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月が映える夜がキレイなようです

42名無しさん:2017/04/20(木) 21:13:30 ID:D1OUooxc0

( ^ω^)「……『点』は」

('A`)「?」

( ^ω^)「その時に打つから『点』になるんだお」

( ^ω^)「打てなかった『点』は、繋がった線に対して意味をなさないんだお」

('A`)「???」

( ^ω^)「歪な形でもいいから、あの時打った『点』を使って形を描きたかったなんて後出しのジャンケンなんだお」

('A`)「お、おう」

( ^ω^)「思い通りの点を打たれるまで伸び続ける線なんて存在しないんだお……」

('A`)「……続き、聞かせてくれよな」

( ^ω^)「つまらん話だお」

43名無しさん:2017/04/20(木) 21:14:05 ID:D1OUooxc0

………
……



大学生としての生活をスタートさせてからしばらく経ったある日、久々に見る名前からのメッセージが届いた。
ツンからのメッセージだった。

「久しぶりに会いませんか」

ひどく短いメッセージが、ポツンと一通だけ送られてきたのだ。
僕もそれに応えるように、「いいよ」と短いメッセージを彼女に送り返した。

44名無しさん:2017/04/20(木) 21:14:41 ID:D1OUooxc0




ξ゚⊿゚)ξ


久しぶりに出会った彼女は、少し大人びて見えた。
それは化粧のせいか、はたまた少し重ねた年月が彼女を大人びて見せたのかは分からない。

そんな彼女と僕はまた再び出会った。
あの日のまま、ただ年を食っただけのように思える僕にとって、少し後悔する理由には事足りた。

せっかく調べた雰囲気のいい店であこがれた彼女と2人きりでいい雰囲気なのに、僕はずっとジントニックをすすっている。

ξ゚⊿゚)ξ「最近さ……」

( ^ω^)「うん……」

どうしたらいいのか、お互い距離感を図りながら会話をしてるような固い雰囲気が続く。
色々な事を考えながら僕は悶々としていた。

45名無しさん:2017/04/20(木) 21:15:57 ID:D1OUooxc0


ξ゚⊿゚)ξ「あのさ、あの日あったじゃん」


突然彼女がラフな口調で突っ込み気味に話しかけてきた。

( ^ω^)「あの日?」

ξ゚⊿゚)ξ「カフェで出くわしちゃったあの日」

意外なことに、踏み込んできたのは彼女の方からだった。

ξ゚⊿゚)ξ「あの日は焦ったなー、まさかあんなところ見られると思わなかったもん」

( ^ω^)「おっおっ、僕も焦ったお」

ξ゚⊿゚)ξ「そうなの、あの日までちゃんと隠しきれたのになーって」

46名無しさん:2017/04/20(木) 21:16:33 ID:D1OUooxc0

( ^ω^)「あの日まで?」

ξ゚⊿゚)ξ「うん、だってあの日に丁度別れたんだ」

( ^ω^)「えっ」

ξ゚⊿゚)ξ「まさか別れの現場にブーンが立ち会ってくれるとは思わなかったわ」

僕のジントニックを飲む手が、ピタリと止まった。

ξ゚⊿゚)ξ「それでね、今日もお別れを言いに来たの」

ξ゚⊿゚)ξ「私の踏ん切りって意味でもね……」

(;^ω^)「お別れ? お別れってなんだお」

47名無しさん:2017/04/20(木) 21:17:08 ID:D1OUooxc0

ξ゚⊿゚)ξ「私ね、ブーンのことが好きだったの」

手に持っていたグラスを、思わず落としそうになる。

ξ゚ー゚)ξ「ずーっと見てたわ、あの日からずっと」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、ブーンは振り返るどころか、私を避けているようにさえ見えた」

ξ゚⊿゚)ξ「だからね、私も諦めざるを得なかった……」

(;^ω^)「そ、それは違……」

ξ゚⊿゚)ξ「ううん、言わないで」

ξ゚⊿゚)ξ「そうしないと私、後悔しちゃう、きっと」

(;^ω^)「僕だって、そんなこと言われて、後悔するお……」

48名無しさん:2017/04/20(木) 21:17:43 ID:D1OUooxc0

ξ゚⊿゚)ξ「もし、あなたの思いが違うとして、あの時にはもう戻れないのよ」

ξ゚⊿゚)ξ「すれ違ったお互い、後悔のまま終えましょうよ」

そう言って彼女はポロポロと涙をこぼして切々と語り始めた。

バンドメンバーとしての思い出、あの時の彼との思い出、そして如何にして僕に惚れ込んだか……
数年の胸のつかえを語りきった彼女は、最後にはすっきりとした表情で僕の元から去っていった。

そして僕の元には、ただモヤモヤとした思いと、やりきれない思いだけが残ったのだ。

49名無しさん:2017/04/20(木) 21:18:19 ID:D1OUooxc0

………
……


( ^ω^)「……こんな感じだお」

('A`)「……友達じゃあさ、ダメだったのかな」

('A`)「だってさ、そんな泣くほど思ってたんだろ? なのに言って、ハイおしまいってさ」

( ^ω^)「ブーンだって最初はそう思ったお」

( ^ω^)「でも……仮にもあそこまで思った相手に対して友達って括りは一番しんどいんじゃないかお」

( ^ω^)「実際、自分が彼女の立場だったら、そうしてたと思うお」

( ^ω^)「……もう過ぎた『点』は打てないんだお」

50名無しさん:2017/04/20(木) 21:18:54 ID:D1OUooxc0

( ^ω^)「あの時打てたはずの『点』が打てないと分かったからと言って、今更戻ることは出来ないんだお」

( ^ω^)「既に『線』は引かれていて、次に打たれる『点』を探しているんだお」

('A`)「……なんつーか、やるせねーな」

( ^ω^)「ドクオが振った話だお」

( ^ω^)「……もし、もっと僕に根性があって彼女に『サヨウナラ』をしっかり言えたらまた今の気分は違ったのかもしれないお」

('A`)「……青春だねえ」

( ^ω^)「……青春『だった』お」

('A`)「春は、通り過ぎちまったか」

51名無しさん:2017/04/20(木) 21:19:32 ID:D1OUooxc0

その日の帰り道、僕はドクオにカフェでフラペチーノを奢ってもらった。


('A`)「なんつーか、悪かったな」


なんてガラにもない事をドクオが言うもんだから、僕は肩をポンポンと叩いてやった。


あの時打った『点』。


それがどうであれ、その『点』から伸びる線は止めることは出来ずに伸びていく。
その伸び続ける線を後からまた付けられた『点』の上から眺めて、あの時を後悔しながら過ごしていくのだろう。


僕は飲み残したフラペチーノをずっと吸い込みながらそんな事を思った。

薄くなったベリーの香りと、ちょっとの甘酸っぱさだけが口の中に残った。

52名無しさん:2017/04/20(木) 21:20:12 ID:D1OUooxc0


『春が通り過ぎていくようです』


おわり

53 ◆sVJSKQRVSQ:2017/04/20(木) 21:21:46 ID:D1OUooxc0
以上です。ありがとうございました!

54名無しさん:2017/04/20(木) 21:48:21 ID:Tg9HtPPY0

じんわりと染みてきて何周か読み直したくなる話でした

55名無しさん:2017/04/20(木) 22:21:36 ID:el5LVZvo0
ええねぇ

56名無しさん:2017/04/21(金) 00:20:40 ID:aTXbNiVI0
乙乙
こういう雰囲気の話好き

57名無しさん:2017/04/22(土) 09:55:03 ID:s5bWSdNk0
どっちの話も良かった
特に2作目の雰囲気が大好き
乙でした

58名無しさん:2017/04/22(土) 17:33:12 ID:/qEI90HQ0

余韻がいい感じ

59名無しさん:2017/04/25(火) 19:27:51 ID:Btd4KFtI0
特別大きなことが起こるわけでもないのになんかすごく好きだ



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