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壊れたぞ誰が、たわます真綿、糸の問い……のようです
1
:
名無しさん
:2016/08/20(土) 01:26:26 ID:977Y4Ifg0
桑食みつつ、罪は湧く
.
14
:
名無しさん
:2016/08/20(土) 01:36:09 ID:977Y4Ifg0
(;´・_ゝ・`)「っ、!!」
゙('、` 川「 」
その、なまっ白い顔には、見覚えがありすぎた。
(;´・_ゝ・`)「ペニサス……っ!」
手から力が抜け、本が落ちていく。
遠くから紙が擦れ痛む音が聞こえた気もするが、頭の中には何も浮かんでこなかった。
゙('、` 川「 」
ゆらゆら、ゆわゆわ。
首の据わっていない子供のように、童女の頭が揺れる。
(;´・_ゝ・`)「ペニサス……!」
どうして、ここに、という声は出なかった。
背後の山道から、車が近付いてくる気配がしたのだ。
(;´・_ゝ・`)(まずい!)
咄嗟に俺は、ペニサスの手を取った。
鍵を乱雑に差し込み、回して、音を立てて引き戸を開ける。
嵌め込まれたガラスが、さぁざぁと悲鳴をあげるが構ってはいられない。
一番手前の部屋に彼女をほっぽりこみ、障子を閉めた。
(;´・_ゝ・`)「ああ、ああ……」
15
:
名無しさん
:2016/08/20(土) 01:36:38 ID:977Y4Ifg0
トラックが、庭へ入ってくる。
乱雑に止まったそこから、荷物を出そうと青年が降りてきた。
俺は深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。
それから、何もなかったような顔をして、玄関先に散らばった本を拾い上げた。
(=゚ω゚)ノ「ちわーっす」
(´・_ゝ・`)「どうも」
(=゚ω゚)ノ「本、買ったんすか?」
(´・_ゝ・`)「いや、借りたんだ」
(=゚ω゚)ノ「へー」
配送係はいつも通り、玄関先にダンボールを置いて請求書を取り出した。
(´・_ゝ・`)「今日も暑いね」
(=゚ω゚)ノ「え? ……ああ、そっすね」
狐につままれたような顔をして、彼は頷いた。
(=゚ω゚)ノ「こう暑いとアイスなんかも食べたくならないっすか?」
(´・_ゝ・`)「……そのうち考えておくよ」
差し出されたチラシを受け取ると、配送係はすぐトラックへと走って行った。
まだまだ仕事は終わらないのだろう。
トラックが山道の向こうへと消えるまで、俺はしっかりと見送った。
まるでこれから悪いことでもするかのように。
16
:
名無しさん
:2016/08/20(土) 01:37:10 ID:977Y4Ifg0
(´・_ゝ・`)「……ペニサス」
障子を開けると、小さなペニサスは相変わらず頭を揺らしていた。
どこかで見たことがある動きだが、思い出せない。
俺はダンボールからアポロチョコを取り出した。
(´・_ゝ・`)「ペニサス」
俺はしゃがみ込み、ペニサスと目線が合うようにした。
゙('、` 川「 」
(´・_ゝ・`)「ペニサス、ほら」
箱を振ると、カラカラと音がした。
その音につられて、ペニサスは箱を見た。
(´・_ゝ・`)「アポロチョコ。わかる?」
゙('、` 川「 ? 」
ふんにゃりとした目の中には、感情が見られない。
(´・_ゝ・`)「君、好きだったろう?」
包装紙を破り捨て、箱の口を開ける。
その動作すらがもどかしく、俺は思い切り箱を振った。
17
:
名無しさん
:2016/08/20(土) 01:37:46 ID:977Y4Ifg0
(´・_ゝ・`)「あっ」
ばらら、と音が散る。
桃色と茶色で出来た三角錐が、手のひらの外へ飛び出ていった音だった。
゙('、` 川「 ? 」
(´・_ゝ・`)「ペニサス……」
三粒ばかり残ったチョコを、ペニサスに見せる。
(´・_ゝ・`)「好きだったよな?」
゙('、` 川「 、 」
ペニサスは、チョコをじっと見つめた。
俺の体温で徐々に溶けゆくそれを、静かに、見つめた。
゙('、` 川「 」
頭は相変わらず揺れている。
チョコはそろそろ原型を留めなくなってきた。
桃色と茶色が混ざり合い、わざとらしいいちごの芳香が俺を苛立たせた。
(´・_ゝ・`)「なんで……」
゙('、` 川「 」
(´・_ゝ・`)「どうして、喜んでくれないんだ……!」
゙('、` 川「 」
18
:
名無しさん
:2016/08/20(土) 01:38:30 ID:977Y4Ifg0
床に落ちたチョコを拾うと、どうしようもなく惨めで悲しい気分になった。
手を洗うため、俺は部屋を後にした。
(´・_ゝ・`)(ペニサスじゃないのか、あれは……)
たしかにあの子がここにいるのはおかしい。
本来ならいないはずの人間なのだ。
それでも、俺は、縋ってしまった。
(´・_ゝ・`)(狐かなにかが化けているんだろうか)
蛇口からざあざあと流れる水は冷たく、心地よかった。
脂っこいそれを綺麗に洗い流し、ついでに顔を洗った。
(´・_ゝ・`)「ふー……」
肺の奥から、憂鬱さを含んだ空気を吐き出す。
多少はすっきりとしたが、未だに釈然としなかった。
……ふと、小学生の時のことを思い出した。
馬桑島といえば昔から養蚕が盛んであったらしい。
それに伴い織物や泥染といった独自の文化が発達していったのだと先生は言っていた。
その一環で、蚕を育てたことがあった。
卵が孵ってから蛾に育つまでには一月かかるので、ちょうどいい夏休みの宿題として出されたのだ。
最初は毛蚕という、黒い毛の生えたとっても小さな虫が生まれる。
桑の葉をばりぱりと食んだ後には脱皮を繰り返し、最終的には真っ白い、そこそこ大きな芋虫に育つのだ。
最初は気持ち悪いと思ってしまうのだが、不思議なことに世話をしてみると愛着が湧いてくる。
触っても手に乗せても可愛いとしか思えなくなる、不思議な生き物だった。
人の手なしでは生きることが出来ないのだと大人たちはよく言っていた。
事実餌がなくなるまで放っておいても脱走することはない。
大人しく人から餌が与えられるのを待っているのだ。
19
:
名無しさん
:2016/08/20(土) 01:39:05 ID:977Y4Ifg0
(´・_ゝ・`)「……あ?」
餌を求める蚕は、その場に止まったまま、かぶりを振る。
餌を探しているのだが、人にはそれが強請っているように見えてしまう。
桑の葉を与えると、蚕は途端に貪り始める。
そして日がな一日中、ばりぱり、ばりぱりと葉を食むのだ。
(;´・_ゝ・`)「まさか、」
俺は引き出しを開けた。
中からキッチンバサミを取り出し、すぐさま外へ向かった。
桑の木なら、嫌という程ある。
祖父母の代まで養蚕をしていたのだと父から聞いたことがあった。
(;´・_ゝ・`)「くっ……!」
よくよく枝を見て、毛虫のついていないものを探し出す。
点々とあちこちについているそれの中から選び出すのには骨が折れた。
が、ようやくひと枝、見つけることができた。
ばつん、と枝を断つ。
衝撃で、毛虫がぽとりと落ちていく。
思わず総毛立つが、体に落ちてこなかったのは幸いだ。
すぐさま走って家へと戻る。
(´・_ゝ・`)「ペニサス!」
゙('、` 川「 」
跪き、取ったばかりの桑の葉を差し出す。
20
:
名無しさん
:2016/08/20(土) 01:39:36 ID:977Y4Ifg0
(´・_ゝ・`)「ペニサス……」
('、` 川「 」
揺れが、止んだ。
にゅ、と細首が突き出し、小さな口が開かれた。
ばり、
ぱり、
ばり、
ぱり、
と、音が聞こえる。
(´・_ゝ・`)「ああ……!」
('、` 川「 」
ペニサスは食べる。
貪る。
咀嚼する。
飲み込む。
食らう。
嚥下する。
噛んだ。
飲み下す。
21
:
名無しさん
:2016/08/20(土) 01:40:05 ID:977Y4Ifg0
(´・_ゝ・`)「気付かなくてごめんよ……」
枝葉をしっかと握り締め、夢中で食事するペニサスに、俺は微笑んだ。
喋れなくたっていい。
アポロチョコが嫌いでもいい。
蚕に生まれ変わってしまったって、いい。
きっとこれは、やり直すチャンスをくれたのだ。
神様、仏様、ありがとう。
(´・_ゝ・`)(今度こそ守ろう)
この子を幸せにしてあげようと、強く、再び、誓った。
そして、
(´・_ゝ・`)「おかえり、ペニサス」
君を殺してしまった俺の元に、よく帰ってきてくれたね。
22
:
名無しさん
:2016/08/20(土) 01:40:37 ID:977Y4Ifg0
桑食みつつ、罪は湧く 了
.
23
:
名無しさん
:2016/08/20(土) 19:49:25 ID:dHACbwJo0
ペニサスじゃないなら、やがて成長して別の何かになるんだろうか
回文が色々想像させていいね、乙
24
:
名無しさん
:2016/08/22(月) 01:02:13 ID:GQIHbr3M0
おお、回文か
指摘されるまで気づかんかった
乙!
25
:
名無しさん
:2016/09/03(土) 10:09:07 ID:587VYtgg0
回文だったのか
凄く引き込まれた、乙!
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