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ξ゚⊿゚)ξし×××のようです(^ω^ )
1
:
名無しさん
:2017/05/09(火) 18:57:13 ID:DCeU8sjA0
ミセ;゚ー゚)リ「ね、ニュース見た!? またあの殺人鬼が出たってさ!」
ξ゚⊿゚)ξ「殺人鬼?」
(゚、゚トソン「綺麗な女性だけを狙うというあの連続殺人犯ですか?」
ミセ;゚д゚)リ「そう! もうほんっと怖くない!? 可愛いミセリちゃんがいつ狙われるか心配で心配で!」
(゚、゚トソン「ワロス」
ミセ;゚д゚)リ「傷つくからその反応やめて!」
354
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:56:31 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ「ギコくん!」
考えるよりも先に足は動いていた。空虚な瞳がゆっくりと、私の姿を捉える。
(,,゚Д゚)「……津出? 外に出るなって大学からメールあったろ。何してんだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ギコくんこそ」
(,,゚Д゚)「それもそうだな」
はは、とギコくんが小さく笑った。
いつも通りに振る舞おうとしているようだが、全身に覇気が感じられない。
放っておいたら今にも消えて無くなってしまいそうなほど、彼の姿は頼りないものだった。
ξ;゚⊿゚)ξ「……あの、さ。しぃさんのこと……」
(,, Д )「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「だ、大丈夫かなって……ギコくん……」
(,, Д )「……しぃのこと、守ってやれなかった」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
(,, Д )「……しぃ、もしかしたら俺のこと呼んだんじゃないかって」
(,, Д )「……俺に、助けを求めてたんじゃないかって、ずっと、考えてて……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……し、仕方ないわよ……。しぃさんと一緒にいたわけじゃなかったんでしょ?」
(,, Д )「……ああ。一緒にいれば良かったんだ。俺の家にでも呼んでいればこんなことには……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……っ」
355
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:58:32 ID:UaKIE5qo0
きっと、何を言っても彼を追い詰める言葉にしかならない。
次の言葉を紡げず、口を閉ざして地面に視線を落としてしまう。
結局のところ、無駄なのだ。
自分のことしか考えず、自分の為にここまで来た。そんな自分の言葉など、誰の心にも響かない。
こんな身勝手な私だから、アイツは私を見放したのではないだろうか。
(,, Д )「……津出」
ξ;゚⊿゚)ξ「え?」
急に名前を呼ばれて顔を上げる。
そこで初めて自分が視線だけでなく頭も垂れていたことに気がついた。
356
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:00:14 ID:UaKIE5qo0
(,, Д )「……俺の家、すぐ近くだから茶でも飲んでいかないか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「わ、悪いわよそんなの……」
(,, Д )「……茶ってのは建前だよ。津出さえ良かったら……」
(,, Д )「俺の泣きごとに、少しだけ付き合ってくれないか?」
ξ゚⊿゚)ξ「……!」
コクリと頷き、無言で踵を返す彼の背中を追う。
ギコくんは私よりも20センチは背が高い。歩幅だって私とは差があるはずだ。
しかし、彼の歩く速度は私でもすぐに追い越してしまえそうなほど小さい。
それは、私に気を遣っているわけではないとはっきり分かる。
何も喋らない彼に私も話しかけない。ただ足音が響くのみだ。
背を向けた彼がどんな顔をしているのか分からない。
357
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:01:47 ID:UaKIE5qo0
(,, Д )「……ここだ」
アパートの一室の前で足を止め、彼はゆっくり振り返る。
髪が顔に影を落とし、表情は窺えない。ただ、明るい顔をしていないことだけは明らかだ。
弱々しく鍵を差し、ドアノブを回す。
キィ、と小さくドアが鳴る。
(,, Д )「上がってくれ」
ξ;゚⊿゚)ξ「お、おじゃまします……」
しぃさんが何度も訪れたであろう部屋。
ギコくんと二人きりになることを今更ながら申し訳なく思う。
しかし、自分は彼の話に付き合うためにここに来たのだ。
身勝手な自分が二人にできる唯一の罪滅ぼしはきっとこれしかない。
偽善でも、自己満足でも。
これが私にできる最善のことなのだろう。
(,, Д )「適当なところに座っててくれ」
ξ;゚⊿゚)ξ「ええ」
ガチャリ、と鍵をかける音がやけに響いた気がした。
.
358
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:03:10 ID:UaKIE5qo0
(,, Д )「今、茶を淹れてくるから……」
ふらふらとギコくんがキッチンへ向かっていく。
その背中を見送りながら桃色のクッションに座る。
青色の家具が多いこの部屋では浮いた存在のクッションだ。
ξ゚⊿゚)ξ(……これは、きっとしぃさんの為の……)
予想を裏付けるかのように、すぐ近くに置かれた同じデザインの青いクッションが目に入る。
私が座っていいものではない。そう感じ、別のところに座ろうと立ち上がる。
その時、キッチンに通じるドアが開き、ギコの姿が現れた。
.
359
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:04:12 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……え」
彼は、先程までの無気力な歩き方とは打って変わって、しっかりとした足取りで近づいてくる。
その手の中にお茶はない。
代わりに、お茶ではない何かがある。
右手にしっかりと握られたそれは、照明を鈍く照り返す、包丁だ。
.
360
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:05:08 ID:UaKIE5qo0
(,,゚Д゚)「俺さあ」
なんてことない世間話を始めるかのように、いつもと変わらない口調でギコは話し始めた。
(,,゚Д゚)「ずっと、誰かを殺してみたいって思ってたんだよ」
(,,゚Д゚)「きっかけなんて覚えてない。それくらい昔から、当たり前のようにそんな気持ちがあったんだ」
表情を変えず、淡々と喋りながら距離が縮まっていく。
包丁は、立ち上がったまま動けない私に向けられている。
361
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:06:59 ID:UaKIE5qo0
(,,゚Д゚)「とは言っても、殺人なんて罪に問われるし、世間から肯定されるものではない。
それくらいのこと、当然分かっている」
(,,゚Д゚)「だからさ、あの殺人鬼が話題になった時、羨ましかったよ。同時に妬ましかった。
俺ができずにいることを、容易く何度も繰り返せるような奴がいるんだって」
そういえば、飲み会をした時に羨ましいだとか、言っていた。
あれは、心の底からの言葉だったのだと、妙に冷静な頭が判断する。
(,,゚Д゚)「しぃたちと飲んだ時あったろ?
あの時、西川さんに『諦める必要はない』って言われて、何となく背中を押された気分になったんだ」
(,,゚Д゚)「だから、しぃを殺した」
ξ;゚⊿゚)ξ「……!!」
ギコが包丁を手に現れた時から察しはついていた。
しぃさんを殺したのはアイツではなく、この男なのだと。
それでも、ギコの自白に少なからず動揺した。
362
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:09:04 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ「なん……で……しぃさんを……」
(,,゚Д゚)「都合が良かったんだよ、単純に」
ξ;゚⊿゚)ξ「……つ、ごう?」
(,,゚Д゚)「警戒されず家に上がれるし、それにしぃって美人だろう?
だからあの殺人鬼の仕業ってことにできると思ってな」
ξ;゚⊿゚)ξ「そんな理由で……!」
(,,゚Д゚)「ああ、それともう一つ。
俺、しぃの表情が好きって言っただろ?
どんな顔で俺に殺されるのか興味があったんだ」
ギコは無表情を保ったままだ。
にも関わらずその鉄仮面から、包丁の鋭い切っ先から、殺意が隠しきれていない。
違う。
隠すつもりなど毛頭無いだけだ。
363
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:11:10 ID:UaKIE5qo0
(,,゚Д゚)「しぃを殺して思ったんだ」
(,,゚Д゚)「絶望と恐怖に染まったしぃの顔を見て、動かなくなるまで包丁を刺し続けて、これだって思った」
(,,゚Д゚)「これこそが、ずっと俺が求めていたものだって」
(,,゚Д゚)「で、思いついたんだ。俺があの殺人鬼に成り代わろうって」
ξ;゚⊿゚)ξ「なに、いって……」
(,,゚Д゚)「綺麗な女を惨殺すれば、世間はあの殺人鬼の仕業だと思ってくれる。
あの殺人鬼を隠れ蓑にして俺は暴れ放題って算段だ」
気づくとギコはすぐ目の前まで迫っていた。
(,,゚Д゚)「包丁で刺して、切り落として、裂いて」
(,,゚Д゚)「美しかった顔が歪んで、血に染まって、最後にはただの肉塊に成り果てる」
(,,゚Д゚)「人を殺すって、すげえなあ。病みつきになるよ」
そこで初めてギコは笑った。
端正な顔立ちからは想像もできないほど、醜悪な笑顔。
(,,゚Д゚)「悪いなあ、津出。別にお前に恨みはないんだけどな」
笑った顔は私の方を向いている。そして、包丁も。
──殺される。
.
364
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:12:42 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ(……い、いやだ……)
ξ; ⊿ )ξ(死にたく、ない──!)
.
365
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:14:03 ID:UaKIE5qo0
嫌だ、嫌だ、殺されたくない。死にたくない。早く、早く逃げなくちゃ。
頭の中は警鐘と共に自分の声が反響する。
ξ;⊿;)ξ「……っや……いや……」
しかし、身体は麻痺してしまったかのように少しも動かない。
動け、逃げろ、と脳は騒ぎ立てるのに筋肉は沈黙を保ったままだ。
ただ視線だけが迫り来る包丁を追い続ける。
ξ; ⊿ )ξ「……っ」
喉元に包丁の切っ先が触れる。包丁の冷たさが全身に伝導したかと思うほど、急速に身体が冷えていった。
叫びたいのに、声を搾り出すことすらできない。
もうダメだ。
諦念から目を伏せる。目尻に溜まっていた涙が、頰を伝っていく。
その感触は、首に触れる包丁よりも冷たく感じられた。
ξ ⊿ )ξ(……せめて)
ξ ⊿ )ξ(せめて、アイツに殺されたかったな……)
.
366
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:14:48 ID:UaKIE5qo0
バキィッ、と。
鍵の壊れる音が部屋に響いた。
.
367
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:17:29 ID:UaKIE5qo0
ξ;⊿;)ξ「え……」
(;,゚Д゚)「な、なんだ!? 誰だ!?」
ギィ、とドアが開く鈍い音。土足のままの足音がゆっくりと近づいてきた。
( ω )「喉から狙うだなんて、センスが無いおねぇ。
そんなんで僕を騙ろうだなんて、おこがましいにも程があるお」
その男は、いつものように飄々と、いつものように貼り付いたニヤけ顔で、一歩一歩距離を詰める。
( ω )「先に喉を潰してしまったらさぁ、悲鳴が聞こえなくなっちゃうお?」
男は、ギコのすぐ背後に立つ。肩越しに見える表情は、笑っているけど笑っていない。
( ω )「耳が裂けるような悲鳴が、痛みに悶え苦しむ顔こそが、醍醐味じゃないかお」
( ^ω^)「ねえ?」
細い目が薄く見開く。
直後、男はギコの右手を素早くひねり、ギコの手から包丁が滑る。包丁は真っ直ぐ床に落ちた。
男は横たわる包丁を即座に蹴り飛ばす。包丁は壁にぶつかり乱暴に音が鳴った。
368
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:19:00 ID:UaKIE5qo0
(;,゚Д゚)「お、お前は……!」
( ^ω^)「ツンさん、平気かお」
ξ;⊿;)ξ「あ……うあ……」
( ^ω^)「何言ってるか全然分かんないお」
久しぶりに見たニヤけ顔にひどく安堵し、温かい涙が後から後から流れ出す。
( ^ω^)「ま、話は後だお。それより先に……」
こいつの処理だお。
ギコに視線を送り、底冷えするような低い声でそう言い放つ。
思わず、私まで竦んでしまうほどに冷めきった声色だった。
369
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:20:31 ID:UaKIE5qo0
(;,゚Д゚)「お前、もしかして、あの……!」
( ^ω^)「もしかしなくても、あのカリスマ殺人鬼だお」
(;,゚Д゚)「な、なんで、ここに……」
( ^ω^)「なんでって……僕の獲物に手を出されそうになったら、そりゃ来るお」
( ^ω^)「あのね、僕ね、自分の獲物に手を出されたことにね、とってもとっても怒ってるんだよねぇ〜」
( ^ω^)「こう見えて僕ブチギレてるからね〜。なんで僕より先にツンさん殺そうとしてるのかな〜?」
( ^ω^)「ねぇ、誰の許可取ったんだお? ねぇねぇねぇ。ねぇ?」
ギコが口を挟む間もなく、男はまくし立てる。
ギコは男の様子に圧倒され、立ち尽くしたままだ。
( ^ω^)「あーあ、男を殺してもなーんにも面白くないんだけどなー」
男は不気味なほどニッコリと笑い、やれやれとでも言いたげなポーズを取る。
( ^ω^)っ=lニニフ「まあでも、仕方ないか」
(;,゚Д゚)「っ……!」
370
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:22:29 ID:UaKIE5qo0
気づいた時には既に、男は包丁を手にしていた。
男は鞄を持っていないので、服の中に仕込んでいたものと思われる。
ギコの目は、男の持つ包丁に釘付けだ。
呼吸は荒く、目は大きく見開き、身体は小刻みに震えている。
もはや、声すら出せないほどに怯えきった姿は、まるで先程までの自分のようだった。
( ^ω^)っ=lニニフ「情けないお。ツンさんに包丁を突きつけておいて、自分に突きつけられたら怯えるだなんてね」
呆れた顔で男はため息をつく。
包丁を握る手は少しも震えていない。
鋭利なそれをギコに突き立てることに少しも躊躇がないことは明白だ。
証明するかのように男は笑顔で、
その表情に似合わない地を這うような声で、言葉を放つ。
( ^ω^)っ=lニニフ「どうせなら、君のセンス無い殺し方で殺してあげようか」
空いた手でギコの首の後ろを乱暴にわしづかむ。
恐怖に染まるギコの顔には目もくれず、ギコの喉仏に包丁を振り下ろした。
ξ;゚⊿゚)ξ「やめなさい!!」
.
371
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:24:05 ID:UaKIE5qo0
考えるよりも先に、口が動いていた。
包丁の先は、ギコの喉仏に突き刺さる寸前で止まっている。あとほんの一秒でも遅かったら、と考えるとゾッとした。
( ^ω^)っ=lニニフ「……なに自分を殺そうとした男を庇ってんだお。さっさと殺すから待っててくれお」
ξ;゚⊿゚)ξ「ダメよ! やめて!」
( ^ω^)っ=lニニフ「うるせえお」
ξ#゚⊿゚)ξ「やめなさい! 内藤!!」
( ^ω^)っ=lニニフ「……」
腹から声を出す私を見て、内藤の目からようやく殺気が薄れた。
私を見つめる内藤に言葉を続ける。
ξ;゚⊿゚)ξ「……自分が殺されそうになったとはいえ、知ってる人が殺されるのは後味が悪いわ……」
( ^ω^)っ=lニニフ「……ほんっと、君は甘ったれだおね」
ξ;゚⊿゚)ξ「逃がしてあげて」
( ^ω^)「……はあ、仕方ないおね。羽生ギコくん、よーく聞くお」
(;,゚Д゚)「……」
内藤はようやく包丁を持つ右手を下ろす。ギコの首を掴む左手はそのままに、淡々と喋り始めた。
372
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:27:00 ID:UaKIE5qo0
( ^ω^)「ツンさんに免じて殺さないでおいてやるお。ただし、警察に自首すること」
(;,゚Д゚)「じ、自首……」
( ^ω^)「そう。僕が猫田しぃさんを殺しましたって、ちゃんと警察に言うんだお?」
(;,゚Д゚)「……」
( ^ω^)「言っておくけど自首するふりして逃げても無駄だお。どこに逃げようと僕が殺しに行く」
( ^ω^)っ=lニニフ「見逃してあげるのは今だけだお」
(;,゚Д゚)「……は、はい……」
( ^ω^)「ほら、さっさと行く」
内藤に促され、ギコは震えながら玄関に向かって歩き出す。
内藤はギコの後ろ姿を一瞥し、興味を失ったように視線を外した。
力が抜け、足元にしゃがみ込む。
随分長いこと呼吸をしてなかったような錯覚がする。
膝に両腕を乗せ、居眠りをするかのように顔を伏せた。
そのまま息を吸って、吐いて。また吸って、吐く。
ξ;-⊿-)ξ(……ようやく終わった、のね)
もう一度息を吸って吐き、ゆっくりと顔を上げる。
直後、内藤の後ろに見えた光景に思わず目を見開いた。
ギコは、内藤が蹴り飛ばした包丁を拾い、血走った目を内藤の背中へと向けている。
.
373
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:28:37 ID:UaKIE5qo0
危ない、と思った時にはもう、ギコは内藤の背中に駆け出していた。
内藤は私の方を向いたままだ。
(#,,゚Д゚)「死ね!!」
世界がゆっくりと動いて見える。包丁が、スローモーションで内藤の背中に迫っていく。
目が追いかけるだけで、喉からは声が出ない。ギコに包丁を突きつけられた時と全く同じだ。
思わず目をギュッと閉じる。
今度は諦めではなく、恐怖から視界を閉ざした。
自分が殺されるのと同じくらい、これから目にするであろう光景は恐ろしいものだった。
374
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:29:45 ID:UaKIE5qo0
どれほど時間が経ったか分からない。
きっと、ほんの数秒程度の時間しか経っていないはずだ。
しかし、体感では何分、何十分も時間が経ったような気がする。
恐る恐る、目を開けた。
眼前の光景から時間は数秒しか経っていなかったことを察する。
内藤はギコの方を向き、包丁を握ったままのギコの右手首を掴み上げていた。
.
375
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:31:07 ID:UaKIE5qo0
( ^ω^)「愚かだおね。言ったじゃないかお、見逃してあげるのは今だけだって」
(;,゚Д゚)「……」
( ^ω^)「あ、もしかして見逃されたくなかったの?
だからあんな小物丸出しの台詞を吐きながら刃向かってきたんだおね」
(;,゚Д゚)「ち、ちが……」
( ^ω^)っ=lニニフ「分かった分かった。今、殺してあげ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「だ、だめ!!!」
( ^ω^)「……まだそんなこと言うのかお?
こいつはチャンスを捨てて殺しにかかってきたんだお。
これ以上の慈悲なんか与える必要ないお」
ξ;゚⊿゚)ξ「でも……」
( ^ω^)「……ツンさん、甘ったれが行き過ぎてるお。そこまでして庇う必要があるのかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「庇うっていうか……」
ギコを庇いたいわけではない。
たしかに、目の前で知り合いが殺されるのは嫌だし、目の前でなくとも胸糞悪い。
しかし、自分が戸惑っている理由はもっと別のところにある。
もっと自分勝手な私らしい答えがある気がするが、上手く気持ちがまとまらない。
ξ;゚⊿゚)ξ「と、とにかく、だめ……」
結局、内藤を見上げながら懇願することしかできない。
376
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:32:56 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「……」
静寂の中、見つめ合う。
私も内藤も、互いから目を逸らさない。
やがて、内藤は諦めたように息を吐き捨てた。
( ^ω^)「あーもう、分かった分かった。分かったから」
内藤はギコへと視線を戻し、未だギコの右手にある包丁を奪い取った。
自然な動きでギコの首筋へと包丁を這わせる。ヒィッ、とギコの喉から細い声が鳴った。
内藤は薄く目を見開いて、ゆっくりと話し始めた。
( ^ω^)っ=lニニフ「これが最終警告だお、ギコくん」
( ^ω^)っ=lニニフ「ここで僕に殺されるか、警察に行くか。さっさと選ぶお」
(;,゚Д゚)「……」
( ^ω^)っ=lニニフ「早く」
(;,゚Д゚)「……自首、します」
ギコが震える唇で小さく告げると、内藤は包丁を下ろした。視線だけはギコに刺したまま。
震え、あちこちにつまづきながら今度こそギコは玄関へと向かっていく。
やがて、鍵の壊れたドアが開き、閉まる音が聞こえてきた。
ようやく、本当に息をつくことができた。
.
377
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:36:27 ID:UaKIE5qo0
( ^ω^)「ツンさーん、平気かおー?」
くるりと振り向き、内藤は桃色のクッションにどかりと腰を下ろす。
座るついでに青いクッションを掴み、背後にポイっと投げた。
ξ;゚⊿゚)ξ「……なんとか。ねぇ、なんでここが分かったの?」
( ^ω^)「飲み会した時なーんかギコくん怪しいと思ったから、あらかじめ住所は調べておいたんだお」
( ^ω^)「しぃさんのニュースを見て、ツンさんの家に行ったんだけどいなかったから、もしかしたらここかなって」
ξ;゚⊿゚)ξ「……あ、来てたんだ」
( ^ω^)「多分入れ違いになったんだおね」
ξ;゚⊿゚)ξ「じゃあ、また鍵壊したの?」
( ^ω^)「もちろん!」
ξ;゚⊿゚)ξ「うわ、無駄にいい返事……」
( ^ω^)「怒らないのかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……怒らないわよ」
( ^ω^)「珍しいおね」
ξ;゚⊿゚)ξ「正直、壊されるのを望んでたとこあったし……」
( ^ω^)「え……この人やば……」
ξ;゚⊿゚)ξ「アンタにだけは言われたくないわよ……」
憎まれ口を叩きながら、たしかに異常な発言だったと先程の自分の言葉を思い返す。
そして、ギコを殺すことをあんなにも必死で拒んだ理由に、今更気がついた。
私以外の人間を殺してほしくない。
その言葉は、なんとなく癪なので口にしないことにした。
378
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:38:16 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……ねぇ、なんでしばらく来なかったの?」
( ^ω^)「しぃさんについて調べてたんだお。母と似てることが気になってたから」
ξ;゚⊿゚)ξ「結局アンタとしぃさんはなんなの? 兄妹なの?」
( ^ω^)「異父兄妹で間違いないお」
ξ;゚⊿゚)ξ「お母さんが不倫してた……ってこと?」
( ^ω^)「だろうおね。小さい頃、母が家にいない時期があったんだお。
多分その時にしぃさんを産んだんじゃないかお」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「それ以外にもちょくちょく不倫はしてたみたいだお。家にはいたし、しぃさん以降出産はしてないんだと思うけど」
ξ;゚⊿゚)ξ「……お父さんは気付いていたのかしら」
( ^ω^)「気付いてたんじゃないかお? そもそも母が不倫してたのは父の気を引きたかったからだろうし」
ξ;゚⊿゚)ξ「え……」
( ^ω^)「なんだかんだ、母は父のことを愛していたんだお。愛し方がめちゃくちゃ下手だっただけで」
ξ;゚⊿゚)ξ「そうなの?」
( ^ω^)「父に対して束縛ばっかだったからね。自分は不倫して他の男の子どもまで産んだくせにね」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「顔だけはね、綺麗な人だったんだけどね」
( ^ω^)「僕が言うのもなんだけど、母は本当にどうしようもない人だったからねぇ」
379
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:39:24 ID:UaKIE5qo0
( ^ω^)「しぃさんもかわいそうだおね。母の勝手で産まれて、恋人のしょーもないクソ雑魚ギコくんに殺されちゃって」
ξ゚⊿゚)ξ「……正直、アンタがしぃさんを殺したんだと思ってたわ」
( ^ω^)「前からずっと言ってるじゃないかお。ツンさんを殺すまで誰も殺さないって」
ξ゚⊿゚)ξ「信じていいのか分からなかったし……」
( ^ω^)「そもそもツンさんの方が好みだし。母よりしぃさんよりツンさんの方が綺麗だお」
ξ゚⊿゚)ξ「うわあ嬉しくない」
380
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:41:26 ID:UaKIE5qo0
( ^ω^)「ところで、ツンさん」
ξ゚⊿゚)ξ「何よ」
( ^ω^)「クソ雑魚ギコくんに殺されそうになったとき、怯えてたおね?」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね。死にたくないって思ったわ」
( ^ω^)「ついに! あの死にたがりポンコツンさんが! 死にたくないって!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ポンコツンさん呼びやめろ」
( ^ω^)っ=lニニフ「やったやったー! じゃあ、早速殺しちゃうおね!!」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)っ=lニニフ「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)っ=lニニフ「……いやちょっと、無反応は無いんじゃないですかねーツンさんー。僕包丁突き付けてるんですけどツンさんー」
ξ゚⊿゚)ξ「……ニュースを見て、アンタが私じゃなくしぃさんを殺したと思ったから、すごくショックを受けたの」
ξ゚⊿゚)ξ「……それとアンタがくる直前にね、せめてアンタに殺されたかったって思ったのよ」
( ^ω^)っ=lニニフ「……待ってなんか嫌な予感」
ξ゚⊿゚)ξ「私、内藤に殺されたいんだわ。他の誰でもなく、内藤に」
( ^ω^)「やっぱそうきたか……なんでこう需要と供給が絶妙に噛み合わないの……」
381
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:43:07 ID:UaKIE5qo0
( ^ω^)「なんなんだお……ようやく殺せると思ったのに……」
ξ゚⊿゚)ξ「……で、アンタこれからどうすんの」
( ^ω^)「どうするって?」
ξ゚⊿゚)ξ「殺さないんでしょ、私のこと」
( ^ω^)「殺すことを受け入れた相手なんか殺しても仕方ないからね」
ξ゚⊿゚)ξ「だから、どうするのかなって……これから……」
( ^ω^)「どうするも何も、ツンさんが僕に殺されることに恐怖を抱くくらい、幸せになるようになんやかんやするお」
ξ゚⊿゚)ξ「……相変わらずざっくりしてるわね」
( ^ω^)「で、ツンさんが僕に殺されたくないって思うようになったら殺す」
ξ゚⊿゚)ξ「変わらないわね」
( ^ω^)「変わらないお」
ξ゚⊿゚)ξ「ていうか、アンタに殺されることに恐怖を抱くのと幸せってあんまり関係なくない?」
( ^ω^)「いいんだお、細かいことは」
ξ゚⊿゚)ξ「……幸せ、ねぇ……」
( ^ω^)「なんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「……別に」
( ^ω^)「急に沢尻ツンカさんになるのやめて」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「え、無視?」
382
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:44:26 ID:UaKIE5qo0
内藤が来る前の私と、内藤が来てからの私。
たぶん、内藤が来てからの方が、幸せ。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚ー゚)ξ
( ^ω^)「沢尻ツンカさんだと思ったら急にニヤニヤし始めた……この人情緒がおかしい……」
ξ゚⊿゚)ξ「ニコニコと言いなさい」
( ^ω^)「ニヤニヤ」
ξ゚⊿゚)ξ「常にニヤけ面のアンタに言われるの腹立つわ……」
( ^ω^)「ニヤニヤ」
ξ゚⊿゚)ξ「うるさい」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ξ*゚ー゚)ξ
.
383
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:45:11 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξし×××のようです(^ω^ )
最終話 『しあわせ』 終
.
384
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:49:50 ID:UaKIE5qo0
百選までには完結させると目標を立てた結果、こんなにもギリギリになってしまいました。
完結させることができたのはひとえに読んでくださった皆様のおかげだと思っています。
乙や感想、そして支援絵までいただけて本当に嬉しかったです。とても励みになりました。
読んでいただき、ありがとうございました!
385
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 06:55:21 ID:Iwtv2Gw.0
乙!
386
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 06:57:01 ID:DxzkBWic0
おつ!!
冒険物以外で久しぶりに次が早く!と思える作品でした!!
387
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 07:35:53 ID:BZMXcZkI0
乙でした!!終わってしまった…
388
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 07:42:36 ID:VOTBH8z60
マジかよ完結かホホォイ!
乙!最後までゾクゾクする名作だった
389
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 08:53:40 ID:eykxixo20
めっちゃ面白かった!乙!
これでギリギリ100選に推薦できるな!
390
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 11:01:05 ID:x1LT88BA0
自首促しててワロタ
391
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 11:01:17 ID:plroY6UE0
乙!
すごく面白かった
392
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 11:42:41 ID:ge.2ykjU0
おっしゃ推薦させていただくぜ!
393
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 20:51:06 ID:5dYKxeM20
完結乙
最後まで読めて良かったよ
394
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 23:14:45 ID:wmHH.bBY0
乙でした!
終わってしまったの、すごく寂しいです!
395
:
名無しさん
:2019/05/11(土) 16:37:22 ID:XOZs2QW20
しぃは残念だったけど、ツンの可愛さでチャラだわ
乙!面白かったし楽しかった!
396
:
名無しさん
:2019/05/12(日) 00:02:09 ID:pGmcys860
おわってたー!
作者さん乙でした!
ホッとしたというか、ツンと内藤がこれからもいい関係?でいられそうでよかった!
397
:
名無しさん
:2019/05/12(日) 12:45:50 ID:KX/7SCOM0
完結乙!
テンポのいい掛け合いと所々にあるパンチラインというかワードセンスがすごい好きでした!
またなんか書いてね!
398
:
名無しさん
:2019/05/14(火) 19:23:49 ID:1uqQcCIY0
随分と歪んだ物語だったな
完結乙
399
:
名無しさん
:2019/05/14(火) 23:41:21 ID:F1r8dPp60
乙
毎回更新を楽しみにしてた
後日談とかおまけとかあってもイインダヨー(チラッ
400
:
名無しさん
:2019/05/15(水) 01:41:34 ID:JucbOSys0
おつ
面白かった
401
:
名無しさん
:2019/05/19(日) 10:56:41 ID:bZ3UOxAQ0
乙ー
ブンツンの二人世界のテンポ好きだったわ
402
:
名無しさん
:2019/05/26(日) 18:48:36 ID:dR/qkM4s0
乙
これすき
403
:
名無しさん
:2019/05/31(金) 21:35:11 ID:hiwHrvas0
結局ブーンは殺人鬼なんだからハッピーな感じとかギャグな感じとかが鼻につくな
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