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lw´- _-ノv水溜りのようです
1
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 13:59:15 ID:jOPaj/3Q0
いつからこうなったのかなんてしらない。
放課後には雨はあがった。
わたしは用のなくなった傘を右手に持ちながら公園の水溜まりに片足を突っ込む。ぴしゃん。少しはねた。
突っ込んだ足をそのままぐりぐりやって、靴が泥だらけになる。既に水は靴下まで染み込んでいる。
気持ち悪い。
家まで約500メートルちょい。ここからずぶ濡れの片足をびたびたと鳴らしながら帰るのを想像すると気が重くなった。
濡れた靴も重い。まだ水溜まりに入れたままだけど、以前土砂降りになった時にそうだったからわかる。水を吸いまくった靴はとても重い。
lw´‐ _‐ノv「あーあ、あーめあーめふーれふーれ」
いっそ全身濡れた方がさっぱりするのに。
朝の天気は夢だったのかと思うほどすっきりと晴れ渡った空。憎い。
憎い。
2
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:02:50 ID:jOPaj/3Q0
( ・∀・)「あーあ、何してんだよ、君」
lw´‐ _‐ノv「何奴っ!」
( ・∀・)「俺だよバカ。足、泥だらけじゃないか」
なんだ君か。声じゃわからないよ。
lw´‐ _‐ノv「足、泥だらけだよ。だからなんだって言うんだ」
( ・∀・)「足を泥だらけにしてる奴をみたら、普通は何か声をかけるもんだよ」
lw´‐ _‐ノv「どんな声をかけるの?」
( ・∀・)「そうだな、まずは、なんでそんなことをしているのかって理由を問うかな、普通は」
lw´‐ _‐ノv「普通、か」
( ・∀・)「うん、普通」
lw´‐ _‐ノv「じゃあ問うてみたまえ。君の考える普通を」
( ・∀・)「君はなんでそんなふうに足を泥だらけにしてるの?」
lw´‐ _‐ノv「普通すぎてつまらないので答える気が起きません」
( ・∀・)
3
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:04:15 ID:jOPaj/3Q0
へんじがない。ただのしかばねのようだったので傘を投げつけた。
普通にキャッチされた。思わず舌打ち。
lw´‐ _‐ノv チッ
( ・∀・)「俺の動体視力を甘く見ない方がいい」
彼はキャッチした傘を得意げに片手で回しだした。
手の中でくるくると踊る傘。くるくる。
遠心力で乾ききっていない水滴が飛んだ。ぴっぴっ。
lw´‐ _‐ノv「冷たいがな」
( ・∀・)「おっと」
傘を持ち直して開いて、ぱっぱと水滴をはらう。
新品ではないので水捌けは良くない。どっちにしろ完全には乾かせっこないけど。
地味ぃな紺色の蝙蝠。
4
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:05:47 ID:jOPaj/3Q0
( ・∀・)「委員会の集まり、すっぽかしたろ。あいつが探してたよ」
lw´‐ _‐ノv「誰だよ」
( ・∀・)「ほら、なんか、あのやたら目のデカい奴」
lw´‐ _‐ノv「ああ…」
( ・∀・)「探してた。んでちょっと怒ってた。またサボりかってさ」
lw´‐ _‐ノv「委員会より大切なことが世界には溢れてると思うの」
( ・∀・)「いや、それは俺もそう思うよ。でも今の君は、サボってここで靴を泥だらけにしてるだけじゃないか?」
lw´‐ _‐ノv「靴を泥だらけにすることの方が大事なときだってある」
ぐちゃぐちゃ。
( ・∀・)「あるのかなあ」
lw´‐ _‐ノv「あるんだよう」
ひたひた。
5
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:10:37 ID:jOPaj/3Q0
冬のPM3:30の空は、澄み切って青かった。
雨上がりの湿っぽい空気は、遠い何処かに飛ばされていた。ひゅうん。
lw´‐ _‐ノv「この水溜まりが」
( ・∀・)「うん?」
lw´‐ _‐ノv「底無し沼だったら良いなって、思ったんだ」
努力の甲斐あって、泥はもう靴の中にじわじわと侵入している。
靴下もどろどろ。もう片方の足も同じ目にあわせる。ぴちゃん、ぐちゃ。
しかしこの作業時間がかかる。
( ・∀・)「もしそうだったら、君は死んじゃうだろ」
lw´‐ _‐ノv「死ねばいいじゃない?」
怪訝な顔をする。
どうして?
答えなんてないさ
lw´‐ _‐ノv「ずぶずぶっと沈んで、ぐちゃぐちゃのどろどろになって、ぷくぷくっと吸い込まれて、ぴしゃんと閉じられる」
lw´‐ _‐ノv「それが重要なんだ」
ぷくり。
6
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:11:52 ID:jOPaj/3Q0
一日にする会話が減ってきたことに気づいた時も、
いつの間にか昼食を一人で食べるようになっていた時も、
靴にシュレッダーの紙屑が入ってた時も、
ずっとそうやって、沈む自分を想像した。
孤独、なんて、陳腐な表現では満たされないこの、なにか、恐ろしいもの。
lw´‐ _‐ノv「君は、……」
( ・∀・)「うん?」
lw´‐ _‐ノv「わからない」
( ・∀・)「ん…?」
lw´‐ _‐ノv「わからない、だろうね」
( ・∀・)「…そう、だね」
lw´‐ _‐ノv「わたしじゃないから」
( ・∀・)「君じゃないから」
7
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:13:25 ID:jOPaj/3Q0
ながぁい、沈黙が降りた。時間は空気ごと止まってしまったようだった。
でも現実にはそんなことはない。ざんねん。
時間はちゃんと、動き出す。
( ・∀・)「どうやって帰るのさ?」
lw´‐ _‐ノv「帰るときの事を考えながらで道を進めると思うなよ、君」
雄大なる青き空は白色の光の塊が支配している。巨大な球体の半分を常に照らし、暖める光。
真っ正面からその光を受ける向きに立っている彼は眩しさから目を細めて呆然とたたずむ。
( ・∀・)「そうやって僕の知らないとこへ勝手に行って、帰って来ないんだから」
lw´‐ _‐ノv「烏の…いや、わたしの勝手でしょー」
( ・∀・)「探す方の身にもなれよ」
lw´‐ _‐ノv「頼んでないよ。勝手に探すのはそっちだろ」
8
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:14:25 ID:jOPaj/3Q0
わたしには珍しく少し苛立った風に声を上げる。
彼は更に珍しく少しだけ淋しそうな顔をしてわたしを見る。
でも、と彼は言う。でも。
( ・∀・)「でも俺は君を見失うわけにはいかない」
lw´‐ _‐ノv「その義務感はどっから来るの」
手に持った傘をまたくるくると回しだす。
もう水ははねない。くるくる。
こいつは本当に回すのが上手い。回すのだけは、上手い。
長い沈黙が続いて、破られた。
( ・∀・)「とにかく、だ」
lw´‐ _‐ノv「とにかく」
( ・∀・)「そう。とにかく、君を見失うわけにはいかない」
うさぎにつの。
9
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:18:25 ID:jOPaj/3Q0
lw´‐ _‐ノv「いい迷惑だよ。わかってるだろ」
( ・∀・)「君だって勝手にいなくなることで俺に迷惑をかけてる。お互い様だ」
lw´‐ _‐ノv「横暴だ。それじゃあわたしたちは永遠に迷惑をかけあい続けるしかないじゃないか」
( ・∀・)「そうだよ。君が変わらない限りね」
lw´‐ _‐ノv「無茶苦茶」
まったくもって無茶苦茶。目茶苦茶のぐちゃぐちゃ。
ひどく独善的な彼がなんだか無性に嫌になって、それを表情には出さないけれど、片手で頭を掻きむしる。ぐしゃぐしゃ。
水溜まりに浸かる靴はもはや地と同化してるみたいに全体を泥で覆われていた。
破綻した会話内容と同じくらいぐずぐずのどろどろになった両足を見下ろして、少し安心する。
このまま侵食されて全身泥人形になってしまえばいい。
雨風に晒されてひび割れて溶けて土に還ればいい。
心からそう願った。
lw´‐ _‐ノv「君も一緒にいく?」
10
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:19:25 ID:jOPaj/3Q0
視線を下ろしたままの問い掛けは独り言みたいにきこえた。
いや、きっと独り言だった。それでもちゃんと返事が来た。問いに対する問いという形で。
( ・∀・)「…何処にさ」
lw´‐ _‐ノv「還るのさ」
生きている前の世界へ。
地上ではないどこかへ。
この水溜まりを通り越して、二度と浮かび上がってこないように、土に全てを捧げて、無限遠まで沈み込んで、そして
lw´‐ _‐ノv「もうここに戻ってきたくはないんだ」
( ・∀・)「……」
いい加減疲れてきた足を静止させる。
何もすることがなくなって、わたしはただぼんやりと何処を見るともなく立ち尽くす。
視界に映る景色の情報は頭には入らない。
11
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:20:13 ID:jOPaj/3Q0
( ・∀・)「俺はさ」
空いてる手で頭をかきながらばつが悪そうに話し始める。
わたしは顔を上げない。目の端に映る彼の表情まではわからない。
( ・∀・)「わかってるんだよ、君が最近一人でばっかりいるのも」
( ・∀・)「誰とも喋ってなくて、誰とも飯食ってなくて、なんか…その靴にも、さ」
( ・∀・)「それで、それが、君からやりだしたことなのか、そうじゃないのかが、わかんなくてさ」
そんなこと、考えなくていいのに。
lw´‐ _‐ノv「考えなくていいのに。そんなこと」
( ・∀・)「俺は」
lw´‐ _‐ノv「黙って」
どれくらい此処にいただろう。日は傾いて赤みを帯び始めていた。
袋小路に作られたこの矮小な公園には滅多に人が来なかった。
遠くで遮断機が降りる音と、烏の声だけが響く。
lw´‐ _‐ノv「言わないでいい。君のせいじゃないから。喋んないでも、何も気にすることはないから、考えなくていいから」
あまり意味を持たない言葉が羅列されていった。
わたしはそれを聞いてはいなかった。彼は静かに耳を傾けていた。
12
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:21:21 ID:jOPaj/3Q0
lw´‐ _‐ノv「この向こう側に行くことで頭がいっぱいなんだ、わたしは」
水溜まりをぎゅうっと踏み付ける。
固い感触だけがあった。
( ・∀・)「行って、どうするんだよ」
lw´‐ _‐ノv「どうもしない。ただそこに救いがある」
( ・∀・)「無いよ」
lw´‐ _‐ノv「無くても行く」
冷たい水面は僅かに波打ちながら冬の光をきらきらと反射していた。眩しくて目を細める。
狭い視界が捉らえるそんな光景は、どこか幻想的で儚かった。
改めて見るとその水溜まりはそこそこ大きくて、
中学生の一人くらいなら余裕で寝っころがれそうだなとわたしは、思って、
13
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:21:51 ID:jOPaj/3Q0
ばしゃん
.
14
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:28:18 ID:jOPaj/3Q0
太陽が斜めにわたしを見下ろしていた。
そのやわらかな光で頬がじんわりと暖められていくのを感じる。
それともうひとつわたしを暖めているものと、殺人的に冷却していくものがあった。
lw´‐ _‐ノv「……」
( -∀-)
lw´- _-ノv「重いんだが?」
( -∀-)「仕様がないね」
lw´- _-ノv「冷たいんだが?」
( -∀-)「俺そうでもない」
背中は、冬の空気に晒され続けた水に浸って凍るように冷たかった。
死ねばいいのに。
15
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:29:03 ID:jOPaj/3Q0
中学3年生の中では平均より体格のいい少年の下に、未だ小学5年生に間違われ続けるSIZのわたしが敷かれている。
彼はわたしの首を抱くように両手を置き、あまった腕に自分の頭を載せて呼吸スペースを確保している。
うっかり泥水すすって死ねばいいのに。
そして少しの沈黙のあとで、ささやくような声が聞こえた。
( -∀-)「…ねぇ、わかったろ」
lw´- _-ノv「なにを」
( ・∀・)「どんなに必死に靴を泥だらけにしたって、君自身が泥だらけになったって、水溜りの向こうへは行けないよ。
もちろんそこに救いは無い。君が求めるどんなものも無い」
頭を上げてわたしの目を覗き込む。日常ではありえない距離に、少しだけ鼓動が早まる。
じっと見降ろされたその瞳の奥には密やかに小さく、だけど輝いているものがあるようで、羨ましかった。
( ・∀・)「なんにも無いんだ。俺はそんなところに行きたくない。
それでも君は、俺を置き去りにしてでもそっち側に行きたいの?俺には一人で辛い思いをさせて、君だけ救われにいくの」
16
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:30:20 ID:jOPaj/3Q0
罪悪感を煽るような物言いに、何も返せなくなってしまった。
そもそも架空の世界の話をしていたのに、それで責められるなんておかしい。
lw´- _-ノv「……」
( ・∀・)「逃げたいのは、わかるよ。怖いんだろう。俺だって君の立場ならきっと、怖くてどうしようもなくなると思う」
水溜りの刺さるような冷たさが、慣れたのか感覚が麻痺してきたのか、わからないけれどとにかく、和らいでいた。
震える手で、彼の制服のブレザーの、肩のあたりに触れる。
硬くてさらさらした生地、男の子の匂い。
踏切の音。烏。沈んでいく夕日。泥沼の感触。静かな風。冷たい。寒くて、暖かい。
目を閉じる。
ひとつひとつ、全身で感じる。わたしは、今、生きている。
生きて、しまっている。
17
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:31:30 ID:jOPaj/3Q0
怖くなんか、なかった筈だった。
別に虐められてたって、下らないクラスメイトにいくら無視されたって
そんなことが怖いんじゃない。
わたしが何よりも恐れて、逃げたかったのは。
.
18
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:32:17 ID:jOPaj/3Q0
lw´ _ ノv「いやだ」
( ・∀・)「……」
lw´ _ ノv「君の、せいで。怖いのに、君が、いるから、怖くなっちゃうから」
とりとめもなく、単調な言葉が零れていく。
言いたいことがあるのに全然まとまらない。伝わらない。
もうやめてほしいんだ、わたしを助けないでほしいんだ。
そう言ってしまえば、本当に君はいなくなってしまうのか、な、なんて考えて、考えながら。
わたしは、そう、怖いのだ。
lw´ _ ノv「君が、あ、いつも来てくれるから、だから、」
lw´ _ ノv「期待しちゃうから、また君がいるって。でも、君がいないことに、耐えれなく、なるのが」
いつか君がいなくなって、今まで怖くなかったことが、怖くなってしまうのが、怖い。
19
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:33:46 ID:jOPaj/3Q0
昔から、ひとりで遊ぶのが好きだった。
自由で、気ままで、何にも、この世界にある誰にも縛られない、わたしだけの時間。
右へ左へ、山の中だって川の中だって、人んちの庭だって崩れかけた廃病院だって
そこに他の誰もいなければ、すべてはわたしのもの。すべてわたしのばしょ。
そう、わたしは自由。
猫のように、蝶のように。
はねまわり、とびまわる。
それが幸せなことだと信じて、疑わなかった。
20
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:34:39 ID:jOPaj/3Q0
わたしが好きに動き回れる空間がある。時間がある。そのための足がある。それだけで十分だった。
それでも世界は私を排そうとする。彼らは大体において異質というものを嫌った。
それでもわたしは見て見ぬふりをすることができる。それがわたしにとっての正常だった。
そう、君だ。
君がわたしの見て見ぬふりを台無しにした。
.
21
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:37:20 ID:jOPaj/3Q0
消しゴムをなくしたら、君が貸してくれるだろう。
転んだら、君が手を差し伸べてくれるだろう。
いじめられたら、君が守ってくれるだろう。
いつからかそんな毎日がわたしの日常。きっとこれからも。
君のいる限りは。うん。いれば、の、話。
lw´ _ ノv「違うんだ」
lw´ _ ノv「ひとりでいれなくちゃあ、だめなんだ、って」
嗚咽交じりになる涙声が悔しくて、それ以上口をつぐむ。
( ・∀・)「…いなくならないよ、俺は、もうひとりになんかしないから」
( ・∀・)「絶対、ずっとこの先何があっても、君がいるとこならどこにでもついてく。むしろ」
( ・∀・)「最初からいてあげなくてごめんって、謝るべきなんだ」
そんなの嘘だよ。
絶対、なんてないことを、わたしはしっている。
22
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:39:34 ID:jOPaj/3Q0
その目が、わたしを追わなくなったらどうしよう
その手が、わたしに差し伸べられなくなったらどうしよう
そんなことばかりに思考がかき乱される、そんな自分に嫌気がさす。
ずっと頭の中を繰り返してぐるぐる回って、もう倒れて二度と起き上がれないんじゃないかと思う。
ぐるぐる、ぐるぐる。
眩暈のするような感覚。ただぎゅっと目を瞑って、耐える、耐える日々。
傘をなくして豪雨に打たれているような、こんな毎日に、終わりが来るとしたら――
「俺が信じられない?」
23
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:40:25 ID:jOPaj/3Q0
「俺がいなくなるのが怖いってことは、君にとって俺がそれだけ重要な存在になってるってことだ。ちょっと嬉しいね」
うるせえ。黙れ。
「ちょっとじゃないな、だいぶ。嬉しい」
「でもそれは俺にとっても同じだ」
( ・∀・)「君がいなくなるのが不安でたまんないのさ」
わたしの真上、ふんわりした笑みが、落ちてくる。
.
24
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:43:53 ID:jOPaj/3Q0
( ・∀・)「俺たち、同じだよ。ひとりなんか怖くてやってられないよ。実をいうと君のそばにいたいのは、俺がひとりになるのが嫌だからだ」
( ・∀・)「だから俺は、君を見失うわけにはいかない。俺のために」
あまりにもまっすぐな眼差しと言葉の束が、成す術もなく入り込んでくる。
わたしのこころのなか。ゆっくりと沈んで、とけこんでゆく。混ざり合う音がきこえる。
彼は自分自身にも確認するように、語りかけるように。
( ・∀・)「頼むよ、いなくなんかならないで、俺の届かないところにいかないで、そのかわり、俺も君を一人にしないよ」
( ・∀・)「君がどこにいるかわかんなくなっても、何が何でも、それが底無しの水溜りの中でも、どこだって同じなんだ。君を探しにいくよ」
冷たい濁った水に浸りながら浴びる彼の言葉が、どうしようもなく暖かく感じた。
その向こうに見える空が、たとえようもなく澄んで、きれいだった。
25
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:44:59 ID:jOPaj/3Q0
空想の泥沼は、わたしを置き去りにして静かに閉じていく。
あとに遺されたわたしは、それでも、もう怖くはないと思えそうだった。
自分にいちばんふさわしい場所だと信じ込んでいた土の世界から、
太陽と空と、風の吹く空間へ、彼がひっぱりあげてくれた。
手を引かれる。
背中に染み込んだ泥と水が名残惜しそうに、わたしから引きはがされる。
びちゃぴちゃ、じゃあね。
( ・∀・)「ごめん。苦しかった?」
lw´- _-ノv「冷たかった。もうへーきだけど」
( ・∀・)「似合ってるよ」
lw´- _-ノv「ありがとう。でもお別れする」
( ・∀・)「それがいいね」
26
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:46:19 ID:jOPaj/3Q0
風に当てられた背中がものすごく寒いけど、彼のかけてくれた制服のブレザーとつないだ手は柔らかく、暖かい。
そう簡単に絶対とかずっととか、妄信する気にはまだなれないけれど
ひとりを一緒に怖がってくれる彼のことを、いつか見失ったとき
わたしもわたしのために、がんばって探すのかもしれない。
もはや原型のわからないほどどろどろにされてしまった両の靴は、やっぱりずしんと重かった。
でもきっとこれでさいご。
さいごで、これからはじまるのは、もう少し軽い足取りのみちのり。
だと、いいな。
27
:
◆ZNbUz1CGmw
:2016/04/01(金) 14:47:04 ID:jOPaj/3Q0
( ・∀・)「行こうか。転ぶなよー」
lw´- _-ノv「君が転ばない限り大丈夫」
( ・∀・)「細心の注意を払うよ」
わたしの重いのの半分くらいを、彼が代わりに持ってくれる。
今はひとりじゃないことにすっと身を任せて、
ずっと泣きそうになってた分を、ちょっと甘えさせてもらおう。
ふと思い立って、いっしゅんだけ振り向いて、口だけ動かして密やかに告げる。
lw´- _-ノv「ばいばい」
日が沈まないうちにと、早歩きの二人の陰を
水溜りは微笑んで、見送ってくれていた。
lw´- _-ノv水溜りのようです おわり
28
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 18:15:21 ID:/aCRQfzc0
乙
胃が痛い
29
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 20:29:14 ID:FQMkq.PI0
乙乙
30
:
名無しさん
:2016/04/01(金) 20:32:14 ID:CaTXUKfY0
二人がいつか離れる日が来るのか分からんが今はハッピーエンドで良かった
乙
31
:
◆mQ0JrMCe2Y
:2016/04/04(月) 01:46:58 ID:UOJ30rlY0
【連絡事項】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
このレス以降に続きを書いた場合
◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
詳細は、こちら
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1456585367/404-405
32
:
名無しさん
:2016/04/07(木) 04:57:26 ID:jo44RLMc0
彼らの幸せを願わずにはいられない…
乙
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