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(´・ω・`) ホムンクルスは生きるようです
1
:
名無しさん
:2016/04/03(日) 18:59:25 ID:hIo2mFDI0
まとめ様:ローテクなブーン系小説まとめサイト
441
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 20:59:42 ID:XuZMeezA0
焦って頭の上を押さえるでぃ。
髪の隙間から生えた獣耳は、へこむだけで消えない。
精神のみの世界では、身体は自身の感覚がそのまま反映される。
常日頃から猫としてあったでぃは、その耳をなくすことを諦めた。
イ从゚ ー゚ノi、 「ディートリンデさん、ロマンさんも、懐かしいのはわかりますがそういう会ではありませんよ。
お二人が困っているではありませんか」
(;´・ω・`) 「ははは……流石にこの面子相手だと気後れするね」
( ^ω^) 「だお」
長い歴史を持つ錬金術、その始まりにして頂点である術師達。
普段の雰囲気と違うせいか、同卓することすら恐れ多いと感じてしまう。
lw´‐ _‐ノv 「まぁ座りなよ、二人とも」
(´・ω・`) 「そうさせてもらうよ」
lw´‐ _‐ノv 「さて、私たちが見たワカッテマスの過去と、
ロマが見つけたリリさんの様子からいくつか特定できることがあったんだ」
442
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:00:14 ID:XuZMeezA0
( ФωФ) 「氷の彫刻と渡り鳥が通ったルートを照らし合わせて見つけることができた集落は五つ。
その中であれだけの大きさのものを隠せる場所があるのはたった一つ。
ヴァントヨークの大氷窟だけである」
(´・ω・`) 「聞いたことがない場所だ」
( ^ω^) 「氷でできた洞窟だお? 立ち入りが制限されてるっている」
(´・ω・`) 「どこにあるんだ?」
lw´‐ _‐ノv 「確か、今は名前が変わったんじゃなかったかな。
コルカタから遥か北方、年中雪に覆われた氷窟都市国家ファーワル。
一応、その国が管理しているというか……ファーワルそのものだね」
北方の国々はあまり訪れたことがない。
雪の中で行き倒れたらどうなるかわからないし、装備を整えるのも大変だ。
草木が少しでも生えていれば飢えは凌げるのに、冬の地ではそれもできない。
イ从゚ ー゚ノi、 「灼熱の地の次は極寒の地。大変でございますね」
.∧_∧
(#゚;;-゚) 「どうせ死なぬのじゃ。旅行みたいなものであろう」
443
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:00:42 ID:XuZMeezA0
(´・ω・`) 「流石にテンヴェイラと戦ったときは死ぬかと思ったけどね」
( ФωФ) 「むしろ死ななかったことが不思議であるがな」
( ^ω^) 「確かに……七大災厄を殺して五体満足っていうのも驚きだおね」
一撃を受けたとはいえ、何とか再生することもできた。
事前にしてきた準備をほとんど使いきったのだから、簡単だったというわけではない。
ないのだが、確かにあまりにもうまく行き過ぎた。
lw´‐ _‐ノv 「それはたぶん、随分前から地上側にいたからなんじゃないかな」
(´・ω・`) 「どういうことですか?」
lw´‐ _‐ノv 「テンヴェイラは遥か地中の溶岩流の中に生存してるから、地上で長くは生きられない。
普通は噴火に巻き込まれて冷えた大地まで出て来るからすぐ死ぬはずなんだけどね。
運よく地中の溶岩溜に逃げ延びたんじゃないかな。命を削りながら何とか生きてきた」
( ФωФ) 「運が良かったであるな。そもそも人間如きが万全の七大災厄を殺せるはずが無かろう」
イ从゚ ー゚ノi、 「弱体化しているかもしれない、ということもシュール様は存じていたということでしょう」
lw´‐ _‐ノv 「その辺は賭けだったんだけどね。テンヴェイラについてはずっと探してたし、
どうも去年の夏あたりから気温が変な感じしてたから、調査していたかいがあったね」
444
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:01:10 ID:XuZMeezA0
運が悪かったらどうなっていたのかはあまり考えるべきではないな。
もしテンヴェイラが本調子であったなら今頃は物言わぬ屍になっていただろう。
.∧_∧
(#゚;;-゚) 「それで、次はどうするのじゃ」
lw´‐ _‐ノv 「うん、それなんだけどね。あまりよくない状況なんだ」
( ^ω^) 「よくない状況?」
lw´‐ _‐ノv 「二人がテンヴェイラに挑んでいる間に、大陸北部について調べてたんだけどね。
大量の錬金生物があちこちに出現してるらしい」
(´・ω・`) 「錬金生物……」
思い出すのはセント領主家が生み出した泥状の生物。
攻撃意思しか持っていないただの塊。
速度は遅く大した機能も持たないくせに数が多く耐久値が高い。
集団で襲われたら厄介極まりない敵。
lw´‐ _‐ノv 「詳しい状況は入ってきてないけどね。そういう異質な生き物があちこちで闊歩してるって話ね。
別にそれだけならさほど脅威じゃないんだけどね」
445
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:01:34 ID:XuZMeezA0
(´・ω・`) 「錬金生物……」
思い出すのはセント領主家が生み出した泥状の生物。
攻撃意思しか持っていないただの塊。
速度は遅く大した機能も持たないくせに数が多く耐久値が高い。
集団で襲われたら厄介極まりない敵。
lw´‐ _‐ノv 「詳しい状況は入ってきてないけどね。そういう異質な生き物があちこちで闊歩してるって話ね。
別にそれだけならさほど脅威じゃないんだけどね」
錬金生物とは言え生き物である以上殺せば死ぬ。
多少の犠牲を覚悟するのであれば一般人であっても駆除はさほど難しくないだろう。
だがそれはあくまで敵が単体だった場合だ。
複数、しかも連携を取り始めれば手に負えない。
対抗するためには強力な軍隊が必要になる。
(´・ω・`) 「それで、何が起きているんだ」
lw´‐ _‐ノv 「錬金生物の大軍勢によって大陸北部の都市国家が陥落してる。この半年で三件も」
(; ^ω^) 「!?」
( ФωФ) 「吾輩調べであるから、ほぼ間違いないのである」
446
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:01:55 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「実際には四つの都市が強襲されたんだ。黒い甲殻型の巨大な虫らしいんだけどね。
騎士協会が総出で対応したみたいだけど、間に合わなかったみたい」
(´・ω・`) 「ってことは」
lw´‐ _‐ノv 「うん、国を滅ぼしたそれらはまだ放し飼いってことかな。もしくは飼い主の元に戻ったか」
( ^ω^) 「あれ? 四つの国って」
lw´‐ _‐ノv 「うん。一つだけそれらを撃退できた国がある。城塞都市国家フラクツク。
その錬金生物を迎撃できた唯一の国に、彼らがいるはず」
(; ^ω^) 「フラクツク……!」
その名前はつい最近聞いた覚えがあった。
荒天鷲の巣で命を落とした錬金術師。その男から預かりものはブーンが大事に持っている。
lw´‐ _‐ノv 「どうしたの?」
( ^ω^) 「いや……別に何でもないお」
(´・ω・`) 「少し縁があってね。それで、その場所にクールとサスガの双子がいるのか?」
447
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:02:16 ID:XuZMeezA0
少し空きます
448
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:14:45 ID:ESOyTVmk0
クーちゃん久しぶりだな楽しみ
449
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:23:47 ID:XuZMeezA0
.∧_∧
(#゚;;-゚) 「必ずとは言えぬが、かなり確率が高いであろうな。
流れてきた話を聞くと不死の英雄がなんじゃとか言っておったが」
イ从゚ ー゚ノi、 「クール様のことでしょうか?」
(´・ω・`) 「……たぶんそうだと思う」
( ^ω^) 「すぐ行くお?」
lw´‐ _‐ノv 「ええ、勿論です。ここからかなり距離がありますからね」
イ从゚ ー゚ノi、 「それでは」
キツネの一言の後、意識のみの世界から解放された僕ら。
戻ってきた現実の感覚を確かめる様に両手を組んで伸ばす。
(´・ω・`) 「……っと。厄介な旅になりそうだなぁ……。
僕らは全然準備できてないんだけど」
テンヴェイラを倒して戻って来たばかりだ。
道具の手入れをしておかなければ、長旅の最中にいつ不具合が起きるかわかったものではない。
ついでに言えば、僕の上着は服の袖から無くなっている。
流石にこの格好で冬の旅をするのは無理だ。
450
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:24:09 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「用意はしておいたよ。人数分ね」
シュールが戸棚を開くと、そこに新しい旅用の服が並んでいた。
たった三日でこれだけの用意をしたシュールの技術力は、いまさら驚くことでもない。
(´・ω・`) 「それにしても早く着いたね」
lw´‐ _‐ノv 「ショボン君は時間かかりすぎじゃないかな。海岸沿いを南下してたらそんなにかからない様な」
(´・ω・`) 「道が崩落してたから、山を登って迂回してから来たんだ」
lw´‐ _‐ノv 「あーなるほど。私たちは崩れた所をそのまま通ったからね」
(;´・ω・`) 「どうやって!?」
lw´‐ _‐ノv 「ロマを私が着て、でぃを抱いただけだよ」
身体能力を引き上げるロマンの外套があれば、確かに渡り切ることは可能かもしれない。
( ^ω^) 「ロマンの外套ってそんなにすごいのかお?」
(´・ω・`) 「規格外だね。まぁ、想定し得る錬金術を全て埋め込んだようなものだから」
lw´‐ _‐ノv 「二人とも無理やり通ればよかったのに」
451
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:24:51 ID:XuZMeezA0
(´・ω・`) 「いや、流石に降りたら登れなくなるし」
( ^ω^) 「もし反対側も駄目だったら手詰まりになっちゃうお」
あの時、崩落した海沿いの道を無理やり通ることも考えた。
死なないという特性を持つ以上、飛び降りても何ら問題は無い。
無いのだけれど、出来れば避けたかった。
ブーンが言った理由と、崩れた原因がわからないこともあって、僕らは山道を選んだ。
lw´‐ _‐ノv 「時には大胆さも必要だよ」
(´・ω・`) 「そうだったみたいだね」
( ^ω^) 「まぁ、あれは仕方ないお。三日位の差なら丁度良かったんじゃないかお」
lw´‐ _‐ノv 「準備する時間がもらえたからね」
(´・ω・`) 「そういえば、シュールは旅の間どうするんだ?」
通常の意識は周であり、旅の道中はどちらの意識が優先されるのか気になった。
場合によっては僕がロマンを羽織ったほうが良いだろうと。
452
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:25:42 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「これからしばらくは私が出てるつもりだよ。咄嗟の判断もしやすいしね。
周にも許可をもらったから大丈夫。最期の旅だからね……」
(´・ω・`) 「最後?」
lw´‐ _‐ノv 「気にしなくていいよ。さて、そろそろ出発しようかな」
( ^ω^) 「おー馬とかは用意してるのかお」
lw´‐ _‐ノv 「買う予定の話はもうしているから大丈夫。お金はあるんだよね」
(´・ω・`) 「金貨にする時間は無かったけど、それなりの錬金術はブーンが」
( ^ω^) 「馬四頭程度に替えられる自信はあるお」
もともとが錬金術で商売をしていたブーンである。
どのようなものが売れるか、役に立つかはよく知っているだろう。
lw´‐ _‐ノv 「錬金術師がやってるところでね。身体強化が施されている中で一番質がよさそうなのを選んでおいたんだ。
これからの道中はかなり厳しいだろうからね。通常の数倍はするけど大丈夫?」
453
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:26:19 ID:XuZMeezA0
( ´ω`) 「おー……それは……」
lw´‐ _‐ノv 「まぁ、足りなければ私たちが用意した分もあるから大丈夫。
最悪この建物を国に売ればそれなりの値段はつくだろうしね」
(´・ω・`) 「ここを? いいのか?」
ずっと鍵を持っていたほどである。
そう簡単に手放していいものではないだろう。
lw´‐ _‐ノv 「まぁ、別にね。深い思い出があって取ってるわけじゃないんだよ。
ただ場所が便利だったからなんだ。この国が一番素材を手に入れやすいしね。
さて、お喋りはやめて出発するよ」
(´・ω・`) 「わかった」
∧
(゚、。`フ 「やっと話がまとまったのじゃな」
( ФωФ) 「こちらは待ちくたびれたのである」
( ^ω^) 「お、すまんおね」
イ从゚ ー゚ノi、 「謝るようなことではないのでございます。二人が少々気が短いものですから」
シュールが一番にドアを開けて出ていく。
その後ろに続く黒いマントを羽織った白い猫。
手に入れた紅の災厄の素材を大事にしまい込み、僕らはその背を追った。
454
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:27:12 ID:XuZMeezA0
36 紅の災厄 End
455
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:27:41 ID:XuZMeezA0
>>15
30 災厄の巫女
>>102
31 少女への手掛かり
>>165
32 血の遺志
>>228
33 空を舞う翼
>>282
34 地を穿つ角
>>350
35 港の都市
>>404
36 紅の災厄
456
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:28:03 ID:XuZMeezA0
│
│
26 朽ちぬ魂の欲望 <上>
27 朽ちぬ魂の欲望 <下>
│
│
16 ホムンクルスは試すようです
│
│
28 宴の夢
29 古の錬金術師
30 災厄の巫女
31 少女への手掛かり
│
32 血の遺志 最終編
33 空を舞う翼
34 地を穿つ角
35 港の都市
36 紅の災厄
457
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:34:16 ID:XuZMeezA0
37 終の願望
458
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:35:36 ID:XuZMeezA0
草原の遥か向こう、山の影に寄りかかるように聳え立つ城。
枯れ山とは対照的に夕日を受けて赤く輝く。
( ^ω^) 「もともとは綺麗な白色だったらしいお。長い年月を経て段々色褪せていったんだろうね」
(´・ω・`) 「あれが城壁か?」
背後の山に繋がるように築かれた半円状の三重の壁。
遠くからでもはっきりとわかるほどに高く、分厚い。
( ^ω^) 「えーっと、なんだったかお。全部城壁だったんだけど……」
lw´‐ _‐ノv 「第一の城壁、プルガ。
フラクツクの領土を示している木造の長城。年中凍ってるお陰で燃えないし、
領土を広げるときに新たに組むのもお手軽な城壁だね」
他の二つと比べて形が歪なのは、遥か昔から継ぎ足して大きくしてきたからだろう。
雪に包まれた城壁の下半分は真っ白に染まっている。
とても材質が木だとは思えない。
459
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:36:13 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「第二の城壁、ヴォルナ。
あらゆる敵を拒む壁。雷が落ちて敵の兵を焼き尽くしたことからつけられた名前だね。
岩石群で構成されている天然の要害。正直何が起きてあの形になったのかさっぱりなんだよね」
高さが不揃いで自然にできた隆起。
あちこち尖っている白い壁は、外側に向かって大きく張り出しており、梯子をかけたところで簡単には登れない。
内側はなだらかな上り坂になっており、フラクツク側は労せずして城壁にいくらでも兵を補充できる。
lw´‐ _‐ノv 「第三の城壁、ラズリヴノスト。フラクツクの居住区を囲む最終の砦。
都市の背後にある山で大量に取れる無明鉱がふんだんに使われた城壁。あの一番奥の黒いのがそれね」
(´・ω・`) 「雪が……?」
lw´‐ _‐ノv 「うん、年中熱を放ち続けてる不思議な鉱石なんだ。
別に城壁としての特殊な機能は無いんだけど、とにかく硬くて滑る。
錬金術に対する親和性がものすごく低くて、他に物質の影響を受けない」
( ^ω^) 「お……それじゃあシュールでも破れないとか?」
lw´‐ _‐ノv 「まぁすぐには無理だろうねー。第三の城壁ってほんと伝説みたいなものだからね。
十倍の兵力差を三か月間耐え続けたとか」
460
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:36:47 ID:XuZMeezA0
通常の攻城は三倍の兵力差が必要になると言っていたのは何処の人間だったか。
錬金術が発展した現代において、逆に数人で城一つを落とすことも可能になった。
だが、フラクツクを護るのはそもそも錬金術が通用しない壁だという。
もし事実であるなら流石にどうしようもない。
(´・ω・`) 「ん……? あれは何だ?」
∧
(゚、。`フ 「やっと気づいたのか」
( ФωФ) 「死骸であろうな」
第三の城壁の外側、雪の中に埋もれている複数の黒い塊。
潰れて動かないが、明らかに自然界に存在する形状ではない。
イ从゚ ー゚ノi、 「ちょっと調べておいたほうが良いのではないでしょうか」
lw´‐ _‐ノv 「うん、そうだね」
シュールは雪に足跡を刻んでいく。
丘陵を下り黒の斑模様になっている地帯を目指す。
461
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:37:58 ID:XuZMeezA0
城門から少し離れたところに転がっていた動かない蟲。
ぶよぶよの甲殻は無残に切り刻まれ、中身の血肉が弾け散っている。
まともな形状をしている個体は残っていない。
蝿が飛び回り、近づくごとに腐臭がきつくなる。
(´・ω・`) 「……腐ってるけど」
lw´‐ _‐ノv 「新しいね……」
( ФωФ) 「吾輩の調べている情報だと、この国が襲われたのは数か月前のはずであるが」
∧
(゚、。`フ 「この雪の中で保存されておったのじゃろ。この一週間ほどは天気も良かったからの。
表に出て来たのではないか」
イ从゚ ー゚ノi、 「錬金術の痕跡が分かりにくいですね」
( ^ω^) 「うーん……」
(´・ω・`) 「触るなよ?」
( ^ω^) 「わかってるお」
剣で肉をつつけば、紫色の泡が噴き出て来る。
雪の上に零れた体液は煙を上げて消えた。
462
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:38:39 ID:XuZMeezA0
(´・ω・`) 「うーん……身体強化というよりは、毒か何かか」
lw´‐ _‐ノv 「甲殻もそれほど強化してないみたいだし、というよりむしろ柔らかすぎるよね。
城を攻め落とせなかったのを鑑みても、毒物をまき散らすような錬金生物で間違いない」
( ^ω^) 「対策さえ講じていれば毒物なんて大したことないおね。
やっぱり、クールがいるんじゃないかお」
迅速で適切な対応。
完膚なきまでに敵を殺しきる冷徹さと、壁内に侵入を許さない統率力。
未知の敵を怖れない強い心と、兵士たちを奮わせるに足る信頼。
どれ一つ欠けてもこの結果には至らなかっただろう。
∧
(゚、。`フ 「こっちの死骸は違うようじゃの」
( ФωФ) 「ふむ、砕かれてはいるが随分と硬そうな甲殻であるな」
少し離れた所を、身体半分ほど雪に埋もれながらでぃは歩いていく。
数歩先の新雪を叩き潰して道を作っていくのは、猫のサイズにまで縮んだ黒い外套。
道中では話すたびに喧嘩をしていた二人だが、どちらもが最高位の錬金術師。
こと錬金術の話題に限っては少なからず話も合うらしい。
463
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:39:26 ID:XuZMeezA0
外套の錬金術に意識を移し替えているロマンは自ら移動する術を持たず、
他者によって運ばれる必要がある。
その対象に選ばれたのがでぃであった。
僕とブーン、それにシュールはそれぞれが防寒用の外套を身に纏っているため、
重ねて着ることになればどうしても動きにくくなる。
狐の現身である扇はシュールが所持しており、意思疎通の為に半透明な姿で僕らの近くを漂う。
傍から見れば幽霊にしか見えないはずだ。
敢えては聞かないが、夜を過ごした宿屋で何度も叫び声が聞こえたのもきっと関係があるのだろう。
(´・ω・`) 「何種類もの錬金生物を生み出し……目的の場所を襲わせる……?
そんなことができるのか」
lw´‐ _‐ノv 「私だからこそ、って感じかな。でもまだまだ不細工だね」
( ^ω^) 「フラクツクは落とせなかったとは言え、こんなものを生み出せるならそれだけで十分な気もするお」
lw´‐ _‐ノv 「構造は単純な蟲だから。生きるために最低限必要な機能すらほとんどない」
イ从゚ ー゚ノi、 「機械的に命令をこなすだけの人形のようなものでしょう。
複雑な行動は出来ないでしょうし、高度な錬金術を組み込むことも難しいと思われます」
464
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:39:51 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「生き物を創り出すって、それだけでかなりの負担がかかるからねぇ……」
(´・ω・`) 「やったことあるみたいな言い方だな……」
lw´‐ _‐ノv 「まぁ試してはみるでしょ。当時はあんまりうまくいかなかったけどね。
軟泥状の塊を創り出すのがやっとだったよ」
( ^ω^) 「城門が見えたお」
木材で組み上げられた城壁の中で、唯一鉄が素材となっている門。
西、南、北と三方面にのみ存在する。
その足元まで進んだ時、上方から声が投げられた。
「何者だ!」
門番と思しき男は弓を構えながら大きな声で問うてきた。
馬を下りて返す声は自然と大きくなった。
(´・ω・`) 「旅人です!」
「目的は!」
(´・ω・`) 「休憩と補給に!」
465
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:40:23 ID:XuZMeezA0
人探し、とは言えない。
不審がられるだけであるし、最悪疑われる可能性もある。
男二人に女一人、さらに猫までいるのだから物見の上でさぞ驚いたことだろう。
「そこで待て!」
男の姿が消え、扉はゆっくりと開いていく。
人間一人が通れるほどで止まり、現れたのは全身武装した男達。
その手に持つ武器も、身を護る防具も全て錬金術による恩恵を受けていた。
身体検査を受け、武器を預けることで入国の許可が出た。
護衛という名の監視が数人、僕らの前と後ろを挟むように歩く。
逃げるつもりは毛頭ないが、変な動きを見せれば刺殺されそうなほどの緊張が張り詰めていた。
流石にでぃもロマンも話さない。
シュールだけが気楽そうに歩いていた。
lw´‐ _‐ノv 「すごいねぇ、私フラクツクは初めてだよ」
(´・ω・`) 「覚えてないだけじゃないのか」
lw´‐ _‐ノv 「うーん、どうだろうね。ふむふむ、第一の城壁の中は放牧か。
一応農業もあるみたいだね」
466
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:41:16 ID:XuZMeezA0
(´・ω・`) 「そうだな」
敵情視察と思われそうなことを話されても反応に困る。
下手に刺激するのを避けるようにとのアイコンタクトは伝わらなかった。
lw´‐ _‐ノv 「ほらほらショボン君。あれが噂に名高い第二の城壁、ヴォルナ。
実際に足元まで来ると大きくて高いね。どうやってできたんだろう」
(´・ω・`) 「空から何か落ちてきたんじゃないか。海に波が起きる様に」
lw´‐ _‐ノv 「それだと中央部分が大きく窪んでないとおかしい。
でも実際はなだらかな丘陵地帯なわけだから、隆起現象かな……?」
シュールは独り言を言いながら歩く。
僕とブーンは目を見合わせて小さく溜息をついた。
放し飼いされている牛や豚、羊の群れを抜けてただひたすらに真っ直ぐ。
白銀の世界を闊歩する家畜は他所で見る同種と比べて毛深い。
寒さに耐えられるように進化してきたのだろう。
前を歩く兵士のマントは動物の毛を利用したもの。
靴も、手袋もそうだろう。背負った剣の取っ手は握りやすいように動物の皮が巻いてある。
食料としてだけではなく、日常生活においても重要な役割を果たしている家畜。
資源の少ない雪国では、捨てるようなものなどないのかもしれない。
467
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:42:03 ID:XuZMeezA0
適当に観察をしながら歩いているだけで、第二の城壁まではあっという間だった。
実際に足元に至ればわかる、見上げるほどに高い城壁。
地盤が隆起したのだとすれば、一体どれほどの衝撃があったのか。
おそらく、人間は生きていられないだろう。
岩でできた天然の城壁に亀裂が走り、人が通れるだけの隙間が現れた。
「少し待て」
先頭を進んでいた男が罅の中に消え、数分後に出てきた。
連れられてきたのは振り回すにはあまりに長い一振りを背負った男。
武器である直刀から感じる冷たい雰囲気は、先程までの兵士たちの持つ剣を遥かに凌駕していた。
lw´‐ _‐ノv 「やっぱり、当たりだったね」
刀の持つであろう錬金術の内容はわからないが、
その完成度は外見からでも判断できる。
それは明らかに古代錬金術師の番人による一振りであった。
∧
(゚、。`フ 「にゃぁーご」
でぃが意味ありげに鳴く。
468
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:42:41 ID:wrwwL6KY0
うおーめっちゃ投下してんな支援
クーさんは七大災厄に喧嘩売れば死ねたんじゃないですかね……
469
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:43:05 ID:XuZMeezA0
(´・ω・`) 「あぁ、気づいたよ」
風に消えるくらいの小さな声で返答する。
兵士達は全員が第一の城壁の方面へ戻っていき、僕らと同道しているのは兆党の男一人だけ。
僕よりも頭二つほど大きく、子供と大人が並んで歩いているようだ。
強靭な筋肉で膨れ上がった肉体は、戦うための鍛え方。
先程の兵士達が束になっても敵わないであろう。
「……何処から来た」
ドスの効いた低い声は一度で聞き取れず、男が再度問いかけて来てようやく質問を理解した。
(´・ω・`) 「コルキタからです」
「……そうか」
lw´‐ _‐ノv 「凄い身体だねぇ」
「……鍛えたからな」
lw´‐ _‐ノv 「これから第三の城壁を通るの?」
470
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:44:05 ID:XuZMeezA0
「……今日は通行許可が出ない」
明らかに話すのも面倒くさそうにする男に対して、シュールは質問を投げかけ続ける。
lw´‐ _‐ノv 「まさか野宿?」
「……小屋はある」
lw´‐ _‐ノv 「なるほどねぇ……まぁいいや」
表情の読めない大男だが、質問攻めが終わって幾分安堵したかのように見えた。
第三の城壁までの間をほとんどを占めている田園地帯は、
雪の上からでもわかるほど綺麗に区画整理をされている。
( ^ω^) 「そろそろ休憩したいお……」
lw´‐ _‐ノv 「だらしないなぁ。私はまだ歩けるよ」
( ^ω^) 「丸一日歩いてるからしんどいんだお」
「……もう少し行けば休憩所がある」
∧
(゚、。`フ 「にゃぁぁ」
471
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:44:38 ID:XuZMeezA0
不愉快そうに目を細めるでぃ。
気持ちはわかるが、長いこと歩いたのは確かだ。
そろそろ休憩を挟んでもいいだろう。
陽が落ちるまでは時間があるし、どうせ今日に第三の城壁を超えることは出来ないのだ。
どんな理由があるのかはわからないが、押し通って問題を起こすことは出来ない。
そもそも無理やり侵入できるのかどうかは疑問だが。
(´・ω・`) 「それで、テンヴェイラの鋏はどう使う予定なんだ」
lw´‐ _‐ノv 「あー気になる?」
(´・ω・`) 「当然だろ。僕らが錬金術を行わないとけないんだから」
lw´‐ _‐ノv 「んー……」
煮え切らない返事。
シュールは暫く手元の扇を開いたり閉じたりした後、僕の二歩先へと足を進めた。
振り返った時の顔は決意の表情。
その中に少し悲しそうな笑顔が見え隠れしていた。
472
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:46:12 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「テンヴェイラの鋏、まぁつまり七大災厄の素材って簡単には扱えないのはわかってると思う。
武器にするにしろ、素材として利用するにしろ相応の準備が必要なんだ」
(´・ω・`) 「ああ。新緑元素もそうだった。つまり、テンヴェイラの鋏と釣り合うだけの素材がいるわけか。
それをジョルジュが取りに行ってるのか」
lw´‐ _‐ノv 「当たらずも遠からずかな。ジョルジュ君が取りに行ってるのは必要な素材だけど。
七大災厄の素材の力を受けることが出来る素体が無いんだよね」
(´・ω・`) 「素体か……」
lw´‐ _‐ノv 「白牙山の剣。ショボン君がもっていたあの剣ならばもしかしたら、とは思ってたんだけどね。
折れちゃったなら仕方がないよ。最初から用意していた代替品があるから」
(´・ω・`) 「代替品?」
lw´‐ _‐ノv 「後で話すよ」
シュールの目線の先にいるのは小屋の扉を開けて待っている大男がいた。
何を考えているのかわかりにくい無表情顔。
僕らの話を聞いていたところで理解できるとは思わないが、用心に越したことはない。
473
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:46:52 ID:XuZMeezA0
( ^ω^) 「やっと休憩できるお……」
(´・ω・`) 「相変わらずだなぁ。そんなに体力に違いがあるはずないんだけど」
( ^ω^) 「僕の方が身体が重いから仕方ないおね」
(´・ω・`) 「そんなに違いがあるとは思えないけど」
確かに体格の差はある。
だがブーンのそれもすべてが脂肪というわけではなく、筋力量では僕よりも勝っているはずだ。
単純に気持ちの問題だと片付けるわけではないけれど、能力的に見ればこれほどまでに露骨な差異があるはずない。
( ^ω^) 「別にいいんだお。休めばすぐに楽になるから」
(´・ω・`) 「あとどのくらいで着くんですか」
「……半日。今日はもう暗くなる。明日の朝出発」
男は背負っていた刀を壁際に立て掛け、自身ももたれて目を瞑った。
晩御飯も食べないつもりらしい。
( ^ω^) 「おー腹減ったお」
474
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:47:36 ID:XuZMeezA0
ブーンは持ち歩いていた乾燥食料を一番に取り出して齧る。
数種類分の味付けを用意していたが、三周目近くなり流石に飽きが来ていた。
最初から分かっていたことだが、フラクツク付近の野山は野生動物の姿が少ない。
錬金生物による侵攻のせいで、生態系が乱されているのだろう。
おかげで新鮮な肉は殆ど調達できなかった。
( ^ω^) 「肉が食べたいお……」
(´・ω・`) 「もう少し我慢しろ。城内には入れたら好きなものを食べればいいから」
lw´‐ _‐ノv 「無事入れるといいねー」
(´・ω・`) 「入れないことがあるのか?」
lw´‐ _‐ノv 「大丈夫だと思うけどね。まぁこういう時だからさ。断られることもあるかもしれないし」
( ^ω^) 「断られたら肉が食べられないお……」
(´・ω・`) 「肉は僕らの第一目的じゃないんだけど……。まぁいいや。その場合どうする?」
475
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:48:06 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「考えてないわけじゃないよ。でぃとロマが協力してくれれば大丈夫でしょ。
最悪、キツネの効果で門番全員の意識を彼方へ持ち去って……」
(´・ω・`) 「いや、それはまずいだろ」
あまりの力技に話が逸れようとしたところで釘をさしておく。
それらは本当の最終手段であり、結果の如何にかかわらず国外追放されるのがおちだろう。
あまり派手に暴れてしまえば死刑まで有り得る。
フラクツクの国民にとって僕らは余所者。
厄介な問題を引き起こした連中に情けをかける理由はない。
lw´‐ _‐ノv 「心配しないで。私を誰だと思ってるの」
(´・ω・`) 「だからこそ心配なんだけどね」
lw´‐ _‐ノv 「うーん、信頼無いなぁ。そこそこ長い付き合いのはずなんだけど」
間に合った空白期間を考えないのであればの話だ。
最初に出会ったのを僕が生まれる前だとすると、およそ数百年来の付き合いか。
数えるのも面倒なくらいだ。
実際には一年にも満たない短い期間だが。
476
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:48:46 ID:XuZMeezA0
道中で聞かされた英雄譚の事を知れば、誰もが彼女の無茶に呆れるだろう。
喧嘩を売った七大災厄の数は実に三体。
森林の王ティラミア、砂礫の君シスターヴァ、宵闇の冠エルファニア。
出会ったことがないのはメイギスティだけだという。
人の身でありながら、あまりの無謀。
ただの一度でも立ち向かって生きていること自体が奇跡なのに、それを三回も。
二度と関わるまいと思うのが普通の感情だ。
その身にイヴィリーカの知識を宿す、最古の錬金術師。
lw´‐ _‐ノv 「その私が敵なんだから、油断しないでね」
まるで心を読まれたかのようなタイミングにぞっとする。
全盛期ならいざ知らず、今の彼女に読心術を扱うだけの力はない。
この道中の間、寒いのが嫌いだという周に代わってずっと表に出ているシュール。
負担が大きいのではないかと聞けば、もうあまり時間が必要ないからと答えられた。
その意味は今でも解らないままだ。
(´・ω・`) 「あ、あぁ」
477
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:49:14 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「あの蟲だって、たぶん小手調べとか性能テストじゃないかな。
私だったらそうするから」
真に生み出した生物の強さを知ろうと思うのなら、虐殺では意味がないと彼女は言う。
その言葉の通りだ。抵抗する人間に打ち勝ってこそ完成形と呼べる。
( ^ω^) 「だとすれば、まだ次があるという事かお」
(´・ω・`) 「そういうことになるね」
lw´‐ _‐ノv 「私の予想が外れてることを切に願うよ。
相手の戦力が分かって、対応策が分かれば、次は全力でしょ。
侵攻自体はうまくいってもいかなくてもいいんじゃないかな」
(´・ω・`) 「じゃあ何のために?」
lw´‐ _‐ノv 「準備じゃない? 戦争のね」
( ^ω^) 「戦争……」
lw´‐ _‐ノv 「彼女が人間の身体を取り戻したとする。不老不死をおまけに得てね。
次に何をするか。その存在があくまで私自身の悪意だとすると、ありとあらゆる知識の収集。
自分自身が不完全であると知っているからこそ、その欲はとめどなく溢れ続けるだろうね」
478
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:49:57 ID:XuZMeezA0
(´・ω・`) 「その手段が戦争だという事か」
lw´‐ _‐ノv 「戦争は効率がいい。国家を支配下においてしまえばその知識を得たのと同義だし、
人間をある程度は自由に動かすこともできる。余程の悪政を敷かない限りは反乱もない」
( ^ω^) 「そうやって世界中の知識を集めるのが目的かお?
なんか……虚しいおね」
ブーンの言いたいことはわかる。
知識を収集するだけのシステムを創り出してしまえば、知ることの楽しさからは離れていく。
終わることのない果ての果てへの追及を続ける人形となるだけである。
それこそがシュールの悪意が望むことなのかもしれないが。
lw´‐ _‐ノv 「私の手から離れた私の欲がどこに向かうのか、その正確なところはわからない。
だけど、この予想からそれほど遠く離れることはないんじゃないかな」
(´・ω・`) 「世界中を一気に敵にまわすようなことはしないだろうな。
となればおそらく」
lw´‐ _‐ノv 「ここ、フラクツクが始まりだろうね。
四国のなかで唯一進行を防ぎ切ったこの国を攻め落とす前には、
彼女は不老不死の肉体を手に入れているはずだよ」
(´・ω・`) 「時間はそう残ってないってことか」
479
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:51:00 ID:XuZMeezA0
身体を乗っ取られる前に、リリを助けなければならない。
予測地点はフラクツクからそう遠くはなく、一週間もあればたどり着ける。
であれば、最善の準備をしてすぐに向かわなければ。
lw´‐ _‐ノv 「何はともあれ、目の前の壁を超えることが出来れば大きく一歩進める。
まだ寝る時間には早いかもしれないけど、休めるときにゆっくり体を休めておこう」
(´・ω・`) 「わかった」
ブーンは既に堅い木の床に横になっていた。
僕は壁を背もたれにし、リラックスして全身の疲労を抜く。
でぃはロマンを布団にするように体の下に滑り込ませ、大きく欠伸をする。
それを横目で見ながら、ただリリの無事を願いながら目を閉じた。
480
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:51:36 ID:XuZMeezA0
・ ・ ・ ・ ・ ・
( ^ω^) 「高いお……」
(´・ω・`) 「素手じゃ……いや、道具があっても越えられそうにないね」
金属のような表面に加工された後はなく、組み上げられたはずが隙間もない。
一枚もののような壁の圧力は想像以上であった。
lw´‐ _‐ノv 「どのくらい待てばいいのかな」
「もう少し」
僕らのほかにも数人の旅人たちが待っていた。
身体よりも大きいような荷物を背負い、重装備に身を固めて、疲れ果てた顔をしながら。
何の目的があって、何処から来たのか。
この国の状況を知っていてそれでもなお訪れてくるのか、それとも何も知らないのか。
481
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:52:11 ID:XuZMeezA0
( ^ω^) 「門が見えないけどどうやって入るんだお」
(´・ω・`) 「わからない。シュールは?」
lw´‐ _‐ノv 「私も知らないんだよね。幾つかの方法は予想がつくけど」
(´・ω・`) 「これって無明鉱だよね。どうやって加工してるんだろう」
( ^ω^) 「こんなに大きな塊は初めて見るお」
世界中で採取することができる鉱石。
ただし、手に入るのは指先ほどの小さな欠片のみ。
必死に集めたところで大した量にはならないためにあまり研究されていない。
(´・ω・`) 「無明鉱の性質は発熱と……なんだったっけ……」
lw´‐ _‐ノv 「反発かな。これだけ雪が降っても全く当たってないくらいは強いんだよね」
( ^ω^) 「これだけ大きな塊になるわけないから、反発は別の素材に対してってことかお」
(´・ω・`) 「うん。金属系とは相性が良くて、影響を受けないんだけどね。
熱や水分に対してはかなりの力が働く」
482
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:52:52 ID:XuZMeezA0
継ぎ目すらない城壁の前に集められた僕らは、取り留めのない話をして待っていた。
降り続ける雪が肩や頭に積もっていくのを定期的にはらいながら。
「そろそろだ」
城壁前にたどり着いてからおよそ二時間。
男の言葉と同時に城壁を超える様に飛んできた小さな球体。
風に流されるほどに軽く、それを着地地点で受け止めたのは僕らよりも前から来ていた男。
装備からしてフラクツクの兵士であろう。
内外の連絡役なのかもしれない。
「旅人に通達する!」
球体の中から取り出したのは一枚の紙切れ。
それを両手で掲げ、男は書いてあるであろう内容を読み上げる。
「一切の例外なく、入国は認めないものとする。
現在、フラクツクは危険な状態にある。何者も内部に案内することは出来ない。
以上だ。騒ぎを起こさないのであれば、プルガ城壁までの安全は保障しよう」
動揺は、すぐさま旅人たちの間に伝播した。
恐らくほとんどの人間がフラクツクの現状を知らなかったのだろう。
第二の城壁を越えてなお断られるとは思っていなかったに違いない。
483
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:53:24 ID:XuZMeezA0
それは勿論僕らにも言えたことだったが。
「立ち去るか、飢えてここで死ぬか、選ぶがいい」
無情な兵士の叫び声が平原を抜けていった。
振り返り国外を目指す者、泣きわめいて案内人に寄り縋る者、剣を抜いて鎮圧された者、
絶望に打ちひしがれて両手をついて動かない者もいた。
予想と外れて驚きはしたもののそのどれでもなかった僕は、シュールに問いかけようと後ろを振り向いた。
彼女はしゃがんで足元にいた猫に小声で話しかけている。
僕らを連れて来てくれた巨人のような男は、僕らの動きを待っていた。
lw´‐ _‐ノv 「それじゃ、でぃお願い」
∧
(゚、。`フ 「最初からこうすればよかったのではないかの」
「……!!」
突如大きく伸びをしたでぃは、何もない空中に向かって飛び上がった。
その背にはためくロマンの外套が足場を作り、猫の俊敏さであっという間に城壁の上の高さまでたどり着き座る。
484
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:53:59 ID:XuZMeezA0
「っ!!」
抜き放った直刀を振り抜くまでは一瞬。
武器を持たない僕らには止める間もなかった。
剣先から放たれた斬撃は、空中のでぃの元へと奔り、直撃した。
(;´・ω・`) 「でぃ!!」
lw´‐ _‐ノv 「大丈夫」
彼女の姿は依然としてそこにあり、放たれた斬撃は光の破片となって降り注ぐ。
直後に鳴り響いた鈴の音。
聴覚ではなく、身体の芯から届くように知覚した。
(; ^ω^) 「な、なんだお!?」
lw´‐ _‐ノv 「少し待ってて」
一定間隔で鳴り続ける鈴。
記憶を思い出すのかと思えば、そうではなく別の効果があるらしい。
( ´_ゝ`) 「懐かしい面々だな」
(´<_` ) 「わざわざ訪ねて来るとは、ご苦労なことだ」
485
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:54:54 ID:XuZMeezA0
半透明の霊体。
金属錬金術師の天才にして、古代錬金術の番人である双子の意識。
でぃの呼び出しから十秒と経たずに僕らの前に現れた。
「サスガ様……」
( ´_ゝ`) 「おう、久しぶりだな」
「私は……どうすれば……」
(´<_` ) 「任務に戻っていいぞ」
抜身の剣を握ったまま、立ち尽くしていた男。
空いたままの口から絞り出したような質問は、あっさりと返されていた。
兄弟は男の疑問に答えてやるつもりはないらしい。
肩を落として城壁の方へ歩いていった。
lw´‐ _‐ノv 「久しぶりだね」
( ´_ゝ`) 「はい。シュール様におかれましては、御無事でいらっしゃるようで、
我ら兄弟も再会できたことに大変な幸せを抱いております」
(´<_` ) 「アニジャ、どうしたいきなり」
486
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:55:21 ID:XuZMeezA0
( ´_ゝ`) 「再会する騎士と姫ごっこ」
lw´‐ _‐ノv 「変わらないね。昔の約束はまだ覚えてるかな?」
( ´_ゝ`) 「勿論」 (´<_` )
lw´‐ _‐ノv 「よかった。それじゃあ、城内に入れてもらえるかな」
( ´_ゝ`) 「もう少し待ってくれ。すぐに出てくるはずだ」
言葉が終わらないうちに平らだった城壁の一部が地盤面下に沈み、大きく開いた。
立っていたのはよく知った錬金術師。
長い黒髪を靡かせながら、雪国とは思えないほどの薄着で彼女は現れた。
( ^ω^) 「クール……久しぶりだお」
川 ゚ -゚) 「あれからまだ数十年くらいしか経ってない。まったく、私たちにとっては大した時間じゃなかっただろ」
(´・ω・`) 「また君に合うとは思わなったよ」
川 ゚ -゚) 「事情はそこの双子から聞いてる。先程門前払いにした連中もまだ近くにいる。中で話をしよう」
lw´‐ _‐ノv 「初めまして、クールさん」
川 ゚ -゚) 「ああ、あなたがそうか。厄介なことをしてくれたな」
487
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:56:36 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「ははは、手厳しい。今の私はシュール・オリンクスの意識。
この身体は周という名前の子。迷惑をかける身で申し訳ないけど、よろしくね」
川 ゚ -゚) 「私は面倒事を引き受けた記憶はないがな。着いてきてくれ」
僕らが通った後、音もなく城壁は元通りになった。
居住区は人に溢れており、誰もが好奇と不安の目でこちらを見て来る。
旅行者が珍しいということだけではないだろう。
( ^ω^) 「王城にでも案内されるのかお?」
川 ゚ -゚) 「一応言っておくが、私はあくまでフラクツクの客という立場だ。
兵を動かしたり、ものを用意したりというのは出来ない。
この国に私がいると知ってきたのなら、今どういった状況かも知っているだろ」
(´・ω・`) 「わかってるつもりだ」
山の斜面に配置された城下町はなだらかな傾斜があり、
通路は狭く何度も折れ曲がっている。
仮に三つの城壁を通過したところで、この細い道で迎え撃つ局地戦が出来れば、
多少の間は持ちこたえられるはずだ。
488
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:57:10 ID:XuZMeezA0
まさに防衛の極値。人間同士の戦争で落とされたことがないという話は、嘘ではないだろう。
クールの家はその城下町の中でもかなり高いところに位置していた。
三つの城壁がはっきりと見える崖の上、突出した足場の上に存在する物見の塔のすぐ足元。
川 ゚ -゚) 「本来は物見の休憩所として使っていたんだがな、私が頼んで譲ってもらった。
おかげで随分と文句を言われたよ。まぁ、三つの城壁が臨めるここだからこそ、襲撃にも気づけたんだがな。
まぁ好きなところに座ってくれ。
これだけの大人数を招待するのは初めてでな、椅子も飲み物も用意できないが」
自分の分だけのグラスに水を注ぎ、クールは席に着いた。
僕らは思い思いの場所に腰を下ろす。
(´・ω・`) 「外の死骸は見た。どうやって防いだんだ」
川 ゚ -゚) 「フラクツクでは戦える人間は皆、軍隊に所属している。
中から選りすぐりを百数人、双子の武器を装備させた。
もともとフラクツクでも錬金術は利用されていたからな、その機能を説明したらすぐに受け入れてもらえたよ」
( ^ω^) 「いろいろ聞きたいことがあるんだけど」
川 ゚ -゚) 「順番に答えていれば日が暮れてしまうだろうな」
lw´‐ _‐ノv 「優先事項を先に処理してくれるとありがたいかな」
489
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:57:59 ID:XuZMeezA0
( ´_ゝ`) 「クールには俺たちの知っているほぼ全てを話している」
(´<_` ) 「あの錬金生物群を見た時に予想は出来たからな」
lw´‐ _‐ノv 「二人とも察しが良くて助かるよ。私のもう一つの意識、それを止めて欲しい。
どうか力を貸してくれないかな」
頭を下げるシュール。
クールはグラスの水を飲み、すぐに返答はしない。
川 ゚ -゚) 「生まれた時から、ずっと死にたいと思っていた。人間の何倍、何十倍と生きて、
得たものも失ったものも多かった。死ぬに死ねず、今まで生きている。
……サスガの兄弟から不死者を殺すための武器を作ると聞いた」
lw´‐ _‐ノv 「そうでなければ、私の分身は殺せないから」
川 ゚ -゚) 「協力しよう。すべて終わった後にその武器を譲ってくれるのならな」
lw´‐ _‐ノv 「ショボンが構わないのなら」
(´-ω-`) 「……別にいいよ」
490
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:58:36 ID:XuZMeezA0
死を求めていたクールが、自らの意思で時と場所を選べるようになる。
用を為した後の不死殺しを持つのは、クールが最もふさわしいはずだ。
(; ^ω^) 「クール!?」
川 ゚ -゚) 「何をいまさら驚いている。すぐに死ぬとは言っていない。いずれ必要になると思っただけだ」
( -ω-) 「うーん……僕にはその気持ちわからんお」
川 ゚ -゚) 「それで、わざわざ私の手が必要になるのか?」
lw´‐ _‐ノv 「まずは場所だね。錬金術を行えて、人に話を聞かれないような場所」
川 ゚ -゚) 「……聞いたことがないな。錬金術の研究所を持っているのは数人くらいしかいないし。
ここには最低限の道具があるだけだ」
(´<_` ) 「王に頼んでみたらどうだ」
( ´_ゝ`) 「クールに借りもあることだしな」
川 ゚ -゚) 「少し待っていてくれ。大人数で行っても警戒されるだけだからな」
491
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:59:09 ID:XuZMeezA0
足早に出ていったクール。
取り残された僕らは持ってきた素材を並べて確認していた。
一時間後に戻ってきたクールが持っていたのは、溢れそうなほどの荷物。
両手いっぱいに無理やり押し込まれたかのような袋を地面に置き、クールは腰を下ろした。
(´・ω・`) 「どうしたんだそれ」
川 ゚ -゚) 「部屋の貸し出しは出来ないが、道具は貸してやると言われてな」
lw´‐ _‐ノv 「まぁ、これだけあれば足りそうだね」
勝手に中身をあさっていたシュールは、その中の器具を取り出して並べていく。
(´・ω・`) 「あれ、そういえばジョルジュに何か頼んでるって……」
lw´‐ _‐ノv 「集合場所はフラクツクって言ったから、もう来てるかと思ったんだけどね
そのうち来ると思うよ。彼が持ってくる素材は最後の方でしか使わないから」
川 ゚ -゚) 「結局この狭い部屋でやるという事か」
∧
(゚、。`フ 「なに、時間はかかるが場所はとらん」
川 - ) 「なんだ……この可愛い猫は」
(´・ω・`) 「あれ、話したことなかったっけ」
492
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 21:59:42 ID:XuZMeezA0
川 ゚ -゚) 「聞いていない……と思う」
∧
(゚、 _`フ 「や、やめろ。わらわは古代錬金術の番人であるぞにゃぁ〜」
クールに耳元を指先で弄られて情けのない声で鳴くでぃ。
番人である威厳は彼方へと消え、ゴロゴロと喉元を鳴らすその姿は、そこらの猫と同じであった。
ひとしきり撫でて満足したのか、クールはようやくでぃを解放した。
捕まらないように戸棚の上に駆け上り、警戒のまなざしでこちらを見下ろす。
尻尾だけが左右へとせわしなく動いていた。
川 ゚ -゚) 「すまんな、少々取り乱した」
( ^ω^) 「意外だおね……」
川 ゚ -゚) 「猫は昔から好きだったんだがな、動物にはなぜか警戒されていてなかなか触れなかった」
( ^ω^) 「ブーンもだお。よく犬には吠えられたお……」
lw´‐ _‐ノv 「本能的なものでしょうね。人間よりも不死者は恐ろしいと、動物は敏感に感じ取るんじゃないかな」
(´・ω・`) 「僕は怖がられたことない気がするけど……あれ。でもどうしてでぃだけ猫なんだ……?」
493
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:00:39 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「でぃがそれを望んだから。意識だけになって生き残るとしても、世界に干渉したいってね。
候補はいくつか合ったんだけど、希望通り猫になったんだよ」
∧
(゚、。`フ 「記憶を操るわらわは一番にショボン、おぬしに合わねばならんかったからの。
捜し歩ける身体にしただけのことである」
イ从゚ ー゚ノi、 「私は持ち歩いていた扇子に意識を移したのでございます。ロマンは手ずから創り出した外套に、
サスガのお二方は……そう言えば私は知りませんでした」
( ´_ゝ`) 「俺は確か言ったと思うぞ。足りない胸に手を当てて聞いてみな」
瞬間的に世界が暗転し、僕らはキツネの精神世界に呼び出された。
錐揉み状になって空間を横切る人間の身体が見えたと思ったときには、既に意識は小屋の中。
イ从゚ ー゚ノi、 「失礼でございますね、まったく。思い出しましたよ。
確か、宝石であれば金属と相性がいいからでございましたね」
(´<_` ) 「そうだ。アニジャ生きているか?」
(メ´_ゝ`) 「あ、顎が……」
(´<_` ) 「痛みは無い筈だがな」
494
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:01:22 ID:XuZMeezA0
( ФωФ) 「茶番はよいのである。さっさと話を進めろ」
lw´‐ _‐ノv 「最期くらい、ロマンにも話しておきたいことがあるんじゃないの」
( ФωФ) 「吾輩は漸く役目を全うできるのであるから、清々しておる。
だがまぁ……長かったであるな……」
∧
(゚、。`フ 「ぬしらはとうに約束を忘れているのだと思っておったわ」
( ´_ゝ`) 「流石にそんなことはない。こんな姿になってまで今日まで生きていきた意味がなくなるだろ」
(´<_` ) 「この姿だったら女の子に可愛がられておっぱい触りたい放題とか言っていた昨日のアニジャはどこにいった」
(; ´_ゝ`) 「おまっ、今それ言う……?」
女性陣から集まる冷ややかな目線が耐えられなかったアニジャは、何も言わずに部屋の隅で震えていた。
邪魔をするのも憚られたので、会話が途切れたのを機に割り込んだ。
(´・ω・`) 「最後か……既に別れてしまった意識が消えたところで、すぐには影響ないんじゃないか」
lw´‐ _‐ノv 「まぁ、私はそうだけどね……」
(´・ω・`) 「?」
495
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:01:51 ID:XuZMeezA0
川 ゚ -゚) 「ショボン、ブーンは聞いていないのか?」
( ^ω^) 「何の話だお」
川 ゚ -゚) 「テンヴェイラの素材に見合うだけの錬金術の素体のことだ」
(´・ω・`) 「少しだけなら聞いた。強力すぎる素材のせいで、簡単には錬成できないってことは。
相応の素材と組み合わせなければ……」
七大災厄と釣り合うほどの素材とは何だ。
その辺で手に入るものではないことはわかる。
具体的な線引きは無いにしても、希少なものではあるだろう。
必要な素材は既に手元にあるはずだ。
ジョルジュに頼んだものは後で使うと、シュールは言っていた。
特殊な錬金術に耐えうるだけの素材。
自分の荷物の中を思い出す。
その中に適切なものは何も入っておらず、
他の人間の荷物に入っているとは思えない。
いや、あった。
七大災厄の素材にも匹敵する素材を用いた高度な錬金術。
496
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:02:14 ID:XuZMeezA0
(;´・ω・`) 「まさか……」
川 ゚ -゚) 「そのまさかだ」
(;´・ω・`) 「待て、だがそれぞれ既に許容範囲を超えて錬成されているはずだ……。
シュール! どういうつもりだ!!」
椅子に座って笑う彼女に向かってかけた言葉は、怒鳴り声になっていた。
(; ^ω^) 「ショボン、落ち着くお」
lw´‐ _‐ノv 「最初からこのつもりだったんだ」
(;´・ω・`) 「必要な素材なら今からでも取りに行けば」
lw´‐ _‐ノv 「ありがとう」
全てを受け入れた儚い笑顔。
瞳の端に浮いた粒は、感謝の言葉と共に柔らかく散った。
497
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:04:07 ID:XuZMeezA0
(;´・ω・`) 「っ……!!」
(; ^ω^) 「手分けして探せば何とかなるはずだお」
( ФωФ) 「吾輩達は目的の為にだけ生きてきたのだ。止めるではない」
( ´_ゝ`) 「たった一つのやり残したことだった」
(´<_` ) 「未来に対して不安を残したままにしておくわけにはいかなかったからな」
∧
(゚、。`フ 「これ以上の人生は余計じゃ」
イ从゚ ー゚ノi、 「十分に楽しんで生きてこられましたしね」
(´・ω・`) 「……」
lw´‐ _‐ノv 「私たちは既に意識だけの存在。言うなれば亡霊。
未練がましくこの世にしがみついているのは、これでもう終わり。
最後を任せることになるのは申し訳ないけれど、お願いショボン君、ブーン君、クールさん」
( ^ω^) 「それでいいんだお?」
lw´‐ _‐ノv 「ええ」
498
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:04:43 ID:XuZMeezA0
川 ゚ -゚) 「ショボン、時間はもうあまり無い。リリを助けられるかどうかは、どれだけ早く行動するかにかかっている。
今更素材を暢気に集めるわけにはいかない」
(´ ω `) 「……分かっているさ。分かってる」
どうしても探してしまう。
折角会えた仲間たちが、その日きりで別れてしまっていいはずがないと。
誰もが幸福を得るための道筋を。
そんなものはないと、心のどこかではわかっていた。
全てを救うには、僕の掌は小さすぎる。
救いきれずに零れていくものを引き留めることは出来ない。
諦めきれず、必死で抵抗して、最善の結果を求めてもがき続ける。
それでも解決することのできない凶悪な問題。
頭の中が湧きたつほどに知識をひっくり返したところでシュールの足元にも及ばない僕は、それでも必死に考えた。
わかったことは、何もわからなかったことだけだ。
(´ ω `) 「シュール、僕はどうすればいい」
499
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:05:34 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「ディートリンデ、キツネ、ロマン、アニジャ、オトジャ。彼らの意識の核である素材と、
手に入れたテンヴェイラの鋏を用いて、完成させる不死殺しの錬金術。
それをもって私の悪意を葬り、愛する人を取り戻しなさい」
(´・ω・`) 「……わかった」
lw´‐ _‐ノv 「ありがとう。
それじゃあ三人共、メモの用意はいいかな。
最初で最後、最古の錬金術師シュール・オリンクスの錬金術をとくとご覧あれ」
流れる様に行われていく作業に、僕らの手伝う余地はない。
複雑で厄介な工程をすべて一人でこなしていく。
常に数歩先の動きを予想し、膨大な知識と経験を惜しみなく発揮するシュール。
洗練された手際はどこか別の世界のように美しく、僕らを魅了した。
繊細な世界に奪われた心を現実に取り戻させたのは、皮肉にも重たい金属の音。
すぐにクールが窓際に走り、その後に僕とブーンが続いた。
強固な壁にぶつかって潰れていく昆虫の群れ。
第二の城壁と第三の城壁の間に突如として現れた大群は、統率されているかのような動きを繰り返す。
500
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:06:07 ID:XuZMeezA0
川 ゚ -゚) 「破られることはないだろうが……」
ここからでもわかるほどの黒ずんだ煙を吐き出していく。
( ^ω^) 「あれはまずいおね」
川 ゚ -゚) 「毒ガス形状の奴だな。だから城門を通すのは危険だと言ったんだがな」
(´・ω・`) 「クールがやってた訳じゃないんだ」
川 ゚ -゚) 「そんな間抜けなことをするわけない。卵でも持ち込まれたら面倒なことになるのはわかってた。
と、散々言ったんだがな……。見ろ、第一の城門の向こう。
領内はただの陽動だ。混乱を引き起こすのが目的だろう」
白い大地に敷かれた黒い絨毯。それは平原を埋め尽くす敵。
未だに動く気配はないが、あれだけの大軍に攻められれば流石に無事では済まない。
川 ゚ -゚) 「出るぞ。今ならまだ間に合う」
(´・ω・`) 「ブーンはここにいてくれ。僕とクールで行ってくる」
川 ゚ -゚) 「そう言えばこれを預かって来た」
501
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:06:44 ID:XuZMeezA0
放り投げられた塊は錬金術で創り出した剣。
硝子の性質を持つ金属。
苦労して作った武器だが、どうにも活躍する場所は無かった。
折角だから試してみよう。
川 ゚ -゚) 「馬は二頭繋いである。私の後について来い」
(´・ω・`) 「わかった」
城門まで一直線に降りることができる専用の道を走る。
前を行くクールの説明は風に流れて半分ほどしか聞こえなかった。
(´・ω・`) 「それで、どうやって城門の外に出るんだ!」
川 ゚ -゚) 「いちいち許可をとっていたら面倒だからな」
途中の分岐は上がってきた時とは別の道をとり、何故か上り坂になっていき次第に細くなる。
馬一頭がようやく走れるほどの幅しかなく、両端は崖。
遥か下に臨めるのは城下街に並ぶ雑多な屋根。
(´・ω・`) 「クール、おい、何処に行く気……」
川 ゚ -゚) 「手を離せっ!」
502
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:07:28 ID:XuZMeezA0
手綱を離し、馬の背に立つクール。
咄嗟に指示通りにしてしまったことを、数秒後に後悔することになった。
最高速度からの急停止。
当然僕らの身体は完成に逆らえず前に飛ぶ。
足元にはなにもなく、久しぶりともいえる落下の感覚に全身がとらわれていた。
(;´・ω・`) 「ぐっ……ああああああああああああ……」
宙へと投げ出された僕らは、第三の城壁の頂上から一番下まで放物線を描いて飛んで行く。
まるで投石機の弾のように。
当然、着地は失敗した。
あらかじめ何らかの方法をとっていたわけでもなく、
地面が極端に柔らかいわけでもなかった。
僅かな希望が打ち砕かれたことを血塗れでズタボロになった服装とともに再確認し、
一言だけでも文句を言おうとクールを探す。
一歩先に地面に叩き付けられた彼女は既に黒い塊の群れへと走っていた。
その後を追いかけ、硝子の剣を鞘から抜く。
太陽の光を乱反射するその刀身を、蠢く甲殻に叩き込んだ。
一太刀を浴びせた一匹は、殆ど何の抵抗もなく真っ二つになり動かなくなる。
溢れ出てきた毒ガスを吸わないように息を止め、次の一体を狩った。
503
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:07:50 ID:XuZMeezA0
数体殺しては距離を置き、空気の比較的綺麗な場所で呼吸をする。
その繰り返しは二桁に及ばないほどで終わった。
川 ゚ -゚) 「ふむ、毒ガスもあまり大したものではないな」
紫の煙に塗れて戦っていたクールの様子に変化はない。
再生力の高いホムンクルスを殺すには、量も質も不足だったようだ。
(´・ω・`) 「まさかあんな道を使うなんて思ってなかったよ」
川 ゚ -゚) 「国王が決断するまでいちいち待っていられん。
城壁間に取り残された人間に被害が出る」
(´・ω・`) 「それはそうだろうけど」
昼間であれば農耕地で作業している人間や家畜の面倒を見ている人間も多い。
現に、僕らが敵を殲滅した場所には少しずつ人が集まってきていた。
川 ゚ -゚) 「外の様子は……」
物見の塔からは何の合図も出ていない。
第一の城壁外部に集まっている集団に動きは無いようだ。
504
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:08:32 ID:XuZMeezA0
(´・ω・`) 「ふぅ・……」
それからしばらくして城壁は大きく開いた。
騎兵と歩兵のフラクツク正規兵。
掲げられた旗には、白い背景に重なった黒い円が三つ。
川 ゚ -゚) 「随分と遅かったな」
「助かりました。中へお入りください。まだ他にも敵がいるかもしれませんので」
川 ゚ -゚) 「馬を二頭貸してくれ」
「何に使われるのですか?」
川 ゚ -゚) 「第一の城壁の外にいる敵の様子を見て来る」
「今は動きがありません。下手に刺激するなとの命令を受けています」
(´・ω・`) 「確認は必要だと思う」
「あなたは……?」
505
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:09:02 ID:XuZMeezA0
川 ゚ -゚) 「私の友人だ。私と同等の存在と思ってくれていい」
「あっ……」
何かを察したかのような顔をする男。
クールが何者であるかは一応知っているのだろう。
川 ゚ -゚) 「こちらから手出しをするつもりはない」
「クールさんが言われるのであれば……おい! 馬を用意しろ」
部下に手綱を引かれてきたのは小柄な二頭。
脚は短いが、筋肉はバランスよくついている。
川 ゚ -゚) 「行くぞ」
(´・ω・`) 「わかってるよ」
「お気をつけて」
風のようにフラクツクの領地を縦断する。
疲れを知らない二頭の馬は、休むことなく駆け続けた。
第一の城門までを二時間ほどで踏破し、門の前で止まった。
506
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:09:34 ID:XuZMeezA0
「すいません、今は開門が禁止されてます」
川 ゚ -゚) 「そこまで登ってもいいだろうか」
「それなら構いませんよ」
川 ゚ -゚) 「助かる」
凍った階段を上って第一の城壁の上に出る。
意外と広く、馬で走ることも出来そうなほど。
弓なりにカーブして都市の背後にある山に突き刺さっている。
第二、第三の城壁と同様に。
(´・ω・`) 「何匹いるんだよ」
固まったまま動かない大量の蟲。
少なく見積もっても三桁以上。
それぞれが異なる性質を持っているのだとすれば、簡単な戦いにはならない。
川 ゚ -゚) 「ん……誰だ、あれは」
クールが指出した先、雪原をかける人間が一人だけいた。
深く積もった雪に足をとられて何度も転びながら近づいてくる。
507
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:11:29 ID:XuZMeezA0
(´・ω・`) 「まさか……」
見覚えのある背格好。
馬もなく旅をしてこられるだけの体力や知識。
黒い塊を大きく迂回するルートをとっている男は、ジョルジュであった。
(´・ω・`) 「一瞬でいい、門を開けてくれ」
「ですが……」
川 ゚ -゚) 「私も頼む。あの男も間違いなく知り合いだ」
「……本当に一瞬だけですからね」
こちらに気付いたのか、軽く手を挙げて挨拶をしてきたジョルジュ。
それに応え、階下へと降りる。
凍り付いた扉はゆっくりと人間一人分の隙間だけ開く。
( ゚∀゚) 「たく、聞いてねぇぞ。こんなことになってるなんてな」
川 ゚ -゚) 「久しぶりだなジョルジュ」
( ゚∀゚) 「げ、クールちゃんもいるのかよ」
508
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:11:49 ID:XuZMeezA0
川 ゚ -゚) 「いたら悪いのか?」
( ゚∀゚) 「そういうのじゃねーけどよ。やれやれ、頼まれていたものは採って来た」
丈夫な麻袋の中から取り出されたのは、錬金術に利用される素材。
それも、雪国では絶対に手に入らない種。
(´・ω・`) 「シュールに頼まれていたやつか」
( ゚∀゚) 「人使いが荒い。ったく、用は済んだ。俺はもう好きにさせてもらうぞ」
川 ゚ -゚) 「これから吹雪くが、どうするんだ? ちなみに私たちは都市部に戻る。
馬は二頭だが、ショボンが無理をすれば二人くらい運べるだろう」
僕が運ぶこと前提なのは口を挟まないでおいた。
こういう時に逆らってもろくなことがない。
ジョルジュもまたそのことに気付いていた。
( ゚∀゚) 「……頼むよ」
川 ゚ -゚) 「それじゃあショボン、帰ろうか」
509
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:15:40 ID:XuZMeezA0
・ ・ ・ ・ ・ ・
lw´‐ _‐ノv 「おかえりーってあれ、ジョルジュ君かな」
( ゚∀゚) 「依頼された品は揃えてきた」
lw´‐ _‐ノv 「ありがと、後で確認するからそこに置いといて」
話しながらも手は止めないシュール。
複雑な工程を同時に処理していく。
( ^ω^) 「何をとって来たんだお?」
( ゚∀゚) 「空魂と鉱芯だ。他のはどれも買ってきた」
(´・ω・`) 「よくそんなの手に入れられたね」
柔らかくすぐにその形を変化させるが、決して割れることがない液体のような球。
空のような澄んだ青色と、雲のような薄い白が混じり合ってその中を彩っている。
そのために空の魂との名前を与えられた。
510
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:16:26 ID:XuZMeezA0
鉱芯はその名の通り、鉱石の中心に存在する一際密度の高い一部。
鉱石の種類によっても手に入れやすさが大きく変わり、希少な鉱石では必ず存在するとも限らない。
取り出すためには一度砕いてみなればならないため、非常に時間がかかる。
どちらも何処に行けば確実に手に入るのか、未だ誰も知らない素材。
( ゚∀゚) 「半分以上シュールのおかげだ。俺はただ言われた場所向かっただけだからな」
( ^ω^) 「後は待つだけかお」
lw´‐ _‐ノv 「最低でも一週間はかかるかな。その間は他の準備でもしておいて。
テンヴェイラよりもさらに面倒なことになるかもしれないから、念入りにね」
(´・ω・`) 「わかってるさ」
シュールと同等の錬金術師が相手になる。
油断できるはずもなかった。
川 ゚ -゚) 「サスガ」
( ´_ゝ`) 「なんだ?」
川 ゚ -゚) 「武器を作るのを手伝ってくれ」
511
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:17:04 ID:XuZMeezA0
(´<_` ) 「俺達が作ったところで、俺たちが消える以上今までのようにはいかないぞ」
濫觴の双玉は、その珠玉を埋め込むことで常識を超えた力を発揮する。
彼ら無しでは半分以下にもなるだろう。
川 ゚ -゚) 「わかってる。それでも私たちよりは遥かに優れたものが作れるだろう」
( ´_ゝ`) 「仕方ない、俺だと思って大事にしてくれよ」
川 ゚ -゚) 「それは断る」
( ゚∀゚) 「なら俺も頼んでいいか」
( ^ω^) 「ジョルジュ来るのかお!?」
ブーンが言わなければ僕が言っていただろう。
何かを条件に、ただ素材を届けてくれただけだと思い込んでいた。
イ从゚ ー゚ノi、 「……勿論、仙帝殿は手伝って下さるのでございます。ふふふ」
( ゚∀゚) 「っち……」
話の内容は見えないが、キツネとの約束でもあるのだろう。
ジョルジュは嫌な顔をしながら扇の方を睨んだ。
512
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:18:36 ID:XuZMeezA0
( ^ω^) 「久しぶりだおね、四人で旅をするのは」
(´・ω・`) 「まさかまたこういう日が来るとは思わなかったよ」
川 ゚ -゚) 「昔と違って遊びに行くんじゃないんだ。わかってるだろうな」
( ^ω^) 「当然だお。ショボンの大切な人を助けるためだお」
(´・ω・`) 「……改めて言われるとすごく私事だね。無関係なみんなに手伝ってもらってすまない」
川 ゚ -゚) 「無関係ではないがな。それにああいった現状がある以上、私事でもなくなってきている」
城壁の外に佇む蟲の大軍。
それは、シュールの悪意が世界に放った明確な敵意。
見過ごすわけにはいかない。
513
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:20:20 ID:XuZMeezA0
_
( ゚∀゚) 「これきりだ。後は俺の好きにさせてもらうぞ」
(´・ω・`) 「本当に助かるよ。ありがとう」
lw´‐ _‐ノv 「私からもお願いさせて。私の不始末をすべて任せる形になって本当にごめんね」
_
( ゚∀゚) 「本当にな。ったく、面倒事を押し付けやがって」
( ^ω^) 「ジョルジュ!」
lw´‐ _‐ノv 「あはは。もうほとんど時間は無いけれど、私にできる限りのことはするから。
だから、どうかよろしくお願いします」
lw´‐ _‐ノv 「世界の為に、あなた方の為に、私の為に、私を殺してください」
.
514
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:25:45 ID:XuZMeezA0
37 終の願望 End
515
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:26:14 ID:XuZMeezA0
>>15
30 災厄の巫女
>>102
31 少女への手掛かり
>>165
32 血の遺志
>>228
33 空を舞う翼
>>282
34 地を穿つ角
>>350
35 港の都市
>>404
36 紅の災厄
>>457
37 終の願望
516
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:26:37 ID:XuZMeezA0
│
│
26 朽ちぬ魂の欲望 <上>
27 朽ちぬ魂の欲望 <下>
│
│
16 ホムンクルスは試すようです
│
│
28 宴の夢
29 古の錬金術師
30 災厄の巫女
31 少女への手掛かり
│
32 血の遺志 最終編
33 空を舞う翼
34 地を穿つ角
35 港の都市
36 紅の災厄
37 終の願望
517
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:27:37 ID:gimgPy0I0
おつ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
518
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:31:00 ID:wrwwL6KY0
超乙
精神息してる?
519
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:33:15 ID:XuZMeezA0
38 命の期限
520
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:34:19 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「ショボン君」
(´・ω・`) 「なんだ」
lw´‐ _‐ノv 「みんなを集めてきてもらっていいかな」
(´・ω・`) 「わかった」
十日後、彼女の予想よりは若干遅く、ようやく全ての準備が終わった。
不死殺しが完成するまでの間、僕らはそれぞれが最後の旅の準備をしていた。
食料や武器、便利な錬金術品まで四人で協力して創り出した物は過去最高の出来。
川 ゚ -゚) 「ん、時間通りだな」
呼びに行こうと思った時に、三人共が戻って来た。
時間を約束していたわけではなかったが、
出ていく前にシュールの作業を見て終わりを予想していたのかもしれない。
暗い表情のブーンは、恐らくタグを持って行ってきたのだろう。
家族の人間に何と言われたかはわからないが、あまり良い方向ではなさそうだ。
521
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:36:06 ID:wrwwL6KY0
ナニッ
522
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:36:34 ID:kABu/qcY0
いよいよか……
本当に乙、支援
523
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:37:10 ID:XuZMeezA0
(´・ω・`) 「ブーン……」
( ω ) 「わかってるお……」
俯きながらも、何処か納得したような表情をしていた。
遺族の反応は予想内のものだったのだろう。
( ^ω^) 「今は……こっちに集中するお」
lw´‐ _‐ノv 「そうだね。そろそろ大詰めだよ」
(´・ω・`) 「不死殺しの、ですか」
lw´‐ _‐ノv 「随分とかかっちゃったけどね。素材の下処理も終わったし、これから本番。
ま、もうそんなに時間もないんだけどね」
(´・ω・`) 「時間がないって……」
∧
(゚、。`フ 「察してやるんじゃの」
( ФωФ) 「さて、吾輩からであるかの」
lw´‐ _‐ノv 「そうだね」
524
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:39:54 ID:XuZMeezA0
外套に詰め込まれた錬金術はほぼ全て流し落とされた。
残っているのはロマン自身の意識だけ。
(´・ω・`) 「何か……芒に伝えておこうか」
( ФωФ) 「ふん、今更言い残しておくことは無いのである。彼女にはすべてを伝えておいた。
……だが、そうであるな。彼女の生きている姿を見に行ってやってほしい。
吾輩がいなければ一人きりになってしまうであるからな」
(´・ω・`) 「約束しよう」
( ФωФ) 「安心して逝ける。元より長生きしすぎた」
lw´‐ _‐ノv 「……今までありがとう」
( ФωФ) 「礼を言われるようなことは無いのである。吾輩は自分の意思で生き方を決めたのだ。
時間もないのであろう。長い付き合いだったが………………出会えてよかったと思えておる」
lw´‐ _‐ノv 「強化外套拾参式の素材は岳龍皮。
堅く尖った岩肌のような表面には、四つの素材の中でも特に錬金術との親和性が高い」
( ФωФ) 「これでやっと……ゆっくりできるのであるな……」
525
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:40:28 ID:XuZMeezA0
シュールは岳龍皮を、透明な液体で満たされた大きな釜の中に沈める。
素材としての役割を果たすために、ロマンの精神はゆっくりと溶けていく。
溶解した岳龍皮は釜の中で黒い塊となって漂う。
( ´_ゝ`) 「次は俺たちだな」
(´<_` ) 「今更罪悪感に抱かれる必要はない。ロマンも俺たちもみんな望んで選んだからな」
lw´‐ _‐ノv 「……うん、そうだね。ごめんね……」
( ´_ゝ`) 「さて、この世とも遂にお別れだが」
(´<_` ) 「あまり死ぬことに対して思うこともないな」
( ´_ゝ`) 「ああ、だが未練が一つだけある」
(´<_` ) 「なんだ、アニジャ」
神妙な面持ちでこちらに向き直ったアニジャ。
今までの雰囲気とは大きく違い、初めて見る様子に思わず息をのんだ。
( ´_ゝ`) 「まだクールのおっぱいを揉んでいない」
526
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:40:50 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「……」
川 ゚ -゚) 「…………」
(´<_` ) 「…………」
(´・ω・`) 「…………」
( ^ω^) 「…………」
イ从゚ ー゚ノi、 「……」
∧
(゚、。`フ 「……」
_
( ゚∀゚) 「……」
(´<_` ) 「アニジャ、こういう時くらい我慢できんのか」
527
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:41:15 ID:XuZMeezA0
( ´_ゝ`) 「こういう時だからこそだろ。最期の願いなら聞いてくれるかもしれないじゃないか」
川 ゚ -゚) 「……断る」
即答するクール。
( ´_ゝ`) 「ぐっ……」
(´<_` ) 「こんなアニジャですまなかったな。いろいろと楽しかったぞ」
川 ゚ -゚) 「私もだ。多くを教えてもらったし、助けてもらった」
( ´_ゝ`) 「置物として過ごしてきた数百年を思えば、クールと旅をした近頃は楽しかったな」
(´<_` ) 「一度はバラバラになっていた俺たちもクールのおかげで再会できたしな」
( ´_ゝ`) 「そうだな。もうおっぱいは、諦めよう」
(´<_` ) 「もう少し早く諦めてくれればよかったんだが……」
lw´‐ _‐ノv 「二人とも、苦労を掛けたね」
528
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:41:44 ID:XuZMeezA0
( ´_ゝ`) 「労いの言葉はもう充分だ。
もし生まれ変わるようなことがあれば、またシュールと過ごせることを願っておく」
(´<_` ) 「そうだな。きっとまた双子として会いに行こう」
lw´‐ _‐ノv 「うん」
川 ゚ー゚) 「……その時は私にも会いに来い。胸を触らせてやることはないがな」
( ´_ゝ`) 「残念だ」
サスガ双子がその心を宿すは赤と青の双珠。
シュールはそれらを、釜の中に沈めた。
lw´‐ _‐ノv 「濫觴の双珠は一点を除いて全く同一の存在である二つの珠。
双子洞窟の最深部に存在している蒼珠と緋珠。
特に金属との錬金術に強力な触媒効果を持っている」
黒い靄の外側で光る赤と青。
シュールがかき混ぜても三つは決して重ならず、それぞれが入り乱れた文様を描く。
529
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:42:49 ID:XuZMeezA0
イ从゚ ー゚ノi、 「私の順番でございますね」
lw´‐ _‐ノv 「キツネ……」
イ从゚ ー゚ノi、 「やっとでございますね、シュール様」
lw´‐ _‐ノv 「随分とかかっちゃったね」
イ从゚ ー゚ノi、 「私はいつまでも待つつもりでございましたよ。
目的が達成されたわけではございませんが、私たちの役目はここまででございますね」
lw´‐ _‐ノv 「ショボン君が継いでくれるから、安心して任せられる」
イ从゚ ー゚ノi、 「少々ずるいやり方であると思いますが……」
(´・ω・`) 「ほんとにそうだな。どう考えても僕には断れない」
lw´‐ _‐ノv 「あまりよくない偶然だったけどね……。
たぶん、こういったことが無くてもやってくれたんじゃないかな」
(´・ω・`) 「……仮定に対して明確な返事は出来ないな」
530
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:43:18 ID:XuZMeezA0
( ^ω^) 「ショボンならきっと手伝ったと思うおね」
川 ゚ -゚) 「私もそう思う」
(´-ω-`) 「はぁ……」
イ从゚ ー゚ノi、 「さて、仙帝……。いえ、ジョルジュ。聞いておりますか」
( ゚∀゚) 「なんだ」
話を振られたジョルジュは壁際に座ったまま答える。
イ从゚ ー゚ノi、 「華国を任せましたよ」
_
( ゚∀゚) 「言われるまでもない」
イ从゚ ー゚ノi、 「そうでございましょうね。ですからもう一つ。
どうかシュール様の目的を達するまでの協力をお願いします」
_
( ゚∀゚) 「っち……」
531
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:43:49 ID:XuZMeezA0
イ从゚ ー゚ノi、 「さて、シュール様。私はもう構いません」
lw´‐ _‐ノv 「話が終わって無いんじゃ……」
イ从゚ ー゚ノi、 「仙帝は賢い方でございます。どちらがより益になるかなど考えるまでも無いでしょう」
lw´‐ _‐ノv 「……ありがとうね」
扇を開いたまま釜の中へと沈める。
骨組みが先に溶け、白い扇面が薄く広がって浮いていた三つの素材を包み込んだ。
lw´‐ _‐ノv 「夢幻乃扇はその全てに蜃気楼葉桜の幹を使っている。
見ることは出来ても触れることは出来ない蜃気楼。
葉桜はあらゆる素材を繋ぎ合わせることのできる特別な緩衝材になる」
∧
(゚、。`フ 「最後はわらわか」
(´・ω・`) 「まさかその猫の姿のままじゃないだろうな」
生きた動物の姿のまま錬金術に利用するのは流石に抵抗があった。
実際に行うのは僕ではなくシュールであるが。
532
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:44:55 ID:XuZMeezA0
生きた動物の姿のまま錬金術に利用するのは流石に抵抗があった。
実際に行うのは僕ではなくシュールであるが。
∧
(゚、。`フ 「そんなわけがなかろう。他の者達と同じように想起の鈴がわらわの意識じゃ」
首元を掲げる。
そこに結ばれているのは記憶を呼び戻す金色の鈴。
(´・ω・`) 「だったら何故」
∧
(゚、。`フ 「わらわがこうであることを望んだからじゃ。精神だけとなってこの世界に干渉が出来なくなるよりも、
例え人間でなくともこの世界に関わり続けたいとな。
意識を分かつことは簡単じゃった。シュールの前例もあったことだしの」
lw´‐ _‐ノv 「猫に錬金術を適応させる方が苦労したね。なにせ不老不死なんてその時はまだ夢物語だったから」
(´・ω・`) 「でぃはでぃのままってことか?」
∧
(゚、。`フ 「しばらくはの。いずれこの意識も消えてなくなる。
ぬしの頼まれ事くらいは見守ることができるじゃろうな。
さて、頼むぞ」
lw´‐ _‐ノv 「わかったよ」
533
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:45:55 ID:XuZMeezA0
優しく抱きかかえ、首輪の鈴を取り外す。
床におろされたでぃはじっとシュールの動きを見つめている。
白く広がった膜の中心に置かれた鈴。
その点を中心に同心円状に波紋が広がる。
最初はゆっくりと、次第に強く激しく。
lw´‐ _‐ノv 「鳴金は人間が近くにいることで鳴り響く金属。
思いが強ければ強いほど、感情が激しければ激しいほど、より高く鳴る。
原理は誰にも解明できてないんだよね。
別の世界で繋がっているとか、とんでも理論を唱えている人もいるくらいに」
波だった表面から青と赤の光が拡がり、しばらくしてから再び白が全てを包み込んだ。
綺麗な球体となって釜の中心に収まった。
∧
(゚、。`フ 「ふむ、特に問題は無さそうじゃの」
( ^ω^) 「わかるのかお?」
∧
(゚、。`フ 「わらわを侮るなよ。これでもぬしらよりも遥かに高度な錬金術をシュールと共に研究してきたからの」
534
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:46:41 ID:XuZMeezA0
川 ゚ -゚) 「これで終わりか?」
lw´‐ _‐ノv 「これが最後かな」
シュールが取り出したのは透明な立方体。
水分が固められたかのように僅かな振動で表面が揺れる。
中心では黒とも紫とも表現できる線が暴れていた。
その光が目に入った瞬間に、テンヴェイラと相対した時のように鳥肌が立つ。
(´・ω・`) 「なんだそれは……」
lw´‐ _‐ノv 「正直、こんなにうまくいくとは思ってなかったよ。
この中に入ってるのは、テンヴェイラの鋏が持つ断裁の性質そのもの」
川;゚ -゚) 「性質そのものだと? そんなことは不可能だ」
lw´‐ _‐ノv 「不可能じゃなかったからこそここにある。運に助けられた部分も多いけどね。
テンヴェイラの鋏が砕けた欠片であったこと、空魂との相性がよかったんだ」
向こう側にどこまでも続いていそうな無数の線の集合体。
空間すら断ち切る威力。
535
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:47:08 ID:XuZMeezA0
lw´‐ _‐ノv 「ちょっと離れていてね。たぶん大丈夫だと思うけど、失敗する可能性もあるから」
指示に従って壁際まで逃げる。
シュールはまるで卵を割るかのような動作で、水の塊を開いた。
刺々しい塊は重力を無視する速度で少しずつ釜の表面へと近づいていく。
ときに膨れ上がろうとしては見えない力に押さえつけられている。
着水した瞬間は僕の場所からは見えなかった。
ただ音もなく、釜が縦に数十分割され、中の水が部屋の床を汚した
残っていたのは、壺の底に刺さった一本の棘。
髪の毛よりもなお細く、注意深く観察しなければ見逃してしまうほど。
lw´‐ _‐ノv 「……ふぅ」
シュールは溜息と共に、その棘に鉱芯を重ね合わせた。
鋼色の光を発し、鉱芯が一気に膨れ上がる。
それをシュールは誰もいない窓際に向かって振り抜いた。
lw´‐ _‐ノv 「完成だね」
シュールの言葉の直後、家屋が一直線に避けた。
初めからそうであったかのように。
536
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:47:39 ID:XuZMeezA0
_
( ゚∀゚) 「……冗談だろ」
窓の外、空に浮かぶ雲までもが分断されていた。
lw´‐ _‐ノv 「ごめんね、家を壊しちゃって」
シュールは小型のナイフのような形状になったそれに、用意していた布を巻きつけて縛る。
その後机の上に置いて、散らばったゴミの片づけを始めた。
呆気にとられていた僕らは、その作業を見てようやく我に返る。
川 ゚ -゚) 「いや、私は構わないが……」
(´・ω・`) 「これがテンヴェイラの力か……」
lw´‐ _‐ノv 「まぁ、これっきりなんだけどね」
( ^ω^) 「どういうことだお?」
lw´‐ _‐ノv 「今放った斬撃はテンヴェイラの力を落ち着かせるためなんだ。
これでこの武器は、正真正銘の不死殺しへと相成った。取り扱いには十分気を付けてね」
(;´・ω・`) 「あ、あぁ」
537
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:48:06 ID:XuZMeezA0
( ^ω^) 「今の攻撃が何回も出せたら楽なんじゃないかお」
lw´‐ _‐ノv 「分かってるとは思うけど、そう簡単じゃないんだよ。
テンヴェイラの力は集中させなきゃいけない。斬撃に乗るようじゃ駄目だ。
刀の表面に纏っているくらいがちょうどいい」
(´・ω・`) 「これで、シュールのもう一つの意識を殺せるんだな」
lw´‐ _‐ノv 「確実に。ただしショボン君……」
(´・ω・`) 「わかってる。これは僕らにとっても脅威だという事だな」
lw´‐ _‐ノv 「そうだね」
不死殺し。その言葉の意味を解らない僕らではない。
僕らホムンクルスにとっても危険な武器だ。
(´・ω・`) 「具体的にはどうなる」
lw´‐ _‐ノv 「不死殺しの持つ特性は、錬金術の完全な破壊。
どうなるかは試してみないとわからないけど、錬金術で構成された身体は崩壊する。
錬金術そのものであるホムンクルスはドロドロに溶けて原型が無くなるんじゃないかな」
538
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:48:45 ID:XuZMeezA0
(; ^ω^) 「とんでもないおね……」
川 ゚ -゚) 「一つ聞いてみたいのだが、痛みはあるのか?」
lw´‐ _‐ノv 「無いよ。それくらい強力だから」
_
( ゚∀゚) 「敵に利用されないように気をつけろってことか」
lw´‐ _‐ノv 「そうだね。……っと、そろそろかな」
(´・ω・`) 「どうした?」
バランスを崩したシュールが壁に寄りかかり、そのままへたり込んだ。
lw´‐ _‐ノv 「もう少しくらい大丈夫だと思ってたんだけど、無理をしすぎたから……」
この十日間、シュールは片時も離れずに錬金術を行っていた。
昼夜も問わず、最低限の休憩だけを挟んで。
その間はずっと表に出ていたシュールの意識。
(;´・ω・`) 「待て、まだ聞きたいことが……」
lw´ _ ノv 「後は……よろしくね……周に……謝っ……」
539
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:49:40 ID:XuZMeezA0
全身の力が抜け、シュールは寝息を立て始めた。
目が覚めた彼女は、恐らくもう彼女ではない。
本来の持ち主へと体の自由は返される。
(´・ω・`) 「……」
その小柄な体を持ち上げてベッドに運び、そっと寝かせた。
身体を揺らされた彼女に起きる気配はない。
( ^ω^) 「どうするんだお」
(´・ω・`) 「もうここにとどまる理由は無い」
川 ゚ -゚) 「……行くのか」
(´・ω・`) 「時間がないんだ」
_
( ゚∀゚) 「ったくよ……で、どうするんだ」
(´・ω・`) 「ここからさらに北に進んだ先、ファーワルにある大氷窟。
そこに彼女がいる」
_
( ゚∀゚) 「さらに寒いところかよ」
( ^ω^) 「だからこそ準備してきたんだお」
540
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 22:50:24 ID:XuZMeezA0
川 ゚ -゚) 「確かに、必要以上に用意はしてきた。だが、相手はシュールの片割れなわけだろう。
簡単に終わるとは思えないがな」
(´・ω・`) 「それでも行かなきゃいけない」
川 ゚ -゚) 「わかっているさ。別に反対なわけじゃない」
_
( ゚∀゚) 「さっさと終わらせるぞ。俺は国に帰ってまだやるべきことがある」
(´・ω・`) 「ブーン、行こう!」
( ^ω^) 「了解だお!」
四人分の荷物はすでに用意していた。
シュールが創り出した不死殺しを懐に仕舞い、見張り小屋から外に出る。
冬の空で太陽が己を主張し、平原の雪は半分ほどが溶けていた。
(´・ω・`) 「絶好の出発日和だな」
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