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忌談百刑
1
:
統括矯正処遇官
◆B9UIodRsAE
:2017/08/07(月) 20:22:50 ID:LFL3iTlc0
【報告】
『看守日誌≪前スレ≫』
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1499699041/
『報告書≪まとめ―ブンツンド―様―≫』
http://buntsundo.web.fc2.com/long/kidanhyakkei/top.html
『収容人数』 5/6
『状態』 良好
『LD』 観測できず
『追記』 予定より遅れあり
47
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 20:52:18 ID:LFL3iTlc0
その時、叔父の手に、何かとっかかりのようなものが当たった。
それを撫でまわしながら、彼はそれが何であるか直感する。
――耳だ。
人間の、両耳。
それに気づいた瞬間、叔父はその両耳を摘んで、一気に膣口の外に向かって引きずり出すッ!!
びゅるるッ! 羊水と分泌液の混合液が迸って、辺りにまき散らされる。
会陰が切れて、少量の血液が溢れる。そしてその粘性体に混ざって、生臭い匂いを放った。
『あ゛ぁ゛あ゛ッ゛!! あ゛ぁ゛あ゛ッ゛!! あ゛ぁ゛あ゛ッ゛!! あ゛ぁ゛あ゛ッ゛!! あ゛ぁ゛あ゛ッ゛!!』
叔父が引く手に力を込める度に、そういうおもちゃのように、彼女が哭く。
ここで手を止める方が、危険だ。
これが最後だと、彼はいっそう耳を強く引いた。
48
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 20:56:03 ID:LFL3iTlc0
『
ぎ ゃ゛
あ゛
ぁ゛
あ゛
あ゛
あ゛
ぁ゛
ぁ゛
あ゛
あ゛
ぁ゛
ぁ゛
あ゛
ぁ゛
ぁ゛
あ゛
ッ゛
ッ゛
ッ゛
ッ゛
ッ゛
ッ゛
!
!
!
!
!
!
!
』
49
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 20:57:06 ID:LFL3iTlc0
一際大きい悲鳴と共に、今まで強張っていた彼女の二の足がびくびくと痙攣する。
そして、それに合わせるようにヒクヒクと跳ねている彼女の陰唇は、ゆっくりと閉じていった。
――おぎゃぁ
――おぎゃぁ
声が、聞こえた。
余りにも、野太い、産声が。
とうに変声期を終えた、男の声が、閉じられた分娩室に響いた。
50
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 20:57:27 ID:LFL3iTlc0
瞬間、先ほどまで手の中にあった重さと温かさが消えた。
それに合わせるように、でぃちゃんの上半身が、がばりと持ちあがった。
白目を向いて、口の端からは血と泡を垂らしながら、二の腕の天井に向けて伸ばす。
そして縋るような声で、こう言ったんだ。
『ギコさんッ! 行かないでッ!! 私も連れて行ってッ!!!』
その叫びの尻尾の部分が、部屋に響いて、やがて溶ける様に消えていくと同時に、
彼女の上半身から力が抜けて、分娩台にぐったりと倒れ込んだんだ。
同じように、叔父も、その粘膜に塗れた床に腰を下ろしてしまった。
代わりに、今まで腰を抜かしていた産婦人科の先生と、助産婦が、その後の処理をしてくれた。
51
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 20:58:31 ID:LFL3iTlc0
――あれから数日して。
彼女は"でぃ"ちゃんに戻っていた。
事故直後から、今までの記憶は持ち合わせていないようで、
植物状態から目覚めたような反応を示した。
叔父たちは、フサさんとも協力し、口を合わせて、
体の違和感も、記憶障害も、何もかも事故のせいにして、彼女に真実を伝えない事にした。
自分の体を母親に乗っ取られた挙句、得体の知れない何かを出産したなんて、とても伝えられなかった。
その後も叔父はでぃちゃんの担当医を続け、三か月後、彼女は無事に退院していくことになる。
その入院最後の晩、叔父は病室で、眠れないという彼女の話に付き合っていた。
『三ヵ月も学校行ってないと、勉強遅れてそうで不安ですね』
そう言って笑う。
でぃちゃんは、想像以上に聡明で、思慮深い子だった。
実の母と、義理の兄が事故で死んだことを告げられても、決して騒がずに、その悲しみを飲み込んだように見えた。
日々の会話でも、これからフサさんと二人三脚で暮らしていかなくちゃいけないから、
退院したら、まずは家事を覚えないと、と話してくれたこともある。
だからだろうな、叔父は油断していたんだ。
本当の"悪意"っていうのが、どこに隠れて息を潜めているのかを、まだ知らなかったんだ。
52
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 20:59:01 ID:LFL3iTlc0
『勉強だったら、僕が何度か教えたじゃない』
『先生は、教えるのが上手すぎます。学校の先生じゃ理解できなくなっちゃう』
病床で参考書を開いている彼女に、何度か勉強を教えた事があった。
元々医学部の暇な時期には家庭教師や、進学塾の季節講習の臨時講師など、割のいいバイトをしていたことがあるので、
その手のものは、得意だと自負していた。
『……先生、私、これから、どう生きていくんでしょうね』
ふいに、彼女がそんな事を言った。
家族を事故で失ってしまった少女が、血のつながらない父親と二人で生きていく。
自分は世間一般よりは頭がいいと思っていたが、それに関してはちっとも答えが出てこない。
無責任な事も言えないな、とは分かっていたが、黙っているのも気まずいので、口を開く。
『……きっと、悲しい事、苦しい事を乗り越えた人の方が強く生きられるんじゃないかな?』
なかなかに、これも無責任な発言だ、と言ってすぐに公開した。
彼女はそれを聞くと、枕を膝に抱えて、そこに顔を突っ伏してしまった。
――泣かせてしまったかもしれない。
あまり過去を思い出させるような発言は控えるべきだった――。
53
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 20:59:24 ID:LFL3iTlc0
『……くくッ』
不意に、枕の中から、小さくくぐもった声が漏れた。
それは、泣き声、というよりも、笑い声に近い、
もっと"愉悦"の感情を含んだものだった。
『……でぃちゃん?』
背筋に冷たいものを感じながら、彼女の丸まった背中に声をかける。
すると、ゆっくりと、伏していた顔を彼女は上げていく。
54
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 20:59:58 ID:LFL3iTlc0
――顔が、変わっている。
邪悪、を絵に描いた様な表情。
瞳は横長で、蛙の目のように歪んでいる。
口角は吊り上げられて、鋭い犬歯が覗いていた。
酷く楽しい事があった、そんな表情だ。
しかもその楽しい出来事は、一般的には忌むべきことであり、
それは例えば、"人の死"であるだとか、そういう事を心底楽しいと感じてしまう精神異常者の表情だった。
恐ろしいのが、それでもなお、彼女は"でぃちゃん"なのだ。
決して、また誰かの人格が表面化したとか、そういうものじゃなくて、
彼女自身が覆い隠していた部分が、表面に露出した、それが一番正しい表現だと思う。
『……ちがうんです。ちがうんですよぉ、先生』
そう言って、悪戯っ子の様に笑う。
あの時"しぃさん"が見せた、淫靡で妖艶な感じを内包しつつも、
そのあどけない表情でコーティングされた嘲笑。
55
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 21:00:29 ID:LFL3iTlc0
『私、楽しみなんです。これからの毎日が。だって、これでやっと、"お義父さん"――ううん、"フサ"さんと二人っきりになれるんだもん。
もう、どうやって生きていこうか、楽しみ過ぎるんですよぉ』
人差し指を立てて、くるくると回してみせる。
『やっとあの気持ち悪いババァと、クソ兄が死んだんです。あの二人は、フサさんの気持ちも考えないで、いつも隠れてイチャイチャしてて、
いつか絶対に殺してやろうと思ってたんです。その挙句、ババァが、クソの子を妊娠とか、笑えない冗談ですよね。
しかもババァから、ゴミを誘ったっていうんですよ。もう強姦まがいに。そんなの私もフサさんも気が付くって。同じ屋根の下に暮らしてるんだもん。
挙句、今日から貴女もお姉ちゃん、とか冗談じゃないですよねぇ。あんな腐った遺伝子から生まれてくるゲロなんて、さっさと処分した方がいいと思いません?』
楽しそうに、一息で、そんなセリフを吐く。
叔父はパクパクと、陸に揚げられた魚のように口を動かすことしか出来ない。
何か言いたいことがある気がするが、その思考がまとまらない。
なにか、とんでもなくえげつない真実が、今明らかになろうとしている。
だった、そうだろ? この先なんて、誰でも分かってしまうような――。
56
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 21:01:20 ID:LFL3iTlc0
『くひひッ! だからね、あの日、クソが運転しているハンドルを奪って、思いっきり切ってやったんです。
あの馬鹿共、車内でもイチャイチャしながら、フサさんの悪口を言って。だから、死んで当然なんですよねっ!
衝突の瞬間に、クソ兄のシートベルトを外して。そしたら二人ともフロントガラスの向こう側でぐちゃぐちゃになったのが見えたんですッ!
もうすっごく嬉しくって! でも、私も無事じゃ済まなくて、というか、ババァが私の後頭部を蹴り飛ばすみたいに吹き飛んだんで』
『でも、不思議なんですよねぇ。私、夢を見ていたんです。その夢の中でも、私たち三人は、車に乗っているんです。
運転手はババァ、助手席にクソ兄、後部座席に私だったんですよ。なんで事故と座席が入れ替わったんですかね?
走馬燈にしても、中途半端じゃないですか。しかも、そこでも、ババァとクズはイチャイチャしてて、
私、夢の中でも、後部座席から身を乗り出して、ハンドルを切ったんです。そしたら今度は、私が車外に放り出されちゃって。
気が付いたらベッドの上だったんですよねぇ』
57
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 21:01:59 ID:LFL3iTlc0
――病院っていうのは、どうしたって"生"と"死"が混在する、ある意味、黄泉平坂みたいな場所だ。
だから、時たま、こんな事が起こるんだ。
死者は生者に、生者は死者に。
循環し、逆転し、崩壊して、輪廻する。
悪意も、善意も、愛も、憎しみも、全てを飲み込んで。
それ一個が、生き物のように、病院は稼働するんだ。
叔父は、もう、でぃちゃんの声を聞いてはいなかった。
自身の基盤が、ガラガラと塵になっていく。そして、新しい自分が生まれる。
僕は、何を救って、何が救えなかったんだろう。
救うべきものは、救わざる"命"とは。
医療とは、医学とは、医術の"正しさ"とは。
ベッドの横の丸椅子からゆっくりと立ち上がると、病室を後にする。
すでに"でぃちゃん"も、叔父に話している訳では無く、
殆ど独り言に近い語り口で、何かをぼそぼそと呟いていた。
その最後の言葉だけ、辛うじて叔父は聞き取った。
58
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 21:02:30 ID:LFL3iTlc0
『死んでも、同じ車に乗ってくるなんて、ホント迷惑ぅ』
【迷惑な同乗者 了】
59
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 21:02:58 ID:LFL3iTlc0
【幕間】
川 ゚ -゚)「どうだった?」
('A`) 「エグい」
(´・ω・`)「ヤバい」
( ^ω^)「キモい」
ξ゚⊿゚)ξ「グロい」
川 ゚ -゚)「ふはは」
('A`) 「なに笑ってんだお前」
川 ゚ -゚)「だから言っただろう? 私の得意分野は病院関係と憎愛だって」
ξ゚⊿゚)ξ「私もう一生出産しない」
(´・ω・`)「あ〜ぁ、日本の少子高齢化に拍車がかかるぅ〜」
( ^ω^)「男でもタマひゅんものだったお」
(´・ω・`)「クーさんの叔父さんは、その後どうなった訳?」
川 ゚ -゚)「ちょっとオカルト好きになって、そういう蔵書を買い込むようになったぞ!」
ξ゚⊿゚)ξ「間違った方向に倒錯しちゃってるじゃない……」
(´・ω・`)「まぁ、そのお陰でくーさんのレパが増えるんなら良かったんだけどさ」
( ^ω^)「病院行きたくなくなったお」
('A`) 「でもお前このまま行ったら糖尿病やで」
( ^ω^)「痩せるわ」
ξ゚⊿゚)ξ「よっし、じゃあ次に行きましょ」
(´・ω・`)「"題"は
>>70
にしようか」
( ^ω^)「じゃあ、今度は僕が行くお」
ξ゚⊿゚)ξ「頼んだわ」
ξ゚⊿゚)ξ「それじゃ、次の"解"を求めましょう」
60
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 21:06:51 ID:z2OdJiLk0
支援
おかえり!
61
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 21:08:28 ID:GQCoEygU0
待ってた乙
62
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 21:14:19 ID:ajfd3E2Q0
乙、やっぱり病院モノはえげつないな
今までいろんな『中出し義母レイプ』を見てきたけどダントツだ
63
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 21:16:15 ID:6u//TpM.0
お前を待ってたんだよ!乙
64
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 21:27:01 ID:esBqQALU0
おつ、続き書いてくれて感謝。
エッグい話でしたねえ
フサ不憫すぎ
65
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 21:30:07 ID:f2lc.dCA0
おま…おっ前、こういうふうに持ってったかあ…
センスがヤバすぎるだろ…
つか収容人数とLD?
よくわかんないけど乙!
纏められて更に乙乙!
66
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 21:36:12 ID:ajfd3E2Q0
緊迫したシーンなのに『主人公が透明に表現されてるエロゲ』みたいだなとかおもってしまった
67
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 22:04:34 ID:m8dHRvzI0
お帰り!乙!!
68
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 22:08:55 ID:f2lc.dCA0
さてまた謎が増えたわけだが。
どういうことなんでしょうねえ。
69
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 22:13:38 ID:lVeu0sNw0
まさかあのお題からこんな話になるとは…
安価なら知恵の輪
70
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 22:13:47 ID:tdV.Y8lE0
電卓
71
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 22:37:59 ID:YS97A4is0
安価大人しいなホントに
72
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 22:58:03 ID:KFr8OBIU0
本当に奇抜な安価がいいなら
自分で安価を掴みとってお題を書く方がたぶん早い
73
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 23:17:19 ID:TiyCgxSk0
クーなら中だし義母レイプにピッタリだろうと思って指定した
反省はしていない、後悔は今メッチャしてる
74
:
名無しさん
:2017/08/07(月) 23:22:00 ID:ZkVaGrn.0
くっそエグいな、いいぞ
75
:
名無しさん
:2017/08/08(火) 00:43:15 ID:lZz3gowg0
なんつーか無茶ブリを捌くのが安価の醍醐味だと思うの
76
:
名無しさん
:2017/08/08(火) 00:56:57 ID:oTB7jTjU0
おまえの矜持なんかどうでもいいわ
77
:
名無しさん
:2017/08/08(火) 01:25:40 ID:R/7T6qHU0
次スレ来てたか支援支援
http://imgur.com/B6jjBa6
78
:
名無しさん
:2017/08/08(火) 05:10:59 ID:EuzJxUm60
お題としての安価だから、結局は語る担当と作者の調理次第だし
大人しいも激しいも別にどっちでもいいわ
作者が言っていたように、好きなようにお題書き込めばええんとちゃう?
無茶ぶりさせたいなら、させたい人が無茶なお題を出せばええねん
>>77
別の場所でも見かけたが、こういうの好きだわ
雰囲気がとても良い
79
:
名無しさん
:2017/08/08(火) 08:08:30 ID:AL/3c78Q0
>>77
はえー凄い
80
:
名無しさん
:2017/08/08(火) 18:01:15 ID:Azu1fH.k0
ドラクエはクリアしたの?
81
:
名無しさん
:2017/08/08(火) 19:24:00 ID:JxVVzySs0
>>77
雰囲気ありすぎる
82
:
語り部
◆B9UIodRsAE
:2017/08/11(金) 01:22:51 ID:CLGK/LaE0
【第23話 管理社会の演算機《ディストピア・カリキュレーター》】
"( ^ω^)"
――じゃあ、始めるお。
みんな、変な"恐怖症《フォビア》"って持ってるかお?
(´・ω・`)「僕、蜘蛛がダメ」
ξ゚⊿゚)ξ「爬虫類は好きじゃないわ」
('A`) 「強いて言うなら、広すぎる室内。例えば東京ドームとかが苦手だな」
川 ゚ -゚)「子犬とか子猫、あと赤ん坊。踏み潰したらどうしようってなる」
まぁ、その辺だおね。
僕が持つ"恐怖症《フォビア》"は、"電卓恐怖症《カリキュレーターフォビア》"
あんまり聞いたことないおね?
でも僕は、電卓が怖くて怖くて、仕方がないのだお。
みんな普通に電卓を使ってらっしゃるけど、僕からしたら正気の沙汰じゃないお。
だって、"あいつら"って、何を計算しているんだお?
例えば、【隆くんが、みかんを3個、バナナを5個買いました。合わせて幾つの果物を買ったでしょうか?】
って問題があったとして、当然答えは【3+5=8】になるんだお。
なに当たり前のこと言ってるんだって思うかもしれないけど、
僕らは無意識の内に"3=みかんの個数"だし"5=バナナの個数"って理解しているはずなんだお。
でも、電卓って、そうじゃない使い方があるじゃない?
ただなんとなく、キーを押して、適当に四則記号を入力して、それで、"何か"の計算が完了して、数字がはじき出される。
――ねぇ、それって、一体何を"計算"したんだお?
それで出された"数字"って、何を表しているんだお?
僕が今から話すのは、そんな"電卓"にまつわる話だお。
83
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:23:23 ID:CLGK/LaE0
――小4の正月明け。
もうすぐ進級を目前にした、まだ肌寒い日。
僕らのクラスに、空前の"電卓ブーム"がやってきたんだお。
筆箱に入っちゃうくらいの、超ちっちゃいキーホルダー型電卓。
あれを持ってることが、一種のステイタスになっていたんだおね。
特に電卓の機能にプラスして、"相性占い"が行えるタイプのミニ電卓は女子たちの間で爆発的な人気を誇っていたお。
普通の電卓には付いていない、"ハートマーク"のキーを押してから、自分の生年月日を入力する。
その後に、"+"を押して、相性の測りたいもう一人の生年月日を押して、"="を押すと、百分率で、二人の相性が表示されるんだお。
当然そんなプログラムに従っただけの相性占いになんの根拠も無いのはわかりきっていたけど、
女子はああいうのに凄く凝る子が多くて、昼休みや放課後に、飽きもせずにキャイキャイやっていたのを覚えているお。
('A`) 「俺も覚えてるわ。お前だけ女子に生年月日聞かれて、俺も答えようとしたら『あ、ドクオはいいから』って言われたぜ」
川 ゚ -゚)「悲しい過去を掘り下げてくるな」
ξ゚⊿゚)ξ「私も結構やってたかも、その相性占い」
まぁ、当然そんな本来の電卓の使い方じゃない、なまじ玩具みたいな扱いの電卓の存在は、
あっという間に先生に知れ渡って、見つかったら即取り上げられるようになったんだけど、
逆に、そのスリリングな状況が、その電卓ブームの根底を支えていた気がするお。
84
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:23:51 ID:CLGK/LaE0
ともかく、電卓を使ったゲームが次々に考案されて、持ってないやつはその輪に入れないという状況まで来ていたんだお。
僕もカーチャンに頼んで買ってもらおうとしたんだけど、
ちょっと前に誕生日で、欲しかった自転車を買ってもらっていたことと、
電卓なら家にあるやつで良いでしょっ、なんて言いながら馬鹿でかい簿記用の電卓を出されたことで、
買ってもらうことは不可能であることを悟ったお。
今だったら逆にウケると思って、その巨大電卓を持っていったかもしれないけど、
当時はそんな勇気なかったし、更にその"相性占い"の機能も当然付いていなかったから、
学校には持っていかなかったお。
85
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:24:31 ID:CLGK/LaE0
そんな日々が数日続いたある日。
友人と公園で遊び終わって、今日も今日とて泥だらけになりながら帰路についたんだお。
下ろしたてのTシャツにべっとり泥がはねていて、『またカーチャンにどやされるかも』なんて、ちょっと憂鬱になっていたのを覚えているお。
すると、不意に道の真中に、キラキラ光る何かが落ちている事に気がついたんだお。
丁度、たまごくらいの大きさで、でも平べったいクリアカラーのそれに、僕はすぐにピンと来た。
クラスの女子が、それを触っているのを何度も見ていたから。
あの中の基盤が見えるような透明の外装は、間違いなく、あの"電卓"だったんだお。
僕は辺りを見渡すと、誰の人影も無いことを確認してから、サササッとそれに近づいて拾い上げる。
やっぱりそうだ、あの"ミニ電卓"だ。大きさも、胸ポケットに余裕で入ってしまうくらいのサイズしか無い。
家でカーチャンが出してきた漫画の大判の単行本くらいある電卓とは比べ物にならない小ささだ。
沈みかけてる太陽の光に、クリアカラーを透かしてみると、中のごちゃごちゃした機械の塊が見える。
ここに電気が走って、何もかもを瞬時に計算してしまうと思うと、ワクワクがこみ上げて来たんだお。
そして何より、他の電卓にはない"相性占い"の機能ボタン。これが付いている事が堪らなくテンションを上げるんだお。
でも、やっぱり地面に落ちたていたからなのか、そのボタンの"ハートマークは"剥げ落ちていて、歪な"D"の字のようにしか見えなかったお。
それでも、この電卓ブームの中で、ただでミニ電卓を手に入れられたことは僕にとって僥倖でしか無かったお。
当然持ち主が見つかるまで、とも思っていたし、今日の夜には土砂降りになるって天気予報でもやっていた気がするし、
僕が今やっているのは、"泥棒"ではなく、"保護"なんだ、と自分をずるい方向に納得させながら、
結局僕はその電卓をポケットに滑り込ませて家路を急いだんだお。
86
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:25:31 ID:CLGK/LaE0
――次の日。
早速僕は、そのミニ電卓を自慢するために学校に持っていたお。
そして、お昼休み、いつものメンバーを集めて、僕は満を持して、その電卓を掲げた。
その日は雨だったこともあって、誰も外に遊びに行かなかったから、クラスの男子の半分くらいは僕の元に集まっていたと思うお。
更にその半数は、既に電卓を持ってはいたんだけど、この"相性占い"が出来るタイプのものじゃなかったみたいで、
僕が取り出したそれに、素直に羨望の目を向けてきたんだお。
曇天のせいで暗い教室の蛍光灯にクリアカラーを透かして、ひとしきり人気者気分を味わうと、僕らは早速相性占いを始めたんだお。
最初数人は『占いとか、女かよ』なんて言って、羨ましいのがバレバレで強がってたんだけど、
誰かがが、『じゃあ、お前と隣のクラスの津出さんの相性勝手に占っとくわ』なんて言ったら、
『や、やめろよぉッ!』なんて言いながら、結局占いに興味津々で電卓を覗き込んできたんだお。
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと、アタシじゃない。やめてよ」
('A`) 「あの頃ツンはクォーターの金髪で目立ってたからなぁ。お前、影で仕切り屋ババァって呼ばれてたぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「知ってる」
川 ゚ -゚)「それはアレだな。好きな子に意地悪しちゃう"となりのトトロのカン太君現象"だな」
まぁまぁ。
87
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:26:07 ID:CLGK/LaE0
そんな訳で、僕らは意気揚々と"D"のボタンを押して、それから生年月日を入力した。
最初は多分、僕じゃなくて、クラスの誰かの生年月日だったと思うお。
"20000704"。こんな感じ。コレで"2000年7月4日生まれ"を表すんだお。
そして、その後に"+"を押したんだ。
でも、いつまで経っても、数字が"0"に戻らないんだお。
普通だったら、"0"に表示が戻って、それから、もうひとりの生年月日を入力するのに。
僕は、冷えていくみんなの視線を感じながら、色んなボタンを押してみたんだお。
でも、その液晶は"20000704"のまま変化しない。
『故障してんじゃねーの?』『不良品かよ』『んだよつまんねーな』
そんな級友の嘲笑と憐憫をつむじに感じながら、ガチャガチャと滅多にキーを押してみる。
すると、"="のキーを押した瞬間に、表示が変わった。
――"0000000001 人"
みんな、唖然としていたんだお。
コレがなんの表示なのか全く意味が分からない。
もし相性占いだった場合には、末尾が"%"で終わるはずなんだお。
それなのに、"人"ってどういうことなんだお?
僕も分からないし、当然周りのみんなも首をひねるばかりだった。
88
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:26:37 ID:CLGK/LaE0
その後に、数人の生年月日を入力しても、"0000000000人"が殆どで、
たまに"000000002人"とか"000000003人"とか、出るだけだったんだお。
『これって、将来生まれる子供の数なんじゃねぇの?』
誰かがそう言うと、一斉に笑いが起こる。
なにせ殆どが0人なので、クラスの男子の大半は結婚すら出来なということになってしまう。
そこからは、子供をいっぱい作るなんでフケツだとか、一生結婚できなんてかわいそーとか
別の方向で盛り上がってしまったので結局この電卓の謎は解明されずじまいだったんだお。
僕も、まぁみんなが面白がってくれるならそれでいいかとも思っていたけど、
やっぱり拾いもんなんて、こんなものかって妙に世の中良く出来るものだ、と感心したんだお。
ズルとか、悪いことをすると、上手くいかなくなることの方が多いものだ、と。
他の男子の喧騒に女子も気がついて、子供を産む産まないの騒ぎが大きくなり始めた時。
僕はなんとなく、"明日の日付"を入力してみたくなったんだお。
どうしてそんなことを思い至ったのかわからないけど、何か違うパターンを試してみれば、
一体この数字が何を表すのか分かるかも、なんて淡い期待でもしていたのかもしれないお。
――結果は"0000000001人"
0では無かったけれど、それでも何度か見た表示で、僕は肩を落としてしまった。
この電卓で、少なくとも夏休みまでは人気者気分を味わおうという杜撰すぎる計画がはっきりと頓挫したのを感じたんだお。
その後すぐに、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴って、
その騒ぎの余韻を残しつつ、みんな席に戻っていったお。
89
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:27:45 ID:CLGK/LaE0
――その日の夜。
僕は昼休みの出来事に落胆していたせいか、妙に疲れを感じていて、もう10時にはベッドに潜り込んでいたんだお。
そして、そのまま夢も見ずに、ぐっすりと眠ってしまった。
――ホントに急だけど、僕にはある"特殊な能力"があるんだお。
とは言っても、超能力だとか予知能力だとかではないし、手から炎が出る、みたいな厨二能力でもないお。
ネットなんかでは結構持ってるよ、って人の話を聞くんだけど、所謂"テレビが付いているのが分かる"ってやつなんだお。
……あれ? 皆さんご存知でない感じかお? ポカンとしてらっしゃるけど。
ξ゚⊿゚)ξ「いや、だって、そんなの私も分かるし」
(´・ω・`)「画面を見れば一発じゃん」
あー、違うんだお。そうじゃないんだお。
"部屋の外のテレビでも、付いてるのが分かる"んだお。
その頃うちはリビングにしかテレビが無かったんだけど、
そのリビングのテレビが付いてると、耳の奥に"サー"っていう音がするんだお。
普段はあんまり気にならないし、ぶっちゃけ意識しないとわからないくらいの些細なやつなんだけど、
寝る前の静かな時とか、特に"テレビが付く瞬間"に一際大きく感じる耳鳴りとか、そんなので分かってしまうんだお。
90
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:28:17 ID:CLGK/LaE0
その夜も、急に頭の中に、風船からゆっくり空気が抜けるみたいな音がし始めて、一階のリビングで、誰かがテレビを付けたのがわかったお。
そのせいで目が醒めてしまって、なんだか無性にトイレに行きたくなった。
もう小学五年生で、夜一人でトイレに行けないって年でもないし、
もうその頃は一人部屋だったこともあって、朝まで我慢はせずに、普通に一階のトイレに行くことにしたんだお。
たまにトーチャンの帰りが遅い日なんかは、こんな時間にひょっこり帰ってきて、ご飯だけ食べてまた出て行くなんてこともあって、
今日もまた、そんな感じでトーチャンがテレビを付けながら飯でも食べてるんだろうと、僕はそう思っていたんだお。
一階に降りて、階段脇のトイレに入ろうとすると、やっぱりリビングから灯りが漏れている。
でも、それは決してリビング本来の証明によるものではなくて、"テレビ画面だけの灯り"だと気づいたんだお。
トーチャン、こんな暗い中、電気も付けずにテレビの灯りだけで飯食ってるのかお? 僕は不思議に思ったお。
変に家族に気遣いの行き届いたトーチャンのことだったから、もしかして灯りが漏れすぎると、家族が目を醒ましてしまうとか
そういう風に思って、そんなことをしているのか?
いや、でも、夫婦の寝室も、僕の子供部屋も、二階にあるわけで、そんな気遣いは不要だ。
まだ寝ぼけた頭の中で、はっきりとしない思考が、もやもやと塊を作っていく。
酷く軽く、またおぼろげなそれに引っ張られるように、僕はフラフラとその灯りの方へ歩を進めた。
91
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:29:01 ID:CLGK/LaE0
対面式のキッチンがあって、その向こうにソファーとテーブルが見える。
その更に奥に、最近買い替えたばかりの大型液晶TVがTVラックの上に鎮座していた。
ぼんやりと光りを放つ、そのテレビ画面の左上には"D"と緑で表示されている。
いつもだったら、"2"とか"4"とかあるいは"ビデオ"なんて表示されるはずだ。
少なくとも、一度も"D"は見たことがない。
画面全体には、どこかの工場が映っていた。
手前に海があって、テトラポッドで縁取られた海岸線がその奥にある。
その上に、幾つもの管で取り囲まれた煙突が、もうもうと煙を吐き出している。
石油化学コンビナートだ。僕は反射的にそう思った。
最近小学校の社会科の授業で習ったばかりだ。
日本は地下資源に乏しいから、石油なんかは、全部海外からの輸入に頼っている。
カタールやサウジアラビアなんていう中東からの輸入が多いらしい。
そんな訳で、その石油を、更に幾つかの素材に選り分ける"精製"をするのが石油化学コンビナートという工場らしい。
基本石油は、ソレ専用のタンカーで運ばれてくるので、海岸線沿いに工場がある方が都合がいい。
その話を覚えていたから、海と工場の組み合わせで、コンビナートだと思ったんだ。
画面から感じる雰囲気は、決して明るいものじゃなかった。
セピア調というか、曇天の空の下、濁った海の上に、くすんで輝きを失った五円玉みたいな工場がその音を伸ばしている。
幾つかに分かれたそれらを、何本ものパイプが繋いでいるのが、まるで生き物の血管のように見える。
金属光沢でぬらぬらと鈍く光るソレは、たくさんの眼球がついているようだ。
吐き出される煙だけが、妙に白くて清浄な感じがして、ソレが嫌に浮いていて、嫌悪感に拍車をかけていた。
92
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:30:09 ID:CLGK/LaE0
未だ靄のかかっている頭の片隅で、何か不穏な警鐘が小さく鳴り始めたのを感じて、
僕は慌てて踵を返し、本来の目的であるトイレへと向かおうと、テレビに背を向けた。
その時。
『おおいし まさかず さん、67才。以上です』
声が、した。
警察24時なんかで、暴れる男性にモザイクがかかっているときの、あの低く加工された声。
抑揚も何もない、感情のこもっていない、それが、背後から、聞こえたんだ。
93
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:30:32 ID:CLGK/LaE0
僕は振り返る。
すると、そのテレビ画面の一番下の方から、"大石 正和"の白文字が、スーっと上に向かってスクロールしていくのが見えたんだお。
そしてやがて、一番上のところでピタッと止まって、そこから、動かなくなった。
更に、その後、その名前を追うように、もう一つの文字列が、画面下からせり上がってくる。
それは、丁度、お昼休みに見た、あの"0000000001人"の表示。
僕は、目が離せなくなっていた。
あの声が、頭の中で何度も何度もリフレインする。
粘っこい、耳障りな、人間として違和感のある、あの、加工品の声。
そして、あの"大石 正和"の文字。"0000000001人"の数列
背景の工場から立ち上って、画面外に消えていく煙。
全部が、"嫌な予感"をべったりと僕の体に塗りたくってくる。
だから僕は、それが怖くて、気持ち悪くて、動けなかった。
94
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:30:55 ID:CLGK/LaE0
――ブツンッ!
急にコンセントを引っこ抜いた時みたいな音とともに、テレビの画面が消えた。
それで僕はやっと動けるようになって、苦虫を噛み潰したように顔を顰めながら、トイレを済まして2階に上がったんだお。
そしてそのまま頭からすっぽりと布団をかぶって、眠ってしまうことにしたんだ。
95
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:31:21 ID:CLGK/LaE0
――次の日。
深夜のことは、やっぱり覚えていた。
いや、一回睡眠を挟んで脳内で情報が整理されたのか、昨日感じていた非現実感が、それらの情景から取り払われていて、
むしろ今の方がリアルに感じられてしまうくらいだった。
憂鬱も憂鬱になりながら、それでも小学生の領分として学校に行かなくてはならない。
そうだとしても、もしかしたら、級友にこの件を話せば、笑い話にでも変えてくれるかも知れない。
そうなったら儲けものじゃないか。
そんな風に自分を鼓舞しながら、その日は学校に向かったんだお。
でも、その見通しは、朝の会で早速ぶち壊された。
96
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:32:16 ID:CLGK/LaE0
その日教室に入ってきたのは、担任の女教師ではなくて、教頭先生だったんだお。
教頭が言うには、担任のお父さんが、昨日急にお亡くなりになられたので、数日間お休みを取ることになったのだと。
そして、その間教頭先生が担任を務めることになったと説明してくれたお。
クラスの全員がざわざわし始める。
それに合わせて、僕の脳内も、ザワザワと、蟲が這いずるような感覚が興る。
なんだ、この感じ。
何か、とても、とんでもない、何か、もっと、重要な――。
こめかみが酷く痛む。カーチャンがたまに、そうしているように、自分もそこを押さえながら顔を顰めて俯く。
"偏頭痛"とカーチャンは言っていたっけ。
僕は、以前、聞いたことがある。
担任の先生は、結婚している。
その話題になった時に、クラスの女子の誰かが、"結婚したら名字が変わる"なんて話をしだして、
それで、先生の、前の名字を、"旧姓"を、聞いたんだ。
それが、そう、確か――。
"大石"
ぐぼっ。
急に、胃の中から、僕が朝食べたスクランブルエッグとトーストのぐちゃぐちゃになったやつが逆流する。
口いっぱいに、臭くて酸っぱいゲロが溜まる。
ぐりんぐりんという胃の煽動が、更にその中身を押し上げようとしているのを僕に伝えてくる。
たまらず僕は口元を押さえながら、辛うじてその場で吐き散らかすことはせずに、
先生の静止を振り切って、トイレに駆け込んだ。
そして、自分でも冷静だと後で思ったんだけど、ちゃんと個室に鍵をかけて、
それから盛大に、全部、全て、何もかも、胃の内容物を便器にぶち撒けたんだお。
97
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:32:46 ID:CLGK/LaE0
すっかり吐き切ってから、僕は水道で口を濯いで、教室に戻る。
まだ朝の会は続いていて、みんなが教頭先生を質問攻めにしている最中だった。
ガラガラという扉の開く音に合わせて、全員の視線が僕に集まる。
教頭も『内藤くん、急にどうしたの?』と尋ねる。
「目にゴミが入ってしまって、痛すぎてトイレで洗ってました」
僕は戻ってくる最中に考えていた言い訳を言ってみる。
しかも、ちゃんと左目を強くこすって充血させておいたんだお。
変に便所に駆け込んだ野郎だと噂されたくはなかったんだお。
小学生にとって結構致命的なダメージになるから。
みんなその僕の真っ赤な左目に騙されて、その場は納得してくれたようだったお。
そして、席に着くと同時に、僕は教頭に、ある一つのことを訪ねたんだ。
「教頭先生、その、亡くなった先生のお父さんって、名前、まさかず、っていうんだお?」
再度、全員の視線が僕に集まる。
でも、だとしても、僕はそれを聞かねばならなかった。
聞く権利と義務があった。
98
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:33:21 ID:CLGK/LaE0
教頭は、一瞬鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして僕を見つめたけど、
すぐに元の表情に戻して、『よく、知ってるね』とだけ言った。
――やっぱりだ。
すぅ、と血の気が引いたのが分かる。
僕は『前に、先生に聞いたことがあるんですお……』と力なく返すと、それきり黙り込んだ。
その後、いつもとは違った教頭先生の授業や、あるいは担任の先生の父親が死んだという非日常感に、クラスが浮足立った雰囲気を醸している中、
僕だけは、深夜に見た、"大石 正和"と、"0000000001人"、それから、今日も僕のポケットに入っている、あの"電卓"、
それらの関係性を考え続けていたんだお。
算数の教科書に隠すように、こっそりと、ポケットから電卓を引き抜いて、机の角に置いてみる。
そして、まじまじと、観察してみる。
僕の中で、ほぼ答えだろうというものは既に見つかっていた。
つまり、"死の予言"
僕が昨日入力した"今日"の日付。
そして、表示された"0000000001人"という数列。
それから、あのテレビ。
どう考えてもテレビ放送で、あんな風に死者の名前が流れてくるのはおかしいんだ。
99
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:34:08 ID:CLGK/LaE0
だから、僕は、こう思った。
"この電卓に日付を入力すると、その日に入力者の周りで死ぬ人の人数を教えてくれる"
"相性占い"なんて目じゃなくらいに、とんでもない占いが、この電卓では可能なのだ。
この小さなボディの中で、人間の死の運命を、この電卓は計算して、そしてはじき出しているんだお。
恐怖心。それよりも強い"好奇心"
子供だったから、っていうのが免罪符になるのかおね?
僕は、もしかしたら、自分のせいで死んだかもしれない"大石正和"なる人物のことなんてすっかり忘れて、
また、明日の日付を入力してしまったんだお。
電卓は、すぐに数字を表示させる。
"0000000002人"
液晶には、そう出た。
もし、明日、僕の近くで、2人の死者が出たならば――。
変な高揚感が、僕を取り巻いていた。
100
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:34:31 ID:CLGK/LaE0
――その日の夜も、果たしてテレビは付いたんだお。
僕の知らない、二人の名前。
名字が同じだったから、多分親子なんだと思った。
そして、最後に"0000000002人"の数列。
昨日と同じだ。
この"D"のチャンネルには、死者の名前が映るのだ。
いや、まだそうと決まった訳ではないが、いずれにせよ、答えは明日出るのだ。
僕はまた、その工場の画面が何らかの力で消えるまで、画面を見つめ続けた。
101
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:35:06 ID:CLGK/LaE0
やはりというか、なんというか、事件は起こった。しかも、意外な形で。
もう時間は夕食時になっていて、僕とカーチャンは、夏だと言うのに鍋をつつきながらテレビを見ていたんだお。
僕は、今日中に、身近なところで死者が二人出るかもしれないという緊張感はとうに途切れていて、
半分以上そのことを忘れつつ、下らないバラエティを見て笑っていたんだお。
今でもそうだけど、20時台のテレビ番組と21時のテレビ番組の間に、短いニュースと天気予報がやるおね?
そこで、たった今入ったニュースということで、母子心中の事件が流れたんだお。
それは、あの有名な女優とその娘で、どうも夫の不倫が原因だとか、そんな事を言っていたと思うお。
一瞬僕は、"来たかッ!"と身構える。そこまで忘れていた、電卓とあの深夜テレビの事を急に思い出したんだお。
でも、おかしいんだお。僕でも知ってる有名女優の名前だったら、あの深夜のテレビで名前が出たら、流石に気が付くと思うんだお。
でも、昨日見た名前は、たしかに2人とも知らない名前だった。どういうことだ。
そう思いながらニュースを見続けると、その女優の名前の脇に、もう一つの名前がくっついていたんだお。
そう、女優の名前は"芸名"。本名は別だったんだお。
そして、その、本名の方は、深夜に見たあの名前と同じだった。
102
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:35:40 ID:CLGK/LaE0
ドクン、と心臓が跳ねる。
何か、とてつもなく、悪いことをしでかして、それがバレる直前のような感覚。
僕は、何か、思い違っているのではないか?
本当に、アレは、"死の予言"なのか?
むしろ、あれは"死の宣告"なのではないだろうか。
"僕が、電卓に今日の日付を入力したから"、あの女優は心中したのではないか?
だってそうじゃないか。
2日続けて、こんなにも死を間近に感じることなんて今まであったか?
母方の祖父のお葬式以来、ついぞ人の死なんて感じることも考えることも無かったのに。
この電卓を拾ってから、こんなにも、僕の周りは、いや、人の世は"死"で溢れていると、
そんな風に感じさせる出来事が続く。それはやっぱり、予言というよりも、むしろ――。
そこまで考えて、空恐ろしくなって、僕はテレビのチャンネルを変えると、
いつのまにか〆の雑炊に切り替わっていた鍋の中身をお椀によそったんだお。
103
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:36:29 ID:CLGK/LaE0
でも、その次の日も、僕は"明日の死の予言"を止められなかった。
なんか、怖かったんだお。怖くなったんだお。
急に、僕の知らないところで人が死ぬのが。
ちゃんと、事前に、誰が死ぬのか分かっていれば、本当にその情報が飛び込んできた時に、怖い思いをしなくて済むんだお。
それから、もし、その死者の名前のスクロールに、僕の知ってる人の名前が出てきたら、
何とかして、運命が変えられるんじゃないかとか――。
――ううん。違うお。嘘だお。
僕は、"僕の名前"があそこに出るんじゃないかって、怯えていたんだお。
その日の死者の名前が放送される番組を知ってしまったら、誰だってそうなると思うんだお。
そして、その名前が、本当に自分の身近な世界であの世に消える場面に出くわしたら。
僕は、気が気じゃなかったんだお。
もしかしたら、自分が入力したせいで、人が死んでいる可能性も、勿論拭い切れていなかった。
でも、それ以上に、僕は、自身の"死"が、僕の知らないところにある"天命の演算機"みたいなもので
神様の好き勝手に演算されて、ある日急に死にゆく自分の運命が怖くなったんだお。
104
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:37:00 ID:CLGK/LaE0
その日以来、凄く"死"に敏感になったんだおね。
深夜に3人の死者の名前をテレビで見る。
次の日、学校の帰り道、交番の前の"今日の交通事故 怪我2人 死者3人"の掲示を見つけてしまう。
あぁ、この"3人"が、きっと、あの死者たちなのだ、と確信する。
過去一回も気にしたことがないはずなのに、今日に限って、たまたまその掲示が目に入って、
しかもあの予言通り"3人"なんて。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、真綿で首を締めるように。
僕の周りを、渦を描くように、"死"が取り囲む。
そんな僕に、カーチャンは言うんだお。
『アンタ最近、アニメとか見なくなったね。ニュースばっかりみて、面白いの?』
そうなんだお。その頃の僕は、暇さえあれば、報道番組を見漁っていたんだお。
そして、深夜に見た名前を見つけては、無性に安心していたんだお。
今日も、ちゃんと、その人の、死を見つけてあげることが出来た、と。
まるで、答え合わせでもするみたいに。
そして、ついに、"あの日"がやってきたんだお。
105
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:37:39 ID:CLGK/LaE0
僕らの学校の終業式前日。
僕は学校から帰ると、すぐに明日の日付を電卓に入力するのが日課になっていたんだお。
その日もランドセルを勉強机に置くと、椅子に腰掛けながら、電卓を弄る。
"D"を押して、日付を入力して"="
もう指先に染み付いてしまったように、滑らかに電卓を操った。
でも、その表示を見て、僕は椅子から転げ落ちたんだお。
"00000000025人"
今までとは桁が違ったんだお。
0人の日だってあって、多いときでも3人が精々だった、僕の"死"のキャパシティを軽々と凌駕する人数。
その人数の死を、僕はどんな形であれ、明日、目にすることになる。
「――っひ、ひひっ……」
乾いた笑いが口の端から漏れる。勿論可笑しくて笑っているんじゃない。
怖くて、怖くて、怖くて。
そんな状況から逃避するために、一時的に思考を放り出しただけに過ぎない。
106
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:38:31 ID:CLGK/LaE0
何が起これば、一日で25人も身近で死ぬことがある。
バスの事故? テロ? 大地震?
分からない。そんなこと一度も経験したことも、ニュースで見たことも無いから分からない。
いや、見たこと無いんじゃない。"気にしたことがない"んだ。
大地震が起こると何人死ぬのか。飛行機事故が起こると何人死ぬのか。
そういうのは、どこか遠くのことであって、自分には関係ないことだと、高をくくっていたんだ。
『どこかの国で戦争がありました。でも日本人の死者は0人です。ひゃっほい』
それが、僕の周りの"死の世界"であって、だから、僕は、こんなことに頭を悩ませては来なかったんだ。
でも、そうじゃない。毎日人が死んで、生まれて、また死んで。
この拝成だけで、一日何人死んでるのかだって知らないんだ。
しかし今は違う。取り巻かれている。閉じ込められている。
生臭いドブの底に淀だ泥濘のように、僕の足をずぶずぶと沈めていく。
やがてそこに誰しもが飲み込まれていくことを直視させてくる。
たったの25人。その死を、今この瞬間、僕は一人で背負い込んでいるんだ。
今この時点で、それを知っているのは、僕だけなんだ。
だから、こんなにも、重い。
僕は、祈らずにはいられなかった。
その25人が、出来るだけ遠くで死にますように。
僕がその25人に入っていませんように。
でも、そんなもの、神様は演算の考慮に露ほども入れてくれなかったんだお。
107
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:39:12 ID:CLGK/LaE0
――深夜。
あの、工場の背景の上を、25人の名前が滑っていく。
僕はその場にへたり込まずにはいられなかった。
叫びださなかっただけでも、褒めてほしい。
抑揚の無い、加工された低い声が、僕の、"僕ら"の名前を読み上げる。
"僕のクラス、5年1組の2/3"
それが、明日の死者達だったんだお。
――嘘だ。
108
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:40:20 ID:CLGK/LaE0
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109
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:41:05 ID:CLGK/LaE0
――ブツンッ!
テレビが消えた瞬間、僕は2階に駆け上がった。
自分の部屋に飛び込むと、あの電卓を取り出す。
そして、"D"の後に、すぐに"今日の日付"を入力した。
結果、"0000000025人"
何度も、何度も、それを繰り返す。
狂ったように、がちゃがちゃと、その表示が変わるまで、何度も、何度も。
でも、運命は変わらない。死は変わってくれない。
電卓は、常に、僕の知らない数式で、今日の死を、淡々と、僕に、告げてくる。
怒り、なのだろうか、悲しみ、なのだろうか、恐怖、なのだろうか。
それのどれでもあって、どれでもないような、感情がこみ上げては、すぐに消えていく。
そして、また新しい、名状できない種類の感情が湧き上がって、消える。
液晶の表示のように、浮かんでは、消えていく。
「――ハァ――ッ!! ――ハァ――ッ!!」
人間のものよりも、もっと獣に近い息遣いが、僕の喉の奥から漏れる。
自身の人間を人間たらしむる"外側"の部分が剥がれ落ちて、
醜くも生に執着せずにはいられない、生き物としての"性《サガ》"が剥き出しになってるんだお。
110
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:41:43 ID:CLGK/LaE0
何度目かの入力の時、ついに、張り詰めていた緊張の糸が、ぷつんと切れるのを確かに感じた。
決して叫び声は挙げないまま、ただ鼻息だけを荒くして、
僕はその電卓を床に叩きつけて、足でグリグリと踏みつけた。
その、神に因って管理された"死"を演算して僕に伝えてくるそれに、ありったけの感情の発露をぶつけたんだお。
『――数字を、移動させます。日付を、入力してください』
不意に、あのテレビの、モザイクがかかっている犯罪者のような声が響いた。
それは電卓から聞こえた気もするし、部屋の隅から聞こえた気もするし、僕の頭の中に聞こえた気もする。
足を、ゆっくりと、電卓から退ける。
そして、小さな電卓を、げに恐ろしく、汚らしいモノのように指で摘むと、液晶を見た。
窓から入ってくる月明かりに照らされた、そこには、何も表示されていない。
さっきまで確かに"0000000025人"と表示されていたのに。
"数字を、移動させます"
確かに、あの声はそう言っていた。
数字っていうのは、あの死者の人数のことか?
その後の日付っていうのは、つまり、"別の日に、この死者の人数を移し替えることが出来る"ってことなのか?
分からない。
でも、それ以上に、僕は縋るものなんて何も無かったんだお。
111
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:42:31 ID:CLGK/LaE0
僕は考える。
いつに移すのか良いのか。
明日の死を、明後日にしても、意味がない。
その次の日も、次の日も、いつか来る、その死者の宣告の日に怯えて暮らさなくちゃいけない。
だったら、いつが――。
そうだ、"過去"だ。
"過去"であれば、その"死"が僕らに追いつくことは永遠に無い。
だったら、それが一番いいのだ。
僕は、過去の西暦と日付を入力し、"="を押す。
すると、"00000000567人"と表示される。
お、多い。多すぎる。
僕がたまたま選んだ日に、そんなにも死者が出たのだろうか。
いや、昔の日本は、一日にそれくらい死んだのかもしれない。
ともかく、コレで、もう一度"今日の日付"を入力して、その後の表示が"0000000000人"になっていれば、
僕らは、その死の運命を、過去に押し付ける事が出来たということになるのだろうか。
もう一度電卓を取り直すと、震える指先で今日の日付を入力する。
死にたくない、死にたくない。そればっかりが頭の中で翻った。
112
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:43:05 ID:CLGK/LaE0
――果たして、数字は"0000000000人"になっていたんだお。
へなへな、と僕はベッドに倒れ込んだ。
助かった。
ベッドに押し付けた瞼の下から、涙が込み上げてくる。
でも、それでも、生きているって言う実感が、自分の中に宿る感覚は、悪いものではなかったんだ。
僕は、過去の何処かに、今日の死を押し付けて。
それこそ本当の死神のように振る舞って。
それでも自分が死ななくて済むことに、明日誰の死も見つめなくて済むことに、
酷く、酷く安堵していたんだお。
次の日、僕らの小学校の近くで、体中に刃物を巻き付きた男が、
側溝に足を取られて、ひっくり返って気絶しているのが発見されたらしいお。
そのまま警察に逮捕されて自供した話によると、そのまま僕らの小学校に乗り込んで、大量虐殺するつもりだったのだと。
113
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:43:50 ID:CLGK/LaE0
――その日から、僕は過去に"死"を押し付けることにした。
僕の周りでは、誰も死ななくなったんだお。
だれも、傷つかない、素敵で、穏やかな日々。
それがどこまでも続いていく。
まるで、神にでもなったような高揚感。
最初に僕が"死"を移動させた、過去の日付に、僕は死を溜め込んだ。
他の日にしなかったのは、多分、その数字が最初から大きかったからだと思う。
木を隠すなら、森の中。
"死"を隠すなら、大量の死者の中だと、そう思ったんだお。
だから、気が付かなかったんだお。
僕が数字を移動させる以上に、その数値が加速度的に膨れ上がっていることに。
114
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:44:19 ID:CLGK/LaE0
やがて夏休みが来て、8月に入った。
ニュースですら、誰々が死んだなんて報道をやらなくなった。
いや、正しくは"僕の知る限りでは"やらなくなった、のだと思う。
でも、その日のニュース番組だけは、いつもと違っていたんだお。
テレビでは、となりの市である、美府市の公園広場が映し出されていて、
大勢の喪服の人が、ハンカチで目頭を押さえながら、日本の総理大臣の話を聞いていたんだ。
戦後云々年を記念した催し物だと思うのだか、この日に、しかも美府でなんて聞いたことが無い。
毎年こんなのやってたっけ? でも、こんなもの見たことが――。
いや、ある。
これと似たものを、何度か、この時期に――。
115
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:47:16 ID:CLGK/LaE0
『日本は、"三度"――』
『世界で唯一の――』
『戦争の悲痛さを後世に――』
『平和への願いを――』
『哀悼の意を示すと共に――』
『この惨禍を語り継ぐ――』
『数十万人とも言われる――』
『恒久平和の実現に向けて――』
116
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:48:14 ID:CLGK/LaE0
夏休み特有の遅めの食卓に、総理のスピーチが響く。
テレビから、何か、僕の知らない事が、流れ出てくる。
"1945年8月12日"
僕が、半年間、"死"を押し付け続けた日。
その日に、何が、起こったっていうんだ。
僕は、そんなの、知らない。
僕は、そんなこと、望んでない。
僕が、押していた、電卓の、ボタンは、一体、どこに、繋がっていたのか。
僕が移動させた"死"は、何を、誰を、何人を、殺したのか。
目眩がする。
耳鳴りがする。
寒気が、震えが、こめかみの痛みが。
心臓の鼓動が、体の熱が。
117
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:48:41 ID:CLGK/LaE0
『原子爆弾の犠牲となられた方々のご冥福と、ご遺族、被爆者の皆様、並びに、参列者、美府市民の皆様のご平安を祈念いたしまして――』
【管理社会の演算機《ディストピア・カリキュレーター》 了】
118
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:49:19 ID:CLGK/LaE0
【幕間】
( ^ω^)「どうだおん?」
ξ゚⊿゚)ξ「ってことは、元々ブーンの中では、"ヒロシマ"と"ナガサキ"の2回だったってこと?」
( ^ω^)「小5の夏までは、確かにそうだったんだお」
(´・ω・`)「うーん、なんて言っていいのか……」
('A`) 「教科書とか、歴史の本とかはどうなんだよ」
( ^ω^)「全部、書き換わってたお」
川 ゚ -゚)「その電卓はどうしたんだ」
( ^ω^)「その日を境に、消えてしまったんだお」
('A`) 「これがホントなら、お前とんでもねぇことやらかしたが」
(´・ω・`)「僕が覚えてる限りで、10万人だけど、美府での、熱波とその後の被爆症で死んだ人数」
( ^ω^)「やっちゃったぜ!」
ξ゚⊿゚)ξ「もう滅茶苦茶だわね。なんかアンタの話ホント頭おかしくなりそう」
('A`) 「何が得意なジャンルは"SF《すこしふしぎ》"だ。《すごくふきんしん》に変えろ変えろ」
( ^ω^)「辛辣ぅ〜」
119
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 01:49:42 ID:CLGK/LaE0
川 ゚ -゚)「もう、次いっていいか?」
ξ゚⊿゚)ξ「なんか、ちょっとへこんだわね。なんだろ、後味悪いとも違って、嫌な話だったわ」
( ^ω^)「あとこんなのが10個ぐらいあるから、よろしくな!」
('A`) 「ショボと違ったベクトルで、ぶちころがしたい」
(´^ω^`)「ワォッ! 思わぬ飛び火なんですけどォ〜」
川 ゚ -゚)「底抜けに明るいな」
ξ゚⊿゚)ξ「次の"題"は
>>130
にするわよ」
('A`) 「よっし、俺が行こう!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「空気変えてねっ!」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、次の"解"を求めましょう」
120
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 02:37:05 ID:Y50UJvVc0
乙
後味悪いな…でも面白かった
121
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 02:55:07 ID:gaqRdRTw0
おつ
移動した事で歴史まで変わってしまったのか
122
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 07:26:34 ID:jfsRZYIc0
うひー…
乙!
123
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 08:05:34 ID:ddqoZACk0
SCPにありそうで大好きだわこういう話
124
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 11:08:36 ID:7KF6nnTk0
乙!
125
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 15:12:27 ID:sg2P306k0
乙
Ksk
126
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 15:19:28 ID:B0TO0aoM0
実話として進んでいくのに淡々とした恐怖を感じる
最後まで行ったらどれほどになるか
127
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 15:36:41 ID:DY3NQNj20
過去に死を押し付けたとして、余波でその子孫が『いなかったこと』になったりしてないかな?、
128
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 15:43:13 ID:QsIGGmJk0
緩やかに現実改変されてるからそうなってるだろうね
この電卓SCPみてぇだな
129
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 15:53:56 ID:ASnPrIms0
すごくふきんしんのおかげでちょっと笑えた
130
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 15:54:54 ID:CwFjkgf60
すこしふきんしんワロタ
知らないところで取り替えしのつかない事になってたみたいなのいいね…
安価なら
「家族」
131
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 15:57:07 ID:gaqRdRTw0
遠い遥か未来とかに移動できていたら、どれくらいの規模の結果になっていたのだろうな?
まあ何百年も先の未来にしちゃうと、ブーンは結果をたぶん見れないだろうからお話としては成り立たないが
132
:
名無しさん
:2017/08/11(金) 15:57:27 ID:/CXa3.h60
妹の話といいブーンの厄ネタは改変系か
一番やべーやつだ
133
:
名無しさん
:2017/08/12(土) 03:07:31 ID:RxA6vmcY0
goodだぜ!
乙も良いがたまには洋食もいいかと思ったのでどうぞ
134
:
名無しさん
:2017/08/12(土) 22:09:59 ID:I7LLTy660
都市伝説のアレンジいいね!
135
:
名無しさん
:2017/09/05(火) 13:00:12 ID:O.yruJOM0
今一番更新が楽しみ
待ちきれない!
136
:
名無しさん
:2017/09/23(土) 15:27:11 ID:YRJRR/i.0
夏も終わるが待ってるぜ
137
:
名無しさん
:2017/09/24(日) 12:04:30 ID:S3J9LBIs0
こっちの更新も待ち遠しい
138
:
名無しさん
:2017/09/27(水) 21:59:25 ID:hcs96Jx60
一気読みしてしまった
めっちゃ続きがきになるわ
139
:
名無しさん
:2017/10/09(月) 19:49:29 ID:OzE5/6EI0
∧_∧_∧
___(・∀・≡;・∀・) ドキドキドキ
\_/(つ/と ) _
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
|  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:| :|
| .|/
_∧_∧_∧_
☆ パリン 〃 ∧_∧ |
ヽ _, _\(・∀・ ) < 新作マ
\乂/⊂ ⊂ ) _ |_ _ _ __
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/| . ∨ ∨ ∨
|  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:| :|
| .|/
_ ___
\>,\/
<⌒/ヽ-、_ _
<_/____ノ
140
:
名無しさん
:2017/11/10(金) 17:55:53 ID:N8YxQWE.0
murder?
141
:
名無しさん
:2017/11/11(土) 18:47:45 ID:VRcL9El20
license?
142
:
名無しさん
:2017/11/11(土) 22:24:08 ID:7ExclDno0
100個は無理やろこれ
143
:
名無しさん
:2017/12/20(水) 21:06:37 ID:B2XjgW4I0
やめんなら端からやんなよ
144
:
名無しさん
:2017/12/20(水) 23:14:56 ID:PVcpUXFg0
気長に待とうや
145
:
名無しさん
:2018/03/15(木) 07:55:42 ID:N1weQZ5g0
kasu
146
:
名無しさん
:2018/04/02(月) 02:36:26 ID:3Ie8Tv8M0
sine
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