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今日も何処かで誰かが世界を救っているようです

3 ◆q3XheuOe12:2016/04/03(日) 22:49:18 ID:VBbdKorg0
「……見る訳ないだろ。こっちは学校の課題研究で来てるんだ。
 お母さんがうるさく言わなきゃお前を連れてくるつもりだってなかったし、さっさと全部見て回って帰るよ」

苦笑混じりの視線に晒された少年の兄が、うんざりとした口調で答えた。

「えー……つまんないなぁ。あ、じゃあさ!『ミラージュ』の中で誰が一番カッコいいと思う?
 僕はやっぱりブーンかなぁ。あの決めゼリフ……」

「やめてくれよ。ミラージュなんて存在する訳ないだろ。全部デタラメだよ」

食い下がる少年に、兄は溜息を吐いて向き直ってそう言った。

「いいか。どこの国でも、政府はミラージュに対する招集を呼びかけてる。国連もだ。
 戦争は終わっても、今でも治安の悪い所は幾らでもあるからな。
 でもそういう所に一回でもミラージュが来てくれたって聞いた事あるか?ないだろ」

兄は一息にそう続けると、弟に背を向け、別の展示物へと早足に歩いていってしまった。
壁から天井にまで続く大窓の外に見える、自由の女神像だ。
かつてはリバティ島に設置されていたそれは、今ではニューヨークの中心に立っていた。
掲げる灯火からは、天蓋のように地表を覆う金色の薄膜が広がっている。

大戦時、ニューヨークに向けて無数のミサイルが発射された事があった。
彼女はその時に、クレイトロニクスによって正の影響を受け、人々を守らんと動き出した。
自らの足でここまで歩いてきて、その手に掲げた黄金の灯火で空を覆い、死と破壊の雨を焼き払ったのだ。
窓の傍に設置されたプレートには、そう記されている。

「これだって、ただの嘘っぱちだ。戦争中にリバティ島ごと壊されて、
 仕方なくこっちに建て直したけど、こう説明した方が見栄えがいいってだけさ」

「でも、彼女は今でもニューヨークを守ってるじゃないか、ほら」

兄に追いついた弟が、女神の掲げる灯火を見上げ、指差して言い返す。

「ふん、あんなのただのバリア装置だ。女神が自分の意志で動き出した証拠になんかならないよ」

兄は弟の言葉を鼻で笑い飛ばした。
そしてまた次の展示物へ向かおうとして――弟に服の裾を掴まれた。


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