(@; ゚Д゚)そ 「あっれえ!!?長の家もねえお!!?」



【*○I○】 「はーーー!!気づくの遅えよ!!」



【*○I○】クックックッ 「笑いをこらえるのも大変だったぜ」



なるほど、大岩は分かった。
なら、里の皆はどこへ……?

391 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 23:00:49 ID:iwKSCnME0
急いで大岩の方へ向かうと、答えはすぐにわかった。



(@;^ω^) (………あっ)



里の皆で崩れた大岩の片づけをしていた。



cr炎ro 「お!?ようやく起きやがったのかあ!!!!」



鋏をぶんぶんと振りながら、ジョーが近づいて来る。



*cr炎ro 「お前ら!!!!やったなあ!!!!」



(@;^ω^) 「わ!?えっ!!?」



【*○I○】 「やったぜ兄貴!!!!」



*cr炎ro 「ああ!!!!本当によくやってくれた!!!!!!」



*cr炎ro 「師匠としても鼻が高えぜ!!!」

392 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 23:08:24 ID:iwKSCnME0
ジョーとカブト丸はなぜこんなに喜んでいるんだろう。
色んな事が起こり過ぎて、脳の処理が追い付いていない。


体格差がある相手に組みつかれたら、こうなるのか……。
対策しておく必要があるかもしれない……なんて余計なことを考えていた。



cr炎ro 「だが、本当によくやったな」



cr炎ro 「かつて、大岩を貫通させた奴は数人いた」



cr炎ro 「けど真っ二つにぶった切った奴なんて、一人もいなかったぜ!!?」



ジョーは今、何と言ったのだろう。



(@^ω^) (大岩をぶった切った………。)



(@^ω^)マジデ?

393 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 23:09:44 ID:iwKSCnME0
(@^ω^) 「え?誰が切ったんだお?」



【*○I○】 「オレ達に決まってんだろ!!?」 



(@;゚ω゚)そ 「マジで!!!?」



cr炎ro 「ああ、お前の額の辺りから、でっけえ角みてえなのが出てよ」



cr炎ro 「それでノイジーの幻影ごと大岩をぶった切ったんだ!」



(@;^ω^) 「そんなことが……」



(@^ω^) 「てか、なんで知ってるんだお?」



あの幻影は、周囲に被害が無さそうな場所に、長がテキトーなタイミングで出現させている。
どこで戦うことになるのか、誰も知らないはずなのに。

394 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 23:10:49 ID:iwKSCnME0
cr炎ro 「ああ……それはな」



cr炎ro 「実は、お前らの戦いの一部始終、里中の皆が見てたんだよ」



(@;^ω^) 「え?」



cr炎ro 「長達が『個性』で皆の頭の中に、映像を送ってたんだよ」



cr炎ro 「小さな里の唯一の娯楽みたいなもんだ」



(@^ω^) (人間……いや、虫不信になりそうだお)



【○I○】 (……ちょっとわかるわ)



(@^ω^) 「そっか」



cr炎ro 「……いや、伝統なんだよ」



(@^ω^) 「うん、仕方ないお」



cr炎ro 「ごめんて」



(@^ω^) 「…済んだことはもういいお」



cr炎ro 「…おう、ほんとごめんな」

395 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 23:11:15 ID:iwKSCnME0
cr炎ro 「とりあえず、これで長達からの課題は全部クリアだ」



cr炎ro 「後の期間は、お前らなりのやり方で技を磨きな」



(@^ω^) 「割とぶん投げる感じだお」



【○I○】 「マジかよ」



cr炎ro 「オレも修行に付き合ってやりてえのは山々なんだがよぅ……」



;cr炎ro 「里がこんな状況なんでな」



【;○I○】 「……まずは復興が優先だよなあ」

396 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 23:13:52 ID:iwKSCnME0
cr炎ro 「それにお前らが飲んだ秘薬は、効果が人それぞれ過ぎてよ」



cr炎ro 「その効果に関しちゃあ、オレも専門外なんだ」



【○I○】 「あれ?……兄貴の家の近所にいた姉ちゃんがたしか専門家だったよな?」



cr炎ro 「あいつは人里に降りた後、キュウリで腹を下して死んじまったよ」



cr炎ro 「資料も7年前の大火で焼失しちまったしな」



(@^ω^) 「…長達も知らないのかお?」



cr炎ro 「長達は知らねえはずだ。スタンドアローンにしてたからこそ、これまで秘密にできてたわけだしな」



(@^ω^) 「しかたないお」



【○I○】 「後は色々やってみるか」



cr炎ro 「頑張れよ!お前らならきっとあの力をモノにできるぜ」



―――――大会の日まで、再び激しい修行が始まった。

397 ◆HJSTJA2nos:2020/06/03(水) 23:17:06 ID:iwKSCnME0
久しぶり過ぎて、色々忘れていました。

以前よりも、更に拙い文章になっているかもしれません。
ただ、ばっちり完結させます。

398名無しさん:2020/06/04(木) 02:44:12 ID:MBx4Rn460
え゛っ待ち望んでた・・・・・・乙

399名無しさん:2020/06/04(木) 13:55:58 ID:ft5Kn7vQ0
ビートイットだー!!

400名無しさん:2020/06/04(木) 22:05:52 ID:mTU.vj1k0
いやいやいやいやいや待ってたぞ乙!乙!!!!!

401名無しさん:2020/06/06(土) 14:30:41 ID:eeh3H1CA0
エッ!?!?更新してる!!!!!!ありがとう!!!!!!!!!

402 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:29:06 ID:GGk7J/rg0












―――――そして一ヵ月が過ぎた。








.

403 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:30:33 ID:GGk7J/rg0



(@^ω^) ビート・イット!!のようです。Яeboot

第11話

404 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:31:27 ID:GGk7J/rg0
ミセ*゚ー゚)リ 「さあ!今日もやってきました!ビートルの時間です!!」


ミセ*゚ー゚)リ 「マスター達にとって一年の計は、今日にありと言っても過言ではない一大イベント!!!!」


ミセ*>Д<)リ 「『G-1 創作杯』が開催されるとあって、特設闘技場内は異様なまでの緊張感と熱気に包まれています!!」



ミセ*゚―゚)リ 「昨年はランク外にいた『ルーキー』が、『鬼神』や『金色夜叉』、『白い悪魔』といった上位ランカー達を抑え優勝するという快挙を成し遂げました」


ミセ*>Д<)リ 「…果たして今大会では、どんなドラマが生まれるのでしょうか!!!?」


ミセ*>Д<)リ 「実況は私、5年3組のミセリ!!!そして解説は〜…!」



(゚、゚トソン 「どうも5年3組のトソンです」


(-、-トソン ペコリ



ミセ*゚―゚)リ 「今大会の壮絶な予選を通過し、本戦へと出場する16名の選手の皆さん。まずは本戦出場おめでとうございます!!」



(゚、゚トソン 「今大会は参加者が過去最多で、ノービスの方々も含めて、120名を超えました」


(゚、゚トソン 「その中で厳しい予選を勝ち残り、本戦に出場できたのは、揃いも揃って猛者ばかり」


(゚、゚トソン 「まさに創作小学校ドリームマッチと言えますね」

405 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:31:57 ID:GGk7J/rg0
ミセ*゚―゚)リ 「今大会は一般的なトーナメント……ではなく、荒巻校長が今大会を盛り上げるべく、先生方と……お天気祭り?をしながら考案したという『くじ引きトーナメント』を採用しています」



(-、-トソン 「……お天気祭りと言えば聞こえはいいですが、ただの酒盛りです」


ミセ;*゚ー゚)リ 「まあまあ、トソンちゃん。先生達だって頑張ってるんだから、お酒を飲むくらい……」


(゚、゚トソン 「………がん…ばってる?」


ミセ;*゚ー゚)リ 「ト、トソンちゃん?」 


( 、 トソン 「私、知ってるんですよ」


ミセ;*゚ー゚)リ 「…え?」


(゚、゚トソン 「私達が鬼のように熱い暑い教室で、頑張ってる時に……」


(゚、゚トソン 「校長先生がクーラーの効いた部屋で、アイs…!!」


ミセ*>ー<)リ 「はい!!ストップストップ!!」


(゚、゚トソン モ、モガァ 


( 、 ;トソン 「わかりました。やめます」

406 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:33:47 ID:GGk7J/rg0
―――――特設闘技場・来賓席


/ ,' 3 「…野郎、タブー中のタブーに触れやがった」


( ,'3 ) 「校長…口が悪いですよ」


/ ,' 3 「む、たしかに」


( ,'3 ) 「まあ、生徒達が熱い中頑張っているのに、校長室だけエアコンを解禁して、涼んでいるのはどうかと思いますがね」


/ ,' 3そギクッ


/;,' 3 「わし…トイレ行ってくる」


( ,'3 )そ


/;,' 3 ソソクサ


( ,'3 ) 「……まったくもう」

407 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:34:26 ID:GGk7J/rg0
(゚、゚トソン 「それでは気を取り直して」


(゚、゚トソン 「私とミセリがそれぞれくじを引いて、出た番号のエントリー№を持つ選手同士が対戦することになります」


ミセ*゚ー゚)リ 「…まあ、対戦相手がランダムなトーナメントだよね?」


(゚、゚トソン 「そうそう」


ミセ*゚―゚)リ 「……猛者達を蹴散らし『蟲帝』ジョルジュ選手と対戦するのは果たして誰なのでしょうか!!?」


ミセ*゚ー゚)リ 「そして栄光を勝ち得るのは!!?……それでは早速、選手達を紹介していきましょう!!」


(゚、゚*トソン 「審判のタカラ君は今日のために二ヵ月間、山に籠って想像を絶する修行をしていたそうです。」


(゚、゚トソン 「その結果、彼の背中に浮き出た鬼の貌も緊張からか、なんだか哭きそうです!」


ミセ *>∀<)リ 「そいじゃあタカラくん!!よっろしくぅう!!!」



d( ,,^Д^)bグッ 「お任せあれ!!!!」


( ,,^Д^) 「パワー!!!!」
 につ

( ;;^∀^) ハッ
 につ


( ,,^Д^) 「Lady’s&Gentlemen!!さっそく選手達を紹介していくぜ!!!!」

408 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:34:54 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) 「まずはこいつらだぁ!!野良試合では百戦錬磨!!当日になるとなぜかインフルエンザや感染性胃腸炎といった病魔に苦しめられ、これまで大会には一切出場したことがありません!!!!」


( ,,^Д^) 「生徒の間では創作小学校最強とも呼び声高いコンビがついに悲願の本戦初出場だぁぁぁああああ!!!!エントリー№1『無冠の帝王』ぐるんぱ&ヒッキー!!!!」



ミセ*゚―゚)リ 「ついに特設闘技場内で、ぐるんぱ&ヒッキーを見られる日が来ましたね!!」


(゚、゚トソン 「ぐるんぱは、エレファスゾウカブトという種類です。大きくずんぐりとした体形が特徴で体重と体全体のサイズであれば、かのヘラクレスオオカブトにも勝ると言われています」


(゚、゚トソン「彼は力持ちで、優しく穏やかな性格をしていて、ヒッキー君とも非常に仲良しです。……マスターとの強い絆が窺い知れますね」


(゚、゚トソン「ぐるんぱという名前はヒッキー選手が大好きだった絵本に出てくる象の名前が由来なんだとか」


ミセ*゚∀゚)リ 「あっ!!私もその絵本大好きだよ!!」


ミセ*゚ー゚)リ 「今日はヒッキー君の体調もよさそうだよ!!楽しみだね!トソンちゃん!!」


(゚、゚トソン 「ええ、試合内容が楽しみなコンビですね!」

409 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:36:38 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) 「その輝きはまさに太陽の如し、マスターは本校1のイケメン!!ですがその人気は決してマスターの顔の良さだけが理由ではありません!!」


( ,,^Д^) 「…その騎士道精神に基づいた華麗なるファイトスタイルは見るものを魅了します!!!!」


( ,,^Д^) 「…悔しいことに老若男女問わずにファンが多いぞ!!エントリー№2『聖騎士』ジャック&モララーだああああああ!!!!」



ミセ*゚―゚)リ 「今回も来ました!!ジャック&モララー!!場内には割れんばかりの黄色い声援が響いています!!」


(゚、゚トソン 「ジャックはオウゴンオニクワガタという種類です。黄金色に輝く体と他種のオスに比べて短いアゴが特徴の個体ですね」


ミセ*゚ー゚)リ 「なんかぐにっと曲がってて面白い形だよね」


(゚、゚トソン 「元々は挟む力が弱いの種類なのですが、彼らはその攻撃面の弱さを卓越した防御テクニックを活かした交叉法を主とした戦い方をすることで補っています」


ミセ*゚ー゚)リ 「トソンちゃん」


(゚、゚トソン 「なんですか?ミセリ」


ミセ*゚ー゚)リ 「交叉法ってなあに?」


(゚、゚トソン 「後の先を取ることと言うとわかりやすいでしょうか?」


ミセ*゚〜゚)リ 「ん〜?後の先って、とどのつまりは後なんじゃない?」


(゚、゚;トソン 「とどのつまりを知っていて、なんで理解できないんですか」


(゚、゚トソン 「まあ、カウンターみたいなものです」


ミセ*゚ー゚)リ 「そっか〜。なるほどね!」


(゚、゚トソン 「彼らの堅実なファイトスタイルには年々磨きがかかり、今期は絶好調です。今日に合わせてかなり仕上げてきていますね」

410 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:37:24 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) 「圧倒的な実力とタフネスで、常に真っ正面から殴り合う漢らしいファイトスタイルは数々のドラマを生み出してきました!!」


( ,,^Д^) 「避けぬ!下がらぬ!背は向けぬ!!その底知れぬ体力と規格外のサイズ、そして圧倒的な攻撃力からこの異名がつけられました!!」


( ,,^Д^) 「紅の瞳に映るのは、頂点の輝きだ!!エントリー№3『片角の魔王』くわやん&ロマネスクぅぅぅううう!!!!」


ミセ*゚―゚)リ 「……なんという威圧感でしょうか!?他の選手達より一回りも二回りも大きく見えますね!!」


(゚、゚トソン 「くわやんはエフラスミヤマクワガタという種類です。彼は同種の中でもかなり赤味が強い個体で、その赤い体色の正体は敵の返り血とも噂されています」


(゚、゚トソン 「実際は、兄貴肌の気のいい人で下級生達にも人気です。先日はミセリの『やっぱり体が赤いってことは他のクワガタの三倍速いんですか!!?』というアホな質問に『いや、俺はライデンの方だからよ!』と笑顔で優しく返していました」


ミセ*゚ー゚)リ 「もー…またその話する〜」


( 、 *トソン (ムスッとしてるミセリもかわいいですね)


Σ(゚、゚トソン ハッ


(゚、゚トソン 「ちなみにロマネスク選手は無類の甘党で、自室はかわいいぬいぐるみが並んでいるとの情報です」

411 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:38:14 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) 「次はこの二人ぃ!!可憐で可愛らしい外見ですが侮ることなかれ!!」


( ,,^Д^) 「胸に秘めしは地獄の業火!!!!何度倒れても立ち上がり喰らいつく超攻撃型のファイトスタイルもあって人気急上昇中!!」


( ,,^Д^) 「メラメラと燃え滾るその闘志は、果たして帝に届くのか!!!?エントリー№4『炎鬼』アトラ&ツンデレだあああぁぁぁ!!!!」



ミセ*゚―゚)リ 「今期一番の注目株の登場です!!実は私もツンちゃんファンクラブに入っていたりしますが、実況はしっかりフェアにやっていきたいと思います!!」


( 、 #)トソン 「…ミセリには私がいるじゃないですか」


ミセ*゚―゚)リ 「…え?なんて…?」


(-、‐トソン 「ふぅ……」


(゚、゚トソン 「アトラはアトラスオオカブトという種類です。非常に気性が荒く、攻撃的な性格をした個体が多かったりするのですが、彼…いえ、彼女自身は乙女心にも理解があり、非常に繊細な心遣いのできる方です」


(゚、゚トソン 「そんな彼女がツン選手からパソコンを借りて運営している手芸と詩のブログは非常に人気があります。ツン選手自身もかなり器用で、多趣味なことから、実はツン選手がアトラ名義でやってるんじゃ…という噂もあります。」


(゚、゚トソン 「そんなところも彼女の魅力の一つなんだとか……」


( 、#トソン 「…誰ですか?私が書いた放送原稿とコレを入れ替えたりしたのは?」


(゚Д゚#トソン 「出てきなさい!!」


ミセ;゚―゚)リ 「…わ、わたしじゃないよ…?」


(^、^#トソン 「……別に怒ってませんよ?」


(゚、゚トソン 「ただし…この件は後で追及させてもらいますからね?」


ミセ;゚―゚)リ 「……ひ、ひえぇぇ」

412 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:38:40 ID:GGk7J/rg0
( ,;^Д^) (………ミセリちゃん…ごめん!)


( ,,^Д^) 「意外性で言うならこの男を忘れちゃあいけない!!ノービスに落ちるかどうかの瀬戸際にあった遅咲きの才能は、見事に開花しました!!!!」


( ,,^Д^) 「瞬く間に勝利を重ね、そのランクは一気に9位まで上昇!!非常に素早く地上、空中においても速さで右の出る者はいません!!!!」


( ,,^Д^) 「スロー再生でも追いきれぬその速さは、まさに幻の如く!!対戦相手に影すら踏ませずノックダウンした試合動画は今なお再生回数が伸び続け、そのコンボ数が議論されています」


( ,,^Д^) 「視認不可能の不可避の連撃が相手を砕く!!!!エントリー№5『無影』ポチ&ドクオだああああ!!!!」



ミセ*゚―゚)リ 「この一ヵ月足らずで、なんと97位から9位という驚異的なまでの急成長を見せましたこのコンビ!!今大会の注目のダークホースです!!」


(゚、゚トソン 「ポチは角的にカブトムシっぽいとの情報なのですが、映像はその素早さ故に移らず、写真はブレッブレという状態でして……」


(゚、゚トソン 「現在はカメラマン達の間で彼を綺麗に取ることができれば、カメラマンとして大成するという都市伝説にまでなっています」


(゚、゚トソン 「非常に謎の多い選手です。……今大会ではその秘密のベールを暴く者は現れるのでしょうか?」

413 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:41:06 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) 「その甘いルックスと紳士的で物腰柔らかな態度からは想像もつかぬ、残虐で芸術性が高いファイトスタイルは一部で熱狂的なファンがいます!!」


(#,,^Д^) 「僕の方が絶対にいい筋肉してますけどね!!!!」


( ,,^Д^) 「前大会で披露したその『個性』は非常に強力!!その後は棄権者が続出し、なかなか試合でお目にかかることはできませんでした!!」


( ,,^Д^) 「そのため彼が出る試合のチケットの価格が高騰し、ファンの女性達による『オサム狩り』というチケットを強奪する行為が校内で問題になりました!!」


( ,,^Д^) 「今日もその力をもって闘技場を真っ赤に染め上げるのか!!?エントリー№6『真祖』ヴラド&オサムだあああああ!!!!」


ミセ*゚―゚)リ 「なかなかお目にかかれないコンビが登場しました!!ファンの皆さん!!この機会をお見逃しなく!!」


ミセ*゚ー゚)リ 「……でも無理やり最前列の席を取ったりするようなマナー違反はしないようにお願いしますね!!」


( 、 *トソン 「ktkr!!!!はぁぁぁ………オサム様ぁぁ…!……ムリ!…ムリムリムリムリムリ!!…やばいやばいやばいやばい!!!!…あぁぁ……尊い…!!」


ミセ ゚-゚)リ 「……むぅ〜…」


Σ(゚、゚トソン 「…ミッ、ミセリ!?……違いますよ!?違うんですよ!!?……こ、これには訳があって!!!!」


ミセ ゚―゚)リ 「…早く解説したら?」


(゚、゚;トソン 「……え、えぇ〜、と…です…ね。ヴラドはギラファノコギリクワガタという種類です。…あ、あの、あ…っと、え〜……長くて大きいアゴが特徴です」


(゚、゚;トソン 「その『個性』はまさに吸血鬼そのものです。っと、です…ねグロテスクなものが苦手な方はご注意ください」


(-、-;トソン 「……あの、ミセリ?…すみませんでした。」


ミセ*゚―゚)リ 「わかればよろしい!」


(゚、゚*トソン 「ミ、ミセリ!!」

414 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:42:03 ID:GGk7J/rg0

( ,,*^Д^) (…はぁ〜……ムリ…尊い)


( ,,^Д^) 「ついに時は来た!!!!私達は君を待っていた!!前々回大会から忽然と姿を消していた元チャンピオン!!」


( ,,^Д^) 「その実力は歴代の『蟲帝』達の中でも随一と言われています!!……そう言えば………私が山籠もりしていた…しろg〜……なんだったっけな?山の一番奥の洞窟の中で見かけたような?」


( ,,^Д^) 「その美しく輝く白銀の頭髪と陶器のような白い肌が印象的な彼は、その悪魔的なまでの美しさと圧倒的すぎる戦闘力から『白い悪魔』と呼ばれているぞ!!」


( ,,^Д^) 「ギアなしでどんな虫とも心を通わせてしまうという伝説のチャンピオンが闘技場に殴り込みだああああ!!!!エントリー№7『白い悪魔』ゼロ&ハイン!!!!!!」



ミセ*゚―゚)リ 「創作小学校と言えばこの選手です!!この選手無くしてビートルを語ることはできません!!!!」


(゚、゚*トソン 「…ついに闘技場で再び、彼を見ることができますね!…果たしてどこまで成長しているのか……全く予想が付きませんね」


(゚、゚トソン 「ゼロはグラントシロカブトという種類です。その『個性』は氷と雪を操るという、まさに虫たちにとって脅威と言えるものです」


(゚、゚トソン 「………果たして彼を打ち破る者は現れるのでしょうか?」

415 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:42:31 ID:GGk7J/rg0

( ,,^Д^) 「お次はルーキーの登場だ!!!!」


( ,,^Д^) 「初心者にも関わらず、まさに破竹の勢いの快進撃を見せました!!!!」


( ,,^Д^) 「その『個性』はなんとも特殊な固有結界を創るというもの!!」


( ,,^Д^) 「はたして、どこまで勝ち進むことができるのでしょうか!?決勝トーナメントじゃビギナーズラックは通用しないぜ!!!?」


( ,,^Д^) 「戦いたいからここに来た!!!!エントリー№8『無垢』ベルボス&モナーだああああ!!!!!」



ミセ*゚ー゚)リ 「でましたね!!ベルボス&モナー」


(゚、゚トソン 「今期は、このコンビを筆頭に、急激に実力をつけた方が多いですね」


ミセ*゚ー゚)リ 「たしかに〜。皆頑張ったんだね」


(゚、゚トソン 「ベルボスはオオツノメンガタカブトという種類です。バットやこん棒のような形状の角が特徴的ですね」


(゚、゚トソン 「その『個性』は非常に特殊で、モナー選手の世界に対戦相手を引きずり込むというものです」


ミセ*゚ー゚)リ 「モナー君の世界?」


(゚、゚トソン 「まあ、見ればわかりますよ」


(-、-;トソン (能力の規模や詳細が不明過ぎて、解説者泣かせなんですよね)


ミセ*゚ー゚)リ 「今日も勝利の風は吹くのでしょうか!?」

416 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:43:03 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) 「風といったらこいつを忘れちゃいけないぞ!!!!」


( ,,^Д^) 「天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!!悪を倒せとオレを呼ぶ!!」


( ,,^Д^) 「胸に宿すは正義の心!!真っ赤に燃える!!」


( ,,^Д^) 「赤いマフラーは正義の証!!エントリー№9『半熟ヒーロー』ほんごう&エクストだあああああ!!!!」



ミセ*゚ー゚)リ 「エクスト君って、いっつもお掃除とか手伝ってくれて優しいんだよね」


(゚、゚トソン 「あ〜…。荷物も持ってくれたりしますしね」


ミセ*゚ー゚)リ 「暑苦しいけどいい人だよね」


(゚、゚トソン 「ええまあ。」


(゚、゚トソン 「ほんごうはトノサマバッタです。近年は甲虫主体となりつつあるビートル界においてバッタと組む選手は非常に稀です」


ミセ*゚ー゚)リ 「たしかにね。頑張ってほしいなあ」


(゚、゚トソン 「今後のビートルの可能性を広げていくコンビとして注目していきたいところです」


(゚、゚トソン 「その『個性』はこれまた特殊。通称『ヒーローハート』と呼ばれるものです」


(゚、゚トソン 「ヒーローっぽい状況になるとパワーアップしたり…まあ、、とにかく謎が多い能力です」


(゚、゚トソン


ミセ*゚ー゚)リ (あ…トソンちゃんが遠い目をしてる)

417 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:43:35 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) (…頑張れ!トソンちゃん)


( ,,^Д^) 「いよいよこいつらのお出ましだぁ!!!!」


( ,,^Д^) 「数々のライバルを沈めてきたその凶悪な『個性』は非常に強力です」


( ,,^Д^) 「オサムファンクラブ会員№2の彼女は、その一声で千人を超えるファンが動くと言われています!!!!」


( ,,^Д^) 「血に飢えたその視線は、今日も獲物を求めて煌々としています!!エントリー№10『狂信者』ヴァン&ワタナベ!!!!」



ミセ*゚ー゚)リ 「ワタナベちゃん、今日も白と黒のフリフリでかわいい服だね」


(゚、゚トソン 「今回のファッションはコウモリをイメージしているんだそうです。似合ってますね」


(゚、゚トソン (ちなみに、会員№1は私です!!このトソンです!!)


( 、 *トソン フンス (へっへーん!!)


ミセ*゚ー゚)リ (トソンちゃん。なんか得意げだなあ)


(゚、゚トソン 「ヴァンは、ギラファノコギリクワガタです。なんと『個性』を二つ持っているという非常にレアな個体です」


(゚、゚トソン 「『個性』は再生と自分が受けたダメージを相手にも与えるというものです」


ミセ*;-〜-)リ 「いっつも痛そうで心配なんだよね」


(゚、゚トソン 「たしかに。グロテスクなものが苦手な方は要注意です」

418 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:44:01 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) 「さて、お次は謎のベールに包まれたこの選手!!」


( ,,^Д^) 「今年、初参加にも関らず無敗のまま一気に予選を勝ち上がりました」


( ,,^Д^) 「負けたらマスクを脱いでもいいと自信たっぷりにいう彼は、これまでそのマスクを剥ぎに来た多くの選手を返り討ちにしました!!」


( ,,^Д^) 「オールドスタイルのその戦術は、果たして現代のビートル・トップランカー達にどこまで通用するのでしょうか!!!!」


( ,,^Д^) 「エントリー№11『マスクマン』バルケン&ジャスティスカイザーだあぁぁぁぁああああ!!!!!!」



ミセ*゚ー゚)リ 「おー!!バルケン&ジャスティスカイザー!」


(゚、゚トソン 「彼らは本戦まで挙がってくるだろうと思っていました」


ミセ*゚ー゚)リ 「戦い方が地味なんて言われるけど、私はこんなビートルも好きだな」


(゚、゚トソン 「バルケンは創作原産のカブトムシです。『個性』はオールドファッション。相手の『個性』を無効化するというものです」


(゚、゚トソン 「相手の『個性』を封じ込めることで、強制的に虫相撲の形に持ち込みます」


(゚、゚トソン 「今大会、注目すべき選手の一人です」

419 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:46:44 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) 「お次は我がマッスルメイトの一人!!その鍛え上げた肩は大きくたくましいぞ!!!!」


(#,,^Д^) 「いよっ!!!!腹筋ちぎりパン!!!!」

( ,,^Д^) 「肩にダンプカーでも乗せてんのかい!!!!?」

(#,,^Д^) 「そこまで絞るには眠れない夜もあったろう!!!!!」



ミセ*゚ー゚)リ 「タカラくーん」



( ,,^Д^)そ


( ,,^Д^) 「相棒と共に鍛え上げたその肉体は、今日もキレッキレだぁ!!!!!!」


( ,,^Д^) 「エントリー№12『鉄人』バルク&ギコ!!!!!!」

420 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:47:09 ID:GGk7J/rg0
ミセ*゚ー゚)リ 「タカラくん、とっても嬉しそうだねえ」


(゚、゚*トソン 「…お〜、これはなかなかのキレですよ」


(゚、゚*トソン 「ギコ選手は脚までしっかりと鍛えられていますね。いいバランスです」


ミセ*゚ー゚)リ 「タカラくんとギコくんが並んで歩いてると廊下が狭く見えるよね」


(゚、゚*トソン 「ええ眼福です」


(゚、゚*トソン 「…あの腹斜筋で大根をすりおろしたい」


ミセ*゚ー゚)リ 「トソンちゃ―ん?」


(゚、゚トソン 「あ、はいはい」


(゚、゚トソン 「バルクはヘラクレスオオカブトです。『個性』は硬化」


(゚、゚トソン 「自らだけでなく、周囲の環境の硬さまで自在に操ります。単純ですが非常に強力ですよ」


(゚、゚トソン 「ちなみにギコ選手は、絵を描くのが趣味だそうで、先日のコンクールでは銀賞を受賞しています」

421 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:47:36 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) 「ここで、トリックスターのお出ましだぁ!!!!」


( ,,^Д^) 「敵も観客も欺くその個性は、まさに一級品!!」


( ,,^Д^) 「穏やかな笑顔の裏に、渦巻く戦術と狂気は計り知れません!!!!」


( ,,^Д^) 「一体、我々にどんなショーを見せてくれるのでしょう!!??」


( ,,^Д^) 「エントリー№13『道化』ロキ&フォックス!!!!!!」



ミセ*゚ー゚)リ 「きました。前回大会三位入賞の実力者です!!」


(゚、゚トソン 「やはり今回も上がってきましたか」


ミセ*゚ー゚)リ 「今回こそはと優勝を望む声も多いのではないでしょうか?」


(゚、゚トソン 「そうですね」


(゚、゚トソン 「ロキはニジイロクワガタという種類です。やや緑がかった玉虫のような体色と短めのアゴが特徴ですね」


(゚、゚トソン 「『個性』は実体を持つ幻影を生み出すというものです」


(゚、゚トソン 「『個性』の強さとフォックス選手の戦術が合わさり、まさに鬼に金棒といったところです」


ミセ*゚ー゚)リ 「試合が楽しみですね!」

422 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:49:01 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) 「先日の試合での怪我も完治し、調整もばっちりとのことです!!!」


( ,,^Д^) 「突き進む光の矢は『蟲帝』を打ち倒し、雪辱を果たすことができるのでしょうか!!!!」


( ,,^Д^) 「エントリー№14『雷光』トール&ショボン!!!!!!」



ミセ*゚ー゚)リ 「無事に復帰できて本当に良かったです!」


(゚、゚トソン 「名選手が引退することなく復活したというのは、本当に嬉しいことですね」


(゚、゚トソン 「トールはちょっとややこしいですがネプチューンオオカブトです」


ミセ*゚ー゚)リ 「ややこしいかなあ?」


(゚、゚トソン 「今度、一緒にお勉強しましょうね?」


ミセ*゚ー゚)リ 「うん」


(゚、゚トソン 「『個性』は雷です」


ミセ*゚ー゚)リ 「なんかザクっとしてない?」


(゚、゚トソン 「仕方ないんです。雷に変化したり、雷で物を創り出したり、雷を纏ったり……」


(;、;トソン 「ザクっと…ザクっというしかないじゃない!!」


ミセ;*゚Д゚)リ 「あ、ご…ごめんね!!?」


(゚、゚トソン 「なーんちゃって」


(゚、゚トソン 「さあ、次に行きましょうか」

423 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:49:30 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) 「そのファイトスタイルは、本人の性格とは真逆の超攻撃型!!!!!」


( ,,^Д^) 「計算されつくした怒涛の連続攻撃は、正に彼女の二つ名の如く相手を飲み込みます!!!!」


( ,,^Д^) 「雨の日の野良試合では負け知らずの彼女が、この闘技場でどのような戦いを見せてくれるのか!!!!?」


( ,,^Д^) 「エントリー№15『濁流』アープ&クールゥゥゥウウウ!!!!!!」



ミセ*゚ー゚)リ 「クールちゃん、気合十分ですね」


(゚、゚トソン 「前回大会では、ハイン選手と初戦から当たったことで惜敗を喫した彼女ですが、今大会では何やら秘策があるそうですよ」


(゚、゚トソン 「アープはクラヴィゲールタテヅノカブトという種類です。胸角の先端が菱形のヘラ状に広がっているのが特徴です」


(゚、゚トソン 「また、サーベルのような頭角を用いた戦闘方法も得意としています」


ミセ*゚ー゚)リ 「…秘策、楽しみですね」


ミセ*゚ー゚)リ 「…こっそり訊いたら、教えてくれないかな」


(゚、゚トソン 「秘策の意味がなくなるじゃないですか……」


ミセ*>〜゚)リ テヘ

424 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:50:03 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) 「前回の公式試合にて、まさかの敗戦。学校から姿を消していたあの男が返ってきました」


( ,,^Д^) 「伝説となった相棒の『ノイジービート』を喪い、それでもなお足を止めなかったのは自身のプライド故か…亡き相棒にその勇姿を見せるためなのか…!!!!」


( ,,^Д^) 「……全身の傷が修行の激しさを物語っています!!!!!」


( ,,^Д^) 「一度全てを失った男は果たして再び、栄光を掴むことができるのか!!!!?」


( ,,^Д^)そ


( ;;^Д^) 「…………おいおい?本当にこれ読めって?」




( ∵)о=ニニフミセ;;゚―゚)リ(゚、゚;トソン 「ちょ!ちょっと!!?なんなんですか!!!?あなた!!!?」


( *^ν^)‘e’) 「「おいおいww早くしろよーwwwwww」」



( #;^Д^) 「…チッ!小物が……好き勝手しやがって…」


( ,,^Д^) 「……ランキング100位のびりっけつエントリー№16『おもらし帝』カブト丸&ブーン!!!!」


ミセ;゚―゚)リ 「な、な、なんだったんでしょうか……」


(-、-;トソン 「すみませんお騒がせいたしました。えー…カブト丸は創作原産のカブトムシになります」


(゚、゚トソン 「新たな相棒と共に闘技場に舞い戻った元『蟲帝』は一体どのようなファイトを見せるのか………期待ですね」

425 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 01:52:48 ID:GGk7J/rg0
( ,,^Д^) 「以上の16名が戦い、決勝まで進んだ者に『蟲帝』への挑戦権が与えられます!」



ミセ*゚ー゚)リ 「皆!!!!頑張ってね!!!!」


(゚、゚トソン 「今回は誰が『蟲帝』と対戦するのでしょう」


(゚、゚トソン 「非常に楽しみですね!」


ミセ*゚ー゚)リ 「というわけで、さっそくくじを引いていくよ〜!!」


(゚、゚トソン 「よーし!!引いちゃいますよ!!」

426 ◆HJSTJA2nos:2020/06/16(火) 02:06:03 ID:GGk7J/rg0
o川*゚ー゚)o 「やあ!!みんな久しぶり!!」


o川*>ー<)o 「かわいいかわいいキューちゃんだよ!!」


o川*゚ー゚)o 「本当は全部の組み合わせを見せてあげたいところなんだけど…」


o川*゚ー゚)o 「私の力も残り少なくなってきててさ」


o川* ー )o 「………難しいみたいなんだよね」


o川*゚ー゚)o 「あっ!ごめんね」


o川*゚ー゚)o 「この世界では、皆の選択がすっごく大事になってくるみたい」


o川*゚ー゚)o 「……少しだけ、少しだけキューちゃんに力を貸してくれると嬉しいな!!」


1回戦 第1試合>>428
    第2試合>>429
    第3試合>>430
    第4試合>>431
    第5試合>>432
    第6試合>>433
    第7試合>>434
    第8試合>>435

   
o川*゚ー゚)o 「見たい組み合わせを書いてね」


o川*゚ー゚)o 「○○対××みたいな感じで、選手名を書いてくれると嬉しいな!!」

427 ◆HJSTJA2nos:2020/06/29(月) 00:16:55 ID:DHa5.wV.0
慣れない、安価などするものではなかったです。
ええ。

428 ◆HJSTJA2nos:2020/06/29(月) 00:17:20 ID:DHa5.wV.0




(@^ω^) ビート・イット!!のようです。Яeboot

第12話

429 ◆HJSTJA2nos:2020/06/29(月) 00:18:00 ID:DHa5.wV.0





――――――特設闘技場・控室




.

430 ◆HJSTJA2nos:2020/06/29(月) 00:19:17 ID:DHa5.wV.0
創作の夏は暑い。


額から垂れる汗が、また地面に吸い込まれた。
控室にあるのは、相当に年季の入った扇風機くらいだ。

こんな時にはゼロの『個性』が少し羨ましくも感じる。


目の前には、ノリノリでラジオ体操をしているカブト丸。
動きのキレを見るに、調子は良さそうだ。


( ^ω^) (関節の作り的に無理がないかお?)

431 ◆HJSTJA2nos:2020/06/29(月) 00:19:57 ID:DHa5.wV.0
ボクも雨象の里から帰ってきてからは、ゆっくり休むことができた。
体調も良い。今朝も、納豆でご飯を三杯は食べた。


( ^ω^) (不思議と緊張はないお)


【○I○】 (ブーン?マジか?)


【*○I○】 (流石!!試合慣れしてやがるぜ!)


カブト丸は、横曲げの運動をしながら、こちらを茶化すように言った。
あれでいて、緊張してソワソワしているのだろう。
なんたって今日の試合が、カブト丸の観客の前で行う初めての試合なのだから。


( ^ω^) 「頭の中の独り言に、勝手に割り込んで来るのは君の悪い癖だと思うお?」


【○I○】 「いいじゃねえか〜…」

432 ◆HJSTJA2nos:2020/06/29(月) 00:20:25 ID:DHa5.wV.0

【○I○】 「お前、試合前になった途端に全然話さないから、オレも暇なんだよ〜」


【○I○】 「さっきっから、何してんのさ?」


( ^ω^) 「場内にバリアが張られるその瞬間まで、鼓動とあそこにある蛇口の水滴の音を数えるっていうか…自分とリンクさせていくっていうか……」


このルーティーンは、少しでも『蟲帝』らしく振る舞いたいと思って考えたものだ。
改めて説明をすると、なんだがこっ恥ずかしい気分になってきた。
これが、シャキンさんが言っていた黒歴史とかいうやつなのだろうか。


( ^ω^) 「まあ、とにかくノイジーがいた頃からのルーティーンなんだお」


【○I○】 「なるほど、ようは精神統一してたってわけか…」


【;○I○】 「……邪魔して悪かったよ」


わざとらしく前胸背板を落として見せる相棒。こいつめ。
ちょっと恥ずかしかったから、仕返ししてやろう。

433 ◆HJSTJA2nos:2020/06/29(月) 00:20:51 ID:DHa5.wV.0
( ^ω^) 「いや、いいお。逆に良い感じに緊張も解れた感じがするし」


( ^ω^) 「さ、そんじゃ僕らもウォーミングアップといきますかお?」


にこやかにそう告げた。

心は静かに、波一つ立てず。
であれば、その波紋を読むこともかなわぬっつってね。


【*○I○】 「おっ!型でもやっとくか!?」


( ^ω^) 「お!…ついでに長の教えの復習とルールの確認もしながらやるお!」


カブト丸は一切気が付いていないようだ。



イケる。

434 ◆HJSTJA2nos:2020/06/29(月) 00:21:20 ID:DHa5.wV.0
【○I○】 「へっへっへwwルールなら、もうバッチリここに入ってるぜ?」


会話をしながら、身体を解すようにプラプラと振る。
脱力した右腕。俄かに重みを感じる。


( ^ω^) 「おっおっおっwwほんとかどうか確かめてやるお!」


バッ( #゚ω゚)つ三Σ【○I○;】


間合いもタイミングも完璧だった。


【;○I○】 「あっぶねえ!!?」


リードストレートをカブト丸は、脛節で逸らす。


【;○I○】 「お、おい!不意打ちはダメだろ!!?」


(#^ω^) 「何のためのテレパシーだお?」

435 ◆HJSTJA2nos:2020/06/29(月) 00:22:18 ID:DHa5.wV.0
ちっ!外したか。
だけど次は外さない。

左右の足を素早く入れ替えながら、間合いを詰める。


( ^ω^) 「今の君なら、僕の動作を瞬時にトレースする位、寝ててもできるお?」


そう言うのと同時に、左足でサイドキックを連発。


【;○I○】 「うぉっ!!はっ!?とっ!!」


上段、中段、下段と散らしながら蹴ったが、カブト丸は防ぎきった。やりよる。
でも、これは布石だ。

436 ◆HJSTJA2nos:2020/06/29(月) 00:22:48 ID:DHa5.wV.0
( ^ω^) (ここだ!!)


軸足を切り替え、跳びながら上段回し蹴りを放つ。


【;○I○】 「うおお!?」


カブト丸は上体を反らして、避けた。
この上段の回し蹴りはフェイント。
本命は、跳び後ろ回し蹴りだ!!


( #゚ω゚) 「殺ったぁぁぁああああ!!!」


たしかな手応えがあった。
蹴りが中胸腹板を貫く。
カブト丸は、そのまま控室の奥の方まで飛んでいき、段ボールの山に激突した。

437 ◆HJSTJA2nos:2020/06/29(月) 00:23:15 ID:DHa5.wV.0
(;^ω^) (仕返しにしては…ちょっとやり過ぎたかもしれないお)


段ボールの山はピクリとも動かない。
ボクが様子を見に行こうと、一歩踏み出した瞬間、視界が急激に反転した。


( ;゚ω゚)ガクン


よく見ると室内の埃を媒介にした手がボクの足をガッチリ掴んでいる。


(;^ω^) (やば!!?)


段ボールの山が爆発して、カブト丸が躍り出る。
そのままの勢いで、ボクに突進してきた。

頭角が腹筋に衝突する。


同時に念力の手が解け、僕は控室の壁に叩きつけられた。

438 ◆HJSTJA2nos:2020/06/29(月) 00:24:00 ID:DHa5.wV.0
【○I○】 「どおりで思考が読めねえなと思ったらよお」


【#○I○】 「覚悟しろよお!!!?相棒!!!!」


カブト丸は、一切の躊躇なく全力で念力の拳を振るう。
攻撃はやや単調だが、拳のサイズが大きいため、避けるのも難しい。


( ;゚ω゚) 「はっ!!?おまっ!!?普通は生身の人間相手に念力の手とか使わねえお!?」


【#○I○】 「うるせえ!!せいぜい避けろ!!」




ブーン達が控え室でアップを始めた頃、闘技場の方では第一回戦の抽選が行われていた。

439 ◆HJSTJA2nos:2020/06/29(月) 00:40:08 ID:DHa5.wV.0
今日は、ここまでです。

試合の抽選に関しては、書いてもらえれば反映していきます。

440名無しさん:2020/06/29(月) 03:17:38 ID:/TXNqoNg0
オツ


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