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( ^ω^)達は今が楽しければなんでもいいようです

1ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2016/09/23(金) 23:19:53 ID:tPVEEtDg0
前スレ
( ^ω^)達は今が楽しければなんでもいいようです
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1438259918/

支援曲 Answer(すーぱーもぐりん氏より)
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/lite/link.cgi?url=https%3A%2F%2Fyoutu.be%2F-c3XqxQ_j2A


ゆっくりまったりと。2スレ目でもよろしく。

386ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/02(水) 22:28:14 ID:cjjGXVZk0


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                 ,, ‐'''"´    ______、   .´゙''''ー .._
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          /   /  .,,      __,,,,...................._ ″.ゝ ,,    `'-、  \
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     ./   /      / ,,/゛.xt!''゙二-ー'''"゙゙゙゙゙゙゙゙゙"'''ー-..,゙ !.... !-、 \ .-rクi  \ \
    ./∠..(、............ / .∠.......... / .,....r=ニニミ厂゙二ニニッ 、..`'‐..iニ....ニx. ゙'、、...............゙lv....ム
    /  l,.く 'i . / ./   / ...-'゙゛     i! l'i .l     `\、゙'-、 .\ ヽ  ,  ,i'./ .ヽ
   ./  / ヽヽ.` / / yi" ./ / .,巛┘._.. /.i;;;;.l...l ,,、...テ''i  .\ \  .\ ヽ .ノ"/./ .l  .l
  .i′./  ヾV゛./ _lミ'゙,/ .,i". ヽ.゙,.,シ彡'"゙/ /  l .l゙゙'''ミ-.".- .,, \ ヽしミ,ヽ ヽ.,/,i′ !、 l
  !  /    7 l゙ .゛./ /  `´'!シソ゛ 〈) ./ l ".゙ ゙L.l ,i .`' !./ ″  ヽ ゙.l  . l. l/    .l  .!
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 .l  .| .゙ご'゙ l / ヽ.l/ l`'‐、'-//  、 .,! /..‐二ミヽ.l .l. ._,,  l.l..‐'.,/.! l.ノ,i'.! | iー'.l" .!  l
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387ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/02(水) 22:40:35 ID:cjjGXVZk0

,・、’从 ゚∀从,・、’

 ハイン、いや、始祖キリバリ-・アルカードは退屈そうに腕を組み、眉根を寄せて地上を見下ろしていた。
 彼女の視線の先には、燻るように揺らぐ炎の残滓と、無数の骨達。
 そして始祖の背後に顕現した魔法陣は空を覆わんばかりに拡がり、その光で地上を照らしている。

从 ゚∀从『セント・ジョーンズ! この私が手ずから出向いてやったのだ。かような茶番で退屈させるな!』

 怒号のようで、その中に清廉すら思わせる声が響く。
 王が下々の者達に説くように、今の彼女が空より放つ闘気は聞く者全てを圧倒していた。

 彼女の視線は足元の炎から第八ブロックに向く。
 蟻のように群がり、どよめく彼らが、彼女には塵芥のように見えた。

388ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/02(水) 22:59:56 ID:cjjGXVZk0

从 ゚∀从『……汚い』

从 ゚∀从,・、’『汚い! 汚い! 汚い!』

从 ゚∀从『なんだこれは!? 何なのだ!? 仮にも真祖として力を継いだこの娘が愛した世界はこんな薄汚い箱庭か!』

     ,
从 ゚∀从,,・’

从 ∀从

::从 ∀从:: フッククッ...

从 ゚∀从,・、『ハハハハハハハハハッ!!』ドッ

从 ゚∀从『なぁ小娘よ! この私に何を為せと言うのだ! 貴様は言ったな、■■■■■■■■と!』

从 ゚∀从『この薄汚い世界の何処に、私が救うに値する者がいる! 私の目には塵芥しか映ってないぞ!』

389ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/02(水) 23:06:09 ID:cjjGXVZk0
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390ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/02(水) 23:16:08 ID:cjjGXVZk0

 始祖は不意に嗤うのをやめ、目を細めて地上の有象無象を眺める。
 そしてほくそ笑んだ。

 あの虫けら共に、我が軍勢をけしかけたらさぞ愉快なことになるのではないか――

 それは羽虫をその手に捕らえた幼子のそれとよく似た、下卑た好奇心。
 未だ彼女の背後の陣から無尽蔵に湧き続ける骨の軍勢は同じ姿勢で滞空し、主の指示を待ち続けている。

从 ゚∀从『間引きも、王たる者の導き。ならば娘も本望だろうさ……再び目を覚ましたあやつの顔を夢想し、眠りにつくのも一興か』

 足元で燻っていた炎が燃え上がるのを視認し、片手間で蝿を払うように煩わしげな視線を落とす。
 顎をしゃくり、無言で軍勢に命ずる。潰せ、と――

 たちまち骨の軍勢は炎の中心に向かって身を投じ、火龍の存在自体を揉み消してゆく。

391ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/02(水) 23:45:23 ID:cjjGXVZk0

从 ゚∀从『セント・ジョーンズよ。思えば貴様も青臭い理想を謳っていたな』

从 ゚∀从『貴様の口車に乗せられて愚かな衆愚に知恵と戦の火を授けたが、これを見て確信したよ』

从 ∀从『……やはり、人はどこまでいっても愚かであると』

 一瞬、ほんの一瞬だ。
 彼女は目を伏せ、こみ上げるものを噛み殺した。
 始祖という、人間から最も遠い場所にいる高位存在が僅かに見せた感情の機微を見る者はいない。

从 ゚∀从,・、『ストリガよ! 我が命を拝聴するがよい!』

从 ゚∀从『かつて我等を闇に封じた愚かな人間共は堕落した!』

从 ゚∀从『私が許す! 頃来の真祖ハインリッヒ・アルカードの所願を果たす為、命じよう!』

从 ゚∀从『我等の破壊を以て人類の救済とする! 嘆きの魔女達よ!』

392ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/02(水) 23:46:55 ID:cjjGXVZk0







     『救え! 救い尽くすがいい!』







.

393ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/02(水) 23:55:57 ID:cjjGXVZk0

 始祖の号令を受けて、骨の軍勢は一斉に咆哮を上げた。
 金切り声のようなそれは重なり合い、学園上空に響き渡る。
 小刻みに震えながら、それらは互いに鼓舞しあっているのだろうか。

 復讐のシュプレヒコール。

 鳴り止まない不協和音。

 骨達は一斉に身を屈め、第八ブロックに集まる人の群れを、ひび割れた眼窩で捉えた。

 その時――

 始祖の眼前の大気が、否、空間そのものが……

394ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/02(水) 23:58:46 ID:cjjGXVZk0
      .ヽ  ...l .l       ,!   \   l三L  .r|    iゞ   .!  ./  ./ i′       ,./     ., -'''″
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  `''-..、   .!'、、  .\    /         ヽ.,!三三三} ,i、/     l‐l゙  ,ノン゛      ,,/,..-‐' /
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. ゙''-、    .\.l   .`'-、.ヽ. !        /.三三三|/  .l    ,l lン゛      . /    /
   `''-、.   ..゙!、     ゙ゝゝ         /三三三三 !、  l   ./ | ."     . /     ./        ... -ー''',゙
      . l    ヽ      ト、、    /三三三三三 l. !!  ./ ;;l゙     .,,./       ./      , / _..-'"´
       .l    ヽ    ..l三゙''-、__/三三三三三三 ∨} / 三|   .,ン/'゙    .,/;∨  ー―ー'、,..-'″
        l     `-、   ヽ三三三三三三三三三三 テ三三| .,..‐゙/  . _..-'"三r'" ̄ ̄ ̄ ̄"
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                   〉三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 \,i,二-‐'' ̄ン'"゛
 ̄――--___,゙'-、,、  ,/三三三三三三三三三三三三三三三三v-、三三三三三三三㍉、゙''ー ,,_
             `'ジ7"三三三_,,vi丶三三三/.i三三三三三三三三ヽ_ `|三三三三o三三三゙!ミ-/  .`\__、
      ._,, -'' /  ./ ;;.,r‐'''"゛ ./゙三三三/ .、 |三三三三三三三三三~ 三三三三\ .`゙'''ー-ゝ `'-、、 ‐. ̄ ̄
   _..-''´._ /   / ./   、 l三三三/  / .!三三三三三三三三____三三三三三l,_       `゙''''ー- ..
^'''" _ /    ./,./    .,/-l三三三/  _,!__/三三三三三三三三三゙'''ー、, `'''ー ..__三三゙'-、
._..-'"     ,/;i./ .ー ̄^゙'、.,..-''゙三-''7;i,゙_‐´ .,./ 三三三三三 ! ヽ三三三三三゙ゝ、__二ュ三三ヽ、
     ._.. -゙‐─^゙~゙''ー ../゙'''ク´   /三三゙'゙三三三三三三l′ |三三三三三三,____三三三、三三`'、
__‐''"            /     l三三三三三三 /.l三三ヽ .!三三三三 |     ̄ !.、 `'''ーxy..ミll― .__
               /     l丶;.,./ 三-、三/  .l三三三三、三三三|      .| .!     `'-,,ヽ、
                /     ./ /  / ゛  ..l′   .l三三三./ \三三|      .| .|       `'ヽ、
_,,.. -‐''''^゙ ̄ー―┐       ,/'"  /      l,    .ー!'、.;;ノ    `''''、;;.!     │.ヽ            `'-、、
        / /      ,/    ./       .,イ     .! \         ゙' li      ヽr'"'、,
     ,/゛ .`./     /     ./       / .!     .!   ヽ       .ヽ      ヽ  .|'-

395ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/03(木) 00:12:06 ID:OBnTskHU0

从 ゚∀从,・、’

 キリバリ-・アルカードはかつて自分が生きた世でも見なかった規格外の闘気に身震いした。
 それは彼女にとって初めてのことだった。

/ 3, ,’・,・、’

 彼女は咄嗟に自身の黒い腕を構え、防衛の姿勢を取った。
 不死者の王たる彼女の中で、いや、不死者の王たる彼女を構成する全てが、警鐘を鳴らしていた。
 これも、初めてのことだった。

 細胞のエマージェンシーコール。
 それを掻き消すのは、絶対的王者としての自負、驕り。

从 ゚∀从『ほう……』

 常人であれば、直接当てられるだけで意識を刈り取るほどの闘気に触れ、始祖は悍ましい笑みを浮かべた。

从 ゚∀从『素晴らしい。この澱んだ世に、かような瑞々しい覇気を持つ者が存在したとはな』

/ 3

从 ゚∀从『名乗ることを許すぞ。人間』

/ 3「やれやれじゃのう……くたばり損ないの吸血鬼とやらは、随分とせっかちなようじゃ。殺気がびんびんイチモツを撫でおる」

/ 3「ま、儂も冗長な前口上は好かん。では、簡潔に名乗らせてもらおう」

396ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/03(木) 00:17:01 ID:OBnTskHU0
゙'-,;;;;;~゙''''ー、,      `'∴;;,..-'''"                i-V;;;;;;;;;|,      l;;;;;;|  /゙Y'";;;;;;
  \;;;;;;;;;;;;;;;\      `゛          i--.... ..、     ゙l、;;;;;;;;;;; !      l;;;;;.! ./ ;;;;;;;;;;;;;;;;:
: t 、\;;;;;;;;リi,;;; ! .ト、        _..-''゙ ゙゙̄'''-、L;;;;;;;;;;`''-..、   `''、;;;;;;ヽ,     l;;;;;;;.l/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
 .ヽ\.ヽ;;;;;;゙V;;;} ,!.l       ./ ;;;;;;;;;.,..-‐'''''''''''ー 、;;;;;;;;;;;;;`'x  .v、`ぃ;;;;ヽ,    . l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;n.
  .ヽ;;゙'' l'、;;;;;;;;.l /;;;.!     ./;;;;;;; /  ,..-‐''ッ  ,,、`'./ ;;;;;;;;;;ヽ, ゙'.l' li.;;;;;;;\,,   .ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.l,
!、  .ヽ;;;;;゙!コ;;;,iジ;;;;│     ,!;;;;;;/_,  .!  ー゛  .lヽ l;;;;;;;;;;;;;;;;.!  l;;";;;;;;;;;;;;;\   ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;"
;;.l.  .li.l;;;;;;″;;;;;;;;;;;;;l.     !;;;;;;;;;;/, ┐  、 .i、.iii ゙' ! |;;;;;;;;;;;;;;; l  .!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\、 ヽ,;;;;;;;;;;;;;;;;;:
;;;;.l   l;;;;;;;;;;;;...-、、;;;; l    .|;;;;;;;;;;'!゙;./  . |ハ、,_.x、   .|;;;;;;;;;;;;;;;;│  .!;;;;;__;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`'-、,,`''-_;;;;;;;
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;;;;;; !  .!;;;;;,./ '´ `''i;;;}    .!;;;;;;;;.!  /;ヾヘ;i、;;; l  ./ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;!  !;;;; l !;;;;`'''√''''ー、、;;;;;;;;;;;;;~″
;;;;;;; !  .,!;/゛  ,、 i、「しかと聞け、異形の者よ」 ,!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;│  !;;;;/.,/;;;;;;;;;;;;\_   `''-、;;;;;;;;
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397ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/03(木) 00:18:13 ID:OBnTskHU0








        ,・、/ ,゚ 3「儂が神である」








.

398ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/03(木) 00:18:54 ID:OBnTskHU0
寝ます
少なくてごめんね
また明日

399名無しさん:2017/08/03(木) 01:40:36 ID:Mwr/g9SI0
乙乙
ブーン=戦神だったっけ?

400名無しさん:2017/08/03(木) 01:44:30 ID:/8svAyb20
悪い方向に転がりまくってる
ブーン達帰ってくる頃に学園あるの・・・・・・?

401名無しさん:2017/08/03(木) 02:50:38 ID:e.fRkFrk0
あの冒頭にちゃんと戻れるのか
ハラハラする

402名無しさん:2017/08/03(木) 07:24:38 ID:icmJhTMs0
ジョルジュさん物凄くかき回してんな

403名無しさん:2017/08/03(木) 12:44:15 ID:JE.ispvA0

ペストはやっぱり……

404ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/03(木) 22:31:10 ID:OBnTskHU0
おれおろえおっっれ

405ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/03(木) 22:32:25 ID:OBnTskHU0




第二十七話「闘いのマトリョーシカ」




.

406名無しさん:2017/08/03(木) 22:34:39 ID:ixpFx9Ls0
いいぞ

407名無しさん:2017/08/03(木) 22:35:07 ID:JE.ispvA0
あれ昨日の二十七話は!?

408ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/03(木) 22:36:58 ID:OBnTskHU0
ああああああああごめんなさい小分けで投下するようになってから感覚がごちゃまぜなんでなかったことにしてください
もうころしてくれ

409名無しさん:2017/08/03(木) 22:40:14 ID:ixpFx9Ls0
落ち着け、二十七話は逃げないぞ

410ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/03(木) 22:47:18 ID:OBnTskHU0


       / ,' 3
                  从∀゚ 从


 翼を持たない荒巻が自分と同じ土俵、地上から遠く離れたこの場に滞空している。
 それに対して、始祖は何ら疑問を抱かなかった。

 その声質は異なれど、人間とは違う領域に身を置いているという点で共通している二人にのみ理解出来る事象は多い。

从 ゚∀从『力のみで神仏の域に達したか。業の深い者よな』

/ ,' 3

从 ゚∀从『その域に到達するまでに、どれだけの強者の芽を摘んだ?』

/ ,' 3「はて、お主は”人間”とやらが肉を食うのに、家畜を憐れむような生き物だと思っておるのか?」

从 ゚∀从『…………』

 ハインの身体を借りて、ハインの顔で、始祖は高揚を露わにする。
 荒巻は腕を組んだまま、始祖の金色の瞳に冷めた視線を飛ばし続ける。

从 ゚∀从『その驕りは、嫌いではない』

411ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/03(木) 23:03:38 ID:OBnTskHU0

 歪む空間の中、闘気が鋭い刃物のように鍔迫り合う。
 鎌鼬が飛び交い、空気を切り裂く。
 始祖の頬を、闘気の刃が掠める。
 一筋垂れた血を、まだ人の形を保った指先ですくい取り、満足げに目を細めた。
 頬の傷が瞬く間に癒える。
 絹のような、白い肌が再生しきったその時、示し合わせるでもなく二人の”コミュニケーション”は始まった。

/ ,゚ 3,,’・「ふんッ!」

 枯れ木を思わせる、深い皺が刻まれた老人の顔。血管が浮き彫りになる。
 始祖に向けた掌は何を放つでもなく、発声による発破のみで始祖の身体を地上に叩きつけた。

,・、’从 ゚∀从,・、’

 濁流が彼女を避ける。
 否、何者にも干渉されぬ筈の、大海嘯の如き流れすらも、彼女が受けた衝撃に巻き込まれたのだ。

412ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/03(木) 23:16:25 ID:OBnTskHU0

 再び流れを取り戻した濁流がたちまち始祖の身体を覆わんとする。
 その刹那、水の流れよりも先に荒巻は地上に降り立ち、地面に仰向けになっている彼女に馬乗りになっていた。

/ ,' 3「儂のみが、疾きを堰き止め、堅きを打ち砕くことが出来る」

 二人が共有する時間は、学園の強者達が闘気をぶつけ合う際のそれよりも、薄く、極限まで引き伸ばされている。
 一秒が永遠に近い次元で、言葉を介さずとも伝わる極限のやり取り。

从 -∀从『――――』

从 ∀从 ニィ...

 自分の視界が、浅黒い拳で埋まるのを満足げに見つめながら、始祖は振り下ろされるそれを無防備に受け止めた。
 頭部が爆ぜ、飛び散る脳漿は一瞬で蒸発する。
 その拳の前にはあまりに脆弱な肉。
 それを軽々と突き破って、荒巻の拳は地面を”撫でた”。

413ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/03(木) 23:21:10 ID:OBnTskHU0
.   _.. -''″     .__..__,、           -=ニ゙゙ニ--- -......,,,,,_、     .'`-┷lli..,, ,_
. ‐'″  _,,.. -ー''''^゙゙二ri'ニ.... ....、............. ...._,,,_            ゙゙゙゙̄''''lllll,,,,_
..,.. -''"゛          _,,,.. --ー''''."゙.´                       ̄''''―
    _,,,,,       ` ̄ ̄ ゙゙゙̄! ,,__      .,,,,..uuii、;;;;;;y ......,,,,_,i-............ ......,,,,
-''''゙彡'"゛    ._,,..yr‐ ._,,.. -ー''''''゙  ̄ |!        i| :     ´`゙'''― ,,,_
...ノ'"  .,.. -''',゙..r''“゙゙“´         |!       i| i             `'''ー、、
  _..-'"゛ _..-                   |!         ∨|                  `'ゝ
'"  .,..ッr'"                  |!            i!                  ヽ
.., ''ソ゛                     i  |!           i|
゛ l゙                  i! |!         i|
. !                      |∨             i!
  ヽ                  i|!            i|
.   `'-、、,.               |!              i|                _..-'´
      `''ー  ,,_          |!              i|.         _,,,.. -‐''"
              ´゙'''ー . ,_    |!            i|.  __ii;;;;;;ニ二......、
.,,_. : =i i ,,、              |!                i|.          '''''''''''''''''''''''''''
.  `゙''''〜 .`''ー .. ,,,,____ .__     |!              i|.... 三゙゙..........---;;;;='   ._,,
'''ー ...,,,_          ̄ ̄..  |!             i|     -―''''"´  . --l∋´
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         \         |l           :            l|
                     |l          i           l|     /
              \ _ノ,'      _  |!         l|     /
....   く>         ヾ<       /Υ 〉 !|   _  |]    ー '´/
                    }l       〈_::」/  :!:i:  〈/    __   l {      /
        \、    /,    __     .:|.:|: .     _ノ::::\\  、ヽ. __/
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   \ 、    // l7    ̄  . : :|: :: :!: :. :|: : : . . .      l>   il     フ∠/
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414ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/03(木) 23:40:52 ID:OBnTskHU0

/ ,' 3「ほっほっほっほ。力加減が煩わしくてかなわんわい」

 空高く昇る闘気の渦。
 幸い上空に逃げた高エネルギーは学園を更地にすることはなく、空を震わせるだけに留まった。
 それでも彼の拳を中心に、大きなクレーターが出来上がり、周囲の水は干上がっていた。

/ ,' 3「しかしあまりはしゃぎすぎると地上諸共吹き飛ばしてしまうでな。わかるじゃろ?」

 クレーターから赤い靄が噴き上がる。
 それは瘴気のように一度大きく拡がり、一処に収束する。
 瞬く間に人の形を形成してゆく。そして肥大する腕。爪は猛獣のように伸びる。

/ ,' 3「カビ臭い老害のお前さんにはわからんかもしれんが……そうさな、ふぁみこんによく似ておるの」

/ ,' 3「強い龍や獣を倒す為に、必死に鍛錬を積むんじゃ。そうしてようやっと有象無象を駆逐出来るようになったころにはの……」

415ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/03(木) 23:51:01 ID:OBnTskHU0

/ ,' 3「じぇーーーーんぶパァになってしまうんじゃ!」

/ ,' 3「儂はただやりたい放題したかっただけなのにのう、全てがぼたんを一度押すだけで消し飛んでしまう」

/ ,' 3「血湧き肉躍る闘争も、一度撫でただけで終わると解っていればこれほど興ざめな事もない。そんなものは、最初から壊れているのと同じじゃ」

/ ,゚ 3「ほほっ! パァ! 全部パァ! 戦友も女も街も星も、全部壊れてしもうた!」

 大股を開き、両手で頭を抱えながら、地面すれすれまで状態を反る。
 その姿勢のまま荒巻は降り注ぐ雨など気にも留めず、曇天を仰ぐ。
 気が触れた老人は長い白髪を振り乱しながら、自身の視界に映るあらゆるものの無力を呪った。

/ ,゚ 3「おなごじゃあるまいし! つまらんのう、つまらんのう! 儂はただ肉を力いっぱい殴りたいだけなんじゃ!」

416ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/04(金) 00:07:11 ID:IFipDMBU0

从 -∀从『白痴の戯言ほど聞くに堪えん雑音は無いな』

从 ゚∀从『だが闘争にかける飽くなき欲求は褒めてやろう。ヒトとは矜持を貫かんと決めた道を進み続けるからこそ、常軌を逸脱出来るのだから』

 一糸纏わぬ姿で再生を果たした始祖は、黒い腕を振りかざす。
 えび反りで頭を抱えたまま、髪を振り乱す荒巻に向けて、爪を降ろす。

/ ,゚ 3「ほっほほほおおおおおおおおおおお!」

 荒巻は残像のみを残し、姿勢を変えぬまま真上に跳んだ。

从 ゚∀从『闘争とは矜持でなければならない。勝敗などその副産物でしかない』

/ ,' 3「然り!」

从 ゚∀从『ならばこそ、生きとし生けるものの頂点に座す私は、白痴の歪みきった矜持も愛でる義務があるだろう』

/ ,' 3「然り! 然り! 然ァり!!」

417ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/04(金) 00:22:55 ID:IFipDMBU0

 えび反りのまま宙を舞う荒巻を視界の中心に捉え、見据える始祖。
 標的の肉を掴むことなく地面を抉る黒い爪に力を込め、その身体は次の動作の初動に移る。

/ ,゚ 3「どおおおおおうした!? 儂を愛でるのではないのか!? 止まって見えるぞ!」

 一瞬で始祖の懐に潜り込んだ荒巻は、えび反りから腹筋の力のみで上体を撓らせ、自分よりも二回りも小さな彼女の頭部に頭突きを見舞う。

从 ゚∀从『掌に舞い込む羽虫を、気まぐれで愛でるような下卑た感覚よ! 愛らしいぞ小僧!!』

 自身の額を荒巻の額に擦りつけながら、肥大した腕で荒巻の身体を抱き込む。
 ささくれだった木のように、鋭い棘が突き出る。
 甲高い音。金属音に近い何か。
 棘と荒巻の肉体がぶつかりあう音。
 棘を纏った腕の、無慈悲の抱擁の中で、荒巻は無邪気な赤子のように嗤う。

418ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/04(金) 00:29:46 ID:IFipDMBU0
急用につきお終い
きりが悪いのでいっそころしてくれ

419名無しさん:2017/08/04(金) 00:31:35 ID:YiwHggak0
こんな時間に急用とな。
おつ!
荒巻って今まで出てきたっけ?何者だ?

420名無しさん:2017/08/04(金) 00:38:32 ID:pf66fCRo0
乙乙
前スレでフォックスと話してた先代のブーンだったはず

421名無しさん:2017/08/04(金) 18:11:59 ID:TxGJdAGM0
荒巻のイカれ具合が楽しい

422ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/04(金) 18:57:03 ID:IFipDMBU0
すみません
昨日の急用が引き続き今日にも縺れ込みそうなので、今日も厳しいかもです
来れたら来ます
申し訳ない

423名無しさん:2017/08/05(土) 10:29:43 ID:pg47h9fQ0
今日はどうだ

424名無しさん:2017/08/05(土) 10:49:24 ID:Vr3wzMI60
いける

425ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/05(土) 20:44:31 ID:Vr3wzMI60
いきます

426名無しさん:2017/08/05(土) 20:56:57 ID:aGAEcMJw0
よろしいならば支援だ。

427ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/05(土) 20:58:37 ID:Vr3wzMI60

从 ゚∀从(鋼鉄をも破る我が腕をもってしても生傷を入れる程度か……)

/ ,゚ 3「ほぉれ! ほれほれ! 儂を失望させるな! 愛でるというなら思い出させてみよ!」

 自身を覆う獣の腕を引き千切りながら、荒巻は吠える。
 荒ぶる戦神の咆哮。
 万物をも震わせるその怒号は今、彼が対等と認めた吸血鬼の始祖にのみ向けられる。

/ ,゚ 3「我が子を抱く母の慈愛を! この血湧き肉躍る闘争の中で!」

 互いに放つ戦慄の覇気は、常人ならば触れただけで身体すら蝕む猛毒と化す。
 極限の空間でのみ解り合う二人の拳。小細工など有り得ない。

从 ゚∀从『面白いッ! 実に瑞々しい! この腕の中で躯となり眠ることを許そう!』

/ ,゚ 3「破ァアアアアアアアアアアアアア!!」

,・、’从 ゚∀从『その獣の衝動。愛せるのは天上天下にただ一人、私だけだということを識れ!』

/ ,゚ 3「マァアアアマアアアアアアアアアッ!!」

428ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/05(土) 21:17:08 ID:Vr3wzMI60



 肉を穿つ音が鳴り響く。



 四肢を引き千切る音が連なる。



 二人分の嬌声と共に。



.

429ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/05(土) 21:33:23 ID:Vr3wzMI60
/i:i:/i:i:i:i:i:i:i:i:i:/i:i:i:/.:)/ノ爻爻彡彡ヘililiV/;:;:;:.xi(爻淡淡爻淡淡慫戀戀戀慫戀戀慫慫戀戀戀戀
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i:i:i:/;:;:;:;:;:;/i:i:}::::::/─ < ̄ ̄丶、  ̄\\ヘililiV.:.//|:::|彡'|ili|⌒|ilil|ルi慫i戀|ilシ||爻/レク貅戀慫シ|ili|
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i:/;:;:;:;:;:/i:i:iリ.:.√| ̄「 ̄  \ _/ ̄\|i:i|ヘilil〈: :l:::|: :,个i|::|`Yl|ノ:::xXXilii辿/し|爻ンilil/:::/┼:|ilil|
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430ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/05(土) 21:56:30 ID:Vr3wzMI60

 陽は落ちて、雨は木々を濡らす。
 素直邸の門扉は目の前なのに、ぼくにはすごく遠くに見えた。
 何発殴られただろう。何度転ばされただろう。

(#))メω^)

( ^Д^) 

 右目はもう、殆ど見えなくなっている。
 今にも火を吹きそうなくらい瞼が熱いから、きっとたこ焼きみたいに腫れているのだと思う。

 全身が軋む。骨の髄まで痛いから、立っているだけでもう、泣いてしまいそうだ。
 何時間経ちました?
 聞く気力すらとうに無くて、ぼくは、闘いの体裁を整えるためだけに、拳を構えている。

( ^Д^)「……終わりだな」

(#))メω^)「……ゃれ……すお……」

( ^Д^)「強がるな、見りゃ解る。お前もう、心が折れちまってんだよ」

431ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/05(土) 22:14:28 ID:Vr3wzMI60

(#))メω^)「…………」

( ^Д^)「努力も認める。俺が戯れてやってる中で、色々試行錯誤してたのも全部分かってるよ」

(#))メω )「……」

( ^Д^)「でもそれじゃあダメなんだよなぁ」

 プギャーの教え諭すような声色が、なぜかぼくの胸にすっと落ちてきた。
 ぼくは彼の言ってることを、理解している。
 そう自覚出来るくらいには、理解出来ている。

 そんな冷めきった理性に塗り潰されて赤子の鳴き声が聞こえたような気がした。
 ぼくは以前にも同じようなことを経験したことがある。

 思えば、あの日も雨が降っていた。

(#))メω )

432ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/05(土) 22:24:42 ID:Vr3wzMI60

━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━
━━━━━



(  ω )「ハイン……ぼく……は……」

从 ゚∀从「喋んなよ。分かってるから」

 冷たい指先がぼくの頭を撫でる。

 血も通ってないのに、身も凍るほど冷たいのに、どうして、どうして彼女はこんなに温かいのだろうか。

 目の奥が熱くなる。
ただでさえ情けないのに、こんなところを、彼女には見せたくないのに……

 親に売られた時にすら湧かなかったものが、じわりと染み出してゆくのが分かった。

从 -∀从「ほら、痛いの痛いのとんでけーってな」

 滲んだ視界いっぱいに、彼女の顔が映り込む。
少しだけ長い犬歯を見せて、ハインは微笑んでいた。



━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━
━━━━━

433ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/05(土) 22:42:53 ID:Vr3wzMI60

(#))メω^)(そうだおね……もう二度とあんな思いをしたくないから、強くなろうとしたんだおね)

 更に遡ると、最初に強くなりたいと思ったのは、怖いもの見たさにも似た王位への興味。
 中途半端な力を持ってしまったがゆえに、悔しいという気持ちが芽生えた。

 あれからぼくは、どれだけ進歩したのだろう。
 血の滲むような努力も、経験してきた修羅場も、それらをどれだけ自分の血肉に出来たかを思えば、
 そんなものは自分の採点でしかないから。
 ぼくは無意識にそれを避けていたのだろう。

 相対評価でしか物事を比較出来ない、ごく一般的で浅はかな自分の思考回路を呪う。嗤う。

( ^Д^)

(メ;-A-)

 ねぇドクオ、辛うじてプギャーに一発入れた君は、本当のところぼくをどう思っている?

 強く、なっていますか。

434名無しさん:2017/08/05(土) 22:49:30 ID:QYcVw0t.0
遭遇支援

435ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/05(土) 22:55:52 ID:Vr3wzMI60

( ^Д^)「なぁ坊っちゃん。この期に及んでこいつはお前頼りみたいだぜ」

(メ;-A-)「……」

( ^Д^)「ちいと甘やかし過ぎたんじゃねぇのか? ケツ拭きくらいは手前でやれ。どこの世界でも大前提のお話だぜ」

(メ;-A-)「黙ってろ」

 木の幹に背を預け、寝そべったまま、ドクオは首を擡げてナイフの切っ先をプギャーに向ける。

(メ'A`)「そいつはやるよ。絶対に、やるやつだ」

 陽が沈んだ後の、深い闇に閉ざされた森の中。
 プギャーが放つ雷光だけが、視界を開いてくれる。
 そんな頼りない世界の中で、彼がプギャーさんに突きつけたナイフの輝きが、頼もしかった。

 (#))メω^)
 ○    っ゙

(#))メω ) フゥ...
 ○    っ゙

もう少し、もう少しだけやってみるさ。

436ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/05(土) 23:39:25 ID:Vr3wzMI60

 背中を押す。
 その熱は燃えるようで、ぼくは一瞬、自分が干上がってしまいそうな錯覚に陥った。
 半分しかない、閉じた視界。
 ただでさえ朧げで暗いのに、こうなってしまってはどうしようもないじゃないか。

 ああ、ペストのハンバーグが食べたい。
 これが終わったら、肉を食べよう。何の肉でもいい。
 そして熱いシャワーで傷を虐めて、泥のように眠るんだ。

 だから、もう少し、本当に、もう少しだけ。

(#))メω )

 ぼくは自分の隣に、誰かの温もりを感じることが出来た。
 ドクオではない。そしてハインでもない。ぼくは多分このヒトと会ったことがない。

从 ー 从

けれど、そのヒトはとてもアタタカクテ、どこか懐かしかった。

437ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/05(土) 23:43:31 ID:Vr3wzMI60

━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━
━━━━

 視界が畝る。

 プギャーも、ドクオも、溶けて無くなってしまう。

 それを止めることが出来ずに、ぼくは近くにあったその手を取った。

 とろけきった世界のアルゴリズム。

 どう足掻いても沈むぼくの身体。ぼくの頭。

 そして――



.

438ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/05(土) 23:46:35 ID:Vr3wzMI60
 ̄”¨“二_ ─-   ..._         _        _   --─    ̄
    L_|          ̄””¨¨ ''' …||─|…¬   ̄                    _,,..
冖¬…─--    ....,,,,__      __||_|       __,,,......   ---─…_二二 -─…
 ̄ ̄    冖冖¬¬……===ニ二____|| ̄ ̄:||-─__.二 ̄-┬…¬冖 ''  ̄|| | |¨~ ̄   .| |
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ||   ||__,|| | ̄  ||  ..||     :|    || | |     | |
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================¬¬LLLLLニi :|    |    |
       |::丁¨¨¨¨¨¨|       | |  ̄|  ̄| |    |    |
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   r-‐ ''  ̄`丶、___⊥_丁 ┬‐┬ _-─……─- _┌─┐-──--   _ _ ....  ....._
    |`''| ̄__「‐=ニ¨__  -┬_⊥‐_|_」L_丁¨¨¨¨¨丁二 -─  '''' - ̄|~ ̄ | 丁 ┬─  ┌ ' 丁
…‐-⊥._|<ノ. ||.: .ノ||─-=ニ '' ~ ̄    ___二ニ=- | ̄``T=-r-‐=ニ~~┌┴┐⊥┴ '^~' - .⊥..,__|
二 ̄-L⊥ ┴…¬冖''<_/| ̄ 丁二二二ニニ=ー┴┐_⊥-┴━┴ ⊥_ ¨T=-  _. -=T''丁 |
└ ̄_  _  --─…¬T「─〈|:|  ̄i{   |i//- _¨    _    -‐=ニ「__ノ |~^'||'¨| /  || ||_ -
  ||笊丁|二ニ=||¨ ̄ ̄ ̄`||_二⊥L__j{-─ // . ||. }¨|二弌二二二ニ=-‐|| ||_⊥ ||_⊥-‐ ¨
─|/_jⅥ:| ̄_」L  -‐  ¨       ¨ -=彡T||丁 L____||丁~~|| |└‐√. . . i{ 丁ニ=‐  _
/i:i:i:i:\|<             __   -=ニ¨_i||||    .||'′ ||_┴  ̄j{_. . j{─||//⌒<二二
|i:i:i:i:i:i:i:圦 く||¨ =- __ .. --==ニ二二二二ニ||  ||└‐  ̄||  <_ -  ̄   ⌒ニ=-  .,_   ̄
i:i:i:i:i:i:i/:i:i} ||¨/∧L.||二二二二ニ=- _二 -‐ ㍉   _⊥- ¨                >
┬=ニ厶イ /||// ∧ .||‐<⌒ || .|:|j{ ̄. . . . . . ._ ⊥- ¨                   _、<「「|:|
└_¬冖:|/:`'(i:i\∧|| └`¨´  |:j{. . . . . . . . .~^┬ _                _、<⌒  || ,|:|
  ~"' /i:i:i:i:i:\i:\||   rく ̄ j{ . . . . . . . . . . . }i !!~"' - _        _、<二二二>'"~|:|
     {i:i:i:i:i:i:i:i:i:}i:i:i:||   \\j{. . . . . . . . . . . . }i ||     ~ '' -= <二二二>'"    |:|

439ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/05(土) 23:55:41 ID:Vr3wzMI60

 瞬きを三回。

 そこはぼくがよく知る場所。
 VIP学園の教室。更に厳密に言うと、ぼくが編入した日、自己紹介の最中に黒板を撃ち抜かれたあの場所だった。

从 ー 从「ごめんね」

 あの時ぼくを脅して銃を撃った生徒の席に、その子はいた。
 ぼくはというとあの日と同じで、教壇で立ち尽くしていた。

( σω^)「…………」

 視界が鮮明だ。右の瞼を指でなぞる。
 あれだけ熱を持っていた腫れが、きれいさっぱり無くなっていた。

从 ー 从「ごめんね、お父さん」

 薄い絹のような白のワンピースが、開いた窓から吹き込む風を受けて棚引く。
 あまりにも透き通っているから、裸体とそう変わらないように見えた。
 それでも衣服と同じように、女の子自体が妙に"薄い"気がして、彼女をまじまじと見つめる後ろめたさは無い。

( ^ω^)「ぼくは君のお父さんじゃないし、謝られても困るお」

440名無しさん:2017/08/05(土) 23:56:18 ID:ZtWq5UoY0
全力支援

441ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/06(日) 00:04:26 ID:Ijq9I4qk0

从 ー 从「お父さんはね、まだ出てきちゃいけないの」

  _,
( ^ω^)

从 ー 从「だってお父さんがまだいるから。お父さんは出て来れないの」

( ^ω^)「……」

从 ー 从「でもね、あのお父さんは、ほんとはもう存在しちゃだめなの。だから、すごく困ってる」

( ^ω^)「……うん? うん」

 女の子の言ってることを理解するのは、早々に諦めた。
 それよりも不思議なことが一つ。
 ぼくは現在進行系で、この子の顔を見ているのに、その子の顔が見えていない。

 隠れているわけでもないのに、脳が彼女の顔という情報を遮断しているような、不思議な感覚。
 その違和感に気付いた途端、胸がざわつき始めた。

( ^ω^)「君の名前は?」

从 ー 从「――」

442ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/06(日) 00:13:36 ID:Ijq9I4qk0

 まただ。

 彼女の口は動いていたし、きっとその声帯は正しく振動して、自身の名を紡いだのだろう。
 けれどもぼくはその名を頭に留めることが出来なかった。

( ^ω^)「気味が悪いお」

 率直な感想だった。
 口角を薄っすらと上げただけの、幸薄そうな微笑み。
 口元から上が見えないから判らないけれど、あるいは不敵な笑みを浮かべているのかもしれない。

 どちらにしても詮無いこと。
 ぼくはこれを白昼夢の類だとあっさりと割り切り、貫徹して冷ややかな態度を取る自分の理性にぞっとした。
 それでもこの状況は、そう解釈する他ないだろう。

( ^ω^)「じゃ、ぼく行くから」

 どこがこのまやかしの出口なのかは知らないけれど、教室の戸を開けて外に出れば、何か変わるだろうという安易な発想。
 自分の直感を信じるまま引き戸に手をかけた時、ぼくはなぜだか判らないけれど、もう一度あの子を見ようと思った。

(   ^)ミ

443ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/06(日) 00:21:44 ID:Ijq9I4qk0
  

      ,.....ェzzェ....、                    ,.....ェzzェ....、
     .ィ尖:圭圭圭尖:、      ご         .ィ尖:圭圭圭尖:、
   ,:勿汐i:i:i:i:i:i:i:i:弐小!              ,:勿汐i:i:i:i:i:i:i:i:弐小!
  爪汐i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i弐小       め     爪汐i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i弐小
  {圭i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:圭}             {圭i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:圭}
  守弐i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:沙汐      ん       守弐i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:沙汐
   守弐i:i:i:i:i:i:i沙才'                守弐i:i:i:i:i:i:i沙才'
     `守:圭圭:才´                  `守:圭圭:才´

                   ね

444ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/06(日) 00:28:10 ID:Ijq9I4qk0

::(  ゚'ω゚)「っ!?」

 一切の気配すらなく、その子は首筋にまとわりつくようにして、ぼくの背後に立っていた。
 そして、見てしまった。
 なぜ他ならぬぼく自身が、この子の目を見ることを拒否していたのか――

 やっと、理解出来た。

(  ゚'ω゚)「おっ……お前……ッ!」

 気道にどっと流れ込んでくる空気が熱い。
 焼け爛れた喉から、泥を吐き出してしまいたい。

 ぼくは全てを理解すると同時に、その全てを呪った。

(# ゚ω゚)「失せろ! いなくなれ! いなくなれお!!」

 手で振り払う。
 それと同時にぼくの視界が、文字通り"裂けて"ゆく。
 ぐちゃぐちゃに千切れた紙くずのような世界が瞬く間に終わってゆく

445ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/06(日) 00:32:20 ID:Ijq9I4qk0




       从 ー 从





 女の子の目が、もう見えない。



      (  ゚ω゚)


 いやだ、いやだ――


 あれを、あれを忘れてしまったら、ぼくは……いや、皆は……



     (  ゚ω゚)

     从 ー 从

     (  ゚ω゚)

     从 ー 从






.

446ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/06(日) 00:40:44 ID:Ijq9I4qk0

━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━
━━━━

( ^Д^)「っ!?」

(メ;'A`)「…………」

(;;,;;;;ω゚)「うっ……」

 身体が熱い。長い、長い悪夢を見ていたような、そんな気分。

( ;^Д^)「お、お前――」

 目の前にいる人がプギャーだと気付いたのは、ぼくが思い切り彼を殴り飛ばした後だった。
 肉を打つ拳の感触が、果てしなく遠い。
 寒気がする。鳥肌が立っている。なんだ、なんだこれ。

(;;,;;;;ω゚)「うわああああああああああああああああああああっ!!」

 叫ばずにはいられなかった。
 体中から生気が吹き出て、出涸らしになってしまいそうな危機感があった。
 コマ送りの映像のように吹っ飛ぶプギャーを尻目に、ぼくはひたすら、自分の身を両手で抱く。

447名無しさん:2017/08/06(日) 00:43:28 ID:C1ev.l/Q0
いいぞいいぞ

448ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/06(日) 00:46:11 ID:Ijq9I4qk0

(メ;'A`)「お前……あの時の……!」

 どうして、どうして君がぼくに向けてナイフを構えてる?

 意味が判らない。
 ぼくはただ――ただ――!

 なんでもいい。なんでもいいから、この悪寒を、止めてくれ。

(;;,;;;;ω゚)「――ッ!」

 最早叫びにすらなってないのかもしれない。
 声を出さずにはいられなかった。

 なんだよ、なんだよこれ。
 寒い、寒い、寒い。

(メ;'A`)「――――!」

( ;^Д^)「――――!」

 君たちが何を言っているのか解らない。
 お願いだから、タスケテくれ。声を、聞かせてくれ――!

449名無しさん:2017/08/06(日) 00:47:15 ID:36.R5Qnc0
これもブーンが聞くことを拒否ってるのかな

450ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/06(日) 00:52:16 ID:Ijq9I4qk0

 「おまたせ、今代のブーン」

 その声だけが、はっきりと聞こえた。

 「びっくりしちゃったね、でも大丈夫」

 すがりつくように、てをのばす。

 「君の出番にはまだ少し早い。だから、ね?」

 ぼくの手は、本当に声がする方へ……

 「ぼく達大人が不甲斐ないせいで、君達には辛い思いをさせちゃうね」

 伸びて、いるのだろうか。

 「でも今はその時じゃないから、今は安心して」

 ぼくは、ぼくは――

451ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/06(日) 00:54:24 ID:Ijq9I4qk0





 o川*゚ー゚)o「おやすみなさい」


 クー会長によく似た女の子が、いた。

 彼女と目が合って、こめかみに衝撃が、走った――




.

452ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/06(日) 00:55:26 ID:Ijq9I4qk0
おわり
久しぶりに支援曲聴いたんですけどやっぱいいすねこれ
明日もよろしく

453名無しさん:2017/08/06(日) 00:56:39 ID:36.R5Qnc0
2箇所で地殻変動起こしたら流石に星が滅びそう
ブーンが暴れてるとゾワゾワするな 乙

454名無しさん:2017/08/06(日) 00:56:58 ID:C1ev.l/Q0


455名無しさん:2017/08/06(日) 01:01:06 ID:evJPpeKo0
いいぞ��

456名無しさん:2017/08/06(日) 02:07:20 ID:KxRUsOlo0
おつ!

457名無しさん:2017/08/06(日) 18:40:38 ID:9Dr0VMB20
龍がますます謎めいてきた

458名無しさん:2017/08/06(日) 22:47:14 ID:s69mtRyo0
アラマキは始祖を同等と見たのか
どっちもとんでもねぇな

459名無しさん:2017/08/07(月) 19:32:56 ID:gtn9K6fo0
きょきょきょきょきょうはくくくくるんですか

460ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 20:41:59 ID:5hZ/Ygow0
昨日は寝てました
申し訳ない
今日はやります
もうちょっとしたら投下
よろしく

461名無しさん:2017/08/07(月) 20:56:14 ID:1y3naObM0
超まってた

462名無しさん:2017/08/07(月) 21:13:55 ID:45ptr7620
よっしゃ

463名無しさん:2017/08/07(月) 21:20:52 ID:n1./65rc0
yatta!!!!

464ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 21:22:43 ID:5hZ/Ygow0






第二十七話「闘いのマトリョーシカ」







.

465ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 21:26:52 ID:5hZ/Ygow0
毎度毎度すみません
二十七話がかれこれ三回目だ
やりなおします

466ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 21:27:25 ID:5hZ/Ygow0






二十八話「闘いのマトリョーシカ」





.

467ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 21:27:55 ID:5hZ/Ygow0
                                 i
                                 |
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468ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 21:28:30 ID:5hZ/Ygow0
                                             ,イ    ,イ ,イ
                                              /ム―7 レ .レ
                                         //ニ7/
                                            /' ̄7/
                                 i             .//
                                 |           /'   __
                      `.、          .i|            /´ > ,.イ
                        \、         i|            ´ ̄  /_/
                         \、     .|i|                  //
                          \ 、   .|i|                 //
               ̄ ̄   ―      .\ 、 ,ノ し ’  ̄    _   |/,イ,イ ,イ               ̄
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――――― ̄ ̄___ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_____――― ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄_ レ' ____ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄__

469ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 21:37:44 ID:5hZ/Ygow0

 _
( ゚∀゚)「いつまでちょこまかとやってやがる」

( <●><●>)「……」

 _
( ゚∀゚)「今更やっぱり敵いませんでした。見逃してください、なんてこたねぇよなぁ!?」

 二人の闘いは極めて静かだった。
 絶え間なく追撃を放ち、隙あらば肉体を破壊し得るだけの打撃を差し込むジョルジュ。
 対照的に、それらを完璧なタイミングで受け流し、ダメージを最小限に留めるワカッテマス。

 水と油の如く混じり合わない二人のスタイルが均衡しているからこその静寂が、そこにあった。

 _
(; ゚∀゚)「――っ!」

( <●><●>)(ここッ――!)

 二人の間の均衡の糸が、突如音もなく切れた。

470ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 21:51:20 ID:5hZ/Ygow0

 膝から崩れそうになったジョルジュは片手で転倒を防ぐ。
 が、そこには両者にとっては充分過ぎる致命的な隙があった。

 _
(; ゚∀゚)(やっっっっっっっっっっべぇ!!)

 避けきれない。が受けることもままならない。
 右手。軌道は、真っ直ぐ。
 的確に、心臓に目掛けて――

 一瞬で眼球が干上がるような錯覚。達人の境地にいるが故の引き伸ばされた時間。
 脳の命令は凡愚のそれを遥かに超越。
 だからこそ、王位は不可能すらも可能にする。
 _
( ゚∀゚)「ッらぁ!!」
 ゙っミ                                                  ,r‐‐″ _..v'l,゙_,/゛
                                                 /   l / /      .i、_..v
                                          ,   .iヘ. ..,./   _,]./ ゙‐' .i    /.∪′
                                          ,l、  /  .゙_.. -''./ .!|    .!l, .,, ‐7
          i!                                  / .ゝ'", ''几   |" ! !   .| ゙く /  ., '"゛
       !l゙                              ,i|  iヽ,,/   l゙ ./ │  .l゙ .,! l ,.. !     /
       l ,!                      l,   /   /│ ./   .l _..-ー''"/  .ヽ / .!  .ヽ /     l
      l |                      l .l  / l ./ . l`゛   l゙    ./     . ,./   `゛  ,/¨´
      / .|      ∥         、   ! ヽ /  .∨  ! ,..iヒ''l}.iヘ  ./  ェ / !      /
     /  .|      !.!   iイ  i   l.l  /  .´  ./    レ゛ l゙ l! !l゙ .゙' /   ,!.゙l, .l゙      ._|
     !  .|     l .l   / .l,./!  ! ヽ./     .,,イ゙    l. | .,! !  .n ,./ l  ヽ../    _z‐¨
     .!   .l    ││ ./  / ,!, l     .,..-'''"゛/     `゙│ .!  |. l  /       .l゙
     !   .!  .、 /  ! i′ / .lト′   .i./    l゙       !  .l,.┤ .ゝ"    _z-'''"
    .!   │ l,  |  |,/  .l゙  ∥ . _,,,..-'j{    !       l   .∪      .,ゝ
    l    .l l.l ,!  .l  /   l!`¨    ! l. /く !     ._..-l゙         /
    !     .l.l `'〕   .|  .!   |i    l  ゙‐' `  .L  ./  l゙            {′
    .,!     ″│   !´.l    .》,  ./         l !._,,.l|、  l      _z -''
    .,!       .l゙    .l .|    .lヽ..ノ     _.. / l. l ヽ l     _/¨´
    .,!      _i!    .l !     .l      '.lii./   ヽ/ .゛     ゝ
    !  . ,..-'''"゛ |     .l.!     .l   .,..-'" l゛       . / ̄
    |___て .i, |     .!      .l,.;ir'" .、 ./        l゙
            |ヽ|     .|         !iヒ'、 .l\,l′      ,..ゝ
         │゛     .!       .!レ`           /
          !      l                /
             !      .,!                _r'"゛
           |    ./⌒!             ir'"¨
              !¬¨¨″  l         ,/´
                 !          /

471ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 22:08:51 ID:5hZ/Ygow0

 鉤手の振りと呼応するように噴き上がる炎が、ジョルジュを守る。
 咄嗟に身を引き、水が干上がった後の不安定な足場に着地し、ワカッテマスは額の汗を拭った。

 _
( ゚∀゚)("あそこ"から引けるか……体術は五分、いや、俺以上……!)

( <●><●>)(体術ならば五分以上に渡り合える。だがなかなかどうしてあの炎が鬱陶しい)

 _
( ゚∀゚)(術の出し惜しみが出来る相手じゃあない……だからといって乱発するのは愚策。炎は無限じゃねぇんだからな)

( <●><●>)(このままじゃあジリ貧。それは最初から承知。俺が今やるべきことは、奴の魔術の制約らしきもの、その糸口を掴むこと)

 _
( ゚∀゚)(極端な弾の節制は逆効果。あちらさんは魔術のマの字も知らねぇ連中だ。だからこそ、普通じゃありえねえハッタリすらまかり通る。それを利用しない手はない)

( <●><●>)(無知など最初から悟られてる。ここでやってはいけないことは、探りを所作に滲ませないこと。この極限下、一瞬の都合のいいブラフに全てを持っていかれかねない)

 _
( ゚∀゚)(術は最小限、だがぶっ放す時はド派手に。一発一発を身体に印象付ける!)

( <●><●>)(探りは第二……あくまで一撃必中を狙う。あちらの動揺から滲み出たものだけを判断要素に取り入れる!)

472ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 22:42:13 ID:5hZ/Ygow0

 ワカッテマスの初動が速かった。
 地を蹴るのと同時にジョルジュの懐に潜り込み、突き刺さんばかりに軸足で地を踏む。
 旋回する上段蹴り。その軌道は半円を描く。
 だがそれをはっきりと視認出来る者は少ない。

 _
(;゚∀゚)「くっ……!」

(;<●><●>)「――っっ」

 狙うは一撃必中。
 とは言え、魔術師の力を度外視したとしても王位として充分な武力を持つジョルジュを相手に、何度もそのような機会に巡り会える筈も無い。

 互いに静の状態。
 つまり見合っている膠着状態を、最速の初動で乱した際に生じる僅かな隙を突く。
 口で言ってしまえばこれほど単純なことは無い。
 だが瞬きの時間よりも遥かに短いその刹那に、自身の殺意を差し込むことなど、事実上不可能だ。

 だがワカッテマスは、それを為した。

473ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 22:50:32 ID:5hZ/Ygow0

( <●><●>)(受けた時点で終わりだ! 完璧に差し込んだ――)

 ワカッテマスは自分の心臓の音を聞く。
 一際強く響いたその鼓動が、背中を押すように――
 蹴撃は加速し、刹那を駆る。

 _
(;゚∀゚)

( <●><●>)

 ジョルジュの側頭部に足の甲が触れる。
 そこが蹴撃の加速のピーク。
 削ぎ取るように、耳を抉り、刃の如き蹴撃は深く、深く――

 ジョルジュの肩に刺さり、沈み込む。
 骨を砕き、肉を断ち、到達する。

 心臓部に――

474ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 22:51:24 ID:5hZ/Ygow0

━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━
━━━









.

475ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 23:01:26 ID:5hZ/Ygow0

 _
( ゚∀゚)(……と、思ってるんだろ?)

 ワカッテマスの一撃は完璧だった。

 当然躊躇いなど毛ほどもない、ジョルジュを殺すためだけに、完全に虚を突いて放たれた蹴撃。
 ジョルジュはその初動を視認することが出来なかった。
 
 だが彼はここに来て、自身の魔術としての力と体術を融合させ、更に上の段階へと昇華させた。
 先程干上がった足場を粉々に砕いた爆炎の残滓が、彼の目の前でワカッテマスの体躯のよって吹き飛ばされた。
 自身が発生させた熱源の機微に対して、当然ジョルジュは誰よりも敏感に反応することが出来た。

 それはさながらセンサーのように、彼の守りを補佐する。
 ワカッテマスの蹴撃の軌道上に差し込まれたジョルジュの掌は燃えずとも――

 限界寸前の熱を孕んでいた。

476ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 23:14:39 ID:5hZ/Ygow0

 ワカッテマスの足とジョルジュの掌が触れた瞬間、炎は燃え上がった。

 虚を突いた完璧な一撃。
 どのような武芸の達人でも、これを鞘に収めることなど不可能だ。

 確実に命を刈り取りにかかったからこそ、そこから先の想定など出来るはずもない。
 これは驕りではなく、この土壇場において、前代未聞の覚醒を遂げたジョルジュが相手だったことが悪いのだ。

 _
( ゚∀゚)(武芸百般、魔術だって例外じゃねぇ)


 足首を掴む。この手を離すようなヘマなど、二度はない。

 ワカッテマスの足首を着火点に、下半身を伝い、炎は頭の天辺まで舐り尽くす。
 消し炭すらこの世に残さない。

 この炎を依代に、一切の加減無しの火龍を――

477ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 23:23:11 ID:5hZ/Ygow0

( <●><●>)「と、思ってるんでしょう?」

 炎が舌舐めずりをしながら現れた瞬間。
 ワカッテマスの蹴撃が加速した。

 ジョルジュの掌は受け止めたが、その重みは、彼の想定を超えていた。

 _
(;゚∀゚)(こいつ……!)

 全体重をかけた蹴撃だ。そのまま押し込むように、ワカッテマスの身体が宙に浮く。
 軸足の支えを無くした上段蹴りはたちまち威力を失う。
 一秒未満の世界の中、ワカッテマスの動作だけが淀みなかった。

 炎が燃え上がるよりも速く、胴が、身体全体が廻る。
 地を離れた軸足は円を描く。

 そして受け止められた自身の足を、受け止めるジョルジュの掌を越して――

 撃ち抜く。ジョルジュの頭部を――!

478ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 23:33:21 ID:5hZ/Ygow0

 _
(; ∀ )(こいつ……一体どこから布石に……」

 衝撃の直前で首を反らし、頭蓋損傷を免れる。
 だがその威力を全て殺しきることは敵わず、揺れる脳で思考する。

 吐き気や目眩などとうに置き去り。
 闘気のみによって鮮明に保たれた視界の中心で、火の粉を纏いながら着地するワカッテマスを睨む。

 _
(; ∀ )(やられちまう。やられちまうなぁ……)

 強敵として認めた上で、完全に裏をかかれた己に対する自虐がこみ上げる。
 そしてそれを一瞬で塗り潰すように湧き上がる――

 ――更なる闘争本能。

 燻るうなじに籠もる熱を吐き出すように、ジョルジュは力の権化の名を呼んだ。

 _
( ゚∀゚),,’・「ファフニイイイイイイイイイイイイイイイイルッ!!」

479ゆゆ ◆AdHxxvnvM.:2017/08/07(月) 23:34:20 ID:5hZ/Ygow0
変わり身の術返し返し返し
今日はこのへんで
おやすみ

480名無しさん:2017/08/07(月) 23:35:00 ID:n1./65rc0
だああああまたいい所で!!


481名無しさん:2017/08/07(月) 23:48:21 ID:Bens4ZRE0
ういうい乙乙。

482名無しさん:2017/08/07(月) 23:54:07 ID:33VFbM1k0
乙乙
今回も熱い熱い

483名無しさん:2017/08/08(火) 03:46:45 ID:JjMdqEKI0
明日も来いよな

484名無しさん:2017/08/08(火) 17:48:05 ID:hEKgO8220
ファフニール加わったら流石にワカッテマスがヤバそうだ
ペニサスは合流できるかな

485名無しさん:2017/08/08(火) 17:59:26 ID:jX5mY7zA0
火龍さんは化け物に挟まれて無事なのだろうか


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