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(  ゚¥゚)わが赴くは獣の群れのようです

13 ◆d7bMXbKy6Q:2016/04/03(日) 04:21:24 ID:4QLUhYnU0
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 移民船の住居区だった物を改造したらしい一角だ。
 無重力の移民船と違い、コロニーには引力があるため壁には簡易で統一性のないハシゴを無理やり取り付けてあった。
 『獣』による文明崩壊後、混乱期の宇宙艇は四角いパーツの寄せ集めでできていたという。この区画はその時代のシロモノだ。
 各パーツは固有の機能を持ちどのパーツとも接続できる。『獣』が発生した場合、区画ごと放棄するための工夫である。

 近くには何日も風呂を浴びていないだろう、薄汚れたヒゲ面の男達が安酒を舐めながらジロジロと不躾に視線を送ってくる。
 俺のような上等な服を着た人間が、高価な武具を持って歩く姿が珍しいのだろうか?
 睨みつければ、触らぬ神に祟りなしと男達は視線を逸らした。

 コロニーは人口密度が非常に高い。このような者達が集うのは道理だった。
 離陸に利用が高額な軌道エレベーターを利用しなければならない惑星と違い、コロニーは簡易な移住が可能で土地が安いのだ。
 また、惑星と違い、メンテナンスを必要とするコロニーは、戦争の攻撃を受けやすいもののまだ仕事がある。
 必然的に支配階級は惑星に住居を構え、彼らのような貧民たちはコロニーに集っていた。
 
 不意に、少年が右手を差し出す。油と血と傷に塗れたうす汚く、皮の厚い手のひら。
 苦労と悔しさが見事に投影されているような、そんな手だった。
 俺は意図がわからずその目を見つめると、彼は自己紹介を始める。

(=゚д゚) 「俺はトラ、トラギコだ」

 握手。古い習慣だと訊く。この宙域ではそんなしきたりが残っているのだろう。
 辺境の民に家名はない。それはトロヤ辺境の特殊な環境ゆえに起きたが、それは置いておこう。
 ただ、それでは問題もあるため、外宇宙ではニセノ姓を名乗るしきたりとなっていた。

 その手を握る。握った少年の手は歳の割に硬く力強く、そして歳相応に小さく熱い。


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