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( ^ω^)ちょっと便利な異能力、のようです
1
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 08:51:49 ID:YaYZS2kw0
初日から、アクシデントに見舞われた。
2
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 08:54:19 ID:YaYZS2kw0
寿命で全うするならば、あまりにも長い人生だ。
良手正着ノーダメノーミスでフルコンボ、そしてパーフェクトに大往生、なんてのがそもそもありえないことではある。
些細なミスを繰り返し学習し、ときには対策をして今後に挑んでこその人生だ。
ただ、ワンミスで詰むという局面も時には存在する。
たとえば、赤信号に気付かずに車がビュンビュン通る横断歩道を駆け抜けてしまったら。
たとえば、ガス漏れに気づかずにタバコに火をつけようとしてしまったら。
たとえば、くしゃみをした拍子に自爆ボタンをポチッとしてしまったら。
とまあ、そんな極端な場面でなくとも「詰んだ」と直感する状況は存在するわけで。
(;・∀・)「……おうちの鍵がどこにもなぁい」
ちょうど僕は今、そんなゆるめの危機的状況に直面している。
3
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 08:54:50 ID:YaYZS2kw0
ポッケ、財布、もちろんない。
カバンを漁るも、やはりない。
淡い期待を抱いて開けた、ポストの中にも無論ない。
帰路のどこかで落としたか。
途中で寄った本屋か茶屋か。
(;・∀・)「電車や大学ならともかく、道中となると厄介にもほどがあるぞ……」
落としたものが携帯だったならまだ望みがある。
ホーム画面からのロックはかけていないので、持ち主を特定してもらいやすい。
衛星だかなんだかを利用した探索できる機能があったはずなので、友達に携帯を借りてIDを入れればおおまかな探索もできる。
一応、利用してる通販やゲームサイトのログインにはロックをかけてるので、変ないたずらもされづらいだろう。
電話やメール、ネットは普通に使えてしまうので、まったく悪用される可能性がないわけではないが。
4
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 08:55:23 ID:YaYZS2kw0
次に、落としたものが財布であったら。
これは、やや危険だろう。
身分証明できるものが入ってる故、落とし主のもとに帰ってくる確率は、ある。
しかし、現金が入っていて、ちょろまかしやすい大きさのそれを、そっくりそのまま正直に警察に届け出る御仁が、この世の中にどれだけいるだろうか。
モ エ ル ゴ ミ
中身だけ抜き取って公園やらコンビニやらの不要物専用火葬待機所へ放り投げる人だっているかもしれない。
そんなわけで、財布は落とした時点で4割くらいの希望を持ちつつ、8割くらいあきらめた方がいい。
……少し比率がおかしいが、希望っていうのは少し抱いてしまうと心の中で倍くらいに膨れ上がるものなので、間違ってない。
……ほんとに間違ったわけじゃないからな!
こほん。
5
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 08:56:03 ID:YaYZS2kw0
そして、鍵。
普通はどうだかわからないが、僕は鍵をそのままの状態で所持している。
むかし自転車の鍵なんかにキーホルダーをつけていたこともあったが、カバンに入れるたびにイヤホンに寄生を試みやがるのが煩わしくて、すぐにやめた。
さて、そんな単体の数センチほどの小さな金属片をどこぞの道端にでも落としたとしよう。
そんなもんを自力で見つけるのは、まず不可能だ。
可能性があるとしたら探偵か魔法使いか、もしくはびっくりするほど運のいい人か。
それでも、見つけられる確率はよくて五分五分だろう。
じゃあ、他の人が見つける可能性はどうだろう。
たまたま歩いてた道の先にきらりと光るものがあれば、気づくかもしれない。
その道を歩く人が多ければ多いほどその確率も上がるだろう。
だけれども、だ。
万が一にも、誰かがたまたま見つけたとして、どうなる?
その人が警察に届けてくれたとしても、それでどうなる?
その鍵には、鍵であるという情報しかないのだから、本人以外は誰が落としたものかなんて到底分らない。
かといって鍵に名前や、あまつさえ住所なんて書いてしまったら大変だ。
鍵というものには、直接的な情報を絶対に持たせてはいけない。
6
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 08:56:57 ID:YaYZS2kw0
(;・∀・)「……せめて、電話番号くらいはくっつけといた方がよかったかな〜」
かくして僕は、学習して、今後の対策を講じることができた。
……現状に対しては、なんの役にも立たないが。
このままでは事態が一歩も進みそうにないので、そんなこんなは置いといて、改めてその現状を整理するとしよう。
今日は大学の入学式。
式はそこそこに、学生証をもらったり通学定期を作ったり、通学圏内を迷子にならない程度にぶらついたりして帰ってきて、今に至る。
行ったところといえば、道を除けば、大学、駅、電車、本屋、茶屋、ゲーセン二軒。
以上だ。
もちろん、どこで落としたかなんて見当もつかない。
ついてないなりに来た道を辿って探すとしても、既に日も落ちてしまっている今、見つけ出せるとも思えないし、徒労に終わりうることも考えると非常に腰が重い。
そんなわけで、僕は新居のアパートの自分の部屋の目の前で、小一時間ばかり立ち往生をしている……といった感じだ。
管理人さんはいつもならいるらしいが、ちょうど今日から数日間休みを取りますと掲示板にアナウンスがあった。
下見の際や入居時に話をした際には、色々と気にかけてくれるいい人という印象であったが、いないのであればどうしようもない。
かといって隣人に頼ろうにも、まだ挨拶も交わせてない手前、勇気というか踏ん切りというか、そういうのが出ずにいる。
7
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 08:57:48 ID:YaYZS2kw0
ポッケから携帯を取り出して時計を確認すれば22時を回ったところ。
ついでに電池は二割を切っている。
まだギリギリ迷惑という時間ではない、はずだ、が。
(;・∀・)「こんなことなら友達の一人でも作っておけばよかったかな〜」
入学式のアナウンスで、後日クラスごとに集まって自己紹介や談笑をする機会を設けると聞いて、じゃあ今日は焦る必要はないと散策に時間を当ててしまったのが仇になったか。
ではそもそも友達を早速作っていたとして、果たしてどうなるかと自問すれば、首は横に傾く。
家がすごく遠い可能性もあれば、そもそも出会ったばかりの暫定友人なんて泊めてくれない可能性もある。
お泊り交渉やら道案内やらのうちに携帯の電池が切れる可能性だってある。
とりあえず今のうちに親か大学に連絡でも入れてみようかと再び携帯を手にしたが、どうしたことだ、うんともすんとも言わない。
そういえば、最近携帯の調子が芳しくなく、そこそこの電池残量から急に落ちることがよくあった。
ダメもとで電源ボタンを押してみるも、栄養失調による意識不明を決め込んでいる。
8
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 08:58:46 ID:YaYZS2kw0
(;・∀・)「つくづくいい感じの王手かかってるな〜、これは」
鍵と携帯、名人顔負けの二枚落ち。
流石に命までは落とさないだろうが、このままではマズい。
やはり見ず知らずの隣人に助けを求めるしかない、と自分の部屋から向かって右隣の扉にノックをしようと拳を顔の高さまで上げたその時、
( ^ω^)「おっ?」
(;・∀・)「えっ?」
逆隣の扉からガチャリ、と音がして、中から人の良さそうな男性が顔を出した。
両手が塞がってるらしく、肩に体重をかけドアを押し開けている。
:::
( ^ω^)「明日燃えるゴミの日だから出しに行こうと思ったところだお」
聞けば、このアパートのルールで、翌日のゴミは前日22時以降でなければ出してはいけない決まりらしい。
内藤と名乗るこの男性は新入居者の方ですおね? と僕に問い、互いに軽い自己紹介と挨拶を交わした後、そう教えてくれた。
9
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 08:59:31 ID:YaYZS2kw0
( ^ω^)「んで、素直さんに何か用でも?
あの人、たぶんこの時間は寝てると思うお」
(;・∀・)「そ、そうでしたか。
いや、素直さん? に用というより、実は……」
現状を話すと、内藤さんはなるほど、とうなずき、
( ^ω^)「それでとりあえず隣人に頼ろうと。
ところで君んちの窓、開けっ放しかお?」
と言われ、ハッとした。
(;・∀・)「そっかその手が!
あああ、開けときゃよかった――!!」
(;^ω^)「あ、いや、それはそれで不用心だってとがめるお。
今回の件についちゃ解決したかもしれんけど、今後ドアの鍵閉めて窓から空き巣にでも入られたとあっちゃあ笑い話にもならんお」
ここは二階だし、と今後の戸締りを促される。
ついで彼は扉をゆっくり蹴るように大きく押し開けると、まあ入るお、と招き入れてくれた。
( ^ω^)「まあ、屋根があるとないとじゃ違うおね。
そういう時はいったん落ち着かないと、ろくに考えも浮かばないお」
(;・∀・)「すみません、ありがとうございます」
( ^ω^)「僕はとりあえずゴミ出してくるから、くつろいでるといいお。
トイレとか、間取りはおんなじだから」
そう言うと、ホッ、と力を込めてゴミ袋を持ち上げなおしてドアの外へと出て行った。
10
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 09:00:25 ID:YaYZS2kw0
ばたん。 ワシャワシャ、テクテク。 ……静寂。
それからしばらくしても、僕は動きを止めたままだった。
同じく留めたままの視線の先は、玄関のドア。
ドアにはいくつかのマグネット。
リンゴのマグネットにはゴミの日が書かれた紙が、さくらんぼのマグネットには内藤さんと女性のツーショットの写真が貼ってある。
笑顔100%の内藤さんに対して女性の表情は険しい。 しかし、よく見ると頬を赤らめている、ような気もする。
そんな一見読み取りづらい複雑に押し込めた表情を写真として切り取られてはいるが、それでも一般的に鑑みても美しいと評されるであろう整った顔立ちをしている。
他にもバナナやらイチゴやらの形をしたマグネットがいくつか貼り付いているが、特に仕事を与えられず自由に泳ぎ回っている。
内藤さんは果物が好きなのだろうか。
今度お礼の品として何か買ってこよう。
ばたん。 ワシャワシャ、テクテク。 ……静寂。
それからしばらくしても、僕は動きを止めたままだった。
同じく留めたままの視線の先は、玄関のドア。
ドアにはいくつかのマグネット。
リンゴのマグネットにはゴミの日が書かれた紙が、さくらんぼのマグネットには内藤さんと女性のツーショットの写真が貼ってある。
笑顔100%の内藤さんに対して女性の表情は険しい。 しかし、よく見ると頬を赤らめている、ような気もする。
そんな一見読み取りづらい複雑に押し込めた表情を写真として切り取られてはいるが、それでも一般的に鑑みても美しいと評されるであろう整った顔立ちをしている。
他にもバナナやらイチゴやらの形をしたマグネットがいくつか貼り付いているが、特に仕事を与えられず自由に泳ぎ回っている。
内藤さんは果物が好きなのだろうか。
今度お礼の品として何か買ってこよう。
11
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 09:02:39 ID:YaYZS2kw0
と、あれこれ考えているうちに再び足音が聞こえてきた。
だんだん近づいてきたかと思うと、目の前の扉がガチャリと開く。
(;^ω^)「うおっつ!?」
(;・∀・)「えっ?!」
(;^ω^)「いやいや、なんで玄関で待ち構えてるんだお!?
あがっていいって言ったお?」
(;・∀・)「あ、ああ、すみません、その、ホッとしたらボーっとしちゃったみたいで……」
( ´ω`)「おーん、びっくりしたお……」
すみません、と謝ると、いやいや別にいいお、と返される。
驚いた顔、ホッとした顔、そしてすぐ元のにこやかな顔に戻る。
感情表現が豊かな人だな、と感じた。
12
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 09:16:35 ID:Eq.cRj3k0
( ^ω^)「まああがらないならそれでもいいお。
ちょっともったいぶったようで申し訳ないけど、実は失くしものについてはすぐ解決できるんだお」
(;・∀・)「えっ?」
( ^ω^)「で、先に言っとくけど、僕は泥棒でもスリでもなければ、探偵でも魔法使いでもないお。
解決に際しても絶対にそこを疑わないって、誓ってほしいんだけど……できるかお?」
(;・∀・)「え? えっ?」
何が言いたいのか真意が見えてこない。
解決できて、泥棒と疑わない? それに魔法使い?
( ^ω^)「結論から言うと、こういうことだお」
ごそごそとポッケを漁ったかと思うと、
( ^ω^)つ+「ほら」
彼が差し出した手のひらの上では、見覚えのある、きらりと光る何かが眠りについていた。
第一話 内藤のポッケ
おしまい
13
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 09:27:44 ID:gRk2X6EM0
>>10
で二回ペースト押したみたいだ、気をつけないと。
あと内藤のAAが変だしスレで見ると改行やスペースもおかしいな。
もろもろひっくるめてごめんなさい、寝ます。
14
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 09:36:49 ID:y5vCCe.E0
おつ、面白い
15
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 15:58:32 ID:CGU9e4.U0
ええやん、モノローグ面白い
イヤホンに鍵が寄生するくだりとかワロチ
16
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 16:59:10 ID:0vCYYS6I0
言葉のセンス好き
17
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 17:49:48 ID:Xck6.noM0
読んでて楽しい地の文でいいな
乙
18
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:11:36 ID:QZYTKKX60
( ^ω^)ちょっと便利な異能力、のようです
第二話
.
19
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:12:34 ID:QZYTKKX60
( ^ω^)「まあ、運がよかったってのもあるお」
お茶をじぶじぶとすすりながら、まずは、そう切り出された。
( ^ω^)「結論から言えば、僕は『失くしものをポッケから取り出せる』んだお。
いちいち言葉にするにはちょっと長いから、普段は『手繰る』って言ってるお。
で、条件がいくつかあって、それらのすべてに見事適えば晴れてさっきの通りだお」
設問1. 以上の文を読み、次の問いに答えなさい。
.
20
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:13:45 ID:QZYTKKX60
Q,いきなり予想外の答えを聞かされた僕の心情を一文字で答えよ。
なお、句読点および感嘆符や記号の類は文字数に含まないものとする。
(10点、部分点あり)
A,……は?????????!?!?
.
21
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:18:17 ID:QZYTKKX60
そんな僕の動揺なんて気にせず、世界は回り続ける。
地球も、安全に、決められた航路を進み続ける。
冷静に考えれば、暴走の域を超えた猛スピードで。
それでも何億年と無事故を貫く、安心と信頼の銀河製のスグレモノだ。
そんな地球のとある場所。 というか僕んちの左隣、内藤さんのおうち。
みかん、トランプ、蚊取り線香、サーファー気取りのサンタさん。
季節感が迷子なこたつの向かいで、おそらく今、世界で最も唖然の権化に近いであろう僕をも気にせず、柔和な表情の我が恩人が開いた指を何本か折っていく。
その間また、じぶじぶとやりながら、片手は握りこぶしを作り、また、ほどいてゆき。
(;^ω^)「うん、ええっと?
あれ? 条件、全部で……うん、いっぱいあるんだお」
(;・∀・)「はあ」
(;^ω^)「……だお」
ビシリとその数を提示できなかった決まりの悪さなのか、はたまたこちらへの申し訳なさなのか、ちょっと声を落としてそう告げた。
全部置いておこう、常識とかツッコミとかとりあえずもう全部置いておこう。
でないと現実に置いてかれる。 慌てて内藤さんの言葉を追いかける。
よし追いついた。
でもまだ頭は追いつかない。
.
22
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:18:40 ID:QZYTKKX60
ゲーム、漫画、アニメ。 昔からそういうものが結構好きだった。
だから、いわゆるチートじみたブッ壊れ設定も、数多く見てきた僕にとっては、その原案者の発想力や応用方法に感心こそすれ、いまさら驚きはしない。
しかしあくまで次元が一つ低いものであれば、だ。
ホラーゲー好きが画面の向こう側に巣食うおぞましい魑魅魍魎を駆逐してきたところで、いきなり目の前に現れたホンモノの下級霊に同じ対応ができるだろうか。
絵空事は、あくまで絵空事であるから許容できるのだ。
しかし、現実で目の当たりにしてしまったら拒絶します、ともいかない。
小粋な冗談で済まそうにも現実に、いわく「手繰られて」しまっている。
トリックを暴くための脳内シミュレートもむなしく、むしろ真実と認めざるを得ないという結論に収束しかけていた。
だから、甘受しよう。 ともかく、ともかく。
.
23
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:19:12 ID:QZYTKKX60
とにかく、今回は運がよかったってことでいいのだろう。
見事、その数ある条件とやらにすべて適った。
内容を知らずしてのクリアー、初見どころか未見クリアだ。
土俵は違えど、ゲームのトップランカーでもまず無理だろう。
それにしてもシューティングとか格ゲーやってる人って動体視力や反射神経どうなってるんだろう。
ともかく、ともかく。
とにかく、運がよかった、それに尽きる。
今日がゴミの日で、たまたま内藤さんが隣人で、しかもあのタイミングで居合わせられたってことも考えれば尚更だ。
携帯の電源が落ちていなければもう一度ここを離れていたかもしれないし、もう寝ているという素直さんの心証を悪くしていたかもしれないし、そこで心折れて逆隣のこの部屋の扉を叩くことはなかったかもしれないし、そのまますべて投げやりになって大学を辞めt
.
24
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:19:40 ID:QZYTKKX60
たあん、
と。
.
25
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:20:07 ID:QZYTKKX60
静寂を断ち割ったような湯呑みを置いた音が、僕の脳内に閑話休題を告げた。
ハッと我に返り内藤さんに焦点を合わせようとしたら、こたつはもぬけの殻だった。
========================
.
26
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:20:45 ID:QZYTKKX60
目の前で不可思議な現象を見せつけられた僕は、しばらくその場で固まってしまった。
無理もないだろう、失くしたはずの鍵が、初対面であるはずの隣人のポッケに入っていたのだ。
ゴミを出しに行くついでにたまたま見つけてくれた、というのは考えられない。
ダメもとでポストを確認しに行った時、ダメもとのダメ押しにそこら近辺は見て回ったのだ。
主観的に言っていいなら、くまなく。
……客観的に見られていたら、ちょっと見落としがあったかもしれないが。
それでも、植え込みとか、駐輪場の屋根だとか、ないだろうなーってとこまで探してみたのだ。
でも、そんなトンチンカンなとこになんて当然なくて。
だんだんと心が折れそうになるたびに、
(;・∀・)(っふふん、ほーら思った通りだ、やっぱりないね!
さっすが僕! よくわかってるねえ!!)
って風に強がって励ましていたのは、内緒だ。
.
27
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:21:14 ID:QZYTKKX60
それはともかく、である。
じゃあ、一体どうやって?
僕が失くした鍵を、どうやって?
……僕が失くした?
差し出された鍵は、僕が最後に見たものと同じ状態を保っている。
もっとも、流石に形状なんかは事細かに覚えてはいない。
が、そこにつけ込んだ彼が適当な鍵を差し出して、僕をからかっているようにはとても見えない。
初対面だし根拠もないが、そんな歪んだ性格をした人が、いくら隣人とはいえ出会ってそうそう自分の部屋に上げてくれるだろうか。
そもそも、僕がキーホルダーを付けない主義なんてことを知ってるはずがない。
そういったレアケースは置いておこう、今はセオリーを導き出すんだ。
と、現状のミラクルケースを神棚に供え上げつつ、祀られた藁を握りしめた。
なんにせよこれ以上悪い方向に考えても精神がすり減るだけなので、疑心暗鬼のルートは一旦却下としよう。
新天地でピンチな今の僕だ、負の感情をこれ以上抱えてしまったら、鬱とやらに罹ってしまいそうだ。
待てよ。
.
28
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:21:34 ID:QZYTKKX60
いくら同じ状態で現れたとはいえ、僕もこいつをなんの目印もつけずに生まれたままの姿で持ち歩いていたわけで。
さらに言えば、つい先日、鍵交換を終えて渡されたものだ。
つまり言えば、新品故に目立った傷なんかもないため、目の前のこいつが確実に僕が失くしたものであると判別する方法が、ない。
えーっと、たとえば、僕のもとに生まれてきた、「こいつ」が、「こいつら」であったとしたら?
( ・∀・)+「……合鍵?」
(;^ω^)「いやいやいや、流石に……
いくら隣人とはいえ他人の部屋の合鍵なんて持ち合わせちゃいないお。
管理人さんならともかく、僕はただの隣人さんだお」
破綻の無いよう積み上げてみた説は、つん、と崩されてしまった。
.
29
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:25:03 ID:QZYTKKX60
(;・∀・)(えええと、さっき言ってた、魔法使いは置いといて……スリとか探偵とか職の類ではなく、合鍵でもない……?)
(;-∀-)(うーん)
(;-∀-)(脳がまったく回らなぁい)
正直言って、心身の疲れもあったので早くおうちに帰りたい気持ちも強かった。
僕なりに頭をフル回転させて、脳が思考に溺れかけている。 というか普通にのど渇いた。
今日は、もう疲れた。
慣れない地、アクシデント、超常現象。
もう十分、お腹いっぱいだ。 あと普通にお腹すいた。
気になることは後日に回すとして、今回はお礼を言って帰るのもいいだろう、いやよくない。
.
30
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:25:38 ID:QZYTKKX60
うん、よくない。
全ッ然よくない、ありえない。
後日になんか回せない。
このままだったら、明日になってもおそらく頭が回らない。
他人のポッケに僕の鍵? さっきの今でいつの間に?
こうも周りが見えなくなるなら、ネコが死ぬのも頷ける。
……今まで好奇心のいけにえになってきたネコ達の仇を取ってもいいが、感情とかそういう概念って物理ダメージ通るのだろうか。
でもイライラしてるときにシャドーボクシングすると少し治まるよな。
ってことは怒りには物理攻撃が効くってことだ。 なら好奇心も同じ要領でヤれるんじゃないか?
.
31
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:26:11 ID:QZYTKKX60
打撃と斬撃だったら、どっちが通りやすいんだろうか。
むしろ寝込みを襲うべきか? ネコだけに。
きっとキャッとでも叫び声を上げるに違いない。
しかし、そもそも好奇心っていつ寝るんだ? 寝てるときは寝てるのか?
ネコが目を覚まさない世の中を作れば解決するのか?
.
( Φ∀Φ)「……ロウカ?……イカ?……ノカ?」
(;^ω^)「表情すんごいことになってるお。
確かに、君もこのままじゃスッキリ帰れないおね。
……不穏な殺気すら出てるお? それ僕にかお? やめるお?」
(;・∀・)「っいえ!」
平和のための壮大な計画が顔にでも出てたのか、内藤さんは僕の心中を察してくれたようで、
( ^ω^)「ま、僕はもったいぶるつもりも、隠すつもりもないお?
色々考えてる顔してたから、タイミングが野暮かなって思っただけで。
ってことで、立ち話もなんだお? やっぱり、あがってくといいお。
お茶……緑茶は飲めるかお?」
かくして、好意に甘え今に至る、というわけだ。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
.
32
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:26:52 ID:QZYTKKX60
( ^ω^)「――大まかな条件だけ、かいつまんで言うお。
守屋くんも疲れてるだろうし、納得だけして早く帰りたいお?」
ポットと急須を持ってこたつに戻ってきた内藤さんが、もそもそとこたつを履きなおしながらそう切り出した。
伸ばしていた足を思い出し、さっと畳む。
紙一重だったに違いない、幸いぶつかることはなかった。
( ・∀・)「ありがとうございます。
その、突っ込んで聞きたいのはやまやまなんですが……」
( ^ω^)「おっお。 気にしなくていいお。
無理して聞かせることでもないし。
深く聞きたきゃいつでもカムだお」
( ・∀・)「すみません、じゃ、早速お願いします」
( ^ω^)「お。
――まず、物を失くしていること。
どこにやったか確実に失念している必要があるお」
.
33
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:27:15 ID:QZYTKKX60
確実に失念、とはちょっと矛盾してる気もするが、
( ・∀・)「ようは探せばすぐ見つかるものを取り寄せるようなことはできない、と?」
( ^ω^)「だお。 そこいらの境界が結構曖昧ではあるんだけど。
学校のどこかに置いてきたーー、とかならともかく、うちの机の上にあったはず、とかだとダメなんだお。」
( ・∀・)「ただ忘れ物をしたってだけなら横着せずに戻りましょう、って感じですかね」
( ^ω^)「おっお。
あと生き物もダメだおね。 迷子や、逃げたワンちゃんなんかは取り出せないお」
( ・∀・)「じゃあ、すでに生き物じゃなくなってたら……?」
( ^ω^)「」
(;^ω^)
(;^ω^)「……え?」
.
34
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:27:40 ID:QZYTKKX60
(;・∀・)「え……?」
(;´ω`)「いや、うわ……おおおん……
怖いこと言うおね……それは考えたこともなかったお。
だからやったこともないし、というかもう、おおん、試したくないお。
迷子を取り寄せようとして手ごたえ感じちゃったりなんかしたら凄まじいトラウマになるお……
うん、絶対生き物の依頼は受け付けないことにするお」
そういうと内藤さんは目をギュッとつぶり、ふるふると頭を振った。
僕も未だ知らぬ死体を握る感触を想像してしまい、同じように目をギュッとつぶりふるふると頭を振った。
(((;>ω<)))
(((;>∀<)))
しばらくしてどちらともなくやめると、同じタイミングでお茶をあおり、ため息をついた。
.
35
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:28:02 ID:QZYTKKX60
( ´ω`)「ふう、切り替えていくお。
次に、探している者自身の所有物であること。
ま、他人の持ち物がどこあるかなんて知らなくて当たり前だし、そこを条件にしとかないと悪用されちゃうお」
( ・∀・)「ふむふむ。
じゃあ、例えば誰かの失くしものを、別の人が代わりに探してくれてる場合なんかもダメなんですかね?」
( ^ω^)「ダメだお。 本人が依頼してくれないと取り寄せられなかったお」
( ・∀・)(……となると、アレは僕じゃ無理かー)
( ^ω^)「で、その遺失物が原形を留めていること。」
たとえば世界の真実を紐解く鍵となる、各地に散らばった碑文のかけらを集めたりはできない、とのこと。
( ^ω^)「もっとも、そんなもんが仮にあったとしても、もはや落とし主なんてこの世に存在しちゃないとは思うけど。
そもそもそれは本人が失くしたとも言い難いおね」
まあ、極端な例だったお、と目じりを緩ませる。
.
36
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:28:33 ID:QZYTKKX60
( ^ω^)「あとは……これは僕側の条件になっちゃうんだけど、ポッケに入る大きさであること、ってのもあるお。
でもこれは衣服に依存する制限だから、でっかいポッケのついた衣類さえ持ってれば大抵の落とし物だったら問題ないお」
(* ・∀・)「天才学者が四次元空間を持つポッケを発明したとすれば、どうなります?」
( ^ω^)+「おっおっお、漂流したスペースシャトルでもサルベージしてみるかお?」
(;・∀・)「うえっ!!!」
( ´ω`)「……なあんて言いたいところだけど、実はここにも条件があって。
僕が素手を突っ込まなきゃいけないんだお。
つまりは腕力次第になっちゃうから、せいぜい自転車程度が限界だと思うお」
( ・∀・)「うーん、なるほど……
こう聞いてみると確かに条件がかなり多いんですね」
( ^ω^)「お。
だけど言ったお? かいつまんだって。
ただ落とし物を手繰るぶんには気にならないことばかりなんだけど……
ちょっと捻じれた場合もあるお?
そういう場合は、クリアしなくちゃならないノルマがまだまだ色々あるんだお」
(;・∀・)「いやあ、それにしてもすごいというか、不思議というか……
やっぱり魔法じみてますよね、その力」
.
37
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:29:01 ID:QZYTKKX60
さまざまな条件が整わなければならないし、範疇も限られている。
しかし、それでも内藤さんのおこなうそれは、十二分に常識では考えられない超常現象に間違いない。
これを魔法と言わずして、一体なんと言うのだろう。
( ´ω`)「だから最初に言ってるはずだお? 魔法使いの類じゃないお、って
まあ、言うなれば……」
.
続けて紡いだ言葉はどこか軽快で、まるで踊るように僕の耳へと舞い込んだ。
( ^ω^)「あればよい、けど、なくてもそんなに困らない。
これはまあ、ただのしがない、ちょっと便利な異能力、だお」
第二話 ポッケの条件
おしまい
38
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:51:08 ID:QZYTKKX60
>>29
×スリとか探偵とか職の類ではなく
○スリとか探偵とかの職の類ではなく
あと会話文の調整スペースちょこきょおt入れ忘れてる…
ワードで書いてそのままコピペしてるんだけど顔文字おかしくなっtってないかな、大丈夫かな。 よくわかってないです
とりあえずすごくめぬいので今日はもう
39
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 07:53:55 ID:QZYTKKX60
こうみると字の文ばっかで、でもいっぱい削ったのに。
おやすみ
40
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 08:20:04 ID:.X.pFw5c0
読みやすいからいい乙
41
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 11:29:42 ID:0DOrKaYc0
乙
ブーンがこの能力でいろいろやってくのかな
ほかにも能力者出るのかな
42
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 12:07:10 ID:QHPKF98k0
失せ物探し専門の興信所とかやったら儲かりそうだよん
43
:
名無しさん
:2016/05/06(金) 15:51:03 ID:R1uPDDFs0
昨日言いたかったこと言い忘れてしまった、読んでくれてる人ありがとうです。 乙くれた人もうれしいです。
44
:
>>1
:2016/05/07(土) 04:11:47 ID:xgeDXsYI0
昨日は眠くて死ぬかと思ったのです
>>40
乙ありがとう、もっとがんばる。 読みやすさとは果たしてなんなのか……
今必死に考えてる。
>>41
内藤さんだけだとただの善行日記になりそうなので、出します。
今必死に考えてる。
>>42
メモ帳の内藤さんのプロフィール、男って書いてあるだけなんだ。
今必死に考えてる。
45
:
名無しさん
:2016/05/07(土) 10:04:57 ID:L6HAMxu.0
必死すぎわろた
46
:
名無しさん
:2016/05/07(土) 10:32:17 ID:lWwCvdpM0
ワロタwwwww
47
:
名無しさん
:2016/05/07(土) 14:56:36 ID:6ygerppw0
プロットガバガバじゃねーかwww
今の時点で既に面白いから期待してるよ
48
:
名無しさん
:2016/05/08(日) 21:40:05 ID:RTAsIn6w0
>>38
文面で凄い眠そうなの分かる
無理すんなよ
49
:
名無しさん
:2016/05/09(月) 10:24:51 ID:KWRUEEF.0
ワロタ
50
:
名無しさん
:2016/05/09(月) 23:30:16 ID:xJSUHzao0
好きだわこういう雰囲気
乙
51
:
>>1
:2016/05/12(木) 19:54:18 ID:Vyiu9BHg0
死ななかったので必死さが足りてないかもしれない
元気が残ってたら深夜に投下します
皆様はどうか良い夢を
軽度の社畜なのでご了承ください
52
:
>>1
:2016/05/13(金) 07:57:36 ID:bQNEg.kc0
n|
なk|
なくしもn|
失くしもの みtくえだうs|
( ・∀・)(……っ)
.
53
:
>>1
:2016/05/13(金) 07:58:31 ID:bQNEg.kc0
失くしもの |
失くしもの 見つけだす 内藤|
( ・∀・)「そいっ」カチリ
…………。
( ・∀・)(……そりゃあ、出ないか)
( ・∀・)「……もいっこだけ」
.
54
:
>>1
:2016/05/13(金) 07:59:14 ID:bQNEg.kc0
いしつb
いしつぶて|
(;・∀・)(あぁん!)
遺失物 内藤|
( ・∀・)「どうらっ」タァン
…………。
( -∀-)(ダメ……か)
( ・∀・)「ツイッターでも検索かけてみよか」
.
55
:
>>1
:2016/05/13(金) 07:59:41 ID:bQNEg.kc0
ちょっと便意rn|
ちょっと|
ちょっと便利な異能力、のようです
題3羽|
ちょっと便利な異能力、のようです
第三話 じょうk|
.
56
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:00:03 ID:bQNEg.kc0
あまりにも広大な、電子の海。
引っかかりそうな文字を垂らしてみるも、釣果は、ゼロだった。
あんなもの、どこぞで有名になっていてもおかしくないのに。
メディアも放っておくはずがないのに、テレビでそれらしき話題を観たこともない。
( ・∀・)(けっこうテレビは観てる方なんだけどなー)
========================
.
57
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:00:26 ID:bQNEg.kc0
内藤さんのお話を聞いた後、特に何事もなく、部屋へと帰ることができた。
その不思議な力に関しては、圧倒的枚数の学問推奨おじさんブロマイドを請求されることはなく、口止めを頼まれることもなく。
内藤さんにお礼を言えば、じゃあよろしく頼むお、と、ただそれだけ。
うちに戻って半信半疑で手繰られた鍵を差し込んでみれば、鍵穴は拒むことなく左に傾げて、すたん、と小気味よくひと鳴き。
果たしてすんなりと僕に入室の権利を与えてくれたのであった。
.
どさり。 と腰かけたのは椅子でも床でもなく、ベッド。
僕ばかり休むのもなんなので、僕より回復が必要であろう、飢えで力尽きた携帯に栄養チューブをぶっ差してやる。
目を覚ますのはしばらく先だろう。
とはいえ、家にさえ帰れればノートパソコンがあるので、特に支障はない。
今日はゆっくりおやすみ。
.
58
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:00:56 ID:bQNEg.kc0
とうとう匿っていた緊張と疲労がしびれを切らし、ため息へと姿を変えて勢いよく逃げていった。
文字通り一息ついた、といったところか。
言霊とは恐ろしいもので、口にしていくたびにそれが現実へと近づいていくらしい。
しかも、ネガティブなものに限って、とも耳にする。 嫌な話だ。
しかし、近づいていくも何も真実なので、声を大にして何度でも言おう。
今日は、疲れた。
.
59
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:01:28 ID:bQNEg.kc0
改めて見回したところでもはや見慣れた光景、なんてまだまだ言えない。
まだまだ五感に新鮮な、ほやほやのお部屋である。
どこもかしこも白色、あるいは申し訳程度の木目調。
さながらチュートリアルを終えたばかりの、白シャツ短パンアバターといったところだろうか。 ザ・無個性。
お気に入りのポスター、ぬいぐるみ、そんな賑やかし担当は不在である。
もっと言えば、ベランダにつながる窓を隔てる布切れすらも垂れていない。
実家の自室から持ってきてもよかったのだが、それに待ったを掛けたのは、誰彼ならぬ僕自身。
せっかくなのでこれから紡いでいく四年間で彩ってみようと思い立ち、少ない荷物でやって来たのだ。
過去は古巣に置いてきた。 何もかもが新しい僕、デビューなのだ。
.
60
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:02:31 ID:bQNEg.kc0
でも、お気に入りの漫画やゲーム機は別なのだ。
……パソコンや携帯もないと困る。
家電も。 服やカバンも。 ついでに筆記用具も。
つくづく都合のいい裸一貫であろう。 そこは自分ルールのさじ加減だ。
イージーモード最高!
なんにせよ今後、大人になったらお酒の瓶を飾ってみるもよし、サボテンを飼ってみるもよし。
無限大の選択肢が与えられている、というわけだ。
まあ、お部屋のデコレーションについては今はどうでもいい、いつでもできるし、今じゃない。
このまま寝るのも上策ではあるが、ちょっと明日のことについてでも考えておこう。
ちらりとカレンダーを見やれば、その日付は上下に並んで赤々としている。
.
61
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:02:55 ID:bQNEg.kc0
考えるとは言っても、明日の予定が特にあるわけでもない。
大学のガイダンスはまだ少し先だし、授業の履修を決めなければバイト探しも始められない。
ゴロゴロしながらシラバスをめくって面白そうな授業に目星をつけて、その後は先刻見つけたゲームセンターに早速浸かり込むのもアリっちゃアリなのだが。
( -∀-)(よろしく頼む、かぁ)
内藤さんからのただひとつのお願いが、さっきから僕の脳内で上目遣いだ。
========================
.
62
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:03:21 ID:bQNEg.kc0
( ・∀・)「ちょっと便利な、異能力……」
異能力。
心をくすぐる単語である。
バトル、ファンタジー、アドベンチャー。
そんな夢ある平面世界に、この異能力というモノはつきものだ。
空を飛んだり、未来を視たり、過ぎた時間を戻したり。
僕も児童と呼ばれる頃には、うんうん唸って力を込めて、無駄な努力をしたものだ。
――ほら、今、僕の心の声が聞こえてる君もそうだろう? そう、君だよ。
――気付いてないとでも思ったのかい? バレバレだよ?
……とかもね。 よくやってたなぁ。
と、見せかけて実はやっぱり聞こえてる君も、隠さなくたっていい。
誰だって、やらないはずがない。 異論は、認めない。
小さな頃に起こす空想と現実の混濁。
いわば、ファンタジー・コンプレックス。
そう、たとえば……
.
63
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:03:58 ID:bQNEg.kc0
登下校時は自転車で下り坂をカッ飛ばしながら背中の肩甲骨あたりから大きな翼が具現化するイメージをしてみたり、寝るときはいつ翼が生えてきてもいいように横向きやうつぶせで寝たり……あ、これ高二の時だ。
未だ見えぬ先の世界の片鱗を掴むべく、正確な位置はよくわかってないけどとりあえず前頭葉っぽいところに力を込めて自称無心モードを発動させて集中してみたり……あれ、これは去年だった気がするぞ。
. ブ ラ ッ ク ・ ヒ ス ト リ ー
遠き日の謎の全能感と満ち溢れた自信よる愚かな言動の数々を止めるべく、時間よ戻れなんて念じるのは毎夜の日課だし。
.
64
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:05:22 ID:bQNEg.kc0
……え、やだ、もしかして僕、痛い子予備軍?
いや、でも誰にもばれないようにやってたし、セーフだよね?
え、ばれてなかったよね? 大丈夫だよね??
(;Φ∀Φ)「……エ?……ヨネ?……ネ?」
(;^ω^)「またそんなむつかしい顔をする……
ま、深いこたないお。
要は魔法や奇跡じゃない、って言いたいんだお」
(;・∀・)「あ、え、いやっと、その、ど、どう違うんですか?」
(;´ω`)「大丈夫かお? 実は相当体調しんどいかお?」
(;・∀・)「いえ! そんなことは!
だあいじょぶぅですので続けてください!」
心底どうでもいいことで人を心配させてしまうと、罪悪感がとてつもない。
たびたび回路から脱走して、いらん所へちょっかい掛けまくるこの思考の馬鹿は、どうにかならないものだろうか。 本当に。
.
65
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:05:53 ID:bQNEg.kc0
( ^ω^)「ならいいんだけど……ムリしちゃダメお?
じゃあ話を戻すけど、えーっと、あぁ、違いだおね。
おっきな意味はそこまで、なんとなくの感覚だお。
魔法は呪文唱えたり、魔法陣作ったり、魔力を消費したりってイメージあるお?」
( ・∀・)「あぁ、確かにそうですね」
( ^ω^)「だからそれとは違うかなって。
準備は不要、疲れもしない。
代償、契約なんもなし、だお」
( ・∀・)「じゃ、奇跡と違うってのは?」
( ^ω^)「これは個人的な意見なんだけど、何回も起こせないから奇跡は奇跡なんじゃないかなって……
いや、なんかの受け売り入ってるかお? まぁいいお。
たとえば、神様とかなら別かもだけど、僕は普通の人間だおん」
いわく『異能力』を使っておいて、普通の人間を自称するのもどうなんだろうか。
なんて思ったが、なんとなく言いたいことはわかった気がする。
というかこの人、たぶんそっちの話題イケるクチだ。
ふと改めて辺りを見回せば、案の定。
いくつかの雑誌やコミックが転がっていた。
……あっ、フィギュアもある。
.
66
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:07:03 ID:bQNEg.kc0
( ・∀・)「つまり、トンデモ発明品を駆使しまくる超高校生級の小学生がただの探偵を自称するようなもんですかね」
( ´ω`)「あのキャッチコピーをギュッと縮めると、隠し通してる正体が浮かび上がってくるおね」
( ・∀・)「つまり……内藤さんの本名はチョ・ベンイであると……」
(;´ω`)「どこの三流カンフースターだお、それ。 弱そうだし……
僕は生まれも育ちも内藤ホライゾンだお」
( ・∀・)「にしても耳馴染みいいですね、『ちょっと便利な異能力』って。
自己紹介の時に使ってるんですか?」
( ^ω^)「いやぁ、実は僕の力じゃないことにしてるお。
必要な場合は、ちょっと職場を借りて、うまいことやってるお」
( ・∀・)「職場?」
( ^ω^)「まま、それも今度教えるお。
というか、そう、そうだったお。
職場で思い出したけど、実は僕、明日早いんだお……」
.
67
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:07:33 ID:bQNEg.kc0
しまった。
自分の怠るあまり、遠慮を失くしていた。
内藤さんはどう見ても学生ではない。
普通の生活をしている限り、職に就いてないなんてことはないだろうに。
(;・∀・)「あぁっ、内藤さんのこと全ッ然考えてなかった!
すみません!」
( ´ω`)「いやいや、言ってなかったし、こっちこそごめんだお。
それにやっぱり、守屋くんも今日は疲れてるお?
だから、また今度。
お互い引っ越す予定もなし。 この先、時間はたっぷりあるお」
.
68
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:07:57 ID:bQNEg.kc0
玄関まで、ゆっくりと送り届けてもらいながらも、会話は続いていく。
この人の性格もあいまってか、おしゃべりが、とても楽しい。
(* ・∀・)「なんだか、見失ってた遠慮すら手繰ってもらった気がします」
靴を履きながらも無言になることはなく。
( ^ω^)「おっお、そういうのはー、この力じゃ無理だお。
第一ポッケから出せないし」
(* ・∀・)「うはっ、確かにそうですね」
初めて訪れた家の鍵を、内側からでも勝手に触るのはのは、なんとなくはばかられる。
開けてもらえるよう、自然な挙動で伝えると、これまた自然に応えてくれた。
内藤さんが、サムターンをひねる。
そして僕が、ドアノブをひねる。
闇から這い伸びてきた、少し冷え込んだ外気が、僕の素肌をなぜる。
.
69
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:08:29 ID:bQNEg.kc0
四月。 暦の上では春。
春、はる。
遥かへと旅立つ別れと、遥かから訪れる出会い。
人間関係の、節目の季節
そんな春とはいえ、その季節の特徴とされる暖気は、まだ幼く、脆い。
これからの成長を考えると、どうか君には若いままでいてほしい、なんて願ってもしまう。
こんな春の夜のような……
つまりは、涼しい、という気候が、僕はとても好きだから。
.
70
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:08:57 ID:bQNEg.kc0
( ^ω^)「じゃ、お疲れさん。
また来るお……って、そうだ」
( ・∀・)「はい?」
( ^ω^)「守屋くん、お願い、ひとつあるんだお」
(;・∀・)「えっと、すみませ、あの、今、お金は……」
( ´ω`)「ノンノンお、そういうんじゃないお。
さっきのは、お近づきのしるし。
これからは、お友達のよしみ。」
そもそも誰からもお金なんて取ったことないお、と続ける。
( ・∀・)「じゃあ、お願いっていうのは一体……」
.
71
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:11:11 ID:bQNEg.kc0
内藤さんはポリポリと頭を掻くと、そのまま腕を前にまっすぐと伸ばしながら言った。
( ^ω^)σ「この人のこと。
探し出せ、なんて言わないお。
無理に嗅ぎまわる、なんてことももちろん。
ただ、手掛かりになりそうなことがわかったら……
なーんでもいい、どうか教えてほしいんだお」
指を差したその先には、さくらんぼに懐かれた一枚の写真があった。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
.
72
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:11:50 ID:bQNEg.kc0
ちょっと便利な異能力、のようです
第三話 条件の交換
おしあみ|
おし|
おしまい|
73
:
名無しさん
:2016/05/13(金) 08:13:43 ID:qC1wZLfo0
乙!!無理しないで頑張ってね
74
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:17:49 ID:bQNEg.kc0
レス区切る間隔短いでしょうか?
一話につき四千字くらい目安にしてますが読んでる人側から見てどうなんでしょうか?
深夜のつもりが朝になっちゃたので寝ます
75
:
>>1
:2016/05/13(金) 08:20:06 ID:bQNEg.kc0
>>73
速い! 乙ありがとうございます
無理しないで必死に頑張ります
76
:
◆C1o7lK.gTM
:2016/05/13(金) 08:21:41 ID:bQNEg.kc0
酉
77
:
◆C1o7lK.gTM
:2016/05/13(金) 08:24:01 ID:bQNEg.kc0
途中で書きこんじゃった、手がおぼつかねえ
あるとかっこいいとおもったのでこれつけます
78
:
名無しさん
:2016/05/13(金) 09:49:16 ID:7MHrUqxY0
乙
携帯からだとあんま気にならんがPCならまた違うんだろうか
79
:
名無しさん
:2016/05/13(金) 10:41:43 ID:ytF0DvMk0
うほぉ、これまた面白そうになってきたぜ
80
:
訂正
:2016/05/13(金) 12:13:34 ID:mBfILN520
>>67
>>自分の怠るあまり
→ 疲れで配慮を怠るあまり
的な感じに脳内変換お願いします
禁忌ゾグラギア・マガマリアの反動故に、とかでも問題ありません。
>>69
>>人間関係の、節目の季節
→ 人間関係の、節目の季節。
脳内で思い思いの句点をつけといてください
面倒であれば!マーク100個で代用して頂いて構わないです
81
:
名無しさん
:2016/05/13(金) 13:20:21 ID:1S7je1KM0
おつおつ
82
:
名無しさん
:2016/05/14(土) 21:09:39 ID:UtD/Ujz.O
乙!
>>圧倒的枚数の学問推奨おじさんブロマイド
よくこんな言い回しが思い付くな(嫉妬的な意味で)
83
:
名無しさん
:2016/05/16(月) 20:06:08 ID:yl.bVn0Y0
乙
冒頭とラストの遊び好きだ
84
:
名無しさん
:2016/05/17(火) 03:08:03 ID:XLH6zYkY0
乙ありがとうございます
PCが勝手に10にアップグレード始めたと思ったら固まって強制終了
再起動したら元に戻ってくれたけど千文字くらい無かったことに
血眼になって調べたらバックアップファイルがあって事なきを得る
あやうく実体験談で百物語に参加するとこだった
データはUSBにも入れとこうと思いました
―――他の作者さんも気を付けてね
―――そう、そこのあなた、聴こえt
黒歴史のくだりはすべて実体験です。皆もやってたと思うけど念のため。
85
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:48:02 ID:jFySRKSg0
(;・∀・)(ッ!!!)
不意に、体が跳ね上がった。
……。
起きた。
え、寝てた?
そう、起きたら、寝てた。
いつの間にか寝てて、今起きた。
.
86
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:48:44 ID:jFySRKSg0
ちょっと便利な異能力、のようです
第四話
.
87
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:49:21 ID:jFySRKSg0
上半身が跳ね起きた際、今まで自分が意識を手放していた、という結論に至るまでに、やや時間が掛かった。
どうやら、一日を振り返るうちに限界が来ていたらしい。
で、落ちた。 前兆もなくスイッチを切るように。
あるいは、風景写真の雲が消えていくアハ体験のアレのように。
どちらにせよ、悟られぬように、うまいことやられたのだ。
原因と結果が綺麗に結びついているため、これ以上なく紐解きやすい。
.
88
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:52:01 ID:jFySRKSg0
それにしても万全の態勢で就寝できたわけでもないだろうに、無意識化の僕は、ちゃっかりしっかり布団をかぶって、体力の回復に支障をきたさぬよう努めていたようだ。
実りある熟睡を求めた我が肉体は、“生活必需品”として衣服や家電と共に連れてきた、愛用の枕にしがみつく形で落ち着いたらしい。
ベッドからはみ出んばかりの、その横幅が特徴的であった愛すべきそれは、一時的に縦長へとフォルムチェンジを遂げ、本来の使用法を無視された害意の無い拘束を受け続けていた。
お気に入りの枕を、カブトムシのごとく四肢でガッチリ。
それなりに目覚めはスッキリ爽快。 体調も、まぁ四捨五入すればバッチリ全快。
ただ、宙吊り状態になっている携帯は、僕の寝相のとばっちりを受けたようだ。
床すれすれの位置で、なんとか墜落をまぬかれている。
.
89
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:52:56 ID:jFySRKSg0
ダイブ敢行へ向けての覚悟を決める猶予も与えられなかったであろう、ゲリラバンジー。
Tタイプ人格者に限らず、物好きはなんであんな行為に金払うんだろう。 普通逆じゃない?
というかどうしてあんなもんがサービスとして成立しているんだろう。
同じ人間として甚だ疑問である。
ともかく、こんな無情な状態で放置しておくのもなんなので、とりあえず引き揚げてやることにした。
半差し状態でろくに充電できてない可能性もあったが、確認のために画面をつけてみれば、いつもの待ち受け画面と共に100%の文字が浮かび上がった。
おーけーおーけー。
それにしても、ろくに食事も与えられずにさんざと働かされた挙句、今度は逆さ吊り。
御老体ながらまったく主人に労われない。 毎度毎度の受難である。
この前出た新機種に食指が動いたので、そろそろ暇を出してやろうとも思っている。
古きには多くの知恵が詰まっている、というのは、生き物でのお話。
少なくとも携帯やパソコンなんてものは、最新の方が便利である。 一部の悲しき例を除けば。
.
90
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:54:33 ID:jFySRKSg0
電池ついでに時間も確認できた。
11時11分、日曜のお昼前、か。
ささやかな偶然に遅れて気付き、もう一度画面を見てみたが、時既に遅し。
とはいえ堪能できなかったことについての感想は、あらま、くらいのものである。
昨日最後の記憶をたどってみれば、ちょうど日付が変わるか否か、といったところであったので、半日弱は寝ていたということか。
早出だと言っていた内藤さんは、とうに出かけて、仕事に励んでいるだろう。
日曜だというのに、早起きしなければならないとは、大変だ。
いわゆる休日出勤、というやつであろうか。
内藤さんが、俗に言う大きなお友達であったとすれば、舌足らずに主人公を応援することもあたわずに、滴る涙をぬぐいながら家を出たことであろう。
.
電池ついでに時間も確認できた。
11時11分、日曜のお昼前、か。
ささやかな偶然に遅れて気付き、もう一度画面を見てみたが、時既に遅し。
とはいえ堪能できなかったことについての感想は、あらま、くらいのものである。
昨日最後の記憶をたどってみれば、ちょうど日付が変わるか否か、といったところであったので、半日弱は寝ていたということか。
早出だと言っていた内藤さんは、とうに出かけて、仕事に励んでいるだろう。
日曜だというのに、早起きしなければならないとは、大変だ。
いわゆる休日出勤、というやつであろうか。
内藤さんが、俗に言う大きなお友達であったとすれば、舌足らずに主人公を応援することもあたわずに、滴る涙をぬぐいながら家を出たことであろう。
.
91
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:55:04 ID:jFySRKSg0
それにしても、いい天気だ。 適度に曇っていて、そこがいい。
くすぐるような風に耐えかねた木々がたまに身じろぎをして、その景色を耳にまで楽しませてくれている。
空気も澄んでいて、気温も高くない。
とても、心地がいい。
捕獲して養殖に乗り出したいほどの快適さである。
これは流石に、このまま家にいるのが少しもったいない。
よく考えれば、履修を組むのは夜でもできる。 なんなら明日でもいい。
クラスのガイダンスは水曜日、授業の開始はその先だ。
買いたいものもいくつかあるし、正直ゲーセン欲もふつふつと来ている。
がっつり遊びたい気分なのも久しぶりだし、しかしここでうだうだ時間を過ごせば、結局家にいるまま終わってしまいそうだ。
というか遊びたい。
この素晴らしき気候そっちのけで結局屋内に籠ることにはなるが、別にいい。
天気がいいってのは、外に出るためのきっかけ。
遠足や運動会なら話は別だが、普段はそれくらいの目安でいいだろう。
.
92
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:56:04 ID:jFySRKSg0
さあ、そうと決まれば身支度だ。
後でやろうはバカ野郎。
ささっと軽くシャワーを浴びて、外の世界へ繰り出そう。
浴室内で大雑把に予定を固める。
染めた頭髪は傷みやすいと聞くので、一応トリートメントは入念に。
( -∀-)(……とりあえず鍵用のタグでも買って携帯番号書きこんどこうかな)
今回は事なきを得たが、また同じ過ちを犯した際、内藤さんが不在である可能性もある。
管理人さんだって、24時間起きているわけじゃない。
そういう場合にのために、これさえあれば完ぺ……って待て待て。
( ・∀-)(タグ付けといたところで失くしちゃったら家帰れないじゃんか)
.
93
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:56:51 ID:jFySRKSg0
本末がすっ転んだ。
未来に希望が掛かるかもしれないが、その時どうしようもないなら、どうしようもない。
ならば、ポストに錠前とチェーンでも括りつけて、スペアキーを入れておくか。
錠前の鍵失くしたり家に置き忘れたらどうにもならないな、四桁の番号式にでもしておけば。
詳しいことは知らないが、スペアキーを作るにしても少し時間がかかるだろう。
それまでは、失くさないように、とってもとっても気を付ける。
すごくアホっぽいが、当面はこれでいこう。
.
94
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:57:13 ID:jFySRKSg0
……というか鍵なんてそんなにポンポン失くすものじゃないだろうに。
なんでこんなに慎重になってるんだ、僕。
( ・∀・)(えっと、あつ、厚い辞書で肩が凝り、薄い電子辞書をビシバシと叩き割る?)
半分わざとだが、国語は、あまり得意ではない。
国語というか、頭の中の語彙の引き出しが固いのだ。
意味は分かっているが、それをつまりなんて言うんだったか、みたいなことが非常に多い。
この前もある単語を吐き出すまで数分掛かった。
あの、ほら、あああ出てこない。
少ない方のアレだ、サブカルじゃなくて、アングラじゃなくて、アレ。
ほら、そんな感じの、ちょっと頭良さそうな言い方。
くそう、モヤモヤする。
.
95
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:58:01 ID:jFySRKSg0
心に移りゆくよしなしごとまみれで仕事しない脳みそ。
これに早い段階で見切りをつけていた肉体は、いつの間にか自動モードへと移行しており、気付けば体中の泡も既に流しつくしている。
上司が抜けてると部下が育つ。 そう、わしが育てた。
風呂場ってのはどうしてこうも思考が定まらないのだろうか。
ロクに構想は固まらなかったが、これ以上ここにいても仕方ない。
とりあえず、上がることにした。
.
96
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:58:23 ID:jFySRKSg0
体も髪もきちんと乾かし、身支度も整えた。
よし行くか、と外出前の習慣としてパソコンを落とそうとすれば、画面が昨日のままであることに初めて気付く。
[遺失物 内藤| 検索Q]
( ・∀・)(なんつうアバウトな……検索下手っぴいか)
疲れている時というのは、それでもまだ自分はまともな思考で行動している、と思い込んでしまっているのが厄介だ。
.
97
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:58:44 ID:jFySRKSg0
たとえば、「明日の朝一で食べるつもりのアイスを、忘れないように机の上に置いておこう」と。
そういった思考を、我が身で働く無数のあらゆる細胞が、咎めないのだ。
文字通りの、違和感が仕事をしない、というやつだ。
そこでおでまし、すっかりよく寝て、思考回路はオールグリーンの今日の僕。
シャワーも浴びて、さらに頭は冴えわたる。
マイナス補正を全て拭った、僕の頭脳を見せてやろうぞ。
どれ、と。 こんなのものは検索とは呼べないぜ、と。
本当の検索というものを昨日の僕に見せつけてやるべく、明日またこの場に訪れた今の僕がキーボードに手を伸ばす。
.
98
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 03:59:47 ID:jFySRKSg0
……が、触れようとして、寸でのところで躊躇する。
待てよ、と。 お前それでいいのか、と。
今ここで腰を据えてパソコンに向かい、手早く目的を遂げたとしよう。
直後本来の予定へと行動を移せるだろうか。
そんなもん経験則から言って、答えはNOだ。
そのまま電子の世界に吞み込まれ、おそらく短時間では帰してもらえない。
やり込み要素満載にしてミニゲームも豊富、おまけモード充実。
遊び方は無限大、スプラッタにされた暇や時間は数知れない。
.
99
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:00:12 ID:jFySRKSg0
たとえば、検索結果が0件の単語を見つけ出す。 これがなかなかに面白い。
最近見つけた最もカッコイイやつは「禁忌ゾグラギア・マガマリア」。
自分の中でこれを超えるものは、まあ当分出ないであろう。
……とか。
そんなことをしていればいつの間にか日が暮れ始めて、なんか今日はもういいや、と、色々どうでもよくなってしまって。
それは、ちょっと待て、ダメだ。
それでは、計画がパアだ。
シャワーを浴びて、身支度も終わってるんだ。
ここで行かなくては、自分というものがすたってしまいそうだ。
.
100
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:02:22 ID:jFySRKSg0
タッチ寸前でだるまさんに振り向かれた人のモノマネ。
そんな格好で待機状態にある四肢に、新たな指示を送る。
パソコンからの誘惑を振り切り、外に出る。 いざ!
腕には強引に傍らのバッグを掴ませ、足を玄関へと向わせた。
抵抗ロール成功。 転倒も回避成功。
靴を履き、ドアを開ける。
ドアを閉める。
ドアを開ける。
靴を脱ぐ間に、ドアが閉まる。
(・∀・;)))「鍵忘れてんじゃん」
机の上のブツを回収し、改めて玄関に向かう。
.
101
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:02:45 ID:jFySRKSg0
靴を履く。
ドアノブに手を掛ける、ドアを開く
ドアノブから手を離す、ドアが閉まる。
靴を脱ぐ。
(・∀・#)))))三三「携エェェ〜ッ帯ぃ!!」
この後急にお腹が痛くなり、爪が伸びていることにも気付き、結局家から出れたのは13時を回る少し手前であった。
.
102
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:03:08 ID:jFySRKSg0
========================
ザーッ、ゴボゴボボ……
( ・∀・)+「ッッマイノリティ!!!」
トイレの中で二度のスッキリがあったのは、また別のお話。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
.
103
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:04:23 ID:jFySRKSg0
ドアを閉める。
鍵を掛ける。
どうにかこうにか、部屋から出ることができた。
ガチャリ。
川 ゚ -゚)「む」
が、
( ・∀・)「え?」
無事に目的地に宿りつくまでには、まだ、掛かりそうだ。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
.
104
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:05:11 ID:jFySRKSg0
川 ゚ -゚)「ここに、新しく?」
( ・∀・)「あ、はい、初めまして、守屋です」
川 ゚ -゚)「見たところ、学生かな?」
( ・∀・)「はい、今年から羽衣大学に通うために越してきました」
川 ゚ -゚)「ほう、ハゴダイか、うちの従妹と同じだ」
( ・∀・)「ハゴ?」
川 ゚ -゚)「近所じゃそう呼ばれているんだよ。
ともかく、これからよろしく頼む。
わからないことがあれば力になろう」
( ・∀・)「ありがとうございます、ええと……
素直さん、でしたよね?
内藤さんから名前だけ聞いてます」
.
105
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:14:39 ID:3dGTObBs0
川 ゚ ー゚)「ほう、もうあいつとは知り合いなのか。
で、神を信じる気にはなったのかな?」
神を信じるか、とは、初対面の人に問われると硬直してしまうワードの一つだ。
いや、別に毛嫌いしているわけでもないのだが……
やれ数時間にわたる長話を聞かされただの、やれ謎の集会場へ連れて行かれそうになっただの……
そういう体験談を聞くと、嫌でも身構えてしまうというものだ。
しかし、これについては内藤さんの話だ。
くだんの異能力についての感想を問われているのだろう。
(;・∀・)「神を、って、いきなり言われても……
確かに便利だとは思いました、すごいなあとしか」
川 ゚ -゚)「む?
……あーあー、そっちの話か。
まあこんな日のこんな時間なわけだ、問うまでもなかったな。」
( ・∀・)「?」
川 ゚ -゚)「まあいい。
出かけるんだろう? よい休日をな」
( ・∀・)「???
はあ、ありがとうございます」
.
106
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:20:14 ID:vyrxXzAQ0
では、と結びの句を紡ごうとしたその時
川 ゚ -゚)「そうだ、連絡先を交換しておかないか?
何の縁であれ、お隣さん同士なんだ。
お互い、何かあった際に便利だろう?」
唐突な提案ではあったが、確かにその通りだ。
いざという時がいつ来るともわからない。
先の雲行きの怪しい発言もあったので、少し考えてしまったが、どうも「そういう」感じではない。
第一、危険人物であれば、昨日の時点で内藤さんが釘を刺してくれていたはずだ。
と、あらば、越してきて間もない今、数少ない知り合いとの連絡先は多いに越したことはないし、断る理由もないだろう。
内藤さんとも、今度交換しておこう。
( ・∀・)「そう、ですね。
じゃ、僕から、ええと……
あ、出た出た、QRコードこれです」
川 ゚ -゚)「よし、オーケーだ。
守屋モララー、間違いないか?」
( ・∀・)「はい、大丈夫みたいですね」
.
107
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:20:36 ID:vyrxXzAQ0
川 ゚ -゚)「出会って早々、長々と引き留めてすまなかったな。
ほら、これが私の連絡先だ」
( ・∀・)「いえいえ、同じアパートの住人として、挨拶は……
あ、メール届きました。
素直……ひさ……きゅう、じゅん?」
川 ゚ -゚)「まあ、読めないだろうな。
くうる、と読む。
まあ、よ、ろ、し、く、っと。
よし、送信」
( ・∀・)「こちらこそよろしくお願いします……そうしん?」
川 ゚ ー゚)「ああ、早速従妹に送っておいたよ。
その、まあ多少、いや色々アレだが、仲良くして損はないはずだ。
まあ同じ大学のよしみだ、よろしくやってくれ。
じゃあ、また」
(;・∀・)「ちょ」
素直さんは足早にその場を離れたかと思うと、滑るように階段を駆け降り、そのままどこかへと去ってしまった。
.
108
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:21:04 ID:vyrxXzAQ0
しばらくその場に時間ごと取り残されていた僕を、ようやくぶるると局所的に動かしたのは、右手に持ったままの携帯電話であった。
.
109
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:21:28 ID:vyrxXzAQ0
ちょっと便利な異能力、のようです
第四話 交換の目的
おしまい
.
110
:
◆C1o7lK.gTM
:2016/05/21(土) 04:26:41 ID:vyrxXzAQ0
会話文いっぱい混ぜたいのに人に出会わねえ…
おやすみなさい
111
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:27:44 ID:HXnGE/Bs0
おつ
おやすみ
112
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:31:01 ID:vyrxXzAQ0
ああああまたペースト連打してたあああああ
>>90
1/2にスライスしてください!!!!!!!!
113
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:32:04 ID:vyrxXzAQ0
>>111
はやい!
おつありがとうございます!!
良い夢を!!!
114
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 04:41:22 ID:jPCSedrY0
乙
115
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 08:11:39 ID:SSNdekSw0
乙ー
従妹が誰になるのか楽しみー
116
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 09:34:17 ID:7eWSpg6w0
>>115
ドクーr……
117
:
名無しさん
:2016/05/21(土) 16:42:30 ID:LTU/3xKY0
こっちまでスッキリしたわ
乙
118
:
名無しさん
:2016/05/29(日) 01:41:03 ID:9YX.b.V20
ぷいきゅあワロタ乙
119
:
>>1
:2016/05/29(日) 04:37:03 ID:ksqH3G120
乙とか素直クックールとかありがとうございます。
いま仕事に追われてるので落ち着くであろう来週くらいに5話目を考えます
今月は忙しすぎて家賃とガス代振り込むの忘れるくらいでした
これからはポストは毎週必ず確認します
120
:
名無しさん
:2016/06/03(金) 17:21:10 ID:NvUma3zY0
( ^ω^)(擬人化注意)
地の文が読みやすくて楽しく読めました!これからのブーンやモララー達が気になる!
支援!
http://vippic.mine.nu/up/img/vp158857.jpg
121
:
名無しさん
:2016/06/03(金) 18:07:35 ID:PIJrTRbM0
お洒落な絵だなあ
122
:
名無しさん
:2016/06/03(金) 20:11:59 ID:16cb0F4YO
人の良さそうなイケメンだな
123
:
名無しさん
:2016/06/03(金) 23:48:43 ID:8eqCEZXw0
ブーンはやっぱりピザじゃないと
絵としては4コマくらいがベスト
124
:
>>1
:2016/06/05(日) 04:08:38 ID:XmvU.ysI0
>>120
うおおおおおお、ありがとうございます!!!!
支援絵貰えるなんてなんて夢にも思いませんでした!!
イケメンに描いてもらって内藤さんもさぞ喜んでることでしょう!!
保存しました保存しました保存しました
五話目は月曜に投下出来ると思います。
いま必死に書いてるのでよろしくお願いします。
125
:
>>1
:2016/06/06(月) 19:32:01 ID:FP92GiL.0
~~~~~~~~~~~~
……。 ……。 ……。
……。 ……。 ……。
……。……。 ……。
……。……。 ……。
……。 ……。……。
……。 ……。……。
……。 ……。 ……。
次。 次。 次。 次。
何度も何度も画面をノートを交互に見る。
その合間合間に臼取のように動く右人差し指。
少しでも効率化を図りたくて無心でやってたけど。
こんなこと考え始めた時点で、もうダメだな。
うん、ダメだね。
そして何より、眠い。
時計を見れば13時。
126
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:32:43 ID:FP92GiL.0
大きく伸びをしたので、少し頭が冴えた。
起きてから半日ちょい、ってとこか。
ご飯……は、まだ、炊き置きがあったはず。
起きたら食べよう。
パソコンを閉じて。
電気を消して。
眼鏡を外す。
眼をつむりながら首を振ってしまうのは、どうしてだろう。
気付けば事後、何故かやってしまっている。
それは置いといて、そのまま眼鏡も机に置く。
傍らのレバーを引き椅子を倒して、膝に掛けていた毛布をかぶる。
目をつぶる。
いざ体勢をとると、思った以上に猛烈だ。
自我を奪われを気持ちいいほど感じる。
本能すごい。 これはきっと一分コース。
机の上の携帯が震える。
127
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:33:05 ID:FP92GiL.0
眼を開ける。
危なかったね。
あと数秒遅かったら、許さないところだった。
起き上がる。
携帯を手におさめ、メールを開く。
『差し出し人:素直 久潤
件名:友人
本文:守屋モララー
moriyaezu-moralyze@hardbung.jp
090-XXXX-XXXX
まあよろしく』
……、なにこれ。
久々に連絡があったと思ったら。
いや、ホントに何これ。
128
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:33:30 ID:FP92GiL.0
主語がない会話ってのはよくあるけど、これ、述語すらないよ。
えと、この人が何者で、私はどうしろって。
ううん……
ああ、だめ、考えても無駄だこれ。
いいや。
いや、眠い。
後でいいや。
うん、後でいいよね。
えーっと、とりあえず返しとこう。
『宛先:moriyaezu-m…
件名:今からねるのでまたあとで詳しくきく
本文:』
送れた。
129
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:34:25 ID:FP92GiL.0
おやすみ。
~~~~~~~~~~~~
130
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:34:47 ID:FP92GiL.0
なんだこれ。
震えた携帯に目をやると、メールの受信通知。
差し出し人を見れば、知らないアドレス。
ここまではまだいい。
問題なのは、その内容。
たまに来る迷惑メールの類かと思えば、何だ、これ。
誰だ、これ。
一応アドレスを確認してみれば、ちゃんとしたドメイン。
僕の使ってるこれも含めた、大手の三大携帯電話メーカーのそれだ。
しかし、だからといって、確実に安全である、と言い切れるのかどうか。
何事にも、絶対というものは絶対に存在しない。
131
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:35:14 ID:FP92GiL.0
そう、それは違う。
絶対が絶対ないなら絶対ないことも絶対にない。
揚げ足を取られる前に回収しておくスタイル。
ゲソ天は食われる前に食っておこう。
というわけで、以下の通り訂正いたします。
何事にも、100%というものは九分九厘存在しない。
九分九厘、つい先日まで、何故かクブンクリって読んでたのは内緒である。
ついでにいえば、特筆もトッピツって読んでいたのである。
なぜか変換できなくて、初めて間違いに気付いたのである。
132
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:35:51 ID:FP92GiL.0
考えてみれば、本やネットではしばしば目にすれど、自ら使う機会は意外とない言葉だ。
前後の文章や漢字の組み合わせから、直観的に意味が読み取れる熟語なので、わざわざ調べる機会もなく、なおのこと間違いに気付くのに時間がかかった。
手前を庇ってでも言えば、漢字の読み間違いならば幾分は仕方ないかもしれない。
なにぶん、字と字の組み合わせ次第で飛んだり、跳ねたり、濁ったりする。
かと思えば、裏をかいてそのまま読ませたりもする。
挙句の果てに当て字や熟字訓。 初見で正しく読ませる気なんて彼らにはないのだ。
とはいえ、大概の漢字は大体の感じで読めば大抵合っていることが多い。
「漢字」という熟語の読み方そのものに、「フィーリングで読むのだ!」という意味が込められている、気がしなくもない。
133
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:36:45 ID:FP92GiL.0
しかし、かな文字で書いてあっても、そのまま読むことすらままならない錯覚のような言葉も、まま存在するのも事実。
コミニュケーション、シュミレーション、オードソックス。
まったく、まぎわらしい単語ばかりで嫌になる。
なんだったっけ。
134
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:37:08 ID:FP92GiL.0
そう、九分九厘。
なんともかわいらしい響きである。
萌えギャンブル漫画の主人公に据えたら絶対人気出る。
『ぜ〜んぶかけちゃえ! くぶくりん!!』
『(辛酸を)なめます! (悪条件でも)のみます! (全財産)つっこみます!』
ほらヤバいって。 絶対人気出るって。
普段は勝率9.9%のへなちょこなんだけど、覚醒すると99%モードへと変貌を遂げてめちゃめちゃ強いの。
で、めちゃめちゃかわいいの。
控え目に言って傾国。
誤解を恐れずに言えば宇宙兵器。
そう、九分九厘。
なんともかわいらしい響きである。
萌えギャンブル漫画の主人公に据えたら絶対人気出る。
『ぜ〜んぶかけちゃえ! くぶくりん!!』
『(辛酸を)なめます! (悪条件でも)のみます! (全財産)つっこみます!』
ほらヤバいって。 絶対人気出るって。
普段は勝率9.9%のへなちょこなんだけど、覚醒すると99%モードへと変貌を遂げてめちゃめちゃ強いの。
で、めちゃめちゃかわいいの。
控え目に言って傾国。
誤解を恐れずに言えば宇宙兵器。
135
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:37:31 ID:FP92GiL.0
ライバルは、レイ・パーセントジョーンズ。
あらゆる確率を0%に変える恐ろしい奴。
夜道やら人気のない場所やら勝負をけしかけて、身ぐるみを剥いでいく恐ろしい奴。
口癖は「お前のすべてを貰うわぁ〜」とかそんな感じ。
なんやかんやで仲間になる。
最終的にはその互いの確率変動の力をもって銀河大戦にて奇跡の勝利をもたらし、本当の意味で宇宙兵器としてその名を馳せることになるのだ。
そして平和な世界で九厘はヒロインと結ばれる。
レイは死ぬ。
完。
で、本当は何の話だったんだっけ。
136
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:37:56 ID:FP92GiL.0
ああ、ちゃんとした携帯キャリアのドメインだから危険はなさそうだけど、だった。
ついでに言えば、返信を誘うような内容でもなく、画像やリンクどころか本文すらない。
返信を誘う迷惑メール言っても、最近よく来るのは大体こんな感じだ。
『同窓会のおしらせ!
そこぱぬれしんて
同窓会を開きます、参加不参加の返信をお願いします!!
xxxxxxxx@spam.jp
そこぱぬれしんて
鈴木
そこぱぬれしんて』
毎回思うが、騙す気あるのかな、これ。
何らかの理由があるのはわかるけど、変態がパンツかぶって出歩いてるようなもんじゃないか。
あるいは、強さを過信するあまりに自らにハンデをつけた戦いを好む変態の類か。
137
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:38:21 ID:FP92GiL.0
それにしても変態の線引きは難しい。
公園をバク転しながら一周してたらちょっとカッコいいけど、でんぐり返しだったら多分変態扱いだ。 飛び込み前転だと……微妙なラインだな。
馬鹿の紙一重は天才だと言うけど、変態の紙一重はカッコいいとかなのかもしれない。
天才なおバカや、カッコいい変態が存在するのもまた事実。
常人の一線を画する時点で、明確な定義を定めるのは難しいのかもしれない。
ええと?
ああ。
では、迷惑メール以外で知らない携帯のアドレスからメールが来る理由とは。
138
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:38:45 ID:FP92GiL.0
知り合いがアドレスを変えた。
なら名乗るはずだから、違う。
うっかりさんなら仕方ない。
誰かが知り合いのつてで僕のアドレスを聞いた。
これも名乗るはずなので、違う。
うっかりさんなら仕方ない。
間違いメール。
僕のアドレスは他の誰かとかぶるようなもんじゃないし、これも違う。
うっかりさんでもこれはない。
故意か過失か、アド変を教えてくれなかった知り合いからのメール。
うん、色々並べ立てといて今さらだが、そういう問題ではない。
そもそも文面がおかしい。
139
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:39:11 ID:FP92GiL.0
こちらから何も送っていないのに、眠いからまた、って。
一応ツッコむなら、件名欄に全文突っ込んでるのもどうかと思う。
携帯使い始めたばかりのお父さんじゃないんだから。
でも、送り主については、なんとなく察しは付いている。
確証はないけど、タイミング的に考えても、おそらく間違いないだろう。
が、だ。
互いに見ず知らずの相手に、何故いきなりこんな文を送り付けたのか。
これがわからない。
フランクなんてもんじゃあない、これでは、まるでおざなりな関係だ。
第一声から打ち解け過ぎである。
140
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:39:37 ID:FP92GiL.0
確かに、素直さんは多少アレ、と評してはいたが。
うむ、それならばこれを送り付けてくるかもしれない。
かもしれないけども。
じゃあ、だとしても、どうすればいいのだろう。
うん、どうしようもないよな。
それなら、別にどうもしなくていいのかな。
寝るみたいだし、今ここで下手に返すと安眠妨害の恨みを買うかもしれないし。
喧嘩は売らない、恨みは買わない。
わざと負けない、ただでは起きない。
僕のモットーだ。
141
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:43:03 ID:FP92GiL.0
というかいくら日曜とはいえ、こんな真っ昼間に寝るとかどうなんだろう。
色々思い浮かべていたJD像がどんどん崩れていく。
なんにせよ、相手先が確定したわけではない。
仮に返信するにしても、はいわかりました、くらいしか思いつかない。
それに万が一、新手の迷惑メールだったら、返してしまうとエラいことになる。
ここはとりあえずスルー。
戦略的黙殺。
そう、沈黙は肯定である。
ただし、放課後に好きな異性に告白した場合のように、例外もある。
沈黙の校庭ってやかましいわ。
142
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:43:26 ID:FP92GiL.0
まあ、そんなわけで、ここは様子を見るコマンドが正解択であろう。
また、と言うくらいなんだから、しばらく待てば、なにかしら送ってくるのだろうし。
その時にでも、初心者でもわかるメールの作法というものをレクチャーしてくれよう。
……というか早く出掛けよう。
スゴロクだったらダイスを振るごとに“一回休み”状態だ。
そういう盤面なのか、単に出目が悪いのか。
ファンブルらしき状況に陥ってないだけ、まだマシか。
靴が爆発するとかはやめてくれよ。
とにも、かくにも、歩を進めなければ、何にもならぬ。
143
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:43:53 ID:FP92GiL.0
雲行きの怪しい前途に不安を覚え、思わず空を見上げれば、清く柔らな青と白。
何をしようと外に出たかを今一度、思い返してみたならば、一抹の淡い憂いはただ軽風の前に散り。
携帯を指先一つで寝かしつけ、するりとポッケに滑り込ませて、そこでようやく僕の手番がが回りに回ってやって来た。
::::::::::::::::::::::::
144
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:44:23 ID:FP92GiL.0
夜遅くまで開いているお店というのは、本当に助かる。
大型ディスカウントストア、「ジャンヌ・ダ・ルク」、午前三時まで営業、年中無休。
素晴らしい。
大きな駅が最寄りであるという恩恵、思った以上の価値があるのかもしれない。
今後大学生活が始まれば、一層そのありがたみを噛みしめることになるのだろう。
結果から言おう。 十時間をゲーセンに費やした。
超楽しかった。
これから買い物をする次第だ。
145
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:45:34 ID:0Agf1sEM0
よっしゃ来た支援
146
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:45:37 ID:FP92GiL.0
( ・∀・)+「っはああああああああ!!」
いや、違うんだ。 まず聞いてほしい。
ほんの出来心だ、魔が差した。
本当に仕方なかったと言うほかない。
久々に気合入れてやったもんだから、ついつい夢中になってしまって。
三時間前くらいからあと一回、あと一回だけと考えてはいた、の、だが。
気付けば閉店時間である今の今まで居座ってしまった。
腕と指、ついでに立ちっぱなしだった足腰にも限界が来てはいるが、心はもう最高に満たされていた。
147
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:46:25 ID:FP92GiL.0
時間にして六百分、金額にして六千円、プレー数にして約六十回。
我ながら、随分と遊び倒したものだ。
(#・∀・)(あれマジわけわからん。 絶対に許さん。)
復習しておきたいところを振り返りつつ、店外へ。
既に夜の帳は下りていて、あちこちのネオンが街灯よろしく、あわよくば通行人を惹き込まんと、誘蛾灯顔負けに眼を爛々と光らせていた。
昨日散策した駅前の大通り。
夜になればまた、顔が変わるものだ。
店の絶対数は昼夜変わらないはずなのに、こうも景色が変わるものか。
どちらが本性なのかはともかくとして、絶えず元気を振りまいているつくづくの働き者である。
ちなみに駅から見て、家に帰る方が北口で、栄えているこちら側は南口だ。
148
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:50:27 ID:FP92GiL.0
23時も半ば。 この素晴らしき日曜日も、あと小半刻もすればその文字の両端が垂れ下がる。
だらんと下がれば、月曜日。 憂鬱の使者。
そんな明日が控えているからであろうか、そこまで人は多くない。
居酒屋のキャッチらしきお兄さんもちらほらいるが、未知の言語で談笑している。
上井君の犬がどうとか聴こえるが、これが大学生の若者言葉というやつか。
僕も近いうち、ああいう感じで未来の友達と盛り上がれるのだろう。
その兄ちゃんズの一人がハンバーガーにかぶりつくのを見たとき、ここぞとばかりに胃が鳴いた。
そうか。 考えてみれば、今日は何にも食べていなかった。
というか、昨日も最後に何を口にしたかも覚えてないな。
これは、下手をすれば歩くたびにHPがこぼれ落ちていくやつだ。
そうと気付くと、体もお調子のいいもので、とたんに力が抜けていく、ような気がしてくる。
段々とめまいも、してくる、ような気もしてくる。
149
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:53:34 ID:FP92GiL.0
はいはい、わかったわかった。 ご飯にしましょう。
そう自分に言い聞かせると、飲食店を物色する力が戻ってくる。
本当にお調子のいいもので。
さて、それならば買い物前にいっちょガッツリ入れようか、と。
まだ成長期の胃袋に適うお店を探すため、少し目線を上げた時。
鞄のおなかも小さく鳴いた。
150
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 19:54:27 ID:FP92GiL.0
差し出し人:ちょっと便利な異能力、のようです。
件名: 第五話
本文: 目的の優先順位
おしまい
151
:
◆C1o7lK.gTM
:2016/06/06(月) 20:01:50 ID:FP92GiL.0
第五話ここまでです。
ご支援ありがとうございました。
大体一話5000字までくらいで書いてるんですが、
五話書いてるうちにブクブク膨れてしまったので五話と六話に分けます。
六話も会話文ないですが、出会いがが増えるまでもう少し待っててください。
152
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 20:11:49 ID:lowj.YO20
乙。この言葉選びのセンスほんとくれ。
153
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 20:27:18 ID:AZz4qR6Q0
出掛ける前に見直ししたら
>>134
でまた二回ペースト押してた……
約分しておいてください。
>>152
ありがとうございます
ここ最近で地の文うまい人がいっぱい来たので、震えてます。
154
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 20:29:09 ID:AgSqLTYM0
よっ、面白い地の文ブームの先駆け
155
:
名無しさん
:2016/06/06(月) 20:38:07 ID:.5EQV6eIO
来てた!乙!
>>レイ・パーセントジョーンズ
読者からレイパーとか呼ばれそうだな
156
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 01:42:16 ID:RdZc4LIY0
今見返してようやくやり取りを理解した乙
157
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 02:00:09 ID:x3jiRs5c0
乙乙
雰囲気が好きなんだよな
158
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 05:08:33 ID:.yxYkvnM0
間違い見つけたとこ訂正
>>137
× 常人の一線を画する
○ 常人と
>>143
× 僕の手番がが
○ 僕の手番が
>>147
× 絶対に許さん。)
○ 絶対に許さん)
ちゃんと見返したつもりでこんなんばっかりですやい
159
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 05:31:50 ID:.yxYkvnM0
>>154
ひえ
学生時代はブーン系と教科書教本以外の本をほぼ読まないような人間でしたが精進します
>>155
夜道で身ぐるみ剥ぐような外道ですから人気は皆無でしょう
>>156
あ、これ言わなきゃでした。
========================
↑時間戻る
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
↑時間進む
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
↑視点変わる
です、
遠目からだと判りづらいので二行に重ねてみようと思います
なんか長さもばらついてて統一したいと思ったけどうまくいかなかった
>>157
ありがとうございます、もっと修行してきます
160
:
>>1
:2016/06/07(火) 06:56:25 ID:yffMiCto0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
よく眠れた。
0時前ね。 本当によく寝たな。
大きく伸びをしたので、少し体がほぐれた。
頭はとっくに冴えている。
さっきの続きをやってもいいんだけど、メール送っとこうかな。
先にやっとかないと忘れそうだし。
あ、月曜か。
てことは、この時間だとくーちゃん寝てるな。
いや、いいかな。
とりあえず送っとこう。 起きたら返ってくるでしょう。
161
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 06:57:24 ID:yffMiCto0
ん?
あれ?
うわ。
うわ、やっちゃった。
くーちゃんに送ったつもりだった。
これはやっちゃったね。
眠い時はやっぱりダメだね。
結構なものを送りつけてしまったな。
誰だか知らないけど謝っておかなくちゃ。
そうだ、ついでに色々聞いとこう。
起きてるか知らないけど、そこまで急いでないし。
寝てるとこ起こしちゃったら、まずいかな。
うん、まずいよね。
私だったら顎へめがけて横から掌底入れるかもしれない。
でも、私は私、人は人。
元はと言えばくーちゃんが悪いし、セーフだよね。
万が一を想定して、出来る限り誠心誠意で平身低頭な雰囲気を出し尽くしておこうか。
162
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 06:58:17 ID:yffMiCto0
す、な、お、よ、り……
……。 ……。 ……。
……げ、ま、す、っと。
ほいできた。
こんなもんかな。
あ、でも、やりすぎると、馬鹿にしてるみたく取られそうだな。
『この醜いヒトの出来そこないを、気の晴れるまで吊るしあげてください』は消しておこう。
てるてる坊主じゃないんだから。
そう、しんっと。
163
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:00:51 ID:yffMiCto0
……やっぱり、夜分も夜分だよね。 明日も明日だし。
第一印象どころか、第二印象まで悪くしちゃうかね。
初対面どころか、見ず知らずの人に。
まあ、逆に言えばこれより悪くはないでしょう、うん。
寛容な人であることを祈るよ。
さて、続き続き。
どこまでやったっけ。
ノート半分、ってところか。
集中しただけあって結構進んだね、よし、のんびりやろう。
…………
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
164
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:01:16 ID:yffMiCto0
『差し出し人:just-jem@pt…
件名:素直より紹介に与った只野と申します。
本文:夜分遅くのメール、申し訳ございません。
先程の乱文、まずはお詫び申し上げます。
そして誠に失礼ながら、私について説明をどのようにお受けになったか、恐れながらお伺い致します。
恥を承知の上で申し上げますと、当方、何の脈絡もなく、素直から貴方の連絡先のみをメールにて拝受したという状況につきまして、非常に困惑しております次第でございます。
挨拶も無く、剰えいきなりの不躾な質問、甚だ身勝手ながら、どうか免じて戴きたく存じ上げます。』
(;・∀・)(え……えぇ〜〜!?)
何これ。
なんだこの高低差。
これ、本当にさっきのメールと同じ人が書いたのか。
まるで、複数人が時間帯ごとにアドレスを使いまわして送ってきているみたいだ。
文面に素直さんの名前がなかったら、業者メールと判断して切り捨てていたかもしれない。
165
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:14:09 ID:yffMiCto0
そう、素直さん、元はと言えば、本当に。
会話もそこそこに、勝手に人物相関図に矢印書き加えてバッと去って行った素直さん。
静かな嵐みたいな人で、それでいて罪のないという雰囲気はあったが。
で、そんな素直さん、あなたは一体。
ホントに一体、どういうメールを送ったんだ。
お互いに、全っ然情報与えられてないじゃないか、これ。
こっちは同期の子ってことしか知らないし、あっちにある情報も、僕の連絡先だけみたいだし。
今度また会話でもして、性格を把握しておく必要がありそうだ。
また何かやってくれそうで少し怖いが。
いや、それにしても。
すごいな、まるでバリッバリの社会人みたいなメールだ。
正しいのかは正直サッパリ分かんないけど、なんかすごいオトナって感じがする。
待て待て。
166
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:14:45 ID:yffMiCto0
これは、ほんとに同級生の女の子なのか?
でも素直さんは確かに「僕と同じ大学」で「いとこ」って言ってたよな。
……待てよ?
あれ?
あれれれ??
167
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:15:08 ID:yffMiCto0
もしかして僕、もんのすんごい勘違いしてた?
同じ大学って、新入生って意味ではなかったってこと?
僕の先輩ってこと?
え? というか在学生かすらも怪しくない?
卒業生ならまだしも、まさかの教鞭振るう側、とかないよね?
いや、でもそれなら確かに「仲良くしていて損はない」の辻褄が合うぞ、単位的な意味で。
というかよくよっく考えたら向こうの名前も聞いてないし、いとこってだけじゃ性別もわかんないじゃんか。
まさか。
いとこって、従兄?
うわあ、勝手に同級生の女の子だと思い込んでた。
マジか、うっわ、う〜わ〜〜。
168
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:15:32 ID:yffMiCto0
これがアレか、えーっと、アレか。
小説とかでよくある、ほら、読んでる人の勘違いを狙った、えーっと、アレか。
あの、ほら、うん、所謂アレか。
頭の中で女の子だった相手が、すっかり脂の乗ったオッサンへと姿形を変えてしまった。
(#回益回)『ワシは今から寝ると言うのに……何だねェ、チミは?
仕方ない、後で聞いてやるから感謝せいよォ? んん?』
(;回益回)『ハッ、先方には日ごろからお世話になっており……
つきましては先日の商談の件でございますが……』
゛ヽ(;・∀・)ノ゛(こんなビジョン消えてしまえ!)
169
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:15:56 ID:yffMiCto0
ともかく、こちらのターン。
ターンが回ってきてしまった。
これに返信しなければならないのか。
寝ている、という体で後回しにしてもいいが。
パス、という選択肢はない。 必ず返さなければならない。
処置が遅ければ遅いほど、さらに状況が悪くなるパターンだろう。
うまく言えないが、物凄い所を抜き取られたジェンガを押しつけられた気分だ。
下手に手を付けられない。 慎重に乗り切らなくては。
どうしよう。 どうしよう。 どうしよう。
先延ばしにするくらいなら、いっそ。
唸りつつも覚悟を決める。
返信をタップした。
170
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:16:22 ID:yffMiCto0
が、しかし。
言葉に気を付けつつ、こちらが把握してることに自己紹介を加えて文章を打とうにも、
<(;・∀・)>(なんてこったい! 目上の人に送るメールなんてわっかんないぞ!!)
ぼくは、しがない学生の身でございますから、仕方ないのでございません?
ぶっちゃけ敬語ですら、あまり自信がない。
行くの尊敬語ってイカれるでいいの? レベル。
スライムを怒らせない程度の言葉ならば使えるつもりだが。
なんか寛容そうだし。
社会人Aが あらわれた!
どうする?
171
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:17:10 ID:yffMiCto0
モララーの持つ武器は付け焼刃どころか、磨いてもいない、打ってすらいない、なまくら以下の鉄の棒だ。
ここで無理やり冴えた文句を使おうとして、下手にネットで調べたりして、結局誤用しちゃってるのが一番恥かくパターンだ。
格好つけたところを指摘されてしまえば僕はズタボロ。
目の前真っ暗、頭真っ白、顔真っ赤。
ええい、仕方ない。
来たりなば迎え撃たん。
ここは等身大、背伸びせずまっすぐいこう。
172
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:17:42 ID:yffMiCto0
(;・∀・)(砕けた言い方にならないようにだけ気を付けて、ですます口調で、っと。)
『初めまして、私は守屋モララーと申します。
羽衣大学の一年生で、素直さんの隣の部屋に住んでおります。
今年で19歳になります。 性別は男です。
あと、私も只野さんについては、ほとんど何も知りません。
素直さんからは、同じ大学で、いとこであるとしか聞いていません。
よろしければ自己紹介をお願いできますか? どうかよろしくお願いします。』
(;・∀・)(つ、つたない気がする!
でも具体的にはわからん!)
大学では絶対に敬語の授業を履修しよう。
僕は心に強く誓った。
せめて誤字脱字がないかを再三確認して、送信。
意味はないとわかっていながらも、既に送ったメールを再四読み返す。
提出したり、書き込んだり、呟いたりした後に気付く事って多いよね。
ここ脱字だ、とか、この表現の方がよかった、とか。
どうやら大丈夫そうだ、と一息ついたところで、再び携帯が震える。
(;・∀・)(早いなおい!)
すぐさまメールを確認する。
173
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:19:12 ID:yffMiCto0
『従姉がとんだ迷惑をかけたみたいだね、謝る。
多分察しは付いてると思うけど、彼女は多少、いや色々アレなんだ。
でも悪人ではないから、大目に見てやってくれないかな。
隣人としても、仲良くしてあげてほしい。
私は只野珠潤。
今月の誕生日で19歳、だから守屋くんと同い年で同学年。
これなら敬語はなくていいよね。
ちなみに、いとこは従妹。 よろしくね。』
なんとも普通のメールが返ってきた。
(;・∀・)(えぇえぇ〜〜っ?!)
何なんだこの人。
ラフとフォーマルとカジュアルの躁鬱病みたいな難病にでも冒されているのか。
そして従妹だった。 同学年だった。
よかった。
いや、よかったのだろうか。
同期として対等に向き合っていく自信がコポリとも湧いてこないのだが。
最初がアレだし、次がアレだし、かと思えばコレだし。
174
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:20:23 ID:yffMiCto0
こんなの、ごほん、この人が、僕の暫定友達一号なのか。
最初から普通の印象だったら、普通に会って話してみたいと思っただろうが。
得体が知れないので、ちょっと会うのがはばかられる。
ついでに言えば名前が難しい。
素直さんの読み方でいけば、しゅうる、だろうか。
素直さんもそうだったが、いまどき漢字の名前というのも、かなり珍しい。
おじいちゃん世代でもその比率はカタカナと半々くらいだというのに。
そういう家系なのだろうか。
……あ、ラーメン食べたい。
そうだそうだ、お腹が空いてたんだった。 ラーメン屋探そう。
とりあえずメールに関しては、今後ともよろしく、みたいなのを返しておこう。
なんか距離感が難しいけど、無難な感じで、っと。
よし、オーケー。
あっ、ですます口調で送ってしまった。
しかも、なんかさっきよりマシになった気がする。
実践あるのみ、ってやつか。
今後、目上の人とやりとりする機会は進んで増やしていこうかな。
社会へ出る上では絶対必要になるだろうし。
175
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:20:51 ID:yffMiCto0
ええと、ごはん食べたら何買うんだっけ。
欲しいものは際限なくあるんだけど、大荷物を抱えて帰るのは避けたい。
体力に自信がないし、さっきのゲーセンで四肢も腰も疲れている。
電子レンジなんて腕にぶら下げてしまえば、間違いなくもげ落ちるだろう。
というわけで、今日の買い物は小物をメインとしておこう。
あとは、大きくても重くないものもターゲットにしておこう。
となると、だいぶ絞られてくる。
キータグに、綿棒に、あ、カーテンとかも売っているだろうか。
カーテンだったら許容範囲内だろう、持ったことないからわかんないけど。
まあ、よさげな物が売られてたら試しに持ってみて、思ったより重かったら、また別の機会に買いにくればいいだけだ。
っていうか予算決めてなかった、今いくら持ってたっけか。
……ほっほお、ほほう、これはこれは。 カーテンは買えないな。
というか逆に、これで何が買えるだろうか。
ここからラーメン代を差し引いたら、もう一杯ラーメンを食べるくらいしか残らないぞ。
176
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:21:15 ID:yffMiCto0
ええと、ごはん食べたら何買うんだっけ。
欲しいものは際限なくあるんだけど、大荷物を抱えて帰るのは避けたい。
体力に自信がないし、さっきのゲーセンで四肢も腰も疲れている。
電子レンジなんて腕にぶら下げてしまえば、間違いなくもげ落ちるだろう。
というわけで、今日の買い物は小物をメインとしておこう。
あとは、大きくても重くないものもターゲットにしておこう。
となると、だいぶ絞られてくる。
キータグに、綿棒に、あ、カーテンとかも売っているだろうか。
カーテンだったら許容範囲内だろう、持ったことないからわかんないけど。
まあ、よさげな物が売られてたら試しに持ってみて、思ったより重かったら、また別の機会に買いにくればいいだけだ。
っていうか予算決めてなかった、今いくら持ってたっけか。
……ほっほお、ほほう、これはこれは。 カーテンは買えないな。
というか逆に、これで何が買えるだろうか。
ここからラーメン代を差し引いたら、もう一杯ラーメンを食べるくらいしか残らないぞ。
177
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:21:37 ID:yffMiCto0
ええと、ごはん食べたら何買うんだっけ。
欲しいものは際限なくあるんだけど、大荷物を抱えて帰るのは避けたい。
体力に自信がないし、さっきのゲーセンで四肢も腰も疲れている。
電子レンジなんて腕にぶら下げてしまえば、間違いなくもげ落ちるだろう。
というわけで、今日の買い物は小物をメインとしておこう。
あとは、大きくても重くないものもターゲットにしておこう。
となると、だいぶ絞られてくる。
キータグに、綿棒に、あ、カーテンとかも売っているだろうか。
カーテンだったら許容範囲内だろう、持ったことないからわかんないけど。
まあ、よさげな物が売られてたら試しに持ってみて、思ったより重かったら、また別の機会に買いにくればいいだけだ。
っていうか予算決めてなかった、今いくら持ってたっけか。
……ほっほお、ほほう、これはこれは。 カーテンは買えないな。
というか逆に、これで何が買えるだろうか。
ここからラーメン代を差し引いたら、もう一杯ラーメンを食べるくらいしか残らないぞ。
178
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:22:05 ID:yffMiCto0
これが、僕の手元にある全財産。
いや、まあ、そこそこある気がするけど。
なにぶん、今まで一人で生活したことがないので、いささか不安である。
今月は時期が時期だけに色々物入りだ。
まだロクにおうちに物も入れてないのに、この残額というのは大丈夫なのだろうか。
使い方によっちゃ今月持つかは微妙かもしれないな。
やっぱりカーテン買えないな、これ。
いや、カーテン買うってのがその物入りに含まれるはずなんだけどな、多分。
原価0円の娯楽で散財してる場合じゃなかった。
早く履修登録してバイト探さないとちょっとマズいかな、こりゃ。
家にいなければ履修が組めないが、外へと出ないとバイトが探せない。
いやはや、世の中はままならない。
うまくいかないように、うまくできているものである。
179
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:22:28 ID:yffMiCto0
でも、まあいいか、今日は満たされたし。
お腹も満たして、ジャンヌに行って、欲しいものには目でも唾でも付けとこう。
目星をつけて、履修組んで、バイト探して、只野さんに会って。
他にやることは、あっただろうか。
ん?
あれ? 今すれ違ったお姉さん、どっかで見覚えのある雰囲気が。
ああ、内藤さんの写真の人に髪型似て……あ、この人もだ。
流行ってるのか。
たしかに、なんかオシャレだもんな。
そうだった、写真の人の件は、内藤さんにもう一回詳しく話を聞かなければ。
特に何も聞かずに了解してしまったが、流石に写真だけでは手がかりがなさすぎる。
でも、明日月曜日だし、普通に仕事だろうなあ。
明日にしろ、明後日にしろ、今度こそ連絡先交換するのも忘れないでおこう。
180
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:23:04 ID:yffMiCto0
おっと、メール来た。
うん、まあ流れ的にそうなるよね。
水曜ね。 ガイダンスあるもんね。
お互い確実に学校行くもんね。
今度こそ気軽な感じで返しておこう。
……なんかタメ語でメール返すのめっちゃ怖いんだけど。
実際会ったらやっぱり教授でしたー、とかないよね?
女子大生になりすます教授って相当だと思うけど。
明日あたりにでも、素直さんには直接聞いておきたいな。
二人がかりのドッキリだったら、もはや僕にはお手上げだ。
あぁダメだ、不安で不安で気が気でなくて仕方ない。
おっと、返信返信。
了解、じゃあガイダンスのあ、と、で、と。
送信。
181
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:24:45 ID:yffMiCto0
To: ちょっと便利な異能力、のようです。
Sub: 第六話
Text: 優先順位の決定
おしまい
182
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:26:31 ID:PFuT2Mtw0
乙、やっぱ良いな
183
:
没
:2016/06/07(火) 07:27:09 ID:yffMiCto0
(添付あり)
184
:
没
:2016/06/07(火) 07:30:39 ID:yffMiCto0
没ネタ.txt
守屋君のATMの明細を見た某棋士
……あれ、あれ、あれ、あれ、待てよ、あれ、あれ、おかしいですね。
あれ、もしかして餓死?
えっと、こう食べて、あれれ、おかしいですよ。
あれー、あれ、あ、週があとみっつあるから、あれ、餓死なのかな?
あれ、あれ、いや、これ、餓死かもしれません。
なんと、いやー、これ、朝昼晩三食ありますからね。
いや、待てよ、一食あたりのちょっと計算が。
こう買って、こう食べて、いや、これまったく間に合いませんからね。
これは大ピンチですね。 多分、詰んでますよ。
ヒャ〜〜、ぴったり詰んでる。
なんという大ピンチ。
人生史上に遺る大ピンチ? じゃないかな?
蛇の足が増えすぎていい加減ムカデの化け物みたいになるから削除
加藤一二三 頓死 とかで検索かけると多分元ネタでてきます
185
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 07:34:06 ID:yffMiCto0
乙ありがとうございます
こんな早くから人がいるとは
私は寝ます
186
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 08:21:30 ID:YexaeoyM0
うむ、面白い
187
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 09:19:36 ID:t8lixA9MO
乙!
いかれる…いきはる…おいきになる…?
188
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 19:48:20 ID:NXm2mwKE0
>>187
「行かれる」も尊敬語としては正しいです。
「イカれる」がちらついて避けたければ、「いらっしゃる」「おいでになる」などを使うといいと思います。
「お行きになる」は……どうなんでしょう、間違ってはいないとは思いますが。
「行きはる」は関西圏の敬語ですね。
方言繋がりで言えば、中部地方、愛知あたりでは「見える」が行くの敬語だったりするそうで。
面白いです。
189
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 20:58:59 ID:RdZc4LIY0
大学生活初っぱなから同い年の女子大生が勝手に友達になるなんて……
190
:
名無しさん
:2016/06/07(火) 21:44:36 ID:t8lixA9MO
また丁寧な解説を…日本語面白いです
行きはるは丁寧語に近いかな、親しみのある敬意
191
:
名無しさん
:2016/06/08(水) 17:00:34 ID:G8gGsJr20
ものすごい勢いで脱線していく地の文
好き
192
:
名無しさん
:2016/06/08(水) 22:34:53 ID:p99D0CoM0
乙
没ネタ読んで、笑いこらえるのに必死で不審者と化したわ
193
:
>>1
:2016/06/09(木) 01:52:08 ID:hGSZBFdw0
ああああああミス
>>176
>>177
を生贄に以下の文を召喚!!!!
ここから↓
いや、まだだ。
まだ銀行にいくらかのお金が入ってったはずだ。
レシートにまぎれて、ATMの、明細が、っと、あったあった。
……うーん、どうなんだ、これは。
四捨五入して、四捨五入すれば、十万円。
ええと、つまり。
まず千の位を四捨五入して、五万円。
千の位じゃなくて、万の位を四捨五入して、十万円である。
僕の身長だって四捨五入すれば、二メートル。
欠席は0回、
今まで受けてきたテストは、ほぼ満点だ。
偏差値は100!!
すごいぞ、四捨五入すごい。
平凡なスペックが一気に見違える。
学校に遅刻した数や、告白された回数は、四捨五入しないでおこう。
じゃなくて。
↑ここまで
194
:
>>1
:2016/06/09(木) 02:16:46 ID:hGSZBFdw0
あとブンツンドーさんにまとめてもらっていたみたいです
もっと必死に頑張らないといけないと思いました
誤字脱字ペーストミス投下抜けばかりで本当にすみませんが、よろしくお願いします。
195
:
名無しさん
:2016/06/22(水) 20:12:46 ID:A6B987Og0
続き楽しみです
196
:
名無しさん
:2016/07/05(火) 02:51:42 ID:eSYNkbf.0
地の文面白いけど話がなかなか進まないのは多少もやもやするな
197
:
>>1
:2016/07/12(火) 05:29:56 ID:PqVnrBB.0
リアルが忙しすぎて全然話が練れません。 とうかロクに寝れてません。
打ち切るつもりは毛頭ありませんが、楽しみにしていた作品の更新すら追えていない現状です。
ド新参がこんな口を叩いて良いのかはわかりませんが、帰ってきたい気持ちは山々です。
逃亡、失踪、色々な更新停止の言い回しがありますが、ここは遭難という形でどうかお願いいたします。
198
:
名無しさん
:2016/07/12(火) 20:40:59 ID:r.MVnbps0
そうなんですか
199
:
名無しさん
:2016/07/12(火) 21:14:43 ID:SInibvB.0
致し方あるまい
ブーン系民は待つのに慣れている
200
:
名無しさん
:2016/07/13(水) 00:05:51 ID:Lp.q/6P20
1世紀までは待つがそれ以上は待たんからな、それまでにリアルのあれこれすっきりさせてこい
201
:
名無しさん
:2016/07/22(金) 02:10:34 ID:nXcSVwxU0
長い方が戻ってきた時の嬉しさは大きくなるんだ
それで長さは全部チャラだ
202
:
名無しさん
:2016/08/20(土) 03:40:12 ID:f5fgaRQk0
期待
203
:
名無しさん
:2016/08/22(月) 15:23:44 ID:BmIYpUGE0
私待ーつーわ
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