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( ^ω^)達は今が楽しければなんでもいいようです

476ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 23:14:39 ID:5hZ/Ygow0

 ワカッテマスの足とジョルジュの掌が触れた瞬間、炎は燃え上がった。

 虚を突いた完璧な一撃。
 どのような武芸の達人でも、これを鞘に収めることなど不可能だ。

 確実に命を刈り取りにかかったからこそ、そこから先の想定など出来るはずもない。
 これは驕りではなく、この土壇場において、前代未聞の覚醒を遂げたジョルジュが相手だったことが悪いのだ。

 _
( ゚∀゚)(武芸百般、魔術だって例外じゃねぇ)


 足首を掴む。この手を離すようなヘマなど、二度はない。

 ワカッテマスの足首を着火点に、下半身を伝い、炎は頭の天辺まで舐り尽くす。
 消し炭すらこの世に残さない。

 この炎を依代に、一切の加減無しの火龍を――

477ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 23:23:11 ID:5hZ/Ygow0

( <●><●>)「と、思ってるんでしょう?」

 炎が舌舐めずりをしながら現れた瞬間。
 ワカッテマスの蹴撃が加速した。

 ジョルジュの掌は受け止めたが、その重みは、彼の想定を超えていた。

 _
(;゚∀゚)(こいつ……!)

 全体重をかけた蹴撃だ。そのまま押し込むように、ワカッテマスの身体が宙に浮く。
 軸足の支えを無くした上段蹴りはたちまち威力を失う。
 一秒未満の世界の中、ワカッテマスの動作だけが淀みなかった。

 炎が燃え上がるよりも速く、胴が、身体全体が廻る。
 地を離れた軸足は円を描く。

 そして受け止められた自身の足を、受け止めるジョルジュの掌を越して――

 撃ち抜く。ジョルジュの頭部を――!

478ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 23:33:21 ID:5hZ/Ygow0

 _
(; ∀ )(こいつ……一体どこから布石に……」

 衝撃の直前で首を反らし、頭蓋損傷を免れる。
 だがその威力を全て殺しきることは敵わず、揺れる脳で思考する。

 吐き気や目眩などとうに置き去り。
 闘気のみによって鮮明に保たれた視界の中心で、火の粉を纏いながら着地するワカッテマスを睨む。

 _
(; ∀ )(やられちまう。やられちまうなぁ……)

 強敵として認めた上で、完全に裏をかかれた己に対する自虐がこみ上げる。
 そしてそれを一瞬で塗り潰すように湧き上がる――

 ――更なる闘争本能。

 燻るうなじに籠もる熱を吐き出すように、ジョルジュは力の権化の名を呼んだ。

 _
( ゚∀゚),,’・「ファフニイイイイイイイイイイイイイイイイルッ!!」

479ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 23:34:20 ID:5hZ/Ygow0
変わり身の術返し返し返し
今日はこのへんで
おやすみ

480名無しさん:2017/08/07(月) 23:35:00 ID:n1./65rc0
だああああまたいい所で!!


481名無しさん:2017/08/07(月) 23:48:21 ID:Bens4ZRE0
ういうい乙乙。

482名無しさん:2017/08/07(月) 23:54:07 ID:33VFbM1k0
乙乙
今回も熱い熱い

483名無しさん:2017/08/08(火) 03:46:45 ID:JjMdqEKI0
明日も来いよな

484名無しさん:2017/08/08(火) 17:48:05 ID:hEKgO8220
ファフニール加わったら流石にワカッテマスがヤバそうだ
ペニサスは合流できるかな

485名無しさん:2017/08/08(火) 17:59:26 ID:jX5mY7zA0
火龍さんは化け物に挟まれて無事なのだろうか

486ほるひす ◆AdHxxvnvM.:2017/08/08(火) 23:24:14 ID:pmv54xWg0
ほるひすだよ ほーむらんをうつけどひっともうつよ

487ほるひす ◆AdHxxvnvM.:2017/08/08(火) 23:33:39 ID:pmv54xWg0

 収束する剛気。
 極限状態まで練り上げられた闘気と、彼のみが持つ固有のオーラが可視化する。

( <●><●>)「――!」

 ワカッテマスが察知してから動くまでは速かった。
 だが一瞬、ほんの一瞬気が竦んでしまった。
 その遅れは致命的で、彼の肉薄に対して引き離すように、闘気が満ちる。

 _
(; ∀ )「っっっっっっっっ!!」

(;<●><●>)「こっの……!」

 思わず声が漏れる。
 ワカッテマスにしてみれば、珍しいことだった。
 動揺を始めとした心の機微を見透かされるということは、刹那の削り合いにも等しい闘いにおいてかなりのリスクを背負うことになる。
 それを誰に学ばずとも本能で理解している彼にとって、これ以上の不覚は無い。

488ほるひす ◆AdHxxvnvM.:2017/08/08(火) 23:46:42 ID:pmv54xWg0

 地獄の門が開く。
 ジョルジュの両の手がワカッテマスに向かって伸びる。

(;< >< >)(食い止める……いや、不可能だ。躱す、何処に?)

 左右どちらに避けようと、はっきりとこちら側を目で捉えているのだから――

(;<●><●>)(照準が逸れる。そんな下手を打つ筈が無い)

 左右が駄目なら跳ぶか。否、飛ぶ鳥は撃ち落とされるのが道理。
 自ら不利に飛び込むようなもの。ならば――

 そのように目まぐるしく動く思考の中、彼が見出した活路はシンプルだった。
 獄炎が迸る直前、彼は足を止めた。
 右手に収束する龍王気。

 振り上げた拳が貫くものは――

489ほるひす ◆AdHxxvnvM.:2017/08/08(火) 23:58:03 ID:pmv54xWg0

 干上がった地面だった。
 高純度の闘気を纏った拳は土を砕く。
 土砂が噴き出すようにして、壁となる。
 抉り取られた地面。大穴の中心部にワカッテマスの身体が沈む。

 獄炎が駆る。
 ちょうどワカッテマスの頭上を駆け抜けたそれは燃え広がり、見上げた彼の視界は赤く染まる。
 
 仮にワカッテマスが単純に地に沈む力を有していたとして、それをそのまま行使していれば――
 彼は土砂諸共焼き尽くされていただろう。
 直前に巻き上げた土砂がジョルジュの視界を潰し、結果としてワカッテマスは事なきを得た。

 だが一瞬すら安堵する余裕は無い。
 無限の再生力を持った火龍が、彼の目の前で顕現したのだから。

490ほるひす ◆AdHxxvnvM.:2017/08/09(水) 00:39:19 ID:hCUG/R5E0

( <●><●>)(火龍の火に紛れて一旦離脱……賭けだな)

 仮に火龍に自我と呼べるものがあったとしたら。
 ジョルジュのもう一つの目と言っても過言ではないそれの足元で堂々と離脱するのは愚図の極みだろう。

( <●><●>)(だからといってこのまま蒸し焼きになる道を選ぶのは、愚図以前の話)

 ならばと、右手を火龍の頭上に翳し、収束する気を人差し指に先で練り上げる。
 銃を象り、気弾の射出口と化した指を向けた。

 ( <●><●>)「穿て。我が龍王気」

 空高く昇る闘気の渦。
 刹那、放たれる龍王気は頭上の炎を軽々と打ち破り、雨が降り注ぐ曇天の空がワカッテマスの視界に広がった。

491名無しさん:2017/08/09(水) 12:40:29 ID:nCoqv/Us0
ねたか

492ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/09(水) 21:08:47 ID:hCUG/R5E0
アホみてえに体調が悪いので養生します
申し訳ない

493名無しさん:2017/08/09(水) 21:35:11 ID:mlSBEP9E0
おう、早めに寝ろよ

494名無しさん:2017/08/10(木) 21:45:09 ID:hR5Pfbm60
ゆっくり休んでくれな

495名無しさん:2017/08/14(月) 19:07:13 ID:MEmFDnb60
大丈夫かー

496名無しさん:2017/08/29(火) 17:46:59 ID:DkLEpA/I0
再び待つ期間の始まりかな……

497名無しさん:2017/08/29(火) 18:21:05 ID:agIO0BeQ0
次の紅白で来てくれるやろ

498ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/12/29(金) 23:15:12 ID:GXWiXVOA0
自分でケツ叩かねえといつまで経っても投下出来ねえなと思い立ったので来週末あたりに投下すると宣言しとく。とか言って間に合わなかったらごめん。
正直内容忘れたって人もいると思うんで、よかったらお暇な時にでも読み返しといてください。
来週末とは言ったが早く書けたら書け次第投下。その際は前日にでも告知します。

499名無しさん:2017/12/30(土) 00:39:53 ID:ZpRwfMyo0
っしゃあ!
待ってるぜ

500名無しさん:2017/12/30(土) 00:41:14 ID:TzqwMd7A0
おいおい今日読み返したばっかだよ期待してる

501名無しさん:2017/12/30(土) 17:35:46 ID:QTW9CQzo0
ありがたき幸せ

502名無しさん:2017/12/30(土) 18:23:31 ID:GUUfp/YE0
おわーーーー!!!!!!待ってる!!!!!!!!!!

503ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/01/05(金) 20:14:24 ID:54M/tqhc0
明日投下。まだ一レスしか書けてないけど間に合わなかったらながらにしてでも投下。よろしく。

504名無しさん:2018/01/05(金) 22:01:35 ID:f.BmXwL20
ッッッッッッッッッッシャ

505名無しさん:2018/01/05(金) 23:18:07 ID:ypIsXcpY0
っっっっっっぇいっ

506名無しさん:2018/01/05(金) 23:22:56 ID:fQJRVthw0
きも

507:2018/01/06(土) 03:48:39 ID:4LJTq3vw0
判断するのに時間などいらない。
 否、判断するという行為自体が命取りなのである。
 ワカッテマスはそれを知っていた。
 穴熊にすらなり得ない、自身がこじ開けた地の底を、飛び出す。

 曇天を覆い隠すまばゆい炎がそこにあった。
 火龍の胴に向けて一突き。空を切る拳。
 不可視の力の波が龍を穿ち、鈍い音を立てる。
 途切れる炎。突破口が見えた。
 だがその道は暗い。雨は、よりいっそう激しくなる。
 たった一つ、命の危機から脱出出来る道であると同時に、そこは魔物が待ち構える門でもあった。

 _
( ゚∀゚)

( <●><●>)

 躍り出て、真っ直ぐ相対するジョルジュ。
 自身の手足同然とも言える火龍の異変を察知し、即座にワカッテマスの進路を塞ぐ。
 それが出来るのは稀代の猛者のみであり、ワカッテマスは自身と相対する敵全てがその称号を名乗るに値する者であることを知っている。

 例えば熱いものに触れ、咄嗟に手を引くように。
 例えば自分の鼻先に飛んできた羽虫を手で払うように。

 身体に染み付いた至極当然の反応のみによって、彼の身体は動いていた。

508:2018/01/06(土) 03:49:50 ID:4LJTq3vw0
 前方に発生する魔法陣から紅蓮の炎が顕現することは解っている。
 当たり前のように身を屈め、龍王気で地を抉る。土砂の壁が巻き起こる。

 _
( ゚∀゚)

 当然、ジョルジュもそれを解っている。
 例えるならこれは盤面の闘い。必死をかけるための読み合い。
 ジョルジュが押していることは紛れもない事実である。
 ワカッテマスの命を取りこぼさない為の選択、予測。
 全身の細胞がそれをひり出している。
 詰めにかかっているからこそ、それと同時に芽生える感情は、恐怖だ。

 ジョルジュは、龍の気を纏うこの獣を確かに恐れていた。
 盤面は動いた。故に、詰め損なったその時は自分が詰められる番だ。
 本能的にそれを理解している、恐れているからこそ、彼の目はワカッテマスを的確に捉える。
 
 炎が舞い上がる。不可視の闘気がぶつかり、風が吹き荒れる。
 雨は、未だ弱まらぬまま。
 熱によって歪められた視界。影を捉える。
 ジョルジュの拳の一突きは、この空間の中で何よりも洗練されていた。

509:2018/01/06(土) 03:51:48 ID:4LJTq3vw0

 心臓をめがける。ただそれだけでいい。
 渾身の力を込めれば、イメージは具現化する。

 その筈だった。

 _
( ゚∀゚)「――っ!!」

 ジョルジュの拳が受け止められる。
 思考よりも早く、ジョルジュの術式が発動する。
 吹き出す炎。
 だが、それよりも速いワカッテマス。

( <●><●>)

 ジョルジュよりも、彼自身が驚いていた。
 受けた拳が、あまりにも軽かったからだ。
 一撃を受けきれなければ必死――
 その認識に応えていた身体がよろめくが、瞬きと同じ速さでその差異を修正する。

( <●><●>)(……これは、いける!)

 更に低く身を屈め、土竜のように這う。
 すれ違いざまに放った手刀が、ジョルジュの脇腹の肉を掠め取った。

510:2018/01/06(土) 03:52:41 ID:4LJTq3vw0

 _
(;゚∀゚)「ぐっ……」

 ジョルジュは自身に、いや――学園に齎された変化に気付いていた。
 唐突に重力の負荷が増したような、耐え難い疲労感。
 最早火龍を維持することすら難しい。
 無いのだ。ジョルジュの魔術をこの世に具現化させるだけの力が。

 _
(; ∀ )(やべえ……! 振り切られる!)

 現時点で学園を取り巻く大気の異変を感知出来る者と言えば、意思疎通が可能な者に限定すれば彼とデレの二人だけということになる。
 つまり、この二人の活動の源となる力、魔術を行使する力が急速に枯渇したのだ。

 奇しくもデレはそのその元凶である存在の顕現自体を察知出来ていた。
 だからこそ危機的状況に陥ることはなかったが、全てが彼にとって間が悪かった。

 学園から吸い上げられた力の名はエーテル。
 ジョルジュがワカッテマスの背中を捉え、顔を歪めているその時、ペニサスがこの力の解析に着手した。

511:2018/01/06(土) 03:53:17 ID:4LJTq3vw0

 そのことをジョルジュが知る術は無い。
 だが、本能的な危機感が安易にワカッテマスを見逃すことを躊躇わせていた。

 _
(;゚∀゚)

 と、同時に安堵。
 あのまま戦闘を続行していたら、その中で自身の力の性質を看破されていたかもしれない。
 万全であれば即座に追っている背中。
 小さくなるそれを視界に収め、奥歯を噛みしめる。

 ここでワカッテマスを見逃すことは理にかなっている。
 それを体のいい誤魔化しだと糾弾するのは武人、強者としてのプライドだ。

 矛盾した二つの感情。
 それと退くも進むも劣勢には変わりないもどかしさが、元凶への怒りに転換されるのはすぐだった。

 最上の愉悦をもたらすレベルの闘争に水を差すような真似をした無粋な輩。
 本来ならばこの怒りに任せて何をおいてでも制裁を加えるところだ。
 だが元凶の正体は解らずとも、それが人の身で触れてよいものではないことくらいは解る。

 _
(; ∀ )「なんだ……何が起きてやがる」

 ジョルジュは生まれて初めて、一方的な死を予感した。

 ━━━━━━━━━━━━━━
 ━━━━━━━
 ━━━━━━

512:2018/01/06(土) 03:53:54 ID:4LJTq3vw0







 ああ、なんだ。好きってただそれだけのこと――






.

513:2018/01/06(土) 03:54:25 ID:4LJTq3vw0

 これは今になって気付いたこと。
 どうやらこの身体は鳥肌が立たないらしい。
 身体を弄っているのは私自身だけれど、こういった細かなところに関してはもう覚えていない。

 闘い、享楽を貪ることに順ずるにあたって不要な機能は大抵取っ払ったと思う。
 そのわりには、私は人の言葉によって傷つけられた時に、喉の奥あたりに鉛が詰まったような不快感に苛まれるのだ。
 ここだけは、心だけは無くせない。
 そう思ったにもかかわらず、腸が煮えくり返るような言葉を浴びせられた時も、聞いているだけで舞い上がってしまうような言葉を送られた時も――
 口をついて出るのは自分の感情を示すことを放棄した軽口ばかり。

 ('、`*川

 こんな具合に、関係の無いことを考えている私の頭はポンコツだ。
 だが今はそれでいい。しらふの自分を正しく認識して、壊れない自信が無い。

 雨の中、切る風が重い。
 全てがまとわりついてくるみたいだ。
 不快を訴える身体と思考を切り離すために、データベースにアクセスする。

 あの災厄の正体について。
 検索、否、情報という枠に収め、遠ざけるため。

514:2018/01/06(土) 03:54:54 ID:4LJTq3vw0

 吸血鬼の真祖の特性について、何かめぼしい情報は無いかと調べる機会は多かった。
 ただ、これに関連付けて調べることは今まで無かった。

 第一魔法セント・ジョーンズ。

 交わる筈の無い点だ。アレの口からその名が出るとは思ってもいなかった。
 辿り着いたのはニイタ国という島国の伝承、キリバリーの火。
 それは人があらゆる自然の威光を神と崇めていた遠い昔の話。
 御伽噺のような、現実味の無い物語だった。

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 キリバリーは人が極寒の前に朽ち果てようとしていた折に現れた。
 彼は大いなる知恵と、力を持っていた。
 彼は今まさに滅びようとしている力なき種を哀れんだ。
 彼は人に火を授けた。力なき者の躯を焼べて燃え上がった炎は天まで昇った。
 人々は彼に感謝した。そして、共存を提案した。
 気の遠くなるような時を過ごしてきたキリバリーは人の提案を快く思う。
 だが問題があった。彼の大いなる権能は、躯を糧としなければ発揮されなかったのだ。

「この火が無ければお前たちは死に絶えてしまう。だがこの火はお前たちの同胞の肉を捧げなければ消えてしまう」

 人は彼の言に従い、力尽きた同胞を焼べた。

515:2018/01/06(土) 03:55:40 ID:4LJTq3vw0

 キリバリーの火を囲うようにして、極寒の地に街が興った。
 人々は富み、誰もが自然の威光を前に力尽きずに済む世になった。
 焼べられる死人の数は時を重ねるにつれて減ってゆく。
 人は極寒に曝される恐怖を忘れていなかった。だから、生者すら火に焼べ始めた。

 そうしなければ種は滅びる。
 その道理を知っているから、キリバリーは彼らの行いを咎めなかった。
 火に焼べられる力なき者が、自身への贄とすげ替えられても――

 力なき者は火を恨んだ。キリバリーを恨んだ。
 だが、人々はキリバリーの火が無くては生きてゆけなかった。

 そんな折、一人の賢人が現れた。
 名は、ジョーンズという。彼には力が無かった。だが、人という種の中で誰よりも賢かった。

 ジョーンズはキリバリーではなく、自分の知恵のみで火を起こしてみせた。
 その街に生まれ、誰よりも街を愛したジョーンズだからこそ、贄として老人や女が焼べられてゆくのが許せなかった彼は民を統べ、扇動する。

「我々にキリバリーの火は必要無い」

 そうして人はキリバリーと袂を分かつ。

516:2018/01/06(土) 03:56:23 ID:4LJTq3vw0

 民を率いたジョーンズとキリバリーの闘いは七夜に及んだという。
 最後の日、キリバリーはジョーンズの聖槍に穿たれ、霧散した。
 その時、人は始めて陽の光を見た。凍てついた地は溶け、やがて草木が芽吹く。

 人々は全てが終わった時、ようやく気付いた。
 この地に極寒を齎していたのはキリバリー自身であり、最初から彼は人を誑かし、贄を食らうつもりだったのだと。

 キリバリーを打ち破った日を祝福の日とし、人々は七つの夜を迎える度にセント・ジョーンズ(偉大なるジョーンズ)を崇め、互いの生を祝った。
 まやかしの火を鎮め、人々に真の火を齎したジョーンズは今もなお魂となって世を見守っている。

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 ━━━━━

 ('、`*川

 セント・ジョーンズは高名な魔術師だ。
 彼の出生にまつわるエピソードはそれこそ十はくだらない。
 これはその中の一つ。
 この国ではセント・ジョーンズがキリバリーを滅ぼした日を日曜日とし、森羅万象を操った彼の術にちなんで今の曜日が起きたとのこと。

517:2018/01/06(土) 03:56:55 ID:4LJTq3vw0

 普通に生きていれば名前を聞くこともない辺鄙な国の伝承だ。
 そもそもセント・ジョーンズはハイナルで生まれた魔術師であるという説が支配的だ
 だからこの御伽噺が実際にあった話だとは到底思えないけれど……

 当の本人と思しき存在の言葉が、この伝承を裏付けるようなものばかりなので、認めたくなくても認めなければならない。
 あれは人の手に負えるものではなく、力という一点のみにおいては神と称するに値する存在であると 

('、`*川「……泣きそう」

 自分らしくない言葉だと思った。
 本当に不意をついて出た言葉だった。

 涙を流す機能は残っていたっけな。茶化す思考だけが自分らしくて、反吐が出る。

 泣き言を言っている自分が嫌いで、だから、どうにも出来ない自分以外の、誰に何を託せばいいのかを考える。
いや、考えるまでも、ない。

518:2018/01/06(土) 03:57:22 ID:4LJTq3vw0

 あの悪鬼の存在自体が、私たちにとっての絶望だ。

 それでも、この状況の全てがマイナスなわけではない。
 いずれ訪れる決戦の日に備え、誰よりも闘気、龍の力を調べ上げた私があの場所に居合わせたことで得ることはあった。

 あの悪鬼に集う悪寒はモララーの闘気によく似ているけれど、本質は異なるもの。
 けれどその本質にも既視感がある。

 あれは、ジョルジュを間近に見た時の圧倒感と同じ……

 リアルタイムでデータベースで保存されたあの場の映像から解析出来ることがあるはずだ。
 闘気の流れに敏感な私だから、あの膨大な力の流れを以てその違いに気付くことが出来た。

 休んでいる暇は無い。
 彼を見つけ、合流するまでに、少しでも多くの情報を――

519:2018/01/06(土) 03:58:00 ID:4LJTq3vw0
 虱潰しに、保存した映像とデータベースに保存されたあらゆる超常現象を照合する。
 それは思考と切り離して行う作業で、結果のみが私の脳にインプットされる。
 ゆえにじわじわと押し寄せてくるもどかしさを、私はどの感情を以て処理していいのか分からなくなってきた。

 こんな土砂降りの雨なのだから、泣き喚いたっていいはずだ。
 なのに溜まったものを吐き出す手段が無い。
 あるいは、忘れてしまったのか。

 濡れた前髪が鼻先に張り付いて鬱陶しい。
 指先で払って見据えた先に、彼はいた。

('、`*川「ワカッテマス!」

 みっともないくらいの大声に、誰よりも私自身が驚いた。
 こんな声が出せるだけの気力が残っていたことにも、こんな無様な顔を平気で晒せることにも。 

( <●><●>)

 彼はいつもと変わらない目で私を見上げる。
 私が下降を始めるのとほぼ同時に、崩れた瓦礫に背を預け、力なく両手を上げた。

520:2018/01/06(土) 03:58:32 ID:4LJTq3vw0

( <●><●>)「お互いに、無様なものだな」

 彼の目は、弁明のしようのない敗北を物語っていた。
 実際のところどうなのかは分からないけれど、どのみち彼が納得出来ていないのなら同じことだろう。

( <●><●>)「だがまだ命がある。今度はもっと備えて挑めばいい。それでも駄目ならもっと……向こうが死ぬまでつつき回ってやるさ」

 そう、諦めなければ負けではない。
 成し遂げた人間は誰だってそう言うし、彼にはそのようにして不可能を打ち破る力があるはずだ。
 私にはその素養が無くとも、彼に寄り添い、その真似事をするくらいは……

 諦めが悪い。みっともない。
 私だけが知っている彼。そしてそれを羨む私。

 だから、こんなところで膝をついてる場合じゃない。のに……

(;ヮ ;*川「――怖かった」

 外でもない彼の前で、こんなふうになる私が嫌い。
 でも、きっと死ぬまで直らない。

521:2018/01/06(土) 04:01:08 ID:4LJTq3vw0
また一つ歳を取りました。
泣きそうなのはこっちの方です。
前回分書きかけだったので終わらせました。
次から最新話。次からはちゃんと一話区切りで投下した。またすぐ来ます。よろしく。おやすみ。

522名無しさん:2018/01/06(土) 04:08:53 ID:0Qi/pDk60
誕生日に何かもらうんじゃなくてあげるとは粋な


523名無しさん:2018/01/06(土) 05:16:10 ID:dJxq2sRc0

戦闘描写が濃くて好き

524名無しさん:2018/01/06(土) 11:28:14 ID:v0wm5yHk0
おつ

525名無しさん:2018/01/07(日) 00:31:14 ID:hH72jWlQ0
うおおおかえり!
ペニサス相変わらず可愛いな大好き

http://fast-uploader.com/file/7070808199835/
登場祈願で擬人化ハイン

526名無しさん:2018/01/07(日) 22:50:39 ID:tubvjuOs0
待ってた

527名無しさん:2018/01/08(月) 18:21:36 ID:4HshVt.Y0
乙です

528名無しさん:2018/01/08(月) 19:15:08 ID:LoSxaWIs0
乙!!!!やっぱ今楽は最高だぜ!!!!!!

529:2018/01/09(火) 23:05:33 ID:Ss/N6aEY0
今週末に投下。早ければ書け次第投下。間に合わなかったらごめん。

530名無しさん:2018/01/10(水) 14:15:00 ID:UVr1qrNo0
わーい

531名無しさん:2018/01/10(水) 17:24:00 ID:la.e3KdQ0
おかえり
楽しみにしてる

532名無しさん:2018/01/16(火) 19:35:37 ID:FJa7hSQk0
まっとるで

533名無しさん:2018/01/16(火) 19:58:35 ID:WCuIpMfo0
来週でもええねんで
のんびり書いてや

534名無しさん:2018/01/23(火) 22:20:56 ID:6K4kmMDc0
おぉぉん……

535名無しさん:2018/02/02(金) 23:33:06 ID:cBQ1q/zA0
>>533だが撤回するわすぐ来てくれ

536名無しさん:2018/07/08(日) 13:35:16 ID:3UeUSxF20
2018年も半分終わったぞ

537:2018/09/28(金) 23:48:37 ID:HU8SSIXQ0
来週の三連休の終わりまでには投下できるように頑張ります

538名無しさん:2018/09/28(金) 23:59:22 ID:0cjaix9U0
>>537
最高かよ!待ってる!あやけ

539名無しさん:2018/09/29(土) 10:11:35 ID:QqYfdEdU0
本当ならとても嬉しい

540名無しさん:2018/09/29(土) 22:05:14 ID:rxec36Io0
おっっっ

541名無しさん:2018/10/01(月) 02:08:28 ID:DkLIRTog0
mjk待ってる‼︎‼︎

542ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 01:16:33 ID:47QncOlE0
本日22時あたりを目処によろしくおねがいします。レス数はいつもと同じくらいですが文字数がなぜか嵩んでしまったので目が疲れるかもです。

543名無しさん:2018/10/05(金) 07:22:02 ID:FcDY0Bsg0
把握 投下感謝

544ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 22:32:55 ID:47QncOlE0


第二十九話「チョコレートを捨てた日」

.

545ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 22:36:16 ID:47QncOlE0

 何だこれは――

 キリバリー・アルカードは、たった一つの疑問を解消することが出来なかった。

 なぜ私は倒れ、空を仰いでいる?
 なぜ私は口の中に溜まった砂を吐き出すことが出来ずにいる?
 そもそもなぜ、私は長い年月の中で終ぞ知ることの無かった砂の味を、今になって実感している?
 なぜ?
 なぜ?
 何故――

 一つの大きな疑問から枝葉が分かれ、彼の思考は何かを理解するということを放棄した。

 仮初めの身体はあちこちが裂け、胴からは瑞々しい赤色の臓物が溢れている。
 それを中に収めようと伸ばした左腕。肘から先は無かった。

「つまらんのう」

 声の方向に視線を動かす。
 岩場に腰掛け、キリバリーを見下ろす荒巻。
 彼は血の泡が滴る真祖の左腕を、既に持っていた玩具を贈られた子供のように、
 退屈そうな手付きで弄っていた。

/ ,' 3「試しに毟ってみたが、人間のものと何ら変わらん。引っ張れば千切れる。握れば潰れる。若い女の柔肌よ」

546ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 22:37:13 ID:47QncOlE0

 从 ゚∀从

 キリバリーは自身の再生能力に遅延が発生しているのを、冷静に察知していた。
 イノヴェルチ以上の吸血鬼は不死身であり、絶命させるには一定の条件が必要である。
 脳と心臓の同時破壊、銀製の武器による一定以上の破壊、
 特殊な儀礼によって形成された陣地内での拘束、etc…

 今の状況はそのどれにも該当しない。
 吸血鬼を殺す為の条件それ自体が、通常の戦闘行為と比較すればイレギュラーであることが常だが、
 それらの中でも特例中の特例にして、シンプルな討伐方法が一つだけある。
 それは……

 吸血鬼の心を、折ること。

 呪われた血は皮肉にも、宿主の想いに強く反映される。
 あるいは吸血鬼という、永い歳月を生きることを強いられる種に予め備え付けられた防御機構のようなものかもしれない。

 从 ゚∀从(なるほどな……)

.

547ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 22:37:51 ID:47QncOlE0

从 ゚∀从(心など、とうに手折られているというわけか)

 折れているのはキリバリーではなく、傷ついた身体の本来の持ち主である、
 ハインリッヒ・アルカードの心。

 現在、主人格として優位に立ってはいるものの、
 一つの身体に二つの人格が備わっている歪な状態だからこそ、
 キリバリーには彼女の悲哀が手に取るように分かった。

 VIPという場所で、吸血鬼という事象を振り撒く災厄であった頃の彼女ならば、
 決して持つことのなかった心の弱さが、彼女の身体の自壊を引き起こしている。

 ハインの思考の中で、一際汲み取りやすい単語にキリバリーは興味を示した。

 「ブーン」

从 ∀从「……ハッ」

.

548ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 22:38:25 ID:47QncOlE0

 不意に嘲笑が漏れる。
 永い間見てきた人間の営みの中でも、彼にとっては最も唾棄すべき事象。
 慈愛や憐憫といった、シンプルな行動原理に、キリバリーは心の底から溜息を吐いた。

/ ,' 3「何が可笑しい? 儂にも教えんか」

从 -∀从「ふん、長く生きると分からんものが増えると考えていただけだ」

/ ,' 3「お前さんはそんな些事にいちいち気を回しておるのか? 意外と律儀な奴じゃの」

从 ゚∀从「聞くまでもなく些事と切り捨てるか。お前は見たままの性格をしているな、小僧」

/ ,' 3「些事じゃよ」

从 ゚∀从「……」

/ ,' 3「人間の本質は闘争じゃ。ヒトとして生を受けたのならば、知るべきことは一つで良い。目に映るものが自分より強いか否か。それ以外は全て些事じゃろ」

.

549ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 22:40:31 ID:47QncOlE0

/ ,' 3「まあ、吸血鬼であるお前さんには関係のない話じゃったかな? 長く生き過ぎると道楽にうつつを抜かし過ぎるようじゃな」

从 -∀从「ふっ……貴様もヒトではなかろう」

/ ,' 3「そのようにして儂は神になったんじゃよ」

 異形の者として人間という種よりも高い次元に君臨し続けた自身を前にして、
 己を神であると言い切る荒巻の不遜が、彼は嫌いではなかった。

 むしろ久々に話の分かる者に出会えたと、喜びの感情すら芽生えていた。

 だが、直後に荒巻が取った行動は、キリバリーの理解の範疇すら超えたものだった。

/ ,' 3「お前さんがどうしても些事が気になって仕方ないというなら、そこはそれ、とらいあんどえらーというやつじゃ。思いついたままに触り、愛で、壊してみればよい」

.

550ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 22:41:36 ID:47QncOlE0

 荒巻は語気に含みを持たせ、キリバリーの千切れた左腕を口元に近づける。
 そして、醜く表情を歪めた。

/ ,' 3「些事ではあるが、儂も一つ気になることがあっての」

 荒巻が力を込めると、左腕はトマトのように潰れ、肉塊と化した。

/ ,' 3「巷では位の高い吸血鬼は眷属を増やすために、獲物に自身の血を混ぜると聞く。素養のある者はいのヴぇるちとかいう吸血鬼になるらしいの」

 荒巻がそこまで言うと、キリバリーは全てを理解した。
 そして同時に、永劫に近い時の中でも一番の嫌悪感を抱いた。

从 ∀从「……それ以上口を開くな。ただで済むと思うなよ小僧」

/ ,' 3「ほほほ、お前さんも気にはならんか? ヒトですら一都市を落とし得る怪物となるのじゃ。それが神ならば、どんなものが産まれてしまうんじゃろうな?」

从 ∀从「やめろと言っている! 紛い物の神ごときが、不敬であるぞ!」

.

551ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 22:42:40 ID:47QncOlE0

 キリバリーの静止を微塵も意に介さず、荒巻は潰れた肉塊を口いっぱいに頬張り、咀嚼する。
 醜く両目を細め、喉を鳴らしながら肉を食らうその姿は、ヒトの形を模した獣だった。

/ ,' 3「よいことを教えてやろう。ヒトを屈服させたければ、ヒトよりも高い目線からものを言うことじゃ。虫のようなそのざまじゃあ、童でも言うことは聞かんな。ほほほっ」

 頬張った肉を飲み込んだ後は肉塊を一口大に千切り、それを舌の上で転がす。
 満足そうに目を細めてみたり、訝しげに首を捻ってみたり。

/ ,' 3「ふぅむ……人間の肉は何度か食ったことがあるが……これは酷い味じゃの」

从 ∀从

/ ,' 3「歯ざわりは良い。そこだけなら及第点じゃ。だがこの腐ったような臭いがなんとも……」

从 ∀从「もう良い。黙らないなら私が黙らせる」

.

552ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 22:43:11 ID:47QncOlE0

 キリバリーが獣化した右手の指先を荒巻に向け、思念によって亡者たちに命ずる。
 街を食い荒らしていた骨の軍勢が、逆再生のように荒巻の元に収束してゆく。
 鋭く研ぎ澄まされた刃のような指の骨が筋骨隆々の肉体に突き刺さる。
 主の血肉を奪い取らんと伸びる腕が荒巻に絡みつき、万力のように締め上げる。

/ ,' 3「醜いのう、醜いのう」

 五体を完全に拘束された荒巻。
 しかし笑みを、その口を塞ぐことは、骨の軍勢には敵わない。

/ ,' 3「いかなる理由があろうと、亡者が生者の足を止めてはならんと知れ」

 それは荒巻にとって、自分の腕にたまたま止まった羽虫をそっと払うようなものだった。
 王位たちが操る闘気と同質、それでいてまったく異なる不可視の衝撃が巻き起こり、
 荒巻に纏わりついた数千の亡者が粉微塵と化した。

.

553ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 22:46:56 ID:47QncOlE0

从 ゚∀从

 キリバリーは自身の眷属たちが圧倒的な力の前に消失してゆく様を無言で見つめていた。
 「今」の自分では、この悪鬼には到底敵わない。
 セント・ジョーンズは知恵を以て彼を葬った。
 人類の叡智に脅かされて初めて、彼は人間という種の、神すら蹴落とす貪欲な知性に身震いしたが、
 それとはまったく異なる畏怖の念が彼の胸に宿る。

 キリバリーは目の前の生命体を、人類とは別の種族、他の生命を屠り食らうことを宿命として
 決定付けられた怪物であると断定した。

/ ,' 3「ふむ……吸血鬼の血とやらは儂の身体には馴染まぬようじゃの。血肉がおぬしの血を取り殺しにかかっておるのがよく分かる」

 荒巻の左目は白目を剥き、左右非対称の表情は人の形相を成していなかった。
 しかしキリバリーには、彼が爛々と笑っていることがよく分かった。

/ ,' 3「つまらんのう。おぬし、さっきとは別人じゃろ? どこですり替わった? この儂の目を出し抜いたことだけは、称賛に値するがの……」

.

554ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 22:48:03 ID:47QncOlE0

 たちまち靄がかかる思考。
 人格の優位性が逆転する兆候だった。
 持ってあと一分、数十秒か、あるいはもっと短いかもしれない。
 
 私が、私でなくなる前に……

从 ゚∀从「貴様は私が殺す」

 畏怖の対象であるべき吸血鬼を蔑み、剰えその血肉を取り込もうとした罪は重い。
 荒巻がヒトとは異なる存在であろうと、全てのものは並べて自分の足元にあるべき。

/ ,' 3「しっかりとうぉーみんぐあっぷをしておくことじゃの。次はもっと潰し甲斐のある肉を纏ってこい」

 その減らず口に、汚い臓物を詰め込む明確なヴィジョンが、キリバリーには見えていた。
 焦ることはない。
 この生命体を屠ることが出来るのは、この星の中で自分しかいない。
 己の魂があるべき場所に戻るその時が来るのを、今はただ待てばいい。

.

555ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:01:34 ID:47QncOlE0





    キリバリー・アルカードは、静かに眠りについた。



.

556ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:02:22 ID:47QncOlE0

 / ,' 3「さて、どうしたものかの……」

 自身の生涯の中でも最も甘い果実の匂いに釣られ、餌場を訪れた。
 しかしその果実は触れれば消え失せてしまうまやかしのようなものだった。

 足元には一糸まとわぬ少女。
 垣間見た最強の器とするには、あまりにも脆弱で、頼りない。

 周囲を見渡す。

 VIPという餌場は既に崩壊寸前だった。
 吸血鬼の王が放った軍勢は、この短い間にどれだけの生徒の命を奪っただろうか。
 それを考えると、荒巻は憂鬱な気分になった。

 脆い。
 あまりに脆すぎる。

 戦神という刃を研ぐに相応しい砥石を作る為の学園が、この程度の「悪ガキ」の一撫でで狼狽してしまうとは……

/ ,' 3「フォックスの倅以外、生かしておいても仕方ないのう……いろいろと考え直さんと……いやじゃのう、儂は考えるのが嫌いなんじゃ……」

.

557ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:02:51 ID:47QncOlE0

 もう一度足元の少女を一瞥し、荒巻は地面を蹴った。
 たった一度の跳躍でその巨体は雲を突き破り、誰の目にも届かなくなった。

 二人の神がこの場に居合わせたのは、両者のほんの気まぐれに過ぎないのだろう。
 その気まぐれによって、あまりにも多くの者が戦慄した。
 殺意、敵意といった、闘争に準ずる感情が根こそぎ、学園から抜け落ちた。

 雨は、止んでいた。

 残されたのは静けさ。遠くでは感情なき水流のみが人の営みを脅かす。
 どれだけの生徒がそれに抗うことが出来るか。
 少女の意識が健在であれば、彼らを憂い、あるいは助けに行くのかもしれない。

 ハインリッヒ・アルカードは血の涙を流した。

 彼女が取り払いたかったものは、もうこの学園にはない。
 彼女が成したかったことが成ることはなかった。

.

558ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:03:16 ID:47QncOlE0

 炎は水によって掻き消される。
 幼子でも理解出来る普遍の事実だ。

 それを覆すのが魔術であり、ジョルジュは魔術を行使する自身の強さに、
 絶対に近い自負があった。

 だが雨と共に降り注いだ死霊の群れが、その中枢にある悍ましい何かが、
 自身の火種を根こそぎ吸い取っていったのを、彼はその肌身で感じていた。

 _
( ゚∀゚)「……なんだよあれは」

 ジョルジュがエーテルと呼ぶものは、アレの顕現によって一瞬で枯渇した。
 エーテルは魔術師にとって力の源。
 それをいたずらに消耗することは魔術師にとって好ましいことではなかったが、
 同時にそれだけのエーテルを消費するだけの権能とは、
 それだけで世界にどれだけの影響を及ぼすかを測る指標となる。

.

559ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:03:42 ID:47QncOlE0

 その前提を理解しているからこそ、ジョルジュは呆然と立ち尽くす。
 ただ、そこに存在するだけで学園周辺のエーテルを吸い上げてしまった事象に名前をつけるとするならば……

 _
( ゚∀゚)「神だ……」

 神とは須く、産まれ落ちると同時に汎ゆるものに祝福されるべきである。
 だが突如として現れた神は彼にとって、憎悪の対象でしかなかった。

 _
( ゚∀゚)「……クソッタレ。誰に許可を得てVIPで好き放題してやがる」

 力を――
 もっと力を蓄えなければならない。

 憎悪を向ける対象がたとえ神であろうと、自身を脅かし、機嫌を損ねるものは存在してはならない。
 目下は自分を歯牙にもかけなかった憎き第一王位。
 そして平然と自分を出し抜いてきた第五王位。

 全て狩り終えたその暁には……

.

560ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:04:07 ID:47QncOlE0





 次はお前だ。神――





.

561ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:04:52 ID:47QncOlE0



( ´_ゝ`)

 良いヒトも――

从 ゚∀从

 悪いヒトも――

 全ては吹けば消えてしまうような儚い命だ。
 機械だろうと、吸血鬼だろうと――



.

562ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:05:16 ID:47QncOlE0

 煙草を喫うたびに思い出す。
 あの後輩も同じ銘柄の煙草を喫っていた。
 そんなくだらない理由で、実の弟を殺そうとしていたあいつを見逃した。

 今となっては、我ながら面白い選択だと思う。
 面白い男だった。
 非凡な才能を持っているのは、この学園で名の売れた者ならば当たり前のことだが、
 あいつには、ドクオには野望があった。

 莫大な富と名声、あいつが望むものは、本当にそれだけだ。
 それを求める者は掃いて捨てるほどいる。
 才能がある者も、この学園には掃いて捨てるほどいる。

 だが、非凡な才能を、富と名声を得るためだけに磨き抜ける人間は、実のところそれほど多くはない。


.

563ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:06:36 ID:47QncOlE0

 結構なことじゃないか。
 この学園には、戦いを高尚なものと捉える輩が多すぎる。
 究極的には、戦いなど自分の願望の障害を取り払う手段に過ぎない。
 それ自体に意味を見い出す生き方など、誰かにとっての道化でしかない。

 あるいは欝田ドクオならば、これ以上ない俺のパートナーと成り得たかもしれない。

(`・ω・´)「酷い臭いだ」

 俺がそうぼやくと、吸血鬼は満足げに嗤った。
 仮のパートナー相手に自分好みの人格を求めるほど野暮ではないが、
 それにしてもこの女は悪趣味が過ぎる。

ζ(^ー^*ζ「貴方も同族になれば少しは気が紛れるのでは?」

(`・ω・´)「遠慮しておくよ、今更兄弟おそろいが嬉しい歳でもない」

.

564ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:07:20 ID:47QncOlE0

(´゚ω゚`)「……っ! ……っ!」

( ゚д゚ )「……」

 デレの眷属となった哀れな吸血鬼を見る。
 片方は跪けという命令を、その血で受け入れている。
 もう片方は跪きながらも白目を剥き、口にするのも憚られるような罵声を浴びせてきた。
 意思疎通など最初から臨んではいなかったが、聞き流すにも限界があったので、
 主は黙れと命じた。

(`・ω・´)「…………」

 哀れな吸血鬼だ。
 何一つ悪いことなどしていない。
 強いて言うならば、俺が全部悪い。

(`・ω・´)「もう少し手伝ってもらうぞ」

 自分とよく似た顔の吸血鬼の頬を撫でる。
 自分の意志で身体を動かすことはおろか、口を開くことすら出来ない。
 きっと俺はこいつにとって、誰よりも殺したい仇だ。
 そんな男に頬を撫でられた吸血鬼は、喉を震わせて涙を流した。

.

565ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:08:02 ID:47QncOlE0

ζ(゚、゚*ζ「悪趣味ですね」

(`・ω・´)「ああそうだ。俺は趣味が悪いんだ」

ζ(゚ー゚*ζ「お望みとあらばその人形、貴方専属の男娼に出来ますよ?」

(`・ω・´)「お前は人を人と思わないド畜生だな」

ζ(^ー^*ζ「それはそうでしょう。私、吸血鬼ですから」

 未練も執着もないはずなのに、どうして俺は既に地に落ちた弟の自尊心を、
 更に貶めるような真似をしたのだろうか。

 こいつが吸血鬼になった日、俺がドクオにしたように、
 大抵の人間の意図や思惑は一言一句違わず汲み取ることが出来る。
 それなのに俺は、何よりも自分の感情というものがよく解らない。

.

566ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:08:26 ID:47QncOlE0

 これではだめだ。
 もっと、もっと黒くならなければ……

 一度も間違えたことのなかった、まだ俺たちが互いを兄弟だと認め合っていた日を超えて。
 闘争に尤もらしい高尚な理屈を誂えて、自分の我儘を思いのままに振り翳す今を乗り越えて。

 俺はもう、

(`・ω・´)

 大人にならなければいけない。

.

567ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:08:57 ID:47QncOlE0

 雨が上がった後は静かで、長い長い夢からやっと抜け出せたような気分だ。
 乱痴気騒ぎを抜け出して、アルコールで火照った身体を夜風で冷ます時に似ている。

 遠くに望むVIP。
 背の高い建物はドミノ崩しのような倒れてゆく。
 立つ巣を濁しまくったこのツケは、いつどんな形で支払おうか。

 俺が大人になるために誂えられた供物たちの血腥い臭いが立ち込める。
 弟の頬を撫でた掌を固く結び、俺は……

(`・ω・´)「ロマネスク、これだけ上等な死体あれば手土産としては充分だろう?」

( ФωФ)「俺から全て奪ったあの忌々しい小娘の死体が無いのは不服だが、ひとまずは及第点としよう」

ζζζ* ゚)「ふふっ、せっかちな殿方ですね。そう焦らずともすぐに手に入りますよ」

.

568ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/05(金) 23:10:21 ID:47QncOlE0
次いつ投下するかは明示しないけど風呂から上がったらすぐに次の話を書き溜めようと思います。
おつかれさまでした。

569名無しさん:2018/10/05(金) 23:11:44 ID:OJZexx2M0
スレタイは>>1の方針に思えてきた乙

570名無しさん:2018/10/05(金) 23:12:27 ID:9MCYehHA0
おつ

571名無しさん:2018/10/05(金) 23:28:58 ID:bez5mHf.0

嬉しい読み直してこよう

572名無しさん:2018/10/06(土) 00:28:23 ID:N4kWk59U0
おつ 相変わらずおもしろい

573名無しさん:2018/10/06(土) 00:33:25 ID:0HU2QHuk0
はー面白かった
壊滅した学園でいまや一部形骸化してしまった感すらある王位の面々がどう動くのか楽しみだ
続きが待ちきれないよ
乙!

574名無しさん:2018/10/06(土) 09:33:28 ID:ooic.1Qs0
これ復興無理だろ……
次からもすごく楽しみおつ!

575名無しさん:2018/10/06(土) 22:37:50 ID:k9Hc4O5E0
乙!!

576名無しさん:2018/10/14(日) 04:04:47 ID:1pVKrE8I0
全部読み直してきたわ!

577ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/16(火) 21:51:21 ID:XWzZv9S60
日曜までに投下するという気持ちだけはあります

578名無しさん:2018/10/16(火) 22:24:27 ID:UGgHgxCk0
うれしい(フライング)

579名無しさん:2018/10/17(水) 01:15:51 ID:CHIRKTuM0
ッシャァ待ってるぞ

580ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 21:05:32 ID:9TEURJuU0
22時、22時までには

581ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:03:17 ID:9TEURJuU0


第30話「星の降る夜」

.

582ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:04:05 ID:9TEURJuU0

 夢を見ていたような気がする。

 どんな夢かは思い出せないけれど、
 不思議なことにぼくは以前にも同じ夢を見たことがあるような気がした。

 きっと、物心がついたばかりか、あるいはもっと昔のこと。

 手を伸ばした先に広がる景色はきっと壮大で、ぼくは自分の矮小さが怖くなってしまう。

 押し潰されそうになって。弾き出されそうになって。

 きっと、そんな夢だった。

.

583ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:04:32 ID:9TEURJuU0

 目を覚まして真っ先に目についたのはシミ一つない綺麗な天井だった。
 起き上がろうとすると上体に痛み。身体はマシュマロのような柔らかいベッドに沈む。
 沼みたいだと、思った。

o川*゚ー゚)o

 自分がベッドに横たわっているのを認識するのと、彼女の存在を認識するのはほぼ同時だった。
 歳は十三、四。あるいはもっと幼いかもしれない。
 ぼくよりも年下であることは間違いないだろう。
 極端に細い首から、身体の華奢さが伺える。
 それを隠すような派手な着物、背中で結んだ豪奢な帯がアンバランスだ。

 ちょうどぼくの腰骨の真横あたりにちょこんと座っている彼女は、
 布団越しのぼくの腕に、その細い手を預けていた。

.

584ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:05:01 ID:9TEURJuU0

( ^ω^)「はじめまして」

 仰々しい存在感を放つ着物の下の少女が、
 大声を出すと消し飛んでしまうんじゃないかと、本気で思った。
 自分の声がひどく間抜けでたどたどしい。
 
 彼女をくすくすと、まるで絹を擦るような細い笑い声を零した。

o川*゚ー゚)o「ふふっ、はじめまして」

 わざとらしく小首を傾げてみせて、その表情は妙に婀娜っぽい。 
 誰かに似ていると思ったが、その答えはすぐに見つかった。クーさんだ。
 ドクオから話だけ聞いたことがある。
 クーさんとは似ても似つかない凶暴な妹がいるということ。
 妹の名前はたしか……

.

585ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:05:25 ID:9TEURJuU0

( ^ω^)「素直……ヒートちゃん?」

 少女は目を丸く見開いて、何度か瞬きをした。
 そしてまた、彼女はくすくすと笑う。
 自分が道化にでもなったみたいだ。
 なぜだか分からないけれど、この子に見られると全てを見透かされているような不安感に駆られる。

 ドクオ曰く、素直ヒートは竹を割ったような単細胞だとのこと。
 話に聞いていた人物像とは大きくかけ離れている。

(; ^ω^)「あの……ぼく、何か可笑しなことをしたかお?」

o川*゚ー゚)o「いーえ。ごめんなさいね、ただあの子が聞いたら怒るだろうなーと思って」

.

586ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:05:53 ID:9TEURJuU0

( ^ω^)「お? それはどういう……」

 と、聞きかけたところで部屋の戸が勢いよく開いた。
 入ってきたのはぼくが知るあの人。

川 ゚ -゚)「起きたか」

 風呂あがりだろうか少し離れたところからでも、シャンプーの良い匂いが漂ってくる。
 うっすらと濡れた髪をタオルで乾かしながら、部屋着であろう大柄なシャツの裾を片手で伸ばす。
 ちらちらとシャツから覗く丈の短いパンツから伸びた脚には痛々しい傷が無数に刻まれていた。

 ぼくだったら、きっとしゃんと歩くこともままならないだろう。
 けれどクーさんはしっかりとした足取りで近づいてきて、ぼくの傍らで座る少女を見下ろす。
 
 そして、少しばつの悪そうな顔をして……

川;゚ -゚)゙「母さん、鍋が吹きこぼれてましたよ」

.

587ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:06:15 ID:9TEURJuU0

(  ゚'ω゚)「え”」

川 ゚ -゚)「む?」

o川*゚ー゚)o「あ」






(  ゚'ω゚)「えええええええええええええええええええええええッ!?」


.

588ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:06:38 ID:9TEURJuU0

 ぼくは今日、初めて吸血鬼以外の人外を見た。

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589ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:07:08 ID:9TEURJuU0

 素直家に関するあれこれ。
 箱庭時代にぼくが住んでいた地域とここはあまりに離れているので、彼女らに関する逸話についてはドクオからの又聞きという眉唾ものの情報ということになる。
 だがあの人外こと素直キュートさんを見た後ならば、大抵のことは信じざるをえないだろう。

 素直家は由緒正しい(という表現が適切であるかは疑わしい)この国の裏社会の統治者の家系で、
 当主素直トールを筆頭に、彼らは剣という太古から伝わる武力をただひたすらに極め、継承し続けた。

 素直家という集団が裏社会において剣の象徴へと昇華されたのは一体何代前からの話であるか、
 それはドクオにも分からない。
 きっとそうやって神格化する者達の中にも、それを知る人間はいないのだろう。

 そのようにして君臨し続けた彼らは裏社会の、バランサーのような役割を担うようになり、
 血みどろな世界にあるにも拘わらず、徒に暴力を行使することを辞めた。

 .

590ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:07:31 ID:9TEURJuU0

 彼らがその力を行使するのは、主にこの地域で吸血鬼の異常発生が起きた際。

 世界的に見れば不死の吸血鬼を駆除するのはヴァンパイアハンターと呼ばれる、特別な武装(銀の銃弾や心臓潰しの杭などを指す)を持った専門家であることが一般的だが、
 素直家は単純な力を以て、グールのみならずこれまで十数体のイノヴェルチの討伐に成功している。

 その他にも、地域の治安を著しく悪化させる恐れのあるシリアルキラーの抹殺、
 裏の市場を独占せんとする大きなカルテルの殲滅など、この家のバランサーとしての成果を挙げるときりがない。

 まるで自警団みたいだと思う。
 それでも彼らが裏社会の住人としての立ち位置に甘んじている理由が何なのか、
 ぼくはほんの少し気になって、ドクオに聞いてみた。

.

591ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:08:01 ID:9TEURJuU0

('A`)「むっずかしいこと聞くなお前は。そんなもん本人らに聞けばいいだろ」

(; ^ω^)「なんだか恐れ多くて……」

('A`)「今からそんなに肩肘張ってたら明日から身が持たねえぞ」

 二人で食べるには大きすぎる土鍋の中でぐつぐつと煮える肉を箸で掬いながら、
 ドクオはわざとらしく溜息を吐いた。

('A`)「明日から早速修行だ。こうやってのんびり美味い飯を食える日なんて当分こねえぞ」

(  ゚ω゚)「ご飯ぬきかお!?」

('A`)「メシを口に突っ込む気力すら残らねえってことだよ」

(; ^ω^)「なんだ、そういう……」

('A`)「なんだとはなんだ。ほんとお前は能天気なやつだよな……」

592ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:09:54 ID:9TEURJuU0

 ドクオの呆れ顔が不意に強張った、ように見えた。

(; ^ω^)「お?」

 ぼくは意図的にその目を見ないようにして鍋をつつくが、視線が刺さる感覚が拭えない。

( ^ω^)「……どうかしたかお?」

('A`)「いや……」

 慎重に、言葉を選んでいるのだろうか。
 何かを吐き出しかけては飲み込んで。
 露骨に腫れ物に触れるような態度を示してくるものだから、ぼくも同じように言葉が詰まってしまう。

('A`)「お前って、何者なんだろうな」

 そう問われて、即答出来る人間がどれだけいるだろうか。

.

593ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:10:15 ID:9TEURJuU0

 たとえばぼくが学園に入学した時ならば、
 ぼくは内藤ホライゾン、乞食をやっていました。ブーンと呼んでほしい。
 と、当たり障りのない自己紹介をしてみせるのだろう。

 不安になってくる。
 自己評価を極端に下げて、ぼくは何者でもない只のエキストラであると下卑た態度を取っていれば、
 誰もが自分から興味を失う。
 そういう風になっていれば、幾分か気が楽になることだろう。
 少なくとも、ぼくが乞食だった時期はそれが罷り通っていた。

 ( ^ω^)

 けれど、今はそうもいかない。
 不意に、堪らえようのない動悸がする。喉が焼け付く。
 その不安の元凶が自分の中にあるとはっきりしているからこそ、
 こんなにやりきれない気持ちになるのだろう。

.

594ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:10:37 ID:9TEURJuU0

 ドクオの顔を見て、ぼくは確信を得た。
 プギャーさんと対峙してキュートさんが現れて、
 その間のぽっかりと空いた空虚な時間の中に、
 ぼくの知らない何かが首を擡げて現れたのだろう。

 前にも一度だけそういうことがあった。
 あれは確か金に困ってドクオの仕事を手伝った時だった。
 あの時は、確か強くなることに躍起だったのだと思う。
 自分には何でも出来る力があると、そんな驕った全能感こそ無かったけれど、
 自分はこの学園に何者かになれると、無条件に信じ切っていた。

 だから必死だった。
 自分でもよく分からないくらい必死に空回りして、気付いたら、

 ヒッキーは肉塊になっていた。

.

595ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:10:59 ID:9TEURJuU0

 きっとドクオが手持ち無沙汰になる程度に考え込んでしまっていたのだろう。
 爬虫類のような顔がとても眠そうで、それでいて、どこか所在なさげだった。

('A`)「忘れてくれ。変な質問だったな」

( ^ω^)「いや……」

 箸を置いて、部屋を出ようとするドクオの背中に。

( ^ω^)「何者かになれるように頑張ってみるお」

 ドクオは振り向いて、少し驚いたような顔をして……

('A`)「おう」

 柄にもなくにっこりと笑ってみせた。
 彫りの深い二重瞼が山なりに垂れ下がっていて、少し間抜けに見えた。
 けれど、とても安心出来た。

.

596ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:11:19 ID:9TEURJuU0

( ^ω^)「あれ、自分の部屋どこだっけ」

 時刻はちょうど零時を回った頃。
 寝る前に用を足したはいいものの、素直邸は頭が当主の頭が可笑しいんじゃないかと思うくらいには広かった。
 辺りに他の建物はなく、家を照らすのは月と星の光のみで、空気が静まり返っている。

o川*゚ー゚)o「いい場所でしょ」

 廊下の向こうから白い着物を纏ったキュートさんが現れて、ぼくはどきっとした。
 夜の闇と彼女の境界は曖昧で、幽霊みたいだなと思った。

( ^ω^)「こういうところには初めてきましたけど、なんだか落ち着きます。すごく」

o川*^ー^)o「あははっ、なんにも無いからね。ブーンくんはニチヤの方の出身でしょう?

(; ^ω^)「え、ああ、はい。二茶重工の近くに住んでましたけど……」

.

597ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:11:41 ID:9TEURJuU0

 自分の出身について語ったのはドクオが最初で最後だった筈だ。
 キュートさんがずばり言い当ててきたことにぎょっとしていると、彼女はくすくすと笑った。
 よく笑う人だなと、思った。

o川*゚ー゚)o「懐かしいなあニチヤ。最後に行ったのはロマくんを実家に送った時だっけか」

(; ^ω^)「え……」

 ぼくは、彼女の口からその名が溢れた瞬間、思わず彼女から遠ざかった。
 彼女はまた、くすくすと笑った。

o川*゚ー゚)o「驚かせてごめんなさいね。あなたのお父さんのことはよく知ってるよ。友達だったから」

 想像すら出来なかったけれど、考えてみれば不自然なことではない。
 国内の軍需産業の中でトップを駆け抜けていた大企業の社長と、この国の裏社会の統治役を担う家。
 むしろ繋がらない理由を考える方が難しい。

(; ^ω^)「そう、ですか」

.

598ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:12:03 ID:9TEURJuU0

o川*゚ー゚)o「あの時はまだ産まれたばかりで、あんなにちっちゃかったのに」

 小柄な身体が踵一つ分だけ伸びて、細い腕が着物の袖から現れる。
 細い指が頬に触れて、すぐ掌の温みを感じた。

o川*^ー^)o「おっきくなったねえ、ホライゾンちゃん」

 自分ですら覚えていない、遠い昔のぼくのことを知っている彼女が、
 邪気の無い笑顔を見せてくれていることに、言いようのない安堵感が芽生えたような気がした。

 二茶の家なんてろくなもんじゃない。
 母さんはぼくの父ロマネスクに捨てられた。そしてぼく自身も……
 乞食だった時期から更に遡り、あの箱庭時代を思い出す時、ぼくはいつもそれが他人事であるかのように振る舞って、時には語り聞かせるように夢想したけれど、キュートさんの顔を見ていると、こんな自分も産まれた時は祝福されたのかなんて、思ってしまった。

( うω^)「……」

 本当に唐突に、喉の奥に鉛が詰まってしまって、それを飲み下そうとすると代わりに目から溢れるものがあった。
 それが恥ずかしいと思うくらい、ぼくはまだ子供なのだろう。

.

599ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:27:08 ID:9TEURJuU0

o川*゚ー゚)o「あらあら」

( うω`)「茶化さないでくださいお」

 いたずらっぽくくすくす笑う彼女の手を払って、ぼくは縁側に腰掛ける。
 キュートさんも同じようにぼくの隣に座る。
 ちょうどぼくの肩と同じ高さに彼女の頭があった。

o川*゚ー゚)o「本当に、お母さんそっくりね。口元だけはお父さん譲りかな」

( ^ω^)「そうですかお? 母さんにはあまり似てないものだと……」

o川*゚ー゚)o「んーん、そっくり。凄く穏やかで、にこにこしてるのを見ると安心する」

(; -ω^)「それは……どうも」

 面と向かって自分の顔についてああだこうだと言われたことがないので緊張する。
 彼女の容姿がぼくより年下の少女にしか見えないのでまだましだけれど、
 自分より遥かに年上の女性に言われているのだと思うと、どう反応していいのか分からなくなる。

.

600ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:50:43 ID:9TEURJuU0

o川*゚ー゚)o「二茶が潰れたのは確か……三年前だっけ。大変だったね」

( ^ω^)「はい。まぁあの時は本当になし崩しだったので、適当に流されてたらこうなっちゃいましたけど……」

o川*゚ー゚)o「またまたテキトーだなんて……三年間よく頑張りました」

(; -ω^)「はい……」

 なんでも手放しに肯定されるような感覚がとてもくすぐったい。
 同世代の人たちと話していると、まず経験することのない感覚だ。
 思えば乞食時代も比較的若い連中とつるんでいたし、学園に入ってからは勿論歳の近い人としか話す機会はほとんど無い。

 大人からはぼくはどんなふうに見えているのだろうか。
 考えたこともなかった。

.

601ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 22:59:16 ID:9TEURJuU0

o川*゚ー゚)o「クーちゃんからきみが来るって聞いた時は本当にびっくりした。けれどこうして実際に見ると、うーん……」

(; ´ω`)「な、なんですかお」

o川*゚ー゚)o「本当に、生きててくれてよかったって思うよ」

(,”;;´ω`)「おっおっ」

o川*゚ー゚)o「あとごめんなさいね。きみが大変な時に何もしてあげられなくて。本当だったら、素直家の方で世話するべきだったんだけど」

(; -ω^)「流石にそこまでしてもらうのは悪いですお。それにこう見えてタフな方ですから……」

o川*゚ー゚)o「んーん、きみのお父さんとの約束だったからさ」

( ´ω`)「……」

.

602ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 23:07:24 ID:9TEURJuU0

 キュートさんは、きっと良い人だ。
 だからぼくは彼女が父さんについて言及すると、胸がちくりとする。
 それなのに……

o川*゚ー゚)o「お父さんのこと、嫌い?」

( ^ω^)「……だいきらいですお」

 自分を悲劇の主人公に仕立て上げることは、とても卑しいことだと思う。
 自分の境遇に責任を擦り付ければ全てが許されるわけではないのに、
 そのように過去を悲観していると、それだけで自分が子供のままでいることが肯定されるような気分になるのだ。
 それはとても気持ちのいいことで、けれどずっとそのままでいるわけにはいかなくて……
 それでも……ロマネスクがぼくと母さんを物のように捨てたことは事実だ。

 それを笠に着るわけではないけれど、ぼくはきっと、一生彼を許さない。

o川*゚ー゚)o「……そっか、そうだよね」

 キュートさんが悲しそうな顔をする。
 申し訳ないという気持ちはあるけれど、ぼくは意図的に彼女から目を逸らした。

.

603ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 23:17:14 ID:9TEURJuU0


( ^ω^)「キュートさんは……」

o川*゚ー゚)o「うん」

( ^ω^)「キュートさんは、父さんのこと好きでしたかお?」

o川*゚ー゚)o「あー……」

 言い淀む。ロマネスクはきっと、彼女にとって良い人だったのだろう。

o川*゚ー゚)o「ぼくがロマくんのことが大嫌いって言ったら悲しい?」

( ^ω^)「……たぶん、悲しいんだと思います」

 ぼくは父さんが嫌いだ。
 父さんの名前を聞くだけで腹が立つけれど、父さんを貶められると、きっと嫌な気分になる。
 そんな気がした。

 二茶の破綻は当時この国にとって大きな出来事だった。
 当然ぼくが露頭に迷っている間、潰れた二茶についてああだこうだという人はいたけれど、
 ぼくは意識的に彼らから距離を置いていたと思う。

 それは自分の家を非難されているからではなく、認めたくないけれど、父さんが作り上げたものを否定されたからなのかもしれない。

o川*゚ー゚)o「そっか」

 キュートさんは意味深に、深く頷いてみせた。

.

604ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 23:25:55 ID:9TEURJuU0

o川*゚ー゚)o「息子のきみにこんなこと言うのもあれだけどね、大好きだった。最高の友達だったよ」

( ^ω^)「そうですか……」

o川*゚ー゚)o「悲しくなった?」

( ^ω^)「いえ……」

 かなしく、ない。

( ^ω^)「ぼくは父さんが大嫌いだけれど、父さんは偉大な人だと思うし、ぼくは息子として誇りに思います」

 そんな矛盾した言い分を、キュートさんはうんうんと頷いて聞いてくれる。
 だから彼女は大人なのだろう。
 大人はとても寛大で、いいヒトだ。
 きっとロマネスクも……外ではそうだったのだろう。

(  ω )「なんだか、ちぐはぐですおね」

.

605ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 23:36:12 ID:9TEURJuU0

o川*゚ー゚)o「そんなことないよ」

 有り体に言うと、吐きそうだ。
 動悸がする。たった一言を、父を知る彼女に吐き出してしまえたら楽なのだけれど、
 それが出来ずにこうしてわざとらしく不貞腐れる自分が嫌になる。

( ^ω^)「……」

 また、涙が溢れる。
 拭う気にもなれなかったから、ぼくは月を見上げた。

o川*゚ー゚)o「……」

 きっと彼女はすごく困るだろう。
 けれど、限界だった。
 三年間という月日は、人によっては短いのかもしれない。
 けれどぼくにとっては、この疑問を抱えたまま過ごすにはあまりにも長い月日だった。

( ^ω^)「父さんは、なんでぼくと母さんを捨てたんですかお?」

.

606ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 23:44:56 ID:9TEURJuU0


o川*゚ー゚)o「……ごめんなさい」

( ^ω^)「……」

o川*゚ー゚)o「本当に」

( ^ω^)「…………」

o川*゚ー゚)o「ごめんね」

 そうじゃない。ぼくが求めていた答えはそうじゃない。
 それでも言えない事情があるのだろう。
 それはぼくを思ってのことか。彼を思ってのことか。
 この際どちらでもいいけれど、大人に裏切られた気がした。
 すごく子供らしい感情の機微だなと、見下す自分もいた。

( ^ω^)「……だいじょうぶです」

607ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 23:54:50 ID:9TEURJuU0

 前を見るしかない。
 全部飲みこんで、躍起になって力だけ求めてしまう、そんな虚しい人間になってしまわないように。
 いろんなものを取り戻すために、ぼくは今より少しだけ強くなりたい。

 父さんを始めとする大人達の事情も、
 ハインが今どんな気持ちでいるのかも、
 今はさっぱり分からない。惨めだ、これ以上ないくらい惨めだ。

( ^ω^)「明日からよろしくお願いしますお」

o川*゚ー゚)o「うん」

 キュートさんが力強く頷いた。

o川*゚ー゚)o「きみがもう二度とそういう顔をしなくて済むように、ぼくが責任を持って鍛えます」

 ハインと、朧げな父さんの顔が脳裏を過った。
 今日の月は綺麗だ。星が今にも降ってきそうで、手を伸ばせば届きそうな気がした。

.

608ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2018/10/21(日) 23:56:17 ID:9TEURJuU0
たった三十回投下するのにこんなに月日がたったのかと自分の怠け癖に辟易してます
また

609名無しさん:2018/10/21(日) 23:58:51 ID:GRvUU8yw0
おつ!

610名無しさん:2018/10/21(日) 23:59:40 ID:BrRMkiQc0
乙です

611名無しさん:2018/10/21(日) 23:59:47 ID:vMVe3N1.0
乙乙
やっぱ面白いわ

612名無しさん:2018/10/22(月) 00:06:29 ID:HHCepLzo0
乙!!!
ブーンもんなんだかんだ思春期の少年なんだな

613名無しさん:2018/10/22(月) 00:17:26 ID:.YTALj8g0
乙です( ^ω^)

614名無しさん:2018/10/22(月) 16:47:20 ID:mYhCEonc0

マイペースで続けてくだせぇ

615名無しさん:2018/10/22(月) 22:00:46 ID:4XsmKQ4c0
おつ!
ロマネスクばっちり生きてんじゃねぇかどうなんただこれ

616名無しさん:2019/03/12(火) 12:39:22 ID:AUBPvmrA0
まだ信じてる。
きっと続きを書いてくれる。

617名無しさん:2019/03/12(火) 15:28:32 ID:4Ln2q5Qc0
一月におわはじラジオに顔出してたし
その内戻ってくるだろ

618名無しさん:2019/03/12(火) 23:43:01 ID:M0B/ga5c0
生存が確認できるだけでもうれしい
俺も待ってるぞ

619ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2019/06/26(水) 01:19:25 ID:u2taR91M0
近々投下。数日以内に。。。

620名無しさん:2019/06/26(水) 02:29:14 ID:tgXGa.Yo0
マジかありがたい
無理しないでマイペースで投稿しておくれ

621名無しさん:2019/06/26(水) 02:58:40 ID:/bYmV5U60
っしゃオラやったぜ楽しみだ

622名無しさん:2019/06/29(土) 01:40:07 ID:KgB48MEA0
ふと今楽の存在思い出したら生存報告が!
焦らないでいいから今すぐ投下して

623名無しさん:2019/07/06(土) 21:34:54 ID:dzvSOVWs0
いつまでも待ってるぞお

624名無しさん:2019/07/23(火) 07:28:42 ID:BahvFvMY0
まだかなーまだかなーチンチンチン

625名無しさん:2019/08/01(木) 12:51:08 ID:mv4wtyMg0
夏バテ気をつけろよ

626名無しさん:2019/08/25(日) 08:46:36 ID:pjULYHqo0
ほんといつでもいいんで続き待ってます
今一番楽しいのこれなんです

627名無しさん:2019/08/25(日) 23:41:40 ID:iX1g9azM0
いつでもいいので今すぐお願いします!

628名無しさん:2019/09/17(火) 02:00:34 ID:eFTNzL2A0
ブーン系の富樫

629名無しさん:2020/04/27(月) 03:04:30 ID:alG2jnQI0
生存確認から10ヶ月経つけど生きてるのか?

630名無しさん:2020/07/16(木) 00:53:00 ID:CezRnAuY0
俺のレスから1年経とうとしてます!
本当に、いつでも、いいので今すぐ復活お願いします!

631名無しさん:2023/09/30(土) 23:12:16 ID:ME2ydxHE0
最後の投下からもう5年近く経つのか…頼むよ


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