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ξ゚⊿゚)ξし×××のようです(^ω^ )
1
:
名無しさん
:2017/05/09(火) 18:57:13 ID:DCeU8sjA0
ミセ;゚ー゚)リ「ね、ニュース見た!? またあの殺人鬼が出たってさ!」
ξ゚⊿゚)ξ「殺人鬼?」
(゚、゚トソン「綺麗な女性だけを狙うというあの連続殺人犯ですか?」
ミセ;゚д゚)リ「そう! もうほんっと怖くない!? 可愛いミセリちゃんがいつ狙われるか心配で心配で!」
(゚、゚トソン「ワロス」
ミセ;゚д゚)リ「傷つくからその反応やめて!」
293
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:07:10 ID:k8d8mM5A0
(;*゚ー゚)「津出さん!」
(;,゚Д゚)「おい、何なんだアイツ!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっと、ちょっとした知り合いっていうか……」
( ^ω^)「初めましてー」
(;゚-゚)"「ひっ……」ビクッ
( ^ω^)「そんな怯えないでほしいお。殺人鬼だなんて酷いおー誤解誤解ー」
(;,゚Д゚)「そ、そりゃそうだよな……」
(;*゚-゚)「ごめんなさい、早とちりしちゃって……」
( ^ω^)「大丈夫だおー。物騒な世の中だもんね」
ξ;゚⊿゚)ξ(アンタのせいで物騒なんだろ)
(;*゚ー゚)「津出さんの知り合いかー……びっくりしちゃった……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ごめんなさいね……すぐ帰らせるから」
( ^ω^)「えー、酷いおツンさん! 帰れだなんて!」
ξ;゚⊿゚)ξ「うるさい! 帰りなさい!」
(*゚ー゚)「あ、良かったら一緒に飲みません? お酒たくさん買っちゃったので」
(,,゚Д゚)「芹澤と都村が急に来れなくなったからな」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっ……」
( ^ω^)「いいのかお? 嬉しいお!」
(*゚ー゚)「私、猫田しぃっていいます!」
( ^ω^)「猫田しぃさんね。覚えたお! 僕は西川ホライズンだお。よろしくだお」
(,,゚Д゚)「あ、俺は羽生ギコです」
( ^ω^)「へー」
ξ;゚⊿゚)ξ(私を抜きにどんどん話が進んでいく……!)
294
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:08:27 ID:k8d8mM5A0
(*゚ー゚)「ほらほら津出さん、乾杯しよ!」
( ^ω^)「乾杯だおーツンさん!」
ξ;-⊿-)ξ「……分かったわよ」
ξ;゚⊿゚)ξ(アイツだって流石に私やギコくんがいる前でしぃさんを殺したりなんかしないだろうし……大丈夫よね)
ξ;゚⊿゚)ξ(……そもそも、アイツは私を殺すまで他の人を殺さないはずだし)
(*゚ー゚)「津出さんと西川さんはビール?」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、私お酒弱いからほろよいにするわ」
(*゚ー゚)っ凵「津出さんはほろよいね。はい!」
ξ゚⊿゚)ξ凵「ありがとう」
( ^ω^)「僕はビールでお願いするお、しぃさん!」
(,,゚Д゚)っ凵「西川さんビールですね? どうぞ」
( ^ω^)凵「あ、はい」
(;,゚Д゚)(なんか俺にだけ冷たくないか?)
(*゚ー゚)っ凵「皆お酒持った? じゃあ早速……かんぱーい!」
ξ;゚⊿゚)ξっ凵"「か、かんぱい」
ξ;゚⊿゚)ξっ凵(これが陽キャのノリ……)
(,,゚Д゚)っ凵「西川さんも乾杯!」
( ^ω^)凵" グビグビ
(;,゚Д゚)っ凵「かんぱい……」
295
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:09:30 ID:k8d8mM5A0
(*゚ー゚)「ね、ね! 気になってたんだけどさ、津出さんと西川さんってどんな関係なの!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「どんなって……ただの知り合いよ」
(*゚ー゚)「一緒にお昼食べた時に話してた西川さんって彼のことでしょー?」
( ^ω^)「お? ツンさん僕の話してたのかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あー……そんな話したわねそういえば」
(*゚ー゚)「時間なくてあんまり話聞けなかったから聞きたいな! 出会ったきっかけとか!」
ξ;゚⊿゚)ξ「聞きたいって言われても……」
( ^ω^)「しぃさんが聞きたいって言うなら話しちゃおっかなぁ〜」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ」
(*゚ヮ゚)「わーい、聞きたいです!」
( ^ω^)「しょうがないなぁ〜〜」
(,,゚Д゚)「俺も気になるな」
( ^ω^)「やっぱ話すのやめよっかな」
ξ;゚⊿゚)ξ(話せることなんて無いんだけど……コイツが殺人鬼なんて絶対言えないし……)
296
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:10:45 ID:k8d8mM5A0
( ^ω^)「それじゃあしぃさんのリクエストに応えて、僕とツンさんの出会いの物語、はじまりはじまり〜〜」
ξ;゚⊿゚)ξ(不安しかない……)
(*゚ヮ゚)人"「わーい!」パチパチ
( ^ω^)「おっおっ、しぃさんは盛り上げ上手だおね」
(,,゚Д゚)人" パチパチ
( ^ω^)「あ、ちょっとそれうるさいんでやめてもらっても……」
(,,゚Д゚)「あ、はい……」
( ^ω^)「えー、むかーしむかし、あるところに……」
ξ;゚⊿゚)ξ(なんで昔話口調)
( ^ω^)「ポンコツな女子大生がいました」
(,,゚Д゚)「津出の登場だな」
(;*゚ー゚)「西川さん、津出さんのことポンコツなんて言い方しちゃダメですよ!」
ξ゚⊿゚)ξ(ポンコツ=私のイメージが浸透してる……)
297
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:11:50 ID:k8d8mM5A0
( ^ω^)「就活に単位に卒論に悩むポンコツ女子大生、略してツンさん」
ξ゚⊿゚)ξ「どう略したんだ」
( ^ω^)「ツンさんは大学からの帰り道、とある男性とぶつかります」
(*゚ヮ゚)「なんだか少女漫画チック!」
(,,゚Д゚)「ここで西川さんの登場か?」
( ^ω^)「そのぶつかった男性はジャニーズ風超絶イケメンでした」
ξ゚⊿゚)ξ「???捏造が過ぎない??????」
( ^ω^)「例えるならそう、松坂桃李と向井理と山﨑賢人を足したようなイケメンです」
ξ゚⊿゚)ξ「足したなら割れよ」
(*゚ー゚)「ジャニーズ風って言ったわりにはジャニーズの人いないね!」
( ^ω^)「松坂桃李と向井理と山﨑賢人と生田斗真を足したようなジャニーズ風超絶イケメンは……」
(,,゚Д゚)「めげないな」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、生田斗真増やしたあたりジャニーズいないって言われたのちょっと気にしてるわ」
298
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:13:14 ID:k8d8mM5A0
( ^ω^)「松坂桃李と向井理と山﨑賢人と生田斗真と櫻井翔を足したようなジャニーズ風超絶イケメン、略して西川とぶつかったツンさん」
(*゚ー゚)「やっぱり略し方がおかしいね!」
(,,゚Д゚)「また一人増えてるし」
ξ゚⊿゚)ξ「なんで頑なに割らないのよ。いくらイケメン五人とはいえ足すだけじゃ阿修羅像みたいになるわよ」
( ^ω^)「超絶イケメンな西川にツンさんは一目惚れします」
ξ゚⊿゚)ξ「二次創作始まった……」
(*゚ヮ゚)人「ラブな展開きた!!」
ξ゚⊿゚)ξ「いやこれ二次創作だから……。
そもそもコイツがイケメン設定なのも二次創作だし、私がポンコツってとこしか合ってないわよ」
(;,゚Д゚)「悲しいこと言うなよ……」
( ^ω^)「そして二人は異世界に転生し……」
(,,゚Д゚)「急にめちゃくちゃ雑になった……」
ξ゚⊿゚)ξ「さては飽きたわね」
( ^ω^)「うん飽きた」
(;*゚-゚)「えー! これから二人は一体どうなっちゃうのかドキドキしてたのにー!」
ξ゚⊿゚)ξ「どこにドキドキできる要素が……」
(,,゚Д゚)「西川さんの見た目設定がやけに長かっただけで物語としてはぶつかって異世界に転生しただけだしな」
(;*゚-゚)「えー……続き聞きたかったのに……」
( ^ω^)「もっと別の話しようおー」
ξ;゚⊿゚)ξ(……ありのままを話すわけにはいかないから、話題を流すためにわざと適当に話したってことよね)
( ^ω^)「ちまたで噂の殺人鬼の話でもしよっか!」
ξ;゚⊿゚)ξ(コイツ……!!)
299
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:14:43 ID:k8d8mM5A0
(;*゚-゚)「ちまたで噂の殺人鬼……って綺麗な女の人だけ殺すっていう……」
( ^ω^)「そうそう。最近は鳴りをひそめてるみたいだおねー」
(;*゚ヮ゚)「きっともうやめたんじゃないですか? 罪悪感で辛くなっちゃったとか……」
(,,゚Д゚)「……それはないな」
(;*゚-゚)「えー……でも最近ニュースで全然聞かなくなったじゃん」
(,,゚Д゚)「何人も残虐な殺し方しといて今更罪悪感がーなんて無いだろ」
(;*゚-゚)「うう……」
(,,゚Д゚)「多分……というか絶対、また出てくるだろうな」
( ^ω^)「おっおっ、なかなかな考察だおねーゲコくん」
(,,゚Д゚)「ギコです」
( ^ω^)「実際、犯人はどんな人だと思うお?」
(,,゚Д゚)「そうですね……案外普通な人だと思いますよ。あれだけ殺人を犯しても平然と日常に溶け込んでいる普通な人」
(,,゚Д゚)「自身の欲望を果たすためだけに残忍な行いを容易にできて、
でも普段はそんなこと感じさせない一見善良な人、なんだと思います」
( ^ω^)「……ふーん、なるほどね」
ξ;゚⊿゚)ξ(心臓に悪い……この話題心臓に悪い……!!)
300
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:16:21 ID:k8d8mM5A0
(;*゚-゚)「ギコくんなんでそんなに殺人鬼について考えてるの……」
(,,゚Д゚)「なんていうか……ちょっと羨ましいんだよな、あの殺人鬼のこと」
(;゚-゚)「えっ……?」
ξ;゚⊿゚)ξ「う、羨ましい……って……?」
( ^ω^)「ほう?」
(;,゚Д゚)「あっ、いや、変な誤解すんなよ!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「変な誤解しかしないわよ今の発言」
(;,゚Д゚)「別にあの殺人鬼を肯定するとかじゃないからな!?
だって、考えてもみろよ! 自分の欲望のために犯罪に手を染めるって相当だろ!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「まあ、そうよね」
(;,゚Д゚)「他の何も顧みずに、自分が本当にやりたいことを選べるってのが少し羨ましいと思うんだよ……」
(*゚ー゚)「……ギコくん、もしかして就職のことまだ悩んでるの?」
(;,゚Д゚)「……ああ」
ξ゚⊿゚)ξ「就職? たしか内定は出たけど、今選考中のところに受かったらそこにするって……」
(;,゚Д゚)「よく覚えてんな」
ξ゚⊿゚)ξ「大ダメージ食らったんで……」
(;,゚Д゚)「その選考中だったところから内定は出たんだけど……」
ξ゚⊿゚)ξ「あ゛ーーーーーーーーーなんて不平等な世の中なんやーーーーーーやってられへんわほんまーーーーーーーーーーー」
( ^ω^)「ツンさんエセ関西弁やめて」
301
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:17:47 ID:k8d8mM5A0
ξ゚⊿゚)ξ「ガチ恋御社から内定出たんでしょ???? 何が不満なのよ言ってみなさいよ言えよコラオイ言えよ」
( ^ω^)「ガチ恋御社て」
(;,゚Д゚)「俺、本当はもっと他にやりたいことがあるんだよ……。
でも将来の安定とか、色々考えるとそれは諦めた方が現実的なんだ」
(*゚ー゚)「でも、諦めきれないんでしょ?」
(;,゚Д゚)「……ああ」
ξ#゚⊿゚)ξ「うるっせーーーー!!!! 内定出たくせに贅沢言ってんじゃねえーーーーーー!!!!!」
( ^ω^)「ツンさんうるさいお。
要するにやりたいことより安定を取った、と。そういうことだおね? ペコくん」
(;,゚Д゚)「……そういうことです。あとギコです。ミルキーはママの味みたいな名前じゃないです」
( ^ω^)「いいところに内定を貰えたのならとりあえずはいいんじゃないかお?
新卒で選んだ仕事が人生の全てじゃないんだし」
(;,゚Д゚)「でも、諦めきれなくて……」
( ^ω^)「別に諦める必要はないお。
転職するなり、趣味としてやっていくなり、方法はいくらでもあるんだし。
そんなに焦らなくたって、どうするかはこれからゆっくり考えてもいいんじゃないかお?」
(,,゚Д゚)「そう、ですね……。ちょっと考えすぎてました」
(*゚ヮ゚)「良かったねギコくん! 人生の先輩にアドバイス貰えて!」
(,,*゚Д゚)「ありがとうございます西川さん」
( ^ω^)凵"「お礼なんていいお。頑張るおーキッコーマンくん」グビリ
(,,゚Д゚)「もはやわざと間違えてますよね?」
ξ゚⊿゚)ξ「人生の先輩、内定を貰うにはどうしたらいいですか?」
( ^ω^)「がんばってー」
ξ゚⊿゚)ξ「雑じゃない? ねえ??」
302
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:19:49 ID:k8d8mM5A0
(*゚ー゚)「津出さんならいつか内定貰えるよ! 大丈夫大丈夫!」
ξ゚⊿゚)ξ「そう思ってた時期が私にもありました」
(;*゚ー゚)「口ぶりが諦めてる……」
(,,゚Д゚)「俺もしぃも、芹澤と都村も内定出たんだ。だから津出も大丈夫だろ」
ξ゚⊿゚)ξ「それわざと?? 格差を知らしめるその言い方わざと????」
(;,゚Д゚)「いやいやいや、そんなネガティブな捉え方するなよ」
( ^ω^)「メンタルボロボロポンコツンさんに今の言い方はちょっと……」
(;,゚Д゚)「す、すまん津出」
ξ#゚⊿゚)ξ「謝んじゃねーーー!!! 余計惨めになるでしょうが!!!!」
ξ#゚⊿゚)ξ凵" グビーッ
( ^ω^)「ツンさんお酒弱いんでしょ。そんな一気に飲んだら……」
ξii゚∩゚)ξ「うっ」
( ^ω^)っ凵「あーほら言わんこっちゃない。ほら、水飲んで」
ξii゚⊿゚)ξ凵「ありがと……」
( ^ω^)「喋んなくていいから」
303
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:20:45 ID:k8d8mM5A0
(;*゚-゚)「津出さん寝た方が……」
(;,゚Д゚)「ちゃんと横向きで寝ろよ」
( ^ω^)「ツンさん潰れちゃったし今日はお開きにしようかお。ツンさんは僕に任せて二人は帰ってくれていいお」
(;*゚-゚)「津出さんの介抱なら私がやります! 女の子同士ですから!」
( ^ω^)「僕に任せてくれて大丈夫だお?」
(;*゚-゚)「で、でも……」
ξii-⊿-)ξσ「……しぃさん、コイツ手出すとか絶対ないから、大丈夫……」
( ^ω^)「あ、しぃさんそういう心配してたの? 手出すなんて発想1ミリも無かったお」
(;*゚-゚)「ほ、ほんとに大丈夫……?」
ξii-⊿-)ξ「大丈夫大丈夫」
( ^ω^)(ここまで信頼されてるってのもなんかなあ)
304
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:21:28 ID:k8d8mM5A0
(;*゚-゚)「じゃあ、私たち帰るけど本当に大丈夫だね?」
ξii-⊿-)ξノ「大丈夫よ。また大学で」
(;,゚Д゚)「しっかり休めよ。今日はありがとな、津出」
(*゚ー゚)「今度はミセリちゃんたちも一緒に飲もうね!」
( ^ω^)「その時は僕も呼んでほしいお!」
(*゚ヮ゚)「はい! また一緒に飲みましょう!」
ξii-⊿-)ξ(心臓に悪いから勘弁して……)
305
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:22:22 ID:k8d8mM5A0
( ^ω^)「落ち着いたかお?」
ξ;-⊿-)ξ「吐き気は引いてきたわ」
( ^ω^)「お酒は一気に飲んじゃダメだお。急性アルコール中毒で倒れる可能性もあるんだから」
ξ;゚⊿゚)ξ「ついガーッと飲んじゃった……。ギコくんに悪気がなかったのは分かってたのに……」
( ^ω^)「悪気がないからこそタチが悪いおね〜ガーゴイルくんは」
ξ;゚⊿゚)ξ「ギコくんね。……そういえばギコくんにアドバイスしてたの意外だったわ」
( ^ω^)「だって男になんか変な憧れ持たれるのやだぁ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ああ、そういう……」
( ^ω^)「二人とあんまり仲良くないみたいなこと言ってたけど、普通に仲良いんじゃないかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「そう?」
( ^ω^)「特にしぃさん。介抱しようとしてたくらいだし」
ξ;゚⊿゚)ξ「たしかにそう言われると……」
306
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:24:50 ID:k8d8mM5A0
( ^ω^)「……猫田しぃさん、ね」
ξ;゚⊿゚)ξ「……随分としぃさんが気に入ったみたいじゃないの」
( ^ω^)「いやー、ちょっとね」
ξ;゚⊿゚)ξ「何よ、ちょっとって」
( ^ω^)「……顔が似てるんだお。しぃさんと僕の母」
ξ;゚⊿゚)ξ「……アンタのお母さんって、たしかアンタが最初に殺したっていう……?」
( ^ω^)「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ねぇ、しぃさんを殺すつもりじゃないわよね?」
( ^ω^)「言ってるじゃないかお。君を殺すまで他の人を殺すことはないって」
ξ;゚⊿゚)ξ「……信じていいのよね?」
( ^ω^)「当たり前だお。僕は嘘なんかつかないおー?」
ξ;゚⊿゚)ξ「そもそもそれが嘘でしょう?」
( ^ω^)「まあね。でも殺しに関しては嘘つかないから安心してほしいおー」
ξ;゚⊿゚)ξ(安心できないわよ……)
ξ;゚⊿゚)ξ(何が本当で何が嘘だか分からない……)
307
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:25:42 ID:k8d8mM5A0
( ^ω^)「で、えーと何だっけ? ギラティナくんだっけ」
ξ;゚⊿゚)ξ「ギコくんのこと言ってる?」
( ^ω^)「あーそうそれ」
ξ;゚⊿゚)ξ「もしかして本気で間違えてたの?」
( ^ω^)「ギルガメッシュくんに興味ないから……」
ξ;゚⊿゚)ξ「やっぱわざとだろ。本気の間違いにしてはクセが強すぎない?」
( ^ω^)「しぃさんとギルガメッシュくんだおね? 覚えた!」
ξ;゚⊿゚)ξ「いやだから……あー、もういっかギルガメッシュくんで……」
( ^ω^)「僕が言うのもなんだけどよくはないでしょ」
308
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:27:05 ID:k8d8mM5A0
( ^ω^)「もう気分は良くなったかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「そうね。頭は痛いけど落ち着いたわ」
( ^ω^)「今日はもうさっさと寝た方がいいお」
ξ;゚⊿゚)ξ「そうするわ。もう帰りなさい」
( ^ω^)「子守唄歌おうか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「いらない」
( ^ω^)♪「ズン、ズンズンズンドコきよしぃ!!!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「寝かしつける気ないでしょ! そもそもいらないし!」
( ^ω^)「えー」
ξ;゚⊿゚)ξ「えーじゃない! もう寝るから帰りなさい!」
扉|^ω^)ノ「はいはい、仕方ないおねー。じゃあね、ツンさん」
バタン
ξ;゚⊿゚)ξ「やっと帰った……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
ξ;゚⊿゚)ξ(……しぃさんとアイツのお母さんが似てるってどういうこと……?)
ξ;-⊿-)ξゝ「……頭いたい……。もういいや、寝よ……」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「……しぃさんとギコくん、ね」
第10話 『しゅえん』 終
309
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:29:27 ID:k8d8mM5A0
期間あけまくってすみませんでした。
百選までには完結させるつもりなので死ぬ気で頑張ります。
310
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 21:45:54 ID:DRNUCIdQ0
乙
名前覚えてんじゃねーか!
311
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 22:11:19 ID:gYjlwt/60
更新きたー!
めっちゃ名前覚えてるし!
312
:
名無しさん
:2019/04/21(日) 22:33:40 ID:Z/26s3Es0
乙!
313
:
名無しさん
:2019/04/22(月) 02:22:12 ID:m5PhwRr.0
来てたー!マジかお前嬉しいぞ
314
:
名無しさん
:2019/04/22(月) 08:37:49 ID:xF4Lb9nU0
乙!!
315
:
名無しさん
:2019/04/29(月) 17:11:44 ID:ccw8GNPI0
待ってた
316
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:08:25 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξ(お腹すいた……ご飯……)
ξ゚⊿゚)ξ(何か食料……もやししかない)
ξ;゚⊿゚)ξ「うわ臭い酸っぱっ! 腐ったか……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ええ……食べるものがない……」
ξ;゚⊿゚)ξ「こんなとき、あのサイコパスが来てくれれば……」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「あーあ! どっかのサイコパスがご飯作りに来てくれないかなーー!!」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「前フリしても来ないか……」
ξ゚⊿゚)ξ「……そういえば、最近アイツ来てないわね……」
317
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:09:10 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξし×××のようです(^ω^ )
第11話 『しずか』
.
318
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:09:57 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξ(別にアイツが来ないからってどうということはないんだけども)
ξ゚⊿゚)ξ(なんていうか……やけに部屋が静かだわ)
ξ゚⊿゚)ξ(いや、一人暮らしの部屋は静かなのが普通なのよそもそも)
ξ゚⊿゚)ξ(最後に来たのいつだっけ……二週間くらい前? 飲み会したときだったわね)
ξ゚⊿゚)ξ(……)
ξ゚⊿゚)ξ(……二週間なんて、そんな大した期間じゃないわ)
ξ゚⊿゚)ξ(でもなぁ……アイツ頻繁に来るし騒がしいし、来ないとなるとやけに部屋が静かに感じるわ)
ξ゚⊿゚)ξ「……気分転換に散歩でも行くか」
319
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:11:01 ID:UaKIE5qo0
(( ξ゚⊿゚)ξ(お腹すいた……)テクテク
ξ゚⊿゚)ξ(……あ、この公園、前にアイツと来たとこ……)
ξ゚⊿゚)ξ(ビロードくんたちと一緒に鬼ごっこしたのよね……結構楽しかったな)
( ><)「あれっ、ツンお姉さん?」
( <●><●>)「こんにちは」
(*‘ω‘ *)「奇遇だっぽね」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、本当に奇遇ね」
( ><)「今日は西川お兄さんは一緒じゃないんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「今日はいないわよ」
( <●><●>)「珍しいですね」
ξ゚⊿゚)ξ「いや別に珍しくは……まあ、私一人と会うのは初めてだものね」
( ><)「西川お兄さんといつも一緒にいるイメージなんです!」
ξ゚⊿゚)ξ「いつも一緒にはいないわよ」
( ><)「寂しくないんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「別に……」
(*><)「ちなみにちんぽっぽちゃんは僕らがいないとすごく寂しそうにするんです!」
>⊂(*‘ω‘ *)「黙るっぽ」ギュウウゥ
(;>< >「アイタタタ!!」
320
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:12:52 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξ「今日は何して遊んでるの?」
(*><)「今日はピクニックなんです!」
( <●><●>)「駅前のケーキ屋さんで人気のフルーツタルトを買ってきたんですよ」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、それ食べたことあるわ。美味しかったわよ」
ξ゚⊿゚)ξ(アイツが持ってきて……それでミセリとトソンと一緒に食べたんだっけ)
ξ゚⊿゚)ξ グウウウゥゥ
ξ;゚⊿゚)ξ「あ」
( ><)「あれっ、ツンお姉さんお腹空いてるんです?」
(*‘ω‘ *)「馬鹿ビロード、デリカシーが無いっぽ」
( <●><●>)「よかったら一緒に食べましょう」
ξ;゚⊿゚)ξ「いやそんな、悪いわよ」
(*‘ω‘ *)「遠慮なんていらないっぽ」
(*><)「一緒に食べた方が楽しいんです! ツンお姉さんと一緒に食べたいんです!」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、お言葉に甘えて一切れだけ……」
321
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:13:55 ID:UaKIE5qo0
(*><)「おいしいんです!」モグモグ
( <●><●>)「さすが人気なだけありますね」モグモグ
(*‘ω‘ *) ムシャムシャムシャムシャ
ξ*゚〜゚)ξ「うん、美味しい」モグモグ
(*><)「みんなで食べるとより一層おいしいんです!」モグモグ
( <●><●>)「そうですね」モグモグ
(*‘ω‘ *) ムシャムシャムシャムシャ
ξ゚〜゚)ξ(美味しいし、ビロードくんたちと一緒に食べるの楽しいし、お腹が満たされて幸せ)
ξ゚〜゚)ξ(だけど……何か物足りない)
322
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:14:57 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξ「美味しかったわ。ありがとう」
( <●><●>)「いえ、一緒に食べられて嬉しかったです」
(*><)「今度は西川お兄さんも一緒に食べたいんです! ね、ちんぽっぽちゃん!」
(*‘ω‘ *)「どっちでもいいっぽ」
(*><)σ「素直じゃないんですー!」
>⊂(*‘ω‘ *) ギュウウゥ
(;>< >「いたいいたい!!」
( <●><●>)「また一緒に遊園地にも行きましょうね」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、アイツも一緒にね」
( <●><●>)「はい!」
323
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:16:22 ID:UaKIE5qo0
爪;*'ー`)『べっ、別に、明智のことなんか好きじゃねーからな!!』
ζ(゚、゚*ζ『……そう』シュン
ξ#゚⊿゚)ξロ「うっっせーーー!!! 光秀のこと好きなくせに!!!!
まあ光秀こんなに可愛いんだから好きになるのは分かるけど!!!!!」
ξ#゚⊿゚)ξロ「光秀も真に受けてんじゃないわよ!!! どう考えてもツンデレのテンプレじゃない!!!!
テンプレよテンプレ!!!! 天ぷらよ!!!!!」
(;*゚ー゚)「つ、津出さん……?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あっ……しぃさん!?」
(;*゚ー゚)「どうしたの? 講義室で天ぷらって叫んで……」
ξ;*゚⊿゚)ξ「……あ、いや、ゲームやってて……つい……」
(*゚ー゚)「どんなゲーム?」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっと……乙女ゲームなんだけど……」
(*゚ー゚)「へー! 津出さんって乙女ゲーム好きなんだ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「乙女ゲームっていうか光秀のモンペゲームっていうか……」
(*゚ー゚)「光秀? あ、もしかして戦国武将が題材の乙女ゲームとか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「いや……全然普通の乙女ゲーム……。主人公の名前を明智光秀にしてるだけで……」
(*゚ー゚)「へぇー、なんで?」
ξ;゚⊿゚)ξ「なんでだろう……」
324
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:17:34 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……ねえ、しぃさんのお母さんってどんな人?」
(*゚ー゚)「えっ? どうしたの急に?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、いや……なんとなく気になったっていうか……」
(*゚ー゚)「うーん……私のお母さん、どんな人か分からないんだよね……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ど、どういうこと?」
(*゚ー゚)「うちね、父子家庭なの。物心ついた時からお母さんいなかったんだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……っ!!」
(*゚ー゚)∂「顔も分からないんだよねー。あ、でも私お母さん似らしいから顔はこんな感じなんだと思う!」
ξ;゚⊿゚)ξ(母親似……アイツの言ってたことと一緒じゃない……!)
ξ;゚⊿゚)ξ(アイツとしぃさんは母親が同じってことで間違いないのかしら?)
ξ;゚⊿゚)ξ(つまり……二人は兄妹ってこと……?)
(*゚ー゚)「津出さん?」
ξ;゚⊿゚)ξ(父親も同じなのかしら……いや、おそらく父親は別なはず)
(;*゚ー゚)ノシ「津出さん! 津出さんってば!」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ?」
(;*゚ー゚)「ごめんね、もしかして気にさせちゃった?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ……ごめんなさい。首をつっこむことじゃなかったわ」
(;*゚ー゚)「別に重い話とかじゃないから! 気にしなくて大丈夫だよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「う、うん」
325
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:18:43 ID:UaKIE5qo0
(*゚ー゚)「あ、じゃあ津出さんのお母さんは? どんな人なのー?」
ξ゚⊿゚)ξ「どんな人……普通の人よ。基本的に放任主義で……」
(*゚ー゚)「へぇー!」
ξ;゚⊿゚)ξ「しぃさんのお父さんはどんな人……なの?」
(*゚ー゚)「優しい人だよ! 私のことすごく大事にしてくれてるの!」
ξ゚⊿゚)ξ「愛されて育ったんだろうなって感じするわ」
(*^ー^)ゞ「えへへ」
ξ゚⊿゚)ξ「……あ、講義始まるわ」
(*゚ー゚)「もうそんな時間?」
ξ-⊿-)ξ「おやすみー」
(;*゚ー゚)「えっ!? もー、だから単位落とすんだよー!」
ξ;゚⊿゚)ξ「やめて!」
326
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:19:27 ID:UaKIE5qo0
(*゚ー゚)づ「津出さーん? 講義終わったよ」ユサユサ
ξ-⊿゚)ξ「……んえ? 終わったの?」
(*゚ー゚)「終わったよー。津出さんったらぐっすり寝ちゃって……面接中にも寝てたりしない?」
ξ;゚⊿゚)ξ「うっ……」
(;*゚ー゚)「あるの!? 面接中に寝たことあるの!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「一度だけ……」
(;*゚ー゚)「えー……冗談で言ったのに……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ぐぬぬ……」
327
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:20:40 ID:UaKIE5qo0
(*゚ー゚)「私、今日はもう終わりなんだけど津出さんは?」
ξ゚⊿゚)ξ「再々履修の講義が……」
(;*゚ー゚)「さ、さいさい……お話ししたいことがあるから講義室までついて行っていい?」
ξ゚⊿゚)ξ「構わないけど……話したいことって?」
(*゚ー゚)「うん、あのね……ツンちゃんって呼んでいい?」
ξ゚⊿゚)ξ「え? い、いいけど……」
(*^ー^)「やったあ! ね、ツンちゃん、私のこともしぃって呼んでよ!」
ξ;*゚⊿゚)ξ「し、しぃ…………さん」
(;*゚ー゚)「だから呼び捨てでいいって!」
ξ;*゚⊿゚)ξ「なんか慣れなくて……」
(;*゚ー゚)「もー……」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、次の講義ここ……」
(*゚ー゚)「次会った時はしぃって呼んでよね?」
ξ;*゚⊿゚)ξ「う、うん」
(*^ー^)ノ「じゃあ、またね! ツンちゃん!」
ξ゚⊿゚)ξノ「ええ、またね」
328
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:21:22 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξ「講義だる……」
ξ゚⊿゚)ξ「寝るかぁ〜」
(;,゚Д゚)「寝るなよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「うわびっくりした……ギルガメッシュくん」
(;,゚Д゚)「ギコだよ……西川さんみたいな間違い方すんなよ」
ξ゚⊿゚)ξ「アイツの中ではギルガメッシュくんで定着したっぽかったから……」
(;,゚Д゚)「訂正してくれよ!」
ξ゚⊿゚)ξ「なんかもういいかなって……」
(;,゚Д゚)「よくない……」
ξ゚⊿゚)ξ「ギコくんもこの講義再々履修?」
(,,゚Д゚)「んなわけねえだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「ですよね〜〜〜〜」
(;,゚Д゚)「お前は再々履修なのかよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「ははっ……」
(;,゚Д゚)「その乾いた笑いをやめろ」
329
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:22:45 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξ「……そうだ、ねぇギコくん」
(,,゚Д゚)「なんだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「しぃさんのどういうところが好きなの?」
(;,゚Д゚)「なんだよ急に」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、なんとなく」
(,,゚Д゚)「そうだなー……明るくて素直でいい奴で……色々あるな」
ξ゚⊿゚)ξ「一番は?」
(,,゚Д゚)「一番と言われるとそうだな……顔かな」
ξ゚⊿゚)ξ「あー……結局のところ顔か……」
(;,゚Д゚)「待て、今のは語弊のある言い方だった。表情! 表情って言いたかったんだ!」
330
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:23:30 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξ「表情?」
(,,゚Д゚)「ああ。しぃってよく笑うし、怒る時は全力だし、悲しい時は泣くし、表情がすごく豊かなんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「あー……たしかにね」
(,,゚Д゚)「くるくる変わる表情を見てると、もっといろんな顔を見たい、俺のまだ知らない顔を見てみたい……って思うようになったんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「めっちゃ語るやん……」
(;,*゚Д゚)「お前が訊いたんだろ! なんか恥ずかしくなってきたわ……」
ξ∩゚⊿゚)ξ∩「ヒューヒュー」
(;,*゚Д゚)「やめろやめろ! ほら、もう講義始まるぞ!」
ξ-⊿-)ξ「おやすみー」
(;,゚Д゚)「おい、寝るな! そんなんだから単位落とすんだぞ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「カップル揃って同じこと言うんじゃねえ!」
.
331
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:24:11 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξっ「ただいまーっと」ガチャッ
ξ゚⊿゚)ξ(鍵、壊れてないわね……)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ(いや壊れてないのが当たり前なんだけど。……アイツ、来てないのか)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ(いや不法侵入されないのも当たり前なんだけど)
332
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:25:23 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξ(すっかり感覚が狂ってる……これはまずいわ)
ξ゚⊿゚)ξロ < ヴー
ξ゚⊿゚)ξロ「メール? 何かしら……」
ξ゚⊿゚)ξロ「……ああ、お祈りメール……」
ξ゚⊿゚)ξロ「はあ〜〜〜無理〜〜〜〜〜就活しんど〜〜〜〜〜〜〜〜」
ξ゚⊿゚)ξロ「ほんっと交通費もバカにならないんだからさ〜〜〜〜〜〜祈るならせめて交通費だけでも返せよ〜〜〜〜〜〜〜〜」
ξ゚⊿゚)ξロ < ヴー
_,
ξ゚⊿゚)ξロ「なによ……またお祈りメール?」
ξ゚⊿゚)ξロ
ξ;゚⊿゚)ξロ「!?」
ξ*゚⊿゚)ξロ「前に応募したモデルの一次審査、合格したわ!」
ξ*゚⊿゚)ξロ「やった、やったあ!! 就職に希望が見えてきたかも……!」
ξ*゚⊿゚)ξロ「とりあえず、アイツに連絡を……」
ξ゚⊿゚)ξロ「……あ」
ξ゚⊿゚)ξロ「連絡先……知らない」
333
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:26:47 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξロ < ヴーヴー
ξ#゚⊿゚)ξロ「今度はお祈り電話か!?!?」
ξ゚⊿゚)ξロ「……あ、違うトソンから電話だ」
ξ゚⊿゚)ξロ「もしもし?」
(゚、゚トソン『ツン、今暇ですか?』
ξ゚⊿゚)ξロ「うん、暇」
(゚、゚トソン『今ミセリとカレー屋さんに来てるんですけど、ツンも来ませんか?』
ξ゚⊿゚)ξロ「あー……行きたいんだけどごめんお金が……」
(゚、゚トソン『大丈夫です。バイト代入ったので奢りますよ』
『トソンったら太っ腹ー!』
(゚、゚トソン『ミセリが』
『え、私!? 私まだ今月のバイト代入ってないよ!?』
(゚、゚トソン『私はバイト代入ったのでミセリが奢りますよ』
『言ってることおかしくない!?』
(゚、゚トソン『ミセリが快く奢ってくれるそうです。良かったですね』
『トソン耳ついてる?』
ξ;゚⊿゚)ξロ「奢ってもらうのは申し訳ないわ」
(゚、゚トソン『気にしなくていいんですよ。ミセリのお金ですから』
『この口かー!? 悪いこと言うのはこの口かー!?』
< ゚、゚トソン『頰をつねらないでください』
ξ゚⊿゚)ξロ(仲良いなこいつら……)
334
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:28:22 ID:UaKIE5qo0
(゚、゚トソン『冗談はさておき、ツンの分は割り勘でどうでしょう? 私とミセリとツンの三人で』
ξ;゚⊿゚)ξロ「い、いいの?」
(゚、゚トソン『はい。私たちがツンと一緒に食べたいと思っただけですから』
『でも三人で割り勘ってやりにくくない? 綺麗に割れるかなあ』
(゚、゚トソン『綺麗に割り切れなかったらミセリに多く払ってもらうので大丈夫です』
『言うと思ったよ! ……別にいいけどそれくらい』
(゚、゚トソン『ッッッシャオラアアアアァァァァァァ』
『どんだけ払いたくないんだよ!』
(゚、゚トソン『払いたくないんじゃなくてミセリに払ってほしいんです。ミセリがお金を払うところを見たいんです』
『そういう特殊性癖なの?』
(゚、゚トソン『来てくださいよツン。場所分かります?』
ξ゚⊿゚)ξロ「えーっと、近くにスーパーがあるとこ?」
『え、特殊性癖にツッコミはないの?』
(゚、゚トソン『そうです、近くにスーパーがあります。あとローソンも近くにあります』
ξ゚⊿゚)ξロ「オッケー確信を得たわ」
『え、無言は肯定と同じ的なあれ……?』
(゚、゚トソン『じゃあ待ってますね』
ξ゚⊿゚)ξロ「はーい」
『え、えぇー……』
335
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:29:23 ID:UaKIE5qo0
ヽ(゚、゚トソン「ツン、こっちです」
ミセ*゚ー゚)リ「なんか会うの久しぶりじゃない?」
(゚、゚トソン「飲み会の時に私とミセリが行けなくなりましたからね」
ξ゚⊿゚)ξ「それに講義があんまり被ってないものね」
ミセ*゚ー゚)リ「まあ、今期そもそもほとんど講義取ってないからねー」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ……二人は単位があるからね……ああ……それに比べて私は……」
ミセ;゚ー゚)リ「ちょちょちょ、会って早々落ち込まないでよ!」
(゚、゚トソン「デリカシーが無いですよ、ミセリ」
ミセ;゚ー゚)リ「ごめん……」
(゚、゚トソン「これはミセリに全額払ってもらうしかないですね!」
ミセ;゚ー゚)リ「なんでそうなるの!?」
ξ゚⊿゚)ξ「出たわねトソンの特殊性癖」
(゚、゚*トソン ポッ
ミセ;゚д゚)リ「その意味ありげな赤面なに!?」
(゚、゚トソン「さっそく注文しちゃいましょう、ツン。どれがいいですか?」
ξ゚⊿゚)ξσ「じゃあ……この一番人気って書いてあるやつ」
(゚、゚トソン「一番ベーシックなやつですね。店員さーん」
ミセ;゚ー゚)リ「もー、無視ばっかりー! 本当に私にお金を払わせる特殊性癖持ちなの!?」
ξ゚⊿゚)ξ(と言うよりかはミセリをからかうのが楽しくて仕方ないんでしょうね)
336
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:30:11 ID:UaKIE5qo0
ξ゚〜゚)ξ モグモグ
(゚、゚トソン「どうですか?」
ξ*゚〜゚)ξ「おいしい」
ミセ*゚ヮ゚)リ「だよね、おいしいよね! 今まで食べたカレーの中で一番おいしいよね!」
(゚、゚トソン「いや、そこまででは……」
ξ゚⊿゚)ξ「それは盛りすぎじゃない?」
ミセ;゚ー゚)リ「えー!? じゃあ今までで一番美味しかったカレーってどこの?」
(゚、゚トソン「お母さんが作ってくれるカレーですね」
ミセ*゚ー゚)リ「やだいい話……トソンのくせに……」
(゚、゚トソン「は?」
ミセ;゚ー゚)リ「こわいこわいこわい。ガチギレじゃん……」
337
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:31:03 ID:UaKIE5qo0
(゚、゚トソン「ツンはどうなんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「今までで一番美味しかったカレー? ……難しいわね」
ミセ*゚ー゚)リ「そんなに難しいー?」
ξ゚⊿゚)ξ「…………あー、一番、ではないかもしれないけど……」
(゚、゚トソン「構いませんよ」
ξ゚⊿゚)ξ「アイツ……西川が前にカレー作ってくれたことあって……あれ美味しかったなって」
ミセ*゚ヮ゚)リ「へー! 西川さんカレー作ってくれるんだー!」
ξ゚⊿゚)ξ「特別変わったものとかじゃなく、ごく普通のカレーなんだけど印象に残ってるわ」
(゚、゚トソン「西川さんとは最近会っているんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「二週間くらい前に会ったっきりよ」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、結構最近に会ってるんだね」
ξ゚⊿゚)ξ「……そう?」
(゚、゚トソン「西川さんはお仕事しているんですし、そんなに頻繁には会えないでしょう?」
ξ゚⊿゚)ξ「いやーーーー……結構頻繁に来るけどアイツ……」
ミセ*゚ー゚)リ「そんなによく会ってるんだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ……そうね。二週間も来ないのは珍しいわ」
ミセ*゚ー゚)リ「へー、なんで来ないんだろうね?」
(゚、゚トソン「忙しいんじゃないですか?」
ξ;゚⊿゚)ξ(……しぃさんのことがあるからこの空白が怖いのよね……)
ξ;゚⊿゚)ξ(気に入ってたし、自分の母に似てるとか言ってたし……)
338
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:32:11 ID:UaKIE5qo0
ミセ*゚ー゚)リ「そんなによく会ってたなら、会えないの寂しいね」
ξ;゚⊿゚)ξ「いや寂しいっていうか……」
ミセ*゚ー゚)リσ「寂しいんでしょー!? 素直になりなよー!」
(゚、゚トソン「ウザ絡みやめましょう?」
ミセ*゚ー゚)リ「いつものトソンの私への対応こそウザ絡みだと思うけどなぁ」
(゚、゚トソン「は???」
ミセ;゚ー゚)リ「あーこわいこわいこわい」
ξ;゚⊿゚)ξ「寂しいって言うより……違和感?」
ミセ*゚ー゚)リ「いるのが当たり前的な?」
ξ゚⊿゚)ξ「あー、そんな感じ」
ミセ*゚ー゚)リ「え、付き合ってないんだよね?」
ξ゚⊿゚)ξ「アイツと付き合うなんて絶対ないわよ。アイツもそう言うわよ」
ミセ*゚ー゚)リ「なんなんだこの二人は……私には分からねえ……」
ξ゚⊿゚)ξ(冷静に考えて殺人鬼がいるのが当たり前って頭おかしいわね……)
ξ゚⊿゚)ξ(……風邪引いた時には卵がゆとプリンを作ってくれたっけ……。あれも美味しかったな……)
(゚、゚トソン「ツン?」
ミセ*゚ー゚)リ「どしたの、ボーッとして」
ξ;゚⊿゚)ξ「……あ、ごめん。考えごとしてた」
(゚、゚トソン「……ツン。やっぱり少し寂しそうに見えます」
ξ;゚⊿゚)ξ「ええ? 寂しくなんかないわよ。大丈夫大丈夫」
(゚、゚トソン「……無理しないでくださいね」
ξ;゚⊿゚)ξ「し、してないわよ……。ほら、冷める前に食べましょ!」
(゚、゚トソン「……そうですね」
339
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:33:11 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξ人「ごちそうさまでした」
ミセ*´ヮ`)リ「美味しかったねー」
(゚、゚トソン「ではミセリ、お会計をお願いします」
ミセ*゚ー゚)リ「ナチュラルに全額払わせようとしてくる……」
ξ;゚⊿゚)ξ「今更だけど本当にいいの? 割り勘にしてもらっちゃって」
ミセ*゚ー゚)リ「いいってばー」
(゚、゚トソン「そうですよ。ミセリは皆に奢ることが趣味ですから」
ミセ*゚ー゚)リ「トソンはすぐ私に払わせたがるよね〜」
(゚、゚*トソン「……こんなこと言うの、ミセリだけですからね」ポッ
ミセ*゚ー゚)リ「もう私トソンのキャラが分かんないよ……」
ξ゚⊿゚)ξ(本当にミセリをいじるのが好きなのね……)
340
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:33:52 ID:UaKIE5qo0
ミセ*゚ー゚)リ「それじゃ、お会計もしたし帰りますか!」
(゚、゚トソン「ああ、ミセリは帰るんですね。さようなら」
ミセ;゚ー゚)リ「えっ何!? 二人だけで何かするの!?」
ξ゚⊿゚)ξ「別に何も約束してないけど……」
(゚、゚トソン「粋な冗談ですよ。遅くなる前に帰りましょう」
ミセ*゚ー゚)リノ「粋ではないけど……。あんまり遅くなると怖いしね。それじゃ!」
ξ゚⊿゚)ξノ「割り勘にしてくれてありがとう。またね」
ヽ(゚、゚トソン「次はミセリに全額奢らせましょうね」
ミセ;゚ー゚)リ「まだ言うか!」
341
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:35:22 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξっ「ただいまーっと」ガチャッ
ξ゚⊿゚)ξ(壊れてないわね……鍵)
壊れた鍵にいつしか慣れてしまった。
それが異常であるとは知りつつも、正常に役割を果たす鍵に小さくため息をつく。
やっぱり、アイツは来ない。
ξ゚⊿゚)ξ(……なんで来ないんだろう。やっぱ、しぃさんが関係してるのかな……)
部屋に入り、腰を落として一息つく。
何気なく取り出したスマートフォンには大量の通知。全てミセリからの不在着信だった。
ξ;゚⊿゚)ξロ「え、何……? 何かあったのかな……」
すぐにミセリに電話をかけ直す。一度目のコールは即座に途切れ、涙の混じった声が飛び込んでくる。
『ツン……! ニュース、ニュース見た!?』
ξ;゚⊿゚)ξロ「今帰ったとこだから見てないけど……どうしたの?」
『見て! 早く!!』
ξ;゚⊿゚)ξっー「な、なんなのよ……」
言われるがままにリモコンのボタンを押す。
画面に映ったのはニュース速報の文字。次いで、アナウンサーの淡々とした声。
342
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:37:07 ID:UaKIE5qo0
『本日17時頃、拝成市内のアパートで女性が殺害される事件が発生しました』
『遺体の身元は、美府大学4回生の猫田しぃさん。自宅であるアパートの部屋で遺体が発見されました』
『全身に刃物でつけられた傷があり、手口が似ていることから警察は、
女性連続殺人事件の犯人と同一犯と考え、捜査を進めているとのことです』
.
343
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:40:21 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξロ「…………え」
『しぃが、しぃが……! あの殺人鬼に……!!』
ゴトリ。
スマートフォンが床にぶつかり、小さく跳ねる。
アナウンサーの声、ミセリの声。ニュースの画面。
聞こえているのに、見えているのに、何ひとつ理解することができない。
なんで、どうして。
頭はぐるぐると、同じ言葉を繰り返すだけ。
ニヤけた顔が頭に浮かぶ。目の前にいるような気がして、手を伸ばした。
右手は虚空を撫で、座った自分の足の上に落ちる。
344
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:41:27 ID:UaKIE5qo0
『しぃ……』
LINE通話の画面から鼻水をすする音と共に掠れた声が漏れる。アイコンの自撮り写真と同一人物とは思えないほどに暗い声。
しぃの名を呼ぶミセリの声で、気づいた。気づいてしまった。
自分が感じているこの喪失感は、絶望感は、友人の死から生まれたものではない。
脳裏に焦げるほど焼き付いたニヤけ顔が、背を向ける。
ドアの鍵は、沈黙を保ったままだった。
第11話 『しずか』 終
345
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:42:27 ID:UaKIE5qo0
続けて最終話を投下します
346
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:43:41 ID:UaKIE5qo0
「またね」と笑顔で手を振る彼女の姿がふと、目に浮かぶ。
彼女の言う「また」は二度と来ない。
もう一緒にお酒を飲むこともない。
彼女を「しぃ」と呼び、話しかけることだってできない。
それらは全て悲しくて寂しいことだ。
ただ、彼女への感情よりも、彼女が殺されたことよりも。
私の前から姿を消した殺人鬼が、私ではなく彼女を殺したことこそが何よりも辛く、悲しく、苦しい。
彼女への罪悪感と自己嫌悪が胸から湧いて溢れていく。
どれほど申し訳なく思っても、自分に嫌気が差しても、この苦しみが塗り替えられることは決してない。
.
347
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:44:25 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξし×××のようです
最終話 『し×××』
.
348
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:46:06 ID:UaKIE5qo0
気付くと、布団の中で朝を迎えていた。
昨日のことが全て夢だったのではないかと期待したが、つけたテレビがすぐに期待を打ち砕く。
ニュースによると事件について新たな情報は特にないようだ。
乱暴にリモコンを押し、部屋に再び静寂が訪れる。
布団をかぶり直し、昨日のことを順に思い返す。
ミセリとの電話を切った後のことがあまりよく思い出せない。
記憶を辿るようにスマートフォンに指を滑らせる。大学から臨時休講の旨と家から出ないようにと注意喚起をするメールが届いていた。
ξ゚⊿゚)ξロ(……休講か。まあ、そもそも今日は行く気しなかったし……)
ふと、トソンとの通話履歴が目に入る。
ξ゚⊿゚)ξロ(……あー、そういえばミセリとの電話の後にかかってきたんだっけ)
ぼんやりとした頭で会話を思い出す。内容としてはミセリと話したこととほとんど変わらない。
いつも冷静なトソンの声音は珍しく震えていた。
ξ゚⊿゚)ξ(……何か、トソンとの会話で気になることがあったような……)
未だに半分眠った脳を叩き起こし、記憶を掘り返す。記憶の中のトソンの声はやはり暗かった。
349
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:47:08 ID:UaKIE5qo0
『……大丈夫ですかね、羽生くん』
ξ゚⊿゚)ξロ『……ギコくん?』
『ええ。付き合っていた彼女が急に亡くなって……しかも殺害されたなんて、余計に……』
ξ゚⊿゚)ξロ『……』
.
350
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:49:05 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξ(……そうだ、ギコくんのことを言ってたわ)
最愛の恋人を突然失った彼は今、どのような心境だろうか。
正直、トソンと通話していた時の自分はギコくんのことなど気にかける余裕はなかった。
アイツが私ではなくしぃさんを殺したショックはそれほど大きいものだった。
ξ゚⊿゚)ξロ(……ギコくん、今どうしているのかしら)
ギコくんに電話をかける。
コール音が一回、二回、三回。出ない。
四回、五回、六回。やはり出ない。
ξ゚⊿゚)ξロ「……」
まだ寝ているのかもしれない。もしくは電話に出るような気分になれないだけか。
きっとそのどちらかだ。しかし、妙に胸騒ぎがしてならない。
351
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:50:22 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ(……早まったり、しないわよね?)
嫌な予感がする。
布団から抜け出し、部屋着から洋服に着替える。
ギコくんに会いに行こうと思った。
なぜ、そこまでしようと考えたのか。
以前、彼のことが気になっていたからか。それとも、しぃさんに対する罪悪感を少しでも払拭したかったからだろうか。
おそらく後者だろう。
靴を履いたところで、大学からは外に出ないよう指示されていたことを思い出す。しかし、そんなことは関係ないとすぐに思い至った。
そもそも、件の殺人鬼はアイツだ。
それに、外に出ることでもしかしたらアイツに会えるんじゃないかなんて。浅はかな考えが頭をよぎった。
結局のところギコくんの為でもなく、しぃさんへの罪滅ぼしでもなく、ただ自分の為に行動しているだけなのだ。
薄々気がついていても引き返す気にはならなかった。
352
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:53:42 ID:UaKIE5qo0
外は静かで、人通りはほとんど無い。
皆、ニュースを見て恐怖しているのだろう。
ξ゚⊿゚)ξ(……アイツは簡単に鍵を壊すから、家に篭ってたって意味ないんだけど)
小石を蹴っ飛ばし、川沿いの道を進む。
そこで気がついた。自分はギコくんの住所を知らないということを。
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
自分で自分に呆れながらも、足が止まることはない。
場所が分からないのにも関わらず、止まろうという発想は生まれなかった。
やはり、私の目的地はギコくんではないのだな、と。自然と口元が嘲笑に歪む。
動く視線が誰を探しているのかなど、もはや明確だった。
353
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:55:24 ID:UaKIE5qo0
アイツを探して目と足は動き続ける。元々なかったひと気は目に見えて減っていく。
まるで、世界に一人だけ取り残されたかのようだ。
ξ゚⊿゚)ξ(……あながち間違っていないかもしれないわね)
私は取り残されてしまったんだ。
就活は上手くいかず、周りの友人の内定報告を聞くばかり。
他にも上手くいかないことばかりで、それこそ死んでしまいたいと思うくらい。
そして何より、アイツは私の目の前から消えてしまった。
ξ゚⊿゚)ξ(……ひとりぼっち)
自分しかいない道を歩く、歩き続ける。足が疲れてしまっても構わずに歩き続ける
やがて、孤独な世界に人影が現れ、初めて足が止まった。
ξ;゚⊿゚)ξ「……あれは」
橋の上。柵に体重を預けて川面を眺めるギコくんの姿。
その目は虚ろで、まるで今にも柵を越えて川に身を投げてしまいそうな──
.
354
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:56:31 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ「ギコくん!」
考えるよりも先に足は動いていた。空虚な瞳がゆっくりと、私の姿を捉える。
(,,゚Д゚)「……津出? 外に出るなって大学からメールあったろ。何してんだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ギコくんこそ」
(,,゚Д゚)「それもそうだな」
はは、とギコくんが小さく笑った。
いつも通りに振る舞おうとしているようだが、全身に覇気が感じられない。
放っておいたら今にも消えて無くなってしまいそうなほど、彼の姿は頼りないものだった。
ξ;゚⊿゚)ξ「……あの、さ。しぃさんのこと……」
(,, Д )「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「だ、大丈夫かなって……ギコくん……」
(,, Д )「……しぃのこと、守ってやれなかった」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
(,, Д )「……しぃ、もしかしたら俺のこと呼んだんじゃないかって」
(,, Д )「……俺に、助けを求めてたんじゃないかって、ずっと、考えてて……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……し、仕方ないわよ……。しぃさんと一緒にいたわけじゃなかったんでしょ?」
(,, Д )「……ああ。一緒にいれば良かったんだ。俺の家にでも呼んでいればこんなことには……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……っ」
355
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 04:58:32 ID:UaKIE5qo0
きっと、何を言っても彼を追い詰める言葉にしかならない。
次の言葉を紡げず、口を閉ざして地面に視線を落としてしまう。
結局のところ、無駄なのだ。
自分のことしか考えず、自分の為にここまで来た。そんな自分の言葉など、誰の心にも響かない。
こんな身勝手な私だから、アイツは私を見放したのではないだろうか。
(,, Д )「……津出」
ξ;゚⊿゚)ξ「え?」
急に名前を呼ばれて顔を上げる。
そこで初めて自分が視線だけでなく頭も垂れていたことに気がついた。
356
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:00:14 ID:UaKIE5qo0
(,, Д )「……俺の家、すぐ近くだから茶でも飲んでいかないか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「わ、悪いわよそんなの……」
(,, Д )「……茶ってのは建前だよ。津出さえ良かったら……」
(,, Д )「俺の泣きごとに、少しだけ付き合ってくれないか?」
ξ゚⊿゚)ξ「……!」
コクリと頷き、無言で踵を返す彼の背中を追う。
ギコくんは私よりも20センチは背が高い。歩幅だって私とは差があるはずだ。
しかし、彼の歩く速度は私でもすぐに追い越してしまえそうなほど小さい。
それは、私に気を遣っているわけではないとはっきり分かる。
何も喋らない彼に私も話しかけない。ただ足音が響くのみだ。
背を向けた彼がどんな顔をしているのか分からない。
357
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:01:47 ID:UaKIE5qo0
(,, Д )「……ここだ」
アパートの一室の前で足を止め、彼はゆっくり振り返る。
髪が顔に影を落とし、表情は窺えない。ただ、明るい顔をしていないことだけは明らかだ。
弱々しく鍵を差し、ドアノブを回す。
キィ、と小さくドアが鳴る。
(,, Д )「上がってくれ」
ξ;゚⊿゚)ξ「お、おじゃまします……」
しぃさんが何度も訪れたであろう部屋。
ギコくんと二人きりになることを今更ながら申し訳なく思う。
しかし、自分は彼の話に付き合うためにここに来たのだ。
身勝手な自分が二人にできる唯一の罪滅ぼしはきっとこれしかない。
偽善でも、自己満足でも。
これが私にできる最善のことなのだろう。
(,, Д )「適当なところに座っててくれ」
ξ;゚⊿゚)ξ「ええ」
ガチャリ、と鍵をかける音がやけに響いた気がした。
.
358
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:03:10 ID:UaKIE5qo0
(,, Д )「今、茶を淹れてくるから……」
ふらふらとギコくんがキッチンへ向かっていく。
その背中を見送りながら桃色のクッションに座る。
青色の家具が多いこの部屋では浮いた存在のクッションだ。
ξ゚⊿゚)ξ(……これは、きっとしぃさんの為の……)
予想を裏付けるかのように、すぐ近くに置かれた同じデザインの青いクッションが目に入る。
私が座っていいものではない。そう感じ、別のところに座ろうと立ち上がる。
その時、キッチンに通じるドアが開き、ギコの姿が現れた。
.
359
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:04:12 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……え」
彼は、先程までの無気力な歩き方とは打って変わって、しっかりとした足取りで近づいてくる。
その手の中にお茶はない。
代わりに、お茶ではない何かがある。
右手にしっかりと握られたそれは、照明を鈍く照り返す、包丁だ。
.
360
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:05:08 ID:UaKIE5qo0
(,,゚Д゚)「俺さあ」
なんてことない世間話を始めるかのように、いつもと変わらない口調でギコは話し始めた。
(,,゚Д゚)「ずっと、誰かを殺してみたいって思ってたんだよ」
(,,゚Д゚)「きっかけなんて覚えてない。それくらい昔から、当たり前のようにそんな気持ちがあったんだ」
表情を変えず、淡々と喋りながら距離が縮まっていく。
包丁は、立ち上がったまま動けない私に向けられている。
361
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:06:59 ID:UaKIE5qo0
(,,゚Д゚)「とは言っても、殺人なんて罪に問われるし、世間から肯定されるものではない。
それくらいのこと、当然分かっている」
(,,゚Д゚)「だからさ、あの殺人鬼が話題になった時、羨ましかったよ。同時に妬ましかった。
俺ができずにいることを、容易く何度も繰り返せるような奴がいるんだって」
そういえば、飲み会をした時に羨ましいだとか、言っていた。
あれは、心の底からの言葉だったのだと、妙に冷静な頭が判断する。
(,,゚Д゚)「しぃたちと飲んだ時あったろ?
あの時、西川さんに『諦める必要はない』って言われて、何となく背中を押された気分になったんだ」
(,,゚Д゚)「だから、しぃを殺した」
ξ;゚⊿゚)ξ「……!!」
ギコが包丁を手に現れた時から察しはついていた。
しぃさんを殺したのはアイツではなく、この男なのだと。
それでも、ギコの自白に少なからず動揺した。
362
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:09:04 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ「なん……で……しぃさんを……」
(,,゚Д゚)「都合が良かったんだよ、単純に」
ξ;゚⊿゚)ξ「……つ、ごう?」
(,,゚Д゚)「警戒されず家に上がれるし、それにしぃって美人だろう?
だからあの殺人鬼の仕業ってことにできると思ってな」
ξ;゚⊿゚)ξ「そんな理由で……!」
(,,゚Д゚)「ああ、それともう一つ。
俺、しぃの表情が好きって言っただろ?
どんな顔で俺に殺されるのか興味があったんだ」
ギコは無表情を保ったままだ。
にも関わらずその鉄仮面から、包丁の鋭い切っ先から、殺意が隠しきれていない。
違う。
隠すつもりなど毛頭無いだけだ。
363
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:11:10 ID:UaKIE5qo0
(,,゚Д゚)「しぃを殺して思ったんだ」
(,,゚Д゚)「絶望と恐怖に染まったしぃの顔を見て、動かなくなるまで包丁を刺し続けて、これだって思った」
(,,゚Д゚)「これこそが、ずっと俺が求めていたものだって」
(,,゚Д゚)「で、思いついたんだ。俺があの殺人鬼に成り代わろうって」
ξ;゚⊿゚)ξ「なに、いって……」
(,,゚Д゚)「綺麗な女を惨殺すれば、世間はあの殺人鬼の仕業だと思ってくれる。
あの殺人鬼を隠れ蓑にして俺は暴れ放題って算段だ」
気づくとギコはすぐ目の前まで迫っていた。
(,,゚Д゚)「包丁で刺して、切り落として、裂いて」
(,,゚Д゚)「美しかった顔が歪んで、血に染まって、最後にはただの肉塊に成り果てる」
(,,゚Д゚)「人を殺すって、すげえなあ。病みつきになるよ」
そこで初めてギコは笑った。
端正な顔立ちからは想像もできないほど、醜悪な笑顔。
(,,゚Д゚)「悪いなあ、津出。別にお前に恨みはないんだけどな」
笑った顔は私の方を向いている。そして、包丁も。
──殺される。
.
364
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:12:42 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ(……い、いやだ……)
ξ; ⊿ )ξ(死にたく、ない──!)
.
365
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:14:03 ID:UaKIE5qo0
嫌だ、嫌だ、殺されたくない。死にたくない。早く、早く逃げなくちゃ。
頭の中は警鐘と共に自分の声が反響する。
ξ;⊿;)ξ「……っや……いや……」
しかし、身体は麻痺してしまったかのように少しも動かない。
動け、逃げろ、と脳は騒ぎ立てるのに筋肉は沈黙を保ったままだ。
ただ視線だけが迫り来る包丁を追い続ける。
ξ; ⊿ )ξ「……っ」
喉元に包丁の切っ先が触れる。包丁の冷たさが全身に伝導したかと思うほど、急速に身体が冷えていった。
叫びたいのに、声を搾り出すことすらできない。
もうダメだ。
諦念から目を伏せる。目尻に溜まっていた涙が、頰を伝っていく。
その感触は、首に触れる包丁よりも冷たく感じられた。
ξ ⊿ )ξ(……せめて)
ξ ⊿ )ξ(せめて、アイツに殺されたかったな……)
.
366
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:14:48 ID:UaKIE5qo0
バキィッ、と。
鍵の壊れる音が部屋に響いた。
.
367
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:17:29 ID:UaKIE5qo0
ξ;⊿;)ξ「え……」
(;,゚Д゚)「な、なんだ!? 誰だ!?」
ギィ、とドアが開く鈍い音。土足のままの足音がゆっくりと近づいてきた。
( ω )「喉から狙うだなんて、センスが無いおねぇ。
そんなんで僕を騙ろうだなんて、おこがましいにも程があるお」
その男は、いつものように飄々と、いつものように貼り付いたニヤけ顔で、一歩一歩距離を詰める。
( ω )「先に喉を潰してしまったらさぁ、悲鳴が聞こえなくなっちゃうお?」
男は、ギコのすぐ背後に立つ。肩越しに見える表情は、笑っているけど笑っていない。
( ω )「耳が裂けるような悲鳴が、痛みに悶え苦しむ顔こそが、醍醐味じゃないかお」
( ^ω^)「ねえ?」
細い目が薄く見開く。
直後、男はギコの右手を素早くひねり、ギコの手から包丁が滑る。包丁は真っ直ぐ床に落ちた。
男は横たわる包丁を即座に蹴り飛ばす。包丁は壁にぶつかり乱暴に音が鳴った。
368
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:19:00 ID:UaKIE5qo0
(;,゚Д゚)「お、お前は……!」
( ^ω^)「ツンさん、平気かお」
ξ;⊿;)ξ「あ……うあ……」
( ^ω^)「何言ってるか全然分かんないお」
久しぶりに見たニヤけ顔にひどく安堵し、温かい涙が後から後から流れ出す。
( ^ω^)「ま、話は後だお。それより先に……」
こいつの処理だお。
ギコに視線を送り、底冷えするような低い声でそう言い放つ。
思わず、私まで竦んでしまうほどに冷めきった声色だった。
369
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:20:31 ID:UaKIE5qo0
(;,゚Д゚)「お前、もしかして、あの……!」
( ^ω^)「もしかしなくても、あのカリスマ殺人鬼だお」
(;,゚Д゚)「な、なんで、ここに……」
( ^ω^)「なんでって……僕の獲物に手を出されそうになったら、そりゃ来るお」
( ^ω^)「あのね、僕ね、自分の獲物に手を出されたことにね、とってもとっても怒ってるんだよねぇ〜」
( ^ω^)「こう見えて僕ブチギレてるからね〜。なんで僕より先にツンさん殺そうとしてるのかな〜?」
( ^ω^)「ねぇ、誰の許可取ったんだお? ねぇねぇねぇ。ねぇ?」
ギコが口を挟む間もなく、男はまくし立てる。
ギコは男の様子に圧倒され、立ち尽くしたままだ。
( ^ω^)「あーあ、男を殺してもなーんにも面白くないんだけどなー」
男は不気味なほどニッコリと笑い、やれやれとでも言いたげなポーズを取る。
( ^ω^)っ=lニニフ「まあでも、仕方ないか」
(;,゚Д゚)「っ……!」
370
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:22:29 ID:UaKIE5qo0
気づいた時には既に、男は包丁を手にしていた。
男は鞄を持っていないので、服の中に仕込んでいたものと思われる。
ギコの目は、男の持つ包丁に釘付けだ。
呼吸は荒く、目は大きく見開き、身体は小刻みに震えている。
もはや、声すら出せないほどに怯えきった姿は、まるで先程までの自分のようだった。
( ^ω^)っ=lニニフ「情けないお。ツンさんに包丁を突きつけておいて、自分に突きつけられたら怯えるだなんてね」
呆れた顔で男はため息をつく。
包丁を握る手は少しも震えていない。
鋭利なそれをギコに突き立てることに少しも躊躇がないことは明白だ。
証明するかのように男は笑顔で、
その表情に似合わない地を這うような声で、言葉を放つ。
( ^ω^)っ=lニニフ「どうせなら、君のセンス無い殺し方で殺してあげようか」
空いた手でギコの首の後ろを乱暴にわしづかむ。
恐怖に染まるギコの顔には目もくれず、ギコの喉仏に包丁を振り下ろした。
ξ;゚⊿゚)ξ「やめなさい!!」
.
371
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:24:05 ID:UaKIE5qo0
考えるよりも先に、口が動いていた。
包丁の先は、ギコの喉仏に突き刺さる寸前で止まっている。あとほんの一秒でも遅かったら、と考えるとゾッとした。
( ^ω^)っ=lニニフ「……なに自分を殺そうとした男を庇ってんだお。さっさと殺すから待っててくれお」
ξ;゚⊿゚)ξ「ダメよ! やめて!」
( ^ω^)っ=lニニフ「うるせえお」
ξ#゚⊿゚)ξ「やめなさい! 内藤!!」
( ^ω^)っ=lニニフ「……」
腹から声を出す私を見て、内藤の目からようやく殺気が薄れた。
私を見つめる内藤に言葉を続ける。
ξ;゚⊿゚)ξ「……自分が殺されそうになったとはいえ、知ってる人が殺されるのは後味が悪いわ……」
( ^ω^)っ=lニニフ「……ほんっと、君は甘ったれだおね」
ξ;゚⊿゚)ξ「逃がしてあげて」
( ^ω^)「……はあ、仕方ないおね。羽生ギコくん、よーく聞くお」
(;,゚Д゚)「……」
内藤はようやく包丁を持つ右手を下ろす。ギコの首を掴む左手はそのままに、淡々と喋り始めた。
372
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:27:00 ID:UaKIE5qo0
( ^ω^)「ツンさんに免じて殺さないでおいてやるお。ただし、警察に自首すること」
(;,゚Д゚)「じ、自首……」
( ^ω^)「そう。僕が猫田しぃさんを殺しましたって、ちゃんと警察に言うんだお?」
(;,゚Д゚)「……」
( ^ω^)「言っておくけど自首するふりして逃げても無駄だお。どこに逃げようと僕が殺しに行く」
( ^ω^)っ=lニニフ「見逃してあげるのは今だけだお」
(;,゚Д゚)「……は、はい……」
( ^ω^)「ほら、さっさと行く」
内藤に促され、ギコは震えながら玄関に向かって歩き出す。
内藤はギコの後ろ姿を一瞥し、興味を失ったように視線を外した。
力が抜け、足元にしゃがみ込む。
随分長いこと呼吸をしてなかったような錯覚がする。
膝に両腕を乗せ、居眠りをするかのように顔を伏せた。
そのまま息を吸って、吐いて。また吸って、吐く。
ξ;-⊿-)ξ(……ようやく終わった、のね)
もう一度息を吸って吐き、ゆっくりと顔を上げる。
直後、内藤の後ろに見えた光景に思わず目を見開いた。
ギコは、内藤が蹴り飛ばした包丁を拾い、血走った目を内藤の背中へと向けている。
.
373
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:28:37 ID:UaKIE5qo0
危ない、と思った時にはもう、ギコは内藤の背中に駆け出していた。
内藤は私の方を向いたままだ。
(#,,゚Д゚)「死ね!!」
世界がゆっくりと動いて見える。包丁が、スローモーションで内藤の背中に迫っていく。
目が追いかけるだけで、喉からは声が出ない。ギコに包丁を突きつけられた時と全く同じだ。
思わず目をギュッと閉じる。
今度は諦めではなく、恐怖から視界を閉ざした。
自分が殺されるのと同じくらい、これから目にするであろう光景は恐ろしいものだった。
374
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:29:45 ID:UaKIE5qo0
どれほど時間が経ったか分からない。
きっと、ほんの数秒程度の時間しか経っていないはずだ。
しかし、体感では何分、何十分も時間が経ったような気がする。
恐る恐る、目を開けた。
眼前の光景から時間は数秒しか経っていなかったことを察する。
内藤はギコの方を向き、包丁を握ったままのギコの右手首を掴み上げていた。
.
375
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:31:07 ID:UaKIE5qo0
( ^ω^)「愚かだおね。言ったじゃないかお、見逃してあげるのは今だけだって」
(;,゚Д゚)「……」
( ^ω^)「あ、もしかして見逃されたくなかったの?
だからあんな小物丸出しの台詞を吐きながら刃向かってきたんだおね」
(;,゚Д゚)「ち、ちが……」
( ^ω^)っ=lニニフ「分かった分かった。今、殺してあげ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「だ、だめ!!!」
( ^ω^)「……まだそんなこと言うのかお?
こいつはチャンスを捨てて殺しにかかってきたんだお。
これ以上の慈悲なんか与える必要ないお」
ξ;゚⊿゚)ξ「でも……」
( ^ω^)「……ツンさん、甘ったれが行き過ぎてるお。そこまでして庇う必要があるのかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「庇うっていうか……」
ギコを庇いたいわけではない。
たしかに、目の前で知り合いが殺されるのは嫌だし、目の前でなくとも胸糞悪い。
しかし、自分が戸惑っている理由はもっと別のところにある。
もっと自分勝手な私らしい答えがある気がするが、上手く気持ちがまとまらない。
ξ;゚⊿゚)ξ「と、とにかく、だめ……」
結局、内藤を見上げながら懇願することしかできない。
376
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:32:56 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「……」
静寂の中、見つめ合う。
私も内藤も、互いから目を逸らさない。
やがて、内藤は諦めたように息を吐き捨てた。
( ^ω^)「あーもう、分かった分かった。分かったから」
内藤はギコへと視線を戻し、未だギコの右手にある包丁を奪い取った。
自然な動きでギコの首筋へと包丁を這わせる。ヒィッ、とギコの喉から細い声が鳴った。
内藤は薄く目を見開いて、ゆっくりと話し始めた。
( ^ω^)っ=lニニフ「これが最終警告だお、ギコくん」
( ^ω^)っ=lニニフ「ここで僕に殺されるか、警察に行くか。さっさと選ぶお」
(;,゚Д゚)「……」
( ^ω^)っ=lニニフ「早く」
(;,゚Д゚)「……自首、します」
ギコが震える唇で小さく告げると、内藤は包丁を下ろした。視線だけはギコに刺したまま。
震え、あちこちにつまづきながら今度こそギコは玄関へと向かっていく。
やがて、鍵の壊れたドアが開き、閉まる音が聞こえてきた。
ようやく、本当に息をつくことができた。
.
377
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:36:27 ID:UaKIE5qo0
( ^ω^)「ツンさーん、平気かおー?」
くるりと振り向き、内藤は桃色のクッションにどかりと腰を下ろす。
座るついでに青いクッションを掴み、背後にポイっと投げた。
ξ;゚⊿゚)ξ「……なんとか。ねぇ、なんでここが分かったの?」
( ^ω^)「飲み会した時なーんかギコくん怪しいと思ったから、あらかじめ住所は調べておいたんだお」
( ^ω^)「しぃさんのニュースを見て、ツンさんの家に行ったんだけどいなかったから、もしかしたらここかなって」
ξ;゚⊿゚)ξ「……あ、来てたんだ」
( ^ω^)「多分入れ違いになったんだおね」
ξ;゚⊿゚)ξ「じゃあ、また鍵壊したの?」
( ^ω^)「もちろん!」
ξ;゚⊿゚)ξ「うわ、無駄にいい返事……」
( ^ω^)「怒らないのかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……怒らないわよ」
( ^ω^)「珍しいおね」
ξ;゚⊿゚)ξ「正直、壊されるのを望んでたとこあったし……」
( ^ω^)「え……この人やば……」
ξ;゚⊿゚)ξ「アンタにだけは言われたくないわよ……」
憎まれ口を叩きながら、たしかに異常な発言だったと先程の自分の言葉を思い返す。
そして、ギコを殺すことをあんなにも必死で拒んだ理由に、今更気がついた。
私以外の人間を殺してほしくない。
その言葉は、なんとなく癪なので口にしないことにした。
378
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:38:16 ID:UaKIE5qo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……ねぇ、なんでしばらく来なかったの?」
( ^ω^)「しぃさんについて調べてたんだお。母と似てることが気になってたから」
ξ;゚⊿゚)ξ「結局アンタとしぃさんはなんなの? 兄妹なの?」
( ^ω^)「異父兄妹で間違いないお」
ξ;゚⊿゚)ξ「お母さんが不倫してた……ってこと?」
( ^ω^)「だろうおね。小さい頃、母が家にいない時期があったんだお。
多分その時にしぃさんを産んだんじゃないかお」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「それ以外にもちょくちょく不倫はしてたみたいだお。家にはいたし、しぃさん以降出産はしてないんだと思うけど」
ξ;゚⊿゚)ξ「……お父さんは気付いていたのかしら」
( ^ω^)「気付いてたんじゃないかお? そもそも母が不倫してたのは父の気を引きたかったからだろうし」
ξ;゚⊿゚)ξ「え……」
( ^ω^)「なんだかんだ、母は父のことを愛していたんだお。愛し方がめちゃくちゃ下手だっただけで」
ξ;゚⊿゚)ξ「そうなの?」
( ^ω^)「父に対して束縛ばっかだったからね。自分は不倫して他の男の子どもまで産んだくせにね」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「顔だけはね、綺麗な人だったんだけどね」
( ^ω^)「僕が言うのもなんだけど、母は本当にどうしようもない人だったからねぇ」
379
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:39:24 ID:UaKIE5qo0
( ^ω^)「しぃさんもかわいそうだおね。母の勝手で産まれて、恋人のしょーもないクソ雑魚ギコくんに殺されちゃって」
ξ゚⊿゚)ξ「……正直、アンタがしぃさんを殺したんだと思ってたわ」
( ^ω^)「前からずっと言ってるじゃないかお。ツンさんを殺すまで誰も殺さないって」
ξ゚⊿゚)ξ「信じていいのか分からなかったし……」
( ^ω^)「そもそもツンさんの方が好みだし。母よりしぃさんよりツンさんの方が綺麗だお」
ξ゚⊿゚)ξ「うわあ嬉しくない」
380
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:41:26 ID:UaKIE5qo0
( ^ω^)「ところで、ツンさん」
ξ゚⊿゚)ξ「何よ」
( ^ω^)「クソ雑魚ギコくんに殺されそうになったとき、怯えてたおね?」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね。死にたくないって思ったわ」
( ^ω^)「ついに! あの死にたがりポンコツンさんが! 死にたくないって!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ポンコツンさん呼びやめろ」
( ^ω^)っ=lニニフ「やったやったー! じゃあ、早速殺しちゃうおね!!」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)っ=lニニフ「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)っ=lニニフ「……いやちょっと、無反応は無いんじゃないですかねーツンさんー。僕包丁突き付けてるんですけどツンさんー」
ξ゚⊿゚)ξ「……ニュースを見て、アンタが私じゃなくしぃさんを殺したと思ったから、すごくショックを受けたの」
ξ゚⊿゚)ξ「……それとアンタがくる直前にね、せめてアンタに殺されたかったって思ったのよ」
( ^ω^)っ=lニニフ「……待ってなんか嫌な予感」
ξ゚⊿゚)ξ「私、内藤に殺されたいんだわ。他の誰でもなく、内藤に」
( ^ω^)「やっぱそうきたか……なんでこう需要と供給が絶妙に噛み合わないの……」
381
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:43:07 ID:UaKIE5qo0
( ^ω^)「なんなんだお……ようやく殺せると思ったのに……」
ξ゚⊿゚)ξ「……で、アンタこれからどうすんの」
( ^ω^)「どうするって?」
ξ゚⊿゚)ξ「殺さないんでしょ、私のこと」
( ^ω^)「殺すことを受け入れた相手なんか殺しても仕方ないからね」
ξ゚⊿゚)ξ「だから、どうするのかなって……これから……」
( ^ω^)「どうするも何も、ツンさんが僕に殺されることに恐怖を抱くくらい、幸せになるようになんやかんやするお」
ξ゚⊿゚)ξ「……相変わらずざっくりしてるわね」
( ^ω^)「で、ツンさんが僕に殺されたくないって思うようになったら殺す」
ξ゚⊿゚)ξ「変わらないわね」
( ^ω^)「変わらないお」
ξ゚⊿゚)ξ「ていうか、アンタに殺されることに恐怖を抱くのと幸せってあんまり関係なくない?」
( ^ω^)「いいんだお、細かいことは」
ξ゚⊿゚)ξ「……幸せ、ねぇ……」
( ^ω^)「なんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「……別に」
( ^ω^)「急に沢尻ツンカさんになるのやめて」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「え、無視?」
382
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:44:26 ID:UaKIE5qo0
内藤が来る前の私と、内藤が来てからの私。
たぶん、内藤が来てからの方が、幸せ。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚ー゚)ξ
( ^ω^)「沢尻ツンカさんだと思ったら急にニヤニヤし始めた……この人情緒がおかしい……」
ξ゚⊿゚)ξ「ニコニコと言いなさい」
( ^ω^)「ニヤニヤ」
ξ゚⊿゚)ξ「常にニヤけ面のアンタに言われるの腹立つわ……」
( ^ω^)「ニヤニヤ」
ξ゚⊿゚)ξ「うるさい」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ξ*゚ー゚)ξ
.
383
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:45:11 ID:UaKIE5qo0
ξ゚⊿゚)ξし×××のようです(^ω^ )
最終話 『しあわせ』 終
.
384
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 05:49:50 ID:UaKIE5qo0
百選までには完結させると目標を立てた結果、こんなにもギリギリになってしまいました。
完結させることができたのはひとえに読んでくださった皆様のおかげだと思っています。
乙や感想、そして支援絵までいただけて本当に嬉しかったです。とても励みになりました。
読んでいただき、ありがとうございました!
385
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 06:55:21 ID:Iwtv2Gw.0
乙!
386
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 06:57:01 ID:DxzkBWic0
おつ!!
冒険物以外で久しぶりに次が早く!と思える作品でした!!
387
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 07:35:53 ID:BZMXcZkI0
乙でした!!終わってしまった…
388
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 07:42:36 ID:VOTBH8z60
マジかよ完結かホホォイ!
乙!最後までゾクゾクする名作だった
389
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 08:53:40 ID:eykxixo20
めっちゃ面白かった!乙!
これでギリギリ100選に推薦できるな!
390
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 11:01:05 ID:x1LT88BA0
自首促しててワロタ
391
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 11:01:17 ID:plroY6UE0
乙!
すごく面白かった
392
:
名無しさん
:2019/05/10(金) 11:42:41 ID:ge.2ykjU0
おっしゃ推薦させていただくぜ!
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